説明

チューブ容器

【課題】柔軟性、透明性に優れ、表面光沢に優れたチューブ容器を提供すること。
【解決手段】チューブ容器は、MFRが2.0〜40g/10min以下、DSC融点が100〜145℃、引張弾性率が100〜600MPa、2mmt射出角板のヘイズが65%以下であるプロピレン系樹脂、またはMFRが2.0〜40g/10min以下、DSC融点が100〜145℃、下記要件(b1)および(b3)を満たすプロピレンランダム共重合体(B)と、MFRが0.1〜50g/10min以下、下記要件(c1)ないし(c3)を満たすプロピレン共重合体ゴム(C)からなる。
(b1) エチレンに由来する骨格の含有量が0.5モル%以上14モル%未満
(b3)DSC融点が100〜145℃
(c1) 密度が860〜890kg/m3
(c2) ショアA硬度が60〜80
(c3)DSC融点が120〜150℃以下

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は香辛料、化粧品・整髪量などの容器として用いられるチューブ容器に関する。
【背景技術】
【0002】
香辛料や化粧品・整髪量などの容器として、チューブ型の容器が広く用いられている。このような容器には手で内容物の搾り出しができる柔軟性と、内容物が確認できる透明性が要求されるため、材料としてはポリエチレンが広く用いられている(特許文献1,2)。
【0003】
前出したチューブ型の容器は光沢が要求されるが、材質にポリエチレンを用いた場合、必ずしも光沢が十分ではない。光沢を向上させるために他の樹脂層等をトップコートとして使用する提案もなされているが、単独でも光沢に優れ、かつ柔軟性と透明性を有する材料が望まれていた。
【0004】
ところでポリプロピレン系樹脂は光沢に優れた材料であるが、剛性が高いためにチューブ状の容器として用いる提案はこれまで皆無であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−258853号公報
【特許文献2】特公平6−41290号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は柔軟性、透明性に優れ、表面光沢に優れたチューブ容器を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記課題を検討し、流動性、融点、引張弾性率ならびにヘイズが特定の範囲にあるポリプロピレン系樹脂からなるチューブ容器が、前記課題を解決することを見出して本発明に到達した。なお、本発明においてポリプロピレン系樹脂には、プロピレン共重合体および2種以上のプロピレン共重合体からなる樹脂組成物が含まれる。
【0008】
すなわち本発明の要旨は以下にある;
[1]
ASTM D−1238に準じて230℃、荷重2.16kgで測定されるメルトフローレートが2.0〜40g/10minの範囲にあり、JIS K7121に準じて示差走査熱量計(DSC)によって測定される融点が100〜145℃の範囲にあり、JIS K7161に準じて測定される引張弾性率が100〜600MPaの範囲にあり、2mmt射出角板のヘイズが65%以下であるポリプロピレン系樹脂を用いたチューブ容器。
このようなチューブ容器としては以下に示す[2]、[3]が好ましい。
【0009】
[2]
室温n−デカン不溶部(Dinsol)95〜50重量%と室温n−デカンに可溶部(Dsol)5〜50重量%とから構成され、ASTM D−1238に準じて230℃、荷重2.16kgで測定されるメルトフローレートが2.0〜40g/10minの範囲にあり、JIS K7121に準じて示差走査熱量計(DSC)によって測定される融点が100〜145℃の範囲にあり、前記Dinsolが下記要件(a1)を満たし、前記Dsolが下記要件(a3)を満たすプロピレン共重合体(A)からなるチューブ容器。
(a1) Dinsol中のエチレンに由来する骨格の含有割合が0.5〜14モル%の範囲にある
(a3) Dsol中のエチレンに由来する骨格の含有割合が10〜40モル%の範囲にある
プロピレン共重合体(A)はさらに、次の要件(a2)を満たすことが好ましい。
(a2) Dinsolはプロピレンの構成単位中の2,1-挿入結合量と1,3-挿入結合量の和の割合が1.5モル%以下、好ましくは0.5モル%以下、さらに好ましくは0.2モル%以下である。
【0010】
[3]
ASTM D−1238に準じて230℃、荷重2.16kgで測定されるメルトフローレートが2.0〜40g/10minの範囲にあり、JIS K7121に準じて示差走査熱量計(DSC)によって測定される融点が100〜145℃の範囲にあり、下記要件(b1)および(b2)を満たすプロピレンランダム共重合体(B)と、
