説明

チップ搭載基板用樹脂シート、チップ搭載基板用シート、及びチップ搭載基板

【課題】ディスプレイ用、特に平面ディスプレイ用の各画素を制御するために半導体チップが埋め込まれたチップ搭載基板を、アウトガスの発生量が少ない上、品質よく、高い生産性のもとで効率的に作製するための透明性が高く、耐熱性に優れるチップ搭載基板用樹脂シートを提供する。
【解決手段】半導体チップを埋め込むための活性光線硬化型高分子材料から得られたチップ搭載基板用樹脂シートであって、硬化前の前記樹脂シート中に、分子量が300以上であり、温度23℃から、10℃/分の昇温速度で180℃まで昇温した際の質量減少率が5%以下である光重合開始剤0.05〜1.5質量%を含み、硬化後の前記樹脂シートの波長400nmの透過率が80%以上であり、かつ硬化後の前記樹脂シートの180℃における貯蔵弾性率E'が2.5×107Pa以上であることを特徴とするチップ搭載基板用樹脂シートである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チップ搭載基板用樹脂シート、チップ搭載基板用シート及びチップ搭載基板に関する。さらに詳しくは、本発明は、光学用途、例えばディスプレイ用、特に平面ディスプレイ用の各画素を制御するために半導体チップが埋め込まれたチップ搭載基板を、発生するガスの量が少ない上、品質よく、高い生産性のもとで効率的に作製するための透明性が高く、耐熱性に優れるチップ搭載基板用樹脂シート、チップ搭載基板用シート及びそれを用いて得られた、半導体チップが埋め込まれてなるチップ搭載基板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、液晶ディスプレイで代表される平面ディスプレイにおいては、例えばガラス基板上にCVD法(化学的気相蒸着法)などにより絶縁膜、半導体膜などを順次積層し、半導体集積回路を作製するのと同じ工程を経て、画面を構成する各画素近傍に薄膜トランジスタ(TFT)などの微小電子デバイスを形成し、これにより各画素のオン、オフ、濃淡の制御が行われている。すなわち、ガラス基板上にて、TFTなどの微小電子デバイスをその場で作製しているのである。しかしながら、このような技術においては、工程が多段階で煩雑であってコスト高になるのを免れず、また、ディスプレイ面積が拡大すると、ガラス基板上に膜を形成するためのCVD装置なども大型化し、コストが飛躍的に上昇するなどの問題がある。
そこで、コスト削減を目的として、微小な結晶シリコン集積回路チップを印刷インクのように印刷原板に付着させ、それを印刷技術などの手段により、ディスプレイ用のガラス基板上の所定箇所に移し、固定させる技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。この場合、ガラス基板上に、予め高分子フィルムを形成しておき、これに微小な結晶シリコン集積回路チップを印刷技術などの手段で移し、熱成形や加熱プレスなどの方法により、該チップを高分子フィルムに埋め込むことが行われる。しかしながら、このような方法では、高分子フィルムの歪みや発泡などの不具合が発生しやすい上、加熱に時間がかかるため効率的ではない。
【0003】
また、前記高分子フィルムの代わりにエネルギー線硬化型高分子材料からなる回路基板用樹脂シートを用いて、回路チップ埋め込み時及び埋め込み後のそれぞれの貯蔵弾性率を所定範囲にコントロールすることにより、回路チップ埋め込みが可能な回路基板用シートが開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2003−248436号公報
【特許文献2】特開2006−323335号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記特許文献2における回路基板用樹脂シートにおいては、加熱下に回路チップを埋め込んだり、あるいは回路チップ埋め込み後、紫外線ランプの熱の影響によって該回路チップ周辺がアウトガスにより曇るという問題があった。アウトガスを低減させるために光重合開始剤の添加量を減量すると、回路基板用樹脂シートの硬化が不充分となり耐熱性が悪くなるという問題があった。さらに光重合開始剤の種類によっては硬化後の回路基板用樹脂シートが着色してしまうという問題があった。
本発明は、このような状況下になされたもので、ディスプレイ用、特に平面ディスプレイ用の各画素を制御するために半導体チップが埋め込まれたチップ搭載基板を、アウトガスの発生量が少ない上、品質よく、高い生産性のもとで効率的に作製するための透明性が高く、耐熱性に優れるチップ搭載基板用樹脂シート、チップ搭載基板用シート及びそれを用いて得られた、半導体チップが埋め込まれてなるチップ搭載基板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、チップ搭載基板用樹脂シートとして、活性光線硬化型高分子材料から得られたものを用い、かつその硬化前シート中に特定の性状を有する光重合開始剤を所定の割合で含むと共に、硬化後の樹脂シートの波長400nmの透過率及び180℃における貯蔵弾性率E'が、それぞれある値以上であるものが、品質のよいチップ搭載基板を、アウトガスの発生量が少ない上、生産性よく提供することができ、その目的を達成し得ることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
