説明

ティビアパッドの固定のためのクリップ

【課題】ティビアパッドを貫通せずに、高さを低く抑え、ティビアパッドによる保護効果を高く維持する、合成樹脂のティビアパッドの固定のためのクリップを提供する。
【解決手段】クリップ1は、ティビアパッドに取付けられる硬質合成樹脂製の第1部品2と、被取付部材に固定される硬質合成樹脂製の第2部品3とから成り、第1部品は、ティビアパッド取付穴に挿入される第1軸部9と第1フランジ10とヒンジ13とティビアパッドの取付穴の内壁面に係合する係合部11とを備え、第2部品3は、第1軸部の中空部に挿入される第2軸部22と第2フランジ23と被取付部材に固定される固定部(29)とを備え、係合部11は、係合状態のときティビアパッドの取付穴の内壁面に係合し、非挿入状態と非係合状態とにおいては、ティビアパッドの内壁面に係合しない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗員保護のための軟質材料で成るティビアパッドをフロアパネル等の被取付部材に固定する、ティビアパッドの固定のためのクリップに関する。
【背景技術】
【0002】
乗員保護のための軟質材料で成るティビアパッドをフロアパネル等の被取付部材に固定する、ティビアパッドの固定のためのクリップは知られている(特開2005−145286号公報:特許文献1)。特許文献1のクリップは、ほぼコの字状の金属製の板ばねで形成されて、ティビアパッドの取付穴に挿入して、折曲げた端部を取付穴の内壁面に食い込ませることによってティビアパッドに取付ける。クリップ付きのティビアパッドは、フロアパネルに立設されたスタッドを、クリップ付きの取付穴に受入れて、クリップをスタッドのねじ溝に係止させてティビアパッドをフロアパネルに固定する。
【0003】
【特許文献1】特開2005−145286号公報
【特許文献2】特開2006−083936号公報
【特許文献3】特開2003−137013号公報
【特許文献4】特開2001−317515号公報
【0004】
特許文献1のティビアパッド固定用のクリップは、金属製の板ばねで成る。防錆の観点においても取扱いの容易さの点においても、クリップは、金属製ではなく、合成樹脂製で成るのが好ましい。特許文献2のクリップは、合成樹脂製のグロメットと該グロメットの胴部の中空部に挿入される合成樹脂製のピン部材との2部品で成る。クリップは、ダッシュサイレンサやカーペット等の複数の軟質材料シートを重ね合わせて、スタッドが立設されたダッシュパネル等に固定するのに用いられる。このクリップにおいて、グロメットの軸部は、ダッシュサイレンサやカーペット等の複数の軟質材料シートを重ね合わせたシートの取付穴を貫通し、更に、ピン部材の軸部がグロメット軸部を貫通し、重ね合わせシートの一方の面をブッシュフランジで押さえ、他方の面を、ピン軸部で旋回させたブッシュの旋回片で押さえて、グロメットで重ね合わせシートを保持し、グロメットをピン部材に連結してピン部材が固定されたパネルに固定し、重ね合わせシートをパネルに連結する。
【0005】
特許文献3のクリップは、合成樹脂製の雌部材と該雌部材の胴部の中空部に挿入される合成樹脂製の雄部材との2部品で成る。クリップは、ダッシュサイレンサとフロアパッド(又はティビアパッド)の軟質材料シートを重ね合わせて、フロアパネルに固定するのに用いられる。このクリップにおいて、雌部材の軸部は、重ね合わせたダッシュサイレンサ及びフロアパッドの軟質材料シートの取付穴を貫通し、更に、雄部材の軸部が雌部材の軸部を貫通し、重ね合わせシートの一方の面を雌部材フランジで押さえ、他方の面を、雄部材の軸部で押出した弾性片で押さえて、雌部材で重ね合わせシートを保持し、雌部材を雄部材に連結して雄部材でパネルに固定し、重ね合わせシートをパネルに連結する。
【0006】
