説明

チューブ入り製品の製造方法、および充填装置

【課題】チューブ容器のチューブ口元部にキャップ部材を嵌めた状態で内容物を充填する場合であってもチューブ口元部にエアー溜まりが生じることを抑制できる技術を提供する。
【解決手段】チューブ入り製品の製造方法は、キャップ部材が嵌められたチューブ容器に対してチューブ胴体部の開放端から充填ノズル及び吸引ノズルを挿入し少なくとも吸引ノズルの吸引口をチューブ口元部に配置する挿入工程と、挿入工程の後に充填ノズルによる内容物の吐出および吸引ノズルによる吸引を開始し充填ノズルから吐出された内容物と共に空気を吸引口から吸引しつつチューブ口元部に対して内容物を充填する第一充填工程と、第一充填工程の後に吸引ノズルによる吸引を停止した状態で充填ノズルによる内容物の吐出を継続することによりチューブ胴体部に対して内容物を充填する第二充填工程を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チューブ入り製品の製造方法、および充填装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ボディクリームや練歯磨きなどのクリーム状の内容物を充填するためのチューブ容器として、断面が略円形の中空筒状のチューブ胴体部と、このチューブ胴体部の先端側に一体かつ先窄まりとなるように形成されたチューブ口元部と、チューブ胴体部のチューブ口元部が形成される方とは逆側に形成される開放端を例えば平坦に押し潰して線状に封止した封止部とを備えるものが一般に用いられている。また、チューブ容器のチューブ口元部には、このチューブ口元部を開閉自在に閉塞するための例えばネジ式やヒンジ式のキャップが取り付けられることが多い。また、チューブ容器に内容物を充填するための充填装置を種々のものが開発されている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−226309号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
チューブ入り製品の製造方法としては、中空筒状のチューブ胴体部におけるチューブ口元部にキャップ部材を取り付けた状態で且つチューブ容器をチューブ口元部側が下方となる姿勢に保持した状態で、チューブ胴体部のチューブ口元部とは逆側に形成された開放端(開口端)から内容物を注入(充填)した後、チューブ胴体部の開放端を熱圧着などの方法によって線状に封止する方法が一般である。
【0005】
しかしながら、クリーム状の内容物などの粘性物を充填する場合、上記従来の充填方法では、内容物の充填時においてチューブ口元部にエアーが溜まった状態で保持される所謂エアー溜まり(空気溜まり)が起こり易くなるのが実情である。その結果、チューブ容器に内容物が充填されてなるチューブ入り製品をユーザが使い始める際に、チューブ容器のチューブ胴体部を押して内容物を押し出さそうにも、内容物がチューブ口元部まで充填されていないため、内容物を円滑に外部へ押し出すことが阻害される場合があった。
【0006】
チューブ入り製品の製造過程における上記エアー溜まりの抑止方法としては、キャップを取り外した状態で内容物をチューブ容器におけるチューブ胴体部の開放端から注入する方法が一例として考えられる。この場合、チューブ容器のチューブ胴体部に溜まっていたエアーを、チューブ口元部に充填された内容物と一緒に外部に排出することでエアー溜まりの発生を回避できるとも考えられる。しかしながら、この方法ではエアー溜まりを回避することができる反面、内容物の一部をチューブ口元部から漏出させることに起因してチューブ口元部が汚れてしまうため、清掃の手間を要する。また、チューブ入り製品を完成させるためには、チューブ口元部の清掃後にキャップをチューブ口元部に嵌めることが必要であり、チューブ入り製品の生産性(生産効率)の低下を招くことも想定される。
【0007】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、チューブ入り製品を製造するに当たり、チューブ容器のチューブ口元部にキャップを嵌めた状態で内容物を充填する場合であってもチューブ口元部にエアー溜まりが生じることを抑制可能な技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明では、上述した課題を解決するために以下の手段を採用する。すなわち、本発明は、チューブ胴体部と、該チューブ胴体部の先端側に一体に形成されて該チューブ胴体部よりも小径となっていると共に外部に開放されたチューブ口元部と、該チューブ口元部に嵌められるキャップ部材とを備えたチューブ容器に充填装置を用いて内容物を充填することによってチューブ入り製品を製造する製造方法であって、前記充填装置は、その先端側に形成された吐出口から内容物を吐出する充填ノズルと、前記チューブ口元部の内径よりも小さな外径を有すると共にその先端側に形成された吸入口に吸入力を作用させる吸引ノズルと、を備え、前記製造方法は、前記チューブ口元部に前記キャップ部材が嵌められた状態の前記チューブ容器に対して、前記チューブ胴体部において該チューブ口元部とは逆側に形成された開放端から前記充填ノズル及び前記吸引ノズルを挿入し、少なくとも該吸引ノズルの前記吸引口を前記チューブ口元部に配置する挿入工程と、前記挿入工程の後に、前記充填ノズルによる内容物の吐出および前記吸引ノズルによる吸引を開始し、該充填ノズルから吐出された内容物と共に前記チューブ口元部に溜まっている空気を前記吸引口から吸引しつつ該チューブ口元部に対して内容物を充填する第一充填工程と、前記第一充填工程の後に、前記吸引ノズルによる吸引を停止した状態で前記充填ノズルによる内容物の吐出を継続することにより前記チューブ胴体部に対して内容物を充填する第二充填工程と、を含むチューブ入り製品の製造方法である。
【0009】
本発明によれば、第一充填工程において、例えば充填ノズルからの内容物が先窄まり形状になっているチューブ口元部に覆い被さるように吐出され、そのままではチューブ口元部に溜まっている空気(エアー)を逃がし難い状況下においても、チューブ口元部にセットされた吸入口からそのエアーを内容物と一緒に吸引することができる。このようにして、チューブ口元部にエアー溜まりを生じさせることなく、内容物の充填を行うことができる。
【0010】
その後の第二充填工程においては、吸引ノズルによる吸引を停止した状態で充填ノズルから内容物が吐出され、チューブ胴体部に対する内容物の充填が行われる。そして、チューブ容器全体に対して規定量の内容物が充填されると第二充填工程が終了する。第二充填工程の開始時には、既にチューブ口元部のエアーが吸引ノズルにて吸引されて且つ内容物が充填されているため、第二充填工程において吸引ノズルの作動を停止しても、最終的にチューブ口元部にエアー溜まりが生じる虞はない。
