説明

ティーバッグ用不織布およびティーバッグ

【課題】脂肪族ポリエステルを主たる成分として含んでいるため環境影響が低く、かつティーバッグ用不織布として使用するに好適な特性を備えた熱可塑性フィラメント不織布を提供するものである。
【解決手段】本発明は、熱可塑性フィラメント不織布からなるティーバッグ用不織布に関するであって、脂肪族ポリエステルとポリアミドがブレンドされてなる熱可塑性フィラメントを含有することを特徴とするティーバッグ用不織布に関するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性フィラメントからなるティーバッグ用不織布に関するものであり、脂肪族ポリエステルとポリアミドとのブレンドポリマーからなる熱可塑性フィラメントを含むものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、紅茶、緑茶、烏龍茶などのお茶を成分抽出する場合、簡便な方法として、ティーバッグ方式が多く利用されている。ティーバッグに使用されている包装材は、一般に紙が多く用いられているが、強伸度が弱く、紙が破れて中の茶葉がこぼれたり、ヒートシール加工ができないことなどの問題がある。
【0003】
例えば、特許文献1として、ポリ−L−乳酸からなり、繊度が15〜35dtex、沸水収縮率が20%以下であることを特徴とするティーバッグ用生分解性モノフィラメントに関する技術が詳細に記載されている。当該技術によれば、ティーバッグとして使用可能なポリ乳酸繊維からなるティーバッグ用生分解性モノフィラメントを得ることができるものとある。さらにポリ乳酸を使用しているため、使用後の廃棄が容易であり、さらには非石油系原料が使用可能であるため、空気中の二酸化炭素の絶対量を増加させないというメリットを持つものである。しかしながらポリ乳酸繊維からなるティーバッグ用生分解性モノフィラメントを使用した場合には、不織布の強度や伸度が不十分である場合が多く、モノフィラメントを用いた紗織物によるティーバッグは、糸を太くすると、粉漏れが多くなるという問題がある。
【0004】
例えば、特許文献2には低融点と高融点からなるポリ乳酸系重合体を用いたティーバッグに関する技術が詳細に記載されている。当該技術によれば、ポリ乳酸の生分解性を維持し、完全循環型生分解性の不織布や織り・編み布等の繊維構造物からなるティーバックを得ることが出来るものとある。当該技術によれば、低融点と高融点を有するポリ乳酸繊維を用いることで、熱融着により繊維同士を接着させ、高強力なティーバッグを得られるとあるが、不織布の伸度についての記載や、熱収縮に関する記載が無く、ポリ乳酸からなる不織布では十分に伸度が得られず、なおかつ低融点のポリ乳酸重合体を含むため、熱収縮率が高くなり、ティーバッグを温水に浸した際、収縮し目付がきつくなり、抽出速度が遅くなることにより抽出された茶類の味が薄くなる問題がある。
【0005】
例えば、特許文献3には構成する繊維径を調整することで透明性に優れる不織布からなるティーバッグが得られるという技術が詳細に記載されている。当該技術によれば、透明性に優れ、粉漏れの少ない不織布が得られるとある。しかし、不織布の伸度についての記載はなく、伸度が無い場合は、ティーバッグが温水中で膨らむことによる茶葉への水分の浸透および抽出が十分に起らず、抽出された茶類の味が薄くなる問題がある。
【特許文献1】特開2001−131826号公報
【特許文献2】特許第3462155号公報
【特許文献3】特再表2004−003277号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記従来技術の問題点に鑑み、機械的強度や寸法安定性に優れ、かつ脂肪族ポリエステル、とりわけポリ乳酸のように非石油系原料より合成可能な樹脂を主たる成分として含んでいるため、廃棄処分しても環境影響の低いティーバッグ用不織布を提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、かかる課題を解決するために、次のような手段を採用するものである。
すなわち、
(1)熱可塑性フィラメント不織布からなるティーバッグ用不織布であって、該熱可塑性フィラメントが脂肪族ポリエステルとポリアミドとのブレンドポリマーからなることを特徴とするティーバッグ用不織布。
【0008】
(2)前記熱可塑性フィラメント不織布の沸騰水中、5分間浸漬後の縦方向と横方向の熱収縮率がともに−5〜+10%であることを特徴とする(1)記載のティーバッグ用不織布。
【0009】
(3)前記ブレンドポリマーからなる熱可塑性フィラメントの単繊維繊度が1〜15デシテックスであって、前記不織布の目付が10〜100g/m、かつ目付当たりのヒートシール強伸度積が80〜200であることを特徴とする(1)または(2)記載のティーバッグ用不織布。
【0010】
(4)前記ブレンドポリマーからなる熱可塑性フィラメントが、脂肪族ビスアミドおよび/またはアルキル置換型の脂肪族モノアミドを0.1〜5.0wt%含有することを特徴とする(1)〜(3)いずれかに記載のティーバッグ用不織布。
【0011】
(5)前記ブレンドポリマーの脂肪族ポリエステル:ポリアミドの重量比率が20:80〜95:5であることを特徴とする(1)〜(4)いずれかに記載のティーバッグ用不織布。
【0012】
(6)前記ブレンドポリマーからなる熱可塑性フィラメントの断面方向において、ポリアミド成分が平均単繊維繊度1×10−7〜1×10−3デシテックスで微分散していることを特徴とする(1)〜(5)いずれかに記載のティーバッグ用不織布。
【0013】
(7)前記脂肪族ポリエステルがポリ乳酸であり、前記ポリアミドがナイロン6であることを特徴とする(1)〜(6)いずれかに記載のティーバッグ用不織布。
