説明

チーズ様食品及びその製造方法

【課題】 チーズ様の形態、風味を有する食品として、和食、洋食を問わず広範に適用でき、従来のチーズとは異なる栄養学的特性を有すると共に、機能性が向上又は新たな機能性を有する物質を含むチーズ様食品及びその製造方法を提供する。
【解決手段】 チーズ様食品の製造方法は、豆類蒸煮物及び/又は穀類蒸煮物に麹菌を培養し製麹された麹と、乳及び/又は乳加工処理物とを含む材料を混合し麹混合材料を得る麹混合工程と;麹混合材料を醸造発酵し醸造物を得る醸造発酵工程と;醸造物に、脂質含有物を添加混合し脂質混合醸造物を得る脂質混合工程と;脂質混合醸造物を所定の形状に成形する成形工程と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チーズ様食品及びチーズ様食品の製造方法に係り、特に、チーズ様の風味、形態を有し、乳酸菌発酵品等とは異なる栄養学的特性を有すると共に機能性が向上又は新たな機能性を有する物質を含むチーズ様食品及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
チーズは、世界各地でそれぞれ独特な製法によって非常に多くの種類のものが製造されており、FAO/WHOにより国際規格が定められている。日本国内では、乳及び乳製品の成分規格等に関する省令(昭和26年厚生省令第52号)において、チーズは、「ナチュラルチーズ」と「プロセスチーズ」に分類され、「ナチュラルチーズ」は、(1号):「乳、バターミルク(バターを製造する際に生じた脂肪粒以外の部分)、クリーム又はこれらを混合したものの殆どすべて又は一部のたんぱく質を酵素その他の凝固剤により凝固させた凝乳から乳清の一部を除去したもの又はこれらを熟成したもの」、及び(2号):「前号で掲げるもののほか、乳等を原料として、たんぱく質の凝固作用を含む製造技術を用いて製造したものであって、同号に掲げるものと同様の化学的、物理的および官能的特性を有するもの」とされ、「プロセスチーズ」は、「ナチユラルチーズを粉砕し、加熱溶融し、乳化したもの」と定義されている。また、「ナチュラルチーズ」は、水分含量により、軟質チーズ(50〜75%)、半硬質チーズ(40〜50%)、硬質チーズ(30〜45%)、超硬質チーズ(30〜35%)に分類され、さらに、熟成の有無や、熟成に用いる細菌、カビ等の種類などにより区分されている。なお、チーズの国際規格(CODEX STAN A−6−1978,Rev.1−1999,Amended 2003)では、脂質分を除いたチーズ重量に対する水分含量(MFFB%)による、超硬質(Extra hard:<51%)、硬質(Hard:49〜56%)、堅質/半硬質(Firm/Semi−hard:54〜69%)、軟質(Soft:>67%)等の堅さの区分名、及び、熟成(Ripened)、カビ熟成(Mould ripened)、非熟成/フレッシュ(Unripened/Fresh)、塩水浸漬(In Brine)等の熟成特性とを併せ称することが出来るとしている。
【0003】
また、植物性原料を用いた醸造発酵食品には、日本における伝統的な醸造調味料である味噌や醤油があり、全国各地において多種多様なものが製造されている。味噌(みそ)品質表示基準(農水省告示第1664号、改正告示第1821号)では、「大豆若しくは大豆及び米、麦等の穀類を蒸煮したものに、米、麦等の穀類を蒸煮して麹菌を培養したものを加えたもの又は大豆を蒸煮して麹菌を培養したもの若しくはこれに米、麦等の穀類を蒸煮したものを加えたものに食塩を混合し、これを発酵させ、及び熟成させた半個体状のもの」を味噌と定義している。麹菌を培養する豆類や穀類の種類(麹の種類)とこれに混合する蒸煮豆類、蒸煮穀類の種類により、米味噌、麦味噌、豆味噌に大別される。醤油(しょうゆ)品質表示基準(農水省告示第1665号、改正告示第1704号)では、「大豆若しくは大豆及び麦、米等の穀類(小麦グルテンを加えたものを含む)を蒸煮その他の方法で処理して、麹菌を培養したもの(醤油麹)又は醤油麹に米を蒸し、若しくは膨化したもの若しくはこれを麹菌により糖化したものを加えたものに食塩水又は生揚げを加えたもの(諸味)を発酵させ、及び熟成させて得られた清澄な液体調味料(製造工程においてセルラーゼ等の酵素(蛋白分解酵素を除く)を補助的に使用したものを含む)」を本醸造方式による醤油と定義し、大豆は、脱脂加工大豆を含むものとされている。この外、「諸味にアミノ酸液(大豆等の植物性蛋白質を酸により処理したもの)、酵素分解調味液(大豆等の植物性蛋白質を蛋白分解酵素により処理したもの)又は発酵分解調味液(小麦グルテンを発酵させ、分解したもの)を加えて発酵、及び熟成させて得られた清澄な液体調味料」を混合醸造方式による醤油としている。
【0004】
