チルトステージ、チルトステージリンクシステム、薄切片作製システム、及び薄切片作製方法
【課題】パルス数とステージの傾き量とを精度良く対応付けながらステージを傾斜させることが可能で、且つ固有の誤差に影響されずにステージの実際の傾斜角度を外部に出力すること。
【解決手段】ステージ30と、2軸回りに回転可能にステージを支持する軸受部31と、上下動可能な可動ロッド32、33と、可動ロッドを上下動させてステージを2軸回りに回転傾斜させるロッド可動手段35、36と、を備え、ロッド可動手段が、パルスモータ48、62の回転軸に連結されたカム体49、63と、可動ロッドを支持すると共にカム体の回転に伴って周期的に上下動させられる従動体46、60と、パルスモータを制御する制御部51と、を備え、制御部が、ステージが2軸回りに回転傾斜させられた際、その傾斜角度に対応したパルス数を補正変換式で補正しながら再度傾斜角度に変換した後、該傾斜角度を出力指令値として出力するチルトステージ10、20を提供する。
【解決手段】ステージ30と、2軸回りに回転可能にステージを支持する軸受部31と、上下動可能な可動ロッド32、33と、可動ロッドを上下動させてステージを2軸回りに回転傾斜させるロッド可動手段35、36と、を備え、ロッド可動手段が、パルスモータ48、62の回転軸に連結されたカム体49、63と、可動ロッドを支持すると共にカム体の回転に伴って周期的に上下動させられる従動体46、60と、パルスモータを制御する制御部51と、を備え、制御部が、ステージが2軸回りに回転傾斜させられた際、その傾斜角度に対応したパルス数を補正変換式で補正しながら再度傾斜角度に変換した後、該傾斜角度を出力指令値として出力するチルトステージ10、20を提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体試料が包埋された包埋ブロックを任意の角度に傾斜させるチルトステージ、該チルトステージを複数有するチルトステージリンクシステム、該システムを有する薄切片作製システム、及び薄切片作製方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
理化学実験や顕微鏡観察に用いられる薄切片標本を作製する装置として、ミクロトームが従来から使用されている。薄切片標本とは、厚さが数μm(例えば1〜5μm)の薄切片をスライドガラス等の基板上に固定させたものである。ここで、一般的な薄切片標本の作製方法について説明する。
【0003】
はじめに、ホルマリン固定された実験動物等の生体試料をパラフィン置換した後、この生体試料の周囲をさらにパラフィンで固めながら該生体試料を包埋し、ブロック状の包埋ブロックを作製する。
次いで、この包埋ブロックを粗削り用の切断刃を有するミクロトームにセットして、粗削りを行う。この粗削りによって、内部に包埋されていた生体試料が表面に露出した状態となる。この際、作業者が包埋されている生体試料の状態(サイズ、形状や姿勢等)に応じて包埋ブロックを任意に傾けながら、最適な生体試料の観察面が露出するまで粗削りを繰り返し行い、生体試料の面出しを行っている。
【0004】
次いで、上記粗削りによって生体試料の面出しが終了した後、包埋ブロックを本削り用の切断刃を有する別のミクロトームにセットし、面出しした際の包埋ブロックの傾きを維持したまま該包埋ブロックを上下させて薄切量を調整する。そして、調整した薄切量で包埋ブロックを薄切する本削りを行う。この本削りによって、面出しされた生体試料が細胞レベルの厚み程度となった薄切片を得ることができる。
その後、本削り時に生じた皺や丸みを取りながら薄切片をスライドガラス等の基板上に固定することで、薄切片標本の作製が終了する。
【0005】
ところで、粗削り時と本削り時とで別々のミクロトームを用いる場合には、本削り時に、包埋ブロックの被切削面(表面)が粗削り時に面出ししたときの被切削面と面一になるように、包埋ブロックの傾きを調整する必要がある。つまり、粗削り時において、面出ししたときの被切削面と切断刃の刃先が走行する走行面とは一致して平行になっているので、その後に行う本削り時に、被切削面が走行面に対して再度平行となるように包埋ブロックの傾きを調整する必要がある。
【0006】
仮に、本削り時に包埋ブロックの被切削面が走行面に対して傾いている場合には、生体試料の観察面が面出しされている包埋ブロックを均等の厚みで薄切することができず、該包埋ブロックを削りすぎてしまったり、観察面が途中で千切れたようないびつな形状の薄切片になったりする等の不都合が生じてしまう。
また、本削り時に、生体試料の新たな観察面が再度面出しされ、且つ均等の厚みの薄切片が得られるまで何回も薄切動作を繰り返す必要があるので、本削り作業に時間がかかるうえ、無駄に薄切回数が増えてしまう等といった不都合が生じてしまう。
【0007】
そこで、粗削り時と本削り時とで包埋ブロックの被切削面が面一となるように、本削り時に包埋ブロックの傾きを調整することが重要とされている。
例えば、その方法の1つとして、面出し終了後に、包埋ブロックの被切削面の傾きを接触式センサで測定、或いは、レーザ等の検出光を被切削面に当て、その反射光に基づいて傾きを非接触で測定し、本削り時にこれら測定値をフィードバックさせることで、被切削面の傾きを合わせる方法がある。
【0008】
しかしながら、接触式センサを利用した場合には、包埋ブロックの被切削面に直接触れてしまうので傷等が付く恐れがあり好ましいものではない。また、検出光を被切削面に当てる場合には、包埋ブロックが透明のパラフィンであるため被切削面での反射光を捕らえることが難しい場合があり、被切削面の傾き測定の正確性に欠けるうえ、時間がかかり易かった。
また、上記いずれの場合であっても、接触式センサや検出光を照射するための光学系を具備する必要があり、部品点数が増えるだけでなくコスト増に繋がり易かった。
【0009】
そこで、粗削り時に包埋ブロックを傾けた量と同じ量だけ、本削り時に包埋ブロックを傾ける方法が採用されている。
具体的には、粗削り時に包埋ブロックを固定しているステージの2軸回り(ステージ面に平行で且つ互いに直交する2軸回り)の傾き量をそれぞれ記憶しておき、本削り時に、その記憶していた傾き量となるようにステージを制御する方法である。
そして、このような方法に対応可能な装置として、所望する傾きにステージ(載置台)を調整することができるチルトステージが知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2008−170312号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記特許文献1に記載のチルトステージは、ロール用の押し上げロッド及びピッチ用の押し上げロッドを備えており、これら2つの押し上げロッドを適宜押し上げることでステージを互いに直交する2軸(ロール軸、ピッチ軸)回りに傾けることが可能とされている。これら2つの押し上げロッドは、回転力を直線方向の力に変換するウォームギアや歯車等に連結されており、変換された直線方向の力によって上下動可能とされている。
【0012】
しかしながら、このチルトステージでは2つの押し上げロッドを上下動させるために歯車を利用しているので、互いに噛合し合っている歯部と歯部との間にどうしても遊び(バックラッシ)が生じてしまう。そのため、押し上げロッドの上下移動量を正確に制御することが難しかった。
特に、押し上げロッドの上下移動量を制御するために、パルスモータの回転軸を上記ウォームギアに連結し、パルスモータの駆動で押し上げロッドを上下動させる構成が考えられるが、この場合、上記バックラッシによってパルスモータのパルス数(指令値)と実際の上下移動量とが正確に一致しなくなってしまう。そのため、パルス数と実際のステージの傾き量とを正確に対応させることができず、パルス数に基づいてステージの傾き量を正確に把握することが難しかった。
【0013】
特に、バックラッシが生じるので、歯部と歯部とが移り変わる瞬間に押し上げロッドが上下方向に波状に変化してしまい、図12に示すようにステージの傾き量がパルス数に対して直線的に変化し難い。加えて、バックラッシの影響によって、押し上げロッドが上方移動する場合(図中A線)と下方移動する場合(図中B線)とでパルス数に対するステージの傾き率が異なる場合もあり、誤差範囲が大きかった。
これらのことからも、パルス数に基づいてステージの傾き量を正確に把握することは難しい。
【0014】
従って、粗削り時の面出し終了後に、作業者が設定したステージの傾きをパルス数で記憶しておき、本削り時にこのパルス数に基づいてステージを傾けたとしても、面出し終了後のステージの傾きに一致させることが難しかった。
【0015】
そもそも、バックラッシの影響によってパルス数とステージの傾き量とを正確に対応させることが難しいので、パルス数に基づいてステージの傾き量を正確に把握すること自体が難しい。そのため、粗削り時にステージの傾き量をパルス数として記憶する段階で誤差が含まれてしまい、パルス数自体の信頼性が乏しくなってしまう。そのうえ、本削り時に、この信頼性に乏しいパルス数に基づいてステージを傾けなくてはならないうえ、この際にもさらに誤差が含まれてしまうので、より一層ステージの傾き量の信頼性が損なわれてしまう。
その結果、本削り時におけるステージの傾きを、面出し終了後のステージの傾きに一致させるといったことが難しかった。
【0016】
更に、チルトステージは各構成部品の加工精度や組立精度等が固体毎に異なるので、複数のチルトステージにおいて、仮にそれぞれのステージを同じ傾きに設定したとしてもパルス数は同一になり難く、また、同じパルス数に基づいてそれぞれのステージを傾けたとしても傾き量は同一になり難い。
このように、チルトステージが有する固有の誤差の影響も上記問題を引き起こす要因の1つであった。
【0017】
なお、ウォームギア等ではなくボールねじ機構を利用して、モータの回転軸自体を押し上げロッドとして機能させる構成も考えられるが、バックラッシの大幅な改善には繋がらないうえ、押し上げロッドの軸線上にボールねじ機構やモータを配置する必要があるので、構成品が直線的に並んでしまい大型化し易くなるという新たな問題が生じてしまう。
【0018】
本発明は、このような事情に考慮してなされたもので、その目的は、バックラッシの影響をなくすことができるうえ、パルス数とステージの傾き量とを精度良く対応付けながら該ステージを傾斜させることが可能で、且つ自身が有する固有の誤差に影響されずに、外部から入力された傾斜角度に一致するようにステージを傾斜、或いはステージの実際の傾斜角度を外部に出力することができるチルトステージ、これを複数リンクさせたチルトステージリンクシステム、このシステムを有する薄切片作製システム、該システムを利用した薄切片作製方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明は、前記課題を解決するために以下の手段を提供する。
(1)本発明に係るチルトステージは、生体試料が包埋された包埋ブロックが載置されるステージと、該ステージの載置面に平行で且つ互いに直交する2軸回りにそれぞれ回転可能にステージを支持する軸受部と、前記ステージの下方に上下動可能に配置された2つの可動ロッドと、前記ステージを付勢して、該ステージを前記可動ロッドの先端部に押し付ける付勢部材と、前記可動ロッドを上下動させて前記ステージを前記2軸回りにそれぞれ回転傾斜させるロッド可動手段と、を備え、前記ロッド可動手段が、パルスモータの回転軸に連結されたカム体と、前記可動ロッドの基端部を支持すると共に、前記カム体の周面に接触する接触子を介してカム体に連結され、該カム体の回転に伴って周期的に上下動させられる従動体と、前記パルスモータの駆動を制御する制御部と、を備え、前記制御部が、前記ステージが前記2軸回りに回転傾斜させられた際、その傾斜角度に対応した前記パルスモータのパルス数を、予め設定された補正変換式で補正しながら再度傾斜角度に変換した後、再変換した傾斜角度を出力指令値として出力し、前記補正変換式が、前記カム体の回転に伴って周期的に上下動する前記従動体の実際の変位を、理論上の変位に近似させる近似式であることを特徴とする。
【0020】
本発明に係るチルトステージによれば、パルスモータを駆動させると、その回転軸と共にカム体が回転する。すると、接触子を介してカム体に連結されている従動体が、カム体の回転に伴って周期的に上下動させられる。これにより、この従動体に基端部が支持されている可動ロッドを上下動させることができる。つまり、パルスモータの回転力をカム体及び従動体を介して直線方向の力に変換でき、可動ロッドを上下動させることができる。よって、パルスモータの駆動を制御、即ちパルス数を制御することで、可動ロッドの上下移動量を制御することができる。
そして、可動ロッドの先端部は付勢部材によってステージに押し付けられているので、可動ロッドが上下動するとそれに追従してステージが2軸回りに回転傾斜する。これにより、包埋ブロックを所望する傾きに傾斜させることができる。上記したようにパルス数を制御することで、可動ロッドの上下移動量を制御できるので、結果的にステージの2軸回りの傾き量を制御することができる。
【0021】
特に、従来の歯車を利用したものとは異なり、カム体及び接触子を有する従動体を利用して、パルスモータの回転力を直線方向の力に変換して可動ロッドを上下動させるので、歯部の噛合わせに起因するバックラッシの影響をなくしながら、滑らか且つ連続的に可動ロッドを上下動変化させることができる。よって、パルス数とステージの傾き量とを精度良く対応付けながら、ステージを傾斜させることができる。
【0022】
しかも、制御部はステージが2軸回りに回転傾斜させられた際、その傾斜角度に対応したパルス数を補正変換式で補正しながら再度傾斜角度に変換し、その再変換した傾斜角度を出力指令値として出力する。これにより、自身が有する固有の誤差(各構成要素の加工精度や取付精度等に起因する誤差)に影響されずに、実際のステージの傾斜角度を出力指令値として外部に出力できる。よって、この傾斜角度に基づいて例えば別のチルトステージのステージを傾斜させることで、2つのチルトステージのステージを同じ傾きに精度良く一致させ易い。
【0023】
(2)上記本発明に係るチルトステージにおいて、前記制御部が、入力指令値として入力されてきた傾斜角度を、前記補正変換式で補正しながら前記パルスモータのパルス数に変換した後、変換したパルス数にしたがって該パルスモータを駆動させても良い。
【0024】
この場合には、制御部が外部から入力指令値として入力されてきた傾斜角度を補正変換式で補正しながらパルス数に変換するので、自身が有する固有の誤差の影響を排除したパルス数を得ることができる。
そして、このパルス数に基づいて、バックラッシの影響をうけることなくパルスモータを駆動させてステージを傾斜させるので、ステージの傾斜角度を入力指令値として入力されてきた傾斜角度に精度良く一致させることができる。
