説明

チューナブル・アンテナの共振周波数を設定する方法および無線端末装置

【課題】無線WANに適応するチューナブル・アンテナの共振周波数を切り換える方法を提供する。
【解決手段】アンテナ100は、コンデンサ155a〜155dとコンデンサの同調回路151とを備える。カード・スロット22には、3Gカード23bまたは4Gカード23aの任意のいずれかの装着が可能である。カード・スロットに4Gカードが装着さえたときは4gカードが制御端子Cnt1、2から共振周波数に対応する論理値を出力する。3Gカードが装着されたときは、その識別子を認識したBIOSがチップ・セット19のGPIO1、2端子から共振周波数に対応する論理値を出力する。OR論理素子181、183は、カード・スロットまたはチップ・セットのいずれかから受け取った論理値を同調回路に出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線ネットワーク・カードがチューナブル・アンテナの共振周波数を設定する技術に関し、さらには規格の異なる無線ネットワーク・カードがチューナブル・アンテナを利用する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
ノートブック型携帯式コンピュータ(以下、ノートPCという。)は、Bluetooth(登録商標)、無線LAN、および無線WANなどの無線通信のために多数のアンテナを搭載する。ノートPCは、携帯電話の通信網を利用して構築された無線WANでデータの通信をする。北米における携帯電話用の周波数帯には、おもに3G(3rd Generation)のPCS(Personal Communications Service )バンドとセルラー・バンドが存在する。PCSは、1900MHz帯を使用している。セルラー・バンドは850MHz帯を使用していた。また、ヨーロッパにおける携帯電話用の周波数帯には、おもにGSM(登録商標)900/1800MHz帯およびUMTS2100MHz帯を使用していた。
【0003】
さらに700MHz帯では4G(4th generation)のLTE(Long Term Evolution)という通信規格に基づく携帯通信サービスが開始されている。米国では、Verizon Wireless社が750MHz帯(747MHzから787MHz)を使用し、AT&T社が700MHz帯(704MHzから746MHz)を使用したLTEのサービスを提供している。さらにヨーロッパではVodafone社が790MHz帯(790MHzから862MHz)を使用したLTEのサービスを提供している。
【0004】
特許文献1は、スイッチを利用して放射素子のリアクタンスを変更することにより共振周波数を変更することが可能なアンテナを開示する。共振周波数を変更するためのアクティブ素子を搭載したアンテナは一般的にチューナブル・アンテナといわれている。特許文献2は、BIOSがLANカードのIDを認識してアンテナとLANカードの組み合わせの適切性を判断してアンテナとLANカードの接続をオン/オフ制御する技術を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2010/106708号
【特許文献2】特開2003−318763号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
アンテナは共振周波数が低いほど素子長が長くなって大型化する。特に、LTEに要求されるような低くてかつ広帯域の周波数に適応するアンテナは一層大型になる。LTE全体の周波数帯は、低周波領域において700MHz帯から790MHz帯まで広がっている。ノートPCの小型化を図るには、LTEで使用する周波数帯ごとにアンテナを設けることは困難である。LTE全体の周波数帯は広いとしても、個々の無線通信会社が使用する周波数帯はそれほど広くはない。
【0007】
そして、チューナブル・アンテナのリアクタンスを切り換えてLTE全体の周波数帯を複数の無線通信会社ごとの周波数帯でカバーするように構成すると1つの小型のアンテナで対応できる。しかし、チューナブル・アンテナを使用する上では、ノートPCがその場所で使用する周波数帯を認識し自動的に対応するリアクタンス素子を決定して共振周波数を設定する必要がある。
【0008】