特許文献4のクリップは、合成樹脂製の一体成形品であり、中空軸部と該軸部の一端に形成された第1保持部となるフランジと軸部の他端に旋回可能に形成された第2保持部とが形成され、更に、前記中空軸部に挿入される挿入筒がフランジに隣接するように一体に形成される。このクリップにおいては、サイレンサ等の軟質材料シートの貫通穴に、中空軸部が貫通するように挿入され、更に、挿入筒が中空軸部に挿入されて、サイレンサの一方の面を第1保持部となるフランジで押さえ、他方の面を、挿入筒で旋回させた第2保持部で押さえ、挿入筒を、スタッドが立設されたフロアパネル等に固定することによって、サイレンサをフロアパネルに連結する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1のクリップは、金属製であり、防錆及び取扱いの容易さの点において合成樹脂製のクリップが望まれている。特許文献2〜特許文献4のクリップは、合成樹脂製であるので好ましい。しかし、これらのクリップは、取付ける相手部材の取付穴が貫通穴であることを必要としている。ティビアパッドは、乗員の下肢障害を低減するように保護するため、軟質の材料で成る。他方、クリップは、ティビアパッドをフロアパネルに確実に固定するため、硬質の材料で形成される。特許文献2〜特許文献4のクリップのように、クリップが、ティビアパッドを貫通した状態で取付けられると、硬質の部材が乗員の足元にあるので、軟質材料で成るティビアパッドによる保護を確実にできないおそれがある。クリップは、ティビアパッドを貫通せず、フロアパネルからできるだけ高くならずに、ティビアパッドによる効果を高く維持できるのが望ましい。
【0008】
従って、本発明の目的は、ティビアパッドを貫通せず、フロアパネル等の被取付部材からできるだけ高くならずに、ティビアパッドによる効果を高く維持できる、ティビアパッドの固定のための合成樹脂製のクリップを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明に係る、乗員保護のための軟質材料で成るティビアパッドをフロアパネル等の被取付部材に固定する、ティビアパッドの固定のためのクリップは、ティビアパッドに取付けられる硬質合成樹脂製の第1部品と、被取付部材に固定される硬質合成樹脂製の第2部品とから成り、第1部品は、ティビアパッドの取付穴に挿入される第1軸部と、第1軸部の一端に設けられて第1軸部が取付穴を貫通するのを阻止するようにティビアパッドに接面する第1フランジと、第1軸部の他端に設けられてティビアパッドの取付穴の内壁面に係合する係合部とを備え、第1軸部は第1フランジ側の一端から係合部側の他端まで中空に形成されており、第2部品は、第1軸部の中空部に前記一端から挿入されて前記他端から延び出ることができる第2軸部と、第2軸部の一端に設けられて第2軸部が第1軸部の中空部から抜け出すのを阻止するように第1フランジに接面する第2フランジと、被取付部材に固定される固定部とを備え、係合部は、第2軸部が第1軸部の中空部に第1軸部の前記一端から挿入されて第2軸部の先端が第1軸部の前記他端から延び出て係合部に当接する係合状態にまで挿入されたときにティビアパッドの取付穴の内壁面に係合する構成であり、係合部は、第2軸部が第1軸部に挿入されていない非挿入状態と第2軸部が第1軸部に挿入されているが第2軸部の先端が第1軸部の前記他端から延び出ない非係合状態とにおいてティビアパッドの内壁面に係合しない構成である、ことを特徴とする。
【0010】
上記のように、第1部品の第1軸部の端部に形成された係合部は、係合状態にあるときティビアパッドの取付穴の内壁面に係合し、非挿入状態と非係合状態とにおいてティビアパッドの内壁面に係合しない構成であるので、クリップをティビアパッドに取付けるのに貫通穴を必要とせず、第1軸部の長さを短くすれば、それに伴なって、第2軸部も短く形成でき、クリップ全体が、フロアパネル等の被取付部材から高くならずに済み、ティビアパッドによる効果を高く維持できるように、ティビアパッドに固定できる。
【0011】
