説明

テストウェイト運搬装置

【課題】テストウェイトを運搬する労力を軽減しながら複数のテストウェイトをまとめて運搬することである。
【解決手段】エレベータシステム10のテストのため、テストウェイト運搬装置20はテストウェイト14を床面6から引き上げた状態で積み込み、乗りかご14に向かって運搬される。テストウェイト運搬装置20に設けられるテストウェイト14の積載機構は、複数のテストウェイト14のそれぞれの把持部に係止される複数の係止端部を含んで構成される係止部30と、各テストウェイト14に対応して設けられ、一端側が係止部30に接続されて柔軟性を有する接続部材50と、接続部材50の他端側が接続され、接続部材50と係止部30とを介して各テストウェイト14を床面6から引き上げ、あるいは床面6に引き下げる昇降機構60とを含んで構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テストウェイト運搬装置に係り、特に、予め定めた質量を有し把持部を備えるテストウェイトを複数運搬できるテストウェイト運搬装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、エレベータシステムのテストとして、負荷時ブレーキテストや過負荷時の運転制御性テスト等を行う際に、乗りかごの適当な負荷を模擬するために、テストウェイトが乗りかごに積載される。テストウェイトとしては、例えば1つ25kgの質量を有するものが用いられる。このテストウェイトを用いるものとすれば、エレベータシステムの負荷容量を1tとする場合、テストウェイトを数十個乗りかごに積載される。
【0003】
このように、エレベータシステムのテストのために、必要な個数のテストウェイトを乗りかごに運搬することが必要になる。この運搬には、作業員が両手でテストウェイトを把持して運搬する他、適当な台車に必要な個数を積み込んで運搬することが行われている。
【0004】
本発明に直接は関係しないが、エレベータシステムに用いられるつり合い錘の運搬に関し、特許文献1には、エレベータつり合い錘として、一対の縦枠と縦枠を横方向に連結する一対の連結板と、ガイドシュー、プーリ、バッファ受け部とを含むものが述べられ、これを運搬するキャスター付支持台として以下の構成が開示されている。すなわち、一対の縦枠のうちの一方が載置されキャスターを有するベースと、ベースから立設され枠の巾方向に当たる立設部と、枠の側面と保持する保持部とを備える支持台である。この支持台にエレベータつり合い錘の長手方向を床面に平行に置いて運搬することができる。
【0005】
【特許文献1】特開2000−335852号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のように、テストウェイトの運搬として、作業員が両手でテストウェイトを把持して運搬する他、適当な台車に必要な個数を積み込んで運搬することが行われている。しかしながら、テストウェイトはかなりの質量を有するために、作業員が手で運搬するにはかなりの労力と手間とを有し、台車等で運搬するにしても台車に積み込み、また乗りかごに移すときに作業員によるかなりの労力と手間とを要する。
【0007】
本発明の目的は、テストウェイトを運搬する労力を軽減しながら複数のテストウェイトをまとめて運搬できるテストウェイト運搬装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るテストウェイト運搬装置は、予め定めた質量を有し把持部を備えるテストウェイトを複数運搬できる運搬装置であって、複数のテストウェイトのそれぞれの把持部に係止される複数の係止端部を含んで構成される係止部と、各テストウェイトに対応して設けられ、一端側が係止部に接続されて柔軟性を有する接続部材と、接続部材の他端側が接続され、接続部材と係止部とを介して各テストウェイトを床面から引き上げ、あるいは床面に引き下げる昇降機構と、を含み、接続部材は、昇降機構によって各テストウェイトが引き下げられた状態においては、その柔軟性を用いて床面に置かれた各テストウェイトの把持部に各係止端部を係止しまたはその係止を外すことができる長さであって、かつ、昇降機構によって各テストウェイトが引き上げられた状態においては、各テストウェイトの自重によって各テストウェイトが相互に向かい合う面で相互に接触して平衡位置を定めることができる長さを有することを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係るテストウェイト運搬装置において、テストウェイトは2つを一組として把持され昇降されて運搬され、昇降機構は、運搬移動可能な筐体部に軸方向を床面に平行な方向として取り付けられ、軸方向に沿って右ネジ部と左ネジ部とが直列に配置されるネジ軸と、支点の周りに相互に回転自在である2つのアームを有する昇降用アーム部であって、支点と反対側の端部のうち1つがネジ軸の右ネジ部に接続され他の1つがネジ軸の左ネジ部に接続され、支点に接続部材の他端側が接続される昇降用アーム部と、を有し、係止部は、支点の周りに相互に回転自在である2つのアームを有する係止アーム部であって、各アームの支点を挟む一方側の端部にテストウェイトの把持部と係止する係止端部がそれぞれ設けられ、各アームの支点を挟む他方側の端部のそれぞれに接続部材の一端側が接続される係止用アーム部であり、ネジ軸を一方向に回転操作して昇降用アーム部を構成する2つのアームの各端部の軸方向に沿った相互の間隔を大きくして支点の高さ位置を床面から引き上げることで接続部材と係止部とを介してテストウェイトを床面から引き上げ、ネジ軸を一方向と逆の方向に回転操作して昇降用アーム部を構成する2つのアームの各端部の軸方向に沿った相互の間隔を小さくして支点の高さ位置を床面に向かって引き下げることで接続部材と係止部とを介して各テストウェイトを床面に引き下げることが好ましい。
【0010】
また、本発明に係るテストウェイト運搬装置において、テストウェイトは2つを一組として把持され昇降されて運搬され、昇降機構は、運搬移動可能な筐体部に軸方向を床面に平行な方向として取り付けられ、軸方向に沿って右ネジ部と左ネジ部とが直列に配置されるネジ軸と、支点の周りに相互に回転自在である2つのアームを有する昇降用アーム部であって、各アームの支点を挟む一方側の端部のそれぞれが2つの接続部材の他端側にそれぞれ接続され、各アームの支点を挟む他方側の端部のうち1つがネジ軸の右ネジ部に接続され他の1つがネジ軸の左ネジ部に接続される昇降用アーム部と、を有し、係止部は、2つの接続部材の一端側にそれぞれ接続される2つの係止端部で構成され、ネジ軸を一方向に回転操作して昇降用アーム部を構成する2つのアームの他方側の各端部の軸方向に沿った相互の間隔を大きくして支点の高さ位置を床面から引き上げることで各接続部材と各係止端部とを介して各テストウェイトを床面から引き上げ、ネジ軸を一方向と逆の方向に回転操作して昇降用アーム部を構成する2つのアームの他方側の各端部の軸方向に沿った相互の間隔を小さくして支点の高さ位置を床面に向かって引き下げることで各接続部材と各係止端部とを介して各テストウェイトを床面に引き下げることが好ましい。
【0011】
また、本発明に係るテストウェイト運搬装置において、接続部材は、チェーンまたはベルトで構成されることが好ましい。
【0012】
また、本発明に係るテストウェイト運搬装置において、昇降機構は、ネジ軸の回転に対し一方向について回転自在とし、一方向と逆の方向については回転を防止するロック機構を有することが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
上記構成により、テストウェイト運搬装置は、予め定めた質量を有し把持部を備えるテストウェイトを複数運搬できる運搬装置であって、複数のテストウェイトのそれぞれの把持部に係止される複数の係止端部を含んで構成される係止部と、各テストウェイトに対応して設けられ、一端側が係止部に接続されて柔軟性を有する接続部材と、接続部材の他端側が接続され、接続部材と係止部とを介して各テストウェイトを床面から引き上げ、あるいは床面に引き下げる昇降機構とを含む。そして、接続部材は、昇降機構によって各テストウェイトが引き下げられた状態においては、その柔軟性を用いて床面に置かれた各テストウェイトの把持部に各係止端部を係止しまたはその係止を外すことができ、昇降機構によって各テストウェイトが引き上げられた状態においては、各テストウェイトの自重によって各テストウェイトが相互に向かい合う面で相互に接触して平衡位置を定めることができる。
【0014】
したがって、昇降機構を用いてテストウェイトを床面から引き上げ、あるいは床面に引き降ろすことができるので、テストウェイト置き場にテストウェイト運搬装置を移動させ、床面にあるテストウェイトを係止して昇降装置を用いて床面から引き上げ、その状態で乗りかごのところまで運搬し、乗りかごにおいて昇降装置を用いて乗りかごの床面にテストウェイトをひき下ろし係止を外すことで、少ない労力でテストウェイトを容易に運搬することができる。
【0015】
