説明

ツイストボール型電子ペーパー付表示装置

【課題】表示情報の保持性が高く、良好な画像表示を行うことが可能なツイストボール型電子ペーパー付表示装置、およびその駆動方法を提供する。
【解決手段】透明電極基材1、対向電極基材2間に形成され、異なる帯電極性を有する2色相のツイストボール31および低極性溶媒を含む低極性溶媒層32を備えるツイストボール層3を有し、上記透明電極層および上記対向電極層の間に印加される駆動電圧の値または上記駆動電圧のパルス幅の少なくとも一方を制御して、上記ツイストボール型電子ペーパーを駆動させる制御部とを有するツイストボール型電子ペーパー付表示装置であって、上記制御部は、上記ツイストボール型電子ペーパーの初期コントラストが、その最大値よりも小さい値となるように、上記駆動電圧の値または上記駆動電圧のパルス幅の少なくとも一方を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ツイストボールを表示媒体とするツイストボール型電子ペーパーを用いたツイストボール型電子ペーパー付表示装置、およびツイストボール型電子ペーパーの駆動方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、電子ペーパーと呼ばれる情報媒体が注目を浴びつつある。この情報媒体は低消費電力性、曲げ可能なフレキシブル性、薄く軽いなどの優れた特性を有し、しかも書き換え可能という際立った特長を有し、実用化段階に入りつつある。
ここで、上記電子ペーパーは、通常、透明基材および透明電極層を有する透明電極基材と、対向基材および対向電極層を有する対向電極基材と、透明電極基材および対向電極基材の間に形成され、表示媒体を含む表示媒体層とを有するものであり、透明電極層および対向電極層の間に駆動電圧を印加することにより電界を生じさせ、上記電界に応じて表示媒体を駆動させることにより、画像等の所望の情報を表示するものである。
また一般に、上記電子ペーパーは、駆動電圧印加終了後も、上記情報を表示し続けることが可能な表示情報の保持性を有することに大きな特徴を有するものである。
【0003】
このような電子ペーパーの構成にはいくつか種類があり、その中に、例えば表示媒体として、異なる帯電極性を有する2色相球状粒子(ツイストボール)を用いた構成がある(例えば、特許文献1〜特許文献2)。
ツイストボールを用いた電子ペーパー(以下、ツイストボール型電子ペーパーと称して説明する場合がある。)においては、透明電極層および対向電極層の間に駆動電圧を印加して生じた電界により、ツイストボールを2色相のいずれか1色の相がツイストボール型電子ペーパーの表示面側に向くように回転させることで情報が表示される。
【0004】
しかしながら、上記ツイストボール型電子ペーパーにおいては、上述した表示情報の保持性が十分ではない場合があり、上記ツイストボール型電子ペーパーに表示された情報の視認性が経時的に低下してしまう場合があるといった問題があった。
【0005】
ところで、最近では、例えばデジタル時計等のように、1つの表示画面において部分的に書き換え頻度、すなわち駆動電圧印加の回数を異ならせて情報の表示を行う表示装置に、上述したツイストボール型電子ペーパーを適用することが試みられている。
【0006】
しかしながら、上述したように、ツイストボール型電子ペーパーにおいては、上記表示情報の保持性が十分ではない場合があることから、上記構成を有する表示装置に適用した場合は、書き換え頻度の高い部分に表示される情報の視認性に比べて、書き換え頻度の低い部分に表示される情報の視認性が劣ってしまうといった書き換え頻度の違いによる視認性の差が生じてしまう場合があり、1つの表示画面において均質な画像表示を行うことが困難であるといった問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−47614号公報
【特許文献2】特開2007−206365号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明者は、上記実情に鑑みて、鋭意研究を行った結果、2色表示が行われるツイストボール型電子ペーパーにおいては、駆動電圧印加終了直後から時間の経過とともに、そのコントラスト比が一定の下限値まで低下すること、また、初期コントラストが高いほど、上述した下限値との差が大きくなることを知見として得た。
そこで、本発明者は、上記知見に基づいてさらに鋭意研究を行うことにより、表示情報の保持性を高いものとすることを可能とする新たなツイストボール型電子ペーパーの駆動方法を見出し、本発明を完成させるに至ったのである。
【0009】
すなわち、本発明は、表示情報の保持性が高く、表示情報を良好に視認することが可能なツイストボール型電子ペーパー付表示装置、および表示情報の保持性を高いものとすることが可能なツイストボール型電子ペーパーの駆動方法を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記課題を解決するために、透明基材および上記透明基材上に形成された透明電極層を有する透明電極基材、対向基材および上記対向基材上に形成された対向電極層を有する対向電極基材、並びに、上記透明電極基材および上記対向電極基材の間に形成され、異なる帯電極性を有する2色相のツイストボールおよび低極性溶媒を含む低極性溶媒層を備えるツイストボール層を有し、上記2色相を用いて2色表示が行われるツイストボール型電子ペーパーと、上記透明電極層および上記対向電極層の間に印加される駆動電圧の値または上記駆動電圧のパルス幅の少なくとも一方を制御して、上記ツイストボール型電子ペーパーを駆動させる制御部とを有するツイストボール型電子ペーパー付表示装置であって、上記制御部は、上記ツイストボール型電子ペーパーの初期コントラストがその最大値よりも小さい値となるように、上記駆動電圧の値または上記駆動電圧のパルス幅の少なくとも一方を制御するものであることを特徴とするツイストボール型電子ペーパー付表示装置を提供する。
【0011】
本発明によれば、上記制御部により上記駆動電圧の値または上記駆動電圧のパルス幅を制御して、上記ツイストボール型電子ペーパーの初期コントラストを、その最大値よりも小さいものとすることができるため、上記初期コントラストと、電圧印加終了後のツイストボール型電子ペーパーのコントラスト比の下限値(以下、表示コントラストと称して説明する場合がある。)との差を小さいものとすることができる。これにより、表示情報の視認性が経時的に低下することを抑制することが可能となることから、本発明のツイストボール型電子ペーパー付表示装置を表示情報の保持性を高いものとすることができる。
【0012】
また本発明は、透明基材および上記透明基材上に形成された透明電極層を有する透明電極基材と、対向基材および上記対向基材上に形成された対向電極層を有する対向電極基材と、上記透明電極基材および上記対向電極基材の間に形成され、異なる帯電極性を有する2色相のツイストボールおよび低極性溶媒を含む低極性溶媒層を備えるツイストボール層とを有し、上記2色相を用いて2色表示が行われるツイストボール型電子ペーパーを駆動させるツイストボール型電子ペーパーの駆動方法であって、上記ツイストボール型電子ペーパーの初期コントラストがその最大値よりも小さい値となるように、上記透明電極層および上記対向電極層の間に印加される駆動電圧の値または上記駆動電圧のパルス幅の少なくとも一方を制御することを特徴とするツイストボール型電子ペーパーの駆動方法を提供する。
【0013】
本発明によれば、上記駆動電圧の値または上記駆動電圧のパルス幅を制御することにより、上記ツイストボール型電子ペーパーの初期コントラストを、その最大値よりも小さいものとすることができるため、上記初期コントラストおよび表示コントラストの差を小さいものとすることができる。よって、本発明の駆動方法を用いてツイストボール型電子ペーパーを駆動させることにより、表示情報の視認性が経時的に低下することを抑制することが可能となり、表示情報の保持性を高くすることが可能となる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ツイストボール型電子ペーパーの初期コントラストがその最大値よりも小さい値となるように、駆動電圧の値または駆動電圧のパルス幅を制御してツイストボール型電子ペーパーを駆動させることにより、初期コントラストおよび表示コントラストの差を小さくすることができ、表示情報の視認性の経時的な低下を抑制することが可能となる。その結果、ツイストボール型電子ペーパーにおける表示情報の保持性を向上させることができるため、所望の表示情報を良好に視認することが可能となるといった作用効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明のツイストボール型電子ペーパー付表示装置の一例を示す概略断面図である。
【図2】ツイストボール型電子ペーパーの一例を示す概略断面図である。
【図3】本発明のツイストボール型電子ペーパー付表示装置の他の例を示す概略断面図である。
【図4】本発明のツイストボール型電子ペーパー付表示装置の他の例を示す概略断面図である。
【図5】本発明のツイストボール型電子ペーパー付表示装置の他の例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明のツイストボール型電子ペーパー付表示装置、およびツイストボール型電子ペーパーの駆動方法について説明する。
【0017】
A.ツイストボール型電子ペーパー付表示装置
以下、本発明のツイストボール型電子ペーパー付表示装置(以下、単に表示装置と称して説明する場合がある。)について説明する。
【0018】
