説明

テストパターンの表示方法、医用画像表示装置及びプログラム

【課題】オペレータの視認精度を向上させ、オペレータの目視によるキャリブレーションをより正確に行う。
【解決手段】制御部11は、N個のテストパターンを表示部13に表示させる際、一画面に一のテストパターンを配置した画面データを生成し、そのテストパターンに設定された駆動レベルの情報とともに表示部13に出力することにより、一画面に一パターンづつ切り替え表示させる。また、画面データを生成する際には、各切替画面において表示するテストパターンのサイズが表示画面のサイズに対して10%の比率となるように、テストパターンを拡大又は縮小してサイズ変更するとともに、テストパターンの背景領域がそのテストパターンに対応する輝度レベルとなるように背景領域の駆動レベルを設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オペレータの目視により医用画像表示装置の表示階調特性を補正する際に使用するテストパターンの表示方法、テストパターンを表示する医用画像表示装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
医療の分野では、X線撮影、MRI(Magnetic Resonance Imaging)撮影、超音波撮影等、様々な検査撮影により得られた患者の医用画像をモニタに表示させて読影を行うモニタ診断が普及している。また、病院内外におけるネットワークの発展に伴い、同一画像を異なる場所のモニタで読影することも可能である。しかし、読影に使用するモニタがLCD(Liquid Crystal Display)、CRT(Cathode Ray Tube)等、異なる種類である場合、表示特性が異なるため同一画像でも画像の見え方が異なり、また同一種類のモニタでもその使用による劣化の程度や設置環境等により、やはり画像の見え方が異なる場合がある。
【0003】
このように、個々のモニタで画像の見え方にばらつきがあると、診断精度に影響を及ぼすため、表示階調特性の補正(以下、キャリブレーションという)を行って各モニタにおける画像の見え方を統一することが必要である。従来から、輝度計を用いてキャリブレーションが行われているが、輝度計は一般に高価なものであるため輝度計を用いてのキャリブレーションはコスト高となる。また、読影用のモニタが何台もある場合、各モニタについて逐一輝度計によりキャリブレーションを行う作業は非常に手間がかかり、煩雑である。
【0004】
一方、輝度計を使用してキャリブレーションを実施後、オペレータが目視でキャリブレーション結果を確認する方法も提案されている(例えば特許文献1参照)。この特許文献1に記載のキャリブレーション方法は、図13に示すように、それぞれ異なる輝度レベルで表示された複数のテストパターンをモニタ上に表示して、オペレータ(観察者)に各テストパターンの輝度レベルを目視により確認させるものである。
【特許文献1】特開平11−327501号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、図13に示すように、一画面上に複数のテストパターンを表示してキャリブレーションを行う場合、判定対象のテストパターンとともにその隣接するテストパターンがオペレータの視野に入るため、オペレータの視認精度が低下し、正確なキャリブレーションを行うことが困難となる。
【0006】
本発明の課題は、オペレータの視認精度を向上させ、オペレータの目視によるキャリブレーションをより正確に行うことを可能とすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、
医用画像表示装置の表示階調特性を補正するための複数のテストパターンを医用画像表示装置の表示手段に表示させるテストパターンの表示方法であって、
前記複数のテストパターンを一画面に一パターンづつ切り替えて前記表示手段に表示させるとともに、各切替画面において表示するテストパターンを表示画面のサイズに対して所定の比率で表示させ、かつ当該テストパターンの背景領域の輝度レベルを画面を切り替える毎に異なる輝度レベルで表示させることを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のテストパターンの表示方法において、
前記テストパターンの背景領域の輝度レベルを各切替画面で表示するテストパターンの輝度レベルに対応させることを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載のテストパターンの表示方法において、