上述のようなチーズの他に、大豆を丸のまま、又は半割れの状態で乳製品を存在させ、チーズ生成菌で発酵させた大豆粒チーズ様食品がある(例えば、特許文献1参照)。また、リゾープス属の微生物により製麹した麹と、糖化麹菌により製麹した麹を、45℃内外に加温した脱脂乳に加え、保温しつつ発酵せしめ、15%内外の食塩を加えて熟成後、濾過火入れした液に酵母を添加更に数日間発酵熟成させた後に食塩を追加飽和せしめる、脱脂牛乳より濃厚調味液の速醸法が知られている(例えば、特許文献2参照)。高血圧予防治療薬の一つに、レニン−アンジオテンシン系血圧制御系におけるアンジオテンシン変換酵素(ACE)の活性を阻害して、アンジオテンシンI(デカペプチド:DRVYIHPFHL)から血圧上昇作用を有するアンジオテンシンII(DRVYIHPF)への変換を阻害するACE阻害剤がある。麹を用いて醸造発酵する日本の伝統的な醸造調味料である醤油や味噌にはこのようなACE阻害能が認められており(例えば、非特許文献1参照)、米味噌において、仕込後発酵の進行につれACE阻害能が上昇し、7日後最大となること、また、味噌中に生成したACE阻害物として、ジペプチド(SW)を同定したことが報告されている(例えば、非特許文献2参照)。乳酸菌発酵食品では、ACE阻害活性を有するラクトトリペプチド(VPP及びIPP)が、乳酸菌の中でもラクトバチルス・ヘルベチカス(Lacto−bacillus helveticus)による発酵乳に特異的に見られることが報告されている(例えば、非特許文献3参照)。
【0005】
【特許文献1】特公平2−62214号公報
【特許文献2】特公昭38−2773号公報
【非特許文献1】Okamoto A. et al 、Bioscience Biotechnology and Biochemistry:59、p1147、(1995)
【非特許文献2】Takahama A. et al、International News on Fats、Oils and Related Materials:4、p525、(1993)
【非特許文献3】中村康則ら、ジャパンフードサイエンス:Vol.37、2月号、pp37−41、(1998)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述のような各種ナチュラルチーズは、乳又は乳製品を原料とし、殆んどの製品は乳酸菌及びペニシリウム属、カンジダ属等のカビをスターターとして用い発酵させており、特許文献1のようなチーズ様食品では、発酵にチーズ生成菌を用いるものであることから、チーズ様の風味は得られるが、栄養学的にチーズ、及び使用する原料としての乳又は乳製品を超えるものではなく、また、チーズの持つ機能性(生理活性)をさらに向上させたり、新たな機能性物質を生むものではなかった。また、特許文献2のような「脱脂牛乳より調味液の速醸法」では、45〜50℃に加温した脱脂乳に、リゾープス属の微生物により製麹した麹と米麹を加え保温発酵することから、濾過火入れにより半日程度で麹発酵を終了させることができ、添加酵母による発酵熟成は数日間と短時間の内に濃厚粘稠の調味液は得られるが、濾過火入れにより麹が除去されてしまい、また麹菌からの各種酵素が殆んど失活するなど、酵母発酵作用主体の醸造物となり、実質的に麹醸造の特徴を生かした醸造物の製造は期待できないものであった。また、このような醸造物からチーズ代用品となり得る風味、形態に仕上げることは容易ではなかった。
【0007】
本発明は、上記のような状況に鑑みてなされたものであり、チーズ様の形態、風味を有する食品として、和食、洋食を問わず広範に適用でき、従来のチーズとは異なる栄養学的特性を有すると共に、機能性が向上又は新たな機能性を有する物質を含むチーズ様食品及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明によるチーズ様食品は、豆類蒸煮物及び/又は穀類蒸煮物に麹菌を培養し製麹された麹と、乳及び/又は乳加工処理物とを含み混合された麹混合材料が醸造発酵された醸造物を含んでなるチーズ様食品であって;醸造物に、脂質含有物が添加混合された脂質混合醸造物が所定の形状に成形されていることを特徴とする。このチーズ様食品において、麹混合材料が非加熱状態で混合されたものであり、且つ、醸造物が5℃以上、40℃未満の温度で7日以上、180日以下の期間醸造発酵されたものであることが好ましく、また、乳及び/又は乳加工処理物が牛由来であることが良く、さらに、乳加工処理物が脱脂粉乳であることが好適である。そして、麹混合材料が、塩材料を含み混合されていることが好ましく、また、麹混合材料が、アルコール含有材料を含み混合されていても良い。
【0009】
以上のようなチーズ様食品において、醸造物が、醸造発酵により生成されアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害活性を有し乳及び/又は乳加工処理物の乳酸菌発酵においては生成することのない血圧上昇抑制作用物を含んでなることが好適であり、また、麹混合材料100重量部に対し、乳及び/又は乳加工処理物が乾燥物として10重量部以上、90重量部以下配合され、麹が、10重量部以上、90重量部以下配合されていることが好ましい。そして、脂質含有物が、植物性油脂及び/又は乳脂肪を含んでなることが好ましく、また、脂質混合醸造物100重量部に対し、脂質含有物が0.5重量部以上、40重量部以下配合されていることが好適である。
【0010】
