説明

テスト媒体

【課題】1つのテスト媒体中の最大4個(又は種類)までの個別の微生物を容易、迅速且つ高精度で検出、定量化、特定および分化するテスト媒体および方法を提供する。
【解決手段】テスト媒体は、周囲光の下で単一のテスト媒体中の一般大腸菌、E.C、エーロモナス属およびサルモネラ菌を含み得る、特定の酵素を生成する生物実体の集合体を定量化および分化するテスト媒体が開示されている。実質的に黒色の不拡散性沈殿物を生成する新たなクラスのノンクロモゲンサブストレートが開示されている。この沈殿物は、テスト媒体中に存在する他のクロモゲンサブストレートと干渉しない。1つの実施の形態では、テスト媒体中に存在するE.Cの群体が実質的に黒色を示し、一般大腸菌の群体がテスト媒体中で青紫色を示し、テスト媒体中に存在するエーロモナス属の群体が略赤桃色を示し、またサルモネラ菌の群体は略薄緑色を示す。検出および定量化のためその他の微生物および色も可能である。抑制剤およびそれを使用するテスト媒体の調製方法も開示している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はテスト媒体に関し、特に複数の生物体(バイオロジカルマテリアル)を含み得るサンプル(試料)内の生物体を検出、定量化、確認および/又は識別するテスト媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
バクテリアは、人体、高等動物および植物に多くの病気を生じさせる要因であり、一般に水、飲料物、食物その他の有機体等のキャリアにより運搬される。これらのバクテリアの潜在的なキャリアのテストは、極めて重要であり、一般に「指示生物(インジケータオーガニズム)」に依存している(Borrego等のMicrobiol. Sem. 13:413-426 (1998) 参照)。例えば、大腸菌(Escherichia coli、以下E.Cという)は、温血動物の通常の腸内細菌の一部であるエンテロバクテリア族のグラム陰性類であり、その存在は糞便の汚染(例えば、下水汚物)を示す。このE.Cの大部分の種族は病気の実際の原因ではないが、それらの存在はこれら、赤痢、肝炎その他の腸内病気に関連する病原体の存在を示す有力な目安になる。従って、E.Cは糞便汚染の主要な指示生物であるので、E.Cを他のバクテリアから識別および特定する方法は極めて有用である。
【0003】
また、通常「一般大腸菌(general coliform)」と呼ばれているエンテロバクテリアの他の種族、特にゼネラシトロバクタ(genera Citrobacter)、エンテロバクタ(Enterobacter)およびクレブシラ(Klebsilla)も水および飲食物の品質を示す有力な指示生物であると考えられている。従って、一般大腸菌をE.Cから確認又は同定(identify)および分化又は区別(differentiate)するテストも極めて有用である。また、エーロモナス属(genus Aeromonas)の多くの種族は、潜在的な病原体であるのみならず、他の指示生物と相関関係を有することが判明している(Pettibone等のJ. Appl.Microbiol. 85:723-730(1998)参照)。エーロモナス属を類似の腸内細菌から確認、分離および計数するテスト方法は不足しており、酵素サブストレートを使用する最近のテスト方法の大部分は、生物学的プロファイルが殆ど同じであるので、エーロモナス属を腸内細菌から分離できない。β−ガラクトシド(β-galactoside)サブストレートによる一般大腸菌を特定する方法は、エーロモナス属を一般大腸菌から分化できないか又は特定の反応抑制剤(Cefsulodin等の抗生物質)を使用してサンプルからエーロモナス属を排除するかの何れかである(Brenner等によるAppl.Envir. Microbio. 59:3534-44(1993)参照)。それらは、E.Cおよび一般大腸菌と共にエーロモナス属を分化、確認および計数できない(Landre等によるLetters Appl. Microbiol. 26:352-354(1998年)参照)。斯かるバクテリアのタイプを効果的に確認、分化および計数する改良された方法が必要であり、迅速、正確、使用が容易且つ一層多様性のあるこの分野におけるテスト方法および装置の研究が進められている。
【0004】
多くのテスト方法が使用され、1以上の指示生物を決定、確認および計数している。これらのテスト方法の幾つかは、微生物の有無を示すのみであり、他のものはサンプル中の1以上の特定生物の定量化を試みている。例えば、有無(又はP/A)テストと称される定性テストは、テストサンプル中の大腸菌およびE.Cの有無の決定に使用される。β−ガラクトシドサブストレートO‐ニトロフェニル‐β‐D‐ガラクトフィラノシド(ONPG)およびβ‐グルクロニダーゼ(β−glucuronidase)サブストレート4‐メチルアンブレリフェリル‐β‐D‐グルクロニド(MUG)を含むテスト媒体がサンプルに接種される。一般大腸菌をE.Cから識別するために、一般的に全ての大腸菌はβ‐ガラクトシダーゼを生成し、これに対しE.Cのみがβ‐ガラクトシタ−ゼに加えてβ‐グルクロニダーゼをも生成するという事実に、このテストは依存している。もし何らかの大腸菌(E.Cを含め)が存在すると、このブロス媒体(煮汁)は、ONPG体に対するガラクトシタ−ゼ酵素の作用で、拡散性の黄色顔料が解放されることにより黄色に変色する。もし、E.Cが存在すると、このブロス媒体は、紫外線を照射することによりMUG試薬が破壊され、グルクロニダーゼ酵素の生成により生じる蛍光性色素を解放し、青色蛍光を発する。これらの反応は極めて特殊であり、一般的に大腸菌およびE.Cの存在を単一のサンプルで特定可能にする。このテストの欠点の1つは、両試薬が拡散性の顔料(色素)を生成するので、何れかのバクテリアを直接定量化できないことである。他の欠点は、テストサンプル中にエーロモナス属が存在すると、偽の大腸菌陽性反応をすることである。この発生を防止することを意図する反応抑制剤が存在しても、これが生じることを示している(Landre等によるLettersAppl. Microbiol. 26:352-354(1998)参照)。また、このテストは、紫外線を発生させるための特殊機器を必要とする。更に、このテストは、大腸菌およびE.Cの検出のみに使用可能である。グルクロニダーゼ陰性である種族のE.C O157の如き他の重要な微生物は検出できないのみならず、他の非ガラクトシダーゼ‐グルクロニダーゼ生成微生物も同様である。
【0005】
Violet Red Bile Agar (VRBA)方法が使用され、テストサンプル内で大腸菌およびE.Cの量を決定する。この方法で使用されたテスト媒体は、胆汁塩(非大腸菌を抑制する)、ラクトスおよびpH指示薬中性赤を含んでいる。大腸菌(E.Cを含む)が媒体内で増殖すると、ラクトスは発酵して酸を生成し、バクテリア群体(コロニー)中で中性赤は、レンガ赤色になる。このテスト結果の解釈(判定)は容易ではなく、E.Cの存在を決定するには、明るい緑色のラクト−ス煮汁発酵、44.5℃のE.C煮汁中での増殖およびEosin Methylene Blue Agar(EMBA)のストリーキングの確認のための追試を行わなければならない。
【0006】
被膜フィルタ(MF)方法は、サンプルを通過させるとバクテリアが表面に残るようなミクロ細孔フィルタを使用する。この方法は、バクテリアの数が極めて少数であり、充分な個数を得るのに大きなサンプルが必要である場合に頻繁に使用される。次に、フィルタを選択された媒体の表面に載置し、被膜フィルタ上で増殖するバクテリア群体を計数し評価する。この方法は広く採用され且つ適当な試薬および媒体と共に使用すると良好な結果が得られる。この方法の欠点は、高価であり且つ時間を要することである。また、この方法は、固体サンプルおよび高粒子数の場合にはうまく機能しない。このMF方法は、本発明で説明する方法と共に使用可能である。
【0007】
m-Endo方法もE.Cおよび一般大腸菌の量を決定するために使用され、水質テスト方法としてUSEPA(米国環境庁)で公式承認された方法である。媒体は、一般に被膜フィルタと共に使用され、E.Cと群体形成単位(CFU)の一般大腸菌は、金緑金属光の暗い群体として増殖する。偽陽性エラー発生率が高いことが判明しているので、典型的な群体は、追加テスト(追試)で確認する必要がある(Standard Methods for the Examination of Water and Wastewater, 20th Edition,9-10&9-60(1998)参照)。
【0008】
Most Probable Number(MPN)等の他のテスト方法は、ブロス(LST、BGLB、EC)を含むラクトスを使用し、一般大腸菌およびE.Cの個数を推定するが、エラー率が高く、複雑であり且つ結果を得るまでに時間を要する(Evans等のAppl.Envir. Microbiol. 41-130-138(1981)参照)。
【0009】
5‐ブロモ‐4‐クロロ‐3‐インドリル‐β‐D‐ガラクトピラノシド(X-gal)試薬は、大腸菌を分化する周知のテスト化合物である。大腸菌により生成されたβ‐ガラクトシダーゼ酵素と作用すると、X-galはインジゴ青色の不溶性沈殿物を生じる。X-galは、寒天板等の栄養剤ベース(培養基)媒体と一体化させ、もしサンプルが大腸菌を含んでいると、大腸菌はインジゴ青色の群体を成長させる。X-galは、拡散性化合物ではなく水不溶性の沈殿物を形成し、テストサンプルを固体媒体内又は上に組み込むとき、又は液状媒体で飽和されたパッド上の被膜フィルタ表面又は固体媒体上に載せた被膜フィルタ上に大腸菌の群体が成長するとき、拡散性化合物ではなく水不溶性の沈殿物を形成するので、大腸菌の定量的な決定が可能になり、上述したONPG化合物に対して利点を有する。
【0010】
同様の化合物である5‐ブロモ‐4‐クロロ‐3‐インドリル‐β‐D‐グルクロニド(X-gluc)は、E.Cを確認する周知のテスト化合物である。大部分のE.Cにより生成されたβ‐グルクロニダーゼ酵素と作用すると、X-glucは、不溶性のインジゴ青沈殿物を形成する。X-glucは、上述の如くMUG化合物より利点を有する。即ち、拡散性化合物ではなく水不溶性の沈殿物を形成し、テストサンプルを固体媒体内又は上に組み込むとき、E.Cの定量決定が可能になる。X-glucおよびそのE.C特定作用は、Watkins等によるAppl.Envir. Microbiol. 54:1874-1875(1988)に説明されている。類似の化合物であり、E.Cのシャープな青群体を生じるインドキシル‐β‐D‐グルクロニドは、Ley等によるCan.J. Microbiol. 34:690-693(1987)に説明されている。
【0011】
X-galおよびX-glucは、大腸菌(X-gal)又はE.C(X-gluc)の定量決定にそれぞれ個別に有用であるが、これらの指示化合物は、同じクロモゲニック成分を含んでいるという欠点を有する。従って、これら両者は、同じインジゴ青群体を生じるので、単一サンプルを使用する1回のテストでE.Cおよび一般大腸菌の両方を確認・分化するために一緒に使用することはできない。両方の試薬を使用する者は、X-galのみを使用するのと同様に、大腸菌の合計数量を定量確認することができるが、どの群体がE.C以外の他の大腸菌であるか指示できない。
【0012】
1つのテストサンプルで大腸菌およびE.Cを定量確認および分化する最近開発され且つ商業的に大変成功しているテスト媒体は、本発明の発明者と共通する米国特許第5210022号および同第5393662号に開示されている。そこで、これらを本願発明の参考文献とする。この方法およびテスト媒体は、単一サンプル中の一般大腸菌およびE.Cを定量確認および分化可能であるという点で従来技術を改善する。更に、確認テストが不要である。テストサンプルを6‐クロロインドリル‐β‐D‐ガラクトシド等のβ‐ガラクトシダーゼサブストレートおよび5‐ブロモ‐3‐インドリル‐β‐D‐グルクロニド(X-gluc)等のβ‐グルクロニダーゼサブストレートを含んでいる媒体に加えられる。β‐グルクロニダーゼサブストレートは、β‐ガラクトシダーゼと反応して第1色の水不溶性沈殿物を形成可能であり、一方、β‐グルクロニダーゼサブストレートは、β‐グルクロニダーゼと反応する場合の第1色と対比される第2色の水不溶性沈殿物を形成可能である。その結果、第1色の群体(β‐ガラクトシダーゼ作用を有する)の個数を数えることにより一般大腸菌の定量化が可能である。一方、E.Cは、第2色の群体(β‐ガラクトシダーゼおよびβ‐グルクロニダーゼの両機能を有する)を数えることにより定量化可能である。この技術は広くコピーされている。
