説明

チャネル活性化プロテアーゼ阻害剤としての化合物および組成物

本発明は、チャネル活性化プロテアーゼを調節するのに有用な化合物および医薬組成物、および、チャネル活性化プロテアーゼに関連する状態を処置する、寛解するまたは予防するための当該化合物の使用方法を提供する。ここで、該チャネル活性化プロテアーゼは、プロスタシン、PRSS22、TMPRSS11(例えばTMPRSS11B、TMPRSS11E)、TMPRSS2、TMPRSS3、TMPRSS4(MTSP−2)、マトリプターゼ(MTSP−1)、CAP2、CAP3、トリプシン、カテプシン Aおよび好中球エラスターゼを含み、これらに限定されない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、米国仮特許出願第60/889,018号(2007年2月9日出願)(言及することによってその全体が本明細書に組み込まれる)の利益を主張している。
【0002】
技術分野
本発明は、一般的に、チャネル活性化プロテアーゼ(CAP)阻害剤に関する。
【背景技術】
【0003】
背景技術
プロスタシンは、種々の哺乳動物の組織中に存在するトリプシン様セリンプロテアーゼである。それは、膜結合プロテアーゼであり、細胞の細胞外膜上に発現されるが、また、精液、尿、気道表面液などの体液中にも分泌され得る。プロスタシン(PRSS8)は、マトリプターゼ、CAP2、CAP3、トリプシン、PRSS22、TMPRSS11、カテプシン A、および好中球エラスターゼなどのプロテアーゼと共に、アミロライド感受性上皮ナトリウムチャネル(ENaC)の活性を刺激し得る。これらの酵素の阻害は、上皮イオン輸送の変化を誘発することができ、従って、上皮膜を通過する体液ホメオスタシスの変化を誘発することができる。例えば、腎臓におけるCAP阻害は、利尿を促進すると考えられており、一方で、気道におけるCAP阻害は、肺中の粘液および痰の除去を促進する。腎臓におけるCAP阻害は、従って、高血圧を処置するために治療的に用いられ得る。気道におけるCAP阻害は、そうしなければ患者を続発性細菌感染にかかりやすくする傾向がある呼吸器分泌物の停滞を防ぐ。
【発明の概要】
【0004】
本発明の開示
本発明は、チャネル活性化プロテアーゼ(CAP)を調節するための、化合物、医薬組成物および当該化合物の使用方法を提供する。例えば、本発明の化合物および組成物は、プロスタシン、PRSS22、TMPRSS11(例えばTMPRSS11B、TMPRSS11E)、TMPRSS2、TMPRSS3、TMPRSS4(MTSP−2)、マトリプターゼ(MTSP−1)、CAP2、CAP3、トリプシン、カテプシン Aおよび好中球エラスターゼを調節するために使用され得る。
【0005】
一つの態様において、本発明は、式(1):
【化1】

[式中、
Bは、
【化2】

であるか、または(CR)であり;
Yは、−SO−、−NHCO−、−CO−または−O−C(=O)−であり;
Jは、NH(CR)−R、NH(CR)−OR、NH(CR)−SO−R、NH−CR[(CR)]、OHまたはORであり;
は、−(CR)−NR、−(CR)−NRC(=NR)−NRまたは−(CR)−C(=NR)−NRであるか、または、所望により置換されている5〜7員の窒素含有ヘテロ環式環であるか;あるいは、Rは、C1−6アルキルまたは(CR)−X {式中、Xは、C3−7シクロアルキルまたはアリールであり、これらはそれぞれ、所望により−(CR)−NR、−(CR)−NRC(=NR)−NRまたは−(CR)−C(=NR)−NRで置換されている。}であり;
は、環Aの何れかの位置の置換基であって、−O−(CR)−Rまたは−L−NR {式中、Lは、S、S(O)、SOまたはOC(O)である。}であり;
は、C1−6アルキル、C2−6アルケニル、C2−6アルキニルまたは−(CR)−Rであり;
は、H、C1−6アルキル、C2−6アルケニル、−CR=CR−R、C2−6アルキニルであるか、または、所望により置換されている5〜12員の炭素環式環、ヘテロ環式環、アリールまたはヘテロアリールであるか;あるいは、Rは、
【化3】

{式中、環Eは、所望により置換されている5〜12員の単環式または縮合炭素環式環またはヘテロ環式環である。}であり;
およびRは、独立して、所望により置換されている5〜7員の炭素環式環、ヘテロ環式環、アリールまたはヘテロアリールであり;
は、C1−6アルキル、C2−6アルケニル、C2−6アルキニルであるか、または、所望により置換されている5〜12員の炭素環式環、ヘテロ環式環、アリールまたはヘテロアリールであり;
およびRは、独立して、H、C1−6アルキル、C2−6アルケニル、C2−6アルキニルまたは−(CR)−Rであるか;あるいは、RおよびRは、Nと一体となって、所望により置換されている5〜7員のヘテロ環式環を形成してもよく;
Rはそれぞれ、H、またはC1−6アルキル、C2−6アルケニル、またはC2−6アルキニルであり;
lは、0〜6であり;
k、m、nおよびpは、独立して、1〜6である。]
の化合物またはその薬学的に許容される塩を提供する。
【0006】
上記の(1)において、Rは、C1−6アルキル、−(CH)−NH、−(CH)−NHC(=NH)−NH、または、(CH)−X {式中、Xは、ピペリジニル、C3−7シクロアルキルまたはフェニルである。}であってもよい。別の例において、Rは、−O−(CH)−Rであって、Rはハロ置換フェニルである。
【0007】
一つの態様において、本発明は、式(2):
【化4】

[式中、RおよびRは、一体となって、所望により置換されている5〜7員の窒素含有ヘテロ環式環を形成し;
R、R、R、R、Y、Jおよびnは、式(1)で定義した通りである。]
を有する化合物を提供する。
【0008】
別の態様において、本発明は、式(3):
【化5】

[式中、qは1〜5であり;
10は、ハロ、C1−6アルキル、またはO(C1−6アルキル)であり;
R、R、R、R、Y、Jおよびnは、式(1)で定義した通りである。]
を有する化合物を提供する。
【0009】
上記の式(2)および(3)において、Yは、SOまたは−O−C(=O)−であってもよい。幾つかの例において、qは1であり、R10はp−クロロである。
【0010】
上記の(2)および(3)において、Rは、−(CH)−NH、−(CH)−NHC(=NH)−NH、または、(CH)−X {式中、Xはピペリジニルである。}であってもよい。別の例において、Rは、C1−6アルキル、または所望により置換されているシクロヘキシル、またはベンジルである。さらに別の例において、Rは、H、C1−6アルキル、C2−6アルケニルまたは−CR=CR−R {式中、RはC1−6アルキルまたは所望により置換されているフェニルである。}であるか;あるいは、Rは、所望により置換されているフェニル、ピペリジニル、シクロヘキシル、
【化6】

であり;ここで、所望により置換されている部分は、それぞれ、所望によりC1−6アルキル、ヒドロキシル、OR、またはNRで置換されている。特定の例において、Rはピペリジニルである。
【0011】
幾つかの具体的態様において、本発明は、RがC1−6アルキルまたは(CR)−X {式中、XはC3−7シクロアルキルまたはフェニルである。}であり;Rが所望により置換されている5〜7員の窒素含有ヘテロ環式環であり;YがSOである、式(3)を有する化合物を提供する。
【0012】
さらに別の態様において、本発明は、式(4):
【化7】

[式中、qは、1〜5であり;
は、N、OまたはSを含む5〜7員のヘテロ環式環であり;
10は、ハロ、C1−6アルキル、またはO(C1−6アルキル)であり;
R、R、R、Jおよびkは、式(1)で定義した通りである。]
を有する化合物を提供する。
【0013】
上記の式(4)において、Rは、所望によりNRで置換されているチアゾリルであってもよい。幾つかの例において、Rは、所望によりピペリジニルで置換されているチアゾリルである。
【0014】
上記の式(1)、(2)、(3)および(4)において、Jは、OH、OCH、NH−CH(フェニル)、NH(CH)−OR、NH(CH)−SO−RまたはNH(CR)−R {式中、RはC1−6アルキル、またはフェニル、ピリジル、シクロプロピル、シクロヘキシル、ベンゾチアゾリル、2,3−ジヒドロ−1H−インデニル、モルホリニル、イミダゾリル、テトラヒドロピラニル、ピペリジニル、チオフェニル、2,3−ジヒドロベンゾ[b][1,4]−ジオキシニルまたはベンゾチオフェニルであり、これらはそれぞれ、所望によりC1−6アルキル、ハロ、ヒドロキシル、C1−6アルコキシ、O(CR)、SONR、CONR(CR)またはCONRで置換されている。}であってもよい。
【0015】
別の態様において、本発明は、式(1)、(2)、(3)または(4)の化合物、および、薬学的に許容される賦形剤を含む、医薬組成物を提供する。
【0016】
本発明はまた、チャネル活性化プロテアーゼを調節する方法であって、系または哺乳動物に、治療有効量の式(1)、(2)、(3)または(4)を有する化合物またはその薬学的に許容される塩、あるいはそれらの医薬組成物を投与し、それによって該チャネル活性化プロテアーゼを調節することを含む方法を提供する。
【0017】
一つの具体的態様において、本発明は、チャネル活性化プロテアーゼを阻害する方法であって、細胞または組織系または哺乳動物に、治療有効量の式(1)、(2)、(3)または(4)を有する化合物またはその薬学的に許容される塩、あるいはそれらの医薬組成物を投与し、それによって該チャネル活性化プロテアーゼを阻害することを含み、当該チャネル活性化プロテアーゼが、プロスタシン、PRSS22、TMPRSS11(例えばTMPRSS11B、TMPRSS11E)、TMPRSS2、TMPRSS3、TMPRSS4(MTSP−2)、マトリプターゼ(MTSP−1)、CAP2、CAP3、トリプシン、カテプシン Aまたは好中球エラスターゼである方法を提供する。特定の例において、本発明は、プロスタシンを阻害する方法を提供する。
【0018】
別の態様において、本発明は、チャネル活性化プロテアーゼが介在する状態を寛解するまたは処置する方法であって、細胞または組織系または哺乳動物に、有効量の式(1)、(2)、(3)または(4)を有する化合物またはそれらの薬学的に許容される塩あるいはそれらの医薬組成物を、所望により第2治療薬と組み合わせて投与し、それによって当該状態を処置することを含み、当該チャネル活性化プロテアーゼが、プロスタシン、PRSS22、TMPRSS11(例えばTMPRSS11B、TMPRSS11E)、TMPRSS2、TMPRSS3、TMPRSS4(MTSP−2)、マトリプターゼ(MTSP−1)、CAP2、CAP3、トリプシン、カテプシン A、または好中球エラスターゼである方法を提供する。
【0019】
さらに、本発明は、チャネル活性化プロテアーゼが介在する状態を処置する方法に使用するための、式(1)、(2)、(3)または(4)の化合物を提供する。本発明はまた、チャネル活性化プロテアーゼが介在する状態を処置する医薬の製造における、所望により第2治療薬と組み合わせた式(1)、(2)、(3)または(4)の化合物の使用を提供する。
【0020】
特定の例において、本発明の化合物は、プロスタシン介在状態を処置するために用いられ得る。一つの具体的態様において、第2治療薬は、抗炎症剤、気管支拡張剤、抗ヒスタミン剤、鎮咳剤、抗生物質またはDNAアーゼであってもよく、また、式(1)、(2)、(3)または(4)の化合物の前に、それらと同時に、またはそれらの後に投与される。幾つかの例において、本発明の化合物は、気管支上皮細胞、特にヒトの気管支上皮細胞に投与される。
【0021】
本発明の化合物を用いて寛解され得るまたは処置され得る状態の例は、イオン輸送上皮を通過する体液の移動または呼吸器組織中の粘液および痰の蓄積またはそれらの組み合わせに関連する状態を含み、これらに限定されない。幾つかの例において、本発明の化合物を用いて調節(mediate)され得る状態の例は、嚢胞性線維症、原発性線毛機能不全、肺癌、慢性気管支炎、慢性閉塞性肺疾患、喘息または呼吸器感染である。
【0022】
定義
“アルキル”は、基および他の基(例えばハロ置換アルキルおよびアルコキシ)の構成要素を言い、直鎖であっても分枝鎖であってもよい。本明細書で用いられる、所望により置換されているアルキル、アルケニルまたはアルキニルは、所望によりハロゲン化されていてもよく(例えばCF)、あるいは、ヘテロ原子(例えばNR、OまたはS)で置換されたまたは置き換えられた1個以上の炭素原子を有していてもよい(例えば、−OCHCHO−、アルキルチオール類、チオアルコキシ、アルキルアミン類など)。
【0023】
“アリール”は、炭素原子を含む単環式または縮合二環式芳香環を言う。例えば、アリールは、フェニルであってもナフチルであってもよい。“アリーレン”は、アリール基から誘導される二価の基を意味する。
【0024】
本明細書で用いられる“ヘテロアリール”は、1個以上の環員がヘテロ原子である、上記のアリールについて定義したものである。ヘテロアリールの例は、ピリジル、インドリル、インダゾリル、キノキサリニル、キノリニル、ベンゾフラニル、ベンゾピラニル、ベンゾチオピラニル、ベンゾ[1,3]ジオキソール、イミダゾリル、ベンゾ−イミダゾリル、ピリミジニル、フラニル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、ピラゾリル、チエニルなどを含み、これらに限定されない。
【0025】
本明細書で用いられる“炭素環式環”は、所望により置換されていてもよい(例えば=Oで置換されていてもよい)、炭素原子を含む飽和または部分的に不飽和の、単環式、縮合二環式または架橋多環式環を言う。炭素環式環の例は、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロプロピレン、シクロヘキサノンなどを含み、これらに限定されない。
【0026】
本明細書で用いられる“ヘテロ環式環”は、1個以上の環炭素がヘテロ原子である、上記の炭素環式環について定義したものである。例えば、ヘテロ環式環は、N、O、S、−N=、−S−、−S(O)−、−S(O)−、または−NR− (ここで、Rは、水素、C1−4アルキルまたは保護基であってもよい。)を含み得る。ヘテロ環式環の例は、モルホリノ、ピロリジニル、ピロリジニル−2−オン、ピペラジニル、ピペリジニル、ピペリジニルオン、1,4−ジオキサ−8−アザ−スピロ[4.5]デカ−8−イルなどを含み、これらに限定されない。
【0027】
特記しない限り、1つの置換基が“所望により置換されている”と見なされる場合は、該置換基は、例えば、所望によりハロゲン化されたアルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、アルキルアミン、アルキルチオ、アルキニル、アミド、アミノ(一置換および二置換アミノ基を含む)、アリール、アリールオキシ、アリールチオ、カルボニル、炭素環、シアノ、シクロアルキル、ハロゲン、ヘテロアルキル、ヘテロアルケニル、ヘテロアルキニル、ヘテロアリール、ヘテロ環、ヒドロキシ、イソシアネート、イソチオシアネート、メルカプト、ニトロ、O−カルバミル、N−カルバミル、O−チオカルバミル、N−チオカルバミル、C−アミド、N−アミド、S−スルホンアミド、N−スルホンアミド、C−カルボキシ、O−カルボキシ、パーハロアルキル、パーフルオロアルキル、シリル、スルホニル、チオカルボニル、チオシアネート、トリハロメタンスルホニル、およびその保護された化合物から、別個にかつ独立して選択される1個以上の基で置換されていてもよい基を意味する。上記の置換基の保護された化合物を形成し得る保護基は、当業者に既知であって、参考文献、例えばGreene and Wuts, Protective Groups in Organic Synthesis, 3rd Ed., John Wiley & Sons, New York, NY, 1999、および、Kocienski, Protective Groups, Thieme Verlag, New York, NY, 1994(これらは言及することによってその全体が本明細書に組み込まれる。)において見出され得る。
【0028】
本明細書で用いられる用語“共投与”または“組み合わせ投与”などは、1人の患者への複数の選択された治療薬の投与を含むことを意味し、また、これらの薬物が、必ずしも同じ投与経路によって、または同時に投与されない処置レジメを含むことを意図している。
【0029】
本明細書で用いる用語“薬学的組み合わせ”は、複数の活性成分の混合または組み合わせから得られる製品を言い、また、複数の活性成分の固定化された組み合わせおよび固定化されていない組み合わせの双方を含む。用語“固定化された組み合わせ”は、複数の活性成分、例えば式(1)の化合物および併用薬が、両方とも、一人の患者に、1つのものまたは投与形で、同時に投与されることを意味する。用語“固定化されていない組み合わせ”は、複数の活性成分、例えば式(1)の化合物および併用薬が、別個のものとして、一人の患者に、同時に、一緒に(concurrently)または特定の時間制限なしで連続して、両方とも投与されることを意味する。ここで、このような投与は、患者の身体中で、複数の活性成分の治療有効量を提供する。後者はまた、例えば3種以上の活性成分の投与である、カクテル療法に適用される。
【0030】
用語“治療有効量”は、細胞、組織、臓器、系、動物またはヒトにおいて生物学的または医学的応答をもたらす、研究者、獣医、医師または他の臨床医によって求められる対象化合物の量を意味する。
【0031】
対象化合物についての用語“投与”または“投与する”は、本発明の化合物のプロドラッグを含む本発明の化合物を、処置が必要な個体に提供することを意味する。
【0032】
本明細書で用いるとき、用語“処置する”、“処置すること”および“処置”は、疾患および/またはそれに付随する症状を軽減するまたは寛解する方法を言う。
【0033】
用語“プロスタシン”はまた、ヒトのチャネル活性化プロテアーゼ(hCAP);チャネル活性化プロテアーゼ−1;およびPRSS8、MERPOPS ID S01.159を言う。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明を実施する態様
本発明は、チャネル活性化プロテアーゼ(CAP)を調節するための化合物、医薬組成物および当該化合物の使用方法を提供する。
【0035】
一つの態様において、本発明は、式(1):
【化8】

