チトクロムP450アイソフォーム2C9のアッセイ
チトクロムP−450(CYP)2C9の活性及び、検体がCYP2C9活性を阻害する又はCYP2C9発現を誘導する可能性を評価するための、迅速かつ高感度の放射分析アッセイを記載する。インキュベーション、生成物分離及び放射活性カウントを含むアッセイの段階は全て、好ましくはマルチウェル方式で行われ、これは自動化できる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(1)発明の分野
本発明は、CYP2C9の活性及び、例えばCYP2C9活性の阻害剤又は誘導剤などの、検体がCYP2C9の活性を調節する可能性を評価するためのアッセイに関する。このアッセイは、基質としての4’位においてトリチウムにより標識されたジクロフェナック及び、CYP2C9による4’位における標識ジクロフェナックのヒドロキシル化の際に生じるトリチウム化水から標識ジクロフェナックを分離するための、ジクロフェナックなどの非極性化合物に選択的に結合する吸着剤を用いる、CYP2C9、CYP2C9を含むミクロソーム又は肝細胞において、ジクロフェナックの4’−ヒドロキシル化を測定することにより、CYP2C9活性を調べる。このアッセイは、CYP2C9酵素活性及び候補薬物のCYP2C9阻害又は誘導の可能性を評価して、さらなる開発から可能性のあるCYP阻害剤又は誘導剤を除外するために有用である。
【背景技術】
【0002】
(2)関連技術の説明
医薬品の薬物動態及び毒物動態特性は、大部分、薬物代謝酵素によるそれらの生体内変化に依存する。哺乳動物における主要な薬物代謝系はチトクロムP450(CYP)であり、これは、肝臓に主に存在するミクロソーム酵素のファミリーである。複数のCYPアイソフォームが、薬物、ステロイド、プロスタノイド、エイコサノイド、脂肪酸及び環境毒素を含む、内在性及び外来性の化学物質の酸化を触媒する(Ioannides、Cytochromes P450.Metabolic and Toxicological Aspects.CRC Press,Boca Raton.(1996))。特定のCYPアイソザイムにより代謝される薬物がその同じ酵素の阻害剤と同時投与されると、その薬物動態が変化し得、悪影響が生じ得る(Bertz及びGranneman、Clin.Pharmacokinet.32:210−258(1997);Lin及びLu,Clin.Pharmacokinet.35:361−390(1998);Thummel及びWilkinson,Ann.Rev.Pharmacol.Toxicol.38:389−430(1998);von Moltkeら、Biochem.Pharmacol.55:113−122(1998))。したがって、代謝阻害のためにクリアランスの変化が起きることを予想し回避できることは重要である。薬物探索プロセス中に、さらなる開発から可能性のある阻害剤を除外するために、候補薬物のCYP阻害の可能性を評価することは、製薬工業における通常業務である(Lin及びLu,前出(1998);Crespi及びStresser,J.Pharmacol.Toxicol.Methods 44:325−331(2000);Bachmann及びGhosh,Curr.Drug.Metab.2:299−314(2001);Riley,Curr.Opin.Drug Disc.Dev.4:45−54(2001))。
【0003】
多様な形態で発現されるCYP2C9は、ヒトにおける最も重要な薬物代謝酵素の1つである。これはヒト肝臓CYP総含量の約20%を構成し、治療上重要な薬物の約10%を代謝する(Miners及びBirkett、Br.J.Pharmacol.45:525−538(1998);Goldstein,Br.J.Clin.Pharmacol.52:349−355(2001);Xieら、Adv.Drug Deliv.Rev.54:1257−1270(2002);Schwarz,Eur.J.Clin.Invest.33:23−30(2003))。CYP2C9の阻害による多くの臨床的に関連する薬物相互作用が述べられている。(Miners及びBirkett、前出;Itoら、Br.J.Clin.Pharmacol.57:473−486(2004))。候補薬物がCYP2C9活性を阻害する可能性を調べるために、いくつかのアッセイ法が現在使用されおり、これらの方法のそれぞれが様々な長所及び短所を示す。最も広く使用されているマーカー反応は、ジクロフェナック4’−ヒドロキシル化、トルブタミン4’−ヒドロキシル化及びS−ワーファリン7’−ヒドロキシル化である。インキュベーションアッセイは通常、酵素源としてヒト肝臓ミクロソーム(HLM)を用い、ヒドロキシル化基質を定量するために紫外線(UV)又は質量分析(MS)検出を伴う高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて行われる。
【0004】
ヒドロキシル化基質を単離し検出するためにHPLCを使用する必要があるため、CYP2C9の阻害剤を検出するための現在のアッセイはハイスループットスクリーニングに適していない。ハイスループットスクリーニングに適切なアッセイを創出するための試みにおいて、多くの蛍光性基質プローブが開発されてきた。これらのプローブを用いると、蛍光を測定することによりヒドロキシル化基質を検出することが可能となる。このアッセイの他の成分から生成物を分離する必要はない。HPLCにより生成物を単離することなく生成物を検出できることから、ハイスループットスクリーニング形式での使用に対してこのアッセイは実用的となる。しかし、蛍光プローブを用いることにはいくつかの欠点がある。第一に、蛍光プローブは1以上のCYPアイソフォームにより代謝されることが多く、したがって、このアッセイは、HLMの代わりに1種類のCYPアイソフォーム(組み換えDNA技術により産生される。)を用いて行わなければない。第二に、蛍光プローブ及び組み換えCYPアイソフォームを用いるアッセイの結果は、HLMにおいて従来のプローブを用いて得られる結果とあまりよく相関しない(Cohenら、Drug Metab.Dispos.31,1005(2003))。相関がない理由としては、HLMに存在するが組み換えCYPアイソフォームを使用するアッセイには存在しない試験阻害剤の代謝及び複数の基質結合部位の存在が挙げられ得る。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、基質としてジクロフェナックを使用することに基づき、少なくとも従来のアッセイと同じ程度に高感度で特異的であり、高スループットスクリーニング形式に容易に適合させることができる、CYP調節因子を同定するためのアッセイが依然として要求されている。肝細胞においてCYP2C9活性を評価するためのアッセイもまた必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、チトクロムP−450アイソフォーム2C9(CYP2C9)の活性及び、検体がCYP2C9活性を阻害する可能性を評価するための、迅速かつ高感度の放射分析アッセイを提供する。このアッセイは、検体存在下での、4’位においてトリチウム標識されたジクロフェナック([4’−3H]−ジクロフェナック)のCYP2C9介在性ヒドロキシル化において生じる[3H]H2Oとしてのトリチウムの放出の検出に基づくものであり、ここで、検体存在下での肝細胞における時間経過によるトリチウム放出の増加又は検体存在下でのCYP2C9を含有する反応での時間経過によるトリチウム放出の減少は、検体がCYP2C9活性の調節因子であることを示す。この方法により、さらに、肝細胞標本におけるCYP2C9の活性を調べることができる。従来のジクロフェナック4’−ヒドロキシル化アッセイとは異なり、本明細書中のアッセイは、HPLC分離及び質量分析を必要としない。代わりに、ジクロフェナックなどの非極性化合物に選択的に結合する吸着剤を用いた固相抽出プロセスにおいて、トリチウム化ジクロフェナックから、トリチウム化水生成物を分離する。インキュベーション、生成物の分離及び放射活性測定を含む本アッセイの全段階が好ましくはマルチウェル形式で行われ、これは自動化できる。
【0007】
したがって、ある実施形態において、本発明は、CYP2C9、4’位においてトリチウム標識されたトリチウム標識ジクロフェナック、NADPH、場合によってはNADPH再生系及び検体を含有する水性混合液を提供することと;CYP2C9が4’位におけるトリチウム標識ジクロフェナックをヒドロキシル化するのに十分な時間、水性混合液をインキュベートすることと(トリチウム標識水が生成する。);場合によっては水性混合液からCYP2C9を除去することと;ジクロフェナックなどの非極性化合物に選択的に結合する吸着剤に水性混合液を添加して、水性混合液からトリチウム標識ジクロフェナックを除去することと;及びトリチウム標識ジクロフェナックが除去された水性混合液中のトリチウム標識水の量を測定することと(検体非存在下でのトリチウム標識水の量に対する検体存在下でのトリチウム標識水の量の減少は、検体がCYP2C9活性を阻害することを示す。)、を含む、CYP2C9活性を阻害する検体を同定するための方法を提供する。
【0008】
上記の実施形態のさらなる態様において、吸着剤は、ポリマーが加湿性となり及び有機溶質保持において有効となるように十分な割合で、少なくとも1個の親水性モノマー及び少なくとも1個の脂溶性モノマーをコポリマー化することにより形成される加湿性ポリマーを含む。上記の実施形態のさらなる態様において、脂溶性モノマーは、フェニル、フェニレン、エーテル又はC2−C18アルキル基を含む。さらなる態様において、脂溶性モノマーはジビニルベンゼンである。上記の実施形態のさらなる態様において、親水性モノマーは、飽和、不飽和又は芳香族複素環基を含む。さらなる態様において、親水性モノマーは、N−ビニルピロリドンである。上記の実施形態のさらなる態様において、加湿性ポリマーは、ポリ(ビニルベンゼン−コ−N−ビニルピロリドン、好ましくは、ポリ(ビニルベンゼン−コ−N−ビニルピロリドンが12モル%を超えるN−ビニルピロリドンを含むポリマー、より好ましくは、ポリ(ビニルベンゼン−コ−N−ビニルピロリドンが約15モル%から約30モル%のN−ビニルピロリドンを含むポリマーである。
【0009】
上記の実施形態の別の態様において、吸着剤は、シリカ基材に結合された非極性基を含有する。さらなる態様において、吸着剤は、フェニルシラン、ジメチルシラン、トリメチルシラン、エチルシラン、ブチルシラン、ヘキシルシラン、オクチルシラン及びオクタデシルシランからなる群から選択される1以上のシランを含む。さらなる態様において、シリカ基材は、シリカ粒子及びシリカゲルからなる群から選択される。
【0010】
さらなる実施形態において、吸着剤は活性炭を含む。
【0011】
さらなる実施形態において、本発明は、CYP2C9、4’位においてのみトリチウム標識されたトリチウム標識ジクロフェナック、NADPH、場合によってはNADPH再生系及び検体を含有する混合物を提供することと;CYP2C9活性が4’位におけるトリチウム標識ジクロフェナックをヒドロキシル化するのに十分な時間、混合物をインキュベートし、場合によっては混合物からCYP2C9を除去することと;ポリマーが加湿性となり及び有機溶質保持において有効となるように十分な割合で、少なくとも1個の親水性モノマー及び少なくとも1個の脂溶性モノマーをコポリマー化することにより形成される加湿性ポリマーに混合物を添加して、水性混合液からトリチウム標識ジクロフェナックを除去することと;及びトリチウム標識ジクロフェナックが除去された混合物中のトリチウムの量を測定することと(検体存在下でのトリチウム量の減少は、検体がCYP2C9の活性を阻害することを示す。)、を含む、CYP2C9活性を阻害する検体を同定するための方法を提供する。
【0012】
上記の実施形態のさらなる態様において、脂溶性モノマーは、フェニル、フェニレン、エーテル又はC2−C18アルキル基を含む。さらなる態様において、脂溶性モノマーはジビニルベンゼンである。
【0013】
上記の実施形態のさらなる態様において、親水性モノマーは、飽和、不飽和又は芳香族複素環基を含む。さらなる態様において、親水性モノマーはN−ビニルピロリドンである。
【0014】
上記の実施形態のさらなる態様において、加湿性ポリマーは、ポリ(ビニルベンゼン−コ−N−ビニルピロリドン、好ましくは、ポリ(ビニルベンゼン−コ−N−ビニルピロリドンが12モル%を超えるN−ビニルピロリドンを含むポリマー、より好ましくは、ポリ(ビニルベンゼン−コ−N−ビニルピロリドンが約15モル%から約30モル%のN−ビニルピロリドンを含むポリマーである。
【0015】
さらなる実施形態において、本発明は、CYP2C9、4’位においてトリチウム標識されたトリチウム標識ジクロフェナック、NADPH、場合によってはNADPH再生系及び検体を含有する混合物を提供することと;CYP2C9活性が4’位におけるトリチウム標識ジクロフェナックをヒドロキシル化するのに十分な時間、混合物をインキュベートすることと;場合によっては混合物からCYP2C9を除去することと;形成されるポリ(ビニルベンゼン−コ−N−ビニルピロリドンが加湿性となり及び有機溶質保持において有効となるような、N−ビニルピロリジンに対するジビニルベンゼンの割合で、ジビニルベンゼン及びN−ビニルピロリジンをコポリマー化することにより形成される加湿性ポリマーに混合物を添加して、混合物中のトリチウム標識水からヒト肝臓ミクロソーム及びトリチウム標識ジクロフェナックを分離することと;トリチウム標識ジクロフェナックが除去された水性混合液中のトリチウム量を測定することと(検体存在下でのトリチウム量の減少は、検体がCYP2C9活性を阻害することを示す。)、を含む、CYP2C9の活性を阻害する検体を同定するための方法を提供する。
【0016】
上記の実施形態のさらなる態様において、ポリ(ビニルベンゼン−コ−N−ビニルピロリドンは12モル%を超えるN−ビニルピロリドンを含み、より好ましくは、ポリ(ビニルベンゼン−コ−N−ビニルピロリドンが約15モル%から約30モル%のN−ビニルピロリドンを含むポリマーである。
【0017】
上記のさらなる実施形態において、加湿性ポリマーは、固相抽出カートリッジ又はカラムの内側に充てんされる。上記の何れか1つの特に好ましい実施形態において、本方法は、インキュベーションを行うための第一のマルチウェルプレート、インキュベーション後にトリチウム化水から標識ジクロフェナックを分離するための、マルチウェルプレートと同じ配列であるマルチカラムプレート及びトリチウムを測定するためにマルチカラムからカラム空隙容量及び洗浄液を回収するための第二のマルチウェルプレート、を含むマルチウェルプレート形式で行われる。
【0018】
本発明はさらに、マルチウェルプレート及び、固相抽出カートリッジの一連を有しているカラムプレート又はカラム(ジクロフェナックなどの非極性化合物に選択的に結合する吸着剤をその中に有する。)を提供することと;マルチウェルプレートのウェルのそれぞれに、CYP2C9、4’位においてのみトリチウムにより標識されたトリチウム標識ジクロフェナック及び検体を含有する混合物を添加することと;上記のウェルのそれぞれの中の混合物にNADPH及び場合によってはNADPH再生系を接触させ、CYP2C9が4’位でトリチウム標識ジクロフェナックをヒドロキシル化するのに十分な時間、インキュベートすることと;場合によっては、マルチウェルプレートのウェルのそれぞれの中の混合物からCYP2C9を分離することと;カラムプレートの個々のミニカラムに各混合物を添加して、混合物からトリチウム標識ジクロフェナックを除去することと;及びトリチウム標識ジクロフェナックが除去された混合物中のトリチウム量を測定することと(検体存在下でのトリチウム標識水の量の減少は、検体がCYP2C9活性を阻害することを示す。)、を含む、CYP2C9の活性を阻害する検体を同定するための方法を提供する。
【0019】
上記の実施形態のさらなる態様において、吸着剤は、ポリマーが加湿性となり及び有機溶質保持において有効となるように十分な割合で、少なくとも1個の親水性モノマー及び少なくとも1個の脂溶性モノマーをコポリマー化することにより形成される加湿性ポリマーを含む。上記の実施形態のさらなる態様において、脂溶性モノマーは、フェニル、フェニレン、エーテル又はC2−C18アルキル基を含む。さらなる態様において、脂溶性モノマーはジビニルベンゼンである。上記の実施形態のさらなる態様において、親水性モノマーは、飽和、不飽和又は芳香族複素環基を含む。さらなる態様において、親水性モノマーはN−ビニルピロリドンである。上記の実施形態のさらなる態様において、加湿性ポリマーは、ポリ(ビニルベンゼン−コ−N−ビニルピロリドン、好ましくは、ポリ(ビニルベンゼン−コ−N−ビニルピロリドンが12モル%を超えるN−ビニルピロリドンを含むポリマー、より好ましくは、ポリ(ビニルベンゼン−コ−N−ビニルピロリドンが約15モル%から約30モル%のN−ビニルピロリドンを含むポリマーである。
【0020】
上記の実施形態の別の態様において、吸着剤は、シリカ基材に結合された非極性基を含む。さらなる態様において、吸着剤は、フェニルシラン、ジメチルシラン、トリメチルシラン、エチルシラン、ブチルシラン、ヘキシルシラン、オクチルシラン及びオクタデシルシランからなる群から選択される1以上のシランを含む。さらなる態様において、シリカ基材は、シリカ粒子及びシリカゲルからなる群から選択される。
【0021】
本発明は、さらに、マルチウェルプレート及び、固相抽出カートリッジの一連を有しているカラムプレート又はカラム(ポリマーが加湿性となり及び有機溶質保持において有効となるように十分な割合で、少なくとも1個の親水性モノマー及び少なくとも1個の脂溶性モノマーをコポリマー化することにより形成される加湿性ポリマーをその中に有する。)を提供することと;マルチウェルプレートのウェルのそれぞれに、CYP2C9、4’位においてトリチウムにより標識されたトリチウム標識ジクロフェナック及び検体を含有する混合物を添加することと;上記ウェルのそれぞれの中の混合物にNADPH及び場合によってはNADPH再生系を接触させ、CYP2C9が4’位におけるトリチウム標識ジクロフェナックをヒドロキシル化するのに十分な時間、インキュベートすることと;場合によっては、マルチウェルプレートのウェルのそれぞれの中の混合物からCYP2C9を分離することと;カラムプレートの個々のミニカラムに各水性混合液を添加して、混合物からトリチウム標識ジクロフェナックを除去することと;トリチウム標識ジクロフェナックが除去された混合物中のトリチウム量を測定することと(検体存在下でのトリチウム標識水の量の減少は、検体がCYP2C9活性を阻害することを示す。)、を含む、CYP2C9活性を阻害する検体を同定するための方法を提供する。
【0022】
上記の実施形態のさらなる態様において、脂溶性モノマーは、フェニル、フェニレン、エーテル又はC2−C18アルキル基を含む。さらなる態様において、脂溶性モノマーはジビニルベンゼンである。
【0023】
上記の実施形態のさらなる態様において、親水性モノマーは、飽和、不飽和又は芳香族複素環基を含む。さらなる態様において、親水性モノマーは、N−ビニルピロリドンである。
【0024】
上記の実施形態のさらなる態様において、加湿性ポリマーは、ポリ(ビニルベンゼン−コ−N−ビニルピロリドン、好ましくは、ポリ(ビニルベンゼン−コ−N−ビニルピロリドンが12モル%を超えるN−ビニルピロリドンを含むポリマー、より好ましくは、ポリ(ビニルベンゼン−コ−N−ビニルピロリドンが約15モル%から約30モル%のN−ビニルピロリドンを含むポリマーである。
【0025】
さらなる実施形態において、本発明は、マルチウェルプレート及び、固相抽出カートリッジの一連を有しているカラムプレート又はカラム(形成されるポリ(ビニルベンゼン−コ−N−ビニルピロリドンが加湿性となり及び有機溶質保持において有効となるような、N−ビニルピロリジンに対するジビニルベンゼンの割合で、ジビニルベンゼン及びN−ビニルピロリジンをコポリマー化することにより形成される加湿性ポリマーをその中に有する。)を提供することと;マルチウェルプレートのウェルのそれぞれに、CYP2C9、4’位においてトリチウムにより標識されたトリチウム標識ジクロフェナック及び検体を含有する混合物を添加することと;ウェルのそれぞれの中の混合物にNADPH及び場合によってはNADPH再生系を接触させ、CYP2C9が4’位におけるトリチウム標識ジクロフェナックをヒドロキシル化するのに十分な時間、インキュベートすることと;場合によっては、マルチウェルプレートのウェルのそれぞれの中の混合物からCYP2C9を分離することと;カラムプレートの個々のミニカラムに各混合物を添加して、混合物からトリチウム標識ジクロフェナックを除去することと;及びトリチウム標識ジクロフェナックが除去された混合物中のトリチウム標識水の量を測定することと(検体非存在下でのトリチウム標識水の量に対する検体存在下でのトリチウム標識水の量の減少は、検体がCYP2C9活性を阻害することを示す。)、を含む、CYP2C9活性を阻害する検体を同定するための方法を提供する。
【0026】
上記の実施形態のさらなる態様において、ポリ(ビニルベンゼン−コ−N−ビニルピロリドンは、12モル%を超えるN−ビニルピロリドンを含み、より好ましくは、ポリ(ビニルベンゼン−コ−N−ビニルピロリドンが約15モル%から約30モル%のN−ビニルピロリドンを含むポリマーである。
【0027】
上記の実施形態及び態様の何れか1つのさらなる態様において、カラムプレートのミニカラムのそれぞれは、ポリマーを保持するための多孔性保持手段をさらに含む。好ましい実施形態において、マルチウェルプレート及びカラムプレートのウェルはそれぞれ、96ウェル組織培養プレートの形式を有する。
【0028】
上記の実施形態の何れか1つのさらなる実施形態において、2−ヨードフェニル酢酸及び2,6−ジクロロ4−ブロモアニリンの混合物を提供すること;銅触媒の存在下に混合物をインキュベートして、2−[(2,6−ジクロロ,4−ブロモフェニル)アミノ]フェニル酢酸を生成させること;パラジウム触媒存在下にトリチウムとともに2−[(2,6−ジクロロ,4−ブロモフェニル)アミノ]フェニル酢酸をインキュベートして、4’位において標識されたジクロフェナックを生成させることにより、ジクロフェナックを4’位において標識する。
【0029】
本発明は、さらに、CYP2C9、NADPH再生系及び検体を含有する混合物を提供することと;様々な時間、混合物をインキュベートすることと;混合物を希釈し、次いで希釈混合物に4’位においてトリチウムにより標識されたジクロフェナック及びNADPHを添加することと;CYP2C9が4’位においてトリチウム標識ジクロフェナックをヒドロキシル化するのに十分な時間、希釈混合物をインキュベートすることと;混合物からCYP2C9を除去することと;非極性化合物に選択的に結合する吸着剤に混合物を添加して、混合物からトリチウム標識ジクロフェナックを除去することと;及びトリチウム標識ジクロフェナックが除去された段階(d)の混合物中のトリチウム量を測定することと(トリチウム量の減少は、検体が不可逆的にCYP2C9の活性を阻害することを示す。)、を含む、チトクロム2C9(CYP2C9)の活性を不可逆的に阻害する検体を同定するための方法を提供する。
【0030】
上記の実施形態のさらなる態様において、吸着剤は、ポリマーが加湿性となり及び有機溶質保持において有効となるように十分な割合で、少なくとも1個の親水性モノマー及び少なくとも1個の脂溶性モノマーをコポリマー化することにより形成される加湿性ポリマーを含む。上記の実施形態のさらなる態様において、脂溶性モノマーは、フェニル、フェニレン、エーテル又はC2−C18アルキル基を含む。さらなる態様において、脂溶性モノマーはジビニルベンゼンである。上記の実施形態のさらなる態様において、親水性モノマーは、飽和、不飽和又は芳香族複素環基を含む。さらなる態様において、親水性モノマーはN−ビニルピロリドンである。上記の実施形態のさらなる態様において、加湿性ポリマーは、ポリ(ビニルベンゼン−コ−N−ビニルピロリドン、好ましくは、ポリ(ビニルベンゼン−コ−N−ビニルピロリドンが12モル%を超えるN−ビニルピロリドンを含むポリマー、より好ましくは、ポリ(ビニルベンゼン−コ−N−ビニルピロリドンが約15モル%から約30モル%のN−ビニルピロリドンを含むポリマーである。
【0031】
上記の実施形態の別の態様において、吸着剤は、シリカ基材に結合された非極性基を含む。さらなる態様において、吸着剤は、フェニルシラン、ジメチルシラン、トリメチルシラン、エチルシラン、ブチルシラン、ヘキシルシラン、オクチルシラン及びオクタデシルシランからなる群から選択される1以上のシランを含む。さらなる態様において、シリカ基材は、シリカ粒子及びシリカゲルからなる群から選択される。
【0032】
上記の実施形態及び態様の何れか1つの特定の実施形態において、CYP2C9はミクロソームにおいて提供される。ミクロソームは、哺乳動物及び昆虫細胞からなる群から選択される細胞から生成され得、この細胞は、CYP2C9を発現するベクター(例えば、ウイルス又はプラスミドベクター)を含むか、又はミクロソームは、腎臓、肝臓、脳、筋肉などの細胞由来であり得る。好ましくは、ミクロソームは、ヒト肝臓ミクロソーム(HLM)である。CYP2C9源としてHLMを使用する上記の実施形態及び態様の何れか1つの特定の実施形態において、酸性化及び/又は遠心分離により水性混合液からHLMが除去される。
