説明

テキスタイル構造体

透水性テキスタイル構造体(10)が開示される。この構造体(10)はテキスタイル基体(14)を含み;構造体(10)の前面側は低エネルギー表面(12)を含み;構造体の背面側は下塗り(16)および接着剤(18)を坦持することができ、この接着剤は、構造体を支持体表面にしっかりと取り付けることを可能にするが、残留物もしくは支持体表面に対する損傷なしに容易に取り外すことができる。低エネルギー表面(12)は、印刷、パターン形成、もしくは他の方法で処理し、所望であれば、構造体の意図する用途に依存して、装飾性および/または機能性を供することができる。様々な化学添加物、例えば、染み除去剤、殺生物剤などをこの構造体に組み込むことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、様々な表面の被覆に有用な一連のテキスタイル構造体に関する。この構造体はテキスタイル基体を含み、この基体は低エネルギー表面を有し、かつ該基体による水分の移動を与える。1つの実施形態においては、テキスタイル基体の前面に低エネルギー表面処理が供され、テキスタイル基体の背面に接着剤が供される。得られるテキスタイル基体/接着剤複合体は、清浄平滑表面に堅固に、しかし剥離可能に貼付することができる。
【0002】
このテキスタイル基体/接着剤複合体は、内装用の壁もしくは天井被覆としての使用に特によく適することがわかった。数年にわたって支持体表面に堅固に付着したままとなるその能力にかかわらず、この複合体の実施形態は設置過程で容易に取り外しおよび位置替えをすることができ、かつ、所望であれば、あらゆる通常の下層をなす支持体表面に損傷を与えることなく容易に取り外すことができる。加えて、この複合体は実質的に前面−背面が非自己粘着性であり(これは、剥離紙等なしに巻き上げることを可能にする)、取り外したときに実質的に残留物がなく(これは、その複合体の再貼付を可能にする)、汚れおよび染みに耐性であり(その低エネルギー表面のため)、および、所望であれば、その複合体を含む様々な層に関連する化学に依存して、容易に洗浄することができ、耐カビ性であり、または他の特性を有するように製造することができる。
【0003】
この複合体のテキスタイル基体部分は、設置時に望ましい接着剤を別に塗布しようとする場合(テキスタイル、支持体表面、もしくはその両者に)、一体化接着剤層なしに製造することができる。しかし、他に指定されない限り、ここで論じられるテキスタイル構造体の様々な実施形態は、本明細書に開示するテキスタイル基体および接着剤を用いて設置時にその場で創出されるものではなく、複合体として製造されるテキスタイル基体/接着剤複合体に関する。
【背景技術】
【0004】
通常の壁被覆材の代わりに用いるとき、本明細書に記載した基体/接着剤複合体は、通常の壁紙を設置、使用、および除去する者が直面する多くの問題を克服することにより、壁紙および壁紙境界の魅力的な代替物を提供する。通常、紙もしくはビニールのシートを含む従来の壁紙は、壁紙を湿らせることによって活性化される接着性裏層(予め糊処理された壁紙の場合)または壁紙の背面もしくは壁それ自体に薄塗りされる壁紙糊(糊処理されていない壁紙の場合)のいずれかを用いて壁に取り付けられる。接着剤を湿潤もしくは塗布した後、壁紙を特殊な方法で「綴じ込み(booked)」、または折り畳み、接着剤が壁紙の前面と接触する程度を最小化する。これらの設置方法は最も洗練された設置者を除く全ての者には退屈なものであり、典型的には、多くの厄介で時間を浪費する工程を必要とし、かつ水盤、ブラシ、スムージングローラー、たれ除け布、カミソリの刃の使用、および他の用具の受け入れを指示し、それらの購入は設置者にさらなる出費を課す。
【0005】
多くの壁紙張りの失敗は張る前の不十分な表面の準備によって生じる。表面の準備には、最小限、時間の経過と共に堆積し得るあらゆるダスト、グリース、もしくは汚れを除去する壁の洗浄が含まれる。しかし、新しい建築物の事例のように、壁が未仕上げである場合、壁の仕上げはスパックル処理、サンド処理、および、おそらくは、塗料もしくはプライマーの基礎コートで壁の下塗りを必要とする。
【0006】
表面の準備の観点から、壁が既に壁紙処理されている場合、おそらくはさらに悪い状況が存在する。ひとたび設置されると、多くの通常の壁被覆材の耐久性はそれらの有用な寿命を超える傾向にある。多くの場合、通常の壁被覆材を除去するプロセスは、時間を浪費するものであり、困難であり、かつ厄介であるため、設置プロセスに匹敵し、ほぼ間違いなくそれを凌ぐ。しばしば、通常の壁紙は多層構造で除去プロセス中に分離する傾向にあり、壁紙を層ごとに除去することが必要となる。壁紙それ自体が均一なシート全体として壁から離れず、むしろちぎれた断片として、時折(および望ましからざることに)、下層の壁仕上げの一部を伴って離れ、その状況が表面準備活動のリストに壁表面修復を加えることも一般的である。設置と同様に、除去にはそれ自体の一組の専門用具:化学スプレーもしくはゲル、ペーパースコアリング用具、スチーマー、スクレイパー等がある。
【0007】
通常の壁被覆材で時折遭遇するが潜在的にはより解決の難しい問題は、壁を通しての水分の移動によって生じるような、壁と壁被覆材との界面での水分の存在である。しばしばかなりの損傷が生じるまで検出不可能であるこの状態は、水分が壁被覆材から下層をなす支持体表面上でのその掴む力を失わせるために垂れ下がりもしくは隆起の形態で性能の低下を生じることがあるが、カビの成長、壁表面の崩壊、および他の非常に深刻な問題の主要な寄与要素でもあり得る。
【0008】
限られた成功ではあるが通常の壁紙が取り組む他の課題には、清浄で新品に見える外見を維持する能力(特には、エンボス加工によって創出されうるようなテクスチャード加工壁紙を含む場合)および家具もしくは他の物体によって偶発的に傷を付けられることによる損傷に対抗する能力が含まれる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本明細書に記載したテキスタイル構造体は、その様々な実施形態において、上記の問題に上手く対処する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
このテキスタイル構造体の使用は、テキスタイル基体が、適切な接着剤と共に用いられるとき、比較的滑らかであるあらゆる乾燥したダストのない固体表面に接着させることができるため、一般には、壁の準備に要する時間を最小化する。この構造体の驚くべき利点は、ネジおよびクギ穴から未仕上げの乾式壁の継ぎ目、壁張り用材における小規模の凹みもしくは打ち傷に至る範囲の、小さな壁の欠点および不完全さを覆い隠すその能力である。この欠点を覆い隠す能力は設置者の時間の節約に形を変え、その時間は別の方法で壁面の準備に費やされる。
【0011】
一体化接着剤層がテキスタイル基体/接着剤複合体の形成に用いられるとき、厄介な、もしくは湿った接着剤の必要性は除かれる。しかし、接着剤を慎重に選択することで、本明細書に記載した種類のテキスタイル基体/接着剤複合体は、壁被覆用途において用いられるとき、幾つかのさらなる利点を提供することができる。例えば、それ自体の上に巻き上げることができ、「綴じ込み」もしくは他の特殊な取り扱いの必要性が除かれる。この複合体の張り付けはローラー(もしくは均一な力を加える幾つかの他の手段)および(天井および/または床で切断するための)カミソリ刃型のカッターのみを必要とする。この複合体は、隣接する複合体パネルのパターンを整列するときに望ましいものであり得るように、必要であれば、壁上で一時的に取り外して複数回位置替えすることができる。さらに、この複合体は水分を壁面から遠ざけて輸送するように構築され、これは掴む力の欠如、カビの成長、壁崩壊の問題、および壁被覆材の下に捕捉される水分に関係する他の問題に有効に対処することができる。
【0012】
一般には、感圧性(すなわち、乾燥したとき永続的に粘着性のままである接触接着剤)もしくは剥離可能(すなわち、支持体表面上に残留物を残すことなしに、もしくはそれに損傷を与えることなしに取り外すことを容易に可能にする接着剤)である接着剤、特には後者が、本明細書に開示するテキスタイル構造体に関連する使用により適する。多くの実施形態において、感圧性および剥離可能の両者である接着剤が特に有利である。
【0013】
本明細書に記載したテキスタイル構造体の実施形態は染み耐性低表面エネルギー処理を含むが、染み脱離処理をさらに含むことができる。そのような処理は複合体がほとんどの類の染みに対抗することを可能にし、多くの場合において、使用者が複合体に吸収されるようになる染みを除去し、それにより、多くの通常の壁被覆材に関連するさらに別の問題に対処することを可能にする。
【0014】
基体は適切な感圧性接着剤で壁に固定することができるため(例えば、テキスタイル基体/接着剤複合体の一部として)、事実上用具なしで、実質的な接着剤残留物を壁に残すことなく、かつ実質的に壁に損傷を与えることなしに、壁から容易に取り外すことができる。比較的高い引裂き強さ(例えば、ASTM Test Method D-5733-99を用いて測定されるような、(本明細書で定義する)「縦(machine)」および「横(cross-machine)方向」の両者に少なくとも約5ポンド以上、好ましくは約10ポンド以上(より大きい値が好ましい)の推奨最小トラップ引裂き強さであり、この最小値は実質的に等方性である)のため、テキスタイル基体(もしくは基体/接着剤複合体)はそれが張り付けられた一体式の形態で取り外し可能である。この特徴は基体の引裂き強さと(より小さい)接着剤の剥離強度との加工された関係の結果である。これらの用途に推奨される感圧性接着剤は使用中に長期間の安定性を示す傾向にあり、これは接着剤および壁の間の結合力が時間の経過で大きく弱まることも強まることもないことを意味する。剥離不可能な接着剤をテキスタイル構造物の設置および本明細書に記載したテキスタイル基体/接着剤複合体の形成において用いることもできるが、剥離可能な感圧性接着剤の使用が、テキスタイル基体を最初の設置後のあらゆる時期(数年でさえ)に最小の労力で取り外せることを最も確実にするものであることを理解するべきである。幾つかの状況においてきれいに取り外すことを保証するため、用いられる接着剤、下層をなす支持体表面の性質、および他の要素に依存して、基体/接着剤複合体の張り付けに先立つ支持体表面への適切な下塗り塗料の1つ以上の(乾燥)コートの塗布を助言できることに注意しなければならない。
【0015】
この比較的容易な除去可能性は、他の方法では壁紙を貼ることができないか、もしくは通常の壁紙の設置に関連する多くの工程を踏む意志のない者に飾り付けの機会をもたらす。例えば、このテキスタイル基体/接着剤複合体は、居住者が壁を永続的に変えないように指示されているアパートおよび寮の部屋において、または部屋の装飾が子供の変化する嗜好に適合するように改変可能であるという必要条件を満足するように子供部屋を飾り付ける上で容易に用いることができる。ホテル、オフィス、および他の商用環境において、開示のように構築された基体/接着剤複合体の容易な除去可能性は、損傷領域の容易な取り替えを可能にする。さらに、この複合体は、様々な添加物、例えば、難燃剤、カビ阻害剤等を含むように構築し、その特定の目的環境に対する複合体の性能を強化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
様々な実施形態の詳細およびそれらの利点を、以下の図を参照して論じる。
本開示は内装(もしくは適切に保護された外装)表面の装飾もしくは保護に有用な透水性テキスタイル構造体の幾つかの実施形態に向けられる。図1の実施形態において、テキスタイル基体14は低表面エネルギー処理を層12の形態でその前面上に、および任意の下塗り層16をその背面に有し、それに接着剤層18が取り付けられる。したがって、得られる基体/接着剤複合体10は低エネルギー表面12および接着剤層18の両者を含み、それらの両者は少なくとも部分的にテキスタイル基体14に組み込まれる。テキスタイル基体14への接着剤18の浸透は、様々な構成要素間の強力な物理的結合を創出し、それにより後の層剥離(すなわち、分離)を防止し、支持体表面から剥離されるときに複合体10が残す残留物が僅かであるか、もしくは全くないことを確実にするため、望ましいものである。接着剤の浸透は切断後の複合体の擦り切れを減少させ得ることもわかっている。
【0017】
低エネルギー処理12および接着剤18の両者のテキスタイル基体14への浸透の程度は貼付技術に基づいて制御できることに注意すべきである。浸透の程度は図において正確に表すことは困難であり、ある程度まで任意の下塗り層16の存在に依存する。具体的には、図1に示される浸透の程度の表示は、限度ではなく、代表的なものであることが意図される。例として、パディングによって貼付されたとき、低表面エネルギー処理12は、典型的には、図1において表されるように、布内部の個別の層として存在するのではなく、テキスタイル基体14全体に吸収される。起泡した低表面エネルギー処理12はテキスタイル基体14全体には完全には浸透せず、それにより接着剤18の基体14へのより深い浸透が可能になる(基体14の糸もしくは繊維への接着剤18の適正な付着を分断する低エネルギー表面の傾向による)ため、低表面エネルギー処理12をテキスタイル基体14内で発泡させることが好ましい。
【0018】
図2は、図1のものに類似するが、低表面エネルギー層がない構造体20を表す。ここで、このテキスタイル基体は、組成(例えば、ポリエステル)またはテキスタイル基体形成プロセスに先立つ個々の糸の低表面エネルギー処理のいずれかの結果として低エネルギー表面を有する個々の糸から構築されるものからその低エネルギー表面を誘導する。図1と同様に、任意の下塗り層24が示される。図3は、図1の実施形態に類似するテキスタイル構造体30(低表面エネルギー層32および任意の下塗り層36を示す)を表す。この実施形態については、支持体表面への取り付けはテキスタイル基体34の背面(もしくは、存在する場合には、下塗り層36)、支持体表面、またはその両者に設置時に接着剤を塗布することを含む。図4の実施形態は剥離紙の使用を示そうとするものである;このため、低エネルギー表面41がテキスタイル基体/接着剤複合体40の自己接着性を所望の程度まで防止するのに不十分である状況を表すのに、(図1の実施形態を用いることもできたが)(接着剤層26を有する)図2の実施形態を選択した。これらの実施形態および他の実施形態を以下で論じる。
【0019】
図1および2の基体/接着剤複合体の主要な予想用途が装飾性もしくは保護性壁被覆材としてのものであるため、この複合体は本開示において、その多くの他の潜在的用途もしくはここでの技術の一般性を制限する意図はなしに、壁被覆材と呼ぶことができる。この複合体は、テキスタイル基体を適切に選択して構築されるとき、低エネルギー表面処理(必要な場合)、接着剤、添加物、および適切な全体構造(さらなる引裂き強さ、穿刺耐性、もしくは他の望ましい属性をもたらす様々な種類の補強層の任意の使用を含む)は様々な用途もしくは様々な支持体表面での使用に合わせることができ、状況の求めに応じて、接着剤の性質(例えば、剥離可能、感圧性、永続性等)を本明細書に開示するテキスタイル構造物と組み合わせて用い得ることが考慮される。
【0020】
しかし、本開示はそのような複合体に限定されない。接着剤およびテキスタイル基体は、例えば、図3に示される構造を用いて、別々に支持体表面に貼付し、それにより本明細書に記載したテキスタイル基体/接着剤複合体構造をその場で形成し得ることが考慮される。ここでも図3に示されるものに類似する別の実施形態においては、複合体のテキスタイル基体部分を、その剥離可能性(もしくはそれらの欠如)とは無関係に、あらゆる適切な接着剤と共に、テキスタイル基体の審美性を、水分の透過が可能であり、かつ任意に、ここで論じられる他の属性の幾つか、例えば、容易な洗浄性、耐汚性、耐カビ性等も示す装飾性表面の利点と組み合わせようとする状況において用い得ることがさらに考慮される。
【0021】
ここに開示されるテキスタイル構造体(様々な接着剤層の有無に関わらず)の主な用途には壁の被覆および(一般にテキスタイル基体と呼ばれる類の)比較的軽量の基体が通常好ましい他の用途が含まれるが、例えばパッド様もしくはカーペット様基体を含む、より厚いおよび/またはより重いテキスタイル基体を、それらが他の点で適する、例えば、標的表面に適合させるのに十分に柔軟である、水分の除去をまかなうなどである限り、選択された最終用途において上手く用いることができる。壁被覆材を壁上に数年間剥離もしくは垂れ下がりなしに留めようとするが、除去可能性および剥離可能性のその品質を、最終的な除去時に下層をなす壁表面に害を及ぼすか、もしくは残留物を残すことなく維持しようとする場合、支持体表面に張り付けられるとき、安全性の適切な余裕をもって、基体の物理的重量は接着剤もしくは複合体の剥離強度を超えるべきではない。
【0022】
テキスタイル基体
この考察を通して、テキスタイル基体を(および、文脈が必要とするとき、複合体も)前面(すなわち、複合体を支持体表面、例えば、壁に貼り付けた後に外側に面する側)および背面(すなわち、壁もしくは複合体が取り付けられる他の支持体表面に直接向かい合い、かつそれと接触する側)を有するものと称する。多くの場合、複合体のテキスタイル部分の前面および背面は複合体の形成に先立つ構築において同一であり、テキスタイル基体が典型的に構築される糸もしくは繊維の三次元的性質により、前面および背面は各々、特には個々の糸もしくは繊維が重なるか絡み合う領域において、糸もしくは繊維の直径規模で特徴付けることができるある程度の輪郭もしくはテクスチャリング(texturing)を示す。そのような輪郭は「微小規模」の輪郭もしくは生地目と呼ばれ、例えば、エンボス加工テキスタイル基体またはナップ処理もしくはパイルテキスタイル基体、特には、ナップもしくはパイル糸を異なる高さで有するものに関連する中もしくは大規模輪郭と区別される。
【0023】
テキスタイル基体はあらゆる適切なテキスタイル繊維、フィラメント、もしくは糸から構築することができる。そのような繊維もしくは糸は一般に入手可能な素材、例えば、ナイロン、ポリエステル、ポリプロピレン、アクリル、オレフィン(例えば、ポリエチレンもしくはポリプロピレン)、セルロース素材(例えば、レーヨンもしくは木綿)、ウール、それらの配合物、および他の素材(例えば、シルク、リネン、様々なアラミド、繊維ガラス等)を含んでなるものであり得る。ここでのいかなる特定のポリマーの考察もそれらのホモポリマーおよびコポリマーの両者を含むものであることを理解するべきである。
【0024】
テキスタイル基体の性質および構成が、テキスタイル構造体もしくは複合体の望ましい物理的および審美的特徴に加えて、複合体の製造中に実施しようとする利用可能な、もしくは望ましいプロセス工程に依存することも理解されるべきである。したがって、壁被覆材が幾らかの吸音特性をもたらすか、もしくは内装表面に対する重大な審美的「重み」に貢献しようとするものである場合、選択されるテキスタイル基体はナップ加工もしくはパイル面を有するか、またはタフティング(tufting)もしくは接合(bonding)技術を用いて構成されるであろう。同様に、例えば、プロセスの限度のため、基体形成工程に続く全体的な低エネルギー処理を回避しようとする場合、好ましい低エネルギー表面の特徴を、低表面エネルギーを固有に有する糸、例えば、ポリエステル糸を基体の構成に用いることによって得ることができる。しかし、そのような低表面エネルギー糸を用いる場合、基体の背面上でのそのような糸の存在が背面への接着剤もしくは他の層の接着に有害作用を及ぼすことがあり、かつ基体が支持体表面に取り付けられるときに達成される接着の程度にも有害作用を及ぼし得ることに注意しなければならない。
【0025】
一般には、合成繊維タイプが天然繊維よりも、微生物分解に対するそれらの耐性および湿潤時の膨潤に対抗するそれらの傾向のため、好ましい。合成繊維のうち、ポリエステルがナイロンよりも、その固有の低エネルギー表面および永続的な染みに対する付帯耐性のため、好ましい。選択される糸(もしくは、異なるタイプが用いられる場合、複数の糸)は、最終製品におけるアクセント糸が望ましい場合もしくは溶液染色に特に適する糸(例えば、ポリプロピレン)が用いられる場合、任意に溶液染色することができる。これらの糸は、複合体の望ましい外見および望ましい最終用途の特徴に依存して、テクスチャード加工されてもされなくてもよい。
【0026】
テキスタイル基体の可能性のある構成には様々なタイプの織物および編物に加えて、不織構造体の使用が含まれる。ほとんどの不織基体は切断時のほぐれもしくはすり切れに耐性である傾向を有し、これは幾つかの用途において有利であり得、かつ接着剤等の必要性を排除する。壁被覆材として用いられるとき、面が輪郭処理もしくはパターン化処理されていたり、ニットもしくはパイル構成を有するかもしれないことが予期されるが、テキスタイル基体は比較的滑らかな面を有することが有利であり得る。パイルもしくはナップ処理された表面を有するタフト処理もしくは接合基体を用いることもできる。テキスタイル基体の構成は、それもしくはそれが一部であるあらゆる複合体を、複合体の幾何形態を引き裂き、もしくは損なうことなしに、繰り返し方式で表面に貼付し、表面から剥離し、および表面に最貼付することを可能にするのに十分な物理的強度および寸法安定性を有していなければならない。組成もしくは構成とは無関係に、テキスタイル基体は、本明細書に開示する水分輸送の利点が望ましい場合、水分を透過することができなければならない。
【0027】
