説明

チューブポンプを用いた冷却水用薬注装置

【課題】薬剤の安定した供給が可能なチューブポンプを用いた冷却水用薬注装置を提供する。
【解決手段】チューブポンプのモータ19に供給される電流値が所定値以上となった場合に、過電流防止付定電圧電源装置32からのモータ19への電力の供給を過電流防止手段で制限して所定値以上の過電流となることを防止する。チューブポンプのチューブ体の内圧が所定値以上に上がった場合のチューブ体の抜けや破損を防止できる。モータ19と過電流防止付定電圧電源装置32とを接続する正極側の電源線34に抵抗Rを直列に接続した。モータ19の起動時に生じる過電流の発生を防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬剤を流動させるチューブ体を有するチューブポンプを用い、冷却水に薬剤を添加・注入するための冷却水用薬注装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、冷却水を循環させる冷却水系装置においては、この冷却水系装置を構成する軟鋼または銅が腐食する障害や、冷却水の濃縮によるスケール発生障害、微生物の増殖によるスライム障害などが発生するおそれがある。そして、これら障害を防止して冷却水系装置を構成する種々の設備機器の効率的な運転を確保する観点から、様々な状況に合わせ種々の障害に適した薬剤を、薬注装置を用いて冷却水系に適量添加している。
【0003】
そして、この種の薬注装置には、冷却水系装置を流れる冷却水中の薬剤の濃度を一定に保つことを目的として、定量型のダイヤフラム式のポンプが用いられた構成が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開昭63−283740号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、微生物を殺滅するための薬剤を冷却水系装置の冷却水に注入する場合は、短時間のうちに大量の薬剤を注入しなければ薬剤の効果を有効に発揮できない。しかしながら、上記の定量型のダイヤフラム式のポンプでは、短時間に大容量の薬剤を注入することが容易でなく、大容量の薬剤を注入するためには大型化しなければならず、費用が掛かってしまうとともに、このポンプを含んだ薬注装置も大きくなるから、薬注装置の据え付け場所が制限されたり、据え付けのための追加工事が必要となったりしてしまう。
【0005】
また、注入する薬剤から発生するガス等の原因で、薬注装置内に気泡が混入した場合には、定量型のダイヤフラム式のポンプが空運転し、いわゆるガスロックが発生するおそれがある。さらに、注入する薬剤の粘度が極端に大きなスラリー状の場合や、析出物を生じやすい薬剤の場合には、ポンプが詰まってしまい搬送および注入ができなくなるおそれがある。加えて、注入する薬剤を変更する場合には、ポンプの内部を洗浄する必要があるが、ポンプの内部を十分に洗浄するのは容易でなく、薬剤同士が反応して析出物を生じ、ポンプが目詰まりするおそれがあるという問題を有している。
【0006】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、冷却水系への薬剤の安定した供給が可能なチューブポンプを用いた冷却水用薬注装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載のチューブポンプを用いた冷却水用薬注装置は、薬剤が流動する弾性変形可能な筒状のチューブ体と、このチューブ体を上流側から下流側に向けて順次押し潰して前記チューブ体内の薬剤を送り出す送出作動部と、この送出作動部を駆動させる駆動部とを備えたチューブポンプを用いた冷却水用薬注装置であって、前記チューブ体の内部に所定値以上の圧力がかかることを防止する制御手段を有するものである。
【0008】
請求項2記載のチューブポンプを用いた冷却水用薬注装置は、請求項1記載のチューブポンプを用いた冷却水用薬注装置において、前記制御手段は、前記駆動部に電力を供給する過電流防止付定電圧電源装置であり、この過電流防止付定電圧電源装置は、前記駆動部に流れる電流値を制御して、前記チューブ体の内部に所定値以上の圧力がかかることを防止するものである。
