説明

ツルニンジン属植物抽出物含有粉末組成物

【課題】ツルニンジン属植物抽出物を有効成分とする安定した組成物及び固形製剤の提供。
【解決手段】ツルニンジン属植物の抽出物及び多糖類又はその誘導体を含有する混合液を、噴霧乾燥して得られるツルニンジン属植物抽出物含有粉末組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ツルニンジン属植物の抽出物を含有する粉末組成物及びこれを用いた固形製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ツルニンジン属植物は種々の薬効を有することが知られており、例えば、ツルニンジン(Codonopsis lanceolata)は、古くより抗炎症、去痰、滋養強壮、強精等を目的に民間薬的に用いられており、ヒカゲツルニンジン(C. pilosula)は、滋養強壮、健胃、補血等を目的として用いられ、その他ヤマツルニンジン(C. sylvestris)が知られている。
【0003】
ツルニンジン属植物は薬膳料理の他、医薬品、健康食品、化粧品として利用されており、長期間の安定性を保証しうる形態にする必要がある。その代表的な形態として、固形製剤が挙げられ、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤等が広く知られている。
【0004】
一般に、固形製剤を調製する場合、その他の成分や添加剤との調合が容易であるとの理由により、薬物を粉末化する必要がある。粉末化の方法としては、粉砕、凍結乾燥、スプレードライ等いくつかの方法が知られているが、製造コストが安価であること、粉末化作業が安易であるという観点からスプレードライ(噴霧乾燥)法が汎用されている。
一方で、植物のスプレードライによる粉末化においては、植物の種類によって、味や匂いの変化、成分の分解等が生じることもしばしばあり、また得られた粉末によっては吸湿性が高く植物中に含まれる有効成分への影響や分包にした場合の分包内への付着の問題などが懸念され、植物毎にその条件を検討することも必要となっている。
【0005】
ツルニンジン属植物の粉末化については、ツルニンジンを天日乾燥後、粉砕し粉末にする方法(例えば、特許文献1参照)が報告されているが、噴霧乾燥法により粉末化した例はこれまでに報告されていない。
【特許文献1】特開2002−218941号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、ツルニンジン属植物抽出物を有効成分とする安定した組成物及び固形製剤を提供することに関する。
【0007】
本発明者らは、ツルニンジン属植物抽出物の粉末化に関して検討したところ、噴霧乾燥法を用いて粉末化した場合、意外にも、得られた粉末は、経時的に変色が起こることが判明した。そこで、さらに検討した結果、ツルニンジン属植物抽出物に、多糖類又はその誘導体を添加して噴霧乾燥した場合に、当該変色を抑制できることを見出した。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本発明は、以下の発明に係るものである。
1)ツルニンジン属植物抽出物及び多糖類又はその誘導体を含有する混合液を、噴霧乾燥して得られるツルニンジン属植物抽出物含有粉末組成物。
2)多糖類又はその誘導体がデキストリン類である上記1)記載の組成物。
3)上記1)又は2)記載の組成物を含有する固形製剤。
4)錠剤、カプセル剤、顆粒剤又は散剤である上記3)記載の固形製剤。
5)さらに、少なくともソフォン又はラフマを含有する上記3又は4)記載の固形製剤。
6)ツルニンジン属植物抽出物に多糖類又はその誘導体を添加して混合液とし、これを噴霧乾燥することを特徴とするツルニンジン属植物抽出物含有粉末組成物の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、経時的な変色が抑制されたツルニンジン属植物抽出物含有粉末組成物、及びそれを含有する安定した固形製剤を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明に用いられるツルニンジン属植物としては、例えばツルニンジン(Codonopsis lanceolata)、ヒカゲツルニンジン(C. pilosula)およびヤマツルニンジン(C. sylvestris)等が挙げられる。このうち好ましくはツルニンジン(Codonopsis lanceolata)である。
