説明

チモーゲンの迅速な活性化を促進する剤形

摂取直後のチモーゲンの迅速な活性化のために、pHおよび他の反応条件を最適化する1つまたは複数の賦形剤を製剤中に含めることによって、経口投与用のチモーゲンタンパク質の治療効果を向上させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、治療目的のための酵素のチモーゲン形態の経口投与に関する方法および組成物を提供する。よって、本発明は、生物学、分子生物学、化学、薬理学および医学の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
関連する開示の説明
胃腸(GI)管へのタンパク質または酵素の経口送達は、胃内pHとGI酵素によるタンパク質消化との両方に起因する低いタンパク質安定性ならびに低い吸収の結果、問題を抱えている。タンパク質安定性を高める当然の解決法は、活性酵素ではなくプロ酵素またはチモーゲン(これらの用語は、酵素の不活性前駆体を指すために本明細書において交換可能に使用される)の使用である。例えば、酵素がそれ自体を不活性断片へ切断し得る場合のように、チモーゲンは、対応する酵素自体よりも安定であり得る。チモーゲンの活性化プロセスは、例えば、ペプチド結合の切断による活性部位の露出または活性部位への変化を含み得る。ペプシノゲン、トリプシノゲン、キモトリプシノゲン、プロリパーゼ、プロパパイン、多くのカスパーゼ、いくつかのリパーゼおよびある特定のアミラーゼ、ならびに凝固および補体系の多くのメンバーを含む、チモーゲンの豊富な例が自然界にある。
【0003】
関心対象の他のチモーゲンとしては、ある特定のシステインプロテアーゼが挙げられる。例えば、オオムギ由来のシステインエンドプロテアーゼ(EP)B2は、チモーゲンである。このオオムギ由来のプロテアーゼ、およびグルテン含有穀物の発芽種子由来の他の同様のプロテアーゼは、セリアックスプルーおよび疱疹状皮膚炎における原因物質であるグルテンの解毒に有効な剤として同定された(米国特許第7,303,871号(特許文献1)を参照のこと、これは参照により本明細書に組み入れられる)。「ALV001」と呼ばれるオオムギ由来のチモーゲンの改変された組換え型(この酵素の活性型を本明細書において「AL001*」と呼ぶ)は、セリアックスプルーおよび疱疹状皮膚炎患者への経口投与用の酵素併用療法(スフィンゴモナス・カプスラータ(Sphingomonas capsulata)PEPなどの、プロリルエンドペプチダーゼ(PEP)を含む)の一部として使用されており、これらの患者においてグルテンがその毒性効果を発揮し得る前にグルテンの消化を助ける(米国特許第7,320,788号(特許文献2);米国特許出願公開第20080193436号(特許文献3);PCT特許公報第2008/115428号(特許文献4);PCT特許公報第2008/115411号(特許文献5);およびPCT特許出願第US2009/004791号(特許文献6)を参照のこと、これらの各々は、参照により本明細書に組み入れられる)。ALV001チモーゲンは不活性であり、pH 5未満で活性となる(ALV001*へ変化する)が、より高いpHでは活性化されない。システインプロテアーゼの別のチモーゲンである、ペプシノゲンは、ペプシンへの活性化を胃酸性度に依存している。参照文献Janabiら(J. Biol. Chem, 247, 4626-4632, 1972)(非特許文献1)により、pH 3未満でのペプシン生成の一次触媒作用は、迅速でありかつ分子内で起こり、一方、pH 4を超えるとそれは遅くなり、主として分子間で起こることが報告されている。システインプロテアーゼのプロ酵素の第3の例であるプロパパインは、チオールジスルフィド活性部位の分子内転位によって活性化される。
【0004】
チモーゲンの経口投与による治療効果の達成は、胃酸性度によるその急速な分解およびGI酵素によるタンパク質分解を伴うタンパク質の安定性と、活性酵素形態への活性化とのバランスを取ることであり得る。投与前において、保存中のタンパク質の安定性は、より安定なチモーゲン形態の使用によって高められ得る。空腹状態における胃内pHは、典型的にはpH 2の範囲内(1.5〜2.8)で非常に酸性であり、食後の状態において4〜5のまたはさらにそれより高い範囲内のpHまで上昇し得、次いで、食事の緩衝能に応じて、45分以内〜1時間または2時間以内に酸性pHへ戻り得る。食後pHのウィンドウ(window)および変化によって、チモーゲンは、酵素型へ最適にはまたは全く活性化されない場合があり、その間、それらは胃内において同時に急速な分解へ供される。胃内におけるその活性および活性持続時間を最大化するために、チモーゲンの活性化にとって最適なタイミングを提供し得る剤形は、その剤形によって意図される療法の効果を劇的に向上させ得る。
【0005】
pHによって放出または安定性を変化させる多数の剤形が、当技術分野において議論されてきた。米国特許第4,601,896号(特許文献7)は、治療剤、具体的には消化酵素を胃酸性度による分解から保護するための、コラーゲンおよび活性化コラーゲナーゼからなるカプセル剤を記載している。酵素は、剤形が腸に到達するまで剤形からのそれらの放出を遅延させることによって、胃内における分解を免れると報告されている。腸溶コーティングおよびアルカリ性緩衝剤が、胃内分解を避けるための他のアプローチとして挙げられた。米国特許第5,316,772号(特許文献8)および米国特許出願公開第20070154547号(特許文献9)は、GI管の種々の領域へ薬物を送達するためのpH依存性腸溶コーティングの使用を記載している。
【0006】
薬物放出がpHの変化によって誘発される多数の他の剤形が記載されている。米国特許第5,609,590号(特許文献10)は、薬物の放出がpH 3〜9の範囲内でpH感受性コーティングによって誘発される、浸透性破裂デバイスを記載している。米国特許第6,068,853号(特許文献11)は、経皮剤形を記載しており、ここで、薬物放出のための駆動力はpHで変動し、システムは、皮膚への適用の前に2つのリザーバーコンパートメントの内容物を混合することによって手動で活性化される。米国特許出願公開第20050244504号(特許文献12)は、酸性環境へ、特に、リポソームで細胞内へ、剤を送達するためのpH誘発粒子を記載している。米国特許第7,399,772号(特許文献13)は、GI管中における安定性を提供するためのプロトンポンプ阻害剤との緩衝剤の使用を記載している。米国特許出願公開第20070196491号(特許文献14)は、pH 6.8で200μg/ml未満の水溶解度を有する難溶性弱塩基性薬物の溶解度を向上させるための即時放出剤形への有機酸の添加を記載している。前記特許は、難溶性塩基性薬物への遊離酸の添加が、その放出速度を変化させるために使用され得ると報告している。
