説明

テストストリップ用デバイス

【課題】テストストリップの幅寸法を小さくして低価格化を可能にでき、かつ目視によるテスト結果の確認を容易に行えるテストストリップ用デバイスを提供する。
【解決手段】テストストリップ2が収容された略密閉状のハウジング3と、該ハウジング3の上記テストストリップ2の試料液注入部2aに臨むように形成された注入口5aと、上記ハウジング3の上記テストストリップ2の分析表示部2bに臨むよう形成された読み取り窓5bとを有するテストストリップ用デバイス1であって、上記読み取り窓5bに拡大レンズ5gを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イムノクロマトグラフィ検査方法により生物学的物質を検出するようにしたテストストリップ用デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
テストストリップ用デバイスを用いたイムノクロマトグラフィ検査は、簡単に臨床診断が行えることから医療分野で広く利用されている。
【0003】
この種のデバイスは、テストストリップが収容されたハウジングに、被検試料液を注入する注入口と、分析物を確認するための読み取り窓とを形成したものが一般的である(例えば、特許文献1,2参照)。
【0004】
そして上記注入口からテストストリップに適量の血液,唾液等の被検試料液を注入し、一定時間放置後に読み取り窓を通してテストストリップの分析表示部を目視により確認することで検査,診断を行うようにしている。
【特許文献1】特開2000−356638号公報
【特許文献2】特開2005−37384号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記テストストリップは、複数の吸水性シートを積層してなる吸水性パッドに試料の分析に必要な各種の反応試薬を含有させて製造されたものであり、かなり高価なものとなっている。
【0006】
ここで、低価格化を図るために、テストストリップの幅寸法を小さくすることが考えられる。しかしながら、テスト結果を目視で確認には、テストストリップに目視可能な幅寸法をもたせる必要があることから、細幅化には限界がある。またテストストリップに注入する被検試料液の注入量も多くなることから、これらの点での改善が要請されている。
【0007】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたもので、テストストリップの幅寸法を小さくして低価格化を可能にでき、かつ目視によるテスト結果の確認を容易に行えるテストストリップ用デバイスを提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の発明は、テストストリップが収容された略密閉状のハウジングと、該ハウジングの上記テストストリップの試料液注入部に臨むように形成された注入口と、上記ハウジングの上記テストストリップの分析表示部に臨むよう形成された読み取り窓とを有するテストストリップ用デバイスであって、上記読み取り窓に拡大レンズを設けたことを特徴としている。
【0009】
請求項2の発明は、請求項1において、上記拡大レンズは、倍率が1.1倍以上であることを特徴としている。
【0010】
請求項3の発明は、請求項1において、上記拡大レンズは、凸レンズであることを特徴としている。
【0011】
請求項4の発明は、請求項1において、上記拡大レンズは、フレネルレンズであることを特徴としている。
【0012】
請求項5の発明は、請求項1ないし4の何れかにおいて、上記拡大レンズは、上記ハウジングの読み取り窓に一体的に形成されていることを特徴としている。
【0013】
請求項6の発明は、請求項1ないし5の何れかにおいて、上記拡大レンズは、上記ハウジングの読み取り窓を閉塞していることを特徴としている。
【0014】
請求項7の発明は、請求項1において、上記ハウジングの読み取り窓を挟んだ注入口の反対側には、通気孔が形成されていることを特徴としている。
【0015】
請求項8の発明は、請求項1において、上記ハウジングは、上記テストストリップが所定の測定位置に位置決め固定されたボトムと、上記注入口及び読み取り窓が形成されたカバーとを略気密に嵌合固定したものであることを特徴としている。