また、上記目的を達成するため、本発明によるチーズ様食品の製造方法は、豆類蒸煮物及び/又は穀類蒸煮物に麹菌を培養し製麹された麹と、乳及び/又は乳加工処理物とを含む材料を混合し麹混合材料を得る麹混合工程と;麹混合材料を醸造発酵し醸造物を得る醸造発酵工程と;醸造物に、脂質含有物を添加混合し脂質混合醸造物を得る脂質混合工程と;脂質混合醸造物を所定の形状に成形する成形工程と;を備えることを特徴とする。
【0011】
このようなチーズ様食品の製造方法において、麹混合工程における麹混合材料は、非加熱状態で混合し得られ;醸造発酵工程における醸造物は、5℃以上、40℃未満の温度で7日以上、180日以下の期間醸造発酵し得られることが好ましく、また、乳及び/又は乳加工処理物が牛由来であることが良く、さらに、乳加工処理物が脱脂粉乳であることが好適である。そして、麹混合工程は、塩材料を加えて混合することにより麹混合材料を得ることが好適であり、また、麹混合工程は、アルコール含有材料を加えて混合することにより麹混合材料を得ることができ、さらに、麹混合工程は、得られる麹混合材料100重量部に対し、乳及び/又は乳加工処理物を乾燥物として10重量部以上、90重量部以下配合し、麹を、10重量部以上、90重量部以下配合することが好ましい。なお、脂質含有物が、植物性油脂及び/又は乳脂肪を含んでなることが好適であり、また、脂質混合工程は、得られる脂質混合醸造物100重量部に対し、脂質含有物を0.5重量部以上、40重量部以下配合することが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明のチーズ様食品及びチーズ様食品の製造方法によれば、製麹された麹と、乳及び/又は乳加工処理物とを含み混合された麹混合材料が醸造発酵されるため、主に麹菌が産生するプロテアーゼ、アミラーゼ、プロティナーゼ、ヘミセルラーゼ、リパーゼ等各種酵素の作用、また、複次的なアミノ−カルボニル反応、エステル化反応などにより、植物性の麹原料及び動物性の乳原料等が分解、発酵・熟成されて、チーズ様或いはクリーム様の新規な風味を持った製造中間品としての醸造物を得ることができる。チーズ様食品は、このような醸造物に脂質含有物を添加混合して成形されることから、醸造物の風味や栄養学的特性が維持されると共に、各種チーズに類似する形状・形態を有するものとなる。また、アミノ酸、脂質、ラクトース、クエン酸などの生化学的変化に由来する各種チーズフレーバー成分や香辛料などを脂質混合醸造物に添加したり、脂質混合醸造物、及び/又は所定形状に成形した脂質混合醸造物について、熟成及び/又は乾燥する操作を追加した場合には、それぞれ各種チーズにより似た風味、形態のチーズ様食品とすることができる。
【0013】
麹混合材料は、乳及び/又は乳加工処理物原料に由来するカゼインなどを主体とする乳蛋白成分などについても乳酸菌発酵とは発酵・熟成条件が全く異なる醸造発酵工程を経ることとなる。したがって得られる醸造物は乳酸菌発酵品とは栄養学的特性が異なり、乳酸菌発酵品には存在し得ない新規機能性物質を生成させることが可能となる。また、味噌や醤油などの麹醸造物に比して特に遊離アミノ酸としてアミノ酸バランスが向上する。また、麹の豆類原料から移行するアントシアニジン、イソフラボンなどのフラボノイド、サポニン、トコフェロール等による抗血栓作用、抗酸化作用やエストロゲン様作用などの生理活性機能に加え、骨機能代謝関連成分としてイソフラボンと増強されたカルシウムとにより、骨粗鬆症の防止機能の相乗的向上効果が期待できる。さらに、麹混合材料が非加熱状態で混合され、充分時間をかけて醸造発酵された場合には、得られる醸造物中に新規なACE阻害物が生成してACE阻害能等が向上することにより、チーズ様食品として実質的な血圧上昇抑制作用が期待できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明によるチーズ様食品及びその製造方法を実施するための最良の形態について詳細に説明する。
【0015】
〔第1の実施形態〕
第1の実施形態によるチーズ様食品の製造方法は、製麹された麹と、乳及び/又は乳加工処理物とを含む材料を混合し麹混合材料を得る麹混合工程と;麹混合材料を醸造発酵し醸造物を得る醸造発酵工程と;を備えている。麹としては、豆類蒸煮物、又は穀類蒸煮物、又は豆類蒸煮物と穀類蒸煮物を混合したものに麹菌を培養して製麹した麹を用いることができる(製麹工程)。この麹原料として豆類を使用する場合、例えば、大豆、ルピンマメ、緑豆、エンドウマメ、ヒラマメ、ソラマメ、インゲンマメ、モスビーン、シーバービーン、ピーナッツなど如何なる豆類をも用いることができ、少なくとも大豆を含むこれら豆類から一以上選ばれたものであることが好ましい。本実施形態において、麹原料として大豆を使用する場合、大豆の品種や育種、色形状、産地などについても特に限定されるものではなく、如何なる大豆であっても良い。また、上述の醤油品質表示基準に規定される脱脂加工大豆のように脱脂加工された豆類を使用することもできる。
【0016】
