説明

チップ部品とメディアの分離方法および分離装置

【課題】水中で短時間にチップ部品とメディアとを分離でき、かつチップ部品に負荷を掛けない分離方法および分離装置を提供する。
【解決手段】直方体形状のチップ部品Cと球体メディアMとを分離する方法であって、水を内部に貯留した分離容器1の上部からチップ部品CとメディアMとの混合物を投入し、沈降させ、沈降途中の混合物に対し交差方向に水流を衝突させ、メディアMを分離容器1の下方へ沈降させるとともに、チップ部品Cを水流とともにメディアMから分離する。分離容器1の下方へ沈降したメディアMを回収するとともに、メディアMと分離されたチップ部品Cを水流と共に排出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばめっき後のチップ部品とメディアとを分離するのに適した方法および分離装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、多数の小型チップ部品にめっきを施す場合に、バレル式めっき法が用いられている。バレル式めっき法は、被めっき物であるチップ部品とメディアとをバレル内に入れ、バレルをめっき液に浸漬し、バレルを回転させて内部のチップ部品とメディアを攪拌しながら、チップ部品表面にめっき皮膜を形成する方法である。
【0003】
めっき後のチップ部品とメディアの分離方法には様々な手法があるが、気中で分離を行うのが一般的である。しかし、次のような理由により水中(液中)で実施しなければならない場合がある。
例えば、Niめっきの後でSnめっきを施す場合や、Niめっきの後でAuめっきを施す場合のように、めっき処理を2段階で実施する場合、次のようなケースでメディアを交換しなければならないときがある。
(1)メディアにはめっき金属が付着しており、これが次のめっき浴中で溶出し、悪影響を与える。
(2)メディアにはめっき金属が相当量付着するが、めっき金属がAuのような高価な金属の場合には、コスト面でメディアを予め少なくする必要があり、この場合には比較的多量のメディアを使用するNiめっきが終了した後、チップ部品とメディアとを分離する必要が生じる。
仮にチップ部品からメディアを気中で分離した場合、Niめっきをした後のチップ部品が乾燥することになり、Ni皮膜が酸化する恐れがある。この上にSn膜やAu膜をめっきすると、密着性が悪くなるという問題がある。それ故、分離後に酸化しないように、メディア分離を液中で行うことが望ましい。
【0004】
メディア分離を液中で行う方法として、特許文献1には、水中でのふるい分けを実施する方法が提案されている。この方法は、篩目の異なる2つ以上の篩を、篩目の大きい方を上にして順次重ねて保持し、大きさの異なる複数種類の部品を上方に位置する篩から投入し、2つ以上の篩を水中で同時に揺り動かすことで、大きさの異なる部品を分離するものである。
【0005】
しかし、部品やメディアの形状が小型・薄型である場合には、篩による分離は目詰まりを起こしたり、分離しきれずに篩に残ることがあるため、適用しにくい。また、部品が小型化するに連れ、分離精度を維持するためには、メッシュ精度の高い高価な篩を用いなければならず、コスト上昇を招くという問題があった。さらに、篩の上で長い時間攪拌されると、部品同士あるいは部品とメディアのぶつかり合いによって、めっき後の皮膜の傷や部品の割れ、欠けなどが発生しやすい。
【特許文献1】特開2002−210416号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明の目的は、水中で短時間にチップ部品とメディアとを分離でき、かつチップ部品に負荷を掛けない分離方法および分離装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明にかかる分離方法は、直方体形状のチップ部品と球体メディアとを分離する方法であって、内部に液体を貯留した分離容器の上部からチップ部品とメディアとの混合物を投入し、沈降させるステップと、沈降途中の混合物に対し交差方向に液流を衝突させ、メディアを分離容器の下方へ沈降させるとともに、チップ部品を上記液流とともにメディアから分離するステップと、上記分離容器の下方へ沈降したメディアを回収するステップと、上記メディアと分離されたチップ部品を液流と共に排出するステップと、を含むものである。