【0007】
保存される剤形中におけるチモーゲンの安定性の向上だけでなく、食物が与えられた胃内におけるチモーゲンの迅速な活性化も提供する、薬学的製剤および単位剤形が依然として必要である。本発明は、この要求および他の要求を満たしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第7,303,871号
【特許文献2】米国特許第7,320,788号
【特許文献3】米国特許出願公開第20080193436号
【特許文献4】PCT特許公報第2008/115428号
【特許文献5】PCT特許公報第2008/115411号
【特許文献6】PCT特許出願第US2009/004791号
【特許文献7】米国特許第4,601,896号
【特許文献8】米国特許第5,316,772号
【特許文献9】米国特許出願公開第20070154547号
【特許文献10】米国特許第5,609,590号
【特許文献11】米国特許第6,068,853号
【特許文献12】米国特許出願公開第20050244504号
【特許文献13】米国特許第7,399,772号
【特許文献14】米国特許出願公開第20070196491号
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Janabiら J. Biol. Chem, 247, 4626-4632, 1972
【発明の概要】
【0010】
本発明は、経口投与直後のプロ酵素(チモーゲン)薬物の迅速な活性化を提供する、方法、薬学的製剤、および単位剤形を提供する。一態様において、プロ酵素薬物は、経口投与の数分以内に活性化される。
【0011】
第1の局面において、本発明は、胃内のpH、または少なくとも、胃内の崩壊する剤形中のプロ酵素を直接取り囲む環境内のpHが、プロ酵素の活性化を促進するpHにおいて維持されることを確実にすることによって、胃内におけるプロ酵素の活性化を促進する1つまたは複数の賦形剤を組み入れるプロ酵素薬物の薬学的製剤を提供する。適した賦形剤としては、非限定的に、以下のうちの1つまたは複数が挙げられる:酸および/または酸性緩衝系;抗酸化剤;ならびにアニオン性ポリマー。
【0012】
第2の局面において、本発明は、本発明の製剤の単位剤形を提供する。第1の態様において、剤形は、プロ酵素、ならびに、胃内のpHがプロ酵素の活性化を促進するpHで維持されることを確実にすることによって胃内におけるプロ酵素の活性化を促進する1つまたは複数の賦形剤を含む。第2の態様において、剤形は、薬学的製剤がマトリクスまたはシェルまたはカプセル剤中にあるように、構成されており、胃内の崩壊する剤形中のプロ酵素を直接取り囲む環境のpHが、プロ酵素の活性化を促進するpHにおいて維持されることを確実にする様式で、該マトリクスまたは該シェルまたは該カプセル剤は分解する。
【0013】
従って、薬学的製剤およびその剤形は、剤形中の、または胃の周囲の胃腸液の全部または少なくとも一部中の、pHを、プロ酵素の迅速な活性化に適切なpH、例えば、約2〜約5の範囲内のpH、または約3〜約4の範囲内のpHに設定する、1つまたは複数の賦形剤を組み入れる。プロ酵素の活性化は、剤形の崩壊時に、または剤形(または剤形中の粒子)による水(GI液)の取り込みまたは進入の間に、および胃内へのまたは胃内の他のところへの酵素の放出の数分前以内にまたは放出と同時にまたは放出の直後に生じる。
【0014】
本発明の一態様において、プロ酵素は、単独でまたは別のプロテアーゼと組み合わせて、セリアックスプルー患者にとって有毒であるグルテンペプチドを非毒性断片へ消化することができるシステインプロテアーゼである。一態様において、システインプロテアーゼは、オオムギエンドプロテアーゼEPB2またはそのプロテアーゼの改変型であり、いずれかの組換え型であり得る。一態様において、プロ酵素はALV001である。ALV001*へのALV001の活性化は、pH 5未満では迅速であり、pH 5またはそれを超えるpHではより遅い(または、pHに応じて事実上存在しない)。1つ、2つ、3つまたはそれ以上の賦形剤、例えば酸および/または酸性緩衝系;抗酸化剤;ならびにアニオン性ポリマーを薬学的製剤および剤形中へ組み入れることによって、活性化の速度は、pHがpH 5またはそれを超えるpHであり得る、食物が与えられた胃において特に、以前に利用可能な剤形を使用して得られたものから実質的に増加し得る。
【0015】
本発明の一態様において、クエン酸または酢酸、またはそれらの対応する緩衝剤が、水へのプロ酵素の曝露時のpHを、プロ酵素の迅速な活性化を可能にするpH範囲へ調節するための、賦形剤として使用される。本発明のカプセル剤態様が用いられる場合、胃液がカプセル剤に入り始めて、酸または緩衝剤が溶解すると、それが所望の範囲内のpHを確立する。錠剤については、放出制御ポリマーを潜在的に含む錠剤中への水の浸透が、プロ酵素を活性化させるために初期pHをこの範囲に設定し得る。あるいは、所望のpH範囲を確立し酵素を活性化するために、十分な酸または緩衝剤が、プロ酵素と共に周囲の胃腸液中へ放出され得る。
【0016】
関連する態様において、薬学的製剤および剤形は、酸または緩衝剤と組み合わせて抗酸化剤を含む。抗酸化活性は、酸または緩衝剤によって、例えばアスコルビン酸などを使用して、提供され得、または抗酸化活性は、第2の抗酸化剤によって提供され得る。
【0017】
別の態様において、薬学的製剤および剤形は、酸または緩衝剤と組み合わせて、かつ任意で抗酸化剤を含んで、アニオン性ポリマーを含む。アニオン性ポリマーは、最適以下のpHレベルにおいてでさえ、活性化の増大を可能にする。
【0018】
第3の局面において、本発明は、患者においてセリアックスプルーおよび/または疱疹状皮膚炎を予防および/または治療するための方法であって、本発明の薬学的製剤またはその単位剤形で、グルテンを非毒性断片へ分解することができるプロテアーゼのチモーゲン形態を、患者によるグルテン含有食品の摂取と同時に、該患者へ経口投与する工程を含む、方法を提供する。
【0019】
