説明

ティッシュペーパーにおける表面を反応させた炭酸カルシウムの使用、柔軟性が改善されたティッシュペーパー製品を調製するプロセス、および得られた柔軟性が改善されたティッシュペーパー製品

本発明は、表面を反応させた天然炭酸カルシウムを充填剤としてティッシュペーパー製品に使用すること、ティッシュペーパー製品を調製するプロセス、および改善された柔軟性を特徴とするティッシュペーパー製品に関し、表面を反応させた天然炭酸カルシウムは、天然の炭酸カルシウムと酸および二酸化炭素との反応生成物であり、二酸化炭素は酸処理によってその場で形成されおよび/または外部から供給される。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ティッシュペーパー製品における充填剤としての、表面を反応させた天然炭酸カルシウムの使用、ティッシュペーパー製品を調製するプロセス、および改善された柔軟性を特徴とするティッシュペーパー製品に関連する。
【0002】
通常のティッシュペーパー製品は大量市場の製品であり、化粧紙、トイレットペーパー、クレープ紙のような装飾用およびギフト用のラッピングティッシュ、家庭用および業務用のティッシュペーパータオル、ティッシュペーパーナプキン、およびティッシュペーパーテーブルクロスのようなペーパークロスを含む。
【0003】
ティッシュペーパーは概して、いわば織物材料のようなものであり、特定の高い柔軟性、廃棄可能性の容易さ、低重量(基本重量65 g/m2未満、またはいくつかの場合は40 g/m2未満もしくはさらに32 g/m2以下)、およびいくつかの場合では、特定の湿潤強度要件を満たす必要があるという点で、標準的なコピー用紙または印刷用紙とは区別され特徴付けられる。それらはしばしば「層(ply)」と呼ばれるティッシュの多重層から構成される点でも区別される。さらに、ティッシュペーパーは、他にもあまり一般的ではない製造プロセスも存在するが、通常は当技術分野においてクレープ加工ティッシュ製紙プロセスと呼ばれるプロセスを介して製造される。
【0004】
トイレットペーパーは通常、14〜22 g/m2の基本重量を特徴とし、一層から多い場合四層で形成されていてもよい。
【0005】
化粧紙はしばしば、14〜18 g/m2のわずかに低い基本重量を特徴とし、大半は二層から三層を含む。
【0006】
キッチンタオルとしても公知の家庭用ティッシュペーパータオルは、20〜24 g/m2といくらか高い基本重量を示し、二層以上を特徴とすることはあまりない。
【0007】
一層の業務用ティッシュペーパータオルは通常、基本重量33〜50 g/m2を特徴とし、その二層のものは、基本重量22〜24 g/m2を有する。
【0008】
これらのティッシュはさらに、繊維源の性質(および特に、そこに含まれる化学パルプおよび再生繊維の量)、ならびに湿潤強度樹脂のようなさらなる添加物の存在によって区別されてもよい。
【0009】
これらのティッシュタイプ全てについて、しかし特に化粧紙、ティッシュペーパーナプキン、トイレットペーパー、およびティッシュペーパークロスについて、柔軟性は最も重要なマーケティング特性の一つである。
【0010】
柔軟性は一般に、表面と大部分の両方の柔軟性に関して定義され、滑らかさ、圧縮率、剛性、および「破けやすさ(crumpability)」の作用と考えられる。従来、ティッシュの柔軟性の程度は手触りで評価されてきたが、最近では定量的測定技術が利用可能である。
【0011】
本出願の目的のため、ティッシュペーパーの柔軟性は、以下に記載するようにEmtec Tissue Softness Analyzer技術を用いて評価する。
【背景技術】
【0012】
先行技術
ティッシュペーパーの柔軟性の向上に対する需要を満たすために、多くの解決策が提示されてきた。
【0013】
解決策の第一のクラスには、ティッシュペーパーの製造過程における合成湿潤剤の添加が含まれる。例えばWO 96/25557には、湿ったティッシュペーパーウェブ(tissue paper web)に対して、このウェブの乾燥およびクレープ加工前に可溶性ポリヒドロキシ化合物を適用して、最終ティッシュペーパーを形成させることが記載されている。US 4,764,418では、ポリエチレングリコールのような湿潤剤を乾燥ウェブに添加することが提供される。
【0014】
第二のアプローチには、特定の油および/またはワックスをティッシュペーパーに添加することが含まれ、例えばWO 96/24723、WO 97/30216、WO 02/057547、およびEP 1 029 977に記載されている。しかしながら、上記のアプローチは両方、最終ティッシュペーパー製品に付随して望ましくないにおいが発生する場合があり、ティッシュペーパーの柔軟性を向上させる手段としては比較的費用の高いものである。
【0015】
第三のアプローチは、場合によってさらなる添加物と組み合わせた特定の界面活性剤の実施を要求するものであり、中でもUS 4,940,513、US 4,351,699、およびUS 4,441,962に記載されている。
【0016】
第四のアプローチは、特定の化学的剥離剤(debonder)の実行に関し、中でもUS 5,217,576、US 5,223,096、US 5,240,562、US 5,262,007、およびUS 5,279,767に記載されている。
【0017】
ティッシュペーパー製品における上記2つの群の化学的添加物の実施もまた、ティッシュペーパー製品の柔軟性を改善する手段としては比較的費用の高いものである。
【0018】
別のアプローチは、例えばティッシュペーパーウェブの乾燥の後にカレンダ加工などの工程をプロセスに追加することにより、ティッシュ製紙プロセスの特定の局面を改変すること、および/または使用するティッシュ製紙機器を改変することを含む。柔軟性の改善を追求して、当業者は、ティッシュペーパーウェブを形成するのに使用する繊維の性質および/またはその精製の程度に関して特に選択することもできる。しかしながら、これらのアプローチはいずれも、幅広い添加物を使用して様々なティッシュ製紙プロセスで容易に実行でき、標準的な繊維を含む、簡単で費用効率の高い解決策の必要性を当業者に残したままである。
【0019】
前述のティッシュペーパーに柔軟性を提供するという課題に対する公知の解決策の欠点を考慮して、この課題に対する新規の解決策を提供することが、本発明の目的である。
【0020】