無線WANカードには、3Gに対応する3G無線WANカード(以下、3Gカードという。)と4Gに対応する4G無線WANカード(以下、4Gカードという。)が存在している。米国やヨーロッパではLTEおよび3Gの複数の周波数帯のサービスを提供している。ノートPCは、これから接続しようとする無線基地局がどの周波数帯を利用しているかをBIOSやデバイス・ドライバでは直接認識することができない。したがって4Gカードには、無線基地局からのパイロット信号をスキャンして当該無線基地局との間の通信を通じて使用する周波数帯を認識しチューナブル・アンテナの共振周波数を設定する機能を設けている。
【0009】
LTEに対応したノートPCを米国に出荷する際には4Gカードを搭載する必要がある。4Gカードは3Gの周波数帯にも対応している。3Gカードには、4Gカードがサポートする3Gの周波数帯とは異なる通信規格で動作するものがあり、米国向けの4Gカードで対応できない。したがって、3Gしかサービスを提供していない国に出荷するノートPCには3Gカードを搭載している。しかし、3Gカードは周波数帯を切り換える機能を備えていないためチューナブル・アンテナを使用することができない。
【0010】
この場合は、チューナブル・アンテナと非チューナブル・アンテナを用意して国ごとまたは無線通信会社ごとに無線WANカードとの組み合わせで使い分けることも考えられる。この場合、複数の部品を保有する必要があったり、チューナブル・アンテナを利用したノートPCの小型化を実現できなくなったりするという問題が残る。チューナブル・アンテナを使用して世界中の3Gと4Gに対応する無線WANカードを開発することもあり得るが、過剰機能になったりコスト増になったりするという懸念が残る。よって3Gカードでも4Gカードと同じチューナブル・アンテナを使用できるようにする必要がある。
【0011】
そこで本発明の目的は、周波数設定機能を備えていない無線ネットワーク・カードがチューナブル・アンテナの共振周波数を設定できる無線端末装置を提供することにある。さらに本発明の目的は、周波数設定機能を備える無線ネットワーク・カードと周波数設定機能を備えない無線ネットワーク・カードの任意のいずれであってもチューナブル・アンテナの共振周波数を設定することが可能な無線端末装置を提供することにある。さらに本発明の目的は、小型の無線端末装置を提供することにある。さらに本発明の目的はチューナブル・アンテナの共振周波数を設定する方法および共振周波数設定回路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明にかかる無線端末装置は、リアクタンス素子を切り換えて共振周波数を設定する同調回路を含むチューナブル・アンテナの共振周波数を設定することが可能である。無線端末装置は、第1の無線ネットワーク・カードまたは第2の無線ネットワーク・カードの任意のいずれかを装着する装着部と、同調回路を設定する論理回路と、識別回路とを有する。識別回路は、装着部に第1の無線ネットワーク・カードが装着されたときに第1の無線ネットワーク・カードの識別子を認識して論理回路に同調回路を設定するための信号を出力する。
【0013】
このような構成により、第1の無線ネットワーク・カードが共振周波数の設定機能を備えていない場合でも、識別回路が第1の無線ネットワーク・カードの識別子を認識して同調回路を設定できるため、使用周波数の異なる複数の第1の無線ネットワーク・カードがチューナブル・アンテナを使用できるようになる。装着部に第2の無線ネットワーク・カードが装着されたときには無線基地局と通信した第2の無線ネットワーク・カードが装着部を通じて論理回路に同調回路を設定するための信号を出力することができる。
【0014】
このような構成により、装着部に第1の無線ネットワーク・カードまたは第2無線のネットワーク・カードのいずれが装着されてもチューナブル・アンテナの共振周波数を設定することができる。したがって、無線端末装置に第1の無線ネットワーク・カードおよび第2の無線ネットワーク・カードに共通して使用できるチューナブル・アンテナを設け、出荷国または利用する無線通信会社に応じて無線ネットワーク・カードを選択して装着することができるため、部品の共通化および製造工程の簡素化を図ることができる。さらに、第1の無線ネットワーク・カードのために非チューナブル・アンテナを搭載する必要がないため、小型の無線端末装置を実現できる。
【0015】
識別回路は、複数のデバイスのインターフェースを備えるチップ・セットとBIOS_ROMに格納されたコードで構成することができる。第1の無線ネットワーク・カードおよび第2の無線ネットワーク・カードは無線WANに適応していてもよい。このとき第1の無線ネットワーク・カードが3Gの通信規格に対応し、第2の無線ネットワーク・カードが4Gの通信規格に対応していてもよい。
【0016】