テキスタイル基体の伸張の量は基体/接着剤複合体の取り扱いおよび設置の容易さに影響を及ぼす。縦もしくは横方向のいずれかにおける限られた程度の伸張が、貼付された複合体の望ましい視覚効果に依存して、一般に許容可能である。ここで用いられる場合、「縦(machine)」および「横(cross-machine)」という用語は、それぞれ、織物テキスタイルの縦糸および横糸、ニットテキスタイル基体の縦方向(wales)および横方向(courses)、ならびに、不織テキスタイル基体については、基体形成機を通してのテキスタイル基体移動のそれぞれの方向(「縦方向」)およびその移動方向に直角の方向(「横方向」)を指す。特定の用途、例えば、複合体を屈曲もしくは他の三次元表面に合わせ、または制御された量の壁もしくは天井表面を被覆材を通して見せ、または表面に指定された程度のテクスチャを確立するとき、より高い程度の伸張が望ましい。反対に、例えば複合体が反復パターンを有する壁被覆材として用いられる場合のような、パターン化もしくは印刷複合体の複数の列を互いに整列させるとき、パネルからパネルへのデザインの幾何形態を維持するため、最小程度の伸張が好ましいものであり得る。そのような最小伸張をもたらすため、幾つかの技術のいずれかを個別に、もしくは適切な組み合わせで用いることができ、例えば、比較的伸張抵抗性の基体構成の使用、接着剤塗布に先立つテキスタイル基体の背面への多量の結合剤もしくは(例えば、ポリウレタン、アクリルポリマー、および様々なコポリマーもしくは他の添加物の)追加層の貼付、およびその伸張状態での基体の熱硬化(これはさらなる伸張を最小化する傾向にある)がある。
【0028】
壁被覆材は、典型的には、保管および輸送のためにロールに巻くのに都合のよい幅の帯を含むパネルの形態をとる。そのようなパネルは、典型的には、直線の平行側部を有する(および、図7Aに示されるように吊される)。しかし、図7Bに示されるように、そのような帯は、隣接するパネル間の直線接合継ぎ目を排除する屈曲もしくは他の点で不規則な端部幾何形態を有することができ、これは、そのような継ぎ目を偽装する傾向にある「蛇行」継ぎ目(すなわち、パネルの長さに沿ってある実務的な距離にわたって方向を変化させるもの−例えば、数フィートごとに反復するパターンを有する端部幾何形態)に優勢に視覚的に検出が容易である。「無作為一致(random match)」パターン形成、すなわち、小さな垂直もしくは側方の位置ずれの視覚的許容であるパターン形成が隣接パネル間の継ぎ目を隠す助けとなり得ることも考慮される。
【0029】
微小規模輪郭を伴って形成されたテキスタイル基体(すなわち、「平坦な」テキスタイル基体とみなされるもの)の片側もしくは両側を処理してより誇張された輪郭処理表面を確立することができる。基体におけるそのような輪郭の創出は、(例えば、ジャガード織り、ドビー織り、輪編み、トリコット編み、縦編みもしくはラッシェル(Raschel)編みにより)基体形成プロセスの一部として達成することができ、または次の工程の間に達成もしくは強化することができる。用いることができる代表的なプロセスには、(例えば、共通に譲渡される米国特許第5,148,583号に開示されるような)加熱流体流による局所的糸収縮もしくは溶融;(例えば、共通に譲渡される米国特許第5,235,733号に開示されるような)高速流体流による糸の位置ずれ;例えばエンボス加工によるような、糸の変形;および当業者に公知であるような、化学エッチングおよび分解を含む、糸溶融もしくは分解が含まれる。
【0030】
基体の形成に続いて、得られた基体の前面および/または背面を任意に様々な適切な表面仕上げ操作、例えば、ナップ処理、サンド処理、ブラッシング等に処することができる。その後、所望に応じて、基体を任意に熱硬化工程に処してテキスタイルの幅および収縮特性を安定化することができる。ほとんどの場合、表面仕上げを用いてテキスタイルの前面の外見、テクスチャもしくは手触りを改善することができる。しかし、幾つかの表面仕上げ技術をテキスタイルの背面に用いて、例えば、基体および接着性構成要素もしくは他の任意の構成要素の間の接着を改善することが考慮される。例えば、糸もしくは形成された基体のいずれかを含む、共通に譲渡される米国特許第6,096,156号に一般に記載される類の、プラズマ処理は接着を改善するための手段を提供し得る。
【0031】
この技術の収集は非排他的であることが意図され、2つ以上の技術を同じ基体に用いることができ、かつ、当業者が想像できるように、他の通常のプロセスを基体の外見の改変において容易に用いることができるか、もしくは使用に適合させ得ることが考慮される。
【0032】
基体を印刷もしくは染色して、例えば、テキスタイル上に審美的に快い装飾的デザインを創出することもできる。基体は、繊維もしくは糸に適切な様々な染色および/または印刷技術、例えば、分散染料を用いる高温ジェット染色、熱染色、パッド染色、転写印刷、スクリーン印刷、デジタル印刷、インクジェット印刷、フレキソ印刷、もしくは当該技術分野において匹敵するテキスタイルに一般的であるあらゆる他の技術によって着色することができる。印刷は基体形成にあわせて、またはその後に行うことができる。加えて、基体を構成する繊維もしくは糸を基体形成に先立って適切な方法、例えば、パッケージ染色、溶液染色、もしくはビーム染色によって染色することができ、またはそれらを未染色のままにしてもよい。1つの実施形態において、溶媒系染料が本明細書に記載した接着剤剥離剤とより適合し得る場合、基体を水性染料ではなく溶媒系染料で印刷する。
【0033】
基体もしくは複合体の前面側は低エネルギー表面を含んでなる。表面の低エネルギー性は、内因的疎水性および親油性糸の使用により、基体形成プロセス前もしくは後の糸への低表面エネルギー剤、例えば、フルオロカーボン、シリコーン、もしくはワックスの塗布により、または、おそらくは、これらの技術の組み合わせによって達成することができる。低表面エネルギー処理が別個の層として適用されるとき、それは基体の前面および背面がそれらそれぞれの機能により適する、異なる表面エネルギー特性を有することを可能にする。この実施形態は、特に集合的にテキスタイル基体/接着剤複合体を形成する背面側の適切な接着剤の一体化層と組み合わされるとき、以下で詳細に論じられるが、この実施形態がここで様々な詳細レベルで開示され、かつ論じられる他の実施形態に必然的に好ましいものであると仮定するべきではない。いかなる場合であっても、低エネルギー表面は好ましく水分透過性であり、すなわち、水分を複合体の背面から複合体を通して前面に通過させることができる。
【0034】
基体に伴う水分透過性の程度は、選択される低表面エネルギー剤に固有の透過性に加えて、そのような薬剤によって形成されるあらゆる層の閉塞性/非閉塞性に依存する。透過性は水分の対流もしくは非対流輸送を可能にする連続層の能力に関連する。この文脈における「閉塞性」は、基体を通しての気体もしくは蒸気の対流に対する障害の形成を指す。層が基体の表面に非閉塞性方式で(すなわち、基体中に存在する天然の隙間が封じられないように)塗布される透水性材料を含んでなる場合、基体を通しての高度の水分輸送を期待することができる。反対に、層が基体の表面に閉塞的に(すなわち、基体中に存在する天然の隙間を閉塞もしくは封鎖する傾向にある実質的に連続の層が基体上に形成されるように)塗布される比較的非透水性の材料を含んでなる場合、通常のビニル被覆壁紙で見出されるように、その層を通しての水分輸送の程度は低いことが期待できる。
【0035】
(重大な例外を伴う)実用的な一般化として、層の閉塞性の程度は材料に固有の透過性の優位に立ち、それにより固有に透過性の材料を含んでなる閉塞性層よりも高度の水分輸送を不透性材料の非閉塞性層に示させるものと考えられる。これは、コーティング、処理、もしくは層、例えば、ここに列挙されるものの形態にあるあらゆる材料の適用を非閉塞的に行わなければならないか、もしくは、閉塞的に行われる場合には、固有に透水性である材料のみを含まなければならないことを暗示する。
【0036】
主な実施形態の1つにおいては、低表面エネルギー処理をテキスタイル基体に適用し、その基体を構成する個々の糸の表面に多かれ少なかれ適合する非閉塞性層を得、かつテキスタイルの背面から前面への水蒸気の対流通過のための組織内通路をもたらす。基体もしくはテキスタイル基体/接着剤複合体の少なくとも前面に適用される場合、低表面エネルギー処理は基体もしくは複合体の背面に関わる接着構成要素のいずれをも、(例えば、包装において)その複合体が円筒に巻き上げられるとき、テキスタイル基体の前面に付着することを防ぐ。この属性は、基体/接着剤複合体が長期間巻き上げられ、おそらくは温度および湿度の広範な変動を受ける状況において特に有用である。これは、製造中または接着剤が基体の背面に塗布されるか、設置時に壁もしくは他の支持体表面に直接塗布される場合に、接着性構成要素がテキスタイル基体の前面を通して流出もしくは漏出する(別名、「ストライク・スルー(strike-through)」のを防ぐ上での利点ももたらす。この処理は、さらに、撥水性を基体/接着剤複合体にもたらし、かつ、その組成に依存して、撥脂性をももたらし得る。両タイプの反撥性は使用中に染みに対抗する上で役に立つ。
【0037】
基体もしくは複合体の前面上に低エネルギー表面を得るため、疎水性および、好ましくは、少なくとも幾らかの親油性をもたらす薬剤で基体を処理することができる。そのような薬剤にはワックス、シリコーン、特定の疎水性樹脂、フルオロカーボン等、およびそれらの組み合わせが含まれる。フルオロポリマーがこの用途に特に適する低表面エネルギー剤である。そのようなフルオロポリマーの非限定的な例には、REPEARL(登録商標)F8025フルオロポリマーおよびREPEARL(登録商標)F-89フルオロポリマー(両者ともニューヨーク州New YorkのMitsubishi International Corporationから入手可能)、ならびに、ZONYL(登録商標)7713フルオロポリマー(デラウェア州WilmingtonのE.I. DuPont deNemoursから入手可能)が含まれる。Kimbrell, Jr.らの、Milliken & Companyに共通に譲渡された、2003年1月10日出願の米国特許出願第10/340,300号の主題もこの目的に有用な化学組成物であり、その開示は参照によりその全体がここに組み込まれる。
【0038】
例えばシリコーンが架橋しているエマルジョンを含む、ケイ素系化合物の水性エマルジョンも、比較的小さな親油性を示す傾向があるものの、低表面エネルギー剤として有用である。多くのケイ素系化合物、例えば、ポリシロキサンを含むもの(例えば、ポリジメチルシロキサンおよびジメチル水素ポリシロキサンを含む)を広範囲の分子量にわたって用いることができる。
【0039】
天然もしくは合成ワックスまたはそれらの混合物を低表面エネルギー処理として適用することもできる。適切な天然ワックスには、鉱物ワックス、例えば、結晶性もしくは非晶質パラフィン、植物ワックス、および動物ワックス、例えば、蜜蝋が含まれる。適切な合成ワックスには、脂肪アルコールおよび酸、脂肪酸エステル、およびグリセリドが含まれる。
【0040】
上で論じられる低表面エネルギー処理に加えて、汚れもしくは染み除去剤を単独もしくは、好ましくは、上で論じられる低表面エネルギー剤との組み合わせで使用し、汚れもしくは染み除去性をテキスタイルに付与することを記述することができる。染み除去剤には、エトキシル化ポリエステル、スルホン化ポリエステル、エトキシル化ナイロン、カルボキシル化アクリル、セルロースエステルもしくはエーテル、加水分解無水ポリマレイン酸ポリマー、ポリビニルアルコールポリマー、ポリアクリルアミドポリマー、フッ化染み除去ポリマー、エトキシル化シリコーンポリマー、ポリオキシエチレンポリマー、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンコポリマー等、およびそれらの組み合わせが含まれる。有効であり得る(および例としてのみを目的とし、限定されることを意図しない)フッ化染み除去剤には、Daikin CorporationによってUNIDYNE(登録商標)TG-992の商品名で販売されるフルオロポリマー;Mitsubishi CorporationによってREPEARL(登録商標)SR1 100の商品名で販売されるフルオロポリマー;およびE.I. DuPont deNemoursによってZONYL(登録商標)7910の商品名で販売されるフルオロポリマーが含まれる。
【0041】
ここでは集合的に「任意の処理」と呼ばれる様々な他の添加物を基体/接着剤複合体の前面側に組み込んで望ましい特性を複合体に付与することができる。以下の考察は包括的ではなく、例示しようとするものである。当業者に公知であるような、以下で論じられるもの以外の接着剤も任意の処理の一部として基体の前面もしくは背面の中もしくは上に組み込み得ることが考慮される。そのような添加物は、基体形成プロセスに先立って、基体の繊維もしくは糸に組み込むこともできる。
【0042】
例として、化学物質、例えば、殺生物剤、難燃剤、紫外線安定化剤、光触媒、酸化防止剤、着色剤、潤滑剤、帯電防止剤、高周波シールド性添加物、香料、臭気吸収剤もしくは中和剤等、またはそれらの組み合わせを含む仕上げで基体を処理することが望ましいものであり得る。そのような仕上げの適用は浸漬コーティング、パディング、噴霧、フォームコーティングによるもの、または制御された量の懸濁液をテキスタイル基体に塗布することができるあらゆる他の技術によるものであり得る。多くのそのような化学組成物を低表面エネルギー剤と同時に組み込むことができ、またはそのような組成物を低表面エネルギー剤および/もしくは染み除去剤での処理に先立って適用することができる。適切な技術を用いて、低表面エネルギー剤および/もしくは染み除去剤での処理の後に、例えば枯渇技術を用いて、多くのそのような化学組成物を適用することも可能である。
【0043】
さらに、上に列挙される化学添加物の多くを「下塗り」層もしくは接着性構成要素に組み込むことも可能である。この層は、一般に、安価なポリマーもしくは濃化接着剤を含んでなる。下塗り層が用いられる場合、典型的には、テキスタイルの背面に塗布されて嵩を与え、最終複合体の表面形態を調整する。しかし、下塗り層は、後に塗布される接着剤の基体の前面までの通過の防止、基体と複合体の背面に塗布されるあらゆる後塗布接着剤との接着の改善、および他の機能的添加物、例えば、殺生物剤、難燃剤、水分輸送促進充填剤もしくは構造(例えば、泡)等を含む、様々な他の目的に役立ち得る(そのような添加物は基体中、接着剤層中、もしくは複合体中の他所に入れることもできることは理解されるべきである)。閉塞性層として適用される場合、下塗り層は透水性でなければならない。この下塗り層は、支持体表面に塗布されて基体もしくは基体/接着剤複合体がそのような表面から取り外されるようなときの損傷からそれを封じ、もしくは保護する塗料下塗り層とは異なることに注意されたい。他所で言及されるように、そのような塗料下塗り層は幾つかのタイプの接着剤もしくは支持体表面の使用に関連して、または他の状況がそのような必要性を示唆する場合に推奨することができる。
【0044】
低表面エネルギー剤およびあらゆる任意の処理は同時に、もしくは連続的にテキスタイル基体に適用することができる。例えば、これらの薬剤を、おそらくは架橋剤と共に、1つの溶液に組み合わせた後、パッディングによってテキスタイル基体に塗布することができる。化学薬剤(1種類以上)をテキスタイル基体に塗布した後、処理された基体を、一般には、乾燥工程に晒して過剰の液体を蒸発させ、固体活性成分を処理された基体の表面に残す。さらに別の実施形態においては、染み除去剤をテキスタイル基体に塗布した後、低表面エネルギー剤を湿潤もしくは乾燥基体のいずれかに塗布し、非閉塞性積層化学処理を基体の表面上に創出する。
【0045】
乾燥は製造操作において典型的に用いられるあらゆる技術、例えば、テンターフレームからの乾燥加熱、マイクロ波エネルギー、赤外線加熱、蒸気、超過熱流、オートクレーブ処理等、もしくはそれらのあらゆる組み合わせによって達成することができる。処理された基体をさらなる加熱工程に晒して化学剤(1種類以上)の性能もしくは耐久性をさらに強化することが望ましいものであり得る。例として、さらなる加熱は(a)化学剤の活性成分の個別の粒子を共に溶融流動させ、均一で密着性のフィルム様の層を生じることを可能にし;(b)化学剤の特定のセグメントの好ましい整列を誘導し;または(c)それらの組み合わせであり得る。
【0046】
接着剤がテキスタイルの背面に塗布されている場合における低表面エネルギー処理の代替として、幾つかの用途においては、(図3Cに示されるように)接着性構成要素に除去可能に取り付けられる剥離紙を用いることが望ましいものであり得ることが考慮される。当該技術分野において公知のように、「剥離紙」は、典型的には、接着性構成要素を次の処理(例えば、細断、印刷、および包装)中の汚染から保護することに加えて、背面接着剤の基体が巻き上げられるときの望ましくない自己粘着を防止するのに用いられる。使用者は、複合体を選択された表面に貼付する前に、剥離紙を手で除去する。
【0047】
剥離紙およびそれらの調製方法は公知である。典型的には、剥離紙は支持体シート、例えば、クラフト紙を含み、その一方の表面(「剥離表面」)が、後日設置者がその剥離紙を容易に除去できるように接着性構成要素に関して良好な剥離特性を有する適切な剥離材料、例えば、シリコーンもしくはワックスでコートされ、もしくはそれが含浸している。剥離紙は、まず接着剤を剥離紙上にコートし、剥離紙の接着剤側をテキスタイルの背面に押し付ける、接着剤転写コーティングによってテキスタイル基体/接着剤複合体に組み込むことができる。剥離紙を所定の位置に残し、複合体を保管のために巻き上げることができる。ほどかれたとき、使用者は接着剤がテキスタイル基体に付着されたまま剥離紙を除去することができる。そのような剥離紙の使用は設置後の基体の透水性を妨害してはならないだけではなく、基体もしくは複合体の前面への望ましい任意の処理の使用を不可能にするものではないことを理解するべきである。
【0048】
接着剤
幾つかの実施形態において、テキスタイル基体は、テキスタイルの背面上に接着剤を坦持する基体/接着剤複合体の一部である。より具体的には、そのような接着剤および基体の組み合わせの使用は、取り付けの持続期間、すなわち、単に数秒から複数年まで、とは無関係に、引き裂きもしくは下層をなす表面に実質的に損傷を与えることなしに、または表面上に残留する実質的な接着剤残留物を残すことなしに、基体を取り外すことを可能にする基体/接着剤複合体を生じることができる。より技術的な用語で換言すると、そのような基体/接着剤複合体は著しい構造一体性を有し、接着剤はその粘着強度下回り、かつそれが塗布される表面の強度を下回る(表面に対する損傷を防止するため)剥離強度を有する。本開示全体を通して、感圧性という用語は、接着剤の説明に用いられる場合、乾燥時に永続的に(すなわち、数年の期間にわたって)粘性のままである接触接着剤を指し、剥離可能という用語は、接着剤の説明に用いられる場合、相当量の残留物を残すことなしに、もしくはそれが取り付けられた表面に損傷を与えることなしに容易に除去可能である接着剤を指す。本明細書に開示する基体/接着剤複合体は、一般には、接着剤として、剥離可能および/もしくは感圧性接着剤、または熱可塑性熱溶融ポリマーを含む。
【0049】
適切な接着剤のタイプおよび量の選択において幾つかの要素を比較検討しなければならず、そのような組み合わせの選択は以下の属性のリストを心に留めてなされなければならない(そのリストは望ましいものの非排他的な組ではあるが、集合的には必須ではない属性を表す)。満足のいく接着剤はこれらの属性の多くもしくはほとんど(しかし全てである必要はない)を示すことができ、かつ、幾つかの用途のため、列挙されていないか、もしくは以下で他に論じられる特徴を必要とし得るものと予期される。接着剤は強力で耐久性のある結合をテキスタイル基体の背面(すなわち、接着剤が塗布される側)と、および堅牢であるが剥離可能な結合を支持体表面と形成しなければならない。接着剤は比較的高い粘着強度を示し、テキスタイル基体が取り外された後に支持体表面に相当量の残留物を残してはならない(上記剥離可能接着剤の定義に含まれる)。接着剤は、複合体および支持体表面間に結合を有するという観点から、環境条件とは無関係に、全時間にわたって弱まりも強まりもしない長期安定性を有していなければならない。
【0050】
接着剤とテキスタイル基体の前面との間には結合は、ほとんどもしくは全くあってはならない(例えば、輸送もしくは保管のために複合体を円筒に巻き付ける状況において、複合体は非自己接着性でなければならず、すなわち、接着性の背面がテキスタイルの低表面エネルギー前面に接触する場合に結合が、ほとんどもしくは全くあってはならない)。複合体の接着剤側が偶発的にそれ自体と接触する場合、接着剤表面間の結合は容易に破壊し得るものでなければならない(すなわち、接着剤は非ブロック性でなければならない)。
【0051】
有利には、基体もしくは基体/接着剤複合体は容易に位置替え可能であり、すなわち、その除去可能性および完全な剥離可能性の属性を、伸張および引き裂きなしに、貼付および除去の反復サイクルを通して、(基体を壁被覆材として用い、その壁被覆材が設置時もしくはその後すぐに位置替えを必要とする場合に生じるであろうような)最初の設置後少なくとも数日もしくは数週間、同じもしくは異なる支持体表面に再付着する能力と共に維持する。
【0052】
(例えば、基体/接着剤複合体の背面から前面への)水分輸送の特性が多くの用途において非常に重要なものであり得ることは認められる。本明細書に記載した基体もしくは基体/接着剤複合体は、透水性である上に引き裂き耐性および寸法安定性を有し、かつ基体の背面、支持体表面、もしくはその両者(接着剤が基体に予め塗布されている基体/接着剤複合体の場合)に塗布される接着剤を用いて、あらゆる任意の層もしくは処理の追加の有無に関わりなく、壁もしくは他の表面に貼付できる審美的に快い表面を提供する。
【0053】
本明細書に記載した低表面エネルギー処理が非閉塞性であるか、もしくは他の方法でテキスタイルを通しての水分の輸送をまかなうように設計されると、接着剤は同様に、必ずしも接着剤層が非閉塞的な方法で塗布されなければならないことを意味するものではないが、水分の通過も許容する接着剤層を生じる方法で選択および塗布されなければならない。接着剤層の組成物はその層を閉塞性(すなわち、通常のコーティング手段によってコーティングとして塗布される)にするものでもよいが、(例えば、拡散もしくは他の機構により)水分の透過を可能のままにするものである。以下で論じられるように、感圧性接着剤、特にエマルジョンタイプの感圧性接着剤が、一般にこの要求を満たすことがわかった。
【0054】
感圧性接着剤
