説明

テザークリップおよびそれを備えたガーニッシュ取付装置

【課題】横荷重がかかった時のテザー部の根もとにかかる負荷を低減できるテザークリップおよびそれを備えたガーニッシュ取付装置の提供。
【解決手段】テザークリップ10は、座部50と、座部50から立ち上がるテザー部20と、テザー部20につながるアンカー部30と、テザー部20の両側でテザー部20と同じ側に立ち上がる係合保持部40と、を備えている。テザー部20と係合保持部40とは係合保持部40の少なくとも先端部で互いに分離されている。テザー部20の厚みは係合保持部40の外形寸法より薄い。テザー部20の根もと20aにR部26が設けられる。ガーニッシュ取付装置70はテザークリップ10によってピラーに取り付けられる。この構造によって、テザー部20の根もと20aにかかる負荷が低減する。また、テザー部20と係合保持部40が変形し易すくなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テザークリップと、それを備えたガーニッシュ取付装置に関する。テザークリップとガーニッシュ取付装置とは、主要部が同一である。
【背景技術】
【0002】
特許文献1および図5、図6は従来のテザークリップを示している。
図5に示すように、従来のテザークリップ110は、テザー部120と、アンカー部130と、テザー部120の両側に位置する係合保持部140と、座部150と、を備えている。テザー部両側の係合保持部140を結ぶ方向と直交する方向を第1の方向D1とし、テザー部両側の係合保持部140を結ぶ方向(第1の方向と直交する方向)を第2の方向D2とし、第1、第2の方向と直交する方向を第3の方向D3とする。テザー部120は、座部150から座部150に直交する方向に立ち上がる断面が十字状または矩形状の柱122および柱122に接続して第1の方向D1に湾曲する湾曲部124を有する。アンカー部130は、テザー部120に接続する。係合保持部140は、座部150からテザー部120と同じ側に立ち上がる立上り部142と、立上り部142に接続し第1の方向D1に膨出する膨出部144とを有し、第1の方向D1に弾性変形可能である。テザー部120と係合保持部140とは少なくとも係合保持部140の膨出部144の先端の結合部200において互いに一体に結合している。
【0003】
図6に示すように、テザークリップ110は、ガーニッシュ係止孔188が形成された収納部を有するガーニッシュ180を車両のピラー(たとえば、フロントピラー)190に取り付けるのに用いられる。テザークリップ110がガーニッシュ180に装着された状態においては、テザー部120の柱122と係合保持部140の立上り部142はガーニッシュ係止孔188を挿通しており、柱122の第1の方向D1の幅と立上り部142の第1の方向D1の幅とは同じ幅で、柱122の第1の方向D1の側面および立上り部142の第1の方向D1の側面は、ガーニッシュ係止孔188の縁部側面に接触している。
【0004】
通常時には、係合保持部140の膨出部144と座部150との間にガーニッシュ180のガーニッシュ係止孔縁部を挟むことによって、第3の方向D3にガーニッシュ180とテザークリップ110とが係合している。カーテンエアバッグ100の展開時には、展開するカーテンエアバッグ100によりガーニッシュ180が第1、第3の方向D1、D3の合成方向に押されてピラー190から離れる方向に途中まで開いた状態で、アンカー部130がガーニッシュ係止孔縁部に係合することによりガーニッシュ180の飛散が防止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−98986号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、従来のテザークリップ110にはつぎの課題がある。
(a)テザー部120と係合保持部140とが結合部200で互いに一体に結合しているため、カーテンエアバッグ展開初期にガーニッシュ係止孔188からテザークリップ110に第1の方向D1にまたは座部150から離れる第3の方向D3に負荷がかかった時に、ガーニッシュ係止孔188からテザー部120に負荷が入るのみでなく、係合保持部140からも結合部200を通してテザー部120に負荷が入り、テザー部120の根もと120aにかかる負荷が大きくなる。
【0007】
(b)テザー部120と係合保持部140とが結合部200でつながっているため、係合保持部140とテザー部120の変形が妨げられる。
【0008】
(b−1)その結果、カーテンエアバッグ展開初期にテザー部の根もとに応力集中が生じやすい。
【0009】
