説明

チャックユニット

【課題】ねじの落下によるねじ締め不良を低減できるチャックユニットの提供を目的とする。
【解決手段】ねじ90の吸引可能な吸着パイプ81を挿通可能とするチャック本体15を有し、このチャック本体15にそれぞれ揺動自在に支持された一対のチャック爪16,17に幅の異なる大溝16a(17a)および小溝16b(17b)、傾斜溝16c(17c)をそれぞれ備えてなるチャックユニット10において、前記大溝16a,17aの深さFを前記吸着パイプ81の先端外径の2分の1よりも大きくするとともに前記大溝16a,17aの幅Wを前記吸着パイプ81の最大径よりも大きく構成した。これにより、下降する前記吸着パイプ81と前記傾斜溝16c,17cとが当接すると、この当接位置がX1,X2となる。これにより、吸着パイプ81は、低い推力によってチャック爪16,17を揺動方向Y1,Y2へ押し広げ続けることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、締結部品の一例であるねじをねじ締め前に確実に保持できるチャックユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のチャックユニットは、特許文献1および特許文献2に示すものが広く知られており、特許文献3に示す吸引式ねじ締め機に搭載されている。これら従来のチャックユニットについて、図5ないし図8を用いて説明する。従来のチャックユニット50は、モータ(図示せず)等の回転を受けて回転するとともに前記ねじ90に係合可能なビット80を挿通自在に配されたチャック本体15を有し、このチャック本体15に一対のチャック爪26,27を対向にかつ取付穴26e,27eを中心に揺動自在に配し、各チャック爪26,27を常時閉じる方向に付勢する爪ばね20,21を備える。また、前記チャック本体15には、前記チャック爪26,27の揺動面に交差しかつ斜め後方に向かって延びるホース取付金具14が固定されるとともに、このホース取付金具14と前記チャック爪26,27との間には、前記ねじ90の通過可能な通過穴12aを配設した供給パイプ12が揺動自在に配されている。さらに、前記チャック本体15には、ダブルトーション形のねじりコイルばね13が取りつけられており、前記供給パイプ12を付勢して前記ホース取付金具14および前記チャック爪26,27それぞれの内部経路と前記通過穴12aとを適宜接続可能に構成される。また、前記チャック爪26,27は、それぞれの向かい合う面に大溝26a,27aおよび小溝26b,27bが形成されており、前記大溝26a,27aは、それぞれ前記吸着パイプ81の先端外径よりも若干大きい弧状に形成されている。さらに、前記大溝26a,27aと小溝26b,27bは、傾斜溝26c,27cによって接続される一方、前記大溝26a,27aの入口は、テーパ溝26d,27dがそれぞれ形成される。一方、特許文献2のチャックユニットは、前記チャック爪26,27を閉止あるいは拡開させる開閉手段(図示せず)を備えており、前記ねじ90の供給時であれば強制前記チャック爪26,27を的に閉止する一方、ねじ90の螺入時であれば強制的に拡開する。次に、特許文献3の吸引式ねじ締め機は、前記チャックユニット50と、前記ビット80と、前記ビット80を内包可能な吸着パイプ81と、前記ビット80および前記吸着パイプ81を昇降する昇降手段(図示せず)とから構成される。また、前記ビット80の先端は、前記吸着パイプ81の先端に対して奥方に配されるとともに、前記吸着パイプ81の上方に配されたクッションばね(図示せず)の作用を受けて前記吸着パイプ81の先端から突出可能である。さらに、前記吸着パイプ81は、エアを吸引可能な吸引装置(図示せず)に接続されており、吸着パイプ81の内部に前記ねじ90を吸引可能に構成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平05-070836号公報
【特許文献2】特開平11-156648号公報
