説明

チャンバ交換方法

【課題】
オシレータおよびアンプを備えた多段増幅型レーザ装置でオシレータおよびアンプのチャンバを効率よく利用することによって作業労力や交換部品を低減する。
【解決手段】
一定期間が経過するタイミングでオシレータおよびアンプのチャンバを交換する際に、オシレータおよび1以上のアンプのうちチャンバの劣化許容限度が低い箇所からチャンバを取り外し、そのチャンバをオシレータおよび1以上のアンプのうちチャンバの劣化許容限度が低い箇所以外の箇所に取り付ける。こうしてオシレータおよび1以上のアンプのうちチャンバの劣化許容限度が低い箇所で使用したチャンバの劣化度の余裕分を、オシレータおよび1以上のアンプのうちチャンバの劣化許容限度が低い箇所以外の箇所で消費する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多段増幅型レーザにおいてオシレータおよび少なくとも1台あるアンプのチャンバの構造が互いに共通であり、チャンバの劣化許容限度がオシレータと1以上のアンプで異なるようなレーザ装置のチャンバ交換方法に関し、オシレータおよび1以上のアンプのうちチャンバの劣化許容限度が低い箇所に取り付けられていたチャンバを取り外し、オシレータおよび1以上のアンプのうちチャンバの劣化許容限度が低い箇所以外の箇所に取り付けて使用するチャンバ交換方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体集積回路の微細化、高集積化につれて、半導体露光装置(以下、「露光装置」という)においては解像力の向上が要請されている。このため露光用光源から放出される光の短波長化が進められている。露光用光源には従来の水銀ランプに代わってガスレーザ装置が用いられている。現在、露光用のガスレーザ装置としては波長248nmの紫外線を放出するKrFエキシマレーザならびに、波長193nmの紫外線を放出するArFエキシマレーザが用いられている。
【0003】
次世代の露光技術としては露光装置側の露光用レンズとウエハ間を液体で満たして屈折率を変えることによって、露光用光源の見かけの波長を短波長化する液浸露光が研究されている。ArFエキシマレーザを露光用光源として液侵露光が行われた場合は、ウエハには水中における波長134nmの紫外光が照射される。この技術をArF液浸露光(又はArF液浸リソグラフィー)という。
【0004】
次々世代の露光用光源としてはEUV光源があり、またF2レーザを露光用光源として液浸技術が行われる可能性もある。この場合は、ウエハには波長115nmの紫外光が照射されることになる。
【0005】
液浸露光では高NA化によりレンズの透過率が低下するため、一定露光量を得るために光源であるレーザの高出力化が必要とされている。また、露光装置の高スループット化のためにもレーザの高出力化が必要とされている。スペクトル線幅を狭帯域化した上で高出力を得るための手段としては例えば図1に示すようなダブルチャンバレーザ装置1がある。なお、図1はオシレータ及びアンプがいずれもレーザ共振器を有するMOPA方式レーザを示している。
【0006】
ダブルチャンバレーザ装置1は、狭帯域化したレーザ光を出力するためのオシレータ10と、その狭帯域化されたレーザビーム(これをシード光と呼ぶ)を増幅するためのアンプ20から構成される。ダブルチャンバレーザ装置1はアンプ20における増幅の手段の違いによりMOPO方式とMOPA方式の2種類に分けられる。MOPOはMaster Oscillator, Power Oscillatorの略でインジェクションロック方式とも呼ばれており、アンプ20のアンプチャンバ21の前後に共振器が設けられているレーザである。一方、MOPAはMaster Oscillator, Power Ampliferの略であり、アンプ20のアンプチャンバの前後に共振器が設けられていないレーザである。
【0007】
以下の説明はMOPO方式レーザを例にしている。オシレータ10とアンプ20にはそれぞれ内部にレーザガスを封入するオシレータチャンバ11、アンプチャンバ21が設けられている。オシレータチャンバ11には、チャンバ内部から外部にまたはチャンバ外部から内部に光の通過を自在にするウインドウ11a、11bが取り付けられている。アンプチャンバ21には、チャンバ内部から外部にまたはチャンバ外部から内部に光の通過を自在にするウインドウ21a、21bが取り付けられている。また、各チャンバ11、21の内部には一対の主放電電極やガス貫流ファンやガス冷却装置等、種々の機器が設けられている。これらチャンバ11、21として、互いに構造が共通するものを用いる場合と互いに構造が異なるものを用いる場合とがある。
