説明

テキスタイル平面構造物の水密性を高めるための方法、そのように加工されたテキスタイル平面構造物並びにその使用

【課題】多孔質テキスタイル平面構造物を水密加工するより容易な方法を提供する。
【解決手段】テキスタイル平面構造物上に、0.02〜100μmの平均粒径を有する疎水性粒子か又は後続の処理工程において疎水化される非疎水性粒子を、溶剤中に粒子を有する懸濁液の施与及び引き続く溶剤の除去により施与し、テキスタイル平面構造物の繊維に固定し、かつそのようにして繊維の表面に凸部及び/又は凹部から成る構造を付与し、その際、凸部は20nm〜100μmの間隔及び20nm〜100μmの高さを有することを特徴とする、多孔質テキスタイル平面構造物の水密性を高めるための方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の対象は、材料の水密性を高めるための方法、該方法を用いて製造された材料並びにその使用である。
【背景技術】
【0002】
疎水性の物質透過性材料は久しく公知である。ここで特に、テフロン及び他の有機ポリマーから成る膜を挙げることができる。前記の膜は、液体としてではなくガス又は蒸気の形の多孔質材料のみによって物質透過が生じることが重要である多くの応用分野に適している。前記材料が例えばテフロンフィルムの延伸により製造される場合、極めて微小な亀裂が生じ、これによって蒸気ないしガスの透過が可能となる。疎水性材料により水滴が抑止され、それというのも、大きな表面張力及び疎水性材料の表面の湿潤性の欠如に基づき、水滴が細孔内に浸透することができないためである。
【0003】
そのような疎水性材料はガス及び蒸気の透過及び膜濾過に適している。更に、そのような疎水性材料は不活性フィルター材料として多くの分野で使用されている。前記材料の欠点は特に前記材料の比較的複雑な製造にあり、この製造は比較的高い価格を招き、それに伴って前記材料の一般的加工が妨げられる。
【0004】
比較的廉価な系は、基礎材料として織物又はフリースを有する。含浸のために、これらは通常フルオロ炭化水素、殊にテフロンで被覆される。この被覆は通常フルオロカーボン加工と呼称される(化学的清浄化からの概念)。フルオロカーボン加工により前記のテキスタイル平面構造物は疎水化される。疎水化により、高められた水密性を達成することができる。前記技術は最も容易にはゾル−ゲル−技術に分類されることができ、それというのも単分子被覆が製造されるためである。水蒸気透過性はこの場合フルオロカーボンにより影響を受けないか、又は少なくともほぼ影響を受けない。しかしながら織物又はフリースのフルオロカーボン加工は同様に費用がかかり、従って高価である。
【0005】
材料の水密性を高めるためのより廉価でかつより容易に実施可能な方法は、材料のポリウレタン被覆である。この種の被覆の場合には、織物又はフリース上にフィルム様の被覆が施与され、この被覆は確かに卓越した水密性を有するが、しかしながら同時に、織物又はフリースの細孔が失われてしまうためにほぼ無に等しい水蒸気透過性を示す。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って同様に、多孔質テキスタイル平面構造物、つまり特にフリース、織物、編物又はフエルトを水密加工するより容易な方法を提供するという課題が存在しており、その際、有利に繊維材料の水密性は出来る限り高く、かつ同時に有利に未処理の繊維材料と比較してほぼ不変の水蒸気透過性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
驚異的にも、例えばハス−効果の達成のためにすでに実現化されているように、テキスタイル平面構造物ないしテキスタイル平面構造物の繊維を疎水性粒子で被覆することにより、テキスタイル平面構造物の水密性を高めることができることが見い出された。
【0008】
従って本発明は、いわゆるハス−効果、つまり一般に公知である自浄性の原理に基づく。表面の良好な自浄性(高疎水性)を達成するために、表面は、極めて疎水性である表面の他にある程度の粗度をも有していなければならない。構造と疎水性との適切な組合せによって、移動する水がすでに少量で、表面上に付着している汚染粒子を連行し、かつ表面を清浄化することが可能となる(WO96/04123)。
【0009】
