説明

チューブバンドル洗浄装置

【課題】外径が異なるチューブバンドルであっても、十分に洗浄することができるチューブバンドル洗浄装置を提供する。
【解決手段】チューブバンドルTの長手方向に延在するようにガイドレール1が配置されている。アーム支持体10の盤体11の下面から、チューブバンドルTの一方の側面側に第1のアーム20が延設されると共に、チューブバンドルTの他方の側面側に第2のアーム20Aが延設されている。ノズル35から高圧水を噴射させ、アーム支持体10をガイドレール1に沿ってチューブバンドルTの他端側まで移動させる。次に、ベース30の位置をピッチPの2倍(2P)分だけアーム20,20Aに沿って移動させて固定した後、アーム支持体10を上記と同様に移動させる。これを繰り返すことにより、チューブバンドルTのすべてのチューブtの外面が洗浄される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱交換器から取り外したチューブバンドルに対し、ノズルから高圧水を噴射して洗浄するチューブバンドル洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
熱交換器のチューブバンドルは多数のチューブの集合体を略々円柱状に取りまとめた構造物として構成されている。
【0003】
多数のチューブの集合体であるチューブバンドルは、使用に伴いそれぞれのチューブの外周面に多くの汚れが付着してその機能を損なうため定期的に洗浄して汚れを除去する必要がある。
【0004】
熱交換器から取り外したチューブバンドルを洗浄する装置として、特開平8−110194(特許文献1)には、チューブバンドルを跨ぐように設置され、且つチューブバンドル長手方向に移動可能な枠体にノズルを設置し、該ノズルから高圧水を噴射しながら枠体を移動させるものが記載されている。この特許文献1では、枠体の内側に、チューブバンドルを取り巻くC字形状のレールが設置され、該C字形レールに沿って移動するように摺動体が設置されている。この摺動体から杵体が延設され、該杵体の先端にノズルが取り付けられている。特許文献1には、2方向から高圧水を噴射することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−110194
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1のチューブバンドル洗浄装置では、チューブバンドルを取り巻くようにC字形状のレールを設置しているため、チューブバンドルの外径がこのC字形レールの直径よりも大きいときにはチューブバンドルを洗浄することができない。特許文献1の0021段落には、腕杆の傾斜角度をチューブバンドルの外径に対応させて調節することが記載されているが、チューブバンドルの外径がC字形レールの直径よりもかなり小さいときには対応できない。
【0007】
本発明は、外径が異なるチューブバンドルであっても、十分に洗浄することができるチューブバンドル洗浄装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のチューブバンドル洗浄装置は、チューブバンドルに対しノズルから水を噴射して洗浄するチューブバンドル洗浄装置において、該チューブバンドルの上方に配置され、チューブバンドル長手方向に延在するガイドレールと、該ガイドレールに沿って移動可能なアーム支持体と、該アーム支持体を前記ガイドレールに沿って走行させるための走行駆動手段と、該アーム支持体からチューブバンドルの一側面側へ斜め下方に延設された第1のアーム及びチューブバンドルの他側面側へ斜め下方に延設された第2のアームと、該第1のアームに沿って移動可能な第1のベース及び第2のアームに沿って移動可能な第2のベースと、各ベースをアームに沿って移動させる駆動手段と、を備えており、該第1及び第2のベースにそれぞれ前記ノズルが取り付けられていることを特徴とするものである。
【0009】
本発明の一態様では、前記第1のアームと第2のアームとは略直交方向に延在している。
【0010】
本発明の別の一態様では、前記ベースにノズルヘッダが回動可能に取り付けられ、該ノズルヘッダに複数個の前記ノズルが設けられており、該ノズルヘッダの回動軸心方向はノズルからの水の噴射方向と平行方向であり、該ノズルヘッダを該回動軸回りに回動させることにより、アーム長手方向におけるノズルピッチが変更される。
【発明の効果】
【0011】
本発明のチューブバンドル洗浄装置では、チューブバンドルの上方においてチューブバンドル長手方向に延在するガイドレールにアーム支持体がガイドレール長手方向移動可能に設置されている。このアーム支持体からチューブバンドルの一側面側へ斜め下方に第1のアームが延設され、他端面側へ斜め下方に第2のアームが延設されている。各アームにベースが移動可能に設置され、各ベースにノズルが設置されている。
【0012】
各ノズルから高圧水を噴射すると共に、アーム支持体をガイドレールに沿って移動させ、また、各ベースの位置を各アームに沿って所定ピッチで移動させることにより、チューブバンドルの全体を2方向から高圧水で十分に洗浄することができる。
【0013】
本発明では、ベースの移動ストローク長を小さくすることにより、小径のチューブバンドルを洗浄することができ、このストローク長を大きくすることにより、大径のチューブバンドルを洗浄することができる。
【0014】
本発明において、第1のアームと第2のアームとを略直交方向に延設することにより、チューブバンドルに対し直交2方向から高圧水を噴射して正方形配列された各チューブを満遍なく洗浄することができる。