また、テストウェイト運搬装置において、テストウェイトは2つを一組として把持され昇降されて運搬され、昇降機構は、運搬移動可能な筐体部に軸方向を床面に平行な方向として取り付けられ、軸方向に沿って右ネジ部と左ネジ部とが直列に配置されるネジ軸と、支点の周りに相互に回転自在である2つのアームを有する昇降用アーム部であって、支点と反対側の端部のうち1つがネジ軸の右ネジ部に接続され他の1つがネジ軸の左ネジ部に接続され、支点に接続部材の他端側が接続される昇降用アーム部とを有する。また、係止部は、支点の周りに相互に回転自在である2つのアームを有する係止アーム部であって、各アームの支点を挟む一方側の端部にテストウェイトの把持部と係止する係止端部がそれぞれ設けられ、各アームの支点を挟む他方側の端部のそれぞれに接続部材の一端側が接続される係止用アーム部である。そして、ネジ軸を一方向に回転操作して昇降用アーム部を構成する2つのアームの各端部の軸方向に沿った相互の間隔を大きくして支点の高さ位置を床面から引き上げることで接続部材と係止部とを介してテストウェイトを床面から引き上げ、ネジ軸を一方向と逆の方向に回転操作して昇降用アーム部を構成する2つのアームの各端部の軸方向に沿った相互の間隔を小さくして支点の高さ位置を床面に向かって引き下げることで接続部材と係止部とを介して各テストウェイトを床面に引き下げる。これにより、テストウェイト2つを一組の単位として、少ない労力で容易に運搬することができる。
【0016】
また、テストウェイト運搬装置において、テストウェイトは2つを一組として把持され昇降されて運搬され、昇降機構は、運搬移動可能な筐体部に軸方向を床面に平行な方向として取り付けられ、軸方向に沿って右ネジ部と左ネジ部とが直列に配置されるネジ軸と、支点の周りに相互に回転自在である2つのアームを有する昇降用アーム部であって、各アームの支点を挟む一方側の端部のそれぞれが2つの接続部材の他端側にそれぞれ接続され、各アームの支点を挟む他方側の端部のうち1つがネジ軸の右ネジ部に接続され他の1つがネジ軸の左ネジ部に接続される昇降用アーム部とを有する。また、係止部は、2つの接続部材の一端側にそれぞれ接続される2つの係止端部で構成される。そして、ネジ軸を一方向に回転操作して昇降用アーム部を構成する2つのアームの他方側の各端部の軸方向に沿った相互の間隔を大きくして支点の高さ位置を床面から引き上げることで各接続部材と各係止端部とを介して各テストウェイトを床面から引き上げ、ネジ軸を一方向と逆の方向に回転操作して昇降用アーム部を構成する2つのアームの他方側の各端部の軸方向に沿った相互の間隔を小さくして支点の高さ位置を床面に向かって引き下げることで各接続部材と各係止端部とを介して各テストウェイトを床面に引き下げる。これにより、テストウェイト2つを一組の単位として、少ない労力で容易に運搬することができる。
【0017】
また、テストウェイト運搬装置において、接続部材は、チェーンまたはベルトで構成されるので、その柔軟性のため、床面に置かれた各テストウェイトの把持部に各係止端部を係止しまたはその係止を外すことが容易となる。
【0018】
また、テストウェイト運搬装置において、昇降機構は、ネジ軸の回転に対し一方向について回転自在とし、一方向と逆の方向については回転を防止するロック機構を有するので、テストウェイトを誤って床面に落とすことを防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下に図面を用いて本発明に係る実施の形態に付き詳細に説明する。以下では、エレベータシステムのテスト用のテストウェイトの運搬に用いられるテストウェイト運搬装置を説明するが、テストウェイトは他の目的に用いられるものであってもよい。また以下では、接続部材としてチェーンを説明するが、柔軟性を有しながら適当な強度を有する部材であれば、チェーン以外のものであってもよい。例えば、合成皮革製あるいは合成布製等のベルトまたはロープ等を用いることができる。また、以下で述べる質量、寸法、形状等は説明のための一例であって、用途に応じて適宜変更することができる。例えば、直方体のテストウェイトに適した形状等を説明するが、直方体以外の形状のテストウェイトを用いる場合には、そのテストウェイトの形状に適合するように、アーム部、係止部等の各要素の形状を適当に変更することができる。また、運搬装置は4輪型手押し車として説明するが、車輪の数は適当に変更でき、また、手押し車でなく手引き車であってもよく、場合によっては車輪駆動装置を備える車両であってもよい。
【0020】
以下では、全ての図面において同様の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、本文中の説明においては、必要に応じそれ以前に述べた符号を用いるものとする。
【0021】
図1はエレベータシステム10のテストのために用いられるテストウェイト14を運搬するテストウェイト運搬装置20の様子を説明する図である。図1(a)には、エレベータシステム10のテストのために、乗りかご12にテストウェイト14を積載するため、作業員8がテストウェイト運搬装置20にテストウェイト14を床面6から引き上げた状態で積み込み、乗りかご14に向かって運搬する様子が示されている。
【0022】