【0025】
(3)本発明に係るチルトステージは、生体試料が包埋された包埋ブロックが載置されるステージと、該ステージの載置面に平行で且つ互いに直交する2軸回りにそれぞれ回転可能にステージを支持する軸受部と、前記ステージの下方に上下動可能に配置された2つの可動ロッドと、前記ステージを付勢して、該ステージを前記可動ロッドの先端部に押し付ける付勢部材と、前記可動ロッドを上下動させて前記ステージを前記2軸回りにそれぞれ回転傾斜させるロッド可動手段と、を備え、前記ロッド可動手段が、パルスモータの回転軸に連結されたカム体と、前記可動ロッドの基端部を支持すると共に、前記カム体の周面に接触する接触子を介してカム体に連結され、該カム体の回転に伴って周期的に上下動させられる従動体と、前記パルスモータの駆動を制御する制御部と、を備え、前記制御部が、入力指令値として入力されてきた傾斜角度を、予め設定された補正変換式で補正しながら前記パルスモータのパルス数に変換した後、変換したパルス数にしたがってパルスモータを駆動させ、前記補正変換式が、前記カム体の回転に伴って周期的に上下動する前記従動体の実際の変位を、理論上の変位に近似させる近似式であることを特徴とする。
【0026】
本発明に係るチルトステージによれば、パルスモータを駆動させると、その回転軸と共にカム体が回転する。すると、接触子を介してカム体に連結されている従動体が、カム体の回転に伴って周期的に上下動させられる。これにより、この従動体に基端部が支持されている可動ロッドを上下動させることができる。つまり、パルスモータの回転力をカム体及び従動体を介して直線方向の力に変換でき、可動ロッドを上下動させることができる。よって、パルスモータの駆動を制御、即ちパルス数を制御することで、可動ロッドの上下移動量を制御することができる。
そして、可動ロッドの先端部は付勢部材によってステージに押し付けられているので、可動ロッドが上下動するとそれに追従してステージが2軸回りに回転傾斜する。これにより、包埋ブロックを所望する傾きに傾斜させることができる。上記したようにパルス数を制御することで、可動ロッドの上下移動量を制御できるので、結果的にステージの傾き量を制御することができる。
【0027】
特に、従来の歯車を利用したものとは異なり、カム体及び接触子を有する従動体を利用して、パルスモータの回転力を直線方向の力に変換して可動ロッドを上下動させるので、歯部の噛合わせに起因するバックラッシの影響をなくしながら、滑らか且つ連続的に可動ロッドを上下動変化させることができる。よって、パルス数とステージの傾き量とを精度良く対応付けることが可能である。
【0028】
しかも、制御部は外部から入力指令値として入力されてきた傾斜角度を補正変換式で補正しながらパルス数に変換するので、自身が有する固有の誤差(各構成要素の加工精度や取付精度等に起因する誤差)の影響を排除したパルス数を得ることができる。そして、このパルス数に基づいてバックラッシの影響を受けることなくパルスモータを駆動させてステージを傾斜させるので、ステージの傾斜角度を入力指令値として入力されてきた傾斜角度に精度良く一致させることができる。よって、ステージの傾斜角度を、例えば別のチルトステージのステージの傾斜角度に精度良く一致させることが可能である。
【0029】
(4)上記本発明に係るチルトステージにおいて、前記制御部が、前記ステージが前記2軸回りに回転傾斜させられた際、その傾斜角度に対応した前記パルスモータのパルス数を、前記補正変換式で補正しながら再度傾斜角度に変換した後、再変換した傾斜角度を出力指令値として出力しても良い。
【0030】
この場合には、制御部はステージが2軸回りに回転傾斜させられた際、その傾斜角度に対応したパルス数を予め定められた補正変換式で補正しながら再度傾斜角度に変換し、その再変換した傾斜角度を出力指令値として出力する。これにより、自身が有する固有の誤差に影響されずに実際のステージの傾斜角度を出力指令値として外部に出力できる。
【0031】
(5)本発明に係るチルトステージリンクシステムは、上記本発明に係るチルトステージを複数備え、いずれかの前記チルトステージから出力されてきた前記出力指令値を記憶部に記憶すると共に、記憶した該出力指令値を前記入力指令値として他のチルトステージに出力する総合制御部を備えていることを特徴とする。
【0032】
本発明に係るチルトステージリンクシステムによれば、いずれかのチルトステージのステージを2軸回りに回転傾斜させると、該チルトステージの制御部がバックラッシ及び自身が有する固有の誤差の影響を抑制した状態でステージの傾斜角度を総合制御部に出力指令値として出力する。総合制御部はこの出力指令値を記憶した後、入力指令値として他のチルトステージに出力する。すると、他のチルトステージの制御部は、自身が有する固有の誤差の影響を排除した状態でこの傾斜角度をパルス数に変換し、このパルス数に基づいてバックラッシの影響を受けることなくステージを傾斜させる。
従って、複数のチルトステージ間において、それぞれのステージの傾斜角度を精度良く一致させることができる。
【0033】
(6)上記本発明に係るチルトステージリンクシステムにおいて、前記制御部が、前記包埋ブロックの管理番号を前記出力指令値に関連付けた状態で出力し、前記総合制御部が、前記管理番号に関連付けられた前記出力指令値を前記記憶部に記憶すると共に、前記チルトステージから前記包埋ブロックの管理番号の問い合わせがあったときに、該管理番号に関連付けて記憶していた出力指令値を問い合わせ先のチルトステージに前記入力指令値として出力しても良い。
【0034】
この場合には、包埋ブロックの管理番号をキーとして複数のチルトステージと総合制御部との間で出力指令値及び入力指令値のやり取りを行うので、複数のチルトステージ間において、それぞれのステージの傾斜角度を包埋ブロック毎に精度良く一致させることができる。
【0035】
(7)本発明に係る薄切片作製システムは、上記本発明のチルトステージリンクシステムと、複数の前記チルトステージのうちのいずれかのチルトステージを有し、前記生体試料の所望の観察面が表面に面出しされるまで前記包埋ブロックを薄切する粗削り装置と、複数の前記チルトステージのうちの他のチルトステージを有し、面出しされた前記包埋ブロックの表面を薄切して薄切片を作製する本削り装置と、を備え、前記粗削り装置の前記制御部が、前記出力指令値を前記総合制御部に出力し、前記本削り装置の前記制御部が、前記総合制御部から前記入力指令値を受け取ることを特徴とする。
【0036】
本発明に係る薄切片作製システムによれば、上述したチルトステージリンクシステムを利用しているので、本削り装置が具備するチルトステージのステージを、粗削り装置が具備するチルトステージのステージの傾斜角度に一致させることができる。
従って、粗削り時における包埋ブロックの傾きを再現でき、粗削り装置にて所望の観察面が面出しされた包埋ブロックを、本削り装置にて均等の厚みで確実に薄切することができる。よって、薄切回数や薄切時間を無駄にかけることなく高品質な薄切片を効率良く作製することができる。
【0037】
(8)本発明に係る薄切片作製方法は、上記本発明の薄切片作製システムにより前記薄切片を作製する薄切片作製方法であって、前記粗削り装置が具備する前記チルトステージの前記ステージ上に前記包埋ブロックをセットした後、該包埋ブロックを前記2軸回りに回転傾斜させながら薄切を行って前記観察面を面出しする粗削り工程と、前記粗削り装置の前記制御部が、前記面出しされた際の前記ステージの傾斜角度に対応した前記パルスモータのパルス数を、前記補正変換式で補正しながら再度傾斜角度に変換した後、再変換した傾斜角度を出力指令値として前記総合制御部に出力する出力工程と、前記本削り装置が具備する前記チルトステージの前記ステージ上に面出しされた前記包埋ブロックがセットされた後、前記総合制御部が前記出力指令値として受け取った前記傾斜角度を入力指令値として前記本削り装置の前記制御部に出力する指示工程と、前記本削り装置の前記制御部が、前記入力指令値として受け取った前記傾斜角度を、前記補正変換式で補正しながら前記パルスモータのパルス数に変換した後、変換したパルス数にしたがってパルスモータを駆動させて、前記ステージを前記2軸回りに回転傾斜させるステージ傾斜工程と、前記本削り装置にて、前記ステージの傾斜角度を維持したまま面出しされた前記包埋ブロックを薄切して、前記薄切片を作製する薄切工程と、を備えていることを特徴とする。
【0038】
本発明に係る薄切片作製方法によれば、上述した薄切片作製システムと同様の作用効果を奏効することができる。即ち、粗削り装置にて所望の観察面が面出しされた包埋ブロックを、本削り装置にて均等の厚みで確実に薄切することができ、薄切回数や薄切時間を無駄にかけることなく高品質な薄切片を効率良く作製することができる。
【0039】
(9)上記本発明に係る薄切片作製方法において、前記出力工程の際、前記包埋ブロックの管理番号を前記出力指令値に関連付けた状態で出力し、前記指示工程の際、前記本削り装置の前記制御部が、面出しされた前記包埋ブロックがセットされた後、該包埋ブロックの管理番号を前記総合制御部に問い合わせる確認工程と、前記総合制御部が、問い合わせのあった前記管理番号に関連付けられた前記出力指令値を、問い合わせ先の前記制御部に前記入力指令値として出力する応答工程と、を行っても良い。
【0040】
この場合には、包埋ブロックが複数あったとしても、本削り装置にて各包埋ブロックを均等の厚みで確実に薄切でき、薄切回数や薄切時間を無駄にかけることなく高品質な薄切片を効率良く作製することができる。
【発明の効果】
【0041】
本発明に係るチルトステージによれば、バックラッシの影響をなくしながら可動ロッドを滑らか且つ連続的に上下動変化させることができるので、パルス数とステージの傾き量とを精度良く対応付けながらステージを傾斜させることが可能である。また、自身が有する固有の誤差に影響されずに、外部から入力された傾斜角度にステージを一致、或いはステージの実際の傾斜角度を外部に出力することができるので、複数のチルトステージ間においてそれぞれのステージの傾斜角度を精度良く一致させ易く、本削り時に包埋ブロックの傾斜角度を、粗削り時に面出ししたときの傾斜角度に一致させることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明に係る薄切片作製システムによって薄切される包埋ブロックを示す斜視図である。
【図2】本発明に係る薄切片作製システムの構成図である。
【図3】図2に示す薄切片作製システムを構成するチルトステージの斜視図である。
【図4】図3に示すA−A線に沿った断面図である。
【図5】図3に示すB−B線に沿った断面図である。
【図6】図3に示すステージをピッチ軸回りに傾斜させる可動ロッドの先端部付近の拡大図である。
【図7】パルスモータの回転軸に連結されているカム体と接触子を有する従動体との関係を示す斜視図である。
【図8】図7に示す状態からカム体を回転させ、従動体を上方に移動させた状態を示す図である。
【図9】図3に示すステージをロール軸回りに傾斜させる可動ロッドの先端部付近の拡大図である。
【図10】カム体の回転に伴って周期的に上下動する従動体の理論上の変位変化を示す図である。
【図11】カム体を回転させたときにおける、従動体の実際の変位と理論上の変位との差分である誤差変位の変化を示す図である。
【図12】従来のチルトステージにおいて、ステージの傾き量とパルスとの関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
(薄切片作製システム)
以下、本発明に係る薄切片作製システムの実施形態を、図1から図11を参照して説明する。
薄切片作製システム1は、図1に示すように包埋ブロックBを所定の厚みで薄切してシート状の薄切片Mを作製するシステムであり、その概略構成としては図2に示すように、粗削り装置2と、本削り装置3と、総合制御部5を有するチルトステージリンクシステム4と、を備えている。
【0044】
はじめに、上記包埋ブロックBについて簡単に説明する。
図1に示すように、包埋ブロックBは、ホルマリン固定された生体試料S内の水分をパラフィン置換した後、さらに周囲をパラフィン等の包埋剤Hによってブロック状に固めたものである。これにより、生体試料Sが包埋剤H内に包埋されている。
なお、生体試料Sとしては、例えば実験動物等から取り出した臓器等の組織であり、医療分野、製薬分野、食品分野、生物分野等で適宜選択される。
【0045】
また、本実施形態では、包埋ブロックBが箱状のカセットK上に固定されているものとして説明する。そして、このカセットKには、包埋ブロックBの管理番号(包埋ブロックBの作製日や、生体試料Sの各種データ等が含まれる)が記録されており、この管理番号を読み取ることで包埋ブロックBの品質管理を行うことが可能とされている。
【0046】
図2に示すように、粗削り装置2は、作業者が生体試料Sの状態に応じて包埋ブロックBの傾きを任意に調整しながら、生体試料Sの所望の観察面が表面に面出しされるまで包埋ブロックBを薄切する装置である。
この粗削り装置2は、包埋ブロックBを後述する2軸回りに傾斜させるチルトステージ10と、ホルダ11に保持された状態でチルトステージ10上に配設された粗削り用の切断刃12と、ホルダ11を水平方向に往復移動させ、切断刃12によって包埋ブロックBを薄切する移動機構13と、チルトステージ10を上下動させて、包埋ブロックBの薄切量を調整するZステージ14と、を備えている。
【0047】
切断刃12は、刃先が包埋ブロックBに対して所定のすくい角θ及び引き角が付くようにホルダ11に保持されている。移動機構13は、切断刃12の刃先が水平に走行するようにホルダ11を往復移動させている。
なお、本実施形態では、包埋ブロックBに対して切断刃12を往復移動させる構成であるが、この場合に限定されるものではなく、例えば切断刃12に対して包埋ブロックBを往復移動させる構成としても構わないし、切断刃12と包埋ブロックBとを互いに接近、離間させるように構成しても構わない。いずれにしても、切断刃12と包埋ブロックBとが相対的に移動するように構成されていれば構わない。
【0048】
Zステージ14は、例えば内部に図示しないピエゾ素子等が組み込まれており、電圧が印加されることで一定量上昇するように高さ制御されている。この際、Zステージ14は、移動機構13がホルダ11を一往復する度に上昇するように制御されている。
上記チルトステージ10は、後に説明する。
なお、粗削り装置2の上記各構成品は総合制御部5によって作動が総合的に制御されている。
【0049】
