説明

チャンバ装置およびそれを備える極端紫外光生成装置

【課題】レーザ光の安定性と制御性とを向上する。
【解決手段】チャンバ装置は、レーザ装置3と共に用いられるチャンバ装置であって、前記レーザ装置3から出力されるレーザ光31を内部に導入するための少なくとも1の入射口が設けられたチャンバ2と、前記レーザ装置3から出力される前記レーザ光31のビーム断面を拡大する拡大光学系50と、ビーム断面が拡大された前記レーザ光31を集光する集光光学系22と、を備えてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、チャンバ装置およびそれを備える極端紫外(EUV)光生成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体プロセスの微細化に伴って、半導体プロセスの光リソグラフィにおける転写パターンの微細化が急速に進展している。次世代においては、70nm〜45nmの微細加工、さらには32nm以下の微細加工が要求されるようになる。このため、たとえば32nm以下の微細加工の要求に応えるべく、波長13nm程度のEUV光生成装置と縮小投影反射光学系とを組み合わせた露光装置の開発が期待されている。
【0003】
EUV光生成装置としては、ターゲット物質にレーザ光を照射することによって生成されるプラズマを用いたLPP(Laser Produced Plasma)方式の装置と、放電によって生成されるプラズマを用いたDPP(Discharge Produced Plasma)方式の装置と、軌道放射光を用いたSR(Synchrotron Radiation)方式の装置との3種類の装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第7598509号明細書
【概要】
【0005】
本開示の一態様によるチャンバ装置は、レーザ装置と共に用いられるチャンバ装置であって、前記レーザ装置から出力されるレーザ光を内部に導入するための少なくとも1の入射口が設けられたチャンバと、前記レーザ装置から出力される前記レーザ光のビーム断面を拡大する拡大光学系と、ビーム断面が拡大された前記レーザ光を集光する集光光学系と、を備えてもよい。
【0006】
本開示の他の態様によるEUV光生成装置は、上記のチャンバ装置を備えてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0007】
本開示のいくつかの実施形態を、単なる例として、添付の図面を参照して以下に説明する。
【図1】図1は、例示的なレーザ生成プラズマ式EUV光生成装置の概略構成を示す。
【図2】図2は、本開示の実施の形態によるレーザ光のビーム拡大光学系および集光光学系を含むEUV光生成装置の一例を示す。
【図3】図3は、本実施の形態によるビーム拡大集光光学系の一例を示す。
【図4】図4は、本実施の形態によるビーム拡大集光光学系を用いたEUV光生成装置の一例を示す。
【図5】図5は、本開示の他の実施の形態によるビーム拡大集光光学系の一例を示す。
【図6】図6は、図5に示すビーム拡大集光光学系を用いたEUV光生成装置の一例を示す。
【図7】図7は、本開示のさらなる他の実施の形態によるビーム拡大集光光学系の一例を示す。
【図8】図8は、本開示の実施の形態によるアオリ機構の一例を示す斜視図である。
【図9】図9は、図7に示す集光位置調節機構の一例を示す。
【図10】図10は、図7に示す集光位置調節機構の変形例を示す。
【図11】図10は、図7に示す集光位置調節機構の変形例を示す。
【図12】図10は、図7に示す集光位置調節機構の変形例を示す。
【実施形態】
【0008】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら詳しく説明する。以下に説明される実施形態は、本開示の一例を示すものであって、本開示の内容を限定するものではない。また、各実施形態で説明される構成および動作の全てが本開示の構成および動作として必須であるとは限らない。なお、同一の構成要素には同一の参照符号を付して、重複する説明を省略する。
【0009】
以下、レーザ装置およびそれをと共に用いられるEUV光生成装置を、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の説明では、下記目次の流れに沿って説明する。
