説明

ティシュペーパー製品

【課題】保湿ティシュペーパーと同等以上の滑らかさ及びしっとり感を有し、かつ、使用時のベタつき感と破れやすさとを軽減し、取り出し時に破れにくいティシュペーパー製品を提供する。
【解決手段】2プライの薬液塗布ティシュペーパーについて、前記薬液を、薬剤含有量が両面で1.5〜5.0g/m2となるように塗布して、2プライを構成するシートの1層あたりの坪量が10〜25g/m2、2プライの紙厚が100〜140μmとなるように構成する。また、収納箱201の取り出し窓202aを構成するフィルムの横方向とシート取出し方向との静摩擦係数を0.20〜0.30とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ティシュペーパー製品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
国内市場のティシュペーパーは大きく分けて、非保湿ティシューと保湿ティシューに大別される。ここで、保湿ティシューは抄紙されたティシュー原紙にグリセリン等の保湿剤を塗布して生産されたティシューであり、非保湿ティシューとはティシュー原紙に保湿剤を塗布しない一般的なティシューである。
ティシュペーパーの用途は、鼻かみ用途を含むフェイシャル用を中心とした主に対人用途であり、保湿ティシューは鼻かみ用に特化された製品仕様とされている。
従来、ティシュペーパーは鼻かみ用途を中心としたフェイシャル用途で使用されてきたことから、肌触りの良さを追求するため、これまで数多くの試みがなされ、品質改良を重ねてきた。例えば、各種の柔軟剤を原料に添加し製品の柔軟性を向上させる、繊維粗度の低いしなやかな繊維を多く使用する、湿紙のドライヤー乾燥時の貼りつきとドクター当りの調整により細かなクレーピングを形成する、カレンダーにより表面性を向上させる、原料噴射速度と網部の速度の比率調整により横強度を維持しつつ原料の叩解度を低く調整する、等の技術により、紙の柔らかさや滑らかさの改善が図られてきた。
【0003】
しかし更なる品質向上のためには、非保湿ティシューでは技術的な限界があることや、花粉症やアレルギー性鼻炎の罹患者の増加等が要因となり、保湿ティシューが開発され現在ティシュー市場の一部を占めている。
アレルギー性鼻炎や花粉症などのヘビーユーザーは日に数十回以上も鼻をかむことにより、鼻およびその周辺がティシューとの摩擦により、軽い炎症を起こし赤くなりヒリヒリとした傷みを感じやすい。そのため、このようなユーザーには、ティシュー表面の摩擦の小さなもの、つまり滑らかさを有する物が好ましく使用される。保湿ティシューはグリセリン等の吸湿性のある保湿剤を含む水系ローション薬液を、衛生薄葉紙の基紙に対し塗布する。グリセリンは化粧品に使われているように肌への刺激性が少なく、吸湿してティシューをしっとり、柔らかくするとともにティシューの表面に薄い皮膜を形成し、一般の非塗布ティシューに比して明らかに柔らかで、滑らかな肌触りを有する差別化した商品として認知されている。例えば、油性物質と保湿剤を外添塗布する技術が紹介されている(特許文献1)。
【0004】
このように保湿ティシューは認知され消費量は増加しているが、保湿ティシューのヘビーユーザーの中には、鼻をかんだ後に肌に保湿剤が残り、ベタつき感を感じ、これを嫌うユーザーが一部に存在する。このベタつき感については特許文献2のように、有機、無機粉体を配合するなど薬剤組成を変更することで、ベタつき感を改善する方法も知られている。
【0005】
従来、保湿ティシューの製造は、抄紙工程、プライ工程の後、オフマシンで薬液塗布を行い、次いでロータリー式インターフォルダによる折り加工を行うのが一般的であり、非保湿ティシューの製造に多用されるマルチスタンド式インターフォルダによる製造は行なわれていない。
【0006】
ボックスティシュー製品としては、箱の製造コストや輸送コストの削減の観点より、高さを減じ、コンパクト化した収納箱(高さ50〜65mm程度)を使用するのが主流となっている。コンパクト化した収納箱を使用する場合、通常、内部に収納されるティシュペーパーは圧縮されており、圧縮に伴う最上層のティシュペーパーの取り出しにくさを解消するため、収納箱上面の取り出し口は箱上面の長辺方向に対して長めに設計されている(特許文献3)。しかし、保湿ティシューにおいては、その滑り性の高さから、ティシュペーパーが取り出し口に保持されにくく、収納箱内に落ち込み、ポップアップしづらくなる、という問題が生じ得る。一方で、ティシュペーパーを取り出し口に保持するために、取り出し口を小さくする、取り出し口に配されるフィルムの剛性を高める等の措置を講じた場合、ティシュペーパーの取り出し時に破れやすい、という問題が生じ得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平4−9121号公報
【特許文献2】特開2007−143764号公報
【特許文献3】特許第4067320号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の第1の課題は、従来の保湿ティシュペーパーと同等以上の滑らかさ及びしっとり感を有し、かつ、使用時のベタつき感と破れやすさとを軽減したティシュペーパーを提供することである。本発明の第2の課題は、上記のティシュペーパー収納時において、その取り出しやすさ、ポップアップのしやすさを保持しつつ、かつ、取り出す際に破れにくくなるよう構成された収納箱を使用した、ティシュペーパー製品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決した本発明は次記のとおりである。
<請求項1記載の発明>
表面に薬液が塗布された2プライのティシュペーパーがポップアップ方式で折り畳まれて略直方体の収納箱に収納されたティシュペーパー製品であって、
前記ティシュペーパーは、薬剤含有量が両面で1.5〜5.0g/m2であり、
2プライを構成するシートの1層あたりの坪量が10〜25g/m2であり、
2プライの紙厚が100〜140μmであり、
前記収納箱は、上面に、その長辺方向に平行に開口を有する紙箱よりなり、前記開口は収納箱内面に貼付されたフィルムにより被覆され、前記フィルムは前記開口に長辺方向に平行なスリットを有し、
前記フィルム横方向とシート取出し方向との静摩擦係数が0.20〜0.30である、ティシュペーパー製品。
【0010】
<請求項2記載の発明>
前記薬液の水分含有量が1〜15%である、請求項1記載のティシュペーパー製品。
【0011】
<請求項3記載の発明>
前記ティシュペーパーの2プライのCD方向の乾燥引張強度が80〜120cN/25mmである、請求項1記載のティシュペーパー製品。
【0012】