また、麹原料として穀類を使用する場合、例えば、米、麦、トウモロコシ、ソバ、モロコシ、アワ、ヒエなど如何なる穀類をも用いることができ、少なくとも米及び/又は麦を含むこれらの穀類から一以上選ばれたものであることが好ましい。また、本実施形態において、麹原料として、米を使用する場合、用いる米の品種や育種、色形状、産地などについても特に限定されるものではなく、如何なる米であっても良い。麹原料として、麦を用いる場合、例えば、大麦、裸麦の外、鳩麦、ライ麦、小麦など食用に供される麦であれば如何なる麦であっても使用することができ、少なくとも大麦又は裸麦を含むこれらの麦から一以上選ばれたものであることが好ましい。また、上述の醤油品質表示基準に規定される小麦グルテンのような穀類グルテンを併せて使用しても良い。
【0017】
豆類は、従来から行われている各味噌の製造法に準じて、精選、脱皮、洗浄(研磨)、浸漬(水切り)、蒸煮することができ、脱皮は省略することも可能である。得られた豆類蒸煮物は、殺菌、軟化されると共に、蛋白質の変性、多糖類の可溶化、トリプシン活性阻害物の不活化の外、生の豆臭が除去されている。豆類蒸煮物は冷却後、例えば粉砕機に通して潰し、味噌玉成形機で所定の大きさ(径15mm〜70mm程度)の味噌玉にすることができる。この味噌玉にした豆類蒸煮物に麹菌を種付け培養し麹(豆麹)を得るが、種付けと同時又は培養時に、麦を炒って粉状とした香煎を加えることができる。製麹工程では得られる玉状の麹(豆麹)の玉潰しをすることができる。
【0018】
米は、従来から行われている各味噌の製造法に準じて、精白、洗浄(研磨)、浸漬(水切り)、蒸煮することができる。これにより得られた米蒸煮物は、殺菌され、また、軟化されると共に、β−デンプンはα−デンプンとなり、麹菌を種付け培養する際に繁殖されやすく、酵素反応が順調に行われることとなる。この米蒸煮物を冷却後、麹菌を種付け培養し麹(米麹)を得ることができる。また、麦は、米蒸煮物の場合と同様にして、精白、洗浄(研磨)、浸漬(水切り)、蒸煮すれば良く、この麦蒸煮物を冷却後、麹菌を種付け培養し麹(麦麹)を得ることができる。
【0019】
このような製麹工程において用いる麹菌としては、食品に適用可能でアミラーゼ、プロテアーゼ、プロティナーゼ、グルタミナーゼ、リパーゼ、セルラーゼ、ヘミセルラーゼなどの酵素を産生する麹菌であれば如何なる麹菌であっても良く、一般的に良く使用されるアスペルギルス・オリゼ(Aspergillus oryzae)、アスペルギルス・ソーヤ(Aspergillus sojae)のような黄麹菌の外、リゾープス・オリゼ(Rhizopus oryzae)等のくものすカビとも呼ばれる麹菌が好適に使用でき、所望する製造対象醸造物の種類、品質に応じた麹菌種、菌株を選択すれば良い。また、上述のような製麹工程における豆類蒸煮物、米蒸煮物や麦蒸煮物などの穀類蒸煮物の2種以上の蒸煮物を混合したものに、麹菌を種付け培養したり、さらに豆麹、米麹、麦麹などの2種以上を適宜混合した麹を、麹混合工程において用いても良く、製造対象醸造物の種類、品質に応じた配合とすることができる。麹菌の種付け数(量)や種付け条件、培養条件については、従来から行われている味噌や醤油などの製造法における製麹法に準じて適宜設定し行うことができ、特に限定されないが、例えば、味噌技術ハンドブック;1995年全国味噌技術会発行や、食品微生物学ハンドブック;好井久雄ら編著、1995年技報堂出版株式会社発行などの記載に準じて行うことができる。また、市販の味噌麹や醤油麹、又は、上述のようにして製麹した麹と混合して用いても良い。
【0020】
本実施形態の麹混合工程においては、上述のような麹に、乳、又は、乳及び乳加工処理物、又は、乳加工処理物を含む材料を混合して麹混合材料を得る。乳としては、食用又は食品材として利用される哺乳動物であれば、如何なる哺乳動物由来の乳であっても良く、例えば牛、山羊、羊、水牛などの乳が好適に使用でき、牛由来の乳がより好ましい。乳加工処理物としては、これらの哺乳動物由来の乳を加工処理したものであれば如何なる乳加工処理物であっても良く、例えば、全(脂)粉乳の外、脱脂乳、部分脱脂乳、濃縮乳、練乳、発酵乳、ホエイ、蛋白質濃縮ホエイ、脱脂粉乳、部分脱脂粉乳、濃縮乳粉乳、練乳粉乳、発酵乳粉乳、濃縮ホエイ、ホエイパウダー、蛋白質濃縮ホエイパウダーなどいずれの乳加工処理物も好適に使用でき、これらの2種以上を混合して用いることもできる。このような乳、乳加工処理物の品質、成分組成などについては特に限定されるものではないが、例えば、「乳及び乳製品の成分規格に関する省令(厚生省令第52号)」に適合するものを使用することができる。これら乳、乳加工処理物のうちでは、麹などとの混合や醸造する際の作業がより効率的となる点においては、固体、粉末状の上記各種粉乳や濃縮ホエイ、ホエイパウダー、蛋白質濃縮ホエイパウダーが好ましく、また、発酵・醸造の際における麹との相性や栄養バランス、動物性脂質含量を抑えることができる点で脱脂粉乳、蛋白質濃縮ホエイパウダーを用いることがより好ましい。本実施形態では、牛由来の脱脂粉乳を用いた。
【0021】