上記で概説した目的は、驚くべきことに、表面を反応させた天然炭酸カルシウムを充填剤としてティッシュペーパー製品に使用することによって解決され、表面を反応させた天然炭酸カルシウムは、天然の炭酸カルシウムと酸および二酸化炭素との反応生成物であり、二酸化炭素は酸処理によってその場で形成されおよび/または外部から供給され、表面を反応させた天然炭酸カルシウムは、20℃で測定した場合に6.0より高いpHを有する水性懸濁液として調製される。
【0021】
ティッシュペーパー製品のための炭酸カルシウムに基づく充填剤に関して、当業者にはWO 98/28491が公知であり、これはほこりおよびちりがでにくい強靱で柔らかい充填剤入りのティッシュペーパーが、バイアスをかけた表面特性を特徴とする充填剤入りのティッシュペーパーを形成することによって得ることができることを教示している。好ましい充填剤には、クレイおよび炭酸カルシウムなどの無機材料が含まれ、より好ましい態様ではクレイのみに重点が置かれる。炭酸カルシウムの性質については、詳細が提供されていない。
【0022】
関連するWO 97/17494は同様に、炭酸カルシウムを含んでもよい特定の充填剤を含むティッシュペーパーにおけるバイアスをかけた表面の結合特性に対する必要性に言及している。
【0023】
WO 97/37081は、微細な非セルロースの微粒子充填剤をクレープ加工したティッシュペーパーに組み込むためのプロセスに言及しており、このプロセスは、以下の工程を含むことを特徴とする:
a)非セルロースの微粒子充填剤の水性分散液を、陰イオン高分子電解質ポリマーの水性分散液と接触させる工程、
b)ポリマーと接触させた充填剤の水性分散液を製紙用繊維と混合して、ポリマーと接触させた充填剤および製紙用繊維を含む水性製紙用完成紙料を形成する工程、
c)水性製紙用完成紙料を陽イオン保持補助剤(cationic retention aid)と接触させる工程、
d)小孔のある製紙クロス上で水性製紙用完成紙料から初期のペーパーウェブを形成する工程、
e)初期のウェブから水分を除去して、半乾性の製紙ウェブを形成する工程、
f)半乾性の製紙ウェブをヤンキードライヤーに接着させて、このウェブを実質的に乾燥状態まで乾燥させる工程、
g)柔軟なクレーピングブレードを用いて実質的に乾燥したウェブをヤンキードライヤーからクレープ加工することにより、クレープ加工したティッシュペーパーを形成する工程。
【0024】
他の選択肢の中でも、この微細な非セルロースの微粒子充填剤は炭酸カルシウムであってよい。好ましい充填剤の平均等価物の球径が0.5μm〜5μmであることを記載する以外は、充填剤またはより具体的に炭酸カルシウムに関するさらなる情報は提供されていない。
【0025】
WO 98/13549は、保持力のある充填剤を含み、クレープ加工していない、強靱で柔らかく、ほこりの出にくいティッシュペーパーウェブを製造するためのプロセスに言及している。このプロセスには以下の工程が含まれる:
(a)製紙用繊維と非セルロースの微粒子充填剤とを含む製紙用完成紙料の水性懸濁液を提供する工程であって、微粒子充填剤が好ましくはティッシュペーパーの総重量の約1%〜約50%を含み、微粒子充填剤が多くの他の選択肢の中で炭酸カルシウムを含む群から選択され、しかしカオリンクレイが好ましいものとして示される、工程、
(b)製紙用完成紙料の水性懸濁液を、移動する小孔のある成形生地の表面に沈着させて、湿潤な初期の製紙ウェブを形成する工程、
(c)湿潤な初期の製紙ウェブを、成形生地から、成形生地より約5%〜約75%遅い速度で移動する第一の転写生地へ転写する工程、および
(d)湿潤な初期の製紙ウェブを、第一の転写生地から少なくとも1つのさらなる転写を介して乾燥生地に転写する工程であって、湿潤な初期の製紙ウェブが圧縮されずに乾燥される、工程。
【0026】
US 5,672,249は、微細な非セルロースの微粒子充填剤を、クレープ加工されたティッシュペーパーに組み込むための同様のプロセスに言及しており、特に、デンプンが使用され、微粒子充填剤は、クレープ加工されたティッシュペーパーの総重量の約1%〜約50%を含み、微粒子充填剤は、炭酸カルシウムを含む充填剤の選択肢の大きな群から選択される。ここでも、炭酸カルシウムの性質に関する情報は提供されていない。
【0027】
WO 01/44571は、比較的柔らかく強靱で不透明なティッシュペーパー製品と、その作製プロセスとを提供し、このプロセスには、圧縮しないティッシュ形成プロセスの過程で、アルキルアミドまたはアルキルイミドの柔軟剤を、微粒子充填剤に組み込むことが含まれる。この微粒子充填剤は、他の選択肢の中でも、炭酸カルシウムであってよい。ここでも、炭酸カルシウムに関する詳細は提供されていない。
【0028】
US 2004/118534は、架橋の過程で縮合反応によってホルムアルデヒドを形成することができる架橋性ポリマーと、充填剤材料(炭酸カルシウムであってよい)と、水溶性グリコール化合物とを含むクレープ加工された組成物を教示する。得られるティッシュ製品の特徴には柔らかい感触がある。ここでも、炭酸カルシウムのいずれの有利な特徴に関する情報は提供されていない。
【0029】
最後に、US 6,706,148は、他の選択肢の中でも炭酸カルシウムであってよい無機充填剤を、最終的にはティッシュペーパーを形成し得る水性のセルロース繊維懸濁液に添加するためのプロセスを教示する。このプロセスにおいて、無機充填剤の対応する水酸化物を、セルロース繊維を含む反応媒体に添加し、この水酸化物はその後繊維上に沈殿し、したがって無機充填剤が形成される。
【0030】
以上のように、ティッシュペーパー用の充填剤としての炭酸カルシウムの使用は、先行技術においてもしばしば言及されるものの、(a)常に他の充填剤または他の選択肢と共に言及されており、かつ(b)この炭酸カルシウムの必要な特性に関する手がかりは常に言及されておらず、特に特定の表面処理は考慮されていないため、先行技術は全体として、この点に関して当業者にいずれの指示、説明、または示唆も提供していない。
【0031】
驚くべきことに、本発明による表面を反応させた天然炭酸カルシウムの使用は、先行技術の標準的な炭酸カルシウム充填剤を含むティッシュペーパー製品に対して、柔軟性が改善されたティッシュペーパー製品をもたらすことが見出された。さらに、本発明による解決策は、様々なティッシュ製紙プロセスにおいて実施されてよく、さらなる添加物または特定の複雑なティッシュ作製プロセスの工程を必要とせずに、改善された柔軟性を提供する。
【発明の概要】
【0032】
本発明は、ティッシュペーパー製品における充填剤としての、表面を反応させた天然炭酸カルシウムの使用、そのような使用を特徴とするティッシュ製紙プロセス、およびそのようなティッシュ製紙プロセスによって得られるティッシュペーパー製品である。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】表面を反応させた天然炭酸カルシウムのSEM画像を示す。