<請求項4記載の発明>
前記ティシュペーパーのシート間の静摩擦係数が0.50〜0.65である、請求項1記載のティシュペーパー製品。
【発明の効果】
【0013】
2プライのティシュペーパーを構成するシートに規定量の水分を含む薬液を塗布して浸透させることにより、シートのクレープ構造が伸長し、表面の滑らかなティシュペーパーが形成される。また、伸長により紙厚が低くなるとともに繊維密度が高くなるため、繊維間強度が増加し、CD方向の引張強度の高いティシュペーパーとすることができる。従来の保湿ティシューが厚みのある基紙にローション薬液を塗布し、ティシュー表面に皮膜を作り滑らかさを使用者に与えているのに対し、本発明は厚みと薬液塗布量を抑え、クレープ構造を伸長させて表面を滑らかにするもので、これにより従来の保湿ティシュー以上の滑らかさを与えるものである。つまり、ティシュー表面のローション薬液の皮膜を滑らかさを感じさせる最小限の量としてベタつき感を軽減したものである。そのため、乾燥状態における薬剤含有量が従来のローションタイプのティシュペーパーよりも低く、使用時のベタつき感が生じにくいにも関わらず、その効果を奏するのに充分な量の薬剤が含有されていることから、充分なしっとり感、保湿性を保有する。さらには、紙厚が薄いことにより、薬剤含有量に比して柔らかい使用感を有する。
【0014】
マルチスタンド式インターフォルダの使用により、製造の高速化を行うことができる。マルチスタンド式インターフォルダを使用する場合、製造されるティシュペーパー製品は、需要者がティシュペーパーをCD方向に引き出す形態となる。しかし、従来の保湿ティシューは、非保湿ティシューに比して紙力、特にCD方向の引っ張り強度が高くないことから、マルチスタンド式インターフォルダにより製造された製品においては、引き出し時に破れやすくなる、という問題が想定される。
【0015】
本発明におけるティシュペーパー製品においては、上記のようにティシュペーパーをCD方向の引張強度が強く、かつ静摩擦係数の小さいものとするとともに、ティシュペーパーの収納箱として、取り出し口周辺のフィルムに柔軟なものを使用し、取り出し口の大きさを規定したものを使用している。これにより、ティシュペーパーをCD方向に引っ張って取り出しても破れにくく、かつ、最上層が取り出し口から箱内部に落ち込みにくい構成とした。 保湿ティシュペーパーについてマルチスタンド式インターフォルダで折り加工を行う場合、水分を含む連続シートにMD方向に比較的高い引張力をかけ、かつ厚み方向に圧力をかけながら加工するため、従来のロータリー式インターフォルダ使用時と比して、ウェブ嵩を低く抑えることができる。この効果により、非保湿ティシュペーパー製品に多用されるコンパクト型収納箱にも収納可能となる。
【0016】
以上のように、本発明は、従来の保湿ティシューと同等以上にしっとりと滑らかな風合いを有するとともに、従来の保湿ティシューよりもベタつき感がなく、かつCD方向の引張強度の高いティシュペーパーを提供するものである。また、ティシュペーパーを収納箱からCD方向に引っ張って取り出すことが可能であることから、マルチスタンド式インターフォルダを用いて高速で製造することが可能な薬液塗布ティシュペーパー製品を提供する。さらに、コンパクト型収納箱に収納された薬液塗布ティシュペーパー製品を提供するものである。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る第1の実施形態のティシュペーパーのプライ工程の装置概要を示す図である。
【図2】マルチスタンド式インターフォルダの一例を示す概略図であり、正面から見た状態を示している。
【図3】マルチスタンド式インターフォルダの一例を示す概略図であり、側面から見た状態を示している。
【図4】マルチスタンド式インターフォルダの一例を示す概略図であり、正面から見た状態を示している。
【図5】折り畳まれたティシュペーパーの縦断面図である。
【図6】折り板に関する部位の要部拡大斜視図である。
【図7】二次連続シート(ティシュペーパー)の折り畳み方を示す要部拡大斜視図である。
【図8】二次連続シート(ティシュペーパー)の折り畳み方を示す要部拡大斜視図である。
【図9】二次連続シート(ティシュペーパー)の折り畳み方を示す要部拡大斜視図である。
【図10】第1の実施形態の(a)ティシュペーパー束を収納箱に収納している様子を示す図である。(b)収納箱に収納されたティシュペーパーの取出す様子を示す一部破断図である。
【図11】ティシュペーパーのMMD値の測定方法を示す図である。
【図12】本発明に係るティシュペーパー製品の一例を示す斜視図である。
【図13】図12のティシュペーパー製品の収納箱の内面展開図である。
【図14】本発明に係るティシュペーパー製品の他の例を示す斜視図である。
【図15】図14のティシュペーパー製品の収納箱の内面展開図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について詳説する。
〔構造例〕
本発明に係るティシュペーパーの基材紙は、2枚の薄葉紙(以下、シートともいう)が積層されたプライ構造とする。
【0019】
〔薄葉紙〕
他方、本発明に係るティシュペーパーを構成する薄葉紙(シート)の原料パルプとしては、例えば、グランドウッドパルプ(GP)、プレッシャーライズドグランドウッドパルプ(PGW)、サーモメカニカルパルプ(TMP)等の機械パルプ:セミケミカルパルプ(SCP)、針葉樹高歩留り未晒クラフトパルプ(HNKP)、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)、広葉樹未晒クラフトパルプ(LUKP)、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)等の化学パルプ:デインクドパルプ(DIP)、ウェイストパルプ(WP)等の古紙パルプが挙げられる。原料パルプは、一種または二種以上を選択して用いることができる。好適には填料や異物を含まない化学パルプが好ましい。また、原料パルプ中には、藁パルプ、竹パルプ、ケナフパルプなどの木本類、草本類が含まれていてもよい。
【0020】
特には、原料パルプは、NBKPとLBKPとを配合したものが好ましい。適宜古紙パルプが配合されていてもよいが、風合いなどの点で、NBKPとLBKPのみから構成されているのがよく、その場合配合割合としては、NBKP:LBKP=20:80〜80:20がよく、特に、NBKP:LBKP=30:70〜60:40が望ましい。
【0021】