このような乳及び/又は乳加工処理物と、麹との混合割合としては、麹、乳及び/又は乳加工処理物以外の添加物を除く麹混合材料100重量部に対し、乳及び/又は乳加工処理物を乾燥物として10重量部以上、90重量部以下配合し、麹を、10重量部以上、90重量部以下配合することが好ましく、乳及び/又は乳加工処理物を乾燥物として25重量部以上、75重量部以下配合し、麹を、25重量部以上、75重量部以下配合することがより好ましい。新規機能性物質等の生成量を増加させることがある点では、乳及び/又は乳加工処理物を乾燥物として35重量部以上、65重量部以下配合し、麹を、35重量部以上、65重量部以下配合することがさらに好ましい。麹の添加が10重量部未満では充分に発酵、醸造が進行しない場合があり、また、乳及び/又は乳加工処理物の添加が10重量部未満では醸造発酵工程後に得られる醸造物に濃厚な味を付与する遊離アミノ酸の生成が不充分となる場合がある。
【0022】
また、麹混合工程において、麹混合材料として塩材料を添加し混合することができる。塩材料を加える場合、本実施形態では食塩又は並塩を用いるが、食品に適用可能な塩であれば如何なる塩であっても使用することができ、例えば、食塩、並塩、天日製塩などの原塩、粉砕塩、焼塩の外、にがり添加塩や塩化カリウム添加塩、酢酸塩添加塩などの加工塩から一以上選ばれたものを使用することが好ましい。このような塩材料を麹混合材料に加えた場合、後段の醸造発酵工程において異常発酵、変敗などの原因となる雑菌の繁殖を抑制できることがある点で好ましい。塩材料を加える場合の添加量としては、得られる麹混合材料100重量部につき、1重量部以上、30重量部以下が好ましく、2重量部以上、15重量部以下がより好ましく、3重量部以上、10重量部以下がさらに好適である。塩材料の添加量が1重量部未満では雑菌繁殖の抑制が不充分となる場合があり、30重量部を超えると、後段の醸造発酵工程において得られる醸造物の塩味が強く旨味に欠ける場合がある。
【0023】
さらに、麹混合工程において、アルコール含有材料を加えて混合することにより麹混合材料を得ることができる。麹混合材料としてアルコール含有材料を添加する場合、本実施形態ではエタノール含有液を用いるが、食品に適用可能なアルコール含有材料であれば如何なるアルコール含有材料であっても使用することができ、例えば、エタノール含有液、ウォッカ、焼酎、ブランデー等の蒸留酒や清酒、ワイン等の醸造酒から一以上選ばれたものを使用することが好ましい。このようなアルコール含有材料を麹混合材料に加えた場合、塩材料の添加と同様に、後段の醸造発酵工程において異常発酵、変敗などの原因となる雑菌の繁殖を抑制できることがある点で好ましい。また、アルコール含有材料としては、アルコール含量の高い、例えば70%(V/V)以上のものがより効果的である。アルコール含有材料を加える場合の添加量としては、得られる麹混合材料100重量部につき、0.1重量部以上、20重量部以下が好ましく、1重量部以上、10重量部以下がより好ましい。アルコール含有材料の添加量が0.1重量部未満では雑菌繁殖の抑制が不充分となる場合があり、20重量部を超えると、後段の醸造発酵工程において得られる醸造物のアルコール臭が残る場合がある。以上説明した麹混合工程において、麹、乳及び/又は乳加工処理物などを混合する際には、後段の醸造発酵工程も含め発熱するなど急激に反応が進み酵素が失活したり、機能性物質の生成などを阻害するような場合もあり、このような状態を防ぐためにも非加熱状態で実施することが必要であり、40℃未満の温度に冷却又は温度制御することが好ましい。
【0024】
このような麹混合工程で得られた麹混合材料を、醸造発酵することによって醸造物を得る醸造発酵工程を実施する。本実施形態においては、5℃以上、40℃未満の温度で7日以上、180日以下の期間行うことが好ましく、10℃以上、40℃未満の温度で7日以上、90日以下がより好ましい。また、これにより、主に麹菌が産生するプロテアーゼ、アミラーゼ、プロティナーゼ、ヘミセルラーゼ、リパーゼ等各種酵素の作用、また、複次的なアミノ−カルボニル反応、エステル化反応などにより、植物性の麹原料及び動物性の乳原料等が分解、発酵・熟成されて、チーズ様或いはクリーム様の新規な風味を持った製造中間品としての醸造物を得ることができる。また、麹混合材料は、乳及び/又は乳加工処理物原料に由来するカゼインなどを主体とする乳蛋白成分などについても乳酸菌発酵とは発酵・熟成条件が全く異なる醸造発酵工程を経ることとなる。したがって得られる醸造物は乳酸菌発酵品とは栄養学的特性が異なり、乳酸菌発酵品には存在し得ない新規機能性物質を生成させることが可能となる。また、味噌や醤油などの麹醸造物に比して特に遊離アミノ酸としてアミノ酸バランスが向上している。また、麹の豆類原料から移行するアントシアニジン、イソフラボンなどのフラボノイド、サポニン、トコフェロール等による抗血栓作用、抗酸化作用やエストロゲン様作用などの生理活性機能に加え、骨機能代謝関連成分としてイソフラボンと増強されたカルシウムとにより、骨粗鬆症の防止機能の相乗的向上効果が期待できる。さらに、麹混合材料が非加熱状態で混合され、充分時間をかけて醸造発酵され、得られる醸造物中にVY(L−バリル−L−チロシン)、YP(L−チロシル−L−プロリン)のようなアミノ酸配列を有するジペプチド等のACE阻害物が生成してACE阻害能等が向上することにより、実質的な血圧上昇抑制作用が期待できる。
【0025】