【発明の効果】
【0016】
請求項1の発明に係るデバイスによれば、ハウジングの読み取り窓に拡大レンズを設けたので、テストストリップの幅寸法が小さくなっても、拡大レンズを透してテストストリップの分析物を目視により容易に確認することができる。これにより、テストストリップの低価格化が可能となり、かつ被検試料液の注入量も低減することができ、さらにはテストストリップを収容するハウジングの小型化が可能となり、デバイス全体の小型化及び低コスト化が可能となる。
【0017】
請求項2の発明では、拡大レンズの倍率を1.1倍以上としたので、テストストリップの幅寸法に応じて倍率を設定することにより、目視による確認を容易に行うことができる。
【0018】
請求項3の発明では、拡大レンズを凸レンズにより形成したので、倍率の設定及び製造が容易であり、拡大レンズを設けたことによるコストの上昇を抑制できる。
【0019】
請求項4の発明では、拡大レンズをフレネルレンズにより形成したので、拡大レンズをハウジングと略同一平面とすることができ、ハウジングからの出っ張りがない分だけ取り扱い時の傷付きや梱包時の嵩張りを防止できる。
【0020】
請求項5の発明では、拡大レンズをハウジングに一体形成したので、拡大レンズを設けたことによる製造コストの上昇を抑制できる。
【0021】
請求項6の発明では、拡大レンズにより読み取り窓を閉塞したので、読み取り窓からテストストリップの水分等が蒸発するのを防止できるとともに、テストストリップを展開する水分の逆流を防止できる。
【0022】
請求項7の発明では、ハウジングの読み取り窓を挟んだ注入口の反対側に通気孔を形成したので、テストストリップに吸収された被検試料液の展開移動が速くなり、検査時間の短縮が可能となる。
【0023】
請求項8の発明では、テストストリップが位置決め固定されたボトムと、注入口及び読み取り窓が形成されたカバーとを嵌合固定したので、デバイスを簡単な構造で、かつ低コストで製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
【0025】
図1ないし図4は、本発明の一実施形態によるテストストリップ用デバイスを説明するための図であり、図1はデバイスのカバーの平面図、図2はデバイスのボトムの平面図、図3,図4はテストストリップが収容されたデバイスの断面図(図1のIII-III 線断面図,IV-IV線断面図) である。
【0026】
図において、1はテストストリップ用デバイスを示しており、これはテストストリップ2が収容された長方形状のハウジング3と、該ハウジング3に形成された注入口5a及び読み取り窓5bとを有している。
【0027】
上記テストストリップ2は、複数の吸水性シートを積層してなる吸水性パッドに各種の反応試薬を含有させたものであり、ハウジング3の長手方向略全長に渡る長さを有し、かつ幅寸法が0.3〜1mm程度のものである。
【0028】
上記テストストリップ2は、主として、試料液注入部2aと、該試料液注入部2aの展開移動側に配置された分析表示部2bと、該分析表示部2bの展開移動側に配置された展開吸収部2cとを有している。試料液注入部2aに供給された被検試料液は、展開吸収部2c側に展開移動しつつ、分析表示部2bにて試薬に反応し、被検試料液に被測定物質である抗原が存在している場合には、分析表示部2bが着色される。
【0029】
ここで、被測定物質には、細胞,タンパク質,ウィルス,DNA等が含まれ、要はイムノクロマトグラフィ検査にて検出されるものであれば何れのものも含まれる。また、被検試料液には、血液,唾液,尿,鼻汁等の体液が含まれ、要はイムノクロマトグラフィ検査にて測定可能なものであれば何れのものも含まれる。
【0030】
上記ハウジング3は、上記テストストリップ2が所定の測定位置に位置決め固定されたボトム4と、上記注入口5a及び読み取り窓5bが形成されたカバー5とを略気密に嵌合固定したものであり、詳細には以下の構造となっている。
【0031】
