説明

チップ型電子部品収納台紙

【課題】本発明は、チップ型電子部品収納用台紙において紙基材に形成された多数のチップ部品収納用凹部内部におけるケバ発生を抑制し、前記凹部を被覆するカバーテープを剥がすときに、台紙から抜け落ちるケバの発生のない又は少ないチップ型電子部品収納用台紙を提供する。
【解決手段】前記紙基材を80%以上のユーカリ又はアカシヤ材晒クラフトパルプを用いて構成し、その表面に、ポリビニルアルコール、澱粉、ポリアクリルアミドを含む表面処理剤を0.1〜1.1g/m2乾燥塗工量で塗布し、前記塗布された表面処理剤を、前記紙基材の前記凹部の開口側の表面からその内部中に50μmの深さを超えて100μm以下の深さまで浸透させ、前記紙基材の表面の中心線平均粗さ(Ra)を3〜6μmに調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はチップ型電子部品収納台紙に関するものである、詳しく述べるならば、本発明はケバの発生が少なく、成形性の優れたチップ型電子部品収納台紙に関するものである。
本発明のチップ型電子部品収納台紙は、カバーテープの接着安定性に優れ、カバーテープを剥がす際に、台紙からケバの抜け落ちがない、又はきわめて少ないものである。
【背景技術】
【0002】
チップ型電子部品収納用台紙は、通常、台紙用板紙シートに下記の加工処理を施すことによって、チップ型電子部品のキャリアに形成される。
(1)台紙用板紙シートを所定の幅のテープ状にスリットする。
(2)形成された板紙テープに、所定大きさの角孔(凹部又は透孔)及び丸孔(透孔)を形成する。角孔はチップ型電子部品収納用であり、丸孔は充填機内において、電子部品を収納している台紙を移行させるために用いられる。
(3)台紙の裏面(ボトム側)にカバーテープを接着して、角形透孔の底部開口部を閉塞し、それによって角形凹部を形成する。なお、角形透孔を形成せずに、台紙に角状エンボンス加工をして所定の大きさの角形凹部を形成することもあり、この場合には、前記ボトム側カバーテープの接着工程は不要である。台紙とカバーテープを接着するには、台紙上にカバーテープを重ね、カバーテープ上から熱と圧力を加えて接着する方法、いわゆるヒートシール法が用いられる。
(4)前記角形凹部中に、その開口部を通してチップ型電子部品を充填する。
(5)台紙の表面(トップ側)にヒートシール法によってカバーテープを接着して、前記角形凹部の開口部を閉塞し、チップ型電子部品を収納している台紙を作製する。
(6)前記チップ型電子部品を収納している台紙を所定の大きさのカセットリールに巻き付けて、出荷する。
(7)最終ユーザーにおいて、前記チップ型電子部品を収納している台紙の表面からトップ側カバーテープを剥離して除去し、前記角形凹部からその中に収納されているチップ型電子部品を取り出す。
【0003】
前記の用途に適応するために、収納台紙に求められる品質は、(1)充填したチップ型電子部品に悪影響を及ぼさないこと、(2)カバーテープがスムースに接着されかつ剥離されるように、台紙の表面が十分な平滑性を有していること、及び(3)台紙に対して施される各種処理に十分耐え得る高い機械的強度を有していることなどである。
【0004】
収納台紙の品質欠陥事項の1つは、紙層からケバが発生することである。ケバとは角孔の内壁面及び、最終ユーザーにおいてカバーテープを剥離する際に、台紙表面から突出する微細なパルプ繊維からなるものである。電子部品収納用角孔の内側面及び、カバーテープを剥離したとき台紙表面にケバが発生すると、チップ型電子部品の取り出しが妨害されたり、マウンターの吸引ノズルを詰まらせたり、チップ型電子部品が汚染されたりなどの種々の障害を発生させる原因となる。
【0005】
また、台紙と、カバーテープとの間の接着力が不均一である場合には台紙に台紙からカバーテープを剥離する際に振動が生じ、それによって、角形凹部から電子部品の飛び出し、及び/又は収納位置の変動を生じ、そのため、電子部品の取りだし操作が、スムースに行われず、実装効率が低下するという問題を生じる。
【0006】
さらに、最近、台紙にカバーテープを貼着するために用いられるテーピング機のテーピング速度が飛躍的に向上している。このようなテーピング速度の向上に伴い、台紙とカバーテープとの間の接着強度が弱くなる傾向があるため、カバーテープを高い接着強度を接着し得る台紙の要望が強い。しかしながら、前記接着強度を強くする、カバーテープの剥離による台紙表面におけるケバの発生が多くなるという問題を生ずる。このため、カバーテープに対する接着強度が強いにもかかわらず、ケバが発生しにくい台紙の提供が望まれていた。
【0007】
これまで、チップ型電子部品収納用角孔内壁面におけるケバ防止手段としては、特開平11−165786号公報(特許文献1)及び特開平10−218281号公報(特許文献2)において、貫通孔の内壁面に樹脂を浸透させる方法が開示されており、また、特開2002−53195号公報(特許文献3)においては、針葉樹と広葉樹の配合比および紙基体の密度を管理することによりケバの発生を防止する方法が開示されている。また、特定の樹脂を表層に含有させてケバを防止する技術が、特開2005−92910号公報(特許文献4)に開示されており、更に特開2005−92910号公報(特許文献5)には、台紙テープの表面から30〜50μmの深さまで樹脂を含浸させて樹脂含浸層を、設けたものが開示されている。上記の方法は、いずれもケバの防止効果において充分ではなく、角孔内に発生するケバによる障害を解決することはできなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平11−165786号公報