【0033】
さらなる実施形態において、本発明は、肝細胞の培養物を提供することと;CYP2C9がトリチウム標識ジクロフェナックをヒドロキシル化するのに十分な時間、4’位においてトリチウムにより標識されたジクロフェナックを含有する培地中で肝細胞をインキュベートすることと;肝細胞の培養物から培地を除去することと;非極性化合物に選択的に結合する吸着剤に培地を添加して、培地からトリチウム標識ジクロフェナックを除去することと;及びトリチウム標識ジクロフェナックが除去された培地中のトリチウム量を測定することと(これは、肝細胞におけるCYP2C9の活性を決定する。)、を含む、肝細胞においてCYP2C9の活性を決定するための方法を提供する。
【0034】
さらなる実施形態において、本発明は、肝細胞の培養物を提供することと;検体を含有する培地中で肝細胞をインキュベートすることと;4’位においてトリチウムにより標識されたジクロフェナックを含有する第二の培地で検体を含有する培地を置き換え、CYP2C9が4’位におけるトリチウム標識ジクロフェナックをヒドロキシル化するのに十分な時間、肝細胞をインキュベートすることと;肝細胞の培養物から第二のメディウムを除去することと;非極性化合物に選択的に結合する吸着剤に第二の培地を添加して、培地からトリチウム標識ジクロフェナックを除去することと;及びトリチウム標識ジクロフェナックが除去された第二の培地中のトリチウム量を測定することと(トリチウム標識ジクロフェナックを含み検体不含の状態でインキュベートした肝細胞の対照培養物に対するトリチウム量の増加は、検体がCYP2C9発現を誘導することを示す。)、を含む、CYP2C9発現を誘導する検体を同定するための方法を提供する。好ましくは、検体を含有する培地中で約24時間から78時間、肝細胞をインキュベートする。
【0035】
さらなる実施形態において、本発明は、肝細胞の培養物を提供することと;CYP2C9がトリチウム標識ジクロフェナックをヒドロキシル化するのに十分な時間、4’位においてトリチウム標識されたジクロフェナック及び検体を含有する培地中で肝細胞をインキュベートすることと;肝細胞の培養物から培地を除去することと;非極性化合物に選択的に結合する吸着剤に培地を添加して、培地からトリチウム標識ジクロフェナックを除去することと;及びトリチウム標識ジクロフェナックが除去された培地中のトリチウム量を測定することと(トリチウム標識ジクロフェナックを含み検体不含の状態でインキュベートした肝細胞の対照培養物に対するトリチウム量の減少は、検体がCYP2C9活性を阻害することを示す。)、を含む、CYP2C9活性を阻害する検体を同定するための方法を提供する。
【0036】
上記の実施形態のさらなる態様において、肝細胞の培養物はマルチウェルプレートの1以上のウェルにおいて提供され、吸着剤は、カラムプレートを構成する、1以上の固相抽出カートリッジ又はカラムに充てんされて提供される。
【0037】
上記の実施形態のさらなる態様において、吸着剤は、ポリマーが加湿性となり及び有機溶質保持において有効となるように十分な割合で、少なくとも1個の親水性モノマー及び少なくとも1個の脂溶性モノマーをコポリマー化することにより形成される加湿性ポリマーを含む。上記の実施形態のさらなる態様において、脂溶性モノマーは、フェニル、フェニレン、エーテル又はC2−C18アルキル基を含む。さらなる態様において、脂溶性モノマーはジビニルベンゼンである。上記の実施形態のさらなる態様において、親水性モノマーは、飽和、不飽和又は芳香族複素環基を含む。さらなる態様において、親水性モノマーはN−ビニルピロリドンである。上記の実施形態のさらなる態様において、加湿性ポリマーはポリ(ビニルベンゼン−コ−N−ビニルピロリドン、好ましくは、ポリ(ビニルベンゼン−コ−N−ビニルピロリドンが12モル%を超えるN−ビニルピロリドンを含むポリマー、より好ましくは、ポリ(ビニルベンゼン−コ−N−ビニルピロリドンが約15モル%から約30モル%のN−ビニルピロリドンを含むポリマーである。
【0038】
上記の実施形態の別の態様において、吸着剤は、シリカ基材に結合された非極性基を含む。さらなる態様において、吸着剤は、フェニルシラン、ジメチルシラン、トリメチルシラン、エチルシラン、ブチルシラン、ヘキシルシラン、オクチルシラン及びオクタデシルシランからなる群から選択される1以上のシランを含む。さらなる態様において、シリカ基材は、シリカ粒子及びシリカゲルからなる群から選択される。
【0039】
上記の実施形態のさらなる態様において、2−ヨードフェニル酢酸及び2,6−ジクロロ4−ブロモアニリンの混合物を提供すること;銅触媒の存在下に混合物をインキュベートして、2−[(2,6−ジクロロ,4−ブロモフェニル)アミノ]フェニル酢酸を生成させること;及びパラジウム触媒存在下にトリチウムとともに2−[(2,6−ジクロロ,4−ブロモフェニル)アミノ]フェニル酢酸をインキュベートして、4’位における標識されたジクロフェナックを生成させることにより、ジクロフェナックを4’位で標識する。
【0040】
本発明はさらに、2−ヨードフェニル酢酸及び2,6−ジクロロ4−ブロモアニリンの混合物を提供することと;2−[(2,6−ジクロロ,4−ブロモフェニル)アミノ]フェニル酢酸を生成させるために銅触媒存在下に混合物をインキュベートすることと;及びパラジウム触媒存在下に2−[(2,6−ジクロロ,4−ブロモフェニル)アミノ]フェニル酢酸をトリチウムと共にインキュベートして、4’位において標識されたジクロフェナックを生成させることと;を含む、4’位でトリチウムにより標識されたジクロフェナックを生成させるための方法を提供する。好ましくは、[4−3H]−ジクロフェナックを生成させるためにトリチウムガスを使用する。
【0041】
本発明はさらに、トリチウムにより4’位で標識されたジクロフェナック([4−3H]−ジクロフェナック)及び2−[(2,6−ジクロロ,4−ブロモフェニル)アミノ]フェニル酢酸(4’−ブロモジクロフェナック)を提供する。
【0042】
本明細書中で使用する場合、「検体」という用語は、分子、化合物、化学物質、組成物、薬物などを指す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0043】
本発明は、チトクロムP450アイソフォーム2C9(CYP2C9)活性を評価するための、及びCYP2C9活性の調節因子を同定するための、迅速かつ高感度のジクロフェナック4’−ヒドロキシル化アッセイを提供する。とりわけ、本発明は、CYP2C9を含有する混合物中のCYP2C9の活性を評価するためのアッセイを提供する。本アッセイは、可逆的阻害アッセイ及び機能ベース又は時間依存的阻害アッセイの両方を含む。このような混合物の例として、ヒト肝臓ミクロソーム(HLM)などの様々な組織からのミクロソーム;組み換えCYP2C9を発現する発現ベクターを含有する哺乳動物又は昆虫細胞からのミクロソーム;又は肝細胞、上記混合物の何れかの中で検体がCYP2C9の活性を阻害する可能性及び肝細胞において検体がCYP2C9発現を誘導する可能性が含まれる。好ましくは、CYP2C9は、ヒトCYP2C9である。本アッセイは、検体存在下での、CYP2C9が介在する、4’位においてトリチウム標識されたジクロフェナックの4’−ヒドロキシル化において生じる[3H]−H2Oとしてのトリチウムの放出を検出することに基づき、本アッセイにおいて、時間経過による放出の増減は、検体がCYP2C9活性の調節因子であることを示す。例えば、検体存在下でのHLM中のトリチウム放出の減少は、検体がCYP2C9活性の阻害剤であることを示し、一方、検体での肝細胞処理後の肝細胞におけるトリチウム放出の増加は、検体がCYP2C9活性の誘導剤であることを示す。ジクロフェナックなどの非極性化合物に選択的に結合する基材を含む吸着剤を用いて固相抽出プロセスにおいてトリチウム化ジクロフェナックからトリチウム化水生成物を分離する。インキュベーション、生成物分離及び放射活性カウントを含むアッセイの全段階がマルチウェル形式で行われ、これは自動化することができる。
【0044】
ある態様において肝細胞を用いてCYP2C9の活性を誘導又は阻害する検体を同定するための実施形態により、CYP2C9をコードする遺伝子の発現を阻害又は誘導する検体、即ち、CYP2C9をコードする遺伝子の転写に影響を与える検体が同定される。別の態様における実施形態によって、CYP2C9をコードするmRNAの転写後プロセシングに影響を与えることによりCYP2C9活性において阻害又は誘導効果を示す検体が同定される。さらなる態様における実施形態によって、CYP2C9をコードするmRNAの翻訳に影響を与えることによりCYP2C9活性において阻害又は誘導効果を示す検体が同定される。さらなる態様における実施形態によって、CYP2C9と直接又は間接的に相互作用することによりCYP2C9活性において阻害又は誘導効果を示す検体が同定される。
【0045】
CYP2C9の活性を評価するための実施形態は、例えば新しい化学物質を用いて代謝安定性試験を行うための肝細胞を使用する前など、市販のバッチの肝細胞の活性又は研究室内で単離された肝細胞の質を調整するために有用である。CYP2C9調節因子を同定するための実施形態は、さらなる開発から強力な阻害剤又は誘導剤である候補薬物を排除するために、候補薬物のCYP2C9阻害又は誘導の可能性を評価するのに有用である。何れかの実施形態において、本発明は、検体のCYP2C9阻害又は誘導の可能性を評価するためにHPLC分離及び質量分析に依存する先行技術アッセイにおける改良法である。
【0046】
本アッセイは本明細書中でHLM又は肝細胞を用いて説明されるが、本アッセイは、精製組み換えCYP2C9又は、例えば腎臓、腸、肺などの他の組織から調製されたミクロソーム又はミクロソームを含有するその他の細胞内分画を使用し得る。CYP2C9、好ましくはヒトCYP2C9を発現する、プラスミド又はウイルスベクターを含有する哺乳動物細胞からミクロソームを調製することができる。ミクロソームは、CYP2C9及びp450レダクターゼを発現する組み換えバキュロウイルスに感染した昆虫細胞由来であり得る。組み換えCYP2C9を発現する細胞の長所は、CYP2C9が、これらのミクロソームにおいて存在する唯一のチトクロムP450であり、通常は比活性がより高いことである。組み換えCYP2C9を用いたアッセイに対する濃度範囲は約1から100pmol/mLであり、好ましい濃度は、約5から50pmol/mLの間である。時間依存的アッセイの場合、酵素は5から10倍高いものであるべきである(第二のインキュベーションにおける最終希釈のため。)。
【0047】
CYP2C9活性の阻害について検体を試験するために、CYP2C9活性における阻害効果について試験すべき検体、基質プローブとしての4’位においてトリチウム標識されたジクロフェナック、適切な基質濃度を与えるための非標識ジクロフェナック、プールされたHLM及び生理的pHの緩衝液を含む水性混合液を含有する第一の容器を提供する。通常、トリチウム標識ジクロフェナックの約10,000から1,000,000dpmの間を使用し、好ましくは、標識ジクロフェナックは約100,000dpmである。非標識ジクロフェナックの量は、約1から100μMの間、通常は約10μMである。プールされたHLMは、一般に約0.05から1mg/mL、通常約0.1mg/mLである。適切な緩衝液の例は、0.1Mリン酸カリウム、pH7.6である。最終体積は、好ましくは約100μLの間である。好ましくは、検体に対して使用されるビヒクルの当量を含有する対照を提供する。
【0048】
37℃にて数分間緩衝液中でミクロソームの好ましいインキュベーション段階を行った後、約5mMグルコース−6−ホスフェート、約3mM MgCl2及び約1ユニット/mLグルコース−6−ホスフェートデヒドロゲナーゼを含有するNADPH再生系あり又は無しで、約1mM NADPHを水性混合液に添加して反応混合物を形成し、次いでこれをジクロフェナックの4’ヒドロキシル化が可能となるのに十分な時間、37℃でインキュベートする。好ましい実施形態において、NADPHは再生系とともに添加される。通常、約10分間という時間は、CYP2C9の活性を検出するのに一般に十分である。場合によっては、様々な時間の長さで複数のアッセイを行う。次に、約0.1Nの濃度のHClなどの酸を添加することにより、反応混合物を反応停止させる。好ましくは、トリチウム化ジクロフェナックからトリチウム化水を分離するための抽出カートリッジ又はカラムに反応混合物を移す前に、水性混合液からHLMを除去する。ろ過、遠心分離などにより、水層からHLMを除去することができる。好ましい実施形態において、遠心分離によりHLMを除去する。反応の酸性化によりHLM中のタンパク質が沈殿するので、低速遠心分離を用いてHLMのタンパク質を除去することができる。
【0049】
ジクロフェナックなどの非極性化合物に選択的に結合する吸着剤を含有する抽出カートリッジ又はカラムに、HLMが除去された水性混合液又はHLMを含有する反応混合物を移す。カラムからの、空隙容積又はフロースルーを第二の容器で回収する。カラム中の吸着剤を水で洗浄し、洗浄液を第二の容器に移す。シンチレーション液を第二の容器に添加し、CYP2C9によりトリチウム化ジクロフェナックから放出されたトリチウムを測定する。あるいは、空隙容積又はフロースルー及び洗浄液をシンチレーションバイアルに移し、シンチレーションカウンタにおいてトリチウムを測定するためにシンチレーション液と混合する。トリチウム化水がないか、又は陽性対照においてトリチウム化水の量と比較してトリチウム化水が減少していることは、検体がCYP2C9活性の阻害剤であることを示す。
【0050】
肝細胞の調製物のCYP2C9活性を次のように調べる。新しく肝臓組織から単離された肝細胞を含み得る、又は既に単離され、冷凍保存され、アッセイのために凍結融解された肝細胞の初代培養を提供する。培地中、又は肝細胞を培養するのに適切な水性混合液中で、5%CO2及び95%空気又は酸素の加湿環境中で37℃において肝細胞を維持する(例えば、Dich及びGrunnet(Methods in Molecular Biology,Vol.5:Animal Cell Culture(Polland及びWalker編)pp.161−176、Humana press、Clifton,New Jersey(1989))を参照のこと。)。懸濁液中又は細胞培養プレートに接着した培養細胞においての何れかの細胞を用いてアッセイを行うことができる。懸濁液アッセイの場合、通常、約1x105個の細胞/mLから約1x106個の細胞/mLの濃度、好ましくは約1x106個の細胞/mLの濃度で肝細胞をインキュベートする。したがって、各培養ウェルは、約1x106個の細胞、肝細胞培地(HCM)1mL(Dich及びGrunnet、前出)、非標識ジクロフェナック及びトリチウム標識ジクロフェナックを含有する。通常、約100,000から2,000,000dpmの間のトリチウム標識ジクロフェナックを使用する。非標識トリチウムの量は、約1から50μMの間、通常は約10μMである。プレーティングされた細胞においてアッセイを行う場合、組織培養プレートに肝細胞をプレーティングし(好ましくは、培養プレートはコラーゲン被覆した24又は96ウェル組織培養プレートである。)、新鮮な肝細胞の培養に適切な培地(例えばHCM)中で5%CO2の加湿環境において37℃にて維持する。好ましくは、培地にITSを添加する。通常、約150,000から200,000個の細胞/cm2の密度で肝細胞をプレーティングする。
【0051】
インキュベーション後、例えば遠心分離によりインキュベーション液を細胞から除去し、ジクロフェナックなどの非極性化合物に選択的に結合する吸着剤を含有する抽出カートリッジ又はカラムに移す。カラムからの空隙容積又はフロースルーを第二の容器で回収する。カラム中の吸着剤を水で数回洗浄し、洗浄液を第二の容器に移す。シンチレーション液を第二の容器に添加し、CYP2C9によりトリチウム化ジクロフェナックから放出されたトリチウムを測定する。あるいは、空隙容積又はフロースルー及び洗浄液をシンチレーションバイアルに移し、シンチレーションカウンタにおいてトリチウムを測定するためにシンチレーション液と混合する。生成したトリチウム化水の量により、肝細胞の相対的CYP2C9活性が決定される。
【0052】
検体がCYP2C9活性を阻害する能力を調べるためのアッセイは次の通りである。新しく肝臓組織から単離された肝細胞を含み得る、又は既に単離され、冷凍保存され、アッセイのために凍結融解された肝細胞の初代培養を提供する。懸濁液中又は細胞培養プレートに接着した培養細胞においての何れかの細胞を用いてアッセイを行うことができる。懸濁液アッセイの場合、上記のように肝細胞を培養するのに適切な培地中で5%CO2の加湿環境中で37℃にて肝細胞を維持する。通常、肝細胞は、約1x106個の細胞/mLの濃度でインキュベートする。懸濁液ではないアッセイの場合、組織培養プレートに肝細胞をプレーティングし(好ましくはコラーゲン被覆した組織培養プレート)、肝細胞を培養するのに適切な培地(例えばHCM)中で5%CO2の加湿環境中で37℃にて維持する。したがって、各培養ウェルは、約1x106個の細胞、HCM 1mL、CYP2C9の活性における阻害効果について試験すべき検体、非標識ジクロフェナック及びトリチウム標識ジクロフェナックを含有する。通常、トリチウム標識ジクロフェナック約100,000から2,000,000dpmを使用し、好ましくは、約500,000dpm/mLである。非標識ジクロフェナックの量は、約1から50μM、通常は約10μMである。好ましくは、検体に対するビヒクル又はスルファフェナゾールなどのCYP2C9阻害剤を含む対照を提供する。
【0053】
インキュベーション後、細胞からインキュベーション液を除去し、ジクロフェナックなどの非極性化合物に選択的に結合する吸着剤を含有する抽出カートリッジ又はカラムに移す。カラムからの空隙容積又はフロースルーを第二の容器で回収する。カラム中の吸着剤を水で数回洗浄し、洗浄液を第二の容器に移す。シンチレーション液を第二の容器に添加し、CYP2C9によりトリチウム化ジクロフェナックから放出されたトリチウムを測定する。あるいは、空隙容積又はフロースルー及び洗浄液をシンチレーションバイアルに移し、シンチレーションカウンタにおいてトリチウムを測定するためにシンチレーション液と混合する。トリチウム化水がない、又はビヒクルのみを含有する対照におけるトリチウム化水の量と比較してトリチウム化水が減少していることは、検体がCYP2C9活性の阻害剤であることを示す。
【0054】
検体がCYP2C9活性を誘導する能力を調べるためのアッセイは次の通りである。新しく肝臓組織から単離された肝細胞を含み得る、又は既に単離され、冷凍保存され、アッセイのために凍結融解された肝細胞の初代培養を提供する。組織培養プレートに肝細胞をプレーティングし(好ましくは、培養プレートはコラーゲン被覆した24又は96ウェル組織培養プレートである。)、新鮮な肝細胞の培養に適切な培地(例えばHCM)中で5%CO2の加湿環境において37℃にて維持する。好ましくは、培地にITSを添加する。通常、肝細胞を約150,000から200,000個の細胞/cm2の密度でプレーティングする。24時間から78時間後、培地を除去し、新鮮な培地及び、誘導の可能性についての試験を行う検体を肝細胞に添加する。好ましくは、検体に対するビヒクル又はリファムピシン又はフェノバルビトールなどの公知の誘導剤の何れかを含有する対照を提供する。上記のようにCYP2C9の誘導に十分な時間(通常は約24時間から78時間で十分である。)肝細胞をインキュベートした後、CYP2C9酵素活性を調べる。
【0055】
生理的pH(例えばpH7.4)の緩衝液を含有する平衡塩類溶液を含有するインキュベーション液中で肝細胞をインキュベートする。平衡塩類溶液の例は、Hank’平衡塩類溶液であり、適切な緩衝液の例は、10mM HEPESである。次に、非標識ジクロフェナック及びトリチウム標識ジクロフェナックを含有する混合液を添加し、CYP2C9の活性を評価するのに適切な時間、上述のように肝細胞をインキュベートするが、一般に約1時間で十分である。通常、トリチウム標識ジクロフェナック約100,000から2,000,000dpm/mLを使用し、好ましくは、標識ジクロフェナックは約500,000dpm/mLである。非標識ジクロフェナックの量は約1から50μMの間であり、通常約10μMである。場合によっては、平行したインキュベーションを行うが、これは、検出された酵素活性が特異的にCYP2C9により媒介されることを確認するために、CYP2C9阻害剤スルファフェナゾールを含有する。
【0056】
インキュベーション後、インキュベーション液を細胞から除去し、ジクロフェナックなどの非極性化合物に選択的に結合する吸着剤を含有する、抽出カートリッジ又はカラムに移す。カラムからの空隙容積又はフロースルーを第二の容器で回収する。カラム中の吸着剤を水で洗浄し、洗浄液を第二の容器に移す。シンチレーション液を第二の容器に添加し、CYP2C9によりトリチウム化ジクロフェナックから放出されたトリチウムを測定する。あるいは、空隙容積又はフロースルー及び洗浄液をシンチレーションバイアルに移し、シンチレーションカウンタにおいてトリチウムを測定するためにシンチレーション液と混合する。トリチウム化水が存在すること、又はビヒクルのみを含有する対照におけるトリチウム化水の量と比較してトリチウム化水が増加していることは、検体がCYP2C9活性の誘導剤であることを示す。
【0057】
下記で考察し、本アッセイの好ましい態様において実施例1で示すように、マルチウェル形式で、好ましくは96ウェル形式で本アッセイを行う。マルチウェル形式により複数の検体を同時に試験できるようになる。マルチウェル形式において、マルチウェルプレートのウェル(第一の容器)中で各反応を行う。反応終了時及びHLMを除去する任意の段階後のトリチウム化ジクロフェナックからのトリチウム化水の分離は、複数の小型カラム(それぞれが本明細書中で開示する吸着剤を含有する。)を含む精密ろ過/抽出カラムプレートの個々のカラムに各反応液を添加することにより行う。好ましくは、精密ろ過/抽出カラムプレートのカラムはマルチウェルプレートに対する形式と同じ形式に配置する。精密ろ過/抽出カラムプレートと同じ形式である第二のマルチウェルプレートで空隙容積及び洗浄液を回収し、シンチレーション液と混合し、マルチウェル形式中の試料をカウントするために適合させたシンチレーションカウンタにおいてカウントする。
【0058】
吸着剤はジクロフェナックなどの非極性化合物に選択的に結合する、すなわち、吸着剤は標識ジクロフェナックに吸着又は結合することができるが、ヒドロキシル化により生成した標識水には吸着又は結合しない。ジクロフェナックなどの非極性化合物に選択的に結合する吸着剤としては、以下に限定されないが、ポリスチレン−ジビニルベンゼン又はポリ(ジビニル−ベンゼン−ビニルピロリドン)などの疎水性又は脂溶性ポリマーを含有する吸着剤、吸着剤が標識ジクロフェナックに結合するがトリチウム化水に結合しないことを可能にするような割合で脂溶性及び親水性モノマーを含有する加湿性ポリマー及びC2−C18シランなどのシリコンベースの吸着剤が挙げられる。
【0059】
加湿性ポリマーを含有する吸着剤は、ポリマーが加湿性となり及び有機溶質保持において有効となるように十分な割合で、少なくとも1個の親水性モノマー及び少なくとも1個の脂溶性モノマーをコポリマー化することにより形成される。脂溶性モノマーは、フェニル、フェニレン及びC2−C18−アルキル基などの脂溶性部分を含み得る。特に有用な脂溶性モノマーとしては、ジビニルベンゼン及びスチレンが挙げられる。親水性モノマーは、飽和、不飽和又は芳香族複素環基(例えば、ピロリドニル基又はピリジル基)などの親水性部分を含み得る。あるいは、親水性基はエーテル基であり得る。特に有用なモノマーとしては、N−ビニルピロリドン、2−ビニルピリジン、3−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン及びエチレンオキシドが挙げられる。加湿性ポリマーのある実施形態において、ポリマーは、約12モル%を超えるN−ビニルピロリドンを含む、好ましくは、約15モル%から約30モル%のN−ビニルピロリドンを含む、ポリ(ジビニルベンゼン−コ−N−ビニルピロリドン)コポリマーである。好ましい加湿性ポリマーの例は、WO9738774及び米国特許第6,726,842号(両方ともBouvierらに対するものである。)で開示されている。好ましい吸着剤の例はOASIS HLB吸着剤であり、これは、N−ビニルピロリドンとジビニルベンゼンモノマーとの調和の取れた割合を含み、Waters Corporation(Newcastle,DE)から市販されている。
【0060】
シリコンベースの基材又はマトリクスを含有する吸着剤は、シリカ基材に結合された非極性基を含む。吸着剤は、非極性化合物を抽出することについて当技術分野で周知の1以上のシランを含み得る。このような吸着剤としては、以下に限定されないが、フェニルシラン、ブチルジメチルシラン、ジメチルシラン、トリメチルシラン、エチルシラン、ブチルシラン、ヘキシルシラン、オクチルシラン又はオクタデシルシランが挙げられる。シランは、単官能性又は三官能性であり得る。シリカ基材又はマトリクスとしては、以下に限定されないが、固体もしくは多孔性シリカ又はセラミック粒子又は微粒子又はシリカゲルが挙げられる。