【0008】
本発明の分離装置は、直方体形状のチップ部品と球体メディアとを分離する装置であって、内部に液体を貯留し、上部にチップ部品とメディアとの混合物を投入する投入口を有し、投入口から投入された混合物を沈降させる分離容器と、上記分離容器の上下方向中間部の側部に接続され、上記投入口より投入されて分離容器の中を沈降する混合物に対して交差方向に液流を衝突させる液体導入路と、上記分離容器の上下方向中間部の側部であって、上記液体導入路とほぼ対向する位置に接続され、上記液体導入路から導入された液流によってメディアから分離されたチップ部品を液流とともに排出する分岐流路と、上記分離容器の下端部に設けられ、分離容器の中を沈降したメディアを回収するメディア回収部と、を備えたことを特徴とする。
【0009】
ここで、本発明における分離方法について説明する。チップ部品とメディアとの混合物を、液体を貯留した分離容器の上部から投入する。チップ部品およびメディアは液体より比重が大きいので、分離容器の中を沈降する。沈降の途中で、液体導入路から交差方向に液流を衝突させる。チップ部品は直方体であり、その主面が液流方向に対して垂直になった瞬間に液流の影響を強く受け、分岐流路へ押し流される。メディアは球体であり、液流の影響が一定しているので、分離容器の中をそのまま沈降させることができる。なお、一部のメディアは分岐流路方向へ押し流されることがあるが、後述するように液体の流速や向き、分岐流路の形状等を工夫することで、分岐流路へ押し流されるメディアの量を減らすことができ、さらにメディアを分離容器へ戻すことができる。その後、メディアは分離容器の下方へ沈降し、回収される。一方、チップ部品は液流と一緒に分岐流路から排出される。
【0010】
本発明の分離方法は、沈降する混合物に対して液流を衝突させることによって分離するため、極めて短時間でチップ部品とメディアとを分離できる。従来の篩を用いた分離方法と異なり、チップ部品とメディアとが長時間にわたって衝突ないし摺動を繰り返すことがなく、めっき後の皮膜の傷やチップ部品の割れ、欠けを低減できる。さらに、篩を用いた場合のように、目詰まりが発生することがなく、高価な設備を使用する必要もない。本発明の分離方法は液中で実施するので、チップ部品のめっき皮膜が酸化するといった不具合もない。
なお、チップ部品の比重に比べてメディアの比重が大きい方が分離性能は向上するが、本発明の分離方法はチップ部品とメディアの形状差を利用した分離方法であるから、両者の比重がほぼ同等であっても、効果的に分離できる。
【0011】
好ましい実施形態によれば、分岐流路は分離容器との接続部に対して出口が上方に向くように傾斜しているのがよい。
分岐流路を水平方向に配置してもよいが、液体導入路から導入される液体の流速が大きくなると、メディアも液流と共に分岐流路へ押し流される可能性があり、分離効率が低下する。そこで、分岐流路を分離容器との接続部に対して出口が上方に向くように傾斜させると、液体導入路から流入した液流によってメディアの一部が分岐流路へ押し流されても、分岐流路の傾斜によってメディアは転がりながら分離容器に戻ることができる。
【0012】
好ましい実施形態によれば、液体導入路は分離容器との接続部が上方に向くように傾斜しているものとしてもよい。
液体導入路は分離容器に対して水平に配置されていてもよいが、上方に傾斜している場合には、分離容器を沈降する混合物に対して斜め上方の液流を衝突させることができるので、チップ部品の向きを変えやすくすることができ、分離効率がさらに向上する。
【0013】
好ましい実施形態によれば、分岐流路が分離容器との接続部に対して出口が上方に向くように傾斜しており、液体導入路が分離容器との接続部が上方に向くように傾斜している場合に、液体導入路と分岐流路とをほぼ一直線状または分岐流路の傾きの方が大きくなるように配置するのがよい。