本発明の表示装置は、透明基材および上記透明基材上に形成された透明電極層を有する透明電極基材、対向基材および上記対向基材上に形成された対向電極層を有する対向電極基材、並びに、上記透明電極基材および上記対向電極基材の間に形成され、異なる帯電極性を有する2色相のツイストボールおよび低極性溶媒を含む低極性溶媒層を備えるツイストボール層を有し、上記2色相を用いて2色表示が行われるツイストボール型電子ペーパー(以下、単に電子ペーパーと称して説明する場合がある。)と、上記透明電極層および上記対向電極層の間に印加される駆動電圧の値または上記駆動電圧のパルス幅の少なくとも一方を制御して、上記電子ペーパーを駆動させる制御部とを有するものであって、上記制御部は、上記電子ペーパーの初期コントラストがその最大値よりも小さい値となるように、上記駆動電圧の値または上記駆動電圧のパルス幅の少なくとも一方を制御するものであることを特徴とするものである。
【0019】
なお、本発明に用いられる電子ペーパーにおいて、「2色相を用いて2色表示が行われる」とは、ツイストボールの2色相が有する2色を用いて任意の情報を表示することを指す。具体的には、ツイストボールが白色相/黒色相を有する場合、白黒表示で任意の情報を表示することを指す。
また、本発明においては、ツイストボール層の2色相が有する2色のみで表示を行い、上記2色の中間色を用いた階調表示を含まないことが好ましい。
【0020】
また、本発明における「電子ペーパーの初期コントラスト」とは、2色表示が行われている電子ペーパーの駆動電圧印加終了直後のコントラスト比を指す。
また、電子ペーパーの駆動電圧印加終了直後のコントラスト比は、例えば、電子ペーパーに任意の駆動電圧の値、および任意の駆動電圧のパルス幅で駆動電圧を印加して2色表示を行った後、駆動電圧の印加を終了し、駆動電圧印加終了直後における各色の表示反射率を測定し、得られた測定値から、各色の表示反射率の比を算出することにより得ることができる。
また、上記電子ペーパーの各色の表示反射率は、例えば、伊原電子工業株式会社の反射濃度計R700を表示部位に接触させて測定した各色の反射濃度から算出することができる。
【0021】
また、本発明における「電子ペーパーの初期コントラストの最大値」とは、本発明の表示装置を用いて2色表示を行う際に、初期コントラストを高めるために電子ペーパーの駆動条件を最適な条件とした場合に達成することが可能な初期コントラストの値を指す。
また、電子ペーパーの初期コントラストの最大値は、具体的には、上述した初期コントラストの測定を、駆動電圧の値または駆動電圧のパルス幅を変化させて行い、初期コントラストが増加する方向に変化しなくなったときの値として求めることができる。
【0022】
本発明の表示装置について図を用いて説明する。
図1は、本発明の表示装置の一例を示す概略断面図である。図1に示すように、本発明の表示装置100は、透明基材11および透明基材11上に形成された透明電極層12を有する透明電極基材1と、対向基材21および対向基材21上に形成された対向電極層22を有する対向電極基材2と、透明電極基材1および対向電極基材2の間に形成され、異なる帯電極性を有する2色相のツイストボール31および低極性溶媒を含む低極性溶媒層32を備えるツイストボール層3とを有し、2色相を用いて2色表示が行われる電子ペーパー10を有するものである。
なお、図1においては、ツイストボール31が正電荷に帯電した黒色相と、負電荷に帯電した白色相を有するものである例について示している。また、図1においては、ツイストボール層3が透明基材11、対向基材21、およびシール剤4により密封されている例について示している。
【0023】
また、表示装置100は、透明電極層12および対向電極層22の間に印加される駆動電圧Eの値または駆動電圧Eのパルス幅の少なくとも一方を制御して電子ペーパー100を駆動させる制御部20を有するものである。
また、本発明の表示装置100において、制御部20は、電子ペーパー10の初期コントラストがその最大値よりも小さい値となるように、駆動電圧Eの値または駆動電圧Eのパルス幅の少なくとも一方を制御するものである。
【0024】
本発明の表示装置は、上記制御部を有することにより、従来の表示装置に比べて電子ペーパーの表示情報の保持性を高いものとすることを可能とした点に大きな特徴を有するものである。
以下、この点について説明する。
【0025】
まずここで、一般的な表示装置において、電子ペーパーを用いて画像表示を行う方法について図を用いて説明する。図2(a)、(b)は表示装置の一例を示す概略断面図である。また、電子ペーパー10の構成については図1に示す電子ペーパー10と同様とする。また、図2(a)、(b)においては、透明電極基材1側を表示面側とする。
図2(a)、(b)に示すように、透明電極層12および対向電極層22の間に所定の駆動電圧Eを印加した場合、透明電極層12および対向電極層22の間に形成されたツイストボール層は駆動電圧Eにより生じた電界下に置かれることとなる。また、ツイストボール層3中のツイストボール31は生じた電界に応じて回転し、例えば図2(a)、(b)に示すように電圧を印加した場合は、個々のツイストボール31(図2(a))は、ツイストボール31の黒色相が対向電極基材2側を向き、ツイストボール31の白色相が透明電極基材1側を向くようになる(図2(b))。また、上述したツイストボール31の向きについては、駆動電圧Eの値を大きくしたり、駆動電圧Eのパルス幅を大きくしたりすることにより、より精度高く制御することが可能となるものである。また、ツイストボール31の向きを精度高く制御することにより、ツイストボール31における2色相の色を視認しやすくなることから2色表示の電子ペーパーのコントラスト比を大きなものとすることができる。
また、ツイストボール層3は、通常、ツイストボール31と低極性溶媒層32との間に空間aを有しており、駆動電圧Eを印加した場合は、ツイストボール31は空間a内において偏って存在するようになるものである。
【0026】
従来の電子ペーパーを用いた表示装置においては、電子ペーパーの表示性能を評価するに際して、駆動電圧印加終了直後における表示情報の視認性を重要視する場合が多かった。そのため、上記表示装置においては、電子ペーパーの駆動方法として、電子ペーパーの初期コントラストをその最大値まで向上させるために、駆動電圧の値や駆動電圧のパルス幅を大きくすることにより、電子ペーパーにおけるツイストボール層のツイストボールの向きや、低極性溶媒層中のツイストボールの分布を精度高く制御して、電子ペーパーを駆動させる方法が多く採用されていた。
しかしながら、上述した電子ペーパーの駆動方法が採用された表示装置においては、駆動電圧印加終了直後における表示情報については良好に視認することができるものの、表示情報の視認性が経時的に大きく低下する場合があり、表示情報の保持性については十分ではない場合があるといった問題があった。
【0027】
また、1つの表示画面において部分的に書き換え頻度、すなわち駆動電圧印加の回数を異ならせて情報の表示を行う表示装置に上記電子ペーパーを適用するに際しては、表示情報の保持性が十分ではない場合には、書き換え頻度の差による視認性の違いが影響して、1つの情報を均質に表示することが困難となるといった問題があった。
【0028】
そこで本発明者は、上記実情に鑑みて、鋭意研究を行った結果、2色表示が行われる電子ペーパーにおいては、駆動電圧印加終了直後から時間の経過とともに、そのコントラスト比が表示コントラストの値まで低下すること、また、初期コントラストが高いほど、上述した表示コントラストとの差が大きくなることを見出した。
【0029】
なお、本発明における「表示コントラスト」とは、駆動電圧印加終了後における電子ペーパーのコントラスト比の下限値を指し、例えば次のような測定方法により求めることができる。
まず、駆動電圧の値および駆動電圧のパルス幅を任意の値に設定して、電子ペーパーで2色表示を行う。次に、駆動電圧の印加を終了し、終了後の電子ペーパーのコントラスト比を一定時間毎に測定する。このような測定を行い、電子ペーパーのコントラスト比が減少する方向に変化しなくなったときのコントラスト比を表示コントラストとすることができる。
また、電子ペーパーのコントラスト比の測定方法については上述の方法と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0030】
ここで、電子ペーパーにおいて、駆動電圧印加終了直後から時間の経過とともに、そのコントラスト比が表示コントラストの値まで低下する理由、また、初期コントラストが高いほど、上述した表示コントラストとの差が大きくなる理由については明らかではないが次のように推量される。
【0031】
すなわち、電圧印加時の電子ペーパーにおいては、電界の効果によってツイストボール層中の大部分のツイストボールがその極性に応じた2色相のうちいずれか1つの色相が表示面側に向いた状態となっている。また、駆動電圧の値または駆動電圧のパルス幅が大きいほど電界の効果が大きくなることから、ツイストボール層中の上述の状態のツイストボールの存在割合が増加し、2色相の2色の境界部分が表示面側に向いているツイストボールの存在割合が減少するものと考えられる。よって、電子ペーパーにおける2色表示のコントラスト比は駆動電圧の値または駆動電圧のパルス幅が大きいほど高くなるものと考えられる。
ここで、初期コントラストは、2色表示が行われている電子ペーパーの駆動電圧印加終了直後のコントラスト比であることから、電圧印加時における電子ペーパーのコントラスト比が高いほど高くなるものと考えられる。
【0032】
一方、電圧印加終了後の電子ペーパーにおいては、電界の効果がないことから、ツイストボール層中において、2色相のうちいずれか1つの色相が表示面側に向いた状態にあるツイストボールのうち、いくつかのツイストボールは2色相の2色の境界部分が表示面側に向いている状態へと変化することが考えられる。これにより、電圧印加終了後の電子ペーパーにおいてはコントラスト比の低下が起こり、表示コントラストを示すようになるものと考えられる。
