説明

チロシナーゼ活性阻害剤及び顔面血流改善剤

安全性に優れたチロシナーゼ活性阻害剤、顔面血流改善剤ならびにこれらを有効成分として含有する医薬品組成物、食品組成物又は化粧料。
植物原料などから濃縮あるいは抽出して得たアントシアンを含有してなるチロシナーゼ活性阻害剤、顔面血流改善剤ならびにチロシナーゼ活性阻害作用と顔面血流改善作用を併せ持つ医薬品組成物、食品組成物又は化粧料を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アントシアンを含有するチロシナーゼ活性阻害剤又は顔面血流改善剤、及びアントシアンを有効成分として含有する医薬品組成物、食品用組成物又は化粧料に関するものである。本発明の組成物はチロシナーゼ活性阻害効果と顔面血流改善効果を併せ持ち、かつ安全性に優れたものである。
【背景技術】
【0002】
女性にとってしみ、そばかす、くまは、しわ、たるみなどと並んで、美容上の大きな悩みの一つである。ところで、皮膚の色は4種類の色素(メラニン、酸化ヘモグロビン、還元ヘモグロビン、カロチン)と光散乱現象によって決定されている。なかでもメラニンは、ホルモンの異常分泌、紫外線や炎症性の刺激などにより、表皮色素細胞内メラニン産生情報伝達経路が活性化し、メラニン産生主要酵素であるチロシナーゼの産生、活性発現が亢進した結果、メラニンが表皮に過剰に沈着し、しみ、そばかすが出現する。このようなしみ、そばかすを防ぐ手段として、従来からメラニン産生主要酵素であるチロシナーゼの活性を阻害する物質が用いられ、現在までに、ビタミンC誘導体、プラセンタエキス、アルブチン、コウジ酸、エラグ酸、タンニン酸、甘草エキス、プラセンタエキスなどの多数のメラニン生成抑制剤が開発されている[Maeda, K:FRAGRANCE JOURNAL,1997年9月号:10-18](非特許文献1)。また、特開平5−201846号公報(特許文献1)にあるようにクランベリー由来のカフェー酸配糖体を配合した美白料なども報告されているが、十分な効果が得られていないのが現状である。
【0003】
しかしながら、近年コウジ酸などは食品への使用が禁止されるなど食品では可食性の問題があり、ビタミンCなどごく一部の物質が実用化されているに過ぎず、効果の面でも未だ満足できるものではない。
【0004】
一方、くまは顔面の血流不全が一因となっており、還元ヘモグロビン量の増加により青色又は黒色のくまが発生することが知られている。また、この顔面の血流不全はしみ、そばかすの一因にもなっている。しかし、血流改善効果を作用機作とした、しみ、そばかすの改善作用を持つ物質は、未だ見いだされていない。
【0005】
同様にくすみも顔面の血流の不全を原因とした還元ヘモグロビン量の増加による顔面の黒色化とチロシナーゼ活性が関与する黒色メラニンの生成によるふたつの要因が知られている。
【0006】
このような状況下、しみ、そばかす、くま及びくすみなどの重要な作用点であるチロシナーゼの活性阻害効果と顔面の血流改善効果を有し、且つ安全性や味や食感、コストの観点からも満足のいく組成物が求められている。
【特許文献1】特開平5−201846号公報
【非特許文献1】Maeda, K:FRAGRANCE JOURNAL,1997年9月号:10-18
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のようにアスコルビン酸類、ハイドロキノン誘導体、コウジ酸類、プラセンタエキスなどはチロシナーゼ活性阻害効果が弱く、安全性も十分とはいえなかったことから、近年、植物抽出液中に含有される各種の活性成分が注目されている。多くの植物に含有されるポリフェノールの抗酸化作用を始めとして、抗腫瘍作用など様々な作用が報告されている。しかし、チロシナーゼ活性阻害効果を有する植物抽出液はバラ科(Rosaceae)バラ属(Rosa)に含まれる植物として、従来金桜子、営実などが知られているが、チロシナーゼ活性阻害効果は満足できるものではなかった。もちろん、血流改善作用は見いだされていなかった。