感圧性接着剤は、典型的には、溶媒系タイプ、エマルジョンタイプ、もしくは熱溶融タイプのいずれかである。各々の特徴および塗布方法は、接着剤層をテキスタイルの背面に取り付け、それにより後に接着剤なしで支持体表面に貼付することができる一体化テキスタイル基体/接着剤複合体を形成する実施形態と関連付けて、以下のように説明される。これらの接着剤はそのような一体化テキスタイル基体/接着剤複合体に塗布してその一部となることができ、または基体の背面、支持体表面(すなわち、壁)、もしくは、おそらくは、その両者に、設置時に、そのような複合体の事前形成なしに(すなわち、それによりテキスタイル基体/接着剤複合体をその場で設置時に形成する)、別々に塗布することができることは理解されるべきである。さらに、たまたま感圧性でも容易に剥離可能でもない溶媒系もしくはエマルジョン系接着剤(例えば、通常の壁紙糊剤)を、設置直前に、このテキスタイル構造体の利点の多く(例えば、透水性、染み耐性、非自己接着性、強度、外見等)を維持したまま、基体もしくは壁に塗布することができることを理解するべきである。
【0055】
エマルジョンタイプの感圧性接着剤が、それらの製造における使用の容易さのため、一般により望ましい特性を有する。これらのタイプの水系接着剤は、典型的には揮発性有機化合物を含み、かつより複雑な環境保護を必要とし得る有機系接着剤よりも容易に用いられる。熱溶融感圧性接着剤は乾燥工程を必要としない利点を有する。
【0056】
エマルジョンタイプの感圧性接着剤の例にはMULTI-LOK(登録商標)38-454Aの商品名で販売されるアクリルポリマー接着剤およびNACOR(登録商標)72-8761の商品名で販売される酢酸ビニル接着剤が含まれ、これらは両者ともNJ、BridgewaterのNational Starch & Chemicalから入手可能である。メタクリレート系感圧性接着剤を用いることもでき、その例はPA、PhiladelphiaのRohm & Haasが販売するROBOND(著作権)PS-8120 HVである。用いることができる他のクラスの接着剤は参照書籍Handbook of Pressure Sensitive Adhesive Technology, edited by Don Satas and published by Van Nostrand Reinhoid Co.(1982)に文書化されている。幾つかの場合において、テキスタイル複合体をより頑丈な表面、例えば、金属もしくはレンガに貼付するか、または永久設置のとき、永続的もしくは高強度接着剤を用いることが望ましいものであり得る。
【0057】
エマルジョンタイプの感圧性接着剤は様々な添加物の使用によって改変し、特徴、例えば、粘着、剥離強度、粘着強度、剛度等を変化させることができる。そのような添加物の例には、限定されることなしに:(1)加湿剤、例えば、Air ProductsによってSURFYNOL(登録商標)PSA-336の商品名で販売され、およびUnion CarbideによってTRITON(登録商標)GR-5Mの商品名で販売される加湿剤;(2)機械的安定化剤、例えば、Union CarbideによってTRITON(登録商標)X-200の商品名で販売され、およびDow ChemicalによってDOWFAX(登録商標)2A1の商品名で販売される機械的安定化剤;(3)濃厚剤、例えば、Rohm and HaasによってACRYSOL(登録商標)ASE-60およびACRYSOL(登録商標)TT-615の商品名で販売される濃厚剤;(4)架橋剤、例えば、Ultra AdditivesによってZINPLEX(登録商標)15の商品名で販売される架橋剤;(5)粘着剤、例えば、Arizona ChemicalによってAQUATAC(登録商標)6085の商品名で販売され、Akzo Nobelによって様々な商品名で販売され、およびEastman Chemicalによって様々な商品名で販売される粘着剤;(6)脱粘着剤、すなわち、硬化剤、例えば、Rohm & HaasによってROVACE(登録商標)177の商品名で販売される酢酸ビニルホモポリマー;(7)消泡剤、例えば、CognisによってFOAMSTER O(登録商標)の商品名で販売され、およびCrompton/WitcoによってBUBBLE BREAKER(登録商標)3056Aの商品名で販売される消泡剤;(8)可塑化剤、例えば、Velsicol ChemicalによってBENZOFLEX(登録商標)50の商品名で販売されるものが含まれる。当該技術分野において公知であるような溶媒系接着剤用の類似の添加物を溶媒系感圧性接着剤に組み込むことができる。エマルジョンおよび溶媒タイプの感圧性接着剤は当該技術分野において公知であり得るような通常のコーティング法を用いて塗布することができ、これには、これらに限定されるものではないが、バックコーティング、ナイフコーティング、フォームコーティング、キスコーティング、もしくは他の適切な技術が含まれる。
【0058】
熱溶融感圧性接着剤は、溶媒もしくはエマルジョンタイプの感圧性接着剤と比較したとき、比較的高いアドオンをもたらす利点を有し、さらに、乾燥を必要としない。適切な熱溶融感圧性接着剤の一例は、National Starch and AdhesivesによってEASYMELT(登録商標)34-591Aの商品名で販売されるゴムコポリマーである。熱溶融接着剤は幾つかの一般に公知のコーティング技術、例えば、スロットオリフィス、ロール、および押出コーターのいずれによっても塗布することができる。
【0059】
前に論じられるように、全ての接着剤と共に、任意の下塗り層を用いてテキスタイル基体と接着性構成要素との接着を改善し、かつ利点をもたらすことができる。テキスタイル基体の背面の表面仕上げもテキスタイル基体への接着性構成要素の結合を改善し得る。
【0060】
熱可塑性熱溶融ポリマー
オレフィンおよびアクリレート(例えば、ポリメチルメタクリレート)を含む熱可塑性熱溶融ポリマーも、オレフィンタイプの接着剤においては透水性が非常に低いものの、基体/接着剤複合体の接着性構成要素として用いるのに適する。典型的には、これらのポリマーはテキスタイル基体の表面上に直接押し出されるか、またはフィルムとして押し出され、次にそれが基体上に積層される。説明されるように、様々なタイプの望ましい接着剤を押出に先立ってポリマー混合物中に直接組み込むことができる。上述の感圧性接着剤とは異なり、熱可塑性熱溶融ポリマーは室温ではほとんど、もしくは全く粘着性を示さない。結果として、熱可塑性熱溶融ポリマーを基体/接着剤複合体の一部として用いるとき、低表面エネルギー剤もしくは剥離シートは任意であるが、例えば、染み反撥性および/もしくは複合体表面の洗浄の容易さが重要である場合には、低表面エネルギー剤の使用が推奨される。
【0061】
熱可塑性熱溶融ポリマーは、基体/接着剤複合体を望ましい表面に固定するのに熱および圧力の印加を必要とする。このプロセスはあらゆる標準的な家庭用アイロン、ヒートガン等の使用によって達成することができる。熱可塑性熱溶融ポリマー含有複合体の除去は感圧性接着剤を含有するものとは非常に異なる。熱可塑性熱溶融ポリマーの場合、再加熱なしでの除去は極めて困難であり、重大な表面損傷を生じることがある。
【0062】
表面接触
上で論じられるように、構成とは無関係に、テキスタイルはそのテキスタイル基体の創出に用いられる糸および形成プロセスのタイプから生じる特定の微小規模の表面輪郭を有する。例えば、フィルムもしくは紙は、一般には、比較的平坦(平滑)な表面プロフィールを有するのに対して、テキスタイル製品は糸内の繊維の存在およびテキスタイル内での糸の位置取りによって生じる微小規模の輪郭表面プロフィールを有する。
【0063】
そのような微小規模の表面輪郭は接着剤およびあらゆる基体/接着剤複合体の粘着および剥離強度に有意の調整を加える簡単な手段を提供することができる。例えば、一定の比較的低い接着剤アドオンレベルを用いるとき、比較的平坦な、著しい微小規模輪郭を欠く低輪郭基体を組み込む複合体は、著しい微小規模輪郭を有する基体と比較して、それが貼付される表面との接触により利用可能な表面積を示す。後者の基体は、顕微鏡レベルで、比較的「凸凹」(すなわち、高輪郭)表面を有するように見え、その凸凹の頂部、すなわちピークでのみ実際に壁もしくは他の支持体表面と接触する。
【0064】
したがって、そのような微小規模輪郭を欠くテキスタイル基体を用いる基体/接着剤複合体(例えば、テキスタイル表面が輪郭を「充填」する傾向にある物質で積層され、比較的平坦な表面を提供する場合)は、表面に貼付されたとき、そのより大きな表面接触面積のため、比較的多量の粘着および剥離強度を示す。テキスタイル基体に固有の輪郭は、そのテキスタイル基体の背面に塗布された接着剤の量および性質に加えて、望ましい量の接着強度をもたらすように適合させることができる。下塗りもしくは表面への物理的改変(例えば、カレンダリング)の使用を輪郭の程度の減少に用い、それにより基体と支持体表面との接触表面積の増加および、それに対応して、所定の接着剤アドオンの接着の増加をもたらすことができる。
【0065】
しかし、テキスタイル基体が接着剤層の塗布の後にさえ微小規模輪郭を示す場合、所定の支持体表面との接着の程度は、複合体を支持体表面に固定するプロセスの一部としてテキスタイル基体前面の全体に圧力を印加することによって高めることができる。そのような圧力はテキスタイル基体の背面の微小規模輪郭を変形および再構成し、テキスタイル基体の背面に伴われる接着剤と支持体表面との表面接触面積の増加をもたらすものと考えられる。「ピーク」が支持体表面に対して平坦化される傾向にあり、そうでなければ支持体表面とは接触していない、ピークに隣接するこれらの領域の一部が有効票面接触面積の一部をなすものと考えられる。この機構を図6Aおよび6Bに示す。図6Aにおいて、距離ΔAは、支持体表面への複合体の固定に用いられる比較的弱い圧力で期待される、接着剤層58と支持体表面59との表面接触の程度を示す。図6Bは、支持体表面への複合体の固定に用いられる比較的強い圧力で期待される、対応する距離ΔBを示す。ΔBによって定義されるより長い距離で表される表面積の増加に加えて、図6Aにおいて60で示されるような接着剤層の幾つかの部分が支持体表面と接触できるようになり、利用可能な接着剤接触面積をさらに増加させることにも注意しなければならない。したがって、所望であれば、設置時に低印加圧力を用いることによって複合体が示す剥離強度を低下させ、複合体を位置替えが容易なものとすることができる。その後、より高い圧力が長期間の接着のためのより強力な結合を生じる。
【0066】
上で論じられる微小規模輪郭は、複合体が保管もしくは輸送のために円筒に巻かれるとき、複合体の背面と複合体の前面との接着を制御する(すなわち、複合体の「非自己接着」性を制御する)ための手段を提供するものとも考えられる。自己接着性シート物品がそれら自体に固着することを妨げる問題はよく認知されており、従来技術において有効性、利便性、および費用に関して様々な程度の成功で取り組まれている。理論によって縛られるものではないが、円筒に巻き付けられるとき、本明細書に記載した複合体の前面側が直接対向する接着剤表面に対して提供する接触表面積はより小さく(すなわち、小規模テキスタイル基体の「ピーク」面積のみ)、それにより複合体の巻かれた層の間に確立され得る潜在的な掴みを低減し、複合体のほどきを補助する解除点を提供するものと考えられる。テキスタイル基体の前面上の低エネルギー表面の存在も、実質的に、この複合体の比較的非自己接着性の特徴に寄与する。
【0067】
選り抜きの接着性構成要素が、特に層としてテキスタイルの背面に塗布される場合、一般には実質的にテキスタイルの背面表面の全てを覆うが、接着剤の不連続被覆を用いることができることも考慮される。そのような不連続塗布は、スロットダイ押出法、刻みロール、スクリーン印刷、および当業者に公知であり得る他の技術によって達成することができる。不連続塗布は予め決定されたパターンを形成することができ、もしくは無作為であり得る。
【0068】
擦り切れを防止するテキスタイル−接着剤複合体のスリット処理は、端部を加熱封着する技術、すなわち、ホットナイフ切断、超音波切断、およびレーザー切断を用いて達成することができる。テキスタイル複合体が示す擦り切れが少ない場合、非封着切断法、例えば、裁断、スコアリング、もしくはナイフ切断を用いることができる。擦り切れを最小化する他の技術には、不織テキスタイル基体の使用、接着剤の塗布に先立つテキスタイル基体へのポリマー組成物もしくは積層の非閉塞的塗布、テキスタイル基体へのポリマー組成物、例えば、サイズもしくは結合剤の含浸、およびテキスタイル基体への接着性構成要素の完全な、もしくは部分的な含浸が含まれる。候補結合剤には以下が含まれる:Rohm and HaasによるRhoplex K-3、Rhoplex NW-2744F、およびRhoplex TR-407M;これらは、用いられる結合剤のTgに依存して、望ましい剛度、手触り、および抗擦り切れ特性をもたらすように選択することができる。他の結合剤、例えば、SC、SpartanburgのGlo-Tex International, Inc.から入手可能なAstroclean 26-Aは、通常の結合剤特性の他に、汚れ除去特性をもたらすことができる。
【0069】
製造
テキスタイル基体の特徴および構成を詳細に説明したが、以下の考察はテキスタイル基体/接着剤複合体を製造するためのプロセス工程に向けられる。
本テキスタイル構造体の幾つかの実施形態を壁被覆材として用いるために製造することができる製造プロセスの非限定的な概要が図8に示されており、ここでは様々なプロセス工程がボックスとして示される。破線を伴うこれらのボックスは任意とみなされ、特定の実施形態の製造においてのみ必要とされる。任意とはされていないが、工程94および102は常に必要なものではない(望ましい最終製品の構成に依存する)。例えば、テキスタイル基体を構成する糸が固有に低表面エネルギー糸(もしくは、任意の工程80によってそのように処理されている)場合、低表面エネルギー層がテキスタイル基体の前面に塗布される工程94は必要ないことがある。同様に、接着剤層がテキスタイル基体の背面に取り付けられる工程102は、望ましい最終製品が本明細書に記載したテキスタイル基体/接着剤複合体である場合にのみ必要である。接着剤が設置時に塗布される場合、これもここで論じられるように、(設置プロセスにおける別の工程として、もしくは接着剤が塗布されている表面上に押し付けられる結果として)工程102は設置時に行われる。
【0070】
工程80および82は本明細書に記載したテキスタイル基体の形成に向けられる。工程80は、(テキスタイル基体表面それ自体に適用される低表面エネルギー処理に頼るのとは対照的に)テキスタイル基体の低エネルギー表面を、固有の特性として、もしくは別の処理の結果として、低エネルギー表面を個別に示す構成糸の使用によって達成しようとする場合、有用である。工程82の詳細は望ましいテキスタイル基体の構成(例えば、織物、ニット等)に依存し、通常の織物形成技術を反映する。任意と示される通常の加熱工程である工程84は、テキスタイル基体が他の方法では寸法的に不安定(例えば、収縮)であると思われる場合に推奨される。工程86ないし90はテキスタイル基体の審美性を、例えば、マップ処理、印刷等によって変更するのに用いることができる。これらの工程の1以上はこのプロセスの後になるまで異なり得ることに注意するべきである。工程92は、テキスタイル基体が切断端部に沿って擦り切れを示すと思われるか、もしくは硬化の必要がある場合に推奨される。低表面エネルギー仕上げがテキスタイルに付与される工程94は、上記技術に従って行うことができ、かつ、上述のように、適度の低エネルギー表面をテキスタイルに既に付与する糸の場合には任意であり得る。結合剤の使用が幾つかの低表面エネルギー処理を妨害し、自己粘着を生じる可能性があることに注意するべきである。そのような場合、工程94における低表面エネルギー処理の適用に先立ち、結合剤を別の工程(示されない)として塗布および乾燥させることが有利であり得る。工程96の必要性は先行するプロセス工程の性質に依存し、当業者には明かであろう。工程98および100においては、必要に応じて下塗りをテキスタイル基体の背面に塗布し、乾燥させることができる。多くの実施形態に対して、これらの任意の工程が推奨される。工程102はテキスタイル基体の背面への望ましい接着剤の塗布に向けられる(基体/接着剤複合体が目的の製品である場合)。乾燥工程104は溶媒もしくはエマルジョンタイプの接着剤の使用に関してのみ必要である。スリット処理工程106は使用上の便宜のためのテキスタイル基体のスリット処理を含み、技術的には任意であるが、テキスタイル基体もしくは複合体が数フィートよりも幅広である場合に推奨される工程である。
【実施例】
【0071】
本発明のテキスタイル構造体を、以下に挙げる実施例によってさらに説明する。ここに開示されるテキスタイル基体/接着剤複合体の実施形態に関するこれらの実施例は、代表的なものにすぎず、排他的もしくは限定的のいずれかであることを意図するものではないことは理解されるべきである。
以下に挙げる実施例は、基体/接着剤複合体を含む実施形態の評価において実施された様々な試験を考察する。これらの試験において用いられた試験方法および手順を以下に説明する。
【0072】
接着剤アドオンは、テキスタイル複合体に塗布された接着剤の量の測定である。明らかに、より大きい数字はテキスタイル基体上のより多くの接着剤の存在を示す。
転球粘着性(Rolling ball tack)は、球が、その球が望ましい速度を得る傾いたトラフを転がり落ちるとき、転がる球が接着剤表面を横切って進むインチ数の測定である。この試験はASTM Test Method D-3121-94(再認可 1999)に従って実施した。より短い距離はより大きい粘着性を有する、すなわち、より即効性の短期接着を有する表面を示す。
【0073】
90°剥離強度試験は、接着剤コートされたテキスタイルを表面から剥離するのに要する力(ポンド力/インチ)の量を測定する。この試験はASTM Test Method D-903-98に従って実施した。この試験においては、基体/接着剤複合体を、他に注記されない限り、5ポンドローラーを用いて下塗りしたシートロックに接着させた。Gliddenによって製造される内部PVA下塗りの2つのコートを表面に塗布し、基体/接着剤複合体の貼付に先立って乾燥させた。その後、基体/接着剤複合体を、取り外しに要する力の測定を行いながら、シートロックから取り外した。
【0074】
層間剥離強度試験はテキスタイル基体を接着性構成要素から分離するのに要する力(ポンド力/インチ)の量を測定する。この試験においては、複合体の接着性構成要素をエポキシ接着剤を用いてシートロックに接着させた。その後、テキスタイル基体を、取り外しに要する力の測定を行いながら、接着性構成要素から取り外した。観察される典型的な破損様式は粘着(すなわち、接着剤層が破損し、内部的に分離するようになる)もしくは基体/接着剤界面(例えば、接着剤と基体との結合が破損し、接着剤が表面に付着したままとなり、基体から分離するようになる)であった。
【0075】
実施例1:引き裂き強度および破裂強度の評価
異なるテキスタイル基体の引き裂き強度を、ASTM Test Method D-5733-99を用いて評価した。引き裂き強度は基体における引き裂きの開始もしくは継続のいずれかに必要な力である。
破裂強度は基体の破裂強度を測定する試験である。この手順はASTM Test Method D-3787-89に従って実施した。
【0076】
試験したテキスタイル基体および競合製品を以下に記載し、対応する結果をデータ表1に示す。
構成要素1A:2×2かご編み;100%ポリエステル;3/150/34ポリエステル糸および64端/インチを有する縦糸;3/150/34ポリエステル糸および44ピック/インチを有する横糸
構成要素1B:平織り100%ポリエステルテキスタイル;3/150/50ポリエステル糸および39端/インチを有する縦糸;3/150/50ポリエステル糸および41ピック/インチを有する横糸;6.34オンス/ヤード2の仕上げ重量
構成要素1C:Hクレープ織り;100%ポリエステル;2/150/34ポリエステル糸および67端/インチを有する縦糸;2/150/34ポリエステル糸および46ピック/インチを有する横糸;6.38オンス/ヤード2の仕上げ重量
【0077】
構成要素1D;6Hクレープ織り;100%ポリエステル;1/150/36ポリエステル糸および66端/インチの縦糸;1/150/36ポリエステル糸および54ピック/インチを有する横糸
構成要素1E:変わり織り;100%ポリエステル;1/300/136ポリエステル糸および64端/インチを有する縦糸;2/150/68ポリエステル糸および68ピック/インチを有する横糸;6.21オンス/ヤード2の仕上げ重量
構成要素1F:平織りタフタ;100%ポリエステル;1/150/36ポリエステル糸を有する縦糸;1/150/36ポリエステル糸を有する横糸
【0078】
構成要素1G:水流交絡スパンレース、織りなし(Hydro entangled spun lace no woven);100%ポリエステル;無作為粗面化ポリエステル
構成要素1H:マックレノ織り(Mock leno weave);100%ポリエステル;1/070/34ポリエステル糸および103端/インチを有する縦糸;1/070/36ポリエステル糸および86ピック/インチを有する横糸;2.31オンス/ヤード2の仕上げ重量
構成要素1I:2/150/68ダンベリーテクスチャード加工(Danbury-textured)100%ポリエステル糸、1/150/72 100%ポリエステル糸、および1/150/36 100%ポリエステル糸を含むダブルニット構造体;8.7オンス/ヤード2
構成要素1J:単針バーニット構造体(Single needle bar knit construction);100%ポリエステルの1/150/34糸;7.5オンス/ヤード2
【0079】
競合製品A:Henkel Consumer AdditivesによってDuck(登録商標)ブランドで販売されるダクトテープ
競合製品B:Anchor Continentalによって「Anchor II Advanced Adhesives」の名称で販売されるマスキングテープ
競合製品C:D.W. Wallcoveringによって「SofTac Adhesive Border」の名称で販売される自己粘着性壁紙縁
競合製品D:Imperial Home Decor Groupによって「Stick'nPlay Self-Stick Activity Border」の名称で販売される自己粘着性壁紙縁。
【0080】
【表1】