【0011】
斯くして、本発明に係るチューブ入り製品の製造方法によれば、チューブ容器の口元部にキャップを嵌めた状態で内容物を充填する場合であってもチューブ口元部にエアー溜まりが生じることを抑制することが可能となる。
【0012】
また、本発明によれば、チューブ口元部へのエアー溜まりの発生を抑制しつつ、キャップ部材をチューブ口元部に嵌めた状態で内容物の充填を行うことができるため、従来のようにキャップ部材を外した状態で内容物を充填する場合のようにチューブ口元部から漏出した内容物によってチューブ口元部が汚れることを抑止できる。従って、チューブ口元部を清掃する手間も掛からず、また、その後にキャップ部材をチューブ口元部に嵌め込む作業も省略できるため、チューブ入り製品の生産性を向上することができる。
【0013】
また、本発明に係るチューブ入り製品の製造方法は、前記第二充填工程の後に、前記チューブ胴体部の前記開放端を封止する封止工程を更に含むようにしても良い。
【0014】
また、本発明に係るチューブ入り製品の製造方法は、前記第二充填工程において、前記チューブ容器に対する前記充填ノズルの挿入深さが、前記チューブ容器内における内容物の充填高さが増加するに従って減少するように調節されても良い。
【0015】
また、本発明は、チューブ容器に内容物を充填するための充填装置としても捉えることができる。すなわち、本発明は、チューブ胴体部と、該チューブ胴体部の先端側に一体に形成されて該チューブ胴体部よりも小径となっていると共に外部に開放されたチューブ口元部と、該チューブ口元部に嵌められるキャップ部材とを備えたチューブ容器に内容物を充填する充填装置であって、前記チューブ胴体部において前記チューブ口元部とは逆側に形成された開放端からその内部に挿入されて且つその先端側に形成された吐出口から内容物を吐出する充填ノズルと、前記チューブ胴体部の前記開放端からその内部に挿入されて且つ前記チューブ口元部の内径よりも小さな外径を有すると共にその先端側に形成された吸引口に吸入力を作用させる吸引ノズルと、前記チューブ口元部に前記キャップ部材が嵌められた状態の前記チューブ容器に対して少なくとも前記吸引ノズルの前記吸引口を該チューブ口元部に配置した状態で、前記充填ノズルによる内容物の吐出および前記吸引ノズルによる吸引を実施し、該充填ノズルから吐出された内容物と共に前記チューブ口元部に溜まっている空気を前記吸引口から吸引しつつ該チューブ口元部に対して内容物を充填する第一充填処理と、該第一充填処理の後に、前記吸引ノズルによる吸引を停止した状態で前記充填ノズルによる内容物の吐出を継続することにより前記チューブ胴体部に対して内容物を充填する第二充填処理と、を実行する充填手段と、を備える充填装置である。
【0016】
また、本発明に係る充填装置は、前記吸引ノズルにおいて前記吸入口が形成される先端部には、端縁の一部を切り欠いて形成される切り欠き部が設けられていても良い。このようにすると、切り欠き部を通じて、充填ノズルから吐出された内容物と共にチューブ口元部のエアーを吸引ノズル内部に誘導し易くなるため、エアーの吸引効率を高めることができる。なお、吸引ノズルの先端部、すなわち吸入口が形成される部分に形成する切り欠き部の数は一つであっても良いし、複数であっても良い。また、切り欠き部の形状は半円、楕円、矩形、多角形など、種々の形状を採用することができる。
【0017】
また、本発明に係る充填装置において、前記吸引ノズルは前記充填ノズルの内部に一体的に組み込まれており、吸引ノズルの先端側が該充填ノズルの先端側に形成された吐出口から突出していても良い。通常、チューブ口元部は、チューブ容器の横断面方向において中心又はその近傍の位置に形成されており、チューブ口元部が極端に偏心配置されていることは少ないと考えられる。従って、上記したように吸引ノズルを充填ノズルの内部に組み込む構成、例えば充填ノズルと吸引ノズルを同軸上に配置する構成を採用することで、第一充填処理(第一充填工程ということもできる)において、吸引ノズルをチューブ口元部の横断面(軸方向と直交する方向の断面)の中心付近にセットすることができる。これによって、チューブ容器のチューブ口元部に残存しているエアーを効率的に吸引することができる。但し、吸引ノズルと充填ノズルの配置関係は上記した以外の関係とすることができ、例えば充填ノズルの外面に吸入ノズルを沿わすように配置しても良い。
【0018】
また、吸引ノズルの先端側が充填ノズルの吐出口から突出する突出長さは、第一充填処理、又は上述した第一充填工程において充填ノズルの先端部がチューブ胴体部とチューブ口元部との境界に形成される肩部と接触しないような長さに設定されると良い。
【0019】
また、本発明に係る充填装置において、前記キャップ部材が嵌められた状態の前記チューブ容器を保持する容器ホルダと、前記容器ホルダに保持されている前記チューブ容器に対する充填ノズル及び前記吸引ノズルの挿入深さを調節可能な調節手段と、を更に備え、充填手段が第二充填処理を実行する際に、調節手段は少なくとも充填ノズルのチューブ容器に対する挿入深さを、該チューブ容器内における内容物の充填高さが増加するに従って減少させても良い。その際、充填ノズルの挿入深さを内容物の充填高さに応じて徐々に変化させても良いし、段階的に変化させても良い。
【0020】
また、上記のように充填ノズル及び吸引ノズルが一体的に構成されている場合、調節手段は、容器ホルダを昇降、又は、充填ノズル及び吸引ノズルを一体的に昇降することによって各ノズルのチューブ容器への挿入深さを連動して調節するようにしても良い。
【0021】
また、本発明に係る充填装置において、充填ノズルの外径は、チューブ口元部の内径よりも大きく設定されても良い。これにより、チューブ容器への内容物の充填処理を効率的に行うことができる。例えば、充填ノズルの外径をチューブ胴体部の内面と所定のクリアランスを確保できる程度の寸法に設定しても良い。このように、出来るだけ充填ノズルの外径を大きくすることで、第一及び第二充填処理に要する時間を短縮することができ、チューブ入り製品の生産性を一層向上させることができる。
【0022】
なお、本発明における課題を解決するための手段は、可能な限り組み合わせることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、チューブ入り製品を製造するに当たり、チューブ容器のチューブ口元部にキャップを嵌めた状態で内容物を充填する場合であってもチューブ口元部にエアー溜まりが生じることを抑制可能な技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に係る充填装置を用いた製造方法によって製造されたチューブ入り製品の一例を示す斜視図である。