なお、上述のような麹混合工程及び/又は醸造発酵工程においては、必要に応じて耐塩性酵母や乳酸菌を添加することができ、また、例えば醸造発酵工程の初期と後期に添加するなど各工程において複数回に分割して添加することも可能である。ただし、この場合においても、上記した麹混合工程、醸造発酵工程の温度や時間(期間)の条件の範囲内とすることが必要である。耐塩性酵母を麹混合工程及び/又は醸造発酵工程において麹混合材料に混合する場合には、例えば、チゴサッカロミセス・ルキシー(Zygosaccharomyces rouxii)、カンジダ・バーサチリス(Candida versatilis)、カンジダ・エチェルシー(Candida etchellsii)から1以上選ばれた耐塩性酵母を用いることが好ましく、チゴサッカロミセス・ルキシーを含む1種以上を使用することがより好ましい。これら耐塩性酵母は、産膜酵母の発生を抑制し、麹菌により生成されたグルコースを発酵してアルコール類を生成し芳香を与える作用などを有する。また、耐塩性乳酸菌を麹混合材料に混合する場合には、食品に適用可能な耐塩性の乳酸菌であればいずれの耐塩性乳酸菌も使用できるが、例えば、ペディオコッカス・ハロフィラス(Pediococcus halophilus)が好適に使用可能であり、所望する製造対象醸造物の種類、品質に応じた菌株を選択すれば良い。このような耐塩性酵母、耐塩性乳酸菌を麹混合材料に混合する量、混合法や装置などの添加条件については、特に限定されず、従来から行われている各味噌の場合における添加条件に準じて行うことができる。また、乳及び/又は乳加工処理物は、上述の麹混合工程のみならず、醸造発酵工程中に添加することもでき、例えば、初期、中期、後期などいずれの醸造発酵工程において混合しても良い。さらに、例えば、麹混合工程と醸造発酵工程、醸造発酵工程における初期と後期などのように複数回に分けて乳及び/又は乳加工処理物を添加混合することも可能である。ただし、このように乳及び/又は乳加工処理物を添加混合する場合においても、上述した添加量の範囲内とし、麹混合工程、醸造発酵工程の温度や時間(期間)の条件の範囲内で行なうことが必要である。なお、製造対象とするチーズ様食品の性状によっては、上述の麹混合工程や醸造発酵工程などにおいて(種水として)加水することも可能である。
【0026】
以上のような醸造発酵工程で得られた醸造物に、脂質含有物を添加混合し脂質混合醸造物を得る脂質混合工程と、脂質混合醸造物を所定の形状に成形する成形工程とを施す。脂質含有物としては、例えば、植物性油脂のような植物性脂質含有物、乳及び/又は乳加工処理物のような動物性脂質含有物、又はこれらの混合物を用いることができる。本実施形態では、脂質含有物として、植物性油脂及び/又は乳脂肪を含むものを使用した。醸造物と脂質含有物との配合割合としては、得られる脂質混合醸造物100重量部につき、脂質含有物を0.5重量部以上、40重量部以下配合することができる。脂質含有物10重量部以上、40重量部以下配合することがより好ましい。これにより、得られる脂質混合醸造物は、醸造物の有する風味と栄養学的特性を損なうことなく生かしたチーズ様のものとなる。アミノ酸、脂質、ラクトース、クエン酸などの生化学的変化に由来する各種チーズフレーバー成分や香辛料などを脂質混合醸造物に添加しても良く、これにより、それぞれ各種チーズにより似た風味、形態のチーズ様食品とすることができる。成形工程では、このような脂質混合醸造物を所望のチーズに似せた所定の形状に成形することができる。また、成形前及び/又は成形後において、さらに熟成及び/又は乾燥する操作を追加しても良く、背景技術において説明した「乳及び乳製品の成分規格等に関する省令」やチーズの国際規格(CODEX STAN A−6−1978,Rev.1−1999,Amended 2003)に準じた水分含量に調整することができる。
【実施例】
【0027】
以下、本発明によるチーズ様食品及びその製造方法について、実施例、比較例を示して具体的に説明するが、これによって本発明を限定するものではない。
【0028】
〔実施例1〕
第1の実施形態の製造方法に準じて醸造物を調製した。ただし、麹原料としての穀類には米を使用した。塩材料としては国内産の食塩を使用した。乳加工処理物として牛乳由来の脱脂粉乳(水分:4重量%、脂質:1重量%、蛋白質34重量%、炭水化物:53重量%、カルシウム:1重量%)を用いた。麹菌にアスペルギルス・オリゼを用いて製麹した米麹と同重量の脱脂粉乳を混合し、麹混合材料中の食塩含量を6重量%、アルコール含量を3重量%とした。アルコール含有材料として70%エタノールを用い、麹混合工程は非加熱状態で40℃未満の温度条件とし、醸造発酵工程は、30℃以上、40℃未満の温度条件とした。なお、醸造発酵工程開始時において、通常味噌醸造に使用する酵母液と同様の酵母量濃度に調整した耐塩性酵母(チゴサッカロミセス・ルキシー)を麹使用量100重量部に対して3容量部添加し、麹混合工程及び醸造発酵工程において、乳酸菌の添加は行なわず、醸造発酵工程は180日まで継続したが、醸造発酵期間7日以上の醸造物はチーズ様或いはクリーム様の均一なペースト状であり良好な外観性状を保持していた。
【0029】
〔実施例2〕
