説明

チューブ状フィルムの内面処理装置及び内面処理方法

【課題】チューブ状フィルムの内周面に処理むらが発生することを防止することができるチューブ状フィルムの内面処理装置及び内面処理方法を提供する。
【解決手段】チューブ状フィルムZの内面処理を行う内面処理装置であって、前記チューブ状フィルムZの少なくとも一部を筒形状に維持した状態で内周面上に保持する円筒体を有する保持手段3と、前記チューブ状フィルムZの内面処理に用いられる処理液が貯留され、前記円筒体に保持された前記チューブ状フィルムが浸漬される貯留槽4と、前記円筒体3に保持された前記チューブ状フィルムZが前記貯留層4内の処理液中に浸漬された状態で、筒形状に維持された前記チューブ状フィルムZの内部に配置可能であり、該チューブ状フィルムZの内面と処理液との接触を均一化する均一化手段と、を備える内面処理装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チューブ状フィルムの内面処理装置及び内面処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、印刷機や圧延機、乾燥機などの各種ロール、電子写真式の複写機やプリンタ、あるいはファクシミリなどに用いられる定着用加熱ロール、定着用加圧ロール、帯電ロール、クリーニングロール、現像ロール、転写ロールには、フッ素樹脂製および導電性物質のカーボンブラックを配合したフッ素樹脂製チューブ状フィルムが、ロールカバーとしてロールの外周面に被覆されている。
【0003】
一般に、フッ素樹脂製チューブ状フィルムは、その卓越した物理的化学的性質、耐熱性、耐薬品姓、非接着性等を数多く併せ持つことから多方面に使用されているが、他の材料との組み合わせにおいて、その非接着性のため単純な接着複合化が困難であり、そのため従来より、フッ素系樹脂成形品の表面をアルカリ金属の溶液で処理する等の各種エッチング処理等を施すことより接着剤の適用を可能としている。
【0004】
特に、フッ素樹脂製チューブ状フィルムの内周面にそのような処理を施す方法として、例えば特許文献1に開示されている方法が知られている。この方法は、図9に示すように、一対のピンチロール100,100で挟持することにより閉塞部を設けたフッ素樹脂製チューブ101に、表面処理液、例えばナトリウム等のアルカリ金属の液体アンモニア溶液を注入して閉塞部より上部に貯溜させ、該チューブ101と相対的に閉塞部を下方に移動させることにより、フッ素樹脂製チューブ状フィルムの内周面と表面処理液との接触部位を移動させることにより、連続してフッ素樹脂製チューブの内面処理を行うものである。
【0005】
しかしながら、この特許文献1に開示されている方法によりフッ素樹脂製チューブ状フィルムの内周面に所定の処理を行う場合、チューブ状フィルム101をピンチロール100,100で加圧挟持する構成であるため、その構成上どうしてもその挟持された部分に筋状の折り目が形成されるという問題が発生する。チューブ状フィルムが搭載されるプリンタや複写機は年々高品位、高品質が要求されており、チューブ状フィルムに形成される僅かな折り目跡さえ許容されなくなってきており、チューブ状フィルムの一部を加圧挟持することなく、チューブ状フィルムの内面を処理することが要求されている。
【0006】
このようにチューブ状フィルムに折り目を形成させないという要求を満たす処理方法としては、例えば、外表面がマスキングされたチューブ状フィルムを処理液中に浸漬させることにより、チューブ状フィルムの内周面に接着性を付与する方法がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平05−059195号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述の外表面がマスキングされたチューブ状フィルムを処理液中に浸漬させることにより、当該チューブ状フィルムの内周面に接着性を付与する方法は、確かにチューブ状フィルムに筋状の折り目が形成されないという点で優れている。