説明

チューブ状構造体が球状に凝集して形成する多孔性微細粒子とその製造方法

【課題】界面活性剤や高分子から形成されるベシクルと違い、表面に孔をもつ多孔性微細粒子であり、且つ、ゼオライト・メソポーラスシリカに代表される無機多孔性材料にはない特性をもつ、多孔性微粒子とその製造方法を提供する。
【解決手段】チューブ状構造体が球状に凝集した多孔性微細粒子であって、該多孔性微粒子は、下記一般式(I)RCO(NH−CHR’−CO)OH(I)(式中、Rは炭素数6〜24の炭化水素基、R’はアミノ酸側鎖、mは1〜10の整数を表す。)で表わされるペプチド脂質及び金属塩を沸点以下に加温された溶媒にそれぞれ溶解させる段階、それぞれの溶液を混合する段階、これを室温で静置する段階、溶液中で自己集合することによりチューブ状構造体が生成する段階、及びそれらのチューブ状構造体が球状に凝集して多孔性微細粒子として析出する段階から製造される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬、化成品分野などにおける包接・分離・徐放材料として、あるいは触媒や蛍光材料など高機能性材料として有用な多孔性微細粒子とその製造方法に関し、特に、これまでに得られていない平均内径が5〜250nmであるチューブ状の空間を無数にもつ、平均直径が0.1〜100μmである多孔性微細粒子、及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ナノテクノロジーを代表する材料として0.5〜500ナノメートル(以下nmと記す)の細孔を有するナノチューブ状材料が注目を集めている。
本発明者らは長鎖炭化水素基に糖残基を結合させた糖脂質を自己集合させることにより形成される中空繊維状有機ナノチューブを合成することに成功している(特許文献1、非特許文献1)。この中空繊維状有機ナノチューブは、中空シリンダー部の内孔サイズが5〜500nmであり、5〜500nmのタンパク質、ウイルス、金属微粒子やその他の無機微粒子等をその中空シリンダー内部に捕捉できる可能性があり、その用途開発が期待されている。
また本発明者らは、長鎖脂肪酸のカルボキシル基とオリゴペプチドのN端を結合させたペプチド脂質の自己集合により形成される中空繊維状有機ナノチューブの合成検討を進めた。その結果、水中でペプチド脂質と遷移金属を共存させることにより、ナノサイズの中空繊維状構造物が形成することを見出している(特許文献2、非特許文献2)。
しかしながら、このようなナノメーターサイズの材料は、直接取り扱うことが出来ないため、これを捕捉剤等として用いる場合には、別の高分子や界面活性剤からなる材料と混合して用いることが想定されている。
【0003】
一方、現在、包接・分離・薬剤徐放材料として主に用いられているのは、界面活性剤や高分子から形成されるミセルやベシクル(特許文献3)、ゼオライト・メソポーラスシリカ等を代表とする多孔性無機材料(特許文献4、5)である。
【特許文献1】特開2004−224717号公報
【特許文献2】特開2004−250797号公報
【特許文献3】特開2006−206455号公報
【特許文献4】特開2006−069824号公報
【特許文献5】特開2006−193462号公報
【非特許文献1】S.Kamiya, H.Minamikawa, J.H.Jung, Y.Bo, M.Masuda, T.Shimizu, Langmuir, 2005, 21, 743
【非特許文献2】M.Kogiso, Z.Yong, T.Shimizu, Adv.Mater., 2007, 19, 242
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、これらの包接・分離・薬剤徐放材料においては、以下のような問題がある。
すなわち、例えば、ベシクルは、微小な水相を脂質膜が包み込んだ、直径が数十nmから数十μmのカプセル状の構造体であって、内部にタンパク質などの10〜1000nm程度の大きな物質を取り込むことが出来るが、内部の物質を取り出すためにはベシクル自体を崩壊させる必要があり、表面に物質の出し入れ可能なナノチューブ開口部をもつ本発明の多孔性微細粒子とは基本的な構造が異なる。また、ゼオライト・メソポーラスシリカは、表面に0.1〜100nm程度の空孔をもち、その大きさは、本発明らが合成した前記のナノチューブの内孔径と一部重なる大きさであるが、無機材料であるため、有機機能物質あるいはタンパク質など生体物質の包接・分離・薬剤徐放材料としての親和性が大きく劣るという問題がある。