【0008】
先ず、機能面を考えると、各チャンバ11、21には互いに最適に設計されたものを用いた方がよい。オシレータ10の機能はレーザ光の生成および狭帯域化であり、アンプ20の機能はオシレータ10から出力されたレーザ光の増幅である、というようにオシレータ10とアンプ20の機能は相違し、チャンバはその機能に適した構造にすることが理想的であるためである。この場合はチャンバ11、21は互換性がなくなることもあり得る。
【0009】
一方、コスト・管理面を考えると、各チャンバ11、21には互いに構造が共通するものを用いた方がよい。オシレータチャンバ11とアンプチャンバ21とで部品を共通化することによって、部品管理が簡略化され、各サービス拠点への配備コストや部品製造コストも低減することを容易にするためである。
【0010】
オシレータチャンバ11とアンプチャンバ21とで部品を共通化しても機能面で大きな問題とならないケースもある。オシレータチャンバ11とアンプチャンバ21内部のガス組成や、チャンバ以外の部品であるフロントミラーの反射率、ガス貫流ファン回転数といったパラメータを調整してオシレータチャンバ11とアンプチャンバ21に、それぞれの機能に適した特性を持たせることが可能だからである。このため、レーザ利用者側がコスト・管理面を優先させて、オシレータチャンバ11およびアンプチャンバ21の部品を共通化することも可能である。以下ではオシレータチャンバ11およびアンプチャンバ21の構造が互いに共通する場合を前提条件とする。
【0011】
オシレータチャンバ11およびアンプチャンバ21(ウインドウやチャンバ内外部品を含む)は、ダブルチャンバレーザ装置1の累積運転時間の増加すなわち累積レーザショット数の増加に伴い劣化する。オシレータチャンバ11およびアンプチャンバ21の劣化はレーザ寿命の低下を招く。チャンバの劣化の程度すなわち劣化度が大きくなると1回のガス充填あたりのレーザの寿命が仕様を満たさなくなるため、ある程度まで劣化度が大きくなるとオシレータチャンバ11およびアンプチャンバ21の交換が必要になる。オシレータチャンバ11およびアンプチャンバ21の劣化度には許容範囲が設定され、その限度すなわち劣化許容限度に達するとチャンバの寿命が到来したものと判断される。
【0012】
図3はオシレータおよびアンプにけるチャンバの寿命の考え方を示している。図3はダブルチャンバレーザ装置1のレーザショット数とオシレータチャンバ11およびアンプチャンバ21の最大出力エネルギーとの関係を示している。縦軸はチャンバの出力エネルギー、横軸は累積レーザショット数である。最大出力エネルギーはその時点でのチャンバが保持している能力と考えることができ、またチャンバの能力はチャンバの劣化度と比例することが判っている。したがって、図3のグラフはレーザショット数とオシレータチャンバ11およびアンプチャンバ21の劣化度との関係を示しているともいえる。
【0013】
図3に示すように、オシレータチャンバ11およびアンプチャンバ21の最大出力エネルギーはレーザショット数の増加に略比例して減少する。つまりオシレータチャンバ11およびアンプチャンバ21の劣化度はレーザショット数の増加に略比例して高くなるといえる。また、レーザショット数の増加に伴う劣化の割合は、オシレータ10およびアンプ20でほぼ同程度であるとする。新しいチャンバ(レーザショット数0)の最大出力エネルギーをAとした場合に、アンプ20におけるチャンバの寿命よりもオシレータ10におけるチャンバの寿命が短い場合を例にすれば、オシレータ10では、最大出力エネルギーがBに低下した時点すなわちレーザショット数がLoに達した時点でオシレータチャンバ11の劣化度は許容範囲の上限すなわち劣化許容限度に達しチャンバの寿命が到来する。アンプ20では、最大出力エネルギーがCに低下した時点すなわちレーザショット数がLaに達した時点でアンプチャンバ21の劣化度は劣化許容限度に達しチャンバの寿命が到来する。
【0014】
なお、図3においてAを劣化度ゼロと考えると、、アンプ20におけるチャンバの寿命よりもオシレータ10におけるチャンバの寿命が短い場合を例にすれば、オシレータ10におけるチャンバの劣化度の許容範囲はAからBまでの範囲に相当し、アンプ20におけるチャンバの劣化度の許容範囲はAからCまでの範囲に相当する。すなわちアンプ20よりもオシレータ10の方が劣化許容限度が低いといえる。