しかしながら、チューブ状フィルムの内周面と処理液との化学反応により発生する気泡が、チューブ状フィルムの内周面上に付着してしまい、気泡が付着した部分と付着していない部分とで処理液との接触条件が異なることに起因して、処理むらが発生するという問題があった。具体的に説明すると、処理液が貯留された貯留槽の上方に配置されるチューブ状フィルムを下方移動させて処理液中に浸漬させる場合、チューブ状フィルムの内周面が処理液と接触することにより気泡が発生する。例えば、チューブ状フィルムがフッ素樹脂製であり、処理液がナトリウムを液体アンモニア溶液に溶解させた溶液である場合、処理液とフッ素樹脂との反応速度が速いため、チューブ状フィルムと処理液とが接触した直後にアンモニアガスが気泡となって発生する。発生した気泡は処理液表面に浮遊し、処理液表面近傍位置を通過するチューブ状フィルムの内周面に付着することになる。気泡が付着した部分は、処理液と接触しないため、処理むらとして残ることになる。この結果、チューブ状フィルムの内周面に均一な接着性や濡れ性を付与することが難しくなる。
【0009】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであって、チューブ状フィルムの内周面に処理むらが発生することを防止することができるチューブ状フィルムの内面処理装置及び内面処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の上記目的は、 チューブ状フィルムの内面処理を行う内面処理装置であって、前記チューブ状フィルムの少なくとも一部を筒形状に維持した状態で内周面上に保持する円筒体を有する保持手段と、前記チューブ状フィルムの内面処理に用いられる処理液が貯留され、前記円筒体に保持された前記チューブ状フィルムが浸漬される貯留槽と、前記円筒体に保持された前記チューブ状フィルムが前記貯留層内の処理液中に浸漬された状態で、筒形状に維持された前記チューブ状フィルムの内部に配置可能であり、該チューブ状フィルムの内面と処理液との接触を均一化する均一化手段と、を備える内面処理装置により達成される。
【0011】
また、この内面処理装置において、前記均一化手段は、前記円筒体の軸方向に沿って延びる回転軸と、前記回転軸に取り付けられる羽根体とを備えていることが好ましい。
【0012】
また、前記羽根体は、可撓性材料により形成されており、その先端部は、筒形状に維持された前記チューブ状フィルムの内面と摺接可能に構成されていることが好ましい。
【0013】
また、前記均一化手段は、筒形状に維持された前記チューブ状フィルムの内面を被覆する筒状の被覆体と、前記円筒体の軸方向に沿って移動可能な可動軸とを備えており、前記可動軸は、前記被覆体を前記チューブ状フィルムの内部から外部へ引き抜き可能に構成されていることが好ましい。
【0014】
また、前記被覆体は、シート状部材を巻回することにより筒状に形成されていることが好ましい。
【0015】
また、本発明の上記目的は、処理液が貯留される貯留槽にチューブ状フィルムを浸漬して該チューブ状フィルムの内面処理を行う内面処理方法であって、前記チューブ状フィルムの少なくとも一部を筒形状に維持した状態で円筒体の内周面上に保持する保持ステップと、前記円筒体に保持された前記チューブ状フィルムを処理液に浸漬する浸漬ステップと、筒形状に維持された前記チューブ状フィルムの内部における処理液を撹拌する撹拌ステップと、を備える内面処理方法により達成される。
【0016】
また、本発明の上記目的は、処理液が貯留される貯留槽にチューブ状フィルムを浸漬して該チューブ状フィルムの内面処理を行う内面処理方法であって、前記チューブ状フィルムの少なくとも一部を筒形状に維持した状態で円筒体の内周面上に保持する保持ステップと、筒形状に維持された前記チューブ状フィルムの内面に筒状の被覆体を被覆する被覆ステップと、前記円筒体に保持された前記チューブ状フィルムを処理液に浸漬する浸漬ステップと、前記チューブ状フィルムの内面に被覆された被覆体を前記チューブ状フィルムの内部から外部へ引き抜く引き抜きステップと、を備える内面処理方法により達成される。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、チューブ状フィルムの内周面に処理むらが発生することを防止することができるチューブ状フィルムの内面処理装置及び内面処理方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態に係るチューブ状フィルムの内面処理装置の概略構成断面図である。
