説明

チューブ形熱交換器内の構成

【課題】生成物の障害物を構成せずに伝熱管を互いに分離しておくと共にケーシング・チューブの内側の壁から分離しておく構成を実現することである。
【解決手段】ケーシング・チューブ(4)に囲まれた数本の伝熱管(3)を有しており、伝熱管(3)がその両端で管板(5)にしっかりと固定されており、該管板の少なくとも一方(5”)がケーシング・チューブ(4)に対して可動である、食品生成物加工のためのチューブ形熱交換器(1)内の構成である。可動の管板(5”)に伝熱管(3)1本当たり約1000Nの軸方向の力Fが加えられて伝熱管(3)をぴんと張るようになっていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケーシング・チューブに囲まれた数本の伝熱管を有しており、伝熱管がその両端で管板にしっかりと固定されている種類のチューブ形熱交換器内の構成に関する。
【背景技術】
【0002】
熱交換器には多くの種類があり、液体生成物の加熱または冷却に使用されている。たとえば、様々な温度の水蒸気または水の助けによって、生成物を所望の温度にすることが可能である。熱交換器は様々な加工業で使用されており、乳製品工場やジュース工場などの食品加工工場でも一般に使用されている。
【0003】
公知の種類の熱交換器として、いわゆるチューブ形熱交換器がある。この熱交換器は、流通系を形成するように相互に連結された1つまたは複数の熱交換器要素からなっている。熱交換器要素は、外側ジャケットまたはケーシング・チューブに囲まれた1つまたは複数の伝熱管を備えている。伝熱管は、熱交換器がどんなプロセスに使用されるかに応じて加熱または冷却される生成物を循環させるようになっている生成物パイプ・ベンドによって相互に連結された生成物インサートを形成するように相互に連結されている。伝熱管は、伝熱媒体を密閉しているジャケットまたはケーシング・チューブ内に密閉されている。伝熱媒体を循環させるように、相互に隣接するケーシング・チューブが相互に連結されている。伝熱媒体は、様々な温度の水、水蒸気、あるいはその他の種類の液体または気体で構成することができる。このような熱交換器の1つがスウェーデン特許第501908号に記載されている。
【0004】
熱交換器の効率を高める場合、1つまたは複数の熱交換器要素を再生部として使用し、すなわち、熱交換器で加熱された生成物により、流入してくる低温の生成物を加熱することが望ましい場合もある。この場合、流入してきた低温の生成物は結果的に、処理可能な加熱された生成物を冷却する働きをする。上述のチューブ形熱交換器を再生式に使用するには、生成物を伝熱管内と、伝熱管を囲むケーシング・チューブ内の両方に配置しなければならない。このようなプロセスによって、熱交換器全体がかなり廉価になり、また、チューブ形熱交換器で行われるプロセスのエネルギー消費量が削減される。
【0005】
伝熱管は、そのケーシング・チューブに密閉されており、通常、長さが約6mである。伝熱管が振動または弛みによる不要な応力にさらされないようにするには、伝熱管をその長さに沿った1つの点、または一般的には複数の点で支持しなければならない。伝熱管が弛むか、または振動し、互いに接触した場合、伝熱表面積が失われ、チューブ形熱交換器から、期待される効率が得られなくなる。最も一般的には、比較的短いチューブ長も支持しなければならない。使用される支点は、様々な構造および形態の支点であってよく、最も一般的には、一般的な名称を使用してバッフルと呼ばれている。水または水蒸気のみが伝熱媒体として使用されるとき、このようなバッフルの形態および構造に課される要件は、それらが伝熱管を互いに分離し、かつ伝熱管がケーシング・チューブの内側の壁に接触するのを妨げることを除いてほとんど、またはまったくない。
【0006】
熱交換器を再生式に使用することが望ましいときには、完全な洗浄機能を有する衛生構造に直ちに、まったく異なる要件が課される。生成物がフルーツ・ジュースのように繊維または小粒子を含む場合、このような要件はずっと厳しくなる。生成物の繊維または粒子が蓄積される危険性をなくすために、できるだけ丸い表面を持つようにバッフルを構成する試みがなされている。しかし、実際には、このような構造のバッフルを得るのは難しいことがわかっている。くぼみ部を形成せずにバッフルに伝熱管を囲ませる際にも問題が起こっている。どんなバッフルでも多かれ少なかれ、生成物が流れる方向に対して垂直に何かが位置する必要があり、その結果、常に、粒子または繊維が蓄積し、それによって洗浄工程が影響を受け、最終的に生産プロセスが無効になる恐れがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】スウェーデン特許第501908号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、ケーシング・チューブ内を流れる生成物の障害物を構成せずに伝熱管を互いに分離しておくと共にケーシング・チューブの内側の壁から分離しておく構成を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的およびその他の目的は、導入を介して説明した種類の構成に、伝熱管の少なくとも一端に軸方向の力Fが加えられる特徴が付与されることにより、本発明によって実現されている。