【0015】
本発明において、複数のノズルをノズルヘッダに設け、ノズルヘッダを水噴射方向と平行方向の回動軸心回りに回動させてアーム長手方向におけるノズルピッチを変更することにより、チューブピッチの異なるチューブバンドルに対してもチューブ間に高圧水を噴射することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施の形態に係るチューブバンドル洗浄装置の斜視図である。
【図2】図1のII−II線断面図である。
【図3】アームに取り付けられたベースの下方からの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図1〜3を参照して実施の形態について説明する。
【0018】
チューブバンドルTは、図2のように多数のチューブ(細管)tを平行に配設したものであり、各チューブt同士の間には所定の間隙があいている。
【0019】
チューブバンドルTは、枕木(図示略)等を介して地表に横置き状に配置されている。
【0020】
図1の通り、このチューブバンドルTの軸心部の上方において、チューブバンドルTの長手方向に延在するようにガイドレール1が配置されている。このガイドレール1の両端が柱2によって支持されている。柱2の下端にはキャスタ3及びジャッキ4を有した柱支持盤2aが設けられている。キャスタ3はガイドレール1を移動させるためのものであり、ジャッキ4は柱支持盤2aを固定したり、ガイドレール1のレベル出しを行ったりするために用いられる。
【0021】
ガイドレール1の長手方向の一端側にエアモータ5が設置されている。ガイドレール1の長手方向両端側にスプロケットホイール6,6が設置されている。なお、一方のスプロケットホイール6は図1においてエアモータ5の下側に配置されており、図示されていない。スプロケットホイール6,6間にチェーン7が架け渡されており、このチェーン7に牽引されることによってアーム支持体10がガイドレール1の長手方向に移動可能とされている。
【0022】
図2の通り、アーム支持体10は、ガイドレール1の下側に配置された盤体11と、該盤体11から上方に立ち上がるブラケット12と、該ブラケット12に車軸を介して取り付けられた車輪13とを有している。この車輪13がガイドレール1上を転動することにより、アーム支持体10がガイドレール1の長手方向にスムーズに往復動可能となっている。
【0023】
このアーム支持体10の盤体11の下面から、チューブバンドルTの一方の側面側に第1のアーム20が延設されると共に、チューブバンドルTの他方の側面側に第2のアーム20Aが延設されている。
【0024】
アーム20,20Aは、水平面に対し45°の角度となるように傾斜している。従って、チューブバンドルTの端面に対し正対した側面図である図2において、アーム20,20A同士は直交している。アーム20,20Aは、延在方向が異なることを除いて同一構造となっている。
【0025】
アーム20,20Aの上端側には、エアモータ21が取り付けられており、スプロケットホイール22,23間に架け渡されたチェーン24が該エアモータ21によって駆動可能とされている。スプロケットホイール22はアーム20,20Aの上端側に設置され、スプロケットホイール23はアーム20,20Aの下端側に設置されている。なお、アーム20のチェーン24は、図2においてアーム20の裏側に配置されているので、図示されていない。
【0026】
各アーム20,20Aのチェーン24によって牽引されることにより、アーム20,20Aに沿って移動可能にベース30,30が設置されている。
【0027】
図3の通り、ベース30は、アーム20,20Aに係合して移動可能なブロック31と、該ブロック31の下面側に固着された固定板32と、該固定板32の下側に配置され、該固定板32に対し回動可能に取り付けられたノズルヘッダ34と、該ノズルヘッダ34に設けられた複数個(この実施の形態では2個)のノズル35と、ブレーキ38等を有している。
【0028】
固定板32には、円弧状のスロット36が設けられている。ノズルヘッダ34は、該スロット36に挿通されたボルト37と、該ボルト37に螺着されたナット(図示略)とによって固定板32に固定されている。なお、スロット36は、ノズルヘッダ34の回動軸心線(ノズル35,35の中間を通る、固定板32と垂直な線)に対し等半径に延在する円弧状であり、該回動軸心線を挟んで対称に2個設けられている。
【0029】
ボルト37は、ノズルヘッダ34に設けられたボルト挿通孔(図示略)を通って該スロット36に挿通され、固定板32の上側においてボルト37の先端にナット(図示略)が締め込まれる。このナットを緩めることにより、ボルト37がスロット36内を移動可能となり、ノズルヘッダ34が回動軸心回りに回動可能となる。
【0030】
ノズルヘッダ34を回動させることにより、ノズル35,35間のアーム20,20Aの長手方向(図3のL方向)のピッチP(図3)が調節される。即ち、ノズル35,35をアーム長手方向Lに配列すると、ピッチPはノズル35,35間の距離になり、最大となる。
【0031】
ノズルヘッダ34を回動させ、例えば、ノズル35,35を結ぶ線分の方向をアーム長手方向Lと45°の方向としたときには、ノズル35,35のアーム長手方向LのピッチPは上記最大値の1/√2となる。
【0032】