[1]半導体チップを埋め込むための活性光線硬化型高分子材料から得られたチップ搭載基板用樹脂シートであって、硬化前の前記樹脂シート中に、分子量が300以上であり、温度23℃から、10℃/分の昇温速度で180℃まで昇温した際の質量減少率が5%以下である光重合開始剤0.05〜1.5質量%を含み、硬化後の前記樹脂シートの波長400nmの透過率が80%以上であり、かつ硬化後の前記樹脂シートの180℃における貯蔵弾性率E'が2.5×107Pa以上であることを特徴とするチップ搭載基板用樹脂シート、
[2]180℃の温度で30分間加熱した際の発生ガス量が、n−デカン換算量で12μg/cm2以下である上記[1]項に記載のチップ搭載基板用樹脂シート、
[3]上記[1]又は[2]項に記載のチップ搭載基板用樹脂シートが支持体上に形成されていることを特徴とするチップ搭載基板用シート、
[4]上記[3]項に記載のチップ搭載基板用シートのチップ搭載基板用樹脂シート面に、半導体チップを埋め込み、これに活性光線を照射して硬化させたことを特徴とするチップ搭載基板、
[5]半導体チップが埋め込まれた側の表面に、回路が形成されてなる上記[4]項に記載のチップ搭載基板、及び
[6]ディスプレイ用画素制御基板として用いられる上記[5]項に記載のチップ搭載基板、
を提供するものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、ディスプレイ用、特に平面ディスプレイ用の各画素を制御するために半導体チップが埋め込まれたチップ搭載基板をアウトガスの発生量が少ない上、品質よく、高い生産性のもとで効率的に作製するための透明性が高く、耐熱性に優れるチップ搭載基板用樹脂シート、チップ搭載基板用シート及びそれを用いて得られた、半導体チップが埋め込まれてなるチップ搭載基板を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
まず、本発明のチップ搭載基板用樹脂シートについて説明する。
[チップ搭載基板用樹脂シート]
本発明のチップ搭載基板用樹脂シート(以下、単に樹脂シートと称することがある。)は、半導体チップを埋め込むための活性光線硬化型高分子材料から得られた樹脂シートであって、硬化前の前記樹脂シートの中に、以下に示す特定の性状を有する光重合開始剤を0.05から1.5質量%の割合で含むと共に、硬化後の前記樹脂シートが、以下に示す特定の性状を有することを特徴とする。
【0008】
(チップ搭載基板用樹脂シートの性状)
本発明のチップ搭載基板用樹脂シートにおいては、硬化前の前記樹脂シート中に、分子量が300以上であり、温度23℃から、10℃/分の昇温速度で180℃まで昇温した際の質量減少率が5%以下である光重合開始剤0.05〜1.5質量%を含有する。
当該樹脂シートの形成に用いられる活性光線硬化型高分子材料は、紫外線などの活性光線により硬化する材料であって、光重合開始剤を必須成分として含有する。この光重合開始剤の分子量が300未満であったり、温度23℃から、10℃/分の昇温速度で180℃まで昇温した際の質量減少率が5%を超えたり、あるいは前記活性光線硬化型高分子材料の固形分中(硬化前の樹脂シート中)の該光重合開始剤の含有量が1.5質量%を超えたりすると、加熱下で半導体チップを埋め込む際や紫外線照射の際にアウトガスの発生量が多く、作業環境の悪化をもたらし、また埋め込まれた半導体チップの周辺が曇ったりする。さらには、配線形成時のスパッタリングや配向膜形成時などの高温下の工程において、アウトガスが発生し、作業環境が悪化するなどの問題が生じる。
【0009】
また、当該光重合開始剤の含有量が0.05質量%未満では、活性光線による硬化後のチップ搭載基板用樹脂シートの耐熱性が不充分となり、チップ搭載基板に形成される配線にクラックが生じるおそれがある。
したがって、本発明においては、当該光重合開始剤の含有量は、0.07〜1.4質量%が好ましく、0.1〜1.3質量%がより好ましい。当該光重合開始剤の分子量は330以上が好ましい。分子量の上限については特に制限はないが、通常2000程度である。また、当該光重合開始剤の前記質量減少率は2%以下であることが好ましく、1.5%以下であることがより好ましい。
当該光重合開始剤の性状が前記の範囲にあり、かつその含有量が前記範囲にあれば、本発明のチップ搭載基板用樹脂シートを、180℃の温度で30分間加熱した際の発生ガス量が、n−デカン換算量で12μg/cm2以下とすることができ、好ましくは10μg/cm2以下とすることができる。発生ガス量の測定方法については後で説明する。
なお、前記性状を有する光重合開始剤については、後述の光重合開始剤の説明において例示する。
【0010】
また、本発明のチップ搭載基板用樹脂シートにおいては、硬化後の前記樹脂シートの波長400nmの透過率が80%以上であり、かつ硬化後の前記樹脂シートの180℃における貯蔵弾性率E'が2.5×107Pa以上である。
前記の透過率が80%未満であると最終的に得られるチップ搭載基板は、ディスプレイなどの光学用としての機能を充分に発揮することができない。この透過率は、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上である。
また、前記貯蔵弾性率E'が2.5×107Pa未満では、スパッタリング等による配線形成時の高温下(150〜180℃程度)においてチップ搭載基板が変形しやすく、配線にクラックが発生してしまう。この貯蔵弾性率E'は、好ましくは4.0×107Pa以上である。その上限については特に制限はないが、通常5.0×108Pa程度である。
なお、上記の透過率及び貯蔵弾性率E'の測定方法については後で説明する。
【0011】
(活性光線硬化型高分子材料)
本発明で用いる前記活性光線硬化型高分子材料としては、光重合開始剤を含むと共に、例えば(メタ)アクリル酸エステル系共重合体と活性光線硬化型重合性オリゴマー及び/又は重合性モノマーを含む高分子材料を挙げることができる。