上記クリップにおいて、係合部は、第1軸部の前記他端にヒンジによって第1軸部の半径方向内側と半径方向外側との間で旋回可能に連結されており、係合部は、非挿入状態と非係合状態にあるとき、第1軸部の外面より半径方向外方に張り出さない内側位置にヒンジによって保持されており、係合部は、第2軸部が第1軸部に係合状態に挿入されて第2軸部の先端が係合部を前記ヒンジ回りに旋回させるとき、係合部の先端を第1軸部の外面より半径方向外側に位置させてティビアパッドの内壁面に食い込ませる構成である。そのクリップにおいて、係合部は、第2軸部が係合状態から非係合状態に第1軸部から抜き出されて第2軸部の先端から係合部に付与されていたティビアパッド内壁面への食い込み力が解除されると、内壁面への係合を解除することができる構成であり、クリップをティビアパッドから取外すことができる。係合部は、ヒンジから延びる剛性の板状部と板状部の先端から板状部に対して直交する方向に第1軸部の他端から突出する突起とから成り、突起は、ティビアパッドの取付穴の内壁面に食い込む形状である。
【0012】
上記クリップにおいて、係合部は、第1軸部に直径方向に対向して一対形成される。第2軸部の外面には、長手方向に延びる細長いリブが形成されり、第2軸部の内面には、リブを受けるガイド溝が長手方向に形成され、第2軸部を第1軸部の中空部に挿入すると、リブがガイド溝に嵌合して、第2部品が第1部品に組み付けられる。かかるクリップにおいて、第2軸部は、被取付部材に立設された棒状のスタッドを受入れるように中空に形成されており、固定部は、第2軸部の中空部に形成された弾性係止爪を有する。第1軸部には、第2軸部の中空部にスタッドが挿入されたときに第2軸部の弾性係止爪が半径方向外方に張り出すことができる空間が形成されている。第1フランジは、ティビアパッドの取付穴より大径であるが、取付穴の入口部分に形成された入口凹部より小径の円形フランジである。第2フランジは、第1フランジより大径であるが、ティビアパッドの入口凹部より小径の円形フランジである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。図1に本発明の1実施形態に係る、ティビアパッドの固定のためのクリップ1が示される。ティビアパッドの固定のためのクリップ1は、硬質の合成樹脂によって一体成形された第1部品2と、硬質の合成樹脂によって一体成形された第2部品3とから成る。図2〜図6は、クリップ1の一方の構成部品である第1部品2を示している。図7〜図12は、クリップ1の他方の構成部品である第2部品3を示している。図13は、クリップ1が、非係合状態(図1に示される状態)から係合状態にされた後の斜視図である。図14は、非係合状態にあるクリップ1をティビアパッド5に取付ける前の様子を示している。図15は、クリップ1が係合状態にされてティビアパッド5に取付けられ、そのティビアパッド5が、スタッド6が立設された被取付部材であるフロアパネル7に固定される前の状態を示している。
【0014】
第1部品2について、図2〜図6を参照して説明する。ティビアパッド5の取付穴19に挿入される第1軸部9と、第1軸部9の一端(図3の下端)に設けられて第1軸部9が取付穴19を貫通するのを阻止するようにティビアパッド5に接面する第1フランジ10と、第1軸部9の他端(図3の上端)に設けられてティビアパッドの取付穴の内壁面に係合する係合部11と、係合部11を第1軸部9の半径方向内側と半径方向外側との間で旋回可能に連結するヒンジ13とを備えている。第1軸部9は、第1フランジ10側の一端(下端)から係合部11側の他端(上端)まで中空に形成されて、その中空部分を第2部品3の第2軸部が挿入できる。図示の実施形態において、係合部11と、係合部11を第1軸部9に連結するヒンジ13とは、第1軸部9の直径方向において対向するように、一対形成されている。
【0015】