EP0933388によれば、このような自浄性の表面のために、1より大きいアスペクト比及び20mN/mよりも低い表面エネルギーが必要であることは従来技術である。この場合、アスペクト比は、構造の幅に対する高さの商として定義されている。前記の基準は、自然界では例えばハスの葉において実現されている。疎水性のロウ状の材料から形成されたこの植物の表面は、相互に数μm離れている凸部を有する。水滴は実質的にこの凸部の先端でのみ接触する。このような撥水性表面は文献に多数記載されている。
【0010】
EP0909747は自浄性の表面を製造する方法を教示している。該表面は高さ5〜200μmの疎水性の凸部を有する。このような表面は粉末粒子の分散液及びシロキサン溶液中の不活性材料を塗布し、かつ引き続き硬化させることにより製造される。従って構造を形成する粒子は補助媒体によって支持体上に固定される。
【0011】
WO00/58410は、物品の表面を人工的に自浄性にすることは技術的に可能であるという結論に到達している。このために必要とされる、凸部と凹部とからなる表面構造は、表面構造の凸部の間に0.1〜200μmの範囲の間隔を有し、かつ0.1〜100μmの範囲の凸部の高さを有する。このために使用される材料は疎水性ポリマー又は持続的に疎水化された材料からなっていなくてはならない。
【0012】
DE10118348には自浄性表面を有するポリマー繊維が記載されており、ここでは、自浄性表面は、構造を形成する粒子を有する溶剤の作用、溶剤によるポリマー繊維の表面の溶解、溶解表面への構造を形成する粒子の付着及び溶剤の除去によって得られる。この方法の欠点は、ポリマー繊維の加工(紡糸、編織等)の際に、自浄性表面を生じさせる構造を形成する粒子、ひいては構造が損傷され得るか又は場合によっては更には完全に失われることがあり、それによって自浄効果が同様に失われることにある。
【0013】
DE10118346には、少なくとも1種の合成及び/又は天然のテキスタイル基材Aと、接着剤、樹脂又は塗料なしに基材Aと堅固に結合している粒子から成る凸部及び凹部を有する人工的な少なくとも部分的に疎水性の表面とから構成された、自浄性及び撥水性の表面を有するテキスタイル平面構造物が記載されており、この平面構造物は、粒子を溶解せずに含有する少なくとも1種の溶剤で基材Aを処理し、溶剤を除去することにより得られ、その際、粒子の少なくとも一部分は、基材Aの表面と堅固に結合される。
【0014】
しかしながら、前記刊行物のいずれからも、疎水性粒子ないし施与後に疎水化される非疎水性粒子の施与により、高められた水密性を有するテキスタイル平面構造物を製造することができることを引用することはできなかった。
【0015】
従って本発明の対象は、テキスタイル平面構造物上に、0.02〜100μmの平均粒径を有する疎水性粒子か又は後続の処理工程において疎水化される非疎水性粒子を、溶剤中に粒子を有する懸濁液の施与及び、引き続く溶剤の除去により施与し、テキスタイル平面構造物の繊維に固定し、かつそのようにして繊維の表面に凸部及び/又は凹部から成る構造を付与し、その際、凸部は20nm〜100μmの間隔及び20nm〜100μmの高さを有することを特徴とする、多孔質テキスタイル平面構造物の水密性を高めるための方法である。
【0016】
本発明の対象は同様に、平面構造物が、50nm〜25μmの平均高さ及び50nm〜25μmの平均間隔を有する凸部から成る疎水性表面構造を有する繊維を有することを特徴とする、高められた水密性を有するテキスタイル平面構造物である。
【0017】
本発明による平面構造物は多方面において使用可能である。膜として、本発明による平面構造物は慣用の純粋な有機膜と比較して、自浄特性に基づき、自浄性表面を有しない膜よりも明らかに長い寿命を有するという利点を有する。疎水性粒子による膜の表面の疎水化により、細孔、殊に細孔の数並びにそのサイズは本質的に疎水化により影響を受けず、従って本発明による平面構造物は、(もちろん水に関する透過性を除いて)相応する未処理の平面構造物とほぼ同一の流動特性ないし抑止特性を有する。
【0018】
テキスタイル平面構造物のみならず膜もが、高い多孔性が顕著である。細孔又は穴は、幅が孔径により決定され、その長さが膜ないし平面構造物によるその経路により決定される導路であると見なすことができる。通常、前記の導路の長さはテキスタイルの厚さよりも長い。前記の導路により水は必然的に拡散する。
【0019】