本削り装置3は、上記粗削り装置2によって面出しされた包埋ブロックBを薄切して、図1に示す薄切片Mを作製する装置であって、面出しされた包埋ブロックBを後述する2軸回りに傾斜させるチルトステージ20と、ホルダ21に保持された状態でチルトステージ20上に配設された本削り用の切断刃22と、ホルダ21を水平方向に往復移動させ、切断刃22によって包埋ブロックBを薄切する移動機構23と、チルトステージ20を上下動させて、包埋ブロックBの薄切量を調整するZステージ24と、を備えている。
【0050】
なお、本削り装置3が具備するホルダ21、切断刃22、移動機構23及びZステージ24は、共に上述した粗削り装置2のものと同様の構成であるので、説明は省略する。
【0051】
次に、粗削り装置2が具備するチルトステージ10、及び本削り装置3が具備するチルトステージ20について、説明する。これら両チルトステージ10、20は、同一の構成とされているため粗削り装置2のチルトステージ10を代表として、以下に詳細に説明する。
【0052】
図3から図5に示すように、このチルトステージ10は、カセットKを介して包埋ブロックBが載置固定されるステージ30と、ステージ30の載置面40aに平行で且つ互いに直交する2軸(ピッチ軸L1、ロール軸L2)回りにそれぞれ回転可能にステージ30を支持する球面軸受部(軸受部)31と、ステージ30の下方に上下動可能に配置された2つの可動ロッド32、33と、ステージ30を下向きに付勢して該ステージ30を可動ロッド32、33の先端部に押し付けるコイルバネ(付勢部材)34と、可動ロッド32、33を上下動させてステージ30を2軸回りにそれぞれ回転傾斜させるロッド可動手段35、36と、を備えている。
【0053】
ステージ30は、上面が平滑な載置面40aとされた板状のステージ本体40と、このステージ本体40に固定され、可動ロッド32、33の先端部が当接される2つの当接ブロック41、42と、を備えている。
一方の当接ブロック41は、ピッチ軸L1に沿って平行に延在するようにステージ本体40の外縁に沿って固定されている。これに対して他方の当接ブロック42は、ロール軸L2に沿って平行に延在するようにステージ本体40の外縁に沿って固定されている。そして、これら当接ブロック41、42の下方に可動ロッド32、33がそれぞれ配設されている。
なお、一方の当接ブロック41の下面には、ロール軸L2に沿ってV字状の溝部41aが形成されている。
【0054】
ステージ本体40の下面には、基台45に固定された外輪部31aに組み合わされ、外輪部31aと共に上記球面軸受部31を構成する内輪部31bが固定されている。この球面軸受部31によって、ステージ30は少なくとも上記2軸回りに回転可能に支持されている。
【0055】
2つの可動ロッド32、33は共に上下方向に延在しており、そのうち一方の可動ロッド32はステージ30をピッチ軸L1回りに回転傾斜させるためのロッドとされ、他方の可動ロッド33はステージ30をロール軸L2回りに回転傾斜させるためのロッドとされている。
【0056】
ここで、一方の可動ロッド32を利用してステージ30をピッチ軸L1回りに回転傾斜させる機構について説明する。
はじめに、この可動ロッド32は、上下動可能とされた従動体46によって基端部が支持された状態で当接ブロック41の下方に配設されている。可動ロッド32の先端部は球状に形成されており、図6に示すように当接ブロック41の下面に形成された溝部41aに嵌った状態で該溝部41aの内壁に対して点接触している。
【0057】
上記従動体46は、図3から図5に示すように、基台45に固定されたガイド体47によって上下動可能にガイドされている。この従動体46には、パルスモータ48の回転軸48aに連結されたカム体49の周面に接触する接触子50が設けられている。これにより、従動体46は接触子50を介してカム体49に連結されている。
【0058】
パルスモータ48は、回転軸48aがピッチ軸L1と平行になるように基台45に固定されている。また、このパルスモータ48は、制御部51に接続されており、該制御部51によってパルス数が監視されると共にパルス数に基づいて駆動が制御されている。つまり、パルスモータ48の回転軸48aは、制御部51から送られてきたパルス数に応じた回転量で回転するようになっている。
【0059】
カム体49は、一定の厚みを有する円形状の回転板とされている。そして、図5に示すように、パルスモータ48の回転軸48aはカム体49の円形中心位置Gから偏心した位置に連結されている。そのため、図7及び図8に示すように、カム体49はパルスモータ48の回転軸48aの回転に伴って周期的に上下動しながら共回りする。
よって、接触子50を介してカム体49に連結されている従動体46は、カム体49の回転に伴って周期的に上下動させられる。この際、従動体46はガイド体47によって上下動可能にガイドされているので、がたつくことなく滑らかに上下動するようになっている。
【0060】
なお、本実施形態の接触子50は、従動体46に回転自在に固定されたローラであり、カム体49の回転に伴って該カム体49の周面を走行しながら、カム体49の上下方向の変位を従動体46に伝える役割を果している。
【0061】
ところで、図3から図5に示すように、従動体46はコイルバネ52によって基台45側に付勢されている。このコイルバネ52は、一端部が従動体46に接続されると共に他端部が基台45に接続されており、従動体46を基台45側に向けて引っ張っている。これにより、従動体46の接触子50は、カム体49の周面に常時押し付けられており、カム体49の動きに直ちに追従するようになっている。
【0062】
更に、従動体46とステージ本体40との間にも上述したコイルバネ34が設けられている。このコイルバネ34は、一端部が当接ブロック41近くのステージ本体40に接続されると共に他端部が従動体46に接続されており、ステージ本体40の当接ブロック41側を下方に引っ張っている。これにより、当接ブロック41の溝部41aは可動ロッド32の先端部に押し付けられ、両者は常時接触している。そのため、従動体46を介して可動ロッド32を上下動させると、その動きに追従してステージ30がピッチ軸L1回りに回転傾斜するようになっている。
【0063】
なお、上述したカム体49、従動体46及び制御部51は、一方の可動ロッド32を上下動させてステージ30をピッチ軸L1回りに回転傾斜させるピッチ用のロッド可動手段35として機能する。
【0064】
次いで、他方の可動ロッド33を利用してステージ30をロール軸L2回りに回転傾斜させる機構について説明する。
図3に示すように、この可動ロッド33は、上下動可能とされた従動体60によって基端部が支持された状態で当接ブロック42の下方に配設されている。可動ロッド33の先端部は球状に形成されており、図9に示すように、当接ブロック42の下面に対して点接触している。
【0065】
図3に示すように、上記従動体60は、基台45に固定されたガイド体61によって上下動可能にガイドされている。この従動体60には、パルスモータ62の回転軸62aに連結されたカム体63の周面に接触する接触子64が設けられている。これにより、従動体60は接触子64を介してカム体63に連結されている。
パルスモータ62は、回転軸62aがピッチ軸L1と平行で且つ上述したパルスモータ48に対して並列に並ぶように基台45に固定されている。そして、このパルスモータ62に関しても同様に制御部51によって駆動が制御されている。
【0066】
なお、カム体63、接触子64及び従動体60の構成は、先に述べたピッチ側の機構と同様であるので、詳細な説明を省略する。また、従動体60と基台45との間にも同様にコイルバネ52が設けられており、このコイルバネ52によって従動体60の接触子64がカム体63の周面に常時押し付けられている。
更に、従動体60とステージ本体40との間にも同様にコイルバネ(不図示)が設けられており、ステージ本体40の他方の当接ブロック42側を下方に付勢している。これにより、他方の当接ブロック42は他方の可動ロッド33の先端部に押し付けられ、両者は常時接触している。
【0067】
上述したカム体63、従動体60及び制御部51は、他方の可動ロッド33を上下動させてステージ30をロール軸L2回りに回転傾斜させるロール用のロッド可動手段36として機能する。
【0068】
ところで、上述した制御部51は、ステージ30が2軸回りに回転傾斜させられた際、その傾斜角度に対応したパルスモータ48、62のパルス数を、予め設定されている補正変換式で補正しながら再度傾斜角度に変換した後、再変換した傾斜角度を出力指令値として総合制御部5に出力するように設定されている。
更に、この制御部51は、総合制御部5から入力指令値として入力されてきた傾斜角度を、補正変換式で補正しながらパルスモータ48、62のパルス数に変換した後、変換したパルス数にしたがってパルスモータ48、62を駆動するように設定されている。
【0069】
ここで、上記補正変換式について説明する。
この補正変換式は、カム体49、63の回転に伴って周期的に上下動する従動体46、60の実際の変位を、理論上の変位に近似させるための近似式である。以下、詳細に説明する。
【0070】
従動体46、60は、カム体49、63の回転に伴って周期的に上下動するので、上下動する従動体46、60の変位は図10に示すように理論的にはパルス数の変化に対して滑らかに曲線状に連続変化しながら周期的に変化する。
ところが、実際には各構成品の加工精度や取付精度等に起因する誤差(以下、固有の誤差と称する)の影響によって、従動体46、60は理論通りの軌跡に沿って変位することはない。そのため、実際の従動体46、60の周期的な変位を例えばレーザ測定器で測定し、実際の変位と理論上の変位との誤差を算出すると、図11に示すC線のようになる。
なお、この図11は、カム体49、63を回転させたときにおける、従動体46、60の実際の変位と理論上の変位との差分である誤差変位の変化を示す図である。
【0071】
そこで、この誤差変位を多次関数(例えば6次関数)で近似することで、図11に示すD線のように最適化でき、理論上の変位に近似させることができる。そして、この近似式が上記補正変換式であり、チルトステージ10が有する固有のパラメータである。そして、この補正変換式は予め算出された後、制御部51内に設定される。
【0072】
そして、粗削り装置2及び本削り装置3のチルトステージ10、20の制御部51には、それぞれに対応した補正変換式が設定されている。そして、粗削り装置2及び本削り装置3のチルトステージ10、20は、これら補正変換式を利用することで、固有の誤差の影響を排除した実際のステージ30の傾斜角度を外部出力したり、固有の誤差の影響を受けることなく外部から入力された傾斜角度にステージ30を傾斜させたりすることが可能とされている。
【0073】
なお、本実施形態では、図2に示すように、粗削り装置2が具備するチルトステージ10の制御部51が主として総合制御部5に出力指令値を出力し、本削り装置3が具備するチルトステージ20の制御部51が主として総合制御部5から入力指令値を受け取っている。
【0074】
次いで、チルトステージリンクシステム4について説明する。
このチルトステージリンクシステム4は、図2に示すように、粗削り装置2が具備するチルトステージ10と、本削り装置3が具備するチルトステージ20と、上記総合制御部5と、で構成されている。
【0075】
総合制御部5は、粗削り装置2及び本削り装置3を操作する操作部70と、粗削り装置2の制御部51及び本削り装置3の制御部51に接続され、操作部70で入力された各種信号を粗削り装置2及び本削り装置3に送信する制御本体71と、粗削り装置2及び本削り装置3の設定や動作を確認するためのモニタ72と、を備えている。
制御本体71には、本削り装置3の制御部51から出力されてきた出力指令値を記憶する記憶部71aが設けられている。制御本体71は、この記憶部71aに出力指令値を記憶した後、記憶した出力指令値を入力指令値として本削り装置3の制御部51に出力するように設定されている。
【0076】
(薄切片作製方法)
次に、上述した薄切片作製システム1を利用して、図1に示す包埋ブロックBから薄切片Mを作製する方法について説明する。
【0077】
はじめに、薄切片Mの作製方法を説明する前に、粗削り装置2及び本削り装置3が具備するチルトステージ10、20の作用について説明する。ここでは、粗削り装置2のチルトステージ10を例に挙げて説明する。
【0078】
まず、図3に示すように、ステージ30をピッチ軸L1回りに回転傾斜させる場合には、制御部51がパルスモータ48を駆動させて回転軸48a及びカム体49を回転させる。すると、図7及び図8に示すように、接触子50を介してカム体49に連結されている従動体46が、カム体49の回転に伴って周期的に上下動させられる。これにより、従動体46に支持されている可動ロッド32を上下動させることができる。つまり、パルスモータ48の回転力をカム体49及び従動体46を介して直線方向の力に変換でき、可動ロッド32を上下動させることができる。よって、パルスモータ48のパルス数を制御することで、可動ロッド32の上下移動量を制御することができる。
【0079】
ここで、可動ロッド32の先端部は、コイルバネ34の付勢力によって当接ブロック41の溝部41aの内壁に点接触しているので、可動ロッド32が上下動するとそれに直ちに追従してステージ30がピッチ軸L1回りに回転傾斜する。これにより、ステージ30に載置される包埋ブロックBをピッチ軸L1回りに傾斜させることができる。
なお、可動ロッド32の先端部は、見かけ上、溝部41aに沿って移動しながら上下動するので、正確に包埋ブロックBをピッチ軸L1回りに傾斜させることができる。
【0080】
また、ステージ30がピッチ軸L1回りに傾斜される際、図9に示すように、他方の可動ロッド33の先端部と当接ブロック42とは接触しているが、可動ロッド33の先端部は該当接ブロック42に対して点接触している。そのため、接触抵抗が小さく、ステージ30の動きを妨げ難いので、該ステージ30をピッチ軸L1回りに円滑に傾斜させることができる。
【0081】
次いで、図3に示すように、ステージ30をロール軸L2回りに傾斜させる場合には、制御部51がパルスモータ62を駆動させて回転軸62a及びカム体63を回転させる。すると、上述した場合と同様の作用により、可動ロッド33の上下動に直ちに追従してステージ30がロール軸L2回りに回転傾斜するので、ステージ30に載置される包埋ブロックBをロール軸L2回りに傾斜させることができる。
【0082】
なお、ステージ30がロール軸L2回りに傾斜される際、図6に示すように、一方の可動ロッド32の先端部は当接ブロック41の溝部41a内に嵌った状態となっている。そのため、正確に包埋ブロックBをロール軸L2回りに傾斜させることができる。また、可動ロッド32の先端部も溝部41aの内壁に対して点接触しているので、接触抵抗が小さく、ステージ30をロール軸L2回りに円滑に傾斜させることができる。