ASTM D−1238に準じて230℃、荷重2.16kgで測定されるメルトフローレートが0.1〜50g/10minの範囲にあり、下記要件(c1)ないし(c3)を満たすプロピレン共重合体ゴム(C)からなるポリプロピレン系樹脂組成物からなることを特徴とするチューブ容器。
(b1) エチレンに由来する骨格の含有量が0.5〜14モル%の範囲にある
(b2)JIS K7121に準じて示差走査熱量計(DSC)によって測定される融点が100〜145℃の範囲にある
(c1) 密度が860〜890kg/m3の範囲にある
(c2) ショアA硬度が60〜80の範囲にある
(c3)JIS K7121に準じて示差走査熱量計(DSC)によって測定される融点が120〜150℃の範囲にある
プロピレンランダム共重合体(B)はさらに、次の要件(b3)を満たすことが好ましい。
(b3)プロピレン構成単位中の2,1-挿入結合量と1,3-挿入結合量の和の割合が1.5モル%以下、好ましくは0.5モル%以下、さらに好ましくは0.2モル%以下である。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係るチューブ容器は、柔軟性、透明性に優れ、表面光沢に優れている。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下本発明を詳細に説明する;
[1]
本発明に係る第1の発明に係るチューブ容器は、以下のポリプロピレン系樹脂からなる。
【0013】
(ポリプロピレン系樹脂)
ポリプロピレン系樹脂のメルトフローレートは、下限が2.0g/10min、好ましくは4.0g/10min、さらに好ましくは5.0g/10minである。また上限が40g/10min、好ましくは35g/10min、さらに好ましくは20g/10minである。メルトフローレートは、ASTM D−1238に準じて230℃、荷重2.16kgで測定される値である(以下同じ)。
【0014】
メルトフローレートが上記範囲にあると、成形性が良好であり、高い成型速度においてもメルトフラクチャーによるシワの発生が少ないため好ましい。
ポリプロピレン系樹脂の融点は、下限が100℃、好ましくは100℃、さらに好ましくは105℃である。また上限が、145℃、好ましくは135℃、さらに好ましくは130℃である。融点は、JIS K7121に準じ示差走査熱量計(DSC)によって測定される値である(以下同じ)。
【0015】
融点が上記範囲にあると、内容物の搾り出しに必要な適度な柔軟性と、容器に求められる機械的強度とのバランスに優れるため好ましい。
ポリプロピレン系樹脂の引張弾性率は、下限が100MPa、好ましくは150MPaである。また上限が600MPa、好ましくは550MPa、さらに好ましくは500MPaである。引張弾性率が600MPa以下であると、搾り出しに必要な適度な柔軟性が得られるため好ましく、100MPa以上であると容器形状保持性に優れるため好ましい。引張弾性率は、JIS K7161に準じて測定される値である。
【0016】
ポリプロピレン系樹脂の2mmt射出角板のヘイズが65%以下、好ましくは45%以下である。ヘイズは、後述のようにして測定される。
引張弾性率および2mm厚射出成形角板のヘイズが前記範囲を満たすようなポリプロピレン系樹脂は、引張弾性率が低いことから結晶ラメラ分率が少なく、またヘイズ値が小さい(すなわち透明である)ことから球晶構造が小さい固体構造を形成していると推測される。そして、このようなポリプロピレン系樹脂を用いてチューブ容器を成形した場合、折り曲げた際に非晶部が歪を緩和し、球晶界面での剥離も生じにくいために、折り曲げた跡が残ったり白化しにくい、すなわちキンク性に優れるチューブ容器が得られると推測される。
【0017】
メルトフローレート、融点、引張弾性率、ヘイズが上記範囲を満たすポリプロピレン系樹脂としては、以下に示す第2の発明[2]で用いられるプロピレン共重合体(A)、第3の発明[3]で用いられるポリプロピレン系樹脂組成物がある。
【0018】
[2]
本発明に係る第2の発明に係るチューブ容器は、以下のプロピレン共重合体(A)からなる。
【0019】
(プロピレン共重合体(A))
プロピレン共重合体(A)は、室温n−デカン不溶部(Dnsol)95〜50重量%、好ましくは95〜60重量%と、室温n−デカン可溶部(Dsol)5〜50重量%、好ましくは5〜40重量%とから構成される。
【0020】
プロピレン共重合体(A)は、メルトフローレートが2.0〜40g/10min、好ましくは4.0〜35.0g/10minの範囲にある。
プロピレン共重合体(A)は、融点が100〜145℃、好ましくは100〜135の範囲にある。
