説明

チュアブル錠の製造方法

【課題】食感及び風味が良好で低分子量のコラーゲンペプチドを高配合したチュアブル錠の製造方法を提供する。
【解決手段】チュアブル錠の製造方法であって、前記チュアブル錠全質量の25質量%以上の、平均分子量1000以下のコラーゲンペプチドと、前記チュアブル錠全質量の1質量%以上の、還元性末端を有する多糖とを含む原料組成物を、70℃〜100℃の温度条件下で造粒すること、を含む当該製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チュアブル錠の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コラーゲンは、ゼラチンとして食品分野で従来から用いられている動物性タンパク質であるが、真皮や結合組織などの主成分であることから、近年、医療分野や美容分野の面からも特に注目を集めている。例えば、コラーゲンを多く摂取することによって、膝や腰などの関節痛が緩和すると考えられている。このため、機能性の高いコラーゲンを多く含む製品が開発されており、簡便に摂取できるなど観点から錠剤やチュアブル錠の製品も提案されている(例えば、特許文献1及び2)。
【0003】
特に口内で崩壊させることにより摂取するチュアブル錠の場合、コラーゲンペプチドの効果を高めるため高配合すると、歯付きが多くなり、噛み砕き難く、口あたりがねっとりとすることが知られている。このような食感を改良するために、例えば特許文献3では、コラーゲンペプチドの分子量を4000以下にすると共に、65モル%以上のグリシンをN末端ペプチドとして含有する特定のコラーゲンペプチドを使用することを提案している。
【0004】
一方、コラーゲンは、ゼラチン様の不快臭とコラーゲン独特の不快味を有するため、食品にそのまま配合すると、食品そのものの美味しさや香りを損なうことが知られている。このような不快な味又は香りをマスキングするため、例えば、特許文献4では、スクラロースを含有するマスキング剤を配合したコラーゲン含有可食性製品が開示されており、ゼラチン加水分解物の3重量%水溶液にスクラロースを配合することにより、コラーゲン特有の付加臭及び嫌味が有意にマスキングできると記載されている。
【0005】
しかしながら、口解けが良く、歯付きの少ない食感に優れたチュアブル錠を調製するために、平均分子量が1000以下のような低分子量のコラーゲンペプチドを高配合すると、苦みの原因となる末端アミノ酸が増えるため、スクラロースなどのマスキング剤による苦みの低減効果は充分でなく風味が損なわれる。特に、チュアブル錠のような口内で崩壊する製品では、より高いマスキング効果が要求されるが、錠剤としての大きさ等の点からマスキング剤の量を増やすこともできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−48789号公報
【特許文献2】国際公開2006/090544号パンフレット
【特許文献3】特開2008−118962号公報
【特許文献4】国際公開00/24273号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って本発明の目的は、食感及び風味が良好な、低分子量のコラーゲンペプチドを高配合したチュアブル錠の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は以下のとおりである。
[1] チュアブル錠の製造方法であって、前記チュアブル錠全質量の25質量%以上の、平均分子量1000以下のコラーゲンペプチドと、前記チュアブル錠全質量の1質量%以上の、還元性末端を有する多糖とを含む原料組成物を、70℃〜100℃の温度条件下で造粒すること、を含むチュアブル錠の製造方法。
[2] 前記多糖が、糖単位の重合度が50以下のものである[1]記載のチュアブル錠の製造方法。
[3] 前記多糖がデキストリンである[1]又は[2]に記載のチュアブル錠の製造方法。
[4] 前記多糖の量が、前記コラーゲンペプチド1質量部に対して0.01〜0.5質量部である[1]〜[3]のいずれかに記載のチュアブル錠の製造方法。
[5] 前記原料組成物の造粒物を更に打錠することを含む[1]〜[4]のいずれかに記載のチュアブル錠の製造方法。
[6] 前記チュアブル錠の硬度が錠剤硬度計による測定で50N以上90N以下である[1]〜[5]のいずれかに記載のチュアブル錠の製造方法。