【0033】
よって、駆動電圧の値または駆動電圧のパルス幅が大きいほど、ツイストボール層中には、2色相のうちいずれか1つの色相が表示面側に向いた状態から2色相の2色の境界部分が表示面側に向いている状態へと変化するツイストボールの存在割合が大きくなるため、表示情報の視認性が低下してしまうものと考えられる。
【0034】
また、駆動電圧の値または駆動電圧のパルス幅が大きいほど、電圧印加終了後において電界の効果がなくなることに対する反動が大きくなるため、ツイストボールが反転してしまうことも考えられる。
【0035】
また、上述したように、電圧印加時においては、ツイストボール層中のツイストボールは、ツイストボールおよび低極性溶媒層の間の空間内で偏って存在するものである。よってツイストボールが上述した空間内において表示面側に偏って存在する場合は、電圧印加終了後にいくつかのツイストボールが表示面側から対向面側に移動する際にツイストボールが反転し、コントラスト比が低下することも考えられる。
【0036】
したがって、従来の表示装置に用いられる電子ペーパーの駆動方法においては、初期コントラストがその最大値もしくは最大値に近い値を示すように、電子ペーパーを駆動させていたことから、初期コントラストおよび表示コントラストの差についても大きな値となるため、これらのコントラスト比の差が視認されやすいものとなり、表示情報の保持性が低下してしまうものと考えられる。
【0037】
上記知見を得た本発明者は、表示情報の保持性を向上させることが可能な電子ペーパーの駆動方法として、初期コントラストと表示コントラストとの差が小さくなるように、駆動電圧の値または駆動電圧のパルス幅を制御する方法、すなわち初期コントラストがその最大値よりも小さい値となるように駆動電圧の値または駆動電圧のパルス幅を制御する方法を見出した。また、上記電子ペーパーの駆動方法を表示装置の制御部に適用することにより本発明を完成させるに至ったのである。
【0038】
以上説明したように、本発明によれば、上記制御部により駆動電圧の値または駆動電圧のパルス幅を制御して、上記ツイストボール型電子ペーパーの初期コントラストをその最大値よりも小さいものとすることができるため、上記初期コントラストおよび表示コントラストの差を小さいものとすることができる。これにより、表示情報の視認性が経時的に低下することを抑制することが可能となることから、本発明の表示装置を表示情報の保持性を高いものとすることができる。
【0039】
また、本発明によれば、電子ペーパーにおいて部分的に書き換え頻度を異ならせて1つの情報表示を行う場合も、書き換え頻度の高い部分と書き換え頻度の低い部分とで視認性の差を生じにくいものとすることができるため、均質な情報表示を行うことが可能となる。
【0040】
以下、本発明の表示装置における各構成について説明する。
【0041】
1.制御部
本発明における制御部について説明する。
本発明における制御部は、透明電極層および対向電極層の間に印加される駆動電圧の値または駆動電圧のパルス幅の少なくとも一方を制御して、電子ペーパーを駆動させるものであり、電子ペーパーの初期コントラストがその最大値よりも小さい値となるように、駆動電圧の値または駆動電圧のパルス幅の少なくとも一方を制御するものである。
【0042】
(1)電子ペーパーの駆動方法
上記制御部において適用される電子ペーパーの駆動方法は、電子ペーパーの初期コントラストがその最大値よりも小さい値となるように、駆動電圧の値または駆動電圧のパルス幅の少なくとも一方を制御する方法である。
【0043】
上記電子ペーパーの駆動方法においては、電子ペーパーの初期コントラストがその最大値よりも小さい値となるように、電子ペーパーを駆動させることが可能であれば特に限定されないが、電子ペーパーの初期コントラストがその最大値に対して95%以下、なかでも65%〜90%の範囲内となるように制御することが好ましい。上記比率が上記範囲よりも大きい場合は、表示情報の視認性の経時的な低下を認識しやすくなることから、電子ペーパーにおける表示情報の保持性が低下する可能性があるからである。
また、上記比率の下限値としては、60%程度である。上記下限値を下回る場合は、経時的な変化に関係なく、電子ペーパー自体の視認性が低下するおそれがあるからである。
【0044】
なお、初期コントラストの最大値は、例えば次のような測定方法により求めることができる。
例えば、駆動電圧のパルス幅を任意の値に固定し、駆動電圧の値を変化させながら電子ペーパーで2色表示を行い、変化させた駆動電圧の値毎にコントラスト比を測定する。このような測定を繰り返し行い、電子ペーパーのコントラスト比が増加する方向に変化しなくなった値を初期コントラストの最大値として得ることができる。
また、例えば、駆動電圧の値の任意の値に固定し、駆動電圧のパルス幅を変化させながら電子ペーパーに2色表示を行い、変化させた駆動電圧のパルス幅毎にコントラスト比を測定する。このような測定を繰り返し行い、電子ペーパーのコントラスト比が増加する方向に変化しなくなった値を、初期コントラストの最大値として得ることができる。
【0045】
また、上記電子ペーパーの駆動方法においては、電子ペーパーの初期コントラストと上述の表示コントラストとの差が小さくなるように、駆動電圧の値または駆動電圧のパルス幅の少なくとも一方を制御することがより好ましい。上記電子ペーパーの初期コントラストと上記表示コントラストとの差については、初期コントラストに対する表示コントラストの比率(以下、コントラスト保持率と称する。)として表すことができる。
このようなコントラスト保持率としては、電子ペーパーにおける表示情報の保持性を良好なものとすることが可能であれば特に限定されないが、70%以上、なかでも80%以上であることが好ましい。上記コントラスト保持率が上記範囲に満たない場合は、表示情報の視認性の経時的な低下を認識しやすくなることから、電子ペーパーにおける表示情報の保持性が低下する可能性があるからである。
【0046】
上記電子ペーパーの駆動方法における電子ペーパーの具体的な初期コントラストの値については、表示装置の用途に応じて適宜選択されるものであるが、3以上、なかでも5〜25の範囲内、特に5〜18の範囲内であることが好ましい。上記初期コントラストが上記範囲を超える場合は、表示コントラストとの差が大きくなり、所望の表示情報の保持性を示すことが困難となる場合があるからであり、上記範囲に満たない場合は、経時的な変化に関わらず表示情報を良好に視認することが困難となる可能性があるからである。
【0047】
また、上記電子ペーパーの駆動方法が適用される電子ペーパーの表示コントラストの値については、表示装置の用途に応じて適宜選択されるものであるが、3以上、なかでも5〜20の範囲内、特に5〜15の範囲内であることが好ましい。上記表示コントラストが上記範囲を超える場合は、表示コントラストとの差が大きくなり、所望の表示情報の保持性を示すことが困難となる場合があるからであり、上記表示コントラストが上記範囲に満たない場合は、電子ペーパーの視認性が低下する可能性があるからである。
【0048】
上記電子ペーパーの駆動方法としては、電子ペーパーの初期コントラストをその最大値よりも小さい値とすることが可能であれば特に限定されず、具体的には、駆動電圧の値を制御する態様(第1態様)と、駆動電圧のパルス幅を制御する態様(第2態様)と、駆動電圧の値および駆動電圧のパルス幅を制御する態様(第3態様)とを挙げることができる。
以下、各態様について説明する。
【0049】
(a)第1態様
本発明に用いられる電子ペーパーの駆動方法の第1態様は、電子ペーパーの初期コントラストがその最大値よりも小さい値となるように、駆動電圧の値を制御する方法である。なお、本態様の電子ペーパーの駆動方法においては、通常、駆動電圧のパルス幅は任意の値に固定される。
【0050】
上記駆動電圧の値の制御方法としては、所定の駆動電圧のパルス幅における電子ペーパーの初期コントラストをその最大値よりも小さい値とすることが可能な制御方法であれば特に限定されないが、電子ペーパーの初期コントラストが最大値となる駆動電圧(以下、最大駆動電圧と称して説明する場合がある。)の値、および電子ペーパーにおける表示コントラストを測定により予め求め、得られた最大駆動電圧の値および表示コントラストを考慮して、電子ペーパーに印加される駆動電圧の値を制御することが好ましい。上記制御方法を用いることにより、容易に、かつ精度よく駆動電圧の値を制御することができるからである。
【0051】
ここで、上述の最大駆動電圧の値は、例えば上述した初期コントラストの測定方法において、駆動電圧のパルス幅を一定の値に固定して測定を行った場合に、電子ペーパーの初期コントラストが最大値となるときの駆動電圧の値として求めることができる。
【0052】
本態様に用いられる駆動電圧の値としては、上述した最大駆動電圧の値よりも小さい値であれば特に限定されないが、上記最大駆動電圧の値に対する駆動電圧の値の比率が、95%以下、なかでも30%〜80%の範囲内、特に30%〜70%の範囲内であることが好ましい。上記比率が上記範囲を超える場合は、電子ペーパーの初期コントラストおよび表示コントラストの差を十分に小さいものとすることが困難であることから、電子ペーパーの表示情報の保持性を十分なものとすることが困難となる可能性があるからである。
また、上記比率の下限値としては、20%程度である。上記比率が上記下限値を下回る場合は、電子ペーパー自体を駆動させることが困難となる可能性があるからである。
【0053】
上記駆動電圧の値について具体的な値については、本発明の表示装置の用途に応じて適宜設定されるものであるため、ここでの記載は省略する。