【0014】
(8)前記不織布を構成する繊維同士が、繊維同士が互いに熱接着してなることを特徴とする(1)〜(7)いずれかに記載のティーバッグ用不織布。
【0015】
(9)(1)〜(8)のいずれかに記載の不織布からなるティーバッグ。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、脂肪族ポリエステルを主たる成分の一つとして含みながら、優れた機械的強度や寸法安定性を有するティーバッグ用不織布およびティーバッグを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明のティーバッグ用不織布は、熱可塑性フィラメント不織布からなるものであり、熱可塑性フィラメント不織布を構成する熱可塑性フィラメントとして、脂肪族ポリエステルとポリアミドがブレンドされたブレンドポリマーからなる熱可塑性フィラメントを含有するものである。
【0018】
前記脂肪族ポリエステルは生分解性の脂肪族ポリエステルであれば特に限定されないが、例えば、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリヒドロキシブチレート、ポリヒドロキシブチレートバリレート、あるいはこれらの共重合体や変成物を、単独またはブレンドして用いることができる。なかでも紡糸性、力学的特性が良好であり、かつ植物由来のデンプンからの合成が可能であるため環境影響が小さい、ポリ乳酸系樹脂が最も好ましいものである。かかるポリ乳酸系樹脂としては、ポリ(D−乳酸)と、ポリ(L−乳酸)と、D−乳酸とL−乳酸の共重合体、あるいはこれらのブレンド体(ステレオコンプレックスを含む)が好ましいものである。かかるポリ乳酸系樹脂の重量平均分子量は5万〜30万が好ましく、より好ましくは10万〜30万である。重量平均分子量が5万を下回る場合は、繊維の強力が低くなる傾向があり、また、重量平均分子量が30万を越える場合は、粘度が高いためノズルから押し出したポリマーの曳糸性が乏しく、高速延伸ができにくくなり、究極的には未延伸状態になり、十分な繊維強度を得ることができない傾向がでてくる。
【0019】
また、本発明に用いる脂肪族ポリエステルは、分子鎖末端のカルボキシル基の一部、または全てが末端封鎖剤により末端封鎖されてなるものが好ましい。脂肪族ポリエステルの分子鎖末端のカルボキシル基の一部、または全てが末端封鎖されることにより、加水分解によるフィラメント、さらにはシートの強度低下が抑制される。末端封鎖剤の添加により脂肪族ポリエステルのカルボキシル基末端濃度を、0〜20当量/tonとすることが好ましく、0〜15当量/tonとすることがより好ましく、0〜10当量/tonとすることがさらに好ましい。ここで脂肪族ポリエステルのカルボキシルキ基末端濃度は、精秤したサンプルをo−クレゾール(水分5%)に溶解し、この溶液にジクロロメタンを適量添加した後、0.02規定のKOHメタノール溶液にて滴定することにより求めることができる。
【0020】
本発明にて用いられる脂肪族ポリエステルの末端封鎖剤としては、何ら制限されるものではないが、カルボジイミド化合物や、イソシアヌル酸を基本骨格とするグリシジル変性化合物が好ましいものである。これら末端封鎖剤の添加量は、脂肪族ポリエステルに対して、0.05〜10wt%が好ましい範囲であり、0.1〜7wt%がさらに好ましい範囲である。
【0021】
本発明にて脂肪族ポリエステルの末端封鎖剤として用いられるカルボジイミド化合物としては、特に限定されるものではないが、モノカルボジイミド化合物が用いられる場合は、5%重量減少温度(以下、T5%と示す)が170℃以上のモノカルボジイミド化合物であることが好ましく、T5%が190℃以上のモノカルボジイミド化合物であることがより好ましい。モノカルボジイミド化合物のT5%が170℃未満の場合、モノカルボジイミド化合物が紡糸時に分解および/または気化し、糸切れの増加や製品品位の悪化が発生する傾向であり好ましくない方向である。さらにはモノカルボジイミド化合物が脂肪族ポリエステルのカルボキシル基末端に有効に反応、作用せず十分な耐加水分解性の向上効果を得られない傾向もあり好ましくない。なお、ここで5%重量減少温度とは、MACSCIENCE社製“TG−DTA2000S”TG−DTA測定機により、試料重量10mg程度、窒素雰囲気中にて昇温速度10℃/分として測定した時の、測定開始前の試料重量に対して重量が5%減量したときの温度として求めた温度である。
【0022】
本発明において末端封鎖剤として用いることのできるモノカルボジイミド化合物の例としては、例えば、N,N’−ジ−2,6−ジイソプロピルフェニルカルボジイミド、N,N’−ジ−2,6−ジ−tert.−ブチルフェニルカルボジイミド、N,N’−ジ−2,6−ジエチルフェニルカルボジイミド、N,N’−ジ−2−エチル−6−イソプロピルフェニルカルボジイミド、N,N’−ジ−2−イソブチル−6−イソプロピルフェニルカルボジイミド、N,N’−ジ−2,4,6−トリメチルフェニルカルボジイミド、N,N’−ジ−2,4,6−トリイソプロピルフェニルカルボジイミド、N,N’−ジ−2,4,6−トリイソブチルフェニルカルボジイミドなどが挙げられる。末端封鎖剤として用いられるモノカルボジイミド化合物は、1種の単独使用であっても複数種の混合物であってもよいが、耐熱性および反応性や脂肪族ポリエステルとの親和性の点でN,N’−ジ−2,6−ジイソプロピルフェニルカルボジイミド(以下、TICと記す)が好ましく、複数種のモノカルボジイミド化合物を併用する場合は、末端封鎖剤として用いるモノカルボジイミド化合物の総量のうち50%以上がTICであることが好ましい。
【0023】