他方、抄紙原料中には、上記以外の繊維原料として、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、及びこれらのコポリマー等のポリエステル系繊維、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等のポリオレフィン系繊維、ポリアクリロニトリル、モダクリル等のアクリル繊維、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12等のポリアミド系繊維、ポリビニルアルコール繊維、ポリ塩化ビニリデン繊維、ポリ塩化ビニル繊維、ウレタン繊維等の合成繊維、トリアセテート繊維、ジアセテート繊維等の半合成繊維、ビスコースレーヨン、銅アンモニアレーヨン、ポリノジックレーヨン、リヨセル等の再生セルロール系繊維、コラーゲン、アルギン酸、キチン質などを溶液にしたものを紡糸した再生繊維などの化学繊維を含ませることができる。化学繊維を構成するポリマーはホモポリマー、変性ポリマー、ブレンド、共重合体などの形であってもよい。
【0022】
パルプ繊維等の原料は、例えば、公知の抄紙工程、具体的には、ワイヤパート、プレスパート、ドライヤパート、カレンダパート等を経るなどして、基紙とする。この抄紙に際しては、例えば、乾燥紙力増強剤、湿潤紙力増強剤、柔軟剤、剥離剤、コーティング剤、粘剤(ねり)、苛性ソーダ等のpH調整剤、消泡剤、染料などの適宜の薬品を添加することができる。
【0023】
〔米坪〕
本発明に係るティシュペーパーのシート1層あたりの米坪は、米坪は10〜25g/m2、より好ましくは11〜16g/m2とすることが好ましい。米坪が10g/m2未満では、柔らかさの向上の観点からは好ましいものの、使用に耐えうる十分な強度を適正に確保することが困難となる。逆に米坪が25g/m2を超えると紙全体が硬くなるとともに、ゴワ付き感が生じてしまい肌触りが悪くなる。なお、米坪は、JIS P 8124(1998)の米坪測定方法による。
【0024】
〔クレープ率〕
本発明のティシュペーパーを構成する一次原反シートのクレープ率は10〜30%、より好ましくは13〜20%とする。ここで、クレープ率とは、下式で表わされるものとする。
クレープ率:{(製紙時のドライヤーの周速)−(リール周速)}/(製紙時のドライヤーの周速)×100。
【0025】
〔薬液〕
本発明のティシュペーパーは、薬剤を両面合わせて1.5〜5.0g/m2、より好ましくは3.0〜5.0g/m2含有する。薬剤含有量が1.5g/m2未満であれば薬剤の効果が発揮されず、また、5.0g/m2を超えるとティッシュペーパーにベタつき感が生じ、また、乾燥引張強度が低下する。
【0026】
塗布する薬液について、粘度は高速加工を行う観点から40℃で1〜700mPa・s特に50〜400mPa・sとするのが好ましい。1mPa・sより小さいとアニロックスロール、刷版ロール、グラビアロール等のロール上で薬液が飛散しやすくなり、逆に700mPa・sより大きいと各ロールや連続シートへの塗布量をコントロールしにくくなる。成分はポリオールを70〜90%、水分を1〜15%、機能性薬品を0.01〜22%含むものとする。塗布する薬液の水分量はカールフィッシャー法により求めた。
【0027】
ポリオールはグリセリン、ジグリセリン、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ポリエチレングリコール、およびその誘導体等の多価アルコール、ソルビトール、グルコース、キシリトール、マルトース、マルチトール、マンニトール、トレハロース等の糖類を含む。
【0028】
機能性薬剤としては、柔軟剤、界面活性剤、無機および有機の微粒子粉体、油性成分などがある。柔軟剤、界面活性剤はティシューに柔軟性を与えたり表面を滑らかにする効果があり、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤及び両性イオン界面活性剤を適用する。無機および有機の微粒子粉体は表面を滑らかな肌触りとする。油性成分は滑性を高める働きがあり、流動パラフィン、セタノール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール等の高級アルコールを用いることができる。
【0029】
また機能性薬剤としてポリオールの保湿性を助けたり、維持させる薬剤として親水性高分子ゲル化剤、コラーゲン、加水分解コラーゲン、加水分解ケラチン、加水分解シルク、ヒアルロン酸若しくはその塩、セラミド等の1種以上を任意の組合せ等の保湿剤を加えることができる。
【0030】
また機能性薬剤として香料、各種天然エキス等のエモリエント剤、ビタミン類、配合成分を安定させる乳化剤、薬液の発泡を抑え塗布を安定させるための消泡剤、防黴剤、有機酸などの消臭剤を適宜配合することができる。さらには、ビタミンC、ビタミンEの抗酸化剤を含有させてもよい。
【0031】
上記成分のうち、グリセリン、プロピレングリコール等の多価アルコールを主成分とすることが、薬液の粘度、塗布量を安定させる上で好ましい。
薬液塗布時の温度は30℃〜60℃、好ましくは35℃〜55℃とすることが好ましい。
【0032】
〔塗布量〕
塗布量は、操業中にプライ後の薬液を塗布しない場合の各々のシート米坪と、対応する塗布した直後の各々のシート米坪との差異により算出した。
(塗布量g/m2)=(塗布直後の米坪g/m2)−(塗布しない場合の米坪g/m2
両表層の塗布量、もしくは両面の塗布量の合計とは、プライされたティシュペーパーのシートの単位面積当たりの塗布量の合計であり、各シートの塗布量を加算したものとする。
【0033】
〔薬剤含有量〕
薬剤塗布量とは、JIS P 8111(1998)の標準状態におけるティシュペーパーの単位面積に対し含まれる乾燥状態(絶乾)の薬剤成分の含有量を示し、具体的には、塗布した薬液中の水分以外の成分の含有量を示すものとする。このティシュペーパーの単位面積とは、プライされたシートを平面に垂直線上にある視点から見た面積であり、プライされた各シート、およびその表裏面の合計面積を意味しない。
【0034】
〔薬剤含有率〕
薬剤含有率とは、JIS P 8111(1998)条件下において調湿させた所定質量のティシュペーパー製品を分母(A)(g)とし、所定質量のティシュペーパー製品中に含まれる薬液中の水分を除いた質量(B)(g)を分子として、(B)を(A)で除した比率を(%)で表す。
(薬剤含有率%)=(B)÷(A)×100(%)
【0035】
〔薬液含有密度〕
薬液含有密度は、JIS P 8111(1998)の標準状態における2プライのティシュペーパーの容積当たりの薬剤含有量である。
【0036】
〔紙厚〕
