説明

チューブカセット

【課題】接続の際にかかる外力による分岐継手の破損を抑制するとともに、低コストに構成する。
【解決手段】可撓性を有するチューブ101と、該チューブ101を取り付ける該チューブ101より硬質なカセット本体102とを備え、チューブ101の長手方向の途中位置に、分岐継手103によって他の機器に接続される接続口104aを有するポート部材104が設けられ、カセット本体102に貫通孔106が設けられ、ポート部材104が、接続口104aへの他の機器の接続方向に移動可能に貫通孔106に支持されているチューブカセットを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チューブカセットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、生体液等の医療用との液体の送液を行う装置においては、チューブをディスポーザブル製品とする必要があり、装置へのチューブの着脱を容易にする目的から、チューブをそれよりも硬質のカセット本体に固定したチューブカセットが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
この特許文献1においては、カセット本体に設けられた複数の固定用の部材によって、チューブの長手方向の複数の要所が、カセット本体に確実に固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−236691号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このようなチューブカセットにおいては、チューブ内を流動する液体をサンプリングしたり、液体に対して薬剤等を供給したりすることが要求されており、その要求を満たすためには、シリンジ等の他の機器を接続するポート部材を設ける必要がある。
しかしながら、ポート部材はチューブの長手方向の途中位置に配置された分岐継手によって、チューブを分岐することにより設ける必要があり、ポート部材に他の機器を接続する際には、分岐継手にはチューブの長手方向に交差する方向に外力がかかるので、この外力によって分岐継手が破損する不都合が考えられる。特に、ディスポーザブル製品となるチューブカセットにおいては、高強度の分岐継手を用いることはコストアップとなり採用できない。
【0005】
本発明は、接続の際にかかる外力による分岐継手の破損を抑制することができ、低コストに構成することができるチューブカセットを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は、以下の手段を提供する。
本発明は、可撓性を有するチューブと、該チューブを取り付ける該チューブより硬質なカセット本体とを備え、前記チューブの長手方向の途中位置に、分岐継手によって他の機器に接続される接続口を有するポート部材が設けられ、前記カセット本体に貫通孔が設けられ、前記ポート部材が、前記接続口への他の機器の接続方向に移動可能に前記貫通孔に支持されているチューブカセットを提供する。
【0007】
本発明によれば、硬質なカセット本体に取り付けられたチューブの長手方向の途中位置に配置されたポート部材に他の機器を接続する場合に、接続方向に外力を作用させると、ポート部材がその外力の方向に移動させられるので、加えられた外力がポート部材に接続する分岐継手にそのまま加わることが防止される。これにより、強度の低い安価な分岐継手を用いても、接続時の外力によって分岐継手が破損することを防止することができる。また、ポート部材をカセット本体に堅固に固定しないので、高い寸法精度が不要であり、安価に製造することができる。
【0008】
上記発明においては、前記カセット本体に、前記接続口側から接続方向に押圧される前記ポート部材を押し当てるストッパ面が設けられていてもよい。
このようにすることで、ポート部材をカセット本体のストッパ面に突き当てて、他の機器を接続する際に加えられる外力を他の機器とポート部材との接続に有効に利用することができる。
【0009】
また、上記発明においては、前記分岐継手の端部から離れた位置において前記チューブを前記カセット本体に固定する固定手段を備えていてもよい。
このようにすることで、可撓性を有するチューブを弾性変形させて、接続方向に作用させた外力がポート部材に接続する分岐継手にそのまま加わることが防止される。
【0010】
また、上記発明においては、前記分岐継手を前記カセット本体に固定する弾性材料からなる固定手段を備えていてもよい。
