説明

チーズ含有食品及びその製造方法

【課題】軟質チーズ含有量の高い原料を用いて、口溶けの滑らかさ、風味等の品質を充分に備えたチーズ含有食品を製造する。
【解決手段】軟質チーズを70〜100質量%含有する混合原料を、ジュール加熱機21、22により加熱した後に高速剪断クッカー10で均質化する加熱均質化工程を2回以上行うことを特徴とするチーズ含有食品の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軟質チーズを主原料とするチーズ含有食品及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水分含量が高い軟質チーズは、そのまま食される他、種々のチーズ含有食品の原料として使用されている。例えば、特許文献1では、ヨーグルトやクリームチーズ様食品等が製造されている。
しかし、従来、軟質チーズ含有量の高い原料を用いると、口溶けの滑らかさ、風味等の品質を充分に得ることが困難であった。これらの品質を特に左右する要因は、加熱工程にある。
【0003】
例えば、クッカーのジャケットスチームによる間接加熱を行うと、焦げが発生しやすい。また、蒸気、温水加熱機(チューブ式加熱機など)による循環加熱では、配管内の温度ムラが大きく、オイルオフを招きやすい。また、直接蒸気加熱を行うと原料に水分が加わり、製品中の水分含有量の管理が難しい。
一方、ジュール加熱方式は、通電により原料そのものを発熱させるため、温度制御が容易で、流動性の食品を比較的均一に加熱できる方式として知られている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−46139号公報
【特許文献2】特開2007−130223号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、本発明者が、軟質チーズ含有量の高い原料にジュール加熱方式を適用してみたところ、加熱工程後にオイルオフを招きやすいことが分かった。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、軟質チーズ含有量の高い原料を用いて、口溶けの滑らかさ、風味等の品質を充分に備えたチーズ含有食品を製造することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、鋭意検討を行った結果、ジュール加熱機による加熱後に、高速剪断クッカーにより均質化を行うことにより上記課題が解決されることを見出し、本発明を完成させた。
本発明は以下の態様を有する。
[1]軟質チーズを70〜100質量%含有する混合原料を、ジュール加熱機により加熱した後に高速剪断クッカーで均質化する加熱均質化工程を2回以上行うことを特徴とするチーズ含有食品の製造方法。
[2]混合原料の水分含量が48〜61質量%である[1]に記載のチーズ含有食品の製造方法。
[3]混合原料の脂肪/タンパク質の質量比が3.0〜12である[1]または[2]に記載のチーズ含有食品の製造方法。
[4]最後の均質化工程の後に、容器内に充填する工程を備える[1]〜[3]の何れかに記載のチーズ含有食品の製造方法。
[5]ジュール加熱機と高速剪断クッカーが環状に接続された装置を用いて、前記加熱均質化工程を行う[1]〜[4]の何れかに記載のチーズ含有食品の製造方法
[6][1]〜[5]の何れかに記載のチーズ含有食品の製造方法により製造されることを特徴とするチーズ含有食品。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、軟質チーズ含有量の高い原料を用いて、口溶けの滑らかさ、風味等の品質を充分に備えたチーズ含有食品を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の第1実施形態の製造方法に用いる装置の構成図である。
【図2】本発明の第2実施形態に製造方法に用いる装置の構成図である。
【図3】[実施例]中、比較例1の製造方法を説明する説明図である。
【図4】[実施例]中、比較例2の製造方法を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[混合原料]
本発明に用いる混合原料は、軟質チーズを70〜100質量%含有する。本発明でいう軟質チーズとは、MFFB(moisture on a fat-free basis;チーズから脂肪を除いた質量中の水分含量)が、67%以上のチーズである。