【0021】
室温n−デカン不溶部および室温n−デカン可溶部は、以下のように求められる。
プロピレン共重合体(A)のサンプル5gにn−デカン200mlを加え、145℃、30分間加熱溶解を行い、溶液(1)を得る。次に約2時間かけて、溶液(1)を25℃まで冷却を行い、25℃で30分間放置し、析出物(α)を含む溶液(2)を得る。その後、溶液(2)から析出物(α)を目開き約15μmの濾布でろ別し、析出物(α)を乾燥させた後、析出物(α)の重量を測定する。該析出物(α)の重量をサンプル重量(5g)で除したものを、n−デカン不溶部(Dinsol)の割合とする。また、析出物(α)をろ別した溶液(2)を、溶液(2)の約3倍量のアセトン中に入れ、n−デカン中に溶解していた成分を析出させ、析出物(β)を得る。その後、析出物(β)をガラスフィルター(G2、目開き約100〜160μm)で濾別し、乾燥させた後、析出物(β)の重量を測定する。このときの析出物(β)の重量をサンプル重量(5g)で除したものをn−デカン可溶部(Dsol)の割合とする。なお、後述する実施例においては、析出物(β)を濾別した濾液側を濃縮乾固しても残渣は認められなかった。
【0022】
前記n−デカン不溶部(Dinsol)は下記要件(a1)を満たし、好ましくはさらに要件(a2)を満たす:
(a1) Dinsol中のエチレンに由来する骨格の含有割合(エチレン含有割合)が0.5〜14モル%の範囲にある。
【0023】
insol中のエチレン含有割合が上記範囲にあると、容器に求められる適度な機械的強度、形状保持性が優れるため好ましい。
エチレン含有割合は、後述の方法によって求めることができる。
(a2) Dinsol中のプロピレンの2,1-挿入結合量と1,3-挿入結合量の和が1.5モル%以下、好ましくは0.5モル%以下、さらには0.2モル%以下である。
【0024】
2,1-挿入結合量と1,3-挿入結合量の和(以下、「異種挿入量」ということがある)が1.5モル%以下であると、引張弾性率を下げつつもべたつきを防止できる傾向があるため好ましい。
【0025】
異種挿入量の割合は、後述の方法によって求めることができる。
プロピレン共重合体(A)の前記Dsol中のエチレン含有割合は13C−NMRの測定に基づき下記のようにして測定・算出し決定した。
【0026】
サンプルは、前記のDinsolおよびDsolの割合を求めた際に得られた析出物(β)を用いた。この析出物(β)をサンプルとして、下記条件にて13C−NMRの測定を行った。
13C-NMR測定条件
測定装置:日本電子製LA400型核磁気共鳴装置
測定モード:BCM(Bilevel Complete decoupling)
観測周波数:100.4MHz
観測範囲:17006.8Hz
パルス幅:C核45°(7.8μ秒)
パルス繰り返し時間:5秒
試料管:5mmφ
試料管回転数:12Hz
積算回数:20000回
測定温度:125℃
溶媒:1,2,4−トリクロロベンゼン:0.35ml/重ベンゼン:0.2ml
試料量:約40mg
【0027】
測定で得られたスペクトルより、下記文献(1)に準じて、モノマー連鎖分布(トリアッド(3連子)分布)の比率を決定し、プロピレン共重合体のDsol中のエチレンに由来する構成単位のモル分率(mol%)(以下E(mol%)と記す)およびプロピレンに由来する構成単位のモル分率(mol%)(以下P(mol%)と記す)を算出した。求められたE(mol%)およびP(mol%)から下記(式1)に従い重量%に換算しプロピレン共重合体のDsol中のエチレンに由来する構成単位の重量(重量%)(以下E(wt%)と記す)を算出した。
【0028】
文献(1):Kakugo,M.; Naito,Y.; Mizunuma,K.; Miyatake,T., Carbon-13 NMR determination of monomer sequence distribution in ethylene-propylene copolymers prepared with delta-titanium trichloride-diethylaluminum chloride. Macromolecules 1982, 15, (4), 1150-1152
E(wt%)=E(mol%)×28×100/[P(mol%)×42+E(mol%)×28]…(式1)
前記n−デカン可溶部(Dsol)は下記要件(a3)を満たす:
(a3) Dsol中のエチレンに由来する骨格の含有割合が10〜40モル%の範囲にある。
【0029】
solのエチレン含有割合が上記範囲にあると、内容物の搾り出しに必要なキンク性に優れるため好ましい。