工業用テキスタイルとしても、本発明による平面構造物は多大な利点を有する。液体の水に関する透過性は著しく低下されるにもかかわらず、水蒸気透過性は低下されない。前記の効果は蒸気透過の際にも利用されるため、本発明による平面構造物はそのような方法における膜として特に好適である。この平面構造物の製造法は、この平面構造物を極めて容易な方法で、例えば粒子懸濁液の噴霧により製造することができるという利点を有する。
【0020】
本発明による方法並びに前記の方法を用いて製造されたテキスタイル平面構造物を以下に記載するが、本発明は以下の実施態様に制限されるものではない。
【0021】
多孔質テキスタイル平面構造物の水密性を高めるための本発明による方法は、テキスタイル平面構造物上に、0.02〜100μmの平均粒径を有する粒子、殊に疎水性粒子か又は後続の処理工程において疎水化される非疎水性粒子を、溶剤中に粒子を溶解せずに有する懸濁液の施与及び、引き続く溶剤の除去により施与し、テキスタイル平面構造物の繊維ないし支持体に固定し、かつそのようにして繊維ないし支持体の表面に凸部及び/又は凹部から成る構造を付与し、その際、凸部は20nm〜100μmの間隔及び20nm〜100μmの高さを有することを特徴とする。
【0022】
テキスタイル平面構造物として、編物、織物、フリース又はフェルト又は膜を使用することができる。有利に、そのような平面構造物は0.5〜200μm、有利に0.5μm〜50μm、殊に有利に0.5μm〜10μmの平均編み目幅ないし平均孔径を有する。
【0023】
テキスタイル平面構造物の少なくとも1つの表面への懸濁液の施与は当業者に公知の種々の様式、例えば噴霧、ナイフ塗布、浸漬又はローラー塗布で行うことができる。有利に、粒子の施与は、懸濁液への平面構造物の浸漬により、又は平面構造物への懸濁液の噴霧により行われる。特に有利に、施与及び固定は、粒子がテキスタイル平面構造物の表面上にのみではなく、テキスタイル平面構造物の細孔又は編み目の中にも存在するように行われる。疎水性粒子又は疎水化された粒子が細孔又は編み目の中に存在することにより、特に良好な水密性が達成される。
【0024】
懸濁液の施与の後の粒子の固定は種々の様式で行うことができる。最も容易な方法は、テキスタイル平面構造物の繊維の表面を溶剤により溶解させずに、溶剤の除去後に粒子を繊維ないし支持体の表面に付着させることである。被覆すべき物品の表面を溶解させない適当な溶剤は、例えば、アルコール、グリコール、エーテル、グリコールエーテル、ケトン、エステル、アミド、ニトロ化合物、ハロゲン炭化水素、脂肪族及び芳香族炭化水素又はその混合物の群から選択された化合物である。各繊維材料ないし支持体材料のために、その都度、繊維材料を溶解させない適当な溶剤を選択しなければならない。
【0025】
本発明による方法の他の実施態様において、繊維の表面は溶剤により溶解される。溶剤の除去後、粒子は繊維の表面に固定されている。溶剤により溶解する表面は有利に、ポリカーボナート、ポリ(メタ)アクリラート、ポリアミド、PVC、ポリエチレン、ポリプロピレン、脂肪族直鎖アルケン又は脂肪族分枝鎖アルケン、環式アルケン、ポリスチレン、ポリエステル、ポリエーテルスルホン、ポリアクリロニトリル又はポリアルキレンテレフタラート並びにそれらの混合物をベースとするポリマー又はコポリマーを有する。
【0026】
溶剤として、有利に、相応する表面のための溶剤として適当な、アルコール、グリコール、エーテル、グリコールエーテル、ケトン、エステル、アミド、ニトロ化合物、ハロゲン炭化水素、脂肪族及び芳香族炭化水素又はその混合物の群からの少なくとも1種の化合物が使用される。特に有利に、溶剤として、相応する表面のための溶剤として適当な、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、オクタノール、シクロヘキサノール、フェノール、クレゾール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、アニソール、ジオキサン、ジオキソラン、テトラヒドロフラン、モノエチレングリコールエーテル、ジエチレングリコールエーテル、トリエチレングリコールエーテル、ポリエチレングリコールエーテル、アセトン、ブタノン、シクロヘキサノン、エチルアセタート、ブチルアセタート、イソアミルアセタート、エチルヘキシルアセタート、グリコールエステル、ジメチルホルムアミド、ピリジン、N−メチルピロリドン、N−メチルカプロラクトン、アセトニトリル、二硫化炭素、ジメチルスルホキシド、スルホラン、ニトロベンゼン、ジクロロメタン、クロロホルム、テトラクロロメタン、トリクロロエテン、テトラクロロエテン、1,2−ジクロロエタン、クロロフェノール、クロロフルオロ炭化水素、ベンジン、石油エーテル、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、デカリン、テトラリン、テルペン、ベンゼン、トルエン又はキシレン又はその混合物から選択された少なくとも1種の化合物が使用される。