本発明に用いる軟質チーズは、ナチュラルチーズ、プロセスチーズ、又はこれらの混合物でもよいが、プロセスチーズはナチュラルチーズを一度加熱溶融したものなので、チーズ特有の風味がナチュラルチーズに比べ損なわれる。そのため、本発明に用いる軟質チーズは、ナチュラルチーズのみであることが好ましい。
ナチュラルチーズである軟質チーズとしては、クリームチーズ、クワルク、ニューシャテル、フロマージュブラン、トフェン、マスカルポーネ、リコッタ、プチスイス、ベーカーズチーズ、ラブネ、トヴォログ等が挙げられる。軟質チーズは、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
プロセスチーズである軟質チーズとしては、上記ナチュラルチーズの一種又は二種以上を組み合わせたものを60%以上含有する原料を、加熱溶融後冷却したものが挙げられる。
【0010】
混合原料中の軟質チーズ以外の材料としては、バター、全乳蛋白質濃縮物(TMC)、乳蛋白濃縮物(MPC)、乳清蛋白質濃縮物(WPC)、乳清蛋白質分離物(WPI)、カゼインナトリウム、レンネットカゼイン、カゼインカルシウム、安定剤、増粘剤、乳化剤、でんぷん、加工でんぷん、寒天、水などが挙げられる。
安定剤としては、キサンタンガム、グァーガム、ローカストビーンガム、カラヤガム、トラガントガムなどが挙げられる。増粘剤としては、カラギーナン、ゼラチン、ペクチン、アルギン酸プロピレングリコール、アルギン酸塩などが挙げられる。
乳化剤は、通常のプロセスチーズ、チーズフードまたは乳等を主要原料とする食品の製造に一般的に用いられる乳化剤であることが好ましい。例えば、クエン酸カルシウム、クエン酸三ナトリウム、ピロリン酸四カリウム、ピロリン酸二水素カルシウム、ピロリン酸二水素二ナトリウム、ピロリン酸四ナトリウム(結晶)、ピロリン酸四ナトリウム(無水)、ポリリン酸カリウム、ポリリン酸ナトリウム、メタリン酸カリウム、メタリン酸ナトリウム、リン酸三カリウム、リン酸三カルシウム、リン酸水素二アンモニウム、リン酸二水素アンモニウム、リン酸水素二カリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸一水素カルシウム、リン酸二水素カルシウム、リン酸水素二ナトリウム(結晶)、リン酸水素二ナトリウム(無水)、リン酸二水素ナトリウム(結晶)、リン酸二水素ナトリウム(無水)、リン酸三ナトリウム(結晶)、リン酸三ナトリウム(無水)等が挙げられる。
乳化剤の添加量は混合原料全体に対して、0.05〜5質量%が好ましく、0.1〜3質量%がより好ましい。
【0011】
混合原料中に含まれる水分含量(原料全体に占める水分の割合)は、チーズ含有食品の種類にもよるが、口溶けが滑らかでかつ保型性のあるポーションタイプのチーズ含有食品とする場合、48〜61質量%であることが好ましく、48〜55質量%であることがより好ましい。水分含量が高いほど口溶けが滑らかになりやすいが、61質量%を超えると、クリームチーズの風味が損なわれる。また、水分含量が高すぎると、チーズ風味が損なわれると共に、硬度が低下し、アルミニウム箔等の包装材を剥離しにくくなる。
【0012】
混合原料における脂肪/タンパク質の質量比は、3.0〜12であることが好ましく、3.5〜5.0であることがより好ましい。脂肪/タンパク質の質量比が低すぎると、口溶け感が得難い。一方、脂肪/タンパク質の質量比が高すぎると、オイルオフが生じやすい。
本発明によれば、脂肪/タンパク質の質量比が3.0以上で、口溶け感に優れるチーズ含有食品を製造でき、しかも、オイルオフを防止しやすい。
【0013】
各原料は、ジュール加熱機に最初に導入される前に混合されて混合原料とされる(混合工程)。混合原料は、軟質チーズ、又は軟質チーズとその他の原料を混合することによって得られる。混合の方法に限定はなく、高速剪断クッカーで混合してもよいし、低速回転溶融釜で混合してもよい。また、原料混合時に、蒸気混合、温湯、スチームジャケット等により、30〜50℃程度に予備加熱してもよい。
【0014】
[第1実施形態]
本発明の第1実施形態の製造方法に用いる装置を図1に示す。図1の装置は、環状流路1に高速剪断クッカー10、ジュール加熱機21、22が順次設けられている。また、高速剪断クッカー10の下流側には、ポンプ40が設けられ、ジュール加熱機21、22の各々の下流側には、スタティックミキサー31、32が各々設けられている。また、ポンプ40の下流側であって、ジュール加熱機21の上流側には、三方切換弁50が設けられ、該三方切換弁50から取り出し流路51が分岐している。
【0015】