【0013】
最近開発された別のテスト方法および装置は、一般大腸菌、E.CおよびE.C O157種族および非大腸菌を確認・分化するのに優れた成果を得ている。この方法およびテスト媒体は、本発明の発明者と共通する米国特許第5726031号に開示されており、ここに参考資料として組み込む。
【0014】
ここで、「非クロモゲン(nonchromogenic)」という一種のサブストレートが、各種微生物の検出に使用されている。Dalet等によるJ. Clin.Microbiol. 33(5):1395-8(1995)には、ヒドロキシキノリン‐β‐D‐グルクロニドを使用するE.Cを検出するデップスライド(dipslide)が開示されている。同様に、8‐ヒドロキシキノリン‐β‐D‐グルクロニドを使用する寒天ベース媒体中のE.Cの検出技術は、James等によるZentrabl Bakteriol Mikrobiol Hgy [A], 267(3):316-21 (1988)に開示されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
テスト媒体に生じる識別可能な色を一層改善するのが好ましい。即ち、2つの生物実体を検出・分化する従来のテスト媒体では、媒体内に現れる2色間に混乱を生じ得るので、これを一層改善するのが好ましい。
【0016】
更に、エーロモナス属、ビブリオ菌およびサルモネラ菌のファミリメンバー等の密接に関連する生物を確認・分化可能にするのが好ましい。例えば、エーロモナス属は、大腸菌に関連し且つ殆ど同じ生化学テストパターンを生じる。更に、ビブリオ菌もまた、重要なバクテリアタイプであり、大腸菌と同じ一般的条件下で増殖する。一定サンプル内の全ての群体にシトクロムオキシダーゼの存在をテストすることによりエーロモナス属の群体を一般大腸菌から識別することは知られている。しかし、これには別の一連のテストが必要である。更に、エーロモナス属は、水や食物に共通であり、一般大腸菌としてテストサンプル中には普通に指示され、最近の多くのテスト方法ではエラーとなることが多い。媒体にある種の抑制剤を加えることにより大腸菌の結果が干渉されるのを防止可能である。しかし、加える抑制剤の量は、慎重に制御しなければならない。更に、従来使用されてきた抑制剤は、媒体内での寿命が短く、凍結状態でなければその威力を急速に失う。抑制しないとできなかったエーロモナス属を培養、確認および計数可能にできるのが好ましい。
【0017】
更に、エーロモナス属を抑制したい場合に、抑制剤の付加により媒体のシェルフ寿命を余り短縮することなく、より良い方法で行うのが好ましい。更にまた、サルモネラ菌をE.C、一般大腸菌およびエーロモナス属から識別可能にするのが好ましい。
【0018】
本発明は、従来技術の上述した種々の課題に鑑みなされたものであり、複数の異なる生物実体を含み得るテストサンプル内の性靴実体を定量的および定性的に特定・識別するテスト媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上述した目的を達成するために、本発明の1実施形態のテスト媒体は、「ノンクロモゲン」サブストレートを使用してテスト媒体中に存在する複数の異なる生物実体により生じる種々の色の差(色差)を際立たせる。予想外であったが、テスト媒体中に存在する他の「クロモゲン」サブストレートは、ノンクロモゲンサブストレートにより達成される実質的に黒色と干渉しないことが判明した。即ち、ある生物実体がノンクロモゲンサブストレートに応答(又は反応)する限り、テスト媒体中に存在するこれらの集合体は、この生物実体がこのテスト媒体中に存在する1、2又はそれ以上のクロモゲンサブストレートが存在することとは無関係に実質的に黒色を示す。本発明のテスト媒体は、新たに見出されたノンクロモゲンサブストレートの特性を活用するものである。
【0020】
その1例によると、本発明は、第1および第2生物実体を検出、分化および定量化又は定性化するテスト媒体を提供する。このテスト媒体は、塩イオン、クロモゲンサブストレートおよびノンクロモゲンサブストレートを含む栄養剤ベースを含んでいる。第1生物実体はノンクロモゲンサブストレートに応答し、第2生物実体はクロモゲンサブストレートに応答する。このテスト媒体において、このテスト媒体中に存在する第1生物実体の集合体は実質的に黒色であり、このテスト媒体中に存在する第2生物実体の集合体は実質的に黒色と識別可能な第2色である。
【0021】
本発明のテスト媒体の1例では、クロモゲンサブストレートに加えてノンクロモゲンサブストレートに応答する第1生物実体を計数する。その場合に、テスト媒体中に存在する第1生物実体の集合体は、それにもかかわらず実質的に黒色を示す。
特に、第1生物実体の集合体は、この形態では第1および第2サブストレートの両方に応答するけれども、これらの集合体はテスト媒体中では実質的に黒色を示す。即ち、クロモゲンサブストレートは、実質的に黒色と干渉しない。そこで、クロモゲンサブストレートのこの特性により、単一のテスト媒体中で幾つかの生物実体の特定および分化が可能になり、各生物実体の集合体は、それぞれ目視で区別可能な色を有する。
【0022】
上述した本発明のテスト媒体の他の例では、このテスト媒体は、エーロモナス属の成長を抑制する抗生物質であるナリディック酸(nalidixic Acid)を更に含んでいる。
【0023】
本発明の他の実施の形態は、少なくとも1つの第1タイプの生物実体を検出し、第2タイプの生物実体が成長するのを抑制するテスト媒体の製造方法である。このテスト媒体の製造方法は、所望のサブストレートを栄養剤ベース媒体と組み合わせるステップと、この媒体に抑制剤を加えるステップと、その後に媒体を少なくとも100℃に晒して殺菌するステップとを含んでいる。これにより、抑制剤は初期のステップで加えているので、抑制剤の殺菌ステップを不要にする。
【0024】
本発明の他の例では、第1、第2および第3生物実体を検出、分化および定量化又は定性化するテスト媒体を提供する。このテスト媒体は、塩イオンを含む栄養剤ベースを含んでいる。第1および第2クロモゲンサブストレートおよびノンクロモゲンサブストレートがテスト媒体中に提供される。第1および第2生物実体はそれぞれ第1および第2クロモゲンサブストレートに応答し、第3生物実体はノンクロモゲンサブストレートに応答する。テスト媒体中に存在する第1生物実体の集合体は第2色であり、テスト媒体中に存在する第3生物実体は実質的に黒色である。
【0025】
本発明によるテスト媒体の1例では、第1および/又は第2クロモゲンサブストレートに加えてノンクロモゲンサブストレートに応答する第3生物実体を計数する。この場合に、第3生物実体の集合体は、それにもかかわらず実質的に黒色を示す。
【0026】
本発明のその他の例によると、一般大腸菌および/又はE.Cを通常の光環境下で検出、定量化および分化し得るテスト媒体を提供する。このテスト媒体は、塩を含む栄養剤ベースよりなる。E.Cの存在下で第1色の第1水不溶性成分および塩イオンが形成可能な第1サブストレートが媒体中に設けられる。この第1色は実質的に黒色である。一般大腸菌の存在下で第2色の第2水不溶性成分を形成可能な第2サブストレートが設けられる。第2色は、第1色から目視により識別可能である。よって、テスト媒体中のE.Cの群体は第1の実質的に黒色で指示され、一般大腸菌の群体は第2色で指示される。
【0027】
上述した本発明の1形態では、テスト媒体は、サルモネラ菌の存在下で第3色の第3水不溶性成分を形成可能な第3サブストレートを更に含んでいる。この第3色は、上述した第1色および第2色と区別可能であるので、このテスト媒体は、E.C、一般大腸菌およびサルモネラ菌を定量化および/又は分化可能である。更に、これらのサブストレートは、テスト媒体中に存在する一般大腸菌が、第3サブストレートと反応して第3色を含む水不溶性成分を形成するように選択される。その結果、一般大腸菌の群体は、テスト媒体中で第2色と第3色の混合色である第4色で指示される。この第4色は、第1色および第3色から目視により区別可能である。更にまた、これらのサブストレートは、エーロモナス属が第2サブストレートと反応し、第1および第3サブストレートと反応せず、第2色の水不溶性成分を形成するように選択可能である。よって、このテスト媒体によると、E.C群体は実質的に黒色、一般大腸菌の群体は第4色、エーロモナス属は第2色およびサルモネラ菌は第3色となる。
【0028】
本発明の他の形態によると、テストサンプル中の一般大腸菌、E.Cおよびエーロモナス属およびサルモネラ菌の少なくとも1つを通常の光環境下で検出、定量化および分化可能にする方法を提供する。この方法は、第1、第2および第3サブストレートを含む栄養剤ベース媒体を提供するステップよりなる。これら各サブストレートは、一般大腸菌、E.C、エーロモナスおよびサルモネラ菌の少なくとも1つの存在下で水不溶性成分を形成可能である。これらのサブストレートは、テスト媒体中におけるE.Cの群体の存在が第1色を生成し、一般大腸菌の群体の存在で第2色を生成し、エーロモナス属およびサルモネラ菌の1つの群体の存在で第3色を生成するように選択される。これらの色は、目視により区別可能である。このテスト媒体は、テストサンプルに植え付けられ培養される。次に、このテスト媒体は、第1色の第1群体、第2色の第2群体、および第3色の第3群体の有無が検査される。第1群体はE.Cであり、第2群体は一般大腸菌であり、そして第3群体はエーロモナス属又はサルモネラ菌である。
【0029】
本発明の1例によると、このテスト方法はテスト媒体に塩イオンを加えて1以上のサブストレートと反応させるステップを更に有する。これにより、そのサブストレートに対して特定の酵素が存在すると実質的に黒色である沈殿物を生成する。塩イオンの存在下でこの実質的に黒色を形成する好適な化合物は、β‐D‐グルクロニドである。これらの化合物は、加水分解されるとアグリコンを解放し、イオンの存在下で実質的に黒色の不溶性剛生物を形成する。
【0030】
本発明の他の形態によると、この方法はテスト媒体を検査して第4色を有する第4群体の有無を調べる。ここで、これらのサブストレートは、エーロモナス属の群体は第3色であり、サルモネラ菌の群体は、第1色、第2色および第3色と区別可能な第4色であるように選択される。これらのサブストレートは、第1色が実質的に黒色、第2色が実質的に青紫色、第3色が実質的に赤桃色および第4色が実質的に薄緑色となるように選択される。
【0031】
本発明の他の形態では、サブストレートは、エーロモナス属の群体およびプレシオモナス属(Plesiomonas)およびビブリオ菌(Vibrios)の群体が第3色で指示されるように選択される。
【0032】
本発明の1実施形態によると、サブストレートは恐らく拡大手段以外の紫外線(UV光線)の他の視力補助具を必要とすることなく、色が相互に目視により容易に区別可能なように選択される。例えば、1実施形態では、E.Cの群体は実質的に黒色の沈殿物により明瞭に指示され、一般大腸菌の群体は青紫色により指示され、エーロモナス属の群体は赤桃色で指示され、サルモネラ菌の群体は薄緑色で指示される。これらの色は目視的に明らかに区別可能であるので、従来の媒体に比較して色間の混乱は大幅に排除可能である。1実施形態では、MUGluc(4-methylumbelliferyl-Beta-D-glucuronic acid)がノンクロモゲンサブストレートとして使用される。このテスト媒体において、一般大腸菌の群体は、青紫色又は灰色がかった色で指示される。エーロモナス属の群体は赤桃色で指示され、サルモネラ菌の群体は薄緑色で指示されるが、E.Cの群体は可視光線の下では一般大腸菌と同じに見えるが、長波長UV光線の下では明るい青みがかった色で蛍光を発するので、他の群体と区別可能である。蛍光性生成物はクロモゲンサブストレートやノンクロモゲンサブストレートよりも早く拡散するのでE.Cの群体の定量化を困難にするが、E.C群体は約14時間の培養で検出可能であるので、E.Cの有無テストとしては何れでも満足であろう。
【0033】
