ティシュペーパー製品用二次原反ロールの製造方法及びティシュペーパー製品の製造方法
【課題】マルチスタンド式インターフォルダで利用されるティシュペーパー製品用二次原反ロールを製造するにあたり、大幅な設備改造を要することなく、既設備のマイナーな改造で足りる生産性に優れた製造方法を提供する。
【解決手段】複数の一次原反ロールJRから繰り出される一次連続シートS11、S12をその連続方向に沿って積層して積層連続シートS2とする積層工程51と、フレキソ印刷方式又はグラビア印刷方式によって塗布する薬液塗布工程53A、53Bと、積層連続シートS2をティシュペーパー製品の製品幅又はその複数倍幅となるようにスリットするスリット工程55と、スリットされた各積層連続シートS2を同軸で巻取ってティシュペーパー製品の製品幅又はその複数倍幅の複数の二次原反ロールRを形成する巻取り工程56とを有するティシュペーパー製品用二次原反ロールの製造方法である。
【解決手段】複数の一次原反ロールJRから繰り出される一次連続シートS11、S12をその連続方向に沿って積層して積層連続シートS2とする積層工程51と、フレキソ印刷方式又はグラビア印刷方式によって塗布する薬液塗布工程53A、53Bと、積層連続シートS2をティシュペーパー製品の製品幅又はその複数倍幅となるようにスリットするスリット工程55と、スリットされた各積層連続シートS2を同軸で巻取ってティシュペーパー製品の製品幅又はその複数倍幅の複数の二次原反ロールRを形成する巻取り工程56とを有するティシュペーパー製品用二次原反ロールの製造方法である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マルチスタンド式インターフォルダに供するティシュペーパー製品用二次原反ロールの製造方法及びティシュペーパー製品の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ティシュペーパーの箱詰め製品は、一般的に、インターフォルダ(折り畳み設備)によって複数の連続するティシュペーパーを折り畳みながら積み重ね、所定の長さに切断するなどしてティシュペーパー束を得、このティシュペーパー束を収納箱(ティシュカートン)内に収納することによって製造される。
このようなインターフォルダの例として、下記特許文献1、2に開示されるようなマルチスタンド式(多連式)インターフォルダや、下記特許文献3、4に開示されるようなロータリー式インターフォルダなどが知られている。
マルチスタンド式インターフォルダを用いた製造方法の従来例としては、次のようなものがある。すなわち、抄紙設備において薄葉紙を抄造して巻き取ることで一次原反ロール(一般にジャンボロールともいわれている)を製造し、次いで、この一次原反ロールをプライマシンにセットし、複数の一次原反ロールから繰り出した一次連続シートを重ね合わせて巻き取ると共にスリット(幅方向にティシュペーパー製品の製品幅又はその複数倍幅に分割)し、複数のプライからなる二次原反ロールを製造する。
プライマシンで製造された二次原反ロールは、プライマシンから取り出された後、必要な数だけマルチスタンド式インターフォルダにセットされる。次いで、二次原反ロールから二次連続シートを繰り出して、折畳機構部へ送り込み、ここで折り畳みながら積み重ね、その後、所定の長さに切断されてティシュペーパー束とし、収納箱内に収納する。
このようなマルチスタンド式インターフォルダを用いた製造方法は、他の折り畳み設備を用いた製造方法に比べて、多数(通常80〜100基)の折畳み機構を有しているため生産性が高いという利点を有している。
【0003】
ところで、近年では、ティシュペーパー製品に保湿剤や香料などの薬液(通常「ローション薬液」とも呼ばれる)を塗布されたものの需要が拡大しており、例えば下記特許文献5〜7に開示されるような製造方法や設備が種々提案されている。このようなローション薬液を含有させたティシュペーパー製品は、主にロータリー式インターフォルダで製造されるのが一般的であった(例えば下記特許文献5)。しかし、ロータリー式インターフォルダは、加工方向と垂直方向に折畳みと裁断を同時に行なうため、生産性が低いという欠点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許4052048号公報(特公昭55−1215号公報)
【特許文献2】特開2006−240750号公報
【特許文献3】特開昭61−37668号公報
【特許文献4】特開平5−124770号公報
【特許文献5】特開2004−322034号公報
【特許文献6】特表2008−525103号公報
【特許文献7】特開2008−264564号公報
【特許文献8】特開2008−245780号公報
【特許文献9】特開2008−183127号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明者等は、薬液が付与されたティシュペーパー製品を、ロータリー式インターフォルダに比して生産性の高いマルチスタンド式インターフォルダを用いた製造方法で製造することを考えた。
しかし、マルチスタンド式インターフォルダを用いた製造方法で製造する場合、プライマシンやマルチスタンド式インターフォルダとは別に薬液付与工程を設けると、原反の移送の手間や多大な設備コストがかかってしまうという問題がある。また、薬液付与工程をマルチスタンド式インターフォルダ内に設けると、薬液を付与するティシュペーパー製品を製造するラインと、薬液を付与しないティシュペーパー製品を製造するラインとを別々に設ける必要があった。
【0006】
そこで、本発明の主たる課題は、マルチスタンド式インターフォルダで利用されるティシュペーパー製品用二次原反ロールを製造するにあたり、大幅な設備改造を要することなく、既設備のマイナーな改造で足りる生産性に優れたティシュペーパー製品用二次原反ロールの製造方法を提供することにある。他の課題は、後述の本発明の効果の欄の説明によって明らかになろう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための手段は次記のとおりである。
〔請求項1記載の発明〕
一次原反ロールから連続的にティシュペーパー製品用の複数の二次原反ロールを製造するティシュペーパー製品用二次原反ロールの製造方法であって、
複数の一次原反ロールから繰り出される一次連続シートをその連続方向に沿って積層して積層連続シートとする積層工程と、
前記連続シートのそれぞれに対して薬液を噴霧状態で付与する第一次薬液噴霧工程と、
その後に、それぞれの連続シートに対して薬液をフレキソ印刷方式又はグラビア印刷方式によって塗布する第二次薬液塗布工程と、
積層連続シートをティシュペーパー製品の製品幅又はその複数倍幅となるようにスリットするスリット工程と、
スリットされた各積層連続シートを同軸で巻取ってティシュペーパー製品の製品幅又はその複数倍幅の複数の二次原反ロールを形成する巻取り工程と、を有することを特徴とするティシュペーパー製品用二次原反ロールの製造方法。
【0008】
〔請求項2記載の発明〕
前記第一次薬液噴霧工程が、前記積層工程の後であって、且つ、前記スリット工程の前に行われる、請求項1に記載のティシュペーパー製品用二次原反ロールの製造方法。
【0009】
〔請求項3記載の発明〕
前記積層工程と前記第一次薬液噴霧工程との間に、カレンダーにて平滑化処理する平滑化工程を有する、請求項2に記載のティシュペーパー製品用二次原反ロールの製造方法。
【0010】
〔請求項4記載の発明〕
前記第二次薬液塗布工程と前記スリット工程との間に、前記積層連続シートに対して層間剥離を防止するライン状のコンタクトエンボスを施すコンタクトエンボス工程を有する、請求項2に記載のティシュペーパー製品用二次原反ロールの製造方法。
【0011】
〔請求項5記載の発明〕
前記第一次薬液の付与がノズル式噴霧方式によるものである、請求項1に記載のティシュペーパー製品用二次原反ロールの製造方法。
【0012】
〔請求項6記載の発明〕
前記第一次薬液の付与がローターダンプニング噴霧方式によるものである、請求項1に記載のティシュペーパー製品用二次原反ロールの製造方法。
【0013】
〔請求項7記載の発明〕
前記請求項のいずれか1項の請求項によって得られた前記二次原反ロールを多数用意し、これらをマルチスタンド式インターフォルダにおいてライン方向に沿って配置し、各二次原反ロールから繰り出される複数の二次連続シートをその連続方向に沿って移送すると共に、その移送過程で折畳みながら積み重ね、その後、所定枚数の積層シートを所定長さ切断してティシュペーパー束とし、この積層を収納箱内に収納することを特徴とするティシュペーパー製品の製造方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る製造方法におけるスリット工程でティシュペーパー製品の製品幅又はその複数倍幅となるよう製造されたティシュペーパー製品用二次原反ロールは、この後段でマルチスタンド式インターフォルダに多数セットされる。次いで、マルチスタンド式インターフォルダにセットされた二次原反ロールから二次連続シートを繰り出して、折畳機構部へ送り込み、ここで折り畳みながら積み重ね、その後、所定の長さに切断されてティシュペーパー束とし、収納箱内に収納する。
【0015】
本発明においては、一次原反ロールからティシュペーパー製品用二次原反ロールを連続的に製造する、いわゆるプライマシン内に、第一次薬液噴霧工程及びフレキソ印刷方式又はグラビア印刷方式による第二次薬液塗布工程を組み込んで、連続シートに薬液を塗布するようにした。したがって、大幅な設備改造を要することなく、既設の抄紙設備及びプライマシンのマイナーな改造で足りるので、投資設備費が少ないもので足りる利点がある。
【0016】
しかも、マルチスタンド式インターフォルダ内に薬液付与又は塗布工程を設けるのではなく、プライマシン内に、薬液噴霧工程及び薬液塗布工程を組み込むものであるために、薬液を塗布したティシュペーパー製品と、薬液を塗布しないティシュペーパー製品との切り換えは、単にティシュペーパー製品用二次原反ロールの薬液塗布の有無によって切り換えればよいのであるから、生産性に優れたものである。
【0017】
また、マルチスタンド式インターフォルダ内に薬液塗布工程を設ける場合には、たとえば積層連続シートの数分の多数の薬液塗布装置を設けることが考えられるが、これでは設備費が嵩むばかりでなく、その設置スペースの確保に困難を極め、さらに各装置での塗布量の正確な管理は実質的に無理である。この形態に比較して本発明の製造方法は、設備費及び塗布量管理などの点が優れた利点をもたらすものである。
【0018】
ところで、マルチスタンド式インターフォルダによるティシュペーパーの製造工程では、マルチスタンド式インターフォルダの加工能力に合わせてプライマシンの加工能力を設計するため、プライマシンの加工速度は700〜1100m/分が一般的である。その場合には、プライマシンにおいても、生産速度のマッチングのために同様の700〜1400m/分程度の高速でプライ加工を行なうことが必要となる。かかる高速のプライマシンにおいて、たとえば薬液を、グラビア、フレキソ、ロール塗工などの方式で塗布する場合、主に高速で走行するシートと刷版ロールとの摩擦で紙粉が大量の発生し、塗工薬液中に混入し、その濃度が変化し、塗布量のバラツキを招く。
【0019】
特に、対象のシートに薬液を、ある程度多い塗布量をもって塗布しょうとする場合、一回の塗布で目的の塗布量を得ようとすると、たとえばフレキソ印刷の例ではアニロックスロールの線数を多くしかつセル容積率を高くする必要があるが、かかるアニロックスロールの使用条件は、より一層、塗工薬液中に混入した前記紙粉によってアニロックスロールの刷版の目詰まり現象を招き易いものとなり、その結果、塗布量のバラツキを招きかつ安定した運転が困難となる。
【0020】
そこで、薬液を2回に分けてシートに付与する形態を採ることにより、1回当たりの塗布量を少なくし、結果として、アニロックスロールの目詰まり現象を避けることが考えられる。この薬液複数回塗布の形態は、理論的には、アニロックスロールの目詰まり現象を防止するうえで効果的なはずであるが、現実には、シートと刷版ロールとの摩擦個所が2個所に増えるので、紙粉の発生量が多くなる傾向があり、現実には、アニロックスロールの目詰まり現象を避けることが困難である。
【0021】
他方、薬液を2回に分けてシートに付与する形態は、1回目に塗布した幅方向の塗布のバラツキを2回目の塗布のバラツキで相殺することができ、結果として、幅方向にバラツキの少ない塗布形態となる利点がある。
【0022】
しかし、刷版ロールと圧胴ロールとでシートを圧着する形態で薬液を塗布するので、シートの繊維間隙が潰され、製品とした場合の嵩が出にくい。しかも、この傾向は、薬液を2回に分けてシートに付与する形態ではより顕著となる。
【0023】
本発明においては、第一次薬液噴霧工程と第二次薬液塗布工程との2回塗布を行なっているので、1回目に塗布した幅方向の塗布のバラツキを2回目の塗布のバラツキで相殺することができ、結果として、幅方向にバラツキの少ない塗布形態となる。
しかも、第一次薬液付与を薬液噴霧によって行なうようにしている。薬液噴霧ではシートの圧着形態での摩擦が生じないで、紙粉の発生がなく、安定した塗布が可能である。また、繊維間隙が潰すことがないので、嵩高のティシュペーパーを得ることができる。
【0024】
第二次薬液塗布工程における薬液塗布は、フレキソ印刷方式又はグラビア印刷方式によって行われるようになっている。フレキソ印刷方式は、フレキソ刷版ロールが樹脂製であり加工速度が高速であってもクレープ紙の凹凸に対応し塗布量を安定させることができるという利点や、アニロックスロールの線数やセル容量、フレキソ刷版ロールの線数や頂点面積率を変えることで、容易に幅広い薬液の粘度に対応し塗布量を安定させることができるなどの利点を有している。
なお、第二次薬液塗布工程における薬液塗布は、特にドクターチャンバーを用いたフレキソ印刷方式とすることが好ましい。ドクターチャンバー形式は、アニロックスロール(転写用凹ロール)の表面に直接、薬液を塗工し皮膜を作るもので、薬液に紙粉やエアーが混入しにくく薬液の物性が安定しやすい特徴があり、且つ、アニロックスロールから転写される薬液が均一であるため、低量塗布の場合であっても好適に塗布することができる。
グラビア印刷方式はフレキソ印刷方式とほぼ同様の塗布量及び幅方向に塗布安定性を示すので、グラビア印刷方式も採用できる。
【0025】
なお、第二次薬液塗布工程における薬液塗布を、フレキソ印刷方式又はグラビア印刷方式に換えて、ロール塗工方式とすることも考えられるが、幅方向の塗布量のバラツキを生じ、目標の製品品質を得難い。また、最初にフレキソ印刷方式又はグラビア印刷方式による薬液塗布工程を、その後に薬液噴霧工程を設けることも考えられが、薬液噴霧は印刷方式による薬液塗布よりバラツキが大きく、均等に塗布した薬液層上にバラツキ大きい薬液の付与を行なうことになるので、幅方向の均質性を損なう要因となるので、採用することができない。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】抄紙した後、一次原反ロールを得る製造設備及び製造方法を示す概略図である。
【図2】マルチスタンド式インターフォルダの一例を示す概略説明図であり、ライン正面から見た状態を示している。
【図3】マルチスタンド式インターフォルダの一例を示す概略説明図であり、ラインの横断で見た状態を示している。
【図4】マルチスタンド式インターフォルダの一例を示す概略説明図であり、ライン本体のみを正面から見た状態を示している。
【図5】折り畳まれたティシュペーパーの縦断面図である。
【図6】(a)ティシュペーパー束を収納箱に収納している様子を示す図である。(b)収納箱に収納されたティシュペーパーの取出す様子を示す一部破断図である。
【図7】折り板に関する部位の要部拡大斜視図である。
【図8】二次連続シート(ティシュペーパー)の折り畳み方を示す要部拡大斜視図である。
【図9】二次連続シート(ティシュペーパー)の折り畳み方を示す要部拡大斜視図である。
【図10】二次連続シート(ティシュペーパー)の折り畳み方を示す要部拡大斜視図である。
【図11】二次原反ロールの製造設備、製造方法を示す概略図である。
【図12】図11で示す薬液塗布手段周辺の要部拡大図である。
【図13】コンタクトエンボス手段によって積層連続シートにコンタクトエンボスを付与している様子を示す図である。
【図14】薬液供給装置の一例を示す概略構成図である。
【図15】図14における薬液供給装置の導出部を説明するための模式図である。
【図16】薬液供給装置のその他の導出部を説明するための模式図である。
【図17】薬液供給装置のその他の導出部を説明するための模式図である。
【図18】図14に示される実施形態の薬液供給装置で用いられるドクターチャンバーの構造を説明する図であって、(A)は2つの導入部と1つの導出部を有する構造を示し、(B)は3つの導入部と2つの導出部を有する構造を示し、(C)は導入部及び導出部がそれぞれ同数存在する構造を示している。
【図19】その他の二次原反ロールの製造設備、製造方法を示す概略図である。
【図20】その他の二次原反ロールの製造設備、製造方法を示す概略図である。
【図21】その他の二次原反ロールの製造設備、製造方法を示す概略図である。
【図22】その他の二次原反ロールの製造設備、製造方法を示す概略図である。
【図23】図12で示される薬液塗布手段を他のものに置換した状態を示す図である。
【図24】積層連続シート(ティシュペーパー)の構造を示す模式図である。(A)薬液塗布前のMD方向断面図、(B)薬液浸透工程前の上面図、(C)I−I矢視図。
【図25】積層連続シート(ティシュペーパー)の表面凹凸構造を示す模式図である。(A)薬液塗布前、(B)薬液塗布後。
【図26】薬液浸透工程を示す模式図である。
【図27】ティシュペーパーのMMD値の測定方法を示す図である。
【図28】図1で示す薬液噴霧手段周辺の要部拡大図である。
【図29】薬液噴霧手段の他の例を示す概略構成図である。
【図30】薬液噴霧手段の他の例を示す概略構成図である。
【図31】図11に示す例における第一次薬液噴霧手段による薬液噴霧状態の部分拡大概略説明図である。
【図32】グラビア薬液塗布手段例の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の一実施形態について添付図面を参照しながら詳説する。
〔一次原反ロールの製造設備・方法〕
一次原反ロールの製造設備及び製造方法の一例を、図1を参照しつつ説明する。
図1に示すように、予め調整された紙料を、ヘッドボックス301からワイヤーパート311に供給することで湿紙Wを形成し(フォーミング工程)、この湿紙Wを、プレスパート321のフェルト322に転送した後、一対の脱水ロール323、324によって挟持することで脱水する(脱水工程)。次いで、この脱水された湿紙Wを、ヤンキードライヤーフード332で一部覆われたヤンキードライヤー331の表面に付着させて乾燥し、ドクターブレード333によって引き剥がして乾紙S1とする(乾燥工程)。
そして、この乾紙S1を、案内ロール343、344により案内させながら、ワインディングドラム342を有する第1巻取り手段341によって、乾紙S1の裏面が一次原反ロールJRの軸側に対向するよう乾紙S1を巻き取ることで一次原反ロール(通称「ジャンボロール」)JRを形成する(第1巻取り工程)。なお、乾紙S1(後述の一次連続シートS11、S12)の裏面とは、ヤンキードライヤー331のシリンダと接していた面の反対側の面(反ドライヤー面)のことを意味する。
【0028】
上記の抄紙に際しては、紙料に、例えば分散剤、乾燥紙力増強剤、湿潤紙力増強剤、柔軟剤、剥離剤、接着剤、苛性ソーダ等のpH調整剤、消泡剤、防腐剤、スライムコントロール剤、染料、などの適宜の薬品を添加することができる。
【0029】
ドクターブレード117により引き剥がされた乾紙S1に対して、カレンダー手段(図示せず)によって平滑化処理を施すこともできる。
【0030】
〔ティシュペーパー製品用二次原反ロールの製造設備〕
上述の製造設備・方法などで製造された一次原反ロールJRを、図11に示すように、本発明に係るティシュペーパー製品用二次原反ロールの製造設備X1(プライマシンX1)に持ち込み、少なくとも2つ以上一次原反ロールJR、JRをセットするものである。
プライマシンX1は、これらの一次原反ロールJR、JRから繰り出した一次連続シート(図示例ではS11、S12)を、その連続方向に沿って積層して、図示例では2プライに積層した連続シートS2とするプライ手段51を有している。
【0031】
図示11に示す例では、プライ手段51は、一対の一次原反ロールJRから繰り出される一次連続シートS11、S12の表面が、それぞれ積層連続シートS2の表面となるよう構成されているが、一次連続シートS11、S12の裏面がそれぞれ積層連続シートS2の表面となるよう構成することもでき、さらに、一次連続シートS11、S12のどちらか一方の裏面が積層連続シートS2の表面となり、他方の表面が積層連続シートS2の表面となるよう構成することもできる。その中でも特に、一次連続シートS11、S12(乾紙S1)の表面は乾燥時にヤンキードライヤー331の艶出し面に接していることから裏面と比較して毛羽立ちが少なく滑らかで肌触りが良いため、一次連続シートS11、S12(乾紙S1)の表面が、それぞれ積層連続シートS2の表面となるよう構成することが最も好ましい。
【0032】
プライ手段51の後段には、プライ手段51から流れてくる積層連続シートS2に対して薬液を塗布する、一対の第一次薬液噴霧手段40A、40B、その下流に第二次薬液塗布手段53A、53Bが設けられており、これらの第二次薬液塗布手段53A、53Bの後段には、並設された複数のカッターから成り、第二次薬液塗布手段53A、53Bから移送されてきた積層連続シートS2をティシュペーパー製品の製品幅又はその複数倍幅となるようにスリットするスリット手段55が配置されている。そして、スリット手段55の後段には、スリット手段55によってスリットされた積層連続シートS2を同軸で巻取ってティシュペーパー製品の製品幅又はその複数倍幅の複数の二次原反ロールRを形成する巻取り手段56が設けられている。ここで、この巻取り手段56は、スリットされた各積層連続シートS2を二次原反ロールRに案内するための2つのワインディングドラム56Aを有していて、これら2つのワインディングドラム56Aが二次原反ロールRの外周面に接して積層連続シートS2を案内している。
【0033】
(カレンダー手段)
ティシュペーパー製品用二次原反ロールの製造設備X1には、積層連続シートS2をカレンダー処理するカレンダー手段52を一つ以上設けることもできる。
カレンダー手段52におけるカレンダーの種別は、特に限定されないが、表面の平滑性向上と紙厚の調整の理由からソフトカレンダー又はチルドカレンダーとすることが好ましい。ソフトカレンダーとは、ウレタンゴム等の弾性材を被覆したロールを用いたカレンダーであり、チルドカレンダーとは金属ロールからなるカレンダーのことである。
カレンダー手段52の数は、適宜変更することができる。複数設置すれば加工速度が速くとも十分に平滑化できるという利点を有する一方、スペース的に不利となる。
二つ以上のカレンダー手段52を設置する場合、水平方向、上下方向、或いは斜め方向に並設することができ、また、これらの設置方向を組み合わせて配置しても良い。水平方向に並設すると、抱き角度を小さくなるため加工速度が高速とすることができ、上下方向に並設すると設置スペースを小さくすることができる。なお、ここで言う抱き角度とはロールの軸中心から見てシートが接している間(軸と直交する断面の円弧の一部)の角度を意味している(以下同じ)。
カレンダー処理条件におけるカレンダー種別、ニップ線圧、ニップ数なども制御要因として抄紙を行うようにし、これらの制御要因は、求めるティシュペーパーの品質すなわち紙厚や表面性によって適宜変更することが好ましい。
また、カレンダー手段52の設置位置は特に限定されないが、プライ手段51の後段であって且つ第一次薬液噴霧手段40A、40Bの前段が好ましい。第二次薬液塗布手段53A、53Bの後段であって且つコンタクトエンボス手段54の前段とすることができるが、薬液が塗布された繊維の間隙を圧着することになるので、嵩高を阻害する方向に作用するので、好ましい形態ではない。
【0034】
(薬液噴霧手段)
第一次薬液噴霧手段40A、40Bとしては特に限定されないが、後に図示をもって説明する、ノズル式噴霧方式による場合のほか、ローターダンプニング噴霧方式によってもよい。
このうち、ノズル式噴霧装置における噴霧用ノズルの型式としては、環状に噴霧する空円錐型ノズル、円形状に噴霧する充円錐型ノズル、正方形状に噴霧する充角錐型、充矩型ノズル、扇型ノズル等が挙げられ、薬液が乾紙S2の幅方向に対して均一に噴霧されるように、ノズル径、ノズル数、ノズル配列パターン、ノズル配置数、あるいは噴霧距離、噴霧圧力、噴霧角度、および噴霧液の濃度、粘度などを適宜選択して使用することができる。
【0035】
また、ノズル式噴霧装置において霧化する方法については、一流体方式、または二流体方式の2種類の方式を選択して使用することができる。このうち一流体噴霧方式は、噴霧する薬液に対して圧搾空気を用いて直接圧力をかけてノズルから霧滴噴射する、または噴出口付近のノズル側面に開けた微細な穴からノズル内に空気を吸引して霧滴噴射する方式である。また、二流体噴霧方式は、ノズル内部で圧搾空気を噴霧する液体と混合、微粒化する内部混合型、ノズル外部で圧搾空気を噴霧する液体と混合、微粒化する外部混合型、微霧化した霧滴粒子を相互に衝突させて、霧滴粒子をさらに均質化・微粒子化する衝突型等の方式が挙げられる。
【0036】
他方、ローターダンプニング塗布装置については、高速回転する円盤上に噴霧する液を送り出し、円盤の遠心力によって液を微霧滴化する装置であり、円盤の回転数変更によって霧滴粒子径の制御を行い、円盤上への送液量変更によって噴霧液量(付与量)の制御を行なうものである。ローターダンプニング塗布装置は、少ない量の噴霧液量を霧滴の飛散を抑えつつ、紙表面に均一に塗布することができ、かつ噴霧速度や霧の粒子径等の調整が容易である利点がある。
【0037】
薬液を乾紙S2表面に均一に噴霧付与するためには、霧化された薬液の霧滴粒子径はできる限り微小であることが好ましい。しかしながら、霧滴が細かくなりすぎると噴霧した空気の跳ね返りや乾紙S2表面に随伴する空気などによって霧滴が押し流され、特に乾紙S2の走行速度が速い場合などにおいては、霧滴が乾紙S2表面に付着しにくくなる。このため、噴霧付与方式においては噴霧距離、噴霧圧力、噴霧角度、噴霧速度を、加えて二流体方式の場合には、噴霧用の薬液と圧搾空気の混合比、および薬液の濃度や粘度等を適宜調節し、付与条件に適した粒子径に調節することができ、さらに噴霧時に随伴空気の影響が大きい場合は、随伴空気を除去するための吸引装置や邪魔板(整流板)等の設置、および噴霧ノズル先端に高電圧を加えて霧滴粒子を帯電させて、顔料塗被紙への霧適の付着性を向上させる荷電電極(静電噴霧方式)などを追加してもよい。
乾紙S2表面に塗布されずにミストとして浮遊している霧滴粒子は、吸引・回収して再度噴霧することができる。
【0038】
図28には、ノズル式噴霧方式、特に二流体方式の薬液噴霧手段40A、40B例を示した。この薬液噴霧手段(装置)40A、40Bは、中心に薬液通路40aが、その周囲にエアー通路40bが形成され、薬液通路40aの先端から噴出された薬液を、エアー通路40bから吐出されたエアーにより微霧化するものであり、ほぼ円錐形状に薬液を噴霧するようにしたものである。40cは外部の保護ケーシングであり、紙粉などからノズルを保護すると共に、必要によりパージエアー通路40dを通すエアーによりノズルの清掃を行なうことができるようにしたものである。この種の薬液噴霧手段40A、40Bは乾紙S2の幅方向に一つ又は複数間隔を置いて設けることができる。