[7] 前記チュアブル錠の水分含有率が5質量%以下である[1]〜[6]のいずれかに記載のチュアブル錠の製造方法。
[8] N−アセチルグルコサミンを30質量%以上含有する[1]〜[7]のいずれかに記載のチュアブル錠の製造方法。
[9] [1]〜[8]のいずれかに記載の製造方法により得られたチュアブル錠。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、食感及び風味が良好で低分子量のコラーゲンペプチドを高配合したチュアブル錠の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明のチュアブル錠の製造方法は、前記チュアブル錠全質量の25質量%以上の、平均分子量1000以下のコラーゲンペプチドと、前記チュアブル錠全質量の1質量%以上の、還元性末端を有する多糖とを含む原料組成物を、70℃〜100℃で造粒すること、を含む製造方法である。
【0011】
本発明によれば、原料組成物を造粒する際、チュアブル錠全質量の25質量%以上の平均分子量1000以下の低分子量コラーゲンペプチドと、1質量%以上の還元性末端を有する多糖とが、70℃〜100℃の温度条件に供されるので、低分子量コラーゲンペプチドを構成するアミノ酸残基に対して還元性末端を有する多糖が作用し、コラーゲンペプチドに由来する苦みや不快臭が低減すると推測される。このため、コラーゲンペプチドを高配合しても、良好な口溶けや噛み易さなどの食感を損なうことがなく、食感及び風味が良好な、低分子量コラーゲンペプチドを高配合したチュアブル錠を得ることができる。
以下に本発明を説明する。
【0012】
[原料組成物]
本発明で用いられるコラーゲンペプチドは、平均分子量1000以下の低分子量コラーゲンペプチドである。平均分子量1000を超えると、チュアブル錠としての食感を改善することなくコラーゲンペプチドを高配合することができない。チュアブル錠としての良好な食感の観点から、コラーゲンペプチドの平均分子量は800以下であることがより好ましく、700以下であることが更に好ましい。またコラーゲンペプチドの平均分子量は、味の観点や加熱処理を行うにあたっての栄養成分保護の観点で300以上であることが好ましく、400以上であることが更に好ましい。
【0013】
コラーゲンペプチドの平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて確認できる。即ち、GPCで平均分子量を求めるには、あらかじめ分子量が既知で異なる高分子:ポリエチレングリコール(PEG)数種を同条件で測定して得られたリテンションタイムと分子量の関係の検量線を元に算出すればよい。本発明における平均分子量とは、この手法に従ってPEG換算で算出した重量平均分子量を指す。
【0014】
コラーゲンペプチドは、ゼラチンを酵素や酸で加水分解して得られたものであり、グリシンを多く含むタンパク質であり、市販品としても入手可能である。コラーゲンとしては、哺乳類のコラーゲン組織から抽出したコラーゲンであっても、魚類のコラーゲン組織から抽出したコラーゲンであっても、特に限定されるものではない。近年、商品イメージや安全性等の観点から、魚類由来のコラーゲンであることが好ましい。魚類由来のコラーゲンの原料としては、海水魚であっても淡水魚であってもよく、マグロ(キハダ)、サメ、タラ、ヒラメ、カレイ、タイ、テラピア、サケ等の皮が挙げられる。哺乳類由来のコラーゲンの原料としては、ブタ、牛などが挙げられる。
【0015】
また、コラーゲンペプチドを構成するアミノ酸組成及びアミノ酸数については、上記分子量の範囲内であれば特に制限はなく、例えば、アミノ酸を3残基(ペプチド結合2個)有するコラーゲントリペプチドなど、ペプチド結合を2〜6個有するオリゴペプチドが挙げられる。
【0016】
本チュアブル錠におけるコラーゲンペプチドの含有量は、チュアブル錠全質量の25質量%以上であることを要する。25質量%未満では関節痛改善効果が充分でなく、関節痛改善効果及び1日当たりの摂取錠剤数低減の観点から、コラーゲンペプチドの含有量は25質量%以上であることがより好ましい。また、コラーゲンペプチドの含有量は口どけ、歯付き等の観点から50質量%以下であることが好ましく、35質量%以下であることがより好ましい。