本発明の更に他の実施の形態では、適切に組み合わせると、3個のクロモゲンサブストレートが使用可能であることが判明した。例えば、X-Gluc(5‐ブロモ‐4‐クロロ‐3‐インドリル‐β‐D‐グルクロニン酸)又はIndo-Gluc(5‐インド‐3‐インドリル‐β‐D‐グルクロン酸)等のβ‐グルクロニドがα‐およびβ‐D‐ガラクトシドサブストレートと共に使用可能である。適当なα‐およびβ‐ガラクトシドサブストレートの例は、6‐クロロ‐3‐インドリル‐β‐D‐ガラクトシドおよび5‐ブロモ‐4‐クロロ‐3‐インドリル‐α‐D‐ガラクトシドである。この実施の形態において、β‐D‐グルクロニドおよびα‐D‐ガラクトシドサブストレートは、それぞれの酵素を生成する群体の存在下で同じ一般色を生じるが、異なる量のサブストレートを提供することにより色が区別でき、1つにより得られる色は他のものにより得られる色よりも濃い。加えて、仮に略同じ量のサブストレートが提供されても、β‐D‐グルクロニドおよびα‐D‐ガラクトシドの両方と反応するE.Cの如き群体は、α‐D‐ガラクトシドのみと反応する一般大腸菌等の群体とは濃くなる筈である。また、ノンクロモゲンサブストレートが使用されなければ、塩イオンを加える必要はないことが理解できよう。
【0034】
本発明の更に他の観点によると、MUGluc又はその他の蛍光性グルクロニドサブストレートをテスト媒体中でクロモゲン又はノンクロモゲンサブストレートと合体する。この場合には、MUGlucサブストレートは、クロモゲン又はノンクロモゲンサブストレートで群体の検出に要する時間よりも短い培養時間で、蛍光光源の下でE.Cの検出に使用可能である。加えて、MUGlucサブストレートは、何らかの理由でこれらサブストレートの存在下で群体が生成する周囲光の下での色に疑義がある場合に、E.Cの有無に関する確認が可能である。
【発明の効果】
【0035】
上述の説明から理解される如く、本発明のテスト媒体によると種々の特有の効果を奏する。即ち、ノンクロモゲンサブストレートを1以上のクロモゲンサブストレートと共に使用するので、相乗(シナージ)効果により他に各テスト媒体中で検出および識別可能な生物実体の数を増加することができ、また検出される特定の生物実体の組(セット)に対して可能な色の組み合わせを大幅に増加する。換言すると、サブストレートの1つとしてノンクロモゲン成分を含むことにより、他のサブストレートの選択およびテスト媒体に対する対応する色の自由度を大幅に増加する。その理由は、ノンクロモゲンアブストレートに応答する生物実体の集合体は、実質的に黒色を示すからである。ノンクロモゲンサブストレートでは色混合又は合成効果を考慮する必要がないからである。例えば、3個のクロモゲンサブストレートと1個のノンクロモゲンサブストレートを含むテスト媒体中において、4個のクロモゲンサブストレートを使用する場合に比較して、1個のノンクロモゲンサブストレートの使用により少なくとも3つの色混合効果が回避できる。
【0036】
また、本発明のテスト媒体によると、1個以上のクロモゲンサブストレートと共に1個のノンクロモゲンサブストレートの使用により、テスト媒体の色選択の自由度を著しく増加可能である。その理由は、クロモゲンサブストレートがノンクロモゲンサブストレートにより形成される実質的に黒色の沈殿物と干渉しないためである。
本発明によるテスト媒体の実施の形態による他の効果は、周囲光の下で、単一テストサンプルを使用する単一のテスト媒体中で同時に4種の異なるバクテリアの定量化、特定および分化を可能にする。それらに付随する追試による余分な時間およびコストが回避可能である。本発明によるテスト媒体は、単なる有無(P/A)テストとして純粋に定性目的でも使用可能であること勿論である。
【0037】
本発明によるテスト媒体の別の効果は、そのテスト媒体の柔軟性および使用の容易性である。ここで述べた生物の成長および分化は最適レンジで生じるので、培養温度はクリティカルではない。従って、復活ステップは回避でき且つ温度に敏感な種族の抑制は起こらない。更に、安価な器具が使用可能である。
本発明の1実施の形態において、テスト媒体中で得られる色識別は、E.Cを一般大腸菌から特定および分化のために強化可能である。1つのテスト媒体において、E.Cの群体は実質的に黒色を呈し、一方一般大腸菌は赤桃色を呈するので、これらの区別は従来のテスト媒体における場合に比して一層明瞭である。これら両色間の混乱は大幅に減少される。
【0038】
本発明の別の効果は、エーロモナス属を一般大腸菌から特定および分化可能であることである。従来のテスト媒体では、不本意ながらエーロモナス属が内部で成長するのを阻止するセフスロディン(cefsulodin)抑制剤を使用する必要があった。しかしながら、抑制剤としてセフスロディンを使用するには、余分な工程が必要であった。即ち、殺菌処理した抗生物質フィルタの殺菌工程を必要とし、これは制御が困難であった。更に、セフスロディンの存在は、媒体の有効保存寿命を大幅に短縮した。更にまた、抑制剤を使用すると、エーロモナス属の検出および定量化を阻止した。しかし、本発明によると、エーロモナス属は単一媒体中で検出、定量化および分化を可能にする。
【0039】
更に関連する効果として、テスト媒体中でエーロモナス属の群体が成長するのを阻止したい場合には、本発明はそのための優れた手段を提供できる。特に、本発明の好適実施の形態によると、テスト媒体の保存寿命に対する悪影響がはるかに少ないことが知られているナリディック酸を抑制剤として使用する。更に、このナリディック酸は、殺菌工程の前の媒体製造の初期工程の一部として加えることが可能であるので、セフスロディンの場合に必要であった高価且つ困難な工程を避けることが可能である。最後に、このナリディック酸は、セフスロディンに比較してはるかに安価である。
【0040】
本発明の更に他の効果は、定量化又は定性化のためのテスト媒体が提供可能であることである。即ち、本発明のテスト媒体によると、単なる有無のテストデバイスとして使用可能であるのみならず、テスト媒体上の異なる色として指示される各種生物実体の定量化にも使用可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
以下、本発明によるテスト媒体の好適実施の形態について、具体例を挙げて詳細に説明する。本発明のテスト媒体および方法は、複数の生物実体が混在するサンプル中における種々の選択された生物実体の同時検出、定量化、特定および分化を可能にする。本発明のテスト媒体および方法は、E.Cおよび一般大腸菌の検出、定量化、特定および分化に特に有用であり、更にエーロモナス、サルモネラ菌およびビブリオバクテリア種族を含む他の選択された生物実体と定量化、特定および分化するのに有用である。
【0042】
本発明が組み込まれた方法およびテスト媒体は、生物実体、特にバクテリアの酵素活動は、関心あるバクテリアの種族および/又はファミリと共に変化するという事実を活用するものである。更に、本発明を組み込む方法およびテスト媒体は、サブストレートコンプレックスを特定する各種酵素が、特定色の生成と共に特定酵素の特定に使用できるという事実を活用している。特に、本発明の1実施の形態では、本発明を組み込む方法およびテスト媒体は、テスト媒体中のクロモゲンサブストレートがノンクロモゲンサブストレートにより生成された実質的に黒色と干渉しないという事実を活用するものである。
【0043】
ノンクロモゲンサブストレート自体は当業者に知られているが、それらのクロモゲンサブストレートに対する独特の特性は認識されていなかった。しかし、複数のクロモゲンサブストレートの組み合わせを含む媒体内でのノンクロモゲンサブストレートの反応はユニークである。具体例を示すと、2つのクロモゲンサブストレートに反応する生物実体の集合体は、2つのサブストレートそれぞれの分裂(cleavage)により生成される色は、テスト媒体中では2色の混合色となるのが典型的である。本発明の他の実施の形態として、3種のクロモゲンサブストレートが含まれていると、合成色の効果は予測困難である。更に、特定の生物実体の種族により生成された酵素量の変化は、クロモゲンサブストレートの分裂により異なる色合いや色相を生じえる。その結果、テスト媒体を調べる素人(未熟練者)が色を識別することは困難である。従って、特定のテスト媒体に含めるように予定された他のクロモゲンサブストレートを考慮してクロモゲンサブストレートの選択および使用濃度を決める必要がある。
【0044】
しかし、このことはノンクロモゲンサブストレートの場合には不要である。クロモゲンサブストレートおよびノンクロモゲンサブストレートに応答する生物実体の集合体は、テスト媒体中で色又は蛍光の「ハロー」効果を示し、これらの集合体はそれにもかかわらず実質的に黒色に見え且つ識別容易である。多数の「自由度」は、ノンクロモゲンサブストレートにより達成される。
【0045】
ノンクロモゲンサブストレートの使用は、単一のテスト媒体により4種類の異なるバクテリア種族を4つの目視で識別可能な色で分化し得る1つの方法である。黒色は誤解される虞が少ない。更に、実質的に黒色の顔料(色素)は、拡散しないので、群体の位置を正確に知ることができ且つ群体を正確に数えることができる。ノンクロモゲンサブストレートは、不溶性のチェレート(chelated)化合物を生成し、これはクロモゲンサブストレートにより生成されるディマー(dimer)とは異なる。
【0046】
本発明によるテスト媒体および方法は、一般大腸菌およびE.Cのみならず、サルモネラ菌およびエーロモナス属およびプレシモナスおよびビブリオ菌の検出、定量化又は定性化特定および分化を可能にする。プレシモナスおよびビブリオ菌は決定可能であるが、エーロモナス属とは極めて近い関係にあるので、分化することはできない。
(定義)
【0047】
以下、本明細書中で使用される主要な用語を定義する。一般大腸菌およびE.C等の生物実体は、ここでは特定のクロモゲンおよびノンクロモゲンサブストレートに「反応」するという。特に、生物実体は、それが以下に説明する如きテスト媒体中に存在するとき、特別の酵素を予測可能に生成する。これらの酵素は、クロモゲンおよびノンクロモゲンサブストレートを選択的に分裂する。これらのサブストレートは、分裂により、テスト媒体中に色を生成する。色を生成するメカニズムは、以下に説明する如く、クロモゲンおよびノンクロモゲンサブストレートで異なる。
【0048】
β‐ガラクトシシダ活動を有する微生物は、「大腸菌」と一般に称されているものを含んでいる。「大腸菌」には種々の定義があるが、一般的に受け入れられている定義は、エンテロバクテリア種族(ファミリ)であり、ガスと酸の放出により乳糖(シュガーラクトース)を発酵させる能力を有する。大部分の大腸菌は、α‐およびβ‐ガラクトシダーゼに対して陽性である。即ち、これらはα‐およびβ‐ガラクトシダーゼの双方を生成する。
【0049】
ガラクトシダーゼ活動に加えてβ‐グルクロニダーゼ活動を有する微生物は、大部分のE.C種族を含んでいる。即ち、E.Cは、β‐グルクロニダーゼと共にα‐およびβ‐ガラクトシダーゼの双方に陽性である。
【0050】
本明細書中で使用される「一般大腸菌」の用語は、E.Cの各種族以外の大腸菌である。これらの「一般大腸菌」は、一般にα‐およびβ‐ガラクトシダーゼ活動(即ち、ラクトス発酵)を有するグラム陰性、ノンスポアー(非胞子)形成微生物であるが、β‐グルクロニダーゼ活動を有せず且つシュガーソービトル(sorbitol)を発酵する機能を有する。
【0051】
本明細書の目的では、「クロモゲンサブストレート」とは、加水分解して色形成にはテスト媒体中に付加的な化学物質が不要であるサブストレートである。即ち、クロモゲンサブストレートは、そのサブストレートに対応する特定の酵素により分裂して、サブストレートの分裂領域に色が集中するdimerを形成する。多くのクロモゲンサブストレートが当業者には知られている。本明細書の目的では、「クロモゲン」はフルオロゲン(fluorogen)サブストレートも含む。フルオロゲンサブストレートのプロダクトは、検出に紫外線(UV)が必要であり、他のクロモゲンサブストレートよりも一層水溶性である。
【0052】
ここでは「ノンクロモゲン」というある種のサブストレートは、塩イオンと酵素活動の存在により暗い実質的に黒色の沈殿物を生成する。例えば、8‐ヒドロキシキノリン‐β‐D‐グルクロニドは、鉄クエン酸アンモニウムの如きイオンを生成する塩と共に媒体内に含まれると、E.C又はその他の生物実体により生成されたβ‐グルクロニダーゼの存在下で実質的に黒色の沈殿物を生成する。特に、特定の酵素によりノンクロモゲンサブストレートが分裂すると、実質的に黒色の水不溶性合成物が媒体内に形成される。この実質的に黒色の沈殿物は、E.Cからのグルクロニダーゼによりハイドロライズされるとき解放される鉄イオンおよびアグリコンよりなる。この沈殿物は、chelated化合物であり、拡散しない。また、この実質的に黒色は、テスト媒体内に存在するクロモゲン化合物と干渉することもない。