【0081】
実施例2:異なるテキスタイル基体の効果
この実施例の基体/接着剤複合体を創出するのに以下の手順を用いた。
テキスタイル基体を、浴のwt%で、以下を含有する低表面エネルギー組成物を含む浴に浸漬した:
4.25% UNIDYNE(登録商標)TG-992フッ化染み除去剤
1.00% REPEARL(登録商標)F-8025フルオロカーボン反撥剤
1.25% RESIN MRX(登録商標)ブロックジイソシアネート架橋剤。
【0082】
基体をパッドローラーで圧搾し、約50%の湿式ピックアップ(wet pick-up)を達成した。次にその基体を乾燥させ、テンターフレームを用いて390°F、毎分40ヤードの速度で加熱硬化した。
乾燥させた基体の前面側に転写印刷した。
印刷された基体の背面を、幾つかの実験用巻線型ロッドコーターのうちの1つを用いて、ROBOND(登録商標)PS-8120 HV感圧性接着剤でコートした。次に、コートした基体試料の各々を250°F、実験室規模Despatchオーブン内で乾燥させた。
【0083】
基体/接着剤複合体の製造に用いたテキスタイル基体を以下に記載する。
複合体2A:2/150/68ダンベリーテクスチャード加工100%ポリエステル糸、1/150/72 100%ポリエステル糸、および1/150/36 100%ポリエステル糸を含むダブルニット構造体;8.7オンス/ヤード2
複合体2B:単針ニット構造体:100%ポリエステルの1/150/34 糸;7.5オンス/ヤード2
複合体2C:斜紋織り構造体;3.30撚り倍数(twist multiple)を有する14/1開放端スパン65/35ポリエステル/木綿ステープル繊維の縦糸;3.25撚り倍数を有する12/1開放端スパン65/35ポリエステル/木綿ステープル繊維の横糸;8.5オンス/ ヤード2
複合体2D;リップストップ織り構造体;100%ナイロン(40デニール糸)
複合体2E:0.2デニール/フィラメントの平均フィラメントサイズを有するマイクロデニールに分割されている共役ポリエステル/ナイロン繊維を含んでなる水流交絡スパンボンド/スパンレース不織布;80g/m2
【0084】
複合体2Aおよび2Bのテキスタイル基体は自動車のボディクロスであり、接着剤の塗布に先立ち、難燃剤およびUV安定化剤で処理して引火性および耐光性要求を満たすように複合体の能力が強化されていた。
複合体2A−2Eを、これから論じる複合体4Cと記載される基体を用いて創出した試料と比較した。簡潔に述べると、複合体4Cは、No.40サイズのロッドを備える巻線ロッドコーターで背面にコートされた100%ポリエステルクロスハッチ織りテキスタイル基体である。
【0085】
複合体2A−2Eを前に概述される転球粘着および90°剥離強度試験を用いて試験した。データ表2に示されるそれらの結果を実施例4Cからのものと比較した。
【表2】