【図2】実施形態に係る充填装置を示す概略構成図である。
【図3】実施形態の充填処理に係る処理フローを示すフローチャートである。
【図4】実施形態の充填処理において、チューブホルダにチューブ容器がセットされた状態を示す図である。
【図5】実施形態の充填処理において、充填ノズルおよび吸引ノズルをチューブ容器に挿入した状態を示す図である。
【図6】実施形態の吸引ノズルにおける吸引口の形状を例示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に図面を参照して、この発明を実施するための形態を例示的に詳しく説明する。尚、本実施の形態に記載されている構成要素の寸法、材質、形状、その相対配置等は、特に特定的な記載がない限りは、発明の技術的範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。以下の図面において、既述の図面に記載された部品と同様の部品には同じ番号を付す。また、以下に説明する本発明に係る充填装置の各実施形態の説明は、本発明に係るチューブ入り製品の製造方法の説明を兼ねるものである。
【0026】
[チューブ入り製品]
図1は、本発明に係る充填装置1を用いた製造方法によって製造されたチューブ入り製品の一例を示す斜視図である。チューブ入り製品20は、中空筒状のチューブ胴体部21と、チューブ口元部22と、封止端部23と、キャップ部材24とからなるチューブ容器25に、例えばボディクリームなどのクリーム状の内容物26を充填して構成されている。
【0027】
チューブ容器25において、チューブ口元部22は、チューブ胴体部21の先端側でチューブ胴体部21と一体的に形成されている。また、チューブ口元部22は、チューブ胴体部21よりも小径となるように先窄まり形状に形成されており、外部に開放されている。ここで、チューブ胴体部21は柔軟性を有しており、ユーザによる手指の押圧の作用によってチューブ胴体部21が変形することにより、チューブ容器25に充填されている内
容物26をチューブ口元部22から外部に押し出すことができる。
【0028】
チューブ口元部22の外周面には、キャップ部材24に形成されているネジ溝(図示省略)と係合してキャップ部材24をチューブ口元部22に螺合させるネジ溝が形成されている。キャップ部材24は、例えばネジ溝同士の螺合によってチューブ口元部22を閉塞し、螺合を解除することによってチューブ口元部22が外部に向けて開放されることになる。なお、このようにチューブ口元部22を閉塞するキャップ部材24は、上述したようにネジ溝同士の螺合を利用したもの以外にも、例えばヒンジ式のバネにより回動する蓋部材によってチューブ口元部22を閉塞する方式など、種々の形態を採用することができる。また、封止端部23は、チューブ胴体部21の他端側、すなわちチューブ口元部22が形成される方とは逆側の端部に形成される開放端(外部に向けて開放された端部)を平らに押し潰し、例えば熱圧着などによって融着することで直線状に封止したものである。
【0029】
また、チューブ胴体部21の材質は、チューブ容器25に収容される内容物26の材質やその他の事項を勘案し、従来から用いられているものを使用することができ、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、EVA(エチレン酢酸ビニル共重合体)、AL(アルミニウム)積層チューブ、AL(アルミニウム)金属メタルチューブ等を好適に用いることができる。
【0030】
また、チューブ胴体部21は、その内部に充填される内容物26と接触する内面側にいわゆるバリア層を設けるようにしても良い。このバリア層は、例えば内容物26に含まれる香料などの揮発成分がチューブ胴体部21を透過して抜け出てしまったり、或いは、外部の湿気などの水蒸気がチューブ胴体部21を透過して内容物26に浸透することなどを防止する目的で設けることができ、これによって内容物26の変質などを長期にわたって抑止することができる。バリア層の材質としては、水蒸気、気体などの透過を防止し、且つ柔軟な材料を好適に用いることが可能であり、例えば、アルミ箔、EVOH(エチレンビニルアルコール)、ナイロン(ポリアミド)、蒸着膜(シリカ、カーボン、アルミ等)、PAN(ポリアクリロニトリル)等を採用しても良い。
【0031】
[充填装置]
次に、チューブ容器25に対して例えばクリーム状の内容物26を充填するための充填装置1について説明する。図2は、実施形態に係る充填装置1を示す概略構成図である。充填装置1は、供給装置3、吸引装置4、チューブホルダ5、ホルダ駆動装置6、制御部7を備える。
【0032】
チューブホルダ5は、チューブ容器25を保持するための部材であり、本発明における容器ホルダに相当する。チューブホルダ5には、内容物26が充填されておらず、且つ、その開放端27が封止される前の状態のチューブ容器25がセットされるようになっている。そして、このチューブ容器25は、チューブ口元部22にキャップ部材24が嵌められた状態で、且つ、キャップ部材24が下方(開放端27が上方)になるような姿勢でチューブホルダ5にセットされる。すなわち、チューブ容器25は、チューブホルダ5に対して、キャップ部材24が下向きになるようにセットされる。なお、チューブホルダ5は、後述するようにホルダ駆動装置6によって上下方向に昇降するように駆動される。ホルダ駆動装置6は、チューブホルダ5を昇降させるための駆動装置であり、例えば機械式カムや電子式カムを備えて構成しても良い。
【0033】
制御部7は、充填装置1全体の制御を行うコントロールユニットであり、例えば双方向性バスによって相互に接続された図示しない中央処理装置であるCPU(Central Processing Unit)や、メモリなどを備える。メモリは、CPUで実行される内容物の充填処理
に関する制御プログラムなどを記憶しており、例えば揮発性のRAM(Random Access Me
mory)、不揮発性のROM(Read Only Memory)を備える。ROMには、充填装置1が機能する上で必要なプログラムやパラメータなどが格納されている。上述したホルダ駆動装置6も電気配線を介して制御部7と電気的に接続されており、制御部7が出力する制御指令信号に基づいてチューブホルダ5の昇降が制御されるようになっている。
【0034】
次に、供給装置3について説明する。供給装置3は、内容物の貯留タンクであるホッパー31、充填シリンダー32、エアシリンダー33、切替バルブ34、電磁弁35、充填ノズル36、エアーポンプ38などを含んで構成されている。
【0035】