<(メタ)アクリル酸エステル系共重合体>
前記高分子材料において、(メタ)アクリル酸エステル系共重合体としては、エステル部分のアルキル基の炭素数が1〜20の(メタ)アクリル酸エステルと、所望により用いられる活性水素をもつ官能基を有する単量体及び他の単量体との共重合体、すなわち(メタ)アクリル酸エステル系共重合体を好ましく挙げることができる。本発明において、「(メタ)アクリル酸・・・」とは「アクリル酸・・・」及び「メタクリル酸・・・」の両方を意味する。
【0012】
ここで、エステル部分のアルキル基の炭素数が1〜20の(メタ)アクリル酸エステルの例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸ミリスチル、(メタ)アクリル酸パルミチル、(メタ)アクリル酸ステアリルなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
一方、所望により用いられる活性水素をもつ官能基を有する単量体としては、例えば(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチルなどの(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルなどの水酸基含有単量体;(メタ)アクリル酸モノメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸モノエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸モノメチルアミノプロピル、(メタ)アクリル酸モノエチルアミノプロピルなどの(メタ)アクリル酸モノアルキルアミノアルキル;アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸などのエチレン性不飽和カルボン酸などを適宜用いることができる。
【0013】
また、所望により用いられる他の単量体の例としては酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのビニルエステル類;エチレン、プロピレン、イソブチレンなどのオレフィン類;塩化ビニル、ビニリデンクロリドなどのハロゲン化オレフィン類;スチレン、α−メチルスチレンなどのスチレン系単量体;ブタジエン、イソプレン、クロロプレンなどのジエン系単量体;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのニトリル系単量体;アクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミドなどのアクリルアミド類などが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。(メタ)アクリル酸エステル系共重合体中、これらの単量体単位は、0〜30質量%含有することができる。
該高分子材料において、アクリル系重合体として用いられる(メタ)アクリル酸エステル系共重合体は、その共重合形態については特に制限はなく、ランダム、ブロック、グラフト共重合体のいずれであってもよい。また、分子量は、重量平均分子量で5万以上が好ましい。
なお、上記重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定した標準ポリスチレン換算の値である。
本発明においては、この(メタ)アクリル酸エステル系共重合体は1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0014】
<活性光線硬化型重合性オリゴマー>
活性光線硬化型重合性オリゴマーとしては、例えばポリエステルアクリレート系、エポキシアクリレート系、ウレタンアクリレート系、ポリエーテルアクリレート系、ポリブタジエンアクリレート系、シリコーンアクリレート系などが挙げられる。ここで、ポリエステルアクリレート系オリゴマーとしては、例えば多価カルボン酸と多価アルコールの縮合によって得られる両末端に水酸基を有するポリエステルオリゴマーの水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより、あるいは、多価カルボン酸にアルキレンオキシドを付加して得られるオリゴマーの末端の水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。エポキシアクリレート系オリゴマーは、例えば、比較的低分子量のビスフェノール型エポキシ樹脂やノボラック型エポキシ樹脂のオキシラン環に、(メタ)アクリル酸を反応しエステル化することにより得ることができる。また、このエポキシアクリレート系オリゴマーを部分的に二塩基性カルボン酸無水物で変性したカルボキシル変性型のエポキシアクリレートオリゴマーも用いることができる。ウレタンアクリレート系オリゴマーは、例えば、ポリエーテルポリオールやポリエステルポリオールとポリイソシアナートの反応によって得られるポリウレタンオリゴマーを、(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができ、ポリオールアクリレート系オリゴマーは、ポリエーテルポリオールの水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。
上記重合性オリゴマーの重量平均分子量は、GPC法で測定した標準ポリスチレン換算の値で、好ましくは500〜100,000、より好ましくは1,000〜70,000さらに好ましくは3,000〜40,000の範囲で選定される。