高速剪断クッカー10は、高速で回転するカッター刃で原料を剪断しながら撹拌する装置である。ここで、高速で回転とは、二枚以上のカッター刃で750rpm以上の回転を与えることを意味する。高速剪断クッカー10のカッター刃の回転数は、1000rpm以上であることが好ましく、1500rpm以上であることがより好ましい。
高速剪断クッカーとしては、例えば、ステファン社製又はニチラク社製のクッカー等が挙げられる。
【0016】
ジュール加熱機21、22は、飲食物そのものに電気を流し、ジュール熱により飲食物を加熱する装置である。ジュール加熱機は、飲食物の流路となるパイプと、パイプ内側に、流れ方向の所定間隔をおいて配置された2以上の環状電極で構成されている。
ジュール加熱機は、それ自体に撹拌機構を備えないため、本実施形態では、下流側にスタティックミキサー31、32を配置している。スタティックミキサーは、駆動部のない静止型混合器で、別名インラインミキサーとも呼ばれている。スタティックミキサーは、管路内に、ねじれ面を有するエレメントを備えている。飲食物は、このエレメントを通過する際、エレメントから分割・転換・反転の作用を受け、殆ど剪断力を受けることなく混合されるようになっている。
ポンプ40としては、例えば、遠心ポンプ、定量ポンプが使用される。
三方切換弁50は、ポンプ40側が共通ポート、ジュール加熱機21側が常開ポート、取り出し流路51側が常閉ポートとなっている。
【0017】
図1の装置でチーズ含有食品を製造する場合、まず、高速剪断クッカー10に、軟質チーズ、又は軟質チーズとその他の原料を投入する。そして、高速剪断クッカー10で混合原料を得た後、三方切換弁50の常開ポートを開いた状態で、ポンプ40を動作させる。これにより、混合原料を環状流路1内で1回以上循環させる。すなわち、混合原料を、ジュール加熱機21、スタティックミキサー31、ジュール加熱機22、スタティックミキサー32、高速剪断クッカー10、ポンプ40の順に順次通過させ、循環させる。この間、混合原料は、ジュール加熱機21、22により順次加熱される。加熱は、原料中の軟質チーズが総て溶融する温度に達するまで行う。具体的には、70〜100℃まで加熱することが好ましく、80〜90℃まで加熱することがより好ましい。
【0018】
循環は、2回以上行い、3回以上行うことが好ましく、4回以上行うことがより好ましい。すなわち、ジュール加熱機により加熱した後に高速剪断クッカーで均質化する加熱均質化工程を2回以上行い、3回以上行うことが好ましく、4回以上行うことがより好ましい。
循環回数が少ない場合(加熱均質化工程の回数が少ない場合)、ジュール加熱機21、22の各々による温度上昇を大きくしなければならない。そのためには、混合原料のジュール加熱機21、22を通過する速度を遅くしなければならない。特に循環が1回のみ(加熱均質化工程が1回のみ、ジュール加熱機21、22を通過する回数が1回のみ)の場合、ジュール加熱機22の出口温度を一度に所望の温度とするため、ジュール加熱機21、22の各々の温度上昇幅を大きくする必要があり、その結果、混合原料のジュール加熱機21、22を通過する速度を特に遅くしなければならない。循環が1回のみでは、オイルオフを充分に防止できない場合がある。
【0019】
混合原料の温度が原料中の軟質チーズが総て溶融する温度に達したら、三方切換弁50の常開ポートを開き、取り出し流路51から溶融状態のチーズ含有食品をとりだし、充填機70に導き、容器に充填する(容器充填工程)。これにより、容器に充填されたチーズ含有食品が得られる。
容器の材質としては、アルミニウム箔、プラスチック、紙等、適宜のものが使用できる。中でもアルミニウム箔は、安価でしかも内容物の保存性に優れるので好ましい。アルミニウム箔を用いた容器の具体的形状としては、例えば特開平7−313054号に記載されたボトムシェルホイルとトップホイルを組み合わせた、いわゆる6Pチーズ形態のものが挙げられる。
【0020】
[第2実施形態]
本発明の第2実施形態の製造方法に用いる装置を図2に示す。図2において、図1と同じ構成部材には、図1と同じ符号を付して詳細な説明を省略する。
図2の装置は低速回転溶融釜60から始まる直列流路(非環状流路)2に、ジュール加熱機21、高速剪断クッカー10A、ジュール加熱機22、高速剪断クッカー10Bが順次設けられている。すなわち、ジュール加熱機と高速剪断クッカーが交互に設けられている。
また、低速回転溶融釜60の下流側には、ポンプ40が設けられ、ジュール加熱機21、22の各々の下流側には、スタティックミキサー31、32が各々設けられている。
高速剪断クッカー10A、10Bは、図1の高速剪断クッカー10と同様のものである。