【0086】
テキスタイル基体の表面輪郭は転球粘着の結果に対する有意の影響を有するように思われる。この傾向は、接着剤を表面糸上に留めるのでなく基体の「谷」に押し込む傾向にある、用いた塗布方法に起因し得るものと考えられる。この結果は基体上での球の転がりが接触する接着剤を少なくし、したがって、さらに転がらせる(複合体2Cと4Cとの比較において立証される。複合体2Cはその斜紋織り構成によってより輪郭が強い。)。
【0087】
同様に、おそらくは、接着剤の局在化配置も複合体2A、2B、および2Cの剥離強度の低さの原因であり得る。これらのテキスタイル基体の輪郭は接着剤構成要素と壁との表面接触を少なくするようなものである。したがって、この基体/接着剤複合体は取り外すのに要する力が小さい。
(例えば、表面仕上げによる、もしくは様々な基体構成による)テキスタイル基体の表面輪郭の改変またはアドオンのレベルの増加は、各々、粘着および剥離強度の増加に寄与し得る。
【0088】
実施例3:異なる接着剤の効果
平織り100%ポリエステルテキスタイル基体を剥離/反撥配合物で処理し、実施例2と同様に転写印刷した。3種類の別々の接着剤を塗布した:
複合体3A:ROBOND(著作権)PS-8120 HVメタクリル系接着剤
複合体3B:MULTI-LOK(登録商標)38-454Aアクリル接着剤
複合体3C:NACOR(登録商標)72-8761酢酸ビニル接着剤。
【0089】
接着剤組成物をポリエステルテキスタイル基体の前面にNo.40巻線ロッドでコートし、オーブン内、121℃(250°F)で10分間乾燥させた。これらの試料を上述の層間剥離強度、90°剥離強度、および転球粘着について試験した。特に、90°剥離強度は未調製シートロックに貼付した試料について測定した。
【0090】
【表3】