【特許文献3】特許第3431815号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のチャックユニット50は、下降する前記吸着パイプ81の先端部と前記傾斜溝26c,27cとが当接すると、図6(b)に示す当接位置X1,X2から図7(b)に示す当接位置X1,X2,X3,X4へと前記吸着パイプ81の外周に沿って徐々に変化する。つまり、チャック爪26,27の揺動方向Y1,Y2から揺動不能な方向Z1,Z2およびZ3,Z4へとチャック爪26,27に作用する力が変化する。よって、図7(b)および同図(c)に示すように揺動方向Y1a,Y2aに作用する力が徐々に小さくなり、前記チャック爪26,27が開く方向へ揺動できない問題があった。また、前記チャック爪26,27が開く方向に揺動しないため、前記クッションばねに撓みが生じ前記ねじ90は、前記ビット80によって吸着パイプ81から押し出される。これにより、前記傾斜溝26c,27cは、前記ねじ90と当接するため、前記ビット80に掛かる推力が徐々に高くなる。よって、前記チャック爪26,27の揺動方向力Z1ないしZ4に作用する力が飛躍的に増大して、揺動方向Y1a,Y2aに作用する力が揺動方向Y1,Y2に作用する力よりも大きくなり、前記チャック爪26,27が一気に押し広げられる。このとき、前記ねじ90は、吸着パイプ81から突出しているため、前述の吸引状態が解かれてワーク上に落下する問題もあった。一方、前記吸着パイプ81が前記ねじ90を正常に吸引した状態で前記チャック爪26,27から突出した場合であっても、図8に示すように前記テーパ溝26d,27dの角部J1,J2は、それぞれ尖った形状をしているため、吸着パイプ81のテーパ部にそれぞれ噛み込み、ここで前記クッションばねの撓みが生じて前述と同様に前記ねじ90をワーク上に落下させる問題もあった。そこで、吸着パイプ81の下降中に前記ねじ90を落下させないため、特許文献2のチャックユニットが考案された。しかしながら、特許文献2のチャックユニットは、前記開閉手段を必要とするため、サイズが大きくなる問題があった。また、前記チャック爪26,27の開くタイミングを設定する必要があるため、前記開閉手段の制御が複雑になる問題もあった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は上記課題に鑑みて創成されたものであり、ねじの落下によるねじ締め不良を低減できコンパクトなチャックユニットの提供を目的とする。この目的を達成するために、本発明は、テーパ部を備えた筒状の吸着パイプを挿通可能なチャック本体を有し、このチャック本体に一対のチャック爪を対向かつ揺動自在に配するとともに、前記チャック爪の先端を常時閉じる方向に付勢する爪ばねを配し、前記チャック爪の向かい合う面に幅の異なる大溝および小溝をそれぞれ形成するとともに前記大溝および前記小溝を接続する傾斜溝を備えてなるチャックユニットにおいて、前記大溝の深さを前記吸着パイプの先端外径の2分の1よりも大きくするとともに前記大溝の幅を前記吸着パイプの最大径よりも大きく設定したことを特徴とする。また、前記大溝と前記大溝および前記傾斜溝と前記傾斜溝の向かい合わせた断面に表れる輪郭線をそれぞれ楕円で形成することが好ましい。
【発明の効果】
【0006】
本発明のチャックユニットは、チャック爪がスムーズに開くため、前記ねじを完全に前記吸着パイプから突出させることがない。よって、前記ねじが前記吸着パイプの下降中にワーク上へ落下する不具合を低減できる利点がある。また、本発明のチャックユニットは、従来の前記開閉手段を必要としないため、外観寸法が小さい利点もある他、前記チャック爪の開くタイミングを設定あるいは制御する必要がない利点もある。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】aは本発明に係わる一実施例の一部切り欠き断面図である。bはaのB−B断面拡大図である。cはaの要部C−C断面図である。
【図2】aは図1の動作説明図である。bはaのB−B断面拡大図である。cはaの要部C−C断面図である。
【図3】aは図2の動作説明図である。bはaのB−B断面拡大図である。cはaの要部C−C断面図である。
【図4】aは図3の動作説明図である。bはaのB−B断面拡大図である。
【図5】aは従来の一実施例の一部切り欠き断面図である。bはaのB−B断面拡大図である。cはaの要部C−C断面図である。
【図6】aは図5の動作説明図である。bはaのB−B断面拡大図である。cはaの要部C−C断面図である。
【図7】aは図6の動作説明図である。bはaのB−B断面拡大図である。cはaの要部C−C断面図である。
【図8】aは図7の動作説明図である。bはaのB−B断面拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図1ないし図4に基づき本発明の一実施例を以下に説明する。チャックユニット10は、前記ねじ90を吸引可能な吸着パイプ81を挿通自在に形成されたチャック本体15と、このチャック本体15にそれぞれ揺動自在に支持された一対のチャック爪16,17から構成される。
【0009】