【0021】
図2の装置でチーズ含有食品を製造する場合、まず、低速回転溶融釜60に、軟質チーズ、又は軟質チーズとその他の原料を投入する。そして、低速回転溶融釜60で混合原料を得た後、ポンプ40を動作させる。これにより、混合原料を直列流路2を通過させる。すなわち、混合原料を、ジュール加熱機21、スタティックミキサー31、高速剪断クッカー10A、ジュール加熱機22、スタティックミキサー32、高速剪断クッカー10Bの順に順次通過させる。この間、混合原料は、ジュール加熱機21、22により順次に加熱される。加熱は、原料中の軟質チーズが総て溶融する温度に達するように行う。
図2の装置では、ジュール加熱機により加熱した後に高速剪断クッカーで均質化する加熱均質化工程を2回行うこととなる。
高速剪断クッカー10Bから流出させた後は、充填機70に導き、容器に充填する(容器充填工程)。これにより、容器に充填されたチーズ含有食品が得られる。
容器の材質、形状としては、第1実施形態で説明したとおりのものを使用できる。
【0022】
[その他の実施形態]
図1の装置において、ジュール加熱機22及びスタティックミキサー32を省略した装置を用いて行ってもよい。ただし、その場合、循環回数を増やすべきである。一つのジュール加熱機で大幅に加熱することは、オイルオフを招きやすくするからである。
図2の装置において、高速剪断クッカー10A又は高速剪断クッカー10Bの上流側に、さらに1以上のジュール加熱機とスタティックミキサーを追加してもよい。高速剪断クッカー10Bの下流側に、さらに1以上のジュール加熱機とスタティックミキサー、及び高速剪断クッカーを追加してもよい。
何れの場合にも、最後の加熱均質化工程後にジュール加熱機による加熱を行なわないことが好ましい。例えば、図2の装置において、高速剪断クッカー10Bの下流側に、さらにジュール加熱機のみ、又はこれとスタティックミキサーのみを追加することは好ましくない。ジュール加熱機による加熱の後には、高速剪断クッカーによる均質化が行われることが好ましい。
【実施例】
【0023】
次に、試験例および実施例を示して本発明を更に詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
<試験例1>
(目的)
この試験は、水分含有量が品質に与える影響を確認すると共に、適切な水分含有量を検索する目的で実施した。
【0024】
(試料の調製)
原料の配合量を表1に示すようにした他は後述の実施例1と同様にして混合原料を加熱し、取り出し流路51から充填機70に送液してアルミ箔に充填したものを試料1〜5とした。なお、試料番号3は、実施例1と同内容である。
【0025】
【表1】

【0026】
(評価方法等)
試料1〜5について、下記の評価結果等の数値を、表2に示す。
a)水分含量
水分含量を、各原料の水分含量と配合量から、計算により求めた。
【0027】
b)滑らかさ
滑らかさは、10名のパネラーが以下の基準で評価した結果の平均値で示した。
5 非常に滑らか。
4 滑らか。
3 やや滑らか。
2 滑らかさをあまり感じない。
1 滑らかではない。
【0028】
c)クリームチーズの風味
クリームチーズの風味は、10名のパネラーが以下の基準で評価した結果の平均値で示した。
5 強く感じる。
4 感じる。
3 やや感じる。
2 あまり感じない。
1 全く感じない。
【0029】
d)突き刺し硬度
突き刺し硬度は、山電社製クリープメーターRE2−33005Sを用い、直径8mmのプランジャーで、進入速度5mm/s、進入距離11.25mmの条件にて測定した。
【0030】
e)剥離状態
剥離状態は、アルミ箔に充填し、10℃に冷却した後にアルミ箔を剥き、アルミ箔からの剥離状態を観察した。その結果、剥離状態が良好で殆どアルミ箔にチーズの付着が見られなかったものを○、一部チーズの付着が見られたが剥離したものを△、アルミ箔にチーズが付着し剥離しなかったものを×とした。
【0031】
【表2】

【0032】
(結果)
表2に示すように、水分含量48〜61質量%の範囲で、滑らかさ及び風味の点で優れていた。また、水分含量が大きくなるほど、硬度が低下し、アルミ包装に付着しやすいが、水分含量61質量%までは、剥離可能であった。
以上のように、滑らかな口溶けを有するポーションタイプのチーズ製造にあたっては、水分含量の管理が重要であり、48〜61質量%とすることが好ましいことが分かった。
また、本発明の方法は、混合原料中の水分を管理すれば、完成品の水分を管理できるので、滑らかな口溶けを有するポーションタイプのチーズ製造に有効であることが分かった。