これら結果は、特定の接着剤を選択することによる複合体の接着特性を改変する能力を示す。
【0091】
実施例4:異なる接着剤アドオンレベルの評価:市販製品との比較
2/150/36 100%ポリエステル糸から80端/インチで製造された縦糸および2/150/66 100%ポリエステル糸から50ピック/インチで製造された横糸を有する織物テキスタイル基体をクロスハッチ織り構成で形成した。用いられるポリエステル糸の両者は固有に難燃性である。基体重量は約5オンス/ヤード2であった。
【0092】
4種類のサイズの巻線ロッドコーターを用いた:No.22ロッド、No.30ロッド、No.40ロッド、およびNo.60ロッド。これらのロッドの各々によって製造された試料をそれぞれ4A、4B、4C、および4Dとして以下にさらに示す。
【0093】
データ表4−1は、これら4種類の試料に対して実施された、(a)接着剤アドオン量;(b)転球粘着;(c)90°剥離強度;および(d)層間剥離力を測定する一連の試験の結果を示す。これらの試験は上で概述される手順に従って実施した。
【表4−1】

【0094】
接着剤アドオンレベルは接着剤の塗布に用いられる塗布技術に依存して可変である。転球根着は3.7インチないしll.9インチの範囲であった。90°剥離強度は0.14 lbf/インチないし0.82 lbf/インチの範囲であった。層間剥離強度は0.81 lbf/インチないし1.05 lbf/インチの範囲であった。
【0095】
接着剤アドオンレベルが増加するに従って転球粘着は減少し、かつ90°剥離は増加する。これは、接着特性が接着剤アドオンを制御することによって合理的な範囲にわたって調整され、したがって、位置替え可能、除去可能な基体/接着剤複合体の創出を容易にし得ることを示す。
【0096】
さらに、4種類の試料の各々について層間剥離強度が90°剥離を上回るため、基体からそれが接着する表面への接着剤の著しい移動なしに、基体/接着剤複合体を表面から取り外すことが可能である。
【0097】
転球粘着および90°剥離強度は幾つかの市販の接着剤製品についても測定した:ダクトテープ(Henkel Consumer AdditivesがDuck(登録商標)ブランドで販売)、マスキングテープ(Anchor Continentalが「Anchor II Advanced Adhesives」の名称で販売)、および2種類の自己固着性壁紙縁(その第1はD.W. Wallcoveringが「SofTac Adhesive Border」の名称で販売し、その第2はImperial Home Decor Groupが「Stick'nPlay Self-Stick Activity Border」の名称で販売するものであった)。結果を下記データ表4−2に示す。
【表4−2】

【0098】
データ表4−1の例との転球粘着および90°剥離強度の比較は、本基体/接着剤複合体を他の市販製品のものに類似する特性を有するように加工できることを示す。
【0099】
実施例5:水蒸気透過
様々な壁被覆材の水蒸気透過性をASTM E 96-95によって試験した。この試験においては、水を充填したジャーの口を試験しようとする基体(もしくは、幾つかの場合において、基体/接着剤複合体)でしっかりと覆った。覆ったジャーを秤量した後、70°Fおよび相対湿度65%の一定湿度室内に24時間置いた。後に、ジャーを再秤量した。ジャーの口の面積で割った、初回および最終秤量の間の差が毎日の面積あたりの水蒸気透過を表す。
【0100】
4種類の基体/接着剤複合体を、様々なポリエステルテキスタイル基体および接着剤を用いて調製した。試料5Aは、0.5% ACRYSOL(著作権)ASE-60で濃厚化したROBOND(著作権)PS 8120 HV接着剤でコートされたジャガード織りテキスタイル基体であった。試料5Bは同じジャガード織りテキスタイル基体ではあるが、ここでは1.0% ACRYSOL(著作権)TT-615で濃厚化したNACOR(著作権)72-8761接着剤でコートされたものであった。試料5Cおよび5Dは0.5% ACRYSOL(著作権)ASE-60で濃厚化したROBOND(著作権)PS 8120 HV接着剤でコートされた平織りポリエステルテキスタイル基体であった。試料5Aないし5Dは実施例2の低表面エネルギー組成物で処理した。試料5Eは、蒸発ジャーの上に被覆を置かない試験対照であった。試料5Fは市販のビニル壁被覆材であった。試料5Gは、熱溶融接着剤を有する、実施例12と同じテキスタイル基体であった。試料5Hは試料5Aおよび5Bと同じテキスタイル基体を用いた;しかし、試料5Hは接着剤層を有していなかった。
【0101】
【表5】