チャック本体15は、前記吸着パイプ81の最大径よりも若干大きい吸着パイプ通過穴15aが貫設されるとともに、この吸着パイプ通過穴15aに延長線上で交差する傾斜穴15bが配設されている。この傾斜穴15bの延長線上には一部、傾斜面15cが形成されており、この傾斜面15cは、前記吸着パイプ通過穴15aに揺動自在に配された後述する供給パイプ12の外形と当接して供給パイプ12の揺動を規制可能に構成される。さらに、この傾斜穴15bには、前記ねじ90の通過可能な通過穴14aと一端を凹球面で形成したホース取付金具14が固定されており、このホース取付金具14は、前記ねじ90を分離して圧送可能なねじ供給装置(図示せず)に接続される。
【0010】
前記チャック爪16(17)は、その側面に鏡面仕上げされた大溝16a(17a)と前記ねじ90の軸部をガイド可能な小溝16b(17b)とがそれぞれ形成されており、前記大溝16a(17a)および前記小溝16b(17b)は、先へ進むに連れて深さの浅い傾斜溝16c(17c)によって接続されている。また、前記チャック爪17は、前記チャック爪16に対して対称に形成されており、このチャック爪16とチャック爪17は、それぞれ対向にかつ取付穴16e,17eを支点にして揺動自在に前記チャック本体15に配されている。さらに、前記チャック爪16,17は、それと当接するように配された爪ばね20,21によって、常時その先端を閉じる方向に付勢されており、閉じた状態であれば、図1(c)に示すように前記傾斜溝16c,17cで前記ねじ90を吊り下げて支持可能であるとともに、前記小溝16b,17bで前記ねじ90の軸部を包むようにガイド可能に構成される。
【0011】
前記大溝16a(17a)は、その深さFがそれぞれ前記吸着パイプ81の最大径の2分の1よりも若干大きな寸法で設定される一方、その幅Wが前記吸着パイプ81の最大径よりも若干大きな寸法で設定される。また、前記大溝16a,17a前記大溝17aおよび前記傾斜溝16c,17cは、図1(b)および図2(b)に示すように、それぞれ前記チャック爪16,17の閉じた状態の断面に表れる輪郭線が楕円で形成されている。
【0012】
前記供給パイプ12は、前記通過穴14aとほぼ同じ寸法からなる通過穴12aを備えており、この通過穴12aの端部は、凸球面に形成されている。この凸球面の球面寸法は、前記ホース取付金具14の凹球面よりも小さく設定されており、前記供給パイプ12は、その凸球面が前記ホース取付金具14の凹球面に嵌り込むように配され、前記凸球面および凹球面の間に僅かな隙間を有して配される。また、この供給パイプ12は、前記チャック本体15の両側面にそれぞれ配されたとがり先の六角穴付き止めねじ(図示せず)により揺動自在に支持されている。このように、前記供給パイプ12は、図1(a)に示す前記通過穴14aおよび前記大溝16a,17aを接続する位置から、図2(a)に示す前記チャック爪16,17から離反する方向に揺動可能に構成される。
【0013】
また、ダブルトーション形のねじりコイルばね13は、その両端を前記六角穴付き止めねじの軸部に巻き付けられて固定される一方、その中間部が前記供給パイプ12に常時当接するよう配され、供給パイプ12を前記傾斜面15cに当接する方向へ付勢するように構成される。
【0014】
また、前記吸着パイプ81は、先端部と他端部とが異なる2つの軸径からなる軸部がそれぞれ形成され、これら異なる軸部は、テーパ加工されて接続される。また、前記吸着パイプ81の上方には、前記クッションばねが配されており、このクッションばねの撓みによって前記ビット80は、前記吸着パイプ81の先端から突出可能に構成される。一方、前記吸着パイプ81の内部は、先端側に前記ねじ90の頭部よりも若干大きな寸法の吸引経路81aが形成されるとともに、前記ねじ90の頭部に係合可能なビット80が配されている。
【0015】
前記ビット80は、モータ(図示せず)等に接続され回転可能に構成される一方、前記吸着パイプ81は、エアを吸引可能な吸引装置(図示せず)に接続され空気をその先端から吸引可能に構成される。また、このビット80および吸着パイプ81は、それぞれ昇降手段(図示せず)に連結されており、前記吸着パイプ通過穴15aに沿って昇降可能に構成される。
【0016】
次に、作用について以下に説明する。図1は、本発明のチャックユニット10に前記ねじ90を供給した状態を示したものである。前記ねじ供給装置は、制御装置(図示せず)等の指令を受けて前記ねじ90および前記圧縮空気を前記ホース内に排出して、この排出されたねじ90は、前記通過穴14a、前記通過穴12aの順に通過して前記チャック爪16,17の前記大溝16a,17aに支持される。
【0017】