【0033】
<試験例2>
(目的)
この試験は、流量と循環回数が品質に与える影響を確認する目的で実施した。
【0034】
(試料の調製)
循環回転数と流量を表3に示すように変更した他は、後述の実施例1と同様にして混合原料を加熱し、取り出し流路51から充填機70に送液してアルミ箔に充填したものを試料11〜15とした。なお、試料番号15は、実施例1と同内容である。
【0035】
(評価方法等)
試料11〜15について、下記の評価結果等の数値を、表3に示す。
f)循環回転数
循環回転数は、取り出し流路51から取り出すまでに、ジュール加熱機21を通過した回数である。
【0036】
g)流量
流量は、スタティックミキサー32の下流側に設置した山武社製MGG10Cにより測定した。
なお、後述の実施例、比較例における流量も同様にして測定した。
【0037】
h)最終温度
最終温度は、高速剪断クッカー10に付属の温度計により、取り出し流路51に送液する直前の温度を測定した。
【0038】
i)オイルオフ
アルミ箔に試料を充填し、10℃に冷却後目視にてオイルオフの有無を判断した。その結果、オイルオフが認められなかったものを○とし、認められたもの×とした。
【0039】
【表3】

【0040】
(結果)
表3に示すように、循環回転数が1回の場合はオイルオフを招くことが分かった。
【0041】
<実施例1>
(原料)
下記原料を用いた。
なお、各原料中の脂肪含量は、レーゼゴットリーブ法により求めた。各原料中のタンパク質含量は、ケルダール法により求めた。各原料中の水分含量は、混砂乾燥法により求めた。
【0042】
クリームチーズ(クラフト社製Australian Cream Cheese)
脂肪含量:34質量%
タンパク質含量:8質量%
脂肪/タンパク質の質量比:4.2
水分含量:54質量%
【0043】
バター(森永乳業社製無塩バター)
脂肪含量:83質量%
タンパク質含量:0.5質量%
脂肪/タンパク質の質量比:166.2
水分含量:15.5質量%
【0044】
TMP(Ingredia社製Promilk 85Y)
脂肪含量:1質量%
タンパク質含量:81質量%
脂肪/タンパク質の質量比:0.012
水分含量:5質量%
【0045】
原料全体(混合原料)では、下記のとおりである。
脂肪含量:33質量%
タンパク質含量:9質量%
脂肪/タンパク質の質量比:3.8
水分含量:54質量%
【0046】
(装置)
図1に示す構成の装置を用いた。
高速剪断クッカー10としては、ステファン社製ステファンクッカーを用いた。回転翼の回転速度は1500rpmとした。ジュール加熱機21、22は、フロンティアエンジニアリング社製FJCC2S2Mを用いた。スタティックミキサー31、32は、フロンティアエンジニアリング社製を用いた。ポンプ40は、イワキウォケッシャー社製WRU−130を用いた。充填機70は、Sapal社製ML−4を用いた。
【0047】
(製造方法)
上記原料の総てを、予め40℃に調整してから高速剪断クッカー10に投入し、2分間加熱攪拌後、循環加熱を開始した。循環して高速剪断クッカー10に戻ってきた際は、その都度最初と同じ条件で2分間加熱攪拌した。
循環時のジュール加熱機21、22における流量と、各装置における循環回数毎の温度を表4に示す。4回循環させた後、取り出し流路51から充填機70に送液してアルミ箔に充填した。
表4において、「クッカー内」は、高速剪断クッカー10内に配置された付属温度計にて、高速剪断クッカー10から排出する直前に測定した温度である。「ジュール入口」は、ジュール加熱機21の入口に配置した西野製作所社製NPS−102にて測定した温度である。「ジュール出口」は、ジュール加熱機22の出口に配置した西野製作所社製NPS−102にて測定した温度である。
【0048】
【表4】

【0049】
<実施例2>
(原料)
実施例1と同じ原料を用いた。
(装置)
図2に示す構成の装置を用いた。
高速剪断クッカー10A、10Bとしては、実施例1の高速剪断クッカー10と同じものを用い、実施例1と同条件で稼働させた。
ジュール加熱機21、22は、実施例1のジュール加熱機21、22と同じものを用い、実施例1と同条件で稼働させた。スタティックミキサー31、32、ポンプ40、充填機70も、実施例1と同じものを用いた。
低速回転溶融釜60は、ニチラク機械社製MLM−90074を用いた。撹拌翼の回転速度は60rpmとした。
【0050】
(製造方法)
