説明

チーズ様食品組成物及びその製造方法

【課題】本発明は、軟質チーズに類似した物性及び食感を有する、植物タンパク質をタンパク質成分として含有するチーズ様食品組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明者らは、食品組成物全量に対して固形成分として0.5〜10質量%の大豆タンパク質と、固形成分として15〜35質量%の小麦タンパク質とを含み、大豆タンパク質が凝固していることを特徴とするチーズ様組織を有する食品組成物により上記課題が解決されることを見出した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物タンパク質を主成分とするチーズ様食品組成物及びその製造方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
動物性タンパク質摂取量の低減、コストの低減、栄養価の向上等の要求から、チーズの代替物として、植物タンパク質を主成分とするチーズ様食品の開発が行われている。
【0003】
特許文献1には、大豆固形分10〜50%を含有する豆腐、油脂、熱凝固性物質及び安定剤を含む配合物を混練し、加熱することを特徴とするチーズ様食品の製造方法が記載されている。特許文献1には、この方法により硬質〜軟質のチーズ様食品が得られると記載されている。
【0004】
特許文献2には、大豆タンパク質及び小麦タンパク質の混合物中のタンパク質重量1部に対し、水を1.5部及び食用油脂を0.5〜3部を少なくとも含む配合物を混練し、加熱することを特徴とするチーズ様食品の製造方法が記載されている。大豆タンパク質と小麦タンパク質との重量比として1:1乃至1:0.1が好ましいと記載されている。特許文献2によれば、この方法によりチーズの持つ滑らかさ及び歯応えのある食感を有するチーズ様食品が提供される。
【0005】
特許文献3には乳酸菌を添加することにより発酵熟成させることを特徴とするチーズ様大豆タンパク食品の製造法が開示されている。
【0006】
特許文献4にはタンパク質と、油脂と水とを含む乳化液にトランスグルタミナーゼを作用させることによりゲル状にする、新規なゲル状食品の製造方法が記載されている。ゲル状食品の具体例としてチーズが挙げられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭60−78541号公報
【特許文献2】特開昭55−88653号公報
【特許文献3】特公昭46−5025号公報
【特許文献4】特開昭59−59151号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記の通りチーズ様食品は従来から開発されている。しかながらいずれの方法で得られたチーズ様食品も、実際のチーズと比較して満足できる食感を有するものではなかった。特に、軟質チーズの食感や物性(特に、ピザ・トースト用チーズにおける糸を曳くような伸び性)の特徴を有するチーズ様食品は従来提供されていない。
【0009】
そこで本発明は、軟質チーズに類似した物性及び食感を有する、植物タンパク質をタンパク質成分として含有するチーズ様食品組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、驚くべきことに、大豆タンパク質と小麦タンパク質とを、チーズ様食品組成物において従来知られていない特定の濃度で配合し、大豆タンパク質を凝固させたと
きに、軟質チーズに類似した物性及び食感を有するチーズ様食品が形成されることを見出した。本発明は以下の発明を包含する。
【0011】
(1)食品組成物全量に対して固形成分として0.5〜10質量%の大豆タンパク質と、固形成分として15〜35質量%の小麦タンパク質とを含み、大豆タンパク質が凝固していることを特徴とする、チーズ様組織を有する食品組成物。
【0012】
(2)大豆タンパク質は、大豆タンパク質の乳液を凝固剤で凝固させた凝固物の粉砕物が凝固したものである、(1)記載の食品組成物。
(3)トランスグルタミナーゼ及び/又は油脂を更に含む、(1)又は(2)記載の食品組成物。
(4)大豆タンパク質が、加熱及び/又は凝固剤添加により凝固している、(1)〜(3)の何れかに記載の食品組成物。
(5)曳糸能のあるチーズ様組織を有する、(1)〜(4)の何れかに記載の食品組成物。
【0013】