【0027】
本発明による方法の前記の実施態様の場合、粒子を有する分散液ないし溶剤が表面への施与の前に−30℃〜300℃、有利に25〜100℃の温度を有する場合に有利であることが判明した。
【0028】
使用される粒子は、有利に、珪酸塩、鉱物、金属酸化物、金属粉末、シリカ、顔料又はポリマーから選択され、極めて殊に有利に、熱分解法シリカ、沈降シリカ、酸化アルミニウム、混合酸化物、ドープされた珪酸塩、二酸化チタン又は粉末状ポリマーから選択される。
【0029】
使用される粒子は、有利に、0.05〜30μm、有利に0.1〜10μmの平均粒径を有する。しかしながら、適当な粒子は500nm未満の直径を有するか、又は一次粒子から0.2〜100μmのサイズを有する凝結体又は凝集体へと集まってよい。
【0030】
凸部を形成する殊に有利な粒子は、ナノメートル範囲の不規則な微細構造を表面上に有する粒子である。この場合、不規則な微細構造を有する粒子は、有利に、1を上回る、特に有利に1.5を上回るアスペクト比を有する凸部ないし微細構造を有する。アスペクト比は再度凸部の最大幅に対する最大高さからの商として定義されている。図1において、粒子により形成される凸部と、微細構造により形成される凸部との差異が略示的に説明される。図1は、粒子Pを有する平面構造物の表面Xを示す(図の簡略化のために1つの粒子のみが示されている)。粒子自体により形成される凸部は、5である粒子の最大高さmHと(それというのも、平面構造物の表面Xから突出する粒子の一部のみが凸部に寄与するためである)、それに比較して7である最大幅mBとからの商として算出された約0.71のアスペクト比を有する。粒子の微細構造により粒子上に存在している凸部の選択された1つの凸部Eは、2.5である凸部の最大高さmH’とそれに比較して1である最大幅mB’とからの商として算出された2.5のアスペクト比を有する。
【0031】
ナノメートル範囲の不規則な微細構造を表面上に有する有利な粒子は、熱分解法シリカ、沈降シリカ、酸化アルミニウム、混合酸化物、ドープされた珪酸塩、二酸化チタン又は粉末状ポリマーから選択された少なくとも1種の化合物を有する粒子である。
【0032】
粒子が疎水特性を有する場合に有利であることがあり、その際、疎水特性は粒子の表面上に存在する材料自体の材料特性に由来し得るか、又は粒子を適当な化合物で処理することにより得ることができる。粒子には、平面構造物の表面への施与の前又は後に疎水特性が付与されていてよい。
【0033】
平面構造物への施与の前又は後に粒子を疎水化するために、粒子を、例えばアルキルシラン、フルオロアルキルシラン又はジシラザンの群からの、疎水化に適した化合物で処理することができる。
【0034】
以下で、極めて有利な粒子を詳説する。粒子は種々の範囲からものであってよい。例えば、粒子は珪酸塩、ドープされた珪酸塩、鉱物、金属酸化物、酸化アルミニウム、シリカ又は二酸化チタン、エアロシル(Aerosile)又は粉末状ポリマー、例えば噴霧乾燥及びアグロメレートしたエマルション又は低温粉砕したPTFEであってよい。粒子系として、特に疎水化された熱分解法シリカ、いわゆるアエロシル(登録商標)が適している。自浄性表面を生じさせるためには、構造に加えて疎水性も必要である。使用される粒子はそれ自体が疎水性であってよく、例えば粉末状のポリテトラフルオロエチレン(PTFE)であってよい。粒子は疎水性に仕上げられていてよく、例えばエアロシルVPR411(登録商標)又はエアロシルR8200(登録商標)であってよい。しかしながら粒子は後になって疎水化されてもよい。この場合、粒子が施与前に疎水化されるか施与後に疎水化されるかは本質的なことではない。そのような疎水化すべき粒子は、例えばエアロパール(Aeroperl)90/30(登録商標)、シパーネート(Sipernat)シリカ350(登録商標)、酸化アルミニウムC(登録商標)、バナジウムドープされたケイ酸ジルコン又はエアロパールP25/20(登録商標)である。後者の場合、疎水化は有利にペルフルオロアルキルシラン化合物を用いた処理及び引き続く熱処理により行われる。特に有利な粒子は、Degussa AG社のエアロシル(登録商標)VPLE 8241、VPR411及びR202である。
