説明

チロフィバンの経皮用医薬製剤および投与

本発明は、有効な用量の抗血栓剤、例えば、チロフィバン、またはその薬学的に許容される塩を含む力価決定可能な経皮用薬物送達システムを提供する。送達される薬物の用量は、適用されるパッチの寸法に比例し、60〜85%の血小板抑制を達成する。当該システムは、患者ごとの治療が可能であり、且つ患者個人に合わせた治療が可能である。また、血小板抑制が望まれる様々な疾患の治療のための方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【関連出願に対する相互参照】
【0001】
本願は、表題「血小板凝集を阻害するための方法」の下で2009年3月18日に提出された米国特許出願番号61/161,132、表題「チロフィバンの経皮用医薬製剤および投与」の下で2009年9月4日に提出された米国特許出願番号61/240,021および表題「チロフィバン経皮用医薬製剤および投与」の下で2009年11月10日に提出された米国特許出願番号61/259,683の利益および優先権を請求するものである。
【0002】
上記の特許出願の内容は、引用によってこの詳細な説明に明確に組み込まれる。
【発明の分野】
【0003】
本発明は、抗血栓剤、例えば、チロフィバン、の経皮的送達および抗血栓剤の経皮的送達により不安定狭心症、急性冠不全症候群、心筋梗塞および他の疾患を治療するための方法に関する。
【発明の背景】
【0004】
糖タンパク質複合体GP IIb/IIIaの抑制剤は、アブシキシマブ、チロフィバンおよびエプチフィバチド(eptifibatide)を含み、病院環境において血小板凝集を急性に抑制するために現在では静脈内に使用される。血小板凝集の抑制は、心臓に対する障害のような有害事象の発生の低下または重症度の低下を齎す。これらの抑制剤の典型的な使用は、適切な血小板抑制を維持する時間または日数の期間に亘り、初期により大きい負荷のボーラス注入とそれに続くよりゆっくりと維持される注入とを含む。
【0005】
N−ブチルスルホニル−O−[4−(4−ピペリジニル)ブチル]−L−チロシン一塩酸塩一水化物と化学的に記述されるチロフィバン塩酸塩一水化物(アグラスタット、Aggrastat(登録商標))は、血小板糖タンパク質(GP)IIb/IIIa受容体の代表的な非ペプチド可逆的アンタゴニストである。それは、ヘビ毒に由来する非ペプチド模倣薬である。GP IIb/IIIa抑制剤は血小板凝集に対する最後の共通経路、GP IIb/IIIa受容体に対するフィブリノーゲンの結合を遮断するために、これらの薬剤は、既存の血栓を分解し、新たな血小板凝集の形成を防止して、血小板凝集の強力な(>80%)抑制を提供できる。
【0006】
チロフィバンは、医学的に管理されるべき患者またはアテローム切除術若しくは経皮経管冠形成(PTCA)を受ける患者を含む、急性冠不全症候群の治療について承認されている。チロフィバンの投与は、死に結びつく終点、新たな心筋梗塞、抵抗性虚血または心臓手術の繰り返しを減少できる。
【0007】
チロフィバンは、現在、30分間0.4mcg/kg/分の初期速度で静脈内投与によって投与され、次に、0.1mcg/kg/分または0.15mcg/kg/分で維持される。また、3〜5分の15〜25mcg/kgの高用量ボーラスも初期用量として、患者および内科医によって選択された治療法に依存して、続く維持注入を伴いまたは伴わずに投与され得る。前混合バッグまたはバイアルとして入手可能であり、これらは両者ともIV投与のために製造される。チロフィバンの生物学的半減期は約2時間であり、血小板抑制のレベルは、直接に血中の薬物レベルに関係する。従って、薬物注入が中止されるとき、抗血小板作用は2、3時間後に止まる。患者に対するチロフィバンの連続的な投与を維持するために、病院職員によって、その日の間中、前混合IVバッグが定期的に交換されなければならない。また患者は、彼または彼女がチロフィバンを処方されている以上、IV投与は病院環境以外に承認されておらず、その投与は医療従事者によって管理される必要があるので、綿密な監督の下で病院に残らなくてはならない。従って、それは亜慢性または慢性の外来患者基準においては使用されない。
【0008】
アセチルサリチル酸とクロピドグレル(クロピデグレル(clopidogrel))などの一般的な抗血小板薬は、心臓発作の予防などの目的のために主として慢性的に使用される一方で、Gp IIb/IIIa抑制剤は、心臓発作に続く、および経皮冠状動脈インターベンション(PCI)の間のような急性環境において使用される。幾つかの試みが、慢性的な使用のための経口Gp IIb/IIIa抑制剤の開発においてなされたが、それらは臨床試験中に多くの懸念事項が明らかになったことにより失敗に終わっている。問題は、血小板抑制に必要な用量での少量の出血の高発生;IV用量に比較した場合に、薬物レベル、薬物動態学および血小板抑制の患者間での変動性;および限りある有効性を含む(キャノン、2003年)。
【0009】
経皮用パッチなどの送達システムにおいて、亜慢性または慢性の使用のために製剤化されたチロフィバンあるいは他のGpIIb/IIIa抑制剤は、現在の経口抗血小板薬を超える大きな改善になるだろう。例として、クロピデグレル(clopidogrel)は不可逆抗血小板剤であり、従って、治療を中止した後、完全にその効果を失う前に数日かかる。クロピデグレルを使用している患者が、何れかの種類の迷惑な出血またはより重度の出血を経験した場合には、患者は、治療を中止しなくてはならず、一方で、出血リスクは相当な期間に亘り継続するだろう。患者が治療を中止したという事実はまた、患者を重大な健康問題を引き起こす凝血よりもはるかに高い危険に曝す。力価決定可能な経皮用パッチにおけるGpIIb/IIIaの投与は、患者が出血を止めるための薬の影響をより急速に緩和することを可能にし、次にパッチの再適用により適切な血小板抑制をより迅速に復帰することを可能にする。一旦、出血が止められたならば、前出血レベルに血小板抑制を回復できるだろう。
【0010】
経皮用のパッチは、一般的に、マトリックスタイプパッチ、マルチラミネート・薬物・イン・粘着剤タイプパッチおよびモノリシック・薬物・イン・接着剤タイプパッチを含めて知られている。
【0011】
これらのパッチタイプはすべて一般に固定用量のパッチである。固定用量のパッチでは、流出割合として知られているホストの皮膚または粘膜へのパッチからの薬の送達速度は一定であり、規定される個々のパッチにより予め決定されている。
【0012】
そのため現在では、薬剤師は、治療薬の様々な用量を各々含む多数のパッチを仕入れる必要がある。例えば、様々な用量強度が示されるか、さもなければ様々な用量強度が必要な場合、薬剤師は様々な用量の強度のうちの1つをそれぞれに有する独立した異なる経皮用パッチを仕入れる必要があり、例えば、1時間当たり1、2、4、10、20ユニット(ミリグラム/時間)などの各用量強度のために異なるパッチを仕入れる必要がある。内科医が患者に対してある用量強度を処方する場合、患者は治療薬の固定用量を有する経皮用パッチを購入する。処方された量が強過ぎれば(例えば、20mg/時間のパッチ供給が当初は処方され購入される)、患者は、通常、低い用量の治療薬を有する経皮用パッチの別の製品を購入しなければならない。処方された量が弱過ぎれば(例えば、2mg/時間のパッチ供給が当初購入され、用量要求が5mg/時間に変更する場合)、患者は、通常、治療薬が増大された用量を有する経皮用パッチの別の製品を購入しなければならない。
【発明の概要】
【0013】
本発明は、経皮用パッチの形態の経皮用薬物送達システムに関する。本発明の経皮用パッチは、力価決定可能な様式で患者に対してチロフィバンを送達するために適している。本発明はまた、所望される血小板抑制レベルを維持するためのキットの一部分として使用され得る。本発明の経皮用パッチは、静脈用製剤では現在実現されない疾患の治療において、または抗血小板薬が現在処方される疾患を治療するための能力を有意に改善することにおいて使用することができる。