【0015】
図3においては2Lo=Laの関係が成立している。このようにオシレータ10とアンプ20で劣化許容限度が異なるのは、オシレータ10とアンプ20の機能の相違に起因するものである。オシレータ10の機能はレーザ光の生成および狭帯域化であり、アンプ20の機能はオシレータ10から出力されたレーザ光の増幅である。これらの機能を考えると、より質の高いレーザ発振動作が求められるのはオシレータ10であるといえる。このため、アンプ20よりもオシレータ10を厳密に管理する必要があり、結果として劣化度の許容範囲が小さくすなわち劣化許容限度が低く設定されるのである。但し、2Lo=Laというのは一例であり、必ずしもこの関係が成立するとは限らないが、少なくともLo≦Laの関係は成立するように設計することができる。概ね2Lo=Laまたは3Lo=LaというようにLaがLoの2倍以上の整数倍に設定することができる。
【0016】
逆にオシレータ10よりもアンプ20の方がチャンバの劣化許容限度が低く設定される場合がある。アンプチャンバ21からの出力エネルギーを大きくする(増幅率を大きくする)場合はアンプ20では、最大出力エネルギーがBに低下した時点でアンプチャンバ21の劣化許容限度が到来する。オシレータ10では、最大出力エネルギーがCに低下した時点でオシレータチャンバ11の劣化許容限度が到来する。アンプチャンバ21の必要出力エネルギーが大きいため、結果として劣化度の許容範囲が小さくすなわち劣化許容限度が低く設定されるのである。この場合も概ね2La=Loまたは3La=LoというようにLoがLaの2倍以上の整数倍に設定することができる。
【0017】
ここでアンプ20よりもオシレータ10の方がチャンバの劣化許容限度が低く設定される場合を例にして従来行われていたチャンバの交換方法に関して説明をする。
図4は従来の方法に係るチャンバの交換周期の態様(2Lo=Laのケース)を示している。図4に示された“♯1”等の記号はオシレータ10およびアンプ20で使用されるチャンバ11、21の通し番号である。レーザショット数がLoに達すると、オシレータ10ではオシレータチャンバ11(♯2)から新たなオシレータチャンバ11(♯3)に交換される。レーザショット数が2Lo(=La)に達すると、アンプ20ではアンプチャンバ21(♯1)から新たなアンプチャンバ21(♯4)に交換され、オシレータ10ではオシレータチャンバ11(♯3)から新たなオシレータチャンバ11(♯5)に交換される。以降同様にして、レーザショット数がLo経過する毎にオシレータ10ではオシレータチャンバ11が交換され、レーザショット数が2Lo(=La)経過する毎にアンプ20ではアンプチャンバ21が交換される。なお、新たなチャンバとは新品は勿論のこと、使用済みのチャンバをオーバーホール(部品交換や内部浄化等)した再利用品(性能は新品と同様)も含む。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
図4に示すような交換周期でチャンバの交換を行った場合、オシレータチャンバ11はレーザショット数Lo毎にオシレータ10の劣化許容限度に達したものと判断されオーバーホール又は廃棄される。しかし、オシレータチャンバ11はオシレータ10の劣化許容限度には達しているものの、アンプ20の劣化許容限度には達していない。つまりダブルチャンバレーザ装置全体で見れば、オシレータチャンバ11は未だ用途がある。そうであるにも関わらず、オシレータチャンバ11をオーバーホール又は廃棄するということは、オーバーホールに関わる作業労力を浪費しまた交換部品を浪費しているといえる。
【0019】
本発明はこうした実状に鑑みてなされたものであり、オシレータおよび少なくとも1台のアンプを備えた多段増幅型レーザ装置でオシレータおよびアンプのチャンバを効率よく利用することによって作業労力や交換部品を低減する(=コストを低減する)ことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
第1発明は、
オシレータのチャンバで生成された光が1以上のアンプレーザーのゲインを生成するチャンバで増幅される多段増幅型レーザ装置であって、オシレータおよびアンプのチャンバの構造が互いに共通であり、チャンバの劣化許容限度がオシレータと1以上のアンプで異なるようなレーザ装置のチャンバ交換方法において、
一定期間が経過するタイミングでオシレータおよび1以上のアンプのうちチャンバの劣化許容限度が低い箇所からチャンバaを取り外し、