モノカルボジイミド化合物により末端カルボキシル基を封鎖する方法としては、脂肪族ポリエステルの溶融状態でモノカルボジイミド化合物を末端封鎖剤として適量反応させることで得ることができるが、脂肪族ポリエステルの高重合度化、残存低分子量物の抑制などの観点から、ポリマーの重合反応終了後にモノカルボジイミド化合物を添加、反応させることが好ましい。上記したモノカルボジイミド化合物と脂肪族ポリエステルとの混合、反応としては、例えば、重縮合反応終了直後の溶融状態の脂肪族ポリエステルにモノカルボジイミド化合物を添加し攪拌・反応させる方法、脂肪族ポリエステルのチップにモノカルボジイミド化合物を添加、混合した後に反応缶あるいはエクストルーダなどで混練、反応させる方法、エクストルーダで脂肪族ポリエステルに液状のモノカルボジイミド化合物を連続的に添加し、混練、反応させる方法、モノカルボジイミド化合物を高濃度含有させた脂肪族ポリエステルのマスターチップと脂肪族ポリエステルのホモチップとを混合したブレンドチップをエクストルーダなどで混練、反応させる方法などにより行うことができる。
【0024】
本発明において加水分解抑制剤として用いられるカルボジイミド化合物は、特に限定されるものではないが、ポリカルボジイミド化合物が用いられる場合は、[化1]
【0025】
【化1】

【0026】
で表される4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、および[化2]
【0027】
【化2】

【0028】
で表されるイソホロンジイソシアネート、および、[化3]
【0029】
【化3】

【0030】
で表されるテトラメチルキシリレンジイソシアネートの少なくとも1種に由来し、分子中に2以上のカルボジイミド基を有し、かつそのイソシアネート末端がカルボン酸で封止されてなるポリカルボジイミド化合物であることが好ましい。
【0031】
ポリカルボジイミド化合物は、上記式1で表される4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(以下、HMDIと略記)、または、上記式2で表されるイソホロンジイソシアネート(以下、IPDIと略記)、または、上記式3で表されるテトラメチルキシリレンジイソシアネート(以下、TMXDIと略記)のいずれか1種に由来するカルボジイミド、もしくは上記化合物の2種混合物、又は3種混合物のいずれかの混合物に由来するカルボジイミドで、分子中に2以上のカルボジイミド基、好ましくは5以上のカルボジイミド基を有するものを主成分とする。なお、ポリカルボジイミド中のカルボジイミド基の上限は20である。このようなカルボジイミドは、HMDI、またはIPDI、またはTMXDI又は上記化合物の2種混合物、または3種混合物を原料とする脱二酸化炭素反応を伴うカルボジイミド化反応により製造することができる。なお、この中でも、得られた繊維の力学的特性が優れているという点で、HMDIを50重量%以上用いたカルボジイミドが好ましく、HMDIを80重量%以上用いたカルボジイミドがより好ましい。
【0032】
また、本発明にて使用されるポリカルボジイミド化合物としては、脂肪族ポリエステル樹脂中に未反応のポリカルボジイミド化合物が存在しても、熱安定性に優れるために、フィラメント化する際の紡糸性悪化や刺激性ガスの発生を抑えることができることから、イソシアネート末端がカルボン酸を用いて末端を封止されたものであることが必要である。好ましく用いられるカルボン酸はモノカルボン酸であり、例えばシクロヘキサンカルボン酸、安息香酸、無水トリメリット酸、2−ナフトエ酸、ニコチン酸、イソニコチン酸、2−フル酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、メタクリル酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、ケイ皮酸、グリセリン酸、アセト酢酸、ベンジル酸、アントラニル酸等が挙げられ、この中で最も好ましいのはシクロヘキサンカルボン酸である。
【0033】
なお、未反応のポリカルボジイミド化合物の熱劣化によって生じる熱分解ガスの発生量を減じるため、ポリカルボジイミド化合物の添加量を、カルボジイミド基当量として脂肪族ポリエステルのトータルカルボキシル基末端量の2倍当量以下にすることが好ましい。ポリカルボジイミド化合物の添加量は、より好ましくはトータルカルボキシル基末端量の1.5倍当量以下であり、さらに好ましくは1.2倍当量以下である。
【0034】
本発明にて脂肪族ポリエステルの末端封鎖剤として用いられるイソシアヌル酸を基本骨格とするグリシジル変性化合物とは、下記[化4]で表されるものである。
【0035】
【化4】

【0036】
(ここで、R〜Rのうち、少なくとも1つはグリシジルエーテル若しくはグリシジルエステルであり、残りは水素、炭素原子数1〜10のアルキル基、水酸基、アリル基等の官能基)
本発明において末端封鎖剤として用いられるイソシアヌル酸を基本骨格とするグリシジル変性化合物としては、上記[化4]で表される化合物であれば特に限定されるものではないが、上記[化4]のRのうち、いずれか一つがグリシジル基、残る二つがアリル基であるジアリルモノグリシジルイソシアヌレートや、上記[化4]のR〜Rのうち、いずれか二つがグリシジル基、残る一つがアリル基であるモノアリルジグリシジルイソシアヌレートや、上記[化4]のR〜Rの全てがグリシジル基であるトリス(2,3−エポキシプロピル)イソシアヌレートなどが好ましく用いられる。なお、前記脂肪族ポリエステルに結晶核剤や艶消し剤、顔料、防カビ剤、抗菌剤、難燃剤、帯電防止剤、親水剤等を、本発明の効果を損なわない範囲で添加してもよい。
【0037】