上記の(Dinsol)95〜50重量%と(Dsol)5〜50重量%とから構成されるプロピレン共重合体(A)としては、特開2009−84376号公報に記載の方法でプロピレンおよびα−オレフィンを多段重合して得られるプロピレンブロックポリマー、下記に示すプロピレンランダム共重合体(B)と、プロピレン共重合体ゴム(C)からなるプロピレン系樹脂組成物が挙げられる。
【0030】
[3]
本発明に係る第3の発明に係るチューブ容器は、以下のプロピレンランダム共重合体(B)とプロピレン共重合体ゴム(C)からなるポリプロピレン系樹脂組成物からなる。
【0031】
(プロピレンランダム共重合体(B))
プロピレンランダム共重合体(B)は、メルトフローレートが2.0〜40g/10minの範囲にある。メルトフローレートの下限は、4.0g/10min、さらには5.0g/10minが好ましく、上限は35g/10min、さらには30g/10minが好ましい。
【0032】
プロピレンランダム共重合体(B)は、融点が100〜145℃、好ましくは100〜135℃、さらに好ましくは100〜130℃の範囲である。
プロピレンランダム共重合体(B)は、下記要件(b1)および(b2)を満たし、好ましくは下記要件(b3)を満たす。
【0033】
(b1) エチレンに由来する骨格の含有量が0.5モル%以上14モル%未満、好ましくは0.7〜10モル%の範囲である。
エチレン含有割合が上記範囲にあると、容器に求められる適度な機械的強度、形状保持性が優れるため好ましい。
(b2) 融点が100〜145℃、好ましくは100〜135℃の範囲にある。
(b3) プロピレンの2,1-挿入結合量と1,3-挿入結合量の和の割合が1.5モル%以下、好ましくは0.5モル%以下、さらに好ましくは0.2モル%以下である。異種挿入量が上記範囲内であると、べたつきを防止できる傾向があるため好ましい。
【0034】
メルトフローレート、融点、要件(b1)ないし(b3)が上記範囲をたすプロピレンランダム共重合体(B)は、例えば特開2009−84376号公報に記載の方法によって得ることができる
【0035】
(プロピレン共重合体ゴム(C))
プロピレン共重合体ゴム(C)は、メルトフローレートが0.1〜50g/10min、好ましくは0.1〜40g/10minの範囲にある。
プロピレン共重合体ゴム(C)は、下記要件(c1)ないし(c3)を満たす。
【0036】
(c1) 密度が860〜890kg/m3、好ましくは865〜885kg/m3、さらに好ましくは870〜880kg/m3の範囲にある。密度は JIS K7112に準拠し、密度勾配管法で求めることができる。
(c2) ショアA硬度が60〜80、好ましくは65〜75の範囲にある。ショアA硬度はJIS K7215に準拠し、デュロメーターA硬さとして測ることができる。
(c3)融点が120〜150℃、好ましくは125〜145℃、さらに好ましくは130〜140℃の範囲にある。
【0037】
プロピレン共重合体ゴム(C)としては、例えば三井化学株式会社製ノティオ(登録商標)が挙げられる。
ポリプロピレン系樹脂組成物におけるプロピレンランダム共重合体(B)とプロピレン共重合体ゴム(C)の組成比は適宜選択することができるが、機械物性と柔軟性のバランスを鑑みてプロピレンランダム共重合体(B)が60〜98重量%、好ましくは60〜94重量%、さらに好ましくは60〜92重量%、プロピレン共重合体ゴム(C)が2〜40重量%、好ましくは6〜40重量%、さらに好ましくは8〜40重量%((B)と(C)との合計は100重量%)となる範囲が好ましい。
【0038】
(核剤)
本発明のチューブ容器には、核剤を配合することができる。核剤としては、芳香族リン酸エステル化合物、カルボン酸金属塩造核剤、ポリマー造核剤、ソルビトール系造核剤および無機化合物造核剤からなる群から選ばれることが好ましい。
【0039】
(チューブ容器)
本発明のチューブ容器は、上記ポリプロピレン系樹脂を筒状に成型し、一端をシールして容器に成型することができる。
【0040】
本発明のチューブ容器は、ヘイズが65%以下であり、好ましくは55%以下、さらに好ましくは45%以下の範囲である。ヘイズは以下の条件で成型した2mmt射出角板を用いて測定される。
【0041】
本発明のチューブ容器は、光沢(グロス)が70%以上であることが好ましく、さらには80%以上が好ましい。
チューブ容器の内容物としては、わさび・からしなどの香辛料、整髪料・洗顔料・歯磨き・化粧品などのコスメティック製品が挙げられる。
【実施例】
【0042】
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0043】
・成形