【0009】
請求項3記載のチューブポンプを用いた冷却水用薬注装置は、請求項2記載のチューブポンプを用いた冷却水用薬注装置において、前記駆動部に電力を供給する電源線に、前記駆動部の起動時に生じる所定値以上の過電流の発生を防止する抵抗が接続されているものである。
【発明の効果】
【0010】
請求項1記載のチューブポンプを用いた冷却水用薬注装置は、チューブ体を上流側から下流側に向けて順次押し潰してチューブ体内の薬剤を送り出す場合に、チューブ体の内部に所定値以上の圧力がかかることを防止する制御手段を有している。このため、このチューブ体の内部の圧力が上がり過ぎた場合に生じるおそれのあるチューブ体の抜けや破損を確実に防止できるから、このチューブ体による薬剤の安定した供給が可能となる。
【0011】
請求項2記載のチューブポンプを用いた冷却水用薬注装置は、請求項1記載のチューブポンプを用いた冷却水用薬注装置の効果に加え、駆動部に電力を供給する過電流防止付定電圧電源装置を用いて駆動部に流れる電流値を制御することにより、チューブ体の内部に所定値以上の圧力がかかることを簡単な構成で確実に防止できる。
【0012】
請求項3記載のチューブポンプを用いた冷却水用薬注装置によれば、請求項2記載のチューブポンプを用いた冷却水用薬注装置の効果に加え、駆動部に電力を供給する電源線に、抵抗が接続されているので、この駆動部の起動時に生じる所定値以上の過電流の発生を防止できる。よって、この駆動部の起動時に生じる過電流によって、駆動部への電力の供給を制御してこの駆動部の駆動を停止させることを防止でき、チューブポンプの円滑な起動が可能となり、チューブ体による薬剤の供給をより安定にできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明のチューブポンプを用いた冷却水用薬注装置の実施の一形態を図1および図2を参照して説明する。
【0014】
図2において、1は冷却水用薬注装置で、この冷却水用薬注装置1は、所定の液体としての液状の薬剤Aを、図示しない冷却水系装置の冷却水へ注入するものである。ここで、薬剤Aは、冷却水系装置を構成する軟鋼または銅の腐食を防止する作用を有する防食剤や、冷却水の濃縮によるスケールの発生を防止する作用を有するスケール防止剤、冷却水中の微生物の増殖によるスライムの発生を防止する作用を有するスライム防除剤などである。
【0015】
具体的に、冷却水用薬注装置1は、冷却水系装置に組み込まれる装置であって、所定の水平な面である据え付け面B上に設置される装置本体2を備えている。この装置本体2は、この装置本体2の下端部の外周面に取り付けられたアンカープレート3によって据え付け面B上に固定されている。また、この装置本体2の上部には、所定の薬剤Aが貯溜される貯溜部としての薬注タンク4が取り付けられている。そして、この薬注タンク4の上部には、この薬注タンク4の上部を開閉させる蓋体としての薬注タンク蓋5が取り外し可能に取り付けられている。
【0016】
一方、冷却水用薬注装置1の装置本体2の内部には、薬剤Aを搬送して注入するためのチューブポンプ6が取り付けられている。このチューブポンプ6は、側面視円弧状の内周面11を有する収容部としてのケーシング12を備えている。このケーシング12には、一対の開口部13,14が形成され、これら開口部13,14は内周面11に連通して設けられている。さらに、これら開口部13,14は、それぞれの軸方向を沿わせた状態で設けられている。また、ケーシング12は、これら開口部13,14を下方にそれぞれ向けた状態で装置本体2内に取り付けられている。
【0017】
そして、このケーシング12の内周面11には、弾性変形可能な可撓性を有する細長円筒状のチューブ体15が、このチューブ体15の外周面16をケーシング12の内周面11に沿わせた状態で、側面視円弧状に湾曲させて取り付けられている。このチューブ体15は、薬剤Aを流動できるように構成されている。さらに、このチューブ体15は、このチューブ体15の上流側がケーシング12の上流側の開口部13に挿入され、このチューブ体15の下流側がケーシング12の下流側の開口部14に挿入された状態で取り付けられている。