【0010】
目次
1.概要
2.用語の説明
3.EUV光生成装置
3.1 構成
3.2 動作
4.レーザ光のビーム拡大光学系および集光光学系を含むEUV光生成装置
4.1 構成
4.2 動作
4.3 課題の発見
5.ビーム拡大用の第1のミラーと集光用の第2のミラーとを組み合せた実施形態
5.1 構成
5.2 動作
5.3 作用
6.第1のミラーおよび第2のミラーを備えたEUV光生成チャンバの実施形態
6.1 構成
6.2 動作
6.3 作用
7.レーザ光の入射軸と集光軸とを一致させた光学系
7.1 構成
7.2 動作
7.3 作用
8.レーザ光の入射軸と集光軸とを一致させた光学系を備えるEUV光生成装置の実施形態
8.1 構成
8.2 動作
8.3 作用
9.アオリ機構付ミラーとの組合わせ
9.1 構成
9.2 動作
9.3 作用
10.補足説明
10.1 アオリ機構
10.2 集光位置調節機構
10.3 集光位置調節機構の変形例
【0011】
1.概要
レーザ生成プラズマ式EUV光生成装置におけるレーザ光の集光光学系は、その集光性能を向上させるために、高い開口数(NA)でレーザ光を集光する必要である。そこで、たとえばレーザ光のビーム断面積を拡大し、このビーム断面積が拡大されたレーザ光を集光ミラーによりターゲット上に集光することが考えられる。
【0012】
ただし、この場合、ビーム断面積を拡大するビーム拡大光学系およびレーザ光を集光するための集光光学系を配置するために所定のスペースが必要である。ビーム断面積を拡大する場合、ビーム拡大光学系および集光光学系の光路が長くなり、光学系全体が大型化する傾向にある。結果として、集光ビームの安定性および制御性が悪化する場合があった。
【0013】
2.用語の説明
つぎに、本開示において使用する用語について、以下のように定義する。「ドロップレット」とは、溶融したターゲット物質の液滴である。したがって、その形状は、表面張力によって略球形となる。「プラズマ生成領域」とは、プラズマが生成される空間として予め設定された3次元空間である。「ビーム拡大」とは、ビーム断面積を大きくすることをいう。
【0014】
3.EUV光生成装置の全体説明
3.1 構成
図1に例示的なLPP式EUV光生成装置1の概略構成を示す。EUV光生成装置1は、少なくとも1つのレーザ装置3と共に用いられてもよい(EUV光生成装置1およびレーザ装置3を含むシステムを、以下、EUV光生成システム11と称する)。図1に示し、かつ以下に詳細に説明するように、EUV光生成装置1は、チャンバ2を含んでもよい。チャンバ2は、密閉可能であってもよい。EUV光生成装置1は、ターゲット供給装置(例えばドロップレット生成器26)をさらに含んでもよい。ターゲット供給装置は、例えばチャンバ2の壁を貫通するように取り付けられていてもよい。ターゲット供給装置が供給するターゲット物質は、スズ、テルビウム、ガドリニウム、リチウム、キセノン、またはそれのいずれかの組合わせを含んでもよいが、これらに限定されない。
【0015】
さらに、チャンバ2の壁には、少なくとも1つの貫通孔が設けられていてもよい。その貫通孔にはウィンドウ21が設けられていてもよく、ウィンドウ21をレーザ装置3から出力されたパルスレーザ光32が透過してもよい。チャンバ2には、レーザ装置3によって発生したパルスレーザ光32が透過する少なくとも1つのウィンドウ21が設けられていてもよい。チャンバ2の内部には例えば、回転楕円面形状の反射面を有するEUV集光ミラー23が配置されてもよい。EUV集光ミラー23は、第1および第2の焦点を有する。EUV集光ミラー23は、その表面に、例えばモリブデンとシリコンとが交互に積層された多層反射膜が形成されていてもよい。EUV集光ミラー23は、例えば、その第1の焦点がプラズマが生成される領域(プラズマ生成領域25)またはその近傍に位置し、その第2の焦点が露光装置の仕様によって規定される所定の集光位置(中間焦点(IF)292)に位置するよう配置されるのが好ましい。EUV集光ミラー23の中央部には、パルスレーザ光33が通過することができる貫通孔24が設けられていてもよい。
【0016】
再び図1を参照に、EUV光生成システム11は、EUV光生成制御システム5を含むことができる。また、EUV光生成装置1は、ターゲットセンサ4を含むことができる。ターゲットセンサ4は、ターゲットの存在、軌道、位置の少なくとも1つを検出してもよい。ターゲットセンサ4は、撮像機能を有していてもよい。