(b−2)また、係合保持部140も変形し難いため、カーテンエアバッグ展開初期にガーニッシュ係止孔188が係合保持部140の膨出部144を通り抜け難くガーニッシュ180が開き難い。
【0010】
(b−3)ガーニッシュ180の収納部184内の空間部は、スペースからの制約上、広くとれないことが多い。一方、テザー部120の長さが長ければカーテンエアバッグ展開初期のガーニッシュ180の開口量が大きくなり、カーテンエアバッグ100がピラー190とガーニッシュ180の幅方向端部との間の開口を通して車両室内に展開し易くなる。このため、テザー部120を収納部184内で曲げてテザー部120の長さを確保しているが、収納部184はテザー部120の根もと側ほどスペース制約上狭い。そのため、第1の方向D1に変形し難いテザー部120やアンカー部130は、収納部184の内壁面と接触、干渉して、摺動抵抗が大きくなる。その結果、カーテンエアバッグ100の展開初期におけるガーニッシュ180を開き難くし、また、テザークリップ110の組み付け、取り外しを困難にしている。
【0011】
(c)テザー部120とガーニッシュ係止孔188の縁部との間に第1の方向D1に隙が無いため、カーテンエアバッグ展開初期にガーニッシュ180からの負荷が係合保持部140と同じタイミングでテザー部120に入る。また、テザー部120の柱122は第1の方向D1にガーニッシュ係止孔188の幅と同じ寸法を有し弾性変形し難いので、テザー部120の根もと120aに負荷が偏って入り易い。
【0012】
本発明の目的は、横荷重がかかった時のテザー部の根もとにかかる負荷を低減してテザー部の根もとでの破断を抑制または防止できる、テザークリップおよびそれを備えたガーニッシュ取付装置を提供することにある。
【0013】
本発明の副目的は、横荷重がかかった時のテザー部の根もとにかかる負荷を低減してテザー部の根もとでの破断を抑制または防止でき、かつテザー部および係合保持部を従来のテザークリップにおけるテザー部および係合保持部より変形し易くできる、テザークリップおよびそれを備えたガーニッシュ取付装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
(1)上記課題を解決する本発明のテザークリップは、
座部と、
座部から立ち上がるテザー部と、
テザー部の座部と反対側の端部に接続するアンカー部と、
テザー部の両側に位置し座部からテザー部と同じ側に立ち上がる係合保持部と、
を備えている。
テザー部と係合保持部との間には、テザークリップがテザー部の両側の係合保持部を結ぶ方向と直交する第1の方向に荷重を受けた時に、テザー部と係合保持部が互いに独立して動くことを促進する独立化促進構造が設けられている。
【0015】
(2)上記(1)のテザークリップにおいて、独立化促進構造が、テザー部と係合保持部の少なくとも先端部との間に設けられた隙間からなる。
【0016】
(3)上記(1)または(2)のテザークリップにおいて、独立化促進構造が、係合保持部の全長にわたってテザー部と係合保持部との間に設けられた隙間からなる。
【0017】
(4)上記(1)のテザークリップにおいて、独立化促進構造が、テザークリップが荷重を受けた時に破断する脆弱部を有し、テザー部と係合保持部とをつなぐ連結部からなる。
【0018】
(5)上記(1)−(4)の何れか1つのテザークリップにおいて、テザー部は座部に直交する方向に立ち上がる。
係合保持部は、テザー部の両側で座部から立ち上がる立上り部と、立上り部に接続し第1の方向に膨出する膨出部とを有し、膨出部部は第1の方向に弾性変形可能である。
【0019】
(6)上記(1)−(5)の何れか1つのテザークリップにおいて、テザー部は、座部に直交する方向に立ち上がり直線状に延びる直線状部と、直線状部に接続する湾曲部とを有する。
【0020】
(7)上記(1)−(6)の何れか1つのテザークリップにおいて、テザー部は、座部に直交する方向に立ち上がり直線状に延びる直線状部を有し、係合保持部は、テザー部の両側で座部から立ち上がる立上り部を有する。
第1の方向における直線状部の厚みは、係合保持部の立上り部の第1の方向における外形寸法より薄い。
【0021】
(8)上記(1)−(7)の何れか1つのテザークリップにおいて、テザー部は、座部に直交する方向に立ち上がり直線状に延びる直線状部を有する。テザー部の直線状部の根もとに、第1の方向に湾曲するR部が形成されている。
【0022】
(9)上記課題を解決する本発明のガーニッシュ取付装置は、
ガーニッシュ係止孔が形成された収納部を有するガーニッシュと、
車両のピラーと、
ガーニッシュとピラーとの間で収納部の一側に配置されるカーテンエアバッグと、