各ヒンジ13は、ばねのように復帰力の有る弾性を有するのが好ましく、その弾性によって、第2部品3の第2軸部22が第1軸部9に挿入されない非挿入状態又は第2部品3の第2軸部22が第1軸部9に挿入されていても第2軸部の先端が係合部11に当接しない非係合状態にあっては、係合部11を、第1軸部9の外面から半径方向外方には張り出さない内側位置に維持する。また、各ヒンジ13は、可撓性を有し、第2部品3の第2軸部が第1軸部9に挿入され第2軸部の先端が第1軸部9より延び出て係合部11に係合し係合部11に押し出す力を付与した係合状態において、係合部11をヒンジ13の回りに旋回させる。係合状態において、図13に図示のように、係合部11がヒンジ13の回りに旋回して係合部11の先端(突起15)が第1軸部9の外面より半径方向外側に位置する。実施形態において、各ヒンジ13は、薄肉ではあるが強度が高く可撓性で且つ弾性を有する4分の1円弧形状の帯条体に形成されている。
【0016】
図示の実施形態において、各係合部11は、ヒンジ13から延びる剛性の板状部14と板状部14の先端から板状部14に対して直交する方向に第1軸部9の上端から突出する突起15とから成る。突起15は、ティビアパッドの取付穴の内壁面に食い込む形状に形成されている。従って、係合部11の先端が第1軸部9の半径方向外側に位置するように旋回させられると、ティビアパッドの取付穴の内壁面に係合部11が係合して突起15がその内壁面34に食い込ませられる。これによって、第1部品2はティビアパッドに固定される。なお、突起15は、ヒンジ13に向かう側面が斜面に形成されており、第2部品3の第2軸部22が係合状態から非係合状態に第1軸部6から抜き出されて第2軸部22の先端から係合部11に付与されていたティビアパッド内壁面への食い込み力が解除されると、第1部品2をティビアパッド5から抜き出すとき、内壁面への係合を解除し易くなっている。
【0017】
第1軸部9の内面には、第2部品3の第2軸部22の外面に形成された長手方向に延びる細長いリブ30を受けるガイド溝17が、長手方向に延びて形成されている。ガイド溝17は、第2軸部22のリブ30に対応して、一対形成されている。第2部品3の第2軸部22を第1軸部9の中空部に第2軸部22のリブ30がガイド溝17に嵌合するように挿入すれば、第2部品3が第1部品2に組み付けられ、図1のクリップ1となる。また、第1軸部9には、第2部品3の第2軸部22の中空部に形成された弾性係止爪29が第1軸部9の中で半径方向外方に出ることができるように、周方向に一部を切断した空間18が形成されている。空間18は、第2部品3の第2軸部22の弾性係止爪29に合わせて一対形成されている。更に、第1フランジ10は、図14及び図15に図示のように、ティビアパッド5の取付穴19より大径であるが、取付穴19の入口部分に形成された入口凹部21(図14、15)より小径の円形フランジとして形成されている。第1フランジ10はティビアパッド5の入口凹部21の部分で接面して、第1軸部9が取付穴19をそれ以上貫通するのが阻止される。従って、ティビアパッド5には貫通穴を必要とせず、第1軸部9及び係合部11の長さを短くすれば、それに伴なって、第2軸部22も短く形成でき、クリップ全体が、フロアパネル等の被取付部材から高くならずに済み、ティビアパッドによる効果を高く維持できるようにティビアパッドに固定できる。このため、第1軸部9の長さ(図3の上下方向の長さ)は、可能な限り短く形成されるのが好ましく、例えば、図示のように、第2部品3の第2軸部22を挿入するためのガイドとして機能する短いものでよい。また、ヒンジ13及び係合部11が、図13の係合状態にあるとき、その長さ(上下方向の高さ)ができるだけ短くなるように、ヒンジ13及び係合部11が形成されるのが好ましい。
【0018】
図7〜図12を参照して、第2部品3の構成を説明する。第2部品3は、第1部品2の第1軸部9の中空部に一端(図2の下端)から挿入されて他端(同図の上端)から延び出ることができる第2軸部22と、第2軸部22の一端(図8の下端)に設けられて第2軸部22が第1軸部9の中空部から抜け出すのを阻止するように第1フランジ10に接面する第2フランジ23と、フロアパネル7等の被取付部材に固定される固定部25とを備えている。
【0019】