【特許文献2】特開平10−218281号公報
【特許文献3】特開2002−53195号公報
【特許文献4】特開2005−092910号公報
【特許文献5】特開2003−226393号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、板紙からなりチップ型電子部品を収納するための複数の凹部を有する台紙において、チップ型電子部品を収納する凹部の内壁面におけるケバの発生を抑制し、さらに台紙表面からカバーテープを剥離するときに、台紙表面から抜け出るケバの発生のない、又は少ないチップ型電子部品収納用台紙を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、従来の多層板紙からなるチップ型電子部品収納台紙において、電子部品収納凹部の内壁面及びカバーテープ剥離後の表面において、多量のケバを発生する状況を検証したところ、表面からパルプ繊維3本分の太さの合計値に相当する深さまでの部分からパルプ繊維が脱離していること、およびカバーテープのヒートシール剤が、台紙の表層から40μm〜50μmの深さまでの部分に、パルプ繊維間に形成されている空隙を充填するように浸透していることを確認した。本発明者らは、さらに、台紙表面から50μmの深さを超えて、さらに深い部分まで、繊維間結合力を高め、更に、台紙表層のパルプ繊維からなるネットワークを固定し、かつ、この部分にパルプ線維間の隙を残すことにより、凹部内壁面及びカバーテープ剥離後の表面のケバを抑制することができることを見出し、本発明を完成させた。
【0011】
本発明のチップ型電子部品収納台紙は、表層、中層及び裏層を含む多層板紙構造を有する紙基材と、前記紙基材の前記表層表面において開口している複数の、チップ型電子部品収納用凹部とを有し、
前記紙基材の表層が、80〜100質量%の、ユーカリ又はアカシヤ材から製造された広葉樹晒クラフトパルプと、0〜20質量%の針葉樹晒クラフトパルプにより形成されており、
前記紙基材の前記表層表面に、ポリビニルアルコール、澱粉及びポリアクリルアミドから選ばれた少なくとも1種からなる水性高分子を含む表面処理剤が0.1〜1.1g/m2の乾燥塗工量で塗工されており、
前記塗工された表面処理剤は、前記紙基材の前記表層表面から、50μmを超えて100μm以下の深さまで、前記紙基材中に浸透しており、
前記表面処理剤により塗工された前記紙基材の前記表層表面の中心線平均粗さ(Ra)が3〜6μmに調整されている
ことを特徴とするものである。
本発明のチップ型電子部品収納台紙において、前記表面処理剤は粘度を4〜10mPa・sに調整されていることが好ましい、請求項1記載のチップ型電子部品収納台紙。
本発明のチップ型電子部品収納台紙において、前記表面処理剤が前記水溶性高分子とともに、スチレン・マレイン酸共重合体樹脂又はオレフィン・マレイン酸共重合体樹脂を含有する請求項1記載のチップ型電子部品収納台紙。
前記紙基材の表層を形成するパルプ繊維が広葉樹クラフトパルプであって、そのルーメン幅(L1)/繊維幅(L2)の比が0.4以下であることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明のチップ型電子部品収納用台紙は、それに電子部品収納用凹部を形成するための凹部又は透孔を形成したとき、この凹部又は透孔の内壁面においてケバの発生がなく又は少なく、かつ、台紙の前記凹部の開口側の表面から、それを被覆するカバーテープを剥離したとき、この剥離面において、ケバの発生がないか又は少ないものである。従って本発明のチップ型電子部品収納用台紙は、前記凹部に収納されている、及び/又は前記凹部から取り出されたチップ型電子部品がケバにより汚染されることがなく、かつマウンターによるチップ取り出しの際に、ケバによる吸引ノズルの詰まりを発生することがないという効果を有している。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明のチップ型電子部品収納用台紙において、水溶性高分子を含有する表面処理剤が、紙基材中に、紙基材の、凹部の開口側の表面から50μmの深さを超えた深さまで浸透して、紙基材を構成するパルプ繊維間の接着強度を高めていることが重要である。紙基材中の、表面処理剤浸透深さが50μm以下の場合には、パルプ繊維間の結合力が不足してケバが発生し易くなり、さらに、基材表面に分布しているパルプ繊維の太さのばらつきにより、台紙とカバーテープとの間の、剥離力にばらつきを生ずる。また、表面処理剤が50μmを超えて深く浸透していることにより、紙基材の表面が十分な厚さを有する部分におけるパルプ繊維のネットワークが、固定されるため、台紙の凹部開口側表面及び凹部内壁面において、ケバを発生することが十分に抑制され、かつ台紙とカバーテープとの間の剥離力のばらつきも十分に小さくすることができる。
【0014】