【0053】
本明細書の目的では、「ノンクロモゲンサブストレート」とは、サブストレートが対応する酵素により分裂されるとき、クロモゲンサブストレートと共に使用されるものに加えてケミカル(化学物質)がテスト媒体中に存在しなければならないことを意味する。これにより形成される実質的に黒色の沈殿物は、サブストレートと塩化合物の組み合わせであり、「クロモゲン化合物」により形成されるdimerではない。
【0054】
本明細書の目的では、「環境光の下で」との表現は、可視スペクトラム、即ち裸眼により見え且つ区別可能な色である。例えば、観測に紫外線が必要であるテスト媒体中に存在する群体は、この「環境光の下で」の定義には入らない。しかし、「環境光の下で」という用語は、必要に応じて拡大器具の使用を含むことに留意されたい。拡大は、多数の群体の係数に特に有用である。「目視で区別可能」との用語は、環境光の下で2以上の色が区別可能であることを意味する。
【0055】
本明細書の目的で、「実質的に黒色」とは、暗い褐色から黒を含み、赤紫、緑、蛍光等の如き種々の色のハローを有する黒色も含む。
【0056】
更に、本明細書の目的では、ここで言及される色は、単にガイダンス(目安)としており、ここで言及される色は広く解釈されるべきである。即ち、ここで言及される色にはオーバーラップがあり得る。その理由は、ここで説明する生物実体は、異なる量の酵素を生成し、その結果得られる色の色合いや色相が影響を受けるためである。
【0057】
本明細書中で使用される「β‐ガラクトシダーゼサブストレート」の用語は、βリンクにより置換体に結合されたガラクトースよりなるβ−ガラクトシドを意味し、サブストレート上でβ‐ガラクトシダーゼの作用により解放又は遊離されるとき、検出可能な化合物を形成する。同様に、「α‐ガラクトシダーゼサブストレート」の用語は、αリンクにより置換体に結合されたガラクト−スよりなるα‐ガラクトシドを意味し、サブストレート上でα‐ガラクトシダーゼの作用により解放されるとき、検出可能な化合物を形成する。本明細書中で使用される「β‐グルクロニダーゼサブストレート」の用語は、βリンクにより置換体に結合されたβ‐グルクロン酸よりなるβ‐グルクロニドを意味し、サブストレート上でβ‐グルクロニダーゼの作用により解放されるとき、検出可能な沈殿物を形成する。
【0058】
ここで説明されるα‐およびβ‐ガラクトシダーゼサブストレートおよび化合物並びにその他のサブストレートと、ここで説明されるβ‐グルクロニダーゼサブストレートおよび化合物並びにその他のサブストレートとは、適当なベースが適当なガラクトシド又はグルクロンカルボキリルグループと反応してカルボン酸塩を生じ得る。ここで、適当なベースは、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物又は炭酸塩であり、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウムおよび対応する炭酸塩、アンモニア等の窒素ベース、およびトリメチルアミン、トリエチルアミンおよびシクロヘキシルアミン等のアルキルアミンを含んでいる。
(特定生物実体用のテスト媒体のデザイン)
【0059】
エンテロバクテリアファミリのある種のメンバーは、β‐ガラクトシダ−ゼ活動のないα‐ガラクトシダーゼ活動の存在下で、又はその逆の条件下で識別可能である。例えば、サルモネラ菌およびシゲラ菌の大部分は、α‐ガラクトシダーゼに対して陽性であるが、β‐ガラクトシダーゼには陰性である。同様に、エーロモナス属は、α‐ガラクトシダーゼ活動のないβ‐ガラクトシダーゼ活動の存在下でエンテロバクテリアファミリの他のメンバーから識別可能である。本発明による方法および媒体は、これら識別する特徴乃至特性を意図的且つ積極的に活用するものである。例えば、一般大腸菌に対し、サルモネラ菌およびエーロモナス属の酵素活動の特異性については、以下に説明する。
【0060】
ここで説明する方法は、上述した微生物の異なるクラス、即ち一般大腸菌、E.C、エーロモナス属およびサルモネラ菌の検出、定量化又は定性化特定および分化に特に好適である。本発明の方法はこれら特定の微生物に特に好適であるが、これらに限定するものではなく、ここで説明する技法は種々の生物実体の特定および分化に応用され得ることに留意されたい。
【0061】
即ち、特定の生物実体は、種々のサブストレートに「応答」する。特に、これらの生物実体は、既知の酵素を予測可能に生成し又は含む。クロモゲン又はノンクロモゲンサブストレートは、これら特定の酵素の存在下で選択され、予測可能且つ識別可能な色の生成物を生成する。複数のサブストレートを選択して単一テスト媒体中の複数の生物実体を同時に識別でき、各実体の集合体は別の識別可能な色で特定される。更に、ここに開示される実施の形態の中には、ここで定義された周囲光の下でテスト媒体中に存在する集合体の全てを識別可能なものがある。例えば、ここに開示される幾つかのサブストレートは、テスト媒体中に存在する集合体を見るのに紫外線を使用する必要がある。
【0062】
表1は、表2にリストしたサブストレートを使用して存在が検出可能である各種酵素のリストである。
【表1】

【0063】
【表2】

【0064】
本発明によるテスト媒体と共に使用し得る特定のサブストレート化合物は、以下のとおりである。
5‐ブロモ‐4‐クロロ‐3‐インドリル‐β‐D‐ガラクトピラノシド(X-gal)は、β‐ガラクトシドと反応するとき略薄緑色を有する不溶性沈殿物を生成する市販のβ‐ガラクトシダーゼサブストレートであって、米国イリノイ州ナッパビルのバイオシンスインターナショナル社から入手可能である。
6‐クロロ‐3‐インドリル‐β‐D‐グルクロニドは、マジェンタ色を有する不溶性沈殿物を生成する化合物であり、上記の会社の米国特許第5210022号公報にその製法が開示され、米国オハイオ州クリーブランドのリサーチオーガにクス社から入手可能である。
5‐ブロモ‐4‐クロロ‐3‐インドリル‐β‐D‐グルクロニド(X-gluc)化合物は、β‐グルクロニドと反応すると略薄緑色を有する不溶性の沈殿物を生成する市販のβ‐グルクロニド化合物である。同様に、インドリル‐β‐グルクロニドも同様の化合物であり、上述したLey等によるCan J. Microbiol.の記事中にその製法が説明されており、この説明書をここに参考文献として組み込む。
【0065】
別の好適なβ‐ガラクトシドは、6‐クロロ‐3‐インドリル‐β‐D‐ガラクトシド化合物であり、桃色/マジェンタ色の不溶性沈殿物を生成し、この沈殿物については上述した米国特許第5210022号公報に開示されている。
本発明を実施するためのサブストレートとして好適な他の化合物は、米国特許第5210022号公報に開示されているので、この公報の全てをここに参考資料として組み入れる。
8‐ヒドロキシキノリン‐β‐D‐グルクロニドサブストレートは、市販のβ‐グルクロニドであり、鉄等の金属イオンの存在下でβ‐グルクロニダーゼと反応し且つ他のα‐又はβ‐ガラクトシドサブストレートの存在下で、実質的に黒色の不溶性沈殿物を生成する。8‐ヒドロキシキノリン‐β‐D‐グルクロニドは、米国イリノイ州ナッパビルのバイオシンスインターナショナル社から入手可能である。
更に、本発明と共に使用するのに好適なイオンを提供する塩は、鉄クエン酸アンモニウムであり、米国ミズーリ州セントルイスのシグマケミカル社から入手可能である。シクロヘキサノエスクレチンサブストレートは、James等のAppl. & Envir. Micro. 62:3868-3870 (1996)に説明されており、鉄イオンの存在下で実質的に黒色の不溶性沈殿物を生成する。
【0066】
N‐メチルヒドロキシ‐β‐D‐ガラクトピラノシドの如きN‐メチル‐インドリルサブストレートは、米国イリノイ州ナッパビルのバイオシンスインターナショナル社から入手可能である。
2‐ニトロフェニル‐β‐D‐ガラクトピラノシドの如きニトロフェニルサブストレートは、上述したバイオシンスインターナショナル社から入手可能である。同様に、ニトロアニリン化合物は、上述したシグマケミカル社から入手可能である。
実質的に黒色を生成するその他のサブストレートは、シクロヘキサノエスクレチン‐β‐D‐ガラクトシドの如きエスクレチンサブストレートを含み、これは上述したJames等の文献に説明されている。8‐ヒドロキシキノリン‐β‐D‐ガラクトピラノシドおよび8‐ヒドロキシキノリン‐β‐D‐グルクロニドの如きキノリンサブストレートは、上述したバイオシンスインターナショナル社から入手可能である。
5‐イオド‐3‐インドリル‐β‐D‐ガラクトピラノシドの如きイオド‐インドリルサブストレートは、上述したバイオシンスインターナショナル社から入手可能である。
【0067】
幾つかの蛍光サブストレートが本発明と共に使用するのに好適である。4‐メチルアンベリフェリルサブストレートおよび5‐トリフルオロメチルアンベリフェリルサブストレートの如きクマリンサブストレートは、上述したバイオシンスインターナショナル社から入手可能である。また、フルオレセイン(fluorescein)サブストレート、ロダマリンサブストレートおよびリソルフィンサブストレートも好適である。これら3つのサブストレートの販売先は不明であるが、それらのコンポーネントは上述したシグマケミカル社から入手可能である。
【0068】
本発明と共に使用するのに好適なサブストレートの特定例を上述した。しかし、これらは本発明を限定するものであると解釈するべきではない。後述する表4および表5から、実質的に無限のサブストレートが存在し得ることが当業者には理解できよう。
(テスト媒体の調製)
【0069】
テスト媒体は、所望のサブストレートを培養ベース媒体と組み合わせることにより形成される。培養ベース媒体は、生きたセルの維持および再生のための従来の培養媒体の何れかでもよい。一般に、斯かる媒体は培養体、バッファ、水および場合によりゲル剤を含んでいる。可能なゲル剤は、寒天培養基(アガー)、ペクチン、カラジーン(食用紅藻)、アルギナト(alginate)、ローカストビーン、キサンチン(xanthin)その他である。
【0070】
以下は、本発明で使用するのに好適なテスト媒体の調製例である。この具体例は、後述する例1と一致する。
8‐ヒドロキシキノリン‐β‐D‐グルクロニド、5‐ブロモ‐4‐クロロ‐3‐インドリル‐α‐D‐ガラクトピラノシドおよび6‐クロロ‐3‐インドリル‐β‐D‐ガラクトピラノシドサブストレートをそれぞれ250mg/l、70mg/l および175mg/lの媒体内に加える。これらのサブストレートは、殺菌前にブレンダ内で高温(75℃−85℃)の媒体に直接加える。
【0071】
標準の寒天培養媒体は、次の培養公式により15gm細菌学上量のアガーガムを加えて調製する。
膵臓消化カゼイン 5.0gm
イースト抽出物 3.0gm
燐酸ジポタジウム 0.3gm
非イオン化水 990ml
クエン酸鉄アンモニウム 800mg(非イオン化水10ml当たり)
(他の成分とは別個に殺菌処理)
次に、121℃で15分間殺菌処理する。この媒体は、pHが7.0になるように調製される。殺菌処理されたアガー媒体は、水バス中で45℃の温度に降下させ、上述の如く調製されたサブストレートを含む殺菌処理された溶液を加える。この媒体は、満遍なく混合され、20mg/プレートの量で殺菌ペトリプレート(ペトリ皿)に注がれる。
【0072】
固化剤として25gmの低メトオキシルペクチンを使用し、媒体を室温にてペクチンと組み合わされて固体ジェルを形成するカルシウムイオンを含む薄い層を含んでいるペトリプレートに注ぐ点を除いて上述したのと同じ工程により、ペクチンベースのテスト媒体を調製することが可能である。適当なペクチン培養媒体は、米国特許第4241186号および同4282317号公報に説明されているので、これらの公報をここに参考資料として組み入れる。ペクチンベース媒体は、標準アガー媒体に比較して取り扱い容易であり且つ温度依存性がないのでユーザに有利である。ペクチン媒体の使用は、AOAC共同研究およびその他の刊行物および社内調査結果等に説明され且つ受け入れられている。
【0073】
適当なペクチン媒体は、マイクロロジーラボラトリーズLLCからEasygelの登録商標で市販されている。ジェル剤を含まない水ベース媒体は、米国インディアナ州ゴーシェンのマイクロロジーラボ社から被膜フィルタと使用するために入手可能である。