実施形態において、図15に図示のように、フロアパネル7には棒状のねじ又は周溝が形成されたスタッド26が立設されている。固定部25は、第2軸部22に形成されて、図示の実施形態においては、スタッド受入穴27と弾性係止爪29とから成り、被取付部材であるフロアパネル7に立設されたスタッド26に係止する構成である。第2軸部22は、スタッド26を受入れるスタッド受入穴27を有するように中空に形成される。スタッド受入穴27には、受入れたスタッドの棒状部分に形成されたねじの溝又は周溝に係止する弾性係止爪29が一対形成されている。弾性係止爪29の数は2対以上であってもよく、また、周方向に3つ形成されてもよく、スタッドに係止して固定できる限り、任意の数及び形状でよい。更に、固定部は図示のものに限らない。例えば、フロアパネル7にスタッドが立設されず、取付穴が設けられている場合には、固定部は、第2フランジ23から第2軸部22とは反対方向(図8の下方)に延びてフロアパネルの取付穴に挿入されて係止する、錨脚形状の固定部であってもよい。
【0020】
第2軸部22は、第1軸部9に挿入されたとき、その先端が第1軸部9の中空部分を進んで係合部11に係合し、更に、係合部11をヒンジ13回りに旋回させつつ第1軸部9から延び出る長さに形成されている。また、第2軸部22の先端は、一対の係合部11の両方を第1軸部9の半径方向内側の位置から半径方向外側に旋回させる形状に形成されている。第2軸部22の先端が第1軸部9より延び出て係合部11に当接して半径方向外側に旋回させた状態が、図13に示されており、この状態が、「係合状態」である。係合状態において、係合部11の突起15は、第1軸部9の半径方向外側に張り出しており、ティビアパッド5の取付穴19の内壁面に食い込む。なお、第1軸部9に第2軸部22が挿入されていない状態は、「非挿入状態」である。また、第1軸部9に第2軸部22が挿入されているが第2軸部22の先端が係合部11に当接しない状態は、「非係合状態」であり、図1に示されている。第2軸部22は、上記の「非係合状態」及び「係合状態」を得る限り、図示のように円筒形状に形成されてよく、他の任意の形状にも形成できる。第2軸部22の外面には、長手方向に延びる細長いリブ30が形成されている。リブ30は、第1軸部9の内面のガイド溝17に嵌合して、第1部品2と第2部品3とを連結して、クリップ1となる。第1部品2と第2部品3の連結力を強固するにはリブ30とガイド溝との嵌合を緊密にすればよく、例えば、リブ30及びガイド溝17の幅をできるだけ同じ幅に近づけて嵌合後の連結力を高く維持するのが好ましい。その場合、第2軸部22を第1軸部9に挿入するのを容易にするため、入口近くではリブ30に対してガイド溝17の幅を大きくするのが好ましい。リブ30は、第2軸部22の直径方向に対向して一対形成されている。リブ30とガイド溝17の組合せにより、第2部品3が第1部品2に組み付けられ、その組み付けにおいて、第2軸部22の弾性係止爪29が、第1軸部9の空間18に合わせた位置に定められ、第2軸部22にスタッド26を受入れて弾性係止爪29が半径方向外側に撓められるとき、係止爪29が半径方向外側に逃げるための空間18が確保される。更に、リブ30は、第2軸部22を強固にするので、図13に図示のように、係合部11の板状部14を押上げる位置にあって、係合部11の突起15に付与するティビアパッドへの食い込み力を強固にするのが好ましい。従って、リブ30を案内するガイド溝17は、係合部11に対応する位置の第1軸部9の内面に形成されるのが好ましい。なお、第2軸部22の長さは、前記係合状態を維持する長さに設定されるだけでなく、クリップ1全体がフロアパネル等の被取付部材から高くならずに済むように、可能な範囲で短く形成されるのが好ましい。
【0021】
第2フランジ23は、第1フランジより10より大径に形成される。第2フランジ23は、第2軸部22が第1軸部9に「係合状態」に挿入されるとき、第1フランジ10に邪魔されて、第2軸部22のそれ以上の押込みを阻止する。なお、第2フランジ23は、図14及び図15に図示のように、ティビアパッド5の入口凹部21より小径の円形フランジとして形成される。第2フランジ23は、図11に図示のように、外縁部31を有し、外縁部31は、フロアパネル7に立設された、棒状のスタッド26の先端を拾い易いように、第2軸部22と反対側である下方に少し延びている。第2フランジ23は、拾ったスタッドの先端を、第2軸部22のスタッド受入穴27に誘導するように、第2軸部22の軸心に向けて緩やかな勾配を持つ形状に形成されるのが好ましい。