各切替画面において表示するテストパターンを表示画面のサイズに対して10%の比率で表示させることを特徴とする。
【0010】
請求項4に記載の発明は、医用画像表示装置において、
医用画像を表示する表示手段と、
医用画像表示装置の表示階調特性を補正するための複数のテストパターンを一画面に一パターンづつ切り替えて前記表示手段に表示させるとともに、各切替画面において表示するテストパターンのサイズを表示画面のサイズに対して所定の比率で表示させ、かつ当該テストパターンの背景領域の輝度レベルを画面を切り替える毎に異なる輝度レベルで表示させる制御手段と、
を備えることを特徴とする。
【0011】
請求項5に記載の発明は、
コンピュータに、
医用画像を表示手段に表示させる機能と、
表示階調特性を補正するための複数のテストパターンを一画面に一パターンづつ切り替えて前記表示手段に表示させるとともに、各切替画面において表示するテストパターンを表示画面のサイズに対して所定の比率で表示させ、かつ当該テストパターンの背景領域の輝度レベルを画面を切り替える毎に異なる輝度レベルで表示させる機能と、
を実現させるためのプログラムであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1、4、5に記載の発明によれば、テストパターンを表示させる際に、一画面に一パターンづつ切替表示させるので、視認すべきテストパターン以外の他のテストパターンがテストパターンの観察者の視野に入ることにより、視認精度が低下することを防止することができる。また、各切替画面において表示するテストパターンのサイズを表示画面のサイズに対して所定の比率とし、その背景領域の輝度レベルを画面を切り替える毎に異なるものとするので、テストパターンの背景領域における輝度レベルを変化させることにより、視認精度が低下することを防止することができる。従って、より正確なキャリブレーションを行うことが可能となる。
【0013】
請求項2に記載の発明によれば、テストパターンの輝度レベルに対応して変化させることにより、オペレータの目がその視認すべきテストパターンの輝度レベルに順応して視認精度が向上する。従って、より正確なキャリブレーションを行うことができる。
【0014】
請求項3に記載の発明によれば、テストパターンのサイズを表示画面のサイズの10%の比率とする。10%の比率はDICOM(Digital Imaging and Communication in Medicine;医用デジタル画像と通信に関する標準規格)で定められている比率であり、この規格に従った表示を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
まず、構成を説明する。
図1に、第1実施形態における医用画像表示装置10の内部構成を示す。
図1に示すように、医用画像表示装置10は、制御部11、操作部12、表示部13、通信部14、RAM(Random Access Memory)15、記憶部16から構成されている。
【0016】
制御部11は、記憶部16に記憶されているシステムプログラム、本発明に係るキャリブレーション処理プログラム等の各種制御プログラムをRAM15に展開し、当該制御プログラムに従って各部の動作を集中制御する。
【0017】
キャリブレーション処理では、医用画像表示装置10で表示駆動可能な駆動レベルのレベル範囲をN等分し、そのN等分された駆動レベルがそれぞれ設定されたN個の各テストパターンのデータを、その設定された駆動レベル情報とともに表示部13に出力して表示させる。すなわち、各テストパターンをN等分された各駆動レベルに応じた輝度レベルで表示させることとなる。各テストパターンは、2つの表示領域から形成されており、その一方の領域にはN等分された駆動レベルが設定され、他方の領域にはN等分された駆動レベルより所定レベル分だけ高レベルに設定されている。
【0018】
このN個のテストパターンを表示部13に表示させる際、制御部11は一画面に一のテストパターンを配置した画面データを生成し、そのテストパターンに設定された駆動レベルの情報とともに表示部13に出力することにより、一画面に一パターンづつ切り替え表示させる。また、画面データを生成する際には、各切替画面において表示するテストパターンのサイズが表示画面のサイズに対して10%の比率となるように、テストパターンを拡大又は縮小してサイズ変更するとともに、テストパターンの背景領域がそのテストパターンに対応する輝度レベルとなるように背景領域の駆動レベルを設定する。なお、10%の比率はDICOM規格により規定されている比率である。すなわち、制御部11とキャリブレーション処理プログラムとの協働により制御手段を実現することができる。