[式中、
Bは、
【化9】

であるか、または、(CR)であり;
Yは、結合、−SO−、−NHCO−、−CO−または−O−C(=O)−であり;
Jは、NH(CR)−R、NH(CR)−OR、NH(CR)−SO−R、NH−CR[(CR)]、OHまたはORであり;
は、−(CR)−NR、−(CR)−NRC(=NR)−NRまたは−(CR)−C(=NR)−NRであるか、または、所望により置換されている5〜7員の窒素含有ヘテロ環式環であるか;あるいは、Rは、C1−6アルキルまたは(CR)−X {式中、Xは、C3−7シクロアルキルまたはアリールであり、これらはそれぞれ、所望により−(CR)−NR、−(CR)−NRC(=NR)−NRまたは−(CR)−C(=NR)−NRで置換されている。}であり;
は、環Aの何れかの位置の置換基であって、−O−(CR)−Rまたは−L−NR {式中、Lは、S、S(O)、SOまたはOC(O)である。}であるか;あるいは、Rは、C1−6アルキル、C2−6アルケニルまたはC2−6アルキニルであり;
は、C1−6アルキル、C2−6アルケニル、C2−6アルキニルまたは−(CR)−Rであり;
は、H、C1−6アルキル、C2−6アルケニル、−CR=CR−R、C2−6アルキニルであるか、または、所望により置換されている5〜12員の炭素環式環、ヘテロ環式環、アリールまたはヘテロアリールであるか;あるいは、Rは、
【化10】

{式中、環Eは、所望により置換されている5〜12員の単環式または縮合炭素環式環またはヘテロ環式環である。}であり;
およびRは、独立して、所望により置換されている5〜7員の炭素環式環、ヘテロ環式環、アリールまたはヘテロアリールであり;
は、C1−6アルキル、C2−6アルケニル、C2−6アルキニルであるか、または、所望により置換されている5〜12員の炭素環式環、ヘテロ環式環、アリールまたはヘテロアリールであり;
およびRは、独立して、H、C1−6アルキル、C2−6アルケニル、C2−6アルキニルまたは−(CR)−Rであるか;あるいは、RおよびRは、Nと一体となって、所望により置換されている5〜7員のヘテロ環式環を形成してもよく;
Rはそれぞれ、H、またはC1−6アルキル、C2−6アルケニル、またはC2−6アルキニルであり;
k、l、m、nおよびpは、独立して、0〜6である。]
の化合物またはその薬学的に許容される塩を提供する。
【0036】
特定の例において、Yは、−SO−、−NHCO−、−CO−または−O−C(=O)−であり;Rは、−O−(CR)−Rまたは−L−NR {式中、Lは、S、S(O)、SOまたはOC(O)である。}であり;lは、0〜6であり;k、m、nおよびpは、独立して、1〜6である。別の例において、Rに相当する置換基は、環Aの3位に存在し得る。
【0037】
一つの具体的態様において、本発明は、式(2):
【化11】

[式中、RおよびRは、一体となって、所望により置換されている5〜7員の窒素含有ヘテロ環式環を形成し;
R、R、R、R、Y、Jおよびnは、式(1)で定義した通りである。]
を有する化合物を提供する。
【0038】
別の具体的態様において、本発明は、式(3):
【化12】

[式中、
qは、1〜5であり;
10は、ハロ、C1−6アルキル、またはO(C1−6アルキル)であり;
R、R、R、R、Y、Jおよびnは、式(1)で定義した通りである。]
を有する化合物を提供する。
【0039】
さらに別の具体的態様において、本発明は、式(4):
【化13】

[式中、qは、1〜5であり;
は、N、OまたはSを含む5〜7員のヘテロ環式環であり;
10は、ハロ、C1−6アルキル、またはO(C1−6アルキル)であり;
R、R、R、Jおよびkは、式(1)で定義した通りである。]
を有する化合物を提供する。
【0040】
上記の式(1)、(2)、(3)および(4)において、所望により置換されている部分は、それぞれ、ハロ、=O、C1−6アルコキシ、アミノ、C1−6アルキル、C2−6アルケニルまたはC2−6アルキニル (これらはそれぞれ、所望によりハロゲン化されていてもよく、または所望によりN、OまたはSで置き換えられたまたは置換された炭素原子を有していてもよい);CO11、O−(CR)−C(O)−R11;−(CR)−R11、−(CR)−C(O)−R11、または−(CR)−SO−R11 {式中、R11はそれぞれ、H、アミノ、C1−6アルキルであるか、または、所望により置換されている炭素環式環、ヘテロ環式環、アリールまたはヘテロアリールである。};またはこれらの組み合わせで置換されていてもよい。例えば、Jは、1個以上のハロ、C1−6アルコキシ、SONH、または−(CR)−C(O)−R11 {式中、R11は、5〜7員のヘテロ環式環(例えばモルホリニル)である。}で置換されたフェニルであってもよい。別の例において、Rは、1個以上のC1−6アルキルまたは5〜7員のヘテロ環式環(例えばピペリジニル)で置換されたチアゾリルであってもよい。さらに別の例において、Rは、C1−6アルコキシで置換されたフェニル、または、アミノで置換されたメチレンシクロヘキサンであってもよい。
【0041】
本発明はまた、本発明の化合物またはその薬学的に許容される塩の全ての適切な同位体化合物(variation)を含む。本発明の化合物またはその薬学的に許容される塩の同位体化合物は、少なくとも1個の原子が、同じ原子番号を有するが通常天然に見出される原子質量と異なる原子質量を有する原子によって置き換えられたものと定義される。本発明の化合物およびその薬学的に許容される塩に組み込まれ得る同位体の例は、水素、炭素、窒素および酸素の同位体、例えばH、H、11C、13C、14C、15N、17O、18O、35S、18F、36Clおよび123Iを含み、これらに限定されない。本発明の化合物およびその薬学的に許容される塩の特定の同位体化合物は、例えば、放射活性同位体、例えばHまたは14Cが組み込まれたものであって、薬物および/または基質組織分布試験に有用である。特定の例において、製造および検出が容易であるために、Hおよび14C同位体が用いられ得る。別の例において、同位体(例えばH)による置換は、代謝安定性の増大をもたらすという特定の治療上の利点、例えばin vivoでの半減期の増加または必要な投与量の減少を与え得る。本発明の化合物またはその薬学的に許容される塩の同位体化合物は、一般的に、適切な反応剤の適切な同位体化合物を用いて、慣用の手順によって製造され得る。
【0042】
本発明の化合物および組成物は、チャネル活性化プロテアーゼを調節するのに有用であり得る。本発明の化合物および組成物を用いて調節され得るチャネル活性化プロテアーゼの例は、プロスタシン、PRSS22、TMPRSS11(例えばTMPRSS11B、TMPRSS11E)、TMPRSS2、TMPRSS3、TMPRSS4(MTSP−2)、マトリプターゼ(MTSP−1)、CAP2、CAP3、トリプシン、カテプシン A、または好中球エラスターゼを含み、これらに限定されない。本発明の化合物はまた、イオンチャネル(例えば上皮ナトリウムチャネル)の活性を刺激するプロテアーゼの活性を阻害し得る。また、本発明の化合物は、CAP関連疾患の処置に使用され得る。
【0043】
薬理および有用性
本発明の化合物は、チャネル活性化プロテアーゼ、特にトリプシン様セリンプロテアーゼ(例えばプロスタシン)の活性を調節し、それ自体、プロスタシンが、例えば、疾患の病状および/または症状に寄与する疾患または障害を処置するのに有用である。
【0044】
チャネル活性化プロテアーゼ、特にトリプシン様セリンプロテアーゼ(例えばプロスタシン)が介在する疾患は、上皮膜を通過する体液の量の制御に関連する疾患を含む。例えば、気道表面の体液の量は、粘膜繊毛クリアランスおよび肺の健康維持の重要な制御因子である。チャネル活性化プロテアーゼの阻害は、気道上皮の粘膜上の体液蓄積を促進し、それによって、粘液クリアランスを促進し、呼吸器組織(肺気道を含む)中の粘液および痰の蓄積を妨げる。このような疾患は、呼吸器疾患、例えば嚢胞性線維症、原発性線毛機能不全、慢性気管支炎、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、喘息、呼吸器感染(急性および慢性;ウイルス性および細菌性)、および肺癌を含む。チャネル活性化プロテアーゼが介在する疾患はまた、上皮を通過する体液制御の異常に関連しない呼吸器疾患、ことによると表面上の表面保護液の生理の異常に関連する疾患、例えば口腔乾燥症(口渇)または乾性角結膜炎(ドライアイ)を含む。さらに、腎臓におけるENaCのCAP制御は、利尿を促進するために用いられ、それによって血圧低下効果を誘発し得る。
【0045】
慢性閉塞性肺疾患は、慢性気管支炎またはそれに付随する呼吸困難、気腫、ならびに他の薬物治療(特に他の吸入薬治療)の結果起こった気道過敏症の増悪を含む。本発明はまた、例えば、急性、アラキジン酸性、カタル性、クループ性、慢性または結核性(phthinoid)気管支炎を含む、どんなタイプまたはどんな原因であれ気管支炎の処置にも適応可能である。
【0046】
喘息は、内因性(非アレルギー性)喘息および外因性(アレルギー性)喘息、軽度喘息、中程度喘息、重度喘息、気管支喘息、運動誘発性喘息、職業性喘息および細菌感染後に誘発される喘息を含む。喘息はまた、“喘鳴幼児症候群”と呼ばれる状態、すなわち喘鳴症候を示し、かつ“喘鳴幼児(wheezy infant)”(主要な医学的関心において確立された患者カテゴリーであって、しばしば初期または初期相の喘息と識別される)と診断されるかまたは診断され得る4才もしくは5才未満の対象を含む状態を含む。
【0047】
チャネル活性化プロテアーゼが介在する疾患を処置するための、チャネル活性化プロテアーゼ阻害剤(例えばプロスタシン阻害剤)の適切さは、下記のアッセイに従って、および当技術分野に既知の方法に従って、チャネル活性化プロテアーゼ阻害剤の阻害効果を測定することによって試験され得る。
【0048】
前記に従って、本発明は、さらに、処置が必要な対象において、上記の疾患または障害の何れかを予防するまたは処置する方法であって、該対象に、治療有効量の式(1)、(2)、(3)または(4)の化合物またはその薬学的に許容される塩を投与することを含む方法を提供する。上記使用の何れかのために必要な投与量は、処置されるべき特定の状態および望ましい効果に依存して変化する (下記の“投与と医薬組成物”を参照のこと)。
【0049】
投与と医薬組成物
一般的に、本発明の化合物は、治療有効量で、当技術分野で既知の有用な且つ許容される何れかの方法を介して、単独でまたは1種以上の治療薬と組み合わせての何れかで投与される。
【0050】
本発明のチャネル活性化プロテアーゼ阻害剤はまた、別の治療薬と組み合わせて使用するための併用薬として使用される。例えば、チャネル活性化プロテアーゼ阻害剤は、抗炎症性治療薬、気管支拡張性治療薬、抗ヒスタミン性治療薬または鎮咳剤、抗生物質またはDNAアーゼ治療薬と組み合わせて使用され得る。チャネル活性化プロテアーゼ阻害剤と他の治療薬は、同一のまたは異なる医薬組成物中に存在し得る。チャネル活性化プロテアーゼ阻害剤を、固定化された医薬組成物中で他の治療薬と混合してもよく、あるいは、他の治療薬の前に、それと同時に、またはその後に、別個に投与してもよい。該組み合わせは、嚢胞性線維症または閉塞性もしくは炎症性気道疾患、例えば上記の疾患の処置において、例えばこのような薬物の治療活性の強化剤として、またはこのような薬物の必要な用量を減少させるまたは副作用の可能性を減少させる手段として、特に有用であり得る。
【0051】
適切な抗炎症性治療薬は、ステロイド、特にグルココルチコステロイド、例えばブデソニド、プロピオン酸ベクロメタゾン、プロピオン酸フルチカゾン、シクレソニドまたはフランカルボン酸モメタゾン、または国際特許出願WO 02/88167、WO 02/12266、WO 02/100879、WO 02/00679 (例えば、実施例3、11、14、17、19、26、34、37、39、51、60、67、72、73、90、99および101)、WO 03/35668、WO 03/48181、WO 03/62259、WO 03/64445、WO 03/72592、WO 04/39827およびWO 04/66920に記載されたステロイド;非ステロイド性グルココルチコイド受容体アゴニスト、例えばDE 10261874、WO 00/00531、WO 02/10143、WO 03/82280、WO 03/82787、WO 03/86294、WO 03/104195、WO 03/101932、WO 04/05229、WO 04/18429、WO 04/19935およびWO 04/26248に記載されたもの;LTD4アンタゴニスト、例えばモンテルカストおよびザフィルルカスト;PDE4阻害剤、例えばシロミラスト(ARIFLO(登録商標) (GlaxoSmithKline))、ROFLUMILAST(登録商標) (Byk Gulden)、V-11294A (Napp)、BAY19-8004 (Bayer)、SCH-351591 (Schering-Plough)、AROFYLLINE(登録商標) (Almirall Prodesfarma)、PD189659 / PD168787 (Parke-Davis)、AWD-12-281 (Asta Medica)、CDC-801 (Celgene)、SelCID(TM) CC-10004 (Celgene)、VM554/UM565 (Vernalis)、T-440 (Tanabe)、KW-4490 (Kyowa Hakko Kogyo)、およびWO 92/19594、WO 93/19749、WO 93/19750、WO 93/19751、WO 98/18796、WO 99/16766、WO 01/13953、WO 03/104204、WO 03/104205、WO 03/39544、WO 04/000814、WO 04/000839、WO 04/005258、WO 04/018450、WO 04/018451、WO 04/018457、WO 04/018465、WO 04/018431、WO 04/018449、WO 04/018450、WO 04/018451、WO 04/018457、WO 04/018465、WO 04/019944、WO 04/019945、WO 04/045607およびWO 04/037805に開示されたもの;およびアデノシンA2B受容体アンタゴニスト、例えばWO 02/42298に記載されたものを含む。ここで、上記の文献は、それぞれ、その全体が本明細書に組み込まれる。
【0052】
適切な気管支拡張性治療薬は、β−2アドレナリン受容体アゴニスト、例えばアルブテロール(サルブタモール)、メタプロテレノール、テルブタリン、サルメテロール、フェノテロール、プロカテロール、フォルモテロール、カルモテロール(carmoterol)、またはそれらの薬学的に許容される塩、およびWO 00/75114(言及することによってその全体が本明細書に組み込まれている)に記載された式(1)の化合物(遊離形または塩形または溶媒和物)、例えば式:
【化14】