第2の無線ネットワーク・カードが第1の無線ネットワーク・カードが使用する周波数帯にも適合するようにバックワード・コンパチビリティを備えていてもよい。そして識別子は特定の通信会社に対応付けられているものとすることができる。放射素子は700MHz帯から900MHz帯の間に設けられた複数の周波数帯に適応するように構成してもよい。無線端末装置が携帯式パーソナル・コンピュータ、タブレット型コンピュータまたはスマートフォンのいずれかとしてもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明により、周波数設定機能を備えていない無線ネットワーク・カードがチューナブル・アンテナの共振周波数を設定できる無線端末装置を提供することができた。さらに本発明により、周波数設定機能を備える無線ネットワーク・カードと周波数設定機能を備えない無線ネットワーク・カードの任意のいずれであってもチューナブル・アンテナの共振周波数を設定することが可能な無線端末装置を提供することができた。さらに本発明により、小型の無線端末装置を提供することができた。さらに本発明により、チューナブル・アンテナの共振周波数を設定する方法および共振周波数設定回路を提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本実施の形態にかかるノートPC10の概略の構成を示す機能ブロック図である。
【図2】チューナブル・アンテナ100の全体的な構造を示す図である。
【図3】ノートPC10に実装される周波数設定回路50の構成を示す機能ブロック図である
【図4】カード・スロット22に4Gカード23aまたは3Gカード23bが挿入されたときの周波数設定回路50の動作手順を示すフローチャートである。
【図5】周波数設定回路50のOR論理素子181、183が出力する論理値の一例を示す図である。
【図6】ノートPC10を使用する国と低周波領域の周波数帯との関係を通信会社別に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[ノートPCの構成]
図1は、本実施の形態にかかるノートPC10の概略の構成を示す機能ブロック図である。CPU11はメモリ・コントローラとPCI Expressコントローラを内蔵しており、メイン・メモリ13、ビデオ・カード15およびチップ・セット19に接続されている。ビデオ・カード15にはLCD17が接続されている。チップ・セット19は、サウスブリッジとして機能するサブ・チップで、インテル社がPCH(Platform Controller Hub)と命名している。チップ・セット19はSATA、USB、PCI Express、LPCなどのインターフェース・コントローラおよびRTC(Real Time Clock)などを内蔵している。
【0020】
SATAコントローラにはHDD21が接続され、USBコントローラにはカード・スロット22が接続され、PCIコントローラには無線LANカード27が接続されている。カード・スロット22には、ノートPCの出荷国によって4Gカードまたは3Gカードのいずれかの無線WANカード23が装着される。カード・スロット22はチューナブル・アンテナ100に接続される。無線LANカード27には、非チューナブル・アンテナ29が接続される。
【0021】
LPCコントローラには、BIOS_ROM31が接続される。BIOS_ROM31は不揮発性で記憶内容の電気的な書き替えが可能なメモリであり、入出力デバイスを制御するためのデバイス・ドライバ、ACPI(Advanced Configuration and Power Interface)の規格に適合し電源およびシステム筐体内の温度などを管理したりハードウェアにアクセスしたりするシステムBIOS、ベクタ・テーブル、コンピュータ10の起動時にハードウェアの試験や初期化を行うPOST(Power-On Self Test)コード、およびパスワード認証を行うための認証コードなどを格納する。BIOS_ROM31は、3Gカードの識別子に基づいてチューナブル・アンテナ100の共振周波数を設定するための切換コードも含んでいる。
【0022】
[チューナブル・アンテナ]
図2(A)は、チューナブル・アンテナ(以下、アンテナという。)100の全体的な構造を示す斜視図である。アンテナ100は誘電体基板101の主体面103に形成したアンテナ・パターンと、主体面103上のアンテナ・パターンにそれぞれ半田で接続される水平延長部パターン109cとグランド・プレーン115の3つの部材で構成している。水平延長部パターン109cが存在する平面は主体面103と90度で交差する。