【0035】
本発明による方法を用いて、平面構造物が、50nm〜25μmの平均高さ及び50nm〜25μmの平均間隔を有する凸部から成る疎水性表面構造を有する繊維を有することを特徴とする、高められた水密性を有する本発明によるテキスタイル平面構造物を製造することができる。
【0036】
自浄特性を有することができる、粒子により形成された表面構造は、有利に20nm〜25μmの平均高さ及び20nm〜25μmの平均間隔、有利に50nm〜10μmの平均高さ及び/又は50nm〜10μmの平均間隔及び極めて特に有利に50nm〜4μmの平均高さ及び/又は50nm〜4μmの平均間隔を有する凸部を有する。極めて特に有利に、本発明による平面構造物は、0.25〜1μmの平均高さ及び0.25〜1μmの平均間隔を有する凸部を有する表面を有する繊維を有する。凸部の平均間隔とは本発明の意味では、凸部の最も高い突出部から最も近く最も高い突出部までの間隔であると理解される。凸部が円錐の形を有している場合、該円錐の先端が該凸部の最も高い突出部である。凸部が平行六面体である場合、該平行六面体の最上部の面が該凸部の最も高い突出部である。粒子は、有利に相互に0〜10粒径、有利に相互に3〜5粒径の平均間隔で存在する。
【0037】
粒子として、上記の粒子が存在していてよい。粒子はテキスタイル平面構造物の繊維の表面上に、直接物理的応力によって固定されていてよいか、又は繊維自体の表面上か又はバインダー系を用いて固定されてよい。テキスタイル平面構造物は例えば繊維を有する編物、フリース、織物又はフェルト又は膜であってよい。本発明の範囲内で、フリース、織物、編物又はフェルトに加工することができるフィラメント、糸又は類似の物品も繊維であると解釈される。
【0038】
極めて殊に有利なテキスタイル平面構造物はポリマーフリースを有する。この場合ポリマー繊維は、有利に、ポリアクリロニトリル、ポリアミド、ポリイミド、ポリアクリラート、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエステル、例えばポリエチレンテレフタラート及び/又はポリオレフィン、例えばポリプロピレン、ポリエチレン又は前記ポリマーの混合物から選択されている。テキスタイル平面構造物のポリマー繊維が、1〜25μm、有利に2〜15μmの直径を有する場合、有利であり得る。ポリマー繊維が上記の範囲よりも明らかに厚い場合、平面構造物の柔軟性は損なわれる。ポリマー繊維が明らかにより薄い場合、テキスタイル平面構造物の引裂強さは強度に低下するため、商工業的利用及び後加工は困難を伴ってのみ可能であるに過ぎない。
【0039】
本発明による平面構造物が自浄特性を有する場合、これは湿潤特性に起因するものと見なすことができ、これは水滴と表面とが形成する接触角により形成される。ここで、接触角0度は表面の完全な湿潤を意味する。静的接触角の測定は、通常、接触角が光学的に決定される装置を用いて行われる。滑らかな疎水性表面上では、通常125゜未満の静的接触角が測定される。自浄特性を有する本発明の平面構造物は、有利に130゜を上回る、有利に140゜を上回る、及び極めて特に有利に145゜を上回る静的接触角を有する。その上、表面が最大10゜の前進角と後退角との差を有する場合にのみ表面は良好な自浄特性を有することが見出されたため、自浄特性を有する本発明による平面構造物は有利に、10゜未満、有利に5゜未満及び極めて特に有利に4゜未満の前進角と後退角との差を有する。前進角の決定のために、水滴は、細管を用いて表面上へ置かれ、かつ細管を経て水を添加することにより液滴は表面上で拡大される。拡大の間に、液滴の縁部は表面上を滑り、かつ接触角は前進角として決定される。後退角は同じ液滴で測定されるが、但し、細管により液滴から水が取り出され、液滴の縮小の間に接触角が測定される。双方の角度の間の差異はヒステリシスと呼称される。差異が小さくなればなるほど、水滴と基体の表面との相互作用がより僅かになり、かつハス効果(自浄特性)がより良好になる。
【0040】