【0011】
上記ツルニンジン属植物は、植物体を構成する要素の全て又は一部を使用することができ、例えば根、根茎、葉、茎、花、実、種子、芽等を使用することができるが、根又は根茎を用いるのが好ましい。
【0012】
ツルニンジン属植物の抽出物としては、上記のツルニンジン属植物を常温又は加温下にて抽出するか又はソックスレー抽出等の抽出器具を用いて抽出することにより得られる各種溶媒抽出液、その希釈液、濃縮液、エキス、これを乾燥して得られる乾燥物等が挙げられる。
【0013】
当該抽出溶媒としては、極性溶媒、非極性溶媒のいずれをも使用することができ、これらを混合して用いることもできる。例えば、水;メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール等のアルコール類;1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル等の鎖状及び環状エーテル類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;アセトニトリル等のニトリル類;酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル類;ポリエチレングリコール等のポリエーテル類;ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素類;ヘキサン、シクロヘキサン、石油エーテル等の炭化水素類;ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素類;ピリジン類;超臨界二酸化炭素;油脂;ワックス、その他オイル等が挙げられ、このうち、極性溶媒、特に水、エタノール及びその混合液を用いるのが好ましい。
【0014】
抽出方法は、使用する溶媒によっても異なるが、慣用的な方法にて行うことができる。例えば、植物体又はその乾燥物を粉砕、破砕、又は裁断したものに極性溶媒を加え、抽出温度としては0℃〜100℃、好ましくは70℃〜100℃、抽出時間としては5分〜8時間、好ましくは30分〜2時間放置することにより行う。その後、そのまま用いることができるが、必要に応じて、当該抽出物を希釈又は濃縮、適宜ろ過又は遠心分離等の操作により不溶物を除去、または濃縮することで溶媒を除去し、固形、半固形または液状とすることができる。
【0015】
本発明における多糖類としては、結晶セルロース、粉末セルロース、海藻セルロース等のセルロース、グアーガム、アーモンドガム、アラビアガム、アラビノガラクタン、アロエベラ抽出物、ウェランガム、エンテロバクターガム、エレミ樹脂、オクラ抽出物、カードラン、カシアガム、カラヤガム、ローカストビーンガム、キサンタンガム、タマリンドガム、褐藻抽出物、ジェランガム、ダンマル樹脂、トラガントガム、ペクチン、ラムザンガム、デンプン、プルラン、デキストラン、デキストリン類、フルクタン、マンナン、寒天、カラギーナン、キチン、キトサン、ペクチン、アルギン酸、ヒアルロン酸、イヌリン、粉飴等が挙げられる。
【0016】
ここで、デキストリン類としては、例えばデキストリン(DE値(Dextrose Equivalent)が25以下、好ましくは10以下であるデンプン分解物)、マルトデキストリン、難消化性デキストリン、限界デキストリン等のデンプンを加水分解して得られるもの、α−デキストリン、β−デキストリン、γ−デキストリン等の環状デキストリン、パルミチン酸デキストリン等の高級脂肪酸と合成された高級脂肪酸デキストリン等が挙げられる。これらデキストリン類のうち、特にデキストリンが好ましい。なお、DE値とはブドウ糖を100とした場合の糖液の持つ還元力を固形分当りに換算し,百分率で表したものをいう。
【0017】
多糖類の誘導体としては、上記多糖類の構成単糖残基上の水酸基の水素原子を、例えばメチル基、エチル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基等で1又は複数置換した置換誘導体が挙げられる。