(6)原料全量に対して固形成分として0.5〜10質量%の大豆タンパク質と、固形成分として15〜35質量%の小麦タンパク質とを含む原料を混合すること、並びに、大豆タンパク質を加熱及び/又は凝固剤添加により凝固させることを特徴とする、チーズ様組織を有する食品組成物の製造方法。
(7)原料としての大豆タンパク質が、予め、大豆タンパク質の乳液を凝固剤で凝固させた凝固物を粉砕して形成された粉砕物である、(6)記載の方法。
【0014】
(8)原料がトランスグルタミナーゼ及び/又は油脂を更に含む、(6)又は(7)記載の方法。
(9)大豆タンパク質及び水を含む原料を均質化した後、凝固剤を加えて混合し、小麦タンパク質を加えて混合し、次いで加熱処理すること、
大豆タンパク質及び水を含む原料を均質化した後、凝固剤を加えて混合し、小麦タンパク質を加えて混合し、次いで静置すること、あるいは、
大豆タンパク質及び水を含む原料を均質化した後、小麦タンパク質を加えて混合し、次いで加熱処理すること
を特徴とする、(6)〜(8)の何れかに記載の方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明により提供されるチーズ様食品組成物は軟質チーズに類似した物性及び食感を有する。
【発明を実施するための形態】
【0016】
1.原料及び配合
本発明のチーズ様食品組成物は、食品組成物全量(チーズ様食品組成物の湿重量としての全重量)に対して固形成分として0.5〜10質量%の大豆タンパク質と、固形成分として15〜35質量%の小麦タンパク質とを含有することを特徴とする。この量の範囲内で二種類のタンパク質を組み合わせることにより、驚くべきことに、軟質チーズが有する食感及び伸び性(糸曳き性)が付与される。大豆タンパク質の配合量は、食品組成物全量(湿重量)に対して固形成分として1〜4質量%であることが特に好ましい。小麦タンパク質の配合量は、食品組成物全量(湿重量)に対して固形成分として20〜30質量%であることが特に好ましい。本明細書において、各原料の使用量は、特段の説明がない限り、当該原料のチーズ様食品組成物の湿重量としての全重量に対する割合として記載する。
【0017】
原料として用いられる大豆タンパク質はどのような形態で存在するものであってもよく
、例えば、分離大豆タンパク質、脱脂大豆粕、大豆粉、豆乳、豆乳粉末等の形態のものが使用できる。いずれの材料も粉体などの固体状の形態であってもよいし、水に溶解または懸濁された液状の形態であってもよい。また、大豆タンパク質は、大豆タンパク質の乳液を凝固剤で凝固させた凝固物(すなわち、豆腐及び豆腐類似物)を粉砕した粉砕物の形態で使用することもできる。大豆タンパク質の上記の配合量は、原料の形態に関わりなく、原料中に含有される大豆タンパク質の固形成分に基づいて算出される。
【0018】
原料として用いられる小麦タンパク質はどのような形態で存在するものであってもよく、例えば、グルテン、グリアジン等の形態のものが使用できる。いずれの材料も粉体などの固体状であってもよいし、水に溶解または懸濁された液状の形態であってもよい。小麦タンパク質の上記の配合量は、原料の形態に関わりなく、原料中に含有される小麦タンパク質の固形成分に基づいて算出される。
【0019】
凝固した大豆タンパク質と、粘弾性を有する小麦タンパク質との組み合わせにより、チーズ様組織が形成される。すなわち本発明では、大豆タンパク質と小麦タンパク質とを特定の濃度で含む原料混合物において、大豆タンパク質を凝固させると共に、小麦タンパク質の粘弾性を組織に付与することによって、軟質チーズ様の、好適には曳糸能を有する食品組成物を供することが可能となる。
【0020】
本発明の食品組成物中の水分量は15〜55質量%、好適には30〜45質量%であることが好ましい。水は、大豆タンパク質の乳液を凝固剤で凝固させた凝固物を粉砕した粉砕物等の形態で、他の原料の一部分として添加されてもよい。
【0021】
本発明の食品組成物は更に油脂を含有することが好ましい。油脂は食品組成物全量に対して0.01〜40質量%、好適には15〜30質量%含まれることが好ましい。油脂を添加することにより、食品組成物が滑らかで舌触り及び口溶けの良い物性及び食感のものとなる。油脂は食用の動植物油脂であれば特に限定されず、例えば大豆油、ひまわり油、菜種油、コーン油等を使用することができる。
【0022】