表面処理剤を、紙基材全体に浸透させるための技術及び紙基材の表面のみに表面処理剤を存在させる技術については、程々の提案がなされている。従来、処理剤を、紙基材表面から深く浸透させようとすると、表面処理剤の浸透深さや浸透量のばらつきが大きくなると考えられていた。また、表面処理剤によって、台紙表面部のパルプ繊維のネットワークを固定するだけでなく繊維間の空隙も充填してしまうと、カバーテープの接着性が著しく低下することも知られている。上記の問題点を解消して、表面処理剤の浸透状態を均斉にし、台紙とカバーテープとの接着強度のばらつきを少なくし、更に接着、剥離性を向上させるためには、表面処理剤の粘度及びその組成をコントロールすることが重要である。本発明においては、表面処理剤の粘度を4〜10mPa・sに調整して、紙基材表面に塗布又は含浸し、紙基材中に浸透させる。浸透深さは50μmより深く、好ましくは55μmより深く、更に好ましくは60μmより深く浸透させる。深ければ深いほうが好ましいが、100μmを越えてより深くした場合には、その効果が飽和し、経済的に不利になることがある。表面処理剤の粘度を4mPa・s未満に低くして、この表面処理剤を、紙基材中に深く浸透させても、所要量の表面処理剤が、紙基体の、表面処理剤浸透部分中に、ほぼ均等に分布していなければ、繊維間の結合強度を高い水準に保つことができない。このため、表面処理剤の粘度を4mPa・s以上に調整することが必要である。また前記粘度が10mPa・sを超えると、表面処理剤は、紙基材の表面部分にとどまり、紙基材中に50μmを越える深さまで浸透することが困難になる。表面処理剤の粘度はB型粘度計で測定することができる。表面処理剤の浸透性は粘度の影響を大きく受けるため、本発明では粘度に影響を与える表面処理剤温度の管理を厳密に行う。本発明において、表面処理剤の粘度が安定する温度として、ある表面処理剤の処理温度を、40〜70℃の範囲内に管理することが好ましく、より好ましい管理温度が60℃である。
また表面処理剤の塗布量又は含浸量は、0.1〜1.1g/m2であることが好ましく、更に好ましくは0.6〜1.1g/m2である。表面処理剤を多量に塗布又は含浸すれば、粘度によっては、紙基材の表面より深く浸透させることが可能であるが、このようにすると、経済的不利を生ずることがあり、また、台紙表面における表面処理剤の付着量が過剰になり、パルプ線維間の空隙を過度に充填してしまうため、カバーテープに対する接着強度の低下を招くという不都合を生ずることがある。
【0015】
本発明に用いられる紙基材表面の平滑度は、JIS B 0601で規定される中心線平均表面粗さ(Ra)が3μm以上である程度であることが好ましい。前記中心線平均表面粗さが3μm未満であって平滑性が過度に高くなると、カバーテープのヒートシール成分が台紙表面に接着する面積が増えることにより、紙基材表面に対するカバーテープの接着強度が過度に高くなり、カバーテープを剥離する際に、剥離困難を生ずる、さらにカバーテープ剥離に要する剥離力にバラツキが増大し、台紙に振動を発生することがある。また前記中心線平均表面粗さ(Ra)が6μmを超え、紙基材の平滑性が過度に低くなるとカバーテープと紙基材表面との接着性が過度に低くなる。
【0016】
本発明に用いられる表面処理剤は、水溶性高分子を含有するものである。この水溶性高分子としては、水溶性を有するポリビニルアルコール、澱粉、ポリアクリルアミド、アクリル系樹脂、スチレン・ブタジエン系樹脂、スチレン−イソプレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、エチレン−酢酸ビニル系樹脂、酢酸ビニル−ビニルアルコール系樹脂、ウレタン系樹脂などがあるが、本発明ではポリビニルアルコール、澱粉、ポリアクリルアミドから選ばれた少なくとも1種を含有するものが用いられる。これらの中でも、ポリビニルアルコール、澱粉、及びポリアクリルアミドは、パルプ繊維相互の接着強度を効率よく安価に高めることができ、また台紙表面への塗工適性も良好である。
【0017】
上記水溶性高分子物質の中でもポリアクリルアミドは、分子内のアミド基がセルロース及びヘミセルロース分子中の水酸基との間に、あるいはポリアクリルアミド自身のアミド基相互間に、水素結合を形成し、繊維間に作用する水素結合の数を増加させ、それによりパルプ繊維のネットワークの結合が強化され、それによって、ケバの発生を効率的に抑制できる。また、分子量5万〜50万のポリアクリルアミドを含む表面処理剤は、その粘度調整が容易であり、紙基材内部への浸透性が優れている。かつ5万〜30万の分子量を有するポリアクリルアミドは、紙基材への浸透性が高いため、本発明に用いられる表面処理剤として特に好ましいものである。
【0018】
本発明に用いられる、表面処理剤には、カバーテープとの接着性を向上させ、さらに台紙表面の強度を高めるために、スチレン・マレイン酸共重合体樹脂、又は、オレフィン・マレイン酸共重合体樹脂が含有されていることが好ましい。スチレン・マレイン酸共重合体樹脂及びオレフィン・マレイン酸共重合体樹脂は、疎水性基と親水性基との両方を有しており、それを台紙表面に塗工する事により、紙基材表面上にカバーリング層を形成し、さらに、紙基材層中に浸透し、親水基であるカルボン酸基がパルプ繊維と水素結合を形成し、繊維間に架橋状態を形成し、繊維間の結合力を大幅に向上させる。繊維間結合力の向上により、台紙表面からカバーテープを剥がす際の抵抗力が向上し、剥離強度を強化し、さらに、ケバとなる繊維の抜け落ちを防止することができる。
【0019】
