説明

チューブ継手脱着工具

【課題】狭い場所でも容易に継手部の脱着作業を行うことを可能とし、配管継手部の点検、修理等の作業を容易且つ正確に行う。
【解決手段】チューブ継手脱着工具は、片手で握ることが出来るグリップ1と、このグリップ1から延びたシャフト2の先端に設けた工具部材3とを有する。この工具部材3の先端側には、チューブ6を挟んで保持すると共に、そのチューブ6の先端に設けた継手8の例えば雄継手10を押しまたは引くことが出来るフォーク状の先端部4を設ける。工具部材3の先端部4はフォーク状となっており、その先端部4にチューブ6を挟んで保持する凹部7が形成されている。工具部材3はその先端部4を含めて側面が概ねS字形をしており、その先端部4と反対側の基端部が前記グリップ1から延びたシャフト2の先端に固定されており、この基端部が指掛け片5としてシャフト2から起立している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば空気供給配管等のチューブを各種空圧機器等に接続するため、空圧機器またはその配管とチューブとを接続する継手の連結状態を解除して取り外するとき或いはその逆にチューブを継手に差し込んで連結状態を固定するのに使用するチューブ継手脱着工具に関する。
【背景技術】
【0002】
トラックやトレーラ等の比較的大型の自動車を代表とした輸送車両には、その車両の動作や制御等のために空気配管系を多く設ける必要がある。これらの空気配管系は、接続チューブを介して過給器等の空気供給源や電磁弁等の空気回路機器に接続される。
【0003】
このような目的で使用される空圧配管用のチューブとしては可撓性を有する強化フレックスチューブが使用される。このフレックスチューブの接続は、空圧機器に取り付けられた雌継手にフレックスチューブの先端に設けた雄継手を嵌め込み、さらに奥まで押し込み、その後雄継手を静かに戻すことによりなされる。これにより、雄継手が雌継手にロックされ、気密に連結した状態が維持される。他方、機器の検査や修理等のためフレックスチューブを空圧機器から外すときは、フレックスチューブの先端に設けた雄継手を雌継手の方へ一旦押し込み、ロックを解除した後、そのままフレックスチューブの先端部を雌継手から離れる方向に引き抜くことで雄継手を雌継手から取り外すという手順がとられる。
【0004】
これらの配管の着脱作業は車両を整備、修理する作業者の手によりなされ、指先に前記の雄継手を摘んでその雌継手への差し込み、抜き取りを行っている。もちろんながら、雄継手を雌継手に脱着するときの雄継手の押し込み動作も全て作業者が指先で行っていた。
【0005】
トラックの動力部分や荷室が搭載される車台の下には前記の空圧機器を始め、動力伝達系、燃料供給系、排気系、その他の機器や部品が多く取り付けられている。そうした機器や部品が配置される中で空圧機器への配管の着脱はごく狭い所で行われている。このため、継手の脱着のため作業者の指を挿入する空間が極めて狭くなっており、継手の脱着作業が極めてしづらい。またこの脱着作業時に雄継手の雌継手への差し込みが甘くなる等の作業ミスも誘発しやすい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平06−55463号公報
【特許文献2】特開平07−116970号公報
【特許文献3】特開平10−94773号公報
【特許文献4】特開2003−181776号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、前記従来における配管の継手部の脱着作業の困難性という課題に鑑み、狭い場所でも容易に継手部の脱着作業を行うことを可能とし、これにより配管継手部の点検、修理等の作業を容易且つ正確に行うことを可能とするチューブ継手脱着工具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明では、前記の目的を達成するため、片手で握ることが出来るグリップから延びたシャフトの先端に設けた工具部材の先端でチューブを挟むと共に、そのチューブの先端に設けた継手の雄継手等の端面を押しまたは引くことが出来るようにしたものである。
【0009】
すなわち、本発明によるチューブ継手脱着工具は、片手で握ることが出来るグリップ1と、このグリップ1から延びたシャフト2の先端に設けた工具部材3とを有し、この工具部材3の先端側には、チューブ6を挟んで保持すると共に、そのチューブ6の先端に設けた継手8の例えば雄継手10を押しまたは引くことが出来るフォーク状の先端部4を設けたものである。
【0010】
工具部材3の先端部4はフォーク状となっており、その先端部4にチューブ6を挟んで保持する凹部7が形成されている。この工具部材3の先端部4の前面及び背面は、前記グリップ1及びから延びたシャフト2に対してθ1=75°〜95゜に設定される。最も望ましくはθ1=85゜である。
またこの工具部材3はその先端部4を含めて側面が概ねS字形をしており、その先端部4と反対側の基端部が前記グリップ1から延びたシャフト2の先端に固定されており、この基端部が指掛け片5としてシャフト2から起立している。
【0011】