ホッパー31は、チューブ容器25に充填するための内容物26を貯留する貯留タンクであり、この実施形態ではクリーム状の粘性内容物が貯留されている。ホッパー31の下部には、切替バルブ34が設けられている。この切替バルブ34はいわゆる回転式の切替バルブであり、ケーシング部340と、このケーシング部340に収容される回転弁部341を含んで構成されている。回転弁部341は、その内部に内部通路342を有している。この図の例では、直方体のケーシング部材340の内部に、円柱体の回転弁部341が回転自在に収容されている。そして、図2に示すように、回転弁部341には略L字型に内部通路342が形成されている。
【0036】
上記のように構成される切替バルブ34の下部には充填ノズル36が取り付けられており、切替バルブ34の側方には充填シリンダー32が取り付けられている。ケーシング部340を構成する六面のうち、異なる三面には第一ポート343〜第三ポート345が形成されている。そして、ケーシング部340における第一ポート343はホッパー31と接続され、第二ポート344は充填ノズル36と接続され、第三ポート345は充填シリンダー32と接続されている。
【0037】
切替バルブ34には、図示しないアクチュエータが取り付けられている。このアクチュエータは制御部7と電気的に接続されている、制御部7から出力される制御指令信号に基づいて回転弁部341の回転位置(停止位置)が制御される。具体的には、制御部7からの制御信号に基づいて回転弁部341の停止位置が、図示した第一連通位置と、第一連通位置から時計回りに90°回転した第二連通位置の二つの位置から選択的に切り替えられる。
【0038】
制御部7からの制御指令信号により、切替バルブ34の回転弁部341が第一連通位置に制御されると、内部通路342が第一ポート343および第三ポート345の双方に接続される。その結果、第一ポート343、内部通路342、第三ポート345を介して、ホッパー31と充填シリンダー32が連通する。また、制御部7からの制御指令信号に基づいて回転弁部341が第二連通位置に切り替えられると、内部通路342が第三ポート345および第二ポート344の双方に接続される。その結果、第三ポート345、内部通路342、第二ポート344を介して、充填シリンダー32と充填ノズル36が連通する。以上のように、内部通路342は、第一ポート343および第三ポート345を接続するか、或いは第二ポート344および第三ポート345を接続するかを切り替える90°エルボー(肘)継手として機能する。
【0039】
充填ノズル36は、ホッパー31に貯留されている内容物26をチューブ容器25に充填する器具である。充填ノズル36は中空筒状に形成されており、その軸方向の基端側において上述した切替バルブ34(ケーシング部340)の第二ポート344と接続されている。また、充填ノズル36の先端側には内容物26を吐出するための吐出口360が形成されており、切替バルブ34の内部通路342を介して供給されてくる内容物26はこの吐出口360から外方に吐出される。
【0040】
充填シリンダー32の内部には、その内壁面に摺動自在に充填ピストン320が設けられている。充填ピストン320は、ロッド部材37の一端が接続されている。なお、充填シリンダー32における内部空間のうち、切替バルブ34および充填ピストン320によって挟まれた空間を、シリンダー貯留室321と称する。
【0041】
充填シリンダー32に隣接してエアシリンダー33が設けられている。エアシリンダー33の内部には、その内壁面に対して摺動自在な駆動用ピストン330が収容されている。駆動用ピストン330にはロッド部材37の他端が接続されている。また、エアシリンダー33の内部空間は、駆動用ピストン330によって二分されている。ここで、駆動用ピストン330によって二分されるエアシリンダー33の内部空間のうち、充填シリンダー32に近い方の室を「第一圧力室331」と称し、充填シリンダー32から遠い方の室を「第二圧力室332」と称する。
【0042】
エアシリンダー33の第一圧力室331および第二圧力室332は、電磁弁35を介してエアーポンプ38と接続されており、エアーポンプ38から所定圧の空気が圧送されるように構成されている。電磁弁35は、制御部7と電気配線を介して接続されており、制御部7から出力される制御指令信号に基づいて制御される。制御部7は、図示しない電力源からの電磁弁35への通電およびその解除を制御する。そして、電磁弁35への通電時にはその制御電圧を調節することによって、電磁弁35に収容されている例えばスプール弁などの弁体(図示省略)の位置を“第一制御位置”および“第二制御位置”の何れかに切り替えることが可能である。
【0043】
電磁弁35への通電時において、弁体が第一制御位置に制御されると、エアーポンプ38から圧送されてくるエアーがエアシリンダー33における第一圧力室331に導入される。また、弁体が第二制御位置に制御されると、エアーポンプ38から圧送されてくるエアーがエアシリンダー33における第二圧力室332に導入される。また、電磁弁35への非通電時においては、該電磁弁35の排気ポート(図示省略)を介して第一圧力室331および第二圧力室332のエアーが適宜排出(排気)され、双方の空間における圧力が平衡状態(等圧)となるように構成されている。
【0044】
次に、吸引装置4について説明する。吸引装置4は、吸引ノズル41、真空ポンプ42、排出通路43、分離器44などを含んで構成されている。吸引ノズル41は、排出通路43を介して真空ポンプ42と接続されている。また、排出通路43の途中には分離器44が取り付けられている。真空ポンプ42は、制御部7と電気配線を介して接続されており、制御部7から出力される制御指令信号に基づいて作動状態が制御される。なお、真空ポンプ42への通電は、図示しない電力源から行われる。
【0045】
吸引ノズル41は、図示のように充填ノズル36と同様に中空筒状であり、且つ、充填ノズル36に比べて小径として形成されている。そして、吸引ノズル41の軸方向の先端側には開口部である吸引口410が形成されており、制御部7からの制御指令信号によって真空ポンプ42が作動(稼動)すると、吸引ノズル41の吸引口410に負圧吸引力が作用するようになる。分離器44は、上面に排出通路43との接続口が二箇所に形成されている矩形の気液分離機である。
【0046】
次に、充填ノズル36と吸引ノズル41相互間の関係について説明する。図2に示すように、本実施形態における吸引ノズル41は、充填ノズル36の内部に組み込まれており、双方が一体的に固定されている。図示の例では、充填ノズル36における水平断面(横断面)の中央(中心)部付近に吸引ノズル41が組み込まれている。また、図2の構成例では、充填ノズル36および吸引ノズル41は互いに同軸配置されている。但し、後述するように、充填ノズル36および吸引ノズル41の配置方法については、適宜の変更を加
えることができる。
【0047】