【0023】
誘電体基板101の形状は、アンテナ・パターンを形成する領域を提供する主体面103と、4つの側面105を有する薄板状の直方体となっている。主体面103には、励振素子107、無給電型の放射素子109、給電型の放射素子111、およびグランド素子113のパターンが形成されている。励振素子107には、電圧側の給電部121aが定義され、グランド素子113にはグランド側の給電部121bが定義されている。給電部121a、121bには、無線WANカード23から高周波信号が供給される。
【0024】
励振素子107は、放射素子109に静電結合および電磁結合で電磁波エネルギーを供給する。放射素子109は、垂直部パターン109a、水平部パターン109bおよび水平部延長パターン109cで構成されている。放射素子109はグランド素子113との間に接続するリアクタンスを変更する同調回路151を備え、低周波領域の無線WAN(4Gまたは3G)で使用する700MHz帯、750MHz帯、790/850MHz帯および900MHz帯の4つの周波数帯で共振するように構成されている。放射素子111は、GPS(Global Positioning System)で使用する1500MHz帯(1574MHz〜1576MHz)と高周波領域の無線WANで使用する1500MHz帯以上の2つの周波数帯で共振する。
【0025】
図2(B)は同調回路151とコンデンサ155a〜155dの関係を説明する図である。同調回路151にはパターンとの間に複数のコンデンサが接続される。コンデンサ153は、一端が垂直部パターン109aに接続され他端が同調回路151に接続されている。コンデンサ155a〜155dは、それぞれ一端が同調回路151に接続され他端がグランド素子113に接続されている。同調回路151は、コンデンサ153と4つのコンデンサ155a〜155dの中から選択したいずれかのコンデンサを接続するマルチプレクサ(デコーダと切換スイッチ)で構成された半導体チップである。
【0026】
コンデンサ153は、放射素子109に流れる直流成分を遮断する目的で挿入している。コンデンサ155a〜155dは、放射素子109の容量性のリアクタンスを調整して放射素子109の共振周波数をシフトさせる。制御端子161a、161bには、コンデンサ155a〜155dの何れかを選択する4つの論理値が入力される。電源端子161c、161dは同調回路151を動作させるための電源を供給するために無線WANカード23に接続される。端子161a〜161dは、図示しない主体面103上のパターンおよびビアで接続された裏面のパターンにより同調回路151およびグランド素子113に接続される。
【0027】
同調回路151は、無線WANカード23またはチップ・セット19がOR論理素子181、183(図3)を経由して制御端子161a、161bに出力した制御信号に基づいて、コンデンサ155a〜155dから選択したいずれかのコンデンサとコンデンサ153を接続する。その結果、垂直部パターン109aとグランド素子113との間はコンデンサ153とコンデンサ155a〜155dのいずれかのコンデンサとの直列回路で接続されることになる。コンデンサ155a〜155dは、容量が大きくなるほど放射素子109の共振周波数を低い方にシフトさせる。たとえばコンデンサ155aは700MHz帯に対応し、コンデンサ155bは750MHz帯に対応し、コンデンサ155cは790/850MHz帯に対応し、コンデンサ155dは900MHz帯にそれぞれ対応する。
【0028】
[共振周波数設定回路]
つぎに図3の機能ブロック図を参照して、ノートPC10に実装される共振周波数設定回路50の構成を説明する。共振周波数設定回路50は、カード・スロット22、4Gカード23a、3Gカード23b、チップ・セット19、OR論理素子181、183、および切換コードで構成される。カード・スロット22には、4Gカード23aまたは3Gカード23bのいずれかが装着される。カード・スロット22は、高周波給電ケーブルが接続される高周波端子RF、同調回路151に電力を供給する電源端子PWR、および同調回路を設定する制御端子Cnt1、Cnt2を備えている。高周波端子RFは、励振素子107の給電部121aに接続される。制御端子Cnt1はOR論理素子181の一方の入力端子に接続され、制御端子Cnt2はOR論理素子183の一方の入力端子に接続される。
【0029】