【0039】
前述のように噴霧した薬液の跳ね返りや乾紙S2表面に随伴する空気などによって霧滴が押し流され、特に乾紙S2の走行速度が速い場合などにおいては、霧滴が乾紙S2表面に付着しにくくなる。そこで、必要ならば、図29に示すように、一流体方式又は二流体方式の薬液噴霧手段(噴霧ノズル)40A、40Bの周囲から、ケーシング40eに形成したエアー供給路40fから噴出させるエアーにより、薬液噴霧手段(噴霧ノズル)40A、40Bからの噴霧薬液を取り囲むと薬液が乾紙S2に好適に付与することができる。
【0040】
図30には、ローターダンプニング塗布装置40Xの例を示した。これは必要により設けられる覆い収納室40p内に、回転ローター40oを設け、回転ローター40oの噴出口40qから薬液を乾紙S2に噴霧付与するようにしたものである。
【0041】
第一次薬液噴霧手段40A、40Bでの乾紙S2対する薬液の付与量は、0.5〜1.5g/m2とするのが望ましく、より好ましくは0.7〜1.2g/m2とされる。第二薬液塗布手段53A、53Bでの薬液の付与量も、0.5〜1.5g/m2とするのが望ましく、より好ましくは0.7〜1.2g/m2とされる。したがって、1プライに対し、合計で1.0〜3.0g/m2とするのが望ましい。2プライの製品を得る場合には、2プライ合計で2.0〜6.0g/m2とするのが望ましいが、特には2.5〜5.0g/m2とするが望ましい。第一次と第二次との間での薬液付与量のバランスを上記の比率とすることによって、前述の本発明の効果がより顕著に表われるのである。
なお、第一次薬液噴霧手段40A、40Bと、第二薬液塗布手段53A、53Bとの間で、塗布量に差があっても、塗布後に二次原反ロールRとして保管された後、折り加工されるまでの時間(8時間以上)内に、プライ相互が接していることから、次第に薬液が浸透拡散し、両者の薬液付与量が均等化していきプライ間の付与量差は小さくなる。
【0042】
(薬液)
本発明で使用する薬液は、親和性を図るうえで、第一次薬液噴霧手段40A、40B及び第二次薬液塗布手段53A、53Bで共通のものが好ましい。
第二次薬液塗布手段53A、53Bにより薬液を高速塗布する観点から、粘度が40℃で1〜700mPa・s、特に50〜400mPa・s(40℃)とするのが好ましい。1mPa・sより小さいとアニロックスロールや刷版ロール等のロール上で薬液が飛散しやすくなり、逆に700mPa・sより大きいと各ロールや連続シートへの塗布量をコントロールしにくくなる傾向がある。
【0043】
薬液は、特に水系のものが望ましく、その成分としてポリオールを70〜90%、水分を1〜15%、機能性薬品を0.01〜22%含むものが好ましい。
ポリオールとしてはグリセリン、ジグリセリン、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ポリエチレングリコール、およびその誘導体等の多価アルコール、ソルビトール、グルコース、キシリトール、マルトース、マルチトール、マンニトール、トレハロース等の糖類を含む。
【0044】
機能性薬剤としては、柔軟剤、界面活性剤、無機および有機の微粒子粉体、油性成分などがある。柔軟剤、界面活性剤はティシューに柔軟性を与えたり表面を滑らかにしたりする効果があり、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤及び両性イオン界面活性剤を適用する。無機および有機の微粒子粉体は表面を滑らかな肌触りとする。油性成分は滑性を高める働きがあり、流動パラフィン、セタノール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール等の高級アルコールを用いることができる。
【0045】
また機能性薬剤としてポリオールの保湿性を維持させる薬剤として、親水性高分子ゲル化剤、コラーゲン、加水分解コラーゲン、加水分解ケラチン、加水分解シルク、ヒアルロン酸若しくはその塩、セラミド等の1種以上を任意の組合せ等の保湿剤を加えることができる。
【0046】
また、機能性薬剤として、香料、各種天然エキス等のエモリエント剤、ビタミン類、配合成分を安定させる乳化剤、薬液の発泡を抑え塗布を安定させるための消泡剤、防黴剤、有機酸などの消臭剤を適宜配合することができる。さらには、ビタミンC、ビタミンEの抗酸化剤を含有させてもよい。
【0047】
上記成分のうち、グリセリン、プロピレングリコール等の多価アルコールを主成分とすることが、薬液の粘度、塗布量を安定させる上で好ましい。
薬液塗布時の温度は30℃〜60℃、好ましくは35℃〜55℃とすることが好ましい。
【0048】
また、積層連続シートS2を構成する各一次連続シートのクレープ率に差異を設ける場合、クレープ率の高い方の一次連続シート側(図示例では一次連続シートS11側)により多くの薬液を塗布することも提案される。例えば、図11及び図24に示される例においては、2つの第二次薬液塗布手段のうち、一次連続シートS11に直接薬液を塗布する第二次薬液塗布手段53Bの方が、他方の第二次薬液塗布手段53Aよりも多くの薬液を塗布するのが望ましい。
【0049】
このように、第二薬液塗布手段53A、53B相互間で塗布量に差があっても、塗布後に二次原反ロールRとして保管された後、折り加工されるまでの時間(8時間以上)内に、プライ相互が接していることから、次第に薬液が浸透拡散し、両者の薬液付与量が均等化していきプライ間の付与量差は小さくなる。
【0050】
図24(A)は薬液塗布前の2プライに積層された積層連続シートS2の断面図である(MD方向に平行に切断した断面図)。2プライに積層された積層連続シートS2の両面に薬液を塗布するにあたり、両面の薬液量に差異を設け、図中においては一次連続シートS11の側に薬液を多く塗布する。薬液塗布後、積層連続シートS2が伸長しきる前に、コンタクトエンボスCEにより積層を一体化し、スリット手段55により製品幅にカットする(図24(B))。その後、積層連続シートS2を巻取り手段56で巻き取り、薬液を浸透させるため静置される。第二次薬液塗布手段53で薬液を塗布された積層連続シートS2を構成する一次連続シートS11、S12は主にMD方向に伸長する。その際、より多くの薬液が塗布された一次連続シートS11が他方の一次連続シートS12より伸長率が大きくなるが、一次連続シートS11、S12はコンタクトエンボスCEで相互に固定されているため、より伸長した一次連続シートS11の表面にシワが生じる(24(C))。積層する積層連続シートS2のクレープ率にも差異を設け、一次連続シートS11にクレープ率の高い原紙を使用すると、より一次連続シートS11と一次連続シートS12との伸長率に差異を生じさせることができる。
【0051】
クレープはヤンキードライヤー115にて原紙を乾燥後、ドクターブレード117によりヤンキードライヤー115から剥がした後、ドライヤースピードと巻取りスピードの差異によって形成される。このクレープはヤンキードライヤー115への紙の貼り付きにより形状を調整するが、この貼り付きに若干のばらつきがあることや、繊維原料が均等に分布していないことから、ミクロ的な視野で見ると立体的にクレープ形状には若干のバラツキが存在する。このバラツキはクレープ率が大きくなるほど顕著になる。
【0052】
このクレープのバラツキに伴い、薬液を塗布した際の伸びにもバラツキが生じ、これが3次元的に細かな波打ちとして形成される。この波うちは原反シーズニング時には張力が働くため顕在化しないが、製品に加工し断裁した後に復元し顕在化する。シートへの薬液の塗布量が多いほど、クレープが大きいほどクレープ形状の変化、シートの波打ちは大きく、逆にシートへの薬液の塗布量が少ないほど、クレープが小さいほどクレープ形状の変化、シートの波打ちは小さい。このため、塗布量だけでなく、クレープ率を変えることによって、嵩高効果を相乗させることができる。
【0053】
また品質について、クレープ率の異なる一次連続シートS11、S12を積層して製品化した場合、薬液塗布を行わなければ、製品であるティシュペーパーは、両面でバルク感の異なるものとなる(図25(A))。しかし、より表面の凹凸の大きな(クレープ率の高い)一次連続シートS11により多くの薬液を塗布することにより、一次連続シートS11は一次連続シートS12よりも高い伸び率で伸長するが、コンタクトエンボスによりMD方向と平行に固定されているため(図示せず)、一次連続シートS11は波打ち、積層シートの嵩が増加する。(図25(B))。
【0054】
薬液塗布量に差異を設けることにより、製品の両面で肌触り、使用感が異なることが懸念されるが、二次原反ロールRを次の工程(折り加工等)へ供する前にロールの状態で静置することにより、薬液塗布量の異なる一次連続シートS11、S12の表面が互いに相対した状態で保たれるため(薬液浸透工程、図26)、連続シート間の薬液成分が少しずつ転移し(図中グレー矢印)、その差異はシーズニング中に次第に軽減される。なお、図26中の白抜き矢印は薬液成分の浸透方向を示す。
【0055】
他方、本発明における第二次薬液塗布手段53としては、フレキソ印刷方式又はグラビア印刷方式が用いられる。このとき、シートの加工速度は100〜1100m/分とし、好ましくは350〜1050m/分、特に好ましくは450〜1000m/分とする。100m/分未満であると生産性が低く、他方、1100m/分以上であると、塗布ムラが多く生じ、薬液の飛散量が多くなってしまう傾向がある。
フレキソ印刷方式の場合、フレキソ刷版ロールの線数は、10〜60線とし、好ましくは15〜40線、特に好ましくは20〜35線とする。線数が10線未満であると塗布ムラが多く生じてしまい、他方、線数が60線超過であると紙粉が詰まり易くなる。アニロックスロールの線数は、10〜300線とし、好ましくは25〜200線、特に好ましくは50〜100線とする。線数が10線未満であると塗布ムラが多く生じてしまい、他方、線数が300線超過であると紙粉が詰まり易くなる。アニロックスロールのセル容量は、10〜100ccとし、好ましくは15〜70cc、特に好ましくは30〜60ccとする。セル容量が10cc未満であると所望の塗布量が得られず、他方、セル容量が100cc超過であると薬液の飛散量が多くなってしまう。
フレキソ印刷方式又はグラビア印刷方式は、加工速度が高速であっても塗布量を安定させることができ、また、一つのロールで幅広い薬液の粘度を安定的に塗布することができる。
【0056】
第二次薬液塗布手段53の前後に配置される手段(図11の例ではカレンダー手段52及びコンタクトエンボス手段54)は、相互に近接して配置することが好ましい。そうすることによって、薬液が塗布されないティシュペーパー製品を製造する場合には、積層連続シートS2を第二次薬液塗布手段53の前段から後段に直接移送し、第二次薬液塗布手段53を通さずに積層連続シートS2を通すだけでよくなるため、薬液塗布の有無を容易に切り替えることが可能となる。例えば、図11に示すティシュペーパー製品用二次原反ロールの製造設備X1では、薬液が塗布されないティシュペーパー製品を製造する場合、図11において二点鎖線で示すように、積層連続シートS2をカレンダー手段52からコンタクトエンボス手段54に直接移送し、第二次薬液塗布手段53を通さずに積層連続シートS2を流すだけで良い。
【0057】
<ドクターチャンバー形式の実施形態1>
ここでは、フキレソ印刷方式におけるドクターチャンバー形式の一例を説明する。
図12に示すように一方のドクターチャンバー形式とされる薬液塗布部53Aは、薬液の入っているドクターチャンバー61Aが、回転可能なアニロックスロール63Aと対向して配置されていて、ドクターチャンバー61Aからアニロックスロール63Aに薬液を受け渡すようになっている。また、このアニロックスロール63Aと接し且つ積層連続シートS2の一面とも接する刷版ロール64Aが回転可能に設置されていて、このアニロックスロール63Aから刷版ロール64Aに薬液を受け渡すようになっている。さらに、積層連続シートS2を挟んでこの刷版ロール64Aと対向している弾性ロール65Aとで積層連続シートS2に圧力を付与しつつ、刷版ロール64Aから積層連続シートS2に薬液を塗布するようになっている。
【0058】
そして、本形態では、この薬液塗布部53Aが後述するコンタクトエンボス手段54のコロ54Aと対向し且つ、前述のワインディングドラム56Aとも対向する積層連続シートS2の面側に位置している。尚、前述のドクターチャンバー61Aに対して薬液を塗布する供給ポンプ(図示しない)及び、このドクターチャンバー61Aから薬液を戻すための排出供給ポンプ(図示しない)が、ドクターチャンバー61Aに設置されている。
【0059】
他方、図12に示すように他方のドクターチャンバー形式とされる薬液塗布部53Bは、薬液の入っているドクターチャンバー61Bが、回転可能なアニロックスロール63Bと対向して配置されていて、ドクターチャンバー61Bからアニロックスロール63Bに薬液を受け渡すようになっている。また、このアニロックスロール63Bと接し且つ積層連続シートS2の他の面とも接する刷版ロール64Bが回転可能に設置されていて、このアニロックスロール63Bから刷版ロール64Bに薬液を受け渡すようになっている。さらに、積層連続シートS2を挟んでこの刷版ロール64Bと対向している弾性ロール65Bとで積層連続シートS2に圧力を付与しつつ、刷版ロール64Bから積層連続シートS2に薬液を塗布するようになっている。
【0060】
そして、本実施の形態では、この薬液塗布部53Bがコロ54Aと非対向とされ且つ、前述のワインディングドラム56Aとも非対向となる積層連続シートS2の他の面側に位置している。尚、前述のドクターチャンバー61Bに対して薬液を塗布する供給ポンプ(図示しない)及び、このドクターチャンバー61Bから薬液を戻すための排出供給ポンプ(図示しない)が、ドクターチャンバー61Bにも設置されている。
【0061】
従って、積層連続シートS2の両面に薬液塗布部53A及び薬液塗布部53Bから薬液がそれぞれ塗布されるが、この際、薬液塗布部53Aによるコロ54Aと対向する積層連続シートS2の面側の塗布量を薬液塗布部53Bによる他の面側の塗布量に対して少なくしつつ、積層連続シートS2の両面からそれぞれ積層連続シートS2に対して薬液を塗布することができる。
【0062】
ここで、前述のように、両面の合計塗布量を2.5〜5g/m2とし、さらに、プライ原反ロールである二次原反ロールRの外周面の塗布量を、二次原反ロールRの内周面の塗布量より少なくする場合、紙の両面に対する薬液の合計塗布量の内、二次原反ロールRの外周面への塗布量は、全体の20%以上で50%未満が良いが、具体的な値は、二次原反ロールRの滑りと品質のバランス、シートの厚みや薬液の浸透性、転移性により最適条件が異なるので、上記の範囲で変化する。
具体的には、片面毎の塗布量を変えるだけでなく、フレキソ版の線数を15〜40線程度、頂点面積率を20〜40%程度の薬液が飛散しない程度に粗くすることが考えられ、このようにすることで、塗布直後はドット柄が残り、瞬間的に塗布部分と未塗布部分ができるようになる。
【0063】
従って、本形態によれば、フレキソ印刷方式を用いることで版が樹脂であり弾力性があるため衛生用薄葉紙に多少の凹凸があっても印圧で調整可となるので、積層連続シートS2にシワが入り難くなる。他方、フレキソ印刷方式を用いることにより、加工速度が高速であっても塗布量を安定させることができ、また、一つのロールで幅広い薬液の粘度を安定的に塗布することができるようになる。具体的には、積層連続シートS2を700m/分以上とし、好ましくは900m/分以上の速度で搬送しつつ、薬液とされる薬液を後述の範囲の塗布量で塗布する際にも、塗布が均一で蛇行無く積層連続シートS2を巻き取れるようになる。
【0064】
また、本形態に付随する第二次薬液塗布手段53の条件としては、以下のものがある。
2ロールフレキソ形式の第二次薬液塗布手段では、薬液タンク等の塗布装置内で循環する薬液に含まれる紙粉やエアーのろ過装置を設置する必要があるが、本実施の形態のようなドクターチャンバー形式の第二次薬液塗布手段53とした場合、紙粉等が少なくなるので、ろ過装置の負荷が軽減される。さらに、ドクターチャンバー61A、61B等の塗布装置内で薬液の温度をコントロールし、薬液粘度を安定させることが望ましい。この場合、ドクターチャンバー61A、61Bに繋がる中間タンク及び配管にヒーターを設置することにできる。他方、操業中に積層連続シートS2の幅方向の水分率で塗布量を管理する場合、例えば赤外線の検査機等を用いて常に幅方向の水分量とバラツキをチェックするようにできる。さらに、必要により、図12に示すように、刷版ロール64A及び64Bに接して多数の刷毛を有するブラシロール66A及び66Bを設け、常時、刷版ロール64A及び64Bも付着しようとする紙粉を掻き取るようにすると、刷版ロール64A及び64B及びアニロックスロール63A及び63Bの目詰まりを防止でき、安定した操業が可能となる。
【0065】
<ドクターチャンバー形式の実施形態2>
次に、ドクターチャンバー形式の実施形態2について、具体的に図14及び図15に示す構造を参照しながら、以下に詳細に説明する。
なお、図示の薬液供給装置100は、前述の第二次薬液塗布手段53を構成するドクターチャンバー形式のフレキソ印刷方式による2つの薬液塗布部53A、53Bの一方についてのものとして図示したものである。図14に示す薬液供給装置100の左右方向をX軸方向、上下方向をY軸方向とする。
【0066】
薬液供給装置100は、薬液Lを貯留する貯留タンク110と、貯留タンク110内の薬液Lを押出す押出部120と、押出部120より押出された薬液Lを貯留するドクターチャンバー130と、ドクターチャンバー130に貯留される薬液Lの一部をタンク110へ引き込む引込部140と、ドクターチャンバー130より供給される薬液Lを積層連続シートS2の表面に転写させる薬液転写部150と、積層連続シートS2を周面に巻き付けて回動させる回動部160と、等を含んで構成される。
従って、前述のドクターチャンバー61A、61Bが、本実施形態ではドクターチャンバー130とされ、前述の弾性ロール65A、65Bが、本実施形態では回動部160とされることになる。
【0067】
貯留タンク110は、内部に薬液Lを貯留するタンクであり、後述の押出部120の押出ホース121と、引込部140の引込ホース141と、が液層内に挿入されている。
【0068】
押出部120は、例えば、貯留タンク110内に挿入された押出ホース121と、貯留タンク110に貯留された薬液Lを押出してドクターチャンバー130に供給する供給ポンプ122と、供給ポンプ122による薬液Lの押出量(流量)を調整するための調整弁123と、を含んで構成される。
押出ホース121は、一端が貯留タンク110内に挿入され、他端がドクターチャンバー130の導入部132と接続されたホースであり、貯留タンク110内の薬液Lを搬送する流路として機能する。供給ポンプ122は、押出ホース121に取り付けられ、図示しない駆動モータにより駆動されて、貯留タンク110内の薬液Lをドクターチャンバー130へ加圧送給する。調整弁123は、供給ポンプ122により押出される薬液Lの流量を弁の開閉により調整する。
【0069】
引込部140は、例えば、貯留タンク110内に挿入された引込ホース141と、貯留タンク110に薬液Lを引込む吸引ポンプ142と、を含んで構成される。
引込ホース141は、一端が貯留タンク110内に挿入され、他端が後述のドクターチャンバー130の導出部133と接続されたホースであり、導出部133より導出される薬液Lを貯留タンク110に搬送する流路として機能する。
吸引ポンプ142は、引込ホース141に取り付けられ、図示しない駆動モータにより駆動されて、導出部133より導出される薬液Lを吸引させて貯留タンク110(外部)へ排出させる。
【0070】
従って、前述のドクターチャンバー61A、61Bに対して薬液を塗布する供給ポンプが、本実施形態では貯留タンク110に貯留された薬液Lを押出してドクターチャンバー130に供給する供給ポンプ122とされ、また、前述のドクターチャンバー61A、61Bから薬液を戻すための排出供給ポンプが、本実施形態では貯留タンク110に薬液Lを引込む吸引ポンプ142とされることになる。
【0071】
ドクターチャンバー130は、後述のアニロックスロール151に隣接して配設され、薬液Lを貯留する本体部131と、押出部120と本体部131を連結する導入部132と、引込部140と本体部131を連結する導出部133と、を含んで構成される。
【0072】
本体部131は、ドクターチャンバー130の本体部分であり、貯留部131aと、ブレード131b,131cと、を含んで構成される。
貯留部131aは、アニロックスロール151側の端部が開口し、導入部132及び導出部133と連結され、内部に貯留される薬液Lをアニロックスロール151に供給する。そして、アニロックスロール151への供給量が一定となるように、導入部132より貯留部131aに導入される薬液Lの一部が導出部133を介して導出されることで、循環されるよう構成されている。
従って、前述のアニロックスロール63A、63Bが、本実施形態ではアニロックスロール151とされることになる。
ブレード131b,131cは、アニロックスロール151と当接するように設けられ、アニロックスロール151に押しつけた状態で薬液Lの絞りを行う。
【0073】
導入部132は、一端が本体部131に接続され、他端が押出部120の押出ホース121に接続され、押出部120と本体部131とを連結する管状の継手であり、供給ポンプ122により供給された薬液Lを本体部131の貯留部131aに導入することができる。
【0074】
導出部133は、図14及び図15に示すように、継手133aと、孔部133bと、チューブ133cと、を含んで構成される。
継手133aは、一端が本体部131に接続され、他端が引込部140の引込ホース141に接続され、引込部140と本体部131とを連結する管状の継手である。
【0075】
孔部133bは、継手133aの上面に形成され、所定の径からなる開口部分である。
つまり、継手133aに孔部133bが設けられているため、継手133a内の薬液Lは外気接触することとなる。そのため、導入部132より導入した薬液Lの一部を排出(導出部133から導出)して薬液Lを循環させる際に、吸引ポンプ142で薬液Lの吸引を行っても、上記孔部133bによって薬液Lが外気接触して、内圧を外気圧に近づけることができるので、ドクターチャンバー130内の内圧変動を抑えることができる。
なお、当該孔部133bは、ドクターチャンバー130内の内圧変動が抑えられればよいため、例えば、本体部131の上面に貯留部131aに連通するように形成してもよい。
【0076】
チューブ133cは、孔部133bに下端が連結され、上方に延伸した透明又は半透明のチューブ状の部材である。そのため、導入部132より導入した薬液Lの一部を排出して薬液Lを循環させる際に、薬液Lが孔部133bを介して当該チューブ133c内に流入するか否かを目視により確認することができる。
つまり、上記チューブ133c内への流入が確認された場合は、貯留部131aに貯留される薬液Lの量が過多になっている(アニロックスロール151に対して薬液Lが過供給状態となっている)ことが把握できる。したがって、上記過多の状態を目視で確認した使用者は、例えば、調整弁123を操作して薬液Lの押出量(流量)を調整することにより、当該過多の状態を解消することが可能となる。
なお、チューブ133cは、内部が空洞で上端側が外気に接触しているため、上記孔部133bの作用を相殺してしまうことはない。
【0077】
薬液転写部150は、例えば、ドクターチャンバー130より薬液Lを供給されるアニロックスロール151と、アニロックスロール151及び後述の回動部160の間に設けられた刷版ロール152と、を含んで構成される。
つまり、前述の刷版ロール64A、64Bが、本実施形態では刷版ロール152とされることになる。
【0078】
アニロックスロール151は、ドクターチャンバー130のブレード131b,131cと当接するように設けられ、ドクターチャンバー130の貯留部131aの開口より供給される薬液Lが周面に吸着されるように構成されている。
さらに、アニロックスロール151は、円柱状をなし、XY平面に直交する軸回りに回動可能に構成されているため、上記のように周面に吸着された薬液Lは、回動によって刷版ロール152に転写することができる。
【0079】
刷版ロール152は、周面がゴム材からなる円柱状をなし、左右端部の周面(図14に示す点P1,点P2)がアニロックスロール151及び回動部160(に巻きつけられる積層連続シートS2)の周面に当接するように設けられ、XY平面に直交する軸回りに回動可能に構成されている。
そのため、刷版ロール152は、左端で当接する回動部160がr1方向に回動することでr2方向に回動するとともに、右端で当接するアニロックスロール151をr1方向に回動させる。つまり、刷版ロール152は、アニロックスロール151の周面に吸着された薬液Lを点P2にて取得し、r2方向への回動により点P1まで搬送して積層連続シートS2に転写することができる。
そのため、アニロックスロール151により吸着された薬液Lがアニロックスロール151の周面上に層状に不均一に残ってしまう場合でも、刷版ロール152の周面に移送させることで、積層連続シートS2に薬液Lを均一に転写することができる。
【0080】
回動部160は、刷版ロール152に隣接して設けられ、図示しないモータ等より駆動力が付与されることで、XY平面に直交する軸回り(例えば、図14のr1方向)に回動する円柱状の部材であり、周面で積層連続シートS2を把持できるように構成されている。そのため、回動部160は、r1方向に回動することにより、供給される積層連続シートS2を周面に巻き付けるとともに、刷版ロール152及びアニロックスロール151を回動させ、点P1位置まで搬送した時点で刷版ロール152より薬液Lを転写させることができる。
なお、回動部160の回動の向きは、図14においてr1方向としたが、r2方向に回動するように構成しても勿論良い。この場合、アニロックスロール151及び刷版ロール152は図14とは逆方向(つまり、アニロックスロール151:r2方向、刷版ロール152:r1方向)に回動する。
【0081】
次に、本実施形態に係る薬液供給装置100による薬液Lの循環動作について説明する。
まず、供給ポンプ122を駆動させ、貯留タンク110より薬液Lを押出し、押出ホース121及びドクターチャンバー130の導入部132を介して本体部131の貯留部131aへ供給する。
次いで、回動部160を回動させてアニロックスロール151に貯留部131aの薬液Lを供給し、刷版ロール152を介して薬液Lを積層連続シートS2上に転写させる。
加えて、吸引ポンプ142を駆動させ、導出部133を介して貯留部131aの薬液Lの一部を貯留タンク110へ向けて排出して循環させる。この際、導出部133の継手133a内で、孔部133bを介した外気接触によりドクターチャンバー130内の内圧変動が抑えられる。
また、上記循環の際に、薬液Lのチューブ133c内への流入が確認された場合、調整弁123を操作して薬液Lの流量の調整を行う。
【0082】
以上説明したように、本実施形態に係る薬液供給装置100によると、薬液Lを貯留する貯留タンク110と、貯留タンク110に貯留された薬液Lをドクターチャンバー130の本体部131に押出ホース121を介して供給する供給ポンプ122と、ドクターチャンバー130の本体部131に貯留された薬液Lを吸引させて貯留タンク110(外部)に引込ホース141を介して排出させる吸引ポンプ142と、を備え、ドクターチャンバー130は、押出ホース121と本体部131を連結し、供給ポンプ122により供給された薬液Lを本体部131に導入する導入部132と、引込ホース141と本体部131を連結し、導入部132より本体部131に導入された薬液Lの一部を導出するための管状の継手133aを備えた導出部133と、を有し、導出部133の継手133aの上面に孔部133bを備えて構成される。