【0018】
また、このケーシング12の中央部には、側面視円盤状の送出作動部としてのロータ部17が、このケーシング12の内周面11に同心状に回転可能に取り付けられている。このロータ部17は、ケーシング12の内周面11に沿って取り付けられたチューブ体15の外周面16のうち互いに向かい合う内側の部分の内径寸法より若干小さな外径寸法を有する円盤状に形成されている。
【0019】
そして、このロータ部17の中心部には、このロータ部17を周方向に向けて回転させる回転軸18が同心状に取り付けられている。この回転軸18には、図1に示すように、この回転軸18を周方向に向けて回転させてロータ部17を回転駆動させる駆動部としてのモータ19が取り付けられている。このモータ19は、電力の供給によって駆動する電動式である。
【0020】
さらに、ロータ部17の外周縁部には、少なくとも1つ以上、例えば2つのローラ体21,22が回転可能に取り付けられている。これらローラ体21,22は、ロータ部17の回転方向に沿って回転可能に軸支されて取り付けられている。また、これらローラ体21,22は、ロータ部17の中心位置を基準として等角度で分割した位置に取り付けられている。さらに、これらローラ体21,22は、これらローラ体21,22の外周面の一部をロータ部17の外周面より外側に向けて突出させた状態で取り付けられている。
【0021】
そして、これらローラ体21,22は、ロータ部17をケーシング12内でチューブ体15の上流側から下流側に回転させることにより、これらローラ体21,22のそれぞれが回転しながらチューブ体15の上流側から下流側に向けてチューブ体15の少なくとも一部をケーシング12の内周面11に押し付ける。さらに、これらローラ体21,22は、チューブ体15の一部をケーシング12の上流側の開口部13側から下流側の開口部14側に向けて順次押し潰しながら移動する。そして、これらローラ体21,22は、チューブ体15の内部に吸引された薬剤Aを、このチューブ体15の下流側へ送り出すとともに、このチューブ体15の上流側から内部へ薬剤Aを吸引させる。
【0022】
すなわち、これらローラ体21,22は、チューブ体15の上流側から下流側に向けたロータ部17の回転に伴って、これらローラ体21,22がチューブ体15の一部をケーシング12の内周面11との間で押し潰す。そして、これらローラ体21,22は、チューブ体15の一部を押し潰した状態で、ロータ部17の回転に伴ってチューブ体15の下流側に向けて回転しながら移動して、このチューブ体15の押し潰している位置を、このチューブ体15の下流側に向けて連続して移動させる。よって、これらローラ体21,22は、ロータ部17の回転に伴うチューブ体15の一部を押し潰しながらの移動によって、ケーシング12の上流側の開口部13側から薬剤Aを連続して吸引させつつ、このケーシング12の下流側の開口部14側から薬剤Aを連続して送出させる。
【0023】
さらに、チューブポンプ6のケーシング12の開口部13,14のうち、チューブ体15の上流側が挿入されている上流側の開口部13には、導入側の配管パイプ23の下流側が接続されている。この配管パイプ23の上流側には、導入側ホースとしての細長円筒状の薬注ホース24の下流側が接続されている。この薬注ホース24の上流側は、薬注タンク4の下端部に接続されたサクションバルブ25に接続されている。
【0024】
ここで、このサクションバルブ25は、このサクションバルブ25を開動作することにより、薬注タンク4内に貯溜されている薬剤Aを薬注ホース24へ吸引可能にさせる。また、このサクションバルブ25は、このサクションバルブ25を閉動作することにより、薬注タンク4内に貯溜されている薬剤Aが薬注ホース24へ吸引できないようにする。
【0025】