の化合物またはその薬学的に許容される塩、ならびにWO 04/16601の式(1)の化合物(遊離形または塩形または溶媒和物)、および、EP 1440966、JP 05025045、WO 93/18007、WO 99/64035、US 2002/0055651、WO 01/42193、WO 01/83462、WO 02/66422、WO 02/70490、WO 02/76933、WO 03/24439、WO 03/42160、WO 03/42164、WO 03/72539、WO 03/91204、WO 03/99764、WO 04/16578、WO 04/22547、WO 04/32921、WO 04/33412、WO 04/37768、WO 04/37773、WO 04/37807、WO 04/39762、WO 04/39766、WO 04/45618、WO 04/46083およびWO 04/80964の化合物を含む。ここで、上記の文献は、それぞれ、その全体が本明細書に組み込まれる。
【0053】
適切な気管支拡張性治療薬はまた、抗コリン作用薬または抗ムスカリン作用薬、特に臭化イプラトロピウム、臭化オキシトロピウム、チオトロピウム塩およびCHF 4226 (Chiesi)、およびグリコピロレート、さらに、EP 424021、US 3714357、US 5171744、WO 01/04118、WO 02/00652、WO 02/51841、WO 02/53564、WO 03/00840、WO 03/33495、WO 03/53966、WO 03/87094、WO 04/018422およびWO 04/05285に記載されたものを含む。ここで、上記の文献は、それぞれ、その全体が本明細書に組み込まれる。
【0054】
適切なデュアル抗炎症性および気管支拡張性治療薬は、デュアルβ−2アドレナリン受容体アゴニスト/ムスカリン受容体アンタゴニスト、例えばUS 2004/0167167、WO 04/74246およびWO 04/74812に開示されたものを含む。
【0055】
適切な抗ヒスタミン性治療薬は、セチリジン塩酸塩、アセトアミノフェン、クレマスチンフマル酸塩、プロメタジン、ロラタジン、デスロラタジン、ジフェンヒドラミンおよび塩酸フェキソフェナジン、アクリバスチン(activastine)、アステミゾール、アゼラスチン、エバスチン、エピナスチン、ミゾラスチンおよびテルフェナジン(tefenadine)、ならびに、JP 2004107299、WO 03/099807およびWO 04/026841に開示されたものを含む。ここで、上記の文献は、それぞれ、その全体が本明細書に組み込まれる。
【0056】
適切な抗生物質は、マクロライド系抗生物質、例えばトブラマイシン(TOBI(商標))を含む。
【0057】
適切なDNAアーゼ治療薬は、ドルナーゼ アルファ(PULMOZYME(商標))、すなわち選択的にDNAを切断する組み換えヒトデオキシリボヌクレアーゼ I(rhDNase)の高純度溶液を含む。ドルナーゼ アルファは、嚢胞性線維症を処置するために用いられる。
【0058】
チャネル活性化プロテアーゼ阻害剤と抗炎症性治療薬との他の有用な組み合わせは、ケモカイン受容体、例えばCCR−1、CCR−2、CCR−3、CCR−4、CCR−5、CCR−6、CCR−7、CCR−8、CCR−9およびCCR10、CXCR1、CXCR2、CXCR3、CXCR4、CXCR5、特にCCR−5のアンタゴニスト、例えばSchering-Ploughアンタゴニスト SC-351125、SCH-55700およびSCH-D、Takedaアンタゴニスト、例えば塩化 N−[[4−[[[6,7−ジヒドロ−2−(4−メチル−フェニル)−5H−ベンゾ−シクロヘプテン−8−イル]カルボニル]アミノ]フェニル]−メチル]テトラヒドロ−N,N−ジメチル−2H−ピラン−4−アミニウム(TAK-770)、および、US 6166037、WO 00/66558、WO 00/66559、WO 04/018425およびWO 04/026873に記載されたCCR−5アンタゴニストとの組み合わせである。ここで、上記の文献はそれぞれ、その全体が本明細書に組み込まれている。
【0059】
本発明に従って、プロスタシンが介在する疾患の処置において、遊離形または薬学的に許容される塩形の本発明のチャネル活性化プロテアーゼ阻害剤は、何れかの適切な経路によって、例えば経口で、例えば錠剤、カプセル剤または液体の形態で、非経腸で、例えば注射可能な溶液または懸濁液の形態で、あるいは、鼻腔内で、例えばエアゾールまたは他の噴霧可能な製剤の形態で、適切な鼻腔内送達装置、例えば経鼻スプレー、例えば当技術分野で既知のものを用いて、あるいは、吸入によって、特にネブライザーで使用するための形態で、投与され得る。
【0060】
チャネル活性化プロテアーゼ阻害剤は、薬学的に許容される希釈剤または担体と共に、医薬組成物で投与され得る。このような組成物は、例えば、乾燥粉末、錠剤、カプセル剤および液体であってもよく、また、注射可能な溶液、点滴用溶液または吸入用懸濁液であってもよい。これらは、他の製剤化成分を用いて、当技術分野に既知の方法を用いて製造され得る。
【0061】
遊離形または薬学的に許容される塩形のチャネル活性化プロテアーゼ阻害剤の投与量は、種々の因子、例えば活性成分の活性および作用持続時間、処置されるべき状態の重症度、投与方法、対象の種、性別、人種、年齢、および体重、ならびに/または個々の状態に依存し得る。典型的な1日投与量は、例えば、温血動物への経口投与、特に体重約75kgのヒトで、約0.7mgから約1400mg、より具体的には約5mgから約200mgと概算される。該投与は、例えば、5から200mgの1回投与または数回の分割投与で投与され得る。
【0062】
該組成物がエアゾール製剤を構成するとき、それは、例えばヒドロ−フルオロ−アルカン(HFA)噴射剤、例えばHFA134aまたはHFA227またはそれらの混合物、さらに、1種以上の当技術分野で既知の共溶媒(例えばエタノール(20重量%まで))、および/または1種以上の界面活性剤(例えばオレイン酸またはトリオレイン酸ソルビタン)、および/または1種以上の増量剤(例えば乳糖)を含み得る。該組成物が乾燥粉末製剤を含むとき、それは、例えば、所望により望ましい粒径分布の希釈剤または担体(例えば乳糖)および湿気による製品性能劣化から保護するのを助ける化合物(例えばステアリン酸マグネシウム)と共に、10ミクロン未満の粒径を有するチャネル活性化プロテアーゼ阻害剤を含み得る。該組成物が霧状化された製剤を含むとき、それは、例えば、水、共溶媒(例えばエタノールまたはプロピレングリコール)および安定剤(界面活性剤であってもよい)を含むビークルに、溶解または懸濁されたチャネル活性化プロテアーゼ阻害剤を含み得る。
【0063】
特定の具体的態様において、本発明は、吸入可能な形態、例えばエアゾールまたは他の噴霧可能な組成物、または吸入可能な粒子、例えば微細化された形態の、式(1)、(2)、(3)および(4)の化合物を提供する。本発明はまた、吸入可能な形態の本発明の化合物を含む吸入可能な医薬;吸入装置と組み合わせた吸入可能な形態の本発明の化合物を含む医薬製品;および吸入可能な形態の本発明の化合物を含む吸入装置を提供する。
【0064】
本発明の化合物の製造方法
本発明の化合物は、実施例に示した手順に従って製造され得る。
【0065】
記載された反応において、最終生成物において望ましい反応性官能基(例えばヒドロキシ、アミノ、イミノ、チオまたはカルボキシ基)は、反応への望ましくない参加を避けるために、当業界で既知の保護基を用いて保護され得る。慣用の保護基は、慣習に従って用いられ得る。例えば、T.W. Greene and P. G. M. Wuts in “Protective Groups in Organic Chemistry”, John Wiley and Sons, 1991を参照のこと。
【0066】
本発明の化合物はまた、遊離塩基の形態の本化合物を薬学的に許容される無機酸または有機酸と反応させることによって、薬学的に許容される酸付加塩として製造され得る。あるいは、本発明の化合物の薬学的に許容される塩基付加塩は、遊離酸の形態の本化合物を薬学的に許容される無機塩基または有機塩基と反応させることによって製造され得る。あるいは、塩形の本発明の化合物は、出発物質または中間体の塩を用いて製造され得る。
【0067】
遊離酸または遊離塩基の形態の本発明の化合物は、それぞれ、対応する塩基付加塩または酸付加塩の形態から製造され得る。例えば、酸付加塩の形態の本発明の化合物は、適切な塩基(例えば水酸化アンモニウム溶液、水酸化ナトリウムなど)で処理することによって、対応する遊離塩基に変換され得る。塩基付加塩の形態の本発明の化合物は、適切な酸(例えば塩酸など)で処理することによって、対応する遊離酸に変換され得る。
【0068】
酸化されていない形態の本発明の化合物は、還元剤(例えば硫黄、二酸化硫黄、トリフェニルホスフィン、水素化ホウ素リチウム、水素化ホウ素ナトリウム、三塩化リン、三臭化リンなど)で、適切な不活性有機溶媒(例えばアセトニトリル、エタノール、水性ジオキサンなど)中で、0から80℃で処理することによって、本発明の化合物のN−オキシドから製造され得る。
【0069】
本発明の化合物のプロドラッグ誘導体は、当業者に既知の方法によって製造され得る (例えば、さらなる詳細については、Saulnier et al., (1994), Bioorganic and Medicinal Chemistry Letters, Vol. 4, p. 1985を参照のこと)。例えば、適切なプロドラッグは、誘導体化されていない本発明の化合物を、適切なカルバミル化剤(例えば1,1−アシルオキシアルキルカルバノクロリデート、パラ−ニトロフェニル カーボネートなど)と反応させることによって製造され得る。
【0070】
本発明の化合物の保護誘導体は、当業者に既知の手段によって合成され得る。保護基の付加および除去に適応可能な方法の詳細な記載は、T. W. Greene, “Protecting Groups in Organic Chemistry”, 3rd edition, John Wiley and Sons, Inc., 1999に見出され得る。
【0071】
本発明の化合物は、簡便には、溶媒和物(例えば水和物)として製造され得るか、または本発明の製造方法の過程で形成され得る。本発明の化合物の水和物は、簡便には、水性/有機溶媒混合物から再結晶することによって製造され得る。ここで、有機溶媒には、例えばジオキシン、テトラヒドロフランまたはメタノールを用いる。
【0072】
本発明の化合物は、本化合物のラセミ混合物を、光学的に活性な分割剤と反応させ、1対のジアステレオアイソマー化合物を形成し、該ジアステレオマーを分離し、光学的に純粋なエナンチオマーを回収することによって、個々の立体異性体として製造され得る。エナンチオマーの分割は、本発明の化合物の共有結合性ジアステレオマー誘導体を用いて行う場合、分割可能な複合体が好ましい(例えば結晶性ジアステレオマー塩)。ジアステレオマーは、固有の物理学的性質(例えば融点、沸点、溶解度、反応性など)を有し、これらの相違を利用することによって容易に分離され得る。ジアステレオマーは、クロマトグラフィーによって、または、溶解度の違いに基づく分離/分割法によって分離され得る。次いで、光学的に純粋なエナンチオマーを、分割剤と共に、ラセミ化が起こらない何れかの実用的な手段によって回収する。ラセミ混合物からの化合物の立体異性体の分離に適応可能な方法のより詳細な記載は、Jean Jacques, Andre Collet, Samuel H. Wilen, “Enantiomers, Racemates and Resolutions”, John Wiley And Sons, Inc., 1981で見出され得る。
【0073】
要約すると、本発明の化合物は、実施例で例示された通りに製造され、式(1)、(2)、(3)および(4)の化合物は、次に示す工程を含む工程によって合成され得る:
(a) 所望により、本発明の化合物を薬学的に許容される塩に変換すること;
(b) 所望により、塩形の本発明の化合物を、非塩形に変換すること;
(c) 所望により、酸化されていない形態の本発明の化合物を、薬学的に許容されるN−オキシドに変換すること;
(d) 所望により、本発明の化合物のN−オキシドを、その酸化されていない形態に変換すること;
(e) 所望により、異性体混合物から、本発明の化合物の個々の異性体を分離すること;
(f) 所望により、誘導体化されていない本発明の化合物を、薬学的に許容されるプロドラッグ誘導体に変換すること;および
(g) 所望により、本発明の化合物のプロドラッグ誘導体を、その誘導体化されていない形態に変換すること。
【0074】
出発物質の製造が特に記載されていない場合、該化合物は、既知であるか、または、当技術分野で既知の方法と類似の方法で製造され得るか、または下記の実施例で開示されている方法で製造され得る。当業者は、上記の変換は、本発明の化合物の製造方法の代表例にすぎず、他の周知の方法も同様に用いられ得ると認識するであろう。本発明は、下記の中間体(参照化合物)および本発明の化合物の製造を説明している実施例によってさらに例示されるが、これらに限定されない。
【0075】
一つの具体的態様において、本発明の化合物は、式(1)を有し、式中、Rは、−(CR)−NR、−(CR)−NRC(=NR)−NRまたは−(CR)−C(=NR)−NRであるか、または所望により置換されている5〜7員の窒素含有ヘテロ環式環であるか;あるいは、Rは、(CR)−X {式中、Xは、C3−7シクロアルキルまたはアリールであり、これらは、−(CR)−NR、−(CR)−NRC(=NR)−NRまたは−(CR)−C(=NR)−NRで置換されている。}である。代表的な化合物は、下記の参照化合物および実施例を用いて製造され得る。
【実施例】
【0076】
参照化合物1
【化15】