多糖類の誘導体としては、具体的には、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルエチルセルロース、ヒドロキシエチルグアーガム、ヒドロキシエチルスターチ、メチルセルロース、メチルグアーガム、メチルスターチ、エチルセルロース、エチルグアーガム、エチルスターチ、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルグアーガム、ヒドロキシプロピルスターチ、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルグアーガム、ヒドロキシエチルメチルスターチ、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルグアーガム、ヒドロキシプロピルメチルスターチ等が挙げられる。
【0018】
これら多糖類又はその誘導体のうち、デンプン、デキストリン類、セルロース又はその誘導体が好ましく、特にデキストリン類は付着性が低く吸湿性も低いことから好ましい。またこれら多糖類又はその誘導体は、1種又は2種以上を組み合わせることができる。
【0019】
本発明のツルニンジン属植物抽出物含有粉末組成物は、ツルニンジン属植物抽出物に、多糖類又はその誘導体をそのまま添加、又は必要に応じて水、アルコール類又はその混合液等の溶媒を加えて混合液とし、これを噴霧乾燥して粉末化することにより製造することができる。
【0020】
ツルニンジン属植物抽出物及び多糖類又はその誘導体を含む混合液は、溶液でも懸濁液であってもよく、また、その容量は、ツルニンジン属植物抽出物の量及び多糖類又はその誘導体の量を考慮した上で適宜調製することができる。
【0021】
上記混合液中のツルニンジン属植物抽出物の濃度は、50g/L〜1000g/Lであり、好ましくは100g/L〜500g/Lであり、特に150g/L〜400g/Lとするのが好ましい。
【0022】
また、多糖類又はその誘導体は、ツルニンジン属植物抽出物の重量1に対して、0.1〜3とするのが好ましく、さらに好ましくは0.2〜0.6、特に好ましくは0.2〜0.4とするのが好ましい。
【0023】
噴霧乾燥は、上記のツルニンジン属植物抽出物及び多糖類又はその誘導体を含む混合液を微細な霧状にし、これを熱風中に噴出させることにより行われる。液体を霧状にする方法は、回転円盤による遠心噴霧や圧力ノズルによる加圧噴霧を用いればよく、例えば市販のスプレードライヤー(Pulvis GB22;YAMATO製)等を用いて行えばよい。
【0024】
噴霧乾燥の条件としては、適宜調整することができるが、吸気温度として好ましくは、90℃〜200℃であり、さらに好ましくは120℃〜180℃であり、特に好ましくは150℃〜170℃である。排気温度として好ましくは、40℃〜120℃であり、特に80℃〜105℃である。
【0025】
斯くして得られたツルニンジン属植物抽出物含有粉末組成物は、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤等の固形製剤とすることができる。
【0026】
ここで、錠剤とは、医薬品等を一定の形状に圧縮して製したものをいい、例えば、本発明の粉末組成物をそのまま、又は賦形剤、結合剤、崩壊剤若しくはその他添加剤を加えて均等に混和した物を、そのまま又は顆粒状にして圧縮成型、若しくは溶媒で湿潤させた練合物を一定の形状にし、一定の型に流し込んで成形した後、乾燥することにより調製することができる。
【0027】
カプセル剤とは、硬カプセル剤及び軟カプセル剤をいい、硬カプセル剤の場合は、例えば、本発明の粉末組成物をそのまま、または必要に応じて、液状、懸濁状、のり状又は顆粒状等の形で、硬カプセルに充填することにより、軟カプセル剤の場合は、ゼラチン等のカプセル基剤で被包成型することにより調製することができる。
【0028】
顆粒剤とは、医薬品等を粒状に製したもので、なるべく粒子の大きさのそろったものをいい、例えば、本発明の粉末組成物をそのまま、又は賦形剤、結合剤、崩壊剤又はその他の添加剤を加えて均等に混和した後、転動造粒、流動層造粒、攪拌混合造粒等の自立造粒、圧縮造粒、押出し造粒、解砕造粒、溶融/噴霧造粒等の強制造粒等を用いて粒状することにより調製することができる。