【0022】
上記構成で成る第1部品2に第2部品3を組み付けて非係合状態に連結したクリップ1が図1に示されている。第1部品2に、第2部品3の第2軸部22のリブ30を、第1部品2の第1軸部9の内側のガイド溝17に位置合わせして、第2軸部22を第1軸部9の中空部に挿入する。第2軸部22の挿入は、先端が係合部11に接触しても押上げない位置で止められる。これによって、クリップ1は図1の非係合状態になる。この非係合状態から、更に、第2軸部22を第1軸部9に押込んで、第2軸部22の先端が係合部11に当接して係合部11を押上げると、係合部11がヒンジ13の回りに旋回させられて、ヒンジ13及び係合部11の板状部14が立ち上がり、図13に図示のように、係合部11の突起15が第1軸部9の外面より半径方向外方に突出した「係合状態」となる。
【0023】
クリップ1をティビアパッド5に取付ける操作を、図14及び図15を参照して説明する。ティビアパッド5には、盲穴である取付穴19が形成されており、入口部分には取付穴19より大径の入口凹部21が形成されている。クリップ1は、第1部品2と第2部品3とが図1の非係合状態に連結された状態にある。図14において、ティビアパッド5の取付穴19に、係合部11及びヒンジ13を位置決めして第1軸部9を挿入し、第1フランジ10が入口凹部21のティビアパッド面に接面させる。
【0024】
次に、第2部品3の第2軸部22を第1軸部9に更に挿入するように押込む。図15に図示のように、その押込みによって、第2軸部22の先端が係合部11の板状部14に当接してそれを押上げ、係合部11の板状部14がヒンジ13とともに立ち上がるように旋回させられる(矢印33)。第2軸部22の押込みは、第2フランジ23が第1フランジ10に邪魔されて停止する。係合部11はヒンジ13の回りに旋回させら、ヒンジ13及び係合部11の板状部14を立ち上がらせ、図15に示すように、係合部11の突起15が第1軸部9の外面より半径方向外方に突出した「係合状態」となり、突起15が取付穴19の内壁面34に食い込む。この食い込みによって、第1部品2がティビアパッド5に強固に固定される。第1軸部9とヒンジ13と係合部11の板状部14の長さ(高さ)はティビアパッド5の厚さより十分に低く、図15の取付穴19の上方部分には、軟質材料部分を確保でき、クリップ1の硬質部分に伴なう乗員保護の低下は避けられる。
【0025】
図15において、被取付部材であるフロアパネル7には棒状のスタッド26が溶接等によって立設されている。スタッド26の棒状部分には、ねじ又は周溝が形成されている。図示の実施形態では、スタッド26にはねじが形成されている。フロアパネル7にティビアパッド5を固定するには、取付穴19にクリップ1を取付けた後、第2部品3の第2軸部22のスタッド受入穴27にスタッド26を受入れるように位置決めして、そのままティビアパッド5をフロアパネル7に押付ける。これによって、弾性係止爪29が、ねじ溝又は周溝に係合して第2部品3がスタッド26に係止し、クリップ1がフロアパネル7に固定され、ティビアパッド5がフロアパネル7に固定される。上記のように、合成樹脂ので成るクリップ1を、ティビアパッド5を貫通せずに、フロアパネル7から可能な限り低く抑えることができ、ティビアパッド5による乗員の下肢障害を低減する効果を高く維持できるように、ティビアパッド5をフロアパネル7に固定できる。
【0026】
なお、フロアパネル7には、スタッドが立設されず、フロアパネル7に取付穴(図示せず)が設けられている場合には、固定部はフランジから軸部とは反対側に延びてフロアパネルの取付穴に挿入されて係止する錨脚形状のものであってもよい。このように、固定部はフロアパネルに固定できる限り、任意の形状又は構造のものでよい。
【0027】