上記ボトム4は、樹脂製のものからなり、底板部4aの外周縁にフランジ部4bを上方に突出形成し、該底板部4aの長手方向両端部に一対の位置決め片4c,4c及び4d.4dを形成するとともに、ストッパ部4e,4eを形成した構造を有している。
【0032】
上記テストストリップ2を各位置決め片4c,4d間に挿入するとともに、テストストリップ2の端面をストッパ部4eに当接させることにより、該テストストリップ2はボトム4に位置決め固定されている。
【0033】
また上記底板部4aの注入口5a及び読み取り窓5bに対応する部分には、テストストリップ2の下面に当接する支持部4f,4gが突出形成されている。該支持部4f,4gにより、テストストリップ2は底板部4aから僅かに浮いた状態で支持されている。
【0034】
上記カバー5は、樹脂製のものからなり、上記ボトム4の上方を覆うカバー本体5cの外周縁に、上記フランジ部4bに気密に係合する係合部5dを段付き状に形成した構造を有している。
【0035】
上記カバー5のカバー本体5aに上記注入口5a及び読み取り窓5bが形成されており、該注入口5aは、上記テストストリップ2の試料液注入部2aに臨む部位に形成され、上記読み取り窓5aは、テストストリップ2の分析表示部2bに臨む部位に形成されている。
【0036】
上記カバー5の読み取り窓5bを挟んだ注入口5aの反対側には通気孔5eが形成されており、該通気孔5eは、上記テストストリップ2の展開吸収部2cに臨む部位に形成されている。
【0037】
上記注入口5aは、下方にいくほど狭くなるようテーパ状に形成されており、これにより1回の測定に必要な被検試料液の注入量が設定されている。また上記読み取り窓5bは、略矩形状をなすように形成されており、これの長手方向寸法は分析表示部2bの略全長に渡り、幅方向寸法はテストストリップ2の幅寸法の10倍程度に設定されている。
【0038】
そして上記カバー5の読み取り窓5bには、拡大レンズ5gが設けられている。この拡大レンズ5gは、凸レンズからなり、倍率がテストストリップ2の幅寸法に応じた1.1倍〜5倍程度に設定されている。
【0039】
上記拡大レンズ5gは、カバー5の読み取り窓5bに一体形成されている。該拡大レンズ5gにより読み取り窓5bは閉塞されている。上記カバー5の拡大レンズ5gを除く部分及びボトム4は透視不能に着色されており、拡大レンズ5gは透視可能な透明となっている。
【0040】
本実施形態のデバイス1によりイムノクロマトグラフィ検査を行うには、所定量の被検試料液を注入口5aに注入する。被検試料液は、注入口5aからテストストリップ2の試料液注入部2aに吸収され、該注入部2aから分析表示部2bに展開移動する。分析表示部2bにて被検試料液に被測定物質が存在している場合には分析表示部2bが着色される。この場合、テストストリップ2の分析表示部2bは、拡大レンズ5gを透視して数倍に拡大されることとなり、この拡大された分析表示部2bを目視により確認することとなる。
【0041】
このように本実施形態のデバイス1によれば、カバー5の読み取り窓5bに拡大レンズ5gを設けたので、テストストリップ2が目視では確認できない極細となっても、拡大レンズ5gを透してテストストリップ2の分析表示部2bを容易に確認することができる。これにより、テストストリップ2の低価格化が可能となる。またテストストリップ2の極細化に伴って被検試料液の注入量も低減することができ、さらにはテストストリップ2を収容するハウジング3の小型化が可能となり、デバイス全体の小型化及び低コストが可能となる。
【0042】
本実施形態では、カバー5の読み取り窓5bが拡大レンズ5gにより閉塞されているので、読み取り窓5bから被検試料液が外部に漏れ出ることはなく、汚染や感染といった問題を防止できる。また上記被検試料液の注入量の低減に伴って、注入口5aも小さくすることができ、この点からも注入口5aから被検試料液が外部に漏れ出ることによる汚染等の問題を防止できる。
【0043】
上記拡大レンズ5gの倍率を1.1倍〜5倍としたので、テストストリップ2の幅寸法に応じて倍率を自由に設定することができ、極細のテストストリップ2でも目視による確認を容易に行うことができる。
【0044】
上記拡大レンズ5gを凸レンズにより形成したので、倍率の設定及び製造が容易であり、カバー5に拡大レンズ5gを設けたことによるコストの上昇を抑制できる。