この場合には、チップ部品とメディアとの分離効率の向上とメディアを分離容器へ戻す効果とをさらに高めることができる。なお、液体導入路と分岐流路とが一直線状にない場合に、液体導入路の中心軸の延長線は分岐流路が分離容器と接続している開口部の中を通ること、さらに好ましくは上記延長線が上記開口部の中心を通るのがよい。
【0014】
好ましい実施形態によれば、液体導入路の下部であって、メディア回収部より上部の分離容器内に、上向きの液流を発生させる第2の液体導入路を接続してもよい。
メディアは球体であるため、第2の液体導入路の上向きの水流にはあまり影響を受けず、そのまま沈降できるのに対し、直方体のチップ部品は、第2の液体導入路の上向きの水流によって沈降速度が抑えられ、第1の液体導入路からの横向きの水流を受けて、分岐流路へ確実に押し流すことができる。そのため、分離性能がさらに向上する。
【0015】
好ましい実施形態によれば、分岐流路の出口に、液体からチップ部品を取り出す篩を設けてもよい。
分岐流路の出口に篩を設けることで、液体と共に分岐流路から排出されたチップ部品を簡単に取り出すことができる。特に、液体中にはチップ部品しか含まれていないので、篩目をチップ部品より小さくすれば、簡単にチップ部品を回収できる。
【0016】
好ましい実施形態によれば、本発明の分離方法は、チップ部品が最大寸法と最小寸法との比が2以上の偏平部品で、メディアがチップ部品の最大寸法より小さい直径を持つ球体である場合に効果的である。
チップ部品が偏平である場合、その主面が液流の影響をさらに強く受けるので、分岐流路へ効果的に押し出される。一方、球体よりなるメディアは液流の影響が一定しているので、分離容器の中をそのまま沈降させることができる。そのため、チップ部品とメディアの比重差以上に分離効率が向上する。
【発明の効果】
【0017】
以上のように、本発明によれば、チップ部品とメディアとの混合物を分離容器の中で沈降させ、沈降の途中で交差方向から液流を衝突させ、その形状差によってチップ部品とメディアとを分離するようにしたので、極めて短時間にチップ部品とメディアとを分離できる。従来の篩を用いた分離方法と異なり、チップ部品とメディアとが長時間にわたって衝突ないし摺動を繰り返すことがなく、チップ部品の破損を少なくすることができる。また、分離容器の中を沈降させ、横方向から液流を衝突させるだけであるから、設備が簡単であり、篩を用いた場合のように高価な設備を使用する必要もない。さらに、本発明の分離方法は液中で実施するので、チップ部品のめっき皮膜が酸化するといった不具合もないという作用効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下に、本発明の好ましい実施の形態を、実施例を参照して説明する。
【実施例1】
【0019】
図1,図2は本発明にかかる分離装置の第1実施例を示す。
本分離装置Iは、縦長な分離容器1を備える。分離容器1は、内部に水を貯留するものであり、上端部にめっき後のチップ部品CとメディアMとの混合物を投入する投入口2が設けられ、下端部にはメディア回収装置3が設けられている。この実施例では、チップ部品Cとして直方体形状のセラミックチップ部品を使用し、メディアMとして金属球を使用している。一気に混合物を投入すると、分離精度が悪くなる傾向があるので、少量ずつ投入するために、投入口2に漏斗などを設置してもよい。メディア回収装置3は、分離したメディアMを分離容器1の水を抜くことなく取り出すため、シャッタ付きの回収装置としてもよいし、規模によっては、作業終了後に分離容器1を倒立させてメディアMを回収する方式でもよい。
【0020】