また、スチレン・マレイン酸共重合体樹脂及びオレフィン・マレイン酸共重合体樹脂のガラス転移温度は10〜50℃であることが好ましい。このガラス転移温度が10℃未満であれば、カバーテープを貼り付ける際の貼り付け温度において、パルプ繊維間に架橋状態を形成して存在しているスチレン・マレイン酸共重合体樹脂、及び/又はオレフィン・マレイン酸共重合体樹脂の線維結合力が不十分になることがある。また、上記共重合体樹脂のガラス転移温度が50℃を超えると、パルプ繊維と、共重合体樹脂との架橋体が硬くなり過ぎ、カバーテープ接着剤層台紙から剥がれるときのストレスによって、台紙表面が破損し、この破損部にケバを発生することがある。
【0020】
本発明では、スチレン・マレイン酸共重合体樹脂又はオレフィン・マレイン酸共重合体樹脂の塗布量又は含浸量を適宜にコントロールすることにより、ケバ発生の抑制及びカバーテープと台紙との接着強度の所要レベルを得ることができる。表面処理剤にスチレン・マレイン酸共重合体樹脂又はオレフィン・マレイン酸共重合体樹脂を混合して塗布する場合、水溶性高分子との固形分比率は適宜に調整できるが、スチレン・マレイン酸共重合体樹脂又はオレフィン・マレイン酸共重合体樹脂の塗布量又は含浸量は、0.01〜0.10g/m2の範囲内にあることが好ましい。スチレン・マレイン酸共重合体樹脂又はオレフィン・マレイン酸共重合体樹脂の塗布量又は含浸量が0.10g/m2を超えると、その効果は飽和することがあり、またそれが0.01g/m2未満であると、その効果が明確に発現しないことがある。
【0021】
本発明のチップ型電子部品収納用台紙において、台紙表面に表面処理剤を塗布又は含浸する手段としては、例えばバーコーター、ブレードコーター、エアーナイフコーター、ロッドコーター、ゲートロールコーターやサイズプレスやキャレンダーコーター等のロールコーター、ビルブレードコーター、ベルバパーコーター等を用いることができる。これらの中でも、サイズプレス及びキャレンダーコーターはニップ圧により表面処理剤を紙基材内に深く浸透させることができるので本発明に好ましく用いられる。
【0022】
本発明のチップ型電子部品収納台紙用紙基材を形成するための原料パルプの種類には、それが表面処理剤の浸透性を向上させ、表面の平滑性を特定範囲内に調整可能なものである限り、格別の制限はない。すなわち紙基材形成用パルプとしては、例えば、化学パルプ(広葉樹、針葉樹)、機械パルプ、古紙パルプ、非木材繊維パルプ及び合成パルプ等を用いることができる。これらのパルプは単一種で用いてもよく、複数種を混合して使用してもよい。
【0023】
本発明では、紙基材中に表面処理剤を、その表面から50μmを超える浸透深さまで浸透させることが重要であり、前記浸透深さが50μmを超えている限り、前述の種々のパルプを使用して形成された紙基材を用いることができる。しかし紙基材の、表層の空隙構造を均一にし、表面処理剤の浸透を迅速かつ均斉にするためには、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)から形成された紙基材を使用することが好ましい。従来の台紙では、針葉樹晒クラフトパルプを30%程度配合した紙基材が用いられているが、針葉樹晒クラフトパルプは繊維幅が広く、表面処理剤のスムースな浸透を妨げるため、本発明では、針葉樹晒クラフトパルプの含有率が20%以下の紙基材を用いることが好ましく、針葉樹晒クラフトパルプを含有していない紙基材を用いることが更に好ましい。
【0024】
台紙用紙基材の表面部における表面処理剤の浸透性を向上させるためには、表層に含まれる広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)は、ルーメン幅(L1)/繊維幅(L2)の比(L1/L2)が0.40以下のパルプ繊維であることが好ましい。前記比L1/L2の値が低い程、パルプ繊維の形態寸法がより均一になり、その結果として、ネットワークを形成しているパルプ繊維間の空隙が均一になり、表面処理剤の浸透性を高めることができる。L1/L2比が0.4よりも大きいパルプ繊維を紙基材中に含有させると、繊維幅の広いパルプ線維は表面処理剤の浸透を妨げることがある。尚、L1/L2比の大きなパルプ繊維は、一般的に繊維間結合が強く、ケバが発生しにくいと考えられるが、これは表面処理剤を使用しない場合の傾向であり、本発明のように表面処理剤を塗布する場合には、表面処理剤によるパルプ繊維の結合力向上効果が著しく高いため、L1/L2が高いパルプ繊維を用いることによる線維間結合力の増強効果及びケバ防止効果は、微弱である。また、L1/L2比が0.40以下の場合は、紙基材の表層の弾性率が高まり、このような紙基材からカバーテープを剥離するときの剥離強度が適度なものとなる。0.40以下のL1/L2値を有するパルプとしては、ユーカリ材及びアカシヤ材のパルプを用いることができ、ユーカリ材はグランディス、サリグナ、グロブラス材などを包含し、アカシア材は、メランシー材を包含する。これらの材種から製造されたパルプは、カヤーニ繊維長分布測定による数平均繊維長0.1mm以下の短繊維分(ファイン分と称される)の含有率が10%以下であるが、このようなファイン分が少ないことも、表面処理剤の浸透促進には有効である。
【0025】
本発明のチップ型電子部品収納台紙を製造するための製造装置及び製造条件には格別の制限はなく、従来既知の製造装置を用い、それに適合した製造条件を選択して本発明の製品を製造することができる。例えば、円網抄紙機又は長網抄紙機を用いて、多層抄き合わせ法によって本発明の台紙用多層構造紙基材を抄紙することができ、その表層には、前述の内添法又はコーターによる外添法によって、所要の添加剤を添加することができる。