吸引ノズル41は、充填ノズル36の吐出口360から下方に向かって延伸するように突出している。すなわち、吸引ノズル41は、吸引口410を含む先端側が充填ノズル36の吐出口360から外部に臨んだ状態で充填ノズル36に固定されている。従って、充填ノズル36における吐出口360と吸引ノズル41における吸引口410が配置される高さの違いについて着目すると、吐出口360に比べて吸引口410の方が相対的に下方に配置される。なお、本明細書における上下方向とは、充填ノズル36および吸引ノズル41の軸方向と平行な方向と定義する。
【0048】
[チューブ入り製品の製造方法]
次に、上記構成の充填装置1を用いて、チューブ容器25に粘性の内容物26を充填することでチューブ入り製品20を製造する製造方法について説明する。ここでは、まず、充填装置1によってチューブ容器25に内容物26を充填する際の供給装置3の基本的な動作状況を説明した後、フローチャートを参照しながら特徴的な処理内容について説明する。
【0049】
充填ノズル36の吐出口360から内容物26を吐出してチューブ容器25に内容物26を充填する場合、ホッパー31に貯留されている内容物26を充填シリンダー32に一旦引き込んだ後、充填シリンダー32の内容物26が充填ピストン320によって充填ノズル36に向けて押し出されるように、制御部7が切替バルブ34および電磁弁35を制御する。
【0050】
この場合、まず制御部7は、切替バルブ34を“第一連通位置”に制御して、ホッパー31と充填シリンダー32を連通させた状態に制御する。その状態で、制御部7は電磁弁35に通電し、その弁体を“第一制御位置”に制御する。
【0051】
そうすると、エアーポンプ38からのエアーがエアシリンダー33の第一圧力室331に導入される。そして、第二圧力室332に比べて第一圧力室331の方が高圧となることで、駆動用ピストン330が第二圧力室332の容積を減少させる方向(図2中、右方向)に移動する。その結果、ロッド部材37を介して充填シリンダー32内の充填ピストン320も駆動用ピストン330と同じ方向に移動して、充填シリンダー32におけるシリンダー貯留室321の容積が増大する。このとき、ホッパー31と充填シリンダー32が連通しているため、ホッパー31に貯留されている内容物26を充填シリンダー32のシリンダー貯留室321へと導く(引き込む)ことができる。
【0052】
一方、充填シリンダー32における内容物26を充填ノズル36に向けて押し出す場合、制御部7は、切替バルブ34を“第二連通位置”に切り替えることによって、充填シリンダー32と充填ノズル36を連通させる。そして、更に制御部7は、電磁弁35を“第二制御位置”に切り替える。
【0053】
そうすると、エアーポンプ38からのエアーがエアシリンダー33の第二圧力室332に導入されるようになる。そうして、第一圧力室331に比べて第二圧力室332の方が高圧になることで、駆動用ピストン330が第一圧力室331の容積を減少させる方向(図2中、左方向)に移動する。その結果、ロッド部材37を介して充填シリンダー32内の充填ピストン320も駆動用ピストン330と同じ方向に移動して、充填シリンダー32におけるシリンダー貯留室321の容積が減少する。このとき、充填シリンダー32と充填ノズル36が連通しているため、充填シリンダー32のシリンダー貯留室321に存在する内容物26が内部通路342に向かって押し出される。そして、この内容物26は、充填ノズル36に供給された後、その先端側の吐出口360からチューブ容器25に吐
出される。
【0054】
ここで、本実施形態におけるチューブ入り製品20を製造する際の製造方法に係る特徴的な処理内容について図面を参照しながら説明する。図3は、本実施形態において、充填処理に係る処理フローを示すフローチャートである。この図に示す制御ルーチンの各工程は、制御部7に格納されている制御プログラムを該制御部7が実行することによって実現される。上記の充填処理とは、充填装置1を用いてチューブ容器25へ内容物26を充填する処理を指し、第一充填処理および該第一充填処理の後に実施される第二充填処理を含んでいる。本実施形態においては本制御ルーチンを実行する制御部12が本発明の充填装置における充填手段に対応する。
【0055】
まず、ステップS101では、チューブホルダ5にチューブ容器25がセットされる。図4に示すように、チューブ容器25は、そのチューブ口元部22にキャップ部材24が嵌められた状態で、且つ、キャップ部材24が下方となるような姿勢でチューブホルダ5へとセットされる。なお、チューブ容器25がチューブホルダ5にセットされる際、そのチューブ胴体部21においてキャップ部材24が嵌められる方の他端側には封止端部23は未だ形成されておらず、開放端27が形成された状態となっている。
【0056】
また、図4に示すように、チューブ容器25におけるチューブ口元部22は、チューブ胴体部21に比べてその内径が一回り小さく形成されている。図示の例では、チューブ口元部22は、チューブ胴体部21の三分の一程度まで径が縮小しており、チューブ胴体部21とチューブ口元部22との境界位置には肩部28が形成されている。
【0057】
ここで、充填ノズル36および吸引ノズル41のそれぞれの外径は、内容物26を充填する対象となるチューブ容器25の形状、主としてチューブ口元部22およびチューブ胴体部21の内径を勘案して定められている。そして、充填ノズル36の外径はチューブ口元部22の内径に比べて小さい寸法として定められている。また、充填ノズル36の外径は、チューブ口元部22の内径に比べて大きく、且つ、チューブ胴体部21の内径に比べて小さい寸法として定められている。
【0058】
本処理フローにおけるステップS102では、チューブ容器25の開放端27から充填ノズル36および吸引ノズル41を挿入し、且つ、吸引ノズル41の吸引口410をチューブ口元部22に配置する挿入工程である。
【0059】
すなわち、制御部7はホルダ駆動装置6に制御指令信号を送信してホルダ駆動装置6を作動させ、チューブホルダ5を上昇させる。そうすると、充填ノズル36および吸引ノズル41に対してチューブ容器25が徐々に近づき、チューブ胴体部21の開放端27から各ノズルがチューブ容器25の内部に挿入される。図5に示すように、本ステップでは、吸引ノズル41の吸引口410がチューブ口元部22の内部を臨んで配置されるように、チューブ容器25に対する吸引ノズル41の挿入深さが調節される。なお、図5では、吸引ノズル41の吸引口410が、チューブ口元部22がキャップ部材24と当接する先端から数ミリ程度(例えば、2〜5mm程度)の位置に配置されるように、吸引ノズル41がチューブ容器25の内部に挿入される。
【0060】
充填装置1において、充填ノズル36およびこれに組み込まれている吸引ノズル41との関係は固定関係にある。従って、本ステップでは、ホルダ駆動装置6を作動させることにより、充填ノズル36および吸引ノズル41のチューブ容器25に対する各々の挿入深さを連動して調節することになる。