第4の局面において、本発明は、患者へ経口投与されたプロ酵素薬物の治療効果を向上させるための方法であって、薬物の活性化に適した条件を経口摂取時に提供する1つまたは複数の賦形剤と組み合わせて薬物を投与する工程を含む方法を提供する。本発明の薬学的製剤の単位剤形は、この方法の実施に理想的に適している。剤形は、ヒトを含むがヒトに限定されない哺乳動物の治療に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1A〜Dは、5℃(A、B)および25℃(C、D)における酵素安定性。
【図2】異なるpHを有する緩衝液中の3 mg/mlペプシン中において、0.15 mg/ml ALV001をインキュベートした。示された時点においてTris緩衝液pH 7.7中で発色活性を測定し、残存する機能酵素の量を測定した。
【発明を実施するための形態】
【0021】
発明の詳細な説明
タンパク質の経口送達(経口による物質の投与、即ち、経口投与)の現在の技術において、酸に対するまたは消化/GI酵素によるタンパク質分解に対する経口摂取されたタンパク質の可能性のある不安定性を防ぐことに、焦点が当てられてきた。投与されたチモーゲンの活性化についてのタイミングが定められたメカニズムを提供するための方法およびシステムは、本発明より以前の著しい努力の焦点ではなかった。このような活性化の利点は、タンパク質分解(または他の分解活性)のために利用可能な時間を増やす目的のための、ならびに組み合わせ酵素生成物中の2つまたはそれ以上の酵素間で活性寿命および活性化のタイミングを調整するための、胃へのプロテアーゼまたは他の分解酵素の経口送達にとって特に重要であり得る。本発明は、食後に5を超える胃内pHを有する個体がいるという発見から少なくとも一部分において生じ、5を超える胃内pHは、最適な活性化のためにより低いpHを必要とする例えばALV001などのチモーゲンプロテアーゼの、最適な活性化を妨げる。グルテンの解毒において有効であるためには、ALV001は、ALV001のタンパク質分解または胃内容排出のいずれかの前に、活性ALV001*へ変換されなければならない。活性化後、低pHへのALV001*の曝露は、活性化酵素の急速な分解を生じさせ得る。高い食後pHは、一時的に調節されない場合には、チモーゲンの活性化にとって有害であり得る一方、ALV001*にとっては、この高い食後pHは、向上された酵素活性および安定性のために、従って薬物の治療効果を最大限にするために、有利である。
【0022】
本発明は、チモーゲン薬物または機能性食品と、剤形または剤形中に含有される粒子の局所環境内において、または胃内の周囲の胃腸液の全部ではなくても少なくとも一部において、経口投与後の少なくとも数分間であるが胃内へのチモーゲンの放出の前に、または胃内へのチモーゲンの放出と同時に、最適なpH範囲(例えば、約2〜約5、または約3〜約5、または約3〜約4.8のpH)を提供する1つまたは複数の賦形剤とを含む、薬学的製剤および単位剤形を提供する。従って、プロ酵素活性化を許容する環境が、剤形からの放出の前にまたはこれと同時に提供される。pHに対する効果を必ずしも有さないがプロ酵素の活性化および/または安定性を高める賦形剤もまた、剤形中へ組み入れられ得、これらとしては、抗酸化剤および/またはアニオン性ポリマーが挙げられる。
【0023】
本発明は、オオムギ由来のシステインエンドプロテイナーゼB1の組換え改変型である、ALV001と呼ばれるチモーゲン薬物に関して、説明される。上記の通り、米国特許第7,320,788号および同第7,303,871号は、セリアックスプルーおよび/または疱疹状皮膚炎に起因する症状の治療または予防のためのグルテンを消化するために経口投与される酵素としての、単独および組み合わせにおける、ALV001を含むグルテナーゼ(glutenase)と呼ばれるプロテアーゼの使用を、記載している。これらの酵素のプロ酵素の活性化のタイミングは、グルテンを消化するそれらの能力に影響を与え得、かつこれはまた、これらの特許に記載された、一方または両方がプロ酵素であってもよい2つまたはそれ以上のグルテナーゼから構成される、組み合わせ生成物にも当てはまる。
【0024】
コムギ、オオムギおよびライムギ中に存在する一般的な食物タンパク質であるグルテンの摂取は、感受性である個体において疾患(セリアックスプルーおよび疱疹状皮膚炎)を引き起こす。グルテンは、グルタミンリッチおよびプロリンリッチなグルテニンならびにプロラミン分子の複合混合物である。感受性である個体(セリアックスプルーおよび疱疹状皮膚炎患者)によるグルテンの摂取は、ペプチドおよび他の栄養素の効率的かつ広範囲な終末消化を担うことが公知である小腸の通常は豊かな絨毯様の上皮層の、平坦化をもたらす。セリアックスプルーの臨床症状としては、疲労、慢性下痢、栄養素の吸収不良、体重減少、腹部膨満、貧血、ならびに骨粗鬆症および腸の悪性疾患(リンパ腫および癌腫)を発症する危険性の実質的な増加が挙げられる。前記疾患は、欧州人口の200人中約1人という発病率を有する。痒みの激しい小水疱、丘疹、および蕁麻疹様病巣の群を特徴とする慢性発疹である、疱疹状皮膚炎は、関連疾患であり、かつ症状の著しい皮膚科学的症状発現を伴う同一の疾患と見なされ得る。IgA沈着物が、疱疹状皮膚炎患者についてのほとんど全ての正常に見える病変周囲の皮膚において生じる。無症候性グルテン過敏性腸症が、疱疹状皮膚炎患者の75〜90%において、および彼らの親族の一部において見られる。疾患の発症は、通常漸進的である。痒みおよび灼熱感は重篤であり、引っ掻きは、近くの皮膚の湿疹化を伴って原発巣をしばしば覆い隠し、これによって湿疹の誤診がもたらされる。長期間にわたるグルテン除去食の厳守は、一部の患者において疾患を制御し得る。ダプソン、スルファピリジンおよびコルヒチンが、疱疹状皮膚炎に起因する痒みの軽減に時折処方される。上記の通り、セリアックスプルーおよび疱疹状皮膚炎は、同一であると、または同一の原因の自己免疫疾患の単に異なる発現であると一般的に考えられており、患者において見出される抗体は、疾患の免疫学的根拠を示している。例えば、組織トランスグルタミナーゼ(tTG)およびグリアジンに対する抗体は、活性セリアックスプルーを有する患者のほぼ100%において現れ、このような抗体の、特にIgAクラスの存在は、疾患の診断において使用されてきた。
【0025】