【0061】
本方法の好ましい実施形態において、吸着剤は、固相抽出カートリッジ又はカラムを形成するように開口容器中に充てんされた、吸着剤の、粒子、ビーズなどとして提供される。本発明の特定の実施形態において、吸着剤は、多孔性膜に捕捉された、固相抽出カートリッジ又はカラムに充てんされる。他の実施形態において、固相抽出カートリッジ又はカラムはさらに、吸着剤に隣接した固相抽出カートリッジ又はカラムの片端もしくは両端で、又はその付近で、フィルター成分などの多孔性の保持手段又はガラス原料を含む。多孔性保持手段は、固相抽出カートリッジ又はカラム内に吸着剤を保持するためである。さらなる実施形態において、一対の多孔性保持手段の間に吸着剤を配置するが、第一の多孔性保持手段は固相抽出カートリッジ又はカラム内で吸着剤を保持し、第二の保持手段はまた、カラム中の吸着剤の保持を補助し、HLMなどの固体材料が吸着剤と混合されるのを防ぐ。フィルター又は硝子材料は、例えば、フリット硝子又は多孔性ポリマー、例えば高密度ポリエチレン、TEFLON(E.I.du Pont de Nemours and Company,DE)又はポリカーボネートなどである。
【0062】
図1は、本発明の方法の実施に適切な固相抽出カートリッジ又はカラム10の例の横断面図を示す。カラム10は、壁14を有する伸長体12(これは、軸方向の空洞部16を規定する。)、水性混合液を受容するための、カラム10の遠位端20のインレット18及び、水性混合液を排出するための、カラム10の近位端24のアウトレット22から構成される。図1でさらに示されるように、近位端24に多孔性保持手段26が隣接し、これは面28を有する。多孔性保持手段26は、面28がカラム10の壁14に垂直であるように、カラム10において近位端24に隣接して位置する。多孔性保持手段26の面28には吸着剤30が配置される。場合によっては、示されるように、第二の多孔性保持手段32が、遠位端20に隣接して、もしくはその付近に位置し得、吸着剤30はそれらの間に配置され得る。カラム10は、水性混合液がインレット18を介して容器に入り、カラム10内で吸着剤30に接触し、アウトレット22を介してカラム10から排出されることを可能にする。好ましくは、吸着剤30は、好ましくは直径が約30から60μmであるビーズなどの小粒子としてカラム10中に充てんされる。
【0063】
好ましい実施形態において、ハイスループットスクリーニングに特に適切な形式を与えるために、複数のカラム10を配置する。例えば、固相抽出カートリッジ又はカラム(好ましくは、小型固相抽出カートリッジ又はカラム、つまり、ミニカラム)を与えるために、複数のウェルを含む、マルチカラム精密ろ過/抽出カラムプレートを適合させた。好ましいマルチカラム精密ろ過/抽出カラムプレート形式では、マルチウェル組織培養プレートに対して使用される形式に対応する形式でミニカラムが配置される。例えば、精密ろ過/抽出カラムプレートのミニカラムは、6ウェル、12ウェル、24ウェル、48ウェル、96ウェル又は384ウェル形式で配置することができる。好ましい実施形態において、マルチカラム精密ろ過/抽出カラムプレートでは、96ウェル形式でミニカラムが配置される。例として、図2は、水性混合液を受容するための開口部14と水性混合液を排出するためのアウトレット106とを有する複数のミニカラム102を含むマルチカラム精密ろ過/抽出プレート100を示し、ここで、ミニカラム102のそれぞれは、96−ミニカラム形式で並べられた図2のカラム10に対して示されるものと同様の内部配置を含む。遠心分離又は減圧により、このカラムを介して、96ウェル形式で配置されたウェルを含有する回収プレートへの水性混合液の移動が達成され得る。マルチカラム精密ろ過/抽出カラムプレート及び、このプレートを使用するための方法ならびに装置は、多くの米国特許、例えば、米国特許第6,506,343号(Bodnerらに対する。)、同第6,491,873号(Roberts及びWoelkに対する。)及び同第6,338,802号(Bodnerらに対する。)及び米国公開特許出願第20030143124号(Roberts及びGrenzに対する。)で開示されている。
【0064】
CYPの可逆的阻害に加えて、ある種の検体又はそれらのCYPにより生成された代謝産物による不可逆的又は見かけ上不可逆的な不活性化が起こり得る。このタイプの阻害、作用機序に基づく又は時間依存的阻害(MBI)と呼ばれるもの、は、阻害剤存在下で酵素活性が進行性に時間依存的低下を示すことを特徴とする。CYPの3種類の作用機序に基づく(時間依存的)不活性化が報告されている:(i)阻害剤が酵素アポタンパク質に共有結合する;(ii)阻害剤が合成ヘムに共有結合する;(iii)阻害剤がきつく(見かけ上不可逆的に)ヘム又はアポタンパク質に結合する。CYP3A4/5、CYP2C9、CYP1A2、CYP2D6、CYP2C19、CYP2A6、CYP2B6及びCYP2E1を含む殆どのヒト肝臓薬物代謝CYPは、作用機序に基づく阻害(MBI)にさらされる(Zhang及びWong、Curr.Drug Metab.6:241−257(2005);Venkatakrishnanら、Curr.Drug Metab.4:423−459(2003);Zhouら、Curr.Drug Metab.5:415−442(2004);Zhouら、Clin.Pharmacokinet.44:279−304(2005))。
【0065】
インビボでの影響が必ずしも明らかではない可逆的CYP阻害に対して、MBIは殆ど常に、臨床的に関心のある薬物−薬物相互作用を導く。実際に、MBIは、臨床的な薬物−薬物相互作用に対する主要な原因の1つと現在では考えられていおり、過去においては潜在的に見過ごされてきた。
【0066】
MBIが活性酵素の時間依存的喪失を導くので、同じCYPにより代謝される薬物の薬物動態における時間依存的CYP阻害剤の臨床的影響は次の通りである。
・MBIは、連続投与において非定常のPKを引き起こす。
・薬物−薬物相互作用の程度は発現及び消失において時間依存的である。
・腸管腔で阻害剤が高濃度であると、基質において顕著な影響が生じ、腸代謝によりその経口でのバイオアベイラビリティーが制限される。
【0067】
したがって、本発明はまた、上述の、可逆的又は見かけ上可逆的なアッセイに加えて、作用機序に基づくアッセイ又は時間依存的アッセイも提供する。化合物が時間依存的CYP阻害剤として作用する可能性を評価するために、一連の様々な長さの時間(通常、0分から60分間)、NADPH再生系存在下で、検体をCYP2C9とともにプレインキュベートする。一般に、可逆的阻害アッセイにおいて使用される量よりも約5から10倍多い量でCYP2C9を提供する。温度不安定性による酵素活性の喪失を監視するために、阻害剤非存在下で対照インキュベーションを行う。プレインキュベーション終了時に、時間0のプレインキュベーション時間対照に対する、酵素的に活性なCYPの量の変化を調べる。プレインキュベーションが約10倍希釈され、基質が添加される第二のインキュベーションを行うことにより、これを遂行する。特定の時間間隔の間に形成される生成物の量を測定することにより、酵素活性を求める。時間依存的CYP阻害アッセイに使用される通常の基質は、上記可逆的阻害アッセイに対して使用されるものと同じである。例えば、ジクロフェナックに対するCYP2C9についてのKmは約6μMであり、ジクロフェナックの好ましい濃度は、約30から100μMの間である。実施例6は、HLMを用いた時間依存的アッセイの例を提供する。
【0068】
第二のインキュベーションにおいて試験検体により生じるあらゆる可逆的CYP阻害効果を最小限に抑えるために、プレインキュベーション混合液を数倍希釈(通常、5−20倍)し、半最大活性に必要とされる濃度より数倍(通常、5−10倍)高い濃度でCYP基質を添加し(試験化合物による競合的阻害を最小限に抑えるために。)、インキュベーション時間を短くする(通常10分間)。検体が時間依存的阻害剤として作用する場合、CYPとのプレインキュベーションは、擬一次反応速度式による酵素活性の喪失を引き起こす。各阻害剤濃度に対して、残存酵素活性の%(阻害剤なしの対照に対して。)は、次の式に従い時間とともに変化する。
【0069】
【数1】
(式中、kは、実測の擬一次不活性化速度定数であり、これは、次の関係に従いプレインキュベーション中の阻害剤濃度に関連する。
【0070】
【数2】
(式中、Iは阻害剤濃度であり、kinactは最大不活性化速度定数であり、K0.5は、50%kinactでの阻害剤濃度であり、nはHill係数である。))kinact及びK0.5を求めるために、非線形回帰分析を用い、Iに対するkの曲線を数式2にフィットさせる。
【0071】
実施例1に示されるように、本発明は、4’位でトリチウムにより標識されたジクロフェナック([4’−3H]−ジクロフェナック)及び[4’−3H]−ジクロフェナックを調製するための方法も提供する。本発明は、さらに、[4’−3H]−ジクロフェナックを調製するための中間体である2−[(2,6−ジクロロ,4−ブロモフェニル)アミノ]フェニル酢酸(4’−ブロモジクロフェナック)を提供し、及び4’−ブロモジクロフェナックを調製するための方法もさらに提供する。
【0072】
Ullman反応を用いたジクロフェナックの合成が記載されている(Moserら、J.Med.Chem.33:2358−2364(1990);Satohら、J.Med.Chem.36:3580−3594(1993);Ozaら、J.Med.Chem.45,321−332(2002)及びそれらの参考文献)。トリチウムにより4’位において標識されたジクロフェナック([4’−3H]−ジクロフェナック)を調製するために、Ullman反応を改変して、2−[(2,6−ジクロロ,4−ブロモフェニル)アミノ]フェニル酢酸(4’−ブロモジクロフェナック(I))を生成させ、次に、トリチウム及びパラジウム触媒存在下でこれを4’位において標識されたジクロフェナックに変換した。
【0073】
一般に、[4’−3H]−ジクロフェナックの合成は、スキーム1で示されるプロセスによる。2−ヨードフェニル酢酸及び2,6−ジクロロ,4−ブロモアニリンの混合物を活性化銅触媒存在下でインキュベートし、4’−ブロモジフェナック(1)を生成させる。次に、パラジウム触媒存在下で、4’−ブロモジクロフェナック(1)をトリチウムとともにインキュベートし、[4’−3H]−ジクロフェナックを生成させる。
【0074】
【化3】
【0075】
4’−ブロモジクロフェナックを調製するための反応は、好ましくは、N−メチルピロリドン(NMP)などの有機溶媒中で行われる。高温で、好ましくは約135℃の温度で、4’−ブロモジクロフェナックを調製するのに十分な時間(混合物の色が褐色−黒色に変化する時間(通常約20時間))、混合物をインキュベートする。好ましくはクロマトグラフィー法により反応物及び溶媒から4’−ブロモジクロフェナックを分離する。
【0076】
次に、他の反応物から分離した4’−ブロモジクロフェナックをトリチウムガス及びパラジウム触媒とともに、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)などの有機溶媒中でインキュベートする。好ましい実施形態において、パラジウム触媒は、炭素触媒担持パラジウム(Pd/C)であり、好ましくは、パラジウムの割合は約10%である。好ましい実施形態において、T2ガスとしてトリチウムを与える。ジクロフェナックを4’位でトリチウムにより標識するのに十分な時間の後、通常1時間後、置換性のトリチウムを除去し、[4’−3H]−ジクロフェナックを反応のその他の成分から、好ましくはクロマトグラフィー法により分離する。
【0077】
次の実施例は、本発明のさらなる理解を促すものである。
【実施例1】
【0078】
スキーム1で示すような4’位でトリチウムにより標識されたジクロフェナックの合成は次のとおりであった。
【0079】
4’−ブロモジクロフェナック(1)の合成は次のとおりであった。2−ヨードフェニル酢酸(21.3mg、0.08mmol)を、N−メチルピロリドン(0.5mL)中の、2,6−ジクロロ,4−ブロモアニリン(78mg、0.32mmol)、炭酸カリウム無水物(33.6mg、0.24mmol)及び活性化銅粉末触媒(2.25mg、0.035mmol)の混合物に添加した。下降コンデンサーを介して水を蒸留して除去すると同時に、反応混合物を135℃にて22時間、撹拌しながら加熱した。反応混合物の色が褐色−黒色に変化した。熱い反応混合物を熱水で処理し、CELITE(World Minerals,NJより入手可能)に通してろ過した。逆相HPLC(LUNA フェニルヘキシル250x10mmカラム(Phenomenex、Torrance、CAより入手可能)、0.1%TFA含有の水:アセトニトリル、50:50、流速4mL/分、UV=254nm、Rt=23−24分)を用いることにより、4’−ブロモジクロフェナック(1)を含有する粗製生成物を精製した。求める分画を回収し、Sep−Pak−C−18(Waters,Corp.,Milford,MA)に通し、次いで10mLエタノールで溶出して、2−[(2,6−ジクロロ−4−ブロモフェニル)アミノ]フェニル酢酸(1)5mgを得た。
【0080】
4’−ブロモジクロフェナック(1)からの[4’−3H]−ジクロフェナックの合成は次のとおりであった。DMF(1mL)中で1時間、触媒10%Pd/C(5mg)を用いて、4’−ブロモジクロフェナック(1)(5mg)をトリチウムガス(T2又は3H2)とともに撹拌した。反応混合物をろ過し、置換性トリチウムを全て除去するために、エタノール(2x10mL)とともに同時蒸発させた。準分取HPLCカラム((LUNA フェニルヘキシル、250x10mmカラム)、0.1%TFA含有の水:アセトニトリル、55:45、流速4mL/分、UVは254nm、Rt=20−21分)を用いることにより、粗製生成物を精製し、[4’−3H]−ジクロフェナック(LC/MSにより決定した場合、10mCi、SA=22.7Ci/mmol)を得た。LC/MS:296(M)+,298(M+2)+。
【実施例2】
【0081】
この実施例は、本発明のアッセイの開発及び、CYP2C9活性の阻害剤を同定するためのその使用を説明する。
【0082】
[4’−3H]−ジクロフェナックを用いた放射分析CYP2C9アッセイ。100μLの最終体積中に、実施例1のように調製され、さらなる精製なしで使用される標識ジクロフェナックトレーサー(10,000から1,000,000dpm、通常100,000dpm)、非標識ジクロフェナック(10μM、別段の指示がある場合を除く。)、プールしたヒト肝臓ミクロソーム(HLM)(0.1から1mg/mL、好ましくは0.125mg/mL)及び0.1Mリン酸カリウム緩衝液、pH7.6を含有する96ウェルコニカルマイクロタイタープレート(Corning,Acton,MAより入手可能)中で反応を行った。プールされたHLMは、Gentest Corp.(Woburn,MA)から入手した。DMSO/アセトニトリル/水(35:25:40、v/v)中の保存溶液から阻害剤を反応混合物に添加し、最終溶媒濃度を0.7%DMSO及び0.5%アセトニトリルとした。阻害剤なしの対照はビヒクル当量を含有した。37℃にて10分間のプレインキュベーション後、1mM NADPH及び、5mMグルコース−6−ホスフェート、3mM MgCl2及び1U/mLグルコース−6−ホスフェートデヒドロゲナーゼを含有するNADPH再生系を添加することにより、反応を開始させた。37℃にて10分間アッセイを行い、0.1Nの最終濃度になるようにHClを添加することにより反応停止させた。次に、マイクロプレートローターにおいてプレートを10分間遠心分離し、前もって調整した10mgOASIS96ウェルHLBプレートのウェルに上清を載せた。OASIS HLB96ウェル抽出プレート及び真空マニホールドはWaters Corp.Newcastle,DEから入手可能である。真空にして、空隙容積を回収プレートで回収した。次に、水75μLを添加し、再び真空にして、同じプレートで洗浄液を回収した。プールした空隙容積及び水洗浄液をシンチレーションバイアルに移し、β−シンチレーションカウンタ中でカウントした。あるいは、TOPCOUNTシンチレーションカウンタ(Packard,Perkin Elmer,Boston,MA)を用いて24ウェル又は96ウェルシンチレーションプレート中で一定分量に対してカウントした。酵素活性の計算のために、NADPH再生系なしで行った対照インキュベーションで得られたカウントを差し引くことにより、生成物カウントを補正した。
【0083】
4’ヒドロキシジクロフェナックの定量。CTC Analytics PAL自動サンプラー(HTS PAL;CTC Analytics AG,Switzerland)を備えたAgilent HP1100液体クロマトグラフ(Agilent Technologies)を用いて、HPLCにより、アッセイ反応混合物の一定分量及び代謝産物の一定分量の標準曲線を分析した。XTERRA MS C18カラム(4.6mMx5cm;5μm;Waters Corp.,Medford,MA)において、2mL/分の流速で、水中0.1%ギ酸(A)及びアセトニトリル中0.1%ギ酸(B)(直線的勾配0から0.5分 10%B;3.0分 90%B、3.5分 90%B;3.6分 10%B;次の注入前に10%Bで1.4分間、システムを平衡化した。)からなる移動相を用いてクロマトグラフィーを行った。最初の1分間、溶離液を捨て、次いで、陽イオンモードで操作されるTurbo Ionsprayイオン化ソースを備えたSciex API−3000トリプレット四極子質量分析装置(例えば、Perkin Elmer、Boston、MAより入手可能)に送った。4’ヒドロキシジクロフェナックを検出し、遷移m/z305.0から269.1を用いて同定した。Analyst Quantitation Wizardソフトウェアバージョン1.2(Applied Biosystems,Foster City,CA)を用いて、加重線形最小二乗回帰分析により、代謝産物濃度を調べた。
【0084】
曲線のフィッティング。XLFIT4.0(ID Business Solutions,Inc.,Guildford,UK;Emeryville,CA)を用いて、非線形回帰により、Hillの式又は4パラメーターロジスティック阻害モデル(Rodbard及びFrazier、Meth.Enzymol.37:3−22(1975))への曲線のフィッティングを行った。
【0085】
結果
96ウェル固相抽出プレートを用いた[4’−3H]−ジクロフェナック及び[3H]−H2Oの分離。10mgOASIS吸着剤を含有する96ウェル抽出プレートに、標識ジクロフェナック(104から107dpm)を含有するアッセイ緩衝液の溶液及び停止溶液を載せた場合、99.8%を超える放射活性がプレートに保持された。標識ジクロフェナックは、メタノールで溶出することにより回収することができた。標識ジクロフェナックとは異なり、[3H]−H2O(102から105dpm)は同じ条件下で保持されなかった。10mg及び30mgプレートの両方において、100μL又は400μLの水による洗浄後の、合わせた空隙容積中で溶出される[3H]−H2Oの回収は定量的であった(94±6%、平均±SD、n=6)。
【0086】
HLMにおける[4’−3H]−ジクロフェナックからの[3H]−H2Oの形成。NADPH再生系存在下で[4’−3H]−ジクロフェナックをHLMとともにインキュベートした場合、時間依存的な様式で[3H]−H2Oが形成された。1.0mg/mLのタンパク質濃度まで、ミクロソーム濃度とともに、生成物形成は直線的に増加した(図3参照)。トリチウム化水の形成はNADPHに依存したが、このことから、この反応にチトクロムP450が介在したことが示される。特異的CYP2C9阻害剤であるスルファフェナゾールは、[3H]−H2OのNAPH−依存的形成を阻害し、このことから、本反応に主にCYP2C9が介在したことが示される(図4参照)。ノイズ比に対するシグナルは、NADPH非存在に対するNADPH存在において得られる生成物カウント間の比として定義される。分画変換速度は、単位時間あたり及びミクロソームタンパク質1mgあたりのトリチウム化水に変換された総放射性標識基質の%として表される。ノイズ比に対するシグナルは、HLM0.125から0.25mg/mLを用いて10分間アッセイを行った場合、30から50の間であった。分画変換速度は約50から80%/分/mgであった。
【0087】
CYP阻害剤及び抗CYP抗体の影響。CYP2C9が生成物形成に介在することを確認するために、一連のアイソフォーム選択的化学阻害剤(Bourrieら、J.Pharmacol.Exp.Ther.227:321−32(1996);Eaglingら、Br.J.Clin.Pharmacol.45:107−14(1998))もしくはモノクローナル抗体(Meiら、J.Pharmacol.Exp.Ther.291:749−59(1999);Shouら、Eur.J.Pharmacol.394:199−209(2000))の存在下又は非存在下で反応を行った。使用した化学阻害剤はフラフィリン(CYP1A2阻害剤)であり、モノクローナル抗体は、CYP2A6、CYP2C9、CYP2C19、CYP2D6及びCYP3A4/5の阻害剤である。図5で示されるように、これらの薬剤の中で、抗CYP2C9及び抗CYP2C19モノクローナル抗体を除き、HLM中からのトリチウム化水の形成に顕著な影響を与えたものはなかった。CYP2C9に対して向けられた抗体は、80%を超える反応を阻害した。この反応はまた、CYP2C9と交差反応することが知られているCYP2C19に対するモノクローナル抗体によっても阻害された。これらの結果から、本アッセイがCYP2C9活性の検出に特異的であったことが示された。
【0088】
CYP2C9阻害剤による阻害のカイネティクス。HLMにおける、[4’−3H]−ジクロフェナックからの[3H]−H2OのNADPH−依存的形成に対するCYP2C9阻害剤スルファフェナゾールの影響を図6で示す。スルファフェナゾールは、従来のジクロフェナック4’−ヒドロキシル化アッセイにおけるそのIC50値(HPLC−MS/MS又はHPLC−UV)と同様に、0.2から0.3μMのIC50値でこの反応を阻害した(表1参照。)。
【0089】
放射分析アッセイにおいて得られたいくつかの既知のCYP2C9阻害剤のIC50値を従来のHPLC−質量分析アッセイにより得られた値と比較するために、様々な濃度の既知の阻害剤の存在下又は非存在下で反応を行った。同じ反応混合物中で、トリチウム化水形成及び非標識反応生成物4’OH−ジクロフェナックの形成を調べた。トリプル四重極質量分析と組み合わせたHPLCにより、4’−OH−ジクロフェナックを定量した。[4’−3H]−ジクロフェナックからの[3H]−H2OのNADPH−依存的形成におけるいくつかのCYP阻害剤(ミコナゾール、ニフェジピン、プロゲステロン、α−ナフトフラボン、ジクマロール及びケトコナゾール)の影響を図7Aから図7Fで示す。18種類の化合物に対するIC50値を表1にまとめる。放射性標識及び非放射性標識生成物の形成の阻害に対するIC50値は非常に近かった。全ケースにおいて、IC50値の差は2倍未満であった。18種類の試験化合物のうち、放射分析アッセイの結果に基づき、強い又は弱い阻害剤の何れかとして間違って分類されたものがないといことは、最も重要なことである。IC50値が30μM未満である2種類の化合物を除き、線形回帰分析を行った結果、勾配が1.09及び相関係数r2が0.938である直線が得られた(図8)。これらの結果から、本アッセイにより、CYP2C9阻害剤の強度(IC50)の信頼できる測定を提供することが分かる。
【0090】
ジクロフェナックに対する、蛍光性CYP2C9プローブを用いて得られたIC50値の多数の化合物に関する詳細な比較から、これらのアッセイ間の相関が完璧ではないことが分かった(Cohenら、前掲書中)。例えば、ワーファリンは、ジクロフェナックを用いて調べた場合は(IC5022μM)CYP2C9の阻害剤であったが、蛍光性基質MFCを用いて調べた場合は阻害剤ではなかった。予想されるように、ワーファリンは、本放射分析アッセイでのトリチウム化水形成を阻害し、そのIC50値は15μMであった。蛍光性アッセイと従来のアッセイとの間の相関が乏しいことから、Cohen及び共同研究者らは、蛍光性プローブを用いたスクリーニングの後、従来の基質を用いた試験を行うべきであることを推奨した。このように、スピード、ハイスループット及び従来の基質の使用の長所を組み合わせた本発明のアッセイは、この問題を回避する。
【0091】
【表1】
【実施例3】
【0092】
動的トリチウム同位体効果の決定。次の式(Northrop,Meth.Enzymol.87:607−625(1982))に従い、V/K比に対する、TV/K、動的同位体効果を調べた:
【0093】
【数3】
(式中、fは生成物に対する基質の分画変換であり、SA0は標識基質の最初の比放射能であり、SAPは生成物の比放射能である。)。本実験において観察されるもののようなf(<5%)の低値において、この式は、次の式に変形される(Northrop、前出):
【0094】
【数4】
【0095】
トレーサー競合実験からの非標識生成物の見かけの形成速度の計算。[4’−3H]−ジクロフェナックの固定量及び非標識ジクロフェナックの様々な濃度を用いてアッセイを行う場合、非標識生成物の形成速度vは、次式により与えられる:
【0096】
【数5】
(式中、v*はトリチウム化水の形成速度である。)。式2から差し引くことにより、
【0097】
【数6】
を得て、動的同位体効果で割った非標識生成物の形成速度としてv’を定義し、つまり、
【0098】
【数7】
であり、次式:
【0099】
【数8】
を得る。
【0100】
既知のTV/K比(これは、SAp由来であったため、同語を繰り返すことになる。)を用いずに、v’、非標識生成物の見かけの形成速度を計算できる。基質濃度Sに対してプロットし、Hillの式へフィットさせた場合(式7)、V’max、S50、50%での基質濃度及びn、Hill係数を導き出すことができる。
【0101】
【数9】
式中、
【0102】
【数10】
つまり、生成物形成の見かけの最大速度である。
【0103】
結果
放射性標識ジクロフェナックと非標識ジクロフェナックとの間の競合。HLMにおけるトリチウム化水の形成に対する非標識ジクロフェナックの影響を図9で示す。曲線から、「低用量フック」、すなわち、生成物形成速度が非標識基質の濃度上昇とともに上昇し、〜3μMのジクロフェナック濃度でピークに到達し、次に低下することが示される。この影響は、正の方向に協同するリガンド置換相互作用にとって特徴的である(De Lean及びRodbard、Recept:Compr.Treatise 1:143−192(1979))。トリチウム化生成物の形成が増加する理由は、低基質濃度で、正の方向に協同する酵素の反応速度が、基質濃度が上昇するにつれて用量に比例した上昇よりも大きく上昇するからである。CYP2C9介在性のジクロフェナック4’−ヒドロキシル化が協同的カイネティクスを示すことは以前には報告されていなかったことに留意されたい。これはおそらく、協同性が、本放射分析アッセイの感受性の高い性質により明らかにされ、非常に低い基質濃度でのみ見られ、一方で従来のアッセイは通常、より高い基質濃度で行われることによるものと思われる。しかし、正方向の協同作用及びヘテロ活性化が、ダプソンなどの他のCYP2C9基質に対して報告されいている(Korzekwaら、Biochemistry 37:4137(1998);Hutzlerら、Arch.Biochem.Biophys.410:16(2003);Hummelら、Biochemistry 43:7207(2004);Egnellら、J.Pharmacol.Exp.Ther.307:878(2003))。
【0104】
[4’−3H]−ジクロフェナックを同位体トレーサーとして使用するので、トリチウム化水の形成速度(v*)は、非標識生成物、つまりジクロフェナックの4’−ヒドロキシル化由来の水の形成速度を代表している(これは、4’−ヒドロキシジクロフェナックとともに化学量論的に形成される。)。基質濃度(S)に対するv*の依存性を使用して、非標識生成物の基質濃度への依存性ついての情報を得ることができる(後者が直接測定されないとしても。)。発明者らは、v*、非標識生成物の見かけの形成速度を、動的同位体効果により割った非標識生成物の形成速度(v)として定義する(上記の実験セクションを参照のこと。)。図10で示すように、Sに対するv’の曲線をHillの式にフィットさせることができ、S50=6.8±1.0μM、n=1.15±0.05及びV’max=1.5±0.1nmol/分/mg(平均±SEM、n=2)であった。Hill係数は1よりもわずかに大きく、このことから、弱い正の協同作用が示唆される。実際、低基質濃度において、図10の差込図において示されるように、v’とSとの間でシグモイド型の関係が見られた。
【0105】
4’−ヒドロキシジクロフェナック形成のカイネティクスを図11で示す。この反応は、S50が6.2±0.9μM、Vmaxが1.3±0.3nmol/分/mgタンパク質であり、Hill係数が1.1±0.1であった(平均±SEM、n=3)。V’maxとVmaxとの間の比が0.9であり、これは、顕著な動的同位体効果がないことを示すことに留意されたい。
【実施例4】
【0106】
この実施例は、インタクトな肝細胞において酵素活性及びCYP2C9阻害剤の影響を調べ、定量するための本発明の使用を説明する。
【0107】
確立されたプロトコールに従い、新鮮なヒト肝臓から肝細胞を単離し、液体窒素中で凍結保存した(例えば、Hengstlerら、Drug Metab.Rev.32:81−118(2000);Ferriniら、Methods Mol.Biol.107:341−52(1998)を参照。)。細胞を凍結融解し、150,000個の細胞/cm2の密度でコラーゲン被覆24ウェル又は96ウェル培養プレートにプレーティングし、ITS+(Collaborative Research,Waltham,MA)を添加した肝細胞培養液(HCM)(Dich及びGrunnet、Methods in Molecular Biology,Vol.5:Animal Cell Culture(Pollard及びWalker編)pp.161−176、Humana Press,Clifton,New Jersey.(1989))中で5%CO2の加湿環境下で37℃にて1時間維持した。CYP2C9阻害剤スルファフェナゾール(10μM)の非存在下又は存在下で、10μM非標識ジクロフェナック、[4’−3H]−ジクロフェナック 500,000dpm/mLとともに細胞をインキュベートした。様々な時間後、前もって調整した30mg OASISプレートの個々のウェルにインキュベーション液の一定分量を載せ、水200μLで2回洗浄した。各ウェルに対して、フロースルーを水洗浄液と合わせ、シンチレーション液添加後にβ−カウンタにおいてカウントした。
【0108】
図12で示されるように、ヒト肝細胞中で[4’−3H]−ジクロフェナックから時間依存的にトリチウム化水が形成され、この反応は殆ど完全にCYP2C9阻害剤スルファフェナゾールにより阻害された。これらの結果から、本アッセイを使用して、CYP2C9の活性及びインタクトな肝細胞におけるCYP2C9阻害剤の効果を調べることができることが示される。
【実施例5】
【0109】
この実施例は、CYP2C9発現を誘導する検体を同定するための本発明の使用を説明する。
【0110】
2名の異なるドナーからの凍結保存ヒト肝細胞を得る。細胞(およそ320,000個)を24ウェルコラーゲン被覆培養プレートにプレーティングし、ITS+(Collaborative Research,Waltham,MA)を添加した肝細胞培養液(HCM)(Dich及びGrunnet、前出)中で5%CO2、95%酸素の加湿環境下で37℃にて維持した。24時間後、細胞の各ウェルに対する培養液を除去し、ITSを含有する新鮮なHCMを添加し、ビヒクル(対照)、リフラムピシン、デキサメタゾンもしくはフェノバルビタール(陽性対照)などのCYP2C9発現の誘導剤又はCYP2C9活性誘導能について試験する検体の何れかで48時間、細胞を処理した。次いでCYP2C9酵素活性を次のように求めた。
【0111】
各ウェルに対して、培地を除去し、10mM Hepes、pH7.4、60μM非標識ジクロフェナック及び[4’−3H]−ジクロフェナック200,000dpmを含有するHank’s平衡塩類溶液(HBSS)0.5mL中で37℃にて1時間細胞をインキュベートする。それぞれに対して、酵素活性がCYP2C9により特異的に介在したことを確認するために、スルファフェナゾールなどの阻害剤存在下にて平行インキュベーションを行う。前もって調整した30mgOASISプレートの個々のウェルにインキュベーション液を添加する(これは、水200μLで2回洗浄した。)。各ウェルに対して、フロースルーを水洗浄液と合わせ、シンチレーション液添加後にβ−カウンタにおいてカウントする。CYP2C9発現の誘導剤を含有しない対照と比較したトリチウム化水の存在から、検体がCYP2C9発現の誘導剤であることが示される。
【0112】
検体がCYP2C9発現を誘導することを確認するために、メタノール1mLを用いて4’−ヒドロキシジクロフェナックをOASISプレートから溶出し、N2下で乾燥させ、ギ酸0.1%を含有する50%アセトニトリル/水(50:50)200μL中で再構成する。4’−ヒドロキシジクロフェナックの定量のために、一定分量をHPLC−MS/MS系に注入する。定量は、ピーク領域と、未知の試料のように正確に処理し抽出した標準曲線のそれとの比較に基づく。
【実施例6】
【0113】
この実施例は、HLMを用いて時間依存的CYP2C9アッセイを行う方法の例を示す。
【0114】
次のようにプレインキュベーション段階を行う。約30μL HLM(タンパク質3.3mg/mL、好ましい最終濃度2mg/mL;0.1から5mg/mLの範囲。)、試験検体1μL(35%DMSO、65%メタノール中に溶解)、アッセイ緩衝液9μL(0.1M リン酸カリウム、pH7.6)を含有するプレインキュベーション混合液。NADPH再生系10μL(アッセイ緩衝液中、5mM NADPH、25mMグルコース−6−ホスフェート、17mM MgCl2、5U/mLグルコース−6−ホスフェートデヒドロゲナーゼ)を添加することによりプレインキュベーションを開始する。逆順で様々な時間でプレインキュベーションを開始する(最長のプレインキュベーションを最初に開始し、最短のプレインキュベーションを最後に開始した。)。振盪水浴中で37℃にて0から30分間、混合液をプレインキュベートする。
【0115】
残存活性の測定は次のとおりである。[4’−3H]−ジクロフェナック)(約800,000dpm)、30から100μM非標識ジクロフェナック及び1mM NADPHを含有するアッセイ緩衝液450μLでプレインキュベーション混合液を約10倍希釈することにより第二のインキュベーションを開始する。振盪水浴中で37℃にて10分間インキュベーションを行う。1N HCl約50μLを添加することにより、反応を停止させる。室温にて2800rpmで15分間、プレートを遠心分離する。前もって調整した30mgOASISプレートに上清約300μLを入れる。フロースルーを回収し、120μLの一定分量を96ウェルシンチレーションカウンティングプレート(Packard)に移す。MICROSCINT40シンチレーション液180μLを添加し、プレートを密封し、振盪して、Packard TOPCOUNTシンチレーションカウンタでカウントする。
【0116】
例としての実施形態を参照して本明細書中で本発明を説明してきたが、本発明がこれに限定されないことを理解されたい。当業者及び本明細書中での教示を入手した者は、この範囲内のさらなる修飾及び実施形態を認識する。したがって、本発明は、本明細書に添付の特許請求の範囲によってのみ限定される。
【図面の簡単な説明】
【0117】
【図1】抽出カートリッジ又はカラム10の横断面を示す。
【図2】マルチカラム精密ろ過/抽出プレート100の透視図を示す。
【図3】HLMでの、[4’−3H]−ジクロフェナックからのトリチウム化水のNADPH依存性様式における、インキュベーション時間及びミクロソームタンパク質濃度の影響を示す。このアッセイでは、ウェルあたり10μMジクロフェナック及び標識ジクロフェナック650,000dpmを使用した。HLM濃度は、0.125mg/mL、0.25mg/mL、0.5mg/mL及び1mg/mLであった。
【図4】HLMでの、[4’−3H]−ジクロフェナックからのトリチウム化水の形成における、NADPH及びスルファフェナゾールの影響を示す。このアッセイでは、ウェルあたり10μMジクロフェナック及び標識ジクロフェナック650,000dpmを使用した。HLM濃度は0.125mg/mLであった。
【図5】HLMでの、[4’−3H]−ジクロフェナックからのトリチウム化水のNADPH依存性の形成における、様々なCYP阻害剤の影響を示す。
【図6】HLMでの、[4’−3H]−ジクロフェナックからのトリチウム化水形成のスルファフェナゾールによる濃度依存性阻害を示す。このアッセイでは、ウェルあたり10μMジクロフェナック及び標識ジクロフェナック134,000dpmを使用した。HLM濃度は0.125mg/mLであった。
【図7A】ヒト肝臓ミクロソームでの、[4’−3H]−ジクロフェナックからの[3H]−H2O形成におけるミコナゾールの影響を示す。
【図7B】ヒト肝臓ミクロソームでの、[4’−3H]−ジクロフェナックからの[3H]−H2O形成におけるニフェジピンの影響を示す。
【図7C】ヒト肝臓ミクロソームでの、[4’−3H]−ジクロフェナックからの[3H]−H2O形成におけるプロゲステロンの影響を示す。
【図7D】ヒト肝臓ミクロソームでの、[4’−3H]−ジクロフェナックからの[3H]−H2O形成におけるα−ナフトフラボンの影響を示す。
【図7E】ヒト肝臓ミクロソームでの、[4’−3H]−ジクロフェナックからの[3H]−H2O形成におけるジクマロールの影響を示す。
【図7F】ヒト肝臓ミクロソームでの、[4’−3H]−ジクロフェナックからの[3H]−H2O形成におけるケトコナゾールの影響を示す。
【図8】線形回帰分析による、放射分析とLC−MS/MSアッセイとの間の16種類の薬物に対するIC50値の比較を示す。データは表1からのものであった。
【図9】HLMでの、[4’−3H]−ジクロフェナックからのトリチウム化水形成における、非標識ジクロフェナックの濃度上昇の影響を示す。
【図10】総基質濃度に対するv’の依存性を示す。用語v’は実施例3で述べたとおり定義され、これは、図8で示される生成物カウントから計算した。非線形回帰分析により、データをHillの式にフィットさせた。
【図11】総基質濃度に対する4’−ヒドロキシジクロフェナックの形成速度の依存性を示す。非線形回帰分析により、データをHillの式にフィットさせた。
【図12】10μMスルファフェナゾール存在下又は非存在下での、ヒト肝細胞における[4’−3H]−ジクロフェナックからのトリチウム化水の形成を示す。
【技術分野】
【0001】
(1)発明の分野
本発明は、CYP2C9の活性及び、例えばCYP2C9活性の阻害剤又は誘導剤などの、検体がCYP2C9の活性を調節する可能性を評価するためのアッセイに関する。このアッセイは、基質としての4’位においてトリチウムにより標識されたジクロフェナック及び、CYP2C9による4’位における標識ジクロフェナックのヒドロキシル化の際に生じるトリチウム化水から標識ジクロフェナックを分離するための、ジクロフェナックなどの非極性化合物に選択的に結合する吸着剤を用いる、CYP2C9、CYP2C9を含むミクロソーム又は肝細胞において、ジクロフェナックの4’−ヒドロキシル化を測定することにより、CYP2C9活性を調べる。このアッセイは、CYP2C9酵素活性及び候補薬物のCYP2C9阻害又は誘導の可能性を評価して、さらなる開発から可能性のあるCYP阻害剤又は誘導剤を除外するために有用である。
【背景技術】
【0002】
(2)関連技術の説明
医薬品の薬物動態及び毒物動態特性は、大部分、薬物代謝酵素によるそれらの生体内変化に依存する。哺乳動物における主要な薬物代謝系はチトクロムP450(CYP)であり、これは、肝臓に主に存在するミクロソーム酵素のファミリーである。複数のCYPアイソフォームが、薬物、ステロイド、プロスタノイド、エイコサノイド、脂肪酸及び環境毒素を含む、内在性及び外来性の化学物質の酸化を触媒する(Ioannides、Cytochromes P450.Metabolic and Toxicological Aspects.CRC Press,Boca Raton.(1996))。特定のCYPアイソザイムにより代謝される薬物がその同じ酵素の阻害剤と同時投与されると、その薬物動態が変化し得、悪影響が生じ得る(Bertz及びGranneman、Clin.Pharmacokinet.32:210−258(1997);Lin及びLu,Clin.Pharmacokinet.35:361−390(1998);Thummel及びWilkinson,Ann.Rev.Pharmacol.Toxicol.38:389−430(1998);von Moltkeら、Biochem.Pharmacol.55:113−122(1998))。したがって、代謝阻害のためにクリアランスの変化が起きることを予想し回避できることは重要である。薬物探索プロセス中に、さらなる開発から可能性のある阻害剤を除外するために、候補薬物のCYP阻害の可能性を評価することは、製薬工業における通常業務である(Lin及びLu,前出(1998);Crespi及びStresser,J.Pharmacol.Toxicol.Methods 44:325−331(2000);Bachmann及びGhosh,Curr.Drug.Metab.2:299−314(2001);Riley,Curr.Opin.Drug Disc.Dev.4:45−54(2001))。
【0003】
多様な形態で発現されるCYP2C9は、ヒトにおける最も重要な薬物代謝酵素の1つである。これはヒト肝臓CYP総含量の約20%を構成し、治療上重要な薬物の約10%を代謝する(Miners及びBirkett、Br.J.Pharmacol.45:525−538(1998);Goldstein,Br.J.Clin.Pharmacol.52:349−355(2001);Xieら、Adv.Drug Deliv.Rev.54:1257−1270(2002);Schwarz,Eur.J.Clin.Invest.33:23−30(2003))。CYP2C9の阻害による多くの臨床的に関連する薬物相互作用が述べられている。(Miners及びBirkett、前出;Itoら、Br.J.Clin.Pharmacol.57:473−486(2004))。候補薬物がCYP2C9活性を阻害する可能性を調べるために、いくつかのアッセイ法が現在使用されおり、これらの方法のそれぞれが様々な長所及び短所を示す。最も広く使用されているマーカー反応は、ジクロフェナック4’−ヒドロキシル化、トルブタミン4’−ヒドロキシル化及びS−ワーファリン7’−ヒドロキシル化である。インキュベーションアッセイは通常、酵素源としてヒト肝臓ミクロソーム(HLM)を用い、ヒドロキシル化基質を定量するために紫外線(UV)又は質量分析(MS)検出を伴う高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて行われる。
【0004】
ヒドロキシル化基質を単離し検出するためにHPLCを使用する必要があるため、CYP2C9の阻害剤を検出するための現在のアッセイはハイスループットスクリーニングに適していない。ハイスループットスクリーニングに適切なアッセイを創出するための試みにおいて、多くの蛍光性基質プローブが開発されてきた。これらのプローブを用いると、蛍光を測定することによりヒドロキシル化基質を検出することが可能となる。このアッセイの他の成分から生成物を分離する必要はない。HPLCにより生成物を単離することなく生成物を検出できることから、ハイスループットスクリーニング形式での使用に対してこのアッセイは実用的となる。しかし、蛍光プローブを用いることにはいくつかの欠点がある。第一に、蛍光プローブは1以上のCYPアイソフォームにより代謝されることが多く、したがって、このアッセイは、HLMの代わりに1種類のCYPアイソフォーム(組み換えDNA技術により産生される。)を用いて行わなければない。第二に、蛍光プローブ及び組み換えCYPアイソフォームを用いるアッセイの結果は、HLMにおいて従来のプローブを用いて得られる結果とあまりよく相関しない(Cohenら、Drug Metab.Dispos.31,1005(2003))。相関がない理由としては、HLMに存在するが組み換えCYPアイソフォームを使用するアッセイには存在しない試験阻害剤の代謝及び複数の基質結合部位の存在が挙げられ得る。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、基質としてジクロフェナックを使用することに基づき、少なくとも従来のアッセイと同じ程度に高感度で特異的であり、高スループットスクリーニング形式に容易に適合させることができる、CYP調節因子を同定するためのアッセイが依然として要求されている。肝細胞においてCYP2C9活性を評価するためのアッセイもまた必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、チトクロムP−450アイソフォーム2C9(CYP2C9)の活性及び、検体がCYP2C9活性を阻害する可能性を評価するための、迅速かつ高感度の放射分析アッセイを提供する。このアッセイは、検体存在下での、4’位においてトリチウム標識されたジクロフェナック([4’−3H]−ジクロフェナック)のCYP2C9介在性ヒドロキシル化において生じる[3H]H2Oとしてのトリチウムの放出の検出に基づくものであり、ここで、検体存在下での肝細胞における時間経過によるトリチウム放出の増加又は検体存在下でのCYP2C9を含有する反応での時間経過によるトリチウム放出の減少は、検体がCYP2C9活性の調節因子であることを示す。この方法により、さらに、肝細胞標本におけるCYP2C9の活性を調べることができる。従来のジクロフェナック4’−ヒドロキシル化アッセイとは異なり、本明細書中のアッセイは、HPLC分離及び質量分析を必要としない。代わりに、ジクロフェナックなどの非極性化合物に選択的に結合する吸着剤を用いた固相抽出プロセスにおいて、トリチウム化ジクロフェナックから、トリチウム化水生成物を分離する。インキュベーション、生成物の分離及び放射活性測定を含む本アッセイの全段階が好ましくはマルチウェル形式で行われ、これは自動化できる。
【0007】
したがって、ある実施形態において、本発明は、CYP2C9、4’位においてトリチウム標識されたトリチウム標識ジクロフェナック、NADPH、場合によってはNADPH再生系及び検体を含有する水性混合液を提供することと;CYP2C9が4’位におけるトリチウム標識ジクロフェナックをヒドロキシル化するのに十分な時間、水性混合液をインキュベートすることと(トリチウム標識水が生成する。);場合によっては水性混合液からCYP2C9を除去することと;ジクロフェナックなどの非極性化合物に選択的に結合する吸着剤に水性混合液を添加して、水性混合液からトリチウム標識ジクロフェナックを除去することと;及びトリチウム標識ジクロフェナックが除去された水性混合液中のトリチウム標識水の量を測定することと(検体非存在下でのトリチウム標識水の量に対する検体存在下でのトリチウム標識水の量の減少は、検体がCYP2C9活性を阻害することを示す。)、を含む、CYP2C9活性を阻害する検体を同定するための方法を提供する。
【0008】
上記の実施形態のさらなる態様において、吸着剤は、ポリマーが加湿性となり及び有機溶質保持において有効となるように十分な割合で、少なくとも1個の親水性モノマー及び少なくとも1個の脂溶性モノマーをコポリマー化することにより形成される加湿性ポリマーを含む。上記の実施形態のさらなる態様において、脂溶性モノマーは、フェニル、フェニレン、エーテル又はC2−C18アルキル基を含む。さらなる態様において、脂溶性モノマーはジビニルベンゼンである。上記の実施形態のさらなる態様において、親水性モノマーは、飽和、不飽和又は芳香族複素環基を含む。さらなる態様において、親水性モノマーは、N−ビニルピロリドンである。上記の実施形態のさらなる態様において、加湿性ポリマーは、ポリ(ビニルベンゼン−コ−N−ビニルピロリドン、好ましくは、ポリ(ビニルベンゼン−コ−N−ビニルピロリドンが12モル%を超えるN−ビニルピロリドンを含むポリマー、より好ましくは、ポリ(ビニルベンゼン−コ−N−ビニルピロリドンが約15モル%から約30モル%のN−ビニルピロリドンを含むポリマーである。
【0009】
上記の実施形態の別の態様において、吸着剤は、シリカ基材に結合された非極性基を含有する。さらなる態様において、吸着剤は、フェニルシラン、ジメチルシラン、トリメチルシラン、エチルシラン、ブチルシラン、ヘキシルシラン、オクチルシラン及びオクタデシルシランからなる群から選択される1以上のシランを含む。さらなる態様において、シリカ基材は、シリカ粒子及びシリカゲルからなる群から選択される。
【0010】
さらなる実施形態において、吸着剤は活性炭を含む。
【0011】
さらなる実施形態において、本発明は、CYP2C9、4’位においてのみトリチウム標識されたトリチウム標識ジクロフェナック、NADPH、場合によってはNADPH再生系及び検体を含有する混合物を提供することと;CYP2C9活性が4’位におけるトリチウム標識ジクロフェナックをヒドロキシル化するのに十分な時間、混合物をインキュベートし、場合によっては混合物からCYP2C9を除去することと;ポリマーが加湿性となり及び有機溶質保持において有効となるように十分な割合で、少なくとも1個の親水性モノマー及び少なくとも1個の脂溶性モノマーをコポリマー化することにより形成される加湿性ポリマーに混合物を添加して、水性混合液からトリチウム標識ジクロフェナックを除去することと;及びトリチウム標識ジクロフェナックが除去された混合物中のトリチウムの量を測定することと(検体存在下でのトリチウム量の減少は、検体がCYP2C9の活性を阻害することを示す。)、を含む、CYP2C9活性を阻害する検体を同定するための方法を提供する。
【0012】
上記の実施形態のさらなる態様において、脂溶性モノマーは、フェニル、フェニレン、エーテル又はC2−C18アルキル基を含む。さらなる態様において、脂溶性モノマーはジビニルベンゼンである。
【0013】