【0102】
データによって示されるように、基体/接着剤複合体の水蒸気透過(すなわち、水分輸送)は市販のビニル壁被覆材よりも遙かに覆い。期待される利点は、壁張り用材の後ろに集まるあらゆる水を、ビニル壁被覆材の場合のように捕捉してカビの成長を促進し、壁被覆材と壁との間の接着を劣化させ、もしくは他の方法で望ましくない結果に寄与するのではなく、その壁張り用材を通して、および被覆材を通して移動させ得ることである。
【0103】
実施例6:層間剥離強度に対する異なる処理条件の効果
平織り100%ポリエステルテキスタイル基体を剥離/反撥配合物で処理し、実施例2と同様に転写印刷した。6種類の処理条件を、ROBOND(著作権)PS-8120 HVアクリルエマルジョン接着剤を用いて試験した。用いた処理条件は以下の通りである:
複合体6A:接着剤を塗布し、121°で10分間乾燥
複合体6B:接着剤を塗布し、室温で48時間乾燥
複合体6C:接着剤を塗布し、149°で10分間乾燥
複合体6D:接着剤を塗布し、室温で48時間乾燥させた後、121°に10分間加熱
複合体6E:米国特許第6,233,795号に従って前面を600グリットダイヤモンドロールを用いて24パス摩耗仕上げし、次いで接着剤を塗布して121°で10分間乾燥
複合体6F:米国特許第6,233,795号に従って前面を1200グリットダイヤモンドロールを用いて24パス摩耗仕上げし、次いで接着剤を塗布して121°で10分間乾燥
複合体6G:接着剤を塗布して121°で10分間乾燥させ、次いで転写印刷プレスにおいて400°Fで1分間加熱して転写印刷の効果を再生する。
【0104】
接着剤はNo.40巻線ロッドで塗布した。試料を実施例2と同様に層間剥離強度について試験し、それらの結果をデータ表6に記録する。
【表6】

【0105】
複合体6Aによって説明される初期設定処理条件の試験は、0.60の90°剥離強度で許容し得る接着剤性能を示した。
しかし、複合体6Bにおけるように風乾を用いたとき、下塗りした壁面に貼付した試料は泡を示し、そこでテキスタイル基体は接着剤層から層間剥離して取り外し後に壁上に残留物を残した。これは、接着剤の層間剥離強度の観点から、風乾複合体の剥離強度に近すぎるものと説明することができる。
様々な他の処理条件(複合体6Cないし6G)は、層間剥離と90°剥離強度との溝をさらに広げ、それにより使用中の接着剤の望ましくない層間剥離の機会が減少することを示している。
【0106】
接着剤を適切なレベルの剥離強度を有するように加工するとき、基体/接着剤複合体を貼付する表面の性質(すなわち、平滑性)を考慮することが重要である。表面の性質が接着剤結合の剥離強度に強く影響を及ぼすことが公知である。例えば、粗面、繊維状表面、もしくは疎水性表面は剥離強度を低下させ、それに対して滑らかな親水性表面は剥離強度を高める傾向にある。全ての場合において、複合体の層間剥離強度を剥離強度より高めることが望ましい。
この実施例の結果は、複合体を除去可能に接着させると思われる表面の特徴を仮定して、層間剥離強度を予期される剥離強度より十分に大きいままにすることを確実なものにするのに用いることができる処理条件を示す。
【0107】
実施例7:異なる接着剤添加物の効果
平織り100%ポリエステルテキスタイル基体を低表面エネルギー配合物で処理し、実施例2と同様に転写印刷した。8種類の接着剤組成物を、単一の接着剤添加物をROBOND(著作権)PS-8120 HVアクリルエマルジョン接着剤と組み合わせることによって製造した。用いた添加物は以下のものであった:
複合体7A:対照;添加物なし
複合体7B:1wt% UNIDYNE(登録商標)TG-992フルオロ化学薬品
複合体7C:5wt% ROVACE(登録商標)117硬化剤/脱粘着剤
複合体7D:10wt% ROVACE(登録商標)117硬化剤/脱粘着剤
複合体7E:1wt% RESIN MRX(登録商標)ブロックジイソシアネート架橋剤
複合体7F:1wt% SURFONYL(登録商標)PSA-336加湿剤
複合体7G:0.5wt% ACRYSOL(登録商標)ASE-60濃厚剤
複合体7H:1wt% ACRYSOL(登録商標)ASE-60濃厚剤。
【0108】
接着剤組成物をポリエステルテキスタイル基体の背面にNo.40巻線ロッドでコートし、オーブン内、121℃(250°F)で10分間乾燥させた。これらの試料を層間剥離強度、90°剥離強度、および転球粘着について実施例2と同様に試験した。特に、90°剥離強度は未調製壁張り用材に貼付した試料についてであった。
【表7】

【0109】
これらの試験は接着剤の賢明な使用によって接着剤特性を改変する能力を示す。特に、特定の組成物(7Fおよび7H)は、90°剥離強度に負の影響を及ぼすことなしに、接着剤の層間剥離強度を改善することが示された。
【0110】
実施例8:接着剤浸透深度の効果
ROBOND(著作権)PS-8120 HVアクリル感圧性接着剤中に1% ACRYSOL(登録商標)ASE-60濃厚剤を含有する接着剤組成物を、異なるタイプの疎水性表面を有する2種類の平織り100%ポリエステルテキスタイルに塗布した。複合体8Aのテキスタイル基体は実施例2と同様に調製した。複合体8Bのテキスタイル基体は実施例2と同じグレージ基体であるが、低表面エネルギー化学で処理されていなかった。
【0111】
接着剤組成物をテキスタイル基体の背面にNo.40巻線ロッドでコートした後、接着剤塗布基体をオーブン内、121℃(250°F)で10分間乾燥させて基体/接着剤複合体を創出した。複合体8Aおよび8Bを層間剥離強度について、前に説明される技術を用いて試験した。
【表8】

【0112】
複合体8Aにおいては、接着剤の大部分が個別の表面層として基体上に留まり、それに対して複合体8Bにおいては、接着剤の大部分が基体内に浸透した。基体内への接着剤のより多くの浸透はより大きな層間剥離強度を生じ、基体内への接着剤の浸透を増加させることによる層間剥離強度を改善する能力を示す。接着剤浸透の増加のさらなる観察される利点は、基体/接着剤複合体が切断端でほどける傾向の低下である。
【0113】
実施例9:加速エイジングの効果:本複合体と市販製品
この試験の組は、エイジングに耐える本基体/接着剤複合体の能力を決定するように設計された。比較のため、実施例4において用いたテキスタイル基体および壁紙縁も同じ試験条件に処して評価した。
【0114】
基体の背面に、幾つかの実験用巻線ロッドコーターのうちの1つを用いて、ROBOND(著作権)PS-8120 HV感圧性接着剤をコートした。3種類のサイズの巻線ロッドコーターを用いた:No.30ロッド、No.40ロッド、およびNo.50ロッド。これらのロッドの各々によって製造された試料をさらに以下で、それぞれ、9A、9B、および9Cとして識別する。次に、コートされた基体試料の各々を250°F、実験室規模Despatchオーブン内で乾燥させた。
【0115】
基体/接着剤複合体および2種類の壁紙縁を塗料下塗りシートロックに5ポンドローラーを用いて貼付した。これらの試料を貼付後24時間に90°剥離強度について試験した。複数の試料をASTM Test Method D-3611-89のプロセスを用いて同時にエイジングし、ここで、各々の5つの試料を240時間後に試験し、かつ各々の残りの5つの試料を480時間後に試験した。試験条件は相対湿度80%および150°Fの温度であった。加速エイジングの240時間および480時間後、試料を室温に平衡化し、90°剥離強度試験を実施した。平均化された結果をデータ表9に示す。
【表9】

【0116】
全ての試料が試験条件に晒した後にシートロックに固定されたままであり、これらの試料が5ないし10年の使用の間(それぞれ、240時間および480時間の加速エイジングによって表される)付着したままであろうことが示される。試験した全ての試料が、各々初回に行ったときよりも480時間の加速エイジングの後に取り外すのにより多くの力を必要とした。しかし、本開示の複合体は壁紙縁よりも長期の接着安定性があった。さらに、壁紙縁が剥離強度試験中に破壊されたのに対して、基体複合体の各々は裂けることなしに1枚単位で取り外された。
【0117】
ASTM Test Method D-3611-89を用いて実施された別の試行において、1インチ×40インチのおおよそのサイズを有する複合体9Bの帯を木製の1/4インチ径ジベルの周囲にきつく巻き付け、エイジングした。240時間および480時間の両者の後、複合体はそれ自他に接着することなく容易にほどけた。ほどけた複合体もその接着性を保持していた。
【0118】
実施例10:巻き上げに対する低表面エネルギー処理の効果
基体/接着剤複合体を巻き上げる能力に対する低表面エネルギー処理の効果を試験するため、以下の実験を実施した。
実施例6Aに従い、100%ポリエステル織物テキスタイル基体上にROBOND(著作権)PS-8120 HVアクリルエマルジョン接着剤を用いて基体/接着剤複合体を調製した。
【0119】
基体/接着剤複合体の2×6インチ帯を、一方(表面10A)が実施例2の剥離化学で処理され、一方(表面10B)が未処理である2種類の基体表面に接着した。これらの基体表面は他の点では同一であった。前の説明に従って90°剥離強度を測定し、複合体を基体表面から取り外すのに要する力の量を決定した(巻き上げ形態にある基体/接着剤組成物を模倣するように設計された)。それらの結果をデータ表10に示す。
【表10】