【0054】
また、本態様における駆動電圧の波形としては、電子ペーパーの初期コントラストがその最大値よりも小さい値となるように、駆動電圧の値を制御することが可能であれば特に限定されず、一般的な表示装置に用いられる電圧の波形と同様とすることができる。
本態様においては、なかでも矩形波であることが好ましい。駆動電圧の波形が矩形波であることにより、駆動電圧の値を精度高く制御することが可能となるからである。
【0055】
また、本態様における駆動電圧のパルス幅については、上述したように駆動電圧の値を制御することで所望の初期コントラストとすることが可能であれば特に限定されず、本発明の表示装置の用途に応じて適宜選択することができるので、ここでの説明は省略する。
【0056】
(b)第2態様
本発明に用いられる電子ペーパーの駆動方法の第2態様は、電子ペーパーの初期コントラストがその最大値よりも小さい値となるように、駆動電圧のパルス幅を制御する方法である。なお、本態様の電子ペーパーの駆動方法においては、通常、駆動電圧の値は任意の値に固定される。
【0057】
上記駆動電圧のパルス幅の制御方法としては、所定の駆動電圧の値における電子ペーパーの初期コントラストをその最大値よりも小さい値とすることが可能な制御方法であれば特に限定されないが、電子ペーパーの初期コントラストが最大値となる最大駆動電圧のパルス幅、および電子ペーパーにおける表示コントラストを測定により予め求め、得られた最大駆動電圧のパルス幅および表示コントラストを考慮して、電子ペーパーに印加される駆動電圧のパルス幅を制御することが好ましい。上記制御方法を用いることにより、容易に、かつ精度高く駆動電圧のパルス幅を制御することができるからである。
【0058】
ここで、上述の最大駆動電圧のパルス幅は、例えば上述した初期コントラストの測定方法において、駆動電圧の値を一定の値に固定して測定を行った場合に、電子ペーパーの初期コントラストが最大値となるときの駆動電圧のパルス幅として求めることができる。
【0059】
本態様における駆動電圧のパルス幅としては、上述した最大駆動電圧のパルス幅よりも小さい値であれば特に限定されないが、上記最大駆動電圧のパルス幅に対する駆動電圧のパルス幅の比率が、95%以下、なかでも10%〜80%の範囲内、特に10%〜70%の範囲内であることが好ましい。上記比率が上記範囲を超える場合は、電子ペーパーの初期コントラストおよび表示コントラストの差を十分に小さいものとすることが困難であるため、電子ペーパーの表示情報の保持性を十分なものとすることが困難となる可能性があるからである。
また、上記比率の下限値としては、5%程度である。上記比率が上記下限値を下回る場合は、電子ペーパー自体を駆動させることが困難となる可能性があるからである。
【0060】
駆動電圧のパルス幅について具体的な値については、本発明の表示装置の用途に応じて適宜設定されるものであるため、ここでの記載は省略する。
また、本態様において印加される駆動電圧のパルスの回数については、パルス幅が上述した最大駆動電圧のパルス幅よりも小さい値であれば特に限定されず、1回でも複数回でもよい。複数回の場合には、全てのパルス幅の総和が上述した最大駆動電圧のパルス幅よりも小さい値であればよい。
【0061】
また、本態様における駆動電圧の波形については、上述した第1態様の項で記載したものと同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0062】
また、本態様における駆動電圧の値については、上述したように駆動電圧のパルス幅を制御することで所望の初期コントラストとすることが可能であれば特に限定されず、本発明の表示装置の用途に応じて適宜選択することができるので、ここでの説明は省略する。
【0063】
(c)第3態様
本発明に用いられる電子ペーパーの駆動方法の第3態様は、電子ペーパーの初期コントラストがその最大値よりも小さい値となるように、駆動電圧の値および駆動電圧のパルス幅を制御する方法である。
本態様については、具体的には上述した第1態様の電子ペーパーの駆動方法と第2態様の電子ペーパーの駆動方法とを併用することにより、駆動電圧の値および駆動電圧のパルス幅を制御する方法である。なお、駆動電圧の値の制御方法、駆動電圧のパルス幅の制御方法については、それぞれの態様で記載した方法と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0064】
(2)制御部の構成
本発明における制御部の構成としては、駆動電圧の値または駆動電圧のパルス幅を制御することが可能であり、かつ上述した電子ペーパーの駆動方法を適用することが可能な構成であれば特に限定されず、一般的な表示装置の制御部に用いられる構成と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0065】
2.電子ペーパー
次に、本発明における電子ペーパーについて説明する。
本発明における電子ペーパーは、透明基材および上記透明基材上に形成された透明電極層を有する透明電極基材と、対向基材および上記対向基材上に形成された対向電極層を有する対向電極基材と、上記透明電極基材および上記対向電極基材の間に形成され、異なる帯電極性を有する2色相のツイストボールおよび低極性溶媒を含む低極性溶媒層を備えるツイストボール層とを有するものである。また、本発明における電子ペーパーにおいては、ツイストボールの2色相を用いて2色表示が行われる。
以下、本発明における電子ペーパーの各部材について説明する。
【0066】
(1)透明電極基材
本発明における透明電極基材は、透明基材と、透明基材上に形成された透明電極層とを有するものである。
また、本発明における電子ペーパーにおいては、通常、透明電極基材側が表示面側として用いられる。
【0067】
(a)透明基材
本発明に用いられる透明基材は、透明電極層を支持するものである。
【0068】
上記透明基材としては、透明性を有し、かつ透明電極層を形成することができるものであれば特に限定されるものではなく、絶縁性を有していてもよいし、絶縁性を有していなくてもよいが、絶縁性を有しているものが好ましい。
【0069】
このような透明基材の透明性としては、電子ペーパーを用いて所望の二色表示を行うことが可能であれば特に限定されないが、なかでも可視光領域における透過率が80%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましい。透明性が上記範囲であることにより、電子ペーパーに用いた際に、表示輝度が低下すること等を防止することができるからである。
ここで、透明基材の透過率は、JIS K7361−1(プラスチック−透明材料の全光透過率の試験方法)により測定することができる。
【0070】
本発明に用いられる透明基材は、ガラス基板等のフレキシブル性を有さない透明な基材であってもよく、あるいは、樹脂製フィルム等のフレキシブル性を有する透明な基材であってもよい。
【0071】
中でも、本発明においては、透明なフレキシブル性を有する基材を用いることが好ましい。透明なフレキシブル性を有する基材を用いることにより、本発明における電子ペーパーを加工性に優れたものとすることができるため、種々の形態の表示装置に用いることができるからである。
上記樹脂製フィルム基材としては、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、ポリイミド、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンテレフタラート、ポリカーボネート、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィド、液晶ポリマー、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、フェノール樹脂等を挙げることができる。
【0072】
また、本発明においては、フレキシブル性を有し、かつガスバリア性を有する薄板ガラスを透明基材として用いてもよい。このような薄板ガラスとしては、例えば、ソーダライムガラス、無アルカリガラス、石英ガラス等を用いることができ、中でも、無アルカリガラスが好ましい。
【0073】
ここで、本発明においては、図3に示すように、透明基材11と対向基材21とをラミネート加工することによって、ツイストボール層3を密封することも可能である。
なお、図3は本発明の表示装置の他の例を示す概略断面図であり、説明していない符号については図1と同様とすることができる。
【0074】
上記ラミネート加工を用いる場合は、ラミネート加工可能なベースフィルム材料とシーラントフィルム材料が積層された基材を透明基材として用いることがより好ましい。
【0075】
ラミネート加工可能なベースフィルム材料としては、ラミネート加工時の加熱圧着による耐熱性の観点からポリイミド、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンテレフタラート、ポリカーボネート、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィド、液晶ポリマー、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、フェノール樹脂等が挙げられる。
また、シーラントフィルム材料としては無延伸ポリプロピレンフィルム、二軸延伸ポリプロピレンフィルム等が挙げられる。また、ポリウレタン、ポリアクリル、エポキシ樹脂、シリコーン等の熱シール性のある材料からなる塗膜等を用いることも可能である。
なお、ラミネート加工時には、透明基材と対向基材とは積層したベースフィルム材料とシーラントフィルム材料とのうち、シーラントフィルム材料側が対向するように配置されて接着される。