【0014】
本発明の1つの側面は、新たな接着剤を被覆されたシート材であって、(1)柔軟なバッキング、および(2)(a)約2〜10炭素を含むアルキルアルコールの疎水性モノマーアクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルを含むアクリル接着性ポリマーと、(b)感圧接着性コーティングの総重量の約1〜50%の量のチロフィバンとを含む均一混合物を含む感圧接着剤コーティングを含む接着剤を被覆されたシート材を提供する。
【0015】
本発明の別の側面において、チロフィバンなどのGP IIb/IIIa薬剤の経皮的投与は、少なくとも40%および60%以下、少なくとも50%および70%以下、少なくとも65%および80%以下、少なくとも75%および90%以下、少なくとも85%、または少なくとも90%で血小板凝集を抑制することができる。この投与は、力価決定可能な用量の経皮的送達システムにより達成できる。
【0016】
本発明の更なる側面において、接着剤を被覆されたシート材は、他の疾患に加えて狭心症および他の心臓血管疾患を治療するために治療的に有効な量で長期間に亘り対象に対してチロフィバンなどのGP IIb/IIIa薬を連続して経皮的に送達するために適切である。
【0017】
本発明の更なる側面において、心臓血管疾患は、様々な急性亜慢性および慢性症状を含み、これは、急性冠不全症候群、不安定狭心症、高ST心筋梗塞、非高ST心筋梗塞、虚血性脳梗塞、不完全な血管再開通術を有するポストCABG、本態性血小板血症、深部静脈血栓症、肺塞栓症、アレルギー患者および/またはASA抵抗性を有する患者、ヘパリン起因性血小板減少症、および周囲手術PCIに先立って、および周囲手術PCI中を含む。
【0018】
本発明のさらなる側面では、他の適用は、中央および枝静脈閉塞および膝および腰置換手術を含む。
【0019】
発明の別の側面において、積層複合物が提供され、それは薬物リザーバの基本表面にラミネート加工された剥離性保護用の剥離ライナーを含む。
【0020】
発明のテープの接着性コーティングは、任意に皮膚浸透エンハンサーを含んでよい。
【0021】
本発明の更なる側面において、経皮用パッチは、定まった基準の間隔でパッチを置き換えること、および/または経皮用パッチの特性を修正することにより、個々のパッチによって提供される治療の持続に作用し、長期間に亘る治療のために使用することができる。
【0022】
本発明の別の側面において、長期間の治療は2時間から1年以上であってよい。
【0023】
本発明の更なる側面において、急性または緊急の使用のための長期間の治療は、2時間から3日であってよい。
【0024】
本発明の更なる側面において、亜慢性の使用のための長期間の治療は、2日から30日であってよい。
【0025】
本発明のもう1つの側面において、亜慢性または慢性の使用のための長期間の治療は、30日から1年以上であってよい。
【0026】
本発明の更なる態様において、チロフィバンまたはチロフィバン塩が使用できる。加えて、他のGP IIb/IIIa抑制剤は、エプチフィバチド、アブシキシマブ、ラミフィバン(lamifiban)、キセミロフィバン(xemilofiban)、シブラフィバン(sibrafiban)、フラダフィバン(fradafiban)、ロキシフィバン(roxifiban)、ロトラフィバン(lotrafiban)およびオルボフィバン(orbofiban)を含み;ADP受容体抑制剤、例えば、チクロピジン、クロピデグレル(clopidogrel)、チカグレロール(ticagrelor)およびプラスグレル(prasugrel);PDE抑制剤、例えば、ジピリダモールおよびシロスタゾール(cilostazol);直接トロビン抑制剤、例えば、キシメラガトラン(Ximelagatran)、ダビガトラン(Dabigatran)、アルガトロバン(Argatroban)およびビバリルジン(bivalirudin);ヘパリン、低分子量ヘパリン、新規のXa因子抑制剤、TF/FVIIa抑制剤および他の抗凝血剤、抗血小板剤および血栓溶解剤が、適切な製剤化戦略のために使用されて経皮的に送達でき得る。より高分子量の薬剤は、製剤化、薬物動態学および患者のコンプライアンスの問題のために、チロフィバンと比較して望ましくはない。
【0027】
更なる側面において、本発明は、第一の側面が接着剤で被覆されたシート材;を有する覆われたシート材を含み;前記シート材の第二の側面に接触し、シート材を経て少なくとも部分的に受容的に第一の面に拡散できる医薬成分;および柔軟なバッキング;を含む経皮用薬物送達システムであって、柔軟なバッキングと接着剤で被覆されたシート材とが医薬成分を含むポケットを形成し;医薬成分は、バッキングを経て受動的に拡散できず;医薬成分がチロフィバン、またはその塩若しくは水和物を含み;接着剤で被覆されたシート材における接着剤が患者の皮膚に対する付着を可能にする経皮用薬物送達システムを含む。
【0028】
また更なる側面において、経皮用薬物送達システムは更に皮膚透過または皮膚浸透エンハンサーを含み、これに限定するものではないが、例えば、マイクロニードル技術およびイオンフォレシスを含む。更なる側面において、皮膚浸透デバイスあるいは皮膚浸透エンハンサーは、皮膚に対する経皮用パッチの適用に先駆けて使用され得る。更なる側面において、皮膚透過または皮膚浸透エンハンサーは、経皮的な送達システムまたはキットにおいて含まれる。
【0029】
更なる側面において、皮膚浸透デバイスあるいは皮膚浸透エンハンサーは、患者に対して意図される用量の送達を更に加速または増大する様式において活性医薬成分で被覆されてもよく、または浸含されてもよい。
【0030】
更なる側面において、皮膚透過または皮膚浸透エンハンサーは、接着剤を被覆されたシート材上または内に位置する。
【0031】
更なる側面において、皮膚透過または皮膚浸透エンハンサーは、N−メチル−2−ピロリドン、オレイン酸、C8−C22脂肪族アルコール、ソルビタンエステル、リノール酸およびリノール酸イソプロピルからなる群より選択される。
【0032】
また更なる側面において、経皮用薬物送達システムは、更にポケット内にキャリア材を含む。また更なる側面において、キャリア材は、液体、ゲル、溶媒、液体希釈剤および可溶化剤からなる群より選択される。また更なる側面において、キャリア材は、水、鉱油、シリコーン、無機ゲル、水性乳剤、液糖、ワックス、ワセリン、油および高分子材料からなる群より選択される。
【0033】
本発明の更なる側面はまた、(1)柔軟なバッキングおよび(2)(a)アクリル接着性ポリマーと、(b)感圧接着性コーティングの総重量の約1〜50%の量のチロフィバンとの均一混合物を含む感圧接着剤コーティングを含む接着剤を被覆されたシート材を含む。また更なる側面において、アクリル接着性ポリマーは、約2〜10の炭素原子を含むアルキルアルコールの疎水性モノマーのアクリル酸エステルおよび/またはメタクリル酸エステルを含む。
【0034】
本発明のもう1つの態様は、a)1または1以上のバッキング、b)マトリックス層、ここにおいて、マトリックス層はポリマーマトリックス材を含む、およびc)ポリマーマトリックス材内の溶液または懸濁液中のチロフィバンまたはその塩若しくは水和物を含む経皮用パッチである。
【0035】
また更なる側面において、ポリマーマトリックス材は、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ゼラチンおよびその組み合わせからなる群より選択される。
【0036】
また更なる側面において、医薬成分はエプチフィバチドまたはその塩若しくは水和物を含む。
【0037】
また更なる側面において、経皮用薬物送達システムは、約0.10μg/kg/分に相当する速度で、チロフィバンまたはその塩若しくは水和物を送達する。
【0038】