本発明において脂肪族ポリエステルとブレンドポリマーを構成するポリアミドとしては、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン6−10、ナイロン12、あるいはこれらの共重合体や変性物を、単独またはブレンドして用いることができる。ポリアミドの選定にあたっては、脂肪族ポリエステルとの融点差の少ないものを選ぶことが好ましい。なお、前記ポリアミドに結晶核剤や艶消し剤、顔料、防カビ剤、抗菌剤、難燃剤、帯電防止剤、親水剤等を、本発明の効果を損なわない範囲で添加してもよい。
本発明において最も好ましいブレンドポリマーは、脂肪族ポリエステルとして前述のポリ乳酸を使用し、ポリアミドとしてナイロン6を使用してなるものである。ナイロン6は融点が220℃とポリ乳酸の融点170℃に対し融点差が少なく、親和性も高く複合紡糸した場合の紡糸性がよいため特に好ましい。特にティーバッグとして使用する際、上記ポリマーの組み合わせであれば、融点が水の沸点である100℃以上であるため、耐熱性の点においても好ましい形態となる。
【0038】
また本発明においてブレンドされる脂肪族ポリエステル:ポリアミドの重量比率は、20:80〜95:5の範囲が好ましく、さらに好ましくは40:60〜90:10であり、最も好ましくは、50:50〜85:15である。ポリアミドの重量比率が80を越えると、脂肪族ポリエステルをブレンドすることによる環境影響を低くする効果が小さくなるため好ましくない方向である。またポリアミドの重量比率が5以上であれば、不織布の強伸度や熱収縮特性が十分となる傾向であり好ましいものである。
【0039】
本発明におけるブレンドポリマーからなる熱可塑性フィラメントは、その断面方向において、ポリアミドが平均単繊維繊度1×10−7〜1×10−3デシテックスで微分散してなることが好ましい。ポリアミドの平均単繊維繊度が上記範囲内で微分散していれば、不織布の強伸度や熱収縮特性が十分となる傾向であり好ましい。微分散したポリアミドの平均単繊維繊度は2×10−7〜5×10−4デシテックスがより好ましく、9×10−7〜4×10−4デシテックスの範囲が最も好ましい。なお本発明におけるポリアミド成分の平均単繊維繊度は、以下の方法で求められる。すなわち、試料からランダムに小片サンプルを10個採取し、エポキシ樹脂に包埋して断面方向に超薄切片として切り出し、透過型電子顕微鏡(TEM、例えば日立製H7100FA型)で、4万〜10万倍の倍率で写真を撮影する。各サンプルからポリアミド成分の断面積の大きさを20本ずつ、計200本測定して平均値を算出し、これを円形繊維の繊維径に換算し、ポリマーの密度で補正して求められるものである。なおTEM観察において、ポリアミドと脂肪族ポリエステルとが識別しにくい場合には、適宜試料を染色してもよい。
【0040】
本発明において、ポリアミドを脂肪族ポリエステル中に微分散させる方法としては、溶融混練押出機や静止混練器等によって混練することが好ましい。また混練性を高める方法として、ポリアミドと脂肪族ポリエステルの組み合わせも重要であり、組み合わせるポリマーの相溶性を最適化することが好ましい。相溶性の指標として、ポリアミドと脂肪族ポリエステルの溶解度パラメーター(SP値)の差を、1〜9(MJ/m1/2とすることが好ましい。ここでSP値とは、(蒸発エネルギー/モル容積)1/2で定義される物質の凝集力を反映するパラメータであり、例えば「プラスチック・データブック」旭化成アミダス株式会社/プラスチック編集部共編、189ページ等に記載されている。ポリアミドと脂肪族ポリエステルのSP値の差を1〜9(MJ/m1/2の範囲にすれば、ポリマー同士の相溶性が良くなるためポリアミドの分散性が良くなり、さらには紡糸安定性も向上する傾向となるため好ましい方向である。例えば、前述のポリ乳酸とナイロン6の組み合わせは、SP値の差が2(MJ/m1/2であり、相溶性の点からも好ましいものである。
【0041】
またさらに、ポリアミドの溶融粘度を脂肪族ポリエステルより低くすることが好ましい。ポリアミドの溶融粘度を脂肪族ポリエステルより低くすると、剪断力によりポリアミドが変形しやすく、微分散しやすいため好ましい。
【0042】
上記ブレンドポリマーを熱可塑性フィラメント不織布の原料ポリマーとして用いるが、熱可塑性フィラメント不織布を後述するスパンボンド法で製造する場合には、ブレンドと紡糸を連続して行ってもよい。また、ブレンドポリマーからなる熱可塑性フィラメント以外の熱可塑性フィラメントを含んでいてもよい。
【0043】
本発明の熱可塑性フィラメント不織布は、沸騰水中、5分間浸漬後の熱収縮率が、縦方向、横方向ともに−5〜+10%の範囲であることが好ましい。熱収縮率が縦方向、横方向とも−10〜+5%の範囲であれば、ティーバッグ用不織布として使用した際、温水に浸したティーバッグが収縮し、目付がきつくなり、抽出速度が遅くなることにより抽出された茶類の味が薄くなるのを防ぐことが出来、好ましい。より好ましい熱収縮率の範囲は、−3〜+8%の範囲である。さらに好ましい熱収縮率の範囲は−2〜+5%の範囲である。なお、本発明における熱収縮率は以下の方法にて測定することができる。すなわちJIS L1906(2000年版)の5.9.1および5.9.2を参考とし、不織布の任意の部分から縦25cm×横25cmのサンプルを10個採取し、縦、横それぞれ3カ所に20cmの長さを表す印を付け(0.01cmの単位まで測定)、適当な容器中で沸騰水中に5分間浸漬させる。試験片を取り出し、濾紙などで軽く水を切り、ねじったり伸ばしたりすることなく、不自然なしわを除いて、水平なスクリーンメッシュ又は類似の穴のあいた平らなものの上に載せて自然乾燥させる。10個のサンプルについて、印を付けた縦、横方向それぞれ3カ所の長さを0.01cm単位まで測定し、10個のサンプルの合計を次式に当てはめ、小数点以下第一位を四捨五入して熱収縮率を算出する。