【図2】図1のA−A断面図である。
【図3】(a)は、図1に示す内面処理装置の要部拡大概略構成図である。(b)は、図3(a)のB−B断面図である。
【図4】図1に示す内面処理装置が備える均一化手段の変形例を説明する概略構成断面図である。
【図5】保持手段を第1貯留槽に浸漬した状態を説明する説明図である。
【図6】図1に示す内面処理装置の変形例の要部を示す概略構成断面図である。
【図7】図1に示す内面処理装置の変形例を示す概略構成断面図である。
【図8】図1に示す内面処理装置が備える保持手段の変形例を示す概略構成断面図である。
【図9】従来のチューブ状フィルムの内面処理方法を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実態形態にかかるチューブ状フィルムZの内面処理装置について添付図面を参照して説明する。尚、各図面は、構成の理解を容易にするため、実寸比ではなく部分的に拡大又は縮小されている。
【0020】
図1は、本発明の一実施形態に係るチューブ状フィルムZの内面処理装置の概略構成断面図であり、図2は、図1のA−A断面図である。この内面処理装置1は、チューブ状フィルムの内周面に対して、接着性や濡れ性等を付与する内面処理を行うための装置である。ここで、本内面処理装置1によって内面処理されるチューブ状フィルムとしては、フッ素樹脂製チューブを例示することができる。このチューブを形成する際に用いられるフッ素樹脂としては、例えば、PTFE、PFA、FEP、ETFE、CTFE、PVDF、PCTFEなどが挙げられ、中でもPTFE、PFAが耐熱性、非粘着性のために好ましく用いられる。
【0021】
このようなフッ素樹脂から形成されるチューブの大きさには特に制限はないが、定着ロールカバーとして使用する場合には、通常、外径は1〜300mm程度であり、肉厚は10〜400μm程度である。また、該チューブの長さは、例えば、100〜2000mm程度である。
【0022】
本実施形態に係るチューブ状フィルムの内面処理装置1は、図1及び図2に示すように、装置筐体2と、保持手段3と、第1貯留槽4と、第2貯留槽5と、均一化手段6とを備えている。
【0023】
装置筐体2は、その内部に、保持手段3、第1貯留槽4及び第2貯留槽5を備えるハウジングであり、保持手段3を水平方向に搬送する搬送装置21を上部に備えている。また、図2に示すように、保持手段3を上下方向に搬送する複数のリフト装置22を側壁部に備えている。搬送装置21及び各リフト装置22共に、保持手段3の上端部分を挟持可能な挟持部Hをそれぞれ備えている。また、搬送装置21及び各リフト装置22は、保持手段3を互いに受け渡し可能に制御されている。また、一方のリフト装置22は、搬送装置21から受け渡された保持手段3を下方移動させて、第1貯留槽4内の処理液中に保持手段3を浸漬できるように構成されており、他方のリフト装置22は、搬送装置21から受け渡された保持手段3を下方移動させて、第2貯留槽5内に保持手段3を浸漬できるように構成されている。
【0024】
保持手段3は、チューブ状フィルムZの少なくとも一部を筒形状に維持した状態で内周面上に保持する円筒体31を備えている。具体的に説明すると、図3(a)の要部拡大概略構成図に示されるように、円筒体31は、両端部が開口する筒体であり、その内径が、内周面に表面処理を施そうとするチューブ状フィルムZの径に略等しくなるように構成されている。また、円筒体31の長さは、内面処理されるチューブ状フィルムZの長さよりも短くなるように構成されている。
【0025】