ノズル35は、アーム20,20Aの下面(固定板32の板面)に対して垂直方向に高圧水を噴射するよう設置されている。この実施の形態では、アーム20,20Aは直交しているので、図2において、アーム20側のノズル35の水の噴射方向とアーム20A側のノズル35の水の噴射方向とは直交する。
【0033】
ブレーキ38は、エアシリンダよりなり、ブレーキパッド(図示略)をアーム20,20Aの上面に押し付けることによりベース30をアーム20,20Aに固定する。ブレーキパッドの押圧を緩めることによりベース30がアーム20,20Aに沿って移動可能となり、チェーン24によってアーム20,20Aに沿って移動される。
【0034】
このチューブバンドル洗浄装置を用いてチューブバンドルTを洗浄する作業手順について次に説明する。
【0035】
まず、ノズル35,35のアーム長手方向LのピッチPがチューブバンドルTのチューブtの配列ピッチa(図2)と合致するようにノズルヘッダ34の回動方向位置調節を行ない、ボルト37及びナットによってしっかりと固定する。
【0036】
次いで、ノズル35からの噴射水がチューブt,t間を貫く位置となるように、ベース30,30の位置決めを行う。また、アーム支持体10をチューブバンドルTの長手方向の一端側に配置する。次いで、各ノズル35から高圧水を噴射させ、アーム支持体10をガイドレール1に沿ってチューブバンドルTの他端側まで移動させる。必要に応じ、アーム支持体10をチューブバンドルTの他端側から一端側まで復動させてもよく、さらに複数回往復動させてもよい。
【0037】
次に、ベース30の位置をピッチPの2倍(2P)分だけアーム20,20Aに沿って移動させて固定した後、アーム支持体10を上記と同様に移動させる。これを繰り返すことにより、チューブバンドルTのすべてのチューブtの外面が洗浄される。図2の通り、アーム20のノズル35からの噴射水とアーム20Aのノズル35からの噴射水とが直交方向となっているので、各チューブの全外面が満遍なく高圧噴射水によって洗浄される。
【0038】
この実施の形態では、ベース30の移動ストローク長よりも径が小さいチューブバンドルTであれば、その径の大小を問わず、十分に洗浄することができる。
【0039】
上記のアーム支持体10やベース30の移動、高圧水の噴射の発停は、人がスイッチ操作して行ってもよく、コンピュータ等によって自動制御してもよい。
【0040】
1つのチューブバンドルTの洗浄が終了した後、ジャッキ4による固定を解除し、チューブバンドル洗浄装置を別の箇所に移動させて次のチューブバンドルの洗浄を行うことができる。なお、チューブバンドル洗浄装置は一定箇所に配置しておき、洗浄後のチューブバンドルを搬出し、次のチューブバンドルを搬入して洗浄するようにしてもよい。
【0041】
特に本発明を限定するものではないが、ノズル噴射水の水圧は80〜130MPa、総ノズル流量は150〜250L/min程度が好適である。
【0042】
上記実施の形態では、図2の通り、アーム20,20Aを直交配置(アーム交差角度=90°)とすることにより、アーム20のノズル35の噴射水方向とアーム20Aのノズル35の噴射水方向とを直交方向としているが、アーム20,20Aの交差角度(チューブバンドルT側の開き角度)を120°としてもよい。このようにすると、アーム20のノズルからの噴射水方向とアーム20Aのノズルからの噴射水方向との交差角度が60°となるので、チューブが千鳥配列されたチューブバンドルを洗浄することができる。
【符号の説明】
【0043】
1 ガイドレール
2 柱
5,21 エアモータ
6,23 スプロケットホイール
10 アーム支持体
20 第1のアーム
20A 第2のアーム
30 ベース
35 ノズル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
チューブバンドルに対しノズルから水を噴射して洗浄するチューブバンドル洗浄装置において、
該チューブバンドルの上方に配置され、チューブバンドル長手方向に延在するガイドレールと、
該ガイドレールに沿って移動可能なアーム支持体と、
該アーム支持体を前記ガイドレールに沿って走行させるための走行駆動手段と、
該アーム支持体からチューブバンドルの一側面側へ斜め下方に延設された第1のアーム及びチューブバンドルの他側面側へ斜め下方に延設された第2のアームと、
該第1のアームに沿って移動可能な第1のベース及び第2のアームに沿って移動可能な第2のベースと、
各ベースをアームに沿って移動させる駆動手段と、
を備えており、該第1及び第2のベースにそれぞれ前記ノズルが取り付けられていることを特徴とするチューブバンドル洗浄装置。
【請求項2】
請求項1において、前記第1のアームと第2のアームとは略直交方向に延在していることを特徴とするチューブバンドル洗浄装置。
【請求項3】
請求項1又は2において、前記ベースにノズルヘッダが回動可能に取り付けられ、該ノズルヘッダに複数個の前記ノズルが設けられており、
該ノズルヘッダの回動軸心方向はノズルからの水の噴射方向と平行方向であり、該ノズルヘッダを該回動軸回りに回動させることにより、アーム長手方向におけるノズルピッチが変更されることを特徴とするチューブバンドル洗浄装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−29232(P2013−29232A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−164391(P2011−164391)
【出願日】平成23年7月27日(2011.7.27)
【出願人】(390027188)栗田エンジニアリング株式会社 (26)
【Fターム(参考)】