池貝機販社製押出機(スクリュー直径65mmФ、L/D=25)を用い、成形条件としてシリンダ温度が180℃、ダイス温度190℃で押出し、サイジングダイにて製品形状を調整し、外径40mmФ、肉厚0.5mmのチューブ状成形体を得た。
【0044】
上記チューブ状成形体を長さ15cmにカットし、下端をピンチ溶着にて封し、上端には、別途射出成形により肩部と抽出口が一体形成され、その上端に単一の注出口が開口された射出成形ノズル体を、チューブ状成形体上端円周と射出成形ノズル体肩部外周端部を一体的に溶着することにより、チューブ容器形状とした。
得られたチューブ容器を試験用チューブ容器として用いて、下記記載の評価方法によりヘイズ、光沢(グロス)、成形性、搾り出し性、キンク性を測定した。
【0045】
・成形性
チューブ容器の成形性は、チューブ状成形体成形時に成形速度を変更し、速度15m/min以上でも成形可能でかつメルトフラクチャーによる皺が発生しないものを○、15m/min以下であれば成形可能でかつメルトフラクチャーによる皺が発生しないものを△、15m/min以下の速度でもメルトフラクチャーによる皺が発生するものを×と判定し、15m/min以下の速度では、ドローダウンにより成形不可能なものは成形不可と判定した。
【0046】
・キンク性
チューブ容器のキンク性は、空のチューブ容器を下端ピンチ溶着部から上端ノズル体溶着部まで丸めるように押し潰した後、ノズル部から空気を吹き込み元の形状に復元する。その時チューブ容器の状態を以下の基準で評価した。
○: 折り目がつかない、柔軟性に優れる
△: 僅かに折り目がつく
×: 完全に折り目がつく、柔軟性が劣る
【0047】
・ヘイズ
2mmt射出角板のヘイズは、100t電動射出成形機を用い、シリンダ温度220℃設定・金型温度40℃設定にて2mmt射出角板を成形し、JIS−K7105に準拠してヘイズメーター(NIPPON DENSHOKU(NDH2000))にて曇値(ヘイズ)を測定した。
【0048】
チューブ容器のヘイズは、容器胴部から測定部位を切り出し、JIS−K7105に準拠してヘイズメーター(NIPPON DENSHOKU(NDH2000))にて曇値(ヘイズ)を測定した。
曇値が小さいほど透明性に優れているといえる。
【0049】
・光沢(グロス)
光沢性の評価は下記のグロスの測定により評価した。
2mmt射出角板のヘイズは、100t電動射出成形機を用い、シリンダ温度220℃設定・金型温度40℃設定にて2mmt射出角板を成形し、JIS−K7105に準拠して光沢計(NIPPON DENSHOKU(VG2000))で、外層の60度光沢度を測定した。
【0050】
多層ブロー容器のグロスは、容器胴部から測定部位を切り出し、JIS−K7105に準拠して光沢計(NIPPON DENSHOKU(VG2000))で、外層の60度光沢度を測定した。
グロスの値が大きいほど、優れた光沢性を持っているといえる。
【0051】
[製造例1]
(1)固体触媒担体の製造
容量1リットル枝付フラスコにSiO2 300gをサンプリングし、トルエン800mlを入れ、スラリー化した。次にスラリーを容量5リットルの4つ口フラスコへ移液し、トルエン260mlを加えた。
【0052】
ここにメチルアルミノキサン(以下、「MAO」)−トルエン溶液(アルベマール社製10wt%溶液)を2830ml導入し、室温のままで、30分間攪拌した。1時間で110℃に昇温し、4時間反応を行った。反応終了後、室温まで冷却した。冷却後、上澄みトルエンを抜き出し、フレッシュなトルエンで、置換率が95%になるまで、置換を行った。
【0053】
(2)固体触媒成分の製造(担体への金属触媒成分の担持)
グローブボックス内にて、容量5リットルの4つ口フラスコにWO2004/08775号の記載に従って合成されたジフェニルメチレン(3−t−ブチル−5−メチルシクロペンタジエニル)(2,7−ジ−t−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド(M1)を2.0g秤取った。フラスコをグローブボックスの外に出し、トルエン0.46リットルと上記(1)で調製したMAO/SiO2/トルエンスラリー1.4リットルとを窒素下で加え、30分間攪拌し担持を行った。
【0054】
得られたジフェニルメチレン(3−t−ブチル−5−メチルシクロペンタジエニル)(2,7−t−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド/MAO/SiO2/トルエンスラリーはn-ヘプタンにて99%置換を行い、最終的なスラリー量を4.5リットルとした。この操作は、室温で行った。
【0055】
(3)予備重合触媒の製造