(テスト媒体のサンプルへの接種)
【0074】
このテスト媒体は被テストサンプルに接種して、微生物を含むサンプルに媒体を接種する既知の方法により微生物の有無をテストしてもよい。例えば、被テストサンプルを栄養ベース媒体を加える前にペトリプレートに加え(プアプレート技法)又は冷却し且つ固化した後にプレート表面に分散させる(スワップ又はストリークプレート技法)。液状サンプルは、微細孔(0.45μm)の被膜フィルタにてフィルタした後で、固体媒体の表面又は媒体で飽和させたパッド上に載せる。
(テスト媒体の培養)
【0075】
接種されたテスト媒体は、サンプル中の各微生物が検出可能な群体に成長するまでの充分な時間および温度で培養される。媒体内で微生物が成長する適切な培養条件は、当業者に周知である。通常、テスト媒体は、約30℃乃至40℃の温度で約24乃至48時間培養される。蛍光サブストレートの結果を得るには、上述よりも短い時間、例えば14時間を必要とするかも知れない。
【0076】
一般的な微生物ポピュレーション(個体数)の抑制剤を使用しない限り、一般的な微生物および一般大腸菌、E.C、エーロモナス属、サルモネラ菌およびシゲラ菌のポピュレーションは、培養テスト媒体中で成長する。形成される沈殿物は、テスト媒体中で不溶性であるので(フルオロゲニックサブストレートを除く)、それらは種々の酵素を生成する微生物の直ぐ近くにとどまる。これらの微生物が再生して群体を形成すると、これらの群体は特定のサブストレートにより生成される色を有する群体ユニットを示す。
【0077】
例えば、E.Cはβ‐ガラクトシダーゼおよびα‐ガラクトシダーゼを生成するが、一般大腸菌およびエーロモナス属もβ‐グルクロニダーゼを生成する。従って、β‐ガラクトシダーゼサブストレート、α‐ガラクトシダーゼサブストレートおよびノンクロモゲンβ‐グルクロニドサブストレートのそれぞれが生成する不溶性沈殿物は、それぞれの酵素により生成され、その結果E.Cの群体は実質的に黒色、場合によってはその周りに青紫のハローを有するように見える。
【0078】
一般大腸菌は、β‐ガラクトシダーゼおよびα‐ガラクトシダーゼを生成し、その結果α‐ガラクトシダーゼおよびβ‐ガラクトシダーゼサブストレートを分裂させる。この例では、5‐ブロモ‐4‐クロロ‐3‐インドリル‐α‐D‐ガラクトシドサブストレートは、青緑又は薄緑色を生成し、一方6‐クロロ‐3‐インドリル‐β‐D‐ガラクトシドは桃色又は赤桃色を生成する。よって、一般大腸菌の群体は、青紫色に見え、これはα‐およびβ‐ガラクトシドサブストレートの両方によりそれぞれ生成される色の合成色である。
【0079】
しかしながら、大腸菌に極めて類似すると共に殆ど同じ生化学的テストパターンを示すエーロモナス属は、β‐ガラクトシダーゼ陽性であり且つα‐ガラクトシダーゼ陰性である。即ち、エーロモナス属はα‐ガラクトシドサブストレートを加水分解しない。従って、テスト媒体中に存在するエーロモナス群体は、β‐ガラクトシドサブストレートにより生成された赤桃色を有する群体として見える。
【0080】
更に、サルモネラ種族のメンバーはα‐ガラクトシダーゼに陽性であるが、β‐ガラクトシダーゼには陰性であることが判明した。即ち、サルモネラ菌は、β‐ガラクトシダーゼサブストレートを加水分解しない。従って、テスト媒体中に存在するサルモネラ菌の群体は、α‐ガラクトシドサブストレートにより生成される薄緑色又は青緑色に見える。
(テスト媒体の検査と微生物の計数)
【0081】
上述の例で選択されたサブストレートは明瞭な3つの色を生成し、一般大腸菌は第2色と第3色の混合色である第4色で指示される。即ち、E.Cの群体は実質的に黒色、一般大腸菌は青紫色、エーロモナス属は赤桃色およびサルモネラ菌は薄緑色を示す。これらの色の色合い(shade)は、生物実体が生成する酵素の変化等の要素によりテスト媒体中では幾分変化するが、これらの4色は充分に識別可能であり、混同を起こさせる虞は殆どないことが分かっている。
【0082】
微生物の各タイプの群体は、群体を数えるか又はテストプレート上の微生物を数えることにより計数化可能である。各タイプの群体の数は、培養の前にテストサンプル中に最初に存在した各タイプの微生物の数を示す。
(オプションの構成要素)
(抑制剤)
【0083】
本発明の方法には抑制剤は必要としない。しかし、この媒体は、必要に応じて一般大腸菌のポピュレーションは抑制するが他の腸内菌(coliform)には殆ど影響しない種々の合生物を加えることにより一般大腸菌とE.Cを一層選択的になし得るかも知れない。使用可能な合成物は次のとおりである。即ち、(a)約0.3g/lの胆汁塩、(b)約0.2g/lのラウリル硫化ナトリウム、(c)約0.2g/lのナトリウムデソキシコレートおよび(d)0.1ml/lのテルギトル(Tergitol)。これら合成物の1以上を使用すると、存在する背景(非腸内菌)微生物を減少させ、プレートの混乱を少なくし且つサンプル中の非腸内菌生物による干渉の可能性を低減する。ある種の抗生物質の使用も同じ結果を得るかも知れない。
【0084】
セフスロディン(cefsulodin)は、エーロモナス属を抑制するために現在入手可能なテスト媒体に一般的に使用されている。しかし、このセフスロディンを抑制剤として使用するには、付加工程、即ちフィルタ殺菌抗生物質の殺菌の付加を必要とする。この工程は制御が困難である。更に、セフスロディンの存在は、媒体の保管寿命を大幅に短縮する。エーロモナス属の抑制に、セフスロディンの代わりにナリディック酸(Nalidixic acid)を使用して実質的に同じ効果が得られることが判明した。ナリディック酸は、テスト媒体が自己分裂するまでに約120℃の温度が必要であるので、有効である。従って、セフスロディンと異なり、ナリディック酸を殺菌の前の初期段階のテスト媒体の調製段階でテスト媒体の一部として加えることが可能である(上述したテスト媒体の調製を参照)。これにより、厳しい環境条件にもナリディック酸が耐えられるので、セフスロディンの場合に比較して長時間の保存が可能になるという付加効果も得られる。
(誘導物質)
【0085】
一般大腸菌の酵素生成は、媒体にごく少量の酵素誘導体と呼ばれている物質を加えることにより増強可能である。β‐ガラクトシダーゼの特定の誘導物質の1つは入手可能であり且つイソプロピル‐β‐チオガラクトピラノシドと化学的に呼ばれているものである。媒体1リットル当たり約100mgを加えることにより、腸内菌のある種族に対しては酵素生成速度を速める顕著な効果がある。他の酵素誘導物質も入手可能であり、酵素生成の強化に有用であると思われる場合には、媒体に加えてもよい。
(具体例)
【0086】
本発明の実施のために調製される、上述した培養体又はその他適当な培養体と共に使用されるテスト媒体酵素サブストレート組み合わせの広範な例を以下にリストする。
【0087】
表3は、本発明を組み込む好適実施の形態の柔軟性(フレキシビリティ)を示す。表3は、好適な生物実体であるE.C、一般大腸菌および少なくともエーロモナス属又はサルモネラ菌の少なくとも1つに利用して本発明の教示を使用して検出するために可能な4色の幾つかを示すマトリクスである。他の色の組み合わせも可能である。多くの場合、複数の異なるサブストレートが所望の結果を実現するが、それらの相違点は特定の酵素を検出する色である。E.Cの検出に好適な色は表3中に星印で示しており、それは他の微生物の検出に選択される色に依存する。上述の如く、他のクロもゲンサブストレートは、実質的に黒色と干渉せず且つ実質的に黒色は他の色から区別が容易である。
【0088】
上述の如く、表3の使用には、単一媒体中に多くのクロモゲンサブストレートが含まれて生成される、上述した色合成効果を考慮する必要がある。例えば、表3の最初のエントリを参照すると、一般大腸菌は(1)赤桃色(マジェンタ)と(2)薄緑色の混合色に見えるので、青紫色となる。その理由は、一般大腸菌が2つのクロモゲンサブストレートに反応するためである。同様に、表3の第2エントリによるテスト媒体では、一般大腸菌は(1)赤桃色と(2)黄色の混合色に見える。
【0089】
【表3】

【0090】
表4は、本発明の教示により検出される生物実体の酵素パターンの一部のリストである。他の酵素も既知であり且つ生成されていること、および理論レベルのみで知られている酵素も満足に機能することが、当業者には容易に理解できよう。
【表4】

【0091】
表5は、本発明によるテスト媒体において使用される各種サブストレートおよびそれぞれに関連する色のマトリクスである。表5の左手側は、リストされたクロモゲンサブストレートがその特定の酵素によりその対応するサブストレートから分裂されたときに生じる色を示す。ノンクロモゲンコンポーネントの場合には、色は実質的に黒色であり、反応メカニズムには、上述の如くサブストレートの分裂時に塩イオンの存在を必要とする。
【0092】
ある生物実体により生成されるテスト酵素は(表4参照)、表5の右手側に記されている。「サブストレートコンポーネント」は、特定のテスト酵素の左に示している。表5の右手側にリストされた各サブストレートコンポーネントは、表5の左手側にリストされた何れかのクロモゲン又はノンクロモゲンサブストレートと組み合わせて、テスト媒体内で使用される特定のサブストレートを確認する。従って、表5は、本発明において使用可能な多くのサブストレートを教示する。上述した表5を使用して確認される多くのサブストレートは市販されており、他のサブストレートの製法については文献に記載されている。表5を使用して確認できる他のサブストレートは、理論上のみにおいて可能である。
【0093】
ノンクロモゲンコンポーネントは、表5の左下に含まれ、分裂時に特定の色を形成しない点でクロモゲンサブストレートとは異なる。その代わり、キノリン又はエスクレチンコンポーネントは、特定の酵素によりサブストレートが分裂されたとき媒体中に存在する塩イオン(例えば、第II鉄塩)と化合する。ノンクロモゲンコンポーネントにより形成される実質的に黒色の沈殿物は、クロモゲンコンポーネントにより形成されるディマーとは異なり、キノリン又はエスクレチンイオン錯体(コンプレックス)の化合物(コンビネーション)である。
【0094】
ノンクロモゲンコンポーネントと異なり、クロモゲンコンポーネントは、媒体に選択された他の全てのクロモゲンコンポーネントおよび検出される酵素パターンを考慮して選択しなければならない。クロモゲンコンポーネントの選択およびその濃度は、生成されるそれぞれの色間の区別を最大にするようにすべきである。
【0095】
種々のクロモゲンコンポーネントおよびサブストレートコンポーネント/酵素の可能性が表5に教示されているが、特許請求の範囲に記載された範囲内で他の可能性も可能であることが当業者には理解できよう。例えば、表5に示す如く、N‐アセチルグループを表5にリストされたサブストレートコンポーネントの多くの糖と当業者は組み合わせることができよう。例えば、N‐アセチルグループは、β‐D‐マノピラノシドと合成させてN‐アセチル‐β‐D‐マノサミニドを形成し、対応する酵素をN‐アセチル‐β‐D‐マノサミニダーゼとする。表5の左手側にリストされたクロモゲン又はノンクロモゲンコンポーネントの何れかを、サブストレートコンポーネントと合成させてサブストレートを識別する。もしサブストレートが市販されているか又はその製法が既知であれば、サブストレートはテスト媒体中で使用可能であろう。サブストレートがテスト媒体中の対応する酵素で分裂されると、リストされた色が現れる。
【0096】
一般に、本発明の教示は、以下のように各種微生物又はセルタイプを検出するテスト媒体の製造に使用可能である。先ず、検出および分化したい微生物を選択する。検出される好適な生物は、E.C、一般大腸菌およびエーロモナス属又はサルモネラ菌の少なくとも1つである。これら選択された生物により生成される酵素は、表4を参照することにより特定可能である。各微生物により生成される特定の酵素の知識を持って、表5の右手側から対応するサブストレートコンポーネントを特定することができる。希望する色により、表5からクロモゲン又はノンクロモゲンコンポーネントを選択し、テスト媒体中に含めるサブストレートを特定する。このようにして特定されたサブストレートが市販されているかその合成方法が既知である場合には、そのサブストレートをテスト媒体中に使用する。
【0097】
【表5】

【0098】
表6(A)−(D)は、ここで説明する特定例の詳細な要約である。
【表6(A)】

【表6(B)】

【表6(C)】