このような円筒体31にチューブ状フィルムZをセットするには、まず、チューブ状フィルムZを円筒体31の一方の端部側から円筒体31内に挿入し、チューブ状フィルムZの各端部を、円筒体31の各端部を囲繞するようにしてそれぞれ折り返す。その後、円筒体31の外周面側に折り返されたチューブ状フィルムZの各端部を、図示しない接着テープ等により円筒体31の外周面に固定する。このようにして円筒体31に保持されたチューブ状フィルムZは、その両端部を除く部分が、円筒体31の内周面上に筒形状に維持された状態で保持されることになる。なお、円筒体31は、円筒体31の軸線が上下方向に沿う方向となるように第1貯留槽4内及び第2貯留槽5内に浸漬可能に構成されている。
【0026】
第1貯留槽4は、チューブ状フィルムZの内面処理に用いられる処理液が貯留される容器であり、装置筐体2の床部に配置されている。この第1貯留槽4は、上述の円筒体31に保持されるチューブ状フィルムZが浸漬される容器であり、円筒体31に保持されるチューブ状フィルムZの全体が浸漬可能な深さ及び内径を有している。また、第1貯留槽4は、その下部に接続される配管41を介して連結される液面位置制御用ポンプ42を備えており、第1貯留槽4の内部に貯留される処理液の液面位置を種々変更できるように制御されている。
【0027】
第1貯留槽4に貯留される処理液としては、例えば、チューブ状フィルムZの内面を化学反応によって親水化する溶液が用いられる。このような溶液としては、例えば、Na/ナフタレン錯塩溶液や、ナトリウム等のアルカリ金属の液体アンモニア溶液を好ましく用いることができる。なお、Na/ナフタレン錯塩溶液を処理液として用いる場合、この処理液の温度を10〜40℃程度に設定することが好ましい。また、ナトリウム等のアルカリ金属の液体アンモニア溶液を処理液として用いる場合、この処理液の温度を−70℃〜−50℃程度に設定することが好ましい。
【0028】
第2貯留槽5は、上記第1貯留槽4内に貯留される処理液とは異なる処理液が貯留される容器であり、装置筐体2の床部において第1貯留槽4に隣接して配置されている。この第2貯留槽5は、第1貯留槽4と同様に、上述の円筒体31に保持されるチューブ状フィルムZが浸漬される容器であり、円筒体31に保持されるチューブ状フィルムZの全体が浸漬可能な深さ及び内径を有している。また、第2貯留槽5も、その底部に接続される配管を介して連結される液面位置制御用ポンプ(図示せず)を備えており、第2貯留槽5の内部に貯留される処理液の液面位置を種々変更できるように制御されている。
【0029】
第2貯留槽5に貯留される処理液としては、例えば、第1貯留槽4に浸漬されチューブ状フィルムZの内面に対して施された内面処理の進行を抑制する溶液が用いられる。このような溶液としては、例えば、エチレングリコールジメチルエーテル溶液等のアルコール溶液や、水等を用いることができる。
【0030】
均一化手段6は、円筒体31に保持されたチューブ状フィルムZが第1貯留層4内の処理液中に浸漬された状態で、筒形状に維持されたチューブ状フィルムZの内部に配置可能に構成されている。本実施形態においては、均一化手段6は、該チューブ状フィルムZの内面と処理液との接触を均一化する撹拌部材61を備えている。この撹拌部材61は、図3(a)に示すように、第1貯留槽4の内部に配置されており、一端部が第1貯留槽4の底部中央に貫通し当該底部から立設する棒状の回転軸61aと、回転軸61aに取り付けられる羽根体61bとを備えている。回転軸61aの一端部は、第1貯留槽4の底部下方に配置されるモーター等の駆動装置62に接続している。駆動装置62を駆動させることにより、軸心周りに回転軸61aを回転させることが可能となっている。回転軸61aの長さは、特に限定されないが、回転軸61aを第1貯留槽4の内部に設置した状態で、その他端(先端)が、第1貯留槽4の上部開口位置近傍となるように、回転軸61aの長さを設定することが好ましい。また、羽根体61bは、図3(a)や、このB−B断面図を示す図3(b)の断面図に示すように、複数のプレート部材61cにより構成されている。