本発明に係るティシュペーパーの紙厚は、2プライの状態で100〜140μm、より好ましくは120〜140μmとする。紙厚が100μm未満では、柔らかさの向上の観点からは好ましいものの、ティシュペーパーとしての強度を適正に確保することが困難となる。また、140μm超では、ティシュペーパーの肌触りが悪化するとともに、使用時にゴワツキ感が生じるようになる。
【0037】
紙厚の測定方法としては、試験片をJIS P 8111(1998)の条件下で十分に調湿した後、同条件下でダイヤルシックネスゲージ(厚み測定器)「PEACOCK G型」(尾崎製作所製)を用いて2プライの状態で測定するものとする。具体的には、プランジャーと測定台の間にゴミ、チリ等がないことを確認してプランジャーを測定台の上におろし、前記ダイヤルシックネスゲージのメモリを移動させてゼロ点を合わせ、次いで、プランジャーを上げて試料を試験台の上におき、プランジャーをゆっくりと下ろしそのときのゲージを読み取る。このとき、プランジャーをのせるだけとする。プランジャーの端子は金属製で直径10mmの円形の平面が紙平面に対し垂直に当たるようにし、この紙厚測定時の荷重は、約70gfである。なお、紙厚は測定を10回行って得られる平均値とする。
【0038】
〔引張強度〕
本発明に係るティシュペーパーの引張強度は、2プライの状態で測定する。
乾燥引張強度は、JIS P 8113(1998)の引張試験方法に準じて行う。その中でJIS P 8111(1998)に規定された標準条件下で、縦方向及び横方向に幅25mmに裁断するものとする。
【0039】
本発明に係るティシュペーパーの乾燥引張強度は、MD方向で180〜350cN/25mm、より好ましくは160〜300cN/25mm、CD方向で80〜120cN/25mm、より好ましくは80〜110cN/25mmとし、MD方向/CD方向の比が1.5〜3.0となるようにするのが好ましい。
【0040】
湿潤引張強度は、JIS P 8135(1998)に準じて行う。当該ティシュペーパーの湿潤引張強度は、MD方向で70〜160cN/25mm、より好ましくは80〜130cN/25mmとし、CD方向で33〜50cN/25mm、より好ましくは35〜45cN/25mmとする。
【0041】
〔ソフトネス〕
本発明のティシュペーパーのソフトネスの値は、0.80〜1.10cN/100mmとするのが好ましい。ここでのソフトネスは、JIS L 1096 E法に準じたハンドルオメータ法に基づいて測定したものである。
但し、試験片は100mm×100mmの大きさとし、クリアランスは5mmで実施した。1プライで縦方向、横方向の各々5回ずつ測定し、その全10回の平均値を小数点2桁とし、cN/100mmを単位として表した。
【0042】
ソフトネスを上記範囲とすることによって、ティシュペーパーの取り出し時の抵抗値を下げて破れにくくするとともに、厚み感と柔らかさのバランスをとることが可能となる。
【0043】
〔水分率〕
製品の水分率は、10.0〜13.0%とすることが望ましい。水分率はJIS P 8127に基づき求める。
水分率(%)={(乾燥前の紙の重量)−(乾燥後の紙の重量)}/(乾燥前の紙の重量)×100
【0044】
〔伸び率〕
製品のMD方向の伸び率は11.0〜15.0%であるのが望ましい。ここでの伸び率は、ミネベア株式会社製「万能引張圧縮試験機 TG−200N」を用いて測定したものである。伸び率はJIS P 8113の「3.定義 e)」に記載の「引張破断伸び(stretch at break)」のことである。
【0045】
〔静摩擦係数〕
他方、本発明のティシュペーパーは、ティシュペーパー同士の静摩擦係数が0.50〜0.65、より好ましくは0.55〜0.60であるのが望ましい。ここでの静摩擦係数は、JIS P 8147(1998)に準じた、下記の方法で測定する。
1プライにはがしたティシュペーパーを、ティシュペーパーの外側の面が外側に来るようにアクリル板に張り付ける。2プライのまま100gの分銅にティシュペーパーを巻きつけ、アクリル板上のティシューに乗せる。アクリル板を傾け、おもりが滑り落ちる角度を測定する。角度測定はティシューの縦方向と縦方向(MD方向とMD方向)、ティシューの横方向と横方向(CD方向とCD方向)につき各5回ずつの計10回実施し、平均角度を算出し、そのタンジェント値を静摩擦係数とする。
【0046】
静摩擦係数を低下させる原理としては、以下のことが考えられる。本発明では、1次原反連続シートを2枚プライし、カレンダー処理によりクレープの山部をならし、クレープ山部のけば立ちをなだらかにすることでシート表面を平滑にした後、ローション薬液を好ましくは転写方式により塗布する。塗布された2次原反シートは、一定のテンションがかかったまま保管され、折畳み加工されるまでの間に、シーズニングされる。この間に、時間とともにローション薬液は、平面的に、かつ厚み方向に、紙層内部に均一になるように広がっていく。その後工程で、マルチスタンド式インターフォルダによる折畳みが行われる場合、プライ原反から2次連続シートを引き出し、折畳み、引っ張りながらプルコンベアで押える工程を経て断裁する。この折畳み工程では、塗布しシーズニングされ紙層中に水分が吸収された状態で、折畳み加工に入る。シーズニング、及びその後のテンションと厚み方向の圧力により、シート表面のクレープによる凸凹は小さくなり、シート同士の摩擦は低減する。
【0047】
〔MMD〕
MMDとは、摩擦係数μの平均偏差(単位:無次元)である。MMDは滑らかさの指標の一つであり、数値が小さいほど滑らかであり、数値が大きいほど滑らかさに劣るとされる。
なお、MMD値の測定方法としては、図11(a)に示すように、摩擦子112の接触面を所定方向(図11(a)における右斜め下方向)に20g/cmの張力が付与された測定試料であるティシュペーパー111の表面に対して25gの接触圧で接触させながら、張力が付与された方向と略同じ方向に速度0.1cm/sで2cm移動させる。このときの、摩擦係数を、摩擦感テスター KES−SE(カトーテック株式会社製)を用いて測定し、その摩擦係数μの摩擦距離2cm(移動距離は3cmで前後5mmずつを除く)における平均偏差をMMD値とした。
なお、摩擦子112は、直径0.5mmのピアノ線Pを20本隣接させてなり、長さ及び幅がともに10mmとなるように形成された接触面を有している。接触面には、先端が20本のピアノ線P(曲率半径0.25mm)で形成された単位膨出部が形成されている。
なお、図11(a)には、摩擦子112を模式的に表し、図11(b)には、図11(a)における一点鎖線で囲まれた部分の拡大図を示すものとする。
【0048】
〔ウェブ嵩〕
ティシュペーパーの束の上に、重さ30g、130mm×250mmの大きさのプラスチック板を載せ、四隅の高さを平均してウェブ嵩の値とした。