上記の実施形態のさらなる態様において、親水性モノマーは、飽和、不飽和又は芳香族複素環基を含む。さらなる態様において、親水性モノマーはN−ビニルピロリドンである。
【0014】
上記の実施形態のさらなる態様において、加湿性ポリマーは、ポリ(ビニルベンゼン−コ−N−ビニルピロリドン、好ましくは、ポリ(ビニルベンゼン−コ−N−ビニルピロリドンが12モル%を超えるN−ビニルピロリドンを含むポリマー、より好ましくは、ポリ(ビニルベンゼン−コ−N−ビニルピロリドンが約15モル%から約30モル%のN−ビニルピロリドンを含むポリマーである。
【0015】
さらなる実施形態において、本発明は、CYP2C9、4’位においてトリチウム標識されたトリチウム標識ジクロフェナック、NADPH、場合によってはNADPH再生系及び検体を含有する混合物を提供することと;CYP2C9活性が4’位におけるトリチウム標識ジクロフェナックをヒドロキシル化するのに十分な時間、混合物をインキュベートすることと;場合によっては混合物からCYP2C9を除去することと;形成されるポリ(ビニルベンゼン−コ−N−ビニルピロリドンが加湿性となり及び有機溶質保持において有効となるような、N−ビニルピロリジンに対するジビニルベンゼンの割合で、ジビニルベンゼン及びN−ビニルピロリジンをコポリマー化することにより形成される加湿性ポリマーに混合物を添加して、混合物中のトリチウム標識水からヒト肝臓ミクロソーム及びトリチウム標識ジクロフェナックを分離することと;トリチウム標識ジクロフェナックが除去された水性混合液中のトリチウム量を測定することと(検体存在下でのトリチウム量の減少は、検体がCYP2C9活性を阻害することを示す。)、を含む、CYP2C9の活性を阻害する検体を同定するための方法を提供する。
【0016】
上記の実施形態のさらなる態様において、ポリ(ビニルベンゼン−コ−N−ビニルピロリドンは12モル%を超えるN−ビニルピロリドンを含み、より好ましくは、ポリ(ビニルベンゼン−コ−N−ビニルピロリドンが約15モル%から約30モル%のN−ビニルピロリドンを含むポリマーである。
【0017】
上記のさらなる実施形態において、加湿性ポリマーは、固相抽出カートリッジ又はカラムの内側に充てんされる。上記の何れか1つの特に好ましい実施形態において、本方法は、インキュベーションを行うための第一のマルチウェルプレート、インキュベーション後にトリチウム化水から標識ジクロフェナックを分離するための、マルチウェルプレートと同じ配列であるマルチカラムプレート及びトリチウムを測定するためにマルチカラムからカラム空隙容量及び洗浄液を回収するための第二のマルチウェルプレート、を含むマルチウェルプレート形式で行われる。
【0018】
本発明はさらに、マルチウェルプレート及び、固相抽出カートリッジの一連を有しているカラムプレート又はカラム(ジクロフェナックなどの非極性化合物に選択的に結合する吸着剤をその中に有する。)を提供することと;マルチウェルプレートのウェルのそれぞれに、CYP2C9、4’位においてのみトリチウムにより標識されたトリチウム標識ジクロフェナック及び検体を含有する混合物を添加することと;上記のウェルのそれぞれの中の混合物にNADPH及び場合によってはNADPH再生系を接触させ、CYP2C9が4’位でトリチウム標識ジクロフェナックをヒドロキシル化するのに十分な時間、インキュベートすることと;場合によっては、マルチウェルプレートのウェルのそれぞれの中の混合物からCYP2C9を分離することと;カラムプレートの個々のミニカラムに各混合物を添加して、混合物からトリチウム標識ジクロフェナックを除去することと;及びトリチウム標識ジクロフェナックが除去された混合物中のトリチウム量を測定することと(検体存在下でのトリチウム標識水の量の減少は、検体がCYP2C9活性を阻害することを示す。)、を含む、CYP2C9の活性を阻害する検体を同定するための方法を提供する。
【0019】
上記の実施形態のさらなる態様において、吸着剤は、ポリマーが加湿性となり及び有機溶質保持において有効となるように十分な割合で、少なくとも1個の親水性モノマー及び少なくとも1個の脂溶性モノマーをコポリマー化することにより形成される加湿性ポリマーを含む。上記の実施形態のさらなる態様において、脂溶性モノマーは、フェニル、フェニレン、エーテル又はC2−C18アルキル基を含む。さらなる態様において、脂溶性モノマーはジビニルベンゼンである。上記の実施形態のさらなる態様において、親水性モノマーは、飽和、不飽和又は芳香族複素環基を含む。さらなる態様において、親水性モノマーはN−ビニルピロリドンである。上記の実施形態のさらなる態様において、加湿性ポリマーは、ポリ(ビニルベンゼン−コ−N−ビニルピロリドン、好ましくは、ポリ(ビニルベンゼン−コ−N−ビニルピロリドンが12モル%を超えるN−ビニルピロリドンを含むポリマー、より好ましくは、ポリ(ビニルベンゼン−コ−N−ビニルピロリドンが約15モル%から約30モル%のN−ビニルピロリドンを含むポリマーである。
【0020】
上記の実施形態の別の態様において、吸着剤は、シリカ基材に結合された非極性基を含む。さらなる態様において、吸着剤は、フェニルシラン、ジメチルシラン、トリメチルシラン、エチルシラン、ブチルシラン、ヘキシルシラン、オクチルシラン及びオクタデシルシランからなる群から選択される1以上のシランを含む。さらなる態様において、シリカ基材は、シリカ粒子及びシリカゲルからなる群から選択される。
【0021】
本発明は、さらに、マルチウェルプレート及び、固相抽出カートリッジの一連を有しているカラムプレート又はカラム(ポリマーが加湿性となり及び有機溶質保持において有効となるように十分な割合で、少なくとも1個の親水性モノマー及び少なくとも1個の脂溶性モノマーをコポリマー化することにより形成される加湿性ポリマーをその中に有する。)を提供することと;マルチウェルプレートのウェルのそれぞれに、CYP2C9、4’位においてトリチウムにより標識されたトリチウム標識ジクロフェナック及び検体を含有する混合物を添加することと;上記ウェルのそれぞれの中の混合物にNADPH及び場合によってはNADPH再生系を接触させ、CYP2C9が4’位におけるトリチウム標識ジクロフェナックをヒドロキシル化するのに十分な時間、インキュベートすることと;場合によっては、マルチウェルプレートのウェルのそれぞれの中の混合物からCYP2C9を分離することと;カラムプレートの個々のミニカラムに各水性混合液を添加して、混合物からトリチウム標識ジクロフェナックを除去することと;トリチウム標識ジクロフェナックが除去された混合物中のトリチウム量を測定することと(検体存在下でのトリチウム標識水の量の減少は、検体がCYP2C9活性を阻害することを示す。)、を含む、CYP2C9活性を阻害する検体を同定するための方法を提供する。
【0022】
上記の実施形態のさらなる態様において、脂溶性モノマーは、フェニル、フェニレン、エーテル又はC2−C18アルキル基を含む。さらなる態様において、脂溶性モノマーはジビニルベンゼンである。
【0023】
上記の実施形態のさらなる態様において、親水性モノマーは、飽和、不飽和又は芳香族複素環基を含む。さらなる態様において、親水性モノマーは、N−ビニルピロリドンである。
【0024】
上記の実施形態のさらなる態様において、加湿性ポリマーは、ポリ(ビニルベンゼン−コ−N−ビニルピロリドン、好ましくは、ポリ(ビニルベンゼン−コ−N−ビニルピロリドンが12モル%を超えるN−ビニルピロリドンを含むポリマー、より好ましくは、ポリ(ビニルベンゼン−コ−N−ビニルピロリドンが約15モル%から約30モル%のN−ビニルピロリドンを含むポリマーである。
【0025】
さらなる実施形態において、本発明は、マルチウェルプレート及び、固相抽出カートリッジの一連を有しているカラムプレート又はカラム(形成されるポリ(ビニルベンゼン−コ−N−ビニルピロリドンが加湿性となり及び有機溶質保持において有効となるような、N−ビニルピロリジンに対するジビニルベンゼンの割合で、ジビニルベンゼン及びN−ビニルピロリジンをコポリマー化することにより形成される加湿性ポリマーをその中に有する。)を提供することと;マルチウェルプレートのウェルのそれぞれに、CYP2C9、4’位においてトリチウムにより標識されたトリチウム標識ジクロフェナック及び検体を含有する混合物を添加することと;ウェルのそれぞれの中の混合物にNADPH及び場合によってはNADPH再生系を接触させ、CYP2C9が4’位におけるトリチウム標識ジクロフェナックをヒドロキシル化するのに十分な時間、インキュベートすることと;場合によっては、マルチウェルプレートのウェルのそれぞれの中の混合物からCYP2C9を分離することと;カラムプレートの個々のミニカラムに各混合物を添加して、混合物からトリチウム標識ジクロフェナックを除去することと;及びトリチウム標識ジクロフェナックが除去された混合物中のトリチウム標識水の量を測定することと(検体非存在下でのトリチウム標識水の量に対する検体存在下でのトリチウム標識水の量の減少は、検体がCYP2C9活性を阻害することを示す。)、を含む、CYP2C9活性を阻害する検体を同定するための方法を提供する。
【0026】
上記の実施形態のさらなる態様において、ポリ(ビニルベンゼン−コ−N−ビニルピロリドンは、12モル%を超えるN−ビニルピロリドンを含み、より好ましくは、ポリ(ビニルベンゼン−コ−N−ビニルピロリドンが約15モル%から約30モル%のN−ビニルピロリドンを含むポリマーである。
【0027】
上記の実施形態及び態様の何れか1つのさらなる態様において、カラムプレートのミニカラムのそれぞれは、ポリマーを保持するための多孔性保持手段をさらに含む。好ましい実施形態において、マルチウェルプレート及びカラムプレートのウェルはそれぞれ、96ウェル組織培養プレートの形式を有する。
【0028】
上記の実施形態の何れか1つのさらなる実施形態において、2−ヨードフェニル酢酸及び2,6−ジクロロ4−ブロモアニリンの混合物を提供すること;銅触媒の存在下に混合物をインキュベートして、2−[(2,6−ジクロロ,4−ブロモフェニル)アミノ]フェニル酢酸を生成させること;パラジウム触媒存在下にトリチウムとともに2−[(2,6−ジクロロ,4−ブロモフェニル)アミノ]フェニル酢酸をインキュベートして、4’位において標識されたジクロフェナックを生成させることにより、ジクロフェナックを4’位において標識する。
【0029】
本発明は、さらに、CYP2C9、NADPH再生系及び検体を含有する混合物を提供することと;様々な時間、混合物をインキュベートすることと;混合物を希釈し、次いで希釈混合物に4’位においてトリチウムにより標識されたジクロフェナック及びNADPHを添加することと;CYP2C9が4’位においてトリチウム標識ジクロフェナックをヒドロキシル化するのに十分な時間、希釈混合物をインキュベートすることと;混合物からCYP2C9を除去することと;非極性化合物に選択的に結合する吸着剤に混合物を添加して、混合物からトリチウム標識ジクロフェナックを除去することと;及びトリチウム標識ジクロフェナックが除去された段階(d)の混合物中のトリチウム量を測定することと(トリチウム量の減少は、検体が不可逆的にCYP2C9の活性を阻害することを示す。)、を含む、チトクロム2C9(CYP2C9)の活性を不可逆的に阻害する検体を同定するための方法を提供する。
【0030】
上記の実施形態のさらなる態様において、吸着剤は、ポリマーが加湿性となり及び有機溶質保持において有効となるように十分な割合で、少なくとも1個の親水性モノマー及び少なくとも1個の脂溶性モノマーをコポリマー化することにより形成される加湿性ポリマーを含む。上記の実施形態のさらなる態様において、脂溶性モノマーは、フェニル、フェニレン、エーテル又はC2−C18アルキル基を含む。さらなる態様において、脂溶性モノマーはジビニルベンゼンである。上記の実施形態のさらなる態様において、親水性モノマーは、飽和、不飽和又は芳香族複素環基を含む。さらなる態様において、親水性モノマーはN−ビニルピロリドンである。上記の実施形態のさらなる態様において、加湿性ポリマーは、ポリ(ビニルベンゼン−コ−N−ビニルピロリドン、好ましくは、ポリ(ビニルベンゼン−コ−N−ビニルピロリドンが12モル%を超えるN−ビニルピロリドンを含むポリマー、より好ましくは、ポリ(ビニルベンゼン−コ−N−ビニルピロリドンが約15モル%から約30モル%のN−ビニルピロリドンを含むポリマーである。
【0031】
上記の実施形態の別の態様において、吸着剤は、シリカ基材に結合された非極性基を含む。さらなる態様において、吸着剤は、フェニルシラン、ジメチルシラン、トリメチルシラン、エチルシラン、ブチルシラン、ヘキシルシラン、オクチルシラン及びオクタデシルシランからなる群から選択される1以上のシランを含む。さらなる態様において、シリカ基材は、シリカ粒子及びシリカゲルからなる群から選択される。
【0032】
上記の実施形態及び態様の何れか1つの特定の実施形態において、CYP2C9はミクロソームにおいて提供される。ミクロソームは、哺乳動物及び昆虫細胞からなる群から選択される細胞から生成され得、この細胞は、CYP2C9を発現するベクター(例えば、ウイルス又はプラスミドベクター)を含むか、又はミクロソームは、腎臓、肝臓、脳、筋肉などの細胞由来であり得る。好ましくは、ミクロソームは、ヒト肝臓ミクロソーム(HLM)である。CYP2C9源としてHLMを使用する上記の実施形態及び態様の何れか1つの特定の実施形態において、酸性化及び/又は遠心分離により水性混合液からHLMが除去される。
【0033】
さらなる実施形態において、本発明は、肝細胞の培養物を提供することと;CYP2C9がトリチウム標識ジクロフェナックをヒドロキシル化するのに十分な時間、4’位においてトリチウムにより標識されたジクロフェナックを含有する培地中で肝細胞をインキュベートすることと;肝細胞の培養物から培地を除去することと;非極性化合物に選択的に結合する吸着剤に培地を添加して、培地からトリチウム標識ジクロフェナックを除去することと;及びトリチウム標識ジクロフェナックが除去された培地中のトリチウム量を測定することと(これは、肝細胞におけるCYP2C9の活性を決定する。)、を含む、肝細胞においてCYP2C9の活性を決定するための方法を提供する。
【0034】
さらなる実施形態において、本発明は、肝細胞の培養物を提供することと;検体を含有する培地中で肝細胞をインキュベートすることと;4’位においてトリチウムにより標識されたジクロフェナックを含有する第二の培地で検体を含有する培地を置き換え、CYP2C9が4’位におけるトリチウム標識ジクロフェナックをヒドロキシル化するのに十分な時間、肝細胞をインキュベートすることと;肝細胞の培養物から第二のメディウムを除去することと;非極性化合物に選択的に結合する吸着剤に第二の培地を添加して、培地からトリチウム標識ジクロフェナックを除去することと;及びトリチウム標識ジクロフェナックが除去された第二の培地中のトリチウム量を測定することと(トリチウム標識ジクロフェナックを含み検体不含の状態でインキュベートした肝細胞の対照培養物に対するトリチウム量の増加は、検体がCYP2C9発現を誘導することを示す。)、を含む、CYP2C9発現を誘導する検体を同定するための方法を提供する。好ましくは、検体を含有する培地中で約24時間から78時間、肝細胞をインキュベートする。
【0035】
さらなる実施形態において、本発明は、肝細胞の培養物を提供することと;CYP2C9がトリチウム標識ジクロフェナックをヒドロキシル化するのに十分な時間、4’位においてトリチウム標識されたジクロフェナック及び検体を含有する培地中で肝細胞をインキュベートすることと;肝細胞の培養物から培地を除去することと;非極性化合物に選択的に結合する吸着剤に培地を添加して、培地からトリチウム標識ジクロフェナックを除去することと;及びトリチウム標識ジクロフェナックが除去された培地中のトリチウム量を測定することと(トリチウム標識ジクロフェナックを含み検体不含の状態でインキュベートした肝細胞の対照培養物に対するトリチウム量の減少は、検体がCYP2C9活性を阻害することを示す。)、を含む、CYP2C9活性を阻害する検体を同定するための方法を提供する。
【0036】
上記の実施形態のさらなる態様において、肝細胞の培養物はマルチウェルプレートの1以上のウェルにおいて提供され、吸着剤は、カラムプレートを構成する、1以上の固相抽出カートリッジ又はカラムに充てんされて提供される。
【0037】
上記の実施形態のさらなる態様において、吸着剤は、ポリマーが加湿性となり及び有機溶質保持において有効となるように十分な割合で、少なくとも1個の親水性モノマー及び少なくとも1個の脂溶性モノマーをコポリマー化することにより形成される加湿性ポリマーを含む。上記の実施形態のさらなる態様において、脂溶性モノマーは、フェニル、フェニレン、エーテル又はC2−C18アルキル基を含む。さらなる態様において、脂溶性モノマーはジビニルベンゼンである。上記の実施形態のさらなる態様において、親水性モノマーは、飽和、不飽和又は芳香族複素環基を含む。さらなる態様において、親水性モノマーはN−ビニルピロリドンである。上記の実施形態のさらなる態様において、加湿性ポリマーはポリ(ビニルベンゼン−コ−N−ビニルピロリドン、好ましくは、ポリ(ビニルベンゼン−コ−N−ビニルピロリドンが12モル%を超えるN−ビニルピロリドンを含むポリマー、より好ましくは、ポリ(ビニルベンゼン−コ−N−ビニルピロリドンが約15モル%から約30モル%のN−ビニルピロリドンを含むポリマーである。
【0038】
上記の実施形態の別の態様において、吸着剤は、シリカ基材に結合された非極性基を含む。さらなる態様において、吸着剤は、フェニルシラン、ジメチルシラン、トリメチルシラン、エチルシラン、ブチルシラン、ヘキシルシラン、オクチルシラン及びオクタデシルシランからなる群から選択される1以上のシランを含む。さらなる態様において、シリカ基材は、シリカ粒子及びシリカゲルからなる群から選択される。
【0039】
上記の実施形態のさらなる態様において、2−ヨードフェニル酢酸及び2,6−ジクロロ4−ブロモアニリンの混合物を提供すること;銅触媒の存在下に混合物をインキュベートして、2−[(2,6−ジクロロ,4−ブロモフェニル)アミノ]フェニル酢酸を生成させること;及びパラジウム触媒存在下にトリチウムとともに2−[(2,6−ジクロロ,4−ブロモフェニル)アミノ]フェニル酢酸をインキュベートして、4’位における標識されたジクロフェナックを生成させることにより、ジクロフェナックを4’位で標識する。
【0040】
本発明はさらに、2−ヨードフェニル酢酸及び2,6−ジクロロ4−ブロモアニリンの混合物を提供することと;2−[(2,6−ジクロロ,4−ブロモフェニル)アミノ]フェニル酢酸を生成させるために銅触媒存在下に混合物をインキュベートすることと;及びパラジウム触媒存在下に2−[(2,6−ジクロロ,4−ブロモフェニル)アミノ]フェニル酢酸をトリチウムと共にインキュベートして、4’位において標識されたジクロフェナックを生成させることと;を含む、4’位でトリチウムにより標識されたジクロフェナックを生成させるための方法を提供する。好ましくは、[4−3H]−ジクロフェナックを生成させるためにトリチウムガスを使用する。
【0041】
本発明はさらに、トリチウムにより4’位で標識されたジクロフェナック([4−3H]−ジクロフェナック)及び2−[(2,6−ジクロロ,4−ブロモフェニル)アミノ]フェニル酢酸(4’−ブロモジクロフェナック)を提供する。
【0042】
本明細書中で使用する場合、「検体」という用語は、分子、化合物、化学物質、組成物、薬物などを指す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0043】
本発明は、チトクロムP450アイソフォーム2C9(CYP2C9)活性を評価するための、及びCYP2C9活性の調節因子を同定するための、迅速かつ高感度のジクロフェナック4’−ヒドロキシル化アッセイを提供する。とりわけ、本発明は、CYP2C9を含有する混合物中のCYP2C9の活性を評価するためのアッセイを提供する。本アッセイは、可逆的阻害アッセイ及び機能ベース又は時間依存的阻害アッセイの両方を含む。このような混合物の例として、ヒト肝臓ミクロソーム(HLM)などの様々な組織からのミクロソーム;組み換えCYP2C9を発現する発現ベクターを含有する哺乳動物又は昆虫細胞からのミクロソーム;又は肝細胞、上記混合物の何れかの中で検体がCYP2C9の活性を阻害する可能性及び肝細胞において検体がCYP2C9発現を誘導する可能性が含まれる。好ましくは、CYP2C9は、ヒトCYP2C9である。本アッセイは、検体存在下での、CYP2C9が介在する、4’位においてトリチウム標識されたジクロフェナックの4’−ヒドロキシル化において生じる[3H]−H2Oとしてのトリチウムの放出を検出することに基づき、本アッセイにおいて、時間経過による放出の増減は、検体がCYP2C9活性の調節因子であることを示す。例えば、検体存在下でのHLM中のトリチウム放出の減少は、検体がCYP2C9活性の阻害剤であることを示し、一方、検体での肝細胞処理後の肝細胞におけるトリチウム放出の増加は、検体がCYP2C9活性の誘導剤であることを示す。ジクロフェナックなどの非極性化合物に選択的に結合する基材を含む吸着剤を用いて固相抽出プロセスにおいてトリチウム化ジクロフェナックからトリチウム化水生成物を分離する。インキュベーション、生成物分離及び放射活性カウントを含むアッセイの全段階がマルチウェル形式で行われ、これは自動化することができる。
【0044】
ある態様において肝細胞を用いてCYP2C9の活性を誘導又は阻害する検体を同定するための実施形態により、CYP2C9をコードする遺伝子の発現を阻害又は誘導する検体、即ち、CYP2C9をコードする遺伝子の転写に影響を与える検体が同定される。別の態様における実施形態によって、CYP2C9をコードするmRNAの転写後プロセシングに影響を与えることによりCYP2C9活性において阻害又は誘導効果を示す検体が同定される。さらなる態様における実施形態によって、CYP2C9をコードするmRNAの翻訳に影響を与えることによりCYP2C9活性において阻害又は誘導効果を示す検体が同定される。さらなる態様における実施形態によって、CYP2C9と直接又は間接的に相互作用することによりCYP2C9活性において阻害又は誘導効果を示す検体が同定される。
【0045】
CYP2C9の活性を評価するための実施形態は、例えば新しい化学物質を用いて代謝安定性試験を行うための肝細胞を使用する前など、市販のバッチの肝細胞の活性又は研究室内で単離された肝細胞の質を調整するために有用である。CYP2C9調節因子を同定するための実施形態は、さらなる開発から強力な阻害剤又は誘導剤である候補薬物を排除するために、候補薬物のCYP2C9阻害又は誘導の可能性を評価するのに有用である。何れかの実施形態において、本発明は、検体のCYP2C9阻害又は誘導の可能性を評価するためにHPLC分離及び質量分析に依存する先行技術アッセイにおける改良法である。
【0046】
本アッセイは本明細書中でHLM又は肝細胞を用いて説明されるが、本アッセイは、精製組み換えCYP2C9又は、例えば腎臓、腸、肺などの他の組織から調製されたミクロソーム又はミクロソームを含有するその他の細胞内分画を使用し得る。CYP2C9、好ましくはヒトCYP2C9を発現する、プラスミド又はウイルスベクターを含有する哺乳動物細胞からミクロソームを調製することができる。ミクロソームは、CYP2C9及びp450レダクターゼを発現する組み換えバキュロウイルスに感染した昆虫細胞由来であり得る。組み換えCYP2C9を発現する細胞の長所は、CYP2C9が、これらのミクロソームにおいて存在する唯一のチトクロムP450であり、通常は比活性がより高いことである。組み換えCYP2C9を用いたアッセイに対する濃度範囲は約1から100pmol/mLであり、好ましい濃度は、約5から50pmol/mLの間である。時間依存的アッセイの場合、酵素は5から10倍高いものであるべきである(第二のインキュベーションにおける最終希釈のため。)。
【0047】
CYP2C9活性の阻害について検体を試験するために、CYP2C9活性における阻害効果について試験すべき検体、基質プローブとしての4’位においてトリチウム標識されたジクロフェナック、適切な基質濃度を与えるための非標識ジクロフェナック、プールされたHLM及び生理的pHの緩衝液を含む水性混合液を含有する第一の容器を提供する。通常、トリチウム標識ジクロフェナックの約10,000から1,000,000dpmの間を使用し、好ましくは、標識ジクロフェナックは約100,000dpmである。非標識ジクロフェナックの量は、約1から100μMの間、通常は約10μMである。プールされたHLMは、一般に約0.05から1mg/mL、通常約0.1mg/mLである。適切な緩衝液の例は、0.1Mリン酸カリウム、pH7.6である。最終体積は、好ましくは約100μLの間である。好ましくは、検体に対して使用されるビヒクルの当量を含有する対照を提供する。
【0048】