電源端子PWRは、アンテナ100の電源端子161c、161dに接続される。チップ・セット19のGPIO1端子はOR論理素子181の他方の入力端子に接続され、GPIO2端子はOR論理素子183の他方の入力端子に接続される。OR論理素子181の出力端子Sel1、OR論理素子183の出力端子Sel2は、それぞれ同調回路151の制御端子161a、161bに接続される。
【0030】
アンテナ100は、コンデンサ155a〜155dのいずれかが接続されても、またはいずれも接続されなくても1500MHz帯以上の共振周波数は変化しないため、4Gカード23aおよび3Gカード23bは同調回路151の設定の有無にかかわらずこれらの周波数帯を使用することができる。共振周波数設定回路50は、4Gカード23aまたは3Gカード23bが低周波領域の周波数帯を利用するときに同調回路151を設定して、700MHz帯、750MHz帯、790/850MHz帯または900MHz帯の4つの周波数帯のいずれかに共振周波数を切り換える必要がある。
【0031】
4Gカード23aは、低周波領域の700MHz帯〜900MHz帯の4つの周波数帯、高周波領域の1500MHz帯以上の高周波信号をRF端子から出力する。4Gカード23aには、無線通信会社が使用するSIMカードが装着される。4Gカード23aは、SIMカードに対応する周波数帯を順番にスキャンする機能を備えている。
【0032】
4Gカード23aはスキャンした周波数のパイロット信号を発信する無線基地局を検出して通信が可能になったときに、カード・スロット22の制御端子Cnt1、2から当該周波数に対応する論理値を出力する。3Gカード23bは、低周波領域の850MHz帯もしくは900MHz帯および高周波領域の1800MHz帯以上の高周波信号をRF端子から出力する。
【0033】
3Gカード23bが出力する低周波領域の周波数帯は無線通信会社により異なる。3Gカード23bはいずれの無線通信会社であっても使用する周波数帯が決まっており、無線基地局のパイロット信号をスキャンしてカード・スロット22の制御端子Cnt1、2から論理値を出力する機能を備えていない。共振周波数設定回路50は、カード・スロット22に使用する周波数帯が異なる複数の3Gカード23bを装着した場合でも同調回路151を設定する必要がある。
【0034】
本実施の形態では、米国およびヨーロッパで4Gカード23aが使用する周波数帯には、3Gの周波数帯が含まれる。すなわち、4Gカード23aは3Gカード23bに対してバックワード・コンパチビリティを備えている。ただし、3Gカード23bと4Gカード23aは通信規格が異なるため、4Gカード23aは3Gカード23bを代用することはできない。4Gカード23aおよび3Gカード23bは、いずれもUSBインターフェースに対応しており、それぞれの不揮発性メモリにUSB規格の識別子が記憶されている。BIOS_ROM31に格納された切換コードは起動ルーチンにおいてCPU11で実行されたときに当該識別子を認識することができる。
[動作手順]
【0035】
つづいて、カード・スロット22に4Gカード23aまたは3Gカード23bが挿入されたときの動作手順を図4のフローチャートに基づいて説明する。最初にブロック201で4Gカード23aが装着されたものとする。ブロック203でノートPC10に電源が投入されると最初にBIOS_ROM31に格納されたPOSTが実行され、ノートPC10に実装されているデバイスの認識、検査、および設定が行われさらに切換コードが実行される。切換コードは、カード・スロット22に装着される可能性がある3Gカードの識別子を認識することができる。
【0036】
ブロック205で切換コードは、カード・スロット22に装着されている4Gカード23の識別子を認識したとき、または登録された3Gカードの識別子以外の識別子を認識したときはブロック207に移行する。切換コードは、カード・スロット22に4Gカード23aが装着されたと認識したときにチップ・セット19のGPIO1、2端子を論理値0に維持する。ブロック207では、POSTおよびOSの起動が終了してノートPC10がパワー・オン状態に移行し、4Gカード23aが動作を開始する。
【0037】
ブロック209で4Gカード23aは、移動中に無線基地局のパイロット信号をスキャンして使用可能な周波数を検出し、低周波領域の周波数帯を使用するために同調回路の設定が必要か否かを判断する。設定が必要なときはブロック211で認識した共振周波数に対応する2値の論理値(0、1)をカード・スロット22の制御端子Cnt1、Cnt2から出力する。
【0038】