ガーニッシュを車両のピラーに取り付ける上記(1)−(8)の何れか1つのテザークリップと、を備えている。
係合保持部は第1の方向に膨出する膨出部を有する。
通常時には、膨出部がガーニッシュ係止孔の縁部に係止して座部との間にガーニッシュ係止孔の縁部を保持し、カーテンエアバッグの展開初期には、ガーニシュが途中まで開いた状態でガーニッシュの飛散を防止するようにアンカー部がガーニッシュ係止孔の縁部に当たった状態となる。
【0023】
(10)上記(9)のガーニッシュ取付装置において、
テザークリップの第1の方向はガーニッシュの幅方向に向けられており、テザークリップの第1の方向と直交する第2の方向はガーニッシュの長手方向に向けられている。
ガーニッシュ係止孔は矩形状孔であり、ガーニッシュ係止孔の短辺方向はテザークリップの第1の方向に向けられている。
【発明の効果】
【0024】
上記(1)−(6)の何れか1つのテザークリップによれば、つぎの効果が得られる。テザー部と係合保持部とが互いに分離しているので、係合保持部に荷重がかかった時における係合保持部からテザー部への負荷が無くなり、テザー部の根もとにかかる負荷が低減してテザー部の根もとでの破断が抑制または防止される。
また、テザー部と係合保持部とは、互いに分離しているため、互いに独立して変形可能である。そのため、テザー部と係合保持部の双方が従来のテザークリップのテザー部と係合保持部に比べて撓みやすくなる。
【0025】
上記(7)のテザークリップによれば、つぎの効果が得られる。
第1の方向におけるテザー部の厚みを係合保持部の厚みより薄くした場合、被装着物の、テザー部が挿通する係止孔の縁部とテザー部の直線状部との間に、第1の方向に隙間ができる。係合保持部の立上り部と係止孔の縁部との間には、係止孔の縁部とテザー部の直線状部との間の隙間ほど大きな隙間がないか、または隙間がない。その結果、被装着物がテザークリップに対しストロークしてテザークリップが被装着物から第1の方向に荷重を受けた時に、テザー部に負荷が加わるタイミングが係合保持部に負荷が加わるタイミングより被装着物が隙間をストロークする時間分遅れる。しかも、隙間をストロークする間に係合保持部が変形してテザークリップにかかる第1の方向の荷重が低減される。このため、テザー部にかかる負荷が低減する。これによっても、テザー部の根もとでの破断がより一層抑制される。
【0026】
上記(8)のテザークリップによれば、つぎの効果が得られる。
テザー部の根もとにR部が形成された場合、テザークリップが第1の方向に荷重を受けた時に、テザー部の根もとへの応力集中が緩和される。これによっても、テザー部の根もとでの破断が抑制される。
また、テザークリップが装着される被装着物の、テザー部が挿通する係止孔の縁部が第1の方向に移動してR部に乗り上げ、係止孔の周縁部がテザークリップから外れる方向の分力を発生でき、被装着物のテザークリップからの抜去性を改善できる。
【0027】
上記(9)または(10)のガーニッシュ取付装置によれば、つぎの効果が得られる。テザー部と係合保持部とが互いに分離しているので、ガーニッシュ展開時において係合保持部からテザー部への負荷が無くなり、テザー部の根もとにかかる負荷が低減してテザー部の根もとでの破断が抑制され、ガーニッシュの飛散が防止される。
また、テザー部と係合保持部とが互いに独立して変形可能であるため、テザー部と係合保持部の双方が従来のテザークリップのテザー部と係合保持部に比べて撓みやすくなる。その結果、カーテンエアバッグ展開時においてテザー部の根もとに応力集中が生じることが抑制され、テザー部の破断が抑制される。また、カーテンエアバッグ展開初期のガーニッシュの破損を防止または抑制できる。また、ガーニッシュのテザークリップからの抜去性が改善され、ガーニッシュが早期に展開可能となる。また、サービス時におけるガーニッシュのテザークリップからの取り外しおよびガーニッシュのテザークリップへの組み付けが容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の実施例に係る単品状態のテザークリップの斜視図である。
【図2】図1のテザークリップを被装着物(たとえばガーニッシュ)に取り付け、それをピラーに取り付けた状態における、テザークリップおよびガーニッシュ取付装置の断面図である。
【図3】図1のテザークリップを第1の方向D1から見たテザークリップの正面図である。
【図4】カーテンエアバッグ展開初期における、テザークリップにかかる荷重Fの第1の方向D1の成分F1とテザークリップが取り付けられる被装着物(たとえばガーニッシュ)のテザークリップに対する第1の方向のストロークSとの関係の傾向を示す荷重−ストローク線図であり、実線は本発明の場合を、二点鎖線は図5および図6の場合を示す。