【0017】
さらに、EUV光生成装置1は、チャンバ2内部と露光装置6内部とを連通する接続部29を含んでもよい。接続部29内部にはアパーチャを備えた壁291を設けてもよい。壁291は、そのアパーチャがEUV集光ミラー23の第2の焦点位置にあるように設けられてもよい。
【0018】
さらに、EUV光生成システム11は、レーザ光進行方向制御アクチュエータ34、レーザ光集光ミラー22、およびドロップレットターゲット27が回収されるターゲット回収部28などを含んでもよい。レーザ光進行方向制御アクチュエータ34は、レーザ光の進行方向を規定する光学素子と、この光学素子の位置および姿勢を調整するためのアクチュエータとを備えてもよい。
【0019】
3.2 動作
図1を参照に、レーザ装置3から出力されたパルスレーザ光31は、レーザ光進行方向制御アクチュエータ34を経てパルスレーザ光32としてウィンドウ21を透過してチャンバ2内に入射してもよい。パルスレーザ光32は、レーザ装置3から少なくとも1つのレーザ光経路に沿ってチャンバ2内に進み、レーザ光集光ミラー22で反射されてパルスレーザ光33として少なくとも1つのドロップレットターゲット27に照射されてもよい。
【0020】
ドロップレット生成器26は、ドロップレットターゲット27をチャンバ2内部のプラズマ生成領域25に向けて出力してもよい。ドロップレットターゲット27には、少なくとも1つのパルスレーザ光33が照射される。パルスレーザ光33が照射されたドロップレットターゲット27はプラズマ化し、そのプラズマからEUV光251を含む光が放射される。EUV光251は、EUV集光ミラー23によって反射されるとともに集光されてもよい。EUV集光ミラー23によって集光されたEUV光252は、中間焦点292を通過して露光装置6に出力されてもよい。なお、1つのドロップレットターゲット27に、複数のパルスレーザ光33が照射されてもよい。複数のパルスレーザ光が1つのドロップレットターゲット27に照射される場合、それらのパルスレーザ光の波長は異なっていてもよいし、それらのパルスレーザ光は異なるタイミングでドロップレットターゲット27に照射されてもよい。また、この場合、レーザ集光ミラー22は、複数のパルスレーザ光に共用されてもよいし、されなくてもよい。
【0021】
EUV光生成制御システム5は、EUV光生成システム11全体の制御を統括してもよい。EUV光生成制御システム5はターゲットセンサ4によって撮像されたドロップレットターゲット27のイメージデータ等を処理してもよい。EUV光生成制御システム5はまた、例えばドロップレットターゲット27を出力するタイミングの制御およびドロップレットターゲット27の出力方向の制御の少なくとも1つを行ってもよい。EUV光生成制御システム5はさらに、例えばレーザ装置3のレーザ発振タイミングの制御、パルスレーザ光31の進行方向の制御およびパルスレーザ光33の集光位置の制御の少なくとも1つを行ってもよい。上述の様々な制御は単なる例示に過ぎず、必要に応じて他の制御を追加することもできる。
【0022】
4.レーザ光のビーム拡大光学系および集光光学系を含むEUV光生成装置
つづいて、レーザ光のビーム拡大光学系および集光光学系を含むEUV光生成装置について、図面を参照して説明する。
【0023】
4.1 構成
図2は、レーザ光のビーム拡大光学系と集光光学系を含むEUV光生成装置の一例を示す。ただし、図2では、説明の簡略化のため、EUV光生成制御システム5およびターゲット撮像装置4は省略されている。
【0024】
プラズマ生成領域25にパルスレーザ光33を所望の大きさで集光するためには、レーザ装置3から出力されたパルスレーザ光31のビーム断面積を拡大することにより、高い開口数(NA)を確保して集光する必要がある。そこで図2に示すように、EUV光生成装置1は、たとえばビーム拡大光学系50および集光光学系としてのレーザ光集光ミラー22を備える。ビーム拡大光学系50は、たとえば球面の凸面ミラー52および球面の凹面ミラー53で構成されてもよい。凸面ミラー52および凹面ミラー53は、プレート51に調整可能に固定されていてもよい。
【0025】
4.2 動作