【発明を実施するための形態】
【0034】
発明の詳細な説明
表面を反応させた天然炭酸カルシウム
本発明にしたがってティッシュペーパー製品において充填剤として使用する表面を反応させた天然炭酸カルシウムは、天然の炭酸カルシウムを酸とおよび二酸化炭素と反応させることによって得られ、ここで二酸化炭素は、酸処理によってその場で形成され、および/または外部供給源から供給される。
【0035】
好ましくは、天然の炭酸カルシウムは、大理石、チョーク、カルサイト、ドロマイト、ライムストーン、またはそれらの混合物から選択される。好ましい態様において、天然の炭酸カルシウムを、酸および二酸化炭素による処理の前に粉砕する。粉砕する工程は、当業者に公知の任意の従来の粉砕デバイス(粉砕機など)を用いて実施することができる。
【0036】
本発明で用いるための表面を反応させた天然炭酸カルシウムは、20℃で測定した場合に6.0を超えるpH、好ましくは6.5を超えるpH、より好ましくは7.0を超えるpH、さらにより好ましくは7.5を超えるpHを有する水性懸濁液として調製する。
【0037】
水性懸濁液の調製のための好ましいプロセスにおいて、天然の炭酸カルシウムは、細かく分割されていても(例えば粉砕によって)されていなくても、いずれにせよ水中に懸濁される。好ましくはスラリーは、スラリーの重量に基づいて1 wt%〜80 wt%、より好ましくは3 wt%〜60 wt%、およびなおより好ましくは5 wt%〜40 wt%の範囲内の天然の炭酸カルシウムの含有量を有する。
【0038】
次の工程(第一の処理工程)において、天然の炭酸カルシウムを含む水性懸濁液に酸を添加する。好ましくは、酸は25℃で2.5以下のpKaを有する。pKaが25℃で0以下である場合、酸は好ましくは硫酸、塩酸、またはそれらの混合物から選択される。pKaが25℃で0〜2.5である場合、酸は好ましくはH2SO3、HSO4-、H3PO4、シュウ酸またはそれらの混合物から選択される。1つまたは複数の酸を、濃縮した溶液またはより希釈した溶液としての懸濁液に添加することができる。好ましくは、天然の炭酸カルシウムに対する酸のモル比は、0.05〜4、より好ましくは0.1〜2である。
【0039】
代替として、天然炭酸カルシウムを懸濁する前に酸を水に添加することも可能である。
【0040】
次の工程(第二の処理工程)において、天然炭酸カルシウムを二酸化炭素によって処理する。硫酸または塩酸のような強酸を、天然炭酸カルシウムの酸処理に用いる場合、二酸化炭素は自動的に生成される。代替としてまたは追加で、二酸化炭素を外部供給源から供給することもできる。
【0041】
酸処理および二酸化炭素による処理は同時に実施することができ、これは強酸を使用する場合である。例えば0〜2.5の範囲のpKaを有する中程度の強酸を用いた酸処理を最初に実施することも可能であり、その後外部供給源から供給された二酸化炭素による処理を行う。
【0042】
好ましくは、懸濁液中の気体二酸化炭素濃度は、容積に関して、(懸濁液の容積):(気体CO2の容積)の比が、1:0.05〜1:20、なおより好ましくは1:0.05〜1:5である程度である。
【0043】
好ましい態様において、酸処理工程および/または二酸化炭素処理工程は、少なくとも一回、より好ましくは数回繰り返される。
【0044】
好ましい態様において、酸処理および/または二酸化炭素処理は、少なくとも60℃を超えるスラリー温度で行われる。
【0045】
酸処理および二酸化炭素処理に続き、20℃で測定した場合水性懸濁液のpHは、天然では6.0を超える、好ましくは6.5を超える、より好ましくは7.0を超える、なおより好ましくは7.5を超える値に達し、それによって6.0を超える、好ましくは6.5を超える、より好ましくは7.0を超える、なおより好ましくは7.5を超えるpHを有する水性懸濁液として表面を反応させた天然炭酸カルシウムが調製される。水性懸濁液が平衡に達することを可能にする場合、pHは7を超える。十分な時間、好ましくは1時間〜10時間、より好ましくは1時間〜5時間にわたって水性懸濁液を撹拌し続ける場合、6.0を超えるpHは、塩基を添加せずに調整できる。
【0046】
代替として、7を超えるpHで生じる平衡に達する前に、水性懸濁液のpHは、二酸化炭素処理後に塩基を添加することによって6を超える値まで上昇し得る。水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムなどの任意の従来の塩基を使用することができる。
【0047】
上記のプロセス工程、すなわち酸処理、二酸化炭素による処理、およびpH調整により、ティッシュペーパーにおいて実施した場合に柔軟性を提供する表面を反応させた天然炭酸カルシウムが得られる。
【0048】
表面を反応させた天然炭酸カルシウムの調製に関するさらなる詳細は、WO 00/39222およびUS 2004/0020410 A1に開示されており、これらの参考文献の内容はこれにより本出願に含まれる。これらの文書に従い、表面を反応させた天然炭酸カルシウムを、紙製造のための増量剤として使用する。
【0049】
表面を反応させた天然炭酸カルシウムの調製の好ましい態様において、天然炭酸カルシウムを、酸および/または二酸化炭素と、ケイ酸塩、シリカ、水酸化アルミニウム、アルミン酸ナトリウムもしくはアルミン酸カリウムなどのアルカリ土類アルミン酸塩、酸化マグネシウム、またはそれらの混合物からなる群より選択される少なくとも1つの化合物の存在下で反応させる。好ましくは、少なくとも1つのケイ酸塩は、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸カルシウム、またはアルカリ土類金属ケイ酸から選択される。酸および/または二酸化炭素を添加する前に、これらの構成成分を、天然炭酸カルシウムを含む水性懸濁液に添加することができる。代替として、天然炭酸カルシウムと酸および二酸化炭素との反応がすでに開始されている一方で、ケイ酸塩および/またはシリカおよび/または水酸化アルミニウムおよび/またはアルカリ土類アルミン酸塩および/または酸化マグネシウム構成成分を、天然炭酸カルシウムの水性懸濁液に添加することができる。少なくとも1つのケイ酸塩および/またはシリカおよび/または水酸化アルミニウムおよび/またはアルカリ土類アルミン酸塩構成成分の存在下での表面を反応させた天然炭酸カルシウムの調製に関するさらなる詳細が、WO 2004/083316に開示され、この参考文献の内容はこれにより本出願に含まれる。