【0008】
一方、血流改善作用を持つ物質として、ビタミンE、キトサン、イチョウ葉、サフラン抽出エキスなどがあげられるが、これらの物質はメラニン産生阻害を得ることは困難であった。本発明者らは上記事情に鑑み鋭意研究を重ねた結果、アントシアンにチロシナーゼ活性阻害効果及び顔面の血流改善効果を併せ持つことを見出し、本発明を完成するに至った。しかも、アントシアンによる顔面の血流改善効果は経口摂取15分以内に効果を発揮し、即効性を有するものであることが判明した。
【0009】
本発明の目的は、アントシアンを含有するチロシナーゼ活性阻害剤又は顔面血流改善剤、及びアントシアンを有効成分として含有する医薬品組成物、食品用組成物又は化粧料を提供することにある。本発明の組成物はチロシナーゼ活性阻害効果と顔面血流改善効果を併せ持ち、かつ安全性に優れたものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を達成するために鋭意研究を重ねた結果、アントシアンがチロシナーゼ活性阻害効果と顔面血流改善効果の双方を有することを見いだし、これを医薬品、食品などに配合して摂取することにより相乗的に効果を発揮することを見いだし、本発明を完成させるに至った。
【0011】
本発明の化合物は好ましくはポリフェノールの一種であるアントシアンである。主に下記の構造式に示されるような骨格を含む化合物の総称をアントシアンと呼ぶが、アグリコンのみのものを特にアントシアニジン、配糖体として糖が結合したものを特にアントシアニンと呼ぶ。アントシアニジンには、下記のように側鎖によりデルフィニジン、シアニジン、マルビジン、ぺラルゴニジン、ペオニジン、ペツニジンがある。例えば、グルコースが配糖体として結合しているものはアントシアニジングルコシドと呼ぶことも可能である。
【化1】

【0012】
[式中、R及びRは、同一又は異なって水素原子、水酸基又はメトキシ基を表し、Rは水素原子又はGlyを表し、Glyは、グルコース、ルチノース、アラビノース、ガラクトース、ソフォロースなどの糖類基を表す。]
アントシアンは自然界に幅広く存在し、主に天然系色素として食品、あるいはその機能性から欧州では、医薬品、医薬部外品、化粧品などに幅広く使用されている。例えば特公昭59-53883号公報に記載されるような瘢痕形成剤としての利用、あるいは、特開平3-81220号公報に記載されるようなブルーベリー由来のアントシアニンを用いた末梢血管の疾病治療について価値ある薬理学的性質が見出されている。昨今日本国内でもアントシアンの色素以外の利用法としてアントシアンの機能性に注目が集まってきている。
【0013】
特に、このデルフィニジン-3-グルコシド(以下D3Gと約す)、デルフィニジン-3-ルチノシド(以下D3Rと約す)及びシアニジン-3-グルコシド(以下C3Gと約す)は、対照薬として比較されるコウジ酸、アルブチンなどと同等のチロシナーゼ阻害活性を有することを発明者らは見出し、美肌効果や関与する紅班・黒班などの治療及び予防に有効である。同時に、本発明のアントシアン化合物は経口摂取すると15分以内に顔面の血流量を増大させる効果があることを同時に見出した。
【0014】
従って本発明は、アントシアンを含有するチロシナーゼ活性阻害剤又は顔面血流改善剤、及びアントシアンを有効成分として含有する医薬品組成物、食品用組成物又は化粧料を提供するものである。
【0015】
本明細書は本願の優先権の基礎である日本国特許出願2003-371080号の明細書および/または図面に記載される内容を包含する。
【発明の効果】
【0016】