本発明に係るティシュペーパーのウェブ嵩は、1組あたり0.25〜0.40mmとする。特に1組あたり0.28〜0.36mmとし、180組で55〜65mmとすることが好ましい。ウェブ嵩が低すぎると、収納箱から最上層のティシューを取り出す際に取り出し口から使用者が指を深く入れて引き出す必要が生じ、取り出しづらくなる。また、ウェブ嵩が高すぎると、コンパクト型の収納箱(箱高さ55〜65mm程度)に収納することができず、製造コスト、運送コストがかかる、もしくは、収納時にウェブを圧縮してコンパクト型の収納箱に収納するため、最上層の取り出し時に強い力で引き出さねばならず、ティシュペーパーが破れやすい、という問題が生じる。
【0049】
〔製品密度〕
本発明に係るティシュペーパーは、インターフォルダ等により折り加工が施され、前記折り加工の前後いずれかの段階で製品サイズに裁断され、例えば180組が箱詰めされて製品となる。180組の折り加工後の紙密度は、0.15〜0.25g/cm3、より好ましくは0.17〜0.23g/m3とすることが好ましい。0.15g/cm3より低くするとしっとり感や滑らかさが得られず、0.25g/cm3より高くすると、ティシュペーパーの厚みが損なわれベタつき感が出てしまうとともに、吸水性が悪くなってしまう。
製品の密度は、JIS P 8111 条件下において調湿させたティシュペーパー製品米坪を2倍した値(C)を、「PEACOCK G型」によるティシュペーパー(2プライ)での紙厚(D)で除した値で、単位をg/cm3、小数点3桁で表す。
((密度(g/cm3))=(C(g/m2))×2÷(D(μm))
【0050】
〔収納箱〕
図12は、本発明に係るティシュペーパー製品を示し、図13は、収納箱201を展開状態で箱の内側から見た図を示している。箱を形成する素材としては、例えば坪量が300〜450g/m2のボール紙等、ティシュペーパー収納箱として使用される公知の素材を何れも使用できる。このティシュペーパー収納箱201は、図12に示されるように組み立て状態で直方体状を成すものであり、上下一対の上面202及び下面203と、前後一対の前面204及び後面205と、左右一対の左側面204及び右側面205とを有している。この場合、前後面204,205及び左右側面206,207が本発明の周面に相当する。
【0051】
図13の展開状態からも判るように、下面の後縁(周縁のうち後面と隣接する縁)からその長辺全体にわたり糊代片203bが張り出しており、後面の内側に糊代片203bが重ねられてホットメルト接着剤等の接着剤により接着固定されることにより、上面202、下面203、前面204及び後面205からなる筒状部が形成されている。
【0052】
また、左右の側面204,205は、上面202の隣接縁及び下面203の隣接縁からそれぞれ延在する上フラップ202f及び下フラップ203fと、前面204の隣接縁及び後面205の隣接縁からそれぞれ延在する前フラップ204f及び後フラップ205fからなるものであり、前フラップ204f及び後フラップ205fの外側に上フラップ202f及び下フラップ203fが重ねられて、上フラップ202f及び下フラップ203fが前フラップ及び後フラップ205fに接着剤により固定されるとともに、下フラップ203fの上端部の外側に上フラップ202fの下端部が重ねられて、重ね合わせ部分が接着剤により固定されている。
【0053】
箱の内寸法は、上面の長辺の長さを収納されるウェブの長手方向の長さより5〜20mm、特に8〜15mm長くするのが好ましい。収納箱内部において、長手方向に隙間をもたせることで、箱内面とティシュペーパー間にほとんど抵抗を生じることなくティシュペーパーを取り出すことが可能となる。
【0054】
収納箱の高さは収納されるウエブ組数に合わせ、本発明の範囲内で任意に決定できるが、経済性や使用の利便性を考慮するとウエブ組数を150〜300組とし、これに伴い収納箱の高さを50〜120mmとするのが好ましい。
【0055】
さらに言えば、収納箱の高さは、製造コスト、輸送コストの削減のため、50〜80mmの高さとするのが好ましく、より好ましくは55〜65mmのコンパクト型とすることが好ましい。
【0056】
収納箱201の上面202には、ミシン目などの切りこみ目が予め形成されており、使用開始時にその切りこみ目で囲まれる蓋部分202bを剥ぎ取ることにより取り出し窓(開口)202aが形成されるようになっている。蓋部分202bを、図14,15に示すように、その略一辺が切り取られずに谷折り線202gとなるように構成してもよい。このような構成とすることで、蓋部分2bを取り出し窓202aの蓋として利用することができる。また、取り出し窓202aを予め開口させ、蓋部分202bを有さない構造としても良い。取り出し窓202aの長辺方向の長さは、収納されるウェブの長手方向の長さの50〜70%、特に55〜65%とする。また、取り出し窓202aの短辺方向の長さは、ウェブの短手方向の長さの35〜55%、特に40〜50%とすることが好ましい。
【0057】
取り出し窓202aには、箱の内側から、その全体にわたりフィルム状のカバーシート202cがホットメルト接着剤等により張り付けられ、カバーシート202cにおける取り出し窓202aにより取り囲まれる部分には、箱1の長辺方向に沿うスリット202sが形成されている。スリット202sは、収納されるウェブの長手方向の長さの45〜65%、特に50〜60%とする。スリット202sは、特に、長辺方向、短辺方向、ともに取り出し窓202aの中央近傍に配されるのが好ましい。
【0058】
カバーシートを形成する素材としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル等の樹脂からなる樹脂製フィルムシート、又はこれらを積層した積層の樹脂製フィルムシート、フィルムシートと薄葉紙等を積層したラミネートフィルムシート、樹脂製繊維からなる合成紙シート等が挙げられる。取り出し性を考慮すると樹脂製フィルムシートが好ましく、特に柔軟性に富み、かつ製造コストの低い低密度ポリエチレンフィルム(LDPE)を好適に使用できる。
【0059】
フィルムの厚みは33〜38μmとすることが望ましい。また、フィルムの縦方向の剛軟度を0.8〜1.4gf/10mm、特に1.0〜1.2gf/10mmとすることが好ましい。剛軟度は、JIS L 1096 E法に記載のハンドルオメータ法に基づいて測定したものであるが、試験片は縦100mm×横10mmの大きさとし、クリアランスは5mmで実施した。1プライで縦方向10回の平均値を小数点2桁とし、cN/100mmを単位として表した。フィルムの縦方向はフィルムのスリット方向と一致する。フィルムの縦方向の剛軟度を1.4gf/10mmより高くすると、ティシュペーパーの取り出し時に破れやすくなり、また、0.8gf/10mmより低くすると取り出し口にティシュペーパーを保持しづらくなり、ポップアップが困難となる。