麹混合材料にアルコール含有材料無添加とした以外は、実施例1と同様にして醸造物を調製した。得られた醸造発酵期間7日以上の醸造物は実施例1の醸造物と同様良好な外観性状を保持していた。
【0030】
〔実施例3〕
麹混合材料中の食塩含量を4重量%、アルコール含量を3.5重量%とした以外は、実施例1と同様にして醸造物を調製した。得られた醸造発酵期間7日以上の醸造物は実施例1の醸造物と同様良好な外観性状を保持していた。
【0031】
〔実施例4〕
麹混合材料中の食塩含量を12重量%、アルコール含有材料無添加とした以外は、実施例1と同様にして醸造物を調製した。得られた醸造発酵期間7日以上の醸造物は実施例1の醸造物と同様良好な外観性状を保持していた。
【0032】
〔実施例5〕
第1の実施形態に準じて実施例2の醸造物(醸造発酵期間8日)に、脂質含有物としてサラダオイルを、それぞれ5、10、15、20、25、30重量%加えて、カマンベール風の形態に成形し、チーズ様食品を調製した。
【0033】
〔実施例6〕
第1の実施形態に準じて実施例2の醸造物(醸造発酵期間8日)に、植物性油脂及び乳製品を含有する脂質含有物(商品名:コーヒーフレッシュ、森永製)を、それぞれ5、10、15,20、25、30重量%加えて、カマンベール風の形態に成形し、チーズ様食品を調製した。
【0034】
〔比較例1〕
麹混合材料中の食塩含量を10重量%とし、麹混合工程において45〜50℃の加温条件で12時間維持した後、醸造発酵工程として、通常味噌醸造に使用する酵母液と同様の酵母量濃度に調整した耐塩性酵母(チゴサッカロミセス・ルキシー)を麹使用量100重量部に対して3容量部添加し、水(種水)を麹使用量100重量部に対して157容量部添加して40℃で醸造発酵した以外は、実施例4と同様にして醸造物を調製した。醸造物は、醸造発酵工程開始8日後において、塊状物が混在したドロドロ状態であり、しかも麹には芯が残り、同条件にて醸造発酵工程を引き続き行なったが均一で良好な外観性状の醸造物は得られなかった。
【0035】
〔比較例2〕
麹混合材料に大豆蒸煮物を40重量%混合し、米麹含量20重量%、脱脂粉乳含量16重量%とし、食塩含量を12重量%、アルコール含有材料無添加とした以外は、実施例1と同様にして、味噌様の醸造物を調製した。
【0036】
〔比較例3〕
麹混合材料中の食塩含量を6重量%、アルコール含量を3重量%とした以外は、比較例2と同様にして、味噌様の醸造物を調製した。
【0037】
〔一般項目分析試験(1)〕
実施例2の醸造物ついて、基準みそ分析法(味噌技術ハンドブック、1995年全国味噌技術会発行、付録pp1〜35)に準じ、水分、蛋白質、脂質、灰分、炭水化物、カルシウム等の各項目の測定を行った。この結果は、表1に示すとおりであった。
【0038】
【表1】

【0039】
〔アミノ酸分析〕
実施例2の醸造物(醸造発酵期間8日)及び原料として用いた脱脂粉乳について、衛生試験法、食品成分試験法、飲食物試験法アミノ酸(衛生試験法・注解、日本薬学会編、1990年金原出版株式会社発行、pp281−284)に準じて、遊離アミノ酸量(g/100g)の測定を行った。ただし、トリプトファンはHPLC法により、他は、アミノ酸自動分析法により試験を行った。アミノ酸分析の結果は表2に示すとおりであり、実施例2の醸造物は、脱脂粉乳原料に比して、遊離アミノ酸量が大量に増加しており、これらには呈味性のあるグルタミン酸、アラニン、バリン、メチオニン、グリシン等が含まれていた。これらが製品に濃厚な味を与え、醸造発酵により充分な呈味性が発現した。また、アミノ酸組成比における必須アミノ酸の比率も高く、アミノ酸バンランスの向上が確認された。
【0040】
【表2】

【0041】
〔一般項目分析試験(2)〕
実施例1〜4の醸造物(醸造発酵期間25日乃至35日)及び比較例2、3(醸造発酵期間40日)の味噌様醸造物について、基準みそ分析法(味噌技術ハンドブック、1995年全国味噌技術会発行、付録pp1〜35)に準じ、pH、色(Y%)、フォルモール窒素(FN)、酸度I、一般生菌数、大腸菌群、などの各項目の測定を行った。この結果は、表3に示すとおりであった。
【0042】
【表3】

【0043】
〔官能評価(1)〕
実施例1、2、4の醸造物(醸造発酵期間25日乃至35日)、比較例1(醸造発酵期間8日)の醸造物及び比較例2、3(醸造発酵期間40日)の味噌様醸造物について官能評価を行った。官能評価は専門パネル5名により主に風味について評価した。官能評価の結果は表4に示すとおりであり、実施例1の醸造物は、パンやクラッカーなどに直接塗ったり、グラタンやシチュー、スパゲッティの味付け、チーズの代替品として利用可能と判断された。
【0044】
【表4】

【0045】
〔官能評価(2)〕
実施例5及び6のチーズ様食品(醸造発酵期間25日乃至35日の醸造物使用)について官能評価を行った。官能評価は専門パネル5名により主に風味について評価した。この結果、実施例6が、実施例5より評価が高く、また、実施例6のうちでは、脂質含有物を20〜30重量%加えたチーズ様食品の評価が高く、25重量%のチーズ様食品が最も良好なチーズ様の風味を有する旨の評価であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