以上詳述したように、本発明によれば、優れたチロシナーゼ活性阻害効果及び顔面血流改善効果を併せ持ち、安全性の高い、医薬品組成物、食品組成物又は化粧料が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の組成物を投与した場合の血流量の変化を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明について詳述する。本発明のアントシアンを有効成分として含有する医薬品組成物、食品組成物又は化粧料は、チロシナーゼ阻害活性効果及び/又は顔面血流改善効果を併せ持つことから、これらの組成物を用いることにより、有用な美肌効果を発揮できる。
【0019】
本発明に用い得るアントシアンとしては、紫サツマイモ、赤キャベツ、エルダーベリー、ブドウ果汁あるいは果皮、ブドウ果皮、紫トウモロコシ、赤ダイコン、シソ、赤米、カシス、カウベリー、グースベリー、クランベリー、サーモンベリー、スィムブルーベリー、ストロベリー、ダークスィートチェリー、チェリー、ハイビスカス、ハクルベリー、ブラックベリー、ブルーベリー、プラム、ホワートルベリー、ボイセンベリー、マルベリー、紫イモ、紫ヤマイモ、ラズベリー、レッドカーラント、ローガンベリーなどアントシアンを多く含む物から抽出されるアントシアンを挙げることができる。例えば、発明者らが以前に出願した(WO02/22847)デルフィニジン-3-グルコシド、デルフィニジン-3-ルチノシド及びシアニジン-3-グルコシドのように結晶化したアントシアニンであってよい。例えば本願発明者がすでに開示している(WO01/01798)ように植物体などから抽出した化合物を用いることができる。アントシアンの原料が高いことから、この中でもベリー類から抽出されることが望ましい。また、例えば、本発明者らが開示している(WO02/22847)デルフィニジン及びシアニジンの-3-グルコシド及びルチノシドのように結晶化したアントシアニンも望ましい。本発明で用いるアントシアニン及びその結晶は、WO01/01798及びWO02/22847の記載に従って得ることができる。本発明のアントシアンの一般式は上記の通りであり、アグリコン部分は、デルフィニジン、シアニジン、マルビジン、ぺラルゴニジン、ペオニジン、ペツニジンのいずれのものも用い得るが、デルフィニジン又はシアニジンが望ましい。また、糖部分はグルコース、ルチノース、アラビノース、ガラクトース、ソフォロースなどいずれも用いることができ、又は糖が結合しないものを用いることもできる。また、本発明者らが以前に出願しているアントシアンを含む食品用組成物(WO01/01798)を本発明の組成物として用いることもできる。
【0020】
以前の研究において、この化合物が、非毒性であることが示され、経口摂取で血中及び皮膚中に存在することが示されるため、経口的に、非経口的に投与や摂取することができる。
【0021】
原料としては、上記に記載のような植物原料が望ましく、生果実、乾燥果実、果実破砕物、ピューレ、生果汁、濃縮果汁などを使用することが好ましい。また、アントシアンの製造法としては、上記原料を、膜濃縮あるいは抽出することが好ましい。膜濃縮を行う際は、事前に圧搾濾過が必要であり、その前に濾過物の粘性を低下させるためペクチン不活性化処理することが好ましい。抽出する場合は、水、1,3−ブチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ジグリセリンなどの多価アルコール、エタノール、イソプロピルアルコール、プロピルアルコールなどの低級アルコール、アセトンなどの溶媒、それらの混合溶媒、好ましくは水、多価アルコール、低級アルコール、それらの混合溶媒、さらに好ましくは、温水、熱水などで抽出して得られる。該抽出物の形態としては、溶媒を含む抽出液、溶媒除去物などが挙げられる。しかし本発明では、アントシアンとして果汁の膜濃縮物を用いることが原料の製造が容易であり経済的であるので好ましい。アントシアンの濃度が高いほど加工が容易になるため望ましい。生果実、圧搾した果汁状態、あるいは乾燥果実の状態でもアントシアンとして使用することができるが、使用性、製剤化などの点から乾燥粉末あるいは溶媒抽出物として用いることが好ましい。本発明で用いるアントシアン濃縮物又は抽出物の精製程度としては、精製物中のアントシアンの含有量が高いものが望ましい。少なくとも1%以上、好ましくは5%以上のアントシアンを含むものが望ましい。アントシアンは皮膚に対する安全性が高く、かつ細胞毒性が低い特徴がある。このようにして得たアントシアン含有組成物は、安全性が高く、優れたチロシナーゼ活性阻害効果及び顔面血流改善効果を有する。