また更なる側面において、経皮用薬物送達システムは、約0.15μg/kg/分に相当する速度で、チロフィバンまたはその塩若しくは水和物を送達する。
【0039】
また更なる側面において、経皮用薬物送達システムは、3〜60分の期間に亘り総量において約25μg/kgに相当する速度でチロフィバンまたはその塩若しくは水和物を送達する。
【0040】
また更なる側面において、経皮用薬物送達システムはチロフィバンを含み、患者に対して付着することが可能であり、患者に付着された時に、患者に対してチロフィバンを送達することができる。
【0041】
本発明の目的は、力価決定可能な用量の経皮用送達システムを含む。
【0042】
本発明のさらなる側面において、力価決定可能な用量の経皮用送達システムは、
(1)マトリックスタイプパッチ;(2)リザーバタイプパッチ;(3)モノリシック・薬物・イン・接着剤タイプパッチ;および(4)マルチラミネート・薬物・イン・粘着性タイプパッチ;何れか1または1以上を含む。
【0043】
本発明の更なる側面において、力価決定可能な用量の経皮用送達システムは、チロフィバンまたはその塩若しくは水和物を含む。
【0044】
本発明の更なる側面において、力価決定可能な用量の経皮用送達システムは、チロフィバンなどのGP IIb/IIIa薬剤を、患者の特異的な疾患を治療するために治療学的に有効および適切な量で長期間に亘り、患者に対して送達することが可能である。
【0045】
本発明の更なる側面において、心臓血管疾患は、種々の急性、亜慢性および慢性症状を含み、これは急性冠不全症候群、不安定狭心症、高ST心筋梗塞、非高ST心筋梗塞、虚血性脳梗塞、不完全な血管再開通術を有するポストCABG、本態性血小板血症、深部静脈血栓症、肺塞栓症、アレルギー患者および/またはASA抵抗性を有する患者、ヘパリン起因性血小板減少症、および周囲手術PCIに先立って、および周囲手術PCI中の治療における状態を含む。
【0046】
もう1つの態様において、本発明は、個々の患者のための血小板抑制の特異的な程度を決定し、および抗血栓剤の用量レベルを力価決定し、個人のために所望される効果的な抑制レベルを確保するためのキットを提供する。
【0047】
チロフィバンなどの抗血栓剤を使用する経皮用パッチは、血小板機能アッセイシステム、例えば、ICHOR/Plateletworks、Ultegra/RPFAシステム、Accumetrix VerifyNow systemと共に使用され得る。受容体占有アッセイ、または他の形態の血小板反応性アッセイは、当該技術において公知であり、これが使用され得る。血小板凝集の抑制の力価決定は、段階的な様式において抗血栓剤の用量を増大することにより達成され得る。
【0048】
発明の更なる態様において、キットは、試験におけるバックグラウンド干渉を減少するための薬剤、信号を増大するための薬剤、試験を行うための装置、校正曲線およびチャート、標準化曲線およびチャートなどを含み得る。
【0049】
本発明の更なる側面において、力価決定可能な用量の経皮用送達システムは、チロフィバンまたはその塩若しくは水和物を、約0.1mg/時間から75mg/時間に相当する速度で循環システムに対して送達する。
【0050】
更なる側面において、力価決定可能な用量の経皮用送達システムは、用量の区画を示す1または1以上の分割境界を有するパッチを含む。例えば、1mg/時間の全チロフィバン用量を有する連続的な送達パッチは、各々0.1mg/時間の送達が可能な10の別個のユニットに分割され得る。従って、患者は、最初に0.1mg/時間から開始し、必要な血小板抑制レベルに依存して用量を増大することができる。もう1つの例として、ボーラス送達パッチは、必然的に非常に早い速度の送達を提供する必要があり、3〜60分の期間に亘り総用量1mgから3mgを送達する。
【0051】
6μg/kg/時間x100kgx24時間=14.4mg/日
10μg/kg/時間x100kgx24時間=24mg/日
25μg/kgx100kg=2.5mgボーラス。
【0052】
更なる側面において、力価決定可能な用量の経皮用送達システムは、各パッチの寸法および/または特性に基づき薬物放出の速度が変更する一連の経皮用パッチを含む。例えば、患者は、最初に0.2mg/時間から開始し、その用量が必要な血小板抑制レベルを提供しない場合には、用量はパッチの除去と0.4mg/時間を送達するパッチの適用により増大され得る。これは、所望の血小板抑制レベルが達成されるまで繰り返されてよい。
【0053】
力価決定可能な用量の経皮用送達システムはまた、正確に調節するために個々に必要な情報を提供することができ、暫時、患者の特異的な年齢、性別、体重、疾病の状態および他の特異的な特性に依存して用量を力価決定することができるチャートまたはツールを提供してもよい。
【0054】
米国特許6,770,660(引用によってここに組込まれる)に記載されるようなボーラス用量、続く維持用量の管理もまた、使用されてよい。そのような用量決定手順の場合において、ボーラス用量、維持用量およびボーラスおよび維持用量の両方の何れも、ここに記載される通りの経皮用パッチを介して投与されてよい。例えば、一連のボーラス用量は、内科医により静脈内に投与され、続いて以下に更に記載する通りの可変的な患者の投与および力価決定、経皮的投与、維持用量投与計画が行われてよい。
【詳細な説明】
【0055】
チロフィバンまたはエプチフィバチドなどのGP IIb/IIIa抑制剤の経皮用パッチ投与は、安定して予測可能な薬レベルの維持を許可し、従って、IV持続注入を使用せずに、血小板抑制の意図した目標レベルを維持することを可能にする。それはより容易な投与、改善された安全性、より良好なコンプライアンス、患者のための改善された可動性、病院資源活用の減少および消化管(経口経路対する)の回避を提供する。またそれは、この種の薬物が現在実現可能ではない状況において、これらの薬剤の使用を促進する。それは、より容易に、より迅速な血小板抑制の力価決定を提供し、個々の患者に効果と安全性の最適なバランスを保証する。
【0056】
更に、固定用量経皮用パッチに代わり、力価決定可能な経皮用のパッチは、(即ち、患者または医者が送達される薬物の量を決定でき)、所望される時に内科医または患者による85%未満の血小板抑制レベルを可能にすることにより、更なる改善を提供する(チロフィバンのための典型的な用量の代わりに、所望される>90%の抑制を提供する)。これは、例えば、手術前または手術後に穏やかな血小板抑制が必要である病院の外部で慢性的な適用のためにチロフィバンを使用することを可能にする。またそれは、パッチの新しい供給についての必要性を伴わずに、患者に対して投与される用量を変更することを可能にする。
【0057】
アグラスタット(AGGRASTAT、登録商標)として商業的に入手可能なチロフィバン塩酸塩は、糖タンパク質IIb/IIIaフィブリノーゲン受容体のための非ペプチドアンタゴニストである。チロフィバン塩酸塩は、化学的にN−(ブチルスルホニル)−O−[4−(4−ピペリジニル)ブチル]−L−チロシン一塩酸塩として記載され、以下の式として構造が表される。
【化1】

【0058】
チロフィバン塩酸塩はまた、(2−S−(n−ブチルスルホニルアミノ)−3[4−(ピペリジン−4−イル)ブチルオキシフェニル]プロピオン酸塩酸塩と称され、米国特許5,292,756において記載される。
【0059】