本発明において還元性末端を有する多糖は、主として、コラーゲンペプチドの末端アミノ基に由来する不快臭や苦味又は渋みをマスキングして風味を改善するため用いられる。コラーゲンペプチドの構成アミノ酸残基と還元多糖との間で生じるアミノカルボニル反応により、風味が改善されると推測される。
【0017】
本発明で使用される多糖は、還元性末端を有する多糖である。このような還元性末端を有する多糖をとしては、水溶液中で還元性を有する多糖であればよい。還元性及び反能制御容易性の観点から、糖単位の重合度が3以上であることが好ましく、5以上であることが更に好ましい。また重合度は風味改善効果の観点から50以下であることが好ましく、30以下であることが好ましい。
還元性末端を有する多糖としては、例えば、デキストリン、マルトデキストリン、フラクトオリゴ糖、マルトオリゴ糖、イソマルトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖等が挙げられる。これらを単独で又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0018】
本チュアブル錠における上記還元性末端を有する多糖の含有量は、チュアブル錠全質量の1質量%以上であることを要する。1質量%未満では風味改善効果が充分でない。風味改善効果の観点から、還元性末端を有する多糖の含有量は1質量%以上であることがより好ましく、5質量%以上であることが更に好ましい。また、還元多糖の含有量は錠剤サイズアップにより飲み込み易さを悪化させない観点から10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましい。
【0019】
また還元性末端を有する多糖を、コラーゲンペプチド1質量部に対して0.01〜0.5質量部の範囲でチュアブル錠に含有されることが好ましい。このような多糖の量が、コラーゲンペプチド1質量部に対して0.01質量部未満の場合には、効果的な風味改善が期待できず、一方、0.5質量部を超えると錠剤の褐変等の好ましくない変化を生じやすくなる。また、甘味への影響が出たり、錠剤の大きさを飲み込みやすい大きさに維持しにくくなる。
【0020】
本発明において原料組成物は、上記コラーゲンペプチド及び上記還元性末端を有する多糖以外の他の成分を含むものであってもよい。このような成分としては、機能性成分、甘味料、バインダー(結合剤)を挙げることができる。
【0021】
機能性成分とは、生物体内に存在した場合に生体において所望の生理学的作用の発揮が記載され得る成分であり、例えば、リジン、プロリン、オルニチン等の追加アミノ酸が挙げられる。特にコラーゲン分子におけるリジン及びプロリンは、ヒドロキシル化などの修飾形態で含まれており、このような修飾形態では体内で利用できないことが知られている。本発明では、未修飾形態でリジン及びプロリンが添加されることにより、他のコラーゲンの構成成分と共に利用されて体内でのコラーゲンの生成効率が高まる。
【0022】
リジン及びプロリンは、アミノ酸特有の苦味を有するため、コラーゲンペプチドへの追加が困難であるが、造粒工程においてコラーゲンペプチドの不快な風味が低減されることに伴って、高配合が可能となる。リジン及びプロリンとしては、塩酸塩、リン酸塩などの無機酸塩、クエン酸塩、リンゴ酸塩、α−ケトグルタル酸、アスパラギン酸塩などの有機酸塩の形態であってもよい。オルニチンとしては、L−オルニチンおよびD−オルニチンが挙げられる。オルニチンは、化学的に合成する方法、発酵生産する方法等により取得したものであってもよく、市販品であってもよい。またオルニチンは、塩酸塩、リン酸塩などの無機酸塩、クエン酸塩、リンゴ酸塩、α−ケトグルタル酸、アスパラギン酸塩などの有機酸塩の形態であってもよい。
【0023】
添加成分としての追加アミノ酸の添加量は、特に制限はないが、コラーゲンペプチドの質量に対して0.01質量%〜50質量%であることがコラーゲンの生成効率および風味の観点から好ましく、0.1質量%〜30質量%であることが更に好ましい。
【0024】
この他の機能性成分としては、ミネラル;脂溶性又は水溶性ビタミン;機能性アミノ糖、機能性ムコ多糖類などを挙げることができる。