図1(b)にはテストウェイト運搬装置20の詳細図が示されている。テストウェイト運搬装置20は、フレーム状に形成される筐体部22と、筐体部22の下部に設けられる4つの車輪24と、筐体部22から延びて設けられる手押しハンドル部26とを有し、さらにここでは、4つのテストウェイト14を床面6から引き上げ、あるいは床面6に引き下げる積載機構を含んで構成される。
【0023】
テストウェイト14の積載機構は、複数のテストウェイト14のそれぞれの把持部に係止される複数の係止端部を含んで構成される係止部30と、各テストウェイト14に対応して設けられ、一端側が係止部30に接続されて柔軟性を有する接続部材50と、接続部材50の他端側が接続され、接続部材50と係止部30とを介して各テストウェイト14を床面6から引き上げ、あるいは床面6に引き下げる昇降機構60とを含んで構成される。昇降機構60は、筐体部22に軸方向を床面6に平行な方向として取り付けられ、回転ハンドル62によって回転できるネジ軸70と、支点の周りに相互に回転自在である2つのアームを有する昇降用アーム部80とを含んで構成される。ここで、昇降機構60は、二組が設けられ、それぞれが2つのテストウェイト14を昇降することができる。したがって、図1におけるテストウェイト運搬装置20は、2つのテストウェイト14を一組としてこれを二組、合計4つのテストウェイト14を一度に運搬することができる。
【0024】
図2、図3は、一組の昇降機構60の周辺の構造を説明する図で、図1においてテストウェイト運搬装置20を進行方向から見た様子を示す図に相当する。図4は一組を構成する2つのテストウェイト14の様子を示す図であり、図5は係止部30の一部拡大図で、特に2つのテストウェイト14を一組として係止する係止端部38,40の様子を示す図である。
【0025】
テストウェイト14は、図4に示すように、予め定められた質量を有する直方体形状の金属製錘であって、その上部に把持部16がくぼみ18の中に形成されている。把持部16は、例えば、作業員8が手でテストウェイト14を持ち運ぶときに取っ手として用いられるものである。したがって、くぼみ18と把持部16との間の隙間は、作業員8が片手の全部の指を用いてしっかりとテストウェイト14を持つことができる程度の大きさに設定される。かかるテストウェイト14としては、予め定められた質量として例えば約25kgの質量を有する適当な金属製鋳物等で形成されたものを用いることができる。
【0026】
係止部30は、テストウェイト14と柔軟な接続部材50との間に配置され、テストウェイト14の把持部16と接続部材50とを接続する機能を有する部材である。係止部30は、2つのテストウェイト14を一組として接続部材50に係止するために、2つの係止端部38,40を含んで構成される。係止部30は、図2、図3に示すように、支点36の周りに相互に回転自在である2つのアーム32,34を有する係止アーム部であって、各アーム32,34の支点36を挟む一方側の端部にテストウェイト14の把持部16と係止する係止端部38,40がそれぞれ設けられる。また、各アーム32,34の支点36を挟む他方側の端部42,44のそれぞれには軸が設けられ、この軸に接続部材50の一端側がそれぞれ接続される。
【0027】
図5に示されるように、係止端部38,40の形状は、テストウェイト14の把持部16とくぼみ18との間の隙間を利用して、作業員8の片手のように、しっかりとテストウェイト14を係止できるように湾曲して形成される。かかる係止部30は、金属材料を用いて所定の形状に成形した2つのアーム32,34について、ピン等を用いて相互に回転自在に止めてこれを支点36としたものを用いることができる。
【0028】
接続部材50は、複数の円環状リングを順次つないだチェーンで、図2、図3に示すように、3つのチェーンブロック52,54,56から構成される。チェーンブロック52,54は、係止部30によって係止される2つ一組のテストウェイト14にそれぞれ対応して設けられるもので、係止部30を構成する2つのアーム32,34のそれぞれの他方側の端部42,44に一端側が接続される。そして、この2つのチェーンブロック52,54は、それぞれの他方側がまとめられて1つのチェーンブロック56の一端側に接続される。このチェーンブロック56の他方端は、昇降機構60のフック88に接続される。
【0029】
このように、接続部材50は、各テストウェイト14に対応して設けられ、一端側が係止部30に接続されて、他端側が昇降機構60に接続されるチェーンブロックである。チェーンブロックは、複数の円環状リングを順次つないだものであるので、その全体の形状は柔軟性を有して変更可能である。例えば、図2のように、チェーンブロック52,54が相互に離れた形態をとることもでき、図3のように、チェーンブロック52,54が相互に接近した形態をとることもできる。