【0076】
また、ラミネート加工可能なベースフィルム材料とシーラントフィルム材料が積層された透明基材および後述する対向基材を用いてラミネート加工する場合、上記透明基材および後述する対向基材の材料が同一のベースフィルム材料及びシーラントフィルム材料であることがさらに好ましい。上記透明基材および後述する対向基材の材料が同一のベースフィルム材料及びシーラントフィルム材料であることにより、ラミネート加工を行う際の透明基材および対向基材の密着性を向上させることが可能となるからである。
【0077】
このような透明基材の膜厚としては、後述する透明電極層を形成することができる程度の自己支持性を有するものであれば特に限定されるものではない。このような透明基材の膜厚としては、10μm〜300μmの範囲内、なかでも15μm〜100μmの範囲内、特に25μm〜50μmの範囲内であることが好ましい。上記透明基材の膜厚が上記範囲に満たない場合は、後述する透明電極層を透明基材表面上に形成することが困難になるからである。また、上記透明基材の膜厚が上記範囲を超える場合は、表示装置が大型化する場合や、後述する透明電極層とは反対側にツイストボール層を配置した場合には、駆動電圧を印加させたとしてもツイストボールを所望の方向に回転させることが困難となる可能性があるからである。
【0078】
(b)透明電極層
本発明における透明電極層は、透明基材上に形成されるものである。ここで、本発明における電子ペーパーが所定のパターン表示を行うセグメント用途に用いられるセグメント用電子ペーパーである場合、上記透明電極層は共通電極として用いられるものとする。また、本発明における電子ペーパーがパッシブ駆動型の電子ペーパーである場合は、透明電極層および後述する対向電極層のいずれか一方を走査(行)電極、他方を信号(列)電極として用いるものとする。
【0079】
このような透明電極層としては、上記透明基材上に形成されているのであれば特に限定されず、例えば上記透明基材上に透明電極層が直接形成されていてもよいし、また例えば上記透明電極層を透明性を有するフィルム上に形成し、上記透明電極層が形成された透明性を有するフィルムを上記透明基材上に配置することによって形成されていてもよい。
【0080】
このような透明電極層の材料としては、ITO、SnO、ZnO:Al、カーボンナノチューブ等の透明導電体を挙げることができる。
【0081】
また、上記透明電極層は、上記透明電極層が共通電極である場合は、通常、上述した透明基材全面に形成されるものである。
一方、上記透明電極層が、パッシブ駆動型の電子ペーパーに用いられる電極である場合は、対向電極が有するパターンに対応したパターンを有するように形成されるものである。このような透明電極層のパターンとしては、一般的なパッシブ駆動型の表示装置に用いられる透明電極層が有するパターンと同様とすることができるので、ここでの記載は省略する。
【0082】
また、上記透明電極層の形成方法は、所望する膜厚で透明基材上に透明電極層を形成することができるのであれば特に限定されるものではない。
このような透明電極層の形成方法としては、上記透明電極層を上記透明基材上に直接形成する場合は、上述した透明導電体を用いてスパッタリング法、真空蒸着法、CVD法、塗布法等により上記透明基材上に薄膜を形成する方法を挙げることができる。
また、上記透明電極層を透明性を有するフィルム上に形成し、上記透明電極層が形成された透明性を有するフィルムを上記透明基材上に配置する場合は、上記透明電極層を上記透明基材上に直接形成する場合と同様の方法で、透明性を有するフィルム上に透明電極層を形成し、これを接着剤等を用いて透明基材上に貼りつける方法、上記透明電極層が形成された透明性を有するフィルムおよび上記透明基材をラミネート加工する方法等が挙げられる。なお、上記透明性を有するフィルムとしては、具体的には、上述した透明基材と同様の材料からなるものを用いることができる。また、透明性を有する接着剤等についても、一般的な樹脂基材どうしを貼り合わせる際に用いられるものと同様とすることができるのでここでの記載は省略する。
【0083】
本発明に用いられる透明電極層の膜厚としては、上記透明基材表面上に形成することができるのであれば特に限定されるものではない。このような透明電極層の膜厚としては、50nm〜10μmの範囲内、なかでも100nm〜5μmの範囲内、特に200nm〜1μmの範囲内であることが好ましい。上記透明電極層の膜厚が上記範囲に満たない場合は、透明基材表面上に透明電極層を均一な膜厚で形成することが困難であるからである。また、上記透明電極層の膜厚が上記範囲を超える場合は、透明電極層の製膜に用いられる時間や材料が多くなるため、製造コストが高くなるからである。
【0084】
(c)透明電極基材
本発明に用いられる透明電極基材の配置としては、本発明における電子ペーパーを用いて所望する表示を行うことができる配置であれば特に限定されるものではない。例えば、本発明における電子ペーパーにおいて、透明電極層が後述するツイストボール層側になるように上記透明電極基材を配置してもよいし、また例えば、上記透明電極層が上記ツイストボール層とは反対側になるように上記透明電極基材を配置してもよい。本発明における電子ペーパーにおいては、上記透明電極層が上記ツイストボール層とは反対側になるように上記透明電極基材が配置されていることがより好ましい。このような配置とすることにより、透明電極層がツイストボール層と直接接触しないため、透明電極層の材料がツイストボール層の低極性溶媒中に溶出しないことから、本発明における電子ペーパーの表示品質の低下を防止することが可能となる。
また上記透明電極層の材料として、低極性溶媒に溶出しにくい材料が用いられている場合は、上記透明電極層が後述するツイストボール層側になるように上記透明電極基材を配置してもよい。
【0085】
なお、本発明における電子ペーパーがパッシブ駆動型の電子ペーパーである場合は、上記透明電極層が上記ツイストボール層とは反対側になるように上記透明電極基材が配置されていることが好ましい。パッシブ駆動型の電子ペーパーにおいては、透明電極層はストライプ状等のパターン状に形成されることから、透明電極層がツイストボール層とは反対側となるように配置した場合は、上記透明電極層の凹凸による電子ペーパーの画像表示劣化を防止することができ、さらには、上記透明電極基材に貫通孔を設置することなく容易に配線を繋ぐことができるからである。
【0086】
(2)対向電極基材
本発明における対向電極基材は、対向基材と、対向基材上に形成された対向電極層とを有するものである。
【0087】
(a)対向基材
本発明における対向基材は、対向電極層を支持するものである。
また、本発明における対向基材は通常、絶縁性を有するものである。
【0088】
本発明に用いられる対向基材は、上記対向基材上に対向電極層を形成することができる程度の自己支持性を有するものであれば特に限定されるものではない。また、上記対向基材としては透明性を有していてもよいし、透明性を有していなくてもよいが、透明性を有していないものがより好ましい。本発明における電子ペーパーは、通常、透明電極基材側から表示情報が視認されるものである。よって本発明において、透明電極基材側から電子ペーパーを視認した場合、対向基材は、情報表示を行うツイストボール層の下層側に配置されるものであることから、対向基材が透明性を有する場合は、光漏れ等の問題が発生することが考えられるからである。
また、本発明においては、必要に応じて対向基材を、後述するツイストボールの一方の色と同色に着色してもよい。
【0089】
このような対向基材としては、フレキシブル性を有する基材であってもよく、フレキシブル性を有さない基材であってもよいが、フレキシブル性を有する基材であることが好ましい。本発明における電子ペーパーを加工性に優れたものとすることができるため、種々の形態の表示装置に用いることができるからである。
【0090】
このような対向基材としては、例えば樹脂製フィルム基材を挙げることができる。なお、樹脂製フィルム基材については上述した透明基材の項で説明したものと同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0091】
また、本発明においては、図3に示すように、透明基材11および対向基材21をラミネート加工することによってツイストボール層3を密封することもできることから、対向基材の材料としては、ラミネート加工可能な材料を用いることもできる。ラミネート加工可能な材料については、上述した透明基材の項で説明したものと同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0092】
(b)対向電極層
本発明に用いられる対向電極層は、対向基材上に形成されるものである。
【0093】
ここで、本発明における電子ペーパーがセグメント用電子ペーパーである場合は、上記対向電極層を表示電極として用いるものとする。また、本発明における電子ペーパーがパッシブ駆動型の電子ペーパーである場合は、上記対向電極層および透明電極層のいずれか一方を走査(行)電極、他方を信号(列)電極として用いるものとする。
【0094】
上記対向電極層としては、導電性を有する材料からなり、対向電極層に電圧を印加することにより、後述するツイストボール層を用いて情報表示を行うことができるものであれば特に限定されるものではない。このような対向電極層としては、例えば、上記対向基材上に対向電極層が直接形成されていてもよいし、また例えば、上記対向基材および対向電極層の間に接着剤層等を介して形成されていてもよいし、また例えば、上記対向電極層を対向基材とは別のフィルム上に形成し、上記対向電極層が形成されたフィルムを上記対向基材上に配置することによって形成されていてもよい。本発明においては、工程の簡略化のため、上記対向基材上に対向電極層が直接形成されているものであることがより好ましい。