したがってGPIO1、2端子は論理値[00]に維持されているため、カード・スロット22の制御端子Cnt1、2が出力する論理値で決まる4個の論理値(00、01、10、11)のいずれかが、OR論理素子181、183の出力端子Sel1、2を通じて同調回路151の制御端子161a、161bに入力される。同調回路151のマルチプレクサは、この論理値を解釈してスイッチを切り換え、コンデンサ153とコンデンサ155a〜155dのいずれかを接続する。なお、4Gカード23aは、低周波領域の周波数帯を使用する無線基地局を検出できないときは、高周波領域の周波数帯もスキャンするが、アンテナ100は同調回路151がいずれに設定されていてもほぼ同一の周波数帯で共振する。
【0039】
つぎにブロック201で3Gカード23bが装着されたときの動作を説明する。ブロック205で切換コードは、3Gカード23bの識別子を認識したときは、ブロック251で当該識別子に対応する論理値[00、01、10、11]のいずれかをチップ・セット19のGPIO1、2端子から出力する。カード・スロット22に3Gカード23bが装着されたときは、制御端子Cnt1、2の論理値はプルダウン抵抗によって[00]に維持される。
【0040】
したがって、OR論理素子181、183の出力端子Sel1、2からGPIO1、2端子の論理値で決まる4個の論理値[00、01、10、11]のいずれかが、同調回路151の制御端子161a、161bに入力される。切換コードは同調回路151の設定機能がない3Gカード23bに代わってアンテナ100を3Gカード23bが使用する共振周波数に設定する。その結果、ブロック253で同調回路の設定機能を備えていない3Gカード23bであっても、チューナブル・アンテナを使用することができるため、ノートPC10を小型化することができる。3Gカード23bは、低周波領域の周波数帯が無線通信会社ごとに決まっているため、一旦設定した周波数帯以外の周波数帯を使用することはない。
【0041】
図5は、カード・スロット22に4Gカード23aまたは3Gカード23bのいずれかが装着されたときのOR論理素子181、183の出力端子Sel1、2が出力する論理値の一例を示す図である。図5で表記NCは、3Gカード23bが制御端子Cnt1、2に接続していないことを意味する。H社の識別子を備える3Gカードを装着した場合は、GPIO端子1、2から論理値[10]の信号が出力され、OR論理素子181、183の出力端子Sel1、2からも論理値[10]が出力される。
【0042】
L社の識別子を備える3Gカードを装着した場合は、GPIO端子1、2から論理値[11]の信号が出力され、OR論理素子181、183の出力端子Sel1、2からも論理値[11]が出力される。4Gカード23aを装着したときは、制御端子Cnt1,2の論理値[00、01、10、11]のいずれかと同じ論理値がOR論理素子181、183の出力端子Sel1、2から出力される。
【0043】
このようにチップ・セット19、BIOSの切換コードおよびカード・スロット22が協働して4Gカード23aおよび3Gカード23bのいずれが装着されても適切なコンデンサ155a〜155dが選択して低周波領域での共振周波数を設定することができ、かつGPSおよび高周波領域での周波数帯にも適応することもできる。したがって、3Gカード23bに専用の非チューナブル・アンテナを用意する必要がなくなる。また、ノートPC10にアンテナ100を固定しておき、出荷国に応じてカード・スロット22に4Gカード23aまたは3Gカード23bを装着することで、無線WANの広い周波数帯に柔軟に適応することができる。
【0044】
図6は、ノートPC10を使用する国と低周波領域の周波数帯との関係を通信会社別に示した図である。米国でA社のサービスを受けるユーザは4Gの700MHx帯と3Gの850MHx帯を使用するために適応する所定の4Gカード23aを装着する。4Gカード23aは、無線基地局の周波数に適合するように制御端子161a、161bに論理値[00]または[10]を出力する。米国でV社のサービスを受けるユーザは4Gの750MHx帯と3Gの850MHx帯を使用するために適応する所定の4Gカード23aを装着する。4Gカード23aは、無線基地局の周波数に適合するように制御端子161a、161bに論理値[01]または[10]を出力する。
【0045】
ヨーロッパでV社のサービスを受けるユーザは4Gの790MHx帯と3Gの900MHx帯を使用するために適応する所定の4Gカード23aを装着する。4Gカード23aは、無線基地局の周波数に適合するように制御端子161a、161bに論理値[10]または[11]を出力する。米国とヨーロッパでは4Gカード23aを装着し、契約した無線通信会社のSIMカードを装着すれば、4Gと3Gでアンテナ100を利用することができる。