【0083】
薬液供給装置100では、導出部133の継手133aの上面に孔部133bが備えられる。そのため、吸引ポンプ142を用いて本体部131内の薬液Lの一部を排出する際に、上記孔部133bによって薬液Lが外気接触するので、吸引ポンプ142の動作に起因したドクターチャンバー130内の内圧変動が抑えられる。また、本発明では、上記薬液Lの一部を排出する際に吸引ポンプ142を用いているため、薬液Lを自然落下させるための流路は必要なく、タンク110の設置位置も特段ドクターチャンバー130の上方等に限定されることもない。
したがって、薬液供給装置100は、ドクターチャンバー130から薬液Lを吸い出す際の、ドクターチャンバー130内の内圧変動を抑えるとともに、極力省スペースで設置できる薬液供給装置100であるといえる。
また、ドクターチャンバー130は、孔部133bに下端が連結され、上方に延伸した透明又は半透明のチューブ133cを備える。
【0084】
つまり、導入部132より導入した薬液Lの一部を排出して薬液Lを循環させる際に、薬液Lが孔部133bを介して当該チューブ133c内に流入するか否かを目視により確認することができる。そのため、上記チューブ133c内への流入が確認された場合は、貯留部131aに貯留される薬液Lの量が過多になっている(アニロックスロール151に対して薬液Lが過供給状態となっている)ことが把握できる。したがって、上記過多の状態を目視で確認した使用者は、例えば、調整弁123を操作して薬液Lの流量を調整することにより、当該過多の状態を解消することが可能となる。
また、チューブ133cの上端(自由端)を下向きにして設けることで、孔部133bへの紙粉等の異物の混入を防止することができる。
【0085】
<ドクターチャンバー形式の実施形態3>
次に、ドクターチャンバー形式の実施形態3の薬液供給装置200について、図16を用いて説明する。
ドクターチャンバー形式の実施形態2の薬液供給装置100では、孔部133bに連結されたチューブ133c内への薬液Lの流入を目視により確認することで、アニロックスロール151に対して薬液Lが過供給状態となっていることを把握できるように構成したが、本実施形態の薬液供給装置200では、上記状態に至ったか否かを自動的に判別し、使用者に判別結果を報知するように構成する。
以下の薬液供給装置200の説明においては、ドクターチャンバー形式の実施形態2の薬液供給装置100との相違点を中心に説明し、一致する構成には、同一の符号を付し、説明を省略する。
【0086】
本実施形態の導出部233は、図16に示すように、継手133aと、孔部133bと、孔部133bの上方に設けられた円筒状部133dと、円筒状部133dに取り付けられたセンサ部133eと、を含んで構成される。
【0087】
円筒状部133dは、孔部133bの周面に下端が溶接等により固着接続され、上方に延伸した円筒状の部材である。
【0088】
センサ部133eは、円筒状部133dに設けられたセンサ133fと、センサ133fに取り付けられ、センサ133fの検知に連動して報知を行う報知部133gと、を含んで構成される。
センサ133fは、例えば、被検知体に向けて発光する発光素子(図示省略)と、被検知体からの反射光を受光する受光素子(図示省略)と、を含み、受光素子からの反射光の受光量に基づいて、円筒状部133dに流入する薬液Lの高さが、当該センサ133fの設けられた高さ位置(図16に示すy1)に達したか否かを検知するセンサである。
報知部133gは、例えば、スピーカ等であり、センサ133fにより、円筒状部133dに流入する薬液Lの高さが、上記センサ133fの設けられた高さ位置に達したと検知された場合に、音声により使用者への報知を行うように構成されている。
【0089】
つまり、導入部132より導入した薬液Lの一部を排出して薬液Lを循環させる際に、センサ133fにより、円筒状部133dに流入する薬液Lが上記高さ位置に達したか否かを検知することで、貯留部131aに貯留される薬液Lの量が過多になっている(アニロックスロール151に対して薬液Lが過供給状態となっている)か否かを判別することができる。そして、上記過多の状態に至った場合、使用者は報知部133gによりその旨を知ることができるので、例えば、調整弁123を操作して薬液Lの押出量(流量)を調整することにより、当該過多の状態を解消することが可能となる。
なお、円筒状部133dは、内部が空洞で上端側が外気に接触しているため、孔部133bの作用を相殺してしまうことはない。
【0090】
次に、本実施形態に係る薬液供給装置200による、薬液Lの循環動作について説明する。
まず、供給ポンプ122を駆動させ、貯留タンク110より薬液Lを押出し、押出ホース121及びドクターチャンバー130の導入部132を介して本体部131の貯留部131aへ供給する。
次いで、回動部160を回動させてアニロックスロール151に貯留部131aの薬液Lを供給し、刷版ロール152を介して薬液Lを積層連続シートS2上に転写させる。
加えて、吸引ポンプ142を駆動させ、導出部233を介して貯留部131aの薬液Lの一部を貯留タンク110へ向けて排出して循環させる。この際、導出部233の継手133a内で、孔部133bでの外気接触を介してドクターチャンバー130内の内圧変動が抑えられる。
また、上記循環の際に、センサ133fにより、円筒状部133dに流入する薬液Lの高さが、センサ133fの設けられた高さ位置に達したと検知され、報知部133gにより使用者へその旨が報知された場合、調整弁123を操作して薬液Lの流量の調整を行う。
【0091】
以上説明したように、本実施形態に係る薬液供給装置200によると、ドクターチャンバー130は、孔部133bの周面に下端が接続され、上方に延伸した円筒状の円筒状部133dと、円筒状部133dに設けられ、円筒状部133dに流入する薬液Lの高さが所定の高さ位置(センサ133fの設けられた高さ位置)に達したか否かを検知するセンサ133fと、センサ133fにより、円筒状部133dに流入する薬液Lの高さが上記所定の高さ位置に達したと検知された場合に報知する報知部133gと、を備えて構成される。
【0092】
つまり、薬液供給装置200によると、薬液供給装置100と同様の効果を発揮するのは勿論のこと、薬液Lを循環させる際に、センサ133f及び報知部133gにより、アニロックスロール151に対して薬液Lが過供給状態に至ったか否かを自動的に判別し、使用者に判別結果を報知することができるので、上記状態判別を使用者自身が行う負担が軽減される。
【0093】
<ドクターチャンバー形式の実施形態4>
次に、ドクターチャンバー形式の実施形態4の薬液供給装置300について、図17を用いて説明する。
ドクターチャンバー形式の実施形態2の薬液供給装置100及び実施形態3の薬液供給装置200では、孔部133bの開口量は固定値となるように構成したが、本実施形態の薬液供給装置300では、当該開口量を調整できるように構成する。
以下の薬液供給装置300の説明においては、ドクターチャンバー形式の実施形態2の薬液供給装置100及び実施形態3の薬液供給装置200との相違点を中心に説明し、一致する構成には、同一の符号を付し、説明を省略する。
【0094】
本実施形態の導出部333は、図17に示すように、継手133aと、円筒状部133dと、センサ部133eと、円筒状部133dに取り付けられた調整部133hと、を含んで構成される。調整部133hは、例えば、ニードルバルブであり、継手133aの上面に形成される開口としての孔部133jと、孔部133jの開口量を調整するバルブ本体133iと、を含んで構成される。
【0095】
孔部133jは、所定径からなる開口の周囲がオリフィスで囲まれた形状からなる。
バルブ本体133iは、上記孔部133jの開口の上方に配設され、先端がテーパ状で上下動可能なニードル軸(図示省略)を備え、当該ニードル軸を上下動させて、孔部133jのオリフィスと接触する際の開度に応じて孔部133jの開口量を調整できるように構成されている。
【0096】
つまり、上記調整部133hにより、孔部133jの開口量を調整することが可能となるので、薬液Lを循環させる際に、ドクターチャンバー131内の内圧変動量に応じて、孔部133jの開口量を適宜に調整することができる。そのため、例えば、センサ部133eにより、円筒状部133dに流入する薬液Lの高さが、センサ133fの設けられた高さ位置に達したと検知された場合、調整弁123を操作して薬液Lの押出量を調整することで対処するばかりでなく、調整部133hによる孔部133jの開口量の調整により、孔部133jによるエアー抜きの能力を高めて(外気との接触面積を拡張して)、ドクターチャンバー130内の内圧変動を抑えるという対処をとることも可能となる。
つまり、内圧変動を抑えることで、内圧変動によりもたらされるドクターチャンバー130内からの薬液Lの噴出や、アニロックスロール151上の薬液Lのドクターチャンバー130側への吸込み等が好適に防止されるので、薬液Lの循環が促進される。
【0097】
次に、本実施形態に係る薬液供給装置300による、薬液Lの循環動作について説明する。
まず、供給ポンプ122を駆動させ、貯留タンク110より薬液Lを押出し、押出ホース121及びドクターチャンバー130の導入部132を介して本体部131の貯留部131aへ供給する。
次いで、回動部160を回動させてアニロックスロール151に貯留部131aの薬液Lを供給し、刷版ロール152を介して薬液Lを積層連続シートS2上に転写させる。
加えて、吸引ポンプ142を駆動させ、導出部333を介して貯留部131aの薬液Lの一部を貯留タンク110へ向けて排出して循環させる。上記循環の際、センサ133fにより、円筒状部133dに流入する薬液Lの高さが、センサ133fの設けられた高さ位置に達したと検知され、報知部133gにより使用者へその旨が報知された場合、調整弁123の操作又は調整部133hによる孔部133jの開口量の調整により対処することができる。
【0098】
以上説明したように、本実施形態に係る薬液供給装置300によると、ドクターチャンバー130は、孔部133jの開口量を調整する調整部133hを備える。
【0099】
つまり、薬液供給装置300によると、薬液供給装置100と同様の効果を発揮するのは勿論のこと、上記調整部133hにより、孔部133jの開口量を調整することが可能となるので、薬液Lを循環させる際に、ドクターチャンバー131内の内圧変動量に応じて、孔部133jの開口量を適宜に調整することで、ドクターチャンバー130内の内圧変動を一層好適に抑えることができる。
【0100】
他方、上記各実施形態の薬液供給装置においては、押出ホース121に繋がる導入部132及び押出ホース121に繋がる導入部132を各一つのみドクターチャンバー130が有する構造とされているが、例えば図18に示す各例のような構造としても良い。
【0101】
例えば、図18(A)では、幅広に形成されて回転軸R0廻りに回転するアニロックスロール151に沿って幅広の長方形状に外枠が形成されたドクターチャンバー130の幅方向Dの左右端付近の箇所に、それぞれ押出ホース121に繋がる導入部132を有した構造とされている。そして、このドクターチャンバー130の中央部に引込ホース141に繋がる一つの導出部133が存在する構造ともされている。
【0102】
つまり、図18(A)に示す例では、2本の押出ホース121がそれぞれ2つの導入部132に繋がって薬液Lをドクターチャンバー130の左右端付近から供給することで、貯留タンク110内からの新鮮な薬液Lをドクターチャンバー130内に平均的に供給でき、更に中央部の導出部133から余った薬液Lがドクターチャンバー130から導出されるようになる。
【0103】
また、図18(B)では、幅広に形成されて回転軸R0廻りに回転するアニロックスロール151に沿って幅広の長方形状に外枠が形成されたドクターチャンバー130の幅方向Dの左右端付近の箇所及び中央部の箇所に、それぞれ押出ホース121に繋がる導入部132を有した構造とされている。そして、このドクターチャンバー130の幅方向Dの左右寄りの箇所にそれぞれ引込ホース141に繋がる2つの導出部133が存在する構造ともされている。
【0104】
つまり、図18(B)に示す例では、3つの導入部132の各間に2つの導出部133がそれぞれ配置された構造とされていて、3本の押出ホース121がそれぞれ3つの導入部132に繋がって薬液Lをドクターチャンバー130の左右端付近及び中央部から供給することで、貯留タンク110内からの新鮮な薬液Lをドクターチャンバー130内に平均的に供給でき、更に2つの導出部133から余った薬液Lがドクターチャンバー130から導出されるようになる。
【0105】
他方、図18(C)では、幅広に形成されて回転軸R0廻りに回転するアニロックスロール151に沿って幅広の長方形状に外枠が形成されたドクターチャンバー130の幅方向Dに沿った等間隔且つ図の上側寄りの複数箇所に、それぞれ押出ホース121に繋がる導入部132を有した構造とされている。そして、各導入部132に隣り合ったドクターチャンバー130の図の下側寄りの箇所に、それぞれ引込ホース141に繋がる複数の導出部133が存在する構造ともされている。
【0106】
つまり、図18(C)に示す例では、ドクターチャンバー130の幅方向Dに沿って配置された複数の導入部132に押出ホース121からそれぞれ薬液Lが供給されると共に、これら導入部132にそれぞれ隣り合っている複数の導出部133から余った薬液Lがドクターチャンバー130から導出されるようになる。従って、本例でも、貯留タンク110内からの新鮮な薬液Lをドクターチャンバー130内に平均的に供給でき、更に導出部133から余った薬液Lがドクターチャンバー130から導出されるようになる。
【0107】
なお、本発明の範囲は上記実施形態に限られることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の改良並びに設計の変更を行っても良い。
例えば、薬液供給装置100において、チューブ133cを設けない場合は、孔部133bの上部にエアーフィルタを設置し、孔部133bへの紙粉等の異物の混入を防止するように構成してもよい。また、孔部133bは、貯留部131aの薬液Lの液面より上方であれば、本体部131の側面に設けてもよい。
【0108】
<フレキソ2ロール転写形式の実施形態>
ここでは、フキレソ印刷方式における2ロール転写形式の一例を説明する。
図11及び図23に示すように一方のフキレソ印刷方式とされる薬液塗布部53Aは、薬液の入っている薬液タンク66Aにディップロールである絞りロール62Aが浸されつつ回転可能に設置されている。さらに、薬液タンク66A外において絞りロール62Aと接しつつアニロックスロール63Aが、回転可能に設置されており、また、このアニロックスロール63Aと接し且つ積層連続シートS2の一面とも接する刷版ロール64Aが回転可能に設置されていて、積層連続シートS2を挟んで対向している弾性ロール65Aとで積層連続シートS2に圧力を付与している。
そして、本実施の形態では、この薬液塗布部53Aが後述するコンタクトエンボス手段54のコロ54Aと対向し且つ、前述のワインディングドラム56Aとも対向する積層連続シートS2の面側に位置している。
【0109】
また、図11及び図23に示すように他方のフレキソ印刷形式とされる薬液塗布部53Bは、薬液の入っている薬液タンク66Bにディップロールである絞りロール62Bが浸されつつ回転可能に設置されている。さらに、薬液タンク66B外において絞りロール62Bと接しつつアニロックスロール63Bが、回転可能に設置されており、また、このアニロックスロール63Bと接し且つ積層連続シートS2の他の面とも接する刷版ロール64Bが回転可能に設置されていて、積層連続シートS2を挟んで対向している弾性ロール65Bとで積層連続シートS2に圧力を付与している。
そして、本実施の形態では、この薬液塗布部53Bがコロ54Aと非対向とされ且つ、前述のワインディングドラム56Aとも非対向となる積層連続シートS2の他の面側に位置している。
【0110】
従って、積層連続シートS2の両面に薬液塗布部53A及び薬液塗布部53Bから薬液がそれぞれ塗布されるが、この際、薬液塗布部53Aによるコロ54Aと対向する積層連続シートS2の面側の塗布量を薬液塗布部53Bによる他の面側の塗布量に対して少なくしつつ、積層連続シートS2の両面からそれぞれ積層連続シートS2に対して薬液を塗布することができる。
【0111】
従って、本実施の形態によれば、フレキソ形式を用いて版が樹脂であり弾力性があるため積層連続シートS2に多少の凹凸があっても印圧で調整可となるので、グラビア印刷方式のような金属ロールで塗布するよりも積層連続シートS2にシワが入り難くなる。他方、フレキソ印刷方式を用いることにより、加工速度が高速であっても塗布量を安定させることができ、また、一つのロールで幅広い薬液の粘度を安定的に塗布することができるようになる。具体的には、積層連続シートS2を700m/分以上の速度で搬送しつつ、薬液とされる薬液を2.5g〜5g/m2の塗布量で塗布する際にも、塗布が均一で蛇行無く積層連続シートS2を巻き取れるようになる。
【0112】
<フレキソ1ロール転写形式の実施形態>
フキレソ印刷方式における1ロール転写形式とは、前述のフレキソ2ロール転写形式から絞りロール62A、62Bを省略したものである。この場合、アニロックスロール63A、63Bが、それぞれ薬液タンク66A、66Bに浸されつつ回転可能に設置される。また、これらのアニロックスロール63A、63Bに対しては、アニロックスロール63A、63B表面の薬液を掻き取るドクターブレード(図示せず)を設置しても良い。このようなフレキソ1ロール転写形式は、メンテナンスが比較的容易であるという利点や、ブレードの摩耗や薬液中の紙粉等の異物の混入状態を容易に目視できるという利点を有している。
【0113】
(コンタクトエンボス手段)
ティシュペーパー製品用二次原反ロールの製造設備X1には、積層連続シートS2に対してコンタクトエンボスを付与するコンタクトエンボス手段54を設けることができる。
ここで、コンタクトエンボス手段54は、図13に示すように、金属ロール又は弾性ロールである受けロール54Bと表面に細かい凸部54Cを有する金属製で硬質のコロ54Aとが所定の圧力を有して相互に外周面同士を当接しつつ、それぞれ回転可能に設置されている。そして、積層連続シートS2におけるティシュペーパー製品の幅方向中央に該当する部分に対して、左右各2つずつ存在する凸部54Cと、受けロール54Bとの間で積層連続シートS2を挟みつつ搬送することで、積層連続シートS2に対して、積層連続シートS2の連続方向に沿って層間剥離を防止するライン状のコンタクトエンボスCEを施すようになっている。
尚、このコンタクトエンボスCEを施すコロ54Aと対向した側の面を外周側として前述の巻取り手段56が、積層連続シートS2を巻取ることになる。
【0114】
このようにコンタクトエンボスCEを付与することによって、複数の一次連続シート(図示例ではS11、S12)を積層して成る積層連続シートS2の層間剥離を防止する。なお、コンタクトエンボスCEは、ティシュペーパー製品の端部が層間剥離し難くなるように、ティシュペーパー製品の幅方向両側部に位置するよう、形成されることが好ましい。
【0115】
なお、コンタクトエンボス手段54の設置箇所は特に限定されないが、薬液付与手段53の後段であって且つスリット手段55の前段や、カレンダー手段52の後段であって且つ薬液付与手段53の前段とすることが考えられる。つまり、カレンダー手段52の後段であって且つスリット手段55の前段の何れかの箇所で有ればよいことになる。
【0116】
コンタクトエンボス手段54でコンタクトエンボスCEを付与する場合、積層連続シートS2に対して薬液を塗布した後、0.3〜2.5秒、好ましくは0.3〜1.0秒以内にコンタクトエンボスCEを付与することも提案される。0.3秒未満であると薬液が原紙に十分吸収されないため、受けロール54Bやコロ54Aに薬液が付着して断紙したり、受けロール54Bやコロ54Aに汚れが付着したりする。2.5秒を超えると、薬液を塗布した積層連続シートS2が伸びきるため、その後工程シワが生じにくくなり、嵩高なティシュペーパー製品を得づらくなる。また、積層連続シートS2が伸びきるとドロー変動に対応できる伸びが無くなり、また吸湿、吸水により引張強度が低下しているため、断紙し易くなり操業性が落ちるという問題もある。
【0117】
また、この接合工程において、本実施形態ではコロとして表面に細かい凸部54Cを有した金属製で硬質のコロ54Aを用いたが、積層連続シートS2に対して層間剥離を防止するライン状の接合部分が形成できればよく、例えばコロ54Aの替りに、表面に細かい針状の部材を有したローラをコロとすることもできる。
さらに、接合する為の手段としては上記例に限定されず、凸部の先端形状が、点状、正方形、長方形、円形、楕円形等の形状のものをコロとして用いても良く、凸部の先端形状が、細長い線状、細く斜めに伸びる線状等のものをコロとして用いても良い。
【0118】
他方、凸部の配列としては等間隔が考えられるが、千鳥状としたり、等間隔としなくとも良く、また、凸部を1列に配置してコンタクトエンボスを連続して付与する他に、凸部を2列以上の複数列配置することも考えられる。そして、コンタクトエンボスを緊密に複数列付与するように凸部が配置された群を複数並べて、複数のコンタクトエンボス群を付与するようにしても良い。尚、接合工程としては、上記のように機械的に圧力を加えて接合する他に、超音波等の他の手段により接合しても良い。
【0119】
図19に示すように、第二次薬液塗布手段53とコンタクトエンボス手段54との間に、積層連続シートS2のテンションを制御するテンションコントロール手段57を設けることもできる。このテンションコントロール手段57は円筒形状のロールから形成されており、積層連続シートS2の撓み具合に合わせて上下動可能とされている。
また、図19に示す形態のようにテンションコントロール手段57をもうける場合、第二次薬液塗布手段53の前段と、テンションコントロール手段57の後段とにカレンダー手段52を配置することも提案される。この場合、テンションコントロール手段57の後段に配置されたカレンダー手段52では、薬液塗布時には、カレンダーロール52Aを受けロール52Bから積層連続シートS2の紙厚以上の距離だけ離間させて、積層連続シートS2に対して平滑化処理を行なわず素通しさせることも提案される(第2のティシュペーパー製品用二次原反ロールの製造設備及び製造方法)。
【0120】
(一次連続シート)
一次連続シートS11、S12の原料パルプは、特に限定されず、ティシュペーパー製品の用途に応じて適宜の原料パルプを選択して使用することができる。原料パルプとしては、例えば、木材パルプ、非木材パルプ、合成パルプ、古紙パルプなどから、より具体的には、砕木パルプ(GP)、ストーングランドパルプ(SGP)、リファイナーグランドパルプ(RGP)、加圧式砕木パルプ(PGW)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)、ブリーチケミサーモメカニカルパルプ(BCTMP)等の機械パルプ(MP)、化学的機械パルプ(CGP)、半化学的パルプ(SCP)、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)等のクラフトパルプ(KP)、ソーダパルプ(AP)、サルファイトパルプ(SP)、溶解パルプ(DP)等の化学的パルプ(CP)、ナイロン、レーヨン、ポリエステル、ポリビニルアルコール(PVA)等を原料とする合成パルプ、脱墨パルプ(DIP)、ウエストパルプ(WP)等の古紙パルプ、かすパルプ(TP)、木綿、アマ、麻、黄麻、マニラ麻、ラミー等を原料とするぼろパルプ、わらパルプ、エスパルトパルプ、バガスパルプ、竹パルプ、ケナフパルプ等の茎稈パルプ、靭皮パルプ等の補助パルプなどから、一種又は数種を適宜選択して使用することができる。
【0121】
特に、原料パルプは、NBKPとLBKPとを配合したものが好ましい。適宜古紙パルプが配合されていてもよいが、風合いなどの点で、NBKPとLBKPのみから構成されているのがよく、その場合の配合割合(JIS P 8120)としては、NBKP:LBKP=20:80〜80:20がよく、特に、NBKP:LBKP=30:70〜60:40が望ましい。
【0122】
一次連続シートS11、S12は、JIS P 8124による坪量が、10〜25g/m2とされ、好ましくは12〜20g/m2とされ、より好ましくは13〜16g/m2とされる。坪量が10g/m2未満であると、柔らかさの点においては好ましいが、適正な強度を確保することができなくなる。他方、坪量が25g/m2を超えると、硬くなりすぎて、肌触りが悪化する。
また、紙厚(尾崎製作所製ピーコックにより測定)は1プライで80〜250μm、好ましくは100〜200μm、より好ましくは130〜180μmとされる。
【0123】
一次連続シートS11、S12は、クレープ率が10〜30%であるのが好ましく、12〜25%であるのがより好ましく、13〜20%であるのが特に好ましい。クレープ率が10%未満であると、加工時に断紙しやすいとともに伸びの少ないコシのないティシュペーパー製品となる。他方、クレープ率が30%超過であると、加工時のシートの張力コントロールが難しく断紙しがちとなり、また、製造後にはシワが発生して見栄えの悪いティシュペーパー製品となる。
【0124】
一次連続シートS11、S12は、JIS P 8113に規定される乾燥引張強度(以下、乾燥紙力ともいう)の縦方向が、2プライで200〜700cN/25mm、好ましくは250〜600cN/25mm、特に好ましくは300〜600cN/25mmとされ、他方、横方向が、2プライで100〜300cN/25mm、好ましくは130〜270cN/25mm、特に好ましくは150〜250cN/25mmとされる。原紙の乾燥引張強度が低すぎると、製造時及び使用時の断紙や伸び等のトラブルが発生し易くなり、高過ぎると使用時にごわごわした肌触りとなる。
【0125】
これらの紙力は公知の方法により調整でき、例えば、乾燥紙力増強剤を内添(ドライヤーパートよりも前の段階、例えばパルプスラリーに添加)する、パルプのフリーネスを低下(例えば30〜40ml程度低下)させる、NBKP配合率を増加(例えば50%以上に)する等の手法を適宜組み合わせることができる。
【0126】
乾燥紙力剤としては、澱粉、ポリアクリルアミド、CMC(カルボキシメチルセルロース)若しくはその塩であるカルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセルロース亜鉛等を用いることができる。湿潤紙力剤としては、ポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン樹脂、尿素樹脂、酸コロイド・メラミン樹脂、熱架橋性付与PAM等を用いることができる。湿潤紙力剤を内添する場合、その添加量はパルプスラリーに対する重量比で5〜20kg/t程度とすることができる。また、乾燥紙力剤を内添する場合、その添加量はパルプスラリーに対する重量比で0.5〜1.0kg/t程度とすることができる。
【0127】
〔ティシュペーパー製品用二次原反ロールの製造方法〕
次に、本発明に係るティシュペーパー製品用二次原反ロールの製造方法の一例を説明する。本形態に係るティシュペーパー製品用二次原反ロールの製造方法は、例えば、上述したティシュペーパー製品用二次原反ロールの製造設備X1を用いて行うことができる。