このようにすることで、弾性材料からなる固定手段をさせて、接続方向に作用させた外力が分岐継手にそのまま加わることを防止することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、接続の際にかかる外力による分岐継手の破損を抑制することができ、低コストに構成することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態に係るチューブカセットを備える細胞分離装置を示す回路図である。
【図2】図1のチューブカセットにおけるサンプルポートの構造を示す縦断面図である。
【図3】図2のサンプルポートにシリンジを接続する状態を説明する縦断面図である。
【図4】図1のチューブカセットの変形例において、分岐継手にガイド手段を設けた例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の一実施形態に係るチューブカセット100について、図面を参照して以下に説明する。
本実施形態に係るチューブカセット100は、図1に示されるように、細胞分離装置1に備えられる。
【0014】
細胞分離装置1は、生体組織、例えば、脂肪組織を消化酵素とともに収容して攪拌する分解処理部2と、該分解処理部2による分解処理の結果、脂肪組織から脂肪由来細胞を分離して得られた細胞懸濁液を濃縮する細胞濃縮部3と、該細胞濃縮部3において濃縮された脂肪由来細胞を洗浄するための洗浄液を貯留する洗浄液収容部4と、細胞濃縮部3における濃縮処理(洗浄処理を含む)において排出された廃液を収容する廃液回収部5と、これらの間を接続する搬送路6とを備えている。
【0015】
前記分解処理部2には、ヒトから採取した脂肪組織を分解処理部2内に導入する導入部7と、脂肪組織から単離された脂肪由来細胞を透過させ、脂肪組織の通過を禁止するフィルタ8とが備えられている。
前記細胞濃縮部3は、図に示される例では、2つの遠心容器10と、該遠心容器10をその底面を半径方向外方に向けて回転させる遠心分離機11(図においては継手部分のみを表示している)を備えている。
【0016】
符号12はベアリング、符号13はシール部材、符号21は上清を吸引する上清吸引部を示している。遠心容器10には最終的に濃縮された脂肪由来細胞を採取するためのシリンジ10aが一体的に設けられている。
前記洗浄液収容部4および前記廃液回収部5はそれぞれ、洗浄液または廃液を収容する容器4a,5aを備えている。
【0017】
本実施形態に係るチューブカセット100は、搬送路6に設けられている。搬送路6には、チューブカセット100のチューブ101を外部から押して内部の液体に送りをかけるペリスタルティックポンプ15およびチューブ101を各位置において開閉する複数のバルブV〜V12が設けられている。
【0018】
チューブカセット100は、可撓性を有する複数のチューブ101および該チューブ101を分岐させる継手16を、チューブ101より硬質な箱状のカセット本体102(図2参照。)に取り付けて構成されている。また、チューブカセット100には、チューブ101の途中位置に配置され細胞懸濁液の一部を取り出し可能なサンプルポート(ポート部材)17が設けられている。
【0019】
サンプルポート17は、バルブVとペリスタルティックポンプ15との間のチューブ101の一部を分岐して設けられ、シリンジ(図示略)を着脱可能に設けられている。これにより、分解処理部2から細胞濃縮部3へ向かう細胞懸濁液の一部をサンプルポート17へ導入した後、サンプルポート17に取り付けられたシリンジによって吸引し、シリンジを取り外して検査装置へ搬送することができるようになっている。
【0020】
ここで、本実施形態においては、サンプルポート17は、チューブ101の長手方向の途中位置を分岐させるT字状の分岐継手103と、該分岐継手103に固定されたポート部材104とを備えている。分岐継手103はカセット本体102には直接固定されておらず、分岐継手103の両端から離れた位置におけるチューブ101がカセット本体102に固定されている。図2において、符号105は、チューブ101をカセット本体102に固定する固定具である。
【0021】
また、ポート部材104は、略円筒状に形成されているとともに、その一端に、シリンジ108を接続するための接続口104aを有している。ポート部材104は、カセット本体102に、厚さ方向に貫通形成された貫通孔106内に挿入配置されている。ポート部材104および分岐継手103の外径寸法は、貫通孔106の内径寸法より十分に小さく形成されている。これにより、ポート部材104は貫通孔106の長手方向に移動可能に設けられている。
【0022】