本発明の食品組成物は更にトランスグルタミナーゼを含有することが好ましい。トランスグルタミナーゼは、一般に市販されている酵素製剤の形態で、食品組成物全量に対して0.01〜1質量%含まれることが好ましい。トランスグルタミナーゼを添加することにより食品組成物が適度な歯切れ感を有し、ガム様の噛み切りにくい物性になることを防止することができる。
【0023】
大豆タンパク質の凝固を凝固剤添加により行う場合、最終製品である食品組成物中には凝固剤が含まれることとなる。凝固剤としては、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム等の塩凝固剤や、グルコン酸、乳酸等の酸凝固剤が使用できる。凝固剤の添加量は、大豆タンパク質を凝固させるために十分な量であれば特に限定されないが、典型的には、食品組成物全量に対して固形成分として0.1〜1質量%である。
【0024】
本発明の食品組成物には更に、調味料、香料、色素等を必要に応じて適量配合することができる。
【0025】
2.製造方法
本発明のチーズ様組織を有する食品組成物は、所定量の大豆タンパク質と小麦タンパク質とを少なくとも含む原料を混合すること、並びに、大豆タンパク質を凝固させることを含む方法により製造することができる。大豆タンパク質の凝固は、加熱凝固と凝固剤添加とを併用して行うことが特に好ましい。歯応え、舌触り及び口溶けに関してチーズに最も
近い食品が得られるからである。
【0026】
大豆タンパク質、小麦タンパク質、他の成分の添加順序や、凝固処理の時期は特に限定されない。
【0027】
大豆タンパク質として、大豆タンパク質の乳液を凝固剤で凝固させた凝固物(すなわち、豆腐及び豆腐類似物)を粉砕した粉砕物を原料として使用する実施形態では、前記粉砕物を小麦タンパク質等の他の原料成分と混合する工程と、該工程で得られた混合物を加熱するか、前記混合物に凝固剤を添加するか、前記混合物に凝固剤を添加し次いで加熱することにより、大豆タンパク質を更に凝固させる工程とを行うことが好ましい。
【0028】
トランスグルタミナーゼを配合する実施形態では、トランスグルタミナーゼを作用させるために、これを含む原料混合物を、25〜60℃の温度に5〜60分間保持する工程を更に行うことが好ましい。上記の温度は原料混合物の品温を指し、本明細書において、特段の説明がない限り、温度は対象物の品温を指すものとして記載する。
【0029】
トランスグルタミナーゼを配合する実施形態では、トランスグルタミナーゼを失活させるために、トランスグルタミナーゼを作用させた後の原料混合物を酵素失活温度(約90℃)で数分間加熱する工程を更に行うことが好ましい。
【0030】
トランスグルタミナーゼを作用させるための加熱工程及び失活させるための加熱工程は、原料混合物中の大豆タンパク質を加熱凝固する工程を兼ねることができる。
【0031】
2.1.凝固剤添加と加熱凝固とを併用して凝固を行う実施形態
大豆タンパク質の凝固処理として凝固剤添加と加熱凝固とを併用する本発明の方法としては、水、大豆タンパク質、小麦タンパク質、凝固剤及び他の原料を混合する混合工程と、得られた混合物を加熱して大豆タンパク質を凝固させる加熱工程とを含む方法が挙げられる。
【0032】
混合工程では凝固剤による凝固がある程度進行する。原料を混合するための手順は特に限定されず、使用する混合手段に応じて適宜決定することができる。全原料を同時に加えて混合してもよいし、順に加えて混合してもよい。一実施形態では、大豆タンパク質及び水を含み、更に必要に応じて油脂等の、小麦タンパク質及び凝固剤以外の他の成分を含む原料を撹拌型ホモジナイザー、高圧ホモジナイザー等で均質化した後、均質化した物に凝固剤及び小麦タンパク質を加えて混合することにより全原料の混合を行う。前記の均質化した物に凝固剤を加えて混合し、次いで小麦タンパク質を加えて混合することが好ましい。大豆タンパク質及び水を含む、小麦タンパク質及び凝固剤以外の原料(特に大豆タンパク質、水及び油脂を含む原料)を予め均質化した物を調製することにより、均質組織のチーズ様食品組成物を供することができる。大豆タンパク質及び水を、大豆タンパク質の乳液を凝固剤で凝固させた凝固物(すなわち、豆腐及び豆腐類似物)を粉砕した粉砕物の形態で使用する場合、予めミキサー等で前記凝固物を粉砕しておくことが好ましい。
【0033】
得られた混合物を所望の形状に加工し、加熱工程に供することができる。例えば得られた混合物を鋳型形状の密閉容器内に充填し、容器ごと加熱することができる。
【0034】