本実施形態においては、各プレート部材61cの一側縁を回転軸61aに固定し、断面視十字形となるように羽根体61bを構成している。プレート部材61cの長さ(回転軸61aの軸心方向の長さ)は、特に限定されないが、回転軸61aの長さよりも僅かに短くなるように構成することが好ましい。また、回転軸61aの径方向におけるプレート部材61cの長さは、種々設定することができるが、例えば、図4の断面図に示すように、羽根体61bの先端部が、筒形状に維持されたチューブ状フィルムZの内面と摺接可能となるように構成してもよい。このような構成を採用する場合、チューブ状フィルムZに損傷を与えることを回避するために、羽根体61bをゴムやエラストマー等の可撓性材料により形成するのが好ましい。
【0031】
次に、本実施形態に係るチューブ状フィルムZの内面処理装置1の作動について以下説明する。まず、チューブ状フィルムZを円筒体31の一方の端部側から円筒体31内に挿入し、チューブ状フィルムZの各端部を、円筒体31の各端部を囲繞するようにしてそれぞれ円筒体31の外周面側に折り返す。その後、円筒体31の外周面側に折り返されたチューブ状フィルムZの各端部を、図示しない接着テープ等により円筒体31の外周面に固定する。
【0032】
次いで、チューブ状フィルムZを保持した円筒体31の上端部を搬送装置21の挟持部Hに挟持させ、搬送装置21を駆動して、第1貯留槽4の直上位置まで搬送する。その後、チューブ状フィルムZを保持した円筒体31をリフト装置22に受け渡し、リフト装置22の作動により、チューブ状フィルムZを保持した円筒体31を下方に向けて移動させ、図5に示すように、第1貯留槽4に貯留される処理液中に該円筒体31を浸漬させる。なお、チューブ状フィルムZを保持した円筒体31の下方端が、処理液表面に接したタイミングで、第1貯留槽4内に配置される撹拌部材61(均一化手段6)を駆動させ、回転軸61aを中心にして羽根体61bを回転させる。撹拌部材61を駆動するタイミングとしては、円筒体31の下方端が、処理液表面に接する前であってもよい。
【0033】
この浸漬によりチューブ状フィルムZの内周面は、処理液と反応して親水化処理が行われる。ここで、チューブ状フィルムZの内周面と処理液との反応により気泡が発生することになるが、チューブ状フィルムZの内部に配置されている撹拌部材61の羽根体61bの回転により、チューブ状フィルムZ内における処理液に対して強制的な流れが形成されるため、発生した気泡は、この流れに乗って流動し、チューブ状フィルムZの内周面に付着しにくくなる。仮に、気泡がチューブ状フィルムZの内周面に付着したとしても、チューブ状フィルムZの内周面に衝突する処理液の流れにより、内周面に付着した気泡が、内周面上から離脱することとなる。これにより、チューブ状フィルムZの内周面と処理液とが均一に接触し、チューブ状フィルムZの内周面に処理むらが発生することを効果的に防止することが可能となり、チューブ状フィルムZの内周面に対して均一な接着性や濡れ性を付与することができる。
【0034】
次に、チューブ状フィルムZを保持する円筒体31をリフト装置22の作動により上方に移動させ、第1貯留槽4から抜き出し、再度、搬送装置21に該円筒体31を受け渡す。その後、搬送装置21は、チューブ状フィルムZを保持した円筒体31を第2貯留槽5の直上位置まで搬送し、リフト装置22に該円筒体31を受け渡し、リフト装置22の作動により、チューブ状フィルムZを保持した円筒体31を下方に向けて移動させて、第2貯留槽5に貯留される処理液中に該円筒体31を浸漬させる。
【0035】
この第2貯留槽5内の処理液中に、円筒体31に保持されたチューブ状フィルムZを所定時間浸漬させることにより、チューブ状フィルムZの内面に施された親水化処理の進行を抑制する処理を行う。その後、リフト装置22を駆動して円筒体31に保持されたチューブ状フィルムZを上方に移動させ、第2貯留槽5から抜き出し、搬送装置21に受け渡すことにより、チューブ状フィルムZの内面に対する処理が完了する。なお、チューブ状フィルムZの各端部は、折り返されて円筒体31の端部に取り付けられているため、チューブ状フィルムZの各端部にリング状の折り目が生じる場合があるが、このような場合には、チューブ状フィルムZの両端部を切断する。