【0026】
本発明に用いる多構構造紙基材には、必要に応じて種々の内添剤を添加することができる。例えば、ロジン系サイズ剤、アルキルケテンダイマー、アルケニル無水コハク酸などのような、製紙用天然および合成内添サイズ剤、並びに各種紙力増強剤、濾水歩留り向上剤、ポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン等の耐水化剤、消泡剤、タルク等の填料、及び染料等を使用することができる。
【0027】
また、本発明の台紙において、紙基材の裏面の、ボトムテープとの接着性およびケバ防止効果を向上させるために、紙基材の裏面に、ポリビニルアルコール、デンプン、ポリアクリルアミド、アクリル系樹脂、スチレン・ブタジエン系樹脂、スチレン・イソプレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、エチレン−酢酸ビニル系樹脂、酢酸ビニル−ビニルアルコール系樹脂、ウレタン系樹脂などから選ばれた1種以上を適宜に塗布してもよい。また、上記裏面用塗布剤の塗布手段として、例えばバーコーター、ブレードコーター、エアーナイフコーター、ロッドコーター、ロールコーター(例えばゲートロールコーターサイズプレス、及びキャレンダーコーターなど)ビルブレードコーター、又はベルバパコーターなどを用いることができる。
【0028】
本発明のチップ型電子部品収納台紙の坪量(単位面積当りの質量)は、台紙中に収納されるチップ型電子部品の寸法に応じて決定されるが、一般に200〜1000g/m2程度であることが好ましい。このような範囲内の坪量を有する紙基材の、抄造方法としては、所望の坪量に適応し易い多層抄きを用いることが好ましい。本発明の台紙において水溶性高分子を含有する表面処理剤を浸透させる表層は、50〜150g/m2の範囲内の坪量に形成されることが好ましい。
【実施例】
【0029】
本発明を下記実施例により詳細に説明する。但し本発明の範囲はこれら実施例によって限定されるものではない。なお、配合、濃度等を示す数値は、固型分又は有効成分の質量を基準とする数値である。また、全ての例において、抄造された紙は、JIS P8111に記載に従って前処理を施した後、下記事項の測定に供した。これらの事項の測定条件は下記の通りである。
【0030】
<表面処理剤の浸透深さの測定方法(1)>
蛍光染料(日本化薬(株)製Kayahor PBS Liquid)を表面処理剤カラーに対して2%配合した表面処理剤を所定の方法で台紙に塗布し、台紙断面中の表面処理剤を蛍光発色させて、その浸透深さを顕微鏡により測定した。
<表面処理剤の浸透深さの測定方法(2)>
ウルトラミクロトームで試料の垂直断面を作製し、得られた断面を顕微ATRイメージング測定に供した。顕微ATRイメージング装置として、Spotlight300(パーキンエルマー社製)を使用し、Ge結晶使用、分解能8cm-1、ピクセルサイズ1.56μm角、積算回数2回、測定波長領域4000〜680cm-1、測定面積200×150μm(128×96ピクセル)の条件下において表面処理剤の浸透深さを測定した。
<表面処理剤の浸透深さの測定方法(3)>
垂直スライサーにて試料の垂直断面を作製し、この断面上にヨウ素・ホウ酸アセトン溶液(ヨウ素0.1%、ホウ酸 飽和)10μlを滴下して呈色させ、たらして呈色の状態観察を行い、ポリビニルアルコールの浸透深さを測定した。
<表面処理剤の浸透深さの測定方法(4)>
垂直スライサーにて試料の垂直断面を作製し、1%ヨウ素溶液をビーカーに入れ、ビーカーの開口面に、断面を下向きにして載置し、100℃で加熱を行った。このときの断面の呈色の状態観察を行い、澱粉の浸透深さを測定した。
【0031】
<平滑度の測定方法>
二次元表面粗さ計:サーフコーダSE−3C(小坂研究所製)を用いて、供試紙基材又は台紙の、凹部開口側表面(カバーテープと接する表面)の中心線平均表面粗さ(Ra)を測定した。
【0032】
<粘度の測定方法>
表面処理剤の粘度はB型粘度計を用いて測定した。B型粘度計は、液体中で円筒または円盤を回転させたとき、円筒・円盤に働く液体の粘性抵抗トルクを測ることにより、液体の粘度を表現することができる。
【0033】
<剥離強度の測定方法>
チップ型電子部品を収納する台紙を、8mm幅のテープ状にカットし、電子情報技術産業協会規格JEITA ET−7103に従って、プレス成型によりコンデンサチップサイズ0603に対応するポケット凹部を形成した。カバーテープとして日東電工(株)製カバーテープ(No.318H−14A(商標)、ポリエチレンテレフタレート(PET)とエチレン・ビニル酢酸エステル共重合体(EVA)との共押出しラミネートフィルム:幅5.25mm、厚さ53μm、)を用い、日東工業(株)製ヒートシール材:商標NST−35、を使用にて、ヒートシール温度155℃、試料にかかるヒートシール圧力1.5MPa、3800タクトの条件で、カバーテープで覆われた側縁から内側に0.5mmの位置から、幅0.4mmで間隔3.0mmのレール状に、前記カバーテープを台紙表面にヒートシールした。それから約1時間後に、台紙表面とカバーテープとの剥離強度を、JIS C 0806−3に方法、(剥離速度:300mm/min、測定時間:12秒間、供試試料数n:10個)で測定し、測定値の平均値を求めた。
【0034】
<ケバ発生防止性>