このように、有機・生体物質に対して親和性が高い有機物質から形成されており、且つ、表面に微細な孔を無数にもつ多孔性微粒子はこれまでに知られていない。
【0005】
本発明は、以上のような事情に鑑みてなされたものであって、界面活性剤や高分子から形成されるベシクルと違い、表面に孔をもつ多孔性微細粒子であり、且つ、ゼオライト・メソポーラスシリカに代表される無機多孔性材料にはない特性をもつ、多孔性微粒子とその製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するため、有機・生体物質に対して親和性が高い有機物質から形成されており、且つ、チューブ状の空間をもつナノチューブについて鋭意検討した結果、ペプチド脂質と金属塩のそれぞれの溶液をアルコール中でただ混合するだけで、チューブ状構造体が球状に凝集して形成する多孔性微細粒子が生じることを見出し、本発明を完成するに至ったものである。
すなわち、ペプチド脂質と金属塩のそれぞれの溶液をアルコール中でただ混合するだけで、これまでに得られていない平均内径が5〜250nmであるチューブ状の空間を無数にもつ、平均直径が0.1〜100μmである多孔性微細粒子が得られることを見いだしたものである。
【0007】
本発明は、これらの知見に基づいて完成に至ったものであり、以下のとおりのものである。
[1]下記一般式(I)
RCO(NH−CHR’−CO)OH (I)
(式中、Rは炭素数6〜24の炭化水素基、R’はアミノ酸側鎖、mは1〜10の整数を表す。)で表わされるペプチド脂質及び金属塩を沸点以下に加温された溶媒にそれぞれ溶解させる段階、それぞれの溶液を混合する段階、これを室温で静置する段階、溶液中で自己集合することによりチューブ状構造体が生成する段階、及びそれらのチューブ状構造体が球状に凝集して多孔性微細粒子として析出する段階からなることを特徴とする、チューブ状構造体が球状に凝集した多孔性微細粒子の製造方法。
[2]前記一般式(I)におけるmが、2である前記[1]の、チューブ状構造体が球状に凝集した多孔性微細粒子の製造方法。
[3]前記一般式(I)における(NH−CHR’−CO)が、グリシルグリシンである前記[2]の、チューブ状構造体が球状に凝集した多孔性微細粒子の製造方法。
[4]前記金属塩が、銅化合物、カドミウム化合物、セリウム化合物、ユーロピウム化合物、ガドリニウム化合物、及びテルビウム化合物から選ばれる少なくとも1種以上である前記[1]の、チューブ状構造体が球状に凝集した多孔性微細粒子の製造方法。
[5]前記溶媒が、エタノールあるいはエタノールを含む混合溶媒であることを特徴とする、前記[1]〜[4]のいずれかの、チューブ状構造体が球状に凝集した多孔性微細粒子の製造方法。
[6]下記一般式(I)
RCO(NH−CHR’−CO)OH (I)
(式中、Rは炭素数6〜24の炭化水素基、R’はアミノ酸側鎖、mは1〜10の整数を表す。)で表わされるペプチド脂質及び金属塩を沸点以下に加温された溶媒にそれぞれ溶解させる段階、それぞれの溶液を混合する段階、これを室温で静置する段階、溶液中で自己集合することによりチューブ状構造体が生成する段階、及びそれらのチューブ状構造体が球状に凝集して多孔性微細粒子として析出する段階を経て形成された、チューブ状構造体が球状に凝集した多孔性微細粒子。
[7]前記一般式(I)におけるmが、2である前記[6]の、チューブ状構造体が球状に凝集した多孔性微細粒子。
[8]前記一般式(I)における(NH−CHR’−CO)が、グリシルグリシンである前記[7]の、チューブ状構造体が球状に凝集した多孔性微細粒子。
[9]前記金属塩が、銅化合物、カドミウム化合物、セリウム化合物、ユーロピウム化合物、ガドリニウム化合物、及びテルビウム化合物から選ばれる少なくとも1種以上である前記[6]の、チューブ状構造体が球状に凝集した多孔性微細粒子。
[10]チューブ状構造体の平均内径が5〜250nmである前記[6]の、チューブ状構造体が球状に凝集した多孔性微細粒子。
[11]多孔性微粒子の平均直径が0.1〜100μmである前記[6]の、チューブ状構造体が球状に凝集した多孔性微細粒子。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、下記一般式(I)
RCO(NH−CHR’−CO)OH (I)
(式中、Rは炭素数6〜24の炭化水素基、R’はアミノ酸側鎖、mは1〜10の整数を表す。)で表わされるペプチド脂質単体あるいはペプチド脂質の金属錯体からチューブ状構造体が球状に凝集して形成する多孔性微細粒子を容易に製造することが出来る。