分離容器1の上下方向中間部の側部には、液体導入路4が接続されている。液体導入路4の入口は水道配管5と水道栓6を介して接続されており、投入口2より投入されて分離容器1の中を沈降する混合物C,Mに対して、交差方向に水流を衝突させるものである。この例では、液体導入路4の水平面に対する角度A=0°であり、水流は混合物C,Mの沈降方向に対して直交している。水流の流速は、水道栓6によって調節可能である。水道栓6に代えて流量調整弁を用いてもよい。この実施例では、液体導入路4は水平に配置されている。分離容器1の断面全体にわたって横切る水流を発生させるため、液体導入路4の分離容器1との接続部は、図2に示すように分離容器1の断面幅と同程度のノズル形状とするのがよい。ここでは、液体導入路4を1つの筒状としたが、複数のノズルを並列に並べて同様な水流を発生させてもよい。
【0021】
分離容器1の上下方向中間部の側部であって、液体導入路4と対向する位置には、分岐流路7が接続されている。分岐流路7は、液体導入路4から導入された水流によってメディアMから分離されたチップ部品Cを水とともに排出するものであり、分離容器1との接続部に対して出口7aが上方に向くように傾斜している。この例では、分岐流路7の垂直面に対する傾斜角B=45°とされている。分岐流路7の出口7a側には、出口7aから溢流した水とチップ部品Cとを受ける篩8および流し9とが設けられている。出口7aから出たチップ部品Cは篩8上に残り、水は流し9へと排出される。液体導入路4の中心軸の延長線は、分岐流路7の中心軸線と一致するか、または分岐流路7が分離容器1に接続している開口部7bの中(望ましくは中心)を通る位置関係にある。分岐流路8の中心軸は液体導入路4と同じ面上にある。分岐流路8の開口面積は、液体導入路4の開口面積より大きい方がよい。
【0022】
上記のように、分離容器1の投入口2から投入されたチップ部品CとメディアMとの混合物を、水の中で沈降させ、沈降の途中で、液体導入路4から交差方向に水流を衝突させるようにしたので、直方体形状のチップ部品Cは、その主面が水流方向に対して垂直になった瞬間に水流の影響を強く受け、分岐流路7へ押し流される。一方、球形のメディアMは水流の影響が一定しているので、分離容器1の中をそのまま沈降する。そのため、チップ部品CとメディアMとが分離され、チップ部品Cは篩8によって取り出され、メディアMはメディア回収装置3によって回収される。
【0023】
上記説明では、水道配管5から導入された水道水を液体導入路4から分離容器1へ導入し、分岐流路7から排出された水を流し9を介してそのまま排出する例を示したが、水の使用量を減らすため、チップ部品Cの分離回収後の水をポンプを備えた循環装置により液体導入路4へ送り込み、循環利用できるようにしてもよい。さらに、1回の分離操作により分離できないメディアMあるいはチップ部品Cを、同様の分離操作を複数回繰り返すことで、完全に分離することができる。
【実施例2】
【0024】
図3は本発明にかかる分離装置の第2実施例を示す。第1実施例と共通する部分には同一符号を付して重複説明を省略する。
この実施例の分離装置IIでは、液体導入路4を分離容器1との接続部が上方に向くように傾斜させたものである。ここで、液体導入路4の水平面に対する傾斜角をA、分岐流路7の垂直面に対する傾斜角をBとしてある。液体導入路4と分岐流路7とが一直線状に並んでいてもよいし、分岐流路7の方が液体導入路4より傾きが急になっていてもよい。なお、液体導入路4の中心線Sの延長線は、分岐流路7が分離容器1に接続されている開口部7bの中心を通っている。
【実施例3】
【0025】
図4は本発明にかかる分離装置の第3実施例を示す。第1,2実施例と共通する部分には同一符号を付して重複説明を省略する。
この実施例の分離装置IIIでは、第2実施例と同様に、液体導入路4を分離容器1との接続部が上方に向くように傾斜させるとともに、液体導入路4の接続部より下方でメディア回収装置3より上方の分離容器1の内部に、別の液体導入路10を接続したものである。液体導入路10には水道配管11が水道栓12を介して接続されており、この液体導入路10から分離容器1の内部に上向きの水流を発生させることができる。この例では、液体導入路4の水平面に対する傾斜角A=60°、分岐流路7の垂直面に対する傾斜角B=30°としてある。
