説明

ティルティング機構及びこれを用いる携帯式電子装置

【課題】本発明は、表示側ケースが操作側ケースに対してスライドして展開する際、前記表示側ケースを前記操作側ケースに対して斜めに立ち上がらせるティルティング機構及びこれを用いた携帯式電子装置を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明に係るティルティング機構は、1つの固定板と、1つの取付板と、前記固定板及び前記取付板を連結する1つの従動ロッドと、前記固定板に枢着される第一回転支持部材と、前記取付板に枢着される第二回転支持部材と、前記第一回転支持部材及び前記第二回転支持部材を一体に連結するヒンジ部材と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ティルティング(tilting)機構に関し、特に携帯式電子装置に用いられるティルティング機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在市販されている電子装置は、一般的には、相対的に回転するかまたは相対的にスライドできる上筐体及び下筐体を含む。例えば、携帯式電子装置において、前記上筐体を前記下筐体に対してスライドさせることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来の携帯式電子装置において、上筐体が下筐体の長手方向に沿ってスライドするので、開けた状態において、前記下筐体のキーボード部及び前記上筐体の表示パネルは全て水平位置に保持され、つまり、前記表示パネルは前記キーボード部に対して所望の傾斜角度を形成することができず、ユーザーが前記表示パネルに表示される画像を閲覧する時に不便さを感じている。
【0004】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、表示側ケースが操作側ケースに対してスライドして展開される際、前記表示側ケースを前記操作側ケースに対して斜めに立ち上がらせるティルティング機構及びこれを用いた携帯式電子装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記問題を解決するために、本発明に係るティルティング機構は、1つの固定板と、1つの取付板と、前記固定板及び前記取付板を連結する1つの従動ロッドと、前記固定板に枢着される第一回転支持部材と、前記取付板に枢着される第二回転支持部材と、前記第一回転支持部材及び前記第二回転支持部材を一体に連結するヒンジ部材と、を備える。
【0006】
また、本発明に係る携帯式電子装置は、操作側ケースと、前記操作側ケースに重ね合わされる表示側ケースと、前記表示側ケースに対する前記操作側ケースの開閉を実現するティルティング機構と、を備えてなる。前記ティルティング機構は、1つの固定板と、1つの取付板と、前記固定板及び前記取付板を連結する1つの従動ロッドと、前記固定板に枢着される第一回転支持部材と、前記取付板に枢着される第二回転支持部材と、前記第一回転支持部材及び前記第二回転支持部材を一体に連結するヒンジ部材と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
従来の技術に比べて、本発明に係る携帯式電子装置の表示側ケースは、操作側ケースに対してスライドするとともに、ティルティング機構を介して斜めに開かれて、表示側ケースは操作側ケースに対して所定の傾斜角度を有する状態となるので、ユーザーは、表示パネルに表示された情報を閲覧し易くなり、最もよい視覚効果を得られる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施形態に係る携帯式電子装置の立体分解図である。
【図2】本発明の実施形態に係る携帯式電子装置を別の視点から見た分解図である。
【図3】図1に示した携帯式電子装置のティルティング機構の組立図である。
【図4】図1に示した携帯式電子装置の組立図である。
【図5】図4に示した携帯式電子装置が開いた状態を後方から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明に係る携帯式電子装置は、携帯電話、個人用携帯情報端末(PDA)及びパソコンなどであることができる。本実施形態において、携帯電話を例として説明する。