ティビアパッド5をフロアパネル5から取外す場合、ティビアパッド5を図15の上方に引き抜けば、ティビアパッド5は第1部品2とともに、第2部品3から、抜き出しできる。これは、第1部品2と第3部品3とは、第2軸部22の長手方向に延びるリブ30と第1軸部9の長手方向に延びるガイド溝17との嵌合によって連結されているので、第1部品2を上方に引き抜くと、第2部品3との連結を外すことができるからである。また、第1軸部9から第2軸部22が引き抜かれると、係合部11の突起15に付与された内壁面34への食い込み力が解除され、第1フランジ10をもって第1部品2をティビアパッド5から引き抜くようにすると、突起15は、その斜面形状によって、突き刺さっていた内壁面34から離れて、第1部品2をティビアパッド5から取外すことができる。第2部品3をスタッド26から取外すには、スタッド26がねじスタッドである場合には、第2部品3を抜き出し方向に回転させればよい。これらによって、ティビアパッド5を新しいものに交換したり、第1部品2又は第3部品3を交換したり、破損していない場合には再使用ができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の1実施形態に係るティビアパッドの固定のためのクリップの「非係合状態」の斜視図である。
【図2】図1のクリップの第1部品の平面図である。
【図3】図2の第1部品の正面図である。
【図4】図2の第1部品の底面図である。
【図5】図3の第1部品の側面図である。
【図6】図2の第1部品のA−A線断面図である。
【図7】図1のクリップの第2部品の平面図である。
【図8】図7の第2部品の正面図である。
【図9】図7の第2部品の底面図である。
【図10】図7の第2部品の側面図である。
【図11】図7の第2部品のB−B線断面図である。
【図12】図8の第2部品のC−C線断面図である。
【図13】図1のクリップを「係合状態」にした斜視図である。
【図14】図1のクリップをティビアパッドに取付ける前の断面図である。
【図15】図1のクリップをティビアパッドに取付けた後、フロアパネルに取付ける前の断面図である。
【符号の説明】
【0029】
1 ティビアパッドの固定のためのクリップ
2 第1部品
3 第2部品
5 ティビアパッド
6 スタッド
7 フロアパネル
9 第1軸部
10 第1フランジ
11 係合部
13 ヒンジ
14 板状部
15 突起
17 ガイド溝
18 空間
19 取付穴
21 入口凹部
22 第2軸部
23 第2フランジ
25 固定部
26 スタッド
27 スタッド受入穴
29 弾性係止爪
30 リブ
34 ティビアパッドの内壁面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗員保護のための軟質材料で成るティビアパッドをフロアパネル等の被取付部材に固定する、ティビアパッドの固定のためのクリップであって、
ティビアパッドに取付けられる硬質合成樹脂製の第1部品と、被取付部材に固定される硬質合成樹脂製の第2部品とから成り、
前記第1部品は、ティビアパッドの取付穴に挿入される第1軸部と、該第1軸部の一端に設けられて該第1軸部が前記取付穴を貫通するのを阻止するようにティビアパッドに接面する第1フランジと、前記第1軸部の他端に設けられてティビアパッドの取付穴の内壁面に係合する係合部とを備え、前記第1軸部は前記第1フランジ側の一端から前記係合部側の他端まで中空に形成されており、
前記第2部品は、前記第1軸部の中空部に前記一端から挿入されて前記他端から延び出ることができる第2軸部と、該第2軸部の一端に設けられて該第2軸部が前記第1軸部の中空部から抜け出すのを阻止するように前記第1フランジに接面する第2フランジと、被取付部材に固定される固定部とを備え、
前記係合部は、前記第2軸部が前記第1軸部の中空部に前記第1軸部の前記一端から挿入されて該第2軸部の先端が前記第1軸部の前記他端から延び出て該係合部に当接する係合状態にまで挿入されたときにティビアパッドの取付穴の内壁面に係合する構成であり、