チロフィバン塩酸塩および関連する薬学的に許容される塩類が本発明において有用である。用語「薬学的に許容される塩」は、当該化合物の非毒性塩を意味し、これらに限定するものではないが、酢酸塩、ベンゼンスルホナート、安息香酸塩、重炭酸塩、重硫酸塩、酸性酒石酸塩、硼酸塩、臭化物、カルシウムエデンテート(calcium edentate)、カムシレート(camsylate)、炭酸塩、塩化物、カラブラネート(clavulanate)、クエン酸塩、二塩酸塩、エデト酸塩、エジシル酸塩、エストレート(estolate)、エシレート(esylate)、フマル酸塩、グルセプテート(gluceptate)、グルコン酸塩、グルタミン酸塩、グリコルリラルサニレート(glycollylarsanilate)、ヘキシルリソルシネート(hexylresorcinate)、ヒドラバミン(hydrabamine)、ヒドロブロミド、塩酸塩、ヒドロキシナプトエート(hydroxynapthoate)、沃化物、イソチオネート(isothionate)、乳酸塩、ラクトビオネート(lactobionate)、ラウリン酸塩(laurate)、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マンデル酸塩、メシラート、メチルブロミド、メチルニトラート、メチルスルファート、ムケート(mucate)、ナプシレート(napsylate)、硝酸塩、オレイン酸塩、シュウ酸塩、パマオート(pamaote)、パルミチン酸塩、パントテン酸塩、リン酸塩/二リン酸塩、ポリガラクツロ酸塩、サリチル酸塩、ステアリン酸塩、塩基性酢酸塩、コハク酸塩、タンニン酸塩、酒石酸塩、テオクレート(teoclate)、トシラート、トリエチオダイド(triethiodide)および吉草酸塩を含む。
【0060】
またチロフィバン、チロフィバン塩酸塩および他のチロフィバン塩は、総体として以下では「活性薬物」と称す。
【0061】
剥離ライナーは、使用に先立って露出したリザーバ表面を保護することを目指した使い捨ての要素である。剥離ライナーは、容易な除去のために、好ましくは2部構成であり、第1の剥離性の保護シートが、部分的に第2の剥離性保護シートと重なり合い、パッチの基本表面から伸びるタブを生じさせる。
【0062】
薬学的に有効な量の活性薬物が本発明の方法における使用に適切である。用語「薬学的に有効な量」は、薬物または医薬品の量を意味し、それは研究者または臨床医によって求められる組織、システムまたは動物の生物的または医学的な反応を誘導する。
【0063】
本発明の方法は、対象患者の治療のための他の処置と組み合わせにおいて有用であり、処置は、他の抗凝血剤(例えば、ヘパリンおよびワルファリン)、血栓可溶化剤(例えば、ストレプトキナーゼおよび組織プラスミノーゲン活性化因子)および血小板抗凝集剤(例えば、アスピリンおよびジピリダモール)での治療を含み、また、医療装置(例えば、ステント)または医学的処置(例えば、バイパス術または血管形成)の同時使用を含んでもよい。
【0064】
活性薬物を利用する用量計画は、患者の体重に従って、および個々の患者における特異的な疾患を最も良好に治療するために臨床的に要求される血小板抑制の程度に一致するように選択される。
【0065】
活性薬物は、意図される投与形態および慣習的な薬務に関して適切に選択される適切な薬学的な希釈剤、賦形剤またはキャリア(総体としてここにおいては「キャリア」材料と称される)との混合物中で投与されてよい。
【0066】
本発明に従う活性薬物を投与するための方法は、ヒトまたは哺乳類の血小板凝集または接着の阻害が望まれる患者を治療するために有用である。それらは、動脈と臓器の操作および/または人工的な表面と血小板との相互作用が、血栓凝集と強力な血栓および血栓塞栓症の形成を引き起こす周辺動脈における外科術(例えば、動脈グラフト)および心臓血管外科術において有用である。発明の方法は、血栓と血栓塞栓症の形成を防止するために使用されてよい。他の適用は、血栓溶解剤療法、経皮冠状動脈インターベンションまたは血管再開通術の間およびそれらの後の血小板血栓症、血栓塞栓症および再閉塞の予防、および血管形成術または冠動脈バイパス手術後の血小板血栓症、血栓塞栓症および再閉塞の予防を含む。当該方法はまた、心筋梗塞を予防するために使用されてもよい。
【0067】
[経皮投与]
態様において、チロフィバンまたはそれの塩は経皮用パッチによって投与され得る。「経皮」は、薬物の有効な治療学的な血中レベルを達成するために皮膚を介する血流中への薬物の通過を指す。そのために、パッチは、患者の皮膚または粘膜組織と接触し、治療学的なレベルのチロフィバンまたはその塩を送達する能力を有する。
【0068】
経皮用パッチは、経口投与と比較して幾つかの利点を有する。経口薬剤は、典型的に多様な生物学的利用能および薬物動態学の影響を受ける。結果として、問題の患者における薬物レベルを予測することが困難であり、そのために適切な程度の血小板抑制を提供することが難しい。またそれは負の結果に関連し、それは、これに限定するものではないが、過度の出血、効果の不足および経口投与に関連した胃の合併症のような望まれない副作用を含む。経口送達よりも経皮用パッチは抗血栓剤をより予想可能に且つ急速に送達することができるので、この方法の送達は、それぞれの特異的な個人のために血小板抑制の所望されるレベルに見合うように、薬剤の用量を力価決定するためにより適切である。また経皮用パッチは抗血栓剤の送達を経口送達よりも迅速に中止できる抗血栓剤の送達を有するので、それがまた重要な安全性の利点を提供し、外科手術などの必須の出血事象まで患者が必要な抗血小板療法を丁度よく継続することを可能にする。
【0069】
経皮用パッチは、静脈注射と比較して幾つかの利点を有する。チロフィバンパッチは、管理がより簡単であり、臨床設定の外部で投与することができる。例えば、第1の応答者を伴った緊急事態(例えば、心臓発作)では、それに伴う複雑性および安全性の問題のためにチロフィバンなどの強力な静脈内抗血小板剤を提供することはできない。本発明は、チロフィバンを含む経皮用パッチの適用が後に続いて行われるべき、比較的単純なボーラス注入を可能にする。他の例において、皮膚浸透エンハンサーを伴う使用のために典型的に開発された経皮用パッチは、初期の(例えば、ボーラス)用量をとその後に所望される維持用量の両方を送達するために使用され得る。従って、医療施設への反応は、チロフィバン注入のための静脈ラインおよび関連する注入ポンプを有さず、より簡単である。もう1つの例として、経皮用パッチの使用は、患者に対する介護の代替を容易にし、より効率的な送達を可能にする。経皮用パッチで治療される患者は、IV持続注入による治療を受ける同じ患者に比較して、より迅速により低い集中治療病棟に移ることができる。また、患者は、IV薬剤の送達に関連した技術的または人為的過失のリスクがより低い状態になるであろう。病院システムはまた、幾つかの利点(例えば、IV注入の投与を管理するために必要な職員の時間を実質的に低下する利点)を有する。
【0070】
態様において、血小板凝集を抑制する方法は、1)チロフィバンのボーラス注入を投与することと、2)ボーラス注入後に、約12時間から約24時間に亘り、チロフィバンの0.1〜0.15μg/kg/分を患者に投与することと、ここにおいて、チロフィバンを経皮用パッチを介して投与する、を含む。チロフィバンはその塩を含む。態様において、塩基または薬学的に許容される塩(例えば、チロフィバン塩酸塩)としてチロフィバンは使用され得る。チロフィバンのボーラス注入は、15、20または25μg/kgであってよい。もう1つの態様において、血小板凝集を抑制する方法は、1)患者に対する30分間に亘るチロフィバンの0.4μg/kg/分を投与することと、2)静脈注射の後に、患者に対して、チロフィバンの0.1〜0.15μg/kg/分を投与することと、ここにおいて、チロフィバンは経皮用パッチによって投与される、を含む。チロフィバンの経皮的投与は、約2時間から約5日までに亘って投与されてよい。具体的には、内科医によって決定されるように、チロフィバンの経皮的な投与は、1時間、2時間、4時間、6時間、8時間、10時間、12時間、18時間、24時間、36時間、48時間、72時間、96時間または120時間、30日および365日以上で投与されてよい。チロフィバンはその塩を含む。態様において、チロフィバンはチロフィバン塩酸塩である。ある態様において、経皮的投与は、患者により力価決定され得る。
【0071】