【0022】
本発明のアントシアンを有効成分として含有する医薬品組成物を用いる場合は、その剤型に応じて異なるが、通常全組成物中アントシアンが0.1〜50重量%、好ましくはアントシアンが0.1〜20重量%程度である。投与量は患者の年齢、体重、性別、疾患の相違、症状の程度などを考慮して、個々の場合に応じて適宜決定されるが、通常成人1日当りアントシアンが1〜1000mg、好ましくは1〜200mgであり、これを1日1回又は数回に分けて投与する。
【0023】
本発明の組成物は、メラニン産生主要酵素であるチロシナーゼ阻害活性を有するため、メラニンの産生を抑制し、皮膚にできるしみ、そばかすを予防又は軽減することができる。また、本発明の組成物は、血流を改善する作用を有するため、顔面の血流を改善し、血流不全により出現するくまやくすみを予防又は軽減することができる。
【0024】
本発明の組成物以外に、従来効果を有することが知られている美白剤を併用すると、単独で配合するよりも美肌効果が相乗的に高まるので好ましい。併用する美白剤としては、例えば、アルブチン、エラグ酸、プラセンタエキス、ビタミンC及びその誘導体、ルシノール、グルタチオン、リノール酸、リノレン酸、乳酸、トラネキサム酸、ビフェニル化合物、パンテテイン−S−スルホン酸カルシウム、イオウ、油溶性甘草エキス(グラブリジン)、ラズベリーケトングルコシド、ウワウルシエキス、甘草エキス、アセロラエキス、アルモンドエキス、アロエエキス、イチョウエキス、イブキトラノオエキス、エイジツエキス、オウゴンエキス、オウレンエキス、オトギリソウエキス、オドリコソウエキス、海藻エキス、カミツレエキス、カッコン(クズ)エキス、キハダエキス、クチナシエキス、クララ(クジン)エキス、クロレラエキス、黒砂糖抽出物、クワ(ソウハクヒ)エキス、ゲンチアナエキス、紅茶エキス、ゴバイシエキス、コムギエキス、コメ胚芽油、小麦胚芽エキス、コメヌカエキス、サイシンエキス、サンシンエキス、サンショウエキス、シソエキス、シャクヤクエキス、スイカズラエキス、セージエキス、センキュウエキス、ダイズエキス、チャエキス(葉又は実)、トウキエキス、トウキンセンカエキス、トウニンエキス、ドクダミエキス、ニンニクエキス、ハマメリス抽出液、ビワエキス、ベニバナエキス、ボタンエキス、マツホドエキス、マロニエエキス、メリッサエキス、ヨクイニン(ハトムギ)エキス、ユキノシタエキス、ワレモコウ(ジュ)エキス、ヨモギエキス、火棘エキス、ハイビスカスエキスなどが挙げられる。この中で、アスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム、アスコルビン酸リン酸エステルマグネシウム、アスコルビン酸ステアリン酸エステル、アスコルビン酸パルミチン酸エステル、アスコルビン酸ジパルミチン酸エステル、アスコルビン酸クルコシドなどのビタミンC及びその誘導体、乳酸、プラセンタエキス、油溶性甘草エキス、アロエエキス、スイカズラエキス、ハイビスカスエキス、ヨクイニンエキス、チャエキス、ユキノシタエキスが汎用性や安定性に富むことから好ましい。その中でも、特にビタミンC及びその誘導体、プラセンタエキスが好ましい。
【0025】
本発明の組成物は、抗炎症剤を併用することによって、紫外線によるシミ、ソバカス、クスミなどの色素沈着を一層改善し、防止する効果が得られるので、抗炎症剤を併用することが好ましい。抗炎症剤としては、グリルリチン酸、グリチルレチン酸及びそれらの塩又はそれらのエステル、甘草エキス、ウコンエキス、オウゴンエキス、オオムギエキス、シャクヤクエキス、シラカバ樹液、モモの葉エキス、アラントイン、ε−アミノカプロン酸、インドメタシン、グアイアズレン、塩化リゾチーム、ヒドロコルチゾン、パンテノール及びその誘導体から選ばれる1種又は2種以上である。