【0019】
そして、表示されたテストパターンについて、操作部12を介して輝度レベルの調整操作が為されると、その操作指示に応じてテストパターンにおける駆動レベルを変更して表示部13により表示駆動させる。調整操作が終了すると、各テストパターンを形成する各ラインの駆動レベルの値に基づいて医用画像表示装置10の表示階調特性を補正する補正曲線を求める。そして、当該補正曲線の入力値に対する出力値を規定したLUT(Look Up Table)を作成し、記憶部16に記憶させる。
【0020】
なお、表示特性とは駆動レベルと輝度レベルとの相関をいい、表示階調特性とは表示対象の画像データにおける画素値の入力レベルとその画像データを表示した際における輝度レベルとの相関をいう。
【0021】
操作部12は、キーボードやマウスを有し、これらキーボードやマウスが操作されると、その操作に応じた操作信号を生成して制御部11に出力する。なお、操作部12は、表示部13と一体に形成されたタッチパネル等を有することとしてもよい。
【0022】
表示部13は、LCD、CRT等のモニタを有し、制御部11から入力される表示制御信号に従って当該モニタを駆動する。キャリブレーション処理時には、制御部11から入力される各テストパターン[n]を一画面に一パターンづつ切り替え表示させる。なお、各テストパターン[n]を表示する際には、ともに入力された駆動レベル情報に従って指定された駆動レベルでモニタを表示駆動する。
【0023】
通信部14は、NIC(Network Interface Card)やモデム、ルータ等の通信用インターフェイスを有し、これら通信用インターフェイスを介して病院内に設けられたLAN(Local Area Network)上の外部機器とデータ通信を行う。例えば、患者の医用画像がデータベース化されて管理されている画像サーバにアクセスして医用画像のデータを取得する。
【0024】
RAM15は、制御部11において実行される各種プログラムや、これらプログラムによって処理されたデータ等を一時的に記憶するワークエリアを形成する。
【0025】
記憶部16は、磁気的又は光学的記録媒体、若しくは半導体メモリ等により構成され、システムプログラム、キャリブレーション処理プログラム等の各種制御プロラグムを記憶している。また、キャリブレーション処理時に使用されるパラメータとして、表示画面のサイズに対するテストパターンの表示サイズの比率(本実施形態では、10%)の情報や、表示部13の表示画面のサイズ等の情報を記憶しており、プログラムの処理結果として、例えばキャリブレーション処理により作成された、医用画像表示装置10の表示階調特性を補正するためのLUTを記憶している。
【0026】
また、記憶部16はキャリブレーション処理において使用される複数のテストパターンのデータを記憶している。
図2に、テストパターン例を示す。
図2に示すように、テストパターン[n](括弧内のnは各テストパターンを識別するために付されたパターン番号を示す。n=1、・・・、N)は表示部13において駆動可能な駆動レベルのレベル範囲、つまり0〜最大駆動レベルDDLmaxをN等分し、N等分されたそれぞれの駆動レベルに対応して作成されたものである。なお、本実施形態では8等分した例を示したが、等分するN数はキャリブレーションの精度により適宜設定可能であるとする。高精度にキャリブレーションを行いたい場合はN数を増加させることが好ましい。
【0027】
各テストパターン[n]には、図3に示すように異なる駆動レベルが設定された2つの表示領域が形成されている。一方の表示領域には最大駆動レベルDDLmaxがN等分された駆動レベルが設定され、他方の表示領域にはその一方の表示領域に設定された駆動レベルより一定レベル高い駆動レベルが設定されている。このN等分された駆動レベルが設定された表示領域を基準ターゲットといい、基準ターゲットより高輝度レベルとなるように駆動レベルが設定された表示領域を調整ターゲットという。
【0028】
基準ターゲットの駆動レベルをDDLK[n]、調整ターゲットの駆動レベルをDDLT[n]とすると、DDLK[n]は下記式1により示され、DDLT[n]は下記式2により示される。
【数1】

【0029】