さらに、チューブポンプ6のケーシング12の開口部13,14のうち、チューブ体15の下流側が挿入されている下流側の開口部14には、注入側の配管パイプ26の上流側が接続されている。この配管パイプ26の下流側には、注入側ホースとしての細長円筒状の薬注ホース27の上流側が接続されている。この薬注ホース27の下流側は、冷却水系装置の冷却塔下部水槽内に接続されている。このため、この薬注ホース27は、この薬注ホース27の内部へと送り出された薬剤Aを冷却水へ注入させる。
【0026】
また、装置本体2には、この装置本体2の内部に収容されているチューブポンプ6を覆うポンプカバー28が取り外し可能に取り付けられている。また、この装置本体2の下端部には、薬注タンク4に貯溜されている薬剤Aを交換したり排出したりするためのドレインコック29が取り付けられている。
【0027】
一方、この装置本体2の外側面には、コントロールパネル31が取り付けられている。このコントロールパネル31は、図1に示すように、制御手段としての過電流防止付定電圧電源装置32と、タイマ機構33と、抵抗Rと、スイッチSとを備えている。過電流防止付定電圧電源装置32は、チューブポンプ6のロータ部17を回転駆動させるモータ19に電力を供給するとともに、チューブポンプ6のモータ19に供給される電力の電流値が所定以上の過電流となることを防止できる過電流防止手段を有している。
【0028】
ここで、この過電流防止手段としては、チューブポンプ6のモータ19に供給される電力の電流値をコイルで検出し、このモータ19の負荷電流が所定値以上の値になると、過電流保護機能が動作して出力を低下させて供給電力を低下させる方式などがある。
【0029】
また、コントロールパネル31内のタイマ機構33は、チューブポンプ6のモータ19への電力の供給を制御する。
【0030】
さらに、過電流防止付定電圧電源装置32とモータ19との間には、電源ラインとしての一対の電源線34,35が接続されている。そして、これら電源線34,35のうちの正極(+:プラス)側に位置する電源線34には、電気抵抗である抵抗Rが直列に接続されている。この抵抗Rは、チューブポンプ6のモータ19を起動させるとき、すなわち起動時に生じる所定値以上の過電流の発生を防止する。
【0031】
また、これら電源線34,35のうちの負極(−:マイナス)側に位置する電源線35には、コントロールパネル31内のタイマ機構33の制御により開閉してオンオフ(ON・OFF)するスイッチSが取り付けられている。
【0032】
次に、上記実施の一形態の冷却水用薬注装置の動作について説明する。
【0033】
まず、冷却水用薬注装置1の薬注タンク蓋5を開けて、この冷却水用薬注装置1の薬注タンク4に薬剤Aを貯溜させる。
【0034】
この状態で、この冷却水用薬注装置1のサクションバルブ25を開動作させてから、コントロールパネル31内の図示しないスイッチをオンして通電する。
【0035】
すると、このコントロールパネル31内のタイマ機構33が始動して、あらかじめ設定された時間に達するとスイッチSがオンとなり、過電流防止付定電圧電源装置32から電源線34,35を介してチューブポンプ6のモータ19に電力が供給されて駆動する。
【0036】
このとき、このチューブポンプ6のモータ19の起動時に生じる所定値以上の過電流の発生が、このモータ19と過電流防止付定電圧電源装置32との間の正極側の電源線34に設けられた抵抗Rによって防止される。
【0037】
さらに、このモータ19の駆動にて回転軸18が回転駆動し、この回転軸18の回転駆動にてチューブポンプ6のロータ部17が回転駆動する。
【0038】
そして、このロータ部17の回転駆動によって、このロータ部17に取り付けられている各ローラ体21,22がケーシング12内でチューブ体15の上流側から下流側に向けて順次移動する。
【0039】
この結果、これら各ローラ体21,22のそれぞれが回転しながらチューブ体15の上流側から下流側に向けてチューブ体15の少なくとも一部を順次押し潰しながら移動することにより、薬注タンク4内の薬剤Aがサクションバルブ25、薬注ホース24および配管パイプ23を介してチューブ体15の上流側から内部へと吸引されていき、このチューブ体15の内部に吸引された薬剤Aが、このチューブ体15の下流側へ送り出される。