当該チャンバaの代わりに新たなチャンバを取り付け、
オシレータおよび1以上のアンプのうちチャンバの劣化許容限度が低い箇所以外の箇所からチャンバbを取り外して当該チャンバbの代わりに前記チャンバaを取り付けること
を特徴とする。
【0021】
第2発明は第1発明において、
前記チャンバbの劣化許容限度は前記チャンバaの劣化許容限度の2倍以上の整数倍に設定可能である場合に、
前記チャンバaの劣化度が劣化許容限度に達するタイミングで前記チャンバaと前記チャンバbの交換を行うこと
を特徴とする。
【0022】
第3発明は第2発明において、
チャンバの劣化度はレーザショット数に比例しており、
前記チャンバaの劣化度が劣化許容限度となるレーザショット数に達するタイミングで前記チャンバaと前記チャンバbの交換を行うこと
を特徴とする。
【0023】
オシレータおよび少なくとも1台のアンプを備えた多段増幅型レーザ装置において、設計により各チャンバの劣化度の許容範囲がそれぞれ異なる。例えば、オシレータのチャンバはレーザショット数の増加に伴いオシレータにおけるチャンバの劣化許容限度に達したとしても、アンプにおけるチャンバの劣化許容限度には達していない。他の場合はアンプのチャンバはレーザショット数の増加に伴いアンプにおけるチャンバの劣化許容限度に達したとしても、オシレータにおけるチャンバの劣化許容限度には達していない、ということになる。更に他の場合は2台以上のアンプチャンバのいずれかがレーザショット数の増加に伴いアンプにおけるチャンバの劣化許容限度に達したとしても、他のアンプにおけるチャンバの劣化許容限度には達していない、ということになる。
【0024】
以下ではMOPO型レーザを例にしてアンプにおけるチャンバの劣化度の許容範囲が、オシレータにおけるチャンバの劣化度の許容範囲よりも大きい場合を説明する。例えば、オシレータにおけるチャンバの劣化許容限度がレーザショット数にしてLoであり、アンプにおけるチャンバの劣化許容限度がレーザショット数にして2Lo(=La)である場合に、オシレータのチャンバは、オシレータにおけるチャンバの劣化許容限度に達したとしても、アンプにおけるチャンバの劣化許容限度までレーザショット数にしてLo分の余裕がある。
【0025】
また、例えば、オシレータにおけるチャンバの劣化許容限度がレーザショット数にしてLoであり、アンプにおけるチャンバの劣化許容限度がレーザショット数にして3Lo(=La)である場合に、オシレータのチャンバは、オシレータにおけるチャンバの劣化許容限度に達したとしても、アンプにおけるチャンバの劣化許容限度までレーザショット数にして2Lo分の余裕がある。
【0026】
そこで、一定期間が経過するタイミングでオシレータおよびアンプのチャンバを交換する際に、オシレータには常に新たなチャンバを取り付け、アンプにはオシレータから取り外したチャンバを取り付ける。こうしてオシレータで使用したチャンバの劣化度の余裕分をアンプで消費する。
【0027】
また、nLo=La(nは2以上の整数)となる場合には、オシレータにてチャンバの劣化度がオシレータの劣化許容限度となるレーザショット数に達するタイミングでオシレータおよびアンプにおけるチャンバの交換を行うようにする。
【0028】
以上の説明の例とは逆に、オシレータにおけるチャンバの劣化度の許容範囲が、アンプにおけるチャンバの劣化度の許容範囲よりも大きい場合には、以上の説明と同様に一定期間が経過するタイミングでオシレータおよびアンプのチャンバを交換する際に、アンプには常に新たなチャンバを取り付け、オシレータにはアンプから取り外したチャンバを取り付ける。こうしてアンプで使用したチャンバの劣化度の余裕分をオシレータで消費する。
【0029】
なお、ここでいう新たなチャンバとは新品は勿論のこと、使用済みのチャンバをオーバーホール(部品交換や内部浄化等)した再利用品も含む。再利用品でも新品チャンバと同様の性能を有する。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、チャンバの劣化度の許容範囲に応じてオシレータで使用したチャンバの劣化度の余裕分をアンプで消費する。あるいはアンプで使用したチャンバの劣化度の余裕分をオシレータで消費する。あるいはアンプで使用したチャンバの劣化度の余裕分を他のアンプで消費する。したがって、従来のように劣化度に余裕があったチャンバをオーバーホールしたり廃棄したりする機会が必要最低限に抑えられるため、作業労力や交換部品を低減することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