もう1つの態様において、血小板凝集を抑制する方法は、比較的短い期間に亘り(通常、ボーラス用量と称される)、経皮用パッチを介して総量15、20または25μg/kgのチロフィバンを投与することを含む。経皮的投与は、約1〜30分まで管理され、あるいはパッチの特性と同じくらい急速に意図する用量の吸収を可能にする。外皮組織層の浸透性を増大するために使用されるエンハンサーと処置などの経皮用パッチ製品の開発における専門家に利用可能なアプローチは、ボーラス用量の投与のために必要な製品のより迅速な吸収を促進するために使用される。経皮的投与は、ボーラス用量に続く抗血小板剤の効果的な維持用量を送達することを持続可能にするように開発された。チオフィバンは、塩基または薬学的に許容される塩として使用される。
【0072】
もう1つの態様において、血小板凝集を抑制する方法は、患者に対して個々の患者のために、および経皮用パッチを介して患者の特異的な状況を治療するために適切な意図される血小板抑制レベルを提供するために選択された用量のチオフィバンを投与することを含む。具体的には、チロフィバンの経皮的投与は、所望の長さだけ投与でき、意図する血漿レベルを得て、結果として血小板抑制レベルを得て、それにより患者の状態に取り組み、または特異的に時間が制限された処置を実行する間の血小板抑制を提供する。投与の存続時間は15〜90分の短時間でもよく、製品が吸収される速度に依存する。チロフィバンは塩基または薬学的に許容される塩として使用され得る。
【0073】
本発明の態様は、それのチロフィバンまたはその塩を含む経皮用パッチを含む。経皮用パッチは、1または1以上のバッキング層およびマトリックス層を含む。バッキング層は、経皮用パッチの何れの他の要素と不利な反応をしない慣習的な何れかの物質を含む。マトリックス層は、これに限定するものではないが、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドンおよび/またはゼラチンなどのポリマーマトリックス材を含む。マトリックス層は、溶液または懸濁液中にチロフィバンまたはその塩を含んでよい。
【0074】
チロフィバンまたはその塩は、キャリアまたは溶媒との組み合わせにおいて製剤化されてよい。「キャリア」または「溶媒」は、現在開示および権利主張された成分と組み合わせて投与するために適切な薬理学的に活性のない物質を指し、何れかの公知のキャリア材、例えば、何れかの液体、ゲル、溶媒、液体希釈剤、可溶化剤などを含む。ここにおいて適切なキャリアは、「薬学的に許容される」ものであり、それらは非毒性であり、薬物送達を妨げず、何れの他の生物学上または他の不適切な理由をもたない。ここにおいて使用するための具体的に適切なキャリアおよび溶媒の例は、水、鉱油、シリコーン、無機ゲル、水性乳剤、液糖、ワックス、ワセリン、および種々の他の油および高分子材料を含む。
【0075】
更なる態様において、経皮用パッチはまた、N−メチル−2−ピロリドン、オレイン酸、C8−C22脂肪族アルコール(例えば、オレイルアルコール)、ソルビタンエステル、リノール酸またはリノール酸イソプロピルなどの皮膚浸透エンハンサーを含んでよい。更に、経皮用パッチシステムは、レーザー、マイクロニードル、電気的エネルギー、超音波に対する化学薬品の添加によって送達を改善するために様々な技術を含んでもよい。本発明の経皮用パッチは、速度制御膜を任意に含んでもよい。
【0076】
パッチの態様はまた、接着剤を含み、それにより、パッチは更なる製品の助けを必要とせずに患者に対して付着する。本システムの接着剤層はまた、チロフィバンまたはその塩を含んでもよい。チロフィバンを含む接着剤層は単一層または多層であってよい。チロフィバンを含む多層の接着剤は、速度制御膜を含む、膜により分離されてよい。
【0077】
クロピデグレル(clopidogrel)、アスピリンおよびワルファリンなどの薬物は、脳卒中、心臓発作および血餅と関係する他の事象の予防のために北アメリカにおいて数百万人により定期的に服用されている。外科手術中および外科手術後に危険な量の出血を引き起こす場合があるために、あるヒトが手術またはある処置を受ける前に、これらの薬を中止する必要がある。しかしながら、持続的な抗血小板療法を必要とし、外科的なインターベンション、例えば、CABGまたはPCIを予定している患者は、この抗血栓剤を服用しない期間中に心筋に関する事象の危険性が増大する。経皮用のチロフィバンパッチは、計画された外科手術の時間までこれらの患者において適切なレベルの血小板抑制(50〜80%)を当に丁度よく維持することができる。チロフィバンは、半減期が短いため、それは経皮用パッチの除去後、数時間内に身体から排出される。更に、そのような処置を待つ(および経皮用パッチを使用する)患者は、外科手術までの日々を病院内に留まる必要がなく、医療従事者により必要であると判断された通りに、外科的処置の前の1〜10時間という短時間前に適切な外科的施設に到着すればよい。同様に、患者は、処置に続く更なる介護を頻繁に必要とし、観察のために処置に続く時間または日々を心疾患集中治療室などの病院の治療室の介護下に置かれる可能性がある。従って、本発明は、より良好な患者の介護およびCCU設備の改善された病院経営を齎す。
【0078】
[例]
以下は本発明を実行するための具体的な態様の例である。その例は説明の目的のためのみに提示され、何れの点においても本発明の範囲を制限することを意図しない。
【0079】
使用される数値(例えば、量、温度など)に関して正確さを保証する努力をしているが、幾らかの実験誤差および偏差は勿論、許容されるべきである。
【0080】
例1
エチレン酢酸ビニルコポリマー(1kg、40wt%の酢酸ビニル)を、ロッセ内部ミキシングボウル(Model PVM−2 or PD−2, Charles Ross & Sons Co., Hauppauge, N.Y.)のホッパーに計量する。ボウルは、ブラベンダーミキシングボウル(モデルR.E.O.−6)(C.W.Brabenderインストルメンツ社、サウスハッケンサック(N.J.))の駆動ユニットに接続される。溶解が追加ペレットから得られるまで(約0.5時間)、ボウルの頂部は閉じられ、ミキサーが加熱せずに操作される。終了時に、ユニットは停止され、蓋が開かれる。チロフィバン(450gm)をボウルに加える。蓋を閉じた後、ユニットはコポリマーのチロフィバンの分散を達成するためにエネルギーが与えられる(0.5時間)。混合物はミキサーから取り除かれ、更なる使用のために格納される。
【0081】
ブレンデー押出機(直径0.75インチ、4フィート、単一スクリュー機、モデル2503)(C.W. Brabender Instruments, Inc., South Hackensack, N.J.)を、前述されるのと同様の予備駆動機に取り付ける。加熱可能な4インチ幅屈曲ニップ押出ダイを押出バレルの端部に添える。押出物を、1つのインターリービングシリコーン化ポリエステル・フィルムと1つのポリエステル/EVAバッキングフィルムの間に挟む。3つのカレンダー・ロールの1セットは、それが押出機から出る限りでは、幅6インチを測定してチロフィバン含有層を仕分けするために組み立てられる。0.1+/−0.01mmの目標チロフィバンリザーバフィルム厚さはカレンダー・ロールの適切な調節によって達成される。三層は更に製造使用のために巻取りロールに巻き付けられる。
【0082】
酢酸エチルの溶液アクリル酸塩接着剤(product number 87−4287, National Starch and Chemical Corporation, Bridgewater, N.J.; Solutia, Mass.)を粘着剤層を形成するために流延械を用いてキャストする。溶液は、リザーバポットから比較的容易な放出シリコーン化ポリエステルフィルム上のスロットダイを通して圧力送りされる。フィルム/接着剤二重層は、酢酸エチルを500μg/gmレベル未満に取り除くために、動的オーブンの加熱段階を通して引かれる。フィルムが乾燥オーブンの最終段階に存在する限りでは、剥離可能な層はチロフィバンリザーバフィルムから取り除かれ、かつ接着剤層は積層物の利用可能な表面に積層される。4層フィルム(PET/EVA層、チロフィバンリザーバ、アクリル酸塩接着剤および剥離可能なライナー)は、更なる処理のために巻取りローラに倦回される。