【0010】
本発明の好ましい実施形態には、添付の従属請求項に記載された特徴がさらに付与されている。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明による構成を有するチューブ式熱交換器の側面部分断面図である。
【図2】本発明による構成の一部の側面部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0012】
次に、本発明の好ましい一実施形態について、添付の図面を参照して以下に詳しく説明する。
【0013】
本発明による構成と共に使用することのできる熱交換器1を図1に示す。チューブ式熱交換器1は、1つまたは複数の熱交換器2からなり、図1にそのうちの2つが示されている。熱交換器要素2は、2つの流通系を形成するように相互に連結されている。熱交換器要素2は実質的に、ケーシング・チューブ4に密閉された数本の伝熱管3からなる。
【0014】
伝熱管3は、伝熱管3と管板5がフロー・インサート6を構成するように両端で管板5にしっかりと固定されている。2つの隣接するフロー・インサート6がパイプ・ベンド14により第1の流通系として相互に連結されている。この第1の流通系は、ある生成物用の従来の熱交換器1で使用される。
【0015】
伝熱管3を囲むケーシング・チューブ4は、2つの隣接するケーシング・チューブ4が各ケーシング・チューブ4上のソケット・チューブ7により、あるいは場合によっては中間連結部分を介して互いに容易に連結されるように相互に連結されている。相互に連結されたケーシング・チューブ4は、従来のチューブ形熱交換器1では伝熱媒体に使用される第2の流通系を構成している。
【0016】
市販されている大部分の熱交換器は、長さが約6mの熱交換器要素2を有している。伝熱管3およびケーシング・チューブ4がこの長さに沿って支持されない場合、伝熱管3およびケーシング・チューブ4は重力のために弛む。伝熱管3は互いに接触すると共にケーシング・チューブ4の内側の壁に接触する。これを回避するために、従来の熱交換器では、様々な構造のいわゆるバッフルによって伝熱管3を支持する必要がある。バッフルの機能は立証されており、バッフルは、第1の流通系を生成物に使用し、第2の流通系を伝熱媒体に使用するときに十分に機能する。
【0017】
チューブ形熱交換器1を再生式に使用するとき、第1の流通系と第2の流通系は共に生成物を含む。一方の流通系が、チューブ形熱交換器1に入る低温の生成物を含み、他方の流通系が、処理可能な加熱された生成物を含み、あるいはその逆の場合もある。このことは、伝熱管3の支持にまったく異なる要件が課されることを同時に意味する。
【0018】
現代の熱交換器1は通常、いわゆる流動端を有し、すなわち、チューブ形熱交換器1で起こる熱膨張を補償するように管板5がケーシング・チューブ4に対してある程度移動することができる。本発明による構成において、伝熱管3の一端は、管板5’がケーシング・チューブ4の一端8にしっかりと支持されるように固定される。伝熱管3の他方の端部において、管板5”は移動可能であり、管板5”とケーシング・チューブ4との間にスプリング・バッテリ9が配設されている。したがって、本発明による構成は、ごくわずかに修正することにより、流動端を有する従来のチューブ形熱交換器1上で遡及的に使用することができる。この構成は、わずかな改良が必要になる場合がある他の種類の管端部に使用することもできる。
【0019】
スプリング・バッテリ9は、本発明による構成の好ましい実施形態では、2枚のプレート11、12間に配置されたいくつかの板ばね10からなる。プレート11、12は、スプリング・バッテリ9の組立ておよび分解を容易にするように通しボルト(不図示)によって一体化されている。これらのボルトは、スプリング・バッテリ9がチューブ形熱交換器1上に取り付けられている間は何の機能も果たさない。スプリング・バッテリ9は、コイルばねのような他の種類のばねで構成することもできる。スプリング・バッテリ9は、その板ばね10と共に、熱交換器要素2の熱膨張を補償することもできる。あるいは、所望の程度に締め付けられるボルトのみによって力Fを実現することができる。しかし、この方法では、熱交換器要素2の熱膨張を補償することはできない。
【0020】