【0032】
図1はMOPO方式のダブルチャンバレーザ装置の構成例を示している。
ダブルチャンバレーザ装置1は、光を生成し狭帯域化するオシレータ10と、オシレータ10から出力された光を増幅するアンプ20と、オシレータ10から出力されたレーザ光をアンプ20まで案内するビームステアリングモジュール30と、アンプ20から出力されたレーザ光を検出するモニタモジュール40と、レーザ装置外部へのレーザ光の出力と遮断を切り換えるシャッタ50と、を有する。
【0033】
オシレータ10はレーザガスを封入するオシレータチャンバ11を有する。オシレータチャンバ11にはチャンバ内部から外部にまたはチャンバ外部から内部に光の通過を自在にするウインドウ11a、11bが取り付けられている。オシレータチャンバ11の内部には互いに対向する一対の主放電電極やガス貫流ファンやガス冷却装置等、種々の機器が設けられている。
【0034】
オシレータチャンバ11のリア側のレーザ光路上には狭帯域化モジュール12が設けられ、オシレータチャンバ11のフロント側のレーザ光路上にはオシレータフロントミラー13が設けられる。狭帯域化モジュール12は、例えばプリズムビームエキスパンダやグレーティングといった狭帯域化素子等の光学素子を備える。狭帯域化モジュール12とオシレータフロントミラー13は光共振器を構成する。
【0035】
オシレータパルスパワーモジュール14はスイッチ素子や磁気圧縮回路を有し、図示しないコントローラからスイッチ素子に出力されるトリガ信号に応じて、充電エネルギーを磁気圧縮回路を介してオシレータチャンバ11内の主放電電極に供給する。
【0036】
アンプ20はレーザガスを封入するアンプチャンバ21を有する。アンプチャンバ21にはチャンバ内部から外部にまたはチャンバ外部から内部に光の通過を自在にするウインドウ21a、21bが取り付けられている。アンプチャンバ21の内部にはそれぞれ互いに対向する一対の主放電電極やガス貫流ファンやガス冷却装置等、種々の機器が設けられている。
【0037】
アンプチャンバ21のリア側のレーザ光路上にはアンプリアミラー22が設けられ、アンプチャンバ21のフロント側のレーザ光路上にはアンプフロントミラー23が設けられる。
【0038】
アンプパルスパワーモジュール24はスイッチ素子や磁気圧縮回路を有し、図示しないコントローラからスイッチ素子に出力されるトリガ信号に応じて、充電エネルギーを磁気圧縮回路を介してアンプチャンバ21内の主放電電極に供給する。
【0039】
オシレータ10に設けられるオシレータチャンバ11の構造とアンプ20に設けられるアンプチャンバ21の構造は互いに共通する。
【0040】
ビームステアリングモジュール30は筐体の内部に1以上のミラーを有し、このミラーによってオシレータ10から出力されたレーザ光をアンプ20まで案内する。
【0041】
モニタモジュール40はビームスプリッタと光センサを有する。モニタモジュール40に入射したレーザ光はビームスプリッタで分割され、一方の光はモニタモジュール40の外部に出射し、他方の光は光センサに入射する。そして光センサの出力に応じて出力エネルギーやスペクトル幅等が求められる。
【0042】
シャッタ50は図示しないコントローラによって開閉を制御される。例えば半導体露光時に開かれ、調整発振時に閉じられる。
【0043】
ここでアンプ20よりもオシレータ10の方がチャンバの劣化許容限度が低く設定される場合を例にして本実施形態のチャンバの交換方法に関して説明をする。
図2は本実施形態の方法に係るチャンバの交換周期の態様(2Lo=Laのケース)を示している。図4と同様に、図2に示された“♯1”等の記号はオシレータ10およびアンプ20で使用されるチャンバ11、21の通し番号である。本実施形態の方法が従来の方法と最も異なるのは、オシレータ10で劣化許容限度に達したオシレータチャンバ11をアンプチャンバ21として使用する点である。以下で本実施形態に係るチャンバ交換の手順を説明する。
【0044】
先ず、全てのレーザ発振を行う前、すなわちレーザショット数が0の時点で、アンプ20にアンプチャンバ21(♯1)を取り付け、オシレータ10にオシレータチャンバ11(♯2)を取り付ける。
【0045】