【0010】
図1に示したように、本発明の実施形態に係る携帯電話100は、操作側ケース10と、表示側ケース20と、ティルティング機構30と、複数の回転軸40と、を備える。前記ティルティング機構30は、複数の前記回転軸40を介して前記操作側ケース10及び前記表示側ケース20にそれぞれに枢着される。前記表示側ケース20は、前記ティルティング機構30を介して前記操作側ケース10に対して斜めに開けられる。
【0011】
前記操作側ケース10の上面12には、入力操作を行うための複数の押しボタン122と、前記ティルティング機構30を固定するための取付凹所124と、前記ティルティング機構30を収納するための収容凹所126と、前記表示側ケース20の前記操作側ケース10に対する傾倒を阻止する止め部128と、が設けられている。前記押しボタン122は、前記操作側ケース10の長手方向の片側(長手方向に対する左右方向の左側)に設けられる。前記取付凹所124、前記収容凹所126及び前記止め部128は、前記操作側ケース10の長手方向の他側(長手方向に対する左右方向の右側)に設けられ、且つ前記取付凹所124は前記押しボタン122と前記収容凹所126との間に位置する。
【0012】
図2に示したように、前記表示側ケース20の前記操作側ケース10に対面する表面には、前記ティルティング機構30を部分的に収納するための収容凹所22が設けられている。前記表示側ケース20の前記収容凹所22に対向する表面には、表示パネル24が設けられている。
【0013】
前記ティルティング機構30は、前記操作側ケース10に取り付けられる固定板31と、前記表示側ケース20に取り付けられる取付板32と、前記固定板31に枢着される第一回転支持部材33と、前記取付板32に枢着される第二回転支持部材34と、前記第一回転支持部材33及び前記第二回転支持部材34を連結する2つのヒンジ部材35と、両端はそれぞれ前記固定板31及び前記取付板32に枢着される1つの従動ロッド36と、を備える。
【0014】
前記固定板31は、前記操作側ケース10の取付凹所124内に取り付けられる。前記固定板31の前記表示側ケース20に対面する表面の長手方向に沿う両端には、それぞれ一対の突出部312が設けられている。各突出部312には、前記回転軸40を装着するための軸穴3122が設けられ、前記4つの軸穴3122が同じ軸線上に位置する。前記固定板31の一端の一対の突出部312に近い箇所には、前記従動ロッド36の一端を前記固定板31に枢着するための取付凹所314が設けられている。前記取付凹所314の対向する2つの側壁には、軸穴3142がそれぞれに設けられている。
【0015】
前記取付板32の短手方向に沿う両側には、前記第二回転軸部材34の両端を枢着するための2つの第一貫通溝322が設けられている。前記第一貫通溝322の対向する2つの側壁には、同じ軸線上に位置する軸穴3222がそれぞれに設けられている。前記取付板32の一端の1つの第一貫通溝322に近い箇所には、前記従動ロッド36の他端を枢着するための第二貫通溝324が設けられている。前記第二貫通溝324の対向する2つの側壁には、同じ軸線上に位置する軸穴3242がそれぞれに設けられている。
【0016】
前記第一回転支持部材33の一端には円柱状のスリーブ332が設けられ、前記第一回転支持部材33の他端には2つの第一枢着用アーム334が互いに離間して設けられる。各第一枢着用アーム334には、軸穴3342が設けられている。
【0017】
前記第二回転支持部材34は、レバー部344と、前記レバー部344の両端に位置する2つの取付筒342と、前記2つの取付筒342の同じ側から略「八」字状に延在する2つの第二枢着用アーム346と、を備える。各第二枢着用アーム346の端部には、軸穴3462が設けられている。前記2つの軸穴3462は同軸に設置される。
【0018】
前記ヒンジ部材35は、固定部352、前記固定部352内に装着され且つ前記固定部352に対して回転可能な回転部354及び前記固定部352と前記回転部354との間に設置される弾性部材のような駆動部(図示せず)を備える。前記固定部352は前記第二回転支持部材34の取付筒342内に装着され、前記回転部354は前記第一回転支持部材33のスリーブ332内に装着される。