【0083】
上記のように、2つの可動ロッド32、33をそれぞれ上下動させることで、ステージ30を2軸回りに傾斜させて包埋ブロックBの傾きを自在に調整することができる。そして、それぞれのパルスモータ48、62のパルス数を制御することで、2つの可動ロッド32、33の上下移動量を制御できるので、結果的にステージ30の2軸回りの傾き量を制御することができる。
【0084】
特に、従来の歯車を利用したものとは異なり、カム体49、63及び接触子50、64を有する従動体46、60を利用して、パルスモータ48、62の回転力を直線方向の力に変換して可動ロッド32、33を上下動させるので、歯部の噛合わせに起因するバックラッシの影響をなくしながら、滑らか且つ連続的に可動ロッド32、33を上下動変化させることができる。よって、パルス数とステージ30の傾き量とを精度良く対応付けながらステージ30を2軸回りに傾斜させることができる。
【0085】
更に、カム体49、63等を利用してパルスモータ48、62の回転力を直線方向の力に変換できるので、パルスモータ48、62の設置位置の自由度が向上するうえ、薄型化に貢献し易い。
なお、パルスモータ48、62としては、ハーモニックギヤタイプのものを用いることがより好ましい。
【0086】
次に、このように作用するチルトステージ10、20を具備する粗削り装置2及び本削り装置3を利用して、薄切片Mを作製する方法について説明する。
【0087】
はじめに、粗削り装置2により包埋ブロックBの粗削りを行って、生体試料Sの所望の観察面を面出しする粗削り工程を行う。
この工程は、まず粗削り装置2が具備するチルトステージ10のステージ30上に包埋ブロックBをセットした後、作業者が包埋ブロックBの生体試料Sの状態(サイズ、形状、姿勢等)を確認しながらステージ30を2軸回りに傾斜させて、包埋ブロックBを任意の角度に傾斜させる。そして、図2に示すように、移動機構13及びZステージ14を作動させて包埋ブロックBを薄切する。
そして、生体試料Sの状態に応じて包埋ブロックBの傾きをチルトステージ10で適宜調整しながら、薄切を繰り返し行って、生体試料Sの所望の観察面を表面に露出させる面出しを行う。この面出しが完了した時点で薄切工程が終了する。
【0088】
上記面出しが終了すると、チルトステージ10の制御部51は面出しされた際のステージ30の傾斜角度に対応したパルスモータ48、62のパルス数を、予め設定されている補正変換式で補正しながら再度傾斜角度に変換し、その再変換した傾斜角度を出力指令値として総合制御部5に出力する出力工程を行う。これにより、バックラッシ及び自身が有する固有の誤差に影響されずに、実際のステージ30の傾斜角度を出力指令値として出力できる。すると、総合制御部5は、この送られてきた出力指令値を記憶部71aに記憶させる。
【0089】
一方、粗削りが終了した後、包埋ブロックBを粗削り装置2のチルトステージ10から取り外し、本削り装置3が具備するチルトステージ20のステージ30上にセットする。すると、総合制御部5は、先ほど出力指令値として受け取り、記憶部71aに記憶していた傾斜角度を入力指令値として本削り装置3が具備するチルトステージ20の制御部51に出力する指示工程を行う。
【0090】
本削り装置3の制御部51は、入力指令値として受け取った傾斜角度を、予め設定されていた補正変換式で補正しながらパルスモータ48、62のパルス数に変換した後、変換したパルス数にしたがってパルスモータ48、62を駆動させ、ステージ30を2軸回りに回転傾斜させるステージ傾斜工程を行う。
【0091】
特に、入力指令値として入力されてきた傾斜角度を補正変換式で補正しながらパルス数に変換するので、このチルトステージ20自身が有する固有の誤差(粗削り装置2のチルトステージ10自身が有する誤差とは異なる誤差)の影響を排除したパルス数を得ることができる。そして、このパルス数に基づいてバックラッシの影響を受けることなくパルスモータ48、62を駆動させ、ステージ30を傾斜させるので、該ステージ30の傾斜角度を入力指令値として入力されてきた傾斜角度に精度良く一致させることができる。
【0092】
従って、本削り装置3が具備するチルトステージ20のステージ30を、粗削り装置2にて包埋ブロックBの面出しが終了した際のステージ30の傾斜角度に一致させることができる。つまり、本削り時において、粗削り時における包埋ブロックBの傾きを再現することができる。
【0093】
そして、上記ステージ傾斜工程が終了した後、本削り装置3にて、ステージ30の傾斜角度を維持したまま面出しされた包埋ブロックBを薄切して、薄切片Mを作製する薄切工程を行う。
具体的には、ステージ30の傾斜角度を維持したままZステージ24により薄切量を調整した後、移動機構23によりホルダ21を往復移動させる。これにより、面出しされた包埋ブロックBを均等の厚みで確実に薄切することができ、薄切回数や薄切時間を無駄にかけることなく高品質な薄切片Mを効率良く作製することができる。
【0094】
以上説明したように、本実施形態の薄切片作製システム1によれば、チルトステージリンクシステム4を備えているので、本削り装置3が具備するチルトステージ10のステージ30を、粗削り装置2が具備するチルトステージ20のステージ30の傾斜角度に一致させることができ、高品質な薄切片Mを効率良く作製することができる。
【0095】
なお、上記実施形態において、包埋ブロックBの管理番号をキーとして、粗削り装置2と本削り装置3と総合制御部5との間で出力指令値及び入力指令値のやり取りを行っても構わない。
【0096】
この場合には、粗削り装置2の制御部51が総合制御部5に出力指令値を出力する出力工程時に、包埋ブロックBの管理番号を関連付けた状態で出力する。そして、総合制御部5は、この管理番号が関連付けられた出力指令値を記憶部71aに記憶しておく。
一方、本削り装置3の制御部51は、面出しされた包埋ブロックBがセットされた後、このセットされた包埋ブロックBの管理番号を総合制御部5に問い合わせる確認工程を行う。総合制御部5は、問い合わせのあった管理番号に関連付けられた出力指令値を記憶部71a内から取り出し、問い合わせ先である本削り装置3の制御部51に入力指令値として出力する応答工程を行う。
【0097】
こうすることで、複数の包埋ブロックBをどのような順番で処理しようとしても、本削り装置3のステージ30の傾斜角度を、その包埋ブロックBが面出しされた際のステージ30の傾斜角度に一致させることができる。従って、いずれの包埋ブロックBに関しても、確実に面出しされた部分を均等の厚みで薄切でき、無駄な薄切回数、薄切時間をかけることなく高品質な薄切片Mを得ることができる。
【0098】
なお、本発明の技術範囲は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0099】
例えば、上記実施形態では、粗削り装置2及び本削り装置3をそれぞれ1つずつ有する薄切片作製システム1としたが、これに限定されるものではなく、それぞれ複数備えていても構わない。この際、粗削り装置2と本削り装置3との数は、同数であっても構わないし、異なっていても構わない。
【0100】
また、上記実施形態では、粗削り装置2が具備するチルトステージ10から出力された出力指令値を、総合制御部5が入力指令値として本削り装置3が具備するチルトステージ20に出力した場合を説明したが、例えば、再度粗削り装置2に出力しても構わない。
粗削り装置2によって面出しが終了した包埋ブロックBは、その後、本削り装置3にて本削りされるが、その際に、表面に露出した観察面の状況によっては再度粗削りを行って面出しをやり直したい場合がある。この場合には、粗削り装置2が具備するチルトステージ10に再度包埋ブロックBをセットし、包埋ブロックBの傾きを再現させる必要がある。このような場合、先ほど出力指令値として出力した傾斜角度を、再度入力指令値として受け取ることでステージ30の傾きを再現させることが可能であるので、再度の粗削りを直ちに行うことができ好ましい。
【符号の説明】
【0101】
B…包埋ブロック
S…生体試料
L1…ピッチ軸
L2…ロール軸
1…薄切片作製システム
2…粗削り装置
3…本削り装置
4…チルトステージリンクシステム
5…総合制御部
30…ステージ
31…軸受部(球面軸受部)
32、33…可動ロッド
34…コイルバネ(付勢部材)
35、36…ロッド可動手段
40a…ステージの載置面
46、60…従動体
48、62…パルスモータ
48a、62a…パルスモータの回転軸
49、63…カム体
50、64…接触子
51…制御部
71a…記憶部
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体試料が包埋された包埋ブロックを任意の角度に傾斜させるチルトステージ、該チルトステージを複数有するチルトステージリンクシステム、該システムを有する薄切片作製システム、及び薄切片作製方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
理化学実験や顕微鏡観察に用いられる薄切片標本を作製する装置として、ミクロトームが従来から使用されている。薄切片標本とは、厚さが数μm(例えば1〜5μm)の薄切片をスライドガラス等の基板上に固定させたものである。ここで、一般的な薄切片標本の作製方法について説明する。
【0003】
はじめに、ホルマリン固定された実験動物等の生体試料をパラフィン置換した後、この生体試料の周囲をさらにパラフィンで固めながら該生体試料を包埋し、ブロック状の包埋ブロックを作製する。
次いで、この包埋ブロックを粗削り用の切断刃を有するミクロトームにセットして、粗削りを行う。この粗削りによって、内部に包埋されていた生体試料が表面に露出した状態となる。この際、作業者が包埋されている生体試料の状態(サイズ、形状や姿勢等)に応じて包埋ブロックを任意に傾けながら、最適な生体試料の観察面が露出するまで粗削りを繰り返し行い、生体試料の面出しを行っている。
【0004】
次いで、上記粗削りによって生体試料の面出しが終了した後、包埋ブロックを本削り用の切断刃を有する別のミクロトームにセットし、面出しした際の包埋ブロックの傾きを維持したまま該包埋ブロックを上下させて薄切量を調整する。そして、調整した薄切量で包埋ブロックを薄切する本削りを行う。この本削りによって、面出しされた生体試料が細胞レベルの厚み程度となった薄切片を得ることができる。
その後、本削り時に生じた皺や丸みを取りながら薄切片をスライドガラス等の基板上に固定することで、薄切片標本の作製が終了する。
【0005】
ところで、粗削り時と本削り時とで別々のミクロトームを用いる場合には、本削り時に、包埋ブロックの被切削面(表面)が粗削り時に面出ししたときの被切削面と面一になるように、包埋ブロックの傾きを調整する必要がある。つまり、粗削り時において、面出ししたときの被切削面と切断刃の刃先が走行する走行面とは一致して平行になっているので、その後に行う本削り時に、被切削面が走行面に対して再度平行となるように包埋ブロックの傾きを調整する必要がある。
【0006】
仮に、本削り時に包埋ブロックの被切削面が走行面に対して傾いている場合には、生体試料の観察面が面出しされている包埋ブロックを均等の厚みで薄切することができず、該包埋ブロックを削りすぎてしまったり、観察面が途中で千切れたようないびつな形状の薄切片になったりする等の不都合が生じてしまう。
また、本削り時に、生体試料の新たな観察面が再度面出しされ、且つ均等の厚みの薄切片が得られるまで何回も薄切動作を繰り返す必要があるので、本削り作業に時間がかかるうえ、無駄に薄切回数が増えてしまう等といった不都合が生じてしまう。
【0007】
そこで、粗削り時と本削り時とで包埋ブロックの被切削面が面一となるように、本削り時に包埋ブロックの傾きを調整することが重要とされている。
例えば、その方法の1つとして、面出し終了後に、包埋ブロックの被切削面の傾きを接触式センサで測定、或いは、レーザ等の検出光を被切削面に当て、その反射光に基づいて傾きを非接触で測定し、本削り時にこれら測定値をフィードバックさせることで、被切削面の傾きを合わせる方法がある。
【0008】
しかしながら、接触式センサを利用した場合には、包埋ブロックの被切削面に直接触れてしまうので傷等が付く恐れがあり好ましいものではない。また、検出光を被切削面に当てる場合には、包埋ブロックが透明のパラフィンであるため被切削面での反射光を捕らえることが難しい場合があり、被切削面の傾き測定の正確性に欠けるうえ、時間がかかり易かった。
また、上記いずれの場合であっても、接触式センサや検出光を照射するための光学系を具備する必要があり、部品点数が増えるだけでなくコスト増に繋がり易かった。
【0009】
そこで、粗削り時に包埋ブロックを傾けた量と同じ量だけ、本削り時に包埋ブロックを傾ける方法が採用されている。
具体的には、粗削り時に包埋ブロックを固定しているステージの2軸回り(ステージ面に平行で且つ互いに直交する2軸回り)の傾き量をそれぞれ記憶しておき、本削り時に、その記憶していた傾き量となるようにステージを制御する方法である。
そして、このような方法に対応可能な装置として、所望する傾きにステージ(載置台)を調整することができるチルトステージが知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2008−170312号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記特許文献1に記載のチルトステージは、ロール用の押し上げロッド及びピッチ用の押し上げロッドを備えており、これら2つの押し上げロッドを適宜押し上げることでステージを互いに直交する2軸(ロール軸、ピッチ軸)回りに傾けることが可能とされている。これら2つの押し上げロッドは、回転力を直線方向の力に変換するウォームギアや歯車等に連結されており、変換された直線方向の力によって上下動可能とされている。
【0012】
しかしながら、このチルトステージでは2つの押し上げロッドを上下動させるために歯車を利用しているので、互いに噛合し合っている歯部と歯部との間にどうしても遊び(バックラッシ)が生じてしまう。そのため、押し上げロッドの上下移動量を正確に制御することが難しかった。
特に、押し上げロッドの上下移動量を制御するために、パルスモータの回転軸を上記ウォームギアに連結し、パルスモータの駆動で押し上げロッドを上下動させる構成が考えられるが、この場合、上記バックラッシによってパルスモータのパルス数(指令値)と実際の上下移動量とが正確に一致しなくなってしまう。そのため、パルス数と実際のステージの傾き量とを正確に対応させることができず、パルス数に基づいてステージの傾き量を正確に把握することが難しかった。
【0013】