37℃にて数分間緩衝液中でミクロソームの好ましいインキュベーション段階を行った後、約5mMグルコース−6−ホスフェート、約3mM MgCl2及び約1ユニット/mLグルコース−6−ホスフェートデヒドロゲナーゼを含有するNADPH再生系あり又は無しで、約1mM NADPHを水性混合液に添加して反応混合物を形成し、次いでこれをジクロフェナックの4’ヒドロキシル化が可能となるのに十分な時間、37℃でインキュベートする。好ましい実施形態において、NADPHは再生系とともに添加される。通常、約10分間という時間は、CYP2C9の活性を検出するのに一般に十分である。場合によっては、様々な時間の長さで複数のアッセイを行う。次に、約0.1Nの濃度のHClなどの酸を添加することにより、反応混合物を反応停止させる。好ましくは、トリチウム化ジクロフェナックからトリチウム化水を分離するための抽出カートリッジ又はカラムに反応混合物を移す前に、水性混合液からHLMを除去する。ろ過、遠心分離などにより、水層からHLMを除去することができる。好ましい実施形態において、遠心分離によりHLMを除去する。反応の酸性化によりHLM中のタンパク質が沈殿するので、低速遠心分離を用いてHLMのタンパク質を除去することができる。
【0049】
ジクロフェナックなどの非極性化合物に選択的に結合する吸着剤を含有する抽出カートリッジ又はカラムに、HLMが除去された水性混合液又はHLMを含有する反応混合物を移す。カラムからの、空隙容積又はフロースルーを第二の容器で回収する。カラム中の吸着剤を水で洗浄し、洗浄液を第二の容器に移す。シンチレーション液を第二の容器に添加し、CYP2C9によりトリチウム化ジクロフェナックから放出されたトリチウムを測定する。あるいは、空隙容積又はフロースルー及び洗浄液をシンチレーションバイアルに移し、シンチレーションカウンタにおいてトリチウムを測定するためにシンチレーション液と混合する。トリチウム化水がないか、又は陽性対照においてトリチウム化水の量と比較してトリチウム化水が減少していることは、検体がCYP2C9活性の阻害剤であることを示す。
【0050】
肝細胞の調製物のCYP2C9活性を次のように調べる。新しく肝臓組織から単離された肝細胞を含み得る、又は既に単離され、冷凍保存され、アッセイのために凍結融解された肝細胞の初代培養を提供する。培地中、又は肝細胞を培養するのに適切な水性混合液中で、5%CO2及び95%空気又は酸素の加湿環境中で37℃において肝細胞を維持する(例えば、Dich及びGrunnet(Methods in Molecular Biology,Vol.5:Animal Cell Culture(Polland及びWalker編)pp.161−176、Humana press、Clifton,New Jersey(1989))を参照のこと。)。懸濁液中又は細胞培養プレートに接着した培養細胞においての何れかの細胞を用いてアッセイを行うことができる。懸濁液アッセイの場合、通常、約1x105個の細胞/mLから約1x106個の細胞/mLの濃度、好ましくは約1x106個の細胞/mLの濃度で肝細胞をインキュベートする。したがって、各培養ウェルは、約1x106個の細胞、肝細胞培地(HCM)1mL(Dich及びGrunnet、前出)、非標識ジクロフェナック及びトリチウム標識ジクロフェナックを含有する。通常、約100,000から2,000,000dpmの間のトリチウム標識ジクロフェナックを使用する。非標識トリチウムの量は、約1から50μMの間、通常は約10μMである。プレーティングされた細胞においてアッセイを行う場合、組織培養プレートに肝細胞をプレーティングし(好ましくは、培養プレートはコラーゲン被覆した24又は96ウェル組織培養プレートである。)、新鮮な肝細胞の培養に適切な培地(例えばHCM)中で5%CO2の加湿環境において37℃にて維持する。好ましくは、培地にITSを添加する。通常、約150,000から200,000個の細胞/cm2の密度で肝細胞をプレーティングする。
【0051】
インキュベーション後、例えば遠心分離によりインキュベーション液を細胞から除去し、ジクロフェナックなどの非極性化合物に選択的に結合する吸着剤を含有する抽出カートリッジ又はカラムに移す。カラムからの空隙容積又はフロースルーを第二の容器で回収する。カラム中の吸着剤を水で数回洗浄し、洗浄液を第二の容器に移す。シンチレーション液を第二の容器に添加し、CYP2C9によりトリチウム化ジクロフェナックから放出されたトリチウムを測定する。あるいは、空隙容積又はフロースルー及び洗浄液をシンチレーションバイアルに移し、シンチレーションカウンタにおいてトリチウムを測定するためにシンチレーション液と混合する。生成したトリチウム化水の量により、肝細胞の相対的CYP2C9活性が決定される。
【0052】
検体がCYP2C9活性を阻害する能力を調べるためのアッセイは次の通りである。新しく肝臓組織から単離された肝細胞を含み得る、又は既に単離され、冷凍保存され、アッセイのために凍結融解された肝細胞の初代培養を提供する。懸濁液中又は細胞培養プレートに接着した培養細胞においての何れかの細胞を用いてアッセイを行うことができる。懸濁液アッセイの場合、上記のように肝細胞を培養するのに適切な培地中で5%CO2の加湿環境中で37℃にて肝細胞を維持する。通常、肝細胞は、約1x106個の細胞/mLの濃度でインキュベートする。懸濁液ではないアッセイの場合、組織培養プレートに肝細胞をプレーティングし(好ましくはコラーゲン被覆した組織培養プレート)、肝細胞を培養するのに適切な培地(例えばHCM)中で5%CO2の加湿環境中で37℃にて維持する。したがって、各培養ウェルは、約1x106個の細胞、HCM 1mL、CYP2C9の活性における阻害効果について試験すべき検体、非標識ジクロフェナック及びトリチウム標識ジクロフェナックを含有する。通常、トリチウム標識ジクロフェナック約100,000から2,000,000dpmを使用し、好ましくは、約500,000dpm/mLである。非標識ジクロフェナックの量は、約1から50μM、通常は約10μMである。好ましくは、検体に対するビヒクル又はスルファフェナゾールなどのCYP2C9阻害剤を含む対照を提供する。
【0053】
インキュベーション後、細胞からインキュベーション液を除去し、ジクロフェナックなどの非極性化合物に選択的に結合する吸着剤を含有する抽出カートリッジ又はカラムに移す。カラムからの空隙容積又はフロースルーを第二の容器で回収する。カラム中の吸着剤を水で数回洗浄し、洗浄液を第二の容器に移す。シンチレーション液を第二の容器に添加し、CYP2C9によりトリチウム化ジクロフェナックから放出されたトリチウムを測定する。あるいは、空隙容積又はフロースルー及び洗浄液をシンチレーションバイアルに移し、シンチレーションカウンタにおいてトリチウムを測定するためにシンチレーション液と混合する。トリチウム化水がない、又はビヒクルのみを含有する対照におけるトリチウム化水の量と比較してトリチウム化水が減少していることは、検体がCYP2C9活性の阻害剤であることを示す。
【0054】
検体がCYP2C9活性を誘導する能力を調べるためのアッセイは次の通りである。新しく肝臓組織から単離された肝細胞を含み得る、又は既に単離され、冷凍保存され、アッセイのために凍結融解された肝細胞の初代培養を提供する。組織培養プレートに肝細胞をプレーティングし(好ましくは、培養プレートはコラーゲン被覆した24又は96ウェル組織培養プレートである。)、新鮮な肝細胞の培養に適切な培地(例えばHCM)中で5%CO2の加湿環境において37℃にて維持する。好ましくは、培地にITSを添加する。通常、肝細胞を約150,000から200,000個の細胞/cm2の密度でプレーティングする。24時間から78時間後、培地を除去し、新鮮な培地及び、誘導の可能性についての試験を行う検体を肝細胞に添加する。好ましくは、検体に対するビヒクル又はリファムピシン又はフェノバルビトールなどの公知の誘導剤の何れかを含有する対照を提供する。上記のようにCYP2C9の誘導に十分な時間(通常は約24時間から78時間で十分である。)肝細胞をインキュベートした後、CYP2C9酵素活性を調べる。
【0055】
生理的pH(例えばpH7.4)の緩衝液を含有する平衡塩類溶液を含有するインキュベーション液中で肝細胞をインキュベートする。平衡塩類溶液の例は、Hank’平衡塩類溶液であり、適切な緩衝液の例は、10mM HEPESである。次に、非標識ジクロフェナック及びトリチウム標識ジクロフェナックを含有する混合液を添加し、CYP2C9の活性を評価するのに適切な時間、上述のように肝細胞をインキュベートするが、一般に約1時間で十分である。通常、トリチウム標識ジクロフェナック約100,000から2,000,000dpm/mLを使用し、好ましくは、標識ジクロフェナックは約500,000dpm/mLである。非標識ジクロフェナックの量は約1から50μMの間であり、通常約10μMである。場合によっては、平行したインキュベーションを行うが、これは、検出された酵素活性が特異的にCYP2C9により媒介されることを確認するために、CYP2C9阻害剤スルファフェナゾールを含有する。
【0056】
インキュベーション後、インキュベーション液を細胞から除去し、ジクロフェナックなどの非極性化合物に選択的に結合する吸着剤を含有する、抽出カートリッジ又はカラムに移す。カラムからの空隙容積又はフロースルーを第二の容器で回収する。カラム中の吸着剤を水で洗浄し、洗浄液を第二の容器に移す。シンチレーション液を第二の容器に添加し、CYP2C9によりトリチウム化ジクロフェナックから放出されたトリチウムを測定する。あるいは、空隙容積又はフロースルー及び洗浄液をシンチレーションバイアルに移し、シンチレーションカウンタにおいてトリチウムを測定するためにシンチレーション液と混合する。トリチウム化水が存在すること、又はビヒクルのみを含有する対照におけるトリチウム化水の量と比較してトリチウム化水が増加していることは、検体がCYP2C9活性の誘導剤であることを示す。
【0057】
下記で考察し、本アッセイの好ましい態様において実施例1で示すように、マルチウェル形式で、好ましくは96ウェル形式で本アッセイを行う。マルチウェル形式により複数の検体を同時に試験できるようになる。マルチウェル形式において、マルチウェルプレートのウェル(第一の容器)中で各反応を行う。反応終了時及びHLMを除去する任意の段階後のトリチウム化ジクロフェナックからのトリチウム化水の分離は、複数の小型カラム(それぞれが本明細書中で開示する吸着剤を含有する。)を含む精密ろ過/抽出カラムプレートの個々のカラムに各反応液を添加することにより行う。好ましくは、精密ろ過/抽出カラムプレートのカラムはマルチウェルプレートに対する形式と同じ形式に配置する。精密ろ過/抽出カラムプレートと同じ形式である第二のマルチウェルプレートで空隙容積及び洗浄液を回収し、シンチレーション液と混合し、マルチウェル形式中の試料をカウントするために適合させたシンチレーションカウンタにおいてカウントする。
【0058】
吸着剤はジクロフェナックなどの非極性化合物に選択的に結合する、すなわち、吸着剤は標識ジクロフェナックに吸着又は結合することができるが、ヒドロキシル化により生成した標識水には吸着又は結合しない。ジクロフェナックなどの非極性化合物に選択的に結合する吸着剤としては、以下に限定されないが、ポリスチレン−ジビニルベンゼン又はポリ(ジビニル−ベンゼン−ビニルピロリドン)などの疎水性又は脂溶性ポリマーを含有する吸着剤、吸着剤が標識ジクロフェナックに結合するがトリチウム化水に結合しないことを可能にするような割合で脂溶性及び親水性モノマーを含有する加湿性ポリマー及びC2−C18シランなどのシリコンベースの吸着剤が挙げられる。
【0059】
加湿性ポリマーを含有する吸着剤は、ポリマーが加湿性となり及び有機溶質保持において有効となるように十分な割合で、少なくとも1個の親水性モノマー及び少なくとも1個の脂溶性モノマーをコポリマー化することにより形成される。脂溶性モノマーは、フェニル、フェニレン及びC2−C18−アルキル基などの脂溶性部分を含み得る。特に有用な脂溶性モノマーとしては、ジビニルベンゼン及びスチレンが挙げられる。親水性モノマーは、飽和、不飽和又は芳香族複素環基(例えば、ピロリドニル基又はピリジル基)などの親水性部分を含み得る。あるいは、親水性基はエーテル基であり得る。特に有用なモノマーとしては、N−ビニルピロリドン、2−ビニルピリジン、3−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン及びエチレンオキシドが挙げられる。加湿性ポリマーのある実施形態において、ポリマーは、約12モル%を超えるN−ビニルピロリドンを含む、好ましくは、約15モル%から約30モル%のN−ビニルピロリドンを含む、ポリ(ジビニルベンゼン−コ−N−ビニルピロリドン)コポリマーである。好ましい加湿性ポリマーの例は、WO9738774及び米国特許第6,726,842号(両方ともBouvierらに対するものである。)で開示されている。好ましい吸着剤の例はOASIS HLB吸着剤であり、これは、N−ビニルピロリドンとジビニルベンゼンモノマーとの調和の取れた割合を含み、Waters Corporation(Newcastle,DE)から市販されている。
【0060】
シリコンベースの基材又はマトリクスを含有する吸着剤は、シリカ基材に結合された非極性基を含む。吸着剤は、非極性化合物を抽出することについて当技術分野で周知の1以上のシランを含み得る。このような吸着剤としては、以下に限定されないが、フェニルシラン、ブチルジメチルシラン、ジメチルシラン、トリメチルシラン、エチルシラン、ブチルシラン、ヘキシルシラン、オクチルシラン又はオクタデシルシランが挙げられる。シランは、単官能性又は三官能性であり得る。シリカ基材又はマトリクスとしては、以下に限定されないが、固体もしくは多孔性シリカ又はセラミック粒子又は微粒子又はシリカゲルが挙げられる。
【0061】
本方法の好ましい実施形態において、吸着剤は、固相抽出カートリッジ又はカラムを形成するように開口容器中に充てんされた、吸着剤の、粒子、ビーズなどとして提供される。本発明の特定の実施形態において、吸着剤は、多孔性膜に捕捉された、固相抽出カートリッジ又はカラムに充てんされる。他の実施形態において、固相抽出カートリッジ又はカラムはさらに、吸着剤に隣接した固相抽出カートリッジ又はカラムの片端もしくは両端で、又はその付近で、フィルター成分などの多孔性の保持手段又はガラス原料を含む。多孔性保持手段は、固相抽出カートリッジ又はカラム内に吸着剤を保持するためである。さらなる実施形態において、一対の多孔性保持手段の間に吸着剤を配置するが、第一の多孔性保持手段は固相抽出カートリッジ又はカラム内で吸着剤を保持し、第二の保持手段はまた、カラム中の吸着剤の保持を補助し、HLMなどの固体材料が吸着剤と混合されるのを防ぐ。フィルター又は硝子材料は、例えば、フリット硝子又は多孔性ポリマー、例えば高密度ポリエチレン、TEFLON(E.I.du Pont de Nemours and Company,DE)又はポリカーボネートなどである。
【0062】
図1は、本発明の方法の実施に適切な固相抽出カートリッジ又はカラム10の例の横断面図を示す。カラム10は、壁14を有する伸長体12(これは、軸方向の空洞部16を規定する。)、水性混合液を受容するための、カラム10の遠位端20のインレット18及び、水性混合液を排出するための、カラム10の近位端24のアウトレット22から構成される。図1でさらに示されるように、近位端24に多孔性保持手段26が隣接し、これは面28を有する。多孔性保持手段26は、面28がカラム10の壁14に垂直であるように、カラム10において近位端24に隣接して位置する。多孔性保持手段26の面28には吸着剤30が配置される。場合によっては、示されるように、第二の多孔性保持手段32が、遠位端20に隣接して、もしくはその付近に位置し得、吸着剤30はそれらの間に配置され得る。カラム10は、水性混合液がインレット18を介して容器に入り、カラム10内で吸着剤30に接触し、アウトレット22を介してカラム10から排出されることを可能にする。好ましくは、吸着剤30は、好ましくは直径が約30から60μmであるビーズなどの小粒子としてカラム10中に充てんされる。
【0063】
好ましい実施形態において、ハイスループットスクリーニングに特に適切な形式を与えるために、複数のカラム10を配置する。例えば、固相抽出カートリッジ又はカラム(好ましくは、小型固相抽出カートリッジ又はカラム、つまり、ミニカラム)を与えるために、複数のウェルを含む、マルチカラム精密ろ過/抽出カラムプレートを適合させた。好ましいマルチカラム精密ろ過/抽出カラムプレート形式では、マルチウェル組織培養プレートに対して使用される形式に対応する形式でミニカラムが配置される。例えば、精密ろ過/抽出カラムプレートのミニカラムは、6ウェル、12ウェル、24ウェル、48ウェル、96ウェル又は384ウェル形式で配置することができる。好ましい実施形態において、マルチカラム精密ろ過/抽出カラムプレートでは、96ウェル形式でミニカラムが配置される。例として、図2は、水性混合液を受容するための開口部14と水性混合液を排出するためのアウトレット106とを有する複数のミニカラム102を含むマルチカラム精密ろ過/抽出プレート100を示し、ここで、ミニカラム102のそれぞれは、96−ミニカラム形式で並べられた図2のカラム10に対して示されるものと同様の内部配置を含む。遠心分離又は減圧により、このカラムを介して、96ウェル形式で配置されたウェルを含有する回収プレートへの水性混合液の移動が達成され得る。マルチカラム精密ろ過/抽出カラムプレート及び、このプレートを使用するための方法ならびに装置は、多くの米国特許、例えば、米国特許第6,506,343号(Bodnerらに対する。)、同第6,491,873号(Roberts及びWoelkに対する。)及び同第6,338,802号(Bodnerらに対する。)及び米国公開特許出願第20030143124号(Roberts及びGrenzに対する。)で開示されている。
【0064】
CYPの可逆的阻害に加えて、ある種の検体又はそれらのCYPにより生成された代謝産物による不可逆的又は見かけ上不可逆的な不活性化が起こり得る。このタイプの阻害、作用機序に基づく又は時間依存的阻害(MBI)と呼ばれるもの、は、阻害剤存在下で酵素活性が進行性に時間依存的低下を示すことを特徴とする。CYPの3種類の作用機序に基づく(時間依存的)不活性化が報告されている:(i)阻害剤が酵素アポタンパク質に共有結合する;(ii)阻害剤が合成ヘムに共有結合する;(iii)阻害剤がきつく(見かけ上不可逆的に)ヘム又はアポタンパク質に結合する。CYP3A4/5、CYP2C9、CYP1A2、CYP2D6、CYP2C19、CYP2A6、CYP2B6及びCYP2E1を含む殆どのヒト肝臓薬物代謝CYPは、作用機序に基づく阻害(MBI)にさらされる(Zhang及びWong、Curr.Drug Metab.6:241−257(2005);Venkatakrishnanら、Curr.Drug Metab.4:423−459(2003);Zhouら、Curr.Drug Metab.5:415−442(2004);Zhouら、Clin.Pharmacokinet.44:279−304(2005))。
【0065】
インビボでの影響が必ずしも明らかではない可逆的CYP阻害に対して、MBIは殆ど常に、臨床的に関心のある薬物−薬物相互作用を導く。実際に、MBIは、臨床的な薬物−薬物相互作用に対する主要な原因の1つと現在では考えられていおり、過去においては潜在的に見過ごされてきた。
【0066】
MBIが活性酵素の時間依存的喪失を導くので、同じCYPにより代謝される薬物の薬物動態における時間依存的CYP阻害剤の臨床的影響は次の通りである。
・MBIは、連続投与において非定常のPKを引き起こす。
・薬物−薬物相互作用の程度は発現及び消失において時間依存的である。
・腸管腔で阻害剤が高濃度であると、基質において顕著な影響が生じ、腸代謝によりその経口でのバイオアベイラビリティーが制限される。
【0067】
したがって、本発明はまた、上述の、可逆的又は見かけ上可逆的なアッセイに加えて、作用機序に基づくアッセイ又は時間依存的アッセイも提供する。化合物が時間依存的CYP阻害剤として作用する可能性を評価するために、一連の様々な長さの時間(通常、0分から60分間)、NADPH再生系存在下で、検体をCYP2C9とともにプレインキュベートする。一般に、可逆的阻害アッセイにおいて使用される量よりも約5から10倍多い量でCYP2C9を提供する。温度不安定性による酵素活性の喪失を監視するために、阻害剤非存在下で対照インキュベーションを行う。プレインキュベーション終了時に、時間0のプレインキュベーション時間対照に対する、酵素的に活性なCYPの量の変化を調べる。プレインキュベーションが約10倍希釈され、基質が添加される第二のインキュベーションを行うことにより、これを遂行する。特定の時間間隔の間に形成される生成物の量を測定することにより、酵素活性を求める。時間依存的CYP阻害アッセイに使用される通常の基質は、上記可逆的阻害アッセイに対して使用されるものと同じである。例えば、ジクロフェナックに対するCYP2C9についてのKmは約6μMであり、ジクロフェナックの好ましい濃度は、約30から100μMの間である。実施例6は、HLMを用いた時間依存的アッセイの例を提供する。
【0068】
第二のインキュベーションにおいて試験検体により生じるあらゆる可逆的CYP阻害効果を最小限に抑えるために、プレインキュベーション混合液を数倍希釈(通常、5−20倍)し、半最大活性に必要とされる濃度より数倍(通常、5−10倍)高い濃度でCYP基質を添加し(試験化合物による競合的阻害を最小限に抑えるために。)、インキュベーション時間を短くする(通常10分間)。検体が時間依存的阻害剤として作用する場合、CYPとのプレインキュベーションは、擬一次反応速度式による酵素活性の喪失を引き起こす。各阻害剤濃度に対して、残存酵素活性の%(阻害剤なしの対照に対して。)は、次の式に従い時間とともに変化する。
【0069】
【数1】
(式中、kは、実測の擬一次不活性化速度定数であり、これは、次の関係に従いプレインキュベーション中の阻害剤濃度に関連する。
【0070】
【数2】
(式中、Iは阻害剤濃度であり、kinactは最大不活性化速度定数であり、K0.5は、50%kinactでの阻害剤濃度であり、nはHill係数である。))kinact及びK0.5を求めるために、非線形回帰分析を用い、Iに対するkの曲線を数式2にフィットさせる。
【0071】
実施例1に示されるように、本発明は、4’位でトリチウムにより標識されたジクロフェナック([4’−3H]−ジクロフェナック)及び[4’−3H]−ジクロフェナックを調製するための方法も提供する。本発明は、さらに、[4’−3H]−ジクロフェナックを調製するための中間体である2−[(2,6−ジクロロ,4−ブロモフェニル)アミノ]フェニル酢酸(4’−ブロモジクロフェナック)を提供し、及び4’−ブロモジクロフェナックを調製するための方法もさらに提供する。
【0072】
Ullman反応を用いたジクロフェナックの合成が記載されている(Moserら、J.Med.Chem.33:2358−2364(1990);Satohら、J.Med.Chem.36:3580−3594(1993);Ozaら、J.Med.Chem.45,321−332(2002)及びそれらの参考文献)。トリチウムにより4’位において標識されたジクロフェナック([4’−3H]−ジクロフェナック)を調製するために、Ullman反応を改変して、2−[(2,6−ジクロロ,4−ブロモフェニル)アミノ]フェニル酢酸(4’−ブロモジクロフェナック(I))を生成させ、次に、トリチウム及びパラジウム触媒存在下でこれを4’位において標識されたジクロフェナックに変換した。
【0073】
一般に、[4’−3H]−ジクロフェナックの合成は、スキーム1で示されるプロセスによる。2−ヨードフェニル酢酸及び2,6−ジクロロ,4−ブロモアニリンの混合物を活性化銅触媒存在下でインキュベートし、4’−ブロモジフェナック(1)を生成させる。次に、パラジウム触媒存在下で、4’−ブロモジクロフェナック(1)をトリチウムとともにインキュベートし、[4’−3H]−ジクロフェナックを生成させる。
【0074】
【化3】
【0075】
4’−ブロモジクロフェナックを調製するための反応は、好ましくは、N−メチルピロリドン(NMP)などの有機溶媒中で行われる。高温で、好ましくは約135℃の温度で、4’−ブロモジクロフェナックを調製するのに十分な時間(混合物の色が褐色−黒色に変化する時間(通常約20時間))、混合物をインキュベートする。好ましくはクロマトグラフィー法により反応物及び溶媒から4’−ブロモジクロフェナックを分離する。
【0076】
次に、他の反応物から分離した4’−ブロモジクロフェナックをトリチウムガス及びパラジウム触媒とともに、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)などの有機溶媒中でインキュベートする。好ましい実施形態において、パラジウム触媒は、炭素触媒担持パラジウム(Pd/C)であり、好ましくは、パラジウムの割合は約10%である。好ましい実施形態において、T2ガスとしてトリチウムを与える。ジクロフェナックを4’位でトリチウムにより標識するのに十分な時間の後、通常1時間後、置換性のトリチウムを除去し、[4’−3H]−ジクロフェナックを反応のその他の成分から、好ましくはクロマトグラフィー法により分離する。
【0077】
次の実施例は、本発明のさらなる理解を促すものである。
【実施例1】
【0078】
スキーム1で示すような4’位でトリチウムにより標識されたジクロフェナックの合成は次のとおりであった。
【0079】