【0029】
散剤とは、1種の、又は2種以上の医薬品等を均等に混和した粉末状の製剤をいい、例えば、本発明の粉末組成物をそのまま、又は賦形剤、結合剤、崩壊剤又はその他の添加剤を加えた後、転動造粒、流動層造粒、攪拌混合造粒等の自立造粒、圧縮造粒、押出し造粒、解砕造粒、溶融/噴霧造粒等の強制造粒等を用いて粉末又は微粉状にすることにより調製することができる。
【0030】
固形製剤として調製する際、更に医薬品、医薬部外品、食品、生薬、ビタミン類等の他の成分含んでいてもよく、目的にあわせて適宜組み合わせて配合することができる。
【0031】
斯かる成分としては、例えば、アカメガシワ、アセンヤク、アロエ、イカリソウ、ウイキョウ、ウバイ、ウヤク、ウワウルシ、ウコン、エイジツ、エゾウコギ、エンゴサク、エンメイソウ、オウギ、オウゴン、オウセイ、オウバク、オウヒ、オウレン、オンジ、カイクジン、カイバ、カシュウ、ガジュツ、カッコン、カノコソウ、ガラナ、カンゾウ、キキョウ、キジツ、キョウニン、クコシ、ケイガイ、ケイヒ、ケツメイシ、ゲンチアナ、ゲンノショウコ、コウジン、コウボク、ゴオウ、ゴカヒ、ゴシツ、ゴシュユ、ゴミシ、サイコ、サイシン、サイム、サルビア、サンキライ、サンザシ、サンシシ、サンシュユ、サンショウ、サンソウニン、サンヤク、ジオウ、シベット、シャクヤク、ジャショウシ、シャゼンソウ、ジュウヤク、シュクシャ、ショウキョウ、ショウズク、ジョテイシ、ジリュウ、シンイ、セネガ、センキュウ、ゼンコ、センブリ、ソウジュツ、ソウハクヒ、ソフォン、ソヨウ、ダイオウ、タイソウ、チョウジ、チョウトウコウ、チンピ、トウガラシ、トウキ、トウジン、トウニン、トウヒ、トコン、トシシ、トチュウ、ナンテンジツ、ナンバンゲ、ニクジュヨウ、ニンニク、バクモンドウ、ハマボウフウ、ハンゲ、ハンピ、ビャクジュツ、ブクリョウ、ボウイ、ホコツシ、ボタンピ、ホップ、マオウ、モクテンリョウ、ムイラプアマ、モッコウ、ヨクイニン、ラフマ、リュウガンニク、リュウタン、ロートコン、ロクジョウ、キクカ、麦若葉、コウカ、サラシア、ニンドウ、薬用人参(高麗人参、田七人参等)、ヨモギ、緑茶、ハーブ類(イチョウ葉、セントジョーンズワート、カモミール、カバカバ、ブルーベリー、ビルベリー、ノコギリヤシ、サラシアオブロンガ、ガルシニア、ローズマリー、シトラス、ヒメツルニチニチソウ、エキナセア等)等の植物、その抽出物、エキス若しくはチンキ;
アガリスク、メシマコブ、マンネンタケ、エノキタケ、スエヒロタケ、シイタケ、マイタケ、チャーガ(カバノアナタケ)、マッシュルーム、ハタケシメジ、カワラタケ、チャヒラタケ、サルノコシカケ、冬虫夏草、霊芝等のキノコ(子実体)をそのまま乾燥・粉砕して得られる粉末、キノコを熱水(エタノールを含むこともある。)で抽出したエキス、及びエキス末等;
動物抽出物、もしくはこれを酸、塩基又は酵素を用いて処理した加水分解物、動物の巣等から採取されるもの等(例えば、牛胆汁、コンドロイチン、グルコサミン、コラーゲン、プロポリス等);
亜鉛酵母、セレン酵母等酵母をそのまま乾燥粉砕して得られる粉末、又は粉砕し溶媒で抽出したエキス等;
穀物、植物、海産物等を麹菌、紅麹菌、乳酸菌、酢酸菌、納豆菌、酵母等で発酵させた発酵物のエキス;
生薬の組み合わせからなる漢方薬、例えば葛根湯(カッコン、タイソウ、シャクヤク、ショウキョウ、マオウ、ケイヒ、カンゾウ)、当帰芍薬(トウキ、センキョウ、シャクヤク、ブクリョウ、ソウジュツ、タクシャ)、八味地黄(ジオウ、サンヤク、ブクリョウ、ケイヒ、サンシュユ、タクシャ、ボタンピ、炮附子)、小青竜湯(マオウ、ショウキョウ、ケイヒ、ゴミシ、シャクヤク、カンゾウ、サイシン、ハンゲ)、麦門冬湯(バクモンドウ、コウベイ、ニンジン、ハンゲ、タイソウ、カンゾウ)、加味逍遥散(トウキ、ソウジュツ、サイコ、サンシシ、ショウキョウ、シャクヤク、ブクリョウ、ボタンピ、カンゾウ、ハッカ)等、が挙げられ、これらは1種又は2種以上配合することができる。
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例】