機能性アミノ糖としては、N−アセチルグルコサミンを好ましく挙げることができる。N−アセチルグルコサミンは、1日当たりの摂取量が500mg以上となるように配合することが好ましい。また、機能性ムコ多糖類としては、ヒアルロン酸、コンドロイチン又はコンドロイチン硫酸などを挙げることができる。これらの機能性アミノ糖又は機能性ムコ多糖類は、主要な軟骨成分又はその原料であり、例えば肌において高い保水性を有し、弾力性に寄与していると考えられている。このため、関節痛緩和効果、美肌効果等の観点から本チュアブル錠に含まれることが好ましい。特に、負担の少ない範囲の錠剤摂取量での関節痛改善の観点から、本チュアブル錠は、N−アセチルグルコサミンを、チュアブル錠の質量に対して20質量%以上含有することが好ましく、30質量%以上含有することが更に好ましい。
【0025】
本発明においては、唾液の浸透性を向上させ、錠剤の崩壊速度を増加するため多孔質の二酸化ケイ素をチュアブル錠全質量に対して1質量%以上含有させることが好ましい。1質量%以上であれば、初期の崩壊性が充分である。
【0026】
また、甘味料としては、不要な反応を生じないという観点、および少量で十分なマスキングが行える観点で、糖アルコール系甘味料、アミノ酸系の甘味料等の人工甘味料を使用することが好ましい。このような甘味料としては、例えば先味のマスキングとしてアセスルファムカリウム、中間領域のマスキングとしてスクラロース、後味のマスキングとしてネオテーム等が好ましく使用できる。その他、口どけ、清涼感向上の目的で、ソルビトールを5質量%以上程度含有することが好ましい。
【0027】
また賦形剤として、この目的で通常用いられているものを挙げることができ、例えば、上記の糖類、多糖類及び糖アルコールの他、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウムなどの無機塩;アラビアガム、グアーガム、ペクチン、プルラン、アルギン酸ナトリウムなどの増粘多糖類;デンプンにエステル化、エーテル化処理、末端還元処理を施したデンプン誘導体;その他に加工澱粉、寒天、ポリビニルアルコールなどが挙げられる。この中でも、溶解性の面から単糖、多糖類、糖アルコール、無機塩が好ましく、吸湿性、粒子形成性の観点から、アラビアガム、糖アルコール、無機塩が更に好ましい。これらは単独又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0028】
バインダーとしては、特に制限はないが、所望の粒子径、粒子径分布の顆粒を得ること及び反応程度制御観点から、上記還元性末端を有する多糖以外にも、他の糖類及び増粘多糖類等を挙げることができ、これらを単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができ、好ましくは、平均分子量数が大きく還元性をほとんど示さないグアーガム、プルラン、アラビアガム又はこれら1つ以上の組み合わせを使用することができる。
【0029】
香料としては特に制限はないが、ピーチ香料、ミルク香料、抹茶香料又はコーヒー香料などを挙げることができる。これらは単独で又は2つ以上を組み合わせて使用してもよい。
【0030】
このほか、一般に飲食品に用いられる添加剤、例えば、滑沢剤、着色料、保存料、増粘安定剤、酸化防止剤、発色剤、漂白剤、防かび剤、ガムベース、苦味料、酵素、光沢剤、酸味料、調味料、乳化剤、強化剤、製造用剤、香辛料抽出物等が添加されてもよい。
これらの成分は、単独で又は2つ以上を組み合わせ使用してもよい。
【0031】
[チュアブルの製造]
本発明のチュアブル錠の製造は、上記コラーゲンペプチドと上記還元性末端を有する多糖とを含む原料組成物を、70℃〜100℃の温度条件下で造粒することを含む。
70〜100℃の温度条件下で原料組成物を造粒することによって、低分子量コラーゲンペプチドに起因した苦み又は渋みといった風味を改善することができる。
【0032】
なお、本発明において造粒とは、粉末状の原料組成物が混合して互いに結合して、所定の大きさ及び形状の粒状物(顆粒)となることを意味する。得られた造粒物としては、原料組成物としての大きさ及び形状と異なる大きさ又は形状であればよい。
【0033】