特に、バックラッシが生じるので、歯部と歯部とが移り変わる瞬間に押し上げロッドが上下方向に波状に変化してしまい、図12に示すようにステージの傾き量がパルス数に対して直線的に変化し難い。加えて、バックラッシの影響によって、押し上げロッドが上方移動する場合(図中A線)と下方移動する場合(図中B線)とでパルス数に対するステージの傾き率が異なる場合もあり、誤差範囲が大きかった。
これらのことからも、パルス数に基づいてステージの傾き量を正確に把握することは難しい。
【0014】
従って、粗削り時の面出し終了後に、作業者が設定したステージの傾きをパルス数で記憶しておき、本削り時にこのパルス数に基づいてステージを傾けたとしても、面出し終了後のステージの傾きに一致させることが難しかった。
【0015】
そもそも、バックラッシの影響によってパルス数とステージの傾き量とを正確に対応させることが難しいので、パルス数に基づいてステージの傾き量を正確に把握すること自体が難しい。そのため、粗削り時にステージの傾き量をパルス数として記憶する段階で誤差が含まれてしまい、パルス数自体の信頼性が乏しくなってしまう。そのうえ、本削り時に、この信頼性に乏しいパルス数に基づいてステージを傾けなくてはならないうえ、この際にもさらに誤差が含まれてしまうので、より一層ステージの傾き量の信頼性が損なわれてしまう。
その結果、本削り時におけるステージの傾きを、面出し終了後のステージの傾きに一致させるといったことが難しかった。
【0016】
更に、チルトステージは各構成部品の加工精度や組立精度等が固体毎に異なるので、複数のチルトステージにおいて、仮にそれぞれのステージを同じ傾きに設定したとしてもパルス数は同一になり難く、また、同じパルス数に基づいてそれぞれのステージを傾けたとしても傾き量は同一になり難い。
このように、チルトステージが有する固有の誤差の影響も上記問題を引き起こす要因の1つであった。
【0017】
なお、ウォームギア等ではなくボールねじ機構を利用して、モータの回転軸自体を押し上げロッドとして機能させる構成も考えられるが、バックラッシの大幅な改善には繋がらないうえ、押し上げロッドの軸線上にボールねじ機構やモータを配置する必要があるので、構成品が直線的に並んでしまい大型化し易くなるという新たな問題が生じてしまう。
【0018】
本発明は、このような事情に考慮してなされたもので、その目的は、バックラッシの影響をなくすことができるうえ、パルス数とステージの傾き量とを精度良く対応付けながら該ステージを傾斜させることが可能で、且つ自身が有する固有の誤差に影響されずに、外部から入力された傾斜角度に一致するようにステージを傾斜、或いはステージの実際の傾斜角度を外部に出力することができるチルトステージ、これを複数リンクさせたチルトステージリンクシステム、このシステムを有する薄切片作製システム、該システムを利用した薄切片作製方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明は、前記課題を解決するために以下の手段を提供する。
(1)本発明に係るチルトステージは、生体試料が包埋された包埋ブロックが載置されるステージと、該ステージの載置面に平行で且つ互いに直交する2軸回りにそれぞれ回転可能にステージを支持する軸受部と、前記ステージの下方に上下動可能に配置された2つの可動ロッドと、前記ステージを付勢して、該ステージを前記可動ロッドの先端部に押し付ける付勢部材と、前記可動ロッドを上下動させて前記ステージを前記2軸回りにそれぞれ回転傾斜させるロッド可動手段と、を備え、前記ロッド可動手段が、パルスモータの回転軸に連結されたカム体と、前記可動ロッドの基端部を支持すると共に、前記カム体の周面に接触する接触子を介してカム体に連結され、該カム体の回転に伴って周期的に上下動させられる従動体と、前記パルスモータの駆動を制御する制御部と、を備え、前記制御部が、前記ステージが前記2軸回りに回転傾斜させられた際、その傾斜角度に対応した前記パルスモータのパルス数を、予め設定された補正変換式で補正しながら再度傾斜角度に変換した後、再変換した傾斜角度を出力指令値として出力し、前記補正変換式が、前記カム体の回転に伴って周期的に上下動する前記従動体の実際の変位を、理論上の変位に近似させる近似式であることを特徴とする。
【0020】
本発明に係るチルトステージによれば、パルスモータを駆動させると、その回転軸と共にカム体が回転する。すると、接触子を介してカム体に連結されている従動体が、カム体の回転に伴って周期的に上下動させられる。これにより、この従動体に基端部が支持されている可動ロッドを上下動させることができる。つまり、パルスモータの回転力をカム体及び従動体を介して直線方向の力に変換でき、可動ロッドを上下動させることができる。よって、パルスモータの駆動を制御、即ちパルス数を制御することで、可動ロッドの上下移動量を制御することができる。
そして、可動ロッドの先端部は付勢部材によってステージに押し付けられているので、可動ロッドが上下動するとそれに追従してステージが2軸回りに回転傾斜する。これにより、包埋ブロックを所望する傾きに傾斜させることができる。上記したようにパルス数を制御することで、可動ロッドの上下移動量を制御できるので、結果的にステージの2軸回りの傾き量を制御することができる。
【0021】
特に、従来の歯車を利用したものとは異なり、カム体及び接触子を有する従動体を利用して、パルスモータの回転力を直線方向の力に変換して可動ロッドを上下動させるので、歯部の噛合わせに起因するバックラッシの影響をなくしながら、滑らか且つ連続的に可動ロッドを上下動変化させることができる。よって、パルス数とステージの傾き量とを精度良く対応付けながら、ステージを傾斜させることができる。
【0022】
しかも、制御部はステージが2軸回りに回転傾斜させられた際、その傾斜角度に対応したパルス数を補正変換式で補正しながら再度傾斜角度に変換し、その再変換した傾斜角度を出力指令値として出力する。これにより、自身が有する固有の誤差(各構成要素の加工精度や取付精度等に起因する誤差)に影響されずに、実際のステージの傾斜角度を出力指令値として外部に出力できる。よって、この傾斜角度に基づいて例えば別のチルトステージのステージを傾斜させることで、2つのチルトステージのステージを同じ傾きに精度良く一致させ易い。
【0023】
(2)上記本発明に係るチルトステージにおいて、前記制御部が、入力指令値として入力されてきた傾斜角度を、前記補正変換式で補正しながら前記パルスモータのパルス数に変換した後、変換したパルス数にしたがって該パルスモータを駆動させても良い。
【0024】
この場合には、制御部が外部から入力指令値として入力されてきた傾斜角度を補正変換式で補正しながらパルス数に変換するので、自身が有する固有の誤差の影響を排除したパルス数を得ることができる。
そして、このパルス数に基づいて、バックラッシの影響をうけることなくパルスモータを駆動させてステージを傾斜させるので、ステージの傾斜角度を入力指令値として入力されてきた傾斜角度に精度良く一致させることができる。
【0025】
(3)本発明に係るチルトステージは、生体試料が包埋された包埋ブロックが載置されるステージと、該ステージの載置面に平行で且つ互いに直交する2軸回りにそれぞれ回転可能にステージを支持する軸受部と、前記ステージの下方に上下動可能に配置された2つの可動ロッドと、前記ステージを付勢して、該ステージを前記可動ロッドの先端部に押し付ける付勢部材と、前記可動ロッドを上下動させて前記ステージを前記2軸回りにそれぞれ回転傾斜させるロッド可動手段と、を備え、前記ロッド可動手段が、パルスモータの回転軸に連結されたカム体と、前記可動ロッドの基端部を支持すると共に、前記カム体の周面に接触する接触子を介してカム体に連結され、該カム体の回転に伴って周期的に上下動させられる従動体と、前記パルスモータの駆動を制御する制御部と、を備え、前記制御部が、入力指令値として入力されてきた傾斜角度を、予め設定された補正変換式で補正しながら前記パルスモータのパルス数に変換した後、変換したパルス数にしたがってパルスモータを駆動させ、前記補正変換式が、前記カム体の回転に伴って周期的に上下動する前記従動体の実際の変位を、理論上の変位に近似させる近似式であることを特徴とする。
【0026】
本発明に係るチルトステージによれば、パルスモータを駆動させると、その回転軸と共にカム体が回転する。すると、接触子を介してカム体に連結されている従動体が、カム体の回転に伴って周期的に上下動させられる。これにより、この従動体に基端部が支持されている可動ロッドを上下動させることができる。つまり、パルスモータの回転力をカム体及び従動体を介して直線方向の力に変換でき、可動ロッドを上下動させることができる。よって、パルスモータの駆動を制御、即ちパルス数を制御することで、可動ロッドの上下移動量を制御することができる。
そして、可動ロッドの先端部は付勢部材によってステージに押し付けられているので、可動ロッドが上下動するとそれに追従してステージが2軸回りに回転傾斜する。これにより、包埋ブロックを所望する傾きに傾斜させることができる。上記したようにパルス数を制御することで、可動ロッドの上下移動量を制御できるので、結果的にステージの傾き量を制御することができる。
【0027】
特に、従来の歯車を利用したものとは異なり、カム体及び接触子を有する従動体を利用して、パルスモータの回転力を直線方向の力に変換して可動ロッドを上下動させるので、歯部の噛合わせに起因するバックラッシの影響をなくしながら、滑らか且つ連続的に可動ロッドを上下動変化させることができる。よって、パルス数とステージの傾き量とを精度良く対応付けることが可能である。
【0028】
しかも、制御部は外部から入力指令値として入力されてきた傾斜角度を補正変換式で補正しながらパルス数に変換するので、自身が有する固有の誤差(各構成要素の加工精度や取付精度等に起因する誤差)の影響を排除したパルス数を得ることができる。そして、このパルス数に基づいてバックラッシの影響を受けることなくパルスモータを駆動させてステージを傾斜させるので、ステージの傾斜角度を入力指令値として入力されてきた傾斜角度に精度良く一致させることができる。よって、ステージの傾斜角度を、例えば別のチルトステージのステージの傾斜角度に精度良く一致させることが可能である。
【0029】
(4)上記本発明に係るチルトステージにおいて、前記制御部が、前記ステージが前記2軸回りに回転傾斜させられた際、その傾斜角度に対応した前記パルスモータのパルス数を、前記補正変換式で補正しながら再度傾斜角度に変換した後、再変換した傾斜角度を出力指令値として出力しても良い。
【0030】
この場合には、制御部はステージが2軸回りに回転傾斜させられた際、その傾斜角度に対応したパルス数を予め定められた補正変換式で補正しながら再度傾斜角度に変換し、その再変換した傾斜角度を出力指令値として出力する。これにより、自身が有する固有の誤差に影響されずに実際のステージの傾斜角度を出力指令値として外部に出力できる。
【0031】
(5)本発明に係るチルトステージリンクシステムは、上記本発明に係るチルトステージを複数備え、いずれかの前記チルトステージから出力されてきた前記出力指令値を記憶部に記憶すると共に、記憶した該出力指令値を前記入力指令値として他のチルトステージに出力する総合制御部を備えていることを特徴とする。
【0032】
本発明に係るチルトステージリンクシステムによれば、いずれかのチルトステージのステージを2軸回りに回転傾斜させると、該チルトステージの制御部がバックラッシ及び自身が有する固有の誤差の影響を抑制した状態でステージの傾斜角度を総合制御部に出力指令値として出力する。総合制御部はこの出力指令値を記憶した後、入力指令値として他のチルトステージに出力する。すると、他のチルトステージの制御部は、自身が有する固有の誤差の影響を排除した状態でこの傾斜角度をパルス数に変換し、このパルス数に基づいてバックラッシの影響を受けることなくステージを傾斜させる。
従って、複数のチルトステージ間において、それぞれのステージの傾斜角度を精度良く一致させることができる。
【0033】
(6)上記本発明に係るチルトステージリンクシステムにおいて、前記制御部が、前記包埋ブロックの管理番号を前記出力指令値に関連付けた状態で出力し、前記総合制御部が、前記管理番号に関連付けられた前記出力指令値を前記記憶部に記憶すると共に、前記チルトステージから前記包埋ブロックの管理番号の問い合わせがあったときに、該管理番号に関連付けて記憶していた出力指令値を問い合わせ先のチルトステージに前記入力指令値として出力しても良い。
【0034】
この場合には、包埋ブロックの管理番号をキーとして複数のチルトステージと総合制御部との間で出力指令値及び入力指令値のやり取りを行うので、複数のチルトステージ間において、それぞれのステージの傾斜角度を包埋ブロック毎に精度良く一致させることができる。
【0035】
(7)本発明に係る薄切片作製システムは、上記本発明のチルトステージリンクシステムと、複数の前記チルトステージのうちのいずれかのチルトステージを有し、前記生体試料の所望の観察面が表面に面出しされるまで前記包埋ブロックを薄切する粗削り装置と、複数の前記チルトステージのうちの他のチルトステージを有し、面出しされた前記包埋ブロックの表面を薄切して薄切片を作製する本削り装置と、を備え、前記粗削り装置の前記制御部が、前記出力指令値を前記総合制御部に出力し、前記本削り装置の前記制御部が、前記総合制御部から前記入力指令値を受け取ることを特徴とする。
【0036】
本発明に係る薄切片作製システムによれば、上述したチルトステージリンクシステムを利用しているので、本削り装置が具備するチルトステージのステージを、粗削り装置が具備するチルトステージのステージの傾斜角度に一致させることができる。
従って、粗削り時における包埋ブロックの傾きを再現でき、粗削り装置にて所望の観察面が面出しされた包埋ブロックを、本削り装置にて均等の厚みで確実に薄切することができる。よって、薄切回数や薄切時間を無駄にかけることなく高品質な薄切片を効率良く作製することができる。
【0037】
(8)本発明に係る薄切片作製方法は、上記本発明の薄切片作製システムにより前記薄切片を作製する薄切片作製方法であって、前記粗削り装置が具備する前記チルトステージの前記ステージ上に前記包埋ブロックをセットした後、該包埋ブロックを前記2軸回りに回転傾斜させながら薄切を行って前記観察面を面出しする粗削り工程と、前記粗削り装置の前記制御部が、前記面出しされた際の前記ステージの傾斜角度に対応した前記パルスモータのパルス数を、前記補正変換式で補正しながら再度傾斜角度に変換した後、再変換した傾斜角度を出力指令値として前記総合制御部に出力する出力工程と、前記本削り装置が具備する前記チルトステージの前記ステージ上に面出しされた前記包埋ブロックがセットされた後、前記総合制御部が前記出力指令値として受け取った前記傾斜角度を入力指令値として前記本削り装置の前記制御部に出力する指示工程と、前記本削り装置の前記制御部が、前記入力指令値として受け取った前記傾斜角度を、前記補正変換式で補正しながら前記パルスモータのパルス数に変換した後、変換したパルス数にしたがってパルスモータを駆動させて、前記ステージを前記2軸回りに回転傾斜させるステージ傾斜工程と、前記本削り装置にて、前記ステージの傾斜角度を維持したまま面出しされた前記包埋ブロックを薄切して、前記薄切片を作製する薄切工程と、を備えていることを特徴とする。