【0045】
また上記拡大レンズ5gをカバー5の読み取り窓5bに一体形成したので、拡大レンズ5gを設けたことによる製造コストの上昇を抑制できる。なお、本発明の拡大レンズは、別体に形成してもよい。
【0046】
上記拡大レンズ5gにより読み取り窓5bを閉塞したので、読み取り窓5bからテストストリップ2の水分等が蒸発するのを防止できるとともに、テストストリップ2を展開する水分が逆流するのを防止できる。
【0047】
本実施形態では、カバー5の読み取り窓5bを挟んだ注入口5aの反対側に通気孔5eを形成したので、テストストリップ2に吸収された被検試料液の展開移動が速くなり、検査時間の短縮が可能となる。
【0048】
本実施形態では、ハウジング3を、テストストリップ2が位置決め固定されたボトム4と、注入口5a,読み取り窓5bが形成されたカバー5とを嵌合固定したものとしたので、デバイス1を簡単な構造で、かつ低コストで製造することができる。
【0049】
なお、上記実施形態では、拡大レンズ5gを凸レンズとしたが、本発明は、拡大レンズをフレネルレンズにより形成してもよい。この場合には、拡大レンズをハウジングと略同一平面とすることができ、ハウジングからの出っ張りがない分だけ取り扱い時の傷付きや梱包時の嵩張りを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の一実施形態によるテストストリップ用デバイスの平面図である。
【図2】上記デバイスのボトムの平面図である。
【図3】上記デバイスの断面図(図1のIII-III 線断面図) である。
【図4】上記デバイスの断面図(図1のIV-IV 線断面図) である。
【符号の説明】
【0051】
1 デバイス
2 テストストリップ
2a 試料液注入部
2b 分析表示部
3 ハウジング
4 ボトム
5 カバー
5a 注入口
5b 読み取り窓
5e 通気孔
5g 拡大レンズ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
テストストリップが収容された略密閉状のハウジングと、該ハウジングの上記テストストリップの試料液注入部に臨むように形成された注入口と、上記ハウジングの上記テストストリップの分析表示部に臨むよう形成された読み取り窓とを有するテストストリップ用デバイスであって、上記読み取り窓に拡大レンズを設けたことを特徴とするテストストリップ用デバイス。
【請求項2】
請求項1において、上記拡大レンズは、倍率が1.1倍以上であることを特徴とするテストストリップ用デバイス。
【請求項3】
請求項1において、上記拡大レンズは、凸レンズであることを特徴とするテストストリップ用デバイス。
【請求項4】
請求項1において、上記拡大レンズは、フレネルレンズであることを特徴とするテストストリップ用デバイス。
【請求項5】
請求項1ないし4の何れかにおいて、上記拡大レンズは、上記ハウジングの読み取り窓に一体に形成されていることを特徴とするテストストリップ用デバイス。
【請求項6】
請求項1ないし5の何れかにおいて、上記拡大レンズは、上記ハウジングの読み取り窓を閉塞していることを特徴とするテストストリップ用デバイス。
【請求項7】
請求項1において、上記ハウジングの読み取り窓を挟んだ注入口の反対側には、通気孔が形成されていることを特徴とするテストストリップ用デバイス。
【請求項8】
請求項1において、上記ハウジングは、上記テストストリップが所定の測定位置に位置決め固定されたボトムと、上記注入口及び読み取り窓が形成されたカバーとを略気密に嵌合固定したものであることを特徴とするテストストリップ用デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−292197(P2008−292197A)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−135654(P2007−135654)
【出願日】平成19年5月22日(2007.5.22)
【出願人】(390026413)深江化成株式会社 (12)
【出願人】(500016039)株式会社シン・コーポレイション (7)