【0026】
ここで、第1,第2実施例の分離装置を用いてチップ部品CとメディアMの分離実験を行った結果を、表1に示す。
表1は、第1実施例と第2実施例において、角度A,Bおよび水量を変化させた場合に、篩8によって回収されたチップ部品Cの比率と、メディア回収装置3によって回収されたメディアM内のチップ部品Cの比率とを求めたものである。
【0027】
【表1】

【0028】
この実験では、φ0.5mmの金属球よりなるメディアMと、1mm×0.5mm×t0.4mm以下のサイズのチップ部品Cとの混合物を用いた。メディアMの比重は7.86、チップ部品Cの比重は5.0である。液流には水道水を利用し、流水量を約1〜15L/分程度の範囲で7段階に調整した。
分離容器1の断面寸法は40mm×40mmである。この分離容器1の上部投入口2からチップ部品CとメディアMの混合物を約40ml投入した。このうち、メディアMは30mlである。
第1実施例では、液体導入路4を水平(A=0°)とし、分岐流路7の角度B=45°とした。第2実施例では、液体導入路4の角度Aを30°,60°とし、分岐流路7の角度Bを45°,30°とした。A=60°,B=30°の場合は、液体導入路4と分岐流路7とが一直線に揃った状態である。
【0029】
表1から明らかなように、第1実施例では、水量を1〜8L/分の範囲とした場合、篩8側で100〜89%のチップ部品Cを回収でき、メディア回収装置3で0.37〜0.0002%でチップ部品Cが回収された。水量を11〜15L/分とした場合には、篩8側で回収されるチップ部品Cの比率が76〜68%に低下したが、メディア回収装置3で回収されるチップ部品Cの比率は0%となった。つまり、水量が増加するにつれて、分岐流路7から排出されるメディアMの量が増えるのに対し、メディア回収装置3に混入するチップ部品Cの比率が低下することがわかる。
【0030】
また、第2実施例の場合には、液体導入路4と分岐流路7の傾きA,Bを変化させることにより、篩8側で回収されるチップ部品Cの比率を第1実施例より高めることができ、かつメディア回収装置3に混入するチップ部品Cの比率を低くすることができた。つまり、第1実施例より分離精度が向上した。液体導入路4と分岐流路7の角度、水流の流速を調整することで、効率のよい最適な組み合わせを設定できる。特に、液体導入路4や分岐流路7の角度を調整できる機構を装備すれば、チップ部品CとメディアMのサイズが変わった場合に、最適な組み合わせを自由に設定でき、幅広い被分離物の形状に対応できる。
【0031】
両実施例の場合とも、水中で処理するので、乾燥させることなく分離でき、かつメディアやチップ部品同士のぶつかり合いが少なく、チップ部品Cに割れや欠けが発生しなかった。また、メディアとチップ部品とを比較的短時間で分離できる。所要時間は約5分程度であった。
また、液体導入路4と分岐流路7の傾き角度A,Bの最適範囲は、液体導入路4から導入される水量とも関連するが、次のような範囲であれば、チップ部品CとメディアMの分離が可能であった。
0≦A≦60°
30°≦B≦60°
【0032】
【表2】

【0033】
表2は、第3実施例を用いて上記と同様の条件で分離実験した結果を示す。ここでは、それぞれの液体導入路4,10について、水量レベルの変化と、脈動の有無によって、条件を変えた。脈動とは、平均水量を保ちながら、周期的に水量を強弱させることであり、チップ部品Cの向きを変えやすくさせる作用がある。
【0034】
表2から明らかなように、分離精度が第1,第2実施例に比べてさらに向上した。メディアMは球体であるため、第2の液体導入路10の上向きの水流にはあまり影響を受けず、そのまま沈降させることができた。一方、直方体のチップ部品Cは、第2の液体導入路10の上向きの水流によって沈降速度が抑えられ、第1の液体導入路4からの横向きの水流を受けて、分岐流路7へ確実に押し流すことができた。
【0035】
本発明は上記実施例に限定されるものではない。