なお、図2及び図3に示したような方形状の表示領域から形成されるテストパターン[n]に限らず、図4及び図5に示すようなライン状の表示領域から形成されるテストパターン[n]であってもよい。この場合も同様に最大駆動レベルDDLmaxがN等分され、そのN等分された各駆動レベルが設定されたN個のテストパターン[n]が作成される。
【0030】
図4に示す各テストパターン[n]は、図5に示すように異なる駆動レベルが設定された2つのライン状の表示領域を1対のラインペアとして、複数対のラインペアが形成されている。ラインペアの一方のラインには最大駆動レベルDDLmaxがN等分された駆動レベルが設定され、他方のラインにはその一方のラインに設定された駆動レベルより一定レベル高い駆動レベルが設定されている。このN等分された駆動レベルが設定されたラインが基準ターゲットであり、基準ターゲットより高輝度レベルとなるように駆動レベルが設定されたラインが調整ターゲットである。
なお、以下の説明ではテストパターン[n]の種類を区別するため、図2及び図3に示すテストパターンを方形パターン、図4及び図5に示すテストパターンをラインパターンという場合がある。
【0031】
次に、上記テストパターン[n]を用いて本実施形態の医用画像表示装置10により実行されるキャリブレーション処理について説明する。
図6はキャリブレーション処理を説明するフローチャートであり、図7はその処理時に表示される表示画面の遷移図を示す図である。この処理は、環境設定メニューからキャリブレーションが選択されると開始される。
【0032】
図6に示すキャリブレーション処理では、まず表示するテストパターンのパターン番号nが初期値であるn=1に設定される(ステップS1)。パターン番号nが設定されると、制御部11においてそのパターン番号nのテストパターン[n]のデータが記憶部16から読み出され、テストパターン[n]のサイズが表示画面のサイズの10%となるように拡大又は縮小が行われる。そして、拡大又は縮小によりサイズが変更されたテストパターンが表示画面上の中央部に配置され、かつそのテストパターン[n]の背景領域の駆動レベルがテストパターン[n]の基準ターゲットと同一駆動レベルDDLK[n]に設定された表示画面データが生成される。生成された表示画面データはその各表示領域の起動レベル情報とともに表示部13に出力され、表示部13では駆動レベル情報に従ってモニタの表示駆動が行われ、テストパターン[n]を含む表示画面が表示される(ステップS2)。
【0033】
図7は、テストパターン[1]、[3]、[5]の表示画面例である。テストパターン[3]が表示された場合を例に説明すると、一画面に一パターンのみ表示され、かつその背景領域が基準ターゲットと同一の駆動レベルで表示駆動されるため基準ターゲットの表示領域と同一輝度レベルで表示される。また、テストパターン[3]は表示画面のサイズの10%の比率で表示される。これは、DICOM規格に従った比率であるが、比率を10%に限定せず、表示画面のサイズとの関係からオペレータ(観察者)の視覚特性に基づいて視認精度が向上する比率を実験的に求めて設定することとしてもよい。
【0034】
なお、図7にはテストパターン[n]が方形パターンである場合を示したが、図8に示すようにラインパターンを適用することとしてもよい。ラインパターンの場合も同様に、表示画面の10%のサイズで表示され、かつその背景領域が基準ターゲットと同一駆動レベルDDLK[n]で表示駆動され、背景領域と基準ターゲットとが同一輝度レベルで表示される。
【0035】
また、図7及び図8では、表示画面の中央部にテストパターン[n]を配置することとしたが、その配置位置は特に限定しない。医用画像を観察する場合、その表示位置によって室内照明や太陽光等の周囲光の影響を受ける程度が異なるため、同じ輝度レベルで表示されたにも拘わらずその位置によってはオペレータが視認する輝度レベルが異なる場合がある。よって、医用画像を表示する位置が固定化されている場合は、その医用画像の表示位置と対応する位置にテストパターン[n]を配置してオペレータに判定を行わせることにより、医用画像を観察する際の環境条件を考慮したキャリブレーションを行うことができる。
【0036】
また、読影する部位によっては特定の領域に読影医の関心が集中する場合がある。例えば、乳房が撮影された医用画像を読影する場合、特に関心が集中するのは乳腺部分の領域である。このような関心領域に合わせて表示階調特性を調整するために、表示画面上の関心領域が表示されることが多い領域を予め実験的に求めておき、テストパターン[n]の表示時にはそのような関心領域内にテストパターン[n]を配置するとともに、その他の領域の輝度レベルを基準ターゲットに対応させて表示させることにより、関心領域を重視した効果的なキャリブレーションを行うことができる。なお、この場合、各切替画面に亘ってテストパターン[n]の表示位置を関心領域内の略同一の位置に配置させる。