図11に示すように、本発明に係るティシュペーパー製品用二次原反ロールの製造方法においては、プライ手段51で複数の一次原反ロールから繰り出される一次連続シート(図示例ではS11、S12)をその連続方向に沿って積層して積層連続シートS2とし(積層工程)、この積層連続シートS2に対して一対の第一次薬液塗布手段40によって薬液を塗布し(第一次薬液塗布工程)、その後に一対の第二次薬液塗布手段53で薬液を塗布し(第二次薬液塗布工程)、スリット手段55によって積層連続シートS2をティシュペーパー製品の製品幅又はその複数倍幅となるようにスリットし(スリット工程)、次に、スリット工程でスリットされた積層連続シートS2を同軸で巻取ってティシュペーパー製品の製品幅又はその複数倍幅の複数の二次原反ロールRを、巻き取り手段56によって形成する。
【0128】
なお、本形態に係るティシュペーパー製品用二次原反ロールの製造方法では、上述したティシュペーパー製品用二次原反ロールの製造設備X1と同様に、積層工程の後段であって且つ薬液塗布工程の前段に、積層連続シートS2に対して一対のカレンダー手段52で平滑化処理する平滑化工程を設けることもできる。また、薬液塗布工程の後段であって且つスリット工程の前段に、積層連続シートS2に対してコンタクトエンボス手段54で層間剥離を防止するライン状のコンタクトエンボスを施すコンタクトエンボス工程を設けることもできる。
【0129】
本実施形態に係るティシュペーパー製品用二次原反ロールの製造設備又は製造方法においては、加工速度は100〜1100m/分とされ、好ましくは350〜1050m/分とされ、より好ましくは450〜1000m/分とされる。100m/分未満だと生産性が低く、他方、1100m/分超過であると、積層連続シートS2の断紙する頻度が高くなり、薬液塗布工程は刷版ロールやアニロックスロールの薬液の転移が不安定になりがちとなるため、塗布ムラが生じる可能性がある。
【0130】
上記例では主にフレキソ印刷方式について沿って説明したが、グラビア印刷方式も採用できることは既述のとおりである。グラビア印刷方式は、たとえば図21に示すように、
薬液溜めトレイ70からディップロール71が一定量の薬液を取り上げ、ディップロール71のセルに残った薬液は、グラビアロール72に移される。次いで、グラビアロール72に移された薬液は、掻取ブレード73によって掻き取られながら、圧胴74をバックアップとする積層シートS2の表面に同時に移される。グラビアロール72の網点密度などは適宜選択できる。
【0131】
〔マルチスタンド式インターフォルダ〕
上述のティシュペーパー製品用二次原反ロールの製造設備、製造方法で製造された二次原反ロールRは、マルチスタンド式インターフォルダに多数セットされ、セットされた二次原反ロールRから二次連続シートを繰り出して折り畳むと共に積層することによってティシュペーパー束が製造される。以下では、そのマルチスタンド式インターフォルダの一例について説明する。
【0132】
図2及び図3に、マルチスタンド式インターフォルダの一例を示した。図中の符号2は、マルチスタンド式インターフォルダ1の図示しない二次原反ロール支持部にセットされた二次原反ロールR,R…を示している。この二次原反ロールR,R…は、必要数が図示平面と直交する方向(図2における水平方向、図3における紙面前後方向)に横並びにセットされている。各二次原反ロールRは、上述のティシュペーパー製品用二次原反ロールの製造設備、製造方法でティシュペーパー製品幅にスリットが入れられており、ティシュペーパー製品の複数倍幅、図示例では2倍幅で巻き取られ、セットされている。
【0133】
二次原反ロールRから巻き出された連続する帯状の二次連続シート3A及び3Bは、ガイドローラG1、G1等のガイド手段に案内されて折畳機構部20へ送り込まれる。また、折畳機構部20には、図4に示すように、折板P,P…が必要数並設されてなる折板群21が備えられている。各折板Pに対しては、一対の連続する二次連続シート3A又は3Bを案内するガイドローラG2,G2やガイド丸棒部材G3,G3が、それぞれ適所に備えられている。さらに、折板P,P…の下方には、折り畳みながら積み重ねられた積層帯30を受けて搬送するコンベア22が備えられている。
【0134】
この種の折板P,P…を用いた折畳機構は、例えば、米国特許4052048号特許明細書等によって公知の機構である。この種の折畳機構は、図5に示すように、各連続する二次連続シート3A,3B…を、Z字状に折り畳みながら、かつ隣接する連続する二次連続シート3A,3B…の側端部相互を掛け合わせながら積み重ねる。
【0135】
図7〜図10に、折畳機構部20の特に折板Pに関する部位を、詳しく示した。本折畳機構部20においては、各折板Pに対して、一対の連続する二次連続シート3A及び3Bが案内される。この際、連続する二次連続シート3A及び3Bは、ガイド丸棒部材G3,G3によって、側端部相互が重ならないように位置をずらされながら案内される。
【0136】
折板Pに案内された時点で下側に重なっている連続する二次連続シートを第1の連続する二次連続シート3Aとし、上側に重なっている連続する二次連続シートを第2の連続する二次連続シート3Bとすると、これら連続する二次連続シート3A及び3Bは、図5及び図8に示すように、第1の連続する二次連続シート3Aの第2の連続する二次連続シート3Bと重なっていない側端部e1が、折板Pの側板P1によって、第2の連続する二次連続シート3Bの上側に折り返されるとともに、図5及び図9に示すように、第2の連続する二次連続シート3Bの第1の連続する二次連続シート3Aと重なっていない側端部e2が、折板PのスリットP2から折板P下に引き込まれるようにして下側に折り返される。この際、図5及び図10に示すように、上流の折板Pにおいて折り畳みながら積み重ねられた連続する二次連続シート3Aの側端部e3(e1)が、折板PのスリットP2から第2の連続する二次連続シート3Bの折り返し部分間に案内される。このようにして、各連続する二次連続シート3A,3B…は、Z字状に折り畳まれるとともに、隣接する連続する二次連続シート3A及び3Bの側端部相互が掛け合わされ、したがって、製品使用時において、最上位のティシュペーパーを引き出すと、次のティシュペーパーの側端部が引き出されることになる。
【0137】
以上のようにしてマルチスタンド式インターフォルダ1で得られた積層帯30は、図2に示すように、後段の切断手段41において流れ方向FLに所定の間隔をおいて裁断(切断)されてティシュペーパー束30aとされ、図6(a)に示すように、このティシュペーパー束30aは、更に後段設備において収納箱Bに収納される。なお、以上のようなマルチスタンド式インターフォルダ1では、積層帯30の紙の方向は、流れ方向FLに沿って縦方向(MD方向)となっており、流れ方向と直交する方向に沿って横方向(CD方向)となっている。このため、積層帯30を所定の長さに切断して得られたティシュペーパー束30aを構成するティシュペーパーの紙の方向は、図6(a)に示すように、ティシュペーパーの折り畳み部の延在方向に沿って縦方向(MD方向)となり、ティシュペーパーの折り畳み部の延在方向と直交する方向に沿って横方向(CD方向)となる。
【0138】
図6(b)に、収納箱Bにティシュペーパー束30aを収納して成る製品の一例を示した。収納箱Bの上面にはミシン目Mが設けられており、このミシン目Mで収納箱B上面の一部を破断することにより収納箱Bの上面が開口するようになっている。この開口は中央にスリットを有するフィルムFによって覆われており、このフィルムFに設けられたスリットを介してティシュペーパーTを取出すことができるようになっている。
ところで、前述したように、ティシュペーパー束30aを構成するティシュペーパーの紙の方向は、ティシュペーパーの折り畳み部の延在方向と直交する方向に沿って横方向(CD方向)となるため、図6(b)に示すように、ティシュペーパーTを収納箱Bから引き出す際には、その引き出し方向は、ティシュペーパーTの横方向(CD方向)と沿うようになっている。
【0139】
次に、ティシュペーパー製品用二次原反ロールの製造設備及び製造方法のその他の形態を説明する。
〔第3のティシュペーパー製品用二次原反ロールの製造設備及び製造方法〕
図20に示すように、コンタクトエンボス手段54は、カレンダー手段52と第二次薬液塗布手段53との間に設置することもできる。このようなティシュペーパー製品用二次原反ロールの製造設備X3を用いてのティシュペーパー製品用二次原反ロールの製造方法は次のようになる。
図20に示すように、本形態に係るティシュペーパー製品用二次原反ロールの製造方法においては、プライ手段51で複数の一次原反ロールから繰り出される一次連続シート(図示例ではS11、S12)をその連続方向に沿って積層して積層連続シートS2とし(積層工程)、この積層連続シートS2に対して一対のカレンダー手段52で平滑化処理し(平滑化工程)、平滑化処理された積層連続シートS2に対してコンタクトエンボス手段54でコンタクトエンボスを付与し(コンタクトエンボス工程)、コンタクトエンボスを付与された積層連続シートS2に対して一対の第二次薬液塗布手段53で薬液を塗布し(薬液塗布工程)、スリット手段55によって積層連続シートS2をティシュペーパー製品の製品幅又はその複数倍幅となるようにスリットし(スリット工程)、次に、スリット工程でスリットされた積層連続シートS2を同軸で巻取ってティシュペーパー製品の製品幅又はその複数倍幅の複数の二次原反ロールRを、巻き取り手段56によって形成する。
なお、ティシュペーパー製品用二次原反ロールの製造設備X3で、薬液が塗布されないティシュペーパー製品を製造する場合、図20において二点鎖線で示すように、積層連続シートS2をコンタクトエンボス手段54からスリット手段55に直接移送し、第二次薬液塗布手段53を通さずに積層連続シートS2を流すだけで良い。
【0140】
〔第4のティシュペーパー製品用二次原反ロールの製造設備及び製造方法〕
図21に示すように、薬液塗布工程53は、コンタクトエンボス手段54は、プライ手段51とカレンダー手段52との間に設置し、カレンダー手段52を一段として第二次薬液塗布手段53とコンタクトエンボス手段54との間に設置することもできる。このようなティシュペーパー製品用二次原反ロールの製造設備X4を用いてのティシュペーパー製品用二次原反ロールの製造方法は次のようになる。
図21に示すように、本形態に係るティシュペーパー製品用二次原反ロールの製造方法においては、プライ手段51で複数の一次原反ロールから繰り出される一次連続シート(図示例ではS11、S12)をその連続方向に沿って積層して積層連続シートS2とし(積層工程)、この積層連続シートS2に対して上下方向に並設された一対の第二次薬液塗布手段53で薬液を塗布し(薬液塗布工程)、一対のカレンダー手段52で平滑化処理し(平滑化工程)、平滑化処理された積層連続シートS2に対してコンタクトエンボス手段54でコンタクトエンボスを付与し(コンタクトエンボス工程)、スリット手段55によって積層連続シートS2をティシュペーパー製品の製品幅又はその複数倍幅となるようにスリットし(スリット工程)、次に、スリット工程でスリットされた積層連続シートS2を同軸で巻取ってティシュペーパー製品の製品幅又はその複数倍幅の複数の二次原反ロールRを、巻き取り手段56によって形成する。
なお、ティシュペーパー製品用二次原反ロールの製造設備X4で、薬液が塗布されないティシュペーパー製品を製造する場合、図21において二点鎖線で示すように、積層連続シートS2をカレンダー手段52からコンタクトエンボス手段54に移送し、第二次薬液塗布手段53を通さずに積層連続シートS2を流すだけで良い。
【0141】
〔第5のティシュペーパー製品用二次原反ロールの製造設備及び製造方法〕
図22に示すように、一対のカレンダー手段52を上下方向に沿って配置し、且つ、一対の第二次薬液塗布手段53を上下方向に沿って配置することもできる。
このようなティシュペーパー製品用二次原反ロールの製造設備X5を用いてのティシュペーパー製品用二次原反ロールの製造方法は次のようになる。
図22に示すように、本形態に係るティシュペーパー製品用二次原反ロールの製造方法においては、プライ手段51で複数の一次原反ロールから繰り出される一次連続シート(図示例ではS11、S12)をその連続方向に沿って積層して積層連続シートS2とし(積層工程)、この積層連続シートS2に対して一対のカレンダー手段52で平滑化処理し(平滑化工程)、積層連続シートS2に対して一対の第二次薬液塗布手段53で薬液を塗布し(薬液塗布工程)、積層連続シートS2に対してコンタクトエンボス手段54でコンタクトエンボスを付与し(コンタクトエンボス工程)、スリット手段55によって積層連続シートS2をティシュペーパー製品の製品幅又はその複数倍幅となるようにスリットし(スリット工程)、次に、スリット工程でスリットされた積層連続シートS2を同軸で巻取ってティシュペーパー製品の製品幅又はその複数倍幅の複数の二次原反ロールRを、巻き取り手段56によって形成する。
なお、ティシュペーパー製品用二次原反ロールの製造設備X5で、薬液が塗布されないティシュペーパー製品を製造する場合、図22において二点鎖線で示すように、積層連続シートS2をカレンダー手段52からコンタクトエンボス手段54に直接移送し、第二次薬液塗布手段53を通さずに積層連続シートS2を流すだけで良い。
【実施例】
【0142】
次に、図1及び図11に示されるティシュペーパー製品用二次原反ロールX1の製造方法で製造された2プライ巻き取りの二次原反ロールRを用い、必要の組数分を上記のマルチスタンド式インターフォルダにセットし、ティシュペーパー製品(実施例)を製造した。
【0143】
<実施例、比較例及び参考例の形態>
実施例1は、ローターダンプニング方式による第一次薬液噴霧を行い、その後にフレキソ印刷方式による第二次薬液塗布を行なったものである。第一次薬液噴霧:片側当たり1.0g/m2としたものである。第二次薬液塗布:片側当たり1.0g/m2としたものである。したがって、2プライ合計での薬液付与量は4.0g/m2となる。
実施例2は、ローターダンプニング方式による第一次薬液噴霧を行い、その後にフレキソ印刷方式による第二次薬液塗布を行なったものである。第一次薬液噴霧:片側当たり0.6g/m2としたものである。第二次薬液塗布:片側当たり1.4g/m2としたものである。したがって、2プライ合計での薬液付与量は4.0g/m2となる。
実施例3は、ローターダンプニング方式による第一次薬液噴霧を行い、その後にフレキソ印刷方式による第二次薬液塗布を行なったものである。第一次薬液噴霧:片側当たり1.6g/m2としたものである。第二次薬液塗布:片側当たり0.4g/m2としたものである。したがって、2プライ合計での薬液付与量は4.0g/m2となる。
実施例4は、ノズル方式による第一次薬液噴霧を行い、その後にフレキソ印刷方式による第二次薬液塗布を行なったものである。第一次薬液噴霧:片側当たり1.0g/m2としたものである。第二次薬液塗布:片側当たり1.0g/m2としたものである。したがって、2プライ合計での薬液付与量は4.0g/m2となる。
実施例5は、ローターダンプニング方式による第一次薬液噴霧を行い、その後にグラビア印刷方式による第二次薬液塗布を行なったものである。第一次薬液噴霧:片側当たり1.0g/m2としたものである。第二次薬液塗布:片側当たり1.0g/m2としたものである。したがって、2プライ合計での薬液付与量は4.0g/m2となる。
比較例1は、二段階薬液付与を行なわないで、プライマシンでフレキソ印刷方式による一回だけの薬液塗布を行なったものである。塗布量は片側当たり2.0g/m2とし、2プライ合計での薬液付与量は4.0g/m2としたものである。
比較例2は、プライマシンでフレキソ印刷方式による第一次薬液塗布を、片側当たり1.0g/m2の塗布量(両面では2.0g/m2)で行なった後、続いてにフレキソ印刷方式による第二次薬液塗布を、片側当たり1.0g/m2の塗布量(両面では2.0g/m2)で行なった、二段階塗布方式によるものである。2プライ合計での薬液付与量は4.0g/m2としたものである。
【0144】
<他の条件>
原紙を構成するパルプは、NBKP30%、LBKP70%とした。また、クレープ率19%のものを使用した。各実施例及び各比較例については、同じ組成の薬液を、粘度が110mPa・s(40℃)となるように調製した。
参考例1は出願人が市販している非保湿系の汎用ティシュペーパー、参考例2は出願人が市販しているローションタイプのティシュペーパーであるが、参考例3及び参考例4は他社の市販品であるので、不明内容を含む。
【0145】
表中に示す各パラメーターは、以下のとおりである。
米坪・・・JIS P 8124(1998)に準じて測定した。2プライのティシュー製品の場合、2プライのシートの平均米坪を記載した。
紙厚・・・JIS P 8111(1998)の条件下で、ダイヤルシックネスゲージ(厚み測定器)「PEACOCK G型」(尾崎製作所製)を用いて測定されるものである(JIS P 8118(1998)に準じる)。
製品密度・・・製品の密度は、JIS P 8111 条件下において調湿させたティシュペーパー製品米坪を2倍した値(C)を、「PEACOCK G型」によるティシュペーパー(2プライ)での紙厚(D)で除した値で、単位をg/cm3、小数点3桁で表す。
乾燥引張強度・・・JIS P 8113(1998)の引張試験方法に準じて測定されるものである。
湿潤引張強度・・・JIS P 8135(1998)に準じて測定されるものである。
伸率・・・ミネベア株式会社製「万能引張圧縮試験機 TG−200N」を用いて測定されるものである。
ソフトネス・・・JIS L1096 E法に準じたハンドルオメータ法に基づいて測定されるものである。但し、試験片は100mm×100mmの大きさとし、クリアランスは5mmで実施した。1プライで縦方向、横方向の各々5回ずつ測定し、その全10回の平均値を小数点1桁とし、cN/100mmを単位として表した。
静摩擦係数・・・JIS P 8147(1998)に準じて次記の方法で測定されるものである。1プライにはがしたティシュペーパーを、紙の表が外側に来るようにアクリル板に張り付ける。2プライのまま100gのおもりにティシュペーパーを巻きつけ、アクリル板上のティシューに乗せる。アクリル板を傾け、おもりが滑り落ちる角度を測定する。角度測定は8回実施し、平均角度を算出し、そのタンジェント値を静摩擦係数とする。
MMD・・・静摩擦係数の平均偏差MMDである。MMDは滑らかさの指標の一つであり、数値が小さいほど滑らかであり、数値が大きいほど滑らかさに劣るとされる。なお、MMD値の測定方法としては、図23(a)に示すように、摩擦子212の接触面を所定方向(図23(a)における右斜め下方向)に20g/cmの張力が付与された測定試料であるティシュペーパー211の表面に対して25gの接触圧で接触させながら、張力が付与された方向と略同じ方向に速度0.1cm/sで2cm移動させる。このときの、摩擦係数を、摩擦感テスター KES−SE(カトーテック株式会社製)を用いて測定し、その摩擦係数を摩擦距離(移動距離=2cm)で除した値をMMD値とした。なお、摩擦子212は、直径0.5mmのピアノ線Pを20本隣接させてなり、長さ及び幅がともに10mmとなるように形成された接触面を有している。接触面には、先端が20本のピアノ線P(曲率半径0.25mm)で形成された単位膨出部が形成されている。なお、図23(a)には、摩擦子212を模式的に表し、図23(b)には、図23(a)における一点鎖線で囲まれた部分の拡大図を示すものとする。
水分率・・・JIS P 8111(1998)に準じて測定されるものである。
薬液含有量・・・薬液付与量とは、JIS P 8111の標準状態におけるティシュペーパーの単位面積に対し含まれる乾燥状態(絶乾)の薬液成分の含有量を示し、具体的には、付与した薬液中の水分以外の成分の含有量を示すものとする。このティシュペーパーの単位面積とは、プライされたシートを平面に垂直線上にある視点から見た面積であり、プライされた各シート、およびその表裏面の合計面積を意味しない。
薬液含有率・・・薬液付与率とは、JIS P 8111 条件下において調湿させた所定質量のティシュペーパー製品を分母(A)(g)とし、所定質量のティシュペーパー製品中に含まれる薬液中の水分を除いた質量(B)(g)を分子として、(B)を(A)で除した比率を(%)で表す。(薬液含有率%)=(B)÷(A)×100(%)
官能評価・・・実施例1〜5、比較例1、2及び参考例1〜4について、消費者87人を対象に、やわらかさ、なめらかさ、厚み感、しっとり感について下記の基準に基づく官能評価を行った。
なお、評価基準は、薬液が付与されていない非保湿系の汎用ティシュペーパー(比較例1)の成績をすべて「3」とし、「大変優れている」と感じたものについては「5」、「優れている」と感じたものについては「4」、「基準と同等」と感じたものについては「3」、「劣る」と感じたものについては「2」、「顕著に劣る」と感じたものについては「1」とした。さらに、薬液付与ティシュペーパーについては、ベタつき感の有無についても評価を行い、評価基準は、「ベタつき感が少ない」ものを「○」とし、「明らかにベタつき感がある」ものを「×」とした。
さらに、官能評価のばらつきとは、各官能評価が幅方向及び流れ方向で安定しているか否かを、シートの幅方向及び流れ方向において、前記消費者87人に供したサンプルの採取位置との相関で調べたものである。評価は、比較例1における各官能評価の幅方向及び流れ方向での安定性を基準にし、比較例1の場合を「1」、優れているを「2」、顕著に優れているを「3」としたものである。
【0146】
【表1】
【0147】
【表2】
【0148】
【表3】
【0149】
【表4】
【0150】
【表5】
【0151】
【表6】
【0152】
【表7】
【0153】
結果を表中に記載をしていないが、実施例1〜実施例5のいずれにおいても、製造現場において、比較例2のフレキソ方式の二段塗布と比較して、紙粉の発生が少なく、安定した製造が可能であることが判った。また、実施例と比較例1との比較においては、実施例の方が、官能評価のばらつきが少ないことが判る。比較例2のフレキソ方式の二段塗布においても官能評価のばらつきが少ないものの、比較例2のフレキソ方式の二段塗布との比較で実施例をみると、「厚み感」において高い評価となる。なお、実施例1〜5内において比較すると、第一次薬液噴霧手段及び第二次薬液塗布手段での付与量は、0.5〜1.5g/m2とするのが望ましいことが判る。
【0154】
先の説明から明らかなように、本明細書及び図面は、以下の発明も開示している。
〔発明1〕
一次原反ロールから連続的にティシュペーパー製品用の複数の二次原反ロールを製造するティシュペーパー製品用二次原反ロールの製造方法であって、
複数の一次原反ロールから繰り出される一次連続シートをその連続方向に沿って積層して積層連続シートとする積層手段と、
前記連続シートのそれぞれに対して薬液を噴霧状態で付与する第一次薬液噴霧手段と、
その後に、それぞれの連続シートに対して薬液をフレキソ印刷方式又はグラビア印刷方式によって塗布する第二次薬液塗布手段と、
積層連続シートをティシュペーパー製品の製品幅又はその複数倍幅となるようにスリットするスリット手段と、
スリットされた各積層連続シートを同軸で巻取ってティシュペーパー製品の製品幅又はその複数倍幅の複数の二次原反ロールを形成する巻取り手段と、を有することを特徴とするティシュペーパー製品用二次原反ロールの製造装置。
【0155】
〔発明2〕
前記第一次薬液噴霧手段が、前記積層手段の後であって、且つ、前記スリット手段の前に行われる、発明1に記載のティシュペーパー製品用二次原反ロールの製造装置。
【0156】
〔発明3〕
前記積層手段と前記第一次薬液噴霧手段との間に、カレンダーにて平滑化処理する平滑化手段を有する、発明2に記載のティシュペーパー製品用二次原反ロールの製造装置。
【0157】
〔発明4〕
前記第二次薬液塗布手段と前記スリット手段との間に、前記積層連続シートに対して層間剥離を防止するライン状のコンタクトエンボスを施すコンタクトエンボス手段を有する、発明2に記載のティシュペーパー製品用二次原反ロールの製造装置。
【0158】
〔発明5〕
前記第一次薬液の付与がノズル式噴霧方式によるものである、発明1に記載のティシュペーパー製品用二次原反ロールの製造装置。
【0159】
〔発明6〕
前記第一次薬液の付与がローターダンプニング噴霧方式によるものである、発明1に記載のティシュペーパー製品用二次原反ロールの製造装置。
【0160】
〔発明7〕
前記発明のいずれか1項の発明によって得られた前記二次原反ロールを多数用意し、これらをマルチスタンド式インターフォルダにおいてライン方向に沿って配置し、各二次原反ロールから繰り出される複数の二次連続シートをその連続方向に沿って移送すると共に、その移送過程で折畳みながら積み重ね、その後、所定枚数の積層シートを所定長さ切断してティシュペーパー束とし、この積層を収納箱内に収納することを特徴とするティシュペーパー製品の製造装置。
【産業上の利用可能性】
【0161】
本発明は、マルチスタンド式インターフォルダで用いられるティシュペーパー製品用二次原反ロールの製造及びマルチスタンド式インターフォルダを用いたティシュペーパー製品の製造に適用できるものである。
【符号の説明】
【0162】
40・・・第一次薬液塗布手段(第一次薬液塗布工程)
51・・・プライ手段(積層工程)
52・・・カレンダー手段(平滑化工程)
53・・・第二次薬液塗布手段(第二次薬液塗布工程)
54・・・コンタクトエンボス手段(コンタクトエンボス工程)
55・・・スリット手段(スリット工程)
56・・・第2巻取り手段(二次原反ロール巻取り工程)
115・・・ヤンキードライヤー(乾燥工程)
119・・・第1巻取り手段(第1巻取り工程)
40・・・薬液噴霧手段(薬液噴霧工程)
190・・・搾水手段(搾水工程)
W・・・湿紙
S1・・・乾紙
S11、S12・・・一次連続シート
S2・・・積層連続シート
JR・・・一次原反ロール
R・・・二次原反ロール
【技術分野】
【0001】
本発明は、マルチスタンド式インターフォルダに供するティシュペーパー製品用二次原反ロールの製造方法及びティシュペーパー製品の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ティシュペーパーの箱詰め製品は、一般的に、インターフォルダ(折り畳み設備)によって複数の連続するティシュペーパーを折り畳みながら積み重ね、所定の長さに切断するなどしてティシュペーパー束を得、このティシュペーパー束を収納箱(ティシュカートン)内に収納することによって製造される。
このようなインターフォルダの例として、下記特許文献1、2に開示されるようなマルチスタンド式(多連式)インターフォルダや、下記特許文献3、4に開示されるようなロータリー式インターフォルダなどが知られている。
マルチスタンド式インターフォルダを用いた製造方法の従来例としては、次のようなものがある。すなわち、抄紙設備において薄葉紙を抄造して巻き取ることで一次原反ロール(一般にジャンボロールともいわれている)を製造し、次いで、この一次原反ロールをプライマシンにセットし、複数の一次原反ロールから繰り出した一次連続シートを重ね合わせて巻き取ると共にスリット(幅方向にティシュペーパー製品の製品幅又はその複数倍幅に分割)し、複数のプライからなる二次原反ロールを製造する。
プライマシンで製造された二次原反ロールは、プライマシンから取り出された後、必要な数だけマルチスタンド式インターフォルダにセットされる。次いで、二次原反ロールから二次連続シートを繰り出して、折畳機構部へ送り込み、ここで折り畳みながら積み重ね、その後、所定の長さに切断されてティシュペーパー束とし、収納箱内に収納する。
このようなマルチスタンド式インターフォルダを用いた製造方法は、他の折り畳み設備を用いた製造方法に比べて、多数(通常80〜100基)の折畳み機構を有しているため生産性が高いという利点を有している。
【0003】