【表6(D)】

(例1)
【0099】
特定、定量化および分化するべく選択された微生物は、E.C、一般大腸菌、エーロモナス属および/又はサルモネラ菌である。
【0100】
表4を参照して、E.Cは酵素Bglucを生成し且つBglucは検出したい他の微生物の何れによっても生成されない。表5の右手側を参照すると、テスト酵素Bglucは対応するβ‐D‐グルクロニドのサブストレートコンポーネントを有することが分かる。よって、Bglucの分裂により明らかな色を生成するクロモゲン又はノンクロモゲンコンポーネントは、表5の左手側から選択するべきである。8‐ヒドロキシキノリンが好適なその実質的に黒色故に選択される。従って、先ず特定されるサブストレートは8‐ヒドロキノリン‐β‐D‐グルクロニドであり、その入手先は上述している。クエン酸鉄アンモニウムの如き金属塩も必要であり、テスト媒体に加えられ、Bglucによるサブストレートの分裂により実質的に黒色の水不溶性のコンプレックス(合生物)が媒体中に形成される。実質的に黒色の沈殿物は鉄イオンよりなり、サブストレートがグルクロニダーゼにより加水分解されるときE.Cから解放される。
【0101】
更に表4を参照すると、Bgal、BfucおよびBgluはエーロモナス属および一般大腸菌に共通である。しかし、表4に示す如く、サルモネラ菌によりBgal、BfucおよびBgluは一般に生成されない。従って、これらBgal、BfucおよびBgluの何れかに対応するサブストレートコンポーネントは、表5の右手側から選択できる。Bgalおよびその関連するサブストレートコンポーネントであるβ‐D‐ガラクトピラノシドが選択される。6‐クロロ‐3‐インドリル‐クロモゲンコンポーネントは、Bgalの存在下でそのサブストレートから分裂すると、赤桃色を生成し且つクロモゲンコンポーネントとして選択される。従って、第2サブストレートは6‐クロロ‐3‐インドリル‐β‐D‐ガラクトピラノシドである。
【0102】
再度表4を参照して、Bman、AaraおよびAgalは、サルモネラ菌と一般大腸菌に共通である。しかし、表4に示す如く、BmanおよびAaraはサルモネラ菌により生成されない。従って、Bman、AaraおよびAgalの1つが選択でき且つそれに関連するサブストレートコンポーネントが表5を参照して特定される。テスト酵素Agalおよび対応するサブストレートコンポーネントα‐D‐ガラクトピラノシドが選択される。次に、クロモゲンコンポーネントが表5から選択されなければならない。表5の左手側に示す如く、クロモゲンコンポーネント5‐ブロモ‐4‐クロロ‐3‐インドリルは、その関連するサブストレートから分裂すると薄緑色を生成するので、それが選択される。従って、第3のサブストレートは5‐ブロモ‐4‐クロロ‐3‐インドリル‐α‐D‐ガラクトピラノシドである。
【0103】
一般大腸菌は、6‐クロロ‐3‐インドリル‐β‐D‐ガラクトピラノシドサブストレートおよび5‐ブロモ‐4‐クロロ‐3‐インドリル‐α‐D‐ガラクトピラノシドサブストレートの両方に応答する広い酵素パターンを有する。従って、一般大腸菌は、それぞれ上述した2つのサブストレートにより生成される色の混合色である識別可能な第4色を示す。この場合には、第4色は桃色と薄緑色の混合色である青紫色である。
【0104】
最後に、表4に示す如く、E.Cもまた広い酵素パターンを示し、この例で選択された3つのサブストレート、即ち8‐ヒドロキシキノリン‐β‐D‐グルクロニド、6‐クロロ‐3‐インドリル‐β‐D‐ガラクトピラノシドおよび5‐ブロモ‐4‐クロロ‐3‐インドリル‐α‐D‐ガラクトピラノシドの全てに応答する。それにも拘わらず、テスト媒体中に存在するE.Cは、上述の如くクロモゲンサブストレートが実質的に黒色と干渉しないので、実質的に黒色を示す。効果的であるのは、この実質的に黒色はE.Cを識別する優れた手段を提供すると共に単一テスト媒体中で4つの個別の微生物の検出、定量化、分化および特定を可能にする(表6(A)−(D)参照)。
(例2)
【0105】
検出、定量化、分化および特定される選択された微生物は第1色のE.C、第2色の一般大腸菌およびサルモネラ菌および第3色のエーロモナス属である。
【0106】
表4を参照すると、E.Cは酵素Bglucを生成する、そしてBglucは検出されるべき他の何れの微生物によっても生成されない。表5の右側を参照すると、テスト酵素Bglucは対応するサブストレートコンポーネントβ‐D‐グルクロニドを有する。よって、Bglucの分裂により識別可能な色を生成するクロモゲン又はノンクロモゲンコンポーネントは、表5の左側から選択するべきである。8‐ヒドロキシキノリンが好適な実質的に黒色として選択される。従って、最初に特定されるサブストレートは8‐ヒドロキシキノリン‐β‐D‐グルクロニドであり、それは上述の如く入手可能である。クエン酸アンモニウム第II鉄の如き金属塩も必要であり、テスト媒体中に加えられ、Bglucによりサブストレートが分裂すると実質的に黒色の水不溶性のコンプレックスが媒体内に形成されるようにする。この実質的に黒色の沈殿物は、サブストレートがグルクロにダーゼにより加水分解されると、サブストレートがE.Cから解放される鉄イオンとアグリコンよりなる。
【0107】
更に表4を参照すると、Bgal、BfucおよびBgluはエーロモナス属および一般大腸菌に共通である。しかし、表4に示す如く、Bgal、BfucおよびBgluはサルモネラ菌により生成されない。上述の如く表5を使用して、6‐クロロ‐3‐インドリル‐β‐D‐ガラクトピラノシドが第2サブストレートとして選択され、これは表5のクロモゲンコンポーネントにより示す如く分裂すると赤桃色を生成する。
【0108】
表4に示す如く、酵素Bmanはサルモネラ菌に共通であるが、エーロモナス属には共通でない。表5から、Bmanに関連するサブストレートコンポーネントはβ‐D‐マノピラノシドである。この例では、サルモネラ菌に識別可能な第2色(赤桃色)を生成するのが好ましく、それにより究極的にはテスト媒体中に存在するサルモネラ菌の群体がテスト媒体中に存在する一般大腸菌と同じ色を示すようにする。よって、クロモゲンコンポーネントは6‐クロロ‐3‐インドリル‐および第3サブストレートは従って6‐クロロ‐3‐インドリル‐β‐D‐マノピラノシドである。
【0109】
この例において、再度表5を使用して、第4サブストレートはサルモネラ菌に共通であるBman、AaraおよびAgal酵素により分裂され第3の識別可能な色を生成するものと特定される。上述のように表5を使用して、選択される第4サブストレートは、5‐ブロモ‐4‐クロロ‐3‐インドリル‐α‐D‐ガラクトピラノシドであり、これはサルモネラ菌に共通なAgalの存在下で薄緑色を生成する。
【0110】
テスト媒体中に存在する群体による色は、次のように予測可能である。E.Cはこの例で選択された8‐ヒドロキシ‐グルクロニドサブストレートを含む4つのサブストレートの全てに陽性である広い酵素パターンを有し、鉄塩イオンの存在下で分裂すると実質的に黒色を生成する。E.C群体は実質的に黒色を示す。エーロモナス属は、この例で選択された6‐クロロ‐3‐インドリル‐β‐D‐ガラクトピラノシドのみと反応する酵素パターンを有し、従って、エーロモナス属の群体は赤桃色を示す。サルモネラ菌は、この例で選択された第3および第4サブストレートの両方を分裂する酵素パターンを有するので、サルモネラ菌の群体は青紫色(薄緑色と赤桃色の混合色)を示す。最後に、一般大腸菌は、選択された第2、第3および第4サブストレートのそれぞれに陽性であるので、その群体はサルモネラ菌の群体と識別可能な青紫色を示す。上述の如く、各種属の異なる種族は各種酵素を同じに生成することはないので、例えば青紫色の色合いは僅かに変化し得る。
(例3A)
【0111】
この例で定量化および分化される選択された微生物は、第1色としてE.C、第2色として一般大腸菌およびエーロモナス属、および第3色としてサルモネラ菌である。
【0112】
表4を参照すると、E.Cは酵素Bglucを生成し、このBglucは検出したい他のどの微生物でも生成されない。表5の右側を参照すると、テスト酵素Bglucは対応するサブストレートコンポーネントβ‐D‐グルクロニドを有することが分かる。よって、Bglucの分裂により識別可能な色を生成するクロモゲン又はノンクロモゲンコンポーネントは、表5の左側から選択されるべきである。8‐ヒドロキシキノリンが好適な実質的に黒色として選択される。従って、最初に特定されるサブストレートは8‐ヒドロキシキノリン‐β‐D‐グルクロニドであり、それの入手は上述のとおりである。クエン酸アンモニウム第II鉄等の金属塩も必要であり、テスト媒体に加えられ、Bglucによりサブストレートが分裂すると、実質的に黒色の水不溶性のコンプレックスが媒体内に形成される。この実質的に黒色の沈殿物は、グルクロニダーゼにより加水分解されるとE.Cから解放される鉄イオンおよびアグリコンよりなる。
【0113】
例1および2において上述したと同様に、表4および表5を参照すると、6‐クロロ‐3‐インドリル‐β‐D‐ガラクトピラノシドが、一般大腸菌およびエーロモナス属と共通である酵素Bgal、BfucおよびBgluの1つと組み合わされる第2サブストレートとして選択されるが、サルモネラ菌には陰性であり、この場合には実質的に赤桃色である識別可能な第2色を生成する。
【0114】
同様に、6‐クロロ‐3‐インドリル‐α‐D‐ガラクトピラノシドが第3サブストレートとして選択され、Agalと合成されるが、これは一般大腸菌およびサルモネラ菌に共通であるが、エーロモナス属には陰性である。酵素と反応すると、このサブストレートも識別可能な第2色、即ち赤桃色を生成する。
【0115】
5‐ブロモ‐4‐クロロ‐3‐インドリル‐β‐D‐ガラクトピラノシドが第4サブストレートとして選択され、Bgal酵素と合成される。これは大腸菌およびエーロモナス属に共通であるが、サルモネラ菌には陰性である。この第4サブストレートはBgalと反応すると薄緑色を生成する。
【0116】
このテスト媒体中に存在する群体の色は、次のように予測可能である。E.Cは広い酵素パターンを生じ、この例で選択された4つのサブストレートの全てに陽性である。従って、E.Cは実質的に黒色を示す。一般大腸菌の群体は、第2、第3および第4サブストレートに陽性である酵素パターンを有し、一般大腸菌は青紫色を示す。エーロモナス属は選択された第2および第4サブストレートに陽性である酵素パターンを有し、エーロモナス属の群体も青紫色を示す。最後に、サルモネラ菌に共通の酵素は4つのサブストレートのうち第3サブストレートにみに陽性であり、サルモネラ属の群体は赤桃色として示す。
(例3B)
【0117】
バリエーションとして、上述した例3Aのテスト媒体の調製を変更して、サルモネラ菌の群体の色が赤桃色ではなく薄緑色になり、その他の群体の色の全てが例3Aと同じになるようにしてもよい。表5を参照すると、これは例3Aの6‐クロロ‐3‐インドリル‐α‐D‐ガラクトピラノシドを5‐ブロモ‐4‐クロロ‐3‐インドリル‐α‐D‐ガラクトピラノシドに置換することにより達成される。
(例3C)
【0118】
同じ4つのコンポーネントに対して上述した例3Aと同じ3色を生成する第2の独立した方法は、ナリディック酸又はその他のエーロモナス属の抗生物質又は抑制剤を上述した例1のコンポーネントに加えることにより達成可能である。これにより、セフスロディン又はナリディック酸或いはその他の物質がエーロモナス属に対する抑制剤として作用し、エーロモナス属の群体の成長を阻止する。もしエーロモナス属を排除されないと、エーロモナス属が腸内菌の一部として計数され、エーロモナス属は重要な指示生物であるので、これを好む人もいる。
(例4)
【0119】
この例では、検出、定量化および分化するべく選択された微生物は、第1色としてE.C、腸内菌およびサルモネラ菌および第2色としてエーロモナス属である。この結果を実現する1つのテスト媒体は、上述した例2で説明したテスト媒体であるが、第1サブストレートおよび金属塩は除いている。よって、E.Cの酵素パターンは一般大腸菌の酵素パターンと同じサブストレートに反応するので、E.Cおよび一般大腸菌はテスト媒体中で同じ色である。特に、E.C、腸内菌およびサルモネラ菌の群体は青紫色を示し、一方、エーロモナス属の群体は実質的に赤桃色を示す。
(例5)
【0120】