【0032】
実施例1 ツルニンジン抽出物含有粉末組成物の調製
ツルニンジン(Codonopsis lanceolata)乾燥根2.0kgに精製水20Lを加え、90℃以上の熱水中で1時間加熱した後、不溶解成分を濾過し抽出液を製した。得られた抽出液をエバポレーターにて約4Lまで濃縮し、デキストリン300gを混合溶解後、スプレードライヤー(Pulvis GB22;YAMATO製)を用いて、吸気温度150℃、排気温度90℃で瞬時に噴霧乾燥し、本発明のツルニンジン抽出物含有組成物(以下、「ツルニンジン粉末」ともいう)1240gを得た。
【0033】
実施例2
実施例1のデキストリンに代えてスターチ300gを混合溶解後、同様に操作し、本発明のツルニンジン粉末1150gを得た。
【0034】
実施例3
実施例1のデキストリンに代えて結晶セルロース300gを混合溶解後、同様に操作し、本発明のツルニンジン粉末1230gを得た。
【0035】
実施例4
実施例1のデキストリンに代えてγ-シクロデキストリン300gを混合溶解後、同様に操作し、本発明のツルニンジン粉末1130gを得た。
【0036】
実施例5
実施例1のデキストリンに代えてメチルセルロース300gを混合溶解後、同様に操作し、本発明のツルニンジン粉末1130gを得た。
【0037】
比較例1
ツルニンジン乾燥根2.0kgに精製水20Lを加え、90℃以上の熱水中で1時間加熱した後、不溶解成分を濾過し抽出液を製した。得られた抽出液をエバポレーターにて約4Lまで濃縮し、スプレードライヤーにて実施例1と同様に操作し、1020gの粉末を得た。
【0038】
実施例6 錠剤
実施例1のツルニンジン粉末1000g、結晶セルロース1200g、直打用乳糖700g、ショ糖エステル40g、カルメロースカルシウム30g、微粒二酸化ケイ素30gをボーレコンテナミキサー(LM−20;KEMCO製)を用いて混合した。混合品30メッシュの篩を用いて整粒した後、ロータリー式打錠機(HT−AP18SS−U;HATA製)で圧縮成型し、1錠あたり300mgの錠剤を得た。
【0039】
実施例7 顆粒剤
実施例2のツルニンジン粉末1000g、結晶セルロース1480g、カルメロースカルシウム20gを混合し、エタノール750mLを加えて練合機(PM−5(W);KIKUSUI製)にて5分間練合した。練合品を押出孔径1.2mmΦの押出造粒機(DG−L1;不二パウダル製)で造粒した後、マルメライザー(GM−250−504;川越機械製)を用いて1分間の整粒を行い、棚式乾燥機で乾燥した。乾燥品は12メッシュ並びに42メッシュの篩を用いて整粒し、粒子径が355〜1400μmの顆粒剤2250gを得た。
【0040】
実施例8 散剤
実施例3のツルニンジン粉末1000g、結晶セルロース1200g、トレハロース400gを混合し、10w/v%メチルセルロース水溶液500mLをバインダーとして流動層造粒機(FLO−5;フロイント製)にて造粒した。造粒品を30メッシュの篩を用いて整粒し、散剤2350gを得た。
【0041】
実施例9 硬カプセル剤
実施例4のツルニンジン粉末1000g、結晶セルロース500g、部分アルファー化デンプン460g、ショ糖エステル20g、微粒二酸化ケイ素20gをボーレコンテナミキサーを用いて混合し、30メッシュの篩を用いて整粒した。その後カプセル充填機(GKF;ボッシュ製)にてカプセル(1号)に充填し、1カプセルあたりの内容物が200mgの硬カプセル剤を得た。
【0042】
実施例10 軟カプセル剤
ゼラチン45重量%、グリセリン18重量%、フィチン酸1重量%及び水36重量%からなるゼラチン溶液を調製し、80℃で溶解、脱泡した後、約10時間静置した。実施例1のツルニンジン粉末500g、中鎖脂肪酸トリグリセライド1200g、ミツロウ25g、グリセリン脂肪酸エステル25gを乳化機にて混合し、ペースト溶液を調製した。調製したゼラチン溶液を用いて、ロータリー式ソフトカプセル充填機(オバール5型)により、厚さ0.90mmのゼラチン皮膜を調製し、調製したペースト溶液を1カプセルあたり内容物が275mgになるよう充填乾燥し、軟カプセル剤を得た。
【0043】
実施例11 散剤