隔離強度を測定した後のヒートシール部におけるケバ発生状態を目視で確認する。
4:観察面上にまったくケバ立ちが認められない。
3:観察面上に1〜3本ケバ立ちが認められる。
2:観察面上に4〜8本ケバ立ちが認められる。
1:観察面上に全面にわたってケバ立ちが認められる。
【0035】
実施例1及び2
実施例1及び2の各々において、紙基材の表層、中層、裏層を互に異るパルプにより形成した。すなわち、表層用にはLBKP100%を叩解し、カナディアンスタンダードフリーネス400mlのパルプを調製した。このとき、L1/L2比=0.34であった。中層用にはNBKP20%、LBKP80%の配合で混合叩解を行い、カナディアンスタンダードフリーネス350mlのパルプを調製した。それぞれのパルプスラリーに硫酸バンドを添加して、pH6.0を調整し、さらに内添紙力増強剤としてポリアクリルアミド(荒川化学製ポリストロン−1250)を0.3%添加した。上記のパルプスラリーの各々を短網抄紙機に供し、坪重を表層:100g/m2、中層200g/m2、及び裏層:50g/m2に調製して、抄き合せ法により抄紙し、得られた3層原紙に抄紙機に取りつけられたカレンダーで平滑化処理を施した後、ポリアクリルアミド(荒川化学製ポリマセット−512(商標)、分子量20万)からなる表面処理剤を含む塗工液を、実施例1においては温度:60℃、表面処理剤濃度:3.6%、粘度:6mPa・sに調製し、実施例2においては表面処理剤濃度:5.0%、粘度:8mPa・s(実施例2)に調製してこの塗工液を原紙に塗布し、塗工量が実施例1においては0.72g/m2、(実施例2においては、1.00g/m2、実施例1及び2のいずれにおいても坪量350g/m2、厚さ0.42mmのチップ型電子部品収納台紙用紙基体を製造した。このときに表面処理剤の浸透深さ(浸透深さの測定方法(2))は、実施例1においては63μmであり、実施例2においては、52μmであった。上記と同様の表面処理剤塗布液に、蛍光染料(日本化薬(株)製、Kayahor PBS Liquid(商標))を2%配合し、蛍光発色による浸透深さを測定した結果、浸透深さの測定値は、実施例1においては65μmであり、実施例2においては55μmであった。また、得られた紙基材の表面の中心線平均粗さ(Ra)は、実施例1においては3.35μmであり実施例2においては3.22μmであった。
実施例1及び2のそれぞれにおいて、得られた紙基材を、幅8mmのテープ状に裁断し、これをJIS C 0806−3による下記のチップ型電子部品収納凹部及び台紙送り丸穴(透孔)を同時に形成する工程に供して、チップ型電子部品収納台紙を製造した。
(1)収納凹部形成
凹部形成:エンボス機(日本オートマチックマシン社製、モデル:AC505S型)
及び金型(日本オートマチックマシン社製、モデル0603)を使用した。
凹部形状寸法:CD方向:0.66mm、
MD方向:0.36mm
深さ :0.35mm
の有底・角形、プレスポケット
(2)台紙移行用円形透孔:直径1.55mmの透孔
【0036】
実施例3
実施例1〜2と同様にして、坪量350g/m2、厚さ0.42mmのチップ型電子部品収納台紙を製造した。但し、表面処理剤塗工液は、ポリアクリルアミド(荒川化学製、ポリマセット−512(商標)、分子量20万)と、スチレン・マレイン酸共重合体樹脂(荒川化学製、ポリマロン−382(商標))を、固形分質量比率:100:4で混合し、表面処理剤塗工液を、温度:60℃、表面処理剤、濃度:4.8%、粘度:7mPa・sにおいて調整し、これを原紙に塗布した。このとき塗工量はポリアクリルアミド固形分:0.92g/m2、スチレン・マレイン酸共重合体樹脂固形分:0.04g/m2であった。このときの表面処理剤の浸透深さ(浸透深さの測定方法(2))は、77μmであった。上記と同様の表面処理剤塗工液に、蛍光染料(日本化薬(株)製Kayahor PBS Liquid(商標)):2%を配合し、蛍光発色による浸透深さを測定したところ、浸透深さの測定値は80μmであった。また、得られた紙基体の表面の中心線平均粗さ(Ra)は3.41μmであった。
【0037】
実施例4
実施例3と同様にしてチップ型電子部品収納台紙を製造した。但し、表面処理剤塗工液成分として、スチレン・マレイン酸共重合体樹脂の替わりにオレフィン・マレイン酸共重合体樹脂(荒川化学製、ポリマロン−482(商標))を使用し、表面処理剤塗工液:60℃、表面処理剤濃度:4.6%、粘度:7mPa・sの塗工液を使用した。このとき塗工量は、ポリアクリルアミドについては0.89g/m2であり、スチレン・マレイン酸樹脂については、0.04g/m2であった。このときの表面処理剤の浸透深さ(浸透深さの測定方法(2))は、72μmであった。上記と同様の表面処理剤塗工液に、蛍光染料(日本化薬(株)製、Kayahor PBS Liquid(商標)):2%を配合し、蛍光発色による浸透深さを測定したところ、浸透深さの測定値は75μmであった。また、得られた紙基材の中心線平均粗さ(Ra)は3.40μmであった。
【0038】
実施例5