前記の(2)で調製した固体触媒成分202g、トリエチルアルミニウム109ml、ヘプタン100リットルを内容量200リットルの攪拌機付きオートクレーブに導入し、内温15〜20℃に保ち、エチレンを2020g導入し、180分間攪拌しながら反応させた。
【0056】
重合終了後、固体成分を沈降させ、上澄み液の除去およびヘプタンによる洗浄を2回行った。得られた予備重合触媒を精製ヘプタンに再懸濁して、固体触媒成分濃度で2g/リットルとなるよう、ヘプタンにより調整を行った。この予備重合触媒は固体触媒成分1g当りポリエチレンを10g含んでいた。
【0057】
(4)本重合
内容量58リットルの管状重合器にプロピレンを40kg/時間、水素を5Nリットル/時間、上記(3)で製造した触媒スラリーを固体触媒成分として3.6g/時間、トリエチルアルミニウム2.2g/時間を連続的に供給し、管状重合器内に気相の存在しない満液の状態にて重合した。管状反応器の温度は30℃であり、圧力は3.2MPa/Gであった。この反応における触媒をM1系触媒とする。
【0058】
得られたスラリーを内容量1000リットルの攪拌機付きベッセル重合器へ送り、更に重合を行った。重合器へは、プロピレンを45kg/時間、エチレンを気相部のエチレン濃度が3.4mol%、水素を気相部の水素濃度が0.10mol%になるように供給した。重合温度72℃、圧力3.1MPa/Gで重合を行った。
【0059】
得られたスラリーを気化後、気固分離を行い、ポリプロピレン系樹脂(B−1)を得た。得られたポリプロピレン系樹脂(B−1)を80℃で真空乾燥した。得られたポリプロピレン系樹脂(B−1)の特性を表1に示す。
【0060】
[製造例2]
重合方法を以下のように変えた以外は、製造例1と同様の方法で行った。
(1)本重合
内容量58リットルの管状重合器にプロピレンを40kg/時間、水素を5Nリットル/時間、製造例1の(3)で製造した触媒スラリーを固体触媒成分として3.6g/時間、トリエチルアルミニウム2.2g/時間を連続的に供給し、管状重合器内に気相の存在しない満液の状態にて重合した。管状反応器の温度は30℃であり、圧力は3.2MPa/Gであった。この反応における触媒をM1系触媒とする。
【0061】
得られたスラリーを内容量1000リットルの攪拌機付きベッセル重合器へ送り、更に重合を行った。重合器へは、プロピレンを45kg/時間、エチレンを気相部のエチレン濃度が1.9mol%、水素を気相部の水素濃度が0.07mol%になるように供給した。重合温度72℃、圧力3.1MPa/Gで重合を行った。
【0062】
得られたスラリーを気化後、気固分離を行い、ポリプロピレン系樹脂(B−2)を得た。得られたポリプロピレン系樹脂(B−2)を80℃で真空乾燥した。得られたポリプロピレン系樹脂(B−2)の特性を表1に示す。
【0063】
[製造例3]
重合方法を以下のように変えた以外は、製造例1と同様の方法で行った。
(1)本重合
内容量58リットルの管状重合器にプロピレンを40kg/時間、水素を5Nリットル/時間、製造例1の(3)で製造した触媒スラリーを固体触媒成分として3.6g/時間、トリエチルアルミニウム2.2g/時間を連続的に供給し、管状重合器内に気相の存在しない満液の状態にて重合した。管状反応器の温度は30℃であり、圧力は3.2MPa/Gであった。この反応における触媒をM1系触媒とする。
【0064】
得られたスラリーを内容量1000リットルの攪拌機付きベッセル重合器へ送り、更に重合を行った。重合器へは、プロピレンを45kg/時間、エチレンを気相部のエチレン濃度が3.4mol%、水素を気相部の水素濃度が0.01mol%になるように供給した。重合温度72℃、圧力3.1MPa/Gで重合を行った。
【0065】
得られたスラリーを内容量500リットルの攪拌機付きベッセル重合器へ送り、共重合を行った。重合器へは、プロピレンを10kg/時間、水素を気相部の水素濃度が0.1mol%になるように供給した。重合温度54℃、圧力2.9MPa/Gを保つようにエチレンを供給し重合を行った。
【0066】
得られたスラリーを気化後、気固分離を行い、プロピレンランダム共重合体(B−3)とプロピレン−エチレンランダム共重合体ゴム(C−3)とからなるプロピレン共重合体(A−3)を得た。得られたプロピレン共重合体(A−3)を80℃で真空乾燥した。得られたプロピレン共重合体(A−3)の特性を表1に示す。
【0067】
[製造例4]
重合方法を以下のように変えた以外は、製造例1と同様の方法で行った。
(1)本重合
内容量58リットルの管状重合器にプロピレンを40kg/時間、水素を5Nリットル/時間、製造例1の(3)で製造した触媒スラリーを固体触媒成分として3.6g/時間、トリエチルアルミニウム2.2g/時間を連続的に供給し、管状重合器内に気相の存在しない満液の状態にて重合した。管状反応器の温度は30℃であり、圧力は3.2MPa/Gであった。この反応における触媒をM1系触媒とする。