本発明による平面構造物の製造法に応じて、繊維上に、粒子により形成される種々のアスペクト比を有する表面構造が得られる。粒子が繊維の表面に固定されるか又は粒子がバインダー系を用いて固定される場合、表面構造は有利に0.15を上回る凸部のアスペクト比を有する。有利に、粒子自体により形成される凸部は、0.3〜0.9、特に有利に0.5〜0.8のアスペクト比を有する。この場合、アスペクト比は、凸部の構造の最大幅に対する最大高さの商として定義されている。
【0041】
上記のアスペクト比を達成するために、粒子の少なくとも一部、有利に50%を上回る粒子が、該粒子の直径の90%までだけ、繊維の表面ないしバインダー系の中へ埋め込まれている場合に有利である。従って、表面は、平均粒径の10〜90%、有利に20〜50%及び極めて特に有利に30〜40%が表面ないしバインダー系の中で固定されており、ひいてはその固有の亀裂のある表面の一部が更に表面から突出している粒子を有利に有する。このようにして、粒子自体により形成される凸部が有利に少なくとも0.15の十分に大きなアスペクト比を有することが保証されている。更にこのようにして、堅固に結合された粒子が極めて丈夫にシートの表面と結合されていることが達成される。ここで、アスペクト比は凸部の最大幅に対する最大高さの比として定義されている。平面構造物の繊維の表面から70%突出する理想的には球状であると仮定される粒子は、この定義によれば0.7のアスペクト比を有する。
【0042】
本発明によるテキスタイル平面構造物が第二又はそれ以上の処理されたか又は未処理の平面構造物を有し、この平面構造物が粒子を付与された平面構造物の片面又は両面に存在する場合、有利であり得る。付加的に存在する平面構造物は、第一の平面構造物と結合していてよい。これは例えば特に辺縁での接着により行うことができる。しかしながら平面構造物は、テキスタイル平面構造物よりも堅固な複合体が存在するように、第一の平面構造物と重ねて縫い合わせてあるか、又はキルティングされていてよい。粒子が付与されていないか又は付与された平面構造物を、粒子が施与された平面構造物の一面又は二面に施与することにより、特に繊維の表面に堅固に固定されていない粒子の場合、この粒子がテキスタイル平面構造物から取り去られるのではなく、表面に堅固に固定されて残留することを達成することができる。片面又は両面に種々の平面構造物を使用することにより、一つの面が特に高い水密性を有するのに対して、他方の面が幾分か親水性である表面を有する平面構造物を製造することができる。このようにして、特にスポーツ分野で大変好適であり、汗の形の湿分を平面構造物を通じて外部へ導き、かつ同時に雨水の浸入を妨げるテキスタイル平面構造物を得ることができる。
【0043】
本発明によるテキスタイル平面構造物は、粒子を有しないテキスタイル平面構造物の水密性よりも明らかに良好な水密性を有する。処理すべき平面構造物の最大の編み目幅ないし孔径は平面構造物の厚さが増加すると共に増加し、それというのも、導路は増加する厚さに基づきより長くなるためである。有利に、本発明による平面構造物は、DIN EN13562により測定した20cmを上回る、有利に25cmを上回る水柱の水密性を有する。
【0044】
本発明によるテキスタイル平面構造物は、傘、オーニング、テント、テキスタイル構造材料等の製造のために使用することができる。方法は、傘、テント、オーニング、テキスタイル構造材料等に本発明によるテキスタイル平面構造物を付与するために用いることができる。本発明により仕上げられた製品は特に良好な水密性を示す。
【0045】
図1をもとに、本発明による方法及び本発明によるテキスタイル平面構造物を詳説するが、これに限定されない。
【0046】
図1において、粒子により形成される凸部と、微細構造により形成される凸部との差異が略示的に説明される。該図は、粒子Pを有する平面構造物の表面Xを簡略的に示す(図の簡略化のために1つの粒子のみが示されている)。粒子自体により形成される凸部は、5である粒子の最大高さmHと(それというのも、平面構造物の表面ないし平面構造物の繊維の表面Xから突出する粒子の一部のみが凸部に寄与するためである)、それに比較して7である最大幅mBとからの商として算出された約0.71のアスペクト比を有する。粒子の微細構造により粒子上に存在している凸部の選択された1つの凸部Eは、2.5である凸部の最大高さmH’とそれに比較して1である最大幅mB’とからの商として算出された2.5のアスペクト比を有する。
【0047】
本発明による方法を以下の実施例をもとに例示的に記載するが、但し本発明はこれに制限されるべきではない。
【実施例】
【0048】