実施例3と同様にしてチップ型電子部品収納台紙を製造した。但し、表面処理剤塗工液に、ポリビニルアルコール(クラレ製PVA117(商標))とスチレン・マレイン酸共重合体樹脂(荒川化学製、ポリマロン−382(商標))を、固形分質量比率:100:4の割合で混合したものを用い、表面処理剤塗工液温度:60℃、表面処理剤濃度:4.5%、粘度:7mPa・sの塗工液を調製し、これを前記厚紙に塗布した。このとき塗工量は、ポリビニルアルコールについて0.86g/m2でありスチレン・マレイン酸共重合体樹脂については0.04g/m2であった。このときの表面処理剤の浸透深さ(浸透深さの測定方法(2))は、73μmであった。上記と同様の表面処理剤塗布液に、蛍光染料(日本化薬(株)製、Kayahor PBS Liquid(商標)):2%を配合し、蛍光発色による浸透深さを測定したところ、浸透深さの測定値は75μmであった。また、得られた紙基材の表面の中心線平均粗さ(Ra)は3.16μmであった。
【0039】
実施例6
実施例1と同様にして、坪量350g/m2、厚さ0.42mmのチップ型電子部品収納台紙を製造した。但し、塗工液用表面処理剤としてポリビニルアルコール(クラレ製PVA117(商標))を用い、温度:60℃、ポリビニルアルコール濃度:3.7%、粘度:7mPa・sの塗工液を調製し、これを原紙に塗布した。このとき塗工量はポリビニルアルコールについて0.75g/m2であった。測定方法(3)により、表面処理剤の浸透深さを、測定した結果、浸透深さは55μmであった。また、得られた紙基材の表面の中心線平均粗さ(Ra)は3.30μmであった。
【0040】
実施例7
実施例1と同様にして、坪量350g/m2、厚さ0.42mmのチップ型電子部品収納台紙を製造した。但し、表面処理剤としては、澱粉(王子コーンスターチ製王子エースK(商標))を用い、カラー温度:60℃、澱粉濃度:4.2%、粘度:7mPa・sの塗工液を調製し、これを原紙に塗布した。このとき塗工量は、澱粉について、0.70g/m2であった。測定方法(4)により、浸透深さを測定した結果、53μmであった。また、得られた紙基材の表面の中心線平均粗さ(Ra)は3.25μmであった。
【0041】
比較例1
実施例2と同様にしてチップ型電子部品収納台紙を製造した。但し、実施例2において用いられたLBKPとは異なるLBKP100%を叩解し、カナディアンスタンダードフリーネス:400mlの表層用パルプを調製した。このときL1/L2比=0.45であった。表面処理剤の塗工量は0.95g/m2であった。このときの表面処理剤の浸透深さ(浸透深さの測定方法(2))は、38μmであった。上記と同様の表面処理剤塗工液に、蛍光染料(日本化薬(株)製Kayahor PBS Liquid(商標)):2%を配合し、蛍光発色による浸透深さを測定したところ、浸透深さの測定値は40μmであった。また、得られた紙基材の表面の中心線平均粗さ(Ra)は2.93μmであった。
【0042】
比較例2
実施例1と同様にして、チップ型電子部品収納台紙を製造した。但し、表面処理剤として、ポリアクリルアミド(荒川化学製、ポリマセット−512(商標)分子量20万)を用い、温度:20℃、ポリアクリルアミド濃度:3.6%、粘度:11mPa・sの塗工液を調製し、これを原紙に塗工した。乾燥塗工量は、0.60g/m2であった。このときの表面処理剤の浸透深さ(浸透深さの測定方法(2))は、37μmであった。上記と同様の表面処理剤塗工液に、蛍光染料(日本化薬(株)製、Kayahor PBS Liquid(商標)):2%を配合し、蛍光発色による浸透深さを測定したところ、浸透深さの測定値は40μmであった。また、得られた紙基材の中心線平均粗さ(Ra)は2.80μmであった。
【0043】
比較例3
実施例3と同様にしてチップ型電子部品収納用台紙を製造した。但し表層用パルプの調製において、実施例3とは異なるLBKP100%を叩解し、カナディアンスタンダードフリーネスを400mlに調整した。このときL1/L2比=0.45であった。また、表面処理剤としてポリアクリルアミド(荒川化学製、ポリマセット−512(商標)、分子量20万)と、スチレン・マレイン酸共重合体樹脂(荒川化学製、ポリマロン−382(商標))を、固形分比率で100:4の割合で混合して用い、塗工液温度:60℃、表面処理剤濃度:4.8%、粘度:7mPa・sの塗工液を調製し、これを原紙に塗布した。このときの乾燥塗工量は、ポリアクリルアミドについて0.90g/m2であり、スチレン・マレイン酸共重合体樹脂について0.04g/m2あった。本表面処理剤の浸透深さ(浸透深さの測定方法(2))は、45μmであった。上記と同様の表面処理剤塗工液に、蛍光染料(日本化薬(株)製、Kayahor PBS Liquid(商標)):2%を配合し、蛍光発色による浸透深さを測定したところ、浸透深さの測定値は48μmであった。また、得られた紙基材の表面の中心線平均粗さ(Ra)は2.89μmであった。
【0044】
比較例4
実施例3と同様にしてチップ型電子部品収納台紙を製造した。但し、表面処理剤として、ポリアクリルアミド(荒川化学製、ポリマセット−512(商標)、分子量20万)とスチレン・マレイン酸共重合体樹脂(荒川化学製、ポリマロン−382(商標))を、固形分比率で100:4の割合で混合したものを用い、表面処理剤濃度:6.0%、粘度:11mPa・sの塗工液を調製し、これを原紙に塗布した。このとき乾燥塗工量はポリアクリルアミドについて1.11g/m2であり、スチレン・マレイン酸共重合体樹脂について0.04g/m2あった。このときの表面処理剤の浸透深さ(浸透深さの測定方法(2))は、38μmであった。上記と同様の表面処理剤塗工液に、蛍光染料(日本化薬(株)製、Kayahor PBS Liquid(商標)):2%を配合し、蛍光発色による浸透深さを測定したところ、浸透深さの測定値は40μmであった。また、得られた紙基材の中心線平均粗さ(Ra)は2.78μmであった。