この重合性オリゴマーは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0015】
<活性光線硬化型重合性モノマー>
一方、活性光線硬化型重合性モノマーとしては、例えば(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸イソボルニルなどの単官能性アクリル酸エステル類、ジ(メタ)アクリル酸1,4−ブタンジオールエステル、ジ(メタ)アクリル酸1,6−ヘキサンジオールエステル、ジ(メタ)アクリル酸ネオペンチルグリコールエステル、ジ(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコールエステル、ジ(メタ)アクリル酸ネオペンチルグリコールアジペートエステル、ジ(メタ)アクリル酸ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールエステル、ジ(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、ジ(メタ)アクリル酸カプロラクトン変性ジシクロペンテニル、ジ(メタ)アクリル酸エチレンオキシド変性リン酸エステル、ジ(メタ)アクリル酸アリル化シクロヘキシル、ジ(メタ)アクリル酸イソシアヌレート、ジ(メタ)アクリル酸ジメチロールトリシクロデカンエステル、トリ(メタ)アクリル酸トリメチロールプロパンエステル、トリ(メタ)アクリル酸ジペンタエリスリトールエステル、トリ(メタ)アクリル酸プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールエステル、トリ(メタ)アクリル酸ペンタエリスリトールエステル、トリ(メタ)アクリル酸プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパンエステル、イソシアヌル酸トリス(アクリロキシエチル)、ペンタ(メタ)アクリル酸プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールエステル、ヘキサ(メタ)アクリル酸ジペンタエリスリトールエステル、ヘプタ(メタ)アクリル酸トリエリスリトールエステル、ヘキサ(メタ)アクリル酸カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールエステル、カプロラクトン変性トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレートなどの多官能性アクリル酸エステル類が挙げられる。これらの重合性モノマーは1種用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0016】
<光重合開始剤>
本発明で用いる活性光線硬化型高分子材料においては、光重合開始剤として、前述のように、当該高分子材料の固形分中(硬化前の樹脂シート中)に、分子量が300以上であり、温度23℃から、10℃/分の昇温速度で180℃まで昇温した際の質量減少率が5%以下であるものが、0.05〜1.5質量%の割合で含有される。
前記の性状を有する光重合開始剤としては、従来公知の光重合開始剤、例えばベンゾインアルキルエーテル系、ベンゾフェノン系、アセトフェノン系、プロピオフェノン系、ベンジルケタール系、ヒドロキシフェニルケトン系、アントラキノン系、チオキサントン系、アシルホスフィンオキシド系などの中から、適宜選択して用いることができる。
具体的には、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド(分子量348.0)、2−ヒドロキシ−1−[4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]−フェニル]−2−メチル−プロパン−1−オン(分子量340.4)などを挙げることができる。
【0017】
<任意成分>
本発明においては、得られるチップ搭載基板用樹脂シートの活性光線による硬化時の体積収縮を抑え、かつ耐熱性を向上させるなどの目的で、当該活性光線硬化型材料に無機微粒子を含有させることができる。
前記無機微粒子としては、例えば珪素、チタン、ジルコニウム、スズ、アルミニウム、鉄などの各種金属元素の酸化物や炭化物などを用いることができるが、これらの中で、体積収縮の抑制効果、透光性、経済性などのバランスの観点から、シリカ系微粒子が好ましい。
本発明においては、この無機微粒子は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、その平均粒子径は、透明性、均一分散性、体積収縮の抑制効果などの観点から、3〜50nmの範囲が好ましく、5〜30nmの範囲がより好ましい。なお、本発明における平均粒子径はBET法による算出値に基づくものである。
シリカ系微粒子を用いる場合、シリカ系微粒子がアルコール系やセロソルブ系などの有機溶媒中に分散しているオルガノシリカゾルが好適である。
本発明においては、当該無機微粒子は、二次凝集を抑制し、活性光線硬化型高分子材料中に均質に分散させるために、表面修飾処理が行われた無機微粒子を用いることが好ましい。表面修飾処理方法としては特に制限はなく、従来公知の方法、例えば有機シラン化合物を用いる方法や界面活性剤を用いる方法などを挙げることができ、無機微粒子の種類と活性光線硬化型高分子材料の種類に応じて、適宜選択することが好ましい。例えば、無機微粒子としてシリカ系微粒子を用いる場合には、有機シラン化合物を用いて表面修飾処理を行うのが有利であり、シリカ系微粒子以外の無機微粒子の場合には、界面活性剤を用いて表面修飾を行うのが有利である。
【0018】