D−ホモフェニルアラニンエチルエステル塩酸塩(5.00g, 20.5mmol)およびDIPEA(8.7ml, 51.25mmol)を、THF(100ml)に溶解し、室温で撹拌する。塩化メシル(1.67ml, 21.52mmol)を滴下し、該反応物を室温で6時間撹拌する。THFを蒸発させ、粗製の物質をEtOAc(100ml)に溶解し、水(100ml)で、1N HCl(2×100ml)で、そして塩水(100ml)で洗浄し、乾燥する(MgSO)。溶媒を真空で除去し、粗製の物質をフラッシュクロマトグラフィーで精製し(ヘキサン:EtOAc)、エチルエステルを得る。該エチルエステルをジオキサン(50ml)に溶解し、室温で撹拌する。水(20ml)に溶解したLiOH・HO(1.00mg, 24mmol)を加え、エチルエステルが消失するまで(TLCおよびLCMSによって示される)、反応物を撹拌する。溶媒を真空で除去し、粗製の物質を、EtOAc(50ml)と1N HCl(50ml)で分配する。水層をEtOAc(2×50ml)で抽出し、合わせた有機相を、1M NaHSO(2×50ml)で、そして塩水(50ml)で洗浄し、MgSOで乾燥する。溶媒を蒸発させ、粗製の物質をフラッシュクロマトグラフィーによって精製し(EtOAc:ヘキサンの濃度勾配)、参照化合物1を白色の粉末として得る。
【0077】
参照化合物2
【化16】

参照化合物2についての反応スキームにおいて、反応剤および条件は次の通りである:
(a) TBTU/CHCl/CHOH、EtN、23℃;
(b) DIBAL−H、CHCl、−78℃;
(c) NaCN、TEBAC(触媒量)、AcO、CHCl/HO、−20℃;
(d) EtO中3M HCl(ガス)、CHOH、4℃、次いでHO、pH 11、0℃;
(e) BocO、DMF、EtN、23℃;
(f) H、MeOH、Pd/C 10%、23℃、12時間。
【0078】
2−B: 500mlのCHCl:MeOH(9:1)中の、Cbz−Lys(Boc)−OH(28g, 73.60mmol)およびTBTU(23.5g, 73.60mmol)の溶液を、EtNを添加することによってpH 8.0に調節する。該反応物を室温で2時間撹拌する。該混合物を、1N HCl冷却溶液で、水で、5% NaHCO溶液で、そして水で連続して洗浄し、NaSOで乾燥する。濾液を蒸発させ、残渣をシリカゲルのクロマトグラフィーにかけ(ヘプタン:EtOAc, 4:1)、2−Bを得る。
TLC (EtOAc:ヘプタン, 3:1) Rf = 0.85。
【0079】
2−C: CHCl(350ml)中の2−B(10.5g, 26.6mmol)の溶液に、DIBAL−H(80ml, ヘキサン中1M溶液)を、−78℃で加え、該溶液をその温度で1時間撹拌する。クエン酸(5%水溶液)を加えて該反応物をクエンチし、室温で10分間撹拌する。CHCl層を分離し、水層をCHCl(2×200ml)で洗浄する。合わせた有機層を水で洗浄し、NaSOで乾燥し、濾過する。濾液を蒸発させ、2−Cの残渣を、次の段階に直接用いる。
【0080】
2−D: CHCl(350ml)中の粗製の2−C(9.6g, 26.6mmol)の溶液を−20℃に冷却し、245mlの水中のNaCN(15g, 306mmol)および塩化トリエチルベンジルアンモニウム(1.75g, 7.67mmol)の溶液を加える。無水酢酸(7.7ml, 81.6mmol)を、10分かけて、激しく撹拌しながら滴下する。該反応混合物をさらに10分間撹拌し、次いでCHCl層を分離する。水層をCHClで抽出する。合わせた有機層を水で洗浄し、NaSOで乾燥し、濾過する。濾液を蒸発させ、2−Dの残渣を、自動化シリカゲルクロマトグラフィーによって精製する(ヘキサン中30〜40% 酢酸エチル)。望ましい物質を含むフラクションを集めて、2−Dを得る。
TLC (CH2Cl2:EtOAc, 7:3) Rf = 0.6。
【0081】
2−E: 中間体2−Dを、無水MeOH(80ml)およびジエチルエーテル(200ml)に溶解し、−20℃に冷却する。重量が36gに増加するまで、HClガスを該溶液に通気する。温度を一夜0℃未満に保ち、次いで、反応物の温度を0℃に維持しながら、水を加える。反応をLC/MSによってモニターしながら、反応物を室温で16時間撹拌する。エーテルを真空で除去し、反応物を0℃に維持しながら、水性NaOHを添加することによって、pHを11.0に調節する。該反応混合物を酢酸エチルで抽出し、NaSOで乾燥し、濾過する。2−Eの粗製の物質を次の段階に直接用いる。
LC/MS (予測値 325.2 (M + 1), 実測値 325.1)。
【0082】
2−F: 中間体2−E(4.94g, 15.2mmol)を、DMF(250ml)に溶解する。トリエチルアミン(6.5ml, 45mmol)を加えて、pHを8.0に調節する。ジ−tert−ブチル ジカーボネート(5.0g, 23mmol)を一度に加え、該反応物を室温で一夜撹拌する。溶媒を真空で除去し、残渣を酢酸エチルに溶解し、水で、そして塩水で洗浄し、NaSOで乾燥し、濾過し、蒸発させる。2−Fの残渣を、自動化シリカゲルクロマトグラフィーによって精製する(ヘキサン中40% 酢酸エチル)。所望の物質を含むフラクションを集めて、2−Fを得る。
【0083】
参照化合物2: 化合物2−F(3.7g, 8.73mmol)を、エタノール(50ml)に溶解する。Pd/C(10%, 湿った, Degussaタイプ)を加え、フラスコをParr振盪機に一夜入れて、40psiの水素に曝露する。触媒をセライトで濾過し、溶媒を真空で除去する。溶媒を真空で除去し、望ましい参照化合物2を澄明な油状物として得る。
LC/MS (予測値 291.2 (M + H), 実測値 291.4).
【0084】
参照化合物3
【化17】

参照化合物3についての反応スキームにおいて、反応剤および条件は次の通りである:
(a) Cbz−OSu、EtN、THF、水、23℃;
(b) p−ニトロフェニルクロロホルメート、ピリジン、CHCl、23℃;
(c) ピペリジン、CHCl、23℃、72%;
(d) H Pd/C(40psi)、t−BuOH、HO、23℃。
【0085】
3−B: 化合物3−A(H−Hyp−OMe・HCl)(3.19g, 17.55mmol)およびN−(ベンジルオキシカルボニルオキシ)−スクシンイミド(Cbz−OSu)(4.37g, 17.55mmol)を、THF(60ml)および水(20ml)を含む丸底フラスコに加える。該混合物を室温で撹拌し、EtN(11.6ml, 70.2mmol)を加え、該反応物を室温で一夜撹拌する。澄明な溶液をEtOAc(200ml)で希釈し、1N HCl(3×100ml)で、そして塩水(1×100ml)で洗浄し、MgSOで乾燥する。溶媒を真空で蒸発させ、望ましい生成物を澄明な油状物として得る。これをさらに精製することなく用いる。
MS m/z 280.1 (M + 1).
【0086】
3−C: 4−ニトロフェニルクロロホルメート(1.514g, 7.51mmol)を、CHCl(100ml)中の3−B(1.92g, 6.83mmol)およびピリジン(663μl, 8.19mmol)の溶液に加える。該反応混合物を一夜撹拌する。該混合物を、NaHSO 1Mで3回、塩水で2回洗浄し、乾燥し(MgSO)、真空で濃縮し、化合物3−Cを黄色の油状物として得る。
MS m/z 445.1 (M + 1).
【0087】
3−D: ピペリジン(320mg, 3.76mmol)を、DCM(100ml)中の3−C(1.4g, 3.14mmol)の溶液に加え、該溶液混合物を室温で3時間撹拌する。次いで、該混合物を、1M 水性NaHSOで3回、飽和水性NaHCOで3回、塩水で2回洗浄する。有機層を乾燥し(MgSO)、真空で濃縮する。残渣を自動化シリカゲルによって精製し(EtOAc/ヘキサン, 0から100%)、化合物3−Dを油状物として得る。
MS m/z 391.3 (M + 1).
【0088】
参照化合物3: 化合物3−D(883mg, 2.26mmol)を、t−BuOHと水の4:1混合物(50ml)に溶解する。Pd/C(10%, 湿った, Degussaタイプ)を加え、該フラスコを、一夜Parr振盪機にかけ、40psiの水素に曝露する。触媒をセライトで濾過し、溶媒を真空で除去する。参照化合物3を澄明な油状物として単離する。
LC/MS (予測値 257.2 (M + H), 実測値 257.4).
【0089】
参照化合物4
【化18】