【0044】
熱収縮率(%)=((L1−L2)/L1)×100
ここで、L1:加熱前の3線の長さの合計(サンプル10個の合計)(cm)
L2:加熱後の3線の長さの合計(サンプル10個の合計)(cm)。
【0045】
また、本発明におけるブレンドポリマーからなる熱可塑性フィラメントの単繊維繊度は1〜15デシテックスであることが好ましい。フィラメントの単繊維繊度が1デシテックスを下回る場合は、ティーバッグを温水に浸したとき、抽出速度が遅くなることにより抽出された茶類の味が薄くなり好ましくない。フィラメントの単繊維繊度が15デシテックスを超える場合は、ティーバッグ内の茶葉や茶粉がこぼれるため好ましくない。より好ましい単繊維繊度の範囲は、1.8〜12デシテックスである。なお、ここでいう単繊維繊度は、試料からランダムに小片サンプル10個を採取し、走査型電子顕微鏡等で500〜3000倍の写真を撮影し、各サンプルから10本ずつ、計100本の繊維の直径を測定し、それらの平均値の0.01μmの位を四捨五入して算出した繊維径を、ポリマーの密度で補正し、小数点第一位を四捨五入して求められるものである。またさらに、前記フィラメントの断面形状は何ら制限されるものではなく、丸形、楕円型、中空丸形、扁平型、あるいはX形、Y形、多葉形等の異形、等が好ましく使用されるが、製造が簡便である点から丸形形状が最も好ましいものである。
【0046】
本発明における熱可塑性フィラメント不織布の目付は10〜100g/mであることが好ましい。目付が10g/mを下回るとティーバッグ用不織布として使用するに十分な強度が得られにくい傾向であり好ましくなく、目付が100g/mを超える場合は、ティーバッグを温水に浸したとき、抽出速度が遅くなることにより抽出された茶類の味が薄くなり好ましくない。より好ましい不織布の目付は15〜70g/m、さらに好ましくは20〜50g/mの範囲である。ここで目付は以下の方法で求めるものである。すなわち、縦50cm×横50cmのサイズの試料を3個採取して各重量をそれぞれ測定し、得られた値の平均値を単位面積当たりに換算、小数点以下第一位を四捨五入することで求めるものである。
【0047】
また、本発明における熱可塑性フィラメント不織布は、平袋あるいは四面体形状等の袋状に加工して、被抽出物を充填し、ティーバッグとして好ましく用いられる。製袋加工の方法は、特に限定されず、例えば、ヒートシーラーにより不織布を溶融させ、繊維同士を接着させるヒートシール、溶着シール、溶断シール、超音波ミシンによる超音波シール、高周波シールなどが可能であり、公知の製袋加工機を用いることができる。ヒートシール時の温度は、不織布を構成する樹脂の融点より15℃低い範囲で行なうことが好ましい。ヒートシール時の温度が不織布を構成する樹脂の融点以上では不織布が完全に溶融してしまい、穴があいてしまい好ましくない。また融点より15℃以上低いとヒートシールが十分に行なわれず、接着部分で剥離が起こり好ましくない。ヒートシール時の時間や圧力などは、上記温度範囲内であれば、任意の条件で行なうことができる。また、不織布を構成する樹脂が、多成分からなる場合の設定温度は、最も低い融点を有する樹脂を基準に設定する。さらにティーバッグとして使用する際、該接着部分が破れ、中の茶葉がこぼれることを防ぐために目付当たりのヒートシール強伸度積が80〜200であることが好ましい。目付当たりのヒートシール強伸度積が80を下回る場合は、ヒートシール部分の強度が不十分となる傾向であり好ましくない。目付当たりのヒートシール強伸度積が200を超える場合は、不織布の風合いが硬くなり過ぎる傾向であり好ましくない。より好ましい目付当たりのヒートシール強伸度積は100〜180の範囲である。なお本発明における不織布の目付当たりのヒートシール強伸度積は、不織布の目付とヒートシール引張強力、伸度の関係を示すものである。ヒートシール引張強力とヒートシール伸度は以下の方法で求めるものである。すなわち、不織布の縦方向(長さ方向)について、幅5cm×長さ31cmの試験片を10点採取する。得られた試料の長さ方向の中間点である15.5cmで試料を切断し、分断した2枚の試料をのりしろ0.5cmにて重ね合わせ、ヒートシーラーによって、不織布を構成する樹脂の融点より15℃低い温度で、0.5cm幅、3秒間のヒートシール接着を行ない、幅5cm×長さ30cmのヒートシール試験片を得た。得られたヒートシール試験片を定速伸長型引張試験機にて、つかみ間隔20cm、引張速度10±1cm/minで引張試験を実施し、破断するまでの最大荷重時の強さ(N)を0.1Nの位まで求め、これをヒートシール引張強力(N/5cm)とする。また最大荷重時の伸び(cm)を0.1cmの位まで求め、これを試験長(20cm)で除し、小数点以下第二位を四捨五入して、ヒートシール伸度(%)を求める。得られた引張強力と伸度の10点の平均値を小数点以下第一位を四捨五入して求め、これを不織布のヒートシール引張強力、伸度とする。また目付は前述の方法で求めるものである。ここで目付当たりのヒートシール強伸度積とは、上記のヒートシール引張強力とヒートシール伸度の積を目付で除し、小数点以下第一位を四捨五入することで求めるものである。
【0048】
本発明において熱可塑性フィラメント不織布を構成する熱可塑性フィラメントは、脂肪族ビスアミドおよび/またはアルキル置換型の脂肪族モノアミドを0.1〜5.0wt%含有することが好ましい。脂肪族ビスアミドおよび/またはアルキル置換型の脂肪族モノアミドを0.1wt%以上含有することにより、フィラメント表面の摩擦抵抗が小さくなり好ましいものであり、含有量を5.0wt%以下とすることにより、紡糸性の悪化も発生しにくい傾向であり好ましい。より好ましい含有量の範囲は0.3〜4.0wt%、最も好ましい範囲は0.5〜2.0wt%である。なお、本発明においては、脂肪族ビスアミドまたはアルキル置換型の脂肪族モノアミドをそれぞれ単独で用いてもよいし、両者を併用して含有するものでもよい。