セリアックスプルーおよび疱疹状皮膚炎患者の大多数は、HLA-DQ2 [DQ(a1*0501, b1*02)]および/またはDQ8 [DQ(a1*0301, b1*0302)]分子を発現する。腸損傷は、特定のグリアジンオリゴペプチドとHLA-DQ2またはDQ8との相互作用によって引き起こされ、これは、次に、腸の上皮下層中のTリンパ球の増殖を誘導すると考えられている。ヘルパーT1細胞およびサイトカインは、小腸の絨毛萎縮に至る局所炎症プロセスにおいて主要な役割を、一見したところ果たす。
【0026】
現時点において、セリアックスプルーの唯一の治療法は、グルテンを含有する全ての食物の厳密な回避であるが、下記において議論するように、グルテナーゼの臨床試験が進行中である。グルテン使用中止は、セリアックスプルーであると診断された小児についての予後を変え、成人患者についてはそれを実質的に改善したが、一部の人々、主に、診断された時に重篤な疾患を有していた成人は、依然として前記疾患が原因で死亡する。重要な死因は、リンパ細網疾患(特に、腸リンパ腫)である。見かけ上の臨床的寛解は、再生検によってまたはEMA価の増加によってのみ検出される組織学的再発をしばしば伴う。
【0027】
グルテンは、例えば市販のスープ、ソース、アイスクリーム、ホットドッグ、および他の食品中に、非常に広範囲に使用されているため、患者は、避けるべき食品の詳細なリストおよびセリアックスプルーに精通している栄養士からの専門的なアドバイスを必要とする。少量のグルテンの摂取であっても、寛解を妨げ得るかまたは再発を誘発し得る。特定の患者が経験する欠乏症の程度に応じて、補助ビタミン、ミネラル、および造血薬もまた必要とされ得る。少数の患者は、グルテン使用中止に不十分に応答するかまたは全く応答せず、前記疾患の難治性型を有すると特徴付けられる。後者の場合において、経口コルチコステロイド(例えば、プレドニゾン10〜20 mg、1日2回)は、応答を誘発する場合がある。
【0028】
臨床開発中の恐らく最も有望な新しい療法は、米国特許第7,320,788号および同第7,303,871号に記載された(参照により本明細書に組み入れられる;PCT特許出願第US2009/004791号ならびにPCT特許公報第2008/115411号、同第2008/115428号、同第2007/044906号、および同第2007/047303号も参照のこと、これらの各々は、参照により本明細書に組み入れられる)、患者による摂取の前または後のいずれかに、食品中の毒性グルテンオリゴペプチドの濃度を減少させることによって、セリアックスプルーおよび/または疱疹状皮膚炎の症状を予防および/または治療するための、グルテナーゼの使用である。これらの特許公報および特許出願は、特定のグルテンオリゴペプチドが、胃および膵臓酵素による切断に耐性であること、小腸中におけるこのようなペプチドの存在が、セリアックスプルー(および疱疹状皮膚炎)患者において毒性効果をもたらすこと、および酵素処理がこのようなペプチドを除去しそれらの毒性効果を妨げ得ることを開示している。グルテナーゼによる消化によって、これらの毒性オリゴペプチドは非毒性断片へ切断され、それによって、セリアックスプルーおよび疱疹状皮膚炎患者においてそれらの毒性効果が予防または軽減される。
【0029】
臨床開発中の1つの候補生成物は、「ALV003」と呼ばれ、2つのプロテアーゼから構成されている。酵素のこの組合わせによる、つまり、チモーゲンであるALV001と第2の活性酵素であるALV002(スフィンゴモナス・カプスラータPEPの組換え改変型)とのこの組み合わせによる、セリアックスプルーの効果的な治療は、グルテンが非毒性断片へ分解されるまで酵素を胃内において活性型で維持することに決定的に依存する。ALV001*の活性化されていないチモーゲンである、ALV001は、不活性であり、pH 5未満で活性となる(ALV001*へ変化する)が、より高いpHでは活性化されない。ALV001の活性化の機構は、他のシステインプロテアーゼと同様に、主として分子内である。それは、約pH 3〜約pH 5のpHで迅速に活性化される。それは、より低いpH(pH 3未満)では不安定である。
【0030】
組み合わせ剤形において、プロ酵素が、より安定であり、かつALV001*とは異なり、ALV002を消化および分解しないという点で、ALV001の使用は、ALV001*の使用と比べて安定性において利点を提供する。胃が空になる前におよびチモーゲンALV001が分解される前にグルテンを消化するために、チモーゲンは、投与されると、即ち、約3〜約5のpHで、迅速に活性化されなければならない。しかし、食物が与えられた状態において、胃のpHは、多くの個体においてpH 5を超え得る。
【0031】
本発明は、いくつかの態様において、例えば、信頼性の高いpH依存性プロ酵素活性化のための剤形を含む、胃内で信頼性の高いプロ酵素活性化を提供する剤形を提供する。一態様において、剤形は、ALV001などのチモーゲンと、酸または緩衝剤とを含有する、カプセル剤、好ましくはヒプロメロースカプセル剤である。本明細書において使用される場合、「緩衝剤」は、溶液中にある場合にpHの変化に耐える、弱酸およびその共役塩基または弱塩基およびその共役酸のいずれかの混合物を指す。関心対象の酸としては、非限定的に、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、シュウ酸、コハク酸、没食子酸、乳酸、リンゴ酸、およびアスコルビン酸が挙げられ、これらのいずれもが、約25 mg〜約250 mgの用量で存在し得る。関心対象の緩衝剤としては、非限定的に、マレイン酸およびマレアート、フマル酸およびフマラート、酒石酸およびタルトラート、クエン酸およびシトラート、シュウ酸およびオキサラート、コハク酸およびスクシナート、没食子酸およびガラート;アスコルビン酸およびアスコビル酸塩、ならびにリンゴ酸およびラクタートが挙げられる。このような緩衝剤は、約25 mg〜約250 mgの用量で、例えば、約25 mg、約50 mg、約100 mg、約150 mg、約200 mg、約250 mgで提供され得、ここで、成分の比率は、所望のpHおよび緩衝能を提供するように選択される。
【0032】
緩衝剤の標準表が、本発明の薬学的製剤および剤形において有用な緩衝剤についての成分の量を決定するために使用され得る。例えば、クエン酸ナトリウム35 mgおよびクエン酸100 mgはpH 3.3を与え、クエン酸ナトリウム70 mgおよびクエン酸200 mgもまた、2倍の緩衝能を伴ってpH 3.3を与え;クエン酸ナトリウム42.6 mgおよびクエン酸179.6 mgはpH 3を与え;クエン酸ナトリウム110 mgおよびクエン酸131 mgはpH 4を与え;酢酸ナトリウム56.4 mgおよび酢酸35.2 mgは、pH 4.6を与える。