【0068】
得られたスラリーを内容量1000リットルの攪拌機付きベッセル重合器へ送り、更に重合を行った。重合器へは、プロピレンを45kg/時間、エチレンを気相部のエチレン濃度が2.8mol%、水素を気相部の水素濃度が0.07mol%になるように供給した。重合温度72℃、圧力3.1MPa/Gで重合を行った。
【0069】
得られたスラリーを気化後、気固分離を行い、ポリプロピレン系樹脂(B−4)を得た。得られたポリプロピレン系樹脂(B−4)を80℃で真空乾燥した。得られたポリプロピレン系樹脂(B−4)の特性を表1に示す。
【0070】
[製造例5]
重合方法を以下のように変えた以外は、製造例1と同様の方法で行った。
(1)本重合
内容量58リットルの管状重合器にプロピレンを40kg/時間、水素を5Nリットル/時間、製造例1の(3)で製造した触媒スラリーを固体触媒成分として3.6g/時間、トリエチルアルミニウム2.2g/時間を連続的に供給し、管状重合器内に気相の存在しない満液の状態にて重合した。管状反応器の温度は30℃であり、圧力は3.2MPa/Gであった。この反応における触媒をM1系触媒とする。
【0071】
得られたスラリーを内容量1000リットルの攪拌機付きベッセル重合器へ送り、更に重合を行った。重合器へは、プロピレンを45kg/時間、エチレンを気相部のエチレン濃度が3.4mol%、水素を気相部の水素濃度が0.01mol%になるように供給した。重合温度72℃、圧力3.1MPa/Gで重合を行った。
【0072】
得られたスラリーを気化後、気固分離を行い、ポリプロピレン系樹脂(B−5)を得た。得られたポリプロピレン系樹脂(B−5)を80℃で真空乾燥した。得られたポリプロピレン系樹脂(B−5)の特性を表1に示す。
【0073】
[製造例6]
重合方法を以下のように変えた以外は、製造例1と同様の方法で行った。
(1)本重合
内容量58リットルの管状重合器にプロピレンを40kg/時間、水素を5Nリットル/時間、製造例1の(3)で製造した触媒スラリーを固体触媒成分として3.6g/時間、トリエチルアルミニウム2.2g/時間を連続的に供給し、管状重合器内に気相の存在しない満液の状態にて重合した。管状反応器の温度は30℃であり、圧力は3.2MPa/Gであった。この反応における触媒をM1系触媒とする。
【0074】
得られたスラリーを内容量1000リットルの攪拌機付きベッセル重合器へ送り、更に重合を行った。重合器へは、プロピレンを45kg/時間、エチレンを気相部のエチレン濃度が3.4mol%、水素を気相部の水素濃度が0.47mol%になるように供給した。重合温度72℃、圧力3.1MPa/Gで重合を行った。
【0075】
得られたスラリーを気化後、気固分離を行い、ポリプロピレン系樹脂(B−6)を得た。得られたポリプロピレン系樹脂(B−6)を80℃で真空乾燥した。得られたポリプロピレン系樹脂(B−6)の特性を表1に示す。
【0076】
[製造例7]
重合方法を以下のように変えた以外は、製造例1と同様の方法で行った。
(1)本重合
内容量58リットルの管状重合器にプロピレンを40kg/時間、水素を5Nリットル/時間、製造例1の(3)で製造した触媒スラリーを固体触媒成分として3.6g/時間、トリエチルアルミニウム2.2g/時間を連続的に供給し、管状重合器内に気相の存在しない満液の状態にて重合した。管状反応器の温度は30℃であり、圧力は3.2MPa/Gであった。この反応における触媒をM1系触媒とする。
【0077】
得られたスラリーを内容量1000リットルの攪拌機付きベッセル重合器へ送り、更に重合を行った。重合器へは、プロピレンを45kg/時間、水素を気相部の水素濃度が0.18mol%になるように供給した。重合温度72℃、圧力3.1MPa/Gで重合を行った。
【0078】
得られたスラリーを気化後、気固分離を行い、ホモポリプロピレン(B−7)を得た。得られたホモポリプロピレン(B−7)を80℃で真空乾燥した。得られたホモポリプロピレン(B−7)の特性を表1に示す。
【0079】
(実施例1〜3)
エチレンユニットを5wt%含有し、MFR=11g/min、融点=120℃のポリプロピレン系樹脂(B−1)と、
密度=867kg/m3、MFR=7g/minの三井化学株式会社製ノティオ(登録商標)を、それぞれ表1に示す割合で配合したポリプロピレン系樹脂組成物を用いてチューブ状容器を成型した。
【0080】
(実施例4)
エチレンユニットを2.8wt%含有し、MFR=11g/min、融点=134℃のポリプロピレン系樹脂(B−2)を用いたほかは、実施例1〜3と同様にチューブ状容器を成型した。
【0081】
(実施例5)