豆類蒸煮物及び/又は穀類蒸煮物に麹菌を培養し製麹された麹と、乳及び/又は乳加工処理物とを含み混合された麹混合材料が醸造発酵された醸造物を含んでなるチーズ様食品であって、
前記醸造物に、脂質含有物が添加混合された脂質混合醸造物が所定の形状に成形されていることを特徴とするチーズ様食品。
【請求項2】
前記麹混合材料が非加熱状態で混合されたものであり、且つ、前記醸造物が5℃以上、40℃未満の温度で7日以上、180日以下の期間醸造発酵されたものであることを特徴とする請求項1に記載のチーズ様食品。
【請求項3】
前記乳及び/又は乳加工処理物が牛由来であることを特徴とする請求項1又は2に記載のチーズ様食品。
【請求項4】
前記乳加工処理物が脱脂粉乳であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のチーズ様食品。
【請求項5】
前記麹混合材料が、塩材料を含み混合されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のチーズ様食品。
【請求項6】
前記麹混合材料が、アルコール含有材料を含み混合されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のチーズ様食品。
【請求項7】
前記醸造物が、醸造発酵により生成されアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害活性を有し前記乳及び/又は乳加工処理物の乳酸菌発酵においては生成することのない血圧上昇抑制作用物を含んでなることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載のチーズ様食品。
【請求項8】
前記麹混合材料100重量部に対し、前記乳及び/又は乳加工処理物が乾燥物として10重量部以上、90重量部以下配合され、前記麹が、10重量部以上、90重量部以下配合されていることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載のチーズ様食品。
【請求項9】
前記脂質含有物が、植物性油脂及び/又は乳脂肪を含んでなることを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載のチーズ様食品。
【請求項10】
前記脂質混合醸造物100重量部に対し、脂質含有物が0.5重量部以上、40重量部以下配合されていることを特徴とする請求項1乃至9のいずれかに記載のチーズ様食品。
【請求項11】
豆類蒸煮物及び/又は穀類蒸煮物に麹菌を培養し製麹された麹と、乳及び/又は乳加工処理物とを含む材料を混合し麹混合材料を得る麹混合工程と、
前記麹混合材料を醸造発酵し醸造物を得る醸造発酵工程と、
前記醸造物に、脂質含有物を添加混合し脂質混合醸造物を得る脂質混合工程と、
前記脂質混合醸造物を所定の形状に成形する成形工程と、を備えることを特徴とするチーズ様食品の製造方法。
【請求項12】
前記麹混合工程における麹混合材料は、非加熱状態で混合し得られ、
前記醸造発酵工程における醸造物は、5℃以上、40℃未満の温度で7日以上、180日以下の期間醸造発酵し得られることを特徴とする請求項11に記載のチーズ様食品の製造方法。
【請求項13】
前記乳及び/又は乳加工処理物が牛由来であることを特徴とする請求項11又は12に記載のチーズ様食品の製造方法。
【請求項14】
前記乳加工処理物が脱脂粉乳であることを特徴とする請求項11乃至13のいずれかに記載のチーズ様食品の製造方法。
【請求項15】
前記麹混合工程は、塩材料を加えて混合することにより麹混合材料を得ることを特徴とする請求項11乃至14のいずれかに記載のチーズ様食品の製造方法。
【請求項16】
前記麹混合工程は、アルコール含有材料を加えて混合することにより麹混合材料を得ることを特徴とする請求項11乃至15のいずれかに記載のチーズ様食品の製造方法。
【請求項17】
前記麹混合工程は、麹混合材料100重量部に対し、前記乳及び/又は乳加工処理物を乾燥物として10重量部以上、90重量部以下配合し、前記麹を、10重量部以上、90重量部以下配合することを特徴とする請求項11乃至16のいずれかに記載のチーズ様食品の製造方法。
【請求項18】
前記脂質含有物が、植物性油脂及び/又は乳脂肪を含んでなることを特徴とする請求項11乃至17のいずれかに記載のチーズ様食品の製造方法。
【請求項19】
前記脂質混合工程は、得られる前記脂質混合醸造物100重量部に対し、脂質含有物を0.5重量部以上、40重量部以下配合することを特徴とする請求項11乃至18のいずれかに記載のチーズ様食品の製造方法。

【公開番号】特開2006−296422(P2006−296422A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−79738(P2006−79738)
【出願日】平成18年3月22日(2006.3.22)
【出願人】(000118497)伊藤ハム株式会社 (57)
【出願人】(391019049)宮坂醸造株式会社 (8)
【Fターム(参考)】