4’−ブロモジクロフェナック(1)の合成は次のとおりであった。2−ヨードフェニル酢酸(21.3mg、0.08mmol)を、N−メチルピロリドン(0.5mL)中の、2,6−ジクロロ,4−ブロモアニリン(78mg、0.32mmol)、炭酸カリウム無水物(33.6mg、0.24mmol)及び活性化銅粉末触媒(2.25mg、0.035mmol)の混合物に添加した。下降コンデンサーを介して水を蒸留して除去すると同時に、反応混合物を135℃にて22時間、撹拌しながら加熱した。反応混合物の色が褐色−黒色に変化した。熱い反応混合物を熱水で処理し、CELITE(World Minerals,NJより入手可能)に通してろ過した。逆相HPLC(LUNA フェニルヘキシル250x10mmカラム(Phenomenex、Torrance、CAより入手可能)、0.1%TFA含有の水:アセトニトリル、50:50、流速4mL/分、UV=254nm、Rt=23−24分)を用いることにより、4’−ブロモジクロフェナック(1)を含有する粗製生成物を精製した。求める分画を回収し、Sep−Pak−C−18(Waters,Corp.,Milford,MA)に通し、次いで10mLエタノールで溶出して、2−[(2,6−ジクロロ−4−ブロモフェニル)アミノ]フェニル酢酸(1)5mgを得た。
【0080】
4’−ブロモジクロフェナック(1)からの[4’−3H]−ジクロフェナックの合成は次のとおりであった。DMF(1mL)中で1時間、触媒10%Pd/C(5mg)を用いて、4’−ブロモジクロフェナック(1)(5mg)をトリチウムガス(T2又は3H2)とともに撹拌した。反応混合物をろ過し、置換性トリチウムを全て除去するために、エタノール(2x10mL)とともに同時蒸発させた。準分取HPLCカラム((LUNA フェニルヘキシル、250x10mmカラム)、0.1%TFA含有の水:アセトニトリル、55:45、流速4mL/分、UVは254nm、Rt=20−21分)を用いることにより、粗製生成物を精製し、[4’−3H]−ジクロフェナック(LC/MSにより決定した場合、10mCi、SA=22.7Ci/mmol)を得た。LC/MS:296(M)+,298(M+2)+。
【実施例2】
【0081】
この実施例は、本発明のアッセイの開発及び、CYP2C9活性の阻害剤を同定するためのその使用を説明する。
【0082】
[4’−3H]−ジクロフェナックを用いた放射分析CYP2C9アッセイ。100μLの最終体積中に、実施例1のように調製され、さらなる精製なしで使用される標識ジクロフェナックトレーサー(10,000から1,000,000dpm、通常100,000dpm)、非標識ジクロフェナック(10μM、別段の指示がある場合を除く。)、プールしたヒト肝臓ミクロソーム(HLM)(0.1から1mg/mL、好ましくは0.125mg/mL)及び0.1Mリン酸カリウム緩衝液、pH7.6を含有する96ウェルコニカルマイクロタイタープレート(Corning,Acton,MAより入手可能)中で反応を行った。プールされたHLMは、Gentest Corp.(Woburn,MA)から入手した。DMSO/アセトニトリル/水(35:25:40、v/v)中の保存溶液から阻害剤を反応混合物に添加し、最終溶媒濃度を0.7%DMSO及び0.5%アセトニトリルとした。阻害剤なしの対照はビヒクル当量を含有した。37℃にて10分間のプレインキュベーション後、1mM NADPH及び、5mMグルコース−6−ホスフェート、3mM MgCl2及び1U/mLグルコース−6−ホスフェートデヒドロゲナーゼを含有するNADPH再生系を添加することにより、反応を開始させた。37℃にて10分間アッセイを行い、0.1Nの最終濃度になるようにHClを添加することにより反応停止させた。次に、マイクロプレートローターにおいてプレートを10分間遠心分離し、前もって調整した10mgOASIS96ウェルHLBプレートのウェルに上清を載せた。OASIS HLB96ウェル抽出プレート及び真空マニホールドはWaters Corp.Newcastle,DEから入手可能である。真空にして、空隙容積を回収プレートで回収した。次に、水75μLを添加し、再び真空にして、同じプレートで洗浄液を回収した。プールした空隙容積及び水洗浄液をシンチレーションバイアルに移し、β−シンチレーションカウンタ中でカウントした。あるいは、TOPCOUNTシンチレーションカウンタ(Packard,Perkin Elmer,Boston,MA)を用いて24ウェル又は96ウェルシンチレーションプレート中で一定分量に対してカウントした。酵素活性の計算のために、NADPH再生系なしで行った対照インキュベーションで得られたカウントを差し引くことにより、生成物カウントを補正した。
【0083】
4’ヒドロキシジクロフェナックの定量。CTC Analytics PAL自動サンプラー(HTS PAL;CTC Analytics AG,Switzerland)を備えたAgilent HP1100液体クロマトグラフ(Agilent Technologies)を用いて、HPLCにより、アッセイ反応混合物の一定分量及び代謝産物の一定分量の標準曲線を分析した。XTERRA MS C18カラム(4.6mMx5cm;5μm;Waters Corp.,Medford,MA)において、2mL/分の流速で、水中0.1%ギ酸(A)及びアセトニトリル中0.1%ギ酸(B)(直線的勾配0から0.5分 10%B;3.0分 90%B、3.5分 90%B;3.6分 10%B;次の注入前に10%Bで1.4分間、システムを平衡化した。)からなる移動相を用いてクロマトグラフィーを行った。最初の1分間、溶離液を捨て、次いで、陽イオンモードで操作されるTurbo Ionsprayイオン化ソースを備えたSciex API−3000トリプレット四極子質量分析装置(例えば、Perkin Elmer、Boston、MAより入手可能)に送った。4’ヒドロキシジクロフェナックを検出し、遷移m/z305.0から269.1を用いて同定した。Analyst Quantitation Wizardソフトウェアバージョン1.2(Applied Biosystems,Foster City,CA)を用いて、加重線形最小二乗回帰分析により、代謝産物濃度を調べた。
【0084】
曲線のフィッティング。XLFIT4.0(ID Business Solutions,Inc.,Guildford,UK;Emeryville,CA)を用いて、非線形回帰により、Hillの式又は4パラメーターロジスティック阻害モデル(Rodbard及びFrazier、Meth.Enzymol.37:3−22(1975))への曲線のフィッティングを行った。
【0085】
結果
96ウェル固相抽出プレートを用いた[4’−3H]−ジクロフェナック及び[3H]−H2Oの分離。10mgOASIS吸着剤を含有する96ウェル抽出プレートに、標識ジクロフェナック(104から107dpm)を含有するアッセイ緩衝液の溶液及び停止溶液を載せた場合、99.8%を超える放射活性がプレートに保持された。標識ジクロフェナックは、メタノールで溶出することにより回収することができた。標識ジクロフェナックとは異なり、[3H]−H2O(102から105dpm)は同じ条件下で保持されなかった。10mg及び30mgプレートの両方において、100μL又は400μLの水による洗浄後の、合わせた空隙容積中で溶出される[3H]−H2Oの回収は定量的であった(94±6%、平均±SD、n=6)。
【0086】
HLMにおける[4’−3H]−ジクロフェナックからの[3H]−H2Oの形成。NADPH再生系存在下で[4’−3H]−ジクロフェナックをHLMとともにインキュベートした場合、時間依存的な様式で[3H]−H2Oが形成された。1.0mg/mLのタンパク質濃度まで、ミクロソーム濃度とともに、生成物形成は直線的に増加した(図3参照)。トリチウム化水の形成はNADPHに依存したが、このことから、この反応にチトクロムP450が介在したことが示される。特異的CYP2C9阻害剤であるスルファフェナゾールは、[3H]−H2OのNAPH−依存的形成を阻害し、このことから、本反応に主にCYP2C9が介在したことが示される(図4参照)。ノイズ比に対するシグナルは、NADPH非存在に対するNADPH存在において得られる生成物カウント間の比として定義される。分画変換速度は、単位時間あたり及びミクロソームタンパク質1mgあたりのトリチウム化水に変換された総放射性標識基質の%として表される。ノイズ比に対するシグナルは、HLM0.125から0.25mg/mLを用いて10分間アッセイを行った場合、30から50の間であった。分画変換速度は約50から80%/分/mgであった。
【0087】
CYP阻害剤及び抗CYP抗体の影響。CYP2C9が生成物形成に介在することを確認するために、一連のアイソフォーム選択的化学阻害剤(Bourrieら、J.Pharmacol.Exp.Ther.227:321−32(1996);Eaglingら、Br.J.Clin.Pharmacol.45:107−14(1998))もしくはモノクローナル抗体(Meiら、J.Pharmacol.Exp.Ther.291:749−59(1999);Shouら、Eur.J.Pharmacol.394:199−209(2000))の存在下又は非存在下で反応を行った。使用した化学阻害剤はフラフィリン(CYP1A2阻害剤)であり、モノクローナル抗体は、CYP2A6、CYP2C9、CYP2C19、CYP2D6及びCYP3A4/5の阻害剤である。図5で示されるように、これらの薬剤の中で、抗CYP2C9及び抗CYP2C19モノクローナル抗体を除き、HLM中からのトリチウム化水の形成に顕著な影響を与えたものはなかった。CYP2C9に対して向けられた抗体は、80%を超える反応を阻害した。この反応はまた、CYP2C9と交差反応することが知られているCYP2C19に対するモノクローナル抗体によっても阻害された。これらの結果から、本アッセイがCYP2C9活性の検出に特異的であったことが示された。
【0088】
CYP2C9阻害剤による阻害のカイネティクス。HLMにおける、[4’−3H]−ジクロフェナックからの[3H]−H2OのNADPH−依存的形成に対するCYP2C9阻害剤スルファフェナゾールの影響を図6で示す。スルファフェナゾールは、従来のジクロフェナック4’−ヒドロキシル化アッセイにおけるそのIC50値(HPLC−MS/MS又はHPLC−UV)と同様に、0.2から0.3μMのIC50値でこの反応を阻害した(表1参照。)。
【0089】
放射分析アッセイにおいて得られたいくつかの既知のCYP2C9阻害剤のIC50値を従来のHPLC−質量分析アッセイにより得られた値と比較するために、様々な濃度の既知の阻害剤の存在下又は非存在下で反応を行った。同じ反応混合物中で、トリチウム化水形成及び非標識反応生成物4’OH−ジクロフェナックの形成を調べた。トリプル四重極質量分析と組み合わせたHPLCにより、4’−OH−ジクロフェナックを定量した。[4’−3H]−ジクロフェナックからの[3H]−H2OのNADPH−依存的形成におけるいくつかのCYP阻害剤(ミコナゾール、ニフェジピン、プロゲステロン、α−ナフトフラボン、ジクマロール及びケトコナゾール)の影響を図7Aから図7Fで示す。18種類の化合物に対するIC50値を表1にまとめる。放射性標識及び非放射性標識生成物の形成の阻害に対するIC50値は非常に近かった。全ケースにおいて、IC50値の差は2倍未満であった。18種類の試験化合物のうち、放射分析アッセイの結果に基づき、強い又は弱い阻害剤の何れかとして間違って分類されたものがないといことは、最も重要なことである。IC50値が30μM未満である2種類の化合物を除き、線形回帰分析を行った結果、勾配が1.09及び相関係数r2が0.938である直線が得られた(図8)。これらの結果から、本アッセイにより、CYP2C9阻害剤の強度(IC50)の信頼できる測定を提供することが分かる。
【0090】
ジクロフェナックに対する、蛍光性CYP2C9プローブを用いて得られたIC50値の多数の化合物に関する詳細な比較から、これらのアッセイ間の相関が完璧ではないことが分かった(Cohenら、前掲書中)。例えば、ワーファリンは、ジクロフェナックを用いて調べた場合は(IC5022μM)CYP2C9の阻害剤であったが、蛍光性基質MFCを用いて調べた場合は阻害剤ではなかった。予想されるように、ワーファリンは、本放射分析アッセイでのトリチウム化水形成を阻害し、そのIC50値は15μMであった。蛍光性アッセイと従来のアッセイとの間の相関が乏しいことから、Cohen及び共同研究者らは、蛍光性プローブを用いたスクリーニングの後、従来の基質を用いた試験を行うべきであることを推奨した。このように、スピード、ハイスループット及び従来の基質の使用の長所を組み合わせた本発明のアッセイは、この問題を回避する。
【0091】
【表1】
【実施例3】
【0092】
動的トリチウム同位体効果の決定。次の式(Northrop,Meth.Enzymol.87:607−625(1982))に従い、V/K比に対する、TV/K、動的同位体効果を調べた:
【0093】
【数3】
(式中、fは生成物に対する基質の分画変換であり、SA0は標識基質の最初の比放射能であり、SAPは生成物の比放射能である。)。本実験において観察されるもののようなf(<5%)の低値において、この式は、次の式に変形される(Northrop、前出):
【0094】
【数4】
【0095】
トレーサー競合実験からの非標識生成物の見かけの形成速度の計算。[4’−3H]−ジクロフェナックの固定量及び非標識ジクロフェナックの様々な濃度を用いてアッセイを行う場合、非標識生成物の形成速度vは、次式により与えられる:
【0096】
【数5】
(式中、v*はトリチウム化水の形成速度である。)。式2から差し引くことにより、
【0097】
【数6】
を得て、動的同位体効果で割った非標識生成物の形成速度としてv’を定義し、つまり、
【0098】
【数7】
であり、次式:
【0099】
【数8】
を得る。
【0100】
既知のTV/K比(これは、SAp由来であったため、同語を繰り返すことになる。)を用いずに、v’、非標識生成物の見かけの形成速度を計算できる。基質濃度Sに対してプロットし、Hillの式へフィットさせた場合(式7)、V’max、S50、50%での基質濃度及びn、Hill係数を導き出すことができる。
【0101】
【数9】
式中、
【0102】
【数10】
つまり、生成物形成の見かけの最大速度である。
【0103】
結果
放射性標識ジクロフェナックと非標識ジクロフェナックとの間の競合。HLMにおけるトリチウム化水の形成に対する非標識ジクロフェナックの影響を図9で示す。曲線から、「低用量フック」、すなわち、生成物形成速度が非標識基質の濃度上昇とともに上昇し、〜3μMのジクロフェナック濃度でピークに到達し、次に低下することが示される。この影響は、正の方向に協同するリガンド置換相互作用にとって特徴的である(De Lean及びRodbard、Recept:Compr.Treatise 1:143−192(1979))。トリチウム化生成物の形成が増加する理由は、低基質濃度で、正の方向に協同する酵素の反応速度が、基質濃度が上昇するにつれて用量に比例した上昇よりも大きく上昇するからである。CYP2C9介在性のジクロフェナック4’−ヒドロキシル化が協同的カイネティクスを示すことは以前には報告されていなかったことに留意されたい。これはおそらく、協同性が、本放射分析アッセイの感受性の高い性質により明らかにされ、非常に低い基質濃度でのみ見られ、一方で従来のアッセイは通常、より高い基質濃度で行われることによるものと思われる。しかし、正方向の協同作用及びヘテロ活性化が、ダプソンなどの他のCYP2C9基質に対して報告されいている(Korzekwaら、Biochemistry 37:4137(1998);Hutzlerら、Arch.Biochem.Biophys.410:16(2003);Hummelら、Biochemistry 43:7207(2004);Egnellら、J.Pharmacol.Exp.Ther.307:878(2003))。
【0104】
[4’−3H]−ジクロフェナックを同位体トレーサーとして使用するので、トリチウム化水の形成速度(v*)は、非標識生成物、つまりジクロフェナックの4’−ヒドロキシル化由来の水の形成速度を代表している(これは、4’−ヒドロキシジクロフェナックとともに化学量論的に形成される。)。基質濃度(S)に対するv*の依存性を使用して、非標識生成物の基質濃度への依存性ついての情報を得ることができる(後者が直接測定されないとしても。)。発明者らは、v*、非標識生成物の見かけの形成速度を、動的同位体効果により割った非標識生成物の形成速度(v)として定義する(上記の実験セクションを参照のこと。)。図10で示すように、Sに対するv’の曲線をHillの式にフィットさせることができ、S50=6.8±1.0μM、n=1.15±0.05及びV’max=1.5±0.1nmol/分/mg(平均±SEM、n=2)であった。Hill係数は1よりもわずかに大きく、このことから、弱い正の協同作用が示唆される。実際、低基質濃度において、図10の差込図において示されるように、v’とSとの間でシグモイド型の関係が見られた。
【0105】
4’−ヒドロキシジクロフェナック形成のカイネティクスを図11で示す。この反応は、S50が6.2±0.9μM、Vmaxが1.3±0.3nmol/分/mgタンパク質であり、Hill係数が1.1±0.1であった(平均±SEM、n=3)。V’maxとVmaxとの間の比が0.9であり、これは、顕著な動的同位体効果がないことを示すことに留意されたい。
【実施例4】
【0106】
この実施例は、インタクトな肝細胞において酵素活性及びCYP2C9阻害剤の影響を調べ、定量するための本発明の使用を説明する。
【0107】
確立されたプロトコールに従い、新鮮なヒト肝臓から肝細胞を単離し、液体窒素中で凍結保存した(例えば、Hengstlerら、Drug Metab.Rev.32:81−118(2000);Ferriniら、Methods Mol.Biol.107:341−52(1998)を参照。)。細胞を凍結融解し、150,000個の細胞/cm2の密度でコラーゲン被覆24ウェル又は96ウェル培養プレートにプレーティングし、ITS+(Collaborative Research,Waltham,MA)を添加した肝細胞培養液(HCM)(Dich及びGrunnet、Methods in Molecular Biology,Vol.5:Animal Cell Culture(Pollard及びWalker編)pp.161−176、Humana Press,Clifton,New Jersey.(1989))中で5%CO2の加湿環境下で37℃にて1時間維持した。CYP2C9阻害剤スルファフェナゾール(10μM)の非存在下又は存在下で、10μM非標識ジクロフェナック、[4’−3H]−ジクロフェナック 500,000dpm/mLとともに細胞をインキュベートした。様々な時間後、前もって調整した30mg OASISプレートの個々のウェルにインキュベーション液の一定分量を載せ、水200μLで2回洗浄した。各ウェルに対して、フロースルーを水洗浄液と合わせ、シンチレーション液添加後にβ−カウンタにおいてカウントした。
【0108】
図12で示されるように、ヒト肝細胞中で[4’−3H]−ジクロフェナックから時間依存的にトリチウム化水が形成され、この反応は殆ど完全にCYP2C9阻害剤スルファフェナゾールにより阻害された。これらの結果から、本アッセイを使用して、CYP2C9の活性及びインタクトな肝細胞におけるCYP2C9阻害剤の効果を調べることができることが示される。
【実施例5】
【0109】
この実施例は、CYP2C9発現を誘導する検体を同定するための本発明の使用を説明する。
【0110】
2名の異なるドナーからの凍結保存ヒト肝細胞を得る。細胞(およそ320,000個)を24ウェルコラーゲン被覆培養プレートにプレーティングし、ITS+(Collaborative Research,Waltham,MA)を添加した肝細胞培養液(HCM)(Dich及びGrunnet、前出)中で5%CO2、95%酸素の加湿環境下で37℃にて維持した。24時間後、細胞の各ウェルに対する培養液を除去し、ITSを含有する新鮮なHCMを添加し、ビヒクル(対照)、リフラムピシン、デキサメタゾンもしくはフェノバルビタール(陽性対照)などのCYP2C9発現の誘導剤又はCYP2C9活性誘導能について試験する検体の何れかで48時間、細胞を処理した。次いでCYP2C9酵素活性を次のように求めた。
【0111】
各ウェルに対して、培地を除去し、10mM Hepes、pH7.4、60μM非標識ジクロフェナック及び[4’−3H]−ジクロフェナック200,000dpmを含有するHank’s平衡塩類溶液(HBSS)0.5mL中で37℃にて1時間細胞をインキュベートする。それぞれに対して、酵素活性がCYP2C9により特異的に介在したことを確認するために、スルファフェナゾールなどの阻害剤存在下にて平行インキュベーションを行う。前もって調整した30mgOASISプレートの個々のウェルにインキュベーション液を添加する(これは、水200μLで2回洗浄した。)。各ウェルに対して、フロースルーを水洗浄液と合わせ、シンチレーション液添加後にβ−カウンタにおいてカウントする。CYP2C9発現の誘導剤を含有しない対照と比較したトリチウム化水の存在から、検体がCYP2C9発現の誘導剤であることが示される。
【0112】
検体がCYP2C9発現を誘導することを確認するために、メタノール1mLを用いて4’−ヒドロキシジクロフェナックをOASISプレートから溶出し、N2下で乾燥させ、ギ酸0.1%を含有する50%アセトニトリル/水(50:50)200μL中で再構成する。4’−ヒドロキシジクロフェナックの定量のために、一定分量をHPLC−MS/MS系に注入する。定量は、ピーク領域と、未知の試料のように正確に処理し抽出した標準曲線のそれとの比較に基づく。
【実施例6】
【0113】
この実施例は、HLMを用いて時間依存的CYP2C9アッセイを行う方法の例を示す。
【0114】
次のようにプレインキュベーション段階を行う。約30μL HLM(タンパク質3.3mg/mL、好ましい最終濃度2mg/mL;0.1から5mg/mLの範囲。)、試験検体1μL(35%DMSO、65%メタノール中に溶解)、アッセイ緩衝液9μL(0.1M リン酸カリウム、pH7.6)を含有するプレインキュベーション混合液。NADPH再生系10μL(アッセイ緩衝液中、5mM NADPH、25mMグルコース−6−ホスフェート、17mM MgCl2、5U/mLグルコース−6−ホスフェートデヒドロゲナーゼ)を添加することによりプレインキュベーションを開始する。逆順で様々な時間でプレインキュベーションを開始する(最長のプレインキュベーションを最初に開始し、最短のプレインキュベーションを最後に開始した。)。振盪水浴中で37℃にて0から30分間、混合液をプレインキュベートする。
【0115】
残存活性の測定は次のとおりである。[4’−3H]−ジクロフェナック)(約800,000dpm)、30から100μM非標識ジクロフェナック及び1mM NADPHを含有するアッセイ緩衝液450μLでプレインキュベーション混合液を約10倍希釈することにより第二のインキュベーションを開始する。振盪水浴中で37℃にて10分間インキュベーションを行う。1N HCl約50μLを添加することにより、反応を停止させる。室温にて2800rpmで15分間、プレートを遠心分離する。前もって調整した30mgOASISプレートに上清約300μLを入れる。フロースルーを回収し、120μLの一定分量を96ウェルシンチレーションカウンティングプレート(Packard)に移す。MICROSCINT40シンチレーション液180μLを添加し、プレートを密封し、振盪して、Packard TOPCOUNTシンチレーションカウンタでカウントする。
【0116】
例としての実施形態を参照して本明細書中で本発明を説明してきたが、本発明がこれに限定されないことを理解されたい。当業者及び本明細書中での教示を入手した者は、この範囲内のさらなる修飾及び実施形態を認識する。したがって、本発明は、本明細書に添付の特許請求の範囲によってのみ限定される。
【図面の簡単な説明】
【0117】
【図1】抽出カートリッジ又はカラム10の横断面を示す。
【図2】マルチカラム精密ろ過/抽出プレート100の透視図を示す。
【図3】HLMでの、[4’−3H]−ジクロフェナックからのトリチウム化水のNADPH依存性様式における、インキュベーション時間及びミクロソームタンパク質濃度の影響を示す。このアッセイでは、ウェルあたり10μMジクロフェナック及び標識ジクロフェナック650,000dpmを使用した。HLM濃度は、0.125mg/mL、0.25mg/mL、0.5mg/mL及び1mg/mLであった。
【図4】HLMでの、[4’−3H]−ジクロフェナックからのトリチウム化水の形成における、NADPH及びスルファフェナゾールの影響を示す。このアッセイでは、ウェルあたり10μMジクロフェナック及び標識ジクロフェナック650,000dpmを使用した。HLM濃度は0.125mg/mLであった。
【図5】HLMでの、[4’−3H]−ジクロフェナックからのトリチウム化水のNADPH依存性の形成における、様々なCYP阻害剤の影響を示す。
【図6】HLMでの、[4’−3H]−ジクロフェナックからのトリチウム化水形成のスルファフェナゾールによる濃度依存性阻害を示す。このアッセイでは、ウェルあたり10μMジクロフェナック及び標識ジクロフェナック134,000dpmを使用した。HLM濃度は0.125mg/mLであった。