【0040】
そして、チューブポンプ6のチューブ体15の下流側から送り出された薬剤Aは、配管パイプ26および薬注ホース27へと順次送り出されていき、冷却水系装置の冷却塔下部水槽内へ搬送されて、この冷却塔内の冷却水に注入される。
【0041】
ここで、チューブポンプ6の駆動時に、何らかのトラブルが発生し、薬注ホース24,27や配管パイプ23,26が閉塞してチューブポンプ6のチューブ体15の内圧が上昇した場合であっても、このチューブポンプ6は、電気的または機械的な制御が働かない限り動作し続けて薬剤を送り続けようとする。
【0042】
このため、このチューブポンプ6のチューブ体15の内圧が所定値以上の異常な値にまで上昇した場合には、このチューブポンプ6のチューブ体15が配管パイプ23,26から抜けたり、このチューブ体15や薬注ホース24,27が破裂して破損したりするおそれがある。
【0043】
このとき、このチューブポンプ6のチューブ体15の内部に所定値以上の圧力がかかった場合には、このチューブポンプ6のモータ19へと流れる電流値が増加する。
【0044】
ここで、過電流防止付定電圧電源装置32は、チューブポンプ6のチューブ体15の内圧の増加等負荷の増大によりモータ19へ供給される電流値が所定以上の過電流になると、過電流防止付定電圧電源装置32からモータ19への電力の供給が自動的に制限される過電流防止手段を有しているので、過電流防止付定電圧電源装置32からモータ19への電力の供給が制限されてモータ19の駆動が停止する。
【0045】
この結果、このチューブポンプ6のチューブ体15の内圧が所定値以上に上がり過ぎることが防止されて、このチューブ体15の内部に所定値以上の圧力がかかることが防止でき、このチューブ体15の配管パイプ23,26からの抜けなどを確実に防止できるとともに、このチューブ体15や薬注ホース24,27の破損を確実に防止できるから、このチューブポンプ6による薬剤Aの安定した供給が可能となる。
【0046】
さらに、チューブポンプ6のモータ19と過電流防止付定電圧電源装置32とを接続する正極側の電源線35に抵抗Rを取り付けたことにより、このモータ19の起動時に生じる所定値以上の過電流の発生を防止できる。
【0047】
したがって、このモータ19の起動時に生じる高電流値の過電流を、所定値以上の過電流となったと検出し、過電流防止付定電圧電源装置32の過電流防止手段によってモータ19への電力の供給を制限してこのモータ19の駆動が停止することを防止できる。このため、このチューブポンプ6の円滑な起動が可能となり、このチューブポンプ6のチューブ体15による薬剤Aの供給をより安定化できる。
【0048】
よって、冷却水用薬注装置1から冷却水系装置の冷却水への薬剤Aの搬送および注入をより安定化できる。
【0049】
また、冷却水用薬注装置1のポンプとしてチューブポンプ6を用いたことにより、このチューブポンプ6を大型化させることなく、短時間で大量の薬剤Aを冷却水系装置の冷却塔に搬送および注入できる。したがって、この冷却水用薬注装置1の小型化が可能となるので、この冷却水用薬注装置1の据え付け場所が制限されることを防止できるとともに、この冷却水用薬注装置1を据え付ける際の追加工事を不要にできる。
【0050】
さらに、チューブポンプ6では、このチューブポンプ6にて注入する薬剤Aから発生するガス等の原因で、冷却水用薬注装置1内に気泡が混入した場合であっても、定量型のダイヤフラム式ポンプの場合のようなガスロックを生じるおそれがない。
【0051】
以上から、冷却水用薬注装置1のポンプとしてチューブポンプ6を用いたことにより、小型化および大容量化できるとともに、薬剤A中から発生するガス等の原因で冷却水用薬注装置1内に気泡が混入しても支障なく安定して、この薬剤Aの搬送および供給が可能である。
【0052】
さらに、チューブポンプ6であれば、弁構造が不要となるので、注入する薬剤Aが粘度の極端に大きなスラリー状の薬剤Aや、析出物を生じやすい薬剤Aであっても詰まりにくいので、この薬剤Aの搬送および注入が可能である。
【0053】