レーザ装置3から出力されたパルスレーザ光31は、レーザ光進行方向アクチュエータ34によってその進行方向が調整されて、ビーム拡大光学系50に入射する。レーザ光進行方向アクチュエータ34は高反射ミラーおよびその反射面の角度を調節するアクチュエータから構成されていてもよい。ビーム拡大光学系50では、まず、パルスレーザ光31が凸面ミラー52によって反射される。これにより、パルスレーザ光31のビーム断面積が拡大する。つづいて、パルスレーザ光31は、凹面ミラー53によって反射される。これにより、パルスレーザ光31は、略平行光のパルスレーザ光32となり、ビーム拡大光学系50から出力される。
【0026】
4.3 課題の発見
ただし、ビーム断面積を拡大する場合、ビーム断面積が拡大されたパルスレーザ光31を伝播させるための光学部品が大型化する。さらに、ビーム断面積が拡大されたパルスレーザ光を平行光として伝播させるのでビーム拡大光学系下流側の光路スペースも大きなものとなる。一方、チャンバ2は真空排気されるので排気効率の観点から容積が小さい方が好ましい。このため、ビーム拡大光学系および集光光学系を、チャンバ2内部に配置することができない場合がある。たとえば図2に示すように、ビーム拡大光学系50が大型化されて、集光光学系(たとえばレーザ光集光ミラー22)と分離されることがある。ビーム拡大光学系と集光光学系とが分離されると振動や熱により光学配置がずれやすくなる。結果として、このような光学系で伝播されたパルスレーザ光31をターゲットであるドロップレット27に集光する際に、パルスレーザ光33の安定性および制御性が悪化する場合がある。
【0027】
5.ビーム拡大用の第1のミラーと集光用の第2のミラーとを組み合わせた実施形態
そこで、ビーム拡大光学系と集光光学系とを1つのユニットとする。図3は、本実施の形態によるビーム拡大集光光学系150の一例を示す。
【0028】
5.1 構成
図3に示すように、ビーム拡大集光光学系150は、軸外放物面の凸面ミラー(第1のミラー)152および楕円面の凹面ミラー(第2のミラー)153を備えてもよい。凸面ミラー152は、たとえばビーム拡大光学系として機能する。凹面ミラー153は、たとえば集光光学系として機能する。凸面ミラー152および凹面ミラー153は、凸面ミラー152の軸外放物面を延長した放物線E2の焦点と、凹面ミラー153の反射面を延長した楕円E1の焦点とが、ともに焦点F1で一致するよう配置されるのが好ましい。ただし、放物線E2の対称軸と楕円E1の長軸とは、たとえば45度で交差するのが好ましい。
【0029】
凸面ミラー152は、たとえばミラーホルダ152aによってプレート151に調整可能に固定されていてもよい。同様に、凹面ミラー153は、たとえばミラーホルダ153aによってプレート151に調整可能に固定されてもよい。このように、ビーム拡大光学系と集光光学系とをユニット化できる。このプレート151は、たとえば移動可能なステージ160に固定されてもよい。ステージ160は、たとえばX,YおよびZ方向に移動可能である。さらに、θxおよびθy方向にも調整可能としてもよい。これにより、ビーム拡大光学系と集光光学系とをプレート151ごと、パルスレーザ光33のビーム軸と同じ方向(Z軸方向)、ならびに互いに直交するX軸方向およびY軸方向に移動させることができる。
【0030】
5.2 動作
レーザ装置3から出力されたパルスレーザ光31は、凸面ミラー152に45度の入射角度で入射する。凸面ミラー152で反射されたパルスレーザ光31は、そのビーム断面積が拡大されつつ、凸面ミラー152に対して45度の方向に配置された凹面ミラー153へ進行し、凹面ミラー153に45度の入射角度で入射する。凹面ミラー153は入射したパルスレーザ光31を、集光ビームであるパルスレーザ光33として反射する。反射されたパルスレーザ光33は、凹面ミラー153の楕円面のもう一方の焦点F2に集光される。この焦点F2は、空間的広がりを持つプラズマ生成領域25に含まれる。
【0031】
5.3 作用
以上のように、本実施の形態によるビーム拡大集光光学系150は、少ない光学素子で構成することが可能である。このため、コンパクトなビーム拡大集光光学系150を実現できる。この結果、集光ビームの安定性および制御性を改善できる。また、集光光学系へ入射するレーザ光のビーム軸のアライメントのみで集光光学系のビーム軸調整が可能であるため、ビーム拡大集光光学系150の配置や交換が容易である。