また、本発明のチューブ状構造体が球状に凝集して形成する多孔性微細粒子は、例えば、ファインケミカル工業分野、医薬、化粧品分野などにおいて薬剤や有用生体分子の包接・分離用材料、ドラッグデリバリ材料として、金属塩の種類を選ぶことで触媒や蛍光材料などのマイクロ電子部品として電子・情報分野において利用可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明のペプチド脂質は、長鎖炭化水素基を有するペプチド脂質、すなわち、下記の一般式(I)
RCO(NH−CHR’−CO)OH (I)
で表わされるペプチド脂質であり、ペプチド脂質単体あるいはペプチド脂質の金属錯体を原料としてチューブ状構造体が球状に凝集して形成する多孔性微細粒子を製造することができる。
本発明で得られる多孔性微粒子は、平均内径が5〜250nmであるチューブ状の空間を無数にもつ、平均直径が0.1〜100μmである多孔性微細粒子である。
以下、詳しく説明する。
【0010】
この一般式(I)中、R’はアミノ酸側鎖であり、このアミノ酸としては、例えば、グリシン、バリン、ロイシン、イソロイシン、アラニン、アルギニン、グルタミン、リジン、アスパラギン酸、グルタミン酸、プロリン、システイン、スレオニン、メチオニン、ヒスチジン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、アスパラギン、及びセリンが挙げられ、好ましくはグリシンである。このアミノ酸側鎖はD、L型、ラセミ体のいずれであってもよいが、天然由来のものは通常L型である。
また、この一般式(I)中、mは1〜10の整数であり、好ましくは2である。
さらに、一般式(I)中の(NH−CHR’−CO)として、mが2であり、R’がいずれもHであるグリシルグリシンが好ましく用いられる。
【0011】
上記一般式(I)中、Rは炭素数が6〜24の炭化水素基、好ましくは炭素数2以下の側鎖が付いてもよい直鎖炭化水素である。この炭化水素基は飽和であっても不飽和であってもよく。不飽和の場合には3個以下の二重結合を含むことが好ましい。またRの炭素数は6〜24、好ましくは10〜16、より好ましくは11もしくは13である。このような炭化水素基としては、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、エイコシル基、ヘネイコシル基、ドコシル基、トリコシル基、テトラコシル基、ペンタコシル基、及びヘキサコシル基などが挙げられる。
【0012】
金属塩はアルカリ金属(Li、Na、K、Rb、Cs、Fr)以外の全ての金属化合物を用いることが出来るが、望ましくは銅、カドミウム、セリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、テルビウムの酢酸塩である。これらを単品で用いても良いし、複数種を混合して用いても良いが、好ましくは単品である。
【0013】
本発明のペプチド脂質の製法に特に制限はないが、一般式(I)で表されるペプチド脂質は、例えば、一般式R−COOH(式中、Rは一般式(I)のRと同じ意味をもつ)で表わされる長鎖カルボン酸又は一般式R−COCl(式中、Rは一般式(I)のRと同じ意味をもつ)で表わされる長鎖カルボン酸クロライドを、ペプチドのN端側と反応させて、ペプチド結合を形成させることによって、製造することができる。
【0014】
長鎖カルボン酸として、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ウンデカン酸、ドデカン酸、トリデカン酸、テトラデカン酸、ペンタデカン酸、ヘキサデカン酸、ヘプタデカン酸、オクタデカン酸、ノナデカン酸、エイコサン酸、ヘネイコサン酸、ドコサン酸、トリコサン酸、テトラコサン酸、ペンタコサン酸、ヘキサコサン酸などを挙げることができる。この中でドデカン酸、テトラデカン酸、等は得られるペプチド脂質の両親媒性のバランス、天然に存在するために安価に入手可能なことなどから望ましい。
【0015】
次に、このペプチド型脂質を用いてチューブ状構造体が球状に凝集して形成する多孔性微細粒子を製造する方法について述べる。
【0016】
ペプチド脂質と金属塩をそれぞれ別々に溶解させて溶液を調製する。ペプチド脂質と金属塩の溶液を混合した後、数秒から数分以内に徐々に溶液が濁り始め、1〜3時間の時間をかけて沈殿として析出させることで、チューブ状構造体が球状に凝集して形成する多孔性微細粒子として得ることが出来る。
この溶媒としては、沸点が120℃以下であるアルコール類を用いることができる。この溶媒は単独でもよいし、2種以上の混合溶媒であってもよい。
【0017】