【0033】
酸または緩衝剤は、タンパク質安定性のための他の追加の緩衝剤、例えばTris緩衝剤を含む、剤形中の任意の他の緩衝能を一時的に圧倒するに十分な量で存在する。カプセル剤の投与に続いて、いったん水がその進入または取り込みを開始すると、カプセル剤の溶解の前または間に、前記酸または緩衝剤は、約pH 2〜約pH 5、例えば3〜4.8のレベルにカプセル剤内のpHを設定するに十分である。ALV001の安定性はまた、非常に長期間pH 3未満に留まっていないpHに、依存し得るので、酸または緩衝剤の濃度、酵素の放出速度、または第2の緩衝剤、例えばTris緩衝剤の添加が、酵素の著しい分解の前にチモーゲンの活性化のための正しいバランスを提供するために、本発明に従って使用され得る。
【0034】
本発明のいくつかの態様において、酸または緩衝剤の少なくとも約20%が、摂取後、即ち、剤形の胃液中浸漬後、約15分以内に放出される。いくつかの態様において、酸または緩衝剤の少なくとも約30%が、摂取後、即ち、剤形の胃液中浸漬後、約20分以内に放出され、ここで、放出は、任意で拍動放出プロファイルまたは徐放プロファイルでの放出である。
【0035】
例えばQualicapsから得ることができる、ヒプロメロースカプセル剤、サイズ0は、pH 1.2の食塩水中において3:38〜4:49分で;およびpH 5.4で酢酸緩衝液中において4:08〜5:42分で、開く(崩壊する)のが観察された。
【0036】
本発明の製剤および剤形は、抗酸化剤を含み得;通常、存在する場合、抗酸化剤は、酸または緩衝剤に加えて提供される。薬学的に許容される抗酸化剤は、当業者に周知であり、一般的常識を形成する技術文献に記載されている。情報源は、例えば、"Remington's Pharmaceutical Sciences Handbook", Mack Pub. N.Y. U.S.Aに見られ得る。関心対象の抗酸化剤としては、非限定的に、アスコルビン酸、その塩およびエステル、ビタミンE、トコフェロールおよびその塩、メタ重亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸カリウム、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)などが挙げられる。メタ重亜硫酸ナトリウムの使用が、本発明の多くの適用にとって特に有利であり得る。
【0037】
抗酸化剤は、約1 mg〜約100 mg、例えば、約2 mg、約5 mg、約8 mg、約10 mg、約15 mg、約20 mg、約25 mgの有効用量で提供され得、ここで、成分の比率は、酵素安定性を提供するように選択される。本発明のいくつかの態様において、製剤または剤形は、有効用量の酸または緩衝剤、および有効用量の抗酸化剤を含む。BHTまたはBHAなどのある非常に強力な抗酸化剤について、これらの抗酸化剤の1つまたは複数は、本発明に従って0.01%〜0.1%レベルで組み入れられ得る。
【0038】
本発明の製剤または剤形は、ポリマー、特に、アニオン性ポリマーを含み得る。通常、存在する場合、ポリマーは、酸または緩衝剤に加えて提供される。薬学的に許容されるポリマーは、当業者に周知であり、技術文献に記載されている。特に、pHが最適pHよりも高い場合、例えば4.5を超えるpH、5.0を超えるpHなどにおいて、有効用量のポリマーは、プロ酵素活性化の速度を増加させる。有効用量は、約3〜約100μg/mlポリマーの胃内濃度を提供し得る。
【0039】
適したポリマーとしては、非限定的に、デキストラン硫酸、コンドロイチン、コンドロイチン硫酸、ヘパリン、ヘパリン硫酸、硫酸セルロース、キサンタン、ヒアルロン酸、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、カルボキシメチルセルロース、ポリプロパンスルホン酸、ポリグルタミン酸、アニオン性キトサン誘導体、例えば、スクシニル誘導体、ならびにアニオン性無水マレイン酸のコポリマーおよび誘導体などが挙げられる。有効用量は、ポリマーの効力で変化する。例えば、デキストラン硫酸および同様のポリマーは、約2μg〜約5 mgの単位用量で、通常、約5μg〜約100μgの単位用量で含まれ得る。コンドロイチン、ヘパリン硫酸、および同様のポリマーは、約5μg〜約200μgの単位用量で、通常、約10μg〜約75μgの単位用量で含まれ得る。ポリアクリル酸、硫酸セルロース、カルボキシメチルセルロース、および同様のポリマーは、約50μg〜約10,000μgの単位用量で含まれ得る。その並はずれた効力および十分に特徴づけられた毒性の結果として、デキストラン硫酸は、本発明のある特定の適用に好ましいアニオン性ポリマーであり得る。
【0040】
流体の進入の際にカプセル剤の内部でプロ酵素を活性化させるために、ポリマーが、カプセル中にパッケージされる製剤へ組み入れられ得る。プロALV001(または他のチモーゲン)を錠剤内でまたは胃内でより効率的に活性化させるために、ポリマーはまた、製剤が錠剤形態で提供される場合に含まれ得、これは放出制御ポリマーを潜在的に含む。製剤は、これが生じるための、数分、例えば、1〜15分、2〜12分、または4〜8分を提供し得る。
【0041】
1つまたは複数の剤形が、食事と共に各用量の酵素を送達するために使用され得る。錠剤は、Bツーリングで圧縮した場合、重さが100〜900 mgであり得るか、またはDツーリングもしくは他の非標準ツーリングで圧縮した場合、重さがほぼ1.5 gまでとなり得る。この大きいサイズでは、それは嚥下することが望ましくなくなり、800 mg未満のサイズが、嚥下の容易さのために一般的に好ましい。カプセル剤もまた使用され得、より良いタンパク質安定性のためにより低い含水量を有するヒプロメロースから作製されたカプセル剤が好ましい。サイズ0のカプセル剤について、400 mgが、さらなる圧縮無しのカプセル剤中のおおよその最大充填量である。サシェ剤もまた使用され得、ここで、サシェ剤の内容物は、飲料または食物と混合され嚥下され得る。サシェ剤は、より多い量の酵素および賦形剤を含有するように設計され得る。剤形中のタンパク質含有量は、変化し得、例えば、剤形の10〜80重量%または20〜50重量%を含む。