【0032】
6.第1のミラーおよび第2のミラーを備えたEUV光生成チャンバの実施形態
つづいて、図3に示すビーム拡大集光光学系150をEUV光生成装置に用いた場合を、図面を参照して説明する。図4は、ビーム拡大集光光学系150を用いたEUV光生成装置100の一例を示す。ただし、図4では、説明の簡略化のため、EUV光生成制御システム5およびターゲット撮像装置4は省略されている。また、レーザ光進行方向制御アクチュエータ34は、2つの高反射ミラー341および342で構成されているものとする。高反射ミラー341および342は、その反射面の角度を調整する図示しないアクチュエータによって入射するレーザ光の進行方向を制御してもよい。
【0033】
6.1 構成
図4に示すように、ビーム拡大集光光学系150は、チャンバ2内に配置することができる。この場合、凹面ミラー153が、レーザ光集光ミラー22の代わりとなる。
【0034】
6.2 動作
図4の構成において、レーザ装置3から出力されたパルスレーザ光31は、そのビーム断面積が拡大されることなく高反射ミラー341および342によって、チャンバ2のウィンドウ21を介してチャンバ2内に入射する。パルスレーザ光31は、チャンバ2内に入射後、凸面ミラー152に45度で入射して反射されることで、そのビーム断面積が拡大される。
【0035】
その後、パルスレーザ光31は、凹面ミラー153に45度で入射して反射されることで、プラズマ生成領域25でドロップレット27に集光される。この際、ステージ160をXYZ軸に沿って移動させることで、パルスレーザ光33が所望の集光位置に集光されるよう調整できる。
【0036】
6.3 作用
以上のような構成を備えることで、ビーム拡大光学系および集光光学系をチャンバ2内に配置できるため、パルスレーザ光31が入射するウィンドウ21を小さくすることが可能となる。
【0037】
7.レーザ光の入射軸と集光軸とを一致させた光学系
つぎに、ビーム拡大集光光学系の変形例を、図面を参照して説明する。図5は、他の実施の形態によるビーム拡大集光光学系150Aの一例を示す。
【0038】
7.1 構成
図5に示すように、ビーム拡大集光光学系150Aは、凸面ミラー152、凹面ミラー153、平面の高反射ミラー154および平面の高反射ミラー155で構成されてもよい。凸面ミラー152および凹面ミラー153は前述の実施の形態における凸面ミラー152および凹面ミラー153と同様の構成を備える。高反射ミラー154は、パルスレーザ光31の光路上で凸面ミラー152の上流側に配置される。高反射ミラー155は、パルスレーザ光31の光路上で、凸面ミラー152と凹面ミラー153との間に配置される。高反射ミラー154および155は、凸面ミラー152および凹面ミラー153と同様に、プレート151に調整可能に固定されている。
【0039】
ここで、上述のミラーは、高反射ミラー154に入射するパルスレーザ光31のビーム軸と、凹面ミラー153で反射されパルスレーザ光33のビーム軸とが略一致するよう配置されている。
【0040】
7.2 動作
レーザ装置3から出力されたパルスレーザ光31は、45度の入射角度で高反射ミラー154に入射して、45度の反射角度で反射される。そして、反射されたパルスレーザ光31は、凸面ミラー152に45度の入射角度で入射する。凸面ミラー152に入射したパルスレーザ光31は、45度の反射角度で反射されて、そのビーム断面積が拡大され、その後、45度の入射角度で高反射ミラー155に入射する。
【0041】
高反射ミラー155は、この入射したパルスレーザ光31を45度の反射角度で反射する。高反射ミラー155で反射されたパルスレーザ光31は、凹面ミラー153に45度の入射角度で入射する。その後、凹面ミラー153は、パルスレーザ光31を45度の反射角度で反射し、プラズマ生成領域25でドロップレット27に集光する。
【0042】
7.3 作用
以上の構成において、高反射ミラー154および凹面ミラー153は、高反射ミラー154に入射するパルスレーザ光31のビーム軸と、凹面ミラー153で反射されたパルスレーザ光33のビーム軸とが略一致するように、プレート151に調整可能に固定されている。そのため、パルスレーザ光33の焦点をXYZ軸方向に移動させる際の制御を、ビーム拡大集光光学系150Aをレンズに置き換えた場合の制御と同様の制御にすることができる。また、凸面ミラー152と凹面ミラー153との間に高反射ミラー155を介在させることで、パルスレーザ光31の光路を屈折させることができるため、小型のプレート151を使用することができる。この結果、ビーム拡大集光光学系150Aのコンパクト化が可能となる。