【0049】
本発明において用いられる脂肪族ビスアミドは特に制限されるものではないが、飽和脂肪酸ビスアミド、不飽和脂肪酸ビスアミド、および芳香族系脂肪酸ビスアミド等であり、例えばメチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスバルミチン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミド等が挙げられ、これらを複数種類混合して使用してもよい。
本発明において用いられるアルキル置換型の脂肪族モノアミドとしては、飽和脂肪酸モノアミドや不飽和脂肪酸モノアミド等のアミド水素をアルキル基で置換した構造の化合物を示し、N−ラウリルラウリル酸アミド、N−パルミチルパルミチン酸アミド、N−ステアリルステアリン酸アミド、N−ステアリルオレイン酸アミド等が挙げられ、これらを複数種類混合して使用してもよい。
【0050】
脂肪族ビスアミドおよび/またはアルキル置換型の脂肪族モノアミドを熱可塑性フィラメントに含有させるにあたっては、熱可塑性フィラメントの表面に付与する等の方法もあるが、原料となるブレンドポリマーに添加する方法が好ましい。脂肪族ビスアミドおよび/またはアルキル置換型の脂肪族モノアミドを、紡糸するための原料となるブレンドポリマーに添加する方法は何ら制限されるものではないが、予め原料樹脂と添加する物質を加熱溶融混合したマスターチップを作製し、これを紡糸の際に原料樹脂に必要量添加して、添加物質量を調整する方法が最も好ましい。
【0051】
本発明においてティーバッグ用不織布として用いられる熱可塑性フィラメント不織布は、連続したフィラメントからなる長繊維不織布であり、生産効率が高く、かつ機械的強度や寸法安定性に優れる点からスパンボンド法により得られる長繊維不織布が最も好ましい。本発明のスパンボンド法とは、溶融した原料ポリマーをノズルより押し出し、これを高速吸引ガスにより吸引延伸してフィラメントとし、これを帯電開繊し移動コンベア上に堆積捕集させて繊維ウェブとし、この繊維ウェブを熱接着より一体化したシートとする方法である。本発明においては原料ポリマーを溶融させる温度は、脂肪族ポリエステルの融点より30〜90℃高いことが好ましく、40〜80℃高いことがより好ましく、50〜70℃高いことが最も好ましい。溶融温度と脂肪族ポリエステルの融点の差が30℃未満の場合は、原料の溶融粘度が高くなり過ぎ、紡糸性が不安定となる傾向であり、好ましくない方向である。溶融温度と脂肪族ポリエステルの融点の差が90℃を超える場合は、特に脂肪族ポリエステルの熱分解が激しくなる傾向であり、好ましくない方向である。さらにフィラメントを吸引延伸する紡糸の速度は、1500〜6000m/minが好ましいものである。紡糸速度が1500m/minを下回る場合は、延伸不足によりフィラメントの強度が不十分となる場合があり好ましくない。紡糸速度が6000m/minを超える場合は、紡糸の安定性が悪くなる傾向であり、好ましくない。より好ましい紡糸速度の範囲は2000〜5000m/minである。
【0052】
また繊維ウエブを一体化する方法としては、熱接着が好ましいものであるが、本発明における熱接着による一体化は、繊維同士が接触点において互いに熱接着してなるもの、または熱接着が不織布の全面積に対して5〜50%の範囲で部分的になされているものが好ましい。繊維同士を接触点において互いに熱接着させる方法としては、一対のフラットロールによる熱処理や、熱風を吹き付ける処理(エアースルー接着処理)が好ましいものである。また部分的に熱接着させる方法としては、一対のエンボスロールによる熱エンボス処理、またはエンボスロールとフラットロールによる熱エンボス処理が好ましいものである。部分的な熱接着において、接着面積の割合が、不織布の全面積に対して5%未満である場合は、不織布の強度が不十分となる傾向であり、好ましくない。部分的熱接着の割合が、不織布の全面積に対して50%を超える場合は、不織布の風合いが硬くなり過ぎる傾向であり、さらにはティーバッグを温水に浸したとき、抽出速度が遅くなることにより抽出された茶類の味が薄くなり好ましくない。より好ましい部分的熱接着の割合は8〜30%である。さらにこれら熱接着の温度は、フィラメントを構成する脂肪族ポリエステルの融点より5〜70℃低いことが好ましく、10〜60℃低いことがより好ましい。熱接着の温度と、脂肪族ポリエステルの融点の温度差が5℃を下回る場合は、熱接着が強くなり過ぎる傾向であり好ましくない方向である。70℃を上回る場合は熱接着が不十分となる場合があり好ましくない方向である。
【0053】
本発明の不織布からなるティーバッグに充填される被抽出物は、例えば、お茶の葉としては、紅茶、緑茶または烏龍茶などが一般的であるが、これらに限られず、ほうじ茶、煎茶、麦茶、薬草などでも良い。
【0054】
本発明の不織布からなるティーバッグの形状は、平袋でもよいが、立体形状であると空間があり、ティーバッグをお湯の中に入れた時に、ティーバッグ内の容積が大きいことにより、お茶の葉の膨潤、拡がりなどが良好で、抽出が速やかに行なわれるので、好ましい。
立体形状としては、例えば、三角錐立体形状等の四面体形状、あるいはテトラパック形状が好ましい例として挙げられる。
【実施例】
【0055】