【0042】
本発明の一態様において、剤形は、チモーゲンおよび緩衝剤または酸性活性化剤だけでなく、第2の酵素も含有する。この第2の酵素、例えば、ALV002は、他の成分と共に直接ブレンドされ得るか、またはカプセル剤または錠剤中へ別個に充填され得る。チモーゲンから形成される活性化酵素による消化からのタンパク質分解からの安定性を向上させるために、ALV002は、カプセル剤、錠剤、またはサシェ剤の別の層またはセクションにあり得る。安定性を高めるために、ALV002はまた、胃液中または腸液中で溶解または分解する浸食性コーティングでコーティングされ得る。浸食性コーティングの例としては、ヒプロメロース、水溶性ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシド、ポロキサマー、または脂肪およびろう、例えば、蜜ろう、セチルアルコール、および標準的な浸食性であり透過性の徐放性コーティングにおいて使用される他の材料が、挙げられる。この保護的な浸食性コーティングは、チモーゲンが活性化された後5〜15分以内にまたは迅速に溶解し得、活性化酵素がグルテンを消化することを可能にし、その後、ALV002は、グルテンのさらなる消化を提供し、その間、胃の厳しい分解環境へのALV002の曝露は減少される。
【0043】
本発明の薬学的製剤は、例えば、非限定的に、カプセル剤、粒子、カプセル剤もしくはサシェ剤中の粒子、または錠剤の形態であり得る。製剤は、例えば、非限定的に、食物または飲料へ添加され、次いで、例えば、ふりかけられた粉末、スプリンクル(sprinkle)として、または顆粒製剤として、またはジャムもしくはペーストの形態のスプレッドとして投与され得る。低含水量のカプセル剤が、安定性の向上のために使用され得、任意の所望のサイズ、例えば1、0、または00のヒプロメロースカプセル剤、HPMCが、使用され得る。カプセル剤は、乾燥剤または乾燥剤パックのいずれかと共に乾燥環境中において、またはブリスターにおける場合は乾燥窒素または他の乾燥環境下で、パッケージされ得る。
【0044】
本発明の薬学的製剤において有用な酸活性化賦形剤の例としては、リンゴ酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、シュウ酸、コハク酸、没食子酸、アスコルビン酸、安息香酸、ホウ酸、サリチル酸、グルタル酸、ジメチルグルタル酸、およびソルビン酸のうちの1つまたは複数が挙げられるが、これらに限定されない。ポリマー酸、例えば、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、シェラック、デキストランなどが、活性化酸性賦形剤として使用され得る。緩衝剤の賦形剤の例としては、グリシン、シトラート、アセタート、Tris、ホスファート、ボラート、ピペラジン、ジメチルグルタラート、シトラート−ホスファート、およびフタル酸水素カリウムの緩衝剤のうちの1つまたは複数が挙げられるが、これらに限定されない。酸および/または緩衝剤の賦形剤は、別個の粒子、顆粒またはペレットで組み入れられ得、これらは、錠剤化されるかまたはカプセル中へ置かれ、投与後に迅速に別個の粒子へ分散する剤形が形成される。あるいは、酸または緩衝剤は、他の賦形剤または賦形剤およびチモーゲンとブレンドされ得る。
【0045】
本発明の薬学的製剤は、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、ステアリルフマル酸ナトリウム、およびステアリル乳酸ナトリウム、グリセリルベヘナート、硬化植物油(例えば、ステアリン酸およびパルミチン酸の水素化および精製されたトリグリセリド)、およびこれらの滑沢剤の混合物を含むが、これらに限定されない、1つまたは複数の滑沢剤を含み得る。これらは、例えば、非限定的に、剤形の0.3〜5重量%で存在し得る。例えば、マンニトールなどの賦形剤が凍結乾燥粉末中に高濃度で含有される場合、高濃度の滑沢剤が使用され得る。
【0046】
システインプロテアーゼ(または他のタンパク質活性薬学的成分)粉末は、滑沢剤、または他の賦形剤、例えば、充填剤または結合剤とブレンドされ、顆粒化され得る。システインプロテアーゼ(または他のAPI)が水および温度で不安定である場合、APIおよび任意の滑沢剤または他の賦形剤は、必要であれば安定性のために冷却したローラーを使用して、顆粒へローラーで圧縮され得る。チモーゲン(例えば、ALV001)の活性化を促進するために、剤形がGI管中に存在した後少なくとも最初の数分間pHを改変または制御する剤を、この工程に任意で含めることができる。
【0047】
充填剤および結合剤、例えば、リン酸二カルシウム、微結晶性セルロース、マンニトール、ラクトース、スクロース、およびトレハロース、ならびにこのような充填剤の混合物が、含まれ得、かつ粉末とブレンドされ得るか、またはチモーゲンの凍結乾燥もしくは噴霧乾燥粉末調製物中に含まれ得る。より親水性の充填剤、例えば、微結晶性セルロースは、ある特定の酵素、例えばALV001について回避される場合がある。
【0048】
放出制御賦形剤は、薬学的製剤中へブレンドされ得るか、またはポリマー薬物含有マトリクスを形成するために剤形自体の製造において使用され得る。これらのマトリクスは、例えば、直径約0.5または1 mmから、幅10〜12 mmおよび長さ1.8 cmまでまたはそれ以上の完全な錠剤のサイズまでであり得る。これらのマトリクスは、サイズに応じて、1/2〜8時間、食物と共に保持されて、胃内への持続放出を提供し得る。これらのマトリクスは、本発明に従って、任意で膨潤性であり得る。膨潤性剤形が望ましい場合、それらは、例えば、非限定的に、セルロースポリマーおよびそれらの誘導体、例えば、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、および微結晶性セルロース、多糖類およびそれらの誘導体、ポリアルキレンオキシド、ポリエチレングリコール、キトサン、ポリ(ビニルアルコール)、キサンタンガム、無水マレイン酸コポリマー、ポリ(ビニルピロリドン)、デンプンおよびデンプンベースのポリマー、ポリ(2-エチル-2-オキサゾリン)、ポリ(エチレンイミン)、ポリウレタンヒドロゲル、および架橋ポリアクリル酸およびそれらの誘導体を含む持続放出親水性ポリマーを使用することによって、本発明に従って作製される。さらなる例は、ブロックコポリマーおよびグラフト化ポリマーを含む、これらのポリマーのコポリマーである。上記ポリマーを使用して本発明の他の単位剤形を提供するために、持続放出コーティングも作製され得る。チモーゲンのための持続放出剤形が作製される場合、チモーゲンおよびクエン酸またはクエン酸緩衝剤もしくは酢酸緩衝剤などの活性化剤の両方を含有する浸食性ポリマーが使用され得、その結果、チモーゲンは、乾燥している場合は活性化されていないままであり、次いで、ポリマーが水を吸収すると、pHの変化によって活性化され、ポリマーの溶解によって胃液中へ最終的に放出される。