更に、このアルコール類に、芳香族炭化水素類、パラフィン類、塩化パラフィン類、塩化オレフィン類、塩化芳香族炭化水素類、エーテル類、ケトン類、エステル類、含窒素化合物及び水の1種以上を混合した混合溶媒を用いてもよい。この混合溶媒はこのアルコール類を好ましくは少なくとも10容積%、より好ましくは少なくとも50容積%含む。
【実施例】
【0018】
次に、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例によって何ら限定されるものではない。
(実施例1)
[N−(グリシルグリシン)トリデカンカルボキサミドの合成]
グリシルグリシンベンジルエステル塩酸塩0.57g(2.2ミリモル)にトリエチルアミン0.31ml(2.2ミリモル)を加えエタノール10mlに溶解した。ここにトリデカンカルボン酸0.46g(2ミリモル)を含むクロロホルム溶液50mlを加えた。この混合溶液を−10℃で冷却しながら1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩0.42g(2.2ミリモル)を含むクロロホルム溶液20mlを加え、徐々に室温に戻しながら一昼夜撹拌した。反応溶液を10重量%クエン酸水溶液50ml、4重量%炭酸水素ナトリウム水溶液50ml、純水50mlで洗浄した後、減圧下で濃縮し白色固体(N−(グリシルグリシンベンジルエステル)トリデカンカルボキサミド)0.57g(収率65%)を得た。得られた化合物0.43g(1ミリモル)をジメチルホルムアミド100mlに溶解し、触媒として10重量%パラジウム/炭素を0.5g加え、接触水素還元を行った。6時間後、セライトろ過した後、減圧下で濃縮することにより、N−(グリシルグリシン)トリデカンカルボキサミド0.21g(収率60%)を得た。
この物理的性状及び元素分析値(燃焼法による)の測定結果を次に示す。
融点:158℃
元素分析(C18H34N2O4
計算値(%)C63.13、H10.01、N8.18
実測値(%)C62.09、H9.65、N8.25
【0019】
(実施例2)
実施例1で得られたN−(グリシルグリシン)トリデカンカルボキサミド0.5gをエタノール50mlに溶解し、酢酸銅0.5gをエタノール50mlに溶解した溶液と混合した。数分後に青色沈殿が析出した。
得られた固形物を電子顕微鏡により観察したその結果、平均外径が2μmの多孔性微細粒子が形成していることがわかった。図1に、得られた走査電子顕微鏡写真を示す。
また、電子顕微鏡観察により、得られた多孔性微粒子は、平均内径が25nmであるチューブ状構造体が球状に凝集して形成されているものであることが判った。
【0020】
(実施例3)
実施例1で得られたN−(グリシルグリシン)トリデカンカルボキサミド0.5gをエタノール50mlに溶解し、酢酸カドミウム0.5gをエタノール50mlに溶解した溶液と混合した。数分後に白色沈殿が析出した。
得られた固形物を電子顕微鏡により観察した結果、平均外径が1.5μmの多孔性微細粒子が形成していることがわかった。図2に、得られた走査電子顕微鏡写真を示す。
また、電子顕微鏡観察により、得られた多孔性微粒子は、平均内径が45nmであるチューブ状構造体が球状に凝集して形成されているものであることが判った。
【0021】
(実施例4)
実施例1で得られるN−(グリシルグリシン)トリデカンカルボキサミド0.5gをエタノール50mlに溶解し、酢酸セリウム0.5gをエタノール50mlに溶解した溶液と混合した。数分後に白色沈殿が析出した。
得られた固形物を電子顕微鏡により観察したその結果、平均外径が4μmの多孔性微細粒子が形成していることがわかった。図3に、得られた走査電子顕微鏡写真を示す。
また、電子顕微鏡観察により、得られた多孔性微粒子は、平均内径が30nmであるチューブ状構造体が球状に凝集して形成されているものであることが判った。
【0022】
(実施例5)
実施例1で得られたN−(グリシルグリシン)トリデカンカルボキサミド0.5gをエタノール50mlに溶解し、酢酸ユーロピウム0.5gをエタノール50mlに溶解した溶液と混合した。数分後に白色沈殿が析出した。
得られた固形物を電子顕微鏡により観察したその結果、平均外径が1.5μmの多孔性微細粒子が形成していることがわかった。図4に、得られた走査電子顕微鏡写真を示す。
また、電子顕微鏡観察により、得られた多孔性微粒子は、平均内径が40nmであるチューブ状構造体が球状に凝集して形成されているものであることが判った。
【0023】
(実施例6)
実施例1で得られたN−(グリシルグリシン)トリデカンカルボキサミド0.5gをエタノール50mlに溶解し、酢酸テルビウム0.5gをエタノール50mlに溶解した溶液と混合した。数分後に白色沈殿が析出した。