【0030】
昇降機構60は、ネジ軸70と、昇降用アーム部80とから構成され、昇降用アーム部80にはフック88が設けられ、このフック88に接続部材50の他端側が掛けられ、ネジ軸70を回転することで、昇降用アーム部80が開閉し、フック88の床面6に対する高さ位置が変わり、これによってテストウェイト14を床面6から引き上げ、あるいは床面6に引き下げることができる機能を有する。
【0031】
ネジ軸70は、筐体部22に軸方向を床面6に平行な方向として取り付けられ、軸方向に沿って右オネジが刻まれた右ネジ部72と左オネジが刻まれた左ネジ部74とが直列に配置されたものである。右ネジ部72に噛み合わされた右ネジ用ガイドブッシュ76は、内径に右メネジが刻まれたブッシュであり、左ネジ部74に噛み合わされた左ネジ用ガイドブッシュ78は内径に左メネジが刻まれたブッシュである。
【0032】
昇降用アーム部80は、支点86の周りに相互に回転自在である2つのアーム82,84を有し、支点86と反対側の端部のうち一方端部90が右ネジ用ガイドブッシュ76に接続され、他方端部92が左ネジ用ガイドブッシュ78に接続される。フック88は、支点86に接続され、上記のように接続部材50の他端側、具体的には、チェーンブロック56の他端側の1つの円環状リングが掛けられる部材である。チェーンブロック56の他端部とは、2つのテストウェイト14に対応して設けられる2つのチェーンブロック52,54が1つにまとめられる一端側の反対側である。
【0033】
上記のように、ネジ軸70は、床面6に平行に配置され、その軸方向に沿って右ネジ部72と左ネジ部74とが直列に刻まれている。そして、右ネジ部72には右ネジ用ガイドブッシュ76が噛み合わされ、左ネジ部74には左ネジ用ガイドブッシュ78が噛み合わされている。ここで、右ネジ用ガイドブッシュ76、左ネジ用ガイドブッシュ78には、フック88、2つのアーム82,84を介してテストウェイト14の質量に対応する外力が床面6の方向に加えられるので、ネジ軸70に対する回転が拘束され、ネジ軸70の軸方向にのみ移動することが可能になっている。
【0034】
つまり、右ネジ用ガイドブッシュ76は右ネジ部72と噛み合ってネジ軸70の軸方向に沿って移動でき、左ネジ用ガイドブッシュ78は左ネジ部74と噛み合ってネジ軸70の軸方向に沿って移動できることになる。したがって、ネジ軸70を回転させると、右ネジ用ガイドブッシュ76と左ネジ用ガイドブッシュ78とは、ネジ軸70の軸方向に沿って互いに逆方向に移動することになる。
【0035】
図3は、ネジ軸70を一方向に回転し、これによって右ネジ用ガイドブッシュ76は紙面の右側から左側に移動し、一方、左ネジ用ガイドブッシュ78は紙面の左側から右側に移動した様子を示す図である。図2は、ネジ軸70を他方向、つまり図3の回転方向とは逆の方向に回転し、これによって右ネジ用ガイドブッシュ76は紙面の左側から右側に移動し、一方、左ネジ用ガイドブッシュ78は紙面の右側から左側に移動した様子を示す図である。
【0036】
このように、ネジ軸70について、右ネジ部72と左ネジ部74とが軸方向に直列として配置することで、軸周りの回転が規制された右ネジ用ガイドブッシュ76と左ネジ用ガイドブッシュ78との間の間隔距離をネジ軸70の回転のみで制御することができる。
【0037】
上記のように、昇降用アーム部80は、2つのアーム82,84が支点86によって回転自在に支持されており、支点86に対する端部90,92はそれぞれ右ネジ用ガイドブッシュ76と左ネジ用ガイドブッシュ78に回転自在に接続されている。したがって、ネジ軸70の回転によって右ネジ用ガイドブッシュ76と左ネジ用ガイドブッシュ78との間の間隔距離が変化すると、これに応じて昇降用アーム部80の2つのアーム82,84の間で形作られる角度が変化する。図2、図3に示されるように、右ネジ用ガイドブッシュ76と左ネジ用ガイドブッシュ78との間の間隔距離が大きいと、2つのアーム82,84の間で形作られる角度が大きくなる。
【0038】
これを、昇降用アーム部80の支点86の床面6に対する高さ位置、あるいは、フック88の床面6に対する高さ位置について言えば、昇降用アーム部80の2つのアーム82,84の間で形作られる角度が変化すると、支点86、あるいはフック88の床面6に対する高さ位置が変化する。図2、図3に示されるように、昇降用アーム部80の2つのアーム82,84の間で形作られる角度が小さいと、支点86、あるいはフック88の床面6に対する高さ位置が低く、逆に、昇降用アーム部80の2つのアーム82,84の間で形作られる角度が大きいと、支点86、あるいはフック88の床面6に対する高さ位置が高くなる。
【0039】