以下、実施例により、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。また、実施例で用いた評価法とその測定条件について以下に説明する。
【0056】
(1)ポリマーの溶融粘度(poise)
東洋精機製作所(株)製キャピラログラフ1Bにより、ポリマーの溶融粘度を測定した。なお、サンプル投入から測定開始までのポリマーの貯留時間は10分とした。
【0057】
(2)融点(℃)
Perkin Elmer DSC−7を用いて2nd runでポリマーの溶融を示すピークトップ温度をポリマーの融点とした。このときの昇温速度は20℃/分、サンプル量は10mgとした。
【0058】
(3)重量平均分子量
ポリ乳酸の重量平均分子量は以下の方法で求めた。試料のクロロホルム溶液にテトラヒドロフランを混合し測定溶液とし、これをWaters社製ゲルパーミテーションクロマトグラフ(GPC)Waters2690を用いて、25℃で測定し、ポリスチレン換算で重量平均分子量を求めた。各試料につき3回の測定を行い、平均値を算出し、千の位を四捨五入してそれぞれの重量平均分子量とした。
【0059】
(4)単繊維繊度(デシテックス):
不織布からランダムに小片サンプル10個を採取し、走査型電子顕微鏡等で500〜3000倍の写真を撮影し、各サンプルから10本ずつ、計100本の繊維の直径を測定し、それらの平均値の0.01μmの位を四捨五入して算出した繊維径を、ポリマーの密度で補正し、小数点第一位を四捨五入して求めた。
【0060】
(5)目付(g/m):
不織布から縦50cm×横50cmのサイズの試料を3個採取して各重量をそれぞれ測定し、得られた値の平均値を単位面積当たりに換算、小数点以下第一位を四捨五入して算出した。
【0061】
(6)ポリアミド成分の分散状態(平均単繊維繊度:デシテックス)
不織布からランダムに小片サンプルを10個採取し、エポキシ樹脂に包埋して断面方向に切削して超薄切片として切り出し、透過型電子顕微鏡(TEM:日立製H7100FA型)で、4万〜10万倍の倍率で写真を撮影した。各サンプルからポリアミド成分の断面積の大きさを20本ずつ、計200本測定してそれらの平均値を算出し、これを円形繊維の繊維径に換算し、ポリマーの密度で補正してポリアミド成分の単繊維繊度を求めた。なおTEM観察において、ポリアミドと脂肪族ポリエステルとが識別しにくい場合には、適宜試料を染色した。
【0062】
(7)熱収縮率(%)
JIS L1906(2000年版)の5.9.1および5.9.2を参考とし、不織布の任意の部分から縦25cm×横25cmのサンプルを10個採取し、縦、横それぞれ3カ所に20cmの長さを表す印を付け(0.01cmの単位まで測定)、適当な容器中で沸騰水中に5分間浸漬させる。試験片を取り出し、濾紙などで軽く水を切り、ねじったり伸ばしたりすることなく、不自然なしわを除いて、水平なスクリーンメッシュ又は類似の穴のあいた平らなものの上に載せて自然乾燥させる。10個のサンプルについて、印を付けた縦、横方向それぞれ3カ所の長さを0.01cm単位まで測定し、10個のサンプルの合計を次式に当てはめ、小数点以下第一位を四捨五入して熱収縮率を算出する。
【0063】
熱収縮率(%)=((L1−L2)/L1)×100
ここで、L1:加熱前の3線の長さの合計(サンプル10個の合計)(cm)
L2:加熱後の3線の長さの合計(サンプル10個の合計)(cm)。
【0064】
(8)目付当たりのヒートシール強伸度積
不織布の縦方向(長さ方向)について、幅5cm×長さ31cmの試験片を10点採取する。得られた試料の長さ方向の中間点である15.5cmで試料を切断し、分断した2枚の試料をのりしろ0.5cmにて重ね合わせ、ヒートシーラーによって、160℃、0.5cm幅、3秒間のヒートシール接着を行ない、幅5cm×長さ30cmのヒートシール試験片を得た。得られたヒートシール試験片を定速伸長型引張試験機にて、つかみ間隔20cm、引張速度10±1cm/minで引張試験を実施し、破断するまでの最大荷重時の強さ(N)を0.1Nの位まで求め、これをヒートシール引張強力(N/5cm)とする。また最大荷重時の伸び(cm)を0.1cmの位まで求め、これを試験長(20cm)で除し、小数点以下第二位を四捨五入して、ヒートシール伸度(%)を求める。得られた引張強力と伸度の10点の平均値を小数点以下第一位を四捨五入して求め、これを不織布のヒートシール引張強力、伸度とする。また目付は前述の方法で求めるものである。ここで目付当たりのヒートシール強伸度積とは、上記のヒートシール引張強力とヒートシール伸度の積を、前記(5)項の方法で求めた目付で除し、小数点以下第一位を四捨五入することで求めるものである。
【0065】
(実施例1)
溶融粘度570poise(240℃、剪断速度2432sec−1)、融点220℃のナイロン6(40重量%)、と重量平均分子量12万、溶融粘度300poise(240℃、剪断速度2432sec−1)、融点170℃のポリ(L−乳酸)(光学純度99.5%以上)(60重量%)を2軸押出混練機にて240℃で混練してブレンドポリマーチップを得た。
【0066】
このブレンドポリマーチップを原料とし、240℃で押出機にて原料を溶融し、紡糸温度240℃で丸形細孔より紡出した後、エジェクターにて紡糸速度4200m/minで紡糸し、公知の開繊装置により糸条を開繊して、移動コンベア上に捕集し得られたウェブを、圧着面積率が16%となるようなエンボスロールとフラットロールを用いて、ロール温度140℃、線圧50kg/cmの条件で熱接着し、単繊維繊度2デシテックス、目付150g/mの不織布を得た。
【0067】
(実施例2)
単繊維繊度1.8dtex、目付30g/mとなるように吐出量とネットコンベアーの移動速度を調整した以外は、実施例1と同様の条件で実施し、不織布を製造した。