加熱工程における温度は25〜60℃が好ましく、加熱時間は5〜60分間が好ましい。加熱工程において、トランスグルタミナーゼを配合する実施形態では、トランスグルタミナーゼの作用も進行する。
【0035】
トランスグルタミナーゼを配合する実施形態では、酵素の失活のために混合物を酵素失
活温度(約90℃)の温度で数分間加熱する工程を更に含むことが好ましい。
【0036】
2.2.凝固剤添加のみにより凝固を行う実施形態
大豆タンパク質凝固処理として凝固剤添加のみを行う本発明の方法としては、水、大豆タンパク質、小麦タンパク質、凝固剤及び他の原料を混合する混合工程と、得られた混合物を静置して大豆タンパク質を凝固させる静置工程とを含む方法が挙げられる。混合工程の手順としては、上記2.1で説明したのと同様の手順を採用することができる。つまり、全原料を一括で混合してもよいし、順に加えて混合してもよいし、大豆タンパク質及び水を含み、必要に応じて油脂等の、小麦タンパク質及び凝固剤以外の他の成分を更に含む原料を予め均質化した物に凝固剤及び小麦タンパク質を加えて混合してもよい。また、静置工程の前後において、得られた混合物を所望の形状に加工することができる。
【0037】
静置は雰囲気温度10〜40℃において1〜15分間行うことが好ましい。
トランスグルタミナーゼを配合する実施形態では、前記酵素の失活のための加熱工程を更に含むことが好ましい。
【0038】
2.3.加熱凝固のみにより凝固を行う実施形態
大豆タンパク質凝固処理として加熱凝固のみを行う本発明の方法としては、水、大豆タンパク質、小麦タンパク質、及び他の原料を混合する混合工程と、得られた混合物を加熱して大豆タンパク質を凝固させる加熱工程とを含む方法が挙げられる。
【0039】
原料の混合の手順は特に限定されず、使用する混合手段に応じて適宜決定することができる。全原料を同時に加えて混合してもよいし、順に加えて均質化してもよい。一実施形態では、大豆タンパク質及び水を含み、必要に応じて油脂等の、小麦タンパク質以外の他の成分を更に含む原料を撹拌型ホモジナイザー、高圧ホモジナイザー等で均質化した後、均質化した物に小麦タンパク質を加えて混合することにより全原料の混合を行う。
【0040】
得られた混合物を所望の形状に加工し、加熱工程に供することができる。例えば混合物を鋳型形状の密閉容器内に充填し、容器ごと加熱することができる。
【0041】
加熱工程程の手順としては、上記2.1で説明したのと同様の手順を採用することができる。
【0042】
トランスグルタミナーゼを配合する実施形態では、前記酵素の失活のための加熱工程を更に含むことが好ましい。
【実施例】
【0043】
以下、実施例に基づいて本発明の実施形態をより具体的に説明する。
実施例1
1.原料
【0044】
【表1】

【0045】
2.製造工程
大豆タンパク質と水をミキサーにかけて混合し、得られた混合物と、小麦タンパク質及び凝固剤を除く他の原料とを、ホモジナイザー(DX−10型/NIHONSEIKI社製)により、3000〜8000rpmで60〜120秒間均質化した。
【0046】
均質化物に凝固剤(乳酸溶液)を加えて混合した。
得られた混合物に更に小麦タンパク質を加えて混合した。
【0047】
上記手順で得られた混合物をスライス状に成型し、樹脂製フィルム製容器に充填して真空包装した。
【0048】
容器に充填したスライス状の混合物を、湯中に入れて55℃で10分間加熱処理して、混合物中の大豆タンパク質を凝固させるとともに、トランスグルタミナーゼを作用させた。
【0049】
さらに、容器に入れたスライス状の混合物を、湯中に入れて90℃で2分間加熱処理して、大豆タンパク質を凝固させるとともにトランスグルタミナーゼを失活させた後、冷却して冷蔵庫で保管した。
こうしてチーズ様食品を作成した。
【0050】
3.性能評価
上記工程により作成したチーズ様食品を、アルミホイルに乗せ、オーブントースターで約2分間焼く。トースターから取り出した後、温かいうちに両手で左右に引っ張り「伸び性」を評価した。また、口に含み、歯応え、歯切れ感、舌触りで「食感」を評価した。
【0051】
【表2】

【0052】
【表3】

【0053】
実施例1のチーズ様食品は伸び性、食感ともに◎であり、曳糸能のあるチーズと同等の物性と食感、風味を有するものであった。
【0054】
実施例2〜5及び比較例1〜4