【0060】
さらに、取り出し時のティシュペーパーの滑りを良くして抵抗を抑えるため、フィルム横方向−ティシュペーパー(取出し方向)間の静摩擦係数は0.20〜0.30、より好適には0.23〜0.28とする。フィルム横方向とはフィルム縦方向とフィルム平面上で垂直な方向を意味する。フィルム−ティシュペーパー間の静摩擦係数は、以下の方法で測定した。フィルムを収納箱内側の面が外側に来るように、斜面方向がフィルム横方向になるようにアクリル板に貼り付ける。2プライのまま100gの分銅にティシュペーパーを巻きつけ、斜面方向がティシュー取出し方向になるようにアクリル板上のフィルムに乗せる。アクリル板を傾け、おもりが滑り落ちる角度を測定する。角度測定は10回実施し、平均角度を算出し、そのタンジェント値を静摩擦係数とした。
【0061】
〔ティシュペーパーの取り出し抵抗〕
ティシュペーパーの取り出し時にかかる抵抗を一定範囲に規定することで、取り出し時の破れを最低限に減じることができる。ティシュペーパーの取り出し抵抗は、以下の方法で測定する。プッシュブルゲージのゲージ先端にティシュペーパーの中央先端部を固定し、下面を固定した収納箱よりティシュペーパーを、0.4〜0.6秒の時間をかけ一定速度で垂直に取り出して、その最大抵抗値を測定した。取り出すティシュペーパーは最上層から1組目から5組目までの計5組、及び11組目から15組目までの計5組とし、上記プッシュブルゲージにおける測定値を平均して、取り出し抵抗値とした。取り出し抵抗は70gf以下、より好適には50〜70gfとするのが望ましい。
【0062】
〔製造方法の例〕
上記説明の本発明のティシュペーパーは、以下のようにして製造することが可能である。図1に、本発明に係るティシュペーパーのプライ工程の装置の概要を示した。なお、図1に係る工程は、塗布装置と一体となった装置であるプライマシンで実施されることが好ましい(オンマシン塗布)。
【0063】
抄紙機において抄紙された原紙は、連続シートとして、クレープを施し、カレンダー処理を施したうえで、これを巻き取り、一次原反ロール11,12(一般的にジャンボロールともいわれている)とされる。
【0064】
連続シート31,32は積層ローラー13で積層されて2プライとされ、必要に応じてプライマシンカレンダー14でカレンダー処理され、薬液塗布工程に送られる。薬液塗布の方法は、浸漬、噴霧、フレキソ塗布、グラビア塗布によるなど公知の塗布方法をいずれも使用することができるが、塗布面全体にムラなく薬液塗布を行うグラビア塗布、フレキソ塗布等の印刷方式の使用、特にドクターチャンバー15を備えたフレキソコーターを使用すると、安定した塗布量で薬液を供給することができるため、より好ましい。
【0065】
図1のプライ工程においては、2つのフレキソコーター16,17を備え、2プライの連続シートの各面に薬液を塗布する。
【0066】
薬液塗布手段としてフレキソ印刷方式を用いる場合、加工速度は100〜1100m/分とし、好ましくは350〜1050m/分、特に好ましくは450〜1000m/分とする。100m/分未満であると生産性が低く、1100m/分超過であると、塗布ムラが生じ、薬液が飛散し易くなる。フレキソ刷版ロールの線数は、10〜60線とし、好ましくは15〜40線、特に好ましくは20〜35線とする。線数が10線未満であると塗布ムラが多く生じてしまい、他方、線数が60線超過であると紙粉が詰まり易くなる。アニロックスロールの線数は、10〜300線とし、好ましくは25〜200線、特に好ましくは50〜100線とする。線数が10線未満であると塗布ムラが多く生じてしまい、他方、線数が300線超過であると紙粉が詰まり易くなる。アニロックスロールのセル容量は、10〜100ccとし、好ましくは15〜70cc、特に好ましくは30〜60ccとする。セル容量が10cc未満であると所望の塗布量が得られず、他方、セル容量が100cc超過であると薬液の飛散量が多くなってしまう。このような構成とすることで、薬液は、連続シートのクレープ山部に間隔1mm以下のドット状に転写され、均一な塗布シートが得られる。
【0067】
フレキソ印刷方式は、加工速度が高速であっても塗布量を安定させることができ、また、一つのロールで幅広い薬液の粘度を安定的に塗布することができる。
薬液塗布手段としてグラビア印刷方式を用いる場合、加工速度は100〜1000m/分とし、好ましくは350〜950m/分、特に好ましくは450〜950m/分とする。100m/分未満であると生産性が低く、1000m/分超過であると、塗布ムラが生じ、薬液が飛散し易くなる。また、グラビアロールの線数は、40〜160線とし、好ましくは60〜140線、特に好ましくは80〜120線とする。線数が40線未満であると薬液飛散量が多くなってしまい、他方、線数が160線超過であると紙粉が詰まり易くなる。
【0068】
薬液塗布手段として薬液噴霧方式を使用する場合、噴霧手段は特に限定されないが、ノズル式噴霧方式による場合のほか、ローターダンプニング噴霧方式によってもよい。加工速度は100〜1100m/分とされ、好ましくは350〜1050m/分とされ、より好ましくは450〜1000m/分とする。
【0069】
薬液塗布後のシートは、コンタクトエンボスコロ18及びコロロール19に供され、2プライの連続シートにコンタクトエンボス(ナーリング)処理を施すことにより固定される。このとき、薬液塗布量の少ない連続シート32が、コンタクトエンボスコロ18に接触するように配置される。コンタクトエンボスは、両側部から紙幅に対して1/10〜1/20の位置に幅1〜10mmで縦方向に一様に施されるのが好ましい。プライを接着剤等で固定するなど、公知の方法のいずれを使用してもよいが、接着剤を使用する場合、肌触りが固くなりやすい、薬液塗布時に剥がれやすい、等の問題があるため、コンタクトエンボスの使用がより好ましいといえる。
【0070】
コンタクトエンボスを付与した2プライの連続シートは、直接ロータリー式インターフォルダ等に供されて折り加工を施された後に製品サイズに裁断されるか、または、スリッター20により製品幅にカットされた後、ワインディングドラム21により巻き取り二次原反ロール22とされ、折り加工が施され、紙箱への収納がなされる。
なお、本形態ではコンタクトエンボス前に薬液を塗布する構成をとっているが、コンタクトエンボス後に薬液を塗布する構成としてもよい。
【0071】
薬液塗布は、オンマシン、オフマシンのいずれで行ってもよい。また、薬液塗布手段を抄紙機の一次連続シートの巻き取り工程前(カレンダー処理を行う場合は、カレンダー処理の前後いずれでもよい)、インターフォルダの折り加工前に設けてもよい。さらに、薬液塗布手段は単独に限られず、複数の工程において薬液塗布を行う構成としてもよい。