前記活性光線硬化型高分子材料においては、本発明の効果が損なわれない範囲で、所望により、架橋剤、粘着付与剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、軟化剤などを添加することができる。
前記架橋剤としては、例えばポリイソシアナート化合物、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、ジアルデヒド類、メチロールポリマー、アジリジン系化合物、金属キレート化合物、金属アルコキシド、金属塩などが挙げられる。この架橋剤は、上述の(メタ)アクリル酸エステル系共重合体の固形分100質量部に対して、0〜30質量部配合することができる。
ここで、ポリイソシアナート化合物の例としては、トリレンジイソシアナート、ジフェニルメタンジイソシアナート、キシリレンジイソシアナートなどの芳香族ポリイソシアナート、ヘキサメチレンジイソシアナートなどの脂肪族ポリイソシアナート、イソホロンジイソシアナート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアナートなどの脂環式ポリイソシアナートなど、及びそれらのビウレット体、イソシアヌレート体、さらにはエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ヒマシ油などの低分子活性水素含有化合物との反応物であるアダクト体などを挙げることができる。これらの架橋剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0019】
(チップ搭載基板用樹脂シートの作製)
以下に、本発明のチップ搭載基板用樹脂シートの作製方法について説明するが、本発明はこれにより特に制限されるものではない。
剥離シートの剥離剤層上に、前記活性光線硬化型高分子材料を含む適当な濃度に調整された塗工液を、公知の方法、例えばナイフコート法、ロールコート法、バーコート法、ブレードコート法、ダイコート法、グラビアコート法などにより、所定の厚さになるように塗布・乾燥することによって1層構造のチップ搭載基板用樹脂シートが形成される。前記剥離シートはチップ搭載基板用樹脂シートの保管や保護のため積層されたままであってもよい。さらに、チップ搭載基板用樹脂シートの他方の面には、前記剥離シートとは剥離力の異なる剥離シートが積層されてもよいし、積層されずに後述するチップ搭載基板用シートの作製にそのまま使用されてもよい。
ここで、チップ搭載基板用樹脂シートの厚さは、その使用条件にもよるが、通常50〜1,000μm程度であり、好ましくは80〜500μmである。なお、チップ搭載基板用樹脂シートの厚さを大きくする場合、前記チップ搭載基板用樹脂シートの製造方法により作製した樹脂層を積層することによりチップ搭載基板用樹脂シートとすることができる。
【0020】
前記剥離シートについては、特に制限はなく、ポリエチレンフィルムやポリプロピレンフィルムなどのポリオレフィンフィルム、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステルフィルムに、シリコーン樹脂などの剥離剤を塗布して剥離剤層を設けたものなどを用いることができる。
この剥離シートの厚さは、通常20〜150μm程度である。
【0021】
次に、本発明のチップ搭載基板用シートについて説明する。
[チップ搭載基板用シート]
本発明のチップ搭載基板用シートは、前述したチップ搭載基板用樹脂シートが支持体上に形成されていることを特徴とする。
前記支持体については特に制限はなく、任意のものを適宜選択して用いることができる。このような支持体としてはガラス基板、あるいは板状又はフィルム状のプラスチック支持体などの透明支持体を挙げることができる。ガラス基板としては、例えばソーダライムガラス、バリウム・ストロンチウム含有ガラス、アルミノケイ酸ガラス、鉛ガラス、ホウケイ酸ガラス、バリウムホウケイ酸ガラス、石英などからなる支持体を用いることができる。一方板状又はフィルム状のプラスチック支持体としては、例えばポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエーテルスルフィド樹脂、ポリスルフォン樹脂、ポリシクロオレフィン樹脂などからなる支持体を用いることができる。これらの支持体の厚さは、用途に応じて適宜選定されるが、通常20μm〜5mm程度、好ましくは50μm〜2mmである。
【0022】
(チップ搭載基板用シートの作製)
本発明のチップ搭載基板用シートを作製する方法に特に制限はないが、生産性の面から、例えば下記の第1の方法及び第2の方法を好ましく採用することができる。
第1の方法としては、当該チップ搭載基板用シートの作製に用いる樹脂シートとして、両側に剥離シートが積層されてなる樹脂シートを使用し、まず、軽剥離型剥離シートを剥がし、その剥がした面を前記支持体と貼り合わせることによりチップ搭載基板用シートを作製する。
第2の方法としては、剥離シート上に前記の方法によりチップ搭載基板用樹脂シートを作製し、その後、直接支持体と貼り合わせることによりチップ搭載基板用シートを作製する。
【0023】
次に、チップ搭載基板について説明する。
[チップ搭載基板]
本発明のチップ搭載基板は、前述のようにして作製されたチップ搭載基板用シートのチップ搭載基板用樹脂シート面に、半導体チップを埋め込み、これに活性光線を照射して硬化させたことを特徴とする。