このように、ネジ軸70を回転することで、支点86、あるいはフック88の床面6に対する高さ位置を変更でき、これによって、テストウェイト14を床面6から引き上げ、あるいは床面6に引き下げることができる。
【0040】
上記の昇降機構60に関する作用をまとめると以下のようになる。すなわち、ネジ軸70を一方向に回転操作して昇降用アーム部80を構成する2つのアーム82,84の各端部90,92の軸方向に沿った相互の間隔を大きくして支点86の高さ位置を床面6から引き上げることで接続部材50と係止部30とを介してテストウェイト14を床面6から引き上げることができる。図3はその状態を示す図である。また、ネジ軸70を一方向と逆の方向に回転操作して昇降用アーム部80を構成する2つのアーム82,84の各端部90,92の軸方向に沿った相互の間隔を小さくして支点86の高さ位置を床面6に向かって引き下げることで接続部材50と係止部30とを介して各テストウェイト14を床面6に引き下げることができる。図2はその状態を示す図である。
【0041】
実際の作業においては、まず、テストウェイト14の置き場において床面6に置かれているテストウェイト14を係止部30に係止する。そのときは、テストウェイト14は図2に示されるように適当な間隔をもって床面6に置かれているので、接続部材50は十分な長さで柔軟な状態であることが必要である。すなわち、昇降用アーム部80の支点86の床面に対する高さ位置を十分に低くして、接続部材50が十分な柔軟性を有するようにする。
【0042】
次に、テストウェイト14を目的地に運搬するには、テストウェイト14を床面6から引き上げる必要があるので、図3に示すように、昇降用アーム部80の支点86の高さを十分に高くする。このとき、テストウェイト14はかなりの質量を有しているので、接続部材50であるチェーンブロックは、ピンと張られた状態となる。これにより、2つのテストウェイト14は、相互にその床面6に平行な方向の間隔距離を小さくするように移動し、向かい合う面同士で相互に接触するようになる。これによって、2つのテストウェイト14の位置が平衡状態となって吊り下げが安定する。
【0043】
次いで、エレベータシステム10の乗りかご12までテストウェイト14を運搬し、そこでテストウェイト14を乗りかご12の床面6に引き下げ、係止を外すには、接続部材50は十分な長さで柔軟性を有する必要がある。すなわち、再び図2に示されるように、昇降用アーム部80の支点86の床面に対する高さ位置を十分に低くして、接続部材50が十分な柔軟性を有するようにする。
【0044】
上記の接続部材50の特質をまとめると次のようになる。すなわち、接続部材50は、昇降機構60によって各テストウェイト14が引き下げられた状態においては、その柔軟性を用いて床面6に置かれた各テストウェイト14の把持部16に各係止端部38,40を係止しまたはその係止を外すことができる長さを有している。また、昇降機構60によって各テストウェイト14が引き上げられた状態においては、各テストウェイト14の自重によって各テストウェイト14が相互に向かい合う面で相互に接触して平衡位置を定めることができる長さを有している。
【0045】
上記では、係止部は、2つのテストウェイト14を一組として係止するものとして説明した。図6は、4つのテストウェイト14を一組として係止できる係止部130の構成例を示す図である。ここでは、2つのアーム132,134が支点136の周りに回転自在に支持され、一方のアーム132には2つの係止端部138,139が設けられ、他方のアーム134にも2つの係止端部140,141が設けられる。なお、接続部材、昇降機構は、図2、図3で説明した内容のものをそのまま用いることができる。したがって、図1を参照して理解されるように、係止部130を用いることで、4つのテストウェイト14を一組としてこれを二組、合計8つのテストウェイト14を一度に運搬可能なテストウェイト運搬装置とすることができる。
【0046】
上記では、テストウェイト14を係止するために先端に係止端部を有する2つのアームで構成される係止部30を用いるものとして説明した。これを単に、接続部材の一端側に係止端部を設ける構成とすることもできる。図7(a),(b)は、そのような構成を模式的に示す図である。ここで、図7(a)は、図2に対応してテストウェイト14が床面6に引き下げられた状態を示し、図7(b)は、図3に対応してテストウェイト14が床面6から引き上げられた状態を示す図である。
【0047】