【0068】
(実施例3)
実施例1で使用したブレンドポリマーチップに、エチレンビスステアリン酸アミドを0.5wt%添加し、240℃で押出機にて溶融し、紡糸温度240℃で丸形細孔より紡出した後、エジェクターにて紡糸速度4000m/minで紡糸し、公知の開繊装置により糸条を開繊して、移動コンベア上に捕集し得られたウェブを、圧着面積率が16%となるようなエンボスロールとフラットロールを用いて、ロール温度140℃、線圧50kg/cmの条件で熱接着し、単繊維繊度1.8デシテックス、目付50g/mの不織布を得た。
【0069】
(実施例4)
実施例1と同様の条件で、ナイロン6:ポリ(L−乳酸)の重量比率のみを20:80に変更して、ブレンドチップを得た。このブレンドポリマーチップに、エチレンビスステアリン酸アミドを0.5wt%添加し、240℃で押出機にて原料を溶融し、紡糸温度245℃で丸形細孔より紡出した後、エジェクターにて紡糸速度3900m/minで紡糸し、公知の開繊装置により糸条を開繊して、移動コンベア上に捕集し得られたウェブを、圧着面積率が13%となるようなエンボスロールとフラットロールを用いて、ロール温度140℃、線圧50kg/cmの条件で熱接着し、単繊維繊度2デシテックス、目付30g/mの不織布を得た。
【0070】
(実施例5)
実施例1で使用したブレンドポリマーチップに、エチレンビスステアリン酸アミドを0.5wt%添加、さらにTICをポリ(L−乳酸)の含有量に対して1wt%添加し、240℃で押出機にて溶融し、紡糸温度245℃で丸形細孔より紡出した後、エジェクターにて紡糸速度3500m/minで紡糸し、公知の開繊装置により糸条を開繊して、移動コンベア上に捕集し得られたウェブを、圧着面積率が16%となるようなエンボスロールとフラットロールを用いて、ロール温度135℃、線圧50kg/cmの条件で熱接着し、単繊維繊度2デシテックス、目付50g/mの不織布を得た。
【0071】
【表1】

【0072】
得られた不織布の特性は表1に示した通りであるが、実施例1〜5の不織布はいずれも脂肪族ポリエステルであるポリ(L−乳酸)樹脂を含んでいるにも関わらず、ヒートシール引張強力、伸度が高く、さらに実施例2〜5の不織布はいずれも目付当たりのヒートシール強伸度積がそれぞれ、85、98、93、109と優れた特性を有するものであった。
【0073】
(比較例1)
実施例1記載のポリ(L−乳酸)樹脂を原料とし、230℃で押出機にて原料を溶融し、紡糸温度235℃で丸形細孔より紡出した後、エジェクターにて紡糸速度4400m/minで紡糸し、公知の開繊装置により糸条を開繊して、移動コンベア上に捕集し得られたウェブを、圧着面積率が16%となるようなエンボスロールとフラットロールを用いて、ロール温度140℃、線圧50kg/cmの条件で熱接着し、単繊維繊度2デシテックス、目付50g/mの不織布を得た。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性フィラメント不織布からなるティーバッグ用不織布であって、該熱可塑性フィラメントが脂肪族ポリエステルとポリアミドとのブレンドポリマーからなることを特徴とするティーバッグ用不織布。
【請求項2】
前記熱可塑性フィラメント不織布の沸騰水中、5分間浸漬後の縦方向と横方向の熱収縮率がともに−5〜+10%であることを特徴とする請求項1に記載のティーバッグ用不織布。
【請求項3】
前記ブレンドポリマーからなる熱可塑性フィラメントの単繊維繊度が1〜15デシテックスであって、前記不織布の目付が10〜100g/m、かつ目付当たりのヒートシール強伸度積が80〜200であることを特徴とする請求項1または2に記載のティーバッグ用不織布。
【請求項4】
前記ブレンドポリマーからなる熱可塑性フィラメントが、脂肪族ビスアミドおよび/またはアルキル置換型の脂肪族モノアミドを0.1〜5.0wt%含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のティーバッグ用不織布。
【請求項5】
前記ブレンドポリマーの脂肪族ポリエステル:ポリアミドの重量比率が20:80〜95:5であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のティーバッグ用不織布。
【請求項6】
前記ブレンドポリマーからなる熱可塑性フィラメントの断面方向において、ポリアミド成分が平均単繊維繊度1×10−7〜1×10−3デシテックスで微分散していることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のティーバッグ用不織布。
【請求項7】
前記脂肪族ポリエステルがポリ乳酸であり、前記ポリアミドがナイロン6であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のティーバッグ用不織布。
【請求項8】
前記不織布を構成する繊維同士が、繊維同士が互いに熱接着してなることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のティーバッグ用不織布。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の不織布からなるティーバッグ。


【公開番号】特開2008−31611(P2008−31611A)
【公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−209482(P2006−209482)
【出願日】平成18年8月1日(2006.8.1)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】