【0061】
充填ノズル36の外径は、チューブ口元部22の内径よりも大きいため、チューブ容器
25に対する充填ノズル36の挿入深さが深くなりすぎると、その吐出口360が肩部28に衝突する虞がある。そこで、本実施形態では図5に示す如く、充填ノズル36の吐出口360から下方に向かって突出する吸引ノズル41の突出長さを、上記のように吸引ノズル41の吸引口410をチューブ口元部22の内部深くまで挿入しても、充填ノズル36の吐出口360が肩部28と接触しないような長さに設定している。
【0062】
ステップS102が終了すると、ステップS103の処理に進む。ここでは、図2も適宜参照して説明する。本ステップは、制御部7が供給装置3および吸引装置4を制御することによって、充填ノズル36による内容物26の吐出および吸引ノズル41による吸引を開始し、該充填ノズル36から吐出された内容物26と共にチューブ口元部22に溜まっているエアーを吸引口410から吸引しつつチューブ口元部22に対して内容物を充填する第一充填処理を実施する第一充填工程である。なお、充填装置1に係る充填処理が開始される初期状態においては、切替バルブ34は第一連通位置に保持され、また、電磁弁35に対して非通電の状態にあることを前提とする。
【0063】
ここで、第一充填処理における供給装置3の制御内容について説明する。制御部7は、第一充填処理の実施に際して、電磁弁35に通電して、第一制御位置に制御する。そうすると、ホッパー31と充填シリンダー32が連通している状態で、充填ピストン320が切替バルブ34から離間する方向に移動する。その結果、シリンダー貯留室321の容積が増加することで、ホッパー31に貯留されていた内容物26が充填シリンダー32に引き込まれる。
【0064】
次いで、制御部7は、切替バルブ34を第二連通位置に切り替えた後、電磁弁35に対する電圧制御を調整することによって図示しない弁体の位置を第二制御位置に切り替える。その結果、充填シリンダー32と充填ノズル36が連通した状態で、充填ピストン320が切替バルブ34に接近する方向に移動する。これによって、シリンダー貯留室321の容積が減少し、このシリンダー貯留室321内における内容物26が切替バルブ34の内部通路342に向かって押し出される。そして、このように押し出された内容物26は、内部通路342を通じて充填ノズル36に供給された後、その吐出口360からチューブ容器25内に吐出される。
【0065】
第一充填処理では充填ノズル36の吐出口360はチューブ胴体部21内に配置されている。そのため、吐出口360から吐出された内容物26が直接、或いは肩部28からチューブ口元部22に対して流れ込む。そうすると、チューブ口元部22にはキャップ部材24が嵌められているため、チューブ口元部22に溜まっていた空気が逃げ場を失ってしまい、このチューブ口元部22に空気が残留した状態で保持されるエアー溜まりが生じ易くなる。
【0066】
そこで、本実施形態では、第一充填処理の実施に際して充填ノズル36による内容物26の吐出が開始されると、制御部7は、真空ポンプ42を作動させることで、吸引ノズル41の吸引口410に負圧吸引力を作用(発生)させることとする。そうすると、吸引ノズル41の吸引口410に負圧吸引力を発生させると、充填ノズル36から吐出された内容物26と共にチューブ口元部22に溜まっている空気が吸引口410から吸引される。なお、この実施形態では、吸引ノズル41の吸引口410に吸引力を作用させるために真空ポンプ42を用いているが、同様の機能を発揮するものであればこれに代替する種々の装置を用いても良いのは勿論である。
【0067】
これにより、チューブ口元部22から内容物26と一緒にチューブ口元部22に残留している空気を吸引し、チューブ容器25の内部から排出通路43を介して排出することができる。本実施形態においては、充填ノズル36の吐出口360から単位時間当たりに吐
出される吐出量(単位時間吐出量)は、吸引ノズル41の吸引口410から単位時間当たりに流体(内容物26、空気など)を吸引可能な吸引量(単位時間吸引量)に比して充分に多くなるように設定されている。そのため、第一充填処理によれば、チューブ口元部22から空気(エアー)を吸入しつつチューブ口元部22に対して内容物26を充填することができる。
【0068】
吸引ノズル41の吸引口410から吸引されたチューブ口元部22における内容物26および空気は、排出通路43を通じて分離器44に導かれる。そして、分離器44に導かれると共に空気と入り混じった内容物26は、この分離器44を通過する過程で内容物26が分離されて空気のみが真空ポンプ42に吸引されることになる。
【0069】
なお、ここでの説明では、充填ノズル36による内容物26の吐出が開始された後に真空ポンプ42を作動させているが、その前後関係は逆であっても良く、適宜変更可能である。第一充填処理はチューブ口元部22に対する内容物26の充填が完了するまで継続される。例えば、第一充填処理の継続時間は、チューブ口元部22の容積、単位時間吐出量、単位時間吸引量などのパラメータ値に基づいて、適正な時間として予め設定しておくことができる。
【0070】
ここで、本制御ルーチンでは、ステップS103において第一充填工程(第一充填処理)を開始してからの経過時間(継続時間)が図示しない時計装置によって測定されている。ステップS104では、時計装置によって測定されている経過時間Δt1が、規定時間Δtb1に至ったかどうかが判定される。そして、肯定判定された場合(Δt1≧Δtb1)には、チューブ口元部22への内容物26の充填が完了し、第一充填処理を終了しても良いと判断され、ステップS105に進む。
【0071】
ここでの規定時間Δtb1は、第一充填処理を開始してから、チューブ口元部22への内容物26の充填が完了するまでに要する経過時間であり、チューブ口元部22の容積などの上記パラメータに基づいて予め適正な時間として設定しておくことができる。また、ステップS104において否定判定された場合(Δt1<Δtb1)には、まだチューブ口元部22への内容物26の充填が完了していないため、第一充填処理を継続すべきであると判断される。この場合、ステップS103に戻り、一定時間が経過した後に再びステップS104の判定処理を行う。そして、ステップS104において肯定判定されるまで第一充填処理が継続して行われる。
【0072】
第一充填処理が終了すると、ステップS105では第二充填処理に移行する。すなわち、第二充填工程は、制御部7が真空ポンプ42の作動のみを停止させることで、吸引ノズル41の吸引口410に作用していた負圧吸引力を消滅させる工程である。これにより、吸引ノズル41による吸引を停止した状態で充填ノズル36による内容物26の吐出を継続することによりチューブ胴体部21に対して内容物26を充填する第二充填処理が行われる。