ところで、近年では、ティシュペーパー製品に保湿剤や香料などの薬液(通常「ローション薬液」とも呼ばれる)を塗布されたものの需要が拡大しており、例えば下記特許文献5〜7に開示されるような製造方法や設備が種々提案されている。このようなローション薬液を含有させたティシュペーパー製品は、主にロータリー式インターフォルダで製造されるのが一般的であった(例えば下記特許文献5)。しかし、ロータリー式インターフォルダは、加工方向と垂直方向に折畳みと裁断を同時に行なうため、生産性が低いという欠点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許4052048号公報(特公昭55−1215号公報)
【特許文献2】特開2006−240750号公報
【特許文献3】特開昭61−37668号公報
【特許文献4】特開平5−124770号公報
【特許文献5】特開2004−322034号公報
【特許文献6】特表2008−525103号公報
【特許文献7】特開2008−264564号公報
【特許文献8】特開2008−245780号公報
【特許文献9】特開2008−183127号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明者等は、薬液が付与されたティシュペーパー製品を、ロータリー式インターフォルダに比して生産性の高いマルチスタンド式インターフォルダを用いた製造方法で製造することを考えた。
しかし、マルチスタンド式インターフォルダを用いた製造方法で製造する場合、プライマシンやマルチスタンド式インターフォルダとは別に薬液付与工程を設けると、原反の移送の手間や多大な設備コストがかかってしまうという問題がある。また、薬液付与工程をマルチスタンド式インターフォルダ内に設けると、薬液を付与するティシュペーパー製品を製造するラインと、薬液を付与しないティシュペーパー製品を製造するラインとを別々に設ける必要があった。
【0006】
そこで、本発明の主たる課題は、マルチスタンド式インターフォルダで利用されるティシュペーパー製品用二次原反ロールを製造するにあたり、大幅な設備改造を要することなく、既設備のマイナーな改造で足りる生産性に優れたティシュペーパー製品用二次原反ロールの製造方法を提供することにある。他の課題は、後述の本発明の効果の欄の説明によって明らかになろう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための手段は次記のとおりである。
〔請求項1記載の発明〕
一次原反ロールから連続的にティシュペーパー製品用の複数の二次原反ロールを製造するティシュペーパー製品用二次原反ロールの製造方法であって、
複数の一次原反ロールから繰り出される一次連続シートをその連続方向に沿って積層して積層連続シートとする積層工程と、
前記連続シートのそれぞれに対して薬液を噴霧状態で付与する第一次薬液噴霧工程と、
その後に、それぞれの連続シートに対して薬液をフレキソ印刷方式又はグラビア印刷方式によって塗布する第二次薬液塗布工程と、
積層連続シートをティシュペーパー製品の製品幅又はその複数倍幅となるようにスリットするスリット工程と、
スリットされた各積層連続シートを同軸で巻取ってティシュペーパー製品の製品幅又はその複数倍幅の複数の二次原反ロールを形成する巻取り工程と、を有することを特徴とするティシュペーパー製品用二次原反ロールの製造方法。
【0008】
〔請求項2記載の発明〕
前記第一次薬液噴霧工程が、前記積層工程の後であって、且つ、前記スリット工程の前に行われる、請求項1に記載のティシュペーパー製品用二次原反ロールの製造方法。
【0009】
〔請求項3記載の発明〕
前記積層工程と前記第一次薬液噴霧工程との間に、カレンダーにて平滑化処理する平滑化工程を有する、請求項2に記載のティシュペーパー製品用二次原反ロールの製造方法。
【0010】
〔請求項4記載の発明〕
前記第二次薬液塗布工程と前記スリット工程との間に、前記積層連続シートに対して層間剥離を防止するライン状のコンタクトエンボスを施すコンタクトエンボス工程を有する、請求項2に記載のティシュペーパー製品用二次原反ロールの製造方法。
【0011】
〔請求項5記載の発明〕
前記第一次薬液の付与がノズル式噴霧方式によるものである、請求項1に記載のティシュペーパー製品用二次原反ロールの製造方法。
【0012】
〔請求項6記載の発明〕
前記第一次薬液の付与がローターダンプニング噴霧方式によるものである、請求項1に記載のティシュペーパー製品用二次原反ロールの製造方法。
【0013】
〔請求項7記載の発明〕
前記請求項のいずれか1項の請求項によって得られた前記二次原反ロールを多数用意し、これらをマルチスタンド式インターフォルダにおいてライン方向に沿って配置し、各二次原反ロールから繰り出される複数の二次連続シートをその連続方向に沿って移送すると共に、その移送過程で折畳みながら積み重ね、その後、所定枚数の積層シートを所定長さ切断してティシュペーパー束とし、この積層を収納箱内に収納することを特徴とするティシュペーパー製品の製造方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る製造方法におけるスリット工程でティシュペーパー製品の製品幅又はその複数倍幅となるよう製造されたティシュペーパー製品用二次原反ロールは、この後段でマルチスタンド式インターフォルダに多数セットされる。次いで、マルチスタンド式インターフォルダにセットされた二次原反ロールから二次連続シートを繰り出して、折畳機構部へ送り込み、ここで折り畳みながら積み重ね、その後、所定の長さに切断されてティシュペーパー束とし、収納箱内に収納する。
【0015】
本発明においては、一次原反ロールからティシュペーパー製品用二次原反ロールを連続的に製造する、いわゆるプライマシン内に、第一次薬液噴霧工程及びフレキソ印刷方式又はグラビア印刷方式による第二次薬液塗布工程を組み込んで、連続シートに薬液を塗布するようにした。したがって、大幅な設備改造を要することなく、既設の抄紙設備及びプライマシンのマイナーな改造で足りるので、投資設備費が少ないもので足りる利点がある。
【0016】
しかも、マルチスタンド式インターフォルダ内に薬液付与又は塗布工程を設けるのではなく、プライマシン内に、薬液噴霧工程及び薬液塗布工程を組み込むものであるために、薬液を塗布したティシュペーパー製品と、薬液を塗布しないティシュペーパー製品との切り換えは、単にティシュペーパー製品用二次原反ロールの薬液塗布の有無によって切り換えればよいのであるから、生産性に優れたものである。
【0017】
また、マルチスタンド式インターフォルダ内に薬液塗布工程を設ける場合には、たとえば積層連続シートの数分の多数の薬液塗布装置を設けることが考えられるが、これでは設備費が嵩むばかりでなく、その設置スペースの確保に困難を極め、さらに各装置での塗布量の正確な管理は実質的に無理である。この形態に比較して本発明の製造方法は、設備費及び塗布量管理などの点が優れた利点をもたらすものである。
【0018】
ところで、マルチスタンド式インターフォルダによるティシュペーパーの製造工程では、マルチスタンド式インターフォルダの加工能力に合わせてプライマシンの加工能力を設計するため、プライマシンの加工速度は700〜1100m/分が一般的である。その場合には、プライマシンにおいても、生産速度のマッチングのために同様の700〜1400m/分程度の高速でプライ加工を行なうことが必要となる。かかる高速のプライマシンにおいて、たとえば薬液を、グラビア、フレキソ、ロール塗工などの方式で塗布する場合、主に高速で走行するシートと刷版ロールとの摩擦で紙粉が大量の発生し、塗工薬液中に混入し、その濃度が変化し、塗布量のバラツキを招く。
【0019】
特に、対象のシートに薬液を、ある程度多い塗布量をもって塗布しょうとする場合、一回の塗布で目的の塗布量を得ようとすると、たとえばフレキソ印刷の例ではアニロックスロールの線数を多くしかつセル容積率を高くする必要があるが、かかるアニロックスロールの使用条件は、より一層、塗工薬液中に混入した前記紙粉によってアニロックスロールの刷版の目詰まり現象を招き易いものとなり、その結果、塗布量のバラツキを招きかつ安定した運転が困難となる。
【0020】
そこで、薬液を2回に分けてシートに付与する形態を採ることにより、1回当たりの塗布量を少なくし、結果として、アニロックスロールの目詰まり現象を避けることが考えられる。この薬液複数回塗布の形態は、理論的には、アニロックスロールの目詰まり現象を防止するうえで効果的なはずであるが、現実には、シートと刷版ロールとの摩擦個所が2個所に増えるので、紙粉の発生量が多くなる傾向があり、現実には、アニロックスロールの目詰まり現象を避けることが困難である。
【0021】
他方、薬液を2回に分けてシートに付与する形態は、1回目に塗布した幅方向の塗布のバラツキを2回目の塗布のバラツキで相殺することができ、結果として、幅方向にバラツキの少ない塗布形態となる利点がある。
【0022】
しかし、刷版ロールと圧胴ロールとでシートを圧着する形態で薬液を塗布するので、シートの繊維間隙が潰され、製品とした場合の嵩が出にくい。しかも、この傾向は、薬液を2回に分けてシートに付与する形態ではより顕著となる。
【0023】
本発明においては、第一次薬液噴霧工程と第二次薬液塗布工程との2回塗布を行なっているので、1回目に塗布した幅方向の塗布のバラツキを2回目の塗布のバラツキで相殺することができ、結果として、幅方向にバラツキの少ない塗布形態となる。
しかも、第一次薬液付与を薬液噴霧によって行なうようにしている。薬液噴霧ではシートの圧着形態での摩擦が生じないで、紙粉の発生がなく、安定した塗布が可能である。また、繊維間隙が潰すことがないので、嵩高のティシュペーパーを得ることができる。
【0024】
第二次薬液塗布工程における薬液塗布は、フレキソ印刷方式又はグラビア印刷方式によって行われるようになっている。フレキソ印刷方式は、フレキソ刷版ロールが樹脂製であり加工速度が高速であってもクレープ紙の凹凸に対応し塗布量を安定させることができるという利点や、アニロックスロールの線数やセル容量、フレキソ刷版ロールの線数や頂点面積率を変えることで、容易に幅広い薬液の粘度に対応し塗布量を安定させることができるなどの利点を有している。
なお、第二次薬液塗布工程における薬液塗布は、特にドクターチャンバーを用いたフレキソ印刷方式とすることが好ましい。ドクターチャンバー形式は、アニロックスロール(転写用凹ロール)の表面に直接、薬液を塗工し皮膜を作るもので、薬液に紙粉やエアーが混入しにくく薬液の物性が安定しやすい特徴があり、且つ、アニロックスロールから転写される薬液が均一であるため、低量塗布の場合であっても好適に塗布することができる。
グラビア印刷方式はフレキソ印刷方式とほぼ同様の塗布量及び幅方向に塗布安定性を示すので、グラビア印刷方式も採用できる。
【0025】
なお、第二次薬液塗布工程における薬液塗布を、フレキソ印刷方式又はグラビア印刷方式に換えて、ロール塗工方式とすることも考えられるが、幅方向の塗布量のバラツキを生じ、目標の製品品質を得難い。また、最初にフレキソ印刷方式又はグラビア印刷方式による薬液塗布工程を、その後に薬液噴霧工程を設けることも考えられが、薬液噴霧は印刷方式による薬液塗布よりバラツキが大きく、均等に塗布した薬液層上にバラツキ大きい薬液の付与を行なうことになるので、幅方向の均質性を損なう要因となるので、採用することができない。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】抄紙した後、一次原反ロールを得る製造設備及び製造方法を示す概略図である。
【図2】マルチスタンド式インターフォルダの一例を示す概略説明図であり、ライン正面から見た状態を示している。
【図3】マルチスタンド式インターフォルダの一例を示す概略説明図であり、ラインの横断で見た状態を示している。
【図4】マルチスタンド式インターフォルダの一例を示す概略説明図であり、ライン本体のみを正面から見た状態を示している。
【図5】折り畳まれたティシュペーパーの縦断面図である。
【図6】(a)ティシュペーパー束を収納箱に収納している様子を示す図である。(b)収納箱に収納されたティシュペーパーの取出す様子を示す一部破断図である。
【図7】折り板に関する部位の要部拡大斜視図である。
【図8】二次連続シート(ティシュペーパー)の折り畳み方を示す要部拡大斜視図である。
【図9】二次連続シート(ティシュペーパー)の折り畳み方を示す要部拡大斜視図である。
【図10】二次連続シート(ティシュペーパー)の折り畳み方を示す要部拡大斜視図である。
【図11】二次原反ロールの製造設備、製造方法を示す概略図である。
【図12】図11で示す薬液塗布手段周辺の要部拡大図である。
【図13】コンタクトエンボス手段によって積層連続シートにコンタクトエンボスを付与している様子を示す図である。
【図14】薬液供給装置の一例を示す概略構成図である。
【図15】図14における薬液供給装置の導出部を説明するための模式図である。
【図16】薬液供給装置のその他の導出部を説明するための模式図である。
【図17】薬液供給装置のその他の導出部を説明するための模式図である。
【図18】図14に示される実施形態の薬液供給装置で用いられるドクターチャンバーの構造を説明する図であって、(A)は2つの導入部と1つの導出部を有する構造を示し、(B)は3つの導入部と2つの導出部を有する構造を示し、(C)は導入部及び導出部がそれぞれ同数存在する構造を示している。
【図19】その他の二次原反ロールの製造設備、製造方法を示す概略図である。
【図20】その他の二次原反ロールの製造設備、製造方法を示す概略図である。
【図21】その他の二次原反ロールの製造設備、製造方法を示す概略図である。
【図22】その他の二次原反ロールの製造設備、製造方法を示す概略図である。
【図23】図12で示される薬液塗布手段を他のものに置換した状態を示す図である。
【図24】積層連続シート(ティシュペーパー)の構造を示す模式図である。(A)薬液塗布前のMD方向断面図、(B)薬液浸透工程前の上面図、(C)I−I矢視図。
【図25】積層連続シート(ティシュペーパー)の表面凹凸構造を示す模式図である。(A)薬液塗布前、(B)薬液塗布後。
【図26】薬液浸透工程を示す模式図である。
【図27】ティシュペーパーのMMD値の測定方法を示す図である。
【図28】図1で示す薬液噴霧手段周辺の要部拡大図である。
【図29】薬液噴霧手段の他の例を示す概略構成図である。
【図30】薬液噴霧手段の他の例を示す概略構成図である。
【図31】図11に示す例における第一次薬液噴霧手段による薬液噴霧状態の部分拡大概略説明図である。
【図32】グラビア薬液塗布手段例の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の一実施形態について添付図面を参照しながら詳説する。
〔一次原反ロールの製造設備・方法〕
一次原反ロールの製造設備及び製造方法の一例を、図1を参照しつつ説明する。
図1に示すように、予め調整された紙料を、ヘッドボックス301からワイヤーパート311に供給することで湿紙Wを形成し(フォーミング工程)、この湿紙Wを、プレスパート321のフェルト322に転送した後、一対の脱水ロール323、324によって挟持することで脱水する(脱水工程)。次いで、この脱水された湿紙Wを、ヤンキードライヤーフード332で一部覆われたヤンキードライヤー331の表面に付着させて乾燥し、ドクターブレード333によって引き剥がして乾紙S1とする(乾燥工程)。
そして、この乾紙S1を、案内ロール343、344により案内させながら、ワインディングドラム342を有する第1巻取り手段341によって、乾紙S1の裏面が一次原反ロールJRの軸側に対向するよう乾紙S1を巻き取ることで一次原反ロール(通称「ジャンボロール」)JRを形成する(第1巻取り工程)。なお、乾紙S1(後述の一次連続シートS11、S12)の裏面とは、ヤンキードライヤー331のシリンダと接していた面の反対側の面(反ドライヤー面)のことを意味する。
【0028】
上記の抄紙に際しては、紙料に、例えば分散剤、乾燥紙力増強剤、湿潤紙力増強剤、柔軟剤、剥離剤、接着剤、苛性ソーダ等のpH調整剤、消泡剤、防腐剤、スライムコントロール剤、染料、などの適宜の薬品を添加することができる。
【0029】
ドクターブレード117により引き剥がされた乾紙S1に対して、カレンダー手段(図示せず)によって平滑化処理を施すこともできる。
【0030】
〔ティシュペーパー製品用二次原反ロールの製造設備〕
上述の製造設備・方法などで製造された一次原反ロールJRを、図11に示すように、本発明に係るティシュペーパー製品用二次原反ロールの製造設備X1(プライマシンX1)に持ち込み、少なくとも2つ以上一次原反ロールJR、JRをセットするものである。
プライマシンX1は、これらの一次原反ロールJR、JRから繰り出した一次連続シート(図示例ではS11、S12)を、その連続方向に沿って積層して、図示例では2プライに積層した連続シートS2とするプライ手段51を有している。
【0031】
図示11に示す例では、プライ手段51は、一対の一次原反ロールJRから繰り出される一次連続シートS11、S12の表面が、それぞれ積層連続シートS2の表面となるよう構成されているが、一次連続シートS11、S12の裏面がそれぞれ積層連続シートS2の表面となるよう構成することもでき、さらに、一次連続シートS11、S12のどちらか一方の裏面が積層連続シートS2の表面となり、他方の表面が積層連続シートS2の表面となるよう構成することもできる。その中でも特に、一次連続シートS11、S12(乾紙S1)の表面は乾燥時にヤンキードライヤー331の艶出し面に接していることから裏面と比較して毛羽立ちが少なく滑らかで肌触りが良いため、一次連続シートS11、S12(乾紙S1)の表面が、それぞれ積層連続シートS2の表面となるよう構成することが最も好ましい。
【0032】
プライ手段51の後段には、プライ手段51から流れてくる積層連続シートS2に対して薬液を塗布する、一対の第一次薬液噴霧手段40A、40B、その下流に第二次薬液塗布手段53A、53Bが設けられており、これらの第二次薬液塗布手段53A、53Bの後段には、並設された複数のカッターから成り、第二次薬液塗布手段53A、53Bから移送されてきた積層連続シートS2をティシュペーパー製品の製品幅又はその複数倍幅となるようにスリットするスリット手段55が配置されている。そして、スリット手段55の後段には、スリット手段55によってスリットされた積層連続シートS2を同軸で巻取ってティシュペーパー製品の製品幅又はその複数倍幅の複数の二次原反ロールRを形成する巻取り手段56が設けられている。ここで、この巻取り手段56は、スリットされた各積層連続シートS2を二次原反ロールRに案内するための2つのワインディングドラム56Aを有していて、これら2つのワインディングドラム56Aが二次原反ロールRの外周面に接して積層連続シートS2を案内している。
【0033】
(カレンダー手段)
ティシュペーパー製品用二次原反ロールの製造設備X1には、積層連続シートS2をカレンダー処理するカレンダー手段52を一つ以上設けることもできる。
カレンダー手段52におけるカレンダーの種別は、特に限定されないが、表面の平滑性向上と紙厚の調整の理由からソフトカレンダー又はチルドカレンダーとすることが好ましい。ソフトカレンダーとは、ウレタンゴム等の弾性材を被覆したロールを用いたカレンダーであり、チルドカレンダーとは金属ロールからなるカレンダーのことである。
カレンダー手段52の数は、適宜変更することができる。複数設置すれば加工速度が速くとも十分に平滑化できるという利点を有する一方、スペース的に不利となる。
二つ以上のカレンダー手段52を設置する場合、水平方向、上下方向、或いは斜め方向に並設することができ、また、これらの設置方向を組み合わせて配置しても良い。水平方向に並設すると、抱き角度を小さくなるため加工速度が高速とすることができ、上下方向に並設すると設置スペースを小さくすることができる。なお、ここで言う抱き角度とはロールの軸中心から見てシートが接している間(軸と直交する断面の円弧の一部)の角度を意味している(以下同じ)。
カレンダー処理条件におけるカレンダー種別、ニップ線圧、ニップ数なども制御要因として抄紙を行うようにし、これらの制御要因は、求めるティシュペーパーの品質すなわち紙厚や表面性によって適宜変更することが好ましい。
また、カレンダー手段52の設置位置は特に限定されないが、プライ手段51の後段であって且つ第一次薬液噴霧手段40A、40Bの前段が好ましい。第二次薬液塗布手段53A、53Bの後段であって且つコンタクトエンボス手段54の前段とすることができるが、薬液が塗布された繊維の間隙を圧着することになるので、嵩高を阻害する方向に作用するので、好ましい形態ではない。
【0034】
(薬液噴霧手段)
第一次薬液噴霧手段40A、40Bとしては特に限定されないが、後に図示をもって説明する、ノズル式噴霧方式による場合のほか、ローターダンプニング噴霧方式によってもよい。
このうち、ノズル式噴霧装置における噴霧用ノズルの型式としては、環状に噴霧する空円錐型ノズル、円形状に噴霧する充円錐型ノズル、正方形状に噴霧する充角錐型、充矩型ノズル、扇型ノズル等が挙げられ、薬液が乾紙S2の幅方向に対して均一に噴霧されるように、ノズル径、ノズル数、ノズル配列パターン、ノズル配置数、あるいは噴霧距離、噴霧圧力、噴霧角度、および噴霧液の濃度、粘度などを適宜選択して使用することができる。
【0035】
また、ノズル式噴霧装置において霧化する方法については、一流体方式、または二流体方式の2種類の方式を選択して使用することができる。このうち一流体噴霧方式は、噴霧する薬液に対して圧搾空気を用いて直接圧力をかけてノズルから霧滴噴射する、または噴出口付近のノズル側面に開けた微細な穴からノズル内に空気を吸引して霧滴噴射する方式である。また、二流体噴霧方式は、ノズル内部で圧搾空気を噴霧する液体と混合、微粒化する内部混合型、ノズル外部で圧搾空気を噴霧する液体と混合、微粒化する外部混合型、微霧化した霧滴粒子を相互に衝突させて、霧滴粒子をさらに均質化・微粒子化する衝突型等の方式が挙げられる。
【0036】
他方、ローターダンプニング塗布装置については、高速回転する円盤上に噴霧する液を送り出し、円盤の遠心力によって液を微霧滴化する装置であり、円盤の回転数変更によって霧滴粒子径の制御を行い、円盤上への送液量変更によって噴霧液量(付与量)の制御を行なうものである。ローターダンプニング塗布装置は、少ない量の噴霧液量を霧滴の飛散を抑えつつ、紙表面に均一に塗布することができ、かつ噴霧速度や霧の粒子径等の調整が容易である利点がある。
【0037】
薬液を乾紙S2表面に均一に噴霧付与するためには、霧化された薬液の霧滴粒子径はできる限り微小であることが好ましい。しかしながら、霧滴が細かくなりすぎると噴霧した空気の跳ね返りや乾紙S2表面に随伴する空気などによって霧滴が押し流され、特に乾紙S2の走行速度が速い場合などにおいては、霧滴が乾紙S2表面に付着しにくくなる。このため、噴霧付与方式においては噴霧距離、噴霧圧力、噴霧角度、噴霧速度を、加えて二流体方式の場合には、噴霧用の薬液と圧搾空気の混合比、および薬液の濃度や粘度等を適宜調節し、付与条件に適した粒子径に調節することができ、さらに噴霧時に随伴空気の影響が大きい場合は、随伴空気を除去するための吸引装置や邪魔板(整流板)等の設置、および噴霧ノズル先端に高電圧を加えて霧滴粒子を帯電させて、顔料塗被紙への霧適の付着性を向上させる荷電電極(静電噴霧方式)などを追加してもよい。
乾紙S2表面に塗布されずにミストとして浮遊している霧滴粒子は、吸引・回収して再度噴霧することができる。
【0038】
図28には、ノズル式噴霧方式、特に二流体方式の薬液噴霧手段40A、40B例を示した。この薬液噴霧手段(装置)40A、40Bは、中心に薬液通路40aが、その周囲にエアー通路40bが形成され、薬液通路40aの先端から噴出された薬液を、エアー通路40bから吐出されたエアーにより微霧化するものであり、ほぼ円錐形状に薬液を噴霧するようにしたものである。40cは外部の保護ケーシングであり、紙粉などからノズルを保護すると共に、必要によりパージエアー通路40dを通すエアーによりノズルの清掃を行なうことができるようにしたものである。この種の薬液噴霧手段40A、40Bは乾紙S2の幅方向に一つ又は複数間隔を置いて設けることができる。
【0039】
前述のように噴霧した薬液の跳ね返りや乾紙S2表面に随伴する空気などによって霧滴が押し流され、特に乾紙S2の走行速度が速い場合などにおいては、霧滴が乾紙S2表面に付着しにくくなる。そこで、必要ならば、図29に示すように、一流体方式又は二流体方式の薬液噴霧手段(噴霧ノズル)40A、40Bの周囲から、ケーシング40eに形成したエアー供給路40fから噴出させるエアーにより、薬液噴霧手段(噴霧ノズル)40A、40Bからの噴霧薬液を取り囲むと薬液が乾紙S2に好適に付与することができる。
【0040】
図30には、ローターダンプニング塗布装置40Xの例を示した。これは必要により設けられる覆い収納室40p内に、回転ローター40oを設け、回転ローター40oの噴出口40qから薬液を乾紙S2に噴霧付与するようにしたものである。
【0041】
第一次薬液噴霧手段40A、40Bでの乾紙S2対する薬液の付与量は、0.5〜1.5g/m2とするのが望ましく、より好ましくは0.7〜1.2g/m2とされる。第二薬液塗布手段53A、53Bでの薬液の付与量も、0.5〜1.5g/m2とするのが望ましく、より好ましくは0.7〜1.2g/m2とされる。したがって、1プライに対し、合計で1.0〜3.0g/m2とするのが望ましい。2プライの製品を得る場合には、2プライ合計で2.0〜6.0g/m2とするのが望ましいが、特には2.5〜5.0g/m2とするが望ましい。第一次と第二次との間での薬液付与量のバランスを上記の比率とすることによって、前述の本発明の効果がより顕著に表われるのである。
なお、第一次薬液噴霧手段40A、40Bと、第二薬液塗布手段53A、53Bとの間で、塗布量に差があっても、塗布後に二次原反ロールRとして保管された後、折り加工されるまでの時間(8時間以上)内に、プライ相互が接していることから、次第に薬液が浸透拡散し、両者の薬液付与量が均等化していきプライ間の付与量差は小さくなる。
【0042】
(薬液)
本発明で使用する薬液は、親和性を図るうえで、第一次薬液噴霧手段40A、40B及び第二次薬液塗布手段53A、53Bで共通のものが好ましい。
第二次薬液塗布手段53A、53Bにより薬液を高速塗布する観点から、粘度が40℃で1〜700mPa・s、特に50〜400mPa・s(40℃)とするのが好ましい。1mPa・sより小さいとアニロックスロールや刷版ロール等のロール上で薬液が飛散しやすくなり、逆に700mPa・sより大きいと各ロールや連続シートへの塗布量をコントロールしにくくなる傾向がある。
【0043】
薬液は、特に水系のものが望ましく、その成分としてポリオールを70〜90%、水分を1〜15%、機能性薬品を0.01〜22%含むものが好ましい。
ポリオールとしてはグリセリン、ジグリセリン、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ポリエチレングリコール、およびその誘導体等の多価アルコール、ソルビトール、グルコース、キシリトール、マルトース、マルチトール、マンニトール、トレハロース等の糖類を含む。
【0044】
機能性薬剤としては、柔軟剤、界面活性剤、無機および有機の微粒子粉体、油性成分などがある。柔軟剤、界面活性剤はティシューに柔軟性を与えたり表面を滑らかにしたりする効果があり、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤及び両性イオン界面活性剤を適用する。無機および有機の微粒子粉体は表面を滑らかな肌触りとする。油性成分は滑性を高める働きがあり、流動パラフィン、セタノール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール等の高級アルコールを用いることができる。
【0045】