【0037】
このようにしてテストパターン[n]が表示されると、オペレータは操作部12を介して、テストパターン[n]中の調整ターゲットと基準ターゲットの輝度レベル差が目視により視認できる最小の輝度レベル差となるまで、調整ターゲットの輝度レベルを上げる又は下げる調整操作を行う。視認できる最小の輝度レベル差とは、オペレータが調整ターゲットの輝度レベルを基準ターゲットの輝度レベルに合わせて調整した結果、その輝度レベル差が視認できる限界における輝度レベル差をいう。具体的には調整ターゲットの輝度レベルをあと1レベル下げると、オペレータが調整ターゲットと基準ターゲットの輝度レベル差を識別できなくなる段階まで輝度レベルを調整する。
【0038】
医用画像表示装置10では、操作部12を介して調整ターゲットの輝度調整の操作がなされると、その操作信号が信号解析され、輝度レベルを上げる又は下げるの何れが操作指示されたのかが判別される(ステップS3)。輝度レベルを上げるように操作指示された場合(ステップS3;up)、調整ターゲットの駆動レベルDDLT[n]が1レベル分増加され、表示中の調整ターゲットが増加された駆動レベルDDLT[n]で表示駆動される(ステップS4)。一方、輝度を下げるように操作指示された場合(ステップS3;down)、調整ターゲットの駆動レベルDDLT[n]が1レベル分下げられ、表示中の調整ターゲットが下げられた駆動レベルDDLT[n]で表示駆動される(ステップS5)。すなわち、一操作に応じて1駆動レベル分だけ輝度レベルが上下されて表示される。なお、調整ターゲットの輝度レベルを下げる操作が繰り返された場合でも、調整ターゲットの輝度レベルが基準ターゲットの輝度レベル以下とならないように、基準ターゲットの駆動レベル以下となる調整操作を無効とする等してその調整操作を制限することとする。
【0039】
駆動レベルの調整操作が行われると、調整操作が終了したか否かが判別され(ステップS6)、まだ操作部12を介して調整操作が行われている場合は(ステップS6;N)、ステップS3の処理に戻り、入力される操作指示に従って輝度レベルが調整される。一方、調整操作が終了した場合(ステップS6;Y)、調整終了時におけるテストパターン[n]の調整ターゲットの駆動レベルDDLT′[n]が判別され、当該駆動レベルDDLT′[n]と基準ターゲットの駆動レベルDDLK[n]との差ΔDDLjnd[n]が算出される(ステップS7)。このΔDDLjnd[n]は、そのテストパターン[n]においてオペレータが視認可能な最小の輝度レベル差に対応する。
【0040】
次いで、全てのテストパターン[n]について上述した調整操作が終了したか否かが判別される(ステップS8)。全てのテストパターンについて調整操作が終了していない場合(ステップS8;N)、パターン番号nが1だけインクリメントされ(ステップS9)、ステップS2の処理に戻る。すなわち、次のテストパターン[n]の表示画面が表示され、調整操作が繰り返される。
【0041】
このようにパターン番号nを繰り上げてステップS2〜S7までの処理を繰り返すことにより、表示部13では、図7及び図8に示すように一画面に一のテストパターン[n]のみが表示され、そのパターン番号順に各テストパターン[n]が順次切り替え表示されていく。また、画面が切り替えられる毎に各切替画面におけるテストパターン[n]の背景領域の輝度レベルは、その画面で表示されたテストパターン[n]の基準ターゲットと同一輝度レベルで表示される。つまり、各切替画面で表示されたテストパターン[n]に対応して画面が切り替えられる毎に異なる輝度レベルで表示される。
【0042】
そして、全てのテストパターン[n]が表示され、調整操作が終了した場合(ステップS8;Y)、図9に示すように各テストパターン[n]の基準ターゲットの駆動レベルDDLK[n]に対して算出されたΔDDLjnd[n]がプロットされ、各プロット点の近似関数g(DDL)が算出される(ステップS10)。つまり、離散値である各ΔDDLjnd[n]が補間されて全レベル範囲の駆動レベルDDLに対応する連続値が得られる。つまり近似関数g(DDL)は、駆動レベルDDLと最小駆動レベル差ΔDDLjnd[n]との対応関係を示す関数である。
【0043】