上記原料の総てを、予め40℃に調整してから低速回転溶融釜60に投入し、5分間加熱攪拌後、ジュール加熱機21に送液し、表5に示す流量で通過させ、高速剪断クッカー10Aに送液した。高速剪断クッカー10Aで1分間加熱攪拌後、ジュール加熱機22に送液し、表5に示す流量で通過させ、高速剪断クッカー10Bに送液した。高速剪断クッカー10Bで1分間加熱攪拌後、充填機70に送液してアルミ箔に充填した。
表5において、「溶融釜内」は、低速回転溶融釜60内に配置された付属温度計にて、低速回転溶融釜60から排出する直前に測定した温度である。「ジュール入口」は、ジュール加熱機21の入口に配置した西野製作所社製NPS−102にて測定した温度である。「ジュール中間」は、ジュール加熱機21の中間に配置した西野製作所社製NPS−102にて測定した温度である。「クッカーA内」は、高速剪断クッカー10A内に配置された付属温度計にて、高速剪断クッカー10Aから排出する直前に測定した温度である。「ジュール出口」は、ジュール加熱機22の出口に配置した西野製作所社製NPS−102にて測定した温度である。「クッカーB内」は、高速剪断クッカー10B内に配置された付属温度計にて、高速剪断クッカー10Bから排出する直前に測定した温度である。
【0051】
<比較例1>
(原料)
実施例1と同じ原料を用いた。
(装置)
図3に示すように、高速剪断クッカー10A、10Bを除いた他は、実施例2と同じ構成の装置を用い、下記製造方法において特に断りのない限り、実施例2と同条件で稼働させた。
【0052】
(製造方法)
上記原料の総てを、予め40℃に調整してから低速回転溶融釜60に投入し、5分間加熱攪拌後、ジュール加熱機21に送液し、次いでジュール加熱機22に送液し、その後、充填機70に送液してアルミ箔に充填した。ジュール加熱機21、22を通過する際の流量、及び各位置における温度は、表5に示すとおりである。
【0053】
<比較例2>
(原料)
実施例1と同じ原料を用いた。
(装置)
図4に示すように、高速剪断クッカー10Bを除いた他は、実施例2と同じ構成の装置を用い、下記製造方法において特に断りのない限り、実施例2と同条件で稼働させた。
【0054】
(製造方法)
上記原料の総てを、予め40℃に調整してから低速回転溶融釜60に投入し、5分間加熱攪拌後、ジュール加熱機21に送液し、表5に示す流量で通過させ、高速剪断クッカー10Aに送液した。高速剪断クッカー10Aで1分間加熱攪拌後、ジュール加熱機22に送液し、表5に示す流量で通過させ、その後、充填機70に送液してアルミ箔に充填した。各位置における温度は、表5に示すとおりである。
【0055】
【表5】

【0056】
(結果)
表5の結果から、本発明によればオイルオフを抑制できることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明は、ポーションタイプのチーズ等のチーズ含有食品の製造に有用である。
【符号の説明】
【0058】
1…環状流路、2…直列流路、10…高速剪断クッカー、21…ジュール加熱機、
22…ジュール加熱機、31…スタティックミキサー、32…スタティックミキサー、
70…充填機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軟質チーズを70〜100質量%含有する混合原料を、ジュール加熱機により加熱した後に高速剪断クッカーで均質化する加熱均質化工程を2回以上行うことを特徴とするチーズ含有食品の製造方法。
【請求項2】
混合原料の水分含量が48〜61質量%である請求項1に記載のチーズ含有食品の製造方法。
【請求項3】
混合原料の脂肪/タンパク質の質量比が3.0〜12である請求項1または2に記載のチーズ含有食品の製造方法。
【請求項4】
最後の均質化工程の後に、容器内に充填する工程を備える請求項1〜3の何れかに記載のチーズ含有食品の製造方法。
【請求項5】
ジュール加熱機と高速剪断クッカーが環状に接続された装置を用いて、前記加熱均質化工程を行う請求項1〜4の何れかに記載のチーズ含有食品の製造方法。
【請求項6】
請求項1〜5の何れかに記載のチーズ含有食品の製造方法により製造されることを特徴とするチーズ含有食品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−72203(P2011−72203A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−224266(P2009−224266)
【出願日】平成21年9月29日(2009.9.29)
【出願人】(000006127)森永乳業株式会社 (269)
【Fターム(参考)】