また機能性薬剤としてポリオールの保湿性を維持させる薬剤として、親水性高分子ゲル化剤、コラーゲン、加水分解コラーゲン、加水分解ケラチン、加水分解シルク、ヒアルロン酸若しくはその塩、セラミド等の1種以上を任意の組合せ等の保湿剤を加えることができる。
【0046】
また、機能性薬剤として、香料、各種天然エキス等のエモリエント剤、ビタミン類、配合成分を安定させる乳化剤、薬液の発泡を抑え塗布を安定させるための消泡剤、防黴剤、有機酸などの消臭剤を適宜配合することができる。さらには、ビタミンC、ビタミンEの抗酸化剤を含有させてもよい。
【0047】
上記成分のうち、グリセリン、プロピレングリコール等の多価アルコールを主成分とすることが、薬液の粘度、塗布量を安定させる上で好ましい。
薬液塗布時の温度は30℃〜60℃、好ましくは35℃〜55℃とすることが好ましい。
【0048】
また、積層連続シートS2を構成する各一次連続シートのクレープ率に差異を設ける場合、クレープ率の高い方の一次連続シート側(図示例では一次連続シートS11側)により多くの薬液を塗布することも提案される。例えば、図11及び図24に示される例においては、2つの第二次薬液塗布手段のうち、一次連続シートS11に直接薬液を塗布する第二次薬液塗布手段53Bの方が、他方の第二次薬液塗布手段53Aよりも多くの薬液を塗布するのが望ましい。
【0049】
このように、第二薬液塗布手段53A、53B相互間で塗布量に差があっても、塗布後に二次原反ロールRとして保管された後、折り加工されるまでの時間(8時間以上)内に、プライ相互が接していることから、次第に薬液が浸透拡散し、両者の薬液付与量が均等化していきプライ間の付与量差は小さくなる。
【0050】
図24(A)は薬液塗布前の2プライに積層された積層連続シートS2の断面図である(MD方向に平行に切断した断面図)。2プライに積層された積層連続シートS2の両面に薬液を塗布するにあたり、両面の薬液量に差異を設け、図中においては一次連続シートS11の側に薬液を多く塗布する。薬液塗布後、積層連続シートS2が伸長しきる前に、コンタクトエンボスCEにより積層を一体化し、スリット手段55により製品幅にカットする(図24(B))。その後、積層連続シートS2を巻取り手段56で巻き取り、薬液を浸透させるため静置される。第二次薬液塗布手段53で薬液を塗布された積層連続シートS2を構成する一次連続シートS11、S12は主にMD方向に伸長する。その際、より多くの薬液が塗布された一次連続シートS11が他方の一次連続シートS12より伸長率が大きくなるが、一次連続シートS11、S12はコンタクトエンボスCEで相互に固定されているため、より伸長した一次連続シートS11の表面にシワが生じる(24(C))。積層する積層連続シートS2のクレープ率にも差異を設け、一次連続シートS11にクレープ率の高い原紙を使用すると、より一次連続シートS11と一次連続シートS12との伸長率に差異を生じさせることができる。
【0051】
クレープはヤンキードライヤー115にて原紙を乾燥後、ドクターブレード117によりヤンキードライヤー115から剥がした後、ドライヤースピードと巻取りスピードの差異によって形成される。このクレープはヤンキードライヤー115への紙の貼り付きにより形状を調整するが、この貼り付きに若干のばらつきがあることや、繊維原料が均等に分布していないことから、ミクロ的な視野で見ると立体的にクレープ形状には若干のバラツキが存在する。このバラツキはクレープ率が大きくなるほど顕著になる。
【0052】
このクレープのバラツキに伴い、薬液を塗布した際の伸びにもバラツキが生じ、これが3次元的に細かな波打ちとして形成される。この波うちは原反シーズニング時には張力が働くため顕在化しないが、製品に加工し断裁した後に復元し顕在化する。シートへの薬液の塗布量が多いほど、クレープが大きいほどクレープ形状の変化、シートの波打ちは大きく、逆にシートへの薬液の塗布量が少ないほど、クレープが小さいほどクレープ形状の変化、シートの波打ちは小さい。このため、塗布量だけでなく、クレープ率を変えることによって、嵩高効果を相乗させることができる。
【0053】
また品質について、クレープ率の異なる一次連続シートS11、S12を積層して製品化した場合、薬液塗布を行わなければ、製品であるティシュペーパーは、両面でバルク感の異なるものとなる(図25(A))。しかし、より表面の凹凸の大きな(クレープ率の高い)一次連続シートS11により多くの薬液を塗布することにより、一次連続シートS11は一次連続シートS12よりも高い伸び率で伸長するが、コンタクトエンボスによりMD方向と平行に固定されているため(図示せず)、一次連続シートS11は波打ち、積層シートの嵩が増加する。(図25(B))。
【0054】
薬液塗布量に差異を設けることにより、製品の両面で肌触り、使用感が異なることが懸念されるが、二次原反ロールRを次の工程(折り加工等)へ供する前にロールの状態で静置することにより、薬液塗布量の異なる一次連続シートS11、S12の表面が互いに相対した状態で保たれるため(薬液浸透工程、図26)、連続シート間の薬液成分が少しずつ転移し(図中グレー矢印)、その差異はシーズニング中に次第に軽減される。なお、図26中の白抜き矢印は薬液成分の浸透方向を示す。
【0055】
他方、本発明における第二次薬液塗布手段53としては、フレキソ印刷方式又はグラビア印刷方式が用いられる。このとき、シートの加工速度は100〜1100m/分とし、好ましくは350〜1050m/分、特に好ましくは450〜1000m/分とする。100m/分未満であると生産性が低く、他方、1100m/分以上であると、塗布ムラが多く生じ、薬液の飛散量が多くなってしまう傾向がある。
フレキソ印刷方式の場合、フレキソ刷版ロールの線数は、10〜60線とし、好ましくは15〜40線、特に好ましくは20〜35線とする。線数が10線未満であると塗布ムラが多く生じてしまい、他方、線数が60線超過であると紙粉が詰まり易くなる。アニロックスロールの線数は、10〜300線とし、好ましくは25〜200線、特に好ましくは50〜100線とする。線数が10線未満であると塗布ムラが多く生じてしまい、他方、線数が300線超過であると紙粉が詰まり易くなる。アニロックスロールのセル容量は、10〜100ccとし、好ましくは15〜70cc、特に好ましくは30〜60ccとする。セル容量が10cc未満であると所望の塗布量が得られず、他方、セル容量が100cc超過であると薬液の飛散量が多くなってしまう。
フレキソ印刷方式又はグラビア印刷方式は、加工速度が高速であっても塗布量を安定させることができ、また、一つのロールで幅広い薬液の粘度を安定的に塗布することができる。
【0056】
第二次薬液塗布手段53の前後に配置される手段(図11の例ではカレンダー手段52及びコンタクトエンボス手段54)は、相互に近接して配置することが好ましい。そうすることによって、薬液が塗布されないティシュペーパー製品を製造する場合には、積層連続シートS2を第二次薬液塗布手段53の前段から後段に直接移送し、第二次薬液塗布手段53を通さずに積層連続シートS2を通すだけでよくなるため、薬液塗布の有無を容易に切り替えることが可能となる。例えば、図11に示すティシュペーパー製品用二次原反ロールの製造設備X1では、薬液が塗布されないティシュペーパー製品を製造する場合、図11において二点鎖線で示すように、積層連続シートS2をカレンダー手段52からコンタクトエンボス手段54に直接移送し、第二次薬液塗布手段53を通さずに積層連続シートS2を流すだけで良い。
【0057】
<ドクターチャンバー形式の実施形態1>
ここでは、フキレソ印刷方式におけるドクターチャンバー形式の一例を説明する。
図12に示すように一方のドクターチャンバー形式とされる薬液塗布部53Aは、薬液の入っているドクターチャンバー61Aが、回転可能なアニロックスロール63Aと対向して配置されていて、ドクターチャンバー61Aからアニロックスロール63Aに薬液を受け渡すようになっている。また、このアニロックスロール63Aと接し且つ積層連続シートS2の一面とも接する刷版ロール64Aが回転可能に設置されていて、このアニロックスロール63Aから刷版ロール64Aに薬液を受け渡すようになっている。さらに、積層連続シートS2を挟んでこの刷版ロール64Aと対向している弾性ロール65Aとで積層連続シートS2に圧力を付与しつつ、刷版ロール64Aから積層連続シートS2に薬液を塗布するようになっている。
【0058】
そして、本形態では、この薬液塗布部53Aが後述するコンタクトエンボス手段54のコロ54Aと対向し且つ、前述のワインディングドラム56Aとも対向する積層連続シートS2の面側に位置している。尚、前述のドクターチャンバー61Aに対して薬液を塗布する供給ポンプ(図示しない)及び、このドクターチャンバー61Aから薬液を戻すための排出供給ポンプ(図示しない)が、ドクターチャンバー61Aに設置されている。
【0059】
他方、図12に示すように他方のドクターチャンバー形式とされる薬液塗布部53Bは、薬液の入っているドクターチャンバー61Bが、回転可能なアニロックスロール63Bと対向して配置されていて、ドクターチャンバー61Bからアニロックスロール63Bに薬液を受け渡すようになっている。また、このアニロックスロール63Bと接し且つ積層連続シートS2の他の面とも接する刷版ロール64Bが回転可能に設置されていて、このアニロックスロール63Bから刷版ロール64Bに薬液を受け渡すようになっている。さらに、積層連続シートS2を挟んでこの刷版ロール64Bと対向している弾性ロール65Bとで積層連続シートS2に圧力を付与しつつ、刷版ロール64Bから積層連続シートS2に薬液を塗布するようになっている。
【0060】
そして、本実施の形態では、この薬液塗布部53Bがコロ54Aと非対向とされ且つ、前述のワインディングドラム56Aとも非対向となる積層連続シートS2の他の面側に位置している。尚、前述のドクターチャンバー61Bに対して薬液を塗布する供給ポンプ(図示しない)及び、このドクターチャンバー61Bから薬液を戻すための排出供給ポンプ(図示しない)が、ドクターチャンバー61Bにも設置されている。
【0061】
従って、積層連続シートS2の両面に薬液塗布部53A及び薬液塗布部53Bから薬液がそれぞれ塗布されるが、この際、薬液塗布部53Aによるコロ54Aと対向する積層連続シートS2の面側の塗布量を薬液塗布部53Bによる他の面側の塗布量に対して少なくしつつ、積層連続シートS2の両面からそれぞれ積層連続シートS2に対して薬液を塗布することができる。
【0062】
ここで、前述のように、両面の合計塗布量を2.5〜5g/m2とし、さらに、プライ原反ロールである二次原反ロールRの外周面の塗布量を、二次原反ロールRの内周面の塗布量より少なくする場合、紙の両面に対する薬液の合計塗布量の内、二次原反ロールRの外周面への塗布量は、全体の20%以上で50%未満が良いが、具体的な値は、二次原反ロールRの滑りと品質のバランス、シートの厚みや薬液の浸透性、転移性により最適条件が異なるので、上記の範囲で変化する。
具体的には、片面毎の塗布量を変えるだけでなく、フレキソ版の線数を15〜40線程度、頂点面積率を20〜40%程度の薬液が飛散しない程度に粗くすることが考えられ、このようにすることで、塗布直後はドット柄が残り、瞬間的に塗布部分と未塗布部分ができるようになる。
【0063】
従って、本形態によれば、フレキソ印刷方式を用いることで版が樹脂であり弾力性があるため衛生用薄葉紙に多少の凹凸があっても印圧で調整可となるので、積層連続シートS2にシワが入り難くなる。他方、フレキソ印刷方式を用いることにより、加工速度が高速であっても塗布量を安定させることができ、また、一つのロールで幅広い薬液の粘度を安定的に塗布することができるようになる。具体的には、積層連続シートS2を700m/分以上とし、好ましくは900m/分以上の速度で搬送しつつ、薬液とされる薬液を後述の範囲の塗布量で塗布する際にも、塗布が均一で蛇行無く積層連続シートS2を巻き取れるようになる。
【0064】
また、本形態に付随する第二次薬液塗布手段53の条件としては、以下のものがある。
2ロールフレキソ形式の第二次薬液塗布手段では、薬液タンク等の塗布装置内で循環する薬液に含まれる紙粉やエアーのろ過装置を設置する必要があるが、本実施の形態のようなドクターチャンバー形式の第二次薬液塗布手段53とした場合、紙粉等が少なくなるので、ろ過装置の負荷が軽減される。さらに、ドクターチャンバー61A、61B等の塗布装置内で薬液の温度をコントロールし、薬液粘度を安定させることが望ましい。この場合、ドクターチャンバー61A、61Bに繋がる中間タンク及び配管にヒーターを設置することにできる。他方、操業中に積層連続シートS2の幅方向の水分率で塗布量を管理する場合、例えば赤外線の検査機等を用いて常に幅方向の水分量とバラツキをチェックするようにできる。さらに、必要により、図12に示すように、刷版ロール64A及び64Bに接して多数の刷毛を有するブラシロール66A及び66Bを設け、常時、刷版ロール64A及び64Bも付着しようとする紙粉を掻き取るようにすると、刷版ロール64A及び64B及びアニロックスロール63A及び63Bの目詰まりを防止でき、安定した操業が可能となる。
【0065】
<ドクターチャンバー形式の実施形態2>
次に、ドクターチャンバー形式の実施形態2について、具体的に図14及び図15に示す構造を参照しながら、以下に詳細に説明する。
なお、図示の薬液供給装置100は、前述の第二次薬液塗布手段53を構成するドクターチャンバー形式のフレキソ印刷方式による2つの薬液塗布部53A、53Bの一方についてのものとして図示したものである。図14に示す薬液供給装置100の左右方向をX軸方向、上下方向をY軸方向とする。
【0066】
薬液供給装置100は、薬液Lを貯留する貯留タンク110と、貯留タンク110内の薬液Lを押出す押出部120と、押出部120より押出された薬液Lを貯留するドクターチャンバー130と、ドクターチャンバー130に貯留される薬液Lの一部をタンク110へ引き込む引込部140と、ドクターチャンバー130より供給される薬液Lを積層連続シートS2の表面に転写させる薬液転写部150と、積層連続シートS2を周面に巻き付けて回動させる回動部160と、等を含んで構成される。
従って、前述のドクターチャンバー61A、61Bが、本実施形態ではドクターチャンバー130とされ、前述の弾性ロール65A、65Bが、本実施形態では回動部160とされることになる。
【0067】
貯留タンク110は、内部に薬液Lを貯留するタンクであり、後述の押出部120の押出ホース121と、引込部140の引込ホース141と、が液層内に挿入されている。
【0068】
押出部120は、例えば、貯留タンク110内に挿入された押出ホース121と、貯留タンク110に貯留された薬液Lを押出してドクターチャンバー130に供給する供給ポンプ122と、供給ポンプ122による薬液Lの押出量(流量)を調整するための調整弁123と、を含んで構成される。
押出ホース121は、一端が貯留タンク110内に挿入され、他端がドクターチャンバー130の導入部132と接続されたホースであり、貯留タンク110内の薬液Lを搬送する流路として機能する。供給ポンプ122は、押出ホース121に取り付けられ、図示しない駆動モータにより駆動されて、貯留タンク110内の薬液Lをドクターチャンバー130へ加圧送給する。調整弁123は、供給ポンプ122により押出される薬液Lの流量を弁の開閉により調整する。
【0069】
引込部140は、例えば、貯留タンク110内に挿入された引込ホース141と、貯留タンク110に薬液Lを引込む吸引ポンプ142と、を含んで構成される。
引込ホース141は、一端が貯留タンク110内に挿入され、他端が後述のドクターチャンバー130の導出部133と接続されたホースであり、導出部133より導出される薬液Lを貯留タンク110に搬送する流路として機能する。
吸引ポンプ142は、引込ホース141に取り付けられ、図示しない駆動モータにより駆動されて、導出部133より導出される薬液Lを吸引させて貯留タンク110(外部)へ排出させる。
【0070】
従って、前述のドクターチャンバー61A、61Bに対して薬液を塗布する供給ポンプが、本実施形態では貯留タンク110に貯留された薬液Lを押出してドクターチャンバー130に供給する供給ポンプ122とされ、また、前述のドクターチャンバー61A、61Bから薬液を戻すための排出供給ポンプが、本実施形態では貯留タンク110に薬液Lを引込む吸引ポンプ142とされることになる。
【0071】
ドクターチャンバー130は、後述のアニロックスロール151に隣接して配設され、薬液Lを貯留する本体部131と、押出部120と本体部131を連結する導入部132と、引込部140と本体部131を連結する導出部133と、を含んで構成される。
【0072】
本体部131は、ドクターチャンバー130の本体部分であり、貯留部131aと、ブレード131b,131cと、を含んで構成される。
貯留部131aは、アニロックスロール151側の端部が開口し、導入部132及び導出部133と連結され、内部に貯留される薬液Lをアニロックスロール151に供給する。そして、アニロックスロール151への供給量が一定となるように、導入部132より貯留部131aに導入される薬液Lの一部が導出部133を介して導出されることで、循環されるよう構成されている。
従って、前述のアニロックスロール63A、63Bが、本実施形態ではアニロックスロール151とされることになる。
ブレード131b,131cは、アニロックスロール151と当接するように設けられ、アニロックスロール151に押しつけた状態で薬液Lの絞りを行う。
【0073】
導入部132は、一端が本体部131に接続され、他端が押出部120の押出ホース121に接続され、押出部120と本体部131とを連結する管状の継手であり、供給ポンプ122により供給された薬液Lを本体部131の貯留部131aに導入することができる。
【0074】
導出部133は、図14及び図15に示すように、継手133aと、孔部133bと、チューブ133cと、を含んで構成される。
継手133aは、一端が本体部131に接続され、他端が引込部140の引込ホース141に接続され、引込部140と本体部131とを連結する管状の継手である。
【0075】
孔部133bは、継手133aの上面に形成され、所定の径からなる開口部分である。
つまり、継手133aに孔部133bが設けられているため、継手133a内の薬液Lは外気接触することとなる。そのため、導入部132より導入した薬液Lの一部を排出(導出部133から導出)して薬液Lを循環させる際に、吸引ポンプ142で薬液Lの吸引を行っても、上記孔部133bによって薬液Lが外気接触して、内圧を外気圧に近づけることができるので、ドクターチャンバー130内の内圧変動を抑えることができる。
なお、当該孔部133bは、ドクターチャンバー130内の内圧変動が抑えられればよいため、例えば、本体部131の上面に貯留部131aに連通するように形成してもよい。
【0076】
チューブ133cは、孔部133bに下端が連結され、上方に延伸した透明又は半透明のチューブ状の部材である。そのため、導入部132より導入した薬液Lの一部を排出して薬液Lを循環させる際に、薬液Lが孔部133bを介して当該チューブ133c内に流入するか否かを目視により確認することができる。
つまり、上記チューブ133c内への流入が確認された場合は、貯留部131aに貯留される薬液Lの量が過多になっている(アニロックスロール151に対して薬液Lが過供給状態となっている)ことが把握できる。したがって、上記過多の状態を目視で確認した使用者は、例えば、調整弁123を操作して薬液Lの押出量(流量)を調整することにより、当該過多の状態を解消することが可能となる。
なお、チューブ133cは、内部が空洞で上端側が外気に接触しているため、上記孔部133bの作用を相殺してしまうことはない。
【0077】
薬液転写部150は、例えば、ドクターチャンバー130より薬液Lを供給されるアニロックスロール151と、アニロックスロール151及び後述の回動部160の間に設けられた刷版ロール152と、を含んで構成される。
つまり、前述の刷版ロール64A、64Bが、本実施形態では刷版ロール152とされることになる。
【0078】
アニロックスロール151は、ドクターチャンバー130のブレード131b,131cと当接するように設けられ、ドクターチャンバー130の貯留部131aの開口より供給される薬液Lが周面に吸着されるように構成されている。
さらに、アニロックスロール151は、円柱状をなし、XY平面に直交する軸回りに回動可能に構成されているため、上記のように周面に吸着された薬液Lは、回動によって刷版ロール152に転写することができる。
【0079】
刷版ロール152は、周面がゴム材からなる円柱状をなし、左右端部の周面(図14に示す点P1,点P2)がアニロックスロール151及び回動部160(に巻きつけられる積層連続シートS2)の周面に当接するように設けられ、XY平面に直交する軸回りに回動可能に構成されている。
そのため、刷版ロール152は、左端で当接する回動部160がr1方向に回動することでr2方向に回動するとともに、右端で当接するアニロックスロール151をr1方向に回動させる。つまり、刷版ロール152は、アニロックスロール151の周面に吸着された薬液Lを点P2にて取得し、r2方向への回動により点P1まで搬送して積層連続シートS2に転写することができる。
そのため、アニロックスロール151により吸着された薬液Lがアニロックスロール151の周面上に層状に不均一に残ってしまう場合でも、刷版ロール152の周面に移送させることで、積層連続シートS2に薬液Lを均一に転写することができる。
【0080】
回動部160は、刷版ロール152に隣接して設けられ、図示しないモータ等より駆動力が付与されることで、XY平面に直交する軸回り(例えば、図14のr1方向)に回動する円柱状の部材であり、周面で積層連続シートS2を把持できるように構成されている。そのため、回動部160は、r1方向に回動することにより、供給される積層連続シートS2を周面に巻き付けるとともに、刷版ロール152及びアニロックスロール151を回動させ、点P1位置まで搬送した時点で刷版ロール152より薬液Lを転写させることができる。
なお、回動部160の回動の向きは、図14においてr1方向としたが、r2方向に回動するように構成しても勿論良い。この場合、アニロックスロール151及び刷版ロール152は図14とは逆方向(つまり、アニロックスロール151:r2方向、刷版ロール152:r1方向)に回動する。
【0081】
次に、本実施形態に係る薬液供給装置100による薬液Lの循環動作について説明する。
まず、供給ポンプ122を駆動させ、貯留タンク110より薬液Lを押出し、押出ホース121及びドクターチャンバー130の導入部132を介して本体部131の貯留部131aへ供給する。
次いで、回動部160を回動させてアニロックスロール151に貯留部131aの薬液Lを供給し、刷版ロール152を介して薬液Lを積層連続シートS2上に転写させる。
加えて、吸引ポンプ142を駆動させ、導出部133を介して貯留部131aの薬液Lの一部を貯留タンク110へ向けて排出して循環させる。この際、導出部133の継手133a内で、孔部133bを介した外気接触によりドクターチャンバー130内の内圧変動が抑えられる。
また、上記循環の際に、薬液Lのチューブ133c内への流入が確認された場合、調整弁123を操作して薬液Lの流量の調整を行う。
【0082】
以上説明したように、本実施形態に係る薬液供給装置100によると、薬液Lを貯留する貯留タンク110と、貯留タンク110に貯留された薬液Lをドクターチャンバー130の本体部131に押出ホース121を介して供給する供給ポンプ122と、ドクターチャンバー130の本体部131に貯留された薬液Lを吸引させて貯留タンク110(外部)に引込ホース141を介して排出させる吸引ポンプ142と、を備え、ドクターチャンバー130は、押出ホース121と本体部131を連結し、供給ポンプ122により供給された薬液Lを本体部131に導入する導入部132と、引込ホース141と本体部131を連結し、導入部132より本体部131に導入された薬液Lの一部を導出するための管状の継手133aを備えた導出部133と、を有し、導出部133の継手133aの上面に孔部133bを備えて構成される。
【0083】
薬液供給装置100では、導出部133の継手133aの上面に孔部133bが備えられる。そのため、吸引ポンプ142を用いて本体部131内の薬液Lの一部を排出する際に、上記孔部133bによって薬液Lが外気接触するので、吸引ポンプ142の動作に起因したドクターチャンバー130内の内圧変動が抑えられる。また、本発明では、上記薬液Lの一部を排出する際に吸引ポンプ142を用いているため、薬液Lを自然落下させるための流路は必要なく、タンク110の設置位置も特段ドクターチャンバー130の上方等に限定されることもない。
したがって、薬液供給装置100は、ドクターチャンバー130から薬液Lを吸い出す際の、ドクターチャンバー130内の内圧変動を抑えるとともに、極力省スペースで設置できる薬液供給装置100であるといえる。
また、ドクターチャンバー130は、孔部133bに下端が連結され、上方に延伸した透明又は半透明のチューブ133cを備える。
【0084】
つまり、導入部132より導入した薬液Lの一部を排出して薬液Lを循環させる際に、薬液Lが孔部133bを介して当該チューブ133c内に流入するか否かを目視により確認することができる。そのため、上記チューブ133c内への流入が確認された場合は、貯留部131aに貯留される薬液Lの量が過多になっている(アニロックスロール151に対して薬液Lが過供給状態となっている)ことが把握できる。したがって、上記過多の状態を目視で確認した使用者は、例えば、調整弁123を操作して薬液Lの流量を調整することにより、当該過多の状態を解消することが可能となる。
また、チューブ133cの上端(自由端)を下向きにして設けることで、孔部133bへの紙粉等の異物の混入を防止することができる。
【0085】
<ドクターチャンバー形式の実施形態3>
次に、ドクターチャンバー形式の実施形態3の薬液供給装置200について、図16を用いて説明する。
ドクターチャンバー形式の実施形態2の薬液供給装置100では、孔部133bに連結されたチューブ133c内への薬液Lの流入を目視により確認することで、アニロックスロール151に対して薬液Lが過供給状態となっていることを把握できるように構成したが、本実施形態の薬液供給装置200では、上記状態に至ったか否かを自動的に判別し、使用者に判別結果を報知するように構成する。
以下の薬液供給装置200の説明においては、ドクターチャンバー形式の実施形態2の薬液供給装置100との相違点を中心に説明し、一致する構成には、同一の符号を付し、説明を省略する。
【0086】
本実施形態の導出部233は、図16に示すように、継手133aと、孔部133bと、孔部133bの上方に設けられた円筒状部133dと、円筒状部133dに取り付けられたセンサ部133eと、を含んで構成される。
【0087】
円筒状部133dは、孔部133bの周面に下端が溶接等により固着接続され、上方に延伸した円筒状の部材である。
【0088】
センサ部133eは、円筒状部133dに設けられたセンサ133fと、センサ133fに取り付けられ、センサ133fの検知に連動して報知を行う報知部133gと、を含んで構成される。
センサ133fは、例えば、被検知体に向けて発光する発光素子(図示省略)と、被検知体からの反射光を受光する受光素子(図示省略)と、を含み、受光素子からの反射光の受光量に基づいて、円筒状部133dに流入する薬液Lの高さが、当該センサ133fの設けられた高さ位置(図16に示すy1)に達したか否かを検知するセンサである。
報知部133gは、例えば、スピーカ等であり、センサ133fにより、円筒状部133dに流入する薬液Lの高さが、上記センサ133fの設けられた高さ位置に達したと検知された場合に、音声により使用者への報知を行うように構成されている。