【0072】
〔マルチスタンド式インターフォルダ〕
上述の二次原反ロールは、特にティシュペーパー製品においては折り加工工程に供される。折り加工工程としては、ロータリー式インターフォルダ、マルチスタンド式インターフォルダ等公知の方法を使用することができるが、生産性の高いマルチスタンド式インターフォルダの使用がより好ましい。また、本発明においては、前述のように、ティシュペーパーの静摩擦係数を低く、かつウェブ嵩を低くする必要があることから、マルチスタンド式インターフォルダの使用が特に好ましいといえる。
【0073】
二次原反ロール22は、マルチスタンド式インターフォルダに多数セットされ、セットされた二次原反ロール22から二次連続シートを繰り出して折り畳むと共に積層することによってティシュペーパー束が製造される。以下では、そのマルチスタンド式インターフォルダの一例について説明する。
【0074】
図2及び図3に、マルチスタンド式インターフォルダの一例を示した。図中の符号2は、マルチスタンド式インターフォルダ1の図示しない二次原反ロール支持部にセットされた二次原反ロール22,22…を示している。この二次原反ロール22,22…は、必要数が図示平面と直交する方向(図2における水平方向、図3における紙面前後方向)に横並びにセットされている。各二次原反ロールRは、上述のティシュペーパー製品用二次原反ロールの製造設備、製造方法でティシュペーパー製品幅にスリットが入れられており、ティシュペーパー製品の複数倍幅、図示例では2倍幅で巻き取られ、セットされている。
【0075】
二次原反ロール22から巻き出された連続する帯状の二次連続シート63A及び63Bは、ガイドローラG1、G1等のガイド手段に案内されて折畳機構部60へ送り込まれる。また、折畳機構部60には、図4に示すように、折板P,P…が必要数並設されてなる折板群64が備えられている。各折板Pに対しては、一対の連続する二次連続シート63A又は63Bを案内するガイドローラG2,G2やガイド丸棒部材G3,G3が、それぞれ適所に備えられている。さらに、折板P,P…の下方には、折り畳みながら積み重ねられた積層帯67を受けて搬送するコンベア65が備えられている。
【0076】
この種の折板P,P…を用いた折畳機構は、例えば、米国特許4052048号特許明細書等によって公知の機構である。この種の折畳機構は、図5に示すように、各連続する二次連続シート63A,63B…を、Z字状に折り畳みながら、かつ隣接する連続する二次連続シート63A,63B…の側端部相互を掛け合わせながら積み重ねる。
【0077】
図6〜図9に、折畳機構部60の特に折板Pに関する部位を、詳しく示した。本折畳機構部60においては、各折板Pに対して、一対の連続する二次連続シート63A及び63Bが案内される。この際、連続する二次連続シート63A及び63Bは、ガイド丸棒部材G3,G3によって、側端部相互が重ならないように位置をずらされながら案内される。
【0078】
折板Pに案内された時点で下側に重なっている連続する二次連続シートを第1の連続する二次連続シート63Aとし、上側に重なっている連続する二次連続シートを第2の連続する二次連続シート63Bとすると、これら連続する二次連続シート63A及び63Bは、図5及び図7に示すように、第1の連続する二次連続シート63Aの第2の連続する二次連続シート63Bと重なっていない側端部e1が、折板Pの側板P1によって、第2の連続する二次連続シート63Bの上側に折り返されるとともに、図5及び図8に示すように、第2の連続する二次連続シート63Bの第1の連続する二次連続シート63Aと重なっていない側端部e2が、折板PのスリットP2から折板P下に引き込まれるようにして下側に折り返される。この際、図5及び図9に示すように、上流の折板Pにおいて折り畳みながら積み重ねられた連続する二次連続シート63Aの側端部e3(e1)が、折板PのスリットP2から第2の連続する二次連続シート63Bの折り返し部分間に案内される。このようにして、各連続する二次連続シート63A,63B…は、Z字状に折り畳まれるとともに、隣接する連続する二次連続シート63A及び63Bの側端部相互が掛け合わされ、したがって、製品使用時において、最上位のティシュペーパーを引き出すと、次のティシュペーパーの側端部が引き出されることになる。
【0079】
以上のようにしてマルチスタンド式インターフォルダ6で得られた積層帯70は、図2に示すように、後段の切断手段66において流れ方向FLに所定の間隔をおいて裁断(切断)されてティシュペーパー束67aとされ、図10(a)に示すように、このティシュペーパー束30aは、更に後段設備において収納箱Bに収納される。なお、以上のようなマルチスタンド式インターフォルダ1では、積層帯70の紙の方向は、流れ方向FLに沿って縦方向(MD方向)となっており、流れ方向と直交する方向に沿って横方向(CD方向)となっている。このため、積層帯70を所定の長さに切断して得られたティシュペーパー束67aを構成するティシュペーパーの紙の方向は、図10(a)に示すように、ティシュペーパーの折り畳み方向に沿って横方向(CD方向)となり、ティシュペーパーの折り畳み方向と直交する方向に沿って縦方向(MD方向)となる。
【0080】
図10(b)に、収納箱Bにティシュペーパー束67aを収納して成る製品の一例を示した。収納箱Bの上面にはミシン目Mが設けられており、このミシン目Mで収納箱B上面の一部を破断することにより収納箱Bの上面が開口するようになっている。この開口は中央にスリットを有するフィルムFによって覆われており、このフィルムFに設けられたスリットを介してティシュペーパーTを取出すことができるようになっている。
【0081】
ところで、前述したように、ティシュペーパー束67aを構成するティシュペーパーの紙の方向は、ティシュペーパーの折り畳み方向に沿って横方向(CD方向)となるため、図10(b)に示すように、ティシュペーパーTを収納箱Bから引き出す際には、その引き出し方向は、ティシュペーパーTの横方向(CD方向)と沿うようになっている。
【実施例】
【0082】
本発明の効果を確認すべく、本発明に係る実施例と比較例について、製品の寸法及びティシュペーパーの紙質について評価した結果を表1に示した。
実施例1〜7は、折り加工にマルチスタンド式インターフォルダを使用して製造した、本願発明に係るティシュペーパーである。
【0083】
比較例1〜4は市販品であり、比較例1は非保湿系の汎用ティシュペーパー、比較例2〜4は保湿系のローションタイプのティシュペーパーである。
【0084】