【0038】
本発明に係る薄切片作製方法によれば、上述した薄切片作製システムと同様の作用効果を奏効することができる。即ち、粗削り装置にて所望の観察面が面出しされた包埋ブロックを、本削り装置にて均等の厚みで確実に薄切することができ、薄切回数や薄切時間を無駄にかけることなく高品質な薄切片を効率良く作製することができる。
【0039】
(9)上記本発明に係る薄切片作製方法において、前記出力工程の際、前記包埋ブロックの管理番号を前記出力指令値に関連付けた状態で出力し、前記指示工程の際、前記本削り装置の前記制御部が、面出しされた前記包埋ブロックがセットされた後、該包埋ブロックの管理番号を前記総合制御部に問い合わせる確認工程と、前記総合制御部が、問い合わせのあった前記管理番号に関連付けられた前記出力指令値を、問い合わせ先の前記制御部に前記入力指令値として出力する応答工程と、を行っても良い。
【0040】
この場合には、包埋ブロックが複数あったとしても、本削り装置にて各包埋ブロックを均等の厚みで確実に薄切でき、薄切回数や薄切時間を無駄にかけることなく高品質な薄切片を効率良く作製することができる。
【発明の効果】
【0041】
本発明に係るチルトステージによれば、バックラッシの影響をなくしながら可動ロッドを滑らか且つ連続的に上下動変化させることができるので、パルス数とステージの傾き量とを精度良く対応付けながらステージを傾斜させることが可能である。また、自身が有する固有の誤差に影響されずに、外部から入力された傾斜角度にステージを一致、或いはステージの実際の傾斜角度を外部に出力することができるので、複数のチルトステージ間においてそれぞれのステージの傾斜角度を精度良く一致させ易く、本削り時に包埋ブロックの傾斜角度を、粗削り時に面出ししたときの傾斜角度に一致させることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明に係る薄切片作製システムによって薄切される包埋ブロックを示す斜視図である。
【図2】本発明に係る薄切片作製システムの構成図である。
【図3】図2に示す薄切片作製システムを構成するチルトステージの斜視図である。
【図4】図3に示すA−A線に沿った断面図である。
【図5】図3に示すB−B線に沿った断面図である。
【図6】図3に示すステージをピッチ軸回りに傾斜させる可動ロッドの先端部付近の拡大図である。
【図7】パルスモータの回転軸に連結されているカム体と接触子を有する従動体との関係を示す斜視図である。
【図8】図7に示す状態からカム体を回転させ、従動体を上方に移動させた状態を示す図である。
【図9】図3に示すステージをロール軸回りに傾斜させる可動ロッドの先端部付近の拡大図である。
【図10】カム体の回転に伴って周期的に上下動する従動体の理論上の変位変化を示す図である。
【図11】カム体を回転させたときにおける、従動体の実際の変位と理論上の変位との差分である誤差変位の変化を示す図である。
【図12】従来のチルトステージにおいて、ステージの傾き量とパルスとの関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
(薄切片作製システム)
以下、本発明に係る薄切片作製システムの実施形態を、図1から図11を参照して説明する。
薄切片作製システム1は、図1に示すように包埋ブロックBを所定の厚みで薄切してシート状の薄切片Mを作製するシステムであり、その概略構成としては図2に示すように、粗削り装置2と、本削り装置3と、総合制御部5を有するチルトステージリンクシステム4と、を備えている。
【0044】
はじめに、上記包埋ブロックBについて簡単に説明する。
図1に示すように、包埋ブロックBは、ホルマリン固定された生体試料S内の水分をパラフィン置換した後、さらに周囲をパラフィン等の包埋剤Hによってブロック状に固めたものである。これにより、生体試料Sが包埋剤H内に包埋されている。
なお、生体試料Sとしては、例えば実験動物等から取り出した臓器等の組織であり、医療分野、製薬分野、食品分野、生物分野等で適宜選択される。
【0045】
また、本実施形態では、包埋ブロックBが箱状のカセットK上に固定されているものとして説明する。そして、このカセットKには、包埋ブロックBの管理番号(包埋ブロックBの作製日や、生体試料Sの各種データ等が含まれる)が記録されており、この管理番号を読み取ることで包埋ブロックBの品質管理を行うことが可能とされている。
【0046】
図2に示すように、粗削り装置2は、作業者が生体試料Sの状態に応じて包埋ブロックBの傾きを任意に調整しながら、生体試料Sの所望の観察面が表面に面出しされるまで包埋ブロックBを薄切する装置である。
この粗削り装置2は、包埋ブロックBを後述する2軸回りに傾斜させるチルトステージ10と、ホルダ11に保持された状態でチルトステージ10上に配設された粗削り用の切断刃12と、ホルダ11を水平方向に往復移動させ、切断刃12によって包埋ブロックBを薄切する移動機構13と、チルトステージ10を上下動させて、包埋ブロックBの薄切量を調整するZステージ14と、を備えている。
【0047】
切断刃12は、刃先が包埋ブロックBに対して所定のすくい角θ及び引き角が付くようにホルダ11に保持されている。移動機構13は、切断刃12の刃先が水平に走行するようにホルダ11を往復移動させている。
なお、本実施形態では、包埋ブロックBに対して切断刃12を往復移動させる構成であるが、この場合に限定されるものではなく、例えば切断刃12に対して包埋ブロックBを往復移動させる構成としても構わないし、切断刃12と包埋ブロックBとを互いに接近、離間させるように構成しても構わない。いずれにしても、切断刃12と包埋ブロックBとが相対的に移動するように構成されていれば構わない。
【0048】
Zステージ14は、例えば内部に図示しないピエゾ素子等が組み込まれており、電圧が印加されることで一定量上昇するように高さ制御されている。この際、Zステージ14は、移動機構13がホルダ11を一往復する度に上昇するように制御されている。
上記チルトステージ10は、後に説明する。
なお、粗削り装置2の上記各構成品は総合制御部5によって作動が総合的に制御されている。
【0049】
本削り装置3は、上記粗削り装置2によって面出しされた包埋ブロックBを薄切して、図1に示す薄切片Mを作製する装置であって、面出しされた包埋ブロックBを後述する2軸回りに傾斜させるチルトステージ20と、ホルダ21に保持された状態でチルトステージ20上に配設された本削り用の切断刃22と、ホルダ21を水平方向に往復移動させ、切断刃22によって包埋ブロックBを薄切する移動機構23と、チルトステージ20を上下動させて、包埋ブロックBの薄切量を調整するZステージ24と、を備えている。
【0050】
なお、本削り装置3が具備するホルダ21、切断刃22、移動機構23及びZステージ24は、共に上述した粗削り装置2のものと同様の構成であるので、説明は省略する。
【0051】
次に、粗削り装置2が具備するチルトステージ10、及び本削り装置3が具備するチルトステージ20について、説明する。これら両チルトステージ10、20は、同一の構成とされているため粗削り装置2のチルトステージ10を代表として、以下に詳細に説明する。
【0052】
図3から図5に示すように、このチルトステージ10は、カセットKを介して包埋ブロックBが載置固定されるステージ30と、ステージ30の載置面40aに平行で且つ互いに直交する2軸(ピッチ軸L1、ロール軸L2)回りにそれぞれ回転可能にステージ30を支持する球面軸受部(軸受部)31と、ステージ30の下方に上下動可能に配置された2つの可動ロッド32、33と、ステージ30を下向きに付勢して該ステージ30を可動ロッド32、33の先端部に押し付けるコイルバネ(付勢部材)34と、可動ロッド32、33を上下動させてステージ30を2軸回りにそれぞれ回転傾斜させるロッド可動手段35、36と、を備えている。
【0053】
ステージ30は、上面が平滑な載置面40aとされた板状のステージ本体40と、このステージ本体40に固定され、可動ロッド32、33の先端部が当接される2つの当接ブロック41、42と、を備えている。
一方の当接ブロック41は、ピッチ軸L1に沿って平行に延在するようにステージ本体40の外縁に沿って固定されている。これに対して他方の当接ブロック42は、ロール軸L2に沿って平行に延在するようにステージ本体40の外縁に沿って固定されている。そして、これら当接ブロック41、42の下方に可動ロッド32、33がそれぞれ配設されている。
なお、一方の当接ブロック41の下面には、ロール軸L2に沿ってV字状の溝部41aが形成されている。
【0054】
ステージ本体40の下面には、基台45に固定された外輪部31aに組み合わされ、外輪部31aと共に上記球面軸受部31を構成する内輪部31bが固定されている。この球面軸受部31によって、ステージ30は少なくとも上記2軸回りに回転可能に支持されている。
【0055】
2つの可動ロッド32、33は共に上下方向に延在しており、そのうち一方の可動ロッド32はステージ30をピッチ軸L1回りに回転傾斜させるためのロッドとされ、他方の可動ロッド33はステージ30をロール軸L2回りに回転傾斜させるためのロッドとされている。
【0056】
ここで、一方の可動ロッド32を利用してステージ30をピッチ軸L1回りに回転傾斜させる機構について説明する。
はじめに、この可動ロッド32は、上下動可能とされた従動体46によって基端部が支持された状態で当接ブロック41の下方に配設されている。可動ロッド32の先端部は球状に形成されており、図6に示すように当接ブロック41の下面に形成された溝部41aに嵌った状態で該溝部41aの内壁に対して点接触している。
【0057】
上記従動体46は、図3から図5に示すように、基台45に固定されたガイド体47によって上下動可能にガイドされている。この従動体46には、パルスモータ48の回転軸48aに連結されたカム体49の周面に接触する接触子50が設けられている。これにより、従動体46は接触子50を介してカム体49に連結されている。
【0058】
パルスモータ48は、回転軸48aがピッチ軸L1と平行になるように基台45に固定されている。また、このパルスモータ48は、制御部51に接続されており、該制御部51によってパルス数が監視されると共にパルス数に基づいて駆動が制御されている。つまり、パルスモータ48の回転軸48aは、制御部51から送られてきたパルス数に応じた回転量で回転するようになっている。
【0059】
カム体49は、一定の厚みを有する円形状の回転板とされている。そして、図5に示すように、パルスモータ48の回転軸48aはカム体49の円形中心位置Gから偏心した位置に連結されている。そのため、図7及び図8に示すように、カム体49はパルスモータ48の回転軸48aの回転に伴って周期的に上下動しながら共回りする。
よって、接触子50を介してカム体49に連結されている従動体46は、カム体49の回転に伴って周期的に上下動させられる。この際、従動体46はガイド体47によって上下動可能にガイドされているので、がたつくことなく滑らかに上下動するようになっている。
【0060】
なお、本実施形態の接触子50は、従動体46に回転自在に固定されたローラであり、カム体49の回転に伴って該カム体49の周面を走行しながら、カム体49の上下方向の変位を従動体46に伝える役割を果している。
【0061】
ところで、図3から図5に示すように、従動体46はコイルバネ52によって基台45側に付勢されている。このコイルバネ52は、一端部が従動体46に接続されると共に他端部が基台45に接続されており、従動体46を基台45側に向けて引っ張っている。これにより、従動体46の接触子50は、カム体49の周面に常時押し付けられており、カム体49の動きに直ちに追従するようになっている。
【0062】
更に、従動体46とステージ本体40との間にも上述したコイルバネ34が設けられている。このコイルバネ34は、一端部が当接ブロック41近くのステージ本体40に接続されると共に他端部が従動体46に接続されており、ステージ本体40の当接ブロック41側を下方に引っ張っている。これにより、当接ブロック41の溝部41aは可動ロッド32の先端部に押し付けられ、両者は常時接触している。そのため、従動体46を介して可動ロッド32を上下動させると、その動きに追従してステージ30がピッチ軸L1回りに回転傾斜するようになっている。
【0063】
なお、上述したカム体49、従動体46及び制御部51は、一方の可動ロッド32を上下動させてステージ30をピッチ軸L1回りに回転傾斜させるピッチ用のロッド可動手段35として機能する。
【0064】
次いで、他方の可動ロッド33を利用してステージ30をロール軸L2回りに回転傾斜させる機構について説明する。
図3に示すように、この可動ロッド33は、上下動可能とされた従動体60によって基端部が支持された状態で当接ブロック42の下方に配設されている。可動ロッド33の先端部は球状に形成されており、図9に示すように、当接ブロック42の下面に対して点接触している。
【0065】
図3に示すように、上記従動体60は、基台45に固定されたガイド体61によって上下動可能にガイドされている。この従動体60には、パルスモータ62の回転軸62aに連結されたカム体63の周面に接触する接触子64が設けられている。これにより、従動体60は接触子64を介してカム体63に連結されている。
パルスモータ62は、回転軸62aがピッチ軸L1と平行で且つ上述したパルスモータ48に対して並列に並ぶように基台45に固定されている。そして、このパルスモータ62に関しても同様に制御部51によって駆動が制御されている。
【0066】
なお、カム体63、接触子64及び従動体60の構成は、先に述べたピッチ側の機構と同様であるので、詳細な説明を省略する。また、従動体60と基台45との間にも同様にコイルバネ52が設けられており、このコイルバネ52によって従動体60の接触子64がカム体63の周面に常時押し付けられている。
更に、従動体60とステージ本体40との間にも同様にコイルバネ(不図示)が設けられており、ステージ本体40の他方の当接ブロック42側を下方に付勢している。これにより、他方の当接ブロック42は他方の可動ロッド33の先端部に押し付けられ、両者は常時接触している。