検出、定量化および分化されるべく選択された微生物は、第1色としてE.C、一般大腸菌およびエーロモナス属および第2色としてサルモネラ菌である。この結果を実現する1つのテスト媒体は、上述した例3と同じであるが、第1サブストレートと金属塩が除かれている。このテスト媒体において、E.C、一般大腸菌およびエーロモナス属の群体は略青紫色に見え、一方、サルモネラ菌の群体は略薄緑又は赤桃色に見える。
【0121】
オプションとして、6‐クロロ‐3‐インドリル‐α‐D‐ガラクトシドを5‐ブロモ‐4‐クロロ‐3‐インドリル‐β‐D‐ガラクトシドと置換する。そこで、サルモネラ菌の群体は桃色ではなく薄緑色に見える。
【0122】
同じ結果を得る第3の方法は、エーロモナス属の群体の成長を阻止するために好ましくはナリディック酸である抗生物質を使用する。エーロモナス属を除くと、青紫色の群体は全て真の腸内菌である。もし除かなければ、腸内菌の一部として計数されるが、エーロモナス属は重要な指示生物であるので、これを好む人もいる。
(例6)
【0123】
検出、定量化および分化するべく選択された微生物は、第1色としてE.Cおよび腸内菌、第2色としてエーロモナス属および第3色としてサルモネラ菌である。この結果を生じるテスト媒体は第1サブストレートおよび金属塩を省く点を除き上述した例1と同じである。このテスト媒体において、E.Cおよび一般大腸菌の群体は青紫色を示し、エーロモナス属の群体は略赤桃色を示し、サルモネラ菌の群体は略薄緑色を示す。
(例7)
【0124】
検出、定量化および分化するべく選択された微生物は、実質的に黒色である第1色としてE.C、実質的に青紫色である第2色として一般大腸菌、実質的に赤桃色である第3色としてエーロモナス属/ビブリオ菌/プレシモナス菌、および実質的に薄緑である第4色としてサルモネラ菌である。
【0125】
表4を参照すると、E.Cは酵素Bglucを生成し、このBglucは検出したい他の微生物の何れによっても生成されない。従って、Bglucの分裂により識別可能な色を生成するサブストレートを表5から選択すべきである。8‐ヒドロキシキノリン‐β‐D‐グルクロニドはBglucの存在下で実質的に黒色を生成するので、後述する如く好適なサブストレートの選択である。クエン酸アンモニウム第II鉄の如き金属塩も加えられ、サブストレートがグルクロニダーゼにより加水分解されてE.Cから解放されるとき、鉄イオンおよびアグリコンよりなる実質的に黒色の水不溶性コンプレックスを形成する。
【0126】
更に表4を参照すると、酵素NgalおよびNagluは、微生物エーロモナス属、プレシオモナス菌およびビブリオス菌に共通である。従って、これら全ての微生物を識別可能な単一の色でテストするのに適当なサブストレートは、6‐クロロ‐3‐インドリル‐N‐アセチル‐β‐D‐ガラクトサミニドであり、これはこれら酵素の存在下で実質的に赤桃色を生成する。
【0127】
再度表4を参照すると、Bman、AaraおよびAgalはサルモネラ菌および一般大腸菌に共通である。しかし、表4に示す如く、Bman、AaraおよびAgalはエーロモナス属により生成されない。従って、表5から選択されるサブストレートは、Bman、AaraおよびAgalの1つと反応して識別可能な第3色を生成するものである。表5に示す如く、5‐ブロモ‐4‐クロロ‐3‐インドリル‐α‐D‐ガラクトシドは、Agalの存在下で薄緑色を生成するので、これがサブストレートとして選択される。
【0128】
このテスト媒体では、E.Cの群体は実質的に黒色を示し、一般大腸菌の群体は実質的に青紫色を示し、ビブリオ菌およびプレシモナス菌の群体は実質的に赤桃色を示し、そしてサルモネラ菌の群体は実質的に薄緑色を示す。
(例8)
【0129】
検出、定量化および分化するべく選択された微生物は、第1色としてE.C、第2色として腸内菌およびサルモネラ菌、第3色としてエーロモナス属、ビブリオ菌およびプレシオモナス菌である。この結果を得る1つのテスト媒体は、選択された第4サブストレートが6‐クロロ‐3‐インドリル‐N‐アセチル‐α‐D‐ガラクトサミニドである点で相違する上述した例2のテスト媒体である。ここで、微生物プレシオモナス菌、ビブロスキンおよびエーロモナス属の各群体は、略赤桃色を示す。
(例9)
【0130】
検出、定量化および分化するべくこの例で選択された微生物は、青紫色である第1色としてE.Cおよび一般大腸菌、赤桃色である第2色としてエーロモナス属、プレシオモナス菌およびビブリオ菌、および薄緑色の第3色としてサルモネラ菌である。この結果は、上述した例6のテスト媒体にプレシオモナス菌、ビブリオ菌およびエーロモナス属の各微生物が反応する6‐クロロ‐3‐インドリル‐N‐アセチル‐β‐D‐ガラクトサミニドを加えることにより得られる。
(例10)
【0131】
この例で検出、定量化および分化するべく選択された微生物は、第1色としてE.Cおよび一般大腸菌、第2色としてエーロモナス属、ビブリオ菌およびプレシオモナス菌、および第3色としてサルモネラ菌である。この結果を得る適当なテスト媒体は、E.Cの群体を検出する第1サブストレートが省かれている点を除き上述した例7のテスト媒体と同じである。この例では、E.Cおよび一般大腸菌の群体は略青紫色を示し、エーロモナス属、ビブリオ菌およびプレシオモナス菌は略赤桃色を示し、サルモネラ菌は略薄緑色を示す。6‐クロロ‐3‐インドリル‐β‐D‐ガラクトピラノシドを加えると、E.Cの群体に対して青紫色を生じる。
(例11)
【0132】
この例で検出、定量化および分化するべく選択された微生物は、実質的に黒色としてE.Cおよび赤桃色として一般大腸菌である。
【0133】
表4を参照すると、E.Cは酵素Bglucを生成し、このBglucは検出したい他の微生物により生成されない。したがって、Bglucの分裂により識別可能な色を生成するサブストレートを表5から選択するべきである。8‐ヒドロキシキノリン‐β‐D‐グルクロニドがBglucの存在下で暗い色を生成するので、これが選択するべき好ましいサブストレートである。クエン酸アンモニウム第II鉄の如き金属塩も加えられ、サブストレートがグルクロニダーゼにより加水分解してE.Cから解放された鉄イオンおよびアグリコンよりなる黒色の水不溶性のコンプレックスを形成する。
【0134】
更に表4を参照すると、Bgal、BfucおよびBgluはエーロモナス属および一般大腸菌に共通である。しかし、表4に示す如く、Bgal、BfucおよびBgluは一般にサルモネラ菌により生成されることはない。従って、サブストレートは、表5から選択され、Bgal、BfucおよびBgluの1つと反応して識別可能な第2色を生成するものとする。6‐クロロ‐3‐インドリル‐β‐D‐ガラクトピラノシドは、Bgalの存在下で桃色を生成するので第2サブストレートとして選択される。
【0135】
オプションとして、6‐クロロ‐3‐インドリル‐β‐D‐ガラクトピラノシドを5‐ブロモ‐クロロ‐3‐インドリル‐β‐D‐ガラクトピラノシドと置換し、エーロモナス属および一般大腸菌の群体が桃色ではなく薄緑色を示すようにしてもよい。
【0136】
説明した如く、選択された第2サブストレートはエーロモナス属の群体も略赤桃色を示すこととなる。エーロモナス属の群体が成長するのを阻止するために、抑制剤、好ましくはナリディック酸が加えられる。よって、E.Cの群体は実質的に黒色を示し、一方、一般大腸菌の群体は赤桃色を示すことになる。
(例12)
【0137】
この例で検出、定量化および分化されるべく選択された微生物は実質的に黒色としてE.C、一般大腸菌およびエーロモナス属、および識別可能な第2色としてサルモネラ菌である。選択される第1サブストレートは8‐ヒドロキシキノリン‐β‐D‐ガラクトシドであり、これはE.C、一般大腸菌およびエーロモナス属の群体が実質的に黒色を示す。選択される第2サブストレートは5‐ブロモ‐4‐クロロ‐3‐インドリル‐α‐D‐ガラクトピラノシド又は6‐クロロ‐3‐インドリル‐α‐D‐ガラクトピラノシドの何れかである。これら両サブストレートのうち前者を選択すると、サルモネラ菌の群体は薄緑色を示し、一方、後者のサブストレートを選択すると、サルモネラ菌の群体は赤桃色を示すことになる。
【0138】
オプションとして、この例において、詳細を上述した抑制剤、好ましくはナリディック酸を加えることにより、エーロモナス属を除去してもよい。
(例13)
【0139】
この例で検出、定量化および分化されるべく選択された微生物は、偽陽性の訂正を示す点を除き、上述した例1と同じである。即ち、例1で上述したテスト媒体中で、E.Cと共にある種の腸内菌およびクレビシラ菌(Klebsiella spp.)も黒色の群体として現れる。従って、E.Cの計数が不正確に高くなり得る。
【0140】
この例において、4‐メチルアンブレリフェリル‐β‐D‐キシロピラノシドが例1で説明したテスト媒体に加えられる。これにより、黒色の群体として現れる腸内菌およびクレブシラ菌も蛍光を発するので、E.Cの偽陽性計数を低減可能である。この例は、本発明による実施の形態のフレキシビリティ(柔軟性)を示す。蛍光性コンポーネントは実質的に黒色と干渉しないので、黒色の群体を裸眼で容易に区別可能である。しかも、紫外線下では、蛍光を発する黒色群体を調べて、偽陽性が検出および低減可能である。
(例14)
【0141】
検出、定量化、分化および特定するべく選択された微生物は、実質的に黒色としてE.Cおよび赤桃色としてサルモネラ菌である。一般大腸菌は、この例では無色である。
【0142】
上述した例1を参照すると、E.Cは8‐ヒドロキシキノリン‐β‐D‐グルクロニドに応答する。一般大腸菌、サルモネラ菌およびエーロモナス属は、8‐ヒドロキシキノリン‐β‐D‐グルクロニドに応答しない。よって、選択された第1サブストレートは8‐ヒドロキシキノリン‐β‐D‐グルクロニドである。
【0143】
表4を参照すると、エストラーゼ酵素はサルモネラ菌には陽性であるが、検出されるべき他のどの微生物にも陽性ではない。表5を参照すると、6‐クロロ‐3‐インドリル‐カプリレートのサブストレートが特定でき、分裂すると赤桃色を生成するので第2サブストレートとして選択される。
【0144】
このテスト媒体では、E.Cの群体は実質的に黒色を示し、サルモネラ菌の群体は赤桃色を示す。
(例15)
【0145】
検出、定量化、分化および特定するべく選択される微生物は、実質的に黒色としてE.Cであり、暗い青紫色としてサルモネラ菌であり、および赤桃色として一般大腸菌である。
【0146】
上述した例1を参照すると、E.Cは8‐ヒドロキシキノリン‐β‐D‐グルクロニドに応答する。一般大腸菌、サルモネラ菌およびエーロモナス属は8‐ヒドロキシキノリン‐β‐D‐グルクロニドには応答しない。よって、選択される第1サブストレートは8‐ヒドロキシキノリン‐β‐D‐グルクロニドである。
【0147】
上述した表4および表5を参照すると、5‐ブロモ‐4‐クロロ‐3‐インドリル‐カプリレートが第2サブストレートとして特定でき、このサブストレートにサルモネラ菌は応答する。更に表5を参照すると、5‐ブロモ‐4‐クロロ‐3‐インドリル‐カプリレートは、分裂すると薄緑色を形成する。
【0148】
分裂すると赤桃色を生成する6‐クロロ‐3‐インドリル‐α‐D‐ガラクトピラノシドが第3サブストレートして選択され、このサブストレートにE.C、一般大腸菌およびサルモネラ菌が応答する。
【0149】
この例において、E.C群体は実質的に黒色を示し、一般大腸菌の群体は赤桃色を示し、またサルモネラ菌は青紫色(即ち、赤桃色と薄緑色の混合色)を示す。
(例16)
【0150】
この例で検出、定量化および分化するべく選択された微生物は、実質的に黒色としてE.Cおよびこれと識別可能な第2色として一般大腸菌である。
【0151】
上述した表4を参照すると、E.Cは酵素Bglucを生成し且つこのBglucは検出したい他の微生物により生成されない。従って、Bglucの分裂により識別可能な色を生成するサブストレートは表5から選択すべきである。8‐ヒドロキシキノリン‐β‐D‐グルクロニドはBglucの存在下で暗い色を生成するのでサブストレートとしての選択に好適である。クエン酸アンモニウム第II鉄の如き金属塩も加えられ、このサブストレートがグルクロニダーゼにより加水分解されてE.Cから解放された鉄イオンおよびアグリコンよりなる黒色の水不溶性コンプレックスを形成する。
【0152】