加えて、冷却水用薬注装置1にて注入する薬剤Aを変更する場合であっても、チューブポンプ6のチューブ体15や配管パイプ23,26、薬注ホース24,27などを交換するだけで済む。このため、このチューブポンプ6の内部を洗浄などする必要がないから、冷却水用薬注装置1にて注入する薬剤Aの変更が容易にできる。
【0054】
よって、チューブポンプ6の特性により、薬剤Aの種類や状態に関係なく、目詰まりや空運転、ガスロックを引き起こすことを防止でき、安定した薬注が可能で、小型化でき、大容量の搬送および注入が可能な冷却水用薬注装置1にできる。
【0055】
なお、上記実施の一形態では、チューブポンプ6のケーシング12の内周面11を円弧状に形成し、このケーシング12の内周面11に沿ってチューブ体15を配設して、このチューブ体15をロータ部17の回転で上流側から下流側に向けて順次押し潰す構成としたが、逆止弁などを用いることにより、このケーシング12の内周面11を平坦な内側面とし、この内側面に沿ってチューブ体15を配設して、このチューブ体15の上流側から下流側に向けて順次押し潰す構成とすることもできる。
【0056】
また、チューブポンプ6のチューブ体15の内部に所定以上の圧力がかかることを防止する制御手段としては、例えばチューブ体15内部の圧力を検知して、この圧力が所定圧力値以上になるとモータ19への供給電源をオフにする構成(例1)や、チューブ体15内部の圧力が増大することによりモータ19を流れる電流値も増加することから、この電流値が所定電流値以上になるとモータ19への供給電源をオフにする構成(例2)や、モータ19に電力を供給する過電流防止付定電圧電源装置32で、このモータ19に流れる電流値を制御する構成(例3)などがある。
【0057】
そして、チューブポンプ6のチューブ体15の内部に所定以上の圧力がかかることを防止する方法としては、上記例3に示す方法が簡単な構成で確実である。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明のチューブポンプを用いた冷却水用薬注装置の制御手段の実施の一形態を示す説明図である。
【図2】同上冷却水用薬注装置の一部を切り欠いた正面図である。
【符号の説明】
【0059】
1 冷却水用薬注装置
6 チューブポンプ
15 チューブ体
17 送出作動部としてのロータ部
19 モータ
32 制御手段としての過電流防止付定電圧電源装置
34 電源線
A 薬剤
R 抵抗

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬剤が流動する弾性変形可能な筒状のチューブ体と、このチューブ体を上流側から下流側に向けて順次押し潰して前記チューブ体内の薬剤を送り出す送出作動部と、この送出作動部を駆動させる駆動部とを備えたチューブポンプを用いた冷却水用薬注装置であって、前記チューブ体の内部に所定値以上の圧力がかかることを防止する制御手段を有する
ことを特徴としたチューブポンプを用いた冷却水用薬注装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記駆動部に電力を供給する過電流防止付定電圧電源装置であり、
この過電流防止付定電圧電源装置は、前記駆動部に流れる電流値を制御して、前記チューブ体の内部に所定値以上の圧力がかかることを防止する
ことを特徴とした請求項1記載のチューブポンプを用いた冷却水用薬注装置。
【請求項3】
前記駆動部に電力を供給する電源線に、前記駆動部の起動時に生じる所定値以上の過電流の発生を防止する抵抗が接続されている
ことを特徴とした請求項2記載のチューブポンプを用いた冷却水用薬注装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−246440(P2008−246440A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−93815(P2007−93815)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(000101042)アクアス株式会社 (66)