具体的には、前述した剥離シートなどの上に被埋め込み半導体チップを置き、その上にチップ搭載基板用シートをチップ搭載基板用樹脂シート面(チップ搭載基板用樹脂シートが剥離シートと貼り合わされている場合は予め剥がして使用する)が該半導体チップに接するように載置し、0.05〜2.0MPa程度の荷重下に該チップを、好ましくは0〜150℃、より好ましくは5〜100℃の温度で埋め込み、活性光線を照射してチップ搭載基板用樹脂シートを硬化させたのち、前記半導体チップを置いていた剥離シートなどを剥離することにより、本発明のチップ搭載基板が得られる。あるいは、チップ搭載基板用シートのチップ搭載基板用樹脂シート面(チップ搭載基板用樹脂シートが剥離シートと貼り合わされている場合は予め剥がして使用する)に被埋め込み半導体チップを配置し、この半導体チップにガラス板などを押し当て、0.05〜2.0MPa程度の荷重下に該チップを、好ましくは0〜150℃、より好ましくは5〜100℃の温度で埋め込み、活性光線を照射してチップ搭載基板用樹脂シートを硬化させることにより、本発明のチップ搭載基板が得られる。なお、加熱して半導体チップを埋め込んだ場合には、活性光線の照射は、チップ搭載基板用樹脂シートが加熱された状態で行ってもよいし、室温に冷却されてから行ってもよい。
活性光線としては、紫外線、可視光線が挙げられるが、通常紫外線が用いられる。紫外線は、高圧水銀ランプ、フュージョン製Hランプ、キセノンランプなどで得られる。この活性光線の照射量としては、例えば紫外線の場合には、光量で100〜5000mJ/cm2が好ましい。
【0024】
図1は、本発明のチップ搭載基板用シートを用いて、半導体チップを埋め込む方法の1例を示す工程説明図である。
まず、軽剥離型剥離シートと重剥離型剥離シートに挟持されてなる、未硬化状態の活性光線硬化型高分子材料から得られた本発明のチップ搭載基板用樹脂シートを用意する(図示せず)。次いで、この樹脂シートの軽剥離型剥離シートを剥がし、ガラス板などの支持体にラミネートしたのち、重剥離型剥離シートを剥がして、支持体1上にチップ搭載基板用樹脂シート2が形成されたチップ搭載基板用シート5を作製する。[(a)]。
次に、露出したチップ搭載基板用樹脂シート2上に、半導体チップ3を配置したのち[(b)]、ガラス板4を、荷重下に該半導体チップ3に押し当て、該半導体チップ3を樹脂シート2中に埋め込んだ状態で活性エネルギー線を照射することにより、樹脂シート2を硬化させる[(c)]。最後にガラス板を取り除くことにより、支持体1上に形成された硬化樹脂シート2'中に、半導体チップ3が埋め込まれ固定化された本発明のチップ搭載基板6が得られる[(d)]。
【0025】
(配線形成)
このようにして、半導体チップが埋め込まれ、硬化処理されて固定化されてなるチップ搭載基板は、所望によりその表面に回路が形成される。
この配線形成の方法に特に制限はなく、従来行われている方法の中から、任意の方法を適宜選択して実施することができる。例えばフォトリソグラフィー技術を用いて配線形成を行うことができる。その1例を示すと、半導体チップが埋め込まれ、硬化処理されてなるチップ搭載基板上に、まずポジ型又はネガ型のフォトレジスト液を塗布し、フォトレジスト層を形成する。次いで、所定のマスクパターンを介して、上記フォトレジスト層を露光したのち、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液などのアルカリ現像液を用いて現像処理し、レジストパターンを形成させる。
次に、例えば配線材料としてのクロムターゲットを用いたスパッタリングなどによって、上記レジストパターン上に、所定の厚さのクロム膜を形成したのち、このチップ搭載基板をエタノールなどのエッチング液に浸漬して、レジストのエッチングを行うことにより、所望の配線を形成することができる。本発明のチップ搭載基板は、平面ディスプレイ用画素制御基板や、チップ状発光ダイオードを有する発光シートなどに用いることができる。
【実施例】
【0026】
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
<光重合開始剤の質量減少率の測定方法>
23℃の環境下で光重合開始剤の質量(昇温前質量)を測定した後、光重合開始剤を、示差熱・熱重量同時測定装置[TG/DTA同時測定装置、島津製作所製、装置名「DTG−60」]を用いて、昇温速度10℃/分で、23℃から180℃に昇温し、180℃に到達した時の光重合開始剤の質量(昇温後質量)を測定し、次式により算出した。
{(昇温前質量−昇温後質量)/(昇温前質量)}×100(%)
なお、各例における諸特性は、以下に示す方法に従って求めた。
(1)硬化後のチップ搭載基板用樹脂シートの透過率の測定
硬化後のチップ搭載基板用樹脂シートの透過率は、分光光度計[島津製作所社製、装置名「UV−VIS−NIR UV−3101P」]を用い、測定波長400nmにて測定した。
(2)チップ搭載基板用樹脂シートのアウトガス量の測定
チップ搭載基板用樹脂シートのアウトガス量は、厚さ100μmのチップ搭載基板用樹脂シートを幅10mm、長さ10mmの試験片にカットし、アウトガス測定用のバイアルに封入し、ヘッドスペースサンプラー[PerkinElmer社製、装置名「Turbo Matrix40」]を用いて180℃で30分間保持したのち、ガスクロマトグラフ[Agilent社製、装置名「6890型GC」]に導入して測定した。なお発生ガス量は、n−デカン換算量で求め、チップ搭載基板用樹脂シートの単位面積あたりの値に換算した。
(3)チップ搭載基板の貯蔵弾性率E'の測定
チップ搭載基板(硬化後のチップ搭載基板用樹脂シート)の180℃における貯蔵弾性率E'を、動的弾性率測定装置[TAインスツルメント社製、装置名「DMA Q800」]を用いて、昇温速度3℃/分、周波数11Hzにて測定した。
(4)チップ周辺の曇りの有無
チップ搭載基板のチップ周辺の曇りの有無は目視により観察した。