【0019】
前記従動ロッド36の両端には、それぞれ1つの軸筒362が設けられ、前記2つの軸筒362は互いに平行する。
【0020】
以下、本発明の携帯電話100の組立ステップについて詳細に説明する。
【0021】
まず、前記第一回転支持部材33のスリーブ332を前記第二回転支持部材34の2つの取付筒342の間に設置し、前記第二回転支持部材34の取付筒342と前記第一回転支持部材33のスリーブ332との位置を合わせる。ついで、前記ヒンジ部材35の固定部352を前記第二回転支持部材34の取付筒342内に収納すると共に、前記ヒンジ部材35の回転部354を前記第一回転支持部材33のスリーブ332内に収納する。ついで、前記第一回転支持部材33の2つの第一枢着用アーム334を別々に前記固定板31の両端の2つの突出部312の間に設置して、前記第一枢着用アーム334の軸穴3342と前記突出部312の軸穴3122との位置を合わせてから、前記軸穴3122及び前記軸穴3342内に回転軸40を順次に挿入して、前記第一回転支持部材33を前記固定板31に枢着する。続いて前記従動ロッド36の一端を前記固定板31の取付凹所314内に設置してから、前記回転軸40を前記取付凹所314の軸穴3142及び前記軸筒362内に順次に挿入して、前記従動ロッド36の一端を前記固定板31に枢着する。
【0022】
次に、前記第二回転支持部材34の2つの第二枢着用アーム346の端部をそれぞれ前記取付板32の2つの第一貫通溝322内に設置してから、前記取付板32の軸穴3222及び前記第二回転支持部材34の軸穴3462内に回転軸40を順次に挿入して、前記第二回転支持部材34を前記取付板32に枢着する。この際、前記第一回転支持部材33は2つの前記第二枢着用アーム346の間に位置する。前記従動ロッド36の他端を前記取付板32の第二貫通溝324内に設置してから、前記取付板32の軸穴3242及び前記従動ロッド36の軸筒362に回転軸40を挿入して、前記従動ロッド36の他端を前記取付板32に枢着する。
【0023】
最後に、前記固定板31を前記操作側ケース10の取付凹所124上に覆って、ねじで前記固定板31を前記操作側ケース10に螺合する。同様にして、ねじで前記取付板32を前記表示側ケース20の収容凹所22に螺合する。これで、前記携帯電話100の組立を完成する。
【0024】
図5を参照すると、前記携帯電話100を開ける場合、前記表示側ケース20の前記押しボタン122に近い一端を前記操作側ケース10の短手方向に沿って推進させると、前記従動ロッド36の両端はそれぞれ前記取付凹所314内の回転軸40及び前記第二貫通溝324内の回転軸40に対して回転すると共に、斜めに立ち上がるため、前記第二回転支持部材34は、前記第一回転支持部材33に対して回転すると共に、前記第一回転支持部材33は前記第二回転支持部材34に連動されて前記操作側ケース10に対して少し斜めに立ち上がる。この過程において、前記第一回転支持部材33のスリーブ332内に装着された前記回転部354は、前記第二回転支持部材34の取付筒342に装着された固定部352に対して回転する。
【0025】
前記ヒンジ部材35の回転部354は前記固定部352に対して所定の回転位置を有し、前記回転部354が前記所定の回転位置を越えると、前記回転部354は前記弾性部材に駆動されて前記固定部352に対して自発的に回転する。即ち、引き続き前記表示側ケース20を推進して、前記回転部354が前記所定の位置を越えると、前記第二回転支持部材34は前記第一回転支持部材33に対して自発的に展開すると共に、前記従動ロッド36を連動して前記操作側ケース10に対して回転する。前記表示側ケース20の前記操作側ケース10に接触する一端は、前記操作側ケース10の止め部128に当止されると、前記携帯電話100は完全に斜めに開けられて、ユーザーに所望の視覚角度を与える。
【0026】
また、前記表示側ケース20と前記取付板32とを一体に成型してもよい。同様にして、前記操作側ケース10と前記固定板31とを一体に成型してもよい。
【0027】