【0095】
また、本発明に用いられる対向電極層の形状としては、本発明における電子ペーパーがセグメント用電子ペーパーである場合は、表示される情報に合わせた形状を有していれば特に限定されるものではない。
対向電極層の形状としては、例えば三角形、四角形等の多角形、円、楕円等の幾何学形状の他、文字、数字、符号、標章等の記号等、絵柄等を挙げることができる。また、対向電極層の形状としては、デジタル表示に用いられる7セグメントを構成する形状を挙げることができる。
【0096】
また、本発明における電子ペーパーがパッシブ駆動型の電子ペーパーである場合は、通常、上記対向電極層は、透明電極層が有するパターンに対応したパターンを有する。このような対向電極層のパターンとしては、一般的なパッシブ駆動型の表示装置に用いられる対向電極層が有するパターンと同様とすることができるので、ここでの記載は省略する。
【0097】
このような対向電極層に用いられる材料としては、導電性を有する材料であれば特に限定されるものではないが、例えばAu、Al、Ag、Ni、Cu等の金属、ITO、SnO、ZnO:Al等の透明導電体、導電剤を溶媒あるいは合成樹脂バインダに混合したもの等を挙げることができる。上記導電剤としてはポリメチルベンジルトリメチルアンモニウムクロライド、ポリアリルポリメチルアンモニウムクロライド等のカチオン性高分子電解質、ポリスチレンスルホン酸塩、ポリアクリル酸塩等のアニオン性高分子電解質や電子伝導性の酸化亜鉛、酸化スズ、酸化インジウム、カーボン微粉末、カーボンナノチューブ、Ag微粉末等が用いられる。
本発明においては、上記対向電極層に用いられる材料としては、なかでも、導電性とフィルム基材上に形成することを考慮して基材の伸縮に耐えうる柔軟性のある導電性材料、特にAu、Cu、Al、Ag等の金属、カーボンやAg微粉末等を合成樹脂バインダに混合した導電性ペースト等が好ましい。
【0098】
また、上記対向電極層の形成方法としては、後述する対向基材上に対向電極層を直接形成する場合は、上述した金属、および透明導電体等を金属マスク等を用いてスパッタリング法、真空蒸着法、CVD法、塗布法等で対向基材上に薄膜をパターン状に形成する方法、上記導電剤を溶媒あるいは合成樹脂バインダに混合して対向基材上にパターン状に塗布する方法等を挙げることができる。
一方、後述する対向基材上に接着剤等を介して対向電極層を形成する場合は、上記金属からなる金属箔を所定の形状に切り取り、これを対向基材上に接着剤等によって貼りつける方法等が挙げられる。
また、上記対向電極層を対向基材とは別のフィルムを介して上記対向基材上に配置する場合は、上記フィルムに対向電極層をパターン状に形成し、これを接着剤等を介して対向基材上に配置する方法、上述した金属および透明導電体等が全面に蒸着されたフィルムを所定の形状に切り取り、これを対向基材上に接着剤等によって貼りつける方法が挙げられる。なお、上記対向電極層が形成されるフィルムとしては、対向基材と同様の材料からなるものとすることができる。また、上記接着剤等については、一般的な電極部材において樹脂基材上に電極を貼りつける際に用いられるものと同様とすることができるので、ここでの記載は省略する。
【0099】
上記対向電極層の膜厚としては、本発明における電子ペーパーにより画像表示を行うことができる程度の膜厚であれば特に限定されるものではないが、具体的には、50nm〜500μmの範囲内、なかでも100nm〜100μmの範囲内、特に300nm〜50μmの範囲内であることが好ましい。上記対向電極層の膜厚が上記範囲に満たない場合は、均一な膜厚の対向電極層を形成することが困難になるからであり、上記範囲を超える場合は、対向電極層を形成するために時間がかかり、また、対向電極層の材料も多く必要となるため、製造コストが高くなるからである。
【0100】
(c)対向電極基材
本発明に用いられる対向電極基材の配置としては、本発明における電子ペーパーを用いて所望する表示を行うことができる配置であれば特に限定されるものではない。例えば、本発明における電子ペーパーにおいて、対向電極層が後述するツイストボール層側になるように上記対向電極基材を配置してもよいし、また例えば、上記対向電極層が上記ツイストボール層とは反対側になるように上記対向電極基材を配置してもよい。本発明における電子ペーパーにおいては、上記対向電極層が上記ツイストボール層とは反対側になるように上記対向電極基材が配置されていることがより好ましい。このような配置とすることにより、対向電極層がツイストボール層と直接接触しないため、対向電極層の材料がツイストボール層の低極性溶媒中に溶出しないことから、本発明における電子ペーパーの表示品質の低下を防止することが可能となる。
また上記対向電極層の材料として、低極性溶媒に溶出しにくい材料が用いられている場合は、上記対向電極層が後述するツイストボール層側になるように上記対向電極基材を配置してもよい。
【0101】
なお、本発明における電子ペーパーがパッシブ駆動型の電子ペーパーである場合は、上記対向電極層が上記ツイストボール層とは反対側になるように上記対向電極基材が配置されていることが好ましい。パッシブ駆動型の電子ペーパーにおいては、対向電極層はストライプ状等のパターン状に形成されることから、対向電極層がツイストボール層とは反対側となるように配置した場合は、上記対向電極層の凹凸による電子ペーパーの画像表示劣化を防止することができ、さらには、上記対向電極基材に貫通孔を設置することなく容易に配線を繋ぐことができるからである。
【0102】
(3)ツイストボール層
本発明における電子ペーパーは、透明電極基材および対向電極基材の間に形成され、異なる帯電極性を有する2色相のツイストボール、および低極性溶媒を含む低極性溶媒層を備えるものである。
【0103】
(a)ツイストボール
本発明に用いられるツイストボールは、異なる帯電極性を有する2色相を有するものである。また、本発明における電子ペーパーにおいて表示媒体として働くものである。
【0104】
本発明に用いられるツイストボールとしては、球状であり、有色彩相/白色相あるいは有色彩相/有色彩層の異なる2色相を有し、異なる2色相が互いに異なる帯電極性を有するものであれば特に限定されるものではない。
【0105】
このようなツイストボールとしては、特開2004−197083号公報で提案されているマイクロチャンネル製造方法で製造されるツイストボールと同様とすることができる。
【0106】
ここで、マイクロチャンネル製造方法は、着色連続相と球状粒子化相とが互いにO/W型又はW/O型の関係にあるものを用い、着色連続相が移送される第1マイクロチャンネルから、第2マイクロチャンネルに流れる流動媒体の球状粒子化相内に、2色の着色連続相を順次吐出させることにより、2色相球状ポリマー粒子で、かつ、電荷的に(±)の極性を有する双極性球状粒子であるツイストボールを製造する製造方法である。
【0107】
上記マイクロチャンネル製造方法においては、重合性樹脂成分を含有する油性又は水性の流動性媒体中に、この媒体に不溶性の着色染顔料を含有する2色に分相させた着色連続相中の重合性樹脂成分を、互いに異なる正負に帯電する重合性モノマーで形成させて、第1マイクロチャンネルに移送させ、次いで、この着色連続相を、第2マイクロチャンネル内を流れる水性又は油性の球状粒子化相中に、連続又は間欠的に順次吐出させる。次いで、球状粒子化相中に吐出させた吐出物は、マイクロチャンネル内での一連の吐出・分散・移送中に球状粒子化されながら、球状粒子化相中に順次球状物化されるので、この球状化粒子中の重合性樹脂成分をUV照射下及び/又は加熱下に重合硬化させることによりツイストボールが適宜調製される。
【0108】
上記着色連続相は、2色相に分相されている連続色相であって、例えば、黒色/白色、赤色/白色、黄色/白色、青色/白色、緑色/白色、紫色/白色等の何れかの「有彩色相/白色相」から選ばれる何れかの2色の分相色相、あるいは有色彩相/有色彩相の異なる2色の分相色相を挙げることができる。このような色相を形成させる着色剤としては、後述する重合性樹脂成分を含有する流動性分散媒体に不溶性又は均一に分散されるのであれば特に限定することなく、適宜選んで用いられる。上記着色剤としては、染料および顔料を用いることができる。
【0109】
このような染料および顔料としては、特開2004−197083号公報に記載されたものを用いることができるので、ここでの記載は省略する。
【0110】
これら着色剤としての染顔料の添加量は、特に限定されるものではなく、また、その着色粒子の用途等によっても所望される色調が異なり、また、上述する着色連続相中での分散性等から、本発明においては、着色連続相中の重合硬化成分である全重合性樹脂成分100質量部当たり、0.1質量部〜80質量部で、好ましくは2質量部〜10質量部の範囲で適宜好適に添加することができる。
【0111】
上記ツイストボールに用いられる重合性樹脂成分(又は重合性モノマー)としては、ツイストボールに用いられる重合性モノマーの官能基又は置換基の種類によって、上記ツイストボールの帯電性が、それぞれ(−)帯電性と(+)帯電性を示す傾向にあるモノマー種を挙げることができる。従って、少なくとも2種以上の複数種のモノマーを本発明における重合性樹脂成分として使用する場合には、その(+)及び(−)帯電性を示す傾向を周知のうえで、好ましくは、同種帯電性の傾向にあるモノマー同士を複数組み合わせて適宜好適に使用することもできる。
【0112】