【図5】従来の単品状態のテザークリップの図1に対応する斜視図である。
【図6】図5のテザークリップをガーニッシュに取り付けた状態における、テザークリップおよびガーニッシュの、図2に対応する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明の実施例に係るテザークリップ10とそれを備えた本発明の実施例に係るガーニッシュ取付装置70を、図1−図4を参照して説明する。
【0030】
まず、単品のテザークリップ10の構成を説明する。
テザークリップ10は、弾性を有する樹脂材からなる。図1に示すように、テザークリップ10は、テザー部20と、アンカー部30と、テザー部20の両側に設けられた係合保持部40と、座部50と、を備えている。さらに、テザークリップ10は、ボデー取付部60を備えている。テザークリップ10に対し、第1の方向D1と、第1の方向と直交する第2の方向D2と、第1、第2の方向と直交する第3の方向D3が、設定される。第1の方向D1は一対の係合保持部40を結ぶ方向と直交する方向であり、第2の方向D2は一対の係合保持部40を結ぶ方向である。第1、第2の方向D1、D2は、座部50と平行である。
【0031】
図1に示すように、座部50は厚みをもつほぼ矩形状の平板からなる。座部50のほぼ矩形状の短辺は第1の方向D1に向けられており、座部50の長辺は第2の方向D2に向けられている。座部50の厚み方向は第3の方向D3に向けられている。
【0032】
図1−図3に示すように、テザー部20は、座部50から第3の方向D3に立ち上がり直線状に延びる直線状部22と、直線状部22の座部50と反対側の端部に接続し第1の方向D1に湾曲する湾曲部24とを有する。直線状部22と湾曲部24の、テザー部20の長手方向と直交する方向に切断して見た断面は矩形状である。直線状部22は第1の方向D1に厚みを有し、第2の方向D2に幅を有する。直線状部22の厚みは直線状部22の幅の寸法より薄い。湾曲部24の幅方向は直線状部22の幅方向と同じ方向を向いており、湾曲部24の厚み方向は湾曲部24の幅方向と直交している。湾曲部24の厚みは直線状部22の厚みと同じかまたはほぼ同じであり、湾曲部24の幅は直線状部22の幅と同じかそれ以上である。
【0033】
図1、図2に示すように、アンカー部30は、テザー部20の座部50と反対側の端部に、すなわち、湾曲部24の直線状部22と反対側の端部に、接続している。アンカー部30は、第2の方向D2に幅を有し、幅と直交する方向に厚みを有する。アンカー部30は第2の方向D2から見た時に、湾曲部24に接続する側の端部から反対側の端部に向かって徐々に拡大する銀杏の葉の形状を有する。アンカー部30の厚みは銀杏の葉の先端に近づくにつれて拡大している。アンカー部30の幅は、テザー部20の直線状部22の幅と同じか、またはほぼ同じである。
【0034】
図1、図2に示すように、係合保持部40は、テザー部20の第2の方向D2における両側に位置し一対設けられる。係合保持部40は、座部50からテザー部20と同じ側に立ち上がる立上り部42と、立上り部42に接続し第1の方向D1に膨出する膨出部44とを有する。係合保持部40は第1の方向D1に弾性変形可能である。
【0035】
図1に示すように、各係合保持部40は、第2の方向D2から見た時に、係合保持部40の第1の方向D1の中央部で座部50から第3の方向D3に直線状に立ち上がる直線状の中央壁46と、中央壁46の第1の方向D1における左右両側で座部50から第3の方向D3に延び途中で中央壁46から離れる方向に屈曲突出し先端で中央壁46に近づいて中央壁46と結合する屈曲壁48とを有する。中央壁46と左右の屈曲壁48との間は先端の結合部を除き空間である。左右の屈曲壁48が中央壁46と反対側から第1の方向D1に押されると、屈曲壁48は中央壁46側に弾性変形可能である。
【0036】
図3に示すように、テザー部20と係合保持部40との間には、テザークリップ10が第1の方向D1に荷重を受けた時に、テザー部20と係合保持部40が互いに独立して動くことを促進する独立化促進構造cが設けられている。
【0037】
独立化促進構造cは、テザー部20と係合保持部40の少なくとも先端部(係合保持部40の高さの中央点より先端側の部分)との間に設けられた隙間cからなる。係合保持部40の座部50側の根もとでは、テザー部20と係合保持部40との間に隙間cはなくてもよい。
独立化促進構造cの隙間cは、係合保持部40の全長にわたってテザー部20と係合保持部40との間に設けられることが望ましい。
独立化促進構造cは、テザークリップ10が荷重を受けた時に破断する脆弱部を有しテザー部と係合保持部とをつなぐ連結部cから構成されてもよい。連結部cの脆弱部は、薄肉部またはノッチから構成される。