【0043】
8.レーザ光の入射軸と集光軸とを一致させた光学系を備えるEUV光生成装置の実施形態
つづいて、図5に示すビーム拡大集光光学系150AをEUV光生成装置に用いた場合を、図面を参照して説明する。図6は、ビーム拡大集光光学系150Aを用いたEUV光生成装置200の一例を示す。
【0044】
8.1 構成
図6に示すように、本実施の形態によるEUV光生成装置200では、凸面ミラー152、凹面ミラー153、高反射ミラー154および155が、プレート151の代わりに、ボックス151Aの内部に調整可能に固定されている。チャンバ2とボックス151Aとは、シールされたフレキシブル管158で接続されており、このフレキシブル管158を介して、パルスレーザ光33はチャンバ2内に入射する。また、ボックス151Aには、パルスレーザ光31が入射するウィンドウ156が設けられている。
【0045】
このボックス151Aは、プレート151と同様に、ステージ160によって、XYZ軸に沿って移動可能である。また、このボックス151Aは、チャンバ2をたとえば45度傾けた状態に固定するハウジング50の内部に配置されてもよい。
【0046】
8.2 動作
以上の構成において、レーザ装置3から出力されたパルスレーザ光31は、高反射ミラー342によって反射され、そのビーム断面積が拡大されることなく、ウィンドウ156を介してボックス151A内に入射する。パルスレーザ光31は、ボックス151A内に配置された高反射ミラー154、凸面ミラー152、高反射ミラー155および凹面ミラー153によって反射される。そして、凹面ミラー153によって反射されたパルスレーザ光33は、プラズマ生成領域25でドロップレット27に集光される。ここで、ボックス151Aを、ステージ160を用いてXYZ軸に沿って移動させることによって、パルスレーザ光33の集光位置を所望の位置に調整できる。
【0047】
8.3 作用
以上のように、ボックス151Aとチャンバ2との間がフレキシブル管158で気密に接続されている。このため、ステージ160をチャンバ2内に配置することなしに、ビーム拡大集光光学系150Aを移動させることができる。この結果、ステージ160からの汚染物質がチャンバ2内を汚染するのを抑制することができる。また、ステージ160は真空対応ステージでなくともよいので低コストで構成できる。
【0048】
9.アオリ機構付ミラーとの組合わせ
つづいて、ビーム拡大集光光学系のさらなる他の実施の形態を、図面を参照して説明する。図7は、本実施の形態によるビーム拡大集光光学系150Bの一例を示す。
【0049】
9.1 構成
図7に示すように、ビーム拡大集光光学系150Bは、凸面ミラー152、凹面ミラー153およびアオリ機構157aが接続された平面ミラー157から構成されてもよい。平面ミラー157は、凹面ミラー153とその焦点との間に配置されている。凸面ミラー152、凹面ミラー153および平面ミラー157は、プレート151に不図示のホルダを用いて調整可能に固定されている。平面ミラー157は、凹面ミラー153で反射されたパルスレーザ光が45度の入射角角度で平面ミラー157に入射し、その入射したパルスレーザ光が45度の反射角度で反射されて焦点F2a集光されるように配置されるのが好ましい。この焦点F2aは、プラズマ生成領域25に含まれる。
【0050】
また、レーザ装置3と凸面ミラー152との間の光路上には、パルスレーザ光33の集光位置を調節可能な集光位置調節機構60が配置されている。
【0051】
9.2 動作
以上の構成において、レーザ装置3から出力されたパルスレーザ光31は、レーザ光進行方向制御アクチュエータ34を介して集光位置調節機構60に入射する。集光位置調節機構60は、たとえばプラズマ生成領域25での集光点のX軸方向の位置を調節するために、パルスレーザ光31の波面の曲率を調節してもよい。波面の曲率が調節されたパルスレーザ光31は、チャンバ2のウィンドウ21を介してチャンバ2内に入射する。
【0052】