実施例1〜7に塗布する薬液の組成は、表2に示すように調整した。ティシュペーパーの米坪、紙厚、引張強度、伸び率、ソフトネス、静摩擦係数、水分率、MMD、及びティシュペー製品の取り出し抵抗力の測定方法は、上記発明を実施するための形態の欄で説明したとおりである。薬剤含有率とは、ティシュペーパー坪量に対する薬剤の乾燥重量の割合を示すものである。
【0085】
実施例1〜7及び比較例1〜4のティシュペーパー製品の収納箱の内寸法、取り出し窓の寸法、スリットの長さ、及びフィルムの素材、厚み、クラーク剛度は表1に示す通りである。
【0086】
紙質の評価とともに、実施例1〜7及び比較例1〜4について、10人を対象に、やわらかさ、なめらかさ、厚み感、しっとり感について下記の基準に基づく官能評価を行った。官能評価は、非保湿ティシュペーパーである比較例1の成績をすべて3として、下記の基準に基づいて行った。
5:大変優れている
4:優れている
3:基準と同等
2:劣る
1:顕著に劣る
また、薬液塗布ティシュペーパーについては、ベタつき感の有無についても評価を行った。
○:ベタつき感が少ない
×:明らかにベタつき感がある。
ティシュペーパーの取り出しやすさは、10人を対象として取り出し操作を行い、下記のように評価した。
○:取り出し時の抵抗が小さく、破れがなかった。
△:1〜4名が破れ、もしくは抵抗による取り出しにくさを訴えた。
×:5〜10名が破れを訴えた。
ティシュペーパーの収納箱内への落ち込みの有無は、10人を対象として、各ティシュペーパー製品について1組目から全組取り出し、落ち込みがないか否かを判定した。
○:落ち込みがなかった。
△:1〜4名が落ち込みを1回以上経験した。
×:5〜10名が落ち込みを1回以上経験した。
使用時の破れにくさは、10人を対象に鼻かみにティシュペーパーを使用し、破れがあったか否かで評価した。
○:3名以下に破れあり、もしくは破れなし。
△:4〜8名に破れあり。
×:9〜10名に破れあり。
【0087】
【表1】

【0088】
【表2】

【0089】
本発明に係るティシュペーパーは、市販の保湿ティシューと比してCD方向の乾燥引張強度、湿潤引張強度が高い値を示した。またCD方向の湿潤引張強度については、従来の汎用タイプのティシュペーパーより高い値を示した。また、ソフトネス、静摩擦係数が市販製品と比して低く、なめらかで柔らかい紙質を有することが示された。
官能評価において、本発明に係るティシュペーパーは、厚み感に優れたものではないものの、保湿ティシューと同等以上のやわらかさ、なめらかさ、しっとり感を有し、かつ、保湿ティシューにみられるベタつき感が軽減されていることが分かった。
【0090】
特に本発明に係るティシュペーパーについて良好な滑り性を有する要因については、次のことが考えられる。ティシュペーパーに塗布した薬液の浸透性によっても異なるが、親水性、親油性の両成分を含む薬液を塗布した場合、親水性成分がパルプ内に吸収されるとともに親油性成分が紙表面に残りやすく、表面の摩擦が軽減されると考えられる。しかし、従来の保湿ティシューのように薬液塗布量を増やすと親水性成分が充分にパルプ内に吸収されず表面に残るため、親油性成分の摩擦軽減効果が薄れるとともに、親水性成分(グリセリンなど)の粘性により滑り性が低下するものと推測される。
【0091】
ティシュペーパーの取り出し抵抗、及びティシュペーパーの取り出しやすさについて、実施例1〜7において、比較例1〜3より有意に良好な結果が得られた。これにより、ティシュペーパー取り出し時の滑りがよく、スムーズに取り出せるため、取り出し時の破れの危険性が低減したといえる。比較例4は、ウェブと箱上部内側面の間に間隙を有し、ウェブがふんわりと入れてあることから、シート間の摩擦が生じにくく、取り出し抵抗が小さい。しかし、比較例4は、使用時のシートの落ち込みが生じやすく、ポップアップがしにくい、という問題がある。これに比して、実施例1〜4は、滑りを良くしても、使用途中のティシュペーパーがスリット部分から収納箱内部に落ち込むこともなく、使用途中においても使用感を損なわないことが分かった。
また、比較例2〜4において、使用時の破れが生じやすいのに対し、実施例1〜7は破れが生じにくいことが判明した。
【0092】
以上より、本発明に係るティシュペーパーは、従来の保湿系ティシューにみられたベタつき感が抑えられており、かつ、保湿系ティシューと同等以上の柔らかさ、なめらかさ、及びしっとり感を有するティシュペーパーであることが判明した。また、ティシュペーパーの取り出しがスムーズであり、取り出し時の破れが生じづらいことが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0093】
本発明のティシュペーパー及びティシュペーパー製品は、清拭用途、特に身体の清拭用途、さらにはフェイシャル用途などに利用されるティシュペーパー及びティシュペーパー製品に利用することが可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に薬液が塗布された2プライのティシュペーパーがポップアップ方式で折り畳まれて略直方体の収納箱に収納されたティシュペーパー製品であって、
前記ティシュペーパーは、薬剤含有量が両面で1.5〜5.0g/m2であり、
2プライを構成するシートの1層あたりの坪量が10〜25g/m2であり、
2プライの紙厚が100〜140μmであり、
前記収納箱は、上面に、その長辺方向に平行に開口を有する紙箱よりなり、前記開口は収納箱内面に貼付されたフィルムにより被覆され、前記フィルムは前記開口に長辺方向に平行なスリットを有し、
前記フィルム横方向とシート取出し方向との静摩擦係数が0.20〜0.30である、ティシュペーパー製品。
【請求項2】
前記薬液の水分含有量が1〜15%である、請求項1記載のティシュペーパー製品。
【請求項3】
前記ティシュペーパーの2プライのCD方向の乾燥引張強度が80〜120cN/25mmである、請求項1記載のティシュペーパー製品。
【請求項4】
前記ティシュペーパーのシート間の静摩擦係数が0.50〜0.65である、請求項1記載のティシュペーパー製品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−24548(P2012−24548A)
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−266183(P2010−266183)
【出願日】平成22年11月30日(2010.11.30)
【分割の表示】特願2010−163393(P2010−163393)の分割
【原出願日】平成22年7月20日(2010.7.20)
【出願人】(390029148)大王製紙株式会社 (2,041)
【Fターム(参考)】