【0036】
本実施形態に係るチューブ状フィルムZの内面処理装置1は、上述のように、第1貯留槽4内の処理液中に筒形状に維持されたチューブ状フィルムZを浸漬した状態において、チューブ状フィルムZ内における処理液に対して強制的な流れを作ることができる撹拌部材61(均一化手段6)を備えているため、チューブ状フィルムZの内周面と処理液との反応により発生する気泡がチューブ状フィルムZの内周面に付着することを効果的に防止することができる。この結果、チューブ状フィルムZの内周面と第1貯留槽4内の処理液とが均一に接触し、チューブ状フィルムZの内周面に処理むらが発生することを効果的に防止することが可能となり、チューブ状フィルムZの内周面に対して均一な接着性や濡れ性を付与することができる。
【0037】
また、図4に示すように、撹拌部材61(均一化手段6)が有する羽根体61bを可撓性材料により形成し、この羽根体61bの先端部が、筒形状に維持されたチューブ状フィルムZの内面と摺接可能に構成した場合、羽根体61bの先端部が、チューブ状フィルムZの内面に付着する気泡を確実に除去することが可能となるため、より一層効果的に、チューブ状フィルムZの内周面に処理むらが発生することを効果的に防止することが可能となる。
【0038】
以上、本発明に係るチューブ状フィルムZの内面処理装置1の一実施形態について説明したが、具体的構成は、上記実施形態に限定されない。上記実施形態においては、撹拌部材61(均一化手段6)を第1貯留槽4内に配置する構成を採用しているが、例えば、図6に示すように、チューブ状フィルムZを保持する円筒体31に対して着脱自在に固定できるように構成してもよい。図6に示す構成においては、撹拌部材61が、円筒体31により筒形状に維持されたチューブ状フィルムZの内部に配置されるように、円筒体31の上端部に設置される保持部材63に固定されており、保持部材63が、円筒体31に着脱自在に固定できるように構成されている。撹拌部材61が備える回転軸61aの一端部は、保持部材63の上方に配置される駆動装置62に接続している。このような構成であっても、チューブ状フィルムZが保持された円筒体31を第1貯留槽4内の処理液中に浸漬すると共に、駆動装置62を駆動して羽根体61bを回転させることにより、チューブ状フィルムZの内周面と処理液との反応により発生する気泡がチューブ状フィルムZの内周面に付着することを効果的に防止することができる。
【0039】
また、上記実施形態においては、均一化手段6が、該チューブ状フィルムZの内面と処理液との接触を均一化する撹拌部材61を備えるように構成しているが、このような構成の他、図7の(a)〜(c)に示すように、均一化手段6が、円筒体31により筒形状に維持されたチューブ状フィルムZの内面を被覆する筒状の被覆体65と、円筒体31の軸方向に沿って移動可能な可動軸66とを備え、円筒体31に保持されたチューブ状フィルムZが貯留層内の処理液中に浸漬された状態で、該可動軸66が、被覆体65をチューブ状フィルムZの内部から外部へ引き抜き可能となるように構成してもよい。可動軸66の先端部(図7(a)においては下方端部)には、チューブ状フィルムZの内面を被覆する被覆体65の一端部に対し着脱自在に保持可能な保持部67が設けられている。
【0040】
このような構成の内面処理装置の作動について説明すると、まず、チューブ状フィルムZを円筒体31の一方の端部側から円筒体31内に挿入し、チューブ状フィルムZの各端部を、円筒体31の各端部を囲繞するようにしてそれぞれ円筒体31の外周面側に折り返す。その後、円筒体31の外周面側に折り返されたチューブ状フィルムZの各端部を、図示しない接着テープ等により円筒体31の外周面に固定する。
【0041】