還元性末端を有する多糖は、この造粒時の加熱によって、コラーゲンペプチドの風味を改善するため、造粒時にコラーゲンペプチドと還元性末端を有する多糖とが原料組成物に含まれていることを要する。両者は造粒中に共存することが重要である。還元性末端を有する多糖は、造粒中にコラーゲンペプチドと共存していればよく、系内への添加順序に特に制限はない。還元性末端を有する多糖をコラーゲンペプチドと予め混合してから上記加熱温度下で造粒を行ってもよく、造粒時のバインダーとして系内に導入しながら造粒を行ってもよい。
【0034】
本造粒における加熱温度が70℃未満の場合は、実際的に許容される製造工程時間内での風味改善が困難となる上、所望の形状及びサイズに粒子化できず、一方、100℃を超える場合は、反応の進行速度が速まって風味改善の調節が困難となる上、所望の形状に粒状物とならない。
造粒の温度は、所望の粒子化を達成すると共に、風味改善のための反応を安定に進め、かつ適切な程度に調節する観点から75℃〜95℃であることが好ましく、80℃〜90℃であることがより好ましい。
【0035】
造粒の時間は、所望の形状に顆粒化するために一般に、0.01時間〜3時間とし、風味改善及び副生成物発生抑制等の観点から、0.1時間〜2時間以内でことが好ましく、0.2時間〜1時間であることが好ましく、0.3時間〜1.0時間であることがより好ましい。
【0036】
造粒は、原料組成物(粉体)又はその一部を混合して、得られた混合物を上記温度条件下で加熱し、乾燥することにより行われる。造粒方法としては、撹拌造粒、押出し造粒、流動層造粒等を挙げることができるが、生産性の観点から流動層造粒であることが好ましい。加熱手段としては、原料組成物が上記温度条件となるように装置内部を加熱できる手段であれば特に制限はない。
【0037】
造粒では、バインダーを含有するバインダー液を使用することが好ましい。バインダー液は、粉末状の原料組成物に噴霧により付着させることが好ましい。バインダーとしては上述した成分を挙げることができる。バインダー液を構成するための溶媒としては、水性溶媒であればよく、水、エタノール等を挙げることができる。バインダー液におけるバインダーの含有量は、一般に0.1質量%〜1質量%が好ましく適用できる。
【0038】
造粒時に用いられるバインダー液は、所望の形状及び造粒効率の観点から、原料組成物1質量部に対して10質量部〜20質量部であることが好ましい。
【0039】
乾燥は、噴霧終了後、至適水分含量となるまで行う。この場合の水分含量としては、後述する最終チュアブル錠の水分含量と必ずしも同一である必要はなく、乾燥工程後の製造工程の有無及びその種類に基づいて設定することができる。
乾燥工程後の造粒物における水分含量は、一般に2質量%〜4質量%であり、打錠までやその後の製品形態への包装工程までの間に吸湿することが一般的である。チュアブル錠の食感を維持する観点から造粒終了時の水分量はより低めの、2質量%〜3質量%としておくことが好ましい。乾燥条件としては、至適水分含量となるために通常用いられる条件であればよく、例えば、乾燥時間としては0.01時間〜2時間、造粒後の顆粒の再崩壊防止の観点から好ましくは0.02時間〜1時間が適用される。
これら一連の造粒工程で得られた造粒物の大きさについては、一般に、造粒物の投影面積の最大径として100μm〜1000μmの粒状物であり、好ましくは150μm〜500μmの最大径を有する粒状物であるが、本発明では特に制限されない。
【0040】
本発明では、造粒工程によって得られた造粒物を、その後、所望の形状に成型するため打錠することが好ましい。これにより所望の大きさ及び形状のチュアブル錠に成型することができる。なお、造粒工程と打錠工程とは必ずしも明確に区別されていなくてよく、連続的に行うものであってもよい。打錠方法としては、この目的で一般に適用されている方法をそのまま適用すればよく、特に制限はない。また、打錠は、圧縮造粒のように、上述した造粒と一体的に行ってもよい。打錠時の温度としては、造粒後に別工程として行う場合には特に制限はなく、例えば20℃〜40℃のような通常の条件に従って行えばよい。
【0041】
また打錠の際には、造粒工程で添加されなかった原料組成物の残りがあれば、この残りの原料組成物を添加してもよい。
造粒後に添加が好ましい原料組成物としては、造粒中の香りの劣化を防止する観点から香料や、錠剤の打錠成型時に必要な原料である滑沢剤や結晶セルロース等が挙げられる。
本発明の製造方法では、必要に応じて更に他の工程を含んでもよい。
【0042】