【0050】
表面を反応させた天然炭酸カルシウムの調製の別の好ましい態様において、天然炭酸カルシウムを、酸および/または二酸化炭素と反応させ、酸および/または二酸化炭素とのこの反応の前および/または間および/または後に、式R―Xの1つまたは複数の化合物で処理し、式中ラジカルRは炭素のラジカルを表し、飽和しているまたは飽和しておらず、8〜24個の炭素原子を有し、例えば直鎖または分枝型のアルキル、アルキルアリール、アリールアルキル、アリール、ポリアリール、もしくはここでも環状基、またはそれらの混合物であり、かつX基は、カルボキシ、アミン、ヒドロキシル、ホスホン、またはそれらの混合物などの基を表す。より具体的には、R―Xは、脂肪酸、脂肪族アミン、または脂肪族アルコールの中から選択されてもよく、飽和していてもしていなくてもよく、特にステアリン、オレイン、リノール、ミリスチン、オクチルのタイプのものであるなど優先的に8〜24個の炭素原子またはそれら自身の混合物を有し、および非常に優先的には16〜18個の炭素原子またはそれらの混合物を有し、合成または天然の脂肪族化合物、優先的にはココナッツオイルなどの植物起源の化合物、または獣脂などの動物起源の化合物、および非常に優先的には植物起源の化合物を有する。疎水化剤による処理は、いくつかの場合、例えばティッシュペーパーが油と水の混合物と接触した場合に、油を吸収し水を吸収しないようにするように、ティッシュペーパーによる差次的な吸収を可能にする点で有利であり得る。
【0051】
表面を反応させた天然炭酸カルシウムを懸濁液内に保持して、任意で分散剤によりさらに安定化することもできる。当業者に公知の従来の分散剤を用いることができる。分散剤は陰イオンまたは陽イオンであり得る。
【0052】
または、上記の水性懸濁液を乾燥させ、それによって、顆粒または粉末形態の表面を反応させた天然炭酸カルシウムを得ることができる。
【0053】
好ましい態様において、表面を反応させた天然炭酸カルシウムは、5 m2/g〜200 m2/g、より好ましくは20 m2/g〜80 m2/g、およびなおより好ましくは30 m2/g〜60 m2/gの比表面積を有し、これはISO 9277にしたがってBET方法および窒素を用いて測定される。
【0054】
さらに、表面を反応させた天然炭酸カルシウムが、0.1〜50μm、より好ましくは0.5〜25μm、なおより好ましくは0.7〜7μmの重量平均粒子直径を有することが好ましく、これは沈殿法に従って測定される。重量平均粒子直径の測定は、以下の実施例のセクションでさらに詳述するようにSedigraph(商標)5120機器上で実施された。
【0055】
好ましい態様において、表面を反応させた天然炭酸カルシウムは、15〜200 m2/gの範囲内の比表面積と0.1〜50μmの範囲内の重量平均粒子直径とを有する。より好ましくは、比表面積は、20〜80 m2/gの範囲内であり、重量平均粒子直径は0.5〜25μmの範囲内である。より好ましくは、比表面積は、30〜60 m2/gの範囲内であり、重量平均粒子直径は0.7〜7μmの範囲内である。
【0056】
好ましい態様において、表面を反応させた天然炭酸カルシウムは、75〜97%ISO輝度の明るさを特徴とし、これも以下の実施例のセクションで詳述する方法に従って測定される。
【0057】
好ましい態様において、表面を反応させた天然炭酸カルシウムは、3 mg未満、好ましくは2 mg以下、およびより好ましくは1 mg以下の摩滅を特徴とし、これは以下の実施例のセクションで詳述する方法に従って測定される。
【0058】
表面を反応させた天然炭酸カルシウムを実施するプロセス
本発明によるティッシュ製紙プロセスにおいて、当業者に公知の任意の従来の手段によって、または今後この分野で開発される任意の新規の手段によって、ティッシュペーパー製品を作製するために、ティッシュ製紙プロセスの過程で表面を反応させた天然炭酸カルシウムがティッシュペーパーに導入される。
【0059】
ティッシュ製紙プロセスにおいて、水性懸濁液、例えばさらなる希釈または部分的な高濃縮に供したまたは供さない上記の懸濁液として、表面を反応させた天然炭酸カルシウムを添加することができる。または、ティッシュ製紙プロセスにおいて、任意の適切な固体、例えば粉末形態またはケーキ形態で添加することができる。本発明の状況内で、表面を反応させた天然炭酸カルシウムを含む静止相を、例えばケーキまたは層の形態で提供することも可能である。
【0060】
一つの態様において、1つまたは複数の炭酸カルシウム(例えばライムストーン、大理石、チョーク、および/もしくはドロマイトに基づく天然の重質炭酸カルシウム、ならびに/または沈降炭酸カルシウム)、タルク、二酸化チタン、およびカオリンクレイなどの他の無機充填剤に加えて、表面を反応させた天然炭酸カルシウムをティッシュ製紙プロセスにおいて添加する。
【0061】
表面を反応させた天然炭酸カルシウムが、さらなる他の無機充填剤と共にまたは伴わずに懸濁液の形態(すなわち「スラリー」)で添加される場合、この懸濁液は好ましくは、以下の実施例のセクションに記載する方法に従って測定されるように1〜80%の無機充填剤固体の総含有量を特徴とする。
【0062】
表面を反応させた天然炭酸カルシウムが、さらなる他の無機充填剤と共にまたは伴わずに懸濁液の形態(すなわち「スラリー」)で添加される場合、この懸濁液は好ましくは、以下の実施例のセクションに記載する方法に従って測定されるように、1〜3000、好ましくは1〜1000 mPas、およびより好ましくは1〜500 mPasの粘度を特徴とする。
【0063】
通常のティッシュ製紙手順において、ティッシュペーパーウェブは最初に、ティッシュ製紙用繊維のスラリー(場合により他の添加物を含み、この全スラリーが「完成紙料」と呼ばれる)の脱水によって形成され、ヘッドボックスを介してワイヤースクリーンのような小孔のある表面上でティッシュ製紙機械に添加される。ティッシュペーパーに最も頻繁に用いられる製紙用繊維は、原生化学木材パルプであるが、古紙パルプ(「再生パルプ」とも呼ばれる)および機械パルプとの混合物も使用される。特に、さらし亜硫酸パルプおよびさらし硫酸パルプが使用される。これらのティッシュ製紙用繊維は、いくつかの場合、所与の望ましい微粉度の繊維を単離するために、様々な程度の精製にあらかじめ供される。
【0064】
本発明の一つの態様において、表面を反応させた天然炭酸カルシウムが、ティッシュ製紙用繊維(および場合によってはさらなる通常の添加物)のスラリーに添加されて混合され、ティッシュ製紙機械に導入される前および特に脱水の前に、完成紙料が形成される。