【0038】
図3の例では、独立化促進構造cがテザー部20と係合保持部40の間に第2の方向D2に設けられた隙間cからなる。隙間cは係合保持部40の第1の方向D1の全長にわたって第1の方向D1に延びる。この隙間cによって、テザー部20と係合保持部40とは、係合保持部40の第3の方向D3における全長にわたって互いに分離されている。
図3の例では、テザー部20と係合保持部40は、各々、座部50につながっているだけで、テザー部20と係合保持部40とは、座部50から立ち上がった後は互いにつながっておらず、互いに独立して弾性変形可能である。
【0039】
テザークリップ10は以下の構造をとってもよい。
まず、図1、図2に示すように、テザー部20の直線状部22の第1の方向D1における厚みは係合保持部40の立上り部42の第1の方向D1における外形寸法(立上り部42での左右の屈曲壁48の外面間距離)より薄い。
【0040】
図2は、テザークリップ10が装着される被装着物であるフロントピラーガーニッシュ80の係止孔88部位にテザークリップ10が装着され、ガーニッシュ80がフロントピラー90に取り付けられた状態を示す。図2に示すように、テザー部20の直線状部22と係止孔88の縁部との間には、直線状部22の両側に、第1の方向D1に隙間dが存在する。テザー部20の直線状部22の厚みは係合保持部40の立上り部42の第1の方向D1における外形寸法より2dだけ薄い。係合保持部40と係止孔88の縁部との間には第1の方向D1に隙間dほど大きな隙間が無いか、または隙間が無い。
【0041】
また、テザー部20の直線状部22の根もと20aに、表面が第1の方向D1に湾曲するまるみ部(以下、「R部」という)26が形成されている。R部26は座部50に近づくにつれて直線状部22の第1の方向D1の厚みを増大させる側に湾曲する。R部26の半径の寸法は望ましくは隙間dの寸法に等しい。
【0042】
ボデー取付部60は、座部50と直交する第3の方向に、座部50からテザー部20の直線状部22の立ち上がり方向と反対側に延びる。ボデー取付部60は、ボデー取付部60の軸芯と直交する断面において、円形状の外面をもつ。
【0043】
ボデー取付部60は、第1の方向D1における両側に一対のアーム62を有する。アーム62は、一端部でボデー取付部60に接続されこの一端部を除いてボデー取付部60から切り離され、ボデー取付部60の円形状外面に対し半径方向に弾性変形可能である。アーム62には、アーム62のボデー取付部60に接続する側の一端部から座部50側に隔たった位置にボデー係止爪64が形成されている。アーム62には、ボデー係止爪64より座部50側に隔たった位置にボデー係止爪64をボデー取付部60の軸直交方向に変位させる爪操作部66が形成されている。
ボデー取付部60は、ボデー係止爪64より座部50側に隔たった位置にボデー取付部60の外面から半径方向外側に延びボデー取付部60の軸方向に弾性変形可能な襟部68を有している。
【0044】
つぎに、本発明のガーニッシュ取付装置70の構成を説明する。
ガーニッシュ取付装置70は、ガーニッシュ係止孔88を有するガーニッシュ80と、車両のピラー90と、ガーニッシュ80をピラー90に取り付けるテザークリップ10と、を備えている。ガーニッシュ取付装置70に用いられるテザークリップ10は、上述の単品のテザークリップ10と同じ構成を有する。
ガーニッシュ80はフロントピラーガーニッシュであり、係止孔88はガーニッシュ係止孔であり、ピラー90はフロントピラーである。ガーニッシュ80はその長手方向をピラー90の長手方向に向けてピラー90に取付けられる。
【0045】
テザークリップ10がガーニッシュ80に装着された状態では、テザークリップ10の第1の方向D1はガーニッシュ80の幅方向に向けられており、テザークリップ10の第2の方向D2はガーニッシュ80の長手方向に向けられており、テザークリップ10の第3の方向D3は座部50と直交する方向でピラー90から車室側に離れる方向に向けられている。矩形状のガーニッシュ係止孔88の短辺方向とテザークリップ10の第1の方向D1を一致させる。
【0046】
ガーニッシュ80は、一般部82と一般部82の背面に形成された収納部84を有する。収納部84はガーニッシュ80の長手方向に1箇所または複数箇所形成され、テザー部20およびアンカー部30を収納する。収納部84は、ガーニッシュ80の一般部82から背面側に隔たった底壁部86と、底壁部86と一般部82との間にわたって延びる3つの側壁を有する。底壁部86にはガーニッシュ係止孔88が形成されている。ガーニッシュ係止孔88は矩形状の貫通孔で、長辺方向がガーニッシュ長手方向に向けられており、短辺方向がガーニッシュ幅方向に向けられている。