また、カセット本体102には、貫通孔106の周囲に、シリンジの接続時等に、ポート部材104が押されたときに、ポート部材104を突き当てる突き当て面107が設けられている。
【0023】
このように構成された本実施形態に係るチューブカセット100の作用について、以下に説明する。
本実施形態に係るチューブカセット100によれば、図3に示されるように、硬質なカセット本体102に取り付けられたチューブ101の長手方向の途中位置に配置されたポート部材104にシリンジ108を接続する場合に、接続方向(図中矢印A)に外力を作用させると、ポート部材104がその外力の方向に移動させられるので、加えられた外力がポート部材104に接続する分岐継手103にそのまま加わることが防止される。
【0024】
すなわち、ポート部材104および分岐継手103が、カセット本体102の厚さ方向に貫通する貫通孔106内に緩く嵌合されていて、貫通孔106の長手方向に移動可能に配置されているので、その方向に外力を加えても、外力はチューブ101を弾性変形させるだけで、ポート部材104および分岐継手103にそのまま受け止められない。
【0025】
そして、ポート部材104は、貫通孔106の長手方向に移動した後に、カセット本体102に設けられた突き当て面107に突き当たるので、それ以上の変位が制限される。これにより、チューブ101が過度に変形させられることを防止できるとともに、分岐継手103に過度の力が作用することを防止できる。
【0026】
その結果、強度の低い安価な分岐継手103を用いても、接続時の外力によって分岐継手103が破損することを防止することができるという利点がある。また、ポート部材104をカセット本体102に堅固に固定しないので、高い寸法精度が不要であり、安価に製造することができるという利点がある。
【0027】
このように、本実施形態に係るチューブカセット100によれば、ポート部材104に加わる外力がそのまま分岐継手103に加わることを防止できる。したがって、シリンジを接続する際のみならず、搬送時等にポート部材104に大きな外力が作用しても、分岐継手103が破損しないように保護することができる。
【0028】
なお、本実施形態においては、チューブ101を固定具105によりカセット本体102に固定することとしたが、これに代えて、固定具自体を弾性変形可能なゴム等の材質により構成して、分岐継手103とカセット本体102とを固定することにしてもよい。
【0029】
また、ポート部材104および分岐継手103とを更に緩く貫通孔106に挿入する場合には、カセット本体102に対するポート部材104の姿勢を維持するためのガイド手段を設けてもよい。ガイド手段としては、例えば、図4に示されるように、分岐継手103に移動方向に沿って設けた平板状の突起109と、カセット本体102に設けられた突起109を収容する案内溝110とにより構成したものを採用すればよい。
【符号の説明】
【0030】
100 チューブカセット
101 チューブ
102 カセット本体
103 分岐継手
104 ポート部材
104a 接続口
105 固定具(固定手段)
106 貫通孔
107 突き当て面(ストッパ面)
108 シリンジ(他の機器)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性を有するチューブと、該チューブを取り付ける該チューブより硬質なカセット本体とを備え、
前記チューブの長手方向の途中位置に、分岐継手によって他の機器に接続される接続口を有するポート部材が設けられ、
前記カセット本体に貫通孔が設けられ、
前記ポート部材が、前記接続口への他の機器の接続方向に移動可能に前記貫通孔に支持されているチューブカセット。
【請求項2】
前記カセット本体に、前記接続口側から接続方向に押圧される前記ポート部材を押し当てるストッパ面が設けられている請求項1に記載のチューブカセット。
【請求項3】
前記分岐継手の端部から離れた位置において前記チューブを前記カセット本体に固定する固定手段を備える請求項1に記載のチューブカセット。
【請求項4】
前記分岐継手を前記カセット本体に固定する弾性材料からなる固定手段を備える請求項1に記載のチューブカセット。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2012−100685(P2012−100685A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−248949(P2010−248949)
【出願日】平成22年11月5日(2010.11.5)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】