図7(a),(b)に示される構成は、図2、図3等で説明したものと以下の点で相違している。すなわち、複数のテストウェイト14のそれぞれの把持部16に係止される複数の係止端部を含んで構成される係止部240としては、図2、図3の2つのアームの先端にそれぞれ係止端部38,40が設けられるのに代えて、接続部材230の一端側に係止部240としての係止端部242,244がそれぞれ設けられる。係止端部242,244の形状としては、各テストウェイト14の把持部16にしっかりと係止でき、また接続部材230が柔軟形態のときに容易に係止を外せるように、例えば、フック形状等とすることができる。
【0048】
各テストウェイト14に対応して設けられ、一端側が係止部240に接続されて柔軟性を有する接続部材230は、図2、図3と同様にチェーンブロックで構成されるが、2つの各テストウェイト14ごとにそれぞれ一連ずつのチェーンブロックが用いられる。図7の例では、2つのテストウェイトを一組として係止し昇降するので、2連のチェーンブロック232,234が接続部材230として用いられ、それぞれのチェーンブロック232,234の一端側にそれぞれフック形状等の係止端部242,244が接続される。
【0049】
接続部材230の他端側が接続され、接続部材230と係止部240とを介して各テストウェイト14を床面6から引き上げ、あるいは床面6に引き下げる昇降機構としては、ネジ軸70と、昇降用アーム部210とで構成される点は図2、図3と同様であるが、昇降用アーム部210の具体的構成が異なっている。すなわち、昇降用アーム部210は、支点216の周りに相互に回転自在である2つのアーム212,214を有するが、各アーム212,214の支点216を挟む一方側の端部218,220のそれぞれが接続部材230を構成する各チェーンブロック232,234の他端側にそれぞれ接続され、各アーム212,214の支点216を挟む他方側の端部222,224のうち1つがネジ軸70の右ネジ部に接続され他の1つがネジ軸70の左ネジ部に接続される。つまり、図2、図3の昇降用アーム部80はV型形状で開閉するものであるが、図7(a),(b)における昇降用アーム部210は、X型形状で支点216を挟んで両側の端部がそれぞれ連動して開閉する。
【0050】
この構成によっても、図2、図3で説明したと同様の作用を実現することができる。すなわち、ネジ軸70を一方向に回転操作して昇降用アーム部210を構成する2つのアーム212,214の他方側の各端部222,224の軸方向に沿った相互の間隔を大きくして支点216の高さ位置を床面6から引き上げることができる。そして、これにより、接続部材230を構成する各チェーンブロック232,234と係止部240を構成する各係止端部242,244とを介して各テストウェイト14を床面6から引き上げることができる。図7(b)はその様子を示す図である。
【0051】
また、ネジ軸70を一方向と逆の方向に回転操作して昇降用アーム部210を構成する2つのアーム212,214の他方側の各端部222,224の軸方向に沿った相互の間隔を小さくして支点216の高さ位置を床面に向かって引き下げることができる。そしてこれによって、接続部材230と係止部240とを介して各テストウェイト14を床面6に引き下げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明に係る実施の形態のテストウェイト運搬装置の構成を示す図と、テストウェイト運搬装置を用いてテストウェイトを運搬する様子を示す図である。
【図2】本発明に係る実施の形態において、テストウェイトを床面に引き下げた状態を説明する図である。
【図3】本発明に係る実施の形態において、テストウェイトを床面から引き上げた状態を説明する図である。
【図4】本発明に係る実施の形態において、運搬される対象である一組を構成する2つのテストウェイトの様子を示す図である。
【図5】本発明に係る実施の形態において、係止部の一部拡大図である。
【図6】本発明に係る実施の形態において、他の係止部の構成例を示す図である。
【図7】本発明に係る実施の形態において、他のテストウェイト運搬装置の構成例である。
【符号の説明】
【0053】
6 床面、8 作業員、10 エレベータシステム、14 テストウェイト、16 把持部、20 テストウェイト運搬装置、22 筐体部、24 車輪、26 ハンドル部、30,130,240 係止部、32,34,82,84,132,134,212,214 アーム、36,86,136,216 支点、38,40,138,139,140,141,242,244 係止端部、42,44,90,92,218,220,222,224 端部、50,230 接続部材、52,54,56,232,234 チェーンブロック、60 昇降機構、62 回転ハンドル、70 ネジ軸、72 右ネジ部、74 左ネジ部、76 右ネジ用ガイドブッシュ、78 左ネジ用ガイドブッシュ、80,210 昇降用アーム部、88 フック。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め定めた質量を有し把持部を備えるテストウェイトを複数運搬できる運搬装置であって、