【0073】
第二充填処理に際して制御部7は、ホルダ駆動装置6に制御指令信号を出力して、チューブホルダ5を下降させる。ここでは、チューブ容器25(チューブ胴体部21ともいえる)への内容物26の充填高さが増加するに従って、充填ノズル36のチューブ容器25への挿入深さが減少するように、チューブホルダ6を徐々に、或いは段階的に下降させるようにした。
【0074】
その際に、充填ノズル36の吐出口360が内容物26の充填高さよりも常に高くなるように、充填ノズル36のチューブ容器25への挿入深さを内容物26の充填高さに応じて減少させても(チューブホルダ5を下降させても)良い。逆に、チューブ胴体部21に
吐出された後の内容物26に吐出口360が僅かに潜った状態に維持されるように、内容物26の充填高さに応じて充填ノズル36の挿入深さを減少させても(チューブホルダ5を下降させても)良い。また、本ステップにおいて、チューブ胴体部21への内容物26の充填高さに応じて充填ノズル36のチューブ容器25への挿入深さを変更することは本発明の実施に必須ではなく、第二充填処理中における充填ノズル36の挿入深さを一定に保持しても構わない。
【0075】
制御部7は、チューブ容器25全体での内容物26の充填量が規定量に到達した時点で第二充填処理を終了する。本制御ルーチンでは、ステップS105において第二充填工程(第二充填処理)を開始してからの経過時間(継続時間)が時計装置によって測定されている。ステップS106では、時計装置によって測定されている経過時間Δt2が、規定時間Δtb2に至ったかどうかが判定される。そして、肯定判定された場合(Δt2≧Δtb2)には、規定量の内容物26がチューブ容器25に充填されたと判断され、ステップS107に進む。
【0076】
ここでの規定時間Δtb2は、第二充填処理を開始してから、チューブ容器25全体における内容物26の充填量が規定量となるまでに要する経過時間であり、チューブ胴体部21の容積、充填ノズル36の単位時間吐出量などに基づいて予め適正な時間として設定しておくと良い。また、ステップS106において否定判定された場合(Δt2<Δtb2)には、第二充填処理を継続すべきであると判断される。この場合、ステップS105に戻り、一定時間が経過した後に再びステップS106の判定処理を行う。そして、ステップS106において肯定判定されるまで第二充填処理が継続して行われる。
【0077】
ステップS107に進むと、制御部7は、切替バルブ34を第一連通位置に切り替えると共に、電磁弁35への通電を停止する。そうすると、エアシリンダー33における第一圧力室331と第二圧力室332が等圧となる。その結果、充填ノズル36への内容物26の供給が停止されることにより、第二充填処理が終了する。
【0078】
第二充填処理が終了する時点において、充填ノズル36および吸引ノズル41がチューブ容器25内部に挿入されている場合には、制御部7はホルダ駆動装置6にチューブホルダ5を下降させて各ノズルをチューブ容器25から引き抜いた後、ステップS108の処理に進む。ステップS108では、チューブ容器25における開放端27を押し潰すように不図示の熱圧着装置の圧着器具で挟み、超音波などで融着してこの開放端27を封止することで、封止端部23を形成する。これによって、チューブ容器25に内容物26を充填してなるチューブ入り製品20が完成する。本ステップに係る封止工程が終了すると、制御部7は本制御ルーチンの実行を終了する。
【0079】
以上のように説明した本発明に係る充填装置1およびチューブ入り製品20の製造方法によれば、チューブ容器25への内容物26の充填が第一充填処理と第二充填処理に分けて行われる。そして、第一充填処理においては、充填ノズル36から吐出された内容物26を、チューブ口元部22に溜まっていた空気と共に吸引ノズル41によって吸引することで、エアー溜まりを生じさせることなくチューブ口元部22に内容物26を蜜実に充填することできる。そして、チューブ口元部22への充填が完了した後は、吸引ノズル41による吸引を停止した状態で充填ノズル36によってチューブ容器25全体へと効率的に内容物26を充填することができる。
【0080】
従って、チューブ入り製品20の製造に際して、チューブ口元部22へのエアー溜まりが生じることを抑制することができる。よって、チューブ口元部への充填が不充分になるといった不具合、或いはチューブ口元部に充填された内容物の成分が分離するなどの不具合が生じることを好適に抑制することができる。
【0081】
また、本発明に係る充填装置1およびチューブ入り製品20の製造方法によれば、チューブ口元部22へのエアー溜まりの発生を抑制しつつ、キャップ部材24をチューブ容器25に嵌めた状態で内容物26の充填を行うことができる。そのため、キャップ部材24を外した状態で充填する場合のように、チューブ口元部22から漏出した内容物26によってチューブ口元部22が汚れてしまうこともなく、清掃の手間が掛かることもない。そして、このようにチューブ口元部22を清掃した後にキャップ部材24をチューブ口元部22に嵌める作業を省略できるため、チューブ容器20への内容物の充填効率、ひいてはチューブ入り製品25の生産性を向上することができる。
【0082】
[変形例]
本実施形態では、ホルダ駆動装置6の作動によってチューブホルダ5を昇降させることによって、充填ノズル36および吸引ノズル41のチューブ容器25に対する挿入深さを調節する例を説明したが、チューブホルダ5側を固定にし、各ノズルを一体的に昇降させることでチューブ容器25に対する挿入深さを調節しても良い。また、上述の制御例では、チューブ容器25に対する充填ノズル36および吸引ノズル41の挿入深さを連動して調節しているが、これに限られない。すなわち、充填ノズル36および吸引ノズル41を個別に昇降可能な昇降装置を用いて、各ノズルのチューブ容器25への挿入深さを個別に調節しても良い。
【0083】
また、本実施形態に係る充填装置1では、充填ノズル36の内部に吸引ノズル41を組み込む構成を採用する例を説明したが、例えば小径の吸引ノズル41を、大径の充填ノズル36を構成する筒体の外面に沿わせるように設置しても良い。
【0084】
また、本実施形態の充填装置1において、充填ノズル36の外径をチューブ口元部22の内径よりも大きくしているが、これに限定されるものではない。すなわち、チューブ口元部22の内径以下の外径を有する充填ノズル36を適用することもできる。また、充填ノズル36の外径を、チューブ胴体部21の内壁と所定のクリアランス(例えば、5mm〜10mm程度)を確保した上でなるべく大きな寸法に設定しても良い。これにより、チューブ容器25の水平断面の広範囲にわたり充填ノズル36の吐出口360から内容物26を吐出することができるし、第二充填処理に要する所要時間を短縮することにも繋がるため、チューブ入り製品20の生産性を向上させることができる。