上記実施例では、チップ部品の比重がメディアの比重より小さい例を示したが、両者の比重がほぼ同じであっても、本発明の分離方法により分離することが可能である。特に、最大寸法と最少寸法との比が大きなチップ部品、つまり偏平なチップ部品の場合には、さらに分離効率が向上する。
また、分離容器の中に液体を満たして分離を行ったが、全体が液中に没しており、分離容器の上部の投入口だけが液面に出ている状態としてもよい。
さらに、液体とは水に限らない。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明にかかる分離装置の第1実施例の概略断面図である。
【図2】図1のX−X線断面図である。
【図3】本発明にかかる分離装置の第2実施例の概略断面図である。
【図4】本発明にかかる分離装置の第3実施例の概略断面図である。
【符号の説明】
【0037】
I,II,III 分離装置
1 分離容器
2 投入口
3 メディア回収装置
4 液体導入路
5 水道配管
6 水道栓
7 分岐流路
8 篩
9 流し

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直方体形状のチップ部品と球体メディアとを分離する方法であって、
内部に液体を貯留した分離容器の上部からチップ部品とメディアとの混合物を投入し、沈降させるステップと、
沈降途中の混合物に対し交差方向に液流を衝突させ、メディアを分離容器の下方へ沈降させるとともに、チップ部品を上記液流とともにメディアから分離するステップと、
上記分離容器の下方へ沈降したメディアを回収するステップと、
上記メディアと分離されたチップ部品を液流と共に排出するステップと、を含む分離方法。
【請求項2】
直方体形状のチップ部品と球体メディアとを分離する装置であって、
内部に液体を貯留し、上部にチップ部品とメディアとの混合物を投入する投入口を有し、投入口から投入された混合物を沈降させる分離容器と、
上記分離容器の上下方向中間部の側部に接続され、上記投入口より投入されて分離容器の中を沈降する混合物に対して交差方向に液流を衝突させる液体導入路と、
上記分離容器の上下方向中間部の側部であって、上記液体導入路とほぼ対向する位置に接続され、上記液体導入路から導入された液流によってメディアから分離されたチップ部品を液流とともに排出する分岐流路と、
上記分離容器の下端部に設けられ、分離容器の中を沈降したメディアを回収するメディア回収部と、を備えたことを特徴とする分離装置。
【請求項3】
上記分岐流路は上記分離容器との接続部に対して出口が上方に向くように傾斜していることを特徴とする請求項2に記載の分離装置。
【請求項4】
上記液体導入路は上記分離容器との接続部が上方に向くように傾斜していることを特徴とする請求項3に記載の分離装置。
【請求項5】
上記液体導入路と上記分岐流路はほぼ一直線状または上記分岐流路の傾きの方が大きくなるように配置されていることを特徴とする請求項4に記載の分離装置。
【請求項6】
上記液体導入路の下部であって、メディア回収部より上部の分離容器内に、上向きの液流を発生させる第2の液体導入路を接続したことを特徴とする請求項2ないし5のいずれかに記載の分離装置。
【請求項7】
上記分岐流路の出口には、液体からチップ部品を取り出す篩が設けられていることを特徴と有する請求項2ないし6のいずれかに記載の分離装置。
【請求項8】
上記チップ部品は最大寸法と最小寸法との比が2以上の偏平部品であり、上記メディアはチップ部品の最大寸法より小さい直径を持つ球体であることを特徴とする請求項2乃至7のいずれか1項に記載の分離装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−330855(P2007−330855A)
【公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−163034(P2006−163034)
【出願日】平成18年6月13日(2006.6.13)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】