複数のテストウェイトのそれぞれの把持部に係止される複数の係止端部を含んで構成される係止部と、
各テストウェイトに対応して設けられ、一端側が係止部に接続されて柔軟性を有する接続部材と、
接続部材の他端側が接続され、接続部材と係止部とを介して各テストウェイトを床面から引き上げ、あるいは床面に引き下げる昇降機構と、
を含み、
接続部材は、
昇降機構によって各テストウェイトが引き下げられた状態においては、その柔軟性を用いて床面に置かれた各テストウェイトの把持部に各係止端部を係止しまたはその係止を外すことができる長さであって、かつ、昇降機構によって各テストウェイトが引き上げられた状態においては、各テストウェイトの自重によって各テストウェイトが相互に向かい合う面で相互に接触して平衡位置を定めることができる長さを有することを特徴とするテストウェイト運搬装置。
【請求項2】
請求項1に記載のテストウェイト運搬装置において、
テストウェイトは2つを一組として把持され昇降されて運搬され、
昇降機構は、
運搬移動可能な筐体部に軸方向を床面に平行な方向として取り付けられ、軸方向に沿って右ネジ部と左ネジ部とが直列に配置されるネジ軸と、
支点の周りに相互に回転自在である2つのアームを有する昇降用アーム部であって、支点と反対側の端部のうち1つがネジ軸の右ネジ部に接続され他の1つがネジ軸の左ネジ部に接続され、支点に接続部材の他端側が接続される昇降用アーム部と、
を有し、
係止部は、
支点の周りに相互に回転自在である2つのアームを有する係止アーム部であって、各アームの支点を挟む一方側の端部にテストウェイトの把持部と係止する係止端部がそれぞれ設けられ、各アームの支点を挟む他方側の端部のそれぞれに接続部材の一端側が接続される係止用アーム部であり、
ネジ軸を一方向に回転操作して昇降用アーム部を構成する2つのアームの各端部の軸方向に沿った相互の間隔を大きくして支点の高さ位置を床面から引き上げることで接続部材と係止部とを介してテストウェイトを床面から引き上げ、
ネジ軸を一方向と逆の方向に回転操作して昇降用アーム部を構成する2つのアームの各端部の軸方向に沿った相互の間隔を小さくして支点の高さ位置を床面に向かって引き下げることで接続部材と係止部とを介して各テストウェイトを床面に引き下げることを特徴とするテストウェイト運搬装置。
【請求項3】
請求項1に記載のテストウェイト運搬装置において、
テストウェイトは2つを一組として把持され昇降されて運搬され、
昇降機構は、
運搬移動可能な筐体部に軸方向を床面に平行な方向として取り付けられ、軸方向に沿って右ネジ部と左ネジ部とが直列に配置されるネジ軸と、
支点の周りに相互に回転自在である2つのアームを有する昇降用アーム部であって、各アームの支点を挟む一方側の端部のそれぞれが2つの接続部材の他端側にそれぞれ接続され、各アームの支点を挟む他方側の端部のうち1つがネジ軸の右ネジ部に接続され他の1つがネジ軸の左ネジ部に接続される昇降用アーム部と、
を有し、
係止部は、2つの接続部材の一端側にそれぞれ接続される2つの係止端部で構成され、
ネジ軸を一方向に回転操作して昇降用アーム部を構成する2つのアームの他方側の各端部の軸方向に沿った相互の間隔を大きくして支点の高さ位置を床面から引き上げることで各接続部材と各係止端部とを介して各テストウェイトを床面から引き上げ、
ネジ軸を一方向と逆の方向に回転操作して昇降用アーム部を構成する2つのアームの他方側の各端部の軸方向に沿った相互の間隔を小さくして支点の高さ位置を床面に向かって引き下げることで各接続部材と各係止端部とを介して各テストウェイトを床面に引き下げることを特徴とするテストウェイト運搬装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1に記載のテストウェイト運搬装置において、
接続部材は、チェーンまたはベルトで構成されることを特徴とするテストウェイト運搬装置。
【請求項5】
請求項2または3に記載のテストウェイト運搬装置において、
昇降機構は、ネジ軸の回転に対し一方向について回転自在とし、一方向と逆の方向については回転を防止するロック機構を有することを特徴とするテストウェイト運搬装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−292568(P2009−292568A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−146518(P2008−146518)
【出願日】平成20年6月4日(2008.6.4)
【出願人】(000236056)三菱電機ビルテクノサービス株式会社 (1,792)
【Fターム(参考)】