大豆タンパクと小麦タンパクの質量部を変えた以外は、実施例1と同様の原料配合(すなわち、実施例1表1における大豆タンパクと小麦タンパク以外の他の原料の量(質量部)は変更してない)及び手順によりチーズ様のスライス状食品を得た。得られた食品を実施例1と同様の操作及び基準により食感および風味を評価した。
【0055】
各実施例、比較例の大豆タンパクと小麦タンパクの配合量及び食感、風味を以下の表に示す。
【0056】
【表4】

【0057】
実施例6
豆腐をホモジナイザー(DX−10型/NIHONSEIKI社製)を用いて、300
0〜8000rpmで60〜120秒間均質化し、メジアン径10μ程度に調製した豆腐ペースト40質量部(豆腐ペースト40質量部を用いたとき、全原料中に大豆タンパク質は固形成分の分量として2.1質量%含まれる)を、大豆タンパク質2.1質量部と水37.2質量部とをミキサーにかけた混合物に代えて用いる点を除いて、実施例1と同様にして、チーズ様のスライス状食品を得た。得られた食品の性能は、実施例1で得られたものと同等であった。
【0058】
実施例7: トランスグルタミナーゼを使用しない例
1.原料
【0059】
【表5】

【0060】
2.製造工程
大豆タンパク質と水をミキサーにかけて混合し、得られた混合物と、小麦タンパク質及び凝固剤を除く他の原料を、ホモジナイザー(DX−10型/NIHONSEIKI社製)により、3000〜8000rpmで60〜120秒間混合して均質化した。
【0061】
均質化した物に凝固剤(乳酸)を加えて混合した。各原料は実施例1と同様のものを用いた。
得られた混合物に更に小麦タンパク質を加えて混合した。
【0062】
上記手順で得られた混合物を雰囲気温度25℃において5分間静置したのち、スライス状に成型し、樹脂製フィルム製容器に充填して真空包装した。
【0063】
3.性能評価
実施例1と同様の手順で評価を行ったところ、「伸び性」が◎、「食感」が△であり、曳糸能のあるチーズと同等の物性と食感、風味を有することが確認された。
【0064】
実施例8
凝固剤として乳酸の代わりに塩化マグネシウムを用いる以外は、実施例7と同様にして、チーズ様のスライス状食品を得た。得られた食品の性能は、「伸び性」が◎、「食感」が△であり、実施例7で得られたものと同等であった。
【0065】
実施例9
凝固剤を用いない点、水38.0質量部を用いる点、均質化した原料に凝固剤を加えて混合する工程を行わない点を除いて実施例1と同様の手順によりチーズ様のスライス状食
品を得た。得られた食品の性能は、伸び性が◎、食感が○であり、実施例1で得られたものとほぼ同等であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
食品組成物全量に対して固形成分として0.5〜10質量%の大豆タンパク質と、固形成分として15〜35質量%の小麦タンパク質とを含み、大豆タンパク質が凝固していることを特徴とする、チーズ様組織を有する食品組成物。
【請求項2】
大豆タンパク質は、大豆タンパク質の乳液を凝固剤で凝固させた凝固物の粉砕物が凝固したものである、請求項1記載の食品組成物。
【請求項3】
トランスグルタミナーゼ及び/又は油脂を更に含む、請求項1又は2記載の食品組成物。
【請求項4】
大豆タンパク質が、加熱及び/又は凝固剤添加により凝固している、請求項1〜3の何れか1項記載の食品組成物。
【請求項5】
曳糸能のあるチーズ様組織を有する、請求項1〜4の何れか1項記載の食品組成物。
【請求項6】
原料全量に対して固形成分として0.5〜10質量%の大豆タンパク質と、固形成分として15〜35質量%の小麦タンパク質とを含む原料を混合すること、並びに、大豆タンパク質を加熱及び/又は凝固剤添加により凝固させることを特徴とする、チーズ様組織を有する食品組成物の製造方法。
【請求項7】
原料としての大豆タンパク質が、予め、大豆タンパク質の乳液を凝固剤で凝固させた凝固物を粉砕して形成された粉砕物である、請求項6記載の方法。
【請求項8】
原料がトランスグルタミナーゼ及び/又は油脂を更に含む、請求項6又は7記載の方法。
【請求項9】
大豆タンパク質及び水を含む原料を均質化した後、凝固剤を加えて混合し、小麦タンパク質を加えて混合し、次いで加熱処理すること、
大豆タンパク質及び水を含む原料を均質化した後、凝固剤を加えて混合し、小麦タンパク質を加えて混合し、次いで静置すること、あるいは、
大豆タンパク質及び水を含む原料を均質化した後、小麦タンパク質を加えて混合し、次いで加熱処理すること
を特徴とする、請求項6〜8の何れかに記載の方法。