【0067】
上述したカム体63、従動体60及び制御部51は、他方の可動ロッド33を上下動させてステージ30をロール軸L2回りに回転傾斜させるロール用のロッド可動手段36として機能する。
【0068】
ところで、上述した制御部51は、ステージ30が2軸回りに回転傾斜させられた際、その傾斜角度に対応したパルスモータ48、62のパルス数を、予め設定されている補正変換式で補正しながら再度傾斜角度に変換した後、再変換した傾斜角度を出力指令値として総合制御部5に出力するように設定されている。
更に、この制御部51は、総合制御部5から入力指令値として入力されてきた傾斜角度を、補正変換式で補正しながらパルスモータ48、62のパルス数に変換した後、変換したパルス数にしたがってパルスモータ48、62を駆動するように設定されている。
【0069】
ここで、上記補正変換式について説明する。
この補正変換式は、カム体49、63の回転に伴って周期的に上下動する従動体46、60の実際の変位を、理論上の変位に近似させるための近似式である。以下、詳細に説明する。
【0070】
従動体46、60は、カム体49、63の回転に伴って周期的に上下動するので、上下動する従動体46、60の変位は図10に示すように理論的にはパルス数の変化に対して滑らかに曲線状に連続変化しながら周期的に変化する。
ところが、実際には各構成品の加工精度や取付精度等に起因する誤差(以下、固有の誤差と称する)の影響によって、従動体46、60は理論通りの軌跡に沿って変位することはない。そのため、実際の従動体46、60の周期的な変位を例えばレーザ測定器で測定し、実際の変位と理論上の変位との誤差を算出すると、図11に示すC線のようになる。
なお、この図11は、カム体49、63を回転させたときにおける、従動体46、60の実際の変位と理論上の変位との差分である誤差変位の変化を示す図である。
【0071】
そこで、この誤差変位を多次関数(例えば6次関数)で近似することで、図11に示すD線のように最適化でき、理論上の変位に近似させることができる。そして、この近似式が上記補正変換式であり、チルトステージ10が有する固有のパラメータである。そして、この補正変換式は予め算出された後、制御部51内に設定される。
【0072】
そして、粗削り装置2及び本削り装置3のチルトステージ10、20の制御部51には、それぞれに対応した補正変換式が設定されている。そして、粗削り装置2及び本削り装置3のチルトステージ10、20は、これら補正変換式を利用することで、固有の誤差の影響を排除した実際のステージ30の傾斜角度を外部出力したり、固有の誤差の影響を受けることなく外部から入力された傾斜角度にステージ30を傾斜させたりすることが可能とされている。
【0073】
なお、本実施形態では、図2に示すように、粗削り装置2が具備するチルトステージ10の制御部51が主として総合制御部5に出力指令値を出力し、本削り装置3が具備するチルトステージ20の制御部51が主として総合制御部5から入力指令値を受け取っている。
【0074】
次いで、チルトステージリンクシステム4について説明する。
このチルトステージリンクシステム4は、図2に示すように、粗削り装置2が具備するチルトステージ10と、本削り装置3が具備するチルトステージ20と、上記総合制御部5と、で構成されている。
【0075】
総合制御部5は、粗削り装置2及び本削り装置3を操作する操作部70と、粗削り装置2の制御部51及び本削り装置3の制御部51に接続され、操作部70で入力された各種信号を粗削り装置2及び本削り装置3に送信する制御本体71と、粗削り装置2及び本削り装置3の設定や動作を確認するためのモニタ72と、を備えている。
制御本体71には、本削り装置3の制御部51から出力されてきた出力指令値を記憶する記憶部71aが設けられている。制御本体71は、この記憶部71aに出力指令値を記憶した後、記憶した出力指令値を入力指令値として本削り装置3の制御部51に出力するように設定されている。
【0076】
(薄切片作製方法)
次に、上述した薄切片作製システム1を利用して、図1に示す包埋ブロックBから薄切片Mを作製する方法について説明する。
【0077】
はじめに、薄切片Mの作製方法を説明する前に、粗削り装置2及び本削り装置3が具備するチルトステージ10、20の作用について説明する。ここでは、粗削り装置2のチルトステージ10を例に挙げて説明する。
【0078】
まず、図3に示すように、ステージ30をピッチ軸L1回りに回転傾斜させる場合には、制御部51がパルスモータ48を駆動させて回転軸48a及びカム体49を回転させる。すると、図7及び図8に示すように、接触子50を介してカム体49に連結されている従動体46が、カム体49の回転に伴って周期的に上下動させられる。これにより、従動体46に支持されている可動ロッド32を上下動させることができる。つまり、パルスモータ48の回転力をカム体49及び従動体46を介して直線方向の力に変換でき、可動ロッド32を上下動させることができる。よって、パルスモータ48のパルス数を制御することで、可動ロッド32の上下移動量を制御することができる。
【0079】
ここで、可動ロッド32の先端部は、コイルバネ34の付勢力によって当接ブロック41の溝部41aの内壁に点接触しているので、可動ロッド32が上下動するとそれに直ちに追従してステージ30がピッチ軸L1回りに回転傾斜する。これにより、ステージ30に載置される包埋ブロックBをピッチ軸L1回りに傾斜させることができる。
なお、可動ロッド32の先端部は、見かけ上、溝部41aに沿って移動しながら上下動するので、正確に包埋ブロックBをピッチ軸L1回りに傾斜させることができる。
【0080】
また、ステージ30がピッチ軸L1回りに傾斜される際、図9に示すように、他方の可動ロッド33の先端部と当接ブロック42とは接触しているが、可動ロッド33の先端部は該当接ブロック42に対して点接触している。そのため、接触抵抗が小さく、ステージ30の動きを妨げ難いので、該ステージ30をピッチ軸L1回りに円滑に傾斜させることができる。
【0081】
次いで、図3に示すように、ステージ30をロール軸L2回りに傾斜させる場合には、制御部51がパルスモータ62を駆動させて回転軸62a及びカム体63を回転させる。すると、上述した場合と同様の作用により、可動ロッド33の上下動に直ちに追従してステージ30がロール軸L2回りに回転傾斜するので、ステージ30に載置される包埋ブロックBをロール軸L2回りに傾斜させることができる。
【0082】
なお、ステージ30がロール軸L2回りに傾斜される際、図6に示すように、一方の可動ロッド32の先端部は当接ブロック41の溝部41a内に嵌った状態となっている。そのため、正確に包埋ブロックBをロール軸L2回りに傾斜させることができる。また、可動ロッド32の先端部も溝部41aの内壁に対して点接触しているので、接触抵抗が小さく、ステージ30をロール軸L2回りに円滑に傾斜させることができる。
【0083】
上記のように、2つの可動ロッド32、33をそれぞれ上下動させることで、ステージ30を2軸回りに傾斜させて包埋ブロックBの傾きを自在に調整することができる。そして、それぞれのパルスモータ48、62のパルス数を制御することで、2つの可動ロッド32、33の上下移動量を制御できるので、結果的にステージ30の2軸回りの傾き量を制御することができる。
【0084】
特に、従来の歯車を利用したものとは異なり、カム体49、63及び接触子50、64を有する従動体46、60を利用して、パルスモータ48、62の回転力を直線方向の力に変換して可動ロッド32、33を上下動させるので、歯部の噛合わせに起因するバックラッシの影響をなくしながら、滑らか且つ連続的に可動ロッド32、33を上下動変化させることができる。よって、パルス数とステージ30の傾き量とを精度良く対応付けながらステージ30を2軸回りに傾斜させることができる。
【0085】
更に、カム体49、63等を利用してパルスモータ48、62の回転力を直線方向の力に変換できるので、パルスモータ48、62の設置位置の自由度が向上するうえ、薄型化に貢献し易い。
なお、パルスモータ48、62としては、ハーモニックギヤタイプのものを用いることがより好ましい。
【0086】
次に、このように作用するチルトステージ10、20を具備する粗削り装置2及び本削り装置3を利用して、薄切片Mを作製する方法について説明する。
【0087】
はじめに、粗削り装置2により包埋ブロックBの粗削りを行って、生体試料Sの所望の観察面を面出しする粗削り工程を行う。
この工程は、まず粗削り装置2が具備するチルトステージ10のステージ30上に包埋ブロックBをセットした後、作業者が包埋ブロックBの生体試料Sの状態(サイズ、形状、姿勢等)を確認しながらステージ30を2軸回りに傾斜させて、包埋ブロックBを任意の角度に傾斜させる。そして、図2に示すように、移動機構13及びZステージ14を作動させて包埋ブロックBを薄切する。
そして、生体試料Sの状態に応じて包埋ブロックBの傾きをチルトステージ10で適宜調整しながら、薄切を繰り返し行って、生体試料Sの所望の観察面を表面に露出させる面出しを行う。この面出しが完了した時点で薄切工程が終了する。
【0088】
上記面出しが終了すると、チルトステージ10の制御部51は面出しされた際のステージ30の傾斜角度に対応したパルスモータ48、62のパルス数を、予め設定されている補正変換式で補正しながら再度傾斜角度に変換し、その再変換した傾斜角度を出力指令値として総合制御部5に出力する出力工程を行う。これにより、バックラッシ及び自身が有する固有の誤差に影響されずに、実際のステージ30の傾斜角度を出力指令値として出力できる。すると、総合制御部5は、この送られてきた出力指令値を記憶部71aに記憶させる。
【0089】
一方、粗削りが終了した後、包埋ブロックBを粗削り装置2のチルトステージ10から取り外し、本削り装置3が具備するチルトステージ20のステージ30上にセットする。すると、総合制御部5は、先ほど出力指令値として受け取り、記憶部71aに記憶していた傾斜角度を入力指令値として本削り装置3が具備するチルトステージ20の制御部51に出力する指示工程を行う。
【0090】
本削り装置3の制御部51は、入力指令値として受け取った傾斜角度を、予め設定されていた補正変換式で補正しながらパルスモータ48、62のパルス数に変換した後、変換したパルス数にしたがってパルスモータ48、62を駆動させ、ステージ30を2軸回りに回転傾斜させるステージ傾斜工程を行う。
【0091】
特に、入力指令値として入力されてきた傾斜角度を補正変換式で補正しながらパルス数に変換するので、このチルトステージ20自身が有する固有の誤差(粗削り装置2のチルトステージ10自身が有する誤差とは異なる誤差)の影響を排除したパルス数を得ることができる。そして、このパルス数に基づいてバックラッシの影響を受けることなくパルスモータ48、62を駆動させ、ステージ30を傾斜させるので、該ステージ30の傾斜角度を入力指令値として入力されてきた傾斜角度に精度良く一致させることができる。
【0092】
従って、本削り装置3が具備するチルトステージ20のステージ30を、粗削り装置2にて包埋ブロックBの面出しが終了した際のステージ30の傾斜角度に一致させることができる。つまり、本削り時において、粗削り時における包埋ブロックBの傾きを再現することができる。
【0093】
そして、上記ステージ傾斜工程が終了した後、本削り装置3にて、ステージ30の傾斜角度を維持したまま面出しされた包埋ブロックBを薄切して、薄切片Mを作製する薄切工程を行う。
具体的には、ステージ30の傾斜角度を維持したままZステージ24により薄切量を調整した後、移動機構23によりホルダ21を往復移動させる。これにより、面出しされた包埋ブロックBを均等の厚みで確実に薄切することができ、薄切回数や薄切時間を無駄にかけることなく高品質な薄切片Mを効率良く作製することができる。
【0094】
以上説明したように、本実施形態の薄切片作製システム1によれば、チルトステージリンクシステム4を備えているので、本削り装置3が具備するチルトステージ10のステージ30を、粗削り装置2が具備するチルトステージ20のステージ30の傾斜角度に一致させることができ、高品質な薄切片Mを効率良く作製することができる。
【0095】
なお、上記実施形態において、包埋ブロックBの管理番号をキーとして、粗削り装置2と本削り装置3と総合制御部5との間で出力指令値及び入力指令値のやり取りを行っても構わない。
【0096】
この場合には、粗削り装置2の制御部51が総合制御部5に出力指令値を出力する出力工程時に、包埋ブロックBの管理番号を関連付けた状態で出力する。そして、総合制御部5は、この管理番号が関連付けられた出力指令値を記憶部71aに記憶しておく。
一方、本削り装置3の制御部51は、面出しされた包埋ブロックBがセットされた後、このセットされた包埋ブロックBの管理番号を総合制御部5に問い合わせる確認工程を行う。総合制御部5は、問い合わせのあった管理番号に関連付けられた出力指令値を記憶部71a内から取り出し、問い合わせ先である本削り装置3の制御部51に入力指令値として出力する応答工程を行う。
【0097】
こうすることで、複数の包埋ブロックBをどのような順番で処理しようとしても、本削り装置3のステージ30の傾斜角度を、その包埋ブロックBが面出しされた際のステージ30の傾斜角度に一致させることができる。従って、いずれの包埋ブロックBに関しても、確実に面出しされた部分を均等の厚みで薄切でき、無駄な薄切回数、薄切時間をかけることなく高品質な薄切片Mを得ることができる。
【0098】
なお、本発明の技術範囲は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0099】
例えば、上記実施形態では、粗削り装置2及び本削り装置3をそれぞれ1つずつ有する薄切片作製システム1としたが、これに限定されるものではなく、それぞれ複数備えていても構わない。この際、粗削り装置2と本削り装置3との数は、同数であっても構わないし、異なっていても構わない。
【0100】
また、上記実施形態では、粗削り装置2が具備するチルトステージ10から出力された出力指令値を、総合制御部5が入力指令値として本削り装置3が具備するチルトステージ20に出力した場合を説明したが、例えば、再度粗削り装置2に出力しても構わない。
粗削り装置2によって面出しが終了した包埋ブロックBは、その後、本削り装置3にて本削りされるが、その際に、表面に露出した観察面の状況によっては再度粗削りを行って面出しをやり直したい場合がある。この場合には、粗削り装置2が具備するチルトステージ10に再度包埋ブロックBをセットし、包埋ブロックBの傾きを再現させる必要がある。このような場合、先ほど出力指令値として出力した傾斜角度を、再度入力指令値として受け取ることでステージ30の傾きを再現させることが可能であるので、再度の粗削りを直ちに行うことができ好ましい。