次いで、算出された関数g(DDL)を駆動レベルDDL毎に積分した関数h(DDL)が下式3により算出される(ステップS11)。上記g(DDL)はh(DDL)の傾きを示す。
【数2】

【0044】
図10は、h(DDL)を示す図である。X軸は駆動レベルDDL、Y軸は駆動レベルDDLに対するh(DDL)を示す。このとき、医用画像表示装置10で駆動可能な最大駆動レベルDDLmaxに対応するh(DDL)の値をImaxとすると、このImaxが最大駆動レベルDDLmaxに対応するようにh(DDL)(つまり、Y軸の値)が正規化され、正規化されたh(DDL)を示すf(DDL)が下式4により算出される(ステップS12)。
【数3】

【0045】
そして、図10のX軸の単位である駆動レベルDDLを画像値の入力レベルに置き換え(図中のPmaxは医用画像表示装置10で表現可能な最大階調を示す)、Y軸の単位であるh(DDL)を算出されたf(DDL)に置き換えた、図11に示すような曲線が作成される。この曲線により、画素値の入力レベルが最終的にその入力レベルに視覚的にリニアな輝度レベルで表示されるように、画素値の入力レベルから対応する輝度レベルを実現する駆動レベルを得ることができる。つまり医用画像表示装置10の表示特性に応じて表示階調特性(つまり画素値の入力レベルとその入力レベルに応じて実際に表示された際の輝度レベルとの関係)を補正する補正曲線である。制御部31では、この補正曲線の入力値に対する出力値が算出されてテーブル化され、LUTが作成される(ステップS13)。作成されたLUTが医用画像表示装置10の表示階調特性を補正するためのLUTとして記憶部16に記憶されると、本処理を終了する。
【0046】
医用画像を表示する際には、作成されたLUTが参照され、医用画像の画素値の入力レベル(入力値)に対応する駆動レベル(出力値)を得て当該駆動レベルで表示駆動が行われる。LUTにより得られた駆動レベルは、その駆動レベルで駆動表示された際の輝度レベルが画素値の入力レベルと視覚的にリニアな関係となるように補正された駆動レベルであるので、医用画像表示装置10の表示特性及びオペレータの視覚特性に応じて、医用画像表示装置10の表示階調特性が補正されたこととなる。
【0047】
以上のように、本実施形態によれば、キャリブレーション用のテストパターンを表示する際に、一画面に一パターンづつ切り替え表示させる。よって、オペレータの視野に視認すべきテストパターン以外の他のテストパターンが入ることにより、視認精度が低下することを防止することができる。よって、より正確なキャリブレーションを行うことができる。
【0048】
また、各切替画面で表示されるテストパターン[n]の背景領域は、当該テストパターン[n]の基準ターゲットと同一輝度レベルで表示させるので、テストパターン[n]とともにその輝度レベルと同一の背景領域がオペレータの視野に入ることにより、オペレータの目がその輝度レベルに順応して視認精度が向上する。
【0049】
図12に示すグラフは、実際にテストパターン[n]が表示された際の輝度値(X軸、単位;cd/m2)に対し、それら各輝度値でオペレータが視認した最小輝度レベル差ΔDDLjnd[n]を基準ターゲットと調整ターゲットの平均輝度で除算して得られたコントラスト閾値(Y軸)をプロットしたものである。つまり、コントラスト閾値の値が小さい程、視認精度が向上していることを示す。
図中、実線Aは本発明により背景領域の輝度レベルをテストパターン[n]の輝度レベルに対応させた表示画面でテストパターン[n]の判定を行った場合(これを変動順応という)の測定結果であり、点線Bは背景領域の輝度レベルがテストパターン[n]の輝度レベルに拘わらず一定の輝度レベル(このときの輝度値は50cd/m2)に固定された表示画面でテストパターン[n]の判定を行った場合(これを固定順応という)である。
【0050】
図12に示すように、輝度値が50cd/m2以下の領域では、点線Bで示す固定順応の場合よりも実線Aで示す変動順応の場合の方がコントラスト閾値の値が小さく、視認精度が向上していることが分かる。
【0051】
なお、本実施形態では、背景領域の輝度レベルをテストパターン[n]の基準ターゲットと同一輝度レベルとすることとしたが、テストパターン[n]の輝度レベルに対応して背景領域の輝度レベルが変化するのであれば、例えば背景領域の駆動レベルをDDLK[n]とDDLT[n]の平均値とする、DDLK[n]〜DDLT[n]の範囲内で設定する等、他の値を設定することとしてもよい。
【0052】