その後、パルスレーザ光31は、凸面ミラー152および凹面ミラー153を介して、平面ミラー157に入射する。平面ミラー157は、X軸方向の角度θxおよびY軸方向の角度θyが調節可能なアオリ機構157aによって、その反射面の向きが制御されるようにしてもよい。
【0053】
9.3 作用
以上のように、平面ミラー157にアオリ機構157aを設けることで、平面ミラー157の焦点F2aをX軸およびY軸方向に移動させることが可能となる。この結果、ステージ160を省略することが可能となるため、ビーム拡大集光光学系150Bのさらなるコンパクト化が可能となる。さらに、ビーム拡大集光光学系150Bの光学素子が固定されるプレート151をチャンバ2に対して固定できる。その結果、パルスレーザ光33のビーム軸が安定する。
【0054】
10.補足説明
10.1 アオリ機構
ここで、図7に示すビーム拡大集光光学系150Bにおけるアオリ機構157aの一例を、図面を参照して説明する。図8は、アオリ機構157aの一例を示す斜視図である。図8に示すように、アオリ機構157aは、平面ミラー157が固定されるホルダ1571およびたとえば3つの自動マイクロメータ1572〜1574を備える。ホルダ1571を自動マイクロメータ1572〜1574を介してプレート151に取り付けることで、ホルダ1571に固定された平面ミラー157のX軸方向の角度θxおよびY軸方向の角度θyの調節が可能である。
【0055】
10.2 集光位置調節機構
つぎに、図7に示す集光位置調節機構60の一例を、図面を参照して説明する。図9は、集光位置調節機構60の一例を示す。図9に示すように、集光位置調節機構60は、高反射ミラー61および62ならびに軸外放物面凹面ミラー63および65を含む。高反射ミラー62および軸外放物面凹面ミラー63は、たとえば高反射ミラー61および軸外放物面凹面ミラー65に対して移動可能なステージ64に固定されている。このステージ64を移動して軸外放物面凹面ミラー63と軸外放物面凹面ミラー65との距離を調節することで、入射したパルスレーザ光31の波面を所定の波面に調節することができる。
【0056】
10.3 集光位置調節機構の変形例
また、図7に示す集光位置調節機構60は、図10〜図12に示すようにも変形することができる。図10〜図12は、変形例による集光位置調節機構60Aの一例を示す。図10〜図12に示すように、集光位置調節機構60Aは、たとえば反射面の曲率を変更することが可能なデフォーマブルミラー66を用いて構成することができる。デフォーマブルミラー66は、たとえば反射面が平面である場合、図10に示すように、平行光で入射するパルスレーザ光31をそのまま平行光として反射する。また、たとえば反射面が凹面となるように曲率が調整されていた場合、図11に示すように、デフォーマブルミラー66は、平行光で入射するパルスレーザ光31を焦点距離が+F離れた焦点F12に集光されるように反射する。一方、たとえば反射面が凸面となるように曲率が調整されていた場合、図12に示すように、デフォーマブルミラー66は、平行光で入射するパルスレーザ光31を焦点距離−F離れた位置に焦点F13を持つようにビーム断面積が拡大されたパルスレーザ光として反射する。このように、反射面の曲率を変更可能なデフォーマブルミラー66を用いることで、入射光に対する反射光の波面を所定の波面に調節することが可能である。
【0057】
上記の説明は、制限ではなく単なる例示を意図したものである。従って、添付の特許請求の範囲を逸脱することなく本開示の実施形態に変更を加えることができることは、当業者には明らかであろう。
【0058】
本明細書および添付の特許請求の範囲全体で使用される用語は、「限定的でない」用語と解釈されるべきである。例えば、「含む」または「含まれる」という用語は、「含まれるものとして記載されたものに限定されない」と解釈されるべきである。「有する」という用語は、「有するものとして記載されたものに限定されない」と解釈されるべきである。また、本明細書、および添付の特許請求の範囲に記載される修飾句「1つの」は、「少なくとも1つ」または「1またはそれ以上」を意味すると解釈されるべきである。
【符号の説明】
【0059】
1 LPP式EUV光生成装置
2 チャンバ
3 レーザ装置
4 ターゲット撮像装置
5 EUV光生成制御システム
6 露光装置
21 ウィンドウ