【0049】
様々な態様において、本発明の剤形の組成は、下記の表における各カテゴリーに列挙される例示的な成分のうちの1つまたは複数を選択することによって記載され得る。この表は、単に例示に過ぎず、可能な成分の全てを含まず;さらに、表中のカテゴリーによって示されていない他の成分が、本発明の剤形に含まれ得る。上記の通り、剤形は、第2の酵素、例えばALVN002などをさらに含み得る。
【0050】

【実施例】
【0051】
以下の実施例は、本発明の例示的な態様を説明する。
【0052】
実施例1
サイズ0のヒプロメロースカプセル剤(Qualicaps)において、マンニトール約300 mgを計量した。緩衝活性化剤として、クエン酸100 mgおよびクエン酸ナトリウム35 mgを計量し、3.3の局所pHを得た。pH 3.2で無色から赤色になる色素であるキナルジンレッド少量、および不溶性色素を溶解するための少量のTween 80を添加した。溶液900 ml中において50 rpmで撹拌して37℃で、カプセル剤の浮遊を避けるためのシンカーを備えるUSP 1型パドル溶解装置中において、6個のカプセル剤を試験した。溶液をpH 1.2へ調節し、ペプシン無しの胃液をシミュレートし、酢酸緩衝剤でpH 5へ調節した。pH 1.2で、色素は、5:03〜5:59分で赤色になり、13:09〜14:28分で完全に溶解した。pH 5で、色素は、4:51〜5:42分で赤色へ変化し、13:21〜14:24分で完全に溶解した。この実験は、緩衝剤が、局所pH環境を一時的に設定したが、特にpH 5において、大量の溶液の緩衝能によって急速に圧倒されたことを示している。
【0053】
実施例2
サイズ0のヒプロメロースカプセル剤(Qualicaps)において、マンニトール約100 mg、ALV001 50 mg、ALV002 50 mg、Tris緩衝剤,pH 8.5 10 mg、スクロース7 mg、EDTA 3 mg、モノチオグリセロール1 mgを充填し、これらの後者の賦形剤はタンパク質の安定性を向上させるために添加する。さらに、クエン酸250 mgを、カプセル剤の半分まで活性化剤として添加する。ウエスタンブロットによるALV001の活性化および溶解前の安定性を、pH 5緩衝液中における溶解の後に比較し、クエン酸を含有するカプセル剤がALV001のより大きい活性化を示したことを示す。
【0054】
実施例3
ALV001をその安定化賦形剤と共に、結合剤としての低分子量ヒプロメロース、滑沢剤としてのステアリルフマル酸ナトリウム、および活性化剤としてのクエン酸とブレンドする。このブレンドをローラーで圧縮し、顆粒を得る。次いで、この顆粒を低分子量ヒプロメロースの約2重量%コーティングでコーティングし、約10〜15分で溶解するコーティングを得る。サイズ0のヒプロメロースカプセル剤(Qualicaps)において、ALV001を25 mg含有するこれらのコーティングされた顆粒、等量のコーティングされていないALV001およびその安定化賦形剤、ならびにクエン酸50 mgを充填する。改変シミュレート胃液またはpH 5緩衝液中に溶解された場合、ALV001 25 mgは、最初の10分以内に放出および活性化され、残りは10〜20分で放出および活性化される。
【0055】
実施例4
充填剤としてのリン酸二カルシウムおよびステアリルフマル酸ナトリウムと共にALV001約50 mgをローラーで圧縮する。充填剤としてのリン酸二カルシウムおよびステアリルフマル酸ナトリウムと共にALV002約50 mgをローラーで圧縮する。両方の顆粒を、結合剤としての低分子量ヒプロメロース、充填剤としてのマンニトール、活性化剤としてのクエン酸150 mg、およびステアリルフマル酸ナトリウムと共にブレンドする。ブレンドを、Bツーリングを備えるManesty Betapressに置き、400 mg錠剤を作製する。溶解試験のためにpH 5緩衝液中に浸漬した場合、錠剤は迅速に溶解し、かつALV001のいくらかの活性化が観察される。
【0056】
実施例5
ALV002をリン酸二カルシウムおよびステアリルフマル酸ナトリウムと混合し、ローラーで圧縮する。次いで、これらの顆粒を、ALV001が放出された10分後に溶解するコーティングを提供するために、ヒプロメロース約2重量%でコーティングする。サイズ0のヒプロメロースカプセル剤(Qualicaps)において、マンニトール約100 mg、ALV001 50 mg、コーティングされた顆粒のALV002 50 mg、Tris緩衝剤,pH 8.5 10 mg、スクロース7 mg、EDTA 3 mg、モノチオグリセロール1 mgを充填し、これらの後者の賦形剤はタンパク質の安定性を向上させるために添加する。この剤形は、胃液へ曝露された場合、クエン酸を湿らして、ALV001を活性化し、かつ約10分後にALV002を放出する。
【0057】
実施例6
噴霧乾燥させたALV001原薬を使用し、これは以下を含有する:Tris 242 mg、モノチオグリセロール27.5 mg、EDTA 146 mg、ALV001タンパク質1500 mg、マンニトール250 mg、およびスクロース250 mg。この比率:ALV001原薬420 mg、スクロース233 mg、滑沢剤としてのステアリルフマル酸ナトリウム13.3 mg、メタ重亜硫酸ナトリウム8 mg、クエン酸46 mg、およびデキストラン硫酸20μgでブレンドした後、ローラー圧縮によってシートを作製する。少量で存在する材料のために、幾何学的混合を使用した。デキストラン硫酸も充填剤上へ噴霧乾燥させておくことができた。ローラー圧縮機からシートを直接供給することによって、顆粒を作製する。重さが約500 mgである錠剤を、Bツーリングを備えるCarverプレスにおいて作製する。
【0058】