(5)耐熱性試験(配線形成)
チップ搭載基板の半導体チップが埋め込まれた面に、スズドープ酸化インジウム(ITO)ターゲットを用いてスパッタリングにより100nmのITO膜を形成した。次にポジ型レジスト液[東京応化工業株式会社製、商品名「OFPR−800」]をスピンコーターにより回転数3000rpm、時間40秒で全面に均一に塗布し、100℃で5分間乾燥し、約0.5μmのレジスト膜を形成した。次に半導体チップ間にのみ配線形成するため、フォトマスクを使用し、配線幅が700μmとなるように露光装置[ミカサ株式会社製、商品名「マスクアライナーMA−10」]を用い露光した。露光後、チップ搭載基板を現像液[東京応化工業株式会社製、商品名「NMD−3」]に1分間浸漬し、精製水で洗浄後、120℃で5分間乾燥し現像を行い、露光部のレジストを除去した。その後、ITOエッチング液[関東化学社製、商品名「ITO−07N」]に12分間浸漬し、配線部以外のITOを除去し、精製水で洗浄した。最後にアセトンに5分間浸漬し、レジストの剥離を行い、半導体チップ間にITO配線を形成した。
(ITO配線クラック評価)
形成したITOの配線についてデジタル顕微鏡[キーエンス社製、商品名「デジタルマイクロスコープVHX−200」]を用いてクラックの有無を観察した。
評価基準
○:クラックはみられなかった。
×:クラックがみられた。
(抵抗値の測定)
形成したITO配線の抵抗値を、プローバ[雄山株式会社製、商品名「トランクボックス型プローバTBシリーズ」]により測定した。測定箇所は、半導体チップ間の2点間(距離3cm)を測定した。クラック等により測定出来なかったものは測定不可とした。
【0027】
実施例1
(1)チップ搭載基板用樹脂シートの作製
メタクリル酸メチル97質量部とメタクリル酸2−ヒドロキシエチル3質量部とを酢酸エチル/メチルエチルケトン混合溶媒(質量比50:50)中で反応させて得た重量平均分子量10万の(メタ)アクリル酸エステル共重合体溶液(固形分濃度35質量%)に、共重合体溶液の固形分100質量部に対して、光重合開始剤である2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド[チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、商品名「ダロキュアTPO」固形分100質量%]3.5質量部と、ジアクリル酸ジメチロールトリシクロデカン[共栄社化学社製、商品名「ライトアクリレートDCP−A」固形分100質量%]200質量部と、ポリイソシアナート化合物からなる架橋剤[三井化学ポリウレタン社製、商品名「タケネートD−140N」固形分75質量%]5.0質量部とを溶解させ、最後にメチルエチルケトンを加えて固形分濃度を55質量%に調整し、均一な溶液となるまで撹拌して塗工液とした。
調製した塗工液をナイフコーターによって、ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面にシリコーン系剥離剤層が設けられた重剥離型剥離シート[リンテック社製、商品名「PET3811」]の剥離処理面に塗布し、90℃で90秒間加熱乾燥させ、厚さ50μmの活性光線硬化型高分子材料から得られた未硬化層を形成した。
同様にしてポリエチレンテレフタレートフィルムの片面にシリコーン系剥離剤層が設けられた軽剥離型剥離シート[リンテック社製、商品名「PET3801」]の剥離処理面に、厚さ50μmの未硬化層を有するシートを作製した。この軽剥離型剥離シート上の未硬化層を、前記重剥離型剥離シート上の未硬化層に積層し、最終的に片面に重剥離型剥離シート、反対面に軽剥離型剥離シートを備えた厚さ100μmの活性光線硬化型高分子材料から得られた未硬化層を有するチップ搭載基板用樹脂シートを得た。
【0028】
(2)半導体チップの配置と埋め込み
上記(1)で作製されたチップ搭載基板用樹脂シートの軽剥離型剥離シートを剥がし、5cm×5cmのガラス基板にラミネートし、最後に重剥離型剥離シートを剥がした。次に、露出したチップ搭載基板用樹脂シート面に、半導体チップ(半導体チップ縦1mm×横1mm×厚さ50μm)2個を、間隔3cmで配置した。5cm×5cmのガラス板を別に1枚用意し、チップ搭載基板用樹脂シート上の半導体チップに押し当て、平面プレス機を用いて0.3MPaの圧力で5分間プレスした。常圧に戻した後、照度400mW/cm2、光量315mJ/cm2の条件でフュージョン製Hバルブを光源とする紫外線を照射してチップ搭載基板用樹脂シートを硬化させてチップ搭載基板を作製した。
諸特性の評価結果を第1表に示す。
【0029】
実施例2
実施例1において、光重合開始剤の量を0.5質量部に変更した以外は、実施例1と同様にしてチップ搭載基板を作製した。諸特性の評価を第1表に示す。
実施例3
実施例1において、光重合開始剤を2−ヒドロキシ−1−[4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]−フェニル]−2−メチル−プロパン−1−オン[チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、商品名「イルガキュア127」固形分100質量%]1.0質量部に変更した以外は、実施例1と同様にしてチップ搭載基板を作製した。諸特性の評価結果を第1表に示す。
【0030】
比較例1
実施例1において、光重合開始剤を2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン[チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、商品名「イルガキュア651」固形分100質量%]5.0質量部に変更した以外は、実施例1と同様に実施した。諸特性の評価結果を第1表に示す。