【0045】
比較例5
紙基材の表層、中層、裏層、を互に異るパルプにより形成した。すなわち、表層用には、NBKP30%、LBKP70%を混合叩解し、カナディアンスタンダードフリーネス:400mlのパルプを用いた。このときLBKPのL1/L2比=0.34であった。中層用には、NBKP20%、LBKP20%、上質古紙20%、新聞古紙40%の配合で、カナディアンスタンダードフリーネス:350mlのパルプを調製した。裏層用には、NBKP25%、LBKP25%、新聞古紙50%の配合で、カナディアンスタンダードフリーネス:350mlのパルプを調製した。各層用パルプスラリーに、硫酸バンドを添加してそのpHを6.0に調整し、内添紙力増強剤としてポリアクリルアミド(荒川化学製ポリストロン−1250):0.3%を添加した。得られたパルプスラリーの各々を短網抄紙機に供し、表層100g/m2、中層200g/m2、裏層500g/m2を抄き合わせて各層原紙を形成し、これに、抄紙機に設置されたカレンダーによる平滑化処理を施した後、表面処理剤としてポリアクリルアミド(荒川化学製PS117、分子量40万)とスチレン・マレイン酸共重合体樹脂(荒川化学製、ポリマロン−382(商標))を100:2の割合で混合したものを用い、塗布液温度:20℃、表面処理剤濃度:4.8%、粘度:11mPa・sの塗工液を調製しこれを原紙に塗布した。このとき塗工量はポリアクリルアミドについて0.88g/m2でありスチレン・マレイン酸樹脂について0.02g/m2であった。このときの表面処理剤の浸透深さ(浸透深さの測定方法(2))は、42μmであった。上記と同様の表明処理剤塗工液に、蛍光染料(日本化薬(株)製、Kayahor PBS Liquid(商標)):2%を配合し、蛍光発色による浸透深さを測定したところ、浸透深さは45μmであった。また、得られた紙基材の表面の平均腺中心粗さ(Ra)は2.97μmであった。
【0046】
前記実施例および比較例の表層L1/L2比、表面処理剤の濃度、粘度、浸透深さ、紙基材の中心線平均粗さ(Ra)、平滑度、剥離強度及びケバ発生状態の測定結果を表1に示す。
【0047】
【表1】

【0048】
表1から明らかなように本発明に係わる実施例1〜7のチップ型電子部品収納台紙は、剥離強度が強いにも係わらず、ケバが発生しないという特徴を有していることが確認された。本発明のチップ型電子部品収納台紙は、それから、電子部品収納凹部の開口部を閉塞するためのカバーテープが剥離されたときに、ケバの発生がなく又は少なく、従って前記凹部に収納されたチップ型電子部品をケバによって汚染することがなく、またマウンターによるチップ取り出しの際に、吸引ノズルをケバにより詰まらせるトラブルが発生することもないという効果を有している。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明のチップ型電子部品収納台紙は、それから発生するケバによって電子部品を汚染することがなく、マウンターの吸引ノズルを詰まらせることもないので、高い実用上の効果を有している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表層、中層及び裏層を含む多層板紙構造を有する紙基材と、前記紙基材の前記表層表面において開口している複数の、チップ型電子部品収納用凹部とを有し、
前記紙基材の表層が、80〜100質量%の、ユーカリ又はアカシヤ材から製造された広葉樹晒クラフトパルプと、0〜20質量%の針葉樹晒クラフトパルプにより形成されており、
前記紙基材の前記表層表面に、ポリビニルアルコール、澱粉及びポリアクリルアミドから選ばれた少なくとも1種からなる水性高分子を含む表面処理剤が0.1〜1.1g/m2の乾燥塗工量で塗工されており、
前記塗工された表面処理剤は、前記紙基材の前記表層表面から、50μmを超えて100μm以下の深さまで、前記紙基材中に浸透しており、
前記表面処理剤により塗工された前記紙基材の前記表層表面の中心線平均粗さ(Ra)が3〜6μmに調整されている
ことを特徴とするチップ型電子部品収納台紙。
【請求項2】
前記表面処理剤は粘度を4〜10mPa・sに調整されている、請求項1に記載のチップ型電子部品収納台紙。
【請求項3】
前記表面処理剤が前記水溶性高分子とともに、スチレン・マレイン酸共重合体樹脂又はオレフィン・マレイン酸共重合体樹脂を含有する請求項1記載のチップ型電子部品収納台紙。
【請求項4】
前記紙基材の表層を形成するパルプ繊維が広葉樹クラフトパルプであって、そのルーメン幅(L1)/繊維幅(L2)の比が0.4以下である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のチップ型電子部品収納台紙。

【公開番号】特開2011−213419(P2011−213419A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−156871(P2011−156871)
【出願日】平成23年7月15日(2011.7.15)
【分割の表示】特願2008−10594(P2008−10594)の分割
【原出願日】平成20年1月21日(2008.1.21)
【出願人】(000122298)王子製紙株式会社 (2,055)
【Fターム(参考)】