得られた固形物を電子顕微鏡により観察したその結果、平均外径が1.5μmの多孔性微細粒子が形成していることがわかった。図5に、得られた走査電子顕微鏡写真を示す。
また、電子顕微鏡観察により、得られた多孔性微粒子は、平均内径が35nmであるチューブ状構造体が球状に凝集して形成されているものであることが判った。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】実施例2で得られた多孔性微粒子の走査電子顕微鏡写真。
【図2】実施例3で得られた多孔性微粒子の走査電子顕微鏡写真。
【図3】実施例4で得られた多孔性微粒子の走査電子顕微鏡写真。
【図4】実施例5で得られた多孔性微粒子の走査電子顕微鏡写真。
【図5】実施例6で得られた多孔性微粒子の走査電子顕微鏡写真。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I)
RCO(NH−CHR’−CO)OH (I)
(式中、Rは炭素数6〜24の炭化水素基、R’はアミノ酸側鎖、mは1〜10の整数を表す。)で表わされるペプチド脂質及び金属塩を沸点以下に加温された溶媒にそれぞれ溶解させる段階、それぞれの溶液を混合する段階、これを室温で静置する段階、溶液中で自己集合することによりチューブ状構造体が生成する段階、及びそれらのチューブ状構造体が球状に凝集して多孔性微細粒子として析出する段階からなることを特徴とする、チューブ状構造体が球状に凝集した多孔性微細粒子の製造方法。
【請求項2】
前記一般式(I)におけるmが、2である請求項1に記載の、チューブ状構造体が球状に凝集した多孔性微細粒子の製造方法。
【請求項3】
前記一般式(I)における(NH−CHR’−CO)が、グリシルグリシンである請求項2に記載の、チューブ状構造体が球状に凝集した多孔性微細粒子の製造方法。
【請求項4】
前記金属塩が、銅化合物、カドミウム化合物、セリウム化合物、ユーロピウム化合物、ガドリニウム化合物、及びテルビウム化合物から選ばれる少なくとも1種以上である請求項1に記載の、チューブ状構造体が球状に凝集した多孔性微細粒子の製造方法。
【請求項5】
前記溶媒が、エタノールあるいはエタノールを含む混合溶媒であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の、チューブ状構造体が球状に凝集した多孔性微細粒子の製造方法。
【請求項6】
下記一般式(I)
RCO(NH−CHR’−CO)OH (I)
(式中、Rは炭素数6〜24の炭化水素基、R’はアミノ酸側鎖、mは1〜10の整数を表す。)で表わされるペプチド脂質及び金属塩を沸点以下に加温された溶媒にそれぞれ溶解させる段階、それぞれの溶液を混合する段階、これを室温で静置する段階、溶液中で自己集合することによりチューブ状構造体が生成する段階、及びそれらのチューブ状構造体が球状に凝集して多孔性微細粒子として析出する段階を経て形成された、チューブ状構造体が球状に凝集した多孔性微細粒子。
【請求項7】
前記一般式(I)におけるmが、2である請求項6に記載の、チューブ状構造体が球状に凝集した多孔性微細粒子。
【請求項8】
前記一般式(I)における(NH−CHR’−CO)が、グリシルグリシンである請求項7に記載の、チューブ状構造体が球状に凝集した多孔性微細粒子。
【請求項9】
前記金属塩が、銅化合物、カドミウム化合物、セリウム化合物、ユーロピウム化合物、ガドリニウム化合物、及びテルビウム化合物から選ばれる少なくとも1種以上である請求項6に記載の、チューブ状構造体が球状に凝集した多孔性微細粒子。
【請求項10】
チューブ状構造体の平均内径が5〜250nmである請求項6に記載の、チューブ状構造体が球状に凝集した多孔性微細粒子。
【請求項11】
多孔性微粒子の平均直径が0.1〜100μmである請求項6に記載の、チューブ状構造体が球状に凝集した多孔性微細粒子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−6713(P2010−6713A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−164790(P2008−164790)
【出願日】平成20年6月24日(2008.6.24)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成20年度独立行政法人科学技術振興機構委託研究「超分子ナノチューブアーキテクトニクスとナノバイオ応用」産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】