【図7A】ヒト肝臓ミクロソームでの、[4’−3H]−ジクロフェナックからの[3H]−H2O形成におけるミコナゾールの影響を示す。
【図7B】ヒト肝臓ミクロソームでの、[4’−3H]−ジクロフェナックからの[3H]−H2O形成におけるニフェジピンの影響を示す。
【図7C】ヒト肝臓ミクロソームでの、[4’−3H]−ジクロフェナックからの[3H]−H2O形成におけるプロゲステロンの影響を示す。
【図7D】ヒト肝臓ミクロソームでの、[4’−3H]−ジクロフェナックからの[3H]−H2O形成におけるα−ナフトフラボンの影響を示す。
【図7E】ヒト肝臓ミクロソームでの、[4’−3H]−ジクロフェナックからの[3H]−H2O形成におけるジクマロールの影響を示す。
【図7F】ヒト肝臓ミクロソームでの、[4’−3H]−ジクロフェナックからの[3H]−H2O形成におけるケトコナゾールの影響を示す。
【図8】線形回帰分析による、放射分析とLC−MS/MSアッセイとの間の16種類の薬物に対するIC50値の比較を示す。データは表1からのものであった。
【図9】HLMでの、[4’−3H]−ジクロフェナックからのトリチウム化水形成における、非標識ジクロフェナックの濃度上昇の影響を示す。
【図10】総基質濃度に対するv’の依存性を示す。用語v’は実施例3で述べたとおり定義され、これは、図8で示される生成物カウントから計算した。非線形回帰分析により、データをHillの式にフィットさせた。
【図11】総基質濃度に対する4’−ヒドロキシジクロフェナックの形成速度の依存性を示す。非線形回帰分析により、データをHillの式にフィットさせた。
【図12】10μMスルファフェナゾール存在下又は非存在下での、ヒト肝細胞における[4’−3H]−ジクロフェナックからのトリチウム化水の形成を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)CYP2C9、4’位においてトリチウム標識されたトリチウム標識ジクロフェナック([4’−3H]−ジクロフェナック)、NADPH及び検体を含有する混合物を提供することと;
(b)CYP2C9活性が4’位においてトリチウム標識されたジクロフェナックをヒドロキシル化するのに十分な時間、混合物をインキュベートすることと;
(c)混合物からCYP2C9を除去することと;
(d)非極性化合物に選択的に結合する吸着剤に混合物を添加して、混合物からトリチウム標識ジクロフェナックを除去することと;及び
(e)トリチウム標識ジクロフェナックが除去された段階(d)の混合物中のトリチウム量を測定することと(トリチウム量の減少は、検体がCYP2C9の活性を阻害することを示す。)
を含む、チトクロムP450アイソフォーム2C9(CYP2C9)の活性を阻害する検体を同定するための方法。
【請求項2】
吸着剤が、ポリマーが加湿性となり及び有機溶質保持において有効となるように十分な割合で、少なくとも1個の親水性モノマー及び少なくとも1個の脂溶性モノマーをコポリマー化することにより形成される加湿性ポリマー、シリカ基材に結合された非極性基を含有するシリカ基材並びに活性炭からなる群から選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項3】
吸着剤がポリ(ビニルベンゼン−コ−N−ビニルピロリドンである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
4’位において標識されたジクロフェナックが、2−ヨードフェニル酢酸及び2,6−ジクロロ4−ブロモアニリンの混合物を提供すること、前記混合物を銅触媒の存在下にインキュベートして、2−[(2,6−ジクロロ,4−ブロモフェニル)アミノ]フェニル酢酸を生成させること、及び2−[(2,6−ジクロロ,4−ブロモフェニル)アミノ]フェニル酢酸をパラジウム触媒存在下でトリチウムと共にインキュベートして、4’位において標識されたジクロフェナックを生成させることにより生成される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
水性混合液が、NADPH再生系をさらに含有する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
段階(e)における混合液中のトリチウムが、CYP2C9、フェニル環の4’位においてトリチウムにより標識されたジクロフェナック及びNADPHを含有しており検体を含有していない対照混合液からの混合液中のトリチウム量と比較される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
CYP2C9がミクロソーム中において提供される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
ミクロソーム中がヒト肝臓ミクロソームである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
ミクロソームが、哺乳動物及び昆虫細胞からなる群から選択される細胞(これらの細胞は、CYP2C9を発現するベクターを含む。)から産生される、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
(a)マルチウェルプレート及び、固相抽出カートリッジの一連を有するカラムプレート又はカラム(非極性化合物に選択的に結合する吸着剤をその中に有する。)を提供することと;
(b)マルチウェルプレートのウェルのそれぞれに、CYP2C9、4’位においてトリチウムにより標識されたトリチウム標識ジクロフェナック及び検体を含有する混合物を添加することと;
(c)段階(b)のウェルのそれぞれの中の混合物にNADPHを接触させ、CYP29が4’位におけるトリチウム標識ジクロフェナックをヒドロキシル化するのに十分な時間、インキュベートすることと;
(d)マルチウェルプレートのウェルのそれぞれの中の段階(c)での水性混合液からCYP2C19を分離することと;
(e)カラムプレートの個々のミニカラムに段階(d)での各水性混合液を添加して、混合物からトリチウム標識ジクロフェナックを除去することと;及び
(f)トリチウム標識ジクロフェナックが除去された段階(e)の水性混合液中のトリチウム量を測定することと(トリチウム量の減少は、検体がCYP2C9の活性を阻害することを示す。)
を含む、チトクロムP450アイソフォーム2C9(CYP2C9)の活性を阻害する検体を同定するための方法。
【請求項11】
吸着剤が、ポリマーが加湿性となり及び有機溶質保持において有効となるように十分な割合で、少なくとも1個の親水性モノマー及び少なくとも1個の脂溶性モノマーをコポリマー化することにより形成される加湿性ポリマー、シリカ基材に結合された非極性基を含有するシリカ基材並びに活性炭からなる群から選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
(a)肝細胞の培養物を提供することと;
(b)CYP2C9がトリチウム標識ジクロフェナックをヒドロキシル化するのに十分な時間、4’位においてトリチウム標識されたジクロフェナックを含有する培地中で肝細胞をインキュベートすることと;
(c)肝細胞の培養物から培地を除去することと;
(d)非極性化合物に選択的に結合する吸着剤に培地を添加して、培地からトリチウム標識ジクロフェナックを除去することと;及び
(e)トリチウム標識ジクロフェナックが除去された段階(d)の培地中のトリチウム量を測定することと(これは、肝細胞におけるCYP2C9の相対活性を決定する。)
を含む、肝細胞においてチトクロム2C9(CYP2C9)の相対的活性を決定するための方法。
【請求項13】
吸着剤が、ポリマーが加湿性となり及び有機溶質保持において有効となるように十分な割合で、少なくとも1個の親水性モノマー及び少なくとも1個の脂溶性モノマーをコポリマー化することにより形成される加湿性ポリマー、シリカ基材に結合された非極性基を含有するシリカ基材並びに活性炭からなる群から選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
(a)肝細胞の培養物を提供することと;
(b)検体を含有する培地中で肝細胞をインキュベートすることと;
(c)4’位においてトリチウム標識されたジクロフェナックを含有する第二の培地で検体を含有する培地を置き換え、CYP2C9が4’位でトリチウム標識ジクロフェナックをヒドロキシル化するのに十分な時間、肝細胞をインキュベートすることと;
(d)肝細胞の培養物から第二の培地を除去することと;
(e)非極性化合物に選択的に結合する吸着剤に第二の培地を添加して、第二の培地からトリチウム標識ジクロフェナックを除去することと;及び
(f)トリチウム標識ジクロフェナックが除去された段階(e)の第二の培地中のトリチウム量を測定することと(トリチウム量の増加は、検体がCYP2C9発現を誘導することを示す。)
を含む、チトクロム2C9(CYP2C9)発現を誘導する検体を同定するための方法。
【請求項15】
吸着剤が、ポリマーが加湿性となり及び有機溶質保持において有効となるように十分な割合で、少なくとも1個の親水性モノマー及び少なくとも1個の脂溶性モノマーをコポリマー化することにより形成される加湿性ポリマー、シリカ基材に結合された非極性基を含有するシリカ基材並びに活性炭からなる群から選択される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
(a)肝細胞の培養物を提供することと;
(b)CYP2C9がトリチウム標識ジクロフェナックをヒドロキシル化するのに十分な時間、4’位においてトリチウム標識されたジクロフェナック及び検体を含有する培地中で肝細胞をインキュベートすることと;
(c)肝細胞の培養物から培地を除去することと;
(d)非極性化合物に選択的に結合する吸着剤に培地を添加して、培地からトリチウム標識ジクロフェナックを除去することと;及び
(e)トリチウム標識ジクロフェナックが除去された段階(d)の培地中のトリチウム量を測定することと(トリチウム量の減少は、検体がCYP2C9の活性を阻害することを示す。)
を含む、チトクロム2C9(CYP2C9)の活性を阻害する検体を同定するための方法。
【請求項17】
吸着剤が、ポリマーが加湿性となり及び有機溶質保持において有効となるように十分な割合で、少なくとも1個の親水性モノマー及び少なくとも1個の脂溶性モノマーをコポリマー化することにより形成される加湿性ポリマー、シリカ基材に結合された非極性基を含有するシリカ基材並びに活性炭からなる群から選択される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
(a)2−ヨードフェニル酢酸及び2,6−ジクロロ4−ブロモアニリンの混合物を提供することと;
(b)前記混合物を銅触媒の存在下にインキュベートして、2−[(2,6−ジクロロ,4−ブロモフェニル)アミノ]フェニル酢酸を生成させることと;及び
(c)2−[(2,6−ジクロロ,4−ブロモフェニル)アミノ]フェニル酢酸を、パラジウム触媒存在下にトリチウムと共インキュベートして、4’位において標識されたジクロフェナックを生成させることと
を含む、4’位において標識されたジクロフェナックを生成させるための請求項1に記載の方法。
【請求項19】
式:
【化1】
(式中、Tはトリチウムである。)を有する、4’位において標識されたジクロフェナック。
【請求項20】
式:
【化2】
(式中、Brは臭素であり、Clは塩素である。)を有する、2−[(2,6−ジクロロ,4−ブロモフェニル)アミノ]フェニル酢酸。
【請求項21】
(a)CYP2C9、NADPH再生系及び検体を含有する混合物を提供することと;
(b)様々な時間、前記混合物をインキュベートすることと;
(c)前記混合物を希釈し、次いで希釈混合物に4’位においてトリチウムにより標識されたジクロフェナック及びNADPHを添加することと;
(d)CYP2C9が4’位においてトリチウム標識ジクロフェナックをヒドロキシル化するのに十分な時間、前記希釈混合物をインキュベートすることと;
(e)混合物からCYP2C9を除去することと;
(f)非極性化合物に選択的に結合する吸着剤に前記混合物を添加して、前記混合物からトリチウム標識ジクロフェナックを除去することと;及び
(g)トリチウム標識ジクロフェナックが除去された段階(d)の混合物中のトリチウム量を測定することと(トリチウム量の減少は、検体が不可逆的にCYP2C9の活性を阻害することを示す。)
を含む、チトクロム2C9(CYP2C9)の活性を不可逆的に阻害する検体を同定するための方法。
【請求項1】
(a)CYP2C9、4’位においてトリチウム標識されたトリチウム標識ジクロフェナック([4’−3H]−ジクロフェナック)、NADPH及び検体を含有する混合物を提供することと;
(b)CYP2C9活性が4’位においてトリチウム標識されたジクロフェナックをヒドロキシル化するのに十分な時間、混合物をインキュベートすることと;
(c)混合物からCYP2C9を除去することと;
(d)非極性化合物に選択的に結合する吸着剤に混合物を添加して、混合物からトリチウム標識ジクロフェナックを除去することと;及び
(e)トリチウム標識ジクロフェナックが除去された段階(d)の混合物中のトリチウム量を測定することと(トリチウム量の減少は、検体がCYP2C9の活性を阻害することを示す。)
を含む、チトクロムP450アイソフォーム2C9(CYP2C9)の活性を阻害する検体を同定するための方法。
【請求項2】
吸着剤が、ポリマーが加湿性となり及び有機溶質保持において有効となるように十分な割合で、少なくとも1個の親水性モノマー及び少なくとも1個の脂溶性モノマーをコポリマー化することにより形成される加湿性ポリマー、シリカ基材に結合された非極性基を含有するシリカ基材並びに活性炭からなる群から選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項3】
吸着剤がポリ(ビニルベンゼン−コ−N−ビニルピロリドンである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
4’位において標識されたジクロフェナックが、2−ヨードフェニル酢酸及び2,6−ジクロロ4−ブロモアニリンの混合物を提供すること、前記混合物を銅触媒の存在下にインキュベートして、2−[(2,6−ジクロロ,4−ブロモフェニル)アミノ]フェニル酢酸を生成させること、及び2−[(2,6−ジクロロ,4−ブロモフェニル)アミノ]フェニル酢酸をパラジウム触媒存在下でトリチウムと共にインキュベートして、4’位において標識されたジクロフェナックを生成させることにより生成される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
水性混合液が、NADPH再生系をさらに含有する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
段階(e)における混合液中のトリチウムが、CYP2C9、フェニル環の4’位においてトリチウムにより標識されたジクロフェナック及びNADPHを含有しており検体を含有していない対照混合液からの混合液中のトリチウム量と比較される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
CYP2C9がミクロソーム中において提供される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
ミクロソーム中がヒト肝臓ミクロソームである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
ミクロソームが、哺乳動物及び昆虫細胞からなる群から選択される細胞(これらの細胞は、CYP2C9を発現するベクターを含む。)から産生される、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
(a)マルチウェルプレート及び、固相抽出カートリッジの一連を有するカラムプレート又はカラム(非極性化合物に選択的に結合する吸着剤をその中に有する。)を提供することと;
(b)マルチウェルプレートのウェルのそれぞれに、CYP2C9、4’位においてトリチウムにより標識されたトリチウム標識ジクロフェナック及び検体を含有する混合物を添加することと;
(c)段階(b)のウェルのそれぞれの中の混合物にNADPHを接触させ、CYP29が4’位におけるトリチウム標識ジクロフェナックをヒドロキシル化するのに十分な時間、インキュベートすることと;
(d)マルチウェルプレートのウェルのそれぞれの中の段階(c)での水性混合液からCYP2C19を分離することと;
(e)カラムプレートの個々のミニカラムに段階(d)での各水性混合液を添加して、混合物からトリチウム標識ジクロフェナックを除去することと;及び
(f)トリチウム標識ジクロフェナックが除去された段階(e)の水性混合液中のトリチウム量を測定することと(トリチウム量の減少は、検体がCYP2C9の活性を阻害することを示す。)
を含む、チトクロムP450アイソフォーム2C9(CYP2C9)の活性を阻害する検体を同定するための方法。
【請求項11】
吸着剤が、ポリマーが加湿性となり及び有機溶質保持において有効となるように十分な割合で、少なくとも1個の親水性モノマー及び少なくとも1個の脂溶性モノマーをコポリマー化することにより形成される加湿性ポリマー、シリカ基材に結合された非極性基を含有するシリカ基材並びに活性炭からなる群から選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
(a)肝細胞の培養物を提供することと;
(b)CYP2C9がトリチウム標識ジクロフェナックをヒドロキシル化するのに十分な時間、4’位においてトリチウム標識されたジクロフェナックを含有する培地中で肝細胞をインキュベートすることと;
(c)肝細胞の培養物から培地を除去することと;
(d)非極性化合物に選択的に結合する吸着剤に培地を添加して、培地からトリチウム標識ジクロフェナックを除去することと;及び
(e)トリチウム標識ジクロフェナックが除去された段階(d)の培地中のトリチウム量を測定することと(これは、肝細胞におけるCYP2C9の相対活性を決定する。)
を含む、肝細胞においてチトクロム2C9(CYP2C9)の相対的活性を決定するための方法。
【請求項13】
吸着剤が、ポリマーが加湿性となり及び有機溶質保持において有効となるように十分な割合で、少なくとも1個の親水性モノマー及び少なくとも1個の脂溶性モノマーをコポリマー化することにより形成される加湿性ポリマー、シリカ基材に結合された非極性基を含有するシリカ基材並びに活性炭からなる群から選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
(a)肝細胞の培養物を提供することと;
(b)検体を含有する培地中で肝細胞をインキュベートすることと;
(c)4’位においてトリチウム標識されたジクロフェナックを含有する第二の培地で検体を含有する培地を置き換え、CYP2C9が4’位でトリチウム標識ジクロフェナックをヒドロキシル化するのに十分な時間、肝細胞をインキュベートすることと;
(d)肝細胞の培養物から第二の培地を除去することと;
(e)非極性化合物に選択的に結合する吸着剤に第二の培地を添加して、第二の培地からトリチウム標識ジクロフェナックを除去することと;及び
(f)トリチウム標識ジクロフェナックが除去された段階(e)の第二の培地中のトリチウム量を測定することと(トリチウム量の増加は、検体がCYP2C9発現を誘導することを示す。)
を含む、チトクロム2C9(CYP2C9)発現を誘導する検体を同定するための方法。
【請求項15】
吸着剤が、ポリマーが加湿性となり及び有機溶質保持において有効となるように十分な割合で、少なくとも1個の親水性モノマー及び少なくとも1個の脂溶性モノマーをコポリマー化することにより形成される加湿性ポリマー、シリカ基材に結合された非極性基を含有するシリカ基材並びに活性炭からなる群から選択される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
(a)肝細胞の培養物を提供することと;
(b)CYP2C9がトリチウム標識ジクロフェナックをヒドロキシル化するのに十分な時間、4’位においてトリチウム標識されたジクロフェナック及び検体を含有する培地中で肝細胞をインキュベートすることと;
(c)肝細胞の培養物から培地を除去することと;
(d)非極性化合物に選択的に結合する吸着剤に培地を添加して、培地からトリチウム標識ジクロフェナックを除去することと;及び
(e)トリチウム標識ジクロフェナックが除去された段階(d)の培地中のトリチウム量を測定することと(トリチウム量の減少は、検体がCYP2C9の活性を阻害することを示す。)
を含む、チトクロム2C9(CYP2C9)の活性を阻害する検体を同定するための方法。
【請求項17】
吸着剤が、ポリマーが加湿性となり及び有機溶質保持において有効となるように十分な割合で、少なくとも1個の親水性モノマー及び少なくとも1個の脂溶性モノマーをコポリマー化することにより形成される加湿性ポリマー、シリカ基材に結合された非極性基を含有するシリカ基材並びに活性炭からなる群から選択される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
(a)2−ヨードフェニル酢酸及び2,6−ジクロロ4−ブロモアニリンの混合物を提供することと;
(b)前記混合物を銅触媒の存在下にインキュベートして、2−[(2,6−ジクロロ,4−ブロモフェニル)アミノ]フェニル酢酸を生成させることと;及び
(c)2−[(2,6−ジクロロ,4−ブロモフェニル)アミノ]フェニル酢酸を、パラジウム触媒存在下にトリチウムと共インキュベートして、4’位において標識されたジクロフェナックを生成させることと
を含む、4’位において標識されたジクロフェナックを生成させるための請求項1に記載の方法。
【請求項19】
式:
【化1】
(式中、Tはトリチウムである。)を有する、4’位において標識されたジクロフェナック。
【請求項20】
式:
【化2】
(式中、Brは臭素であり、Clは塩素である。)を有する、2−[(2,6−ジクロロ,4−ブロモフェニル)アミノ]フェニル酢酸。
【請求項21】
(a)CYP2C9、NADPH再生系及び検体を含有する混合物を提供することと;
(b)様々な時間、前記混合物をインキュベートすることと;
(c)前記混合物を希釈し、次いで希釈混合物に4’位においてトリチウムにより標識されたジクロフェナック及びNADPHを添加することと;
(d)CYP2C9が4’位においてトリチウム標識ジクロフェナックをヒドロキシル化するのに十分な時間、前記希釈混合物をインキュベートすることと;
(e)混合物からCYP2C9を除去することと;
(f)非極性化合物に選択的に結合する吸着剤に前記混合物を添加して、前記混合物からトリチウム標識ジクロフェナックを除去することと;及び
(g)トリチウム標識ジクロフェナックが除去された段階(d)の混合物中のトリチウム量を測定することと(トリチウム量の減少は、検体が不可逆的にCYP2C9の活性を阻害することを示す。)
を含む、チトクロム2C9(CYP2C9)の活性を不可逆的に阻害する検体を同定するための方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図7D】
【図7E】
【図7F】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図7D】
【図7E】
【図7F】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公表番号】特表2008−515426(P2008−515426A)
【公表日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−535754(P2007−535754)
【出願日】平成17年10月4日(2005.10.4)
【国際出願番号】PCT/US2005/035688
【国際公開番号】WO2006/041844
【国際公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【出願人】(390023526)メルク エンド カムパニー インコーポレーテッド (924)
【氏名又は名称原語表記】MERCK & COMPANY INCOPORATED
【出願人】(501209427)イステイチユート・デイ・リチエルケ・デイ・ビオロジア・モレコラーレ・ピ・アンジエレツテイ・エツセ・ピー・アー (90)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年10月4日(2005.10.4)
【国際出願番号】PCT/US2005/035688
【国際公開番号】WO2006/041844
【国際公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【出願人】(390023526)メルク エンド カムパニー インコーポレーテッド (924)
【氏名又は名称原語表記】MERCK & COMPANY INCOPORATED
【出願人】(501209427)イステイチユート・デイ・リチエルケ・デイ・ビオロジア・モレコラーレ・ピ・アンジエレツテイ・エツセ・ピー・アー (90)
【Fターム(参考)】
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