また、前記第二回転支持部材34の取付筒342及び前記ヒンジ部材35の数量は2つの限定されるものではなく、1つだけ設けても前記表示側ケース20を前記操作側ケース10に対して斜めに立ち上がることができる。
【0028】
また、前記ヒンジ部材35の固定部352を前記第一回転支持部材33のスリーブ332内に収納すると共に、前記ヒンジ部材35の回転部354を前記第二回転支持部材34の取付筒342内に収納することもできる。
【0029】
本発明によれば、前記ティルティング機構30は、ヒンジ部材35により枢着する第一回転支持部材33及び第二回転支持部材34と、従動ロッド36とを備える。前記表示側ケース20は、前記ティルティング機構30により前記操作側ケース10に対して斜めに立ち上がることができる。
【0030】
以上、本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々の変形又は改良が可能であり、該変形又は改良も、本発明の特許請求の範囲内に含まれるものであるのがいうまでもない。
【符号の説明】
【0031】
10 操作側ケース
12 上面
20 表示側ケース
22 収容凹所
24 表示パネル
30 ティルティング機構
31 固定板
32 取付板
33 第一回転支持部材
34 第二回転支持部材
35 ヒンジ部材
36 従動ロッド
40 回転軸
100 携帯電話
122 押しボタン
124 取付凹所
126 収容凹所
128 止め部
312 突出部
314 取付凹所
322 第一貫通溝
324 第二貫通溝
332 スリーブ
334 第一枢着用アーム
342 取付筒
344 レバー部
346 第二枢着用アーム
352 固定部
354 回転部
362 軸筒
3122 軸穴
3142 軸穴
3222 軸穴
3242 軸穴
3342 軸穴
3462 軸穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つの固定板と、
1つの取付板と、
前記固定板及び前記取付板を連結する1つの従動ロッドと、
前記固定板に枢着される第一回転支持部材と、
前記取付板に枢着される第二回転支持部材と、
前記第一回転支持部材及び前記第二回転支持部材を一体に連結するヒンジ部材と、
を備えることを特徴とするティルティング機構。
【請求項2】
前記ヒンジ部材は、固定部及び前記固定部内に装着され且つ前記固定部に対して回転することができる回転部を含み、
前記第一回転支持部材の一端にはスリーブが設けられており、前記第二回転支持部材には取付筒が設けられており、
前記固定部は、前記第一回転支持部材のスリーブ及び前記第二回転支持部材の取付筒の中の一方に収納されて固定され、前記回転部は、前記第一回転支持部材のスリーブ及び前記第二回転支持部材の取付筒の中の他の一方に収納されて固定されることを特徴とする請求項1に記載のティルティング機構。
【請求項3】
前記第一回転支持部材の他端には、前記固定板の両端に枢着される2つの第一枢着用アームが設けられ、
前記第二回転支持部材は、前記取付筒の片側から延在し且つ前記取付板に枢着される第二枢着用アームをさらに備えることを特徴とする請求項2に記載のティルティング機構。
【請求項4】
操作側ケースと、
前記操作側ケースに重ね合わされる表示側ケースと、
前記表示側ケースに対する前記操作側ケースの開閉を実現するティルティング機構と、 を備えてなる携帯式電子装置であって、
前記ティルティング機構は、1つの固定板と、1つの取付板と、前記固定板及び前記取付板を連結する1つの従動ロッドと、前記固定板に枢着される第一回転支持部材と、前記取付板に枢着される第二回転支持部材と、前記第一回転支持部材及び前記第二回転支持部材を一体に連結するヒンジ部材と、を備えることを特徴とする携帯式電子装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−188472(P2011−188472A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−444(P2011−444)
【出願日】平成23年1月5日(2011.1.5)
【出願人】(505177003)深▲セン▼富泰宏精密工業有限公司 (138)
【出願人】(508155310)富士康(香港)有限公司 (185)
【Fターム(参考)】