USP 2型(パドル)溶解装置中におけるpH 5緩衝液中への顆粒の溶解によって、ALV001の活性化を研究する。約5分で、錠剤は崩壊し次いで溶解すると予想される。試料を5分で採取し、Tris緩衝剤でpH 7.7にする。これらの試料は、4000〜5000 U/mgの範囲内であると予想される活性で、発色アッセイ法によって活性酵素を示すと予想される。
【0059】
実施例7
実施例6からのALV001の顆粒を、サイズ0のHPMCカプセル剤へ充填し、各カプセル剤中へ顆粒400 mgを含めた。
【0060】
実施例8
ALV001の顆粒を、スクロース25%、ステアリルフマル酸ナトリウム2%、およびデンプングリコール酸ナトリウム6%とブレンドした。Bツーリングを使用して、このブレンドを325 mg錠剤へ圧縮し、これは個々の顆粒へ迅速に溶解した。
【0061】
実施例9
本実施例は、活性化のためのクエン酸一水和物および抗酸化剤としてのメタ重亜硫酸ナトリウムの使用を示す。ALV001原薬を凍結乾燥し、これは以下をおおよそで含有した:ALV001タンパク質21%、マンニトール39%、Tris緩衝剤,pH 8.5 20%、スクロース14%、塩化ナトリウム2%、EDTA3%、およびモノチオグリセロール1%。酵素(ALV001)原薬150 mgを、クエン酸一水和物300 mg、およびメタ重亜硫酸ナトリウム8 mgと共に製剤化し、ポリプロピレンボトル中に置き、ホイルポーチ中に密封した。図1に示すように、発色アッセイ法を指定された時点で測定し、安定性を評価した。
【0062】
実施例10
ALV001を、pH 5.4の200 mM酢酸緩衝液中において37℃まで予熱された200 mM緩衝液中へ希釈した。1.5分後、5分後、10分後、および20分後、図2に示すように、発色活性アッセイ法を使用して、ALV001活性を測定し、ALV001活性化の動態を測定した。
【0063】
発色基質Z-Phe-Arg-pNAに対する25℃におけるALV001のタンパク質分解活性を、410 nmにおける光の吸光度の変化の割合を測定することによって評価する。方法は、410 nmの光を吸収する、溶液中へのパラ-ニトロアニリン(pNA、4-ニトロアニリン)の放出に基づく。ALV001についてのスペシフィケーションは≧5000 u/mgである。
【0064】
発色基質Z-Gly-Pro-pNAに対する25℃におけるALV002のタンパク質分解活性を、410 nmにおける光の吸光度の変化の割合を測定することによって評価する。方法は、410 nmの光を吸収する、溶液中へのパラ-ニトロアニリン(pNA、4-ニトロアニリン)の放出に基づく。ALV002についてのスペシフィケーションは≧3000 u/mgである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
pH依存性プロ酵素活性化を伴う、チモーゲンの経口投与に適した薬学的製剤であって、
該チモーゲン;および
該製剤が胃液へ曝露された場合に、該チモーゲンの活性化に適したpHを提供する、酸または緩衝剤の賦形剤
を含む、薬学的製剤。
【請求項2】
前記チモーゲンがシステインプロテアーゼである、請求項1記載の薬学的製剤。
【請求項3】
前記システインプロテアーゼが、オオムギEPB2またはオオムギEPB2の組換え型である、請求項2記載の薬学的製剤。
【請求項4】
前記賦形剤が酸である、請求項1〜3のいずれか一項記載の製剤。
【請求項5】
前記賦形剤が、緩衝能を有する酸である、請求項1〜3のいずれか一項記載の製剤。
【請求項6】
前記賦形剤が約25 mg〜約250 mgの用量で存在する、請求項4または5記載の製剤。
【請求項7】
前記賦形剤が、クエン酸、マレイン酸、リンゴ酸およびフマル酸のうちの1つもしくは複数、または緩衝剤である、請求項4〜6のいずれか一項記載の製剤。
【請求項8】
抗酸化剤をさらに含む、請求項1〜7のいずれか一項記載の製剤。
【請求項9】
前記抗酸化剤が、約1 mg〜約100 mgの用量のメタ重亜硫酸ナトリウムである、請求項8記載の製剤。
【請求項10】
ポリマーをさらに含む、請求項1〜9のいずれか一項記載の製剤。
【請求項11】
前記ポリマーがアニオン性ポリマーである、請求項10記載の製剤。
【請求項12】
前記ポリマーが、デキストラン硫酸、コンドロイチン、コンドロイチン硫酸、ヘパリン、ヘパリン硫酸、硫酸セルロース、キサンタン、ヒアルロン酸、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、カルボキシメチルセルロース、ポリプロパンスルホン酸、ポリグルタミン酸、アニオン性キトサン誘導体、ならびにアニオン性無水マレイン酸のコポリマーおよび誘導体より選択される、請求項11記載の製剤。
【請求項13】
前記ポリマーが、約2μg〜約100μgの用量のデキストラン硫酸である、請求項12記載の製剤。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか一項記載の薬学的製剤の、単位剤形。
【請求項15】
カプセル剤または錠剤である、請求項14記載の単位剤形。
【請求項16】
ヒプロメロースから作製されている、請求項15記載のカプセル剤。
【請求項17】
前記賦形剤の少なくとも20%が、剤形の胃液中浸漬から15分以内に放出される、請求項1〜16のいずれか一項記載の薬学的製剤。
【請求項18】
前記酵素の少なくとも30%が、剤形の胃液中浸漬から少なくとも15分後に開始する拍動放出プロファイルまたは徐放プロファイルで放出される、請求項1〜16のいずれか一項記載の薬学的製剤。
【請求項19】
患者においてセリアックスプルーおよび/または疱疹状皮膚炎を予防および/または治療するための方法であって、請求項1〜18のいずれか一項記載の製剤を経口投与する工程を含む、方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2012−505211(P2012−505211A)
【公表日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−531020(P2011−531020)
【出願日】平成21年10月9日(2009.10.9)
【国際出願番号】PCT/US2009/005535
【国際公開番号】WO2010/042203
【国際公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【出願人】(507158341)アルヴィン ファーマシューティカルズ インコーポレーティッド (5)
【Fターム(参考)】