一方、少なくとも1種の官能基及び/又は置換基を分子内に有する重合性樹脂成分(又は重合性モノマー)において、その官能基又は置換基としては、例えば、カルボニル基,ビニル基,フェニル基,アミノ基,アミド基,イミド基,ヒドロキシル基,ハロゲン基,スルホン酸基,エポキシ基及びウレタン結合等を挙げることができる。本発明においては、このような重合性モノマーにおける官能基又は置換基を有するモノマー種の単独又は2種以上の複数種を組み合わせて適宜好適に使用することができる。
【0113】
(−)帯電性の傾向にある重合性モノマーおよび(+)帯電性の傾向にある重合性モノマーとしては、特開2004−197083号公報に記載されたものを用いることができるので、ここでの記載は省略する。
【0114】
本発明において、既に上述した第2マイクロチャンネルに着色連続相として吐出された後の重合性樹脂成分の重合時におけるこのような重合性モノマーを他の共重合モノマーに組み合わせて使用する場合には、着色樹脂微粒子に託される所望する帯電性(又は電気泳動性)にもよるが、質量基準で表して、帯電性の傾向にあるモノマーが、好ましくは全モノマー中1質量%〜100質量%の範囲内、更に好ましくは5質量%〜100質量%の範囲内、特に好ましくは10質量%〜100質量%の範囲内にある重合性モノマーとの共重合体粒子であれば適宜好適に使用されて、所望するツイストボールを提供することができる。
【0115】
また、上記ツイストボールは、球状の単分散粒子で、その平均粒子径が体積基準で表して1μm〜400μmの範囲内で、好ましくは、20μm〜200μmの範囲内で、更に好ましくは50μm〜120μmの範囲内に適宜調製することができる。また、その平均粒子径のバラツキが著しく低い均斉な粒子を適宜調製される。本発明においては、その均斉度をCv値で表して、20%以下、好ましくは、5%以下、更に好ましくは3%以下の単分散粒子のツイストボールとして適宜好適に用いられる。
【0116】
(b)低極性溶媒層
本発明における低極性溶媒層は、ツイストボールとともにツイストボール層を構成するものである。
本発明に用いられる低極性溶媒層は、低極性溶媒を含むものであれば特に限定されるものではない。上記低極性溶媒層としては、通常、低極性溶媒と、上記低極性溶媒を膨潤させる、エラストマー材料からなるエラストマーシートとから構成されるものである。
以下、上記低極性溶媒層に用いられる低極性溶媒、およびエラストマーシートについてそれぞれ説明する。
【0117】
(i)低極性溶媒
本発明に用いられる低極性溶媒は、上述したツイストボールの回転が円滑となるようにするために用いられるものである。また、通常は後述するエラストマーシートを膨潤させて用いられるものである。
【0118】
このような低極性溶媒としては、上記ツイストボールの回転を妨げることなく、円滑に回転させることができるものであれば特に限定されるものではない。このような低極性溶媒としては、ジメチルシリコーンオイル、イソパラフィン系溶媒、および直鎖パラフィン系溶媒、ドデカン、トリデカン等の直鎖アルカンを挙げることができる。
【0119】
(ii)エラストマーシート
本発明に用いられるエラストマーシートは、上記低極性溶媒で膨潤させることができるエラストマー材料からなるものである。また、上記エラストマーシートは、上記ツイストボールが分散されたシート状部材であり、これに上記低極性溶媒で膨潤させることによって用いられるものである。
【0120】
このようなエラストマーシートに用いられる材料としては、上記ツイストボールを分散可能であり、かつ、上記低極性溶媒で膨潤することが可能であれば特に限定されるものではない。
このようなエラストマーシートの材料としては、シリコーン樹脂、(微架橋した)アクリル樹脂、(微架橋した)スチレン樹脂、およびポリオレフィン樹脂等を挙げることができる。
【0121】
また、上記エラストマーシートの膜厚としては、本発明における電子ペーパーがエラストマーシート中に分散されたツイストボールによって画像表示を行うことが可能であれば特に限定されるものではないが、50μm〜1000μmの範囲内、なかでも100μm〜700μmの範囲内、特に200μm〜500μmの範囲内であることが好ましい。上記エラストマーシートの膜厚が上記範囲に満たない場合は、上記ツイストボールが均一に分散されたエラストマーシートとすることが困難であるからであり、上記エラストマーシートの膜厚が上記範囲を超える場合は、ツイストボールの回転を妨げるおそれがあるからである。
【0122】
(c)その他の部材
また、本発明におけるツイストボール層は、上記ツイストボールと、上記低極性溶媒層とを有するものであれば特に限定されず、他にも必要な部材を追加することができる。
以下、このような部材について説明する。
【0123】
(i)ツイストボール層用基材
本発明においては、図4に示すように、ツイストボール層3を支持するためのツイストボール層用基材33を有していてもよい。なお、図4においては、ツイストボール層用基材33はツイストボール層3の透明電極基材1側および対向電極基材2側の両方に配置される例について示しているが、図示はしないが、透明電極基材側または対向電極基材側のいずか一方にのみ配置されていてもよい。
ツイストボール層用基材33を有することによりツイストボール層3の強度を向上させることができるため、電子ペーパー10の耐久性を向上させることができる。
【0124】
また、上記ツイストボール層用基材を有することにより、ツイストボール層を透明電極基材や対向電極基材と別個の部材として扱うことが可能となる。そのため、本発明における電子ペーパーがセグメント用電子ペーパーである場合は、対向電極基材を取り換えることにより、異なる情報を表示することが可能となることから、ツイストボール層を再利用することが可能となる。
【0125】
ツイストボール層用基材については、上述した透明基材の項で説明したものと同様のものを用いることができる。
また、図4に示すように、ツイストボール層用基材としては、ラミネート加工が可能な材料からなるものであることが好ましい。ツイストボール層用基材を用いてツイストボール層を密封することが可能となるからである。
【0126】
なお、ツイストボール層用基材がラミネート加工が可能な材料からならない場合は、通常、後述するシール剤を用いてツイストボール層が密封される。
【0127】
(ii)接着剤層
本発明において、図4に示すように、ツイストボール層3がツイストボール層用基材33を有する場合は、通常、ツイストボール層用基材33と隣接する電極基材(図4においては、透明電極基材1および対向電極基材2)との間に接着剤層5が形成される。
【0128】
このような接着剤層の材料としては、一般的な接着剤を用いることができるので、ここでの説明は省略する。
【0129】
(iii)シール剤
シール剤はツイストボール層を密封する際に用いられるものであり、通常、ツイストボール層に隣接する基材の端部に配置されるものである。
このようなシール剤については、ツイストボール層中の低極性溶媒の漏れ等を防止することができるようにツイストボール層に隣接する基材とともにツイストボール層を密封することが可能であれば特に限定されない。具体的には、一般的な電子ペーパーに用いられるシール剤と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0130】
なお、「ツイストボール層に隣接する基材」とは、ツイストボールの透明電極基材側表面および対向電極側表面に配置される基材を指し、具体的には、透明基材、対向基材、ツイストボール層用基材のいずれかを指す。
【0131】
(d)ツイストボール層
本発明に用いられるツイストボール層の膜厚としては、本発明における電子ペーパーにおいてツイストボールを回転させることにより画像表示を行うことが可能であれば特に限定されるものではないが、50μm〜1000μmの範囲内、なかでも100μm〜700μmの範囲内、特に200μm〜500μmの範囲内であることが好ましい。上記ツイストボール層の膜厚が上記範囲に満たない場合は、上記ツイストボールおよび各基材間の距離が小さいことから、ツイストボールが所望する方向へ回転するのが困難である可能性があるからであり、上記ツイストボール層の膜厚が上記範囲を超える場合は、上記透明電極および対向電極間に電界を印加したとしても、上記ツイストボールおよび各基材間の距離が大きすぎることにより、本発明における電子ペーパーにおいて、ツイストボールを用いて画像表示を行うことが困難であるからである。
【0132】
また、本発明に用いられるツイストボール層の密封方法としては、ツイストボール層から低極性溶媒の液漏れ等が発生しないように密封することが可能な方法であれば特に限定されず、例えばツイストボール層に隣接する基材の端部にシール剤を配置することによって密封する方法や、隣接する基材にラミネート加工が可能な材料からなる基材を用い、ラミネート加工することにより密封する方法を挙げることができる。
本発明においては、ラミネート加工によりツイストボール層を密封することが好ましい。シール剤を用いた密封方法に比べて、より好適にツイストボール層からの低極性溶媒の液漏れ等を防止することが可能となり、また、表示領域についても広範囲なものとすることが可能となる。
【0133】
(4)その他の構成
本発明の電子ペーパーは上述した透明電極基材、対向電極基材、およびツイストボール層を有するものであれば特に限定されず、必要な構成を適宜選択して追加することができる。
このような構成としては、例えば本発明の電子ペーパーを用いてカラー表示を行うことを可能とするカラーフィルタ層、電子ペーパーの表面に反射防止機能、低反射機能、防眩機能、のぞき見防止機能等の光学的機能を付与することが可能な光学機能層、電子ペーパー表面の傷および汚れを防止する表面保護機能を付与することが可能な表面保護層、電子ペーパーの画面に触れることにより情報の入力が可能な利便性を付与するタッチパネル層等を挙げることができる。