上記の反応における反応剤と条件は、次の通りである:
(a) Cbz−OSu、EtN、THF、水、99%。
【0090】
D−ホモフェニルアラニン4−A(3.22g, 18.0mmol)およびN−(ベンジルオキシカルボニルオキシ)−スクシンイミド(Cbz−OSu)(4.49g, 18.0mmol)を、THF(60ml)および水(20ml)を含む丸底フラスコに加える。該混合物を室温で撹拌し、EtN(10.1ml, 72.0mmol)を加え、該反応物を室温で一夜撹拌する。澄明な溶液を、EtOAc(200ml)で希釈し、1N HCl(3×100ml)で、そして塩水(1×100ml)で洗浄し、MgSOで乾燥する。溶媒を真空で蒸発させ、望ましい生成物を白色の固体として得る。これをさらに精製することなく用いる。
【0091】
参照化合物5
【化19】

参照化合物5は、参照化合物4について記載された条件と類似の条件に従って、Cbz−OSuではなくシクロヘキシルカルボニル−OSuを用いて製造される。
【0092】
参照化合物6
【化20】

参照化合物6は、参照化合物1について記載された条件と類似の条件に従って、D−アリルグリシンメチルエステル塩酸塩を用いて製造される。
【0093】
参照化合物7
【化21】

参照化合物7は、参照化合物4について記載された条件と類似の条件に従って、D−アリルグリシンを反応剤として用いて製造される。
【0094】
参照化合物8
【化22】

【0095】
8−B: 4−ピペリジンエタノール(8−A)(5g, 39.7mmol)をTHF(120ml)に溶解する。トリエチルアミン(5.6ml, 40mmol)を加え、該溶液を0℃に冷却する。BocO(9.59g, 44mmol)を加え、該反応物を室温で一夜撹拌する。溶媒を真空で除去し、粗製の残渣を酢酸エチル(120ml)に溶解する。該溶液を、0.1N HCl(3×100ml)で、そして塩水(1×100ml)で洗浄し、MgSOで乾燥し、濾過し、溶媒を真空で蒸発させ、化合物8−Bを澄明な油状物として得る。
【0096】
8−C: トリクロロイソシアヌル酸(2.66g, 11.46mmol)を、CHCl中の該アルコール(2.39g, 10.42mmol)の溶液に加え、該溶液を撹拌し、0℃で維持し、続いて触媒量のTEMPOを添加する。添加後、該混合物を室温まで温め、1時間撹拌し、次いでセライトで濾過する。有機相を、飽和水性NaCOで、続いて1N HClで、そして塩水で洗浄する。有機層を乾燥し(MgSO)、溶媒を蒸発させ、化合物8−Cを得る。
1H NMR (CDCl3, 400 MHz) δ 9.72 (1H, s), 4.07-4.01 (2H, m), 2.70-2.57 (2H, m), 2.35-2.31 (2H, m), 2.05-1.94 (1H, m), 1.64-1.46 (2H, m), 1.39 (9H, s), 1.30-1.02 (2H, m).
【0097】
8−D: THF中のCbz−α−ホスホノグリシン トリメチルエステル(2.8g, 8.45mmol)の溶液に、−78℃で、1,1,3,3−テトラメチル−グアニジン(1.022ml, 8.14mmol)を加える。10分後、アルデヒド8−C(1.76g, 7.76mmol)を加える。次いで、該溶液を、氷浴中、0℃で1時間置き、次いで室温まで昇温し、1時間以上撹拌する。該溶液をEtOAcで希釈し、1M NaHSOで洗浄し、乾燥し(MgSO)、真空で濃縮する。残渣を、自動化シリカゲルクロマトグラフィーによって、EtOAc/ヘキサンで精製し(0−100%)、8−Dを澄明な油状物として得る。
MS m/z 333.2 (M + 1),
1H NMR (CDCl3, 400 MHz) δ 7.35-7.33 (5H, m), 6.63 (1H, t, J = 8 Hz), 6.30 (1H, bs), 5.12 (2H, s), 4.10-4.04 (2H, m), 3.73 (3H, s), 2.67-2.62 (2H, m), 2.14 (2H, t, J = 6.8 Hz), 1.63-1.46 (3H, m), 1.43 (9H, s), 1.14-1.06 (2H, m).
【0098】
8−E: Parr容器に、8−D(1g, 2.31mmol)およびMeOH(100ml)を、窒素下で入れる。該溶液に、減圧および窒素通気を3サイクル行い、触媒(R,R)−エチル−DuPHOS−Rh(COD) トリフレート(30mg, 0.04mmol)を加える。該混合物を、60psiの水素ガス下、室温で24時間置く。24時間後、8−Eへの変換が>99% e.e.で完了し、溶媒を真空で除去し、粗生成物をシリカゲルのクロマトグラフィーによって精製する(ヘキサン/EtOAc)。
【0099】
8−F: 中間体8−EをMeOHに溶解し、該溶液を窒素でフラッシュし、Pd/炭素(5%wt, Degussa)を加える。該混合物を、50psiの水素ガス下、室温で置き、24時間振盪する。該混合物を窒素でフラッシュし、セライトで濾過する。該ケーキをMeOHで洗浄し、合わせた有機溶液を真空下で濃縮する。ヘキサンを加え、次いで残ったメタノールを共沸して蒸発させ、8−Fを油状物として得る。次いで、これを、さらに精製することなく次の段階に用いる。
【0100】
8−G: 粗製の中間体8−F(0.6g, 1.99mmol)をTHF(10ml)に溶解し、2,4,6−コリジン(315mg, 2.38mmol)および塩化メタンスルホニル(0.170ml, 2.19mmol)を、該溶液に加え、2時間撹拌する。該反応物をEtOAc(50ml)で希釈し、該溶液を、1M NaHSO(2×25ml)で、そして塩水(25ml)で洗浄し、乾燥する(MgSO)。溶媒を真空で除去し、粗製の残渣を、フラッシュクロマトグラフィーによって、ヘキサンおよびEtOAcの濃度勾配を用いて精製し、望ましい生成物8−Gを得る。
【0101】
参照化合物8: 化合物8−G(0.70g, 1.84mmol)を、ジオキサン(7ml)に溶解し、水(4ml)に溶解したLiOH・HO(232mg, 5.55mmol)を加える。該反応混合物を23℃で1時間撹拌する。溶媒を蒸発し、残渣をEtOAc(25ml)で希釈し、1N NaHSO(25ml)で、そして塩水(25ml)で洗浄し、MgSOで乾燥し、濾過する。溶媒を真空で除去し、粗製の物質をシリカゲルのクロマトグラフィーによって精製し(ヘキサン/EtOAcの濃度勾配)、望ましい生成物である参照化合物8を白色の固体として得る。
【0102】
参照化合物9
【化23】

参照化合物9を、対応するシクロヘキサノンのオレフィン化によって製造する。THF(10ml)中の、臭化 メチルトリフェニルホスホニウム(156mg, 0.44mmol)およびKHMDS(880μLのトルエン中0.5M溶液, 0.44mmol)の溶液を、23℃で1時間撹拌する。5mlのTHF中の4−N−Boc−アミノ−1−シクロヘキサノン(75mg, 0.35mmol)のTHF溶液を加え、LC/MSによって反応完了が示されるまで、該反応物を23℃で撹拌する。該反応物を水でクエンチし、THFを蒸発させ、EtOAcに再度溶解し、層を分離する。水相を2×10mlのEtOAcで洗浄し、合わせた有機層を、水で、そして飽和NaClで洗浄し、MgSOで乾燥し、濾過する。溶媒を真空で除去し、粗製の物質を、シリカゲルのクロマトグラフィーによって精製し(ヘキサン/EtOAcの濃度勾配)、望ましい生成物である参照化合物9を澄明な油状物として得る。
LC/MS 実測値 212.3 [M + H].
【0103】
参照化合物10
【化24】

上記の反応スキームにおいて、反応剤および条件は、次の通りである:
(a) TBTU/CHCl/CHOH、EtN、23℃;
(b) DIBAL−H、CHCl、−78℃;
(c) n−BuLi、HC(SCH)、THF、−65℃;
(d) HgCl、HgO、MeOH、HO、23℃;
(e) H、MeOH、Pd/C 10%、23℃、12時間。
【0104】
中間体10−Bおよび10−Cは、参照化合物2について記載された手順と類似の手順に従って、それぞれN−ビス−Bocアルギニン(10−A)および中間体10−Bを反応剤として用いて製造される。
【0105】
10−D: n−BuLi(6.4mlのヘキサン中2.5M溶液, 15.94mmol)を、10分かけて、THF(45ml)中のトリス(メチルチオ)メタン(2.24ml, 16.74mmol)の溶液に、撹拌しながら、−65℃で加える。20分後、THF(20ml)中のアルデヒド10−C(1.83g, 3.71mmol)の−65℃溶液を、30分かけて加える。該溶液を−65℃で5時間撹拌する。該反応混合物を、400mlの飽和NHCl溶液およびCHCl(1:12)を添加することによってクエンチする。層を分離し、水層をCHCl(3×100ml)で洗浄する。合わせた有機層を、HOで、そして塩水で洗浄し、MgSOで乾燥し、濾過し、蒸発乾固する。自動化シリカゲルクロマトグラフィーにかけ(CHCl中0〜10% EtOAc)、10−Dを澄明な油状物として得る。
LC/MS 実測値 647.3 [M + H].
【0106】
10−E: MeOH(30ml)およびHO(2.2ml)に溶解した10−D(1.0g, 1.55mmol)の溶液に、塩化水銀(II)(1.42g, 5.23mmol)および酸化水銀(II)(422mg, 1.95mmol)を、激しく撹拌しながら、23℃で72時間加える。該反応混合物をセライトで濾過し、残渣を、CHCl(75ml)で、MeOH(10ml)で、そして水(10ml)で洗浄する。濾液を分離し、水層をCHCl(50ml)で抽出する。合わせた有機層を、飽和水性NHOAc(3×50ml)で、そして飽和水性NHCl(2×75ml)で洗浄し、NaSOで乾燥し、濾過し、蒸発させ、粗製の10−Eを得る。自動化シリカゲルクロマトグラフィーにかけ(ヘキサン中0〜100% EtOAc)、10−Eを澄明な油状物として得る。
LC/MS 実測値 553.3 [M + H].
【0107】
参照化合物10は、参照化合物2について記載された条件と類似の条件に従って、反応剤として中間体10−Eを用いて製造される。
【0108】
実施例1
【化25】