【0065】
本発明の別の態様において、完成紙料の複数の重ね合わされた層を小孔のある表面に加えて、層状のティッシュペーパーウェブを形成する。これらの層は構成が異なる場合があるが、これらの少なくとも1つが、本発明による表面を反応させた天然炭酸カルシウムを含む。
【0066】
次いで通常このティッシュペーパーウェブの脱水が続けられて、ティッシュペーパーウェブを機械的に圧縮することによって、または1つもしくは複数の小孔のある転写生地もしくはフェルト上でティッシュペーパーウェブを温風を通して通気乾燥することによって、半乾性のティッシュペーパーウェブが、例えばプレスセクション上に形成される。一つの態様において、本発明によるティッシュ製紙プロセスは、ティッシュペーパーウェブの機械的な圧縮もしくは通気乾燥のこのような工程を実行するか、または当業者に公知の任意の従来のティッシュペーパーウェブの脱水手段を実行する。脱水工程のいずれかまたは全ては、真空またはティッシュペーパーウェブから水を除去するための他の公知の手段のさらなる使用を実行してもよいことは注目すべきである。
【0067】
最後に、半乾性のティッシュペーパーを、例えばそれをヤンキードライヤーの表面に曝すことによって、さらにまたは完全に乾燥させ、ティッシュペーパーを形成させる。ヤンキードライヤーは、通常スチールの大きいドラムであり、加圧された蒸気を用いて熱い表面を提供し、その上でティッシュペーパーウェブが最終的に乾燥され得る。一つの態様において、本発明によるティッシュ製紙プロセスは、ティッシュペーパーウェブをヤンキードライヤーの表面に曝すこのような工程を実行するか、またはエアーキャップバーナーの使用を介するもしくは通気乾燥によるなど、当業者に公知の任意の従来の手段を実行して、さらにまたは完全にティッシュペーパーウェブを乾燥させてティッシュペーパーを形成する。
【0068】
クレープ加工されないティッシュペーパーも存在するが、ティッシュペーパーまたは半乾性のティッシュペーパーウェブの「クレープ加工」が、通常実行される。クレープ加工は、機械方向にティッシュペーパーを機械的に圧縮することを含み、通常柔軟なブレードすなわち「ドクターブレード」をヤンキードライヤーに対して適用することによって実施される。乾燥または湿潤ティッシュペーパーまたはティッシュペーパーウェブ上でクレープ加工を実施してもよい。一つの態様において、本発明によるティッシュ製紙プロセスは、例えば柔軟なブレードすなわち「ドクターブレード」をヤンキードライヤーに対して適用すること、またはティッシュペーパーをクレープ加工する当業者に公知の任意の従来の手段によって、湿潤または乾燥ティッシュペーパーまたはティッシュペーパーウェブをクレープ加工するこのような工程を実行してもよい。
【0069】
少量の機能性化学剤、例えば湿潤強度または乾燥強度樹脂、湿潤剤、油、ワックス、保持補助剤、殺菌剤、界面活性剤、サイザー、剥離剤、柔軟剤、クレープ加工促進組成物、デンプン、および様々な高分子電解質ポリマーが、典型的に非常に少量であるが、しばしばティッシュ製紙プロセスにおいて添加されるか、または形成されたティッシュペーパーに添加される。一つの態様において、本発明によるティッシュ製紙プロセスは、上記機能性化学剤の1つまたは複数の添加を実施してもよい。これらの剤が、完成紙料またはティッシュペーパーおよび互いに適合するように、そのような剤の性質および量を選択すること、およびティッシュ製紙プロセスにおいてそれらを実施することは、当業者には公知である。
【0070】
形成された後、ティッシュペーパー(一層)は続いて、複数層を特徴とするティッシュペーパー製品を形成するために切断され重ねられる。一つの態様において、本発明によるティッシュ製紙プロセスは、ティッシュペーパーを切断する1つまたは複数の工程を実施する。本発明によるプロセスには、ティッシュペーパー製品を形成するために2つまたはそれ以上のティッシュペーパー層を重ねる1つまたは複数の工程が含まれてもよく、少なくとも1つの層は、本発明のティッシュ製紙プロセスにしたがって形成される。
【0071】
ティッシュ製紙のプロセスはさらに、ティッシュペーパー製品を形成するために、カレンダ加工および/またはコーティングおよび/またはエンボス加工(キルティングおよび/またはリップリング(rippling))および/またはローションなどの液体への含浸および/またはティッシュペーパー上への印刷の工程を含んでもよい。一つの態様において、本発明によるティッシュ製紙プロセスは、これらのさらなる工程の1つまたは複数を実施してもよい。
【0072】
得られたティッシュペーパー製品
本発明のティッシュペーパー製品は、上記のようなティッシュ製紙プロセスによって得られるものである。
【0073】
本発明のティッシュペーパー製品は代替として、天然の炭酸カルシウムを酸とおよび二酸化炭素と反応させることによって得られる表面を反応させた天然炭酸カルシウムを含むという点で特徴付けられ、ここで二酸化炭素は、酸処理によってその場で形成され、および/または外部供給源から供給される。
【0074】
好ましい態様において、本発明のティッシュペーパー製品は特に、ティッシュペーパー製品の総重量に対して、表面を反応させた天然炭酸カルシウムの重量の2〜20%を含む。より好ましくは、ティッシュペーパー製品の総重量に対して、表面を反応させた天然炭酸カルシウムの重量の3〜15%を含む。
【0075】
表面を反応させた天然炭酸カルシウムに加えて、さらなる無機充填剤がティッシュペーパー製品に存在する場合、ペーパーの総無機充填剤含有量は好ましくは、ティッシュペーパー製品の重量に対して1〜50重量%、より好ましくは1〜25重量%、および最も好ましくは1〜15重量%である。
【0076】
好ましい態様において、本発明によるティッシュペーパー製品は、以下の実施例セクションに記載する方法にしたがって測定するように、一層あたり5〜50 g/m2の基本重量を特徴とする。別の好ましい態様において、ティッシュペーパー製品を形成する層数の選択は、そのティッシュペーパー製品の最終適用に依存することは当業者には理解されるが、ティッシュペーパー製品は、ティッシュペーパー1〜3層を含む。
【0077】
好ましい態様において、本発明によるティッシュペーパー製品は、以下の実施例セクションに記載する方法にしたがって測定するように、6.0 TSA未満の柔軟性、好ましくは5.5 TSA未満の柔軟性、およびより好ましくは3.5 TSA未満の柔軟性を特徴とする。
【0078】