さらに、各切替画面で表示するテストパターン[n]のサイズが表示画面のサイズに対して所定の比率となるようにサイズ変更を行って表示させるので、DICOM規格に従ったサイズでテストパターン[n]を表示させることもできるし、観察者の視覚特性に応じて視認率が向上するようなサイズでテストパターン[n]を表示させることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本実施の形態における医用画像表示装置10の内部構成を示す図である。
【図2】キャリブレーション処理時に表示されるテストパターン[n]を示す図である。
【図3】テストパターン[n]を形成する2つの表示領域について説明する図である。
【図4】ラインペアにより形成されるテストパターン[n]例を示す図である。
【図5】テストパターン[n]を形成するラインペアについて説明する図である。
【図6】医用画像表示装置10により実行されるキャリブレーション処理を説明するフローチャートである。
【図7】テストパターン[n](方形パターン)の表示画面例を示す図である。
【図8】テストパターン[n](ラインパターン)の表示画面例を示す図である。
【図9】関数g(DDL)を示す図である。
【図10】関数h(DDL)を示す図である。
【図11】医用画像表示装置10の表示階調特性を補正する補正曲線を示す図である。
【図12】変動順応、固定順応の場合における人の視認精度を示すグラフである。
【図13】従来のテストパターン例を示す図である。
【符号の説明】
【0054】
10 医用画像表示装置
11 制御部
12 操作部
13 表示部
14 通信部
15 RAM
16 記憶部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
医用画像表示装置の表示階調特性を補正するための複数のテストパターンを医用画像表示装置の表示手段に表示させるテストパターンの表示方法であって、
前記複数のテストパターンを一画面に一パターンづつ切り替えて前記表示手段に表示させるとともに、各切替画面において表示するテストパターンを表示画面のサイズに対して所定の比率で表示させ、かつ当該テストパターンの背景領域の輝度レベルを画面を切り替える毎に異なる輝度レベルで表示させることを特徴とするテストパターンの表示方法。
【請求項2】
前記テストパターンの背景領域の輝度レベルを各切替画面で表示するテストパターンの輝度レベルに対応させることを特徴とする請求項1に記載のテストパターンの表示方法。
【請求項3】
各切替画面において表示するテストパターンを表示画面のサイズに対して10%の比率で表示させることを特徴とする請求項1又は2に記載のテストパターンの表示方法。
【請求項4】
医用画像を表示する表示手段と、
医用画像表示装置の表示階調特性を補正するための複数のテストパターンを一画面に一パターンづつ切り替えて前記表示手段に表示させるとともに、各切替画面において表示するテストパターンのサイズを表示画面のサイズに対して所定の比率で表示させ、かつ当該テストパターンの背景領域の輝度レベルを画面を切り替える毎に異なる輝度レベルで表示させる制御手段と、
を備えることを特徴とする医用画像表示装置。
【請求項5】
コンピュータに、
医用画像を表示手段に表示させる機能と、
表示階調特性を補正するための複数のテストパターンを一画面に一パターンづつ切り替えて前記表示手段に表示させるとともに、各切替画面において表示するテストパターンを表示画面のサイズに対して所定の比率で表示させ、かつ当該テストパターンの背景領域の輝度レベルを画面を切り替える毎に異なる輝度レベルで表示させる機能と、
を実現させるためのプログラム。

【図1】
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【図6】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図8】
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【図13】
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【公開番号】特開2006−194(P2006−194A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−177008(P2004−177008)
【出願日】平成16年6月15日(2004.6.15)
【出願人】(303000420)コニカミノルタエムジー株式会社 (2,950)
【Fターム(参考)】