【0047】
テザークリップ10がガーニッシュ80に装着された状態では、テザー部20の直線状部24と係合保持部40の立上り部42はガーニッシュ係止孔88を挿通しており、テザー部20の湾曲部24とアンカー部30は収納部84内に収納されている。アンカー部30をガーニッシュ係止孔88に挿通する時にはアンカー部30の銀杏形状の長手方向をガーニッシュ係止孔88の長辺方向に合わせ、アンカー部30が収納部84内に入った後90度回転させて、ガーニッシュ係止孔88の短辺方向をテザークリップ10の第1の方向D1と一致させる。この状態でテザークリップ10を座部50が底壁部86外面に密着するまで押し込む。底壁部86のガーニッシュ係止孔88の縁部がテザークリップ10の座部50と係合保持部40の膨出部44との間に保持される。
【0048】
ガーニッシュ80の背面側空間には収納部84より車室側にカーテンエアバッグ100が配置される。カーテンエアバッグ100は展開方向にガーニッシュ80に荷重Fをかける。
【0049】
ピラー90は、インナーパネル92、リインホースメント94、アウターパネル96を有する。インナーパネル92には円形のボデー係止孔98が形成されており、そこにテザークリップ10が装着されたガーニッシュ80がテザークリップ10にて取り付けられる。ガーニッシュ80を車両のピラー90に取り付けた状態では、テザークリップ10のボデー取付部60はボデー係止孔98を挿通してピラー90内に延びる。ボデー取付部60がボデー係止孔98を挿通する時には、ボデー係止爪64はボデー係止孔98の縁部によって押されて後退し、挿通後弾性で元の位置に復帰する。復帰後は、ボデー係止孔98の縁部はボデー係止爪64と襟部68との間に挟まれる。
【0050】
カーテンエアバッグ100が展開されない通常時には、テザークリップ10の膨出部44がガーニッシュ係止孔88の縁部に係止して座部50との間にガーニッシュ係止孔88の縁部を保持している。カーテンエアバッグ100の展開初期には、ガーニシュ80が途中まで開いた段階でアンカー部30がガーニッシュ係止孔88の縁部に当たってそれ以上のガーニッシュ80のピラー90から離れる方向の移動を止め、ガーニッシュ80の飛散を防止する。ガーニシュ80が途中まで開いた状態におけるガーニシュ80の幅方向車室側端部とピラー90との間の隙間を通して、カーテンエアバッグ100が車室側に展開する。図2において、2点鎖線で示したカーテンエアバッグ100は展開状態を示す。
【0051】
テザー部20と係合保持部40とがテザークリップ10の単品状態で第2の方向D2に互いに分離されているため、テザークリップ10がガーニッシュ80に装着された状態では、テザー部20と係合保持部40とはガーニッシュ20の長手方向に互いに分離されている。
【0052】
また、テザー部20の直線状部22とガーニッシュ係止孔88の縁部との間に、テザークリップ10の単品状態でテザークリップ10の第1の方向D1に隙間dが存在するため、テザークリップ10がガーニッシュ80に装着された状態では、テザー部20の直線状部22とガーニッシュ係止孔88の縁部との間に、ガーニッシュ20の幅方向に隙間dが存在する。係合保持部40の立上り部42とガーニッシュ係止孔88の縁部との間には、ガーニッシュ20の幅方向に、テザー部20の直線状部22とガーニッシュ係止孔88の縁部との間の隙間dほど大きな隙間は存在しないか、または存在しない。
【0053】
また、テザー部20の根もとにテザークリップ10の単品状態で第1の方向D1に湾曲するR部26が設けられているため、テザークリップ10がガーニッシュ80に装着された状態では、テザー部20の根もとにガーニッシュ幅方向に湾曲するR部26が存在する。
【0054】
つぎに、単品のテザークリップ10の作用、効果を説明する。
テザー部20および係合保持部40に、第1の方向D1に荷重F1がかかった場合を説明する。
テザー部20と係合保持部40とが互いに分離しているので、係合保持部40に第1の方向D1に荷重F1がかかった時における係合保持部40からテザー部20への負荷が無くなる。そのため、テザー部20の根もと20aにかかる負荷が従来のテザー部根もと120aにかかる負荷に比べて低減し、テザー部20の根もと20aでの破断が抑制または防止される。
【0055】
また、テザー部20と係合保持部40とは互いに分離しているため、互いに独立して第1の方向D1に変形可能である。そのため、テザー部20と係合保持部40の双方が従来のテザークリップ110のテザー部120と係合保持部140に比べて撓みやすくなる。
【0056】