【0026】
上記薬効成分としては、従来、医薬品、医薬部外品、化粧品、衛生材料、雑貨などで使用されているものであれば特に限定されるものではなく、それらの中でチロシナーゼ阻害効果や抗炎症効果を有するものは、本発明の他のチロシナーゼ阻害剤や抗炎症剤として使用できる。薬効成分の例としては、アシタバエキス、アボガドエキス、アマチャエキス、アルテアエキス、アルニカエキス、アンズエキス、ウイキョウエキス、エチナシ葉エキス、オウバクエキス、オランダカラシエキス、オレンジエキス、海水乾燥物、加水分解エラスチン、加水分解シルク、カモミラエキス、カロットエキス、カワラヨモギエキス、カルカデエキス、キウイエキス、キナエキス、キューカンバーエキス、グアノシン、クマザサエキス、クルミエキス、グレープフルーツエキス、クレマティスエキス、酵母エキス、ゴボウエキス、コンフリーエキス、コラーゲン、サイコエキス、サイタイ抽出液、サルビアエキス、サボンソウエキス、ササエキス、サンザシエキス、シイタケエキス、ジオウエキス、シコンエキス、シナノキエキス、シモツケソウエキス、ショウブ根エキス、シラカバエキス、スギナエキス、セイヨウキズタエキス、セイヨウサンザシエキス、セイヨウニワトコエキス、セイヨウノコギリソウエキス、セイヨウハッカエキス、ゼニアオイエキス、センブリエキス、タイソウエキス、タイムエキス、チョウジエキス、チガヤエキス、チンピエキス、トウヒエキス、トマトエキス、納豆エキス、ニンジンエキス、ノバラエキス、バクモンドウエキス、パセリエキス、蜂蜜、パリエタリアエキス、ヒキオコシエキス、ビサボロール、フキタンポポエキス、フキノトウエキス、ブクリョウエキス、ブッチャーブルームエキス、ブドウエキス、プロポリス、ヘチマエキス、ペパーミントエキス、ボダイジュエキス、ホップエキス、マツエキス、ミズバショウエキス、ムクロジエキス、ヤグルマギクエキス、ユーカリエキス、ユズエキス、ラベンダーエキス、リンゴエキス、レタスエキス、レモンエキス、レンゲソウエキス、ローズエキス、ローズマリーエキス、ローマカミツレエキス、ローヤルゼリーエキスなどを挙げることができる。
【0027】
また、ヒアルロン酸ナトリウム、コンドロイチン硫酸ナトリウムなどのムコ多糖類、デオキシリボ核酸、コラーゲン、エラスチン、キチン、キトサン、加水分解卵殻膜などの生体高分子;アミノ酸、尿素、ピロリドンカルボン酸ナトリウム、ベタイン、ホエイ、トリメチルグリシンなどの保湿成分;スフィンゴ脂質、セラミド、コレステロール、コレステロール誘導体、リン脂質などの油性成分;ビタミンA,B2,B6,D,K,ビオチン、ニコチン酸アミドなどのビタミン類;ジイソプロピルアミンジクロロアセテート、4−アミノメチルシクロヘキサンカルボン酸などの活性成分;レチノール、レチノール誘導体などの創傷治癒剤;セファランチン、トウガラシチンキ、ヒノキチオール、ヨウ化ニンニクエキス、塩酸ピリドキシン、ニコチン酸、ニコチン酸誘導体、イソプロピルメチルフェノール、エストラジオール、エチニルエステラジオール、塩化カプロニウム、塩化ベンザルコニウム、塩酸ジフェンヒドラミン、タカナール、カンフル、サリチル酸、ノニル酸バニリルアミド、ノナン酸バニリルアミド、ピロクトンオラミン、ペンタデカン酸グリセリル、l−メントール、メントールのピロリドンカルボン酸塩、モノニトログアヤコール、レゾルシン、γ−アミノ酪酸、塩化ベンゼトニウム、塩酸メキシレチン、オーキシン、女性ホルモン、カンタリスチンキ、シクロスポリン、ヒドロコルチゾン、モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、ハッカ油、鎮痛剤、抗菌性物質なども挙げられる。
【0028】
