説明

チーズドック及びその製造方法

【課題】
風味や食感を損なうことなく、常温で長期間保存が可能なチーズドックを提供する。
【解決手段】
小麦粉、卵白及び液卵を主成分とする生地2の内部に、水飴、植物性油脂及びチーズを主成分とするチーズクリーム3を封入してなるチーズドック1であって、少なくとも生地とチーズクリーム3との境界部分4に酢酸ナトリウム及びグリシンを含むグリシン製剤を配合する。グリシン製剤は、製造時において、グリシン製剤に含まれる酢酸ナトリウム及びグリシンが、生地2に対し0.45〜0.50重量パーセントとなるとともに、チーズクリーム3に対し0.75〜0.80重量パーセントとなるように、生地及びチーズクリームにそれぞれ配合される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、麦粉、卵白及び液卵を主成分とする生地の内部に、水飴、植物性油脂及びチーズを主成分とするチーズクリームを封入してなるチーズドック、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、麦粉、卵白及び液卵を主成分とする生地の内部に、水飴、植物性油脂及びチーズを主成分とするチーズクリームを封入してなるチーズドックが製造、販売されている。このチーズドックは、内部に封入されたチーズクリームが、菌生育による品質劣化を生じやすいことから、冷凍若しくは路面販売のみの商品として取り扱われている。
【0003】
ところで、このチーズドックについては、常温で保存し、且つ購買してからそのままレンジアップ等の加熱処理をすることなく食するという要望がある。従来より、常温での流通又は保存が可能なチーズ及びその製造方法が開発されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
この特許文献1に開示された技術では、遊離アミノ酸及び還元末端を有する糖質を一定量含有するチーズを原料チーズとし、これに溶融塩を添加し、水分の含量を調整して加熱乳化することによって、常温での流通又は保存が可能なチーズを製造することができる。ここで、溶融塩としては、例えばモノリン酸ナトリウム、ジリン酸ナトリウム又はポリリン酸ナトリウム等のリン酸塩、更にはクエン酸ナトリウム等が挙げられる。
【特許文献1】特開2000−262211号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した特許文献1に開示された技術を、上記チーズドックに適用しても、有効に品質劣化を抑制できないという問題がある。すなわち、チーズクリームに溶融塩等を添加しすぎると酸味が強くなりすぎ、風味が損なわれることとなる。
【0006】
また、チーズドックでは、中のチーズクリームのしっとりとした食感が重要であることから、食品全体の保湿が要求される。ところが、保湿性を高めると、チーズクリームと、その周囲の生地との境界で水分置換が生じ、時間が経つにつれて、チーズクリーム側の溶融塩等が希薄化され、チーズクリームと生地側との境界で菌が活性化し、品質の劣化が生じるという問題がある。
【0007】
そこで、本発明は以上の点に鑑みてなされたもので、風味や食感を損なうことなく、常温で長期間保存が可能なチーズドック及びその製造方法を提供することをその課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は、小麦粉、卵白及び液卵を主成分とする生地の内部に、水飴、植物性油脂及びチーズを主成分とするチーズクリームを封入してなるチーズドック及びその製造方法であって、少なくとも生地とチーズクリームとの境界部分に酢酸ナトリウム及びグリシンを含むグリシン製剤を配合する。
【0009】
このような本発明によれば、グリシン製剤によって、チーズクリームと生地との境界で発生する水分置換により菌が生育するのを抑制することができ、チーズドックの品質劣化を防止することができる。
【0010】
上記発明において、グリシン製剤は、製造時において、グリシン製剤に含まれる酢酸ナトリウム及びグリシンが、生地に対し0.45〜0.50重量パーセントとなるとともに、チーズクリームに対し0.75〜0.80重量パーセントとなるように、生地及びチーズクリームにそれぞれ配合されることが好ましい。
この場合には、生地側にもグリシン製剤を配合することにより、保湿性を高めた状態であっても、チーズクリーム側に配合されたグリシン製剤が生地側へ過剰に流出するのを抑制し、チーズクリーム内のグリシン製剤が希薄化されるのを防止することができる。この結果、本発明によれば、風味や食感を損なうことなく、品質の劣化を低減することが可能となり、常温(約28度)で約60日間程度の保存を可能とすることができる。
【発明の効果】
【0011】
以上説明したように本発明によれば、小麦粉、卵白及び液卵を主成分とする生地の内部に、水飴、植物性油脂及びチーズを主成分とするチーズクリームを封入してなるチーズドックにおいて、風味や食感を損なうことなく、28度程度の常温で、長期間保存を可能とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。図1は、本実施形態に係るチーズドックの外観図であり、図2は、チーズドックの内部を示す図1のA−A断面図である。
【0013】
本実施形態に係るチーズドック1は、外表面にワッフル上の凹凸が形成された筒状の食品であり、生地2の内部にチーズクリーム3を封入し、加熱することにより製造される。
【0014】
生地2は、小麦粉、卵白及び液卵を主成分とする混練物であり、製造時における配合は、例えば、下表のようにすることができる。なお、下表に示すように、本実施形態では、卵白と液卵との配合比を約3:1としている。
【表1】