テザー部20の根もと20aに応力集中が生じることが抑制され、テザー部20の破断が抑制される。図4の荷重−ストローク線図において、本発明の荷重の立ち上がり勾配が従来に比べて小さいのは、テザー部20への荷重の偏りが抑制されることを示している。
【0057】
また、係合保持部40の膨出部44が弾性変形して後退し易くなるので、テザークリップ10が装着される被装着物(たとえば、ガーニッシュ)80の係合保持部44からの抜去性を改善でき、被装着物が外れやすくなる。
【0058】
また、テザー部20およびアンカー部30と、これらを収納する収納部84の内壁面との摺動抵抗を低減できる。そのため、被装着物80の係合保持部44からの抜去性を改善でき、被装着物が開きやすくなる。また、テザークリップ10からの被装着物80の取り外し、取り付けが容易になる。
【0059】
また、第1の方向D1におけるテザー部20の直線状部22の厚みを係合保持部40の立上り部42の厚みより薄くした場合は、テザークリップ10が装着される被装着物80の係止孔88の縁部とテザー部20の直線状部22との間に、第1の方向D1に隙間dを形成することができる。係合保持部40の立上り部42と係止孔88の縁部との間には、隙間dほど大きな隙間がないか、または隙間がない。カーテンエアバッグ100の展開初期に被装着物80がテザークリップ10に対し、第1の方向D1にストロークしてテザークリップ10が被装着物80から第1の方向D1に荷重を受ける。この時、隙間dが存在するため、テザー部20に荷重が加わるタイミングが係合保持部40に荷重が加わるタイミングより被装着物80が隙間dをストロークする時間分遅れる(図4参照)。また、隙間dをストロークする間に係合保持部40が変形してテザークリップ10にかかる第1の方向D1の負荷F1が低減されるので、テザー部20にかかった時の負荷F1が低減する。これによっても、テザー部20の根もと20aでの破断がより一層抑制される。
【0060】
また、テザー部20の根もと20aにR部26が形成されている場合は、テザークリップ10が第1の方向D1に荷重を受けた時に、テザー部20の根もと20aへの応力集中が緩和され、かつ、テザー部20の根もと20aの寸法が増大して根もと20aにおける応力の値が低下する。これによっても、テザー部20の根もと20aでの破断が抑制される。また、テザークリップ10が装着される被装着物80の係止孔88の縁部が第1の方向D1に移動してR部26に乗り上げ、係止孔88の縁部がテザークリップ10から外れる方向の分力が発生する。これによっても、被装着物80のテザークリップ10からの抜去性を改善できる。
【0061】
つぎに、ガーニッシュ取付装置70の作用、効果を説明する。
車両の側面衝突またはロールオーバ時にカーテンエアバッグ100が展開される。カーテンエアバッグ100の展開初期には、カーテンエアバッグ100は展開方向に荷重Fをガーニッシュ80にかける。この時、荷重Fのうち第1の方向D1の荷重成分F1はガーニッシュ係止孔88の縁部からテザークリップ10にかかる。また、荷重Fのうち第3の方向D3の荷重成分F3によってガーニッシュ80は第3の方向D3に移動する。
【0062】
ガーニッシュ80からテザークリップ10に第1の方向D1に荷重F1または第3の方向D3に荷重F3がかかっても、テザー部20と係合保持部40とが互いに分離しているので、係合保持部40からテザー部20への負荷が無くなり、テザー部20の根もと20aでの破断が抑制され、ガーニッシュ80の飛散が防止される。
【0063】
また、テザー部20と係合保持部40とが分離しているため、テザー部20と係合保持部40の双方が従来に比べて撓みやすくなる。
その結果、テザー部20の根もと20aに応力集中が生じることが抑制され、テザー部20の破断が一層抑制される。また、ガーニッシュ80のテザークリップ10からの抜去性が改善され、ガーニッシュ80が早期に展開可能となる。また、テザー部20およびアンカー部30とガーニッシュ80の収納部内壁面との摺動抵抗が低減され、ガーニッシュ80の抜去性が一層改善され、かつ、ガーニッシュ80のテザークリップ10からの取り外しおよびガーニッシュ80のテザークリップ10への組み付けが容易になる。
【0064】
また、第3の方向D3の荷重成分F3によってガーニッシュ80が第3の方向D3に移動していく時、アンカー部30がガーニッシュ係止孔88の縁部に当たってガーニッシュ80の第3の方向D3への移動が止まり、飛散が防止されたままガーニッシュ80は半開き状態となる。この時ガーニッシュ80の幅方向端部とピラー90との間に隙間が形成され、この隙間を通ってカーテンエアバッグ100は車室内へと展開でき、乗員を保護する。
【符号の説明】
【0065】