なお、通常、これらの構成は、電子ペーパーの表示面側、すなわち透明電極基材側に設けられる。また、これらの構成についてはいずれも公知の構成と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0134】
3.表示装置
本発明における表示装置は、上述した制御部および電子ペーパーを有するものである。
また、本発明の表示装置は、上記電子ペーパーを表示画面に用いるものである。本発明における電子ペーパーの配置としては、上記電子ペーパーを用いて所望の情報を表示することが可能であれば特に限定されず、図2(a)、(b)に示すように電子ペーパー10の表示面側(透明電極基材1側)が地面に対して水平方向に配置されてもよく、図5に示すように、電子ペーパー10の表示面側(透明電極基材1側)が地面に対して垂直方向に配置されてもよいが、電子ペーパー10の表示面側(透明電極基材1側)が地面に対して垂直方向に配置されることが好ましい。水平方向に配置された場合に比べて、重力の影響による表示情報の保持性の低下や表示コントラストの低下を少なくすることができるからである。
【0135】
4.用途
本発明の表示装置の用途としては、デジタル機器のディスプレイ、電子ブック、デジタル・サイネージ(電子看板)等に用いられる。
また、本発明の表示装置は、例えばデジタル時計等のように1つの表示画面において書き換え頻度を異ならせて情報表示を行うものに好適に用いることができる。
【0136】
5.表示装置の製造方法
本発明の表示装置の製造方法については、一般的な表示装置の製造方法と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0137】
B.電子ペーパーの駆動方法
次に本発明の電子ペーパーの駆動方法について説明する。
本発明の電子ペーパーの駆動方法は、透明基材および上記透明基材上に形成された透明電極層を有する透明電極基材と、対向基材および上記対向基材上に形成された対向電極層を有する対向電極基材と、上記透明電極基材および上記対向電極基材の間に形成され、異なる帯電極性を有する2色相のツイストボールおよび低極性溶媒を含む低極性溶媒層を備えるツイストボール層とを有し、上記2色相を用いて2色表示が行われる電子ペーパーを駆動させる駆動方法であって、上記電子ペーパーの初期コントラストがその最大値よりも小さい値となるように、上記透明電極層および上記対向電極層の間に印加される駆動電圧の値または上記駆動電圧のパルス幅の少なくとも一方を制御することを特徴とする駆動方法である。
【0138】
本発明によれば、上記駆動電圧の値または上記駆動電圧のパルス幅を制御することにより、上記ツイストボール型電子ペーパーの初期コントラストを、その最大値よりも小さいものとすることができるため、上記初期コントラストおよび表示コントラストの差を小さいものとすることができる。よって、本発明の駆動方法を用いてツイストボール型電子ペーパーを駆動させることにより、表示情報の視認性が経時的に低下することを抑制することが可能となり、表示情報の保持性を高くすることが可能となる。
【0139】
なお、本発明の電子ペーパーの駆動方法について、詳しくは上述した「A.ツイストボール型電子ペーパー付表示装置」の項で説明した制御部に用いられる電子ペーパーの駆動方法と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
また、本発明の駆動方法が適用される電子ペーパーについても、「A.ツイストボール型電子ペーパー付表示装置」の項で説明した電子ペーパーと同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0140】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【実施例】
【0141】
以下、実施例を挙げて本発明について具体的に説明する。
【0142】
<表示装置の作製>
黒色でプラスに帯電した黒色相および白色でマイナスに帯電した白色相を有する粒子径約100μmのツイストボールを準備した。これを、熱硬化型シリコーン樹脂中に分散し、コーターにより、ガラス基板上に塗布し、熱処理することで、ツイストボールが分散された厚さ300μmのシートを作成した。次いで、ツイストボール分散シートをシリコーンオイル中に24時間浸漬し、膨潤させた(ツイストボール層)。
次いで、透明電極基材(共通電極側基材)としてITOがPET面に形成されたラミネートフィルム(CPP/PET)を準備した。次いで、銀ナノ粒子(約50μm径)が溶媒中に分散されたインクを準備し、インクジェット法にて、ラミネートフィルム(CPP/PET)のPET面に表示絵柄に応じてパターニングして対向電極基材(表示電極側基材)を準備した。
次いで、ITO面を外側にした共通電極側基材と銀面を外側にした表示電極側基材とを用いて、ツイストボール層を挟み、ラミネート加工してツイストボール層を密封してセグメント用画像表示パネルを得た。その後、表示絵柄に応じて導電テープ及びリード線を用いて配線した。
【0143】
<初期コントラストの最大値の測定>
リード線を介して表示電極に、幅2.5secのパルスを正負交互に計20パルス印加した。その際の電圧を±80V、±120Vとして、それぞれの電圧における初期コントラストを測定したところ、10、11となった。また、電圧の値(絶対値)を±120Vから大きくしたところ初期コントラストは変化しなかった。
【0144】
また、リード線を介して表示電極に電圧±150Vで、正負交互に計20パルス印加した。その際のパルス幅を0.2sec、0.25sec、0.33sec、0.5sec、1.0secそれぞれの電圧における初期コントラストを測定したところ、7、9、10、11、11となった。また、パルス幅を1.0secよりも大きくしたところ初期コントラストは変化しなかった。
【0145】
以上から、初期コントラストの最大値は11とした。
【0146】
[実施例1]
リード線を介して表示電極に、幅0.5secのパルスを電圧±120Vで正負交互に計20パルス印加した。印加終了直後の初期コントラストは10であった。また、5分後のコントラスト保持率は90%であった。なお、印加終了直後から5分以上経過した後も、電子ペーパーのコントラスト比に変化はなかった。また、以下の実施例2〜3、および比較例においても同様に、印加終了直後から5分以上経過した後も、電子ペーパーのコントラスト比に変化はなかった。
【0147】
[実施例2]
実施例1における電圧を±150V、パルス幅を0.33secとした。印加終了直後の初期コントラストは10であった。また、5分後のコントラスト保持率は80%であった。
【0148】
[実施例3]
実施例1におけるパルス幅を0.33secとした。印加終了直後の初期コントラストは8であった。また、5分後のコントラスト保持率は100%であった。
【0149】
[比較例]
実施例1における電圧を±150V、パルス幅を0.5secとした。印加終了直後の初期コントラストは11であった。また、5分後のコントラスト保持率は64%であった。
【符号の説明】
【0150】
1 … 透明電極基材
2 … 対向電極基材
3 … ツイストボール層
10 … 電子ペーパー
11 … 透明基材
12 … 透明電極層
20 … 制御部
21 … 対向基材
22 … 対向電極層
31 … ツイストボール
32 … 低極性溶媒層
100 … 表示装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基材および前記透明基材上に形成された透明電極層を有する透明電極基材、対向基材および前記対向基材上に形成された対向電極層を有する対向電極基材、並びに、前記透明電極基材および前記対向電極基材の間に形成され、異なる帯電極性を有する2色相のツイストボールおよび低極性溶媒を含む低極性溶媒層を備えるツイストボール層を有し、前記2色相を用いて2色表示が行われるツイストボール型電子ペーパーと、
前記透明電極層および前記対向電極層の間に印加される駆動電圧の値または前記駆動電圧のパルス幅の少なくとも一方を制御して、前記ツイストボール型電子ペーパーを駆動させる制御部と
を有するツイストボール型電子ペーパー付表示装置であって、
前記制御部は、前記ツイストボール型電子ペーパーの初期コントラストがその最大値よりも小さい値となるように、前記駆動電圧の値または前記駆動電圧のパルス幅の少なくとも一方を制御するものであることを特徴とするツイストボール型電子ペーパー付表示装置。
【請求項2】
透明基材および前記透明基材上に形成された透明電極層を有する透明電極基材と、
対向基材および前記対向基材上に形成された対向電極層を有する対向電極基材と、
前記透明電極基材および前記対向電極基材の間に形成され、異なる帯電極性を有する2色相のツイストボールおよび低極性溶媒を含む低極性溶媒層を備えるツイストボール層とを有し、
前記2色相を用いて2色表示が行われるツイストボール型電子ペーパーを駆動させるツイストボール型電子ペーパーの駆動方法であって、
前記ツイストボール型電子ペーパーの初期コントラストがその最大値よりも小さい値となるように、前記透明電極層および前記対向電極層の間に印加される駆動電圧の値または前記駆動電圧のパルス幅の少なくとも一方を制御することを特徴とするツイストボール型電子ペーパーの駆動方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−198320(P2012−198320A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−61262(P2011−61262)
【出願日】平成23年3月18日(2011.3.18)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】