または、別の好ましい態様において、その他の点では等しい組成物のティッシュペーパーに等しい充填剤をロードし、本発明によるティッシュペーパー製品は、以下の実施例セクションに記載する方法にしたがって測定するように、同等のティッシュペーパー製品のTSA値より少なくとも2標準偏差小さい柔軟性を特徴とし、同等のティッシュペーパー製品において、以下の実施例セクションに記載する方法にしたがって測定するように、表面を反応させた天然炭酸カルシウムは、以下の実施例セクションに記載する方法にしたがって測定するように、表面を反応させた天然炭酸カルシウムの重量平均直径の10%以内の重量平均直径を特徴とする標準的な炭酸カルシウムと置き換えられており、かつ標準的な炭酸カルシウムを含むティッシュペーパー製品の基本重量は、以下の実施例セクションに記載する方法にしたがって測定するように、表面を反応させた天然炭酸カルシウムを含むティッシュペーパー製品の基本重量の5%以内である。
【0079】
代替として、別の好ましい態様において、本発明によるティッシュペーパー製品は、以下の実施例セクションに記載する方法にしたがって測定するように、いずれの充填剤も含まない同等のティッシュペーパー製品のTSA値より少なくとも2標準偏差小さい柔軟性を特徴とし、充填剤を含まないティッシュペーパー製品の基本重量は、以下の実施例セクションに記載する方法にしたがって測定するように、表面を反応させた天然炭酸カルシウムを含むティッシュペーパー製品の基本重量の5%以内である。
【0080】
最終的に、本発明によるティッシュペーパー製品は好ましくは、化粧紙、トイレットペーパー、装飾用および/またはギフト用のラッピングティッシュ、家庭用および/または業務用のティッシュペーパータオル、ティッシュペーパーナプキン、またはティッシュペーパークロスである。
【実施例】
【0081】
測定方法
以下の測定方法を用いて、以下の実施例および特許請求の範囲に示すパラメーターを評価する。
【0082】
スラリー形態である無機充填剤に関して:
固体含有量
スラリー固体含有量(「乾燥重量」としても公知)は、Mettler-Toledoから購入したMoisture Analyser HR73を用いて、以下の設定で決定する:温度120℃、自動スィッチオフ3、標準的な乾燥、5〜20 gのスラリー。
【0083】
粘度
測定した粘度は、100 rpmでBrookfield RVTDV-II機器を用いて、および%モード値が20〜80の間にあるようにスピンドルを選択して測定したBrookfield粘度である。
【0084】
pH
水性懸濁液のpHは、約22℃で標準的なpHメーターを用いて測定した。
【0085】
比表面積
比表面積は、ISO 9277に従い、窒素を用いてBET方法により測定し、その後試料を250℃で30分間加熱することによって調整する。
【0086】
粒子サイズ分布(直径<Xの質量%粒子)および重量平均粒子直径(d50
重量平均粒子直径および粒子直径質量分布は、沈殿法、すなわち重量フィールドにおける沈殿挙動の分析によって決定される。測定はSedigraph(商標)5120によって行った。
【0087】
方法および機器は、当業者に公知であり、充填剤および顔料の粒子サイズを決定するのに通常使用される。測定は、0.1 wt% Na4P2O7の水性溶液中で実施される。試料は、高速撹拌機および超音波を用いて分散させた。
【0088】
ISO輝度R-457
R-457 ISO輝度は、Elrepho 3300機器を用いてISO 2469に従って決定した。
【0089】
摩滅
摩滅は、Einlehner社のAT 2000機器(Aタイプ871001 Nr. 8602(プロトタイプ)、Cシリアルナンバー9560-9501)を用いて、PK 2069検体および固体含有量0.7〜0.9重量%を特徴とするEMX-20粉末の参照スラリー1 kgを用いて測定し、参照が15.5〜17.5 mgの摩滅値を提供するように較正した。
【0090】
無機充填剤を含むハンドシートに関して:
基本重量
ハンドシートの基本重量は、50%相対湿度と23±1℃の温度とを有する環境で48時間ハンドシートを調整した後、DIN EN ISO 536に従って決定する。
【0091】
厚さ
ハンドシートの厚さは、50%相対湿度と23±1℃の温度とを有する環境で48時間ハンドシートを調整した後、10 N/cm2の試験圧力でマイクロメータを用いて、SN EN ISO 534に従って決定する。
【0092】
柔軟性
調整していないハンドシートの柔軟性は、Emtec社(Paper Testing Technology)のTissue Softness Analyzer機器(装置番号01-01-26)を用いて評価した。
【0093】
バルク
ハンドシートのグラムが占める容量に対応するハンドシートバルクは、適切な単位を用いてハンドシートの単位平面積質量でハンドシートの厚さを割ることによって決定する。
【0094】
実施例1:無機充填剤スラリーの調製
試験1:
この試験は、スラリーAと称される先行技術の天然炭酸カルシウムの水性スラリーの調製を説明する。
【0095】
この試験に関して、商品名Hydrocarb 60 ME-78%でOMYA社から市販されている粉砕した大理石のスラリーを希釈して65%固体スラリーを形成する。
【0096】
得られた天然炭酸カルシウムのスラリーは、スラリーAと呼ばれ、表1に示す特徴を有する。
【0097】
【表1】

【0098】
水性スラリーA中の天然炭酸カルシウムは、表2に示す特徴を有する。
【0099】
【表2】

【0100】
試験2:
この試験は、スラリーBと称される表面を反応させた天然炭酸カルシウムの水性スラリーの調製を説明する。
【0101】
オーストリア起源の細かく分割した天然炭酸カルシウムを懸濁して、約65乾燥重量%の懸濁液を達成した。このように形成されたスラリーを次に、約60℃の温度で、80 m2/gのBET比表面積および1.5μmの重量平均直径を特徴とする製品を提供するのに十分に、リン酸をゆっくりと添加することによって処理する。
【0102】
表面を反応させた天然炭酸カルシウムの得られたスラリーは、表3に示す特徴を有する。
【0103】
【表3】

【0104】
水性スラリー中の表面を反応させた天然炭酸カルシウムは、表4に示す特徴を有する。
【0105】
【表4】

【0106】
実施例2:ティッシュペーパーハンドシートの調製
20〜30 g/m2の基本重量を特徴とするハンドシートを、試験1および2の無機充填剤スラリーを実施して調製した。ハンドシートは、ハンドシートの総重量に3.6〜10重量%の乾燥無機充填剤をロードすることを特徴とするように調製した。ハンドシートを形成するのに使用する繊維完成紙料は、17°SRを特徴とする100%さらし亜硫酸繊維で構成された。ハンドシートはRapid-Kothenシート機械を用いて調製した。