レーザ発振を行いレーザショット数がLoに達すると、オシレータチャンバ11(♯2)の劣化度はオシレータチャンバ11の劣化許容限度に達する。そこでオシレータ10からオシレータチャンバ11(♯2)を取り外し、そこに新たなオシレータチャンバ11(♯3)を取り付ける。オシレータ10から取り外したオシレータチャンバ11(♯2)の劣化度は、オシレータチャンバ11の劣化許容限度に到達しているものの、アンプチャンバ21の劣化許容限度までレーザショット数にしてLo分の余裕がある。そこでアンプ20からアンプチャンバ21(♯1)を取り外し、そこにオシレータ10から取り外したオシレータチャンバ11(♯2)を取り付ける。そして、このオシレータチャンバ11(♯2)をアンプチャンバ21(♯2)として使用する。
【0046】
一方、アンプ20から取り外したアンプチャンバ21(♯1)の劣化度もアンプチャンバ21の劣化許容限度までレーザショット数にしてLo分の余裕がある。したがって、このアンプチャンバ21(♯1)は他のレーザ装置1で使用してもよいし、オーバーホールしてもよい。
【0047】
チャンバの交換作業終了後、さらにレーザ発振を行いレーザショット数が2Lo(=La)に達すると、オシレータチャンバ11(♯3)の劣化度はオシレータチャンバ11の劣化許容限度に達する。そこでオシレータ10からオシレータチャンバ11(♯3)を取り外し、そこに新たなオシレータチャンバ11(♯4)を取り付ける。オシレータチャンバ11(♯3)の劣化度は、オシレータチャンバ11の劣化許容限度に到達しているものの、アンプチャンバ21の劣化許容限度までレーザショット数にしてLo分の余裕がある。そこでアンプ20からアンプチャンバ21(♯2)を取り外し、そこにオシレータ10から取り外したオシレータチャンバ11(♯3)を取り付ける。そして、このオシレータチャンバ11(♯3)をアンプチャンバ21(♯3)として使用する。
【0048】
一方、アンプ20から取り外したアンプチャンバ21(♯2)はオシレータ10でLo、アンプ20でLo、の合計2Lo(=La)のレーザショット数を経ている。つまりこのアンプチャンバ21(♯2)の劣化度はアンプチャンバ21の劣化許容限度に達している。したがって、このアンプチャンバ21(♯2)はオーバーホールするか廃棄する。
【0049】
以降同様にして、レーザショット数がLo経過する毎に、オシレータ10およびアンプ20からチャンバ11、21を取り外し、オシレータ10に新たなオシレータチャンバ11(♯x)を取り付け、アンプ20にオシレータ10から取り外したオシレータチャンバ11(♯x−1)を取り付ける。つまりチャンバを“オシレータ10→アンプ20→オーバーホール”というサイクルで利用する。
【0050】
ところで、図2では2Lo=Laのケースを示したが、3Lo=Laというケースも考えられる。
3Lo=Laのケースの一交換例としては、レーザショット数がLo経過する毎に、オシレータ10およびアンプ20からチャンバ11、21を取り外し、オシレータ10に新たなオシレータチャンバ11(♯x)を取り付け、アンプ20にオシレータ10から取り外したオシレータチャンバ11(♯x−1)を取り付けるようにすればよい。この場合、アンプ20から取り外したアンプチャンバ21の劣化度はアンプチャンバ21の劣化許容限度までレーザショット数にしてLo分の余裕がある。したがって、このチャンバ21は他のレーザ装置1で使用してもよいし、オーバーホールしてもよい。
【0051】
3Lo=Laのケースの他の交換例としては、レーザショット数がLo経過する毎に、オシレータ10からオシレータチャンバ11を取り外し新たなオシレータチャンバ11を取り付け、一方レーザショット数が2Lo(初回のみ3Lo)経過する毎に、アンプ20からアンプチャンバ21を取り外しオシレータ10から取り外したオシレータチャンバ11を取り付けるようにしてもよい。
【0052】
ここまでは2Lo=La、3Lo=Laのケースを説明した。このようにレーザショット数Loとレーザショット数Laとの間には概ねnLo=La(nは2以上の整数)という関係に設定することができる。一方、nLo=Laの関係が成り立たない場合もあるが、こうした場合であっても少なくともLo≦Laという関係は成り立つように設計することができる。このLo≦Laという関係が成り立てば本発明の適用が可能である。
【0053】
本実施形態ではオシレータチャンバ11およびアンプチャンバ21が劣化許容限度に到達するタイミングでチャンバ交換作業を行うようにしているが、オシレータチャンバ11およびアンプチャンバ21が劣化許容限度に到達する前であればチャンバ交換作業を行うことは可能である。この場合は、作業管理の容易性を考慮すると、一定のレーザショット数を設定しておき、そのレーザショット数経過毎にチャンバ交換作業を行うことが好ましい。