【0083】
個々の経皮用システムは20cm面積に打ち抜かれる。最終製造工程において、システムは終点加熱シール工程にて、Surlyn/AI/Kraftラミネートポーチストック(Alcoa Flexiable Packaging, Richmond, Va.)に細長く切り、包まれる。デバイスは、はできれば約12−24時間の間、3日までの間に10−50mg/24時間、好ましくは約12−24時間でチロフィバンを送達できる。
【0084】
例2
例は、連続的なフィーダ押出機(Kneader extruder (Model MKS 30) Coperion Corp., Ramsey N.J.のような)の使用を示す。固体の接着剤(溶解進行可能なアクリル酸塩、例えばSEBS(スチレン−エチレン/ブチレン−スチレン)ポリマーKraton SEBS G1657、Kraton Polymers, Houston, Tex.から、のような)が、ホッパーに連続的に供給され、同時にチロフィバンベースが押出機上の第2のホッパーに供給される。ポリマーに対する接着剤の比率は4:1である。押出されたフィルムは、シリコーン化されたポリエステル(3ミル)とポリエステル/ポリエチレン(2ミル)を含むバッキングフィルムの間の押出ダイから,約6.5インチで0.125の厚さ,+/−0.0125mmに下流にカレンダーにかけられる。システムは、約5cm2から約50cm2の範囲の面積に打ち抜かれる。
【0085】
経皮的なチロフィバン流動を改善するために、チロフィバンリザーバは15wt%と同じ量の浸透エンハンサー(例えばラウリルプロリン・エステル、グリセリンモノラウリル塩またはオレイン酸)を含むために配合される。透過エンハンサーの使用は、透過エンハンサーを備えた比較可能なデバイスに比較して流動を2〜3倍増加する。
【0086】
例3
チロフィバン血中濃度レベル変化を改善するために、速度制御膜はチロフィバン放出を規制するために製造でき、チロフィバンリザーバとアクリル酸塩層の間に配置できる。望ましい割合に依存して、約0.05mmの厚さで、5〜20%の酢酸ビニルのEVAフィルムが挿入できる。
【0087】
例4.チロフィバン透過動態のインビトロ分析
異なる濃度の透過エンハンサーを含む経皮用パッチからのチロフィバンの透過は、フランツ拡散細胞(ハンソン研究によって生産された)においてマウス皮膚およびヒトの皮膚を横切って測定された。
【0088】
以下の処方を有する2つのパッチが調製され、単一成分の重量パーセンテージとして表される。
【表1】

【0089】
透過研究は、15mm径の開口部(細胞膜表面積1.766cm)および7ml細胞体積で修飾フランツ拡散細胞を使用して行なわれる。一定の撹拌下で維持されたpH7のリン酸緩衝液は、細胞内の受容体流体として使用される。
【0090】
最高6週に加齢したCDF1マウスを屠畜し、それらの後部から取られた皮膚のサンプルを除毛し、生理的溶液(蒸留水中の0.9%のNaCl)で洗浄する。
【0091】
動物からの取り出しの1時間以内に、皮膚サンプルは膜を形成するために細胞の開口部に置かれ、分析すべき経皮的パッチは膜にそれぞれ置かれ、クリップでしっかり止める。
【0092】
決められた間隔で、300μLの受容体溶液は毎時間リン酸緩衝液の等価な体積で置き換えられる。
【0093】
透過テストが行なわれる条件を次の表において要約する。
【表2】

【0094】
各サンプル中のチロフィバンの量はHPLC分析によって測定される。各パッチで得られる結果は、独立したサンプルに対するt検定を統計的に用いて分析される。t検定の結果は、パッチAおよびBで得られる皮膚透過動態の間の著しい相違がないことを示す。両方のパッチは、適用後、最初の2時間に亘って透過速度において緩慢且つ近似した直線的増加を示し、約2〜8時間の間に近似した一定透過が後に続き、順に透過速度の下落が後に続く。
【0095】
例5.ヒトの皮膚を横切る透過の研究
腹部皮膚のサンプルは外科的処置によって同じドナーから得られる。
【0096】
角皮層および表皮からなる膜は、1分間に亘って60℃±1℃で蒸留水に皮膚を浸漬することによって調製され、続いて真皮からそれらが除去される。膜は後で約25%の周囲湿度で乾燥機において置かれ、アルミニウムシートで包まれ、要求されるまで約−20℃±1℃の温度に維持される。乾燥膜サンプルは16時間に亘って生理食塩水に浸漬することによって常温で再水和物化される。
【0097】
各膜は、5mlの受容体体積および0.636cmの拡散面積を有する修飾フランツ拡散細胞上に据付けられ、クリップによってしっかり留められる。
【0098】
実験の最初で、2.54cmの面積を有するパッチは、ドナー相として拡散細胞に適用される。
【0099】
受容体液体は、pH7.4でのリン酸緩衝液であり、磁気スターラおよび37℃±1℃に制御された温度で連続的に撹拌され、それにより皮膚の表面は32℃±1℃の温度であった。予め設定された間隔(30分、1、2、4、6、8および24時間)で、200μLのサンプルは受容体コンパートメントから引き出され、新鮮な受容体流体で置き換えられる。
【0100】
得られた結果は、独立したサンプルに対してt検定を統計的に用いて分析される。有意差は、パッチAおよびBで得られた皮膚透過動態の間で見出されなかった。両方のパッチは、適用後、最初の2時間に亘って透過速度において緩慢且つ近似した直線的増加を示し、約2〜8時間の間に近似した一定透過が後に続き、続いて順に透過速度が下降する。測定可能な透過速度は12時間以上に亘って達成される。
【0101】
例6.第II相/第III相−経皮冠状動脈インターベンション(PCI)を受ける安定型冠動脈疾患を有する対象における経皮的および静脈内のアグラスタットの投与
患者はPCIを受けるために病院に入院する。外科手術に先立って2〜3時間、患者は例1の経皮用パッチAを用いてチロフィバンの初期の経皮的用量を与えられる。パッチは、0.2mg/hr以上の送達速度、約2mg以上の総用量で提供される。約1時間の後、血小板機能分析は患者の血小板抑制のレベルを測定するために経皮的力価決定キットの説明書および成分に従ってなされる。もし、適切であれば、追加のパッチは患者に投与されない。もし、血小板抑制が望ましいパーセンテージに達していなければ、次に追加の経皮的用量は望ましいパーセント抑制が達成されるまで患者に投与される。
【0102】
外科手術の完了に従って、患者は患者の内科医によって決定されるような延長時間に亘って経皮的なチロフィバンを摂取するために処方する。
【0103】
例7:力価決定可能なパッチ
寸法および用量の力価を変える一連の7つのパッチは例1(パッチB)の一般な方法を用いて調製される。パッチは、皮膚を横切るチロフィバン透過の約100g/時間(100μg/時間から700μg/時間までの範囲)に相当する各増加を除けば、3cmの増加、3cmから21cmまでの寸法で増加する。
【0104】
70歳、95kgの糖尿病患者は冠動脈疾患と診断され、心臓の合併症および心筋梗塞の高い危険にある。患者は、その疾患に取り組むために外科手術または経皮的インターベンションに対して適格でなく、連続的な抗血小板治療が必要であるが、利用可能な経口治療に反応しないとして診断される。医療従事者は、希望の一方出血および他の副作用の危険を減らすように注意深く制御し、一方、同時に目標血小板抑制の達成を成し遂げるための慢性の抗血小板治療計画を提供することが望まれる。
【0105】