【0046】
中国では、4Gのサービスが開始されていないためT社のサービスを受けるユーザは、適応する所定の3Gカード23を装着する。3Gカード23bの識別子を認識した切換コードは、GPIO1、2端子から制御端子161a、161bに論理値[10]を出力する。中国でM社のサービスを受けるユーザは、適応する所定の3Gカード23を装着する。3Gカード23bの識別子を認識した切換コードは、GPIO端子1、2から制御端子161a、161bに論理値[11]を出力する。このように中国では、異なる固定周波数を使用する2つの無線通信会社のいずれかに適合する3Gカード23bを装着し、アンテナ100を利用することができる。
【0047】
BIOSの切換コードがOR論理素子181、183に出力するハードウェアとしてチップ・セット19を例示して説明したが、本発明において論理値を出力するデバイスはPCHに限定するものではなく、MCH(Memory Controller Hub)、IOH(I/O Hub)、またはICH(I/O Controller Hub)といったようなチップ・セットでもよい。さらに、ノートPC10の電源や温度を制御するためにCPU11とは独立して動作するエンベデッド・コントローラや、電源の起動を制御するハードウェア論理回路などであってもよい。
【0048】
また、3Gカードの識別子を認識するプログラムとしてBIOS_ROM31に格納された切換コードを例示して説明したが、切換コードは起動時にBIOSの後に動作が始まるOSやデバイス・ドライバに組み込んでもよい。本発明にかかるチューナブル・アンテナの共振周波数設定回路50は、ノートPC10に限らずタブレット型コンピュータまたはスマートフォンのような無線端末装置に搭載することもできる。これらの無線端末装置においては、BIOS_ROM31に組み込んだ切換コードに代えてファームウェアを利用することができる。3Gカード23bの識別子として、USB規格の識別子を利用する例を説明したが、異なるインターフェース規格の識別子またはインターフェース規格から独立した識別子であってもよい。
【0049】
これまで本発明について図面に示した特定の実施の形態をもって説明してきたが、本発明は図面に示した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の効果を奏する限り、これまで知られたいかなる構成であっても採用することができることはいうまでもないことである。
【符号の説明】
【0050】
10 ノートPC
50 周波数設定回路
100 チューナブル・アンテナ
151 同調回路
155a〜155d コンデンサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リアクタンス素子を切り換えて共振周波数を設定する同調回路を含むチューナブル・アンテナを備える無線端末装置であって
第1の無線ネットワーク・カードまたは第2の無線ネットワーク・カードの任意のいずれかを装着する装着部と、
前記同調回路を設定する論理回路と、
前記装着部に前記第1の無線ネットワーク・カードが装着されたときに前記第1の無線ネットワーク・カードの識別子を認識して前記論理回路に前記同調回路を設定するための信号を出力する識別回路と
を有する無線端末装置。
【請求項2】
前記装着部に前記第2の無線ネットワーク・カードが装着されたときに無線基地局と通信した前記第2の無線ネットワーク・カードは前記装着部を通じて前記論理回路に前記同調回路を設定するための信号を出力する請求項1に記載の無線端末装置。
【請求項3】
前記識別回路は、複数のデバイスのインターフェースを備えるチップ・セットとBIOS_ROMに格納されたコードで構成されている請求項1または請求項2に記載の無線端末装置。
【請求項4】
前記第1の無線ネットワーク・カードおよび前記第2の無線ネットワーク・カードが無線WANの通信規格に適合する請求項1から請求項3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記第1の無線ネットワーク・カードが3Gの通信規格に適合し、前記第2の無線ネットワーク・カードが4Gの通信規格に適合する請求項4に記載の無線端末装置。
【請求項6】
前記第2の無線ネットワーク・カードが前記第1の無線ネットワーク・カードに対するバックワード・コンパチビリティを備える請求項5に記載の無線端末装置。
【請求項7】
前記識別子が特定の通信会社に対応付けられている請求項1から請求項6のいずれかに記載の無線端末装置。
【請求項8】