【0089】
つまり、導入部132より導入した薬液Lの一部を排出して薬液Lを循環させる際に、センサ133fにより、円筒状部133dに流入する薬液Lが上記高さ位置に達したか否かを検知することで、貯留部131aに貯留される薬液Lの量が過多になっている(アニロックスロール151に対して薬液Lが過供給状態となっている)か否かを判別することができる。そして、上記過多の状態に至った場合、使用者は報知部133gによりその旨を知ることができるので、例えば、調整弁123を操作して薬液Lの押出量(流量)を調整することにより、当該過多の状態を解消することが可能となる。
なお、円筒状部133dは、内部が空洞で上端側が外気に接触しているため、孔部133bの作用を相殺してしまうことはない。
【0090】
次に、本実施形態に係る薬液供給装置200による、薬液Lの循環動作について説明する。
まず、供給ポンプ122を駆動させ、貯留タンク110より薬液Lを押出し、押出ホース121及びドクターチャンバー130の導入部132を介して本体部131の貯留部131aへ供給する。
次いで、回動部160を回動させてアニロックスロール151に貯留部131aの薬液Lを供給し、刷版ロール152を介して薬液Lを積層連続シートS2上に転写させる。
加えて、吸引ポンプ142を駆動させ、導出部233を介して貯留部131aの薬液Lの一部を貯留タンク110へ向けて排出して循環させる。この際、導出部233の継手133a内で、孔部133bでの外気接触を介してドクターチャンバー130内の内圧変動が抑えられる。
また、上記循環の際に、センサ133fにより、円筒状部133dに流入する薬液Lの高さが、センサ133fの設けられた高さ位置に達したと検知され、報知部133gにより使用者へその旨が報知された場合、調整弁123を操作して薬液Lの流量の調整を行う。
【0091】
以上説明したように、本実施形態に係る薬液供給装置200によると、ドクターチャンバー130は、孔部133bの周面に下端が接続され、上方に延伸した円筒状の円筒状部133dと、円筒状部133dに設けられ、円筒状部133dに流入する薬液Lの高さが所定の高さ位置(センサ133fの設けられた高さ位置)に達したか否かを検知するセンサ133fと、センサ133fにより、円筒状部133dに流入する薬液Lの高さが上記所定の高さ位置に達したと検知された場合に報知する報知部133gと、を備えて構成される。
【0092】
つまり、薬液供給装置200によると、薬液供給装置100と同様の効果を発揮するのは勿論のこと、薬液Lを循環させる際に、センサ133f及び報知部133gにより、アニロックスロール151に対して薬液Lが過供給状態に至ったか否かを自動的に判別し、使用者に判別結果を報知することができるので、上記状態判別を使用者自身が行う負担が軽減される。
【0093】
<ドクターチャンバー形式の実施形態4>
次に、ドクターチャンバー形式の実施形態4の薬液供給装置300について、図17を用いて説明する。
ドクターチャンバー形式の実施形態2の薬液供給装置100及び実施形態3の薬液供給装置200では、孔部133bの開口量は固定値となるように構成したが、本実施形態の薬液供給装置300では、当該開口量を調整できるように構成する。
以下の薬液供給装置300の説明においては、ドクターチャンバー形式の実施形態2の薬液供給装置100及び実施形態3の薬液供給装置200との相違点を中心に説明し、一致する構成には、同一の符号を付し、説明を省略する。
【0094】
本実施形態の導出部333は、図17に示すように、継手133aと、円筒状部133dと、センサ部133eと、円筒状部133dに取り付けられた調整部133hと、を含んで構成される。調整部133hは、例えば、ニードルバルブであり、継手133aの上面に形成される開口としての孔部133jと、孔部133jの開口量を調整するバルブ本体133iと、を含んで構成される。
【0095】
孔部133jは、所定径からなる開口の周囲がオリフィスで囲まれた形状からなる。
バルブ本体133iは、上記孔部133jの開口の上方に配設され、先端がテーパ状で上下動可能なニードル軸(図示省略)を備え、当該ニードル軸を上下動させて、孔部133jのオリフィスと接触する際の開度に応じて孔部133jの開口量を調整できるように構成されている。
【0096】
つまり、上記調整部133hにより、孔部133jの開口量を調整することが可能となるので、薬液Lを循環させる際に、ドクターチャンバー131内の内圧変動量に応じて、孔部133jの開口量を適宜に調整することができる。そのため、例えば、センサ部133eにより、円筒状部133dに流入する薬液Lの高さが、センサ133fの設けられた高さ位置に達したと検知された場合、調整弁123を操作して薬液Lの押出量を調整することで対処するばかりでなく、調整部133hによる孔部133jの開口量の調整により、孔部133jによるエアー抜きの能力を高めて(外気との接触面積を拡張して)、ドクターチャンバー130内の内圧変動を抑えるという対処をとることも可能となる。
つまり、内圧変動を抑えることで、内圧変動によりもたらされるドクターチャンバー130内からの薬液Lの噴出や、アニロックスロール151上の薬液Lのドクターチャンバー130側への吸込み等が好適に防止されるので、薬液Lの循環が促進される。
【0097】
次に、本実施形態に係る薬液供給装置300による、薬液Lの循環動作について説明する。
まず、供給ポンプ122を駆動させ、貯留タンク110より薬液Lを押出し、押出ホース121及びドクターチャンバー130の導入部132を介して本体部131の貯留部131aへ供給する。
次いで、回動部160を回動させてアニロックスロール151に貯留部131aの薬液Lを供給し、刷版ロール152を介して薬液Lを積層連続シートS2上に転写させる。
加えて、吸引ポンプ142を駆動させ、導出部333を介して貯留部131aの薬液Lの一部を貯留タンク110へ向けて排出して循環させる。上記循環の際、センサ133fにより、円筒状部133dに流入する薬液Lの高さが、センサ133fの設けられた高さ位置に達したと検知され、報知部133gにより使用者へその旨が報知された場合、調整弁123の操作又は調整部133hによる孔部133jの開口量の調整により対処することができる。
【0098】
以上説明したように、本実施形態に係る薬液供給装置300によると、ドクターチャンバー130は、孔部133jの開口量を調整する調整部133hを備える。
【0099】
つまり、薬液供給装置300によると、薬液供給装置100と同様の効果を発揮するのは勿論のこと、上記調整部133hにより、孔部133jの開口量を調整することが可能となるので、薬液Lを循環させる際に、ドクターチャンバー131内の内圧変動量に応じて、孔部133jの開口量を適宜に調整することで、ドクターチャンバー130内の内圧変動を一層好適に抑えることができる。
【0100】
他方、上記各実施形態の薬液供給装置においては、押出ホース121に繋がる導入部132及び押出ホース121に繋がる導入部132を各一つのみドクターチャンバー130が有する構造とされているが、例えば図18に示す各例のような構造としても良い。
【0101】
例えば、図18(A)では、幅広に形成されて回転軸R0廻りに回転するアニロックスロール151に沿って幅広の長方形状に外枠が形成されたドクターチャンバー130の幅方向Dの左右端付近の箇所に、それぞれ押出ホース121に繋がる導入部132を有した構造とされている。そして、このドクターチャンバー130の中央部に引込ホース141に繋がる一つの導出部133が存在する構造ともされている。
【0102】
つまり、図18(A)に示す例では、2本の押出ホース121がそれぞれ2つの導入部132に繋がって薬液Lをドクターチャンバー130の左右端付近から供給することで、貯留タンク110内からの新鮮な薬液Lをドクターチャンバー130内に平均的に供給でき、更に中央部の導出部133から余った薬液Lがドクターチャンバー130から導出されるようになる。
【0103】
また、図18(B)では、幅広に形成されて回転軸R0廻りに回転するアニロックスロール151に沿って幅広の長方形状に外枠が形成されたドクターチャンバー130の幅方向Dの左右端付近の箇所及び中央部の箇所に、それぞれ押出ホース121に繋がる導入部132を有した構造とされている。そして、このドクターチャンバー130の幅方向Dの左右寄りの箇所にそれぞれ引込ホース141に繋がる2つの導出部133が存在する構造ともされている。
【0104】
つまり、図18(B)に示す例では、3つの導入部132の各間に2つの導出部133がそれぞれ配置された構造とされていて、3本の押出ホース121がそれぞれ3つの導入部132に繋がって薬液Lをドクターチャンバー130の左右端付近及び中央部から供給することで、貯留タンク110内からの新鮮な薬液Lをドクターチャンバー130内に平均的に供給でき、更に2つの導出部133から余った薬液Lがドクターチャンバー130から導出されるようになる。
【0105】
他方、図18(C)では、幅広に形成されて回転軸R0廻りに回転するアニロックスロール151に沿って幅広の長方形状に外枠が形成されたドクターチャンバー130の幅方向Dに沿った等間隔且つ図の上側寄りの複数箇所に、それぞれ押出ホース121に繋がる導入部132を有した構造とされている。そして、各導入部132に隣り合ったドクターチャンバー130の図の下側寄りの箇所に、それぞれ引込ホース141に繋がる複数の導出部133が存在する構造ともされている。
【0106】
つまり、図18(C)に示す例では、ドクターチャンバー130の幅方向Dに沿って配置された複数の導入部132に押出ホース121からそれぞれ薬液Lが供給されると共に、これら導入部132にそれぞれ隣り合っている複数の導出部133から余った薬液Lがドクターチャンバー130から導出されるようになる。従って、本例でも、貯留タンク110内からの新鮮な薬液Lをドクターチャンバー130内に平均的に供給でき、更に導出部133から余った薬液Lがドクターチャンバー130から導出されるようになる。
【0107】
なお、本発明の範囲は上記実施形態に限られることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の改良並びに設計の変更を行っても良い。
例えば、薬液供給装置100において、チューブ133cを設けない場合は、孔部133bの上部にエアーフィルタを設置し、孔部133bへの紙粉等の異物の混入を防止するように構成してもよい。また、孔部133bは、貯留部131aの薬液Lの液面より上方であれば、本体部131の側面に設けてもよい。
【0108】
<フレキソ2ロール転写形式の実施形態>
ここでは、フキレソ印刷方式における2ロール転写形式の一例を説明する。
図11及び図23に示すように一方のフキレソ印刷方式とされる薬液塗布部53Aは、薬液の入っている薬液タンク66Aにディップロールである絞りロール62Aが浸されつつ回転可能に設置されている。さらに、薬液タンク66A外において絞りロール62Aと接しつつアニロックスロール63Aが、回転可能に設置されており、また、このアニロックスロール63Aと接し且つ積層連続シートS2の一面とも接する刷版ロール64Aが回転可能に設置されていて、積層連続シートS2を挟んで対向している弾性ロール65Aとで積層連続シートS2に圧力を付与している。
そして、本実施の形態では、この薬液塗布部53Aが後述するコンタクトエンボス手段54のコロ54Aと対向し且つ、前述のワインディングドラム56Aとも対向する積層連続シートS2の面側に位置している。
【0109】
また、図11及び図23に示すように他方のフレキソ印刷形式とされる薬液塗布部53Bは、薬液の入っている薬液タンク66Bにディップロールである絞りロール62Bが浸されつつ回転可能に設置されている。さらに、薬液タンク66B外において絞りロール62Bと接しつつアニロックスロール63Bが、回転可能に設置されており、また、このアニロックスロール63Bと接し且つ積層連続シートS2の他の面とも接する刷版ロール64Bが回転可能に設置されていて、積層連続シートS2を挟んで対向している弾性ロール65Bとで積層連続シートS2に圧力を付与している。
そして、本実施の形態では、この薬液塗布部53Bがコロ54Aと非対向とされ且つ、前述のワインディングドラム56Aとも非対向となる積層連続シートS2の他の面側に位置している。
【0110】
従って、積層連続シートS2の両面に薬液塗布部53A及び薬液塗布部53Bから薬液がそれぞれ塗布されるが、この際、薬液塗布部53Aによるコロ54Aと対向する積層連続シートS2の面側の塗布量を薬液塗布部53Bによる他の面側の塗布量に対して少なくしつつ、積層連続シートS2の両面からそれぞれ積層連続シートS2に対して薬液を塗布することができる。
【0111】
従って、本実施の形態によれば、フレキソ形式を用いて版が樹脂であり弾力性があるため積層連続シートS2に多少の凹凸があっても印圧で調整可となるので、グラビア印刷方式のような金属ロールで塗布するよりも積層連続シートS2にシワが入り難くなる。他方、フレキソ印刷方式を用いることにより、加工速度が高速であっても塗布量を安定させることができ、また、一つのロールで幅広い薬液の粘度を安定的に塗布することができるようになる。具体的には、積層連続シートS2を700m/分以上の速度で搬送しつつ、薬液とされる薬液を2.5g〜5g/m2の塗布量で塗布する際にも、塗布が均一で蛇行無く積層連続シートS2を巻き取れるようになる。
【0112】
<フレキソ1ロール転写形式の実施形態>
フキレソ印刷方式における1ロール転写形式とは、前述のフレキソ2ロール転写形式から絞りロール62A、62Bを省略したものである。この場合、アニロックスロール63A、63Bが、それぞれ薬液タンク66A、66Bに浸されつつ回転可能に設置される。また、これらのアニロックスロール63A、63Bに対しては、アニロックスロール63A、63B表面の薬液を掻き取るドクターブレード(図示せず)を設置しても良い。このようなフレキソ1ロール転写形式は、メンテナンスが比較的容易であるという利点や、ブレードの摩耗や薬液中の紙粉等の異物の混入状態を容易に目視できるという利点を有している。
【0113】
(コンタクトエンボス手段)
ティシュペーパー製品用二次原反ロールの製造設備X1には、積層連続シートS2に対してコンタクトエンボスを付与するコンタクトエンボス手段54を設けることができる。
ここで、コンタクトエンボス手段54は、図13に示すように、金属ロール又は弾性ロールである受けロール54Bと表面に細かい凸部54Cを有する金属製で硬質のコロ54Aとが所定の圧力を有して相互に外周面同士を当接しつつ、それぞれ回転可能に設置されている。そして、積層連続シートS2におけるティシュペーパー製品の幅方向中央に該当する部分に対して、左右各2つずつ存在する凸部54Cと、受けロール54Bとの間で積層連続シートS2を挟みつつ搬送することで、積層連続シートS2に対して、積層連続シートS2の連続方向に沿って層間剥離を防止するライン状のコンタクトエンボスCEを施すようになっている。
尚、このコンタクトエンボスCEを施すコロ54Aと対向した側の面を外周側として前述の巻取り手段56が、積層連続シートS2を巻取ることになる。
【0114】
このようにコンタクトエンボスCEを付与することによって、複数の一次連続シート(図示例ではS11、S12)を積層して成る積層連続シートS2の層間剥離を防止する。なお、コンタクトエンボスCEは、ティシュペーパー製品の端部が層間剥離し難くなるように、ティシュペーパー製品の幅方向両側部に位置するよう、形成されることが好ましい。
【0115】
なお、コンタクトエンボス手段54の設置箇所は特に限定されないが、薬液付与手段53の後段であって且つスリット手段55の前段や、カレンダー手段52の後段であって且つ薬液付与手段53の前段とすることが考えられる。つまり、カレンダー手段52の後段であって且つスリット手段55の前段の何れかの箇所で有ればよいことになる。
【0116】
コンタクトエンボス手段54でコンタクトエンボスCEを付与する場合、積層連続シートS2に対して薬液を塗布した後、0.3〜2.5秒、好ましくは0.3〜1.0秒以内にコンタクトエンボスCEを付与することも提案される。0.3秒未満であると薬液が原紙に十分吸収されないため、受けロール54Bやコロ54Aに薬液が付着して断紙したり、受けロール54Bやコロ54Aに汚れが付着したりする。2.5秒を超えると、薬液を塗布した積層連続シートS2が伸びきるため、その後工程シワが生じにくくなり、嵩高なティシュペーパー製品を得づらくなる。また、積層連続シートS2が伸びきるとドロー変動に対応できる伸びが無くなり、また吸湿、吸水により引張強度が低下しているため、断紙し易くなり操業性が落ちるという問題もある。
【0117】
また、この接合工程において、本実施形態ではコロとして表面に細かい凸部54Cを有した金属製で硬質のコロ54Aを用いたが、積層連続シートS2に対して層間剥離を防止するライン状の接合部分が形成できればよく、例えばコロ54Aの替りに、表面に細かい針状の部材を有したローラをコロとすることもできる。
さらに、接合する為の手段としては上記例に限定されず、凸部の先端形状が、点状、正方形、長方形、円形、楕円形等の形状のものをコロとして用いても良く、凸部の先端形状が、細長い線状、細く斜めに伸びる線状等のものをコロとして用いても良い。
【0118】
他方、凸部の配列としては等間隔が考えられるが、千鳥状としたり、等間隔としなくとも良く、また、凸部を1列に配置してコンタクトエンボスを連続して付与する他に、凸部を2列以上の複数列配置することも考えられる。そして、コンタクトエンボスを緊密に複数列付与するように凸部が配置された群を複数並べて、複数のコンタクトエンボス群を付与するようにしても良い。尚、接合工程としては、上記のように機械的に圧力を加えて接合する他に、超音波等の他の手段により接合しても良い。
【0119】
図19に示すように、第二次薬液塗布手段53とコンタクトエンボス手段54との間に、積層連続シートS2のテンションを制御するテンションコントロール手段57を設けることもできる。このテンションコントロール手段57は円筒形状のロールから形成されており、積層連続シートS2の撓み具合に合わせて上下動可能とされている。
また、図19に示す形態のようにテンションコントロール手段57をもうける場合、第二次薬液塗布手段53の前段と、テンションコントロール手段57の後段とにカレンダー手段52を配置することも提案される。この場合、テンションコントロール手段57の後段に配置されたカレンダー手段52では、薬液塗布時には、カレンダーロール52Aを受けロール52Bから積層連続シートS2の紙厚以上の距離だけ離間させて、積層連続シートS2に対して平滑化処理を行なわず素通しさせることも提案される(第2のティシュペーパー製品用二次原反ロールの製造設備及び製造方法)。
【0120】
(一次連続シート)
一次連続シートS11、S12の原料パルプは、特に限定されず、ティシュペーパー製品の用途に応じて適宜の原料パルプを選択して使用することができる。原料パルプとしては、例えば、木材パルプ、非木材パルプ、合成パルプ、古紙パルプなどから、より具体的には、砕木パルプ(GP)、ストーングランドパルプ(SGP)、リファイナーグランドパルプ(RGP)、加圧式砕木パルプ(PGW)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)、ブリーチケミサーモメカニカルパルプ(BCTMP)等の機械パルプ(MP)、化学的機械パルプ(CGP)、半化学的パルプ(SCP)、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)等のクラフトパルプ(KP)、ソーダパルプ(AP)、サルファイトパルプ(SP)、溶解パルプ(DP)等の化学的パルプ(CP)、ナイロン、レーヨン、ポリエステル、ポリビニルアルコール(PVA)等を原料とする合成パルプ、脱墨パルプ(DIP)、ウエストパルプ(WP)等の古紙パルプ、かすパルプ(TP)、木綿、アマ、麻、黄麻、マニラ麻、ラミー等を原料とするぼろパルプ、わらパルプ、エスパルトパルプ、バガスパルプ、竹パルプ、ケナフパルプ等の茎稈パルプ、靭皮パルプ等の補助パルプなどから、一種又は数種を適宜選択して使用することができる。
【0121】
特に、原料パルプは、NBKPとLBKPとを配合したものが好ましい。適宜古紙パルプが配合されていてもよいが、風合いなどの点で、NBKPとLBKPのみから構成されているのがよく、その場合の配合割合(JIS P 8120)としては、NBKP:LBKP=20:80〜80:20がよく、特に、NBKP:LBKP=30:70〜60:40が望ましい。
【0122】
一次連続シートS11、S12は、JIS P 8124による坪量が、10〜25g/m2とされ、好ましくは12〜20g/m2とされ、より好ましくは13〜16g/m2とされる。坪量が10g/m2未満であると、柔らかさの点においては好ましいが、適正な強度を確保することができなくなる。他方、坪量が25g/m2を超えると、硬くなりすぎて、肌触りが悪化する。
また、紙厚(尾崎製作所製ピーコックにより測定)は1プライで80〜250μm、好ましくは100〜200μm、より好ましくは130〜180μmとされる。
【0123】
一次連続シートS11、S12は、クレープ率が10〜30%であるのが好ましく、12〜25%であるのがより好ましく、13〜20%であるのが特に好ましい。クレープ率が10%未満であると、加工時に断紙しやすいとともに伸びの少ないコシのないティシュペーパー製品となる。他方、クレープ率が30%超過であると、加工時のシートの張力コントロールが難しく断紙しがちとなり、また、製造後にはシワが発生して見栄えの悪いティシュペーパー製品となる。
【0124】
一次連続シートS11、S12は、JIS P 8113に規定される乾燥引張強度(以下、乾燥紙力ともいう)の縦方向が、2プライで200〜700cN/25mm、好ましくは250〜600cN/25mm、特に好ましくは300〜600cN/25mmとされ、他方、横方向が、2プライで100〜300cN/25mm、好ましくは130〜270cN/25mm、特に好ましくは150〜250cN/25mmとされる。原紙の乾燥引張強度が低すぎると、製造時及び使用時の断紙や伸び等のトラブルが発生し易くなり、高過ぎると使用時にごわごわした肌触りとなる。
【0125】
これらの紙力は公知の方法により調整でき、例えば、乾燥紙力増強剤を内添(ドライヤーパートよりも前の段階、例えばパルプスラリーに添加)する、パルプのフリーネスを低下(例えば30〜40ml程度低下)させる、NBKP配合率を増加(例えば50%以上に)する等の手法を適宜組み合わせることができる。
【0126】
乾燥紙力剤としては、澱粉、ポリアクリルアミド、CMC(カルボキシメチルセルロース)若しくはその塩であるカルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセルロース亜鉛等を用いることができる。湿潤紙力剤としては、ポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン樹脂、尿素樹脂、酸コロイド・メラミン樹脂、熱架橋性付与PAM等を用いることができる。湿潤紙力剤を内添する場合、その添加量はパルプスラリーに対する重量比で5〜20kg/t程度とすることができる。また、乾燥紙力剤を内添する場合、その添加量はパルプスラリーに対する重量比で0.5〜1.0kg/t程度とすることができる。
【0127】
〔ティシュペーパー製品用二次原反ロールの製造方法〕
次に、本発明に係るティシュペーパー製品用二次原反ロールの製造方法の一例を説明する。本形態に係るティシュペーパー製品用二次原反ロールの製造方法は、例えば、上述したティシュペーパー製品用二次原反ロールの製造設備X1を用いて行うことができる。
図11に示すように、本発明に係るティシュペーパー製品用二次原反ロールの製造方法においては、プライ手段51で複数の一次原反ロールから繰り出される一次連続シート(図示例ではS11、S12)をその連続方向に沿って積層して積層連続シートS2とし(積層工程)、この積層連続シートS2に対して一対の第一次薬液塗布手段40によって薬液を塗布し(第一次薬液塗布工程)、その後に一対の第二次薬液塗布手段53で薬液を塗布し(第二次薬液塗布工程)、スリット手段55によって積層連続シートS2をティシュペーパー製品の製品幅又はその複数倍幅となるようにスリットし(スリット工程)、次に、スリット工程でスリットされた積層連続シートS2を同軸で巻取ってティシュペーパー製品の製品幅又はその複数倍幅の複数の二次原反ロールRを、巻き取り手段56によって形成する。
【0128】
なお、本形態に係るティシュペーパー製品用二次原反ロールの製造方法では、上述したティシュペーパー製品用二次原反ロールの製造設備X1と同様に、積層工程の後段であって且つ薬液塗布工程の前段に、積層連続シートS2に対して一対のカレンダー手段52で平滑化処理する平滑化工程を設けることもできる。また、薬液塗布工程の後段であって且つスリット工程の前段に、積層連続シートS2に対してコンタクトエンボス手段54で層間剥離を防止するライン状のコンタクトエンボスを施すコンタクトエンボス工程を設けることもできる。
【0129】
本実施形態に係るティシュペーパー製品用二次原反ロールの製造設備又は製造方法においては、加工速度は100〜1100m/分とされ、好ましくは350〜1050m/分とされ、より好ましくは450〜1000m/分とされる。100m/分未満だと生産性が低く、他方、1100m/分超過であると、積層連続シートS2の断紙する頻度が高くなり、薬液塗布工程は刷版ロールやアニロックスロールの薬液の転移が不安定になりがちとなるため、塗布ムラが生じる可能性がある。
【0130】
上記例では主にフレキソ印刷方式について沿って説明したが、グラビア印刷方式も採用できることは既述のとおりである。グラビア印刷方式は、たとえば図21に示すように、
薬液溜めトレイ70からディップロール71が一定量の薬液を取り上げ、ディップロール71のセルに残った薬液は、グラビアロール72に移される。次いで、グラビアロール72に移された薬液は、掻取ブレード73によって掻き取られながら、圧胴74をバックアップとする積層シートS2の表面に同時に移される。グラビアロール72の網点密度などは適宜選択できる。
【0131】
〔マルチスタンド式インターフォルダ〕
上述のティシュペーパー製品用二次原反ロールの製造設備、製造方法で製造された二次原反ロールRは、マルチスタンド式インターフォルダに多数セットされ、セットされた二次原反ロールRから二次連続シートを繰り出して折り畳むと共に積層することによってティシュペーパー束が製造される。以下では、そのマルチスタンド式インターフォルダの一例について説明する。
【0132】
図2及び図3に、マルチスタンド式インターフォルダの一例を示した。図中の符号2は、マルチスタンド式インターフォルダ1の図示しない二次原反ロール支持部にセットされた二次原反ロールR,R…を示している。この二次原反ロールR,R…は、必要数が図示平面と直交する方向(図2における水平方向、図3における紙面前後方向)に横並びにセットされている。各二次原反ロールRは、上述のティシュペーパー製品用二次原反ロールの製造設備、製造方法でティシュペーパー製品幅にスリットが入れられており、ティシュペーパー製品の複数倍幅、図示例では2倍幅で巻き取られ、セットされている。
【0133】
二次原反ロールRから巻き出された連続する帯状の二次連続シート3A及び3Bは、ガイドローラG1、G1等のガイド手段に案内されて折畳機構部20へ送り込まれる。また、折畳機構部20には、図4に示すように、折板P,P…が必要数並設されてなる折板群21が備えられている。各折板Pに対しては、一対の連続する二次連続シート3A又は3Bを案内するガイドローラG2,G2やガイド丸棒部材G3,G3が、それぞれ適所に備えられている。さらに、折板P,P…の下方には、折り畳みながら積み重ねられた積層帯30を受けて搬送するコンベア22が備えられている。