本製造方法によって得られたチュアブル錠の形状としては、球状、ラグビー型、円盤状など、特に制限はない。口溶け感や飲み込み易さなどの観点から、最大径が10mm以下、好ましくは9mm以下の大きさであること、又は円盤状の形状であることが好ましく、これらの大きさと形状の組み合わせであることがより好ましい。また、平板状の形状である場合には、例えば6mm以下、好ましくは5.3mm以下の厚みとすることができる。
【0043】
本製造方法によって得られたチュアブル錠の硬度は、特に制限はないが、噛み易さ、口溶け、輸送安定性などの観点から、錠剤硬度計による測定で50N以上90N以下であることが好ましく、60N以上80N以下であることがより好ましい。錠剤硬度は、造粒後の粉末を打錠する際の打錠圧を調節することによって適宜調整可能である。
【0044】
本製造方法によって得られたチュアブル錠の水分含有率は、特に制限はないが、噛み易さ、口溶けなどの観点から、絶乾法による測定で5質量%以下であることが好ましく、2以上4質量%以下であることがより好ましい。本発明における絶乾法とは、測定すべきサンプルを密閉容器に採取し、密栓して合計質量を測定し、その後、開栓してサンプルの入った容器を乾燥機に入れ、105℃で4時間乾燥させた後、乾燥機から取り出し、直ちに密栓して室温まで冷却して、再度密栓して合計質量を測定し、この乾燥前後の質量変化により示された値とする。錠剤の水分含有率は、原料粉末を造粒後の乾燥温度、時間、粉末および錠剤取り扱い時の湿度環境等を制御することによって適宜調整可能である。
【0045】
またチュアブル錠の形状としては、通常適用される形状であれば特に制限はなく、円盤状、ラグビー型、等を挙げることができる。ラグビー型は噛み砕き易さに優れているが、飲み込み易さとの両立の観点から、円盤状が好ましい。
【0046】
チュアブル錠の良好な風味については、官能検査の他コラーゲンペプチドとデキストリンとの反応による反応生成物が含有されており、この反応生成物の存在は、コラーゲンペプチドの構造解析、糖の検出、色素計、ニンヒドリン呈色反応などを用いて確認可能である。
【実施例】
【0047】
以下、本発明を実施例にて詳細に説明するが、本発明はそれらに何ら限定されない。なお、特に断りのない限り、「%」及び「部」は質量基準である。
【0048】
[実施例1]
原料組成物として、下記粉末成分Iを、流動層造粒機(フローコーター、フロイント産業社製)に入れ、熱風温度85℃で加熱混合しながら、グアーガム0.3質量%のバインダー液15.4%w/wで噴霧し、造粒した。
得られた造粒物に、下記粉末成分IIを更に混合し、得られた混合粉体をロータリー式打錠機にて、打錠し、質量300mg、直径9mmの円盤状のチュアブル錠としての錠剤Aを得た。得られた錠剤Aの硬度は、錠剤硬度計(OKADA SEIKO CO.,LTD製「PC-30 PORTABLE CHEKER」)による測定で平均68.6Nであり、水分含量は105℃4時間乾燥前後の質量変化による測定で平均2.6質量%であった。
【0049】
(粉末成分I)
コラーゲンペプチド(魚由来)
(平均分子量700) 80質量部
L−プロリン 6.0質量部
L−リジン塩酸塩 4.0質量部
N−アセチルグルコサミン 100質量部
デキストリン 15質量部
サメ軟骨抽出物 15質量部
ヒアルロン酸 10質量部
ソルビトール 18.2質量部
アセルスファムK 0.1質量部
スクラロース 0.35質量部
ネオテーム希釈物 0.35質量部
微粒二酸化ケイ素 3.0質量部
【0050】
(粉末成分II)
結晶セルロース 30質量部
ミルク香料 12質量部
ステアリン酸カルシウム 6.0質量部
【0051】
なお、原料組成物としての使用したデキストリンは一分子に一つの還元性末端を有する重合度8程度の直鎖デキストリンであった。
【0052】
[実施例2〜11、比較例1〜4]
各成分を表1及び表2記載の配合量とした以外は実施例1と同様にして、チュアブル錠として錠剤B〜Pを得た。得られた錠剤B〜Pの質量、形状、硬度及び水分含量は表1及び表2に示す通りである。なお、表1及び表2において、各成分の配合量は質量部を表す。
【0053】
[比較例5]
造粒工程を行わず、全粉体成分を混合し、均一混合後に直接実施例1と同様の条件で打錠した以外は実施例1と同様にして、チュアブル錠としての錠剤Qを得た。得られた錠剤Qの質量、形状、硬度及び水分含量は表1及び表2に示す通りである。なお、表1及び表2において、各成分の配合量は質量部を表す。