前記リアクタンス素子は700MHz帯から900MHz帯の間に設けられた複数の周波数帯に適応する請求項1から請求項7のいずれかに記載の無線端末装置。
【請求項9】
前記無線端末装置が携帯式パーソナル・コンピュータ、タブレット型コンピュータまたはスマートフォンのいずれかである請求項1から請求項8のいずれかに記載の無線端末装置。
【請求項10】
同調回路を含むチューナブル・アンテナの共振周波数を設定する共振周波数設定回路であって、
第1の無線ネットワーク・カードまたは第2の無線ネットワーク・カードの任意のいずれかの装着が可能で前記第2の無線ネットワーク・カードが共振周波数に対応する論理値を出力する第1の制御端子を備えるカード・スロットと、
前記カード・スロットに前記第1の無線ネットワーク・カードが装着されたときに前記第1の無線ネットワーク・カードの識別子に対応する論理値を出力することが可能な第2の制御端子を備える識別回路と、
前記第1の制御端子に接続された第1の入力端子と前記第2の制御端子に接続された第2の入力端子と前記同調回路に接続された出力端子を備える論理回路とを有し、
前記論理回路は、前記カード・スロットに前記第1の無線ネットワーク・カードが装着されたときに前記第2の制御端子の論理値を前記出力端子から出力する共振周波数設定回路。
【請求項11】
前記論理回路は、前記カード・スロットに前記第2の無線ネットワーク・カードが装着されたときに前記第1の制御端子の論理値を前記出力端子から出力する請求項10に記載の共振周波数設定回路。
【請求項12】
共振周波数を設定する同調回路を含むチューナブル・アンテナを備える無線端末装置が、前記同調回路を設定する方法であって、
前記無線端末装置に装着された無線ネットワーク・カードの種類を判断するステップと、
前記無線ネットワーク・カードが第1の通信規格に適合するときは前記無線ネットワーク・カード以外のデバイスが前記同調回路を設定する第1の切換ステップと、
前記無線ネットワーク・カードが第2の通信規格に適合するときは第2の通信規格に適合する前記無線ネットワーク・カードが前記同調回路を設定する第2の切換ステップと
を有する方法。
【請求項13】
前記第2の通信規格が前記第1の通信規格に対して無線WANの上位規格に相当する請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記判断するステップを、前記コンピュータの電源を投入してからパワー・オン常態に移行するまでの間に実行する請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記第1の切換ステップを、前記無線ネットワーク・カードの識別子に基づいて実行する請求項12から請求項14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
前記第2の切換ステップを、無線基地局が発信するパイロット信号をスキャンして共振周波数を決定した前記無線ネットワーク・カードが実行する請求項12から請求項15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
複数のリアクタンス素子を含むチューナブル・アンテナを備え第1の無線ネットワーク・カードまたは第2の無線ネットワーク・カードの装着が可能なコンピュータに、
前記コンピュータに装着された無線ネットワーク・カードの識別子を判断する機能と、
前記第1の無線ネットワーク・カードの識別子を認識したときに前記複数のリアクタンス素子のいずれかを有効に設定する機能と、
前記第2の無線ネットワーク・カードが装着されたときに前記第2の無線ネットワーク・カードに前記複数のリアクタンス素子のいずれかを有効に設定させる機能と
を実現させるコンピュータ・プログラム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2013−110482(P2013−110482A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−252196(P2011−252196)
【出願日】平成23年11月18日(2011.11.18)
【出願人】(505205731)レノボ・シンガポール・プライベート・リミテッド (292)
【復代理人】
【識別番号】100106699
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 弘道
【復代理人】
【識別番号】100077584
【弁理士】
【氏名又は名称】守谷 一雄
【Fターム(参考)】