このようなチューブ継手脱着工具を使用し、グリップ1から延びたシャフト2の先端に設けた工具部材3でチューブ6を挟むと共に、そのチューブ6の先端に設けた継手8の雄継手10を工具部材3で押しまたは引くことにより、継手8の雄継手10を雌継手9に容易に差し込むことが出来る。また逆に継手8の雌継手9に対する雄継手10のロック状態を容易に解除することが出来る。そして、この工具部材3は片手で握ることが出来るグリップ1から延びたシャフト2の先端に設けられていることにより、工具部材3を奥に入った狭い部分に挿入して継手8の脱着作業をすることが可能となる。
【発明の効果】
【0012】
以上説明した通り、本発明によるチューブ継手脱着工具を使用することにより、例えば車両の下の奥に入った狭い部分にある継手8であってもその脱着作業を容易にすることが出来るようになる。これにより、チューブ6の継手8の脱着作業を能率良く確実に行うことが可能となり、作業性の向上と作業品質の向上を図ることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、本発明によるチューブ継手脱着工具の一実施例を示す平面図である。
【図2】図2は、本発明によるチューブ継手脱着工具の一実施例を示す正面図である。
【図3】図3は、図1のA−A線面図である。
【図4】図4は、本発明によるチューブ継手脱着工具の一使用例の継手分離状態を示す側面図である。
【図5】図5は、本発明によるチューブ継手脱着工具の一使用例の継手接続状態を示す側面図である。
【図6】図6は、本発明によるチューブ継手脱着工具の他の使用例の継手分離状態を示す側面図である。
【図7】図7は、本発明によるチューブ継手脱着工具の他の使用例の継手接続状態を示す側面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明は、前記の目的を達成するため、片手で握ることが出来るグリップからシャフトを延ばし、このシャフトの先端に工具部材を設け、この工具部材の先端でチューブを挟むと共に、そのチューブの先端に設けた雄継手を雌継手に対して押しまたは引くことで雄継手と雌継手との着脱作業が行えるようにした。
以下、本発明を実施するための最良の形態について、実施例をあげて詳細に説明する。
【0015】
図1〜3は、本発明による継手脱着工具の一実施例を示している。人が片手で握ることが出来る樹脂成形体や木製等のグリップ1にシャフト2の基端を埋め込む等してグリップ1からその中心軸の延長線上にシャフト2が延設されている。さらにこのシャフト2の先端に工具部材3が取り付けられて設けられている。 シャフト2と工具部材3は共に剛性の高い鋼材等からなる。
【0016】
図示の例では、シャフト2は断面六角形の鋼棒が使用され、その長さは作業目的に合わせて適宜の長さのものを使用する。具体的には、チューブを脱着する継手がどれ程奥まった位置にあるかによってシャフト2の長さを適宜選択する。工具部材3は幅20mm、厚さ4mm、長さ100mm程度の板材を図3に示すように側面S字形に曲げて作られている。
【0017】
工具部材3の先端部4は平坦であり、その部分には縦に切り込んだ凹部7が設けられ、先端部4がフォーク状となっている。図2に示されたように、凹部7は幅の広い下段の逆U字形の切欠と、これより幅の狭い上段の逆U字形の切欠きとの2段の切欠きの複合形からなる。この凹部7の下段の逆U字形の切欠の幅は取り扱うチューブの外径に適合しており、チューブの外径よりやや幅広に設定されている。図3に示す工具部材3の先端部4の曲り角θ1、つまり先端部とそれより基部側の部分とのなす角θ1は75°〜95゜とし、最も好ましくはθ1=85゜である。
【0018】
工具部材3の基端部は中間部に対してほぼ90゜に曲げられ、その曲の方向は先端側と逆である。従って、工具部材3の側面形状はほぼS字形となる。この工具部材3の基端部と中間部との曲がり部分には前記シャフト2の先端部が通され、このシャフト2の先端部が溶接等の手段で固定されており、この部分から工具部材3の前記基端部が指掛け片5として起立している。このシャフト2と工具部材3の中間部との角度θ3は、θ3=約25゜の角度をなすように斜めに取り付けられている。従ってシャフト2と工具部材3の指掛け片5との角度θ4は100°〜120゜の角度をなし、最も望ましくはθ4=約110゜である。またこれに伴いシャフト2と工具部材3の先端部4とがなす角度θ2も100°〜120゜に設定され、より望ましくはθ2=約110゜である。
【0019】
図4と図5はこのチューブ継手脱着工具の使用例を示しており、図4は継手8が分離された状態を、図5は継手8が接続された状態をそれぞれ示す。これらの図に示す継手8はエルボー継手であり、その雌継手9は自動車の車台等に取り付けられた空圧機器等の継手取り付け部11にネジ等の手段で取り付け、固定されている。
【0020】
図4に示すように、工具部材3の先端部4の凹部7にチューブ6を挟み、このチューブ6の先端に取り付けられた雄継手10の背後に工具部材3の先端部4の背面、つまりグリップ1側の面を当てる。この状態でグリップ1を手で保持しながら雄継手10の先端を雌継手9の差し込み口に近づけ、さらに工具部材3を手前、つまり図4において右方向に引き、図5に示すように雄継手10の先端部を雌継手9の差し込み口からその中に差し込む。さらに工具部材3の先端部4で雄継手10をその背後からレバー1側に引き、雄継手10の先端部を雌継手9の中に完全に差し込む。このとき、工具部材3の前記基端部の指掛け片5にグリップ1を保持した手の人差し指または親指を添えて押し込み動作を補助すると作業がしやすい。その後、工具部材3で雄継手10を引く力を弱めさらにその力を取り去ることで、雄継手10が雌継手9に対して図5において左方向に静かに戻り、雄継手10が雌継手9にロックされる。