【0107】
実施例3:ハンドシート分析
実施例2で形成したハンドシートを次いで、上記の測定方法に従って分析した。結果は表5にまとめる。
【0108】
【表5】

* n/a=該当なし
【0109】
本発明による表面を反応させた天然炭酸カルシウムを実行して形成したハンドシートは、標準的な炭酸カルシウムを実行して形成したハンドシートに対して、同等の充填剤をロードした場合の柔軟性において有意な改善を特徴とする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ティッシュペーパー製品における充填剤としての、表面を反応させた天然炭酸カルシウムの使用であって、表面を反応させた天然炭酸カルシウムが、天然の炭酸カルシウムと酸および二酸化炭素との反応生成物であり、二酸化炭素が、酸処理によってその場で形成されおよび/または外部から供給され、表面を反応させた天然炭酸カルシウムが、20℃で測定した場合に6.0より高いpHを有する水性懸濁液として調製される、使用。
【請求項2】
表面を反応させた天然炭酸カルシウムが、20℃で測定した場合に6.5より高い、好ましくは7.0より高い、最も好ましくは7.5であるpHを有する水性懸濁液として調製されることを特徴とする、請求項1記載の使用。
【請求項3】
天然炭酸カルシウムが、大理石、カルサイト、チョーク、ドロマイト、ライムストーン、またはそれらの混合物から選択されることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の使用。
【請求項4】
スラリーの重量に基づいて1 wt%〜80 wt%、より好ましくは3 wt%〜60 wt%、およびなおより好ましくは5 wt%〜40 wt%の範囲内の天然炭酸カルシウムの固体含有量を有してスラリーが形成されるように、天然炭酸カルシウムが水中に懸濁されることを特徴とする、前記請求項のいずれか一項記載の使用。
【請求項5】
酸が25℃で2.5以下のpKaを有することを特徴とする、前記請求項のいずれか一項記載の使用。
【請求項6】
酸が25℃で0以下のpKaを有することを特徴とする、請求項5記載の使用。
【請求項7】
酸が硫酸、塩酸、またはそれらの混合物であることを特徴とする、請求項6記載の使用。
【請求項8】
酸が25℃で0〜2.5のpKaを有することを特徴とする、請求項5記載の使用。
【請求項9】
酸がH2SO3、HSO4-、H3PO4、シュウ酸、またはそれらの混合物であることを特徴とする、請求項8記載の使用。
【請求項10】
天然の炭酸カルシウムに対する酸のモル比が0.05〜4、より好ましくは0.1〜2である、請求項9記載の使用。
【請求項11】
天然の炭酸カルシウムが、ケイ酸塩、シリカ、水酸化アルミニウム、アルカリ土類金属アルミン酸塩、酸化マグネシウム、またはそれらの混合物からなる群より選択される少なくとも1つの化合物の存在下で、酸および/または二酸化炭素と反応することを特徴とする、前記請求項のいずれか一項記載の使用。
【請求項12】
少なくとも1つのケイ酸塩が、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸カルシウム、またはアルカリ土類金属ケイ酸塩から選択されることを特徴とする、請求項11記載の使用。
【請求項13】
表面を反応させた天然炭酸カルシウムを、酸および/または二酸化炭素とのこの反応の前および/または間および/または後に、式R―Xの1つまたは複数の化合物で処理することを特徴とし、式中、ラジカルRは炭素のラジカルを表し、飽和しているまたは飽和しておらず、8〜24個の炭素原子を有し、例えば直鎖または分枝型のアルキル、アルキルアリール、アリールアルキル、アリール、ポリアリール、もしくはここでも環状基、またはそれらの混合物であり、かつX基は、カルボキシル、アミン、ヒドロキシル、ホスホン、またはそれらの混合物などの基を表す、前記請求項のいずれか一項記載の使用。
【請求項14】
R―Xが、脂肪酸、脂肪族アミン、または脂肪族アルコールの中から選択され、飽和していてもしていなくてもよく、特にステアリン、オレイン、リノール、ミリスチン、オクチルのタイプのものなど優先的に8〜24個の炭素原子またはそれら自身の混合物を有し、および非常に優先的には16〜18個の炭素原子またはそれらの混合物を有し、合成または天然の脂肪族化合物、優先的にはココナッツオイルなどの植物起源の化合物、または獣脂などの動物起源の化合物、および非常に優先的には植物起源の化合物を有することを特徴とする、請求項13記載の使用。
【請求項15】
表面を反応させた天然炭酸カルシウムが、5 m2/g〜200 m2/g、より好ましくは20 m2/g〜80 m2/g、およびなおより好ましくは30 m2/g〜60 m2/gの比表面積を有することを特徴とする、前記請求項のいずれか一項記載の使用。
【請求項16】
表面を反応させた天然炭酸カルシウムが、0.1〜50μm、より好ましくは0.5〜25μm、なおより好ましくは0.7〜7μmの重量平均粒子直径を有することを特徴とする、前記請求項のいずれか一項記載の使用。
【請求項17】
表面を反応させた天然炭酸カルシウムが分散剤により安定化することを特徴とする、前記請求項のいずれか一項記載の使用。
【請求項18】
分散剤が陽イオン性または陰イオン性であることを特徴とする、請求項17記載の使用。
【請求項19】
懸濁液中の気体二酸化炭素濃度が、容積に関して、(懸濁液の容積):(気体CO2の容積)の比が、1:0.05〜1:20、なおより好ましくは1:0.05〜1:5である程度であることを特徴とする、前記請求項のいずれか一項記載の使用。
【請求項20】
酸処理および/または二酸化炭素処理が、少なくとも一回、より好ましくは数回繰り返されることを特徴とする、前記請求項のいずれか一項記載の使用。
【請求項21】
酸処理および/または二酸化炭素処理が、少なくとも60℃を超えるスラリー温度で行われることを特徴とする、前記請求項のいずれか一項記載の使用。
【請求項22】
表面を反応させた天然炭酸カルシウムが、75〜97%ISO輝度の明るさを有することを特徴とする、前記請求項のいずれか一項記載の使用。
【請求項23】
表面を反応させた天然炭酸カルシウムが、3 mg未満、好ましくは2 mg以下、およびより好ましくは1 mg以下の摩滅を有することを特徴とする、前記請求項のいずれか一項記載の使用。
【請求項24】
ティッシュペーパー製品を形成するために、表面を反応させた天然炭酸カルシウムをティッシュ製紙プロセス中に導入することを特徴とする、ティッシュ製紙プロセス。
【請求項25】