実施例1:
繊維直径20μmのポリエステル織物を、50℃に加熱した、デカリン中のエアロシルVPLE 82411質量%の懸濁液中に10秒間浸漬する。引き続き、織物を乾燥させて溶剤がもはや表面上に残存しないようにする。
【0049】
水密性を試験するために、織物を直径2.5cmのガラスカラムの下方に張る。ガラスカラムにゆっくりと上方から水を充填する。第二の水滴が本発明により処理された織物を押圧して通過した時に充填を停止した。この時点までにガラスカラム中に形成された水柱を測定した。同様に、未処理の織物を試験した。第二の水滴が織物を押圧して通過する前に、本発明により処理された織物の上に高さ25cmの水柱が形成することができたことを確認した。比較の目的で試験された未処理の織物の上には、第二の水滴が織物を押圧して通過する前に、高さ4cmの水柱しか形成することができなかった。本発明による処理により、ポリエステル織物の水密性を600%を超えて高めることができた。
【0050】
実施例2:
繊維直径15μmのポリエステル織物を、50℃に加熱した、トルエン中のエアロシルVPLE 82411質量%の懸濁液中に10秒間浸漬する。引き続き、織物を乾燥させて溶剤がもはや表面上に残存しないようにする。
【0051】
水密性を試験するために、織物を実施例1のように試験する。第二の水滴が織物を押圧して通過する前に、本発明により処理された織物の上に高さ110cmの水柱が形成することができたことを確認した。比較の目的で試験された未処理の織物の上には、第二の水滴が織物を押圧して通過する前に、高さ40cmの水柱しか形成することができなかった。本発明による処理により、ポリエステル織物の水密性を100%を超えて高めることができた。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】粒子により形成される凸部と、微細構造により形成される凸部との差異を略示的に示す図。
【符号の説明】
【0053】
P 粒子、 X 平面構造物の表面、 E 凸部、 mH 粒子の最大高さ、 mB 粒子の最大幅、 mH’ 凸部の最大高さ、 mB’ 凸部の最大幅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質テキスタイル平面構造物の水密性を高めるための方法において、テキスタイル平面構造物上に、0.02〜100μmの平均粒径を有する疎水性粒子か又は後続の処理工程において疎水化される非疎水性粒子を、溶剤中に粒子を有する懸濁液の施与及び引き続く溶剤の除去により施与し、テキスタイル平面構造物の繊維に固定し、かつそのようにして繊維の表面に凸部及び/又は凹部から成る構造を付与し、その際、凸部は20nm〜100μmの間隔及び20nm〜100μmの高さを有することを特徴とする、多孔質テキスタイル平面構造物の水密性を高めるための方法。
【請求項2】
テキスタイル平面構造物として、編物、織物、フリース又はフェルト又は膜を使用する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
テキスタイル平面構造物の少なくとも1つの表面への懸濁液の施与を、懸濁液中への平面構造物の浸漬により行う、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
物品の少なくとも1つの表面への懸濁液の施与を、平面構造物への懸濁液の噴霧により行う、請求項1又は2記載の方法。
【請求項5】
テキスタイル平面構造物の繊維の表面を溶剤により溶解させず、溶剤の除去後に粒子がテキスタイル平面構造物の繊維の表面に付着する、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
溶剤として、被覆すべき物品の表面を溶解させない、アルコール、グリコール、エーテル、グリコールエーテル、ケトン、エステル、アミド、ニトロ化合物、ハロゲン炭化水素、脂肪族及び芳香族炭化水素又はその混合物の群からの少なくとも1種の適当な化合物を使用する、請求項5記載の方法。
【請求項7】
繊維の表面を溶剤により溶解させ、溶剤の除去後に粒子が繊維の表面に固定されている、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