本発明のチロシナーゼ阻害剤及び顔面血流改善剤を含有する組成物の食品素材としての利用は発明者らが以前に出願(WO02/22847)した物質であるデルフィニジン-3-グルコシド、デルフィニジン-3-ルチノシド及びシアニジン-3-グルコシド、又は、発明者らが以前に出願しているアントシアンを含む食品用組成物及び飲食品(WO01/01798)を用いることによって、しみ、そばかす、くま及びくすみなどを予防又は改善する機能性食品を製造することが可能である。本発明の組成物は、しみ、そばかすの予防や改善に適した特定保健用食品の製造などに用いることができる。すなわち、本発明の組成物は、固体状食品、ゼリー状食品、液状食品、カプセル状食品など様々な形態の食品に添加することができる。ここで、固体状食品としては、パン生地;せんべい、ビスケット、クッキーなどの焼き菓子用生地;そば、うどんなどの麺類;かまぼこ、ちくわなどの魚肉製品;ハム、ソーセージなどの畜肉製品;粉ミルクなどが挙げられる。また、ゼリー状食品としては、フルーツゼリー;コーヒーゼリーなどが挙げられる。さらに、液状食品としては、茶;コーヒー;紅茶;発酵乳;乳酸菌飲料などが挙げられる。カプセル状食品としては、ハードカプセル、ソフトカプセルなどがあげられる。
【0029】
本発明の組成物を、上記食品に添加する場合、添加量としては、食品全体に対して本発明の化合物の含有量が0.01から10重量%となるように配合することができる。効果が期待できる摂取量は年齢、体重、性別、症状の程度などを考慮して、個々の場合に応じて適宜決定されるが、通常成人1日当りアントシアンが1〜1000mg、好ましくは10〜200mgであり、これを1日1回又は数回に分けて摂取する。
【0030】
また、本発明はチロシナーゼ阻害活性と顔面血流改善効果を併せ持つことから、本発明の組成物を用いることにより美肌効果の発揮も期待される。ここで、美肌とは、顔面のしみ、そばかす、くま、くすみを軽減又は予防することをいう。上記のアントシアンを含む医薬組成物、食品組成物又は化粧料を顔面にしみ、そばかす、くま及びくすみのいずれか1つ以上が出現している被験体に適用することができる。
【実施例】
【0031】
次に、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの実施例によってなんら限定されるものでない。
【0032】
[実施例1] アントシアンを含む組成物の調製
市販のカシス濃縮果汁3Kg(固形分当たりのアントシアン純度2.8%)を水で希釈し、Bx.10(固形分濃度10%)の濃度に調製した。この希釈果汁を濾紙で濾過して異物を除去した後、マイナス荷電型逆浸透膜 日東電工社製NTR-7410をセットした装置で膜分離を実施した。濃縮液が循環しなくなるまで分離を実施し、再度水を添加して希釈した後、再度分離を継続した。濃縮液が循環しなくなった段階で分離を終了した。濃縮液をスプレードライして粉末状のアントシアン高含有組成物を得た。本組成物のアントシアン純度は固形分当たり14.1%であった。
【0033】
[実施例2] 結晶アントシアニンの調製
さらに本組成物から、アントシアニンを結晶として調製した。
【0034】
実施例1に記載の方法に準じて得られた粉末40g(アントシアニン各成分の内訳はD3G 12.5%D3R 47.9%C3G 4.1%, C3R 35.5%)をODSシリカゲルカラムを用い0.1%TFAを含む9%アセトニトリル水溶液で分画した。
【0035】
得られたD3G画分は1.51gとC3G画分0.98g、C3R画分162mg、D3R画分231mgであった。
【0036】
この濃縮物を5%塩化水素/メタノール溶液で溶解後、5℃で24時間静置し結晶化を行い、結晶性D3G塩酸塩1.06gと結晶性C3G塩酸塩0.59g、結晶性C3R塩酸塩58mg、結晶性D3R塩酸塩88mgを調製した。
[試験例1] チロシナーゼ活性阻害試験
被験物質は実施例1で調製した組成物と実施例2で調製した4種の結晶アントシアニンを用いた。
【0037】