【0120】
両表面で、剥離強度は非テキスタイル表面(例えば、下塗りシートロック)から観察された90°剥離強度を大きく下回った。すなわち、疎水性表面が存在するこれらの事例において、自己剥離に要する力は基体/接着剤複合体を非テキスタイル基体から取り外すのに要する力を大きく下回る。これは設置中にほどくのが容易である製品に形を変える。
【0121】
実施例11:複合体におけるタフト処理テキスタイルの使用
複数のタフト処理されているオレフィン糸を不織基体全体にわたって含んでなるタフト処理テキスト基体(すなわち、カーペット基体)を用いて基体/接着剤複合体を創出した。この不織基体の背面上にポリウレタンフィルムがあり、それにはROBOND(著作権)PS-8120 HVアクリル感圧性接着剤が塗布されていた。タフト処理テキスタイル基体の重量は約0.83g/インチ2であった。このタフト処理機帯/接着剤複合体を垂直の壁面に接着したところ、層間剥離もしくは接着したままであることの不能性に関する問題は示さなかった。
【0122】
実施例12:熱可塑性熱溶融ポリマーの使用
Kimbrell, Jr.らの米国特許第6,541,402号の実施例に従って織物テキスタイル基体を調製した。その詳細を以下の通りである。150デニール縦糸を133端で、および690デニール(テクスチャード加工)横糸を45端で有する織物テキスタイル基体を溶液染色ナイロン糸(Cookson FibersからCamac(商標)の商品名で入手可能)からジャガード織機で形成し、100%ジャガード織りナイロン織物テキスタイル基体を得た。
【0123】
その後、未捺染のテキスタイル基体を洗浄した後、約1%〜40%(約6.6%が好ましい)のフルオロ化学物質、例えば、REPEARL(登録商標)F-8025;約0.5%〜5.0%(約3.0%が好ましい)のULTRA-FRESH NM(商標);および約0.05%〜1.0%(約1.0%が好ましい)のULTRA-FRESH 40(商標)(抗菌剤、両者ともThompson Researchから入手可能)を含有し、残部が水で構成される溶液を両側にパディングした。
【0124】
好ましい実施においてはこの溶液は抗菌性成分を含むが、所望であれば、これらのさらなる成分の1つ以上を除去できることは理解され、認められる。この調製溶液のパディング塗布に続いて、テキスタイル基体を約225°Fないし425°F(約350°Fが好ましい)の範囲内の温度で60秒間硬化させた。その後、フルオロ化学物質耐染み剤が塗布された織物テキスタイル基体を約90°Fないし410°F(約225°Fが好ましい)の範囲内の温度に加熱し、押出コーターに移した。
【0125】
当業者には理解されるように、押出コーティングは溶融フィルムをダイから押し出し、この溶融フィルムを2つの対向回転するロールに挟んだ状態での圧力の下でテキスタイル基体と接触させることを含む。好ましい実施によると、これらのロールの一方はチルロールであり、それがコートされている表面と接触するのに対して、他方のロールは変形可能なゴム材料で、それが未コートのままの側と接触していた。そのような構成の使用により、エチレン主鎖上に20%のMA置換を有する溶融エチレンメチルアクリレート(EMA)の層が広がり、フルオロ化学物質処理を受けているテキスタイル基体に圧入される。この溶融EMAは、好ましくは、約580°Fの温度で塗布され、それに対してチルロールは、好ましくは、約55°Fの温度で保持される。潜在的に好ましい(EMA)組成物の1つはオハイオ州CincinnatiのEquistar Chemicalsから入手可能なEMA 806-009であり、これはエラストマー成分を含む。
【0126】
製造操作のうちで必ず注入しなければならないものがワックスもしくはワックス様化学物資であり、これは、チルロールと接触するとき、EMAの剥離剤として作用するものである。したがって、そのような化学物質、例えば、Lonza ChemicalからのAcrawax(商標)は、剥離剤なしではチルロールと接触したままとなり、かつ押出機を「接着剤固定(gum up)」する、好ましいEMAの連続クリーン塗布を可能にする。基体自体のライン速度は、好ましくは、機会を通して毎分約100フィートである。この操作は、EMAコーティングがテキスタイル基体の糸を大表面積にわたって実質的に被覆包囲し、良好な機械的接着を促進する構成につながる。好ましい実施において、塗布される遮蔽層の総厚みは約1.00ないし5.00ミル、好ましくは約1.50ないし2.50ミル、最も好ましくは約1.75ないし2.25ミルである。
【0127】
得られた生成物は高度の染み反発性を有し、抗真菌および抗菌特性を有する。熱可塑性熱溶融ポリマーからなるポリマー接着剤層は室温では粘着性ではない。
この複合体の試料を、ナイロンテキスタイルに推奨される設定に設定されたSunbeamアイロンで、下塗りシートロック上にアイロンがけした。
90°剥離強度は、加熱後に取り外すとき、0.70 lbf/インチであり、これは表面に固定されたままであるのに十分な接着を示す。
【0128】
実施例13:湿度変動に対する安定性
湿度の変化に関する基体/接着剤複合体の安定性を調べた。0.5% Acrysol ASE-60で濃厚化されたROBOND(著作権)PS 8120 HV接着剤でコートされている2種類の異なるPETテキスタイル基体を用いて2種類の基体/接着剤複合体を調製した。試料13Aはジャガード織りであり、試料13Bは平織りであった。10枚の1×10インチ試験帯を各々の複合体で作製し、5 lbローラーで下塗り壁張り用材に貼付した。下塗りはZinsserによるShieldz Universal Pre-Wallcovering Primerであった。各々の複合体の5枚の試験帯を、室温で24時間調整した後、90°剥離強度について試験した。各々の複合体の残りの5枚の試験帯は湿度制御チャンバ内に入れ、温度および湿度サイクルに晒した。各サイクルは以下の表に記載されるように4種類の温度および相対湿度段階からなるものであった:
【表11】

【0129】
次に、試料を室温で24時間調整した後、90°剥離強度について試験した。それらの結果を下記表にまとめる。
【表12】

【0130】
これらの接着剤組成物は、加熱および湿度エイジングを受けた後、剥離強度が増加することが観察された。幾つかの場合において、特には試料13A試験帯において、試験中に壁張り用材の前面が剥離した。これは壁張り用材の未コート側が結露に晒されたことに起因し、実施においては予期されない様式での脆弱化につながる。
【図面の簡単な説明】
【0131】
【図1】図1は、テキスタイル基体14の前面上の低表面エネルギー層12および基体14の背面上の任意の下塗り16を示す、本明細書に記載したテキスタイル構造体の1つの実施形態の模式断面図である。接着剤層18は下塗り16に付けて示されるが、基体14の背面に直接付けることもできる。基体を通して水分を輸送することを可能にする隙間が基体および低表面エネルギー層中に存在するが、示されない。
【図2】図2は、テキスタイル基体22が低表面エネルギー糸(これは、固有にもしくは内因的に、低エネルギー表面である外面を有する(それにより、低エネルギー表面21を気体22の前面上に確立する)糸を意味する)を含んでなり、かつ接着剤層26を背面に坦持する、本明細書に記載したテキスタイル構造体の別の実施形態の模式断面図である。テキスタイル基体22と接着剤層26との間に位置する任意の下塗り24も示される。テキスタイルを通して水分を輸送することを可能にする基体中の隙間は、存在はするものの、示されない。
【0132】
【図3】図3は、テキスタイル基体34の前面上の低表面エネルギー層32を示す、本明細書に記載したテキスタイル構造体の別の実施形態の模式断面図である。テキスタイル基体34の背面上の下塗り層36も示される。テキスタイルを通して水分を輸送することを可能にする隙間が基体および低表面エネルギー層中に存在するが、示されない。
【図4】図4は、低エネルギー表面41、任意の下塗り層44、および接着剤層46、ならびに、接着剤層46の次に剥離紙48を有するテキスタイル基体42を示す、本明細書に記載したテキスタイル構造体のさらに別の実施形態の模式断面図である。
【0133】
【図5】図5は、個々の糸(例えば、51から55)の間の空間が誇張されている織物基体/接着剤複合体50の模式平面図である。基体50の前面上および基体50の背面上の低エネルギー層、および接着剤層ならびに接着剤層とテキスタイルの背面との間に位置する任意の下塗り層は、存在するものの、示されない。6-6で示される断面は図6Aおよび6Bにおいて示される。
【図6A】図6Aは、図5の基体/接着剤複合体の6-6線に沿って得られる、複合体が支持体表面に対して軽く圧縮されるときに示す模式断面図である。表面と接触する接着剤の領域がΔAに示される。
【図6B】図6Bも、図5の基体/接着剤複合体の6-6線に沿って得られる、複合体が支持体表面に対してしっかりと圧縮されるときに示す模式断面図である。表面と接触する接着剤の領域がΔBに示され、図6Aにおいて示される対応する領域ΔAと比較される。
【0134】
【図7A】図7Aは、隣り合わせて合致させる方式で設置される基体/接着剤複合体72のロールを用いる、壁70を被覆する一方法の模式図である。実施では、設置者は複合体72の一端を壁70の上端に配置し、複合体72を壁70に軽く張り付ける。次に、設置者は複合体72を広げて複合体72の広げられた部分を壁70に張り付け、必要に応じてカッター74で切断する。複合体72の一片が整合しないかもしれないが、必要に応じて、繰り返し位置替えするために容易に取り外すことができる。
【図7B】図7Bは、複合体76が、複合体76の隣接パネル間の継ぎ目を隠すために隣接するパネルの側端と適合もしくは整合するように設計された屈曲側端(ここでは円弧として示される)を有することを除いて、図7Aの方法の模式図である。矩形パネルが示されるものの、他の適切なサイズおよび形状のパネルが等しく良好に機能することに注意すべきである。
【図8】図8は、本明細書に記載した基体構造体もしくは基体/接着剤複合体の製造に用いることができる個別には通常の工程のプロセス工程図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前面および背面を有する透水性基体/接着剤複合体であって、該前面はテキスタイル基体を含み、該テキスタイル基体は糸および繊維からなる群より選択されるテキスタイル要素ならびに織物、ニット、不織布、タフト処理、および結合処理からなる群より選択される構造を含み、該前面は低エネルギー表面を含み、そして、該背面は感圧性接着剤を含む透水性基体/接着剤複合体。
【請求項2】
前面と背面との間に位置する下塗り層をさらに含む請求項1に記載の複合体。
【請求項3】
低エネルギー表面が、フルオロ化学物質、シリコーン、およびワックスからなる群より選択される少なくとも1つの組成物の実質的に非閉塞性の塗布によって達成される請求項1に記載の基体/接着剤複合体。
【請求項4】
低エネルギー表面および感圧性接着剤の組み合わせが、複合体の前面および背面が直接相互に接触させられるときの著しい自己接着を防止する請求項1に記載の基体/接着剤複合体。
【請求項5】
糸が、基体に組み込まれる前に低表面エネルギー糸である請求項1に記載の基体/接着剤複合体。
【請求項6】
テキスタイル要素が、木綿、レーヨン、ポリプロピレン、ポリエステル、ナイロン、アクリル、オレフィン、およびそれらの配合物からなる群より選択される請求項1に記載の基体/接着剤複合体。
【請求項7】
接着剤が剥離可能であり、かつ複合体をそれが貼付される表面から剥離可能にする請求項1に記載の基体/接着剤複合体。
【請求項8】
背面上の接着剤が、該接着剤と接触して、複合体の外面上に位置する剥離層を含む請求項1に記載の基体/接着剤複合体。
【請求項9】
剥離可能な接着剤がアクリレート系接着剤である請求項7に記載の基体/接着剤複合体。
【請求項10】
接着剤が非剥離可能である請求項1に記載の基体/接着剤複合体。
【請求項11】
硬化剤、結合剤、濃厚剤、染み除去剤、汚れ除去剤、殺生物剤、難燃剤、紫外線安定化剤、光触媒、酸化防止剤、着色料、潤滑剤、帯電防止剤、高周波遮蔽添加物、香料、臭気吸収剤、および臭気中和剤からなる群より選択される少なくとも1種類の添加物を含む請求項1に記載の基体/接着剤複合体。
【請求項12】
少なくとも1種類の添加物が、感圧性接着剤に組み込まれる請求項11に記載の基体/接着剤複合体。
【請求項13】
少なくとも1種類の添加物が前面に組み込まれる請求項11に記載の基体/接着剤複合体。
【請求項14】
下塗り層を含み、少なくとも1種類の添加物が該下塗り層に組み込まれる請求項11に記載の基体/接着剤複合体。
【請求項15】
表面に貼付されたときに、位置替え可能である請求項1に記載の基体/接着剤複合体。
【請求項16】
表面に貼付されたときに、複合体および支持体表面の両者を無傷に保ちながら支持体表面から取り外すことができる請求項1に記載の基体/接着剤複合体。
【請求項17】
表面に貼付されたときに、支持体表面上に残留物を残すことなしに支持体表面から取り外すことができる請求項1に記載の基体/接着剤複合体。
【請求項18】
表面に貼付されたときに、3インチないし12インチの転球粘着を示す請求項1に記載の基体/接着剤複合体。
【請求項19】
表面に貼付されたときに、0.10 lbf/インチないし1.00 lbf/インチの90°剥離強度を示す請求項1に記載の基体/接着剤複合体。
【請求項20】
表面に貼付されたときに、複合体の層間剥離強度よりも少なくとも0.20 lbf/インチ少ない90°剥離強度を示す請求項19に記載の基体/接着剤複合体。
【請求項21】
少なくとも1種類の染み除去組成物をさらに含む請求項1に記載の基体/接着剤複合体。
【請求項22】
少なくとも1種類の抗菌性化合物をさらに含む請求項1に記載の基体/接着剤複合体。
【請求項23】
少なくとも1種類の難燃性化合物をさらに含む請求項1に記載の基体/接着剤複合体。
【請求項24】
少なくとも1種類の硬化剤をさらに含む請求項1に記載の基体/接着剤複合体。
【請求項25】
少なくとも1種類の結合剤さらに含む請求項1に記載の基体/接着剤複合体。
【請求項26】
少なくとも1種類の着色料をさらに含む請求項1に記載の基体/接着剤複合体。
【請求項27】
テキスタイル基体が微小規模輪郭を有し、該基体の背面が感圧性接着剤を坦持し、該感圧性接着剤が該微小規模輪郭に実質的に一致し、かつ複合体を支持体表面に高い圧力で貼付したときに該支持体表面において該接着剤の高い表面積接触を与える請求項1に記載の基体/接着剤複合体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8】
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【公表番号】特表2007−533491(P2007−533491A)
【公表日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−508486(P2007−508486)
【出願日】平成17年4月13日(2005.4.13)
【国際出願番号】PCT/US2005/012466
【国際公開番号】WO2005/105429
【国際公開日】平成17年11月10日(2005.11.10)
【出願人】(599060788)ミリケン・アンド・カンパニー (65)
【氏名又は名称原語表記】Milliken & Company
【Fターム(参考)】