【0134】
この種の折板P,P…を用いた折畳機構は、例えば、米国特許4052048号特許明細書等によって公知の機構である。この種の折畳機構は、図5に示すように、各連続する二次連続シート3A,3B…を、Z字状に折り畳みながら、かつ隣接する連続する二次連続シート3A,3B…の側端部相互を掛け合わせながら積み重ねる。
【0135】
図7〜図10に、折畳機構部20の特に折板Pに関する部位を、詳しく示した。本折畳機構部20においては、各折板Pに対して、一対の連続する二次連続シート3A及び3Bが案内される。この際、連続する二次連続シート3A及び3Bは、ガイド丸棒部材G3,G3によって、側端部相互が重ならないように位置をずらされながら案内される。
【0136】
折板Pに案内された時点で下側に重なっている連続する二次連続シートを第1の連続する二次連続シート3Aとし、上側に重なっている連続する二次連続シートを第2の連続する二次連続シート3Bとすると、これら連続する二次連続シート3A及び3Bは、図5及び図8に示すように、第1の連続する二次連続シート3Aの第2の連続する二次連続シート3Bと重なっていない側端部e1が、折板Pの側板P1によって、第2の連続する二次連続シート3Bの上側に折り返されるとともに、図5及び図9に示すように、第2の連続する二次連続シート3Bの第1の連続する二次連続シート3Aと重なっていない側端部e2が、折板PのスリットP2から折板P下に引き込まれるようにして下側に折り返される。この際、図5及び図10に示すように、上流の折板Pにおいて折り畳みながら積み重ねられた連続する二次連続シート3Aの側端部e3(e1)が、折板PのスリットP2から第2の連続する二次連続シート3Bの折り返し部分間に案内される。このようにして、各連続する二次連続シート3A,3B…は、Z字状に折り畳まれるとともに、隣接する連続する二次連続シート3A及び3Bの側端部相互が掛け合わされ、したがって、製品使用時において、最上位のティシュペーパーを引き出すと、次のティシュペーパーの側端部が引き出されることになる。
【0137】
以上のようにしてマルチスタンド式インターフォルダ1で得られた積層帯30は、図2に示すように、後段の切断手段41において流れ方向FLに所定の間隔をおいて裁断(切断)されてティシュペーパー束30aとされ、図6(a)に示すように、このティシュペーパー束30aは、更に後段設備において収納箱Bに収納される。なお、以上のようなマルチスタンド式インターフォルダ1では、積層帯30の紙の方向は、流れ方向FLに沿って縦方向(MD方向)となっており、流れ方向と直交する方向に沿って横方向(CD方向)となっている。このため、積層帯30を所定の長さに切断して得られたティシュペーパー束30aを構成するティシュペーパーの紙の方向は、図6(a)に示すように、ティシュペーパーの折り畳み部の延在方向に沿って縦方向(MD方向)となり、ティシュペーパーの折り畳み部の延在方向と直交する方向に沿って横方向(CD方向)となる。
【0138】
図6(b)に、収納箱Bにティシュペーパー束30aを収納して成る製品の一例を示した。収納箱Bの上面にはミシン目Mが設けられており、このミシン目Mで収納箱B上面の一部を破断することにより収納箱Bの上面が開口するようになっている。この開口は中央にスリットを有するフィルムFによって覆われており、このフィルムFに設けられたスリットを介してティシュペーパーTを取出すことができるようになっている。
ところで、前述したように、ティシュペーパー束30aを構成するティシュペーパーの紙の方向は、ティシュペーパーの折り畳み部の延在方向と直交する方向に沿って横方向(CD方向)となるため、図6(b)に示すように、ティシュペーパーTを収納箱Bから引き出す際には、その引き出し方向は、ティシュペーパーTの横方向(CD方向)と沿うようになっている。
【0139】
次に、ティシュペーパー製品用二次原反ロールの製造設備及び製造方法のその他の形態を説明する。
〔第3のティシュペーパー製品用二次原反ロールの製造設備及び製造方法〕
図20に示すように、コンタクトエンボス手段54は、カレンダー手段52と第二次薬液塗布手段53との間に設置することもできる。このようなティシュペーパー製品用二次原反ロールの製造設備X3を用いてのティシュペーパー製品用二次原反ロールの製造方法は次のようになる。
図20に示すように、本形態に係るティシュペーパー製品用二次原反ロールの製造方法においては、プライ手段51で複数の一次原反ロールから繰り出される一次連続シート(図示例ではS11、S12)をその連続方向に沿って積層して積層連続シートS2とし(積層工程)、この積層連続シートS2に対して一対のカレンダー手段52で平滑化処理し(平滑化工程)、平滑化処理された積層連続シートS2に対してコンタクトエンボス手段54でコンタクトエンボスを付与し(コンタクトエンボス工程)、コンタクトエンボスを付与された積層連続シートS2に対して一対の第二次薬液塗布手段53で薬液を塗布し(薬液塗布工程)、スリット手段55によって積層連続シートS2をティシュペーパー製品の製品幅又はその複数倍幅となるようにスリットし(スリット工程)、次に、スリット工程でスリットされた積層連続シートS2を同軸で巻取ってティシュペーパー製品の製品幅又はその複数倍幅の複数の二次原反ロールRを、巻き取り手段56によって形成する。
なお、ティシュペーパー製品用二次原反ロールの製造設備X3で、薬液が塗布されないティシュペーパー製品を製造する場合、図20において二点鎖線で示すように、積層連続シートS2をコンタクトエンボス手段54からスリット手段55に直接移送し、第二次薬液塗布手段53を通さずに積層連続シートS2を流すだけで良い。
【0140】
〔第4のティシュペーパー製品用二次原反ロールの製造設備及び製造方法〕
図21に示すように、薬液塗布工程53は、コンタクトエンボス手段54は、プライ手段51とカレンダー手段52との間に設置し、カレンダー手段52を一段として第二次薬液塗布手段53とコンタクトエンボス手段54との間に設置することもできる。このようなティシュペーパー製品用二次原反ロールの製造設備X4を用いてのティシュペーパー製品用二次原反ロールの製造方法は次のようになる。
図21に示すように、本形態に係るティシュペーパー製品用二次原反ロールの製造方法においては、プライ手段51で複数の一次原反ロールから繰り出される一次連続シート(図示例ではS11、S12)をその連続方向に沿って積層して積層連続シートS2とし(積層工程)、この積層連続シートS2に対して上下方向に並設された一対の第二次薬液塗布手段53で薬液を塗布し(薬液塗布工程)、一対のカレンダー手段52で平滑化処理し(平滑化工程)、平滑化処理された積層連続シートS2に対してコンタクトエンボス手段54でコンタクトエンボスを付与し(コンタクトエンボス工程)、スリット手段55によって積層連続シートS2をティシュペーパー製品の製品幅又はその複数倍幅となるようにスリットし(スリット工程)、次に、スリット工程でスリットされた積層連続シートS2を同軸で巻取ってティシュペーパー製品の製品幅又はその複数倍幅の複数の二次原反ロールRを、巻き取り手段56によって形成する。
なお、ティシュペーパー製品用二次原反ロールの製造設備X4で、薬液が塗布されないティシュペーパー製品を製造する場合、図21において二点鎖線で示すように、積層連続シートS2をカレンダー手段52からコンタクトエンボス手段54に移送し、第二次薬液塗布手段53を通さずに積層連続シートS2を流すだけで良い。
【0141】
〔第5のティシュペーパー製品用二次原反ロールの製造設備及び製造方法〕
図22に示すように、一対のカレンダー手段52を上下方向に沿って配置し、且つ、一対の第二次薬液塗布手段53を上下方向に沿って配置することもできる。
このようなティシュペーパー製品用二次原反ロールの製造設備X5を用いてのティシュペーパー製品用二次原反ロールの製造方法は次のようになる。
図22に示すように、本形態に係るティシュペーパー製品用二次原反ロールの製造方法においては、プライ手段51で複数の一次原反ロールから繰り出される一次連続シート(図示例ではS11、S12)をその連続方向に沿って積層して積層連続シートS2とし(積層工程)、この積層連続シートS2に対して一対のカレンダー手段52で平滑化処理し(平滑化工程)、積層連続シートS2に対して一対の第二次薬液塗布手段53で薬液を塗布し(薬液塗布工程)、積層連続シートS2に対してコンタクトエンボス手段54でコンタクトエンボスを付与し(コンタクトエンボス工程)、スリット手段55によって積層連続シートS2をティシュペーパー製品の製品幅又はその複数倍幅となるようにスリットし(スリット工程)、次に、スリット工程でスリットされた積層連続シートS2を同軸で巻取ってティシュペーパー製品の製品幅又はその複数倍幅の複数の二次原反ロールRを、巻き取り手段56によって形成する。
なお、ティシュペーパー製品用二次原反ロールの製造設備X5で、薬液が塗布されないティシュペーパー製品を製造する場合、図22において二点鎖線で示すように、積層連続シートS2をカレンダー手段52からコンタクトエンボス手段54に直接移送し、第二次薬液塗布手段53を通さずに積層連続シートS2を流すだけで良い。
【実施例】
【0142】
次に、図1及び図11に示されるティシュペーパー製品用二次原反ロールX1の製造方法で製造された2プライ巻き取りの二次原反ロールRを用い、必要の組数分を上記のマルチスタンド式インターフォルダにセットし、ティシュペーパー製品(実施例)を製造した。
【0143】
<実施例、比較例及び参考例の形態>
実施例1は、ローターダンプニング方式による第一次薬液噴霧を行い、その後にフレキソ印刷方式による第二次薬液塗布を行なったものである。第一次薬液噴霧:片側当たり1.0g/m2としたものである。第二次薬液塗布:片側当たり1.0g/m2としたものである。したがって、2プライ合計での薬液付与量は4.0g/m2となる。
実施例2は、ローターダンプニング方式による第一次薬液噴霧を行い、その後にフレキソ印刷方式による第二次薬液塗布を行なったものである。第一次薬液噴霧:片側当たり0.6g/m2としたものである。第二次薬液塗布:片側当たり1.4g/m2としたものである。したがって、2プライ合計での薬液付与量は4.0g/m2となる。
実施例3は、ローターダンプニング方式による第一次薬液噴霧を行い、その後にフレキソ印刷方式による第二次薬液塗布を行なったものである。第一次薬液噴霧:片側当たり1.6g/m2としたものである。第二次薬液塗布:片側当たり0.4g/m2としたものである。したがって、2プライ合計での薬液付与量は4.0g/m2となる。
実施例4は、ノズル方式による第一次薬液噴霧を行い、その後にフレキソ印刷方式による第二次薬液塗布を行なったものである。第一次薬液噴霧:片側当たり1.0g/m2としたものである。第二次薬液塗布:片側当たり1.0g/m2としたものである。したがって、2プライ合計での薬液付与量は4.0g/m2となる。
実施例5は、ローターダンプニング方式による第一次薬液噴霧を行い、その後にグラビア印刷方式による第二次薬液塗布を行なったものである。第一次薬液噴霧:片側当たり1.0g/m2としたものである。第二次薬液塗布:片側当たり1.0g/m2としたものである。したがって、2プライ合計での薬液付与量は4.0g/m2となる。
比較例1は、二段階薬液付与を行なわないで、プライマシンでフレキソ印刷方式による一回だけの薬液塗布を行なったものである。塗布量は片側当たり2.0g/m2とし、2プライ合計での薬液付与量は4.0g/m2としたものである。
比較例2は、プライマシンでフレキソ印刷方式による第一次薬液塗布を、片側当たり1.0g/m2の塗布量(両面では2.0g/m2)で行なった後、続いてにフレキソ印刷方式による第二次薬液塗布を、片側当たり1.0g/m2の塗布量(両面では2.0g/m2)で行なった、二段階塗布方式によるものである。2プライ合計での薬液付与量は4.0g/m2としたものである。
【0144】
<他の条件>
原紙を構成するパルプは、NBKP30%、LBKP70%とした。また、クレープ率19%のものを使用した。各実施例及び各比較例については、同じ組成の薬液を、粘度が110mPa・s(40℃)となるように調製した。
参考例1は出願人が市販している非保湿系の汎用ティシュペーパー、参考例2は出願人が市販しているローションタイプのティシュペーパーであるが、参考例3及び参考例4は他社の市販品であるので、不明内容を含む。
【0145】
表中に示す各パラメーターは、以下のとおりである。
米坪・・・JIS P 8124(1998)に準じて測定した。2プライのティシュー製品の場合、2プライのシートの平均米坪を記載した。
紙厚・・・JIS P 8111(1998)の条件下で、ダイヤルシックネスゲージ(厚み測定器)「PEACOCK G型」(尾崎製作所製)を用いて測定されるものである(JIS P 8118(1998)に準じる)。
製品密度・・・製品の密度は、JIS P 8111 条件下において調湿させたティシュペーパー製品米坪を2倍した値(C)を、「PEACOCK G型」によるティシュペーパー(2プライ)での紙厚(D)で除した値で、単位をg/cm3、小数点3桁で表す。
乾燥引張強度・・・JIS P 8113(1998)の引張試験方法に準じて測定されるものである。
湿潤引張強度・・・JIS P 8135(1998)に準じて測定されるものである。
伸率・・・ミネベア株式会社製「万能引張圧縮試験機 TG−200N」を用いて測定されるものである。
ソフトネス・・・JIS L1096 E法に準じたハンドルオメータ法に基づいて測定されるものである。但し、試験片は100mm×100mmの大きさとし、クリアランスは5mmで実施した。1プライで縦方向、横方向の各々5回ずつ測定し、その全10回の平均値を小数点1桁とし、cN/100mmを単位として表した。
静摩擦係数・・・JIS P 8147(1998)に準じて次記の方法で測定されるものである。1プライにはがしたティシュペーパーを、紙の表が外側に来るようにアクリル板に張り付ける。2プライのまま100gのおもりにティシュペーパーを巻きつけ、アクリル板上のティシューに乗せる。アクリル板を傾け、おもりが滑り落ちる角度を測定する。角度測定は8回実施し、平均角度を算出し、そのタンジェント値を静摩擦係数とする。
MMD・・・静摩擦係数の平均偏差MMDである。MMDは滑らかさの指標の一つであり、数値が小さいほど滑らかであり、数値が大きいほど滑らかさに劣るとされる。なお、MMD値の測定方法としては、図23(a)に示すように、摩擦子212の接触面を所定方向(図23(a)における右斜め下方向)に20g/cmの張力が付与された測定試料であるティシュペーパー211の表面に対して25gの接触圧で接触させながら、張力が付与された方向と略同じ方向に速度0.1cm/sで2cm移動させる。このときの、摩擦係数を、摩擦感テスター KES−SE(カトーテック株式会社製)を用いて測定し、その摩擦係数を摩擦距離(移動距離=2cm)で除した値をMMD値とした。なお、摩擦子212は、直径0.5mmのピアノ線Pを20本隣接させてなり、長さ及び幅がともに10mmとなるように形成された接触面を有している。接触面には、先端が20本のピアノ線P(曲率半径0.25mm)で形成された単位膨出部が形成されている。なお、図23(a)には、摩擦子212を模式的に表し、図23(b)には、図23(a)における一点鎖線で囲まれた部分の拡大図を示すものとする。
水分率・・・JIS P 8111(1998)に準じて測定されるものである。
薬液含有量・・・薬液付与量とは、JIS P 8111の標準状態におけるティシュペーパーの単位面積に対し含まれる乾燥状態(絶乾)の薬液成分の含有量を示し、具体的には、付与した薬液中の水分以外の成分の含有量を示すものとする。このティシュペーパーの単位面積とは、プライされたシートを平面に垂直線上にある視点から見た面積であり、プライされた各シート、およびその表裏面の合計面積を意味しない。
薬液含有率・・・薬液付与率とは、JIS P 8111 条件下において調湿させた所定質量のティシュペーパー製品を分母(A)(g)とし、所定質量のティシュペーパー製品中に含まれる薬液中の水分を除いた質量(B)(g)を分子として、(B)を(A)で除した比率を(%)で表す。(薬液含有率%)=(B)÷(A)×100(%)
官能評価・・・実施例1〜5、比較例1、2及び参考例1〜4について、消費者87人を対象に、やわらかさ、なめらかさ、厚み感、しっとり感について下記の基準に基づく官能評価を行った。
なお、評価基準は、薬液が付与されていない非保湿系の汎用ティシュペーパー(比較例1)の成績をすべて「3」とし、「大変優れている」と感じたものについては「5」、「優れている」と感じたものについては「4」、「基準と同等」と感じたものについては「3」、「劣る」と感じたものについては「2」、「顕著に劣る」と感じたものについては「1」とした。さらに、薬液付与ティシュペーパーについては、ベタつき感の有無についても評価を行い、評価基準は、「ベタつき感が少ない」ものを「○」とし、「明らかにベタつき感がある」ものを「×」とした。
さらに、官能評価のばらつきとは、各官能評価が幅方向及び流れ方向で安定しているか否かを、シートの幅方向及び流れ方向において、前記消費者87人に供したサンプルの採取位置との相関で調べたものである。評価は、比較例1における各官能評価の幅方向及び流れ方向での安定性を基準にし、比較例1の場合を「1」、優れているを「2」、顕著に優れているを「3」としたものである。
【0146】
【表1】
【0147】
【表2】
【0148】
【表3】
【0149】
【表4】
【0150】
【表5】
【0151】
【表6】
【0152】
【表7】
【0153】
結果を表中に記載をしていないが、実施例1〜実施例5のいずれにおいても、製造現場において、比較例2のフレキソ方式の二段塗布と比較して、紙粉の発生が少なく、安定した製造が可能であることが判った。また、実施例と比較例1との比較においては、実施例の方が、官能評価のばらつきが少ないことが判る。比較例2のフレキソ方式の二段塗布においても官能評価のばらつきが少ないものの、比較例2のフレキソ方式の二段塗布との比較で実施例をみると、「厚み感」において高い評価となる。なお、実施例1〜5内において比較すると、第一次薬液噴霧手段及び第二次薬液塗布手段での付与量は、0.5〜1.5g/m2とするのが望ましいことが判る。
【0154】
先の説明から明らかなように、本明細書及び図面は、以下の発明も開示している。
〔発明1〕
一次原反ロールから連続的にティシュペーパー製品用の複数の二次原反ロールを製造するティシュペーパー製品用二次原反ロールの製造方法であって、
複数の一次原反ロールから繰り出される一次連続シートをその連続方向に沿って積層して積層連続シートとする積層手段と、
前記連続シートのそれぞれに対して薬液を噴霧状態で付与する第一次薬液噴霧手段と、
その後に、それぞれの連続シートに対して薬液をフレキソ印刷方式又はグラビア印刷方式によって塗布する第二次薬液塗布手段と、
積層連続シートをティシュペーパー製品の製品幅又はその複数倍幅となるようにスリットするスリット手段と、
スリットされた各積層連続シートを同軸で巻取ってティシュペーパー製品の製品幅又はその複数倍幅の複数の二次原反ロールを形成する巻取り手段と、を有することを特徴とするティシュペーパー製品用二次原反ロールの製造装置。
【0155】
〔発明2〕
前記第一次薬液噴霧手段が、前記積層手段の後であって、且つ、前記スリット手段の前に行われる、発明1に記載のティシュペーパー製品用二次原反ロールの製造装置。
【0156】
〔発明3〕
前記積層手段と前記第一次薬液噴霧手段との間に、カレンダーにて平滑化処理する平滑化手段を有する、発明2に記載のティシュペーパー製品用二次原反ロールの製造装置。
【0157】
〔発明4〕
前記第二次薬液塗布手段と前記スリット手段との間に、前記積層連続シートに対して層間剥離を防止するライン状のコンタクトエンボスを施すコンタクトエンボス手段を有する、発明2に記載のティシュペーパー製品用二次原反ロールの製造装置。
【0158】
〔発明5〕
前記第一次薬液の付与がノズル式噴霧方式によるものである、発明1に記載のティシュペーパー製品用二次原反ロールの製造装置。
【0159】
〔発明6〕
前記第一次薬液の付与がローターダンプニング噴霧方式によるものである、発明1に記載のティシュペーパー製品用二次原反ロールの製造装置。
【0160】
〔発明7〕
前記発明のいずれか1項の発明によって得られた前記二次原反ロールを多数用意し、これらをマルチスタンド式インターフォルダにおいてライン方向に沿って配置し、各二次原反ロールから繰り出される複数の二次連続シートをその連続方向に沿って移送すると共に、その移送過程で折畳みながら積み重ね、その後、所定枚数の積層シートを所定長さ切断してティシュペーパー束とし、この積層を収納箱内に収納することを特徴とするティシュペーパー製品の製造装置。
【産業上の利用可能性】
【0161】
本発明は、マルチスタンド式インターフォルダで用いられるティシュペーパー製品用二次原反ロールの製造及びマルチスタンド式インターフォルダを用いたティシュペーパー製品の製造に適用できるものである。
【符号の説明】
【0162】
40・・・第一次薬液塗布手段(第一次薬液塗布工程)
51・・・プライ手段(積層工程)
52・・・カレンダー手段(平滑化工程)
53・・・第二次薬液塗布手段(第二次薬液塗布工程)
54・・・コンタクトエンボス手段(コンタクトエンボス工程)
55・・・スリット手段(スリット工程)
56・・・第2巻取り手段(二次原反ロール巻取り工程)
115・・・ヤンキードライヤー(乾燥工程)
119・・・第1巻取り手段(第1巻取り工程)
40・・・薬液噴霧手段(薬液噴霧工程)
190・・・搾水手段(搾水工程)
W・・・湿紙
S1・・・乾紙
S11、S12・・・一次連続シート
S2・・・積層連続シート
JR・・・一次原反ロール
R・・・二次原反ロール
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一次原反ロールから連続的にティシュペーパー製品用の複数の二次原反ロールを製造するティシュペーパー製品用二次原反ロールの製造方法であって、
複数の一次原反ロールから繰り出される一次連続シートをその連続方向に沿って積層して積層連続シートとする積層工程と、
前記連続シートのそれぞれに対して薬液を噴霧状態で付与する第一次薬液噴霧工程と、
その後に、それぞれの連続シートに対して薬液をフレキソ印刷方式又はグラビア印刷方式によって塗布する第二次薬液塗布工程と、
積層連続シートをティシュペーパー製品の製品幅又はその複数倍幅となるようにスリットするスリット工程と、
スリットされた各積層連続シートを同軸で巻取ってティシュペーパー製品の製品幅又はその複数倍幅の複数の二次原反ロールを形成する巻取り工程と、を有することを特徴とするティシュペーパー製品用二次原反ロールの製造方法。
【請求項2】
前記第一次薬液噴霧工程が、前記積層工程の後であって、且つ、前記スリット工程の前に行われる、請求項1に記載のティシュペーパー製品用二次原反ロールの製造方法。
【請求項3】
前記積層工程と前記第一次薬液噴霧工程との間に、カレンダーにて平滑化処理する平滑化工程を有する、請求項2に記載のティシュペーパー製品用二次原反ロールの製造方法。
【請求項4】
前記第二次薬液塗布工程と前記スリット工程との間に、前記積層連続シートに対して層間剥離を防止するライン状のコンタクトエンボスを施すコンタクトエンボス工程を有する、請求項2に記載のティシュペーパー製品用二次原反ロールの製造方法。
【請求項5】
前記第一次薬液の付与がノズル式噴霧方式によるものである、請求項1に記載のティシュペーパー製品用二次原反ロールの製造方法。
【請求項6】
前記第一次薬液の付与がローターダンプニング噴霧方式によるものである、請求項1に記載のティシュペーパー製品用二次原反ロールの製造方法。
【請求項7】
前記請求項のいずれか1項の請求項によって得られた前記二次原反ロールを多数用意し、これらをマルチスタンド式インターフォルダにおいてライン方向に沿って配置し、各二次原反ロールから繰り出される複数の二次連続シートをその連続方向に沿って移送すると共に、その移送過程で折畳みながら積み重ね、その後、所定枚数の積層シートを所定長さ切断してティシュペーパー束とし、この積層を収納箱内に収納することを特徴とするティシュペーパー製品の製造方法。
【請求項1】
一次原反ロールから連続的にティシュペーパー製品用の複数の二次原反ロールを製造するティシュペーパー製品用二次原反ロールの製造方法であって、
複数の一次原反ロールから繰り出される一次連続シートをその連続方向に沿って積層して積層連続シートとする積層工程と、
前記連続シートのそれぞれに対して薬液を噴霧状態で付与する第一次薬液噴霧工程と、
その後に、それぞれの連続シートに対して薬液をフレキソ印刷方式又はグラビア印刷方式によって塗布する第二次薬液塗布工程と、
積層連続シートをティシュペーパー製品の製品幅又はその複数倍幅となるようにスリットするスリット工程と、
スリットされた各積層連続シートを同軸で巻取ってティシュペーパー製品の製品幅又はその複数倍幅の複数の二次原反ロールを形成する巻取り工程と、を有することを特徴とするティシュペーパー製品用二次原反ロールの製造方法。
【請求項2】
前記第一次薬液噴霧工程が、前記積層工程の後であって、且つ、前記スリット工程の前に行われる、請求項1に記載のティシュペーパー製品用二次原反ロールの製造方法。
【請求項3】
前記積層工程と前記第一次薬液噴霧工程との間に、カレンダーにて平滑化処理する平滑化工程を有する、請求項2に記載のティシュペーパー製品用二次原反ロールの製造方法。
【請求項4】
前記第二次薬液塗布工程と前記スリット工程との間に、前記積層連続シートに対して層間剥離を防止するライン状のコンタクトエンボスを施すコンタクトエンボス工程を有する、請求項2に記載のティシュペーパー製品用二次原反ロールの製造方法。
【請求項5】
前記第一次薬液の付与がノズル式噴霧方式によるものである、請求項1に記載のティシュペーパー製品用二次原反ロールの製造方法。
【請求項6】
前記第一次薬液の付与がローターダンプニング噴霧方式によるものである、請求項1に記載のティシュペーパー製品用二次原反ロールの製造方法。
【請求項7】
前記請求項のいずれか1項の請求項によって得られた前記二次原反ロールを多数用意し、これらをマルチスタンド式インターフォルダにおいてライン方向に沿って配置し、各二次原反ロールから繰り出される複数の二次連続シートをその連続方向に沿って移送すると共に、その移送過程で折畳みながら積み重ね、その後、所定枚数の積層シートを所定長さ切断してティシュペーパー束とし、この積層を収納箱内に収納することを特徴とするティシュペーパー製品の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【公開番号】特開2011−206074(P2011−206074A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−73788(P2010−73788)
【出願日】平成22年3月26日(2010.3.26)
【特許番号】特許第4681677号(P4681677)
【特許公報発行日】平成23年5月11日(2011.5.11)
【出願人】(390029148)大王製紙株式会社 (2,041)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月26日(2010.3.26)
【特許番号】特許第4681677号(P4681677)
【特許公報発行日】平成23年5月11日(2011.5.11)
【出願人】(390029148)大王製紙株式会社 (2,041)
【Fターム(参考)】
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