【0054】
なお、本実施形態ではダブルチャンバレーザ装置におけるオシレータのチャンバとアンプのチャンバを交換する場合を説明したが、本発明はオシレータと複数のアンプを備えた多段チャンバレーザ装置にも適用可能である。この場合、オシレータから取り外したチャンバを複数あるうちの何れかのアンプに取り付けるか、あるいはいずれかのアンプから取り外したチャンバを他のアンプに取り付ければよい。また、本発明はリング方式のアンプを有するレーザ装置にも適用可能である。
【0055】
本実施形態によれば、オシレータで使用したチャンバの劣化度の余裕分をアンプで消費する。したがって、従来のように劣化度に余裕があったチャンバをオーバーホールしたり廃棄したりする機会が必要最低限に抑えられるため、作業労力や交換部品を低減することが可能になる。
【0056】
オシレータにおけるチャンバの劣化度の許容範囲が、アンプにおけるチャンバの劣化度の許容範囲よりも大きい場合は図2中のオシレータチャンバとアンプチャンバを入れ替えて以上の説明と全く同様にチャンバの交換を行う。
【0057】
以上MOPO方式レーザを例に説明してきたが、本発明を利用してMOPA方式のレーザにおいてもまったく同様にチャンバの交換を行うことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】MOPO方式のダブルチャンバレーザ装置の構成例を示す図。
【図2】本実施形態の方法に係るチャンバの交換周期の態様を示す図。
【図3】オシレータおよびアンプにけるチャンバの寿命の考え方を示す図。
【図4】従来の方法に係るチャンバの交換周期の態様を示す図。
【符号の説明】
【0059】
10 オシレータ
11 オシレータチャンバ
20 アンプ
21 アンプチャンバ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オシレータのチャンバで生成された光が1以上のアンプレーザーのゲインを生成するチャンバで増幅される多段増幅型レーザ装置であって、オシレータおよびアンプのチャンバの構造が互いに共通であり、チャンバの劣化許容限度がオシレータと1以上のアンプで異なるようなレーザ装置のチャンバ交換方法において、
一定期間が経過するタイミングでオシレータおよび1以上のアンプのうちチャンバの劣化許容限度が低い箇所からチャンバaを取り外し、
当該チャンバaの代わりに新たなチャンバを取り付け、
オシレータおよび1以上のアンプのうちチャンバの劣化許容限度が低い箇所以外の箇所からチャンバbを取り外して当該チャンバbの代わりに前記チャンバaを取り付けること
を特徴とするチャンバ交換方法。
【請求項2】
前記チャンバbの劣化許容限度は前記チャンバaの劣化許容限度の2倍以上の整数倍に設定可能である場合に、
前記チャンバaの劣化度が劣化許容限度に達するタイミングで前記チャンバaと前記チャンバbの交換を行うこと
を特徴とする請求項1記載のチャンバ交換方法。
【請求項3】
チャンバの劣化度はレーザショット数に比例しており、
前記チャンバaの劣化度が劣化許容限度となるレーザショット数に達するタイミングで前記チャンバaと前記チャンバbの交換を行うこと
を特徴とする請求項2記載のチャンバ交換方法。
【請求項4】
前記多段増幅型レーザ装置は、Master Oscillator Power Amplifier(MOPA)方式、あるいはこのMOPA方式にPower Amplifierをさらに1台または複数台追加した方式であること
を特徴とする請求項1記載のチャンバ交換方法。
【請求項5】
前記多段増幅型レーザ装置は、インジェクションロック方式、あるいはリング方式であること
を特徴とする請求項1記載のチャンバ交換方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−130598(P2008−130598A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−310317(P2006−310317)
【出願日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【出願人】(300073919)ギガフォトン株式会社 (227)
【出願人】(000001236)株式会社小松製作所 (1,686)
【出願人】(000102212)ウシオ電機株式会社 (1,414)
【Fターム(参考)】