【0021】
雄継手10を雌継手9から取り外すときは、この逆の手順で行う。すなわち、
グリップ1を手で保持しながら図5に示すように工具部材3の先端部4を継手8に近づけ、工具部材3の先端部4の凹部7にチューブ6を挟み、このチューブ6の先端に取り付けられた雄継手10の背後に工具部材3の先端部4の背面を当てる。そして工具部材3の先端部4で雄継手10を一旦その背後からレバー1側に引き、続いてその引く力を静かに緩めると雄継手10の雌継手9に対するロックが解除される。そのまま図4に示すように雄継手10の先端部を雌継手9の中から引き抜くことで、雄継手10の先端部を雌継手9から抜くことが出来る。その後、チューブ6の先端部と共に雄継手10を任意の箇所に移動し、継手8の取り外しを完了する。
【0022】
図6と図7はこのチューブ継手脱着工具の使用例を示しており、図6は継手8が分離された状態を、図7は継手8が接続された状態をそれぞれ示す。これらの図でも継手8は自動車の車台等に取り付けられた継手取り付け部11にネジ等の手段で取り付け、固定されたエルボー継手である。
【0023】
図6に示すように、工具部材3の先端部4の凹部7にチューブ6を挟み、このチューブ6の先端に取り付けられた雄継手10の背後に工具部材3の先端部4の前面、つまり先端部4のレバー1側と反対側の面を当てる。この状態でグリップ1を手で保持しながら雄継手10の先端を雌継手9の差し込み口に近づけ、図7に示すように雄継手10の先端部を雌継手9の差し込み口からその中に差し込む。さらに工具部材3の先端部4で雄継手10をその背後から押し、雄継手10の先端部を雌継手9の中に完全に差し込む。その後、工具部材3の先端部4で雄継手10をその背後から押す力を弱め、さらにその力を取り去ることで、雄継手10が雌継手9に対して図7において右方向に静かに戻り、雄継手10が雌継手9にロックされる。このとき、工具部材3の前記基端部の指掛け片5にグリップ1を保持した手の人差し指または親指を添えて押し込み動作を補助すると作業がしやすい。
【0024】
雄継手10を雌継手9から取り外すときは、この逆の手順で行う。すなわち、
図7に示すようにグリップ1を手で保持しながら工具部材3の先端部4を継手8に近づけ、工具部材3の先端部4の凹部7にチューブ6を挟み、このチューブ6の先端に取り付けられた雄継手10の背後に工具部材3の先端部4の前面を当てる。そして工具部材3の先端部4で雄継手10をその背後から押し、続いて雄継手10を雌継手9に対して図7において右方向に静かに引くと、雄継手10の雌継手9に対するロックが解除される。そのまま雄継手10の先端部を雌継手9の中から引き抜くことで、雄継手10の先端部を雌継手9から抜くことが出来る。その後、チューブ6の先端部と共に雄継手10を任意の箇所に移動し、継手8の取り外しを完了する。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明によるチューブ継手脱着工具は、トラックの動力部分や荷室が搭載される車台の下に設けられた空圧機器に多く取り付けられた継手の着脱作業を容易に行うことが出来るので、輸送車両、その他の機械、設備類の継手の脱着工具として広く利用することが可能である。
【符号の説明】
【0026】
1 グリップ
2 シャフト
3 工具部材
4 工具部材の先端部
5 工具部材の指掛け片
6 チューブ
7 工具部材の先端部の凹部
8 継手
9 継手の雌継手
10 継手の雄継手

【特許請求の範囲】
【請求項1】
チューブに取り付けられた一方の雄継手10を機械、設備に取り付けられた他方の雌継手9に着脱する工具であって、片手で握ることが出来るグリップ1と、このグリップ1から延びたシャフト2の先端に設けた工具部材3とを有し、この工具部材3の先端側には、チューブ6を挟んで保持すると共に、そのチューブ6の先端に設けた継手8の雄継手10を押しまたは引くことが出来るフォーク状の先端部4を設けたことを特徴とするチューブ継手脱着工具。
【請求項2】
工具部材3の先端部4はフォーク状となっており、その先端部4にチューブ6を挟んで保持する凹部7が形成されていることを特徴とする請求項1に記載のチューブ継手脱着工具。
【請求項3】
工具部材3はその先端部4を含めて側面が概ねS字形をしており、その先端部4と反対側の基端部が前記グリップ1から延びたシャフト2の先端に固定されており、この基端部が指掛け片5としてシャフト2から起立していることを特徴とする請求項1または2に記載のチューブ継手脱着工具。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2010−196753(P2010−196753A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−40738(P2009−40738)
【出願日】平成21年2月24日(2009.2.24)
【出願人】(394026611)水戸工機株式会社 (5)
【Fターム(参考)】