前記係合部は、前記第2軸部が前記第1軸部に挿入されていない非挿入状態と前記第2軸部が前記第1軸部に挿入されているが前記第2軸部の先端が前記第1軸部の前記他端から延び出ない非係合状態とにおいてティビアパッドの内壁面に係合しない構成である、
ことを特徴とするクリップ。
【請求項2】
請求項1に記載のクリップにおいて、前記係合部は、前記第1軸部の前記他端にヒンジによって第1軸部の半径方向内側と半径方向外側との間で旋回可能に連結されており、前記係合部は、前記非挿入状態と前記非係合状態にあるとき、前記第1軸部の外面より半径方向外方に張り出さない内側位置に前記ヒンジによって保持されており、前記係合部は、前記第2軸部が前記第1軸部に前記係合状態に挿入されて該第2軸部の先端が前記係合部を前記ヒンジ回りに旋回させるとき、該係合部の先端を前記第1軸部の外面より半径方向外側に位置させてティビアパッドの内壁面に食い込ませる構成である、ことを特徴とするクリップ。
【請求項3】
請求項2に記載のクリップにおいて、前記係合部は、第2軸部が前記係合状態から前記非係合状態に前記第1軸部から抜き出されて該第2軸部の先端から該係合部に付与されていたティビアパッド内壁面への食い込み力が解除されると、該内壁面への係合を解除することができる構成であり、当該クリップをティビアパッドから取外すことができる、ことを特徴とするクリップ。
【請求項4】
請求項3に記載のクリップにおいて、前記係合部は、前記ヒンジから延びる剛性の板状部と該板状部の先端から該板状部に対して直交する方向に前記第1軸部の他端から突出する突起とから成り、該突起は、ティビアパッドの取付穴の内壁面に食い込む形状である、ことを特徴とするクリップ。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のクリップにおいて、前記係合部は、前記第1軸部に直径方向に対向して一対形成されている、ことを特徴とするクリップ。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のクリップにおいて、前記第2軸部の外面には、長手方向に延びる細長いリブが形成されており、前記第2軸部の内面には、前記リブを受けるガイド溝が長手方向に形成されており、前記第2軸部を前記第1軸部の中空部に挿入すると、前記リブが前記ガイド溝に嵌合して、前記第2部品が前記第1部品に組み付けられる、ことを特徴とするクリップ。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載のクリップにおいて、前記第2軸部は、被取付部材に立設された棒状のスタッドを受入れるように中空に形成されており、前記固定部は、前記第2軸部の中空部に形成された弾性係止爪を有する、ことを特徴とするクリップ。
【請求項8】
請求項7に記載のクリップにおいて、前記第1軸部には、前記第2軸部の中空部にスタッドが挿入されたときに該第2軸部の弾性係止爪が半径方向外方に張り出すことができる空間が形成されている、ことを特徴とするクリップ。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載のクリップにおいて、前記第1フランジは、ティビアパッドの取付穴より大径であるが、前記取付穴の入口部分に形成された入口凹部より小径の円形フランジである、ことを特徴とするクリップ。
【請求項10】
請求項9に記載のクリップにおいて、前記第2フランジは、前記第1フランジより大径であるが、ティビアパッドの前記入口凹部より小径の円形フランジである、ことを特徴とするクリップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2008−163997(P2008−163997A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−352412(P2006−352412)
【出願日】平成18年12月27日(2006.12.27)
【出願人】(390025243)ポップリベット・ファスナー株式会社 (159)
【Fターム(参考)】