図2および図3は、前記ビット80および前記吸着パイプ81がともに下降し、吸着パイプ81の先端部が前記傾斜溝16c,17cにそれぞれ当接している時点を示したものである。まず、図2に示すように、前記供給パイプ12と前記吸着パイプ81とが当接すると、前記供給パイプ12は、前記ねじりコイルばね13とともに揺動する。このとき、前記吸引装置が作動しているため、前記小溝16b,17bにガイドされた前記ねじ90は、その頭部から前記吸着パイプ81の内部に吸引される。
【0018】
その後、前記チャック爪16,17を開く際、図2(b)あるいは図3(b)に示すように、前記吸着パイプ81および前記傾斜溝16c,17cの当接位置がX1およびX2となる。この当接位置X1およびX2は、図2(b)あるいは図3(b)に示す前記チャック爪16,17の揺動方向Y1,Y2(一点鎖線に相当する)を互いに結んだ線上に位置している。つまり、下降する吸着パイプ81は、その外周によって前記チャック爪16,17を揺動方向Y1,Y2に力が作用し続けるため、前記チャック爪16,17の揺動に必要な吸着パイプ81の推力は、従来に比べて極めて低くなる。よって、前記クッションばねが大きく撓むこともなくチャック爪16,17が揺動するため、従来のようなねじ90が落下する不具合を低減できる。
【0019】
一方、図4に示すように、吸着パイプ81の先端が前記チャック爪16,17から突出し前記吸着パイプ81のテーパ部が前記大溝16a,17aに進入した際であっても、前記大溝16a,17aの幅Wがそれぞれ前記吸着パイプ81の最大径よりも若干大きな寸法で設定されているため、図4(b)に示すように吸着パイプ81の前記テーパ部と前記大溝16a,17aとの間には隙間が確保される。よって、前記大溝16a,17aの角部J1,J2は、それぞれ前記テーパ部に噛み込むことがないため、前記ねじ90は、前記吸着パイプ81から突出することなく前記ビット80と正常な係合状態を保って下降できる。その後、前記吸着パイプ81は、ワークの表面に到達すると、前記クッションばねが撓むため、前記ねじ90は、前記ビット80によってワークに螺入される。
【0020】
以上、説明したように、本発明のチャックユニット10は、チャック爪16,17がスムーズに開くため、前記ねじ90を完全に前記吸着パイプ81から突出させることがない。よって、前記ねじ90が前記吸着パイプ81の下降中にワーク上へ落下する不具合を低減できる利点がある。また、本発明のチャックユニット10は、従来の開閉手段を必要としないため、外観寸法が小さい利点もある他、前記チャック爪16,17の開くタイミングを設定あるいは制御する必要がない利点もある。
【符号の説明】
【0021】
10 チャックユニット(本発明)
12 供給パイプ
13 ねじりコイルばね
14 ホース取付金具
15 チャック本体
16 チャック爪(本発明)
16a 大溝
16b 小溝
16c 傾斜溝
17 チャック爪(本発明)
17a 大溝
17b 小溝
17c 傾斜溝
20 爪ばね
21 爪ばね
26 チャック爪(従来)
27d テーパ溝
27 チャック爪(従来)
27d テーパ溝
50 チャックユニット(従来)
80 ビット
81 吸着パイプ
90 ねじ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
テーパ部を備えた筒状の吸着パイプを挿通可能なチャック本体を有し、このチャック本体に一対のチャック爪を対向かつ揺動自在に配するとともに、前記チャック爪の先端を常時閉じる方向に付勢する爪ばねを配し、前記チャック爪の向かい合う面に幅の異なる大溝および小溝をそれぞれ形成するとともに前記大溝および前記小溝を接続する傾斜溝を備えてなるチャックユニットにおいて、
前記大溝の深さを前記吸着パイプの先端外径の2分の1よりも大きくするとともに前記大溝の幅を前記吸着パイプの最大径よりも大きく設定したことを特徴とするチャックユニット。
【請求項2】
前記大溝と前記大溝および前記傾斜溝と前記傾斜溝の向かい合わせた断面に表れる輪郭線をそれぞれ楕円で形成したことを特徴とする請求項1に記載のチャックユニット。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2013−107159(P2013−107159A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−252911(P2011−252911)
【出願日】平成23年11月18日(2011.11.18)
【出願人】(000227467)日東精工株式会社 (263)
【Fターム(参考)】