医療従事者は最初に最も小さな経皮的チロフィバン力価決定キットからの3cmパッチを適用する。この最初のパッチは、0.1mg/時間の用量を送達するために設計されている。その意図した投薬速度に到達するためにパッチに要求される時間に基づいて、パッチが適用された約2時間後、用量率、次いでパッチが適用された約2時間後、医療従事者は次いで少量の血液サンプルを採取し、最初のパッチによって達成された血小板抑制の程度を測定するためにUltegra/RPFA血小板機能分析システムを利用する。しかしながら、要求される血小板抑制の程度が75〜80%であるこの患者において適用に依存して変動する。
【0106】
Ultegra/RPFAからの読み取りは、患者の血小板が53%抑制されることを示す。医療従事者は、次いで経皮的チロフィバン力価決定キットにおいて提供されるチャートを参照し、そして、Ultegra/RPFA結果と個々の患者の年齢、性別、体重および疾病状態とを照合し、最適な用量力価決定戦略が最初の3cmパッチを除去し、同じ位置に6cmパッチを適用することを決定する。この第2のパッチは、0.2mg/時間の用量を送達するために設計される。約2時間後に、患者または医療従事者は再び少量の血液サンプルを取り、達成される血小板抑制の程度を測定するためにUltegra/RPFA血小板機能分析システムを利用する。読み取りは、患者の血小板が77%抑制されることを示し、それはこの患者の目標抑制速度である。
【0107】
経皮的チロフィバン滴定キットで提供されるチャートを再び参照し、患者は、キットで提供される6cmパッチに一致する経皮的チロフィバンの特別な投与強度に対して3か月のコースの治療を規定される。
【0108】
医療従事者は患者が彼らの条件に適切に処置されることを保証するために、3か月毎に滴定プロセスを繰り返すことを指示されるであろう。それに基づけば、患者は治療に対する調節を要求し、滴定プロセスは望ましい抑制レベルが到達するまで2時間毎の試験でより高い用量速度またはより低用量速度を連続的に特定化するであろう。
【0109】
例8−前外科手術処置
60歳、92kg、以前に移植されたステントを有する患者は、脳梗塞の予防、心臓発作および血餅に関する他の現象のためにクロピドグレル(clopidogrel)を毎日服用しているが、心血管の条件と無関係な胃の外科手術が必要とされ、外科手術中および後に危険な量の出血を防ぐために外科手術前の7日間、クロピドグレルを中止する。
【0110】
脳梗塞、心臓発作および血餅と関係する他の現象の危険性を低減するために、患者がクロピドグレルを服用しない間、患者は毎日の経皮用チロフィバンパッチの投与計画下に置かれる。治療過程の初めに、パッチの用量強度をパッチが患者の60〜80%の血小板抑制を維持するように力価決定される(上記例4に一般的に記述されるように行う)。患者は、次いで適切な用量強度に対応するパッチを7日間に亘り供給され、帰宅する。
【0111】
手術が予定される前に、パッチは2〜8時間(この患者おいて、4時間前に除去された)の所定の時間帯で取り除かれ、時間量を最大限にすることで、患者は血小板抑制の利益を提供され、同時に外科手術に先立って殆どの抗血小板の影響を排除し、それにより外科手術中および外科手術後に危険な量の出血が生じる危険性を低減する。
【0112】
例−9:第I相 薬物動態−薬力学的研究:25μg/kgの静脈内ボーラス用量後に2つの経皮用チロフィバン製剤の臨床的有効性を健康な被験者において比較する。
【0113】
40人の健康なボランティアを登録する薬物動態−薬力学研究は、健康なボランティアにおけるパッチAおよびパッチB(上述で言及された)の有効性を比較するために設計される。登録された対象は、2つの治療群のうちの1つに無作為化される。両方の治療群は、両方とも25μg/kgでチロフィバンの静脈内ボーラス用量を受け、パッチAまたはパッチBの何れかを受けるために無作為化される。
【0114】
血液サンプルは、経皮用のチロフィバンパッチの適用後に、0、15、30、45、60分、2時間、4時間、8時間で集められる。血小板凝集測定法(aggregometry)のための血液は、PPACK38μMで血液凝固を阻止し、最大濁度エキソビボ凝集はADPの20μMに対する反応において血小板リッチ血漿で評価される。更に、チロフィバンの濃度は同じ時間期にRIAによって測定される。
【0115】
ボーラス用量およびパッチAまたはパッチBの経皮適用後のチロフィバンの濃度は、互いに類似し、且つ24時間に亘って85〜98%の血小板凝集を抑制する。血小板抑制レベルは、2つのパッチ間で良好に関連し、シュナイダーら、2003年によって報告された治療のレベルに類似する。以前に、Steinhublら、2001(GOLD研究)は、血小板抑制のレベルがPCIの後に心筋事象の危険性と直接関連することを報告した。前記結果に基づくと、両方のパッチはその治療効果のために要求されるチロフィバンを送達することができる。しかしながら、パッチAによって達成されるチロフィバンのレベルは、パッチBと比較して、より一貫性がある。チロフィバンのパッチAまたはパッチBの何れかの適用を妨げる有意な有害な影響はない。
【0116】
例10:第I相 薬物動態−薬力学研究:25μg/kgの静脈内ボーラス用量後に2つの経皮用チロフィバン製剤の臨床的有効性を健康な被験者において比較する。
【0117】
例6の実験を、今回、経皮的に投与されるボーラス用量を用いて繰り返す。ボーラス用量は、最大でも2時間以上で25μg/kgで投与される。ボーラス経皮投与の後に、パッチAまたはパッチBの何れかの経皮的適用が続く。結果は、IVボーラス用量を利用して示される結果に非常に似ており、ボーラス用量を経皮用パッチを用いて投与することができることを示す。
【0118】
例11:第I相、薬物動態−薬力学研究により2つの経皮用のチロフィバン製剤の臨床的有効性を健康な被験者において比較する。
【0119】
40人の健康なボランティアは、パッチAまたはパッチBを受けるために無作為化される。血液サンプルが集められ、上の例に記載されるように分析される。
【0120】
パッチAは、適用後30分〜6時間以内で意図される血小板抑制を達成し、24時間の適用までその抗血小板効果を維持し、他方で、パッチBは2〜8時間のパッチ適用後に意図された血小板抑制に到達する。結果は、パッチBと比較して、パッチAは血小板抑制をより速く生じ、一貫したレベルを提供することを示す。
【0121】
例12:経皮用チロフィバンと、経皮冠状動脈インターベンション(PCI)を受ける患者における静脈内チロフィバンとの臨床的有効性を比較する第II相の研究
経皮冠状動脈インターベンションが予定される少なくとも200人の患者を登録する第II相研究は、経皮用チロフィバンと経皮冠状動脈インターベンション(PCI)を受ける患者における静脈内チロフィバンとの臨床的有効性を比較するために設計されている。登録された患者は、2つの治療群のうちの1つに無作為化される。治療群Aは、静脈内チロフィバンボーラス(即ち、25μg/kg)を受け、続いて静脈内チロフィバン注入(即ち、0.15μg/kg/分)を受ける。治療群Bは、静脈内チロフィバンボーラスを受け、続いて、望ましい血小板抑制量(この場合、血小板凝集の>90%の抑制)に従って、例2において決定された通りのチロフィバンの経皮的用量を受ける。
【0122】
研究の第一の評価項目は、2つの治療群の間で統計的に差がない心臓生物指標(例えば、トロポニン、CKMB)の上昇である。第二の評価項目は、大きな出血の発生率と血小板凝集抑制率を含み、両方の場合において、2つの治療群の間で比較可能である。結果は、パッチが静脈注射と比較して有意な付加的な危険性を伴いわずに同様の有効性を提供することを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の側面に接着剤が被覆されたシート材と、
前記シート材の第二の側面と接触し、前記シート材を経て少なくとも部分的に前記第一の側面にまで受動的に拡散できる医薬成分と、
柔軟なバッキングと、
を含む経皮用薬物送達システムであって、
当該柔軟なバッキングと、当該接着剤を被覆されたシート材とが、前記医薬成分を含むポケットを形成し;
当該医薬成分は、当該柔軟なバッキングを経て受動的に拡散できず;