実施例1において、反応剤および条件は、次の通りである:
(a) KOH、塩化 4−クロロベンジル、DMSO、0℃から23℃;
(b) TMS−CHN、CHCl/MeOH、23℃;
(c) TFA/CHCl(50:50)、23℃;
(d) HATU/DIPEA/CHCl、参照化合物1、23℃;
(e) LiOH、ジオキサン/水(4:1)、23℃;
(f) HATU/DIPEA/CHCl、参照化合物2、23℃;
(g) LiOH、ジオキサン/水(4:1)、23℃;
(h) HATU/DIPEA/CHCl、4−アミノメチルピリジン、23℃;
(h) デス・マーチン・ペルヨージナン、CHCl、23℃;
(j) TFA/CHCl(20:80)、23℃、続いて質量分離(mass-directed)HPLC精製、23℃。
【0109】
1−B: 微粉末KOH(19.4g, 0.346mol)をDMSOに溶解し、室温で20分間撹拌し、次いで0℃に冷却する。N−Boc−trans−4−ヒドロキシ−L−プロリン(Boc−Hyp−OH, 1−A)(10g, 43.3mmol)を、DMSO(10ml)に溶解して加え、該反応混合物を0℃でさらに10分間撹拌する。次に、塩化 4−クロロベンジル(33g, 0.204mol)を加え、該反応混合物を0℃でさらに15分間撹拌し、その後、氷浴を除き、該反応混合物を室温まで昇温し、4時間撹拌する。該反応混合物を水(300ml)に注ぎ、該反応容器を、さらなるアリコートの水(300ml)で濯ぐ。合わせた水層をエーテル(2×300ml)で抽出し、廃棄する。水層を、87% HPOで、pH 2.3まで酸性にして、次いでエーテル(3×300ml)で抽出する。合わせたエーテル抽出物を、水(2×400ml)で、そして塩水(2×400ml)で洗浄し、次いでMgSOで乾燥し、濾過し、真空で濃縮する。残渣を、シリカゲルのクロマトグラフィーによって、EtOAc/ヘキサン(0から100%の濃度勾配)で精製し、化合物1−Bを澄明な油状物として得る。
MS m/z 256.1 (M + 1 - Boc);
1H NMR (DMSO-D6, 400 MHz) δ 7.39-7.31 (4H, m), 4.52-4.40 (2H, m), 4.16-4.10 (2H, m), 3.48-3.41 (2H, m), 2.40-2.30 (1H, m), 2.03-1.94 (1H, m), 1.39-1.34 (9H, m).
【0110】
1−C: (トリメチルシリル)ジアゾメタン(ジエチルエーテル中2M)(4.7ml, 9.45mmol)の溶液を、CHCl/MeOH 5:1(25ml)に溶解したカルボン酸1−B(2.4g, 8.6mmol)に、室温で加える。LC/MSによって出発物質が消費されたことが測定されたとき、該反応混合物を酢酸でクエンチし、真空で濃縮し、粗製の残渣をフラッシュクロマトグラフィーによって精製し(EtOAc:ヘキサンの濃度勾配)、メチルエステル1−Cを澄明な油状物として得る。
【0111】
1−D: 丸底フラスコに、撹拌棒と、1−C(1.03g, 2.80mmol)を入れる。CHCl中のTFA(50%)(6ml)を加え、該溶液を室温で1時間撹拌する。溶媒を真空で除去し、ヘキサンを加え、次いで真空で再度蒸発乾固させ、必要であれば残ったTFAを共沸させるために繰り返す。粗製の物質を、さらに精製することなく次の段階に直接用いる。
【0112】
1−E: 粗製の物質1−DをCHCl(30ml)に溶解し、参照化合物1(1.02g, 2.80mmol)およびHATU(1.12g, 2.94mmol)を加え、該溶液を室温で10分間撹拌する。DIPEA(1.5ml, 8.4mmol)をシリンジを介して加え、該反応混合物を室温で一夜撹拌する。溶媒を真空で除去し、粗製の物質を直接フラッシュクロマトグラフィーによって精製する(40g シリカ, ヘキサン/EtOAcの濃度勾配)。溶媒を真空で除去し、1−Eを油状半固体として得る。
【0113】
1−F: メチルエステル1−E(1.15g, 1.86mmol)を、ジオキサン(15ml)に溶解する。水酸化リチウム一水和物(120mg, 2.00mmol)を水(15ml)に溶解し、メチルエステル1−Eの溶液に滴下し、室温で3時間撹拌する。該反応混合物を真空で濃縮し、ジオキサンを除き、次いで1M NaHSOで酸性にする。これをEtOAcで抽出し、合わせた有機層を塩水で洗浄し、MgSOで乾燥する。溶媒を真空で除去し、カルボン酸1−Fを蝋状固体として得る。
【0114】
1−G: カルボン酸1−F(385mg, 0.78mmol)を、CHCl(10ml)に溶解する。参照化合物2(151mg, 0.52mmol)およびHATU(356mg, 0.94mmol)を加え、該混合物を室温で10分間撹拌する。DIPEA(0.27ml, 1.56mmol)をシリンジを介して加え、該反応混合物を室温で3時間撹拌する。溶媒を真空で除去し、粗製の物質をEtOAc(50ml)に再度溶解し、1M HCl(2×25ml)で、続いて飽和水性NaHCO(2×25ml)で、そして塩水(25ml)で洗浄し、無水NaSOで乾燥する。溶媒を真空で除去し、粗製の物質を直接フラッシュクロマトグラフィーによって精製する(40g シリカ, CHCl/MeOHの濃度勾配)。溶媒を真空で除去し、1−Gを油状半固体として得る。
【0115】
1−H: メチルエステル1−G(300mg, 0.39mmol)をジオキサン(18ml)に溶解する。水酸化リチウム(12mg, 0.47mmol)を水(7.5ml)に溶解し、メチルエステル1−Gの溶液に滴下し、室温で3時間撹拌する。該反応混合物を真空で濃縮してジオキサンを除去し、次いで1M NaHSOで酸性にする。これをEtOAcで抽出し、合わせた有機層を塩水で洗浄し、MgSOで乾燥する。溶媒を真空で除去し、カルボン酸1−Hを蝋状固体として得る。
【0116】
1−I: カルボン酸1−H(72mg, 0.10mmol)をCHCl(2ml)に溶解する。4−アミノメチルピリジン(13mg, 0.11mmol)およびHATU(54mg, 0.14mmol)を加え、該混合物を室温で10分間撹拌する。DIPEA(50μl, 0.29mmol)をシリンジを介して加え、該反応混合物を室温で3時間撹拌する。溶媒を真空で除去し、粗製の物質をEtOAc(50ml)に再度溶解し、1M HCl(2×25ml)で、続いて飽和水性NaHCO(2×25ml)で、そして塩水(25ml)で洗浄し、無水NaSOで乾燥する。溶媒を真空で除去し、粗製の物質1−Iを直接次の反応に用いる。
【0117】
1−J: 粗製のアルコール1−I(80mg, 0.10mmol)を、CHCl(2ml)に溶解し、デス・マーチン・ペルヨージナン(65mg, 0.15mmol)を加える。該反応混合物を室温で2時間撹拌する。溶媒を真空で除去し、粗製の物質をEtOAc(50ml)に再度溶解し、飽和Na(2×25ml)で、続いて飽和水性NaHCO(2×25ml)で、そして塩水(25ml)で洗浄し、無水NaSOで乾燥する。粗製の物質を、フラッシュクロマトグラフィーによって(40g シリカカラム)、CHCl:MeOHの濃度勾配を用いて精製し、ケトン1−Jを白色の泡状物質として得る。
【0118】
実施例1: 中間体1−J(42mg, 0.05mmol)を、CHCl中20% TFA(3ml)に溶解する。該反応物を室温で2時間撹拌し、溶媒を真空で除去する。粗製の物質を逆相HPLCによって精製し、溶媒を凍結乾燥し、1を、白色の粉末として、モノ−TFA塩として得る。
【0119】
実施例2〜9
実施例2〜7は、実施例1の合成について記載された方法と類似の方法を用いて、段階hで適切な反応剤を用いて、すなわち
実施例2ではメチルアミンを用いて;
実施例3ではベンジルアミンを用いて;
実施例4ではフェネチルアミンを用いて;
実施例5ではアニリンを用いて;
実施例6ではシクロプロピルメチルアミンを用いて;そして
実施例7ではシクロヘキシルメチルアミンを用いて、
合成される。
【0120】
実施例8および9は、実施例1に記載された方法と類似の方法に従って、反応剤として参照化合物1および参照化合物3を用いて製造される。段階(h)において、フェネチルアミンおよび3−フェニルプロピルアミンを、それぞれ実施例8および9に用いる。
【0121】
実施例10
【化26】

実施例10において、反応剤および条件は、次の通りである:
(a) HATU/DIPEA/CHCl、参照化合物2、23℃;
(b) LiOH、ジオキサン/水(4:1)、23℃;
(c) LiOH、ジオキサン/水(4:1)、23℃;
(d) HATU/DIPEA/CHCl、フェネチルアミン、23℃;
(e) H、Pd/C、EtOH、23℃;
(f) HATU/DIPEA/CHCl、23℃。
【0122】
中間体10−Aから10−Dは、実施例1の段階(d)、(e)、(g)および(h)についての方法と類似の方法に従って、それぞれ段階(d)、(e)および(g)の反応剤として参照化合物4、10−Aおよび10−Bを用いて製造される。段階(h)において、中間体10−Cを酸成分として用いて、フェネチルアミンをアミン成分として用いる。
【0123】
中間体10−Eは、実施例2の段階fについての方法と類似の方法に従って、脱保護基質として10−Dを用いて製造される。中間体10−Fは、実施例1の段階hと類似の方法に従って、10−Bを酸成分として用いて、中間体10−Eをアミン成分として用いて製造される。デス・マーチン酸化およびBoc脱保護は、実施例1の段階(i)および(j)と同じである。
【0124】
実施例11〜12
実施例11および12は、実施例10について記載された方法と類似の方法に従って、酸成分としてそれぞれ参照化合物5および参照化合物6を用いて製造される。
【0125】
実施例13
【化27】

実施例13において、反応剤と条件は、次の通りである:
(a) Hoveyda-Grubbs複分解触媒、4−メチレン−N−Boc−ピペリジン、13−A、CHCl、40℃、65%;
(b) TFA:CHCl(1:1)、23℃、HPLC精製、30%。
【0126】
13−A: この化合物は、実施例12の合成経路の中間体として合成される。13−Aの合成は、実施例1の段階(i)と類似である。
【0127】
13−B: 無水ジクロロメタン(5ml)をシリンジを介して13−A(108mg, 0.137mmol, 1.0当量)に、窒素雰囲気下で加え、Hoveyda-Grubbs第2世代複分解触媒[二塩化 1,3−ビス−(2,4,6−トリメチルフェニル)−2−イミダゾリジニリデン)ジクロロ(o−イソプロポキシフェニルメチレン)ルテニウム(II)](10mg, 0.013mmol, 10mol%)を加える。N−Boc−4−メチレンピペリジン(100μl, 0.507mmol, 3.5当量)をシリンジを介して加え、反応器に還流コンデンサーを取り付け、40℃で12時間加熱する。LC/MSによって反応が完了したと判断した後、該反応混合物を、直接、自動化シリカゲル精製によって精製し(ヘキサン中80〜100% 酢酸エチル)、13−Bを暗緑色の油状物として得る。
MS m/z 859.5 (M-Boc + 1).
【0128】
実施例13: この化合物は、実施例1の段階(j)についての方法と類似の方法に従って、中間体13−Bを反応剤として用いて製造される。
【0129】
実施例14−57
実施例14〜19、22〜25、29〜30は、実施例1について記載された方法と類似の方法に従って、段階(h)で適切なアミン成分を用いて、例えば実施例14〜16ではそれぞれ(R)−メチルベンジルアミン、(S)−メチルベンジルアミンおよび2−アミノメチルベンゾチアゾールを用いて製造される。
【0130】
実施例20〜21、27〜28、45および52は、実施例13の製造について記載された方法と類似の方法を用いて、段階(a)で適切なオレフィン交差複分解パートナーを用いて、例えば、
実施例20ではtert−ブチルエチレンを用いて;
実施例21では4−ビニルアニソールを用いて;
実施例27では実施例26の対応する中間体を用いて;
実施例28では、フェネチルアミンがp−メトキシフェネチルアミンで置き換えられている、実施例26の対応する中間体を用いて;
実施例45では参照化合物9を用いて;そして
実施例52では4−メチレンシクロヘキセンを用いて、
製造される。
【0131】
実施例26は、実施例10を製造する方法と類似の方法に従って、段階(b)における酸成分として参照化合物7を用いて製造される。
【0132】
実施例31〜44および46は、実施例1を製造する方法と類似の方法に従って、段階(d)で適切な酸成分を用いて、そして段階(f)および(h)で適切なアミン成分を用いて製造される。
【0133】
実施例47は、段階(d)でアミン成分を除いて、実施例26の製造について記載された方法と類似の方法を用いて製造される。
【0134】
実施例48〜51および53〜54は、実施例1について記載された方法と類似の方法に従って、参照化合物10および段階(f)および(h)で適切なアミン成分をそれぞれ用いて製造される。
【0135】
実施例55および56は、段階(i)および(j)をそれぞれ中間体1−Hおよび1−Gに直接行う以外、実施例1について記載された方法と類似の方法に従って製造される。
【0136】
実施例57は、実施例1に記載された方法と類似の方法を用いて、反応剤として参照化合物3を用いて製造される。
【0137】
実施例58〜60は、実施例1に記載された方法と類似の方法を用いて、段階(d)で適切な酸成分を用いて、そして段階(f)および(h)で適切なアミン成分を用いて製造される。
【0138】
表1は、実施例1〜60に記載された式(1)の化合物を示す。
表1
【表1】

【0139】
【表2】

【0140】
【表3】

【0141】
【表4】

【0142】
【表5】

【0143】
【表6】

【0144】
【表7】

【0145】
【表8】

【0146】
【表9】

【0147】
【表10】

【0148】
【表11】

【0149】
【表12】

【0150】
【表13】

【0151】
【表14】

【0152】
別の具体的態様において、本発明の化合物は、式(1)を有し、式中、Rは、C1−6アルキルまたは(CR)−X {式中、Xは、C3−7シクロアルキルまたはアリールであり、これらは所望により非アミノ置換基で置換されていてもよい。}である。代表的な化合物は、下記の参照化合物および実施例を用いて製造され得る。
【0153】
参照化合物11
【化28】

参照化合物11についての上記の反応スキームにおいて、反応剤および条件は、次の通りである:
(a) トリクロロイソシアヌル酸、TEMPO、CHCl、0℃;
(b) n−BuLi、HC(SCH)、THF、−65℃;
(c) HgCl、HgO、MeOH、HO、23℃;
(d) H、MeOH、Pd/C 10%、23℃、12時間。
【0154】
11−B: アルコール11−A(2.0g, 7.0mmol)を、CHCl(15ml)に溶解し、該溶液を0℃に冷却する。トリクロロイソシアヌル酸(1.71g, 7.36mmol)を加え、続いてTEMPO(11mg, 0.07mol)を加える。次いで該反応物を室温まで温め、室温で15分間撹拌する。沈殿物が形成し、該反応混合物をセライトで濾過し、CHClで洗浄する。合わせたCHCl溶液(〜100ml)を、飽和水性NaHCO(2×50ml)で、1M HCl(2×50ml)で、そして塩水(50ml)で洗浄し、次いで乾燥し(MgSO)、溶媒を蒸発させる。これをさらに精製することなく次の段階に直接用いる。
【0155】
11−C: n−BuLi(7.84mlのヘキサン中2.5M溶液, 19.6mmol)を、10分かけて、THF(50ml)中のトリス(メチルチオ)メタン(2.8ml, 21.0mmol)の溶液に、撹拌しながら、−65℃で加える。20分後、THF(20ml)中のアルデヒド11−B(2.0g, 7.0mmol)の−65℃溶液を、30分かけて加える。該溶液を−65℃で5時間撹拌する。該反応混合物を、400mlの飽和NHCl溶液およびCHCl(1:12)に添加することによってクエンチする。層を分離し、水層をCHCl(3×100ml)で洗浄する。合わせた有機層を、HOで、そして塩水で洗浄し、MgSOで乾燥し、濾過し、蒸発乾固する。自動化シリカゲルクロマトグラフィーにかけ(CHCl中0〜10% EtOAc)、11−Cを澄明な油状物として得る。
LC/MS 実測値 438.1 [M + H].
【0156】
11−D: MeOH(55ml)およびHO(4.0ml)に溶解した11−C(1.23g, 2.83mmol)の溶液に、塩化水銀(II)(2.69g, 9.9mmol)および酸化水銀(II)(795mg, 3.67mmol)を、23℃で72時間激しく撹拌しながら加える。該反応混合物をセライトで濾過し、残渣をCHCl(75ml)で、MeOH(10ml)で、そして水(10ml)で洗浄する。濾液を分離し、水層をCHCl(50ml)で抽出する。合わせた有機層を飽和水性NHOAc(3×50ml)で、そして飽和水性NHCl(2×75ml)で洗浄し、NaSOで乾燥し、濾過し、蒸発させ、粗製の11−Dを得る。自動化シリカゲルクロマトグラフィーにかけ(ヘキサン中0〜100% EtOAc)、11−Dを澄明な油状物として得る。
LC/MS 実測値 344.1 [M + H].
【0157】
参照化合物11: 化合物11−D(150mg, 0.44mmol)を、メタノール(8ml)に溶解する。50mgのPd/C(10%, 湿った, Degussaタイプ)を加え、フラスコを大気圧の水素下に置く。触媒をセライトで濾過し、溶媒を真空で除去する。溶媒を真空で除去し、参照化合物11を澄明な油状物として得る。
LC/MS 実測値 210.2 (M + H).
【0158】
参照化合物12
【化29】