10 テザークリップ
20 テザー部
20a 根もと
22 直線状部
24 湾曲部
26 R部
30 アンカー部
40 係合保持部
42 立上り部
44 膨出部
50 座部
70 ガーニッシュ取付装置
80 フロントピラーガーニッシュ(ガーニッシュ)
82 一般部
84 収納部
86 底壁部
88 ガーニッシュ係止孔(係止孔)
90 フロントピラー(ピラー)
100 カーテンエアバッグ
D1 第1の方向
D2 第2の方向
D3 第3の方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
座部と、
該座部から立ち上がるテザー部と、
該テザー部の座部と反対側の端部に接続するアンカー部と、
前記テザー部の両側に位置し前記座部から前記テザー部と同じ側に立ち上がる係合保持部と、
を備えたテザークリップであって、
前記テザー部と前記係合保持部との間には、前記テザークリップが前記テザー部の両側の係合保持部を結ぶ方向と直交する第1の方向に荷重を受けた時に、前記テザー部と前記係合保持部が互いに独立して動くことを促進する独立化促進構造が設けられている、テザークリップ。
【請求項2】
前記独立化促進構造が、前記テザー部と前記係合保持部の少なくとも先端部との間に設けられた隙間からなる請求項1記載のテザークリップ。
【請求項3】
前記独立化促進構造が、前記係合保持部の全長にわたって前記テザー部と前記係合保持部との間に設けられた隙間からなる請求項1または請求項2記載のテザークリップ。
【請求項4】
前記独立化促進構造が、前記テザークリップが荷重を受けた時に破断する脆弱部を有し、前記テザー部と前記係合保持部とをつなぐ連結部からなる請求項1記載のテザークリップ。
【請求項5】
前記テザー部は前記座部に直交する方向に立ち上がり、
前記係合保持部は、前記テザー部の両側で前記座部から立ち上がる立上り部と、該立上り部に接続し前記テザー部両側の係合保持部を結ぶ方向と直交する第1の方向に膨出する膨出部とを有し、前記膨出部部は前記第1の方向に弾性変形可能である、
請求項1−請求項4の何れか1項に記載のテザークリップ。
【請求項6】
前記テザー部は、前記座部に直交する方向に立ち上がり直線状に延びる直線状部と、該直線状部に接続する湾曲部とを有する
請求項1−請求項5の何れか1項に記載のテザークリップ。
【請求項7】
前記テザー部は、前記座部に直交する方向に立ち上がり直線状に延びる直線状部を有し、
前記係合保持部は、前記テザー部の両側で前記座部から立ち上がる立上り部を有し、
前記第1の方向における前記直線状部の厚みは、前記係合保持部の前記立上り部の前記第1の方向における外形寸法より薄い請求項1−請求項6の何れか1項に記載のテザークリップ。
【請求項8】
前記テザー部は、前記座部に直交する方向に立ち上がり直線状に延びる直線状部を有し、前記テザー部の前記直線状部の根もとに、前記第1の方向に湾曲するR部が形成されている請求項1−請求項7の何れか1項に記載のテザークリップ。
【請求項9】
ガーニッシュ係止孔が形成された収納部を有するガーニッシュと、
車両のピラーと、
前記ガーニッシュと前記ピラーとの間で前記収納部の一側に配置されるカーテンエアバッグと、
前記ガーニッシュを前記車両のピラーに取り付ける請求項1−請求項8の何れか1項に記載のテザークリップと、
を備えており、
前記係合保持部は前記第1の方向に膨出する膨出部を有し、
通常時には、前記膨出部が前記ガーニッシュ係止孔の縁部に係止して前記座部との間に前記ガーニッシュ係止孔の縁部を保持し、前記カーテンエアバッグの展開初期には、前記ガーニシュが途中まで開いた状態で前記ガーニッシュの飛散を防止するように前記アンカー部が前記ガーニッシュ係止孔の縁部に当たった状態となるガーニッシュ取付装置。
【請求項10】
前記テザークリップの前記第1の方向は前記ガーニッシュの幅方向に向けられており、前記テザークリップの前記第1の方向と直交する第2の方向は前記ガーニッシュの長手方向に向けられており、前記ガーニッシュ係止孔は矩形状孔であり、前記ガーニッシュ係止孔の短辺方向は前記テザークリップの前記第1の方向に向けられている、請求項9記載のガーニッシュ取付装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−113419(P2013−113419A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−262859(P2011−262859)
【出願日】平成23年11月30日(2011.11.30)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】