当該医薬成分が、チロフィバンまたはその塩若しくは水和物を含み;および
前記接着剤を被覆されたシート材における接着剤が、患者の皮膚への付着を可能にする、
経皮用薬物送達システム。
【請求項2】
更に、皮膚浸透デバイスまたは皮膚浸透エンハンサーを含む請求項1に記載の経皮用薬物送達システム。
【請求項3】
当該皮膚透過または皮膚浸透エンハンサーが当該ポケット内に位置される請求項2の経皮用薬物送達システム。
【請求項4】
当該皮膚透過または皮膚浸透エンハンサーが当該接着剤を被覆されたシート材上、または当該接着剤を被覆されたシート材内に位置される請求項2に記載の経皮用薬物送達システム。
【請求項5】
当該皮膚透過または皮膚浸透エンハンサーが、患者に対して意図された用量の送達を増強する様式において当該活性医薬成分で被覆または当該活性医薬成分を含浸されている、請求項2に記載の経皮用薬物送達システム。
【請求項6】
当該皮膚透過または皮膚浸透エンハンサーがN−メチル−2−ピロリドン、オレイン酸、C−C22脂肪族アルコール、ソルビタンエステル、リノール酸およびリノール酸イソプロピルからなる群より選択される請求項2に記載の経皮用薬物送達システム。
【請求項7】
更に、前記ポケット内にキャリア材を含む請求項1に記載の経皮用薬物送達システム。
【請求項8】
当該キャリア材が、液体、ゲル、溶媒、液体希釈剤および可溶化剤から選択される請求項6に記載の経皮用薬物送達システム。
【請求項9】
当該キャリア材が、水、鉱油、シリコーン、無機ゲル、水性乳剤、液糖、ワックス、ワセリン、油および高分子材料からなる群より選択される請求項6に記載の経皮用薬物送達システム。
【請求項10】
(1)柔軟なバッキング、および
(2)(a)アクリル接着性ポリマーと、(b)感圧接着性コーティングの総重量の約1〜50重量%の量のチロフィバンとの均一混合物を含む感圧接着剤コーティング
を含む接着剤を被覆されたシート材。
【請求項11】
前記アクリル接着性ポリマーが、アルキルアルコールの疎水性モノマーアクリル酸エステルおよび/またはメタクリル酸エステルを含み、前記アルキルアルコールが約2〜10の炭素原子を含む、請求項9に記載の接着剤を被覆されたシート材。
【請求項12】
1または1以上のバッキング層、
マトリックス層
を含む経皮用パッチであって、
当該マトリックス層が、ポリマーマトリックス材およびチロフィバンまたはその塩若しくは水和物を前記ポリマーマトリックス材内部の溶液または懸濁液中に含む経皮用パッチ。
【請求項13】
当該ポリマーマトリックス材が、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドンおよびゼラチンからなる群より1または1以上で選択される、請求項6に記載の経皮用パッチ。
【請求項14】
当該医薬成分が、エプチフィバチドまたはその塩若しくは水和物を含む請求項1に記載の経皮用薬物送達システム。
【請求項15】
当該経皮用パッチが、チロフィバンまたはその塩若しくは水和物を約0.10μg/kg/分に相当する速度で送達する、請求項1に記載の経皮用薬物送達システム。
【請求項16】
当該経皮用パッチが、チロフィバンまたはその塩若しくは水和物を約0.15μg/kg/分に相当する速度で送達する、請求項1に記載の経皮用薬物送達システム。
【請求項17】
チロフィバンを含み、患者に付着することが可能であり、患者に付着された時に、前記患者に対してチロフィバンを送達することができる、経皮用薬物送達システム。
【請求項18】
更に、投与の力価決定のためのシステムを含む請求項1に記載の経皮用薬物送達システム。
【請求項19】
前記投与の力価決定のためのシステムが、複数の穿孔を有する、または複数の穿孔を有さない、複数のサブパッチへの薬物送達システムの分配である、請求項16に記載の経皮用薬物送達システム。
【請求項20】
(a)血小板機能アッセイ、血小板反応性アッセイおよび受容体占有アッセイからなる群より選ばれたアッセイ;
(b)前記アッセイの結果に基づいて投与の力価を決定するためのチャートまたはツール;および
(c)請求項17〜19の何れか1に記載の経皮用送達システム
を具備するキット。
【請求項21】
当該アッセイが血小板機能アッセイである請求項20に記載のキット。
【請求項22】
(a)チロフィバンの基礎用量を投与すること;
(b)アッセイを利用して血小板抑制レベルを測定すること;
(c)前記アッセイの結果に基づいてチロフィバンを延長された期間、調整された用量を投与すること;
(d)任意に、一定の間隔で工程(b)および(c)を繰り返すこと;
を含む、血小板抑制に有効な量のチロフィバンを投与する方法。
【請求項23】
前記アッセイが血小板機能アッセイ、血小板反応性アッセイおよび受容体占有アッセイからなる群より選択される請求項22の方法。
【請求項24】
当該チロフィバンの基礎用量が、請求項1に記載の経皮用薬物送達システム、請求項10に記載の接着剤を被覆されたシート材、請求項12に記載の経皮用パッチまたは静脈内に投与されるボーラス用量を使用して投与される、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
当該チロフィバンの調整された用量が、請求項18または19に記載の経皮用送達システムを使用して投与される、請求項22に記載の方法。
【請求項26】
当該一定の間隔が2〜12時間の間、好ましくは4〜6時間の間である、請求項21に記載の方法。
【請求項27】
(a)約25μg/kgの量でチロフィバンのボーラス用量を投与すること;
(b)1時間当たり約0.1〜0.15μg/kgの間の速度でチロフィバンの維持用量を経皮的に投与すること;
を含む、血小板抑制に有効な量のチロフィバンを投与する方法。
【請求項28】
当該ボーラス用量が経皮的に投与される請求項27に記載の方法。
【請求項29】
当該維持用量が12〜72時間の間の期間に亘り投与される、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
当該維持用量が、請求項1に記載の経皮用送達システムを利用して投与される、請求項27に記載の方法。
【請求項31】
更に、複数のサブパッチに前記薬物送達システムを分けることを容易にする複数の穿孔を含む、請求項1に記載の経皮用薬物送達システム。
【請求項32】
(a)外科手術の約2〜5日前に患者に経口血小板抑制薬を中止させること;
(b)チロフィバンを含み、当該患者が60〜80%の血小板抑制を示すような量で前記患者にチロフィバンを送達できる経皮用パッチを投与すること;
(c)当該手術の2〜8時間前に前記経皮用パッチを取り除くこと;
を含む、経口および/または不可逆的な血小板抑制薬を摂取している患者において、手術前に血小板抑制を提供するための方法。
【請求項33】
急性冠不全症候群、不安定狭心症、高ST心筋梗塞、非高ST心筋梗塞、虚血性脳梗塞、不完全な血管再開通術を有するポストCABG、本態性血小板血症、深部静脈血栓症、肺塞栓症、アレルギー患者および/またはASA抵抗性を有する患者、およびヘパリン起因性血小板減少症の治療における、および周囲手術PCIに先立つ治療における、および周囲手術PCI中の治療における請求項1〜8および請求項13〜17の何れか1項に記載の経皮用薬物送達システムの使用。

【公表番号】特表2012−520829(P2012−520829A)
【公表日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−500012(P2012−500012)
【出願日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際出願番号】PCT/CA2010/000373
【国際公開番号】WO2010/105342
【国際公開日】平成22年9月23日(2010.9.23)
【出願人】(507045030)メディキュア・インターナショナル・インコーポレーテッド (8)
【Fターム(参考)】