次いで、円筒体31により筒形状に維持されたチューブ状フィルムZの内面を被覆するように筒状の被覆体65を配置する。このとき、被覆体65の上端部が、円筒体31の上端部から突出するようにする。その後、円筒体31の上端部を搬送装置21の挟持部Hに挟持させ、搬送装置21を駆動して、第1貯留槽4の直上位置まで搬送する。次に、チューブ状フィルムZを保持した円筒体31をリフト装置22に受け渡すと共に、可動軸66の先端部に設けられる保持部67により被覆体65の上端部を保持する(図7(a)に示す状態)。
【0042】
その後、リフト装置22及び可動軸66の双方を駆動し、図7(b)に示すように、被覆体65がチューブ状フィルムZの内面から離脱しないようにして、円筒体31を下方に向けて移動させ、第1貯留槽4に貯留される処理液中に該円筒体31を浸漬させる。処理液中への円筒体31の浸漬が完了した後、図7(c)に示すように、可動軸66を上方移動させて、チューブ状フィルムZの内部から被覆体65を外部に引き抜く。被覆体65が引き抜かれることにより、チューブ状フィルムZの内周面と処理液とが接触し、チューブ状フィルムZの内周面に対して親水化処理が施される。
【0043】
このように、均一化手段6が、円筒体31により筒形状に維持されたチューブ状フィルムZの内面を被覆する筒状の被覆体65と、円筒体31の軸方向に沿って移動可能な可動軸66とを備え、円筒体31に保持されたチューブ状フィルムZが貯留層内の処理液中に浸漬された状態で、該可動軸66が、被覆体65をチューブ状フィルムZの内部から外部へ引き抜き可能となるように構成することにより、チューブ状フィルムZの内周面全体が処理液と略同時に接触することになるため、チューブ状フィルムZの内周面に処理むらが発生することを効果的に防止して、該内周面に接着性や濡れ性を付与することができる。なお、チューブ状フィルムZの内周面と処理液との反応速度は速いため、反応によって発生した気泡が、チューブ状フィルムZの内周面に付着したとしても、その付着した部分は既に親水化処理が施された状態となっている。
【0044】
また、上記被覆体65は、例えば平面視矩形状のシート状部材を巻回することにより筒状に形成したものを使用することができる。このようにして筒状の被覆体65を構成した場合、シート状部材の反り返りによる巻き戻り力により、被覆体65がチューブ状フィルムZの内周面にはりつくこととなり、筒形状に維持されたチューブ状フィルムZの内周面上に被覆体65を簡便にセットすることが可能となる。具体的には、筒形状に維持されたチューブ状フィルムZの内径よりも被覆体65の外径が小さくなるように、シート状部材を手で巻回して被覆体65を形成し、この状態を維持したままチューブ状フィルムZの内部に被覆体65を挿入する。その後、被覆体65を保持している手をはなすと、シート状部材の反り返りにより、チューブ状フィルムZの内周面に接触するまで被覆体65の外径が増加し、被覆体65によってチューブ状フィルムZの内周面が被覆されることになる。
【0045】
また、上記実施形態においては、チューブ状フィルムZを円筒体31の一方の端部側から円筒体31内に挿入し、チューブ状フィルムZの各端部を、円筒体31の各端部を囲繞するようにしてそれぞれ折り返し、折り返された部分を接着テープ等により円筒体31の外周面に固定するようにして、チューブ状フィルムZを保持手段3に保持固定しているが、このような構成に特に限定されない。例えば、図8に示すような構造の保持手段3によりチューブ状フィルムZを保持してもよい。この保持手段3は、図8に示すように、円筒体31及びこの円筒体31を内部に収容する外筒32を備える二重構造を有している。円筒体31は、内周面に表面処理を施そうとするチューブ状フィルムZの径に等しい内径で一方端面が全面開口された筒体であり、その周面全域に亙って略均等に形成された多数の貫通孔33を有している。外筒32は、円筒体31の外周を覆う同軸の筒体であり、外筒32と円筒体31との間には隙間34が形成されている。円筒体31の開口端面と同側の外筒32の端面は、円筒体31との間に隙間34ができないように閉塞部材35により閉塞されており、反対側の端面には、吸引ポンプに接続される接続口36が形成されている。このように構成された保持手段3を使用して、チューブ状フィルムZの内面処理を施す場合には、まず、保持手段3の円筒体31内にチューブ状フィルムZを挿入し、吸引ポンプで吸引する。この吸引により、隙間34内が負圧になって貫通孔33から空気が吸入され、チューブ状フィルムZが円筒体31の内周面上に吸着保持されることとなる。このようにしてチューブ状フィルムZを保持手段3に保持した後、第1貯留槽4に保持手段3を浸漬させ、次いで第2貯留槽5に浸漬させることにより、チューブ状フィルムZの内面処理を行っていく。図8に示すような保持手段3を用いる場合、チューブ状フィルムZの両端部に折り目が生じないようにしてチューブ状フィルムZの内面処理を行うことが可能となる。