22 レーザ光集光ミラー
23 EUV集光ミラー
24 貫通孔
25 プラズマ生成領域
26 ドロップレット生成器
27 ドロップレット(ドロップレットターゲット)
28 ターゲット回収器
29 接続部
291 壁
292 中間焦点(IF)
31 パルスレーザ光
32 パルスレーザ光
33 パルスレーザ光
34 レーザ光進行方向制御アクチュエータ
341、342 高反射ミラー
50 ビーム拡大光学系
51 プレート
52 凸面ミラー
53 凹面ミラー
150、150A、150B ビーム拡大集光光学系
151 プレート
151A ボックス
152 凸面ミラー
152a、153a ミラーホルダ
153 凹面ミラー
154、155 高反射ミラー
156 ウィンドウ
157 平面ミラー
157a アオリ機構
1571 ホルダ
1572〜1574 自動マイクロメータ
158 フレキシブル管
160 ステージ
E1 楕円
E2 放物線
F1、F1a、F2、F2a、F11、F12、F13 焦点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ装置と共に用いられるチャンバ装置であって、
前記レーザ装置から出力されるレーザ光を内部に導入するための少なくとも1の入射口が設けられたチャンバと、
前記レーザ装置から出力される前記レーザ光のビーム断面を拡大する拡大光学系と、
ビーム断面が拡大された前記レーザ光を集光する集光光学系と、
を備えるチャンバ装置。
【請求項2】
前記拡大光学系および前記集光光学系は、前記チャンバ内に配置される、請求項1記載のチャンバ装置。
【請求項3】
前記チャンバには、該チャンバと連通する筐体が併設され、
前記拡大光学系および前記集光光学系は、前記筐体内に配置される、
請求項1記載のチャンバ装置。
【請求項4】
前記拡大集光光学系および前記集光光学系は、1つのプレート上に配置される、請求項1記載のチャンバ装置。
【請求項5】
前記プレートを移動させる移動機構を含む、請求項4記載のチャンバ装置。
【請求項6】
前記拡大光学系は、軸外放物面の凸面ミラーで構成され、
前記集光光学系は、楕円面の凹面ミラーで構成され、
前記拡大光学系および前記集光光学系は、該凸面ミラーの焦点位置と該凹面ミラーの第1の焦点位置とが略一致するように配置される、
請求項1記載のチャンバ装置。
【請求項7】
前記拡大光学系は、軸外放物面の凸面ミラーで構成され、
前記集光光学系は、楕円面の凹面ミラーと平面ミラーとで構成され、
前記拡大光学系および前記集光光学系は、該凸面ミラーの焦点位置と該凹面ミラーの第1の焦点位置とが略一致し、該平面ミラーが該凹面ミラーの反射面と該凹面ミラーの第2の焦点位置との間で該平面ミラーの反射面が該凹面ミラーの反射面に向くように配置される、
請求項1記載のチャンバ装置。
【請求項8】
前記拡大光学系は、軸外放物面の凸面ミラーと少なくとも1つの平面ミラーとで構成され、
前記集光光学系は、楕円面の凹面ミラーで構成され、
前記拡大光学系および前記集光光学系は、該平面ミラーが該凹面ミラーの反射面と該凹面ミラーの第1の焦点位置との間で該平面ミラーの反射面が該凹面ミラーの反射面に向くように、かつ該凸面ミラーの焦点位置と該平面ミラーによって転写される該凹面ミラーの第1の焦点位置とが略一致するように配置される、
請求項1記載のチャンバ装置。
【請求項9】
請求項1〜8いずれか一項記載のチャンバ装置を備える極端紫外光生成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−160565(P2012−160565A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−19024(P2011−19024)
【出願日】平成23年1月31日(2011.1.31)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成19年度新エネルギー・産業技術総合開発機構「極端紫外線(EUV)露光システムの開発」に関する委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願)
【出願人】(000001236)株式会社小松製作所 (1,686)
【出願人】(300073919)ギガフォトン株式会社 (227)
【Fターム(参考)】