96ウェルプレートにマッシュルーム由来のチロシナーゼ(125U/ml、67mmol/Lリン酸緩衝液に溶解、シグマ社製)40μl、基質である3,4-ジハイドロキシフェニルアラニン(L-dopa、5mmol/L、67mmol/Lリン酸緩衝液に溶解、シグマ社製)120μl、阻害剤溶液40μlを加え、37℃で30分間放置した後、dopachrome生成量を490nmの吸光度で測定した。阻害活性は次の式から求められる阻害率で表した。
【0038】
阻害率(%)=[(A−B)−(C−D)]/(A−B)×100
A:対照溶液の490nmにおける吸光度
B:対照溶液blankの490nmにおける吸光度
C:アントシアニン溶液の490nmにおける吸光度
D:アントシアニン溶液blankの490nmにおける吸光度
結果を表1に示す。実施例1の組成物は、アルブチンよりもチロシナーゼ阻害活性が高いことがわかった。
【0039】
また実施例2の結晶アントシアニンは、L-システイン、コウジ酸、グルタチオンよりもチロシナーゼ阻害活性が高いことがわかった。
【表1】

【0040】
[試験例2] 顔面血流改善試験
被験物質は実施例1で調製した組成物を用いた。
【0041】
顔面血流量はレーザードップラー血流計を用い、頬部にプローブを設置し測定した。被験者は25〜38歳の男女6名とし、室温23±1℃、湿度45±5%の条件下で30分馴化後、摂取前の測定を行った。実施例1の組成物465mg、又は対照群として等熱量に相当するショ糖を摂取し、15、30、60分後の顔面皮膚血流量を測定した。
【0042】
結果を図1に示す。実施例1の組成物を摂取した場合、摂取15分後から頬部の血流量が増加し、即効性を持って顔面の血流量を改善したことがわかる。よって、実施例1の組成物を摂取することにより、しみ、そばかす、くま及びくすみなどが改善されることが期待できる。
【0043】
本明細書で引用した全ての刊行物、特許および特許出願をそのまま参考として本明細書にとり入れるものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アントシアンを含有してなるチロシナーゼ活性阻害剤。
【請求項2】
アントシアンがデルフィニジンの配糖体及び/又はシアニジンの配糖体である請求項1記載のチロシナーゼ活性阻害剤。
【請求項3】
アントシアンを含有してなる顔面血流改善剤。
【請求項4】
アントシアンがデルフィニジンの配糖体及び/又はシアニジンの配糖体である請求項3記載の顔面血流改善剤。
【請求項5】
アントシアンをチロシナーゼ活性阻害剤及び/又は顔面血流改善剤として含有することを特徴とする医薬組成物。
【請求項6】
アントシアンがデルフィニジンの配糖体及び/又はシアニジンの配糖体である請求項5記載の医薬組成物。
【請求項7】
アントシアンをチロシナーゼ活性阻害剤及び/又は顔面血流改善剤として含有することを特徴とする食品組成物。
【請求項8】
アントシアンがデルフィニジンの配糖体及び/又はシアニジンの配糖体である請求項7記載の食品組成物。
【請求項9】
アントシアンをチロシナーゼ活性阻害剤及び/又は顔面血流改善剤として含有することを特徴とする化粧料。
【請求項10】
アントシアンがデルフィニジンの配糖体及び/又はシアニジンの配糖体である請求項9記載の化粧料。
【請求項11】
皮膚のしみ、そばかす、くま及びくすみを改善するための、請求項5〜10のいずれか1項に記載の組成物又は化粧料。

【図1】
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【国際公開番号】WO2005/042555
【国際公開日】平成17年5月12日(2005.5.12)
【発行日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−515111(P2005−515111)
【国際出願番号】PCT/JP2004/015470
【国際出願日】平成16年10月20日(2004.10.20)
【出願人】(000006091)明治製菓株式会社 (180)
【Fターム(参考)】