【符号の説明】
【0046】
1 チューブ状フィルムの内面処理装置
2 装置筐体
21 搬送装置
22 リフト装置
3 保持手段
31 円筒体
4 第1貯留部
5 第2貯留部
6 均一化手段
61 撹拌部材
61a 回転軸
61b 羽根体
62 駆動装置
65 被覆体
66 可動軸
Z チューブ状フィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
チューブ状フィルムの内面処理を行う内面処理装置であって、
前記チューブ状フィルムの少なくとも一部を筒形状に維持した状態で内周面上に保持する円筒体を有する保持手段と、
前記チューブ状フィルムの内面処理に用いられる処理液が貯留され、前記円筒体に保持された前記チューブ状フィルムが浸漬される貯留槽と、
前記円筒体に保持された前記チューブ状フィルムが前記貯留層内の処理液中に浸漬された状態で、筒形状に維持された前記チューブ状フィルムの内部に配置可能であり、該チューブ状フィルムの内面と処理液との接触を均一化する均一化手段と、を備える内面処理装置。
【請求項2】
前記均一化手段は、前記円筒体の軸方向に沿って延びる回転軸と、前記回転軸に取り付けられる羽根体とを備えている請求項1に記載の内面処理装置。
【請求項3】
前記羽根体は、可撓性材料により形成されており、その先端部は、筒形状に維持された前記チューブ状フィルムの内面と摺接可能に構成されている請求項1又は2に記載の内面処理装置。
【請求項4】
前記均一化手段は、筒形状に維持された前記チューブ状フィルムの内面を被覆する筒状の被覆体と、前記円筒体の軸方向に沿って移動可能な可動軸とを備えており、
前記可動軸は、前記被覆体を前記チューブ状フィルムの内部から外部へ引き抜き可能に構成されている請求項1に記載の内面処理装置。
【請求項5】
前記被覆体は、シート状部材を巻回することにより筒状に形成されている請求項4に記載の内面処理装置。
【請求項6】
処理液が貯留される貯留槽にチューブ状フィルムを浸漬して該チューブ状フィルムの内面処理を行う内面処理方法であって、
前記チューブ状フィルムの少なくとも一部を筒形状に維持した状態で円筒体の内周面上に保持する保持ステップと、
前記円筒体に保持された前記チューブ状フィルムを処理液に浸漬する浸漬ステップと、
筒形状に維持された前記チューブ状フィルムの内部における処理液を撹拌する撹拌ステップと、を備える内面処理方法。
【請求項7】
処理液が貯留される貯留槽にチューブ状フィルムを浸漬して該チューブ状フィルムの内面処理を行う内面処理方法であって、
前記チューブ状フィルムの少なくとも一部を筒形状に維持した状態で円筒体の内周面上に保持する保持ステップと、
筒形状に維持された前記チューブ状フィルムの内面に筒状の被覆体を被覆する被覆ステップと、
前記円筒体に保持された前記チューブ状フィルムを処理液に浸漬する浸漬ステップと、
前記チューブ状フィルムの内面に被覆された被覆体を前記チューブ状フィルムの内部から外部へ引き抜く引き抜きステップと、を備える内面処理方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−35140(P2013−35140A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−170532(P2011−170532)
【出願日】平成23年8月3日(2011.8.3)
【出願人】(000001339)グンゼ株式会社 (919)
【Fターム(参考)】