【0054】
<評価試験>
(1)チュアブル錠の風味及び食感評価
実施例1〜12及び比較例1〜5で得られた錠剤A〜Qを口内で崩壊させたときの風味又は食感について、被験者10人によって、以下のように評価した。結果を表1及び表2に示す。
i)風味(苦み又は渋み)
○:苦み又は渋みをほとんど感じないと評価した人が7人以上
△:苦み又は渋みをほとんど感じないと評価した人が4人以上6人以下
×:苦み又は渋みをほとんど感じないと評価した人が3人以下
ii)飲み込み易さ
○:飲み込みやすいと評価した人が7人以上
△:飲み込みやすいと評価した人が4人以上6人以下
×:飲み込みやすいと評価した人が3人以上
iii)噛み易さ、口溶け、歯付き
○:噛み易さ、口溶け、歯付きいずれも問題なしと判断した人が7人以上
△:噛み易さ、口溶け、歯付きいずれも問題なしと判断した人が4人以上6人以下
×:噛み易さ、口溶け、歯付きいずれも問題なしと判断した人が3人以下
【0055】
(2)機能性評価
実施例1、7,12及び比較例1、2で得られた錠剤A、G、L,M,Nについて、膝関節痛改善効果を、以下のようにして評価した。結果を表1及び表2に示す。
膝関節痛を抱えた30名の被験者を5名ずつ6グループに分け、1グループにはコラーゲンペプチド、L-プロリン、L−リジン塩酸塩、サメ軟骨抽出物、ヒアルロン酸を含有しないプラセボ錠を、あとの5グループには錠剤A、G、L、M、Nをそれぞれ1日あたり5錠、1ヶ月間摂取してもらい症状の改善に関してのヒアリングを行った。
○:5名中4名以上で改善効果感あり
△:5名中2〜3名で改善効果感あり
×:改善効果感5名中1名以下
【0056】
(3)錠剤輸送安定性評価
実施例1〜12及び比較例1〜5で得られた錠剤A〜Qについて、錠剤輸送安定性を、以下のようにして評価した。結果を表1及び表2に示す。
錠剤の摩損度を測定し、0.5%までを○、0.5〜0.7%までを△、0.7%以上を×で評価した。なお、摩損度は、各錠剤成型品を回転式摩損度測定装置の中に投入した後、一定回数回転させた後、回転終了後の錠剤質量を測定し、損失量を計量することで測定した。
【0057】
【表1】

【0058】
【表2】

【0059】
これらの結果から、本発明によれば、良好な風味及び食感を備え、低分子量のコラーゲンペプチドを高配合したコラーゲンペプチド含有チュアブル錠を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
チュアブル錠の製造方法であって、
前記チュアブル錠全質量の25質量%以上の、平均分子量1000以下のコラーゲンペプチドと、前記チュアブル錠全質量の1質量%以上の、還元性末端を有する多糖とを含む原料組成物を、70℃〜100℃の温度条件下で造粒すること、
を含むチュアブル錠の製造方法。
【請求項2】
前記多糖が、糖単位の重合度が50以下のものである請求項1記載のチュアブル錠の製造方法。
【請求項3】
前記多糖がデキストリンである請求項1又は請求項2記載のチュアブル錠の製造方法。
【請求項4】
前記多糖の量が、前記コラーゲンペプチド1質量部に対して0.01〜0.5質量部である請求項1〜請求項3のいずれか1項記載のチュアブル錠の製造方法。
【請求項5】
前記原料組成物の造粒物を更に打錠することを含む請求項1〜請求項4のいずれか1項記載のチュアブル錠の製造方法。
【請求項6】
前記チュアブル錠の硬度が錠剤硬度計による測定で50N以上90N以下である請求項1〜請求項5のいずれか1項記載のチュアブル錠の製造方法。
【請求項7】
前記チュアブル錠の水分含有率が5質量%以下である請求項1〜請求項6のいずれか1項記載のチュアブル錠の製造方法。
【請求項8】
N−アセチルグルコサミンを30質量%以上含有する請求項1〜請求項7のいずれかに記載のチュアブル錠の製造方法。
【請求項9】
請求項1〜請求項8のいずれか1項記載の製造方法により得られたチュアブル錠。

【公開番号】特開2011−147379(P2011−147379A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−10347(P2010−10347)
【出願日】平成22年1月20日(2010.1.20)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】