製造例3で製造したプロピレン共重合体(A−3)を用いて、実施例1〜3と同様にチューブ状容器を成型した。
【0082】
(比較例1)
エチレンユニットを5wt%含有し、MFR=11g/min、融点=120℃のポリプロピレン系樹脂(B−1)を用いてチューブ状容器を成型した。
【0083】
(比較例2)
エチレンユニットを4.2wt%含有し、MFR=11g/min、融点=124℃のポリプロピレン系樹脂(B−4):95wt%と、
密度=867kg/m3、MFR=7g/minの三井化学株式会社製ノティオ(登録商標):5wt%を配合したポリプロピレン系樹脂組成物を用いてチューブ状容器を成型した。
【0084】
(比較例3)
エチレンユニットを5wt%含有し、MFR=1g/min、融点=120℃のポリプロピレン系樹脂(B−5):90wt%と、
密度=867kg/m3、MFR=7g/minの三井化学株式会社製ノティオ(登録商標):10wt%を配合したポリプロピレン系樹脂組成物を用いてチューブ状容器を成型した。
【0085】
(比較例4)
エチレンユニットを5wt%含有し、MFR=50g/min、融点=120℃のポリプロピレン系樹脂(B−6):90wt%と、
密度=867kg/m3、MFR=7g/minの三井化学株式会社製ノティオ(登録商標):10wt%を配合したポリプロピレン系樹脂組成物を用いてチューブ状容器を成型した。
【0086】
(比較例5)
MFR=11g/min、融点=120℃のホモポリプロピレン(B−7):80wt%と、
密度=867kg/m3、MFR=7g/minの三井化学株式会社製ノティオ(登録商標):20wt%を配合したポリプロピレン系樹脂組成物を用いてチューブ状容器を成型した。
ポリプロピレン系樹脂組成物の物性および評価結果(成形性・キンク性)を表1に示す。
【0087】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ASTM D−1238に準じて230℃、荷重2.16kgで測定されるメルトフローレートが2.0〜40g/10minの範囲にあり、JIS K7121に準じて示差走査熱量計(DSC)によって測定される融点が100〜145℃の範囲にあり、JIS K7161に準じて測定される引張弾性率が100〜600MPaであり、2mmt射出角板のヘイズが65%以下であるポリプロピレン系樹脂からなることを特徴とするチューブ容器。
【請求項2】
室温n−デカン不溶部(Dinsol)95〜50重量%と室温n−デカン可溶部(Dsol)5〜50重量%とから構成され、ASTM D−1238に準じて230℃、荷重2.16kgで測定されるメルトフローレートが2.0〜40g/10minの範囲にあり、JIS K7121に準じて示差走査熱量計(DSC)によって測定される融点が100〜145℃の範囲にあり、前記Dinsolが下記要件(a1)を満たし、前記Dsolが下記要件(a3)を満たすプロピレン共重合体(A)からなることを特徴とするチューブ容器。
(a1) Dinsol中のエチレンに由来する骨格の含有割合が0.5〜14モル%の範囲にある
(a3) Dsol中のエチレンに由来する骨格の含有割合が10〜40モル%の範囲にある
【請求項3】
ASTM D−1238に準じて230℃、荷重2.16kgで測定されるメルトフローレートが2.0〜40g/10minの範囲にあり、JIS K7121に準じて示差走査熱量計(DSC)によって測定される融点が100〜145℃の範囲にあり、下記要件(b1)および(b2)を満たすプロピレンランダム共重合体(B)と、
ASTM D−1238に準じて230℃、荷重2.16kgで測定されるメルトフローレートが0.1〜50g/10minの範囲にあり、下記要件(c1)ないし(c3)を満たすプロピレン共重合体ゴム(C)からなるプロピレン系樹脂組成物からなることを特徴とするチューブ容器。
(b1) エチレンに由来する骨格の含有量が0.5モル%以上14モル%未満
(b2)JIS K7121に準じて示差走査熱量計(DSC)によって測定される融点が100〜145℃の範囲
(c1) 密度が860〜890kg/m3の範囲にある
(c2) ショアA硬度が60〜80の範囲にある
(c3) JIS K7121に準じて示差走査熱量計(DSC)によって測定される融点が120〜150℃の範囲にある

【公開番号】特開2012−96828(P2012−96828A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−245340(P2010−245340)
【出願日】平成22年11月1日(2010.11.1)
【出願人】(505130112)株式会社プライムポリマー (180)
【Fターム(参考)】