参照化合物12についての上記反応スキームにおいて、反応剤および条件は、次の通りである:
(a) HATU/DIPEA/CHCl、フェネチルアミン、23℃;
(b) TFA/CHCl(50:50)、23℃。
【0159】
カルボン酸12−A(250mg, 0.94mmol)を、CHCl(5ml)に溶解する。フェネチルアミン(140mg, 1.13mmol)およびHATU(540mg, 1.42mmol)を加え、該混合物を室温で10分間撹拌する。シリンジを介して、DIPEA(0.5ml, 2.84mmol)を加え、該反応混合物を室温で3時間撹拌する。溶媒を真空で除去し、残渣をEtOAc(50ml)に再度溶解し、1M HCl(2×25ml)で、続いて飽和水性NaHCO(2×25ml)で、そして塩水(25ml)で洗浄し、無水NaSOで乾燥する。溶媒を真空で除去し、粗製の物質を直接フラッシュクロマトグラフィーによって精製する(40g シリカ, CHCl中0〜30% EtOAcの濃度勾配)。溶媒を真空で除去し、12−Bを油状物として得る。
LC/MS 実測値 369.2。
【0160】
中間体12−B(37mg, 0.01mmol)を、3mlのCHCl中25% TFA溶液に溶解する。該反応物を23℃で1時間撹拌し、溶媒を真空で除去し、参照化合物12をそのモノトリフルオロ酢酸塩として得る。
LC/MS 実測値 269.2 [M + H].
【0161】
参照化合物13
【化30】

参照化合物14についての上記反応スキームにおいて、反応剤および条件は、次の通りである:
(a)(i) クロロ蟻酸i−ブチル、EtN、THF、−10℃;
(ii) NaBH、HO、0℃、77%;
(b) トリクロロイソシアヌル酸、TEMPO、CHCl、0℃;
(c) n−BuLi、HC(SCH)、THF、−65℃;
(d) HgCl、HgO、MeOH、HO、23℃;
(e) TFA/CHCl(1:1)、23℃、12時間。
【0162】
市販の化合物13−A(3.6g, 15.72mmol)を、THF(50ml)に溶解し、氷−塩浴中で−10℃に冷却する。トリエチルアミン(2.62ml, 18.86mmol)を、シリンジを介して加え、続いて、イソブチルクロロホルメート(2.26ml, 17.58mmol)を、シリンジを介して10分かけて滴下する。白色の沈殿物が形成し、該反応物を0℃でさらに20分間撹拌する。該混合物を濾過し、THFで洗浄し、濾液を氷浴中で0℃に冷却し、30mlの水に溶解した水素化ホウ素ナトリウム(1.5g, 39.3mmol)の溶液を、ゆっくりと滴下する。発泡性溶液を室温まで昇温し、THFを真空で除去する。残渣をEtOAcに再度溶解し、水で、そして塩水で洗浄し、MgSOで乾燥し、濾過し、真空で濃縮する。自動化シリカゲルクロマトグラフィーにかけ(ヘキサン中0〜40% EtOAc)、13−Bを澄明な油状物として得る。
LC/MS 実測値 216.2 [M + H].
【0163】
中間体13−Cから13−Eは、それぞれ参照化合物11の段階a〜cの製造方法と類似の方法に従って製造される。中間体13−E(268mg, 0.98mmol)を、5mlのCHCl中25% TFA溶液に溶解する。該反応物を23℃で1時間撹拌し、溶媒を真空で除去し、参照化合物13を、そのモノトリフルオロ酢酸塩として得る。
LC/MS 実測値 174.1 [M + H].
【0164】
参照化合物14
【化31】

参照化合物14は、参照化合物13を製造する方法と類似の方法に従って、段階aにおいて対応するアミノ酸出発物質として(S)−N−Boc−Cha−OHを用いて製造される。
【0165】
参照化合物15
【化32】

参照化合物15は、参照化合物3を製造する方法と類似の方法に従って、段階aにおいて対応するアミン出発物質としてモルホリンを用いて製造される。
【0166】
実施例61
【化33】

上記反応スキームにおいて、反応剤および条件は、次の通りである:
(a) KOH、塩化 4−クロロベンジル、DMSO、0℃から23℃;
(b) TMS−CHN、CHCl/MeOH、23℃;
(c) TFA/CHCl(50:50)、23℃;
(d) HATU/DIPEA/CHCl、参照化合物8、23℃;
(e) LiOH、ジオキサン/水 (4:1)、23℃;
(f) HATU/DIPEA/CHCl、参照化合物11、23℃;
(g) LiOH、ジオキサン/水 (4:1)、23℃;
(h) HATU/DIPEA/CHCl、フェネチルアミン、23℃;
(h) デス・マーチン・ペルヨージナン、CHCl、23℃;
(j) TFA/CHCl(20:80)、23℃、続いて質量分離HPLC精製。
【0167】
61−B: 微粉末KOH(19.4g, 0.346mol)をDMSOに溶解し、室温で20分間撹拌し、次いで0℃に冷却する。N−Boc−trans−4−ヒドロキシ−L−プロリン(Boc−Hyp−OH, 61−A)(10g, 43.3mmol)を、DMSO(10ml)に溶解し、それを加え、該反応混合物を0℃でさらに10分間撹拌する。次に、塩化 4−クロロベンジル(33g, 0.204mol)を加え、該反応混合物を、0℃で、さらに15分間撹拌し、その後、氷浴を除き、該反応混合物を室温まで昇温し、4時間撹拌する。該反応混合物を水(300ml)に注ぎ、該反応容器を、さらなるアリコートの水(300ml)で濯ぐ。合わせた水層をエーテル(2×300ml)で抽出し、廃棄する。水層を、87% HPOによってpH 2.3まで酸性にし、次いで、エーテル(3×300ml)で抽出する。合わせたエーテル抽出物を、水(2×400ml)で、そして塩水(2×400ml)で洗浄し、次いでMgSOで乾燥し、濾過し、真空で濃縮する。残渣を、EtOAc/ヘキサン(0から100%の濃度勾配)でのシリカゲルのクロマトグラフィーによって精製し、化合物61−Bを澄明な油状物として得る。
MS m/z 256.1 (M + 1 - Boc);
1H NMR (DMSO-D6, 400MHz) δ 7.39-7.31 (4H, m), 4.52-4.40 (2H, m), 4.16-4.10 (2H, m), 3.48-3.41 (2H, m), 2.40-2.30 (1H, m), 2.03-1.94 (1H, m), 1.39-1.34 (9H, m).
【0168】
61−C: (トリメチルシリル)ジアゾメタンの溶液(ジエチルエーテル中2M)(4.7ml, 9.45mmol)を、CHCl/MeOH 5:1(25ml)に溶解したカルボン酸61−B(2.4g, 8.6mmol)に、室温で加える。LCMSによって出発物質が消費されたことが測定されたとき、該反応混合物を酢酸でクエンチし、真空で濃縮し、粗製の残渣を、フラッシュクロマトグラフィーによって精製し(EtOAc:ヘキサンの濃度勾配)、メチルエステル61−Cを澄明な油状物として得る。
【0169】
61−D: 丸底フラスコに、撹拌バーと共に、61−C(1.03g, 2.80mmol)を入れる。CHCl中TFA(50%)(6ml)を加え、該溶液を、室温で1時間撹拌する。溶媒を真空で除去し、ヘキサンを加え、次いで再度真空で蒸発乾固し、必要であれば、残ったTFAを共沸させるために繰り返す。粗製の物質61−Dを、直接次の段階にさらに精製することなく用いる。
【0170】
61−E: 粗製の物質61−D(3.06g, 8.0mmol)を、CHCl(50ml)に溶解する。これに、参照化合物8(1.5g, 4.12mmol)およびHATU(3.2g, 8.0mmol)を加え、該溶液を室温で10分間撹拌する。DIPEA(2.5ml, 12.4mmol)を、シリンジを介して加え、該反応混合物を室温で一夜撹拌する。溶媒を真空で除去し、粗製の物質を、直接フラッシュクロマトグラフィーによって精製する(120g シリカ, ヘキサン/EtOAcの濃度勾配)。溶媒を真空で除去し、61−Eを油性の半固体として得る。
LC/MS 実測値 616.3 [M + H].
【0171】
61−F: メチルエステル61−E(3.0g, 4.9mmol)を、ジオキサン(50ml)に溶解する。水酸化リチウム(234mg, 9.8mmol)を、水(50ml)に溶解し、メチルエステル61−Eの溶液に滴下し、室温で3時間撹拌する。該反応混合物を真空で濃縮してジオキサンを除去し、次いで1M NaHSOで酸性にする。これをEtOAcで抽出し、合わせた有機層を塩水で洗浄し、MgSOで乾燥する。溶媒を真空で除去し、カルボン酸61−Fを蝋状固体として得る。
LC/MS 実測値 602.2 [M + H].
【0172】
61−G: カルボン酸61−F(170mg, 0.28mmol)を、CHCl(5ml)に溶解する。参照化合物11(89mg, 0.43mmol)およびHATU(162mg, 0.43mmol)を加え、該混合物を室温で10分間撹拌する。DIPEA(250μl, 1.28mmol)を、シリンジを介して加え、該反応混合物を室温で3時間撹拌する。溶媒を真空で除去する。粗製の物質をEtOAc(50ml)に再度溶解し、1M HCl(2×25ml)で、続いて飽和水性NaHCO(2×25ml)で、そして塩水(25ml)で洗浄する、無水NaSOで乾燥する。溶媒を真空で除去し、粗製の物質を、直接フラッシュクロマトグラフィーによって精製する(40g シリカ, 0〜5% MeOH/CHClの濃度勾配)。溶媒を真空で除去し、61−Gを油状半固体として得る。
LC/MS 実測値 793.3 [M + H].
【0173】
61−H: メチルエステル61−G(155mg, 0.20mmol)を、ジオキサン(5ml)に溶解する。水酸化リチウム(7.1mg, 0.29mmol)を水(5ml)に溶解し、メチルエステル61−Gの溶液に滴下し、室温で3時間撹拌する。該反応混合物を真空で濃縮してジオキサンを除去し、次いで1M NaHSOで酸性にする。これをEtOAcで抽出し、合わせた有機層を塩水で洗浄し、MgSOで乾燥する。溶媒を真空で除去し、カルボン酸61−Hを蝋状固体として得る。
LC/MS 実測値 779.3 [M + H].
【0174】
61−I: カルボン酸61−H(50mg, 0.07mmol)を、CHCl(5ml)に溶解する。フェネチルアミン(19μl, 0.13mmol)およびHATU(50mg, 0.13mmol)を加え、該混合物を室温で10分間撹拌する。DIPEA(35μl, 0.20mmol)を、シリンジを介して加え、該反応混合物を室温で3時間撹拌する。溶媒を真空で除去し、粗製の物質をEtOAc(50ml)に再度溶解し、1M HCl(2×25ml)で、続いて飽和水性NaHCO(2×25ml)で、そして塩水(25ml)で洗浄し、無水NaSOで乾燥する。溶媒を真空で除去し、粗製の物質61−Iを直接次の反応に用いる。
LC/MS 実測値 882.4 [M + H].
【0175】
61−J: 粗製のアルコール61−I(62mg, 0.07mmol)を、CHCl(5ml)に溶解し、デス・マーチン・ペルヨージナン(55mg, 0.13mmol)を加える。該反応混合物を室温で2時間撹拌する。溶媒を真空で除去し、残渣をEtOAc(50ml)に再度溶解し、飽和Na(2×25ml)で、続いて飽和水性NaHCO(2×25ml)で、そして塩水(25ml)で洗浄し、無水NaSOで乾燥する。粗製の物質を、自動化フラッシュクロマトグラフィーによって(40g シリカカラム)、CHCl中0〜5% MeOHの濃度勾配を用いて精製し、ケトン61−Jを白色の泡状物質として得る。
LC/MS 実測値 902.4 [M + Na].
【0176】
実施例61: 中間体61(42mg, 0.05mmol)を、CHCl中20% TFA(2ml)に溶解する。該反応物を室温で30分間撹拌し、溶媒を真空で除去する。粗製の物質を逆相HPLCによって精製し、溶媒を凍結乾燥し、実施例61を、白色の粉末として、そのモノTFA塩として得る。
【0177】
実施例62〜66
実施例62〜66は、実施例61に記載された方法と類似の方法に従って、段階hのアミド形成段階において適切なアミン成分を用いて製造される。例えば、実施例62においては、4−アミノメチルテトラヒドロピランを、4−アミノメチルピリジンの代わりにアミン成分として用いる。
【0178】
実施例67〜74
実施例67〜74は、実施例61に記載された方法と類似の方法に従って、段階(h)および(i)において、適切なアミン成分を用いて製造される。例えば、
実施例67では、段階fおよびhにおいてそれぞれ参照化合物13および12を用いて;
実施例68では、段階fおよびhにおいてそれぞれ参照化合物14および4−アミノエチルテトラヒドロピランを用いて;
実施例69〜73では、段階fにおいてアミン成分として参照化合物13を用いて、段階hにおいて適切なアミン成分を用いて製造される。実施例74は、類似の方法に従って、段階fおよびhにおいてそれぞれ適切なアミン成分を用いて製造される。
【0179】
表2は、実施例61〜74に記載された式(1)の化合物を示す。
表2
【表15】