表面を反応させた天然炭酸カルシウムを、無機充填剤のスラリーの形態で加えることを特徴とする、請求項24記載のティッシュ製紙プロセス。
【請求項26】
ティッシュペーパー製品を形成するために、表面を反応させた炭酸カルシウムに加えて、他の無機充填剤をティッシュ製紙プロセス中に加える、請求項24または25記載のティッシュ製紙プロセス。
【請求項27】
懸濁液が、好ましくは固形分1〜80%の無機充填剤固体の総含有量を特徴とすることを特徴とする、請求項25記載のティッシュ製紙プロセス。
【請求項28】
懸濁液が、1〜3000 mPas、好ましくは1〜1000 mPas、より好ましくは1〜500 mPasの粘度を特徴とすることを特徴とする、請求項25記載のティッシュ製紙プロセス。
【請求項29】
ヘッドボックスを介してティッシュ製紙機に加えられたティッシュ製紙用繊維の完成紙料のスラリーを、小孔のある表面上で脱水する少なくとも1つの工程を含むことを特徴とする、前記請求項のいずれか一項記載のティッシュ製紙プロセス。
【請求項30】
表面を反応させた天然炭酸カルシウムをティッシュ製紙用繊維のスラリーに加えて混合し、ティッシュ製紙機への導入前に、特に脱水前に、完成紙料を形成することを特徴とする、請求項29記載のティッシュ製紙プロセス。
【請求項31】
完成紙料の複数の重ね合わされた層を小孔のある表面へ加えて、層状のティッシュペーパーウェブ(tissue paper web)を形成することを特徴とする、請求項29または30記載のティッシュ製紙プロセス。
【請求項32】
小孔のある表面上での脱水に続いて、ティッシュペーパーウェブを機械的に圧縮することによって、またはティッシュペーパーウェブを温風で通気乾燥することによって、プレスセクション上で脱水することを特徴とする、前記請求項のいずれか一項記載のティッシュ製紙プロセス。
【請求項33】
ティッシュペーパーウェブを乾燥させて、ティッシュペーパーを形成することを特徴とする、前記請求項のいずれか一項記載のティッシュ製紙プロセス。
【請求項34】
ティッシュペーパーウェブを、ヤンキードライヤーの表面に曝すことにより乾燥させることを特徴とする、請求項33記載のティッシュ製紙プロセス。
【請求項35】
ティッシュペーパーがクレープ加工される(creped)ことを特徴とする、前記請求項のいずれか一項記載のティッシュ製紙プロセス。
【請求項36】
ティッシュ製紙プロセス中に、または形成されたティッシュペーパーに、機能性化学剤を加えることを特徴とする、前記請求項のいずれか一項記載のティッシュ製紙プロセス。
【請求項37】
ティッシュペーパー製品を形成するために、ティッシュペーパーを、カレンダ加工する工程、および/またはコーティングする工程、および/またはエンボス加工する工程、および/または液体に含浸させる工程を含むことを特徴とする、前記請求項のいずれか一項記載のティッシュ製紙プロセス。
【請求項38】
前記請求項記載のティッシュ製紙プロセスによって得られることを特徴とする、ティッシュペーパー製品。
【請求項39】
天然炭酸カルシウムを酸および二酸化炭素と反応させることによって得られる表面を反応させた天然炭酸カルシウムを含むことを特徴とするティッシュペーパー製品であって、二酸化炭素が、酸処理によってその場で生成されるおよび/または外部供給源から供給される、ティッシュペーパー製品。
【請求項40】
ティッシュペーパー製品の総重量に対して、2〜20重量%の、好ましくは3〜15重量%の表面を反応させた天然炭酸カルシウムを含むことを特徴とする、請求項38または39記載のティッシュペーパー製品。
【請求項41】
ティッシュペーパー製品の重量に対して、紙の無機充填剤の総含有量が、好ましくは1〜50重量%であり、より好ましくは1〜25重量%であり、最も好ましくは1〜15重量%であることを特徴とする、前記請求項のいずれか一項記載のティッシュペーパー製品。
【請求項42】
ティッシュペーパーの層(ply)あたりの基本重量が5〜50 g/m2であることを特徴とする、前記請求項のいずれか一項記載のティッシュペーパー製品。
【請求項43】
1〜3層のティッシュペーパーの層を含むことを特徴とする、前記請求項のいずれか一項記載のティッシュペーパー製品。
【請求項44】
6.0 TSA未満の、好ましくは5.5 TSA未満の、より好ましくは3.5 TSA未満の柔軟性を特徴とすることを特徴とする、前記請求項のいずれか一項記載のティッシュペーパー製品。
【請求項45】
同等のティッシュペーパー製品のTSA値より少なくとも2標準偏差小さい柔軟性を特徴とすることを特徴とするティッシュペーパー製品であって、表面を反応させた天然炭酸カルシウムの平均粒径の10%以内の平均粒径であることを特徴とする標準的な炭酸カルシウムによって、表面を反応させた天然炭酸カルシウムが置き換えられており、かつ、この標準的な炭酸カルシウムを含むティッシュペーパー製品の基本重量が、表面を反応させた天然炭酸カルシウムを含むティッシュペーパー製品の基本重量の5%以内である、前記請求項のいずれか一項記載のティッシュペーパー製品。
【請求項46】
いかなる充填剤も含まない同等のティッシュペーパー製品のTSA値より少なくとも2標準偏差小さい柔軟性を特徴とすることを特徴とするティッシュペーパー製品であって、該充填剤を含まないティッシュペーパー製品の基本重量が、表面を反応させた天然炭酸カルシウムを含むティッシュペーパー製品の基本重量の5%以内である、前記請求項のいずれか一項記載のティッシュペーパー製品。
【請求項47】
化粧紙、トイレットペーパー、装飾用および/もしくはギフト用のラッピングティッシュ、家庭用および/もしくは業務用のティッシュペーパータオル、ティッシュペーパーナプキン、またはティッシュペーパークロスであることを特徴とする、前記請求項のいずれか一項記載のティッシュペーパー製品。

【図1】
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【公表番号】特表2011−503370(P2011−503370A)
【公表日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−531600(P2010−531600)
【出願日】平成20年10月28日(2008.10.28)
【国際出願番号】PCT/IB2008/002874
【国際公開番号】WO2009/056942
【国際公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【出願人】(510121411)オムヤ ディベロプメント アーゲー (4)
【Fターム(参考)】