比較例2
実施例1において、光重合開始剤を2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン[チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、商品名「イルガキュア651」固形分100質量%]2.5質量部に変更した以外は、実施例1と同様に実施した。諸特性の評価結果を第1表に示す。
比較例3
実施例1において、光重合開始剤を2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン[チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、商品名「ダロキュア1173」固形分100質量%]6.0質量部に変更した以外は、実施例1と同様に実施した。諸特性の評価結果を第1表に示す。
比較例4
実施例1において、光重合開始剤を2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1[チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、商品名「イルガキュア369」固形分100質量%]1.2質量部に変更した以外は、実施例1と同様に実施した。諸特性の評価結果を第1表に示す。
比較例5
光重合開始剤量を4.7質量部とした以外は、実施例1と同様に実施した。諸特性の評価結果を第1表に示す。
比較例6
光重合開始剤量を0.12質量部とした以外は、比較例1と同様に実施した。諸特性の評価結果を第1表に示す。
【0031】
【表1】

【0032】
第1表から分かるように、実施例1〜3においては、いずれも透過率が90%を超え、かつアウトガス発生量が12μg/cm2未満であって、貯蔵弾性率E'が2.5×107Paを超えており、チップ周辺の曇りは「無」である。
これに対し、比較例1は、アウトガス発生量が12μg/cm2を超え、かつチップ周辺の曇りが「有」である。比較例2は、貯蔵弾性率E'が2.5×107Pa未満で、耐熱性に劣り、配線にクラックが発生し、かつチップ周辺の曇りは「有」である。比較例3は、アウトガス発生量が12μg/cm2を大きく超え、チップ周辺の曇りが「有」であり、かつ貯蔵弾性率E'は2.5×107Pa未満であり、配線にクラックが発生した。比較例4は、透過率が80%未満であり、光学用途では透明性が不十分である。
比較例5は、アウトガスの発生量が12μg/cm2を超え、チップ周辺の曇りが「有」であった。比較例6は、貯蔵弾性率E'が2.5×10-7Pa未満であり、配線にクラックが発生した。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明のチップ搭載基板用樹脂シートは、加熱時におけるアウトガスの発生量が少なく、ディスプレイ用、特に平面ディスプレイ用の各画素を制御するために半導体チップが埋め込まれたチップ搭載基板を、品質よく、高い生産性のもとで効率的に提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明のチップ搭載基板用樹脂シートを用いて、半導体チップを埋め込む方法の1例を示す工程説明図である。
【符号の説明】
【0035】
1 支持体
2 チップ搭載基板用樹脂シート
2' チップ搭載基板用硬化樹脂シート
3 半導体チップ
4 ガラス板
5 チップ搭載基板用シート
6 チップ搭載基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体チップを埋め込むための活性光線硬化型高分子材料から得られたチップ搭載基板用樹脂シートであって、硬化前の前記樹脂シート中に、分子量が300以上であり、温度23℃から、10℃/分の昇温速度で180℃まで昇温した際の質量減少率が5%以下である光重合開始剤0.05〜1.5質量%を含み、硬化後の前記樹脂シートの波長400nmの透過率が80%以上であり、かつ硬化後の前記樹脂シートの180℃における貯蔵弾性率E'が2.5×107Pa以上であることを特徴とするチップ搭載基板用樹脂シート。
【請求項2】
180℃の温度で30分間加熱した際の発生ガス量が、n−デカン換算量で12μg/cm2以下である請求項1に記載のチップ搭載基板用樹脂シート。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のチップ搭載基板用樹脂シートが支持体上に形成されていることを特徴とするチップ搭載基板用シート。
【請求項4】
請求項3に記載のチップ搭載基板用シートのチップ搭載基板用樹脂シート面に、半導体チップを埋め込み、これに活性光線を照射して硬化させたことを特徴とするチップ搭載基板。
【請求項5】
半導体チップが埋め込まれた側の表面に、回路が形成されてなる請求項4に記載のチップ搭載基板。
【請求項6】
ディスプレイ用画素制御基板として用いられる請求項5に記載のチップ搭載基板。

【図1】
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【公開番号】特開2010−97971(P2010−97971A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−264903(P2008−264903)
【出願日】平成20年10月14日(2008.10.14)
【出願人】(000102980)リンテック株式会社 (1,750)
【Fターム(参考)】