実施例1のツルニンジン粉末1000g、ソフォン末350g、ラフマエキス70g、結晶セルロース800g、トレハロース780gをボーレコンテナミキサーを用いて混合し、エタノール500mLを噴霧しながら攪拌造粒機(FM−VG−25P;富士産業製)にて造粒した。造粒品を棚式乾燥機で乾燥した後、30メッシュの篩を用いて整粒し、散剤2860gを得た。
【0044】
試験例1 安定性試験(色差測定)
実施例1〜5ならびに比較例1のツルニンジン抽出物の粉末をガラス瓶に充填し、金属キャプで密栓後、40℃の恒温器で3箇月間保存した。これら保存品について、測色色差計(ZE 2000;日本電色工業製)を用いて保存開始前に対する色差を測定し、結果を表1に示した。
【0045】
【表1】

【0046】
表1より、デキストリンを含まない比較例の組成物が変色して不安定であるのに対し、実施例1〜5のツルニンジン抽出物含有組成物は、色差が5以下であり、変色がなく安定であることが示された。
【0047】
試験例2 アルミ分包への粉末残存率の測定
実施例1〜4のツルニンジン粉末を、アルミ袋に0.8〜1.2gの充填量になるように分包した。最初に分包品全重量を求め、分包品を10cmの高さから5回落下させてタッピングした後、はさみでアルミ袋上部を開口し、5cmの高さから3回落下させ出目量を測定した。出目量測定後に綿棒等により内袋に残存する粉末を全て拭き取り風袋重量を測定した。同操作を3回繰り返し、以下の計算式により粉末残存率を求めた。
【0048】
【数1】

【0049】
【表2】

【0050】
アルミ分包への粉末残存率が低い程、分包内への付着が少ないことを示す。表2よりデキストリンを添加し粉末化した実施例1の粉末が特に良好な結果を示した。
【0051】
試験例3 吸水性試験
実施例1〜4のツルニンジン粉末を各10mg測り取り、熱重量測定装置(EXSTER 6000 TG/DTA 6200;エスアイアイ・ナノテクノロジー(株))を用いて、温度25℃(一定)、昇湿速度0.83%RH/minの条件で相対湿度が30%RHから50%RHになるまで加湿させたときの各粉末の重量変化率(吸水率)を測定した。結果を図1に示す。図1より、いずれも良好な結果が得られた。特に実施例1のデキストリンを含むツルニンジン粉末はより吸水率は低い値を示した。粉末の吸湿性については内容成分の安定性および外観変化の視点から、一般的に低い方が好ましいことから、デキストリンを含むツルニンジン粉末がより優れた粉末組成物であることを確認した。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明のツルニンジン属植物抽出物含有粉末組成物は、変色がなく付着性も低いことから、健康食品や医薬品等の分野で利用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】実施例1〜4のツルニンジン抽出物粉末の相対湿度変化に対する各粉末の重量変化率を示した図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ツルニンジン属植物抽出物及び多糖類又はその誘導体を含有する混合液を、噴霧乾燥して得られるツルニンジン属植物抽出物含有粉末組成物。
【請求項2】
多糖類又はその誘導体がデキストリン類である請求項1記載の組成物。
【請求項3】
請求項1又は2記載の組成物を含有する固形製剤。
【請求項4】
錠剤、カプセル剤、顆粒剤又は散剤である請求項3記載の固形製剤。
【請求項5】
さらに、少なくともソフォン又はラフマを含有する請求項3又は4記載の固形製剤。
【請求項6】
ツルニンジン属植物抽出物に多糖類又はその誘導体を添加して混合液とし、これを噴霧乾燥することを特徴とするツルニンジン属植物抽出物含有粉末組成物の製造方法。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2008−208118(P2008−208118A)
【公開日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−17140(P2008−17140)
【出願日】平成20年1月29日(2008.1.29)
【出願人】(000250100)湧永製薬株式会社 (51)
【Fターム(参考)】