【0085】
また、吸引ノズル41に関しては、第一充填処理時におけるチューブ口元部22への挿入深さは適宜の変更を加えることができる。また、図6に示すように、吸引ノズル41の先端部の形状は、(a)に示すような通常タイプの他、(b)、(c)に示すように、端縁の一部を切り欠いて形成される切り欠き部を先端部に設けた先端切り欠きタイプを採用しても良い。(b)および(c)のそれぞれに図示した先端切り欠きタイプ1,2は、例えば内直径(内径)2mm、外直径(外径)3mmを有する先端部に対して、半楕円形状、又は半円形状の切り欠き部が設けられている。
【0086】
(a)〜(c)で示した各吸引ノズルの吸引特性を比較すると、第一充填処理において、充填ノズル36から吐出された内容物26と共にチューブ口元部22に溜まっている空気の吸引特性が最も優れていたのは(b)の切り欠きタイプ1であり、次いで優れていたのが(c)の切り欠きタイプ2であった。通常タイプの(a)に比べて(b)、(c)のようにその先端部に切り欠き部を設けることにより、切り欠き部を通じてチューブ口元部22における内容物26および空気を吸引ノズル41の内部に誘導し易くなり、その吸引効率を高めることができる。なお、この図における(b)、(c)では、先端部に二つの半楕円形の切り欠き部を、それぞれ180°異なる位置に設けているが、切り欠き部を形成する箇所数、寸法、形状などは種々の変更を加えることができる。また、言うまでもな
く、吸引ノズル41の内径、外径などの寸法に関しては適宜の変更をなし得る。
【0087】
以上、本発明に係る各実施形態を説明したが、本発明のチューブ入り製品の製造方法、およびチューブ容器に内容物を充填する充填装置に関する技術は、可能な限りこれらの組合せを含むことができる。
【符号の説明】
【0088】
1・・・充填装置
3・・・供給装置
4・・・吸引装置
5・・・チューブホルダ
6・・・ホルダ駆動装置
7・・・制御部
20・・チューブ入り製品
21・・チューブ胴体部
22・・チューブ口元部
23・・封止端部
24・・キャップ部材
25・・チューブ容器
26・・内容物
27・・開放端
31・・ホッパー
32・・充填シリンダー
33・・エアシリンダー
34・・切替バルブ
35・・電磁弁
36・・充填ノズル
41・・吸引ノズル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
チューブ胴体部と、該チューブ胴体部の先端側に一体に形成されて該チューブ胴体部よりも小径となっていると共に外部に開放されたチューブ口元部と、該チューブ口元部に嵌められるキャップ部材とを備えたチューブ容器に充填装置を用いて内容物を充填することによってチューブ入り製品を製造する製造方法であって、
前記充填装置は、その先端側に形成された吐出口から内容物を吐出する充填ノズルと、前記チューブ口元部の内径よりも小さな外径を有すると共にその先端側に形成された吸入口に吸入力を作用させる吸引ノズルと、を備え、
前記製造方法は、
前記チューブ口元部に前記キャップ部材が嵌められた状態の前記チューブ容器に対して、前記チューブ胴体部において該チューブ口元部とは逆側に形成された開放端から前記充填ノズル及び前記吸引ノズルを挿入し、少なくとも該吸引ノズルの前記吸引口を前記チューブ口元部に配置する挿入工程と、
前記挿入工程の後に、前記充填ノズルによる内容物の吐出および前記吸引ノズルによる吸引を開始し、該充填ノズルから吐出された内容物と共に前記チューブ口元部に溜まっている空気を前記吸引口から吸引しつつ該チューブ口元部に対して内容物を充填する第一充填工程と、
前記第一充填工程の後に、前記吸引ノズルによる吸引を停止した状態で前記充填ノズルによる内容物の吐出を継続することにより前記チューブ胴体部に対して内容物を充填する第二充填工程と、
を含むチューブ入り製品の製造方法。
【請求項2】
前記吸引ノズルにおいて前記吸入口が形成される先端部には、端縁の一部を切り欠いて形成される切り欠き部が設けられている、請求項1に記載のチューブ入り製品の製造方法。
【請求項3】
前記吸引ノズルは前記充填ノズルの内部に一体的に組み込まれており、前記吸引口を含む該吸引ノズルの先端側が、前記充填ノズルの前記吐出口から突出している、請求項1又は2に記載のチューブ入り製品の製造方法。
【請求項4】
前記第二充填工程の後に、前記チューブ胴体部の前記開放端を封止する封止工程を更に含む、請求項1から3の何れか一項に記載のチューブ入り製品の製造方法。
【請求項5】
チューブ胴体部と、該チューブ胴体部の先端側に一体に形成されて該チューブ胴体部よりも小径となっていると共に外部に開放されたチューブ口元部と、該チューブ口元部に嵌められるキャップ部材とを備えたチューブ容器に内容物を充填する充填装置であって、
前記チューブ胴体部において前記チューブ口元部とは逆側に形成された開放端からその内部に挿入されて且つその先端側に形成された吐出口から内容物を吐出する充填ノズルと、
前記チューブ胴体部の前記開放端からその内部に挿入されて且つ前記チューブ口元部の内径よりも小さな外径を有すると共にその先端側に形成された吸引口に吸入力を作用させる吸引ノズルと、
前記チューブ口元部に前記キャップ部材が嵌められた状態の前記チューブ容器に対して少なくとも前記吸引ノズルの前記吸引口を該チューブ口元部に配置した状態で、前記充填ノズルによる内容物の吐出および前記吸引ノズルによる吸引を実施し、該充填ノズルから吐出された内容物と共に前記チューブ口元部に溜まっている空気を前記吸引口から吸引しつつ該チューブ口元部に対して内容物を充填する第一充填処理と、該第一充填処理の後に、前記吸引ノズルによる吸引を停止した状態で前記充填ノズルによる内容物の吐出を継続することにより前記チューブ胴体部に対して内容物を充填する第二充填処理と、を実行す
る充填手段と、
を備える充填装置。
【請求項6】
前記吸引ノズルにおいて前記吸入口が形成される先端部には、端縁の一部を切り欠いて形成される切り欠き部が設けられている、請求項5に記載の充填装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−6623(P2012−6623A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−143526(P2010−143526)
【出願日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【出願人】(000113470)ポーラ化成工業株式会社 (717)
【Fターム(参考)】