スプリング・バッテリ9は、ある所定の力Fをもたらす。この力は、板ばね10の数と、所与の距離Lにわたる板ばねの寸法とによって決定される。したがって、力Fは、フロー・インサート6に対して軸方向に加えられる。加えられるこの力Fは、伝熱管3を、互いに接触することも、ケーシング・チューブ4の内側の壁を擦ることもないようにぴんと張っておくのに十分な力でなければならない。好ましい実施形態において、力Fは、スプリング・バッテリ9によって伝熱管3の一端に加えられる。あるいは、スプリング・バッテリ9が伝熱管3の両端に取り付けられるように力Fを分散させることができる。
【0021】
力Fが過度に大きいと、伝熱管3を管板5に固定する際に不要な応力が生じ、力Fが過度に小さいと、伝熱管3を必要に応じて離して保持することができなくなる。この力が過度に大きいと、組立ておよび分解時に望ましくない「カタパルト効果」が生じ、それによって作業員が負傷する恐れがある。必要な力Fは、伝熱管3の固有の重量、すなわち、寸法および材料の厚さに依存する。計算により、市販されている多くのチューブ形熱交換器1の伝熱管3の管長が標準的な6mであるときに、伝熱管3をぴんと張った状態にしておくには1本当たり約1000Nの力が必要であることが分かっている。
【0022】
従来のチューブ形熱交換器1では、チューブが長いと、ケーシング・チューブ4がある程度弛ることもある。これは通常、中央支持部13を使用することによって補償される。しかし、好ましい実施形態では、ケーシング・チューブ4のある程度の弛みが許容され、したがって、伝熱管3の1本当たりに加えられる力を、伝熱管3とケーシング・チューブ4が接触しない状態まで低減させることができる。チューブ形熱交換器要素2上の可能な中央支持部13は、弛みが起こる場合にはそれに適応させられる。
【0023】
したがって、本発明による上述の構成は、いわゆるバッフルがなくても、伝熱管3を互いに分離しておくと共にケーシング・チューブ4の内側の壁から分離しておくことのできるチューブ形熱交換器1を実現する。これにより、液体がケーシング・チューブ4を自由に通過することが可能になり、かつチューブ形熱交換器1を再生式に使用することが望ましい場合に、生成物の、伝熱管3の周りでの移動および伝熱管3間の移動を妨げるものはなくなる。特に、フルーツジュースのように粒子または繊維を含む生成物の場合、本発明による構成により、バッフルによって構成される障害表面に繊維が蓄積する恐れなしにチューブ形熱交換器1を再生式に使用することができる。本発明による構成では、チューブ形熱交換器1の両方の流通系において完全洗浄機能も実現される。
【0024】
上記の説明から明らかなように、本発明は、生成物の流れの方向に障害物を構成するバッフルなしでチューブ形熱交換器を再生式に使用できるようにする構成を実現する。バッフルがないため、いわゆる「処理の難しい生成物」、すなわち、繊維または粒子を含む生成物に対してチューブ形熱交換器を再生式に使用することも可能になる。
【0025】
本発明を、上記で説明し図面に示した発明に限るものとみなしてはならず、添付の請求の範囲から逸脱せずに多数の修正形態を構想することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーシング・チューブ(4)に囲まれた数本の伝熱管(3)を有しており、前記伝熱管(3)がその両端で管板(5)にしっかりと固定されており、該管板の少なくとも一方(5”)がケーシング・チューブ(4)に対して可動である、食品生成物加工のためのチューブ形熱交換器(1)内の構成において、前記可動の管板(5”)に伝熱管(3)1本当たり約1000Nの軸方向の力Fが加えられて前記伝熱管(3)をぴんと張るようになっていることを特徴とする構成。
【請求項2】
前記食品生成物は前記伝熱管(3)内を流通することを特徴とする、請求項1に記載の構成。
【請求項3】
伝達媒体が前記ケーシング・チューブ(4)内を流通することを特徴とする、請求項1または2に記載の構成。
【請求項4】
前記伝達媒体は前記食品生成物であることを特徴とする、請求項3に記載の構成。
【請求項5】
力Fは、スプリング装置(9)によって実現されることを特徴とする、請求項1から4までのうちのいずれか1項に記載の構成。
【請求項6】
スプリング装置(9)はいくつかの板ばね(10)からなることを特徴とする、請求項5に記載の構成。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−207913(P2012−207913A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−148256(P2012−148256)
【出願日】平成24年7月2日(2012.7.2)
【分割の表示】特願2001−533377(P2001−533377)の分割
【原出願日】平成12年10月25日(2000.10.25)
【出願人】(591007424)テトラ ラバル ホールデイングス エ フイナンス ソシエテ アノニム (190)
【Fターム(参考)】