【0180】
【表16】

【0181】
【表17】

【0182】
アッセイ
チャネル活性化プロテアーゼが介在する疾患の処置におけるチャネル活性化プロテアーゼ阻害剤、例えばプロスタシン阻害剤の適切さは、(1) 適切な生化学アッセイフォーマットを用いて、Shipway et al.; Biochemical and Biophysical Research Communications 2004; 324(2):953-63に記載された方法を用いて、天然の単離され精製されたチャネル活性化プロテアーゼ、または組み換えチャネル活性化プロテアーゼに対する、および/または(2) Bridges et al.; American Journal of Physiology Lung Cell Molecular Physiology 2001; 281(1):L16-23; および Donaldson et al.; Journal of Biological Chemistry 2002; 277(10):8338-45に記載された方法を用いて、適切な単離された細胞またはコンフルエントの表皮における、イオンチャネル/イオン輸送機能に対する、チャネル活性化プロテアーゼ阻害剤の阻害効果を測定することによって試験され得る。
【0183】
生化学アッセイ
組み換えヒトプロスタシンおよびマトリプターゼ、ならびにモルモットプロスタシンは、Shipway et al., Biochem. and Biophys. Res. Commun. 2004; 324(2):953-63に記載された方法に従って得られる。組み換え酵素は、試験化合物またはビークルを含む電解質緩衝液中で、適切なマルチプル・ウェル・アッセイ・プレート、例えば96ウェルまたは384ウェルプレート中でインキュベートされる。酵素を化合物またはビークルと混合した後、規定時間に、適切な蛍光ペプチド基質をアッセイ混合物に加える。基質が活性な酵素によって切断されたとき、蛍光(適切な蛍光プレート・リーダーを用いて測定)は増大し、基質のターンオーバーの速度を定量化し得る。その結果、全ての試験化合物の阻害効果を定量化し得る。試験化合物の力価を、酵素活性の50%減少を誘発する濃度(K)として表す。
【0184】
一般的に、本発明の化合物は、0.1nMから5μMのK値を有し得る。幾つかの例において、本発明の化合物は、0.1nMから500nM;0.1nMから50nM;0.1nMから5nM;または0.1nMから0.5nMのK値を有し得る。特定の例において、本発明の化合物は、0.1nMから0.5nM;0.5nMから5nM;5nMから50nM;50nMから500nM;または500nMから5μMのK値を有し得る。さらに別の例において、本化合物は、0.1nM未満の、または5μM以上のK値を有し得る。
【0185】
上皮イオン輸送
ヒトの気管支上皮細胞を、Danahay et al., Am. J. Physiol. Lung Cell Mol. Physiol. 2002; 282(2):L226-36に記載された方法に従って培養する。適切に分化したとき(頂端−空気界面確立後14〜21日)、表皮細胞を、ビークル、アプロチニン(200μg/ml)または試験化合物の何れかで、90分間処理する。次いで、上皮の頂端側でのビークル、アプロチニンまたは試験化合物の濃度を維持しながら、前述のDanahayらに記載されたチャンバーに、上皮を入れる。次いで、上皮を0mVに固定する電圧により、短絡回路電流(ISC)を測定する。次いで、アミロライド(10μM)を上皮の頂端表面に添加することによって、アミロライド感受性ISCを測定する。試験化合物の力価を、アミロライド感受性ISCの総アプロチニン感受性成分の50%阻害を誘発する濃度として表す。
【0186】
一般的に、本発明の化合物は、1nMから10μMのIC50値を有し得る。幾つかの例において、本発明の化合物は、1nMから1μM;より特定的には1nMから100nMのIC50値を有し得る。また、別の例において、本発明の化合物は、100nMから1μM、または1μMから10μMのIC50値を有し得る。また、別の例において、本化合物は、1nM未満または10μM以上のIC50値を有し得る。
【0187】
気管の電位差(in vivo)
短時間作用吸入麻酔薬(例えばハロタンおよびNO)を用いて、モルモットに麻酔をかける。短時間作用麻酔下で、胃ゾンデを、口腔咽頭経路を介して気管に挿入する。気管内に入ったら、適切な水性ベースの希釈剤中の少量(50〜200μl)のビークルまたは試験化合物を、気道に注入する。その後動物は回復し、完全に歩けるようになる。あるいは、試験化合物を、エアゾールまたは乾燥粉末投与を用いて動物に投与させ得る。投与後規定時間に、動物に、適切な麻酔薬(例えばケタミンおよびキシラジン)を用いて外科的に麻酔をかける。次いで気管を曝露し、可塑性寒天橋電極を気管内腔に挿入する。参照電極はまた、動物の首の筋肉の層に挿入する。次いで、気管の電位差を、Takahashi et al., Toxicol Appl Pharmacol. 1995; 131(1):31-6に記載された適切な高インピーダンス電圧計を用いて測定する。試験化合物の力価を、気管電位差の感受性成分における50%減少を誘発する投与量として表す。
【0188】
本明細書に記載された例および態様は、例示の目的のためのみであり、それに照らした種々の修飾または変更は当業者に示唆されており、またこの明細書および請求の範囲の精神および範囲に含まれるべきである。本明細書で引用された全ての文献、特許および特許明細書は、全ての目的について、言及することによって本明細書に組み込まれている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1):
【化1】

[式中、
Bは、
【化2】

であるか、または(CR)であり;
Yは、−SO−、−NHCO−、−CO−または−O−C(=O)−であり;
Jは、NH(CR)−R、NH(CR)−OR、NH(CR)−SO−R、NH−CR[(CR)]、OHまたはORであり;
は、−(CR)−NR、−(CR)−NRC(=NR)−NRまたは−(CR)−C(=NR)−NRであるか、または、所望により置換されている5〜7員の窒素含有ヘテロ環式環であるか;あるいは、Rは、C1−6アルキルまたは(CR)−X {式中、Xは、C3−7シクロアルキルまたはアリールであり、これらはそれぞれ、所望により−(CR)−NR、−(CR)−NRC(=NR)−NRまたは−(CR)−C(=NR)−NRで置換されている。}であり;
は、環Aの何れかの位置の置換基であって、−O−(CR)−Rまたは−L−NR {式中、Lは、S、S(O)、SOまたはOC(O)である。}であり;
は、C1−6アルキル、C2−6アルケニル、C2−6アルキニルまたは−(CR)−Rであり;
は、H、C1−6アルキル、C2−6アルケニル、−CR=CR−R、C2−6アルキニルであるか、または、所望により置換されている5〜12員の炭素環式環、ヘテロ環式環、アリールまたはヘテロアリールであるか;あるいは、Rは、
【化3】

{式中、環Eは、所望により置換されている5〜12員の単環式または縮合炭素環式環またはヘテロ環式環である。}であり;
およびRは、独立して、所望により置換されている5〜7員の炭素環式環、ヘテロ環式環、アリールまたはヘテロアリールであり;
は、C1−6アルキル、C2−6アルケニル、C2−6アルキニルであるか、または、所望により置換されている5〜12員の炭素環式環、ヘテロ環式環、アリールまたはヘテロアリールであり;
およびRは、独立して、H、C1−6アルキル、C2−6アルケニル、C2−6アルキニルまたは−(CR)−Rであるか;あるいは、RおよびRは、Nと一体となって、所望により置換されている5〜7員のヘテロ環式環を形成してもよく;
Rはそれぞれ、H、またはC1−6アルキル、C2−6アルケニル、またはC2−6アルキニルであり;
lは、0〜6であり;
k、m、nおよびpは、独立して、1〜6である。]
の化合物またはその薬学的に許容される塩。
【請求項2】
Jが、OH、OCH、NH−CH(フェニル)、NH(CH)−OR、NH(CH)−SO−RまたはNH(CR)−R {式中、Rが、C1−6アルキル、または、フェニル、ピリジル、シクロプロピル、シクロヘキシル、ベンゾチアゾリル、2,3−ジヒドロ−1H−インデニル、モルホリニル、イミダゾリル、テトラヒドロピラニル、ピペリジニル、チオフェニル、2,3−ジヒドロベンゾ[b][1,4]−ジオキシニルまたはベンゾチオフェニルであり、これらはそれぞれ、所望によりC1−6アルキル、ハロ、ヒドロキシル、C1−6アルコキシ、O(CR)、SONR、CONR(CR)またはCONRで置換されている。}である、請求項1に記載された化合物。
【請求項3】
Yが、SOまたは−O−C(=O)−である、請求項1に記載された化合物。
【請求項4】
が、C1−6アルキル、−(CH)−NH、−(CH)−NHC(=NH)−NH、または、(CH)−X {式中、Xが、ピペリジニル、C3−7シクロアルキルまたはフェニルである。}である、請求項1に記載された化合物。
【請求項5】
が、−O−(CH)−Rであり、Rがハロ置換フェニルである、請求項1に記載された化合物。
【請求項6】
当該化合物が、式(2):
【化4】

[式中、RおよびRは、一体となって、所望により置換されている5〜7員の窒素含有ヘテロ環式環を形成する。]
を有する、請求項1に記載された化合物。
【請求項7】
当該化合物が、式(3):
【化5】

[式中、qは、1〜5であり;
10は、ハロ、C1−6アルキル、またはO(C1−6アルキル)である。]
を有する、請求項1に記載された化合物。
【請求項8】
が、−(CH)−NH、−(CH)−NHC(=NH)−NH、または、(CH)−X {式中、Xがピペリジニルである。}である、請求項7に記載された化合物。
【請求項9】
が、C1−6アルキル、または所望により置換されているシクロヘキシル、またはベンジルである、請求項7に記載された化合物。
【請求項10】
が、H、C1−6アルキル、C2−6アルケニルまたは−CR=CR−R {式中、Rが、C1−6アルキルまたは所望により置換されているフェニルである。}であるか;あるいは、Rが、所望により置換されているフェニル、ピペリジニル、シクロヘキシル、
【化6】

であり;ここで、所望により置換されている部分は、それぞれ、所望によりC1−6アルキル、ヒドロキシル、OR、またはNRで置換されている、請求項7に記載された化合物。
【請求項11】
がピペリジニルである、請求項10に記載された化合物。
【請求項12】
が、C1−6アルキルまたは(CR)−X {式中、Xが、C3−7シクロアルキルまたはフェニルである。}であり;
が、所望により置換されている5〜7員の窒素含有ヘテロ環式環であり;
YがSOである、
請求項7に記載された化合物。
【請求項13】
当該化合物は、式(4):
【化7】

[式中、qは、1〜5であり;
は、N、OまたはSを含む5〜7員のヘテロ環式環であり;
10は、ハロ、C1−6アルキル、またはO(C1−6アルキル)である。]
を有する、請求項1に記載された化合物。
【請求項14】
が、所望によりNRで置換されているチアゾリルである、請求項13に記載された化合物。
【請求項15】
【表1】

【表2】

【表3】

【表4】

【表5】

【表6】

【表7】

【表8】

【表9】

からなる群から選択される、請求項1に記載された化合物。
【請求項16】
治療有効量の請求項1〜15の何れか1項に記載された化合物を含む医薬組成物。
【請求項17】
細胞または組織系または哺乳動物において、チャネル活性化プロテアーゼを阻害するための、請求項1〜15の何れか1項に記載された化合物の使用であって、当該チャネル活性化プロテアーゼが、プロスタシン、PRSS22、TMPRSS11(例えば、TMPRSS11B、TMPRSS11E)、TMPRSS2、TMPRSS3、TMPRSS4(MTSP−2)、マトリプターゼ(MTSP−1)、CAP2、CAP3、トリプシン、カテプシン A、または好中球エラスターゼである、使用。
【請求項18】
細胞または組織系または哺乳動物において、チャネル活性化プロテアーゼが介在する状態を処置する医薬の製造のための、所望により第2治療薬と組み合わせた請求項1〜15の何れか1項に記載された化合物の使用であって、当該チャネル活性化プロテアーゼが、プロスタシン、PRSS22、TMPRSS11(例えばTMPRSS11B、TMPRSS11E)、TMPRSS2、TMPRSS3、TMPRSS4(MTSP−2)、マトリプターゼ(MTSP−1)、CAP2、CAP3、トリプシン、カテプシン A、または好中球エラスターゼである、使用。
【請求項19】
当該状態が、イオン輸送上皮を通過する体液の移動、または呼吸器組織における粘液および痰の蓄積、またはそれらの組み合わせに関連する状態である、請求項18に記載された使用。
【請求項20】
当該状態が、嚢胞性線維症、原発性線毛機能不全、肺癌、慢性気管支炎、慢性閉塞性肺疾患、喘息または呼吸器感染である、請求項18に記載された使用。
【請求項21】
当該第2治療薬が、抗炎症剤、気管支拡張剤、抗ヒスタミン剤、鎮咳剤、抗生物質またはDNAアーゼであり、また、請求項1〜15の何れか1項に記載された化合物の前に、それと同時に、またはそれの後に投与される、請求項18に記載された使用。
【請求項22】
当該チャネル活性化プロテアーゼがプロスタシンである、請求項17または18に記載された使用。
【請求項23】
当該細胞または組織系が、気管支上皮細胞を含む、請求項17または18に記載された使用。

【公表番号】特表2010−518099(P2010−518099A)
【公表日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−549151(P2009−549151)
【出願日】平成20年1月7日(2008.1.7)
【国際出願番号】PCT/US2008/050403
【国際公開番号】WO2008/097676
【国際公開日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【出願人】(503261524)アイアールエム・リミテッド・ライアビリティ・カンパニー (158)
【氏名又は名称原語表記】IRM,LLC
【Fターム(参考)】