表4を参照すると、Bgal、BfucおよびBgluは、エーロモナス属および一般大腸菌に共通である。しかし、表4に示す如く、Bgal、BfucおよびBgluはサルモネラ菌により一般的に生成されることはない。従って、サブストレートは、表5から選択され、Bgal、BfucおよびBgluのうちの1つに反応し手識別可能な第2色を生成するようにする。5‐ブロモ‐4‐クロロ‐3‐インドリル‐β‐D‐ガラクトピラノシドが第2サブストレートとして選択可能である。この場合には、E.Cの群体は実質的に黒色に見え、一般大腸菌の群体は薄緑色に見える。オプションとして、5‐ブロモ‐6‐クロロ‐3‐インドリル‐ガラクトピラノシドを第2サブストレートとして選択する。この場合には、E.Cの群体は実質的に黒色に見え、一般大腸菌の群体はマジェンタ色に見える。エーロモナス属の成長を抑えるために、好ましくはナリディック酸である抑制剤が加えられる。よって、E.Cの群体は実質的に黒色に見え、一方、一般大腸菌の群体はマジェンタ色に見える。
(例17)
【0153】
この例で検出、定量化および分化できる選択された微生物は、E.C、一般大腸菌、エーロモナス属および/又はサルモネラ菌である。5‐ブロモ‐4‐クロロ‐3‐インドリル‐β‐D‐グルクロニド、6‐クロロ‐3‐インドリル‐β‐D‐ガラクトピラノシドおよび5‐ブロモ‐4‐クロロ‐3‐インドリル‐α‐D‐ガラクトピラノシドのサブストレートが媒体1リットル当たり約125mg、200mgおよび65mgの量がそれぞれ加えられる。この例におけるテスト媒体の他の調製および接種は上述の場合と同様であるが、媒体がノンクロモゲンサブストレートを有しない場合には塩イオンは不要である点で相違する。この媒体において、これらサブストレートの全てと反応するE.Cは、β−D−グルクロニドの濃度が高いので、極めて暗い青色および/又は紫色に見える。α‐およびβ‐ガラクトピラノシドの双方に反応する一般大腸菌は、明るい青−灰色に見える。α‐D‐ガラクトピラノシドと反応するサルモネラ菌は薄緑色を有する。そして、β‐D‐ガラクトピラノシドと反応するエーロモナス属は赤桃色を有する。β‐D‐グルクロニドの使用濃度/量がβ‐D‐ガラクトピラノシドより大きくしてE.Cおよび一般大腸菌間の色差又は暗さを増加すると有効である。その理由は、これら両サブストレートは同じ色コンポーネントを利用するからである。しかし、同じ量のβ‐D‐グルクロニドおよびβ‐D‐ガラクトピラノシドを使用しても、E.Cはより暗く且つ一般大腸菌とは区別可能である。その理由は、それはこれら両サブストレートと反応するのに対して一般大腸菌はβ‐D‐グルクロニドとは反応しないからである。
(例18)
【0154】
利用可能な代替β‐D‐グルクロニドサブストレートは5‐イオド‐3‐インドリル‐β‐D‐グルクロニドであり、これは一般にIodo-Glucと呼ばれている。この例で検出、定量化および分化するべく選択された微生物は、E.C、一般大腸菌、エーロモナス属およびサルモネラ菌である。β‐D‐グルクロニドの濃度を十分に高くして、一般大腸菌の青−灰色から容易に識別可能な極めて暗い紫色になるようにするべきである。
(例19)
【0155】
使用可能な他の代替β‐D‐グルクロニドサブストレートはインドリル‐β‐D‐グルクロニドであり、これはIBDGと一般に呼ばれている。このIBDG濃度を十分にすると、E.Cは青紫色の他の群体よりも暗く見える。一般大腸菌、サルモネラ菌およびエーロモナス属は、それぞれ明るい青−灰色、薄緑色および赤桃色に見える。
(例20)
【0156】
この例において、一般にMUGlucと呼ばれている4‐メチルアンベリフェリル‐β‐D‐グルクロニドがクロモゲン又はノンクロモゲンβ‐D‐グルクロニドの代わりに使用される。この媒体により、E.Cは紫外線下で蛍光を発し、周囲光の下でそれぞれ一般大腸菌は明るい青−灰色であり、サルモネラ菌は薄緑色、そしてエーロモナス属は赤桃色である。MUGlucの利点は、群体の検出に必要な培養時間が、他のクロモゲン又はノンクロモゲンサブストレートに比較して十分に短いことである。このサブストレートの場合には、約14時間の培養時間があればE.Cの検出に十分である。尚、欠点として、蛍光生成物は、他のコンポーネントより容易に拡散され、E.Cの定量化を困難にすることである。しかし、特定のテストでE.Cの定量化ができなくとも、E.Cの有無確認テストには好適である。
(例21)
【0157】
この媒体では、4‐メチルアンべリフェリル‐β‐D‐グルクロニド(MUGluc)が上述した他のクロモゲン又はノンクロモゲングルクロニドサブストレートおよびクロモゲンα−およびβ−ガラクトピラノシドと組み合わされる。この媒体は、E.Cの有無テストがクロモゲンおよびノンクロモゲンサブストレートの場合に必要である培養時間よりも短時間で実現可能であるという利点を有する。加えて、何らかの理由で、検出された生物の群体がE.C又は一般大腸菌の何れであるか不明であるとき、媒体を紫外線下で検査して、蛍光によりE.Cの群体が確認できることである。これにより、群体の特定の精度を二重チェックできる。
【0158】
以上、本発明の広い概念による多数の例を説明した。しかし、本発明はここに説明した具体例に限定されるべきではないことを理解されたい。事実、この開示および上述した例示から、当業者は本発明の範囲や精神を逸脱することなく実質的に無限のテスト媒体が可能であることが理解できよう。
【0159】
更に、以上の説明は本発明の好適デザインについて行ったものであるが、本発明を逸脱することなく種々の変形変更が可能である。従って、本発明の基本原理を使用して、これらのバリエーション、用途および応用を含むことを意図するものである。更に、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が知得している又は慣用である事項については、特許請求の範囲に規定する本発明の範囲に入るものと解するべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般大腸菌、E.C、エーロモナス属およびサルモネラ菌を検出、定量化又は分化するテスト媒体において、
E.Cの存在下で第1生成物を形成するβ‐D‐グルクロニドサブストレートと、
サルモネラ菌の存在下で第2生成物を形成するα‐D‐ガラクトシドクロモゲンサブストレートと、
エーロモナス属の存在下で第3生成物を形成するβ‐D‐ガラクトシドクロモゲンサブストレートとを備え、
前記α‐D‐ガラクトシドおよび前記β−D−ガラクトシドサブストレートの生成物は組み合わされて一般大腸菌の存在下である色を形成し、一般大腸菌、E.C、エーロモナス属およびサルモネラ菌を相互に区別可能にすることを特徴とするテスト媒体。
【請求項2】
前記β‐D‐グルクロニドサブストレートと、前記α‐D‐ガラクトシドクロモゲンサブストレート又は前記β‐D‐ガラクトシドクロモゲンサブストレートの一方とは異なる量の同じ色コンポーネントよりなることを特徴とする請求項1に記載のテスト媒体。
【請求項3】
前記β‐D‐グルクロニドサブストレートは5‐ブロモ‐4‐クロロ‐3‐インドリル‐β‐D‐グルクロニドであり、前記α‐D‐ガラクトシドサブストレートは5‐ブロモ‐4‐クロロ‐3‐インドリル‐α‐D‐ガラクトシドであることを特徴とする請求項1又は2に記載のテスト媒体。
【請求項4】
前記テスト媒体は、濃度が約125mg/lであるβ−D−グルクロニドおよび濃度が約65mg/lであるα‐D‐ガラクトシドを有することを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載のテスト媒体。
【請求項5】
前記β‐D‐グルクロニドサブストレートは、5‐イオド‐3‐インドリル‐β‐D‐グルクロニドであることを特徴とする請求項1、2又は4に記載のテスト媒体。
【請求項6】
前記β‐D‐グルクロニドサブストレートは、インドキシル‐β‐D‐グルクロニドであることを特徴とする請求項1、2又は4に記載のテスト媒体。
【請求項7】
前記β‐D‐グルクロニドサブストレートは、E.Cの存在下で青紫の蛍光を生じる生成物を生成することを特徴とする請求項1又は4に記載のテスト媒体。
【請求項8】
前記β−D−グルクロニドは4‐メチルアンベリフェリル‐β‐D‐グルクロニドであることを特徴とする請求項1、4又は7に記載のテスト媒体。
【請求項9】
第2β‐D‐グルクロニドサブストレートを更に含み、該第2β‐D‐グルクロニドサブストレートはE.Cの存在下で通常周囲光の下で検出可能であり且つ他の生成物と区別可能な生成物を形成可能であることを特徴とする請求項1乃至8の何れかに記載のテスト媒体。
【請求項10】
前記第2β‐D‐グルクロニドサブストレートは、8‐ヒドロキシキノン‐β‐D‐グルクロニド、エスクレチングルクロニド、5‐イオド‐3‐インドリル‐β‐D‐グルクロニドおよびインドキシル‐β‐D‐グルクロニドよりなるグループから選択されることを特徴とする請求項9に記載のテスト媒体。
【請求項11】
生物実体を検出、特定および定量化又は定性化するテスト媒体において、
栄養剤ベース媒体と、
第1生物実体の存在下で第1生成物を形成する第1サブストレートと、
第2生物実体の存在下で第2生成物を形成する第2サブストレートと、更に
第3生物実体の存在下で第3生成物を形成する第3サブストレートとを備え、
前記第1、第2および第3生成物は相互に区別可能であり、前記第1生成物および前記第2生成物は異なる量の同じ色形成コンパウンドを含み前記第1生成物および前記第2生成物を相互に区別可能にすることを特徴とするテスト媒体。
【請求項12】
前記第1サブストレートはβ‐D‐グルクロニドであり、前記第2サブストレートはα‐D‐ガラクトシドサブストレートであり、前記第3サブストレートはβ‐D‐ガラクトシドサブストレートであることを特徴とする請求項11に記載のテスト媒体。
【請求項13】
前記β‐D‐グルクロニドおよび前記α‐D‐ガラクトシドサブストレートは、5‐ブロモ‐4‐クロロ‐3‐インドリル成分を含んでいることを特徴とする請求項12に記載のテスト媒体。
【請求項14】
前記β‐D‐グルクロニドサブストレートはα‐D‐ガラクトシドサブストレートに比較して約2倍の量の5‐ブロモ‐4‐クロロ‐3‐インドリル成分を含むことを特徴とする請求項12又は13に記載のテスト媒体。
【請求項15】
約125mg/lの5‐ブロモ‐4‐クロロ‐3‐インドリル‐β‐D‐グルクロニドおよび約65mg/lの5‐ブロモ‐4‐クロロ‐3‐インドリル‐α‐D‐ガラクトシドを含むことを特徴とする請求項12、13又は14に記載のテスト媒体。
【請求項16】
β‐D‐グルクロニドである第4サブストレートを更に含むことを特徴とする請求項12乃至15の何れかに記載のテスト媒体。
【請求項17】
前記第1生成物は通常の周囲光の下で目視可能な第1生物実体の存在下で形成され、前記第4サブストレートは前記第1生物実体の存在下で紫外線の下で蛍光を発する生成物を生成することを特徴とする請求項16に記載のテスト媒体。
【請求項18】
一般大腸菌、E.C、エーロモナス属およびサルモネラ菌を検出、定量化又は定性化するテスト媒体において、
栄養剤ベース媒体と、
E.Cの存在下で第1生成物を形成する第1サブストレートと、
サルモネラ菌の存在下で第2生成物を形成する第2サブストレートと、更に
エーロモナス属の存在下で第3色の第3生成物を形成する第3サブストレートと、
E.Cの存在下で第4生成物を形成する第4サブストレートとを備え、
前記第1乃至第4生成物は相互に識別可能であり、前記第1、第2および第3生成物は周囲光の下で区別でき、前記第4生成物は紫外線の下で蛍光を発することを特徴とするテスト媒体。
【請求項19】
前記第1および第4サブストレートはβ‐D‐グルクロニドであり、前記第2サブストレートはα‐D‐ガラクトシドであり、前記第3サブストレートはβ‐D‐ガラクトシドであることを特徴とする請求項18に記載のテスト媒体。
【請求項20】
前記第2および第3サブストレートは一般大腸菌の存在下でそれぞれ前記第2および第3生成物を形成し、コンバインされた前記第2および第3生成物は前記各生成物から区別可能であることを特徴とする請求項18又は19に記載のテスト媒体。

【公表番号】特表2008−502350(P2008−502350A)
【公表日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−516558(P2007−516558)
【出願日】平成17年6月8日(2005.6.8)
【国際出願番号】PCT/US2005/020215
【国際公開番号】WO2005/123939
【国際公開日】平成17年12月29日(2005.12.29)
【出願人】(502024018)マイクロロジー ラボラトリーズ, エル.エル.シー. (2)
【Fターム(参考)】