【0015】
表1中のグリシン製剤は、酢酸ナトリウム及びグリシンを含む食品添加物であり、製造時における生地2全体に対する配合は、例えば、下表のようにすることができる。なお、このグリシン製剤は、調味目的での使用も可能であり、その場合には調味料(アミノ酸等)として扱われる。
【表2】

【0016】
チーズクリーム3は、水飴、植物性油脂及びチーズを主成分とする固形物であり、製造時における配合は、例えば、下表のようにすることができる。
【表3】

【0017】
なお、表3におけるチーズとは、ナチュラルチーズ、プロセスチーズ及びチーズフードが含まれる。ここで、ナチュラルチーズとは、乳、クリーム、部分脱脂乳、バターミルク、又はこれらを混合したものを凝固させた後、排水して得られるもの、又は熟成したものであり、香味をつけるために、天然の風味物質を加えることができる。プロセスチーズとは、1種類又は2種類以上のナチュラルチーズを加熱溶解して乳化し、成型包装したもので、成分として乳固形分を40%以上のものであり、香味づけのために加える香辛料、食品は製品固形分の1/6以内となっているものである。チーズフードとは、ナチュラルチーズ又はプロセスチーズを用い、加熱溶融したもので、製品中チーズ分51%以下、香料、調味料は製品固形分中1/6以下、乳以外からの脂肪、タンパク質、糖質は重量の1/10以下となっているものである。
【0018】
また、上記チーズクリーム3には、下表に示すような、上記グリシン製剤を含むその他の添加物が配合される。なお、下表は、上記表3に示した原材料全体を100とした場合の重量%である。
【表4】

【0019】
表1〜4に示すように、本実施形態において、グリシン製剤は、これに含まれる酢酸ナトリウム及びグリシンが、生地2に対し0.45〜0.50重量パーセントとなるとともに、チーズクリーム3に対し0.75〜0.80重量パーセントとなるように、生地2及びチーズクリーム3にそれぞれ配合されている。すなわち、表2に示すように、生地2については、酢酸ナトリウムが0.06重量%、グリシンが0.42重量%配合され、合算して0.46重量%配合されている。一方、チーズクリーム3には、酢酸ナトリウムが0.10重量%、グリシンが0.67重量%配合され、合算して0.77重量%配合されている。なお、生地2及びチーズクリーム3のいずれも、グリシン製剤におけるグリシンと酢酸なとリムの配合比は、67:10となっている。
【0020】
このような本実施形態に係るチーズドックによれば、チーズクリーム3と生地2との境界で発生する水分置換が発生した場合であっても、上述した配合率で、チーズクリーム3と生地2とのそれぞれにグリシン製剤が配合されているため、少なくとも、これらの境界部分4において、所定量のグリシン製剤が配合維持されることとなる。
【0021】
すなわち、本実施形態では、生地2側にもグリシン製剤を配合することにより、保湿性を高めた状態であっても、チーズクリーム3側に配合されたグリシン製剤が生地2側へ過剰に流出するのを抑制し、チーズクリーム3内のグリシン製剤が希薄化されるのを防止することができる。なお、本実施形態では、卵白と液卵との配合比を約3:1とし、鶏卵の水分を調整しているため、上記水分置換がより抑制されることが期待される。
【0022】
これらの結果、本実施形態によれば、下表に示すように、生地2及びチーズクリーム3のみならず、生地2とチーズクリーム3の接点(境界部分4)において、菌が生育するのを抑制することができ、風味や食感を損なうことなく、品質の劣化を低減することが可能となり、常温(約28度)で約60日間程度の保存を可能とすることができる。
【表5】

【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】実施形態に係るチーズドックの外観図である。
【図2】実施形態に係るチーズドックの断面図である。
【符号の説明】
【0024】
1…チーズドック
2…生地
3…チーズクリーム
4…境界部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
小麦粉、卵白及び液卵を主成分とする生地の内部に、水飴、植物性油脂及びチーズを主成分とするチーズクリームを封入してなるチーズドックであって、
少なくとも前記生地と前記チーズクリームとの境界部分に酢酸ナトリウム及びグリシンを含むグリシン製剤が配合されている
ことを特徴とするチーズドック。
【請求項2】
前記グリシン製剤は、製造時において、該グリシン製剤に含まれる酢酸ナトリウム及びグリシンが、前記生地に対し0.45〜0.50重量パーセントとなるとともに、前記チーズクリームに対し0.75〜0.80重量パーセントとなるように、該生地及び該チーズクリームにそれぞれ配合されることを特徴とする請求項1に記載のチーズドック。
【請求項3】
小麦粉を主成分とする生地の内部に、チーズを主成分とするチーズクリームを封入してなるチーズドックの製造方法であって、
製造時において、酢酸ナトリウム及びグリシンを含むグリシン製剤を、該グリシン製剤に含まれる酢酸ナトリウム及びグリシンが、前記生地に対し0.45〜0.50重量パーセントとなるとともに、前記チーズクリームに対し0.75〜0.80重量パーセントとなるように、該生地及び該チーズクリームにそれぞれ配合することを特徴とするチーズドックの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−104976(P2007−104976A)
【公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−299604(P2005−299604)
【出願日】平成17年10月14日(2005.10.14)
【出願人】(505384346)株式会社 山喜 (1)
【Fターム(参考)】