【符号の説明】
【0101】
B…包埋ブロック
S…生体試料
L1…ピッチ軸
L2…ロール軸
1…薄切片作製システム
2…粗削り装置
3…本削り装置
4…チルトステージリンクシステム
5…総合制御部
30…ステージ
31…軸受部(球面軸受部)
32、33…可動ロッド
34…コイルバネ(付勢部材)
35、36…ロッド可動手段
40a…ステージの載置面
46、60…従動体
48、62…パルスモータ
48a、62a…パルスモータの回転軸
49、63…カム体
50、64…接触子
51…制御部
71a…記憶部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体試料が包埋された包埋ブロックが載置されるステージと、
該ステージの載置面に平行で且つ互いに直交する2軸回りにそれぞれ回転可能にステージを支持する軸受部と、
前記ステージの下方に上下動可能に配置された2つの可動ロッドと、
前記ステージを付勢して、該ステージを前記可動ロッドの先端部に押し付ける付勢部材と、
前記可動ロッドを上下動させて前記ステージを前記2軸回りにそれぞれ回転傾斜させるロッド可動手段と、を備え、
前記ロッド可動手段は、
パルスモータの回転軸に連結されたカム体と、
前記可動ロッドの基端部を支持すると共に、前記カム体の周面に接触する接触子を介してカム体に連結され、該カム体の回転に伴って周期的に上下動させられる従動体と、
前記パルスモータの駆動を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記ステージが前記2軸回りに回転傾斜させられた際、その傾斜角度に対応した前記パルスモータのパルス数を、予め設定された補正変換式で補正しながら再度傾斜角度に変換した後、再変換した傾斜角度を出力指令値として出力し、
前記補正変換式は、前記カム体の回転に伴って周期的に上下動する前記従動体の実際の変位を、理論上の変位に近似させる近似式であることを特徴とするチルトステージ。
【請求項2】
請求項1に記載のチルトステージにおいて、
前記制御部は、入力指令値として入力されてきた傾斜角度を、前記補正変換式で補正しながら前記パルスモータのパルス数に変換した後、変換したパルス数にしたがって該パルスモータを駆動させることを特徴とするチルトステージ。
【請求項3】
生体試料が包埋された包埋ブロックが載置されるステージと、
該ステージの載置面に平行で且つ互いに直交する2軸回りにそれぞれ回転可能にステージを支持する軸受部と、
前記ステージの下方に上下動可能に配置された2つの可動ロッドと、
前記ステージを付勢して、該ステージを前記可動ロッドの先端部に押し付ける付勢部材と、
前記可動ロッドを上下動させて前記ステージを前記2軸回りにそれぞれ回転傾斜させるロッド可動手段と、を備え、
前記ロッド可動手段は、
パルスモータの回転軸に連結されたカム体と、
前記可動ロッドの基端部を支持すると共に、前記カム体の周面に接触する接触子を介してカム体に連結され、該カム体の回転に伴って周期的に上下動させられる従動体と、
前記パルスモータの駆動を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、入力指令値として入力されてきた傾斜角度を、予め設定された補正変換式で補正しながら前記パルスモータのパルス数に変換した後、変換したパルス数にしたがってパルスモータを駆動させ、
前記補正変換式は、前記カム体の回転に伴って周期的に上下動する前記従動体の実際の変位を、理論上の変位に近似させる近似式であることを特徴とするチルトステージ。
【請求項4】
請求項3に記載のチルトステージにおいて、
前記制御部は、前記ステージが前記2軸回りに回転傾斜させられた際、その傾斜角度に対応した前記パルスモータのパルス数を、前記補正変換式で補正しながら再度傾斜角度に変換した後、再変換した傾斜角度を出力指令値として出力することを特徴とするチルトステージ。
【請求項5】
請求項2又は4に記載のチルトステージを複数備え、
いずれかの前記チルトステージから出力されてきた前記出力指令値を記憶部に記憶すると共に、記憶した該出力指令値を前記入力指令値として他のチルトステージに出力する総合制御部を備えていることを特徴とするチルトステージリンクシステム。
【請求項6】
請求項5に記載のチルトステージリンクシステムにおいて、
前記制御部は、前記包埋ブロックの管理番号を前記出力指令値に関連付けた状態で出力し、
前記総合制御部は、前記管理番号に関連付けられた前記出力指令値を前記記憶部に記憶すると共に、前記チルトステージから前記包埋ブロックの管理番号の問い合わせがあったときに、該管理番号に関連付けて記憶していた出力指令値を問い合わせ先のチルトステージに前記入力指令値として出力することを特徴とするチルトステージリンクシステム。
【請求項7】
請求項5又は6に記載のチルトステージリンクシステムと、
複数の前記チルトステージのうちのいずれかのチルトステージを有し、前記生体試料の所望の観察面が表面に面出しされるまで前記包埋ブロックを薄切する粗削り装置と、
複数の前記チルトステージのうちの他のチルトステージを有し、面出しされた前記包埋ブロックの表面を薄切して薄切片を作製する本削り装置と、を備え、
前記粗削り装置の前記制御部は、前記出力指令値を前記総合制御部に出力し、
前記本削り装置の前記制御部は、前記総合制御部から前記入力指令値を受け取ることを特徴とする薄切片作製システム。
【請求項8】
請求項7に記載された薄切片作製システムにより前記薄切片を作製する薄切片作製方法であって、
前記粗削り装置が具備する前記チルトステージの前記ステージ上に前記包埋ブロックをセットした後、該包埋ブロックを前記2軸回りに回転傾斜させながら薄切を行って前記観察面を面出しする粗削り工程と、
前記粗削り装置の前記制御部が、前記面出しされた際の前記ステージの傾斜角度に対応した前記パルスモータのパルス数を、前記補正変換式で補正しながら再度傾斜角度に変換した後、再変換した傾斜角度を出力指令値として前記総合制御部に出力する出力工程と、
前記本削り装置が具備する前記チルトステージの前記ステージ上に面出しされた前記包埋ブロックがセットされた後、前記総合制御部が前記出力指令値として受け取った前記傾斜角度を入力指令値として前記本削り装置の前記制御部に出力する指示工程と、
前記本削り装置の前記制御部が、前記入力指令値として受け取った前記傾斜角度を、前記補正変換式で補正しながら前記パルスモータのパルス数に変換した後、変換したパルス数にしたがってパルスモータを駆動させて、前記ステージを前記2軸回りに回転傾斜させるステージ傾斜工程と、
前記本削り装置にて、前記ステージの傾斜角度を維持したまま面出しされた前記包埋ブロックを薄切して、前記薄切片を作製する薄切工程と、を備えていることを特徴とする薄切片作製方法。
【請求項9】
請求項8に記載された薄切片作製方法において、
前記出力工程の際、前記包埋ブロックの管理番号を前記出力指令値に関連付けた状態で出力し、
前記指示工程の際、
前記本削り装置の前記制御部が、面出しされた前記包埋ブロックがセットされた後、該包埋ブロックの管理番号を前記総合制御部に問い合わせる確認工程と、
前記総合制御部が、問い合わせのあった前記管理番号に関連付けられた前記出力指令値を、問い合わせ先の前記制御部に前記入力指令値として出力する応答工程と、を行うことを特徴とする薄切片作製方法。
【請求項1】
生体試料が包埋された包埋ブロックが載置されるステージと、
該ステージの載置面に平行で且つ互いに直交する2軸回りにそれぞれ回転可能にステージを支持する軸受部と、
前記ステージの下方に上下動可能に配置された2つの可動ロッドと、
前記ステージを付勢して、該ステージを前記可動ロッドの先端部に押し付ける付勢部材と、
前記可動ロッドを上下動させて前記ステージを前記2軸回りにそれぞれ回転傾斜させるロッド可動手段と、を備え、
前記ロッド可動手段は、
パルスモータの回転軸に連結されたカム体と、
前記可動ロッドの基端部を支持すると共に、前記カム体の周面に接触する接触子を介してカム体に連結され、該カム体の回転に伴って周期的に上下動させられる従動体と、
前記パルスモータの駆動を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記ステージが前記2軸回りに回転傾斜させられた際、その傾斜角度に対応した前記パルスモータのパルス数を、予め設定された補正変換式で補正しながら再度傾斜角度に変換した後、再変換した傾斜角度を出力指令値として出力し、
前記補正変換式は、前記カム体の回転に伴って周期的に上下動する前記従動体の実際の変位を、理論上の変位に近似させる近似式であることを特徴とするチルトステージ。
【請求項2】
請求項1に記載のチルトステージにおいて、
前記制御部は、入力指令値として入力されてきた傾斜角度を、前記補正変換式で補正しながら前記パルスモータのパルス数に変換した後、変換したパルス数にしたがって該パルスモータを駆動させることを特徴とするチルトステージ。
【請求項3】
生体試料が包埋された包埋ブロックが載置されるステージと、
該ステージの載置面に平行で且つ互いに直交する2軸回りにそれぞれ回転可能にステージを支持する軸受部と、
前記ステージの下方に上下動可能に配置された2つの可動ロッドと、
前記ステージを付勢して、該ステージを前記可動ロッドの先端部に押し付ける付勢部材と、
前記可動ロッドを上下動させて前記ステージを前記2軸回りにそれぞれ回転傾斜させるロッド可動手段と、を備え、
前記ロッド可動手段は、
パルスモータの回転軸に連結されたカム体と、
前記可動ロッドの基端部を支持すると共に、前記カム体の周面に接触する接触子を介してカム体に連結され、該カム体の回転に伴って周期的に上下動させられる従動体と、
前記パルスモータの駆動を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、入力指令値として入力されてきた傾斜角度を、予め設定された補正変換式で補正しながら前記パルスモータのパルス数に変換した後、変換したパルス数にしたがってパルスモータを駆動させ、
前記補正変換式は、前記カム体の回転に伴って周期的に上下動する前記従動体の実際の変位を、理論上の変位に近似させる近似式であることを特徴とするチルトステージ。
【請求項4】
請求項3に記載のチルトステージにおいて、
前記制御部は、前記ステージが前記2軸回りに回転傾斜させられた際、その傾斜角度に対応した前記パルスモータのパルス数を、前記補正変換式で補正しながら再度傾斜角度に変換した後、再変換した傾斜角度を出力指令値として出力することを特徴とするチルトステージ。
【請求項5】
請求項2又は4に記載のチルトステージを複数備え、
いずれかの前記チルトステージから出力されてきた前記出力指令値を記憶部に記憶すると共に、記憶した該出力指令値を前記入力指令値として他のチルトステージに出力する総合制御部を備えていることを特徴とするチルトステージリンクシステム。
【請求項6】
請求項5に記載のチルトステージリンクシステムにおいて、
前記制御部は、前記包埋ブロックの管理番号を前記出力指令値に関連付けた状態で出力し、
前記総合制御部は、前記管理番号に関連付けられた前記出力指令値を前記記憶部に記憶すると共に、前記チルトステージから前記包埋ブロックの管理番号の問い合わせがあったときに、該管理番号に関連付けて記憶していた出力指令値を問い合わせ先のチルトステージに前記入力指令値として出力することを特徴とするチルトステージリンクシステム。
【請求項7】
請求項5又は6に記載のチルトステージリンクシステムと、
複数の前記チルトステージのうちのいずれかのチルトステージを有し、前記生体試料の所望の観察面が表面に面出しされるまで前記包埋ブロックを薄切する粗削り装置と、
複数の前記チルトステージのうちの他のチルトステージを有し、面出しされた前記包埋ブロックの表面を薄切して薄切片を作製する本削り装置と、を備え、
前記粗削り装置の前記制御部は、前記出力指令値を前記総合制御部に出力し、
前記本削り装置の前記制御部は、前記総合制御部から前記入力指令値を受け取ることを特徴とする薄切片作製システム。
【請求項8】
請求項7に記載された薄切片作製システムにより前記薄切片を作製する薄切片作製方法であって、
前記粗削り装置が具備する前記チルトステージの前記ステージ上に前記包埋ブロックをセットした後、該包埋ブロックを前記2軸回りに回転傾斜させながら薄切を行って前記観察面を面出しする粗削り工程と、
前記粗削り装置の前記制御部が、前記面出しされた際の前記ステージの傾斜角度に対応した前記パルスモータのパルス数を、前記補正変換式で補正しながら再度傾斜角度に変換した後、再変換した傾斜角度を出力指令値として前記総合制御部に出力する出力工程と、
前記本削り装置が具備する前記チルトステージの前記ステージ上に面出しされた前記包埋ブロックがセットされた後、前記総合制御部が前記出力指令値として受け取った前記傾斜角度を入力指令値として前記本削り装置の前記制御部に出力する指示工程と、
前記本削り装置の前記制御部が、前記入力指令値として受け取った前記傾斜角度を、前記補正変換式で補正しながら前記パルスモータのパルス数に変換した後、変換したパルス数にしたがってパルスモータを駆動させて、前記ステージを前記2軸回りに回転傾斜させるステージ傾斜工程と、
前記本削り装置にて、前記ステージの傾斜角度を維持したまま面出しされた前記包埋ブロックを薄切して、前記薄切片を作製する薄切工程と、を備えていることを特徴とする薄切片作製方法。
【請求項9】
請求項8に記載された薄切片作製方法において、
前記出力工程の際、前記包埋ブロックの管理番号を前記出力指令値に関連付けた状態で出力し、
前記指示工程の際、
前記本削り装置の前記制御部が、面出しされた前記包埋ブロックがセットされた後、該包埋ブロックの管理番号を前記総合制御部に問い合わせる確認工程と、
前記総合制御部が、問い合わせのあった前記管理番号に関連付けられた前記出力指令値を、問い合わせ先の前記制御部に前記入力指令値として出力する応答工程と、を行うことを特徴とする薄切片作製方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−73157(P2012−73157A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−219007(P2010−219007)
【出願日】平成22年9月29日(2010.9.29)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月29日(2010.9.29)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]