溶剤により溶解する表面が、ポリカーボナート、ポリ(メタ)アクリラート、ポリアミド、PVC、ポリエチレン、ポリプロピレン、脂肪族直鎖アルケン又は脂肪族分枝鎖アルケン、環式アルケン、ポリスチレン、ポリエステル、ポリエーテルスルホン、ポリアクリロニトリル又はポリアルキレンテレフタラート並びにそれらの混合物をベースとするポリマー又はコポリマーを有する、請求項7記載の方法。
【請求項9】
溶剤として、相応する表面のための溶剤として適当な、アルコール、グリコール、エーテル、グリコールエーテル、ケトン、エステル、アミド、ニトロ化合物、ハロゲン炭化水素、脂肪族及び芳香族炭化水素又はその混合物の群からの少なくとも1種の化合物を使用する、請求項7又は8記載の方法。
【請求項10】
溶剤として、相応する表面のための溶剤として適当な、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、オクタノール、シクロヘキサノール、フェノール、クレゾール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、アニソール、ジオキサン、ジオキソラン、テトラヒドロフラン、モノエチレングリコールエーテル、ジエチレングリコールエーテル、トリエチレングリコールエーテル、ポリエチレングリコールエーテル、アセトン、ブタノン、シクロヘキサノン、エチルアセタート、ブチルアセタート、イソ−アミルアセタート、エチルヘキシルアセタート、グリコールエステル、ジメチルホルムアミド、ピリジン、N−メチルピロリドン、N−メチルカプロラクトン、アセトニトリル、二硫化炭素、ジメチルスルホキシド、スルホラン、ニトロベンゼン、ジクロロメタン、クロロホルム、テトラクロロメタン、トリクロロエテン、テトラクロロエテン、1,2−ジクロロエタン、クロロフェノール、クロロフルオロ炭化水素、ベンジン、石油エーテル、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、デカリン、テトラリン、テルペン、ベンゼン、トルエン又はキシレン又はその混合物から選択された少なくとも1種の化合物を使用する、請求項9記載の方法。
【請求項11】
粒子を有する溶剤が表面への施与の前に−30℃〜300℃の温度を有する、請求項1から10までのいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
粒子が0.05〜30μmの平均粒径を有する、請求項1から11までのいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
非疎水性粒子に、アルキルシラン、フルオロアルキルシラン及び/又はジシラザンの群からの少なくとも1種の化合物を用いた処理によって疎水特性を付与する、請求項1から12までのいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
高められた水密性を有するテキスタイル平面構造物において、平面構造物が、50nm〜25μmの平均高さ及び50nm〜25μmの平均間隔を有する凸部から成る疎水性表面構造を有する繊維を有することを特徴とする、高められた水密性を有するテキスタイル平面構造物。
【請求項15】
請求項1から13までのいずれか1項記載の方法により製造された、請求項14記載の平面構造物。
【請求項16】
DIN EN 13562により測定された20cmを上回る水柱の水密性を有する、請求項14又は15記載の平面構造物。
【請求項17】
25cmを上回る水柱の水密性を有する、請求項16記載の平面構造物。
【請求項18】
傘、テント、オーニング又はテキスタイル構造材料の製造のために使用される、請求項14から17までのいずれか1項記載の平面構造物。

【図1】
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【公開番号】特開2006−214076(P2006−214076A)
【公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−372862(P2005−372862)
【出願日】平成17年12月26日(2005.12.26)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(501073862)デグサ アクチエンゲゼルシャフト (837)
【氏名又は名称原語表記】Degussa AG
【住所又は居所原語表記】Bennigsenplatz 1, D−40474 Duesseldorf, Germany
【Fターム(参考)】