テトラアザ大員環誘導体の金属錯体
【課題】テトラアザ大員環の容易な生成のための改良された合成経路を提供すること。
【解決手段】テトラアザ大員環誘導体およびこの中間体の二官能キレートを合成するための改良方法が、新規なテトラアザ大員環誘導体およびこの中間体と同時に開示される。本発明の1つの態様は、弱塩基の存在下で、テトラ−N−置換テトラアザ大員環(2)を生成するためにトリス−N−置換テトラアザ大員環(1)の遊離大員環窒素をアルキル化する方法である。本発明のその他の態様は、この反応で製造されてもよいある種のテトラ−N−置換テトラアザ大員環(2)である。これらの生成物は、罹患した組織の画像化および治療のための二官能キレートを生成するための有用な中間体である。
【解決手段】テトラアザ大員環誘導体およびこの中間体の二官能キレートを合成するための改良方法が、新規なテトラアザ大員環誘導体およびこの中間体と同時に開示される。本発明の1つの態様は、弱塩基の存在下で、テトラ−N−置換テトラアザ大員環(2)を生成するためにトリス−N−置換テトラアザ大員環(1)の遊離大員環窒素をアルキル化する方法である。本発明のその他の態様は、この反応で製造されてもよいある種のテトラ−N−置換テトラアザ大員環(2)である。これらの生成物は、罹患した組織の画像化および治療のための二官能キレートを生成するための有用な中間体である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、一般的に、テトラアザ大員環誘導体およびこの中間体の二官能キレートの合成に関する。
【背景技術】
【0002】
(背景)
テトラアザ大員環は、金属イオンを配位するためのリガンド系を生成するためのよく知られた基本骨格であり、N−カルボキシアルキルおよびN−ホスホノアルキル誘導体は、幾つかの最も安定な金属錯体を形成するための無機化学ではよく知られている。この類のリガンドは、幾つかの工業および金属キレート化が求められる生物医学方法では重要な役割を演じる。例えば、1,4,7,10−テトラアザシクロ−ドデカン−1,4,7,10−四酢酸(DOTA)および1,4,7,10−テトラアザシクロ−ドデカン−1,4,7,10−テトラメチレン−リン酸(DOTP)等の誘導体は、工業において水およびその他の流体系の脱金属化で広い用途を有する。更に、金属錯体は、最近、さもなければ毒性の金属イオンをこれらのリガンドと錯体化することにより安全なものとする画像化および治療用途の両方での有用性が見出されている。例えば、非特許文献1を参照されたい。
【0003】
医学では、ポリアザ大員環リガンドは、種々の遷移金属に対するキレーターとして広く使用されている。DOTAおよび1,4,8,11−テトラアザシクロ−テトラデカン−1,4,8,11−四酢酸(TETA)等の大員環ポリアミノカルボキシレートが、これらの高度に前組織化された大員環リガンド骨格により高度に安定な金属錯体を形成することは公知である。大員環リガンドは、Tc−99m、In−111、Ga−67、Y−90、Re−188、Sm−153またはその他の放射性金属イオン等の放射性核種と錯体を形成して、放射性核種画像化および治療において有用な薬剤を生成することができる。リガンドはヨウ素より重い金属イオンと錯体を形成して、X−線画像化で有用な生成物を生成することができる。更に、リガンドは、Gd+3、Mn+2、Fe+3、Cr+3等の常磁性金属イオンと結合して磁気共鳴画像化(MRI)剤を生成することができる。特殊な場合では、大員環は、金属錯体化合物を改良された画像化または標的治療のために、金属イオンと結合し、次いで、特定の標的へ金属錯体化合物を送達するために特別に改質することができる。その様な二重機能リガンドは、多くの場合、二官能リガンドと称される。
cyclen、即ち、1,4,7,10−テトラアザシクロドデカンは、前述の金属錯体の形成のための重要なリガンドであるDOTAを生成するために通常使用される骨格である。cyclenは、トリスカルボキシメチル化DO3A、4,7,10−トリスカルボキシメチル−1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン、即ち、それ自体でリガンドであり、また、その金属錯体が画像化および治療にとって有用である一連の二官能リガンドの形成のために遊離大員環窒素において様々に誘導体化することのできる重要な中間体を生成するために特に有用である。例えば、特許文献1(Bonnemainら)は、画像化/MRI用のDOTAのガドリニウム錯体を開示している。特許文献2(Tweedleら)は、同様に、DO3A−HPのガドリニウム錯体、即ち、遊離大員環Nが、画像化のために2−ヒドロキシプロピルでアルキル化されているDO3A−誘導体を開示している。同様に、特許文献3(Petrovら)は、MRI用のその他のガドリニウム錯体、即ち、遊離大員環Nにおけるアルキル置換基が2,3−ジヒドロキシ−1−(ヒドロキシメチル)プロピルであるGd−DO3A−ブトリオールを開示している。その他は、その他の目標となり得るDO3A−誘導体を開示している:例えば、Platzekらの特許文献4を参照されたい。
一般的に、二官能キレートの前駆体は、強塩基、例えば、アルカリ金属水酸化物またはアルカリ金属炭酸塩等において、DO3Aトリス(t−ブチルエステル)等のエステル化DO3Aのアルキル化により合成される。例えば、特許文献4(Platzekら)では、6N水酸化カリウム(KOH)中でのDO3Aのアルキル化が開示されている。特許文献2(Tweedleら)では、同様に、水酸化ナトリウム(NaOH)または炭酸カリウム(K2CO3)の過剰の下で、DO3AのN−アルキル化を開示している。PlatzekらおよびTweedleらは、次いで、濾過および/またはクロマトグラフィーで遊離塩基として大員環を単離し、低収率でかつ/またはその後の反応のための取り扱いが難しい油を得ている。あるいはまた、cyclenは、初めに、対象の独特の基、例えば、二官能標的基またはリンカーでモノアルキル化され、次いで、DO3A−型部分を生成するためにその他の3つの窒素原子において誘導体化されてもよい。例えば、非特許文献2を参照されたい。Kruperらにより記載されている方法では、モノアルキル化大員環のHBr塩が生成され、これはクロマトグラフィーでの更なる精製を必要とし、したがって、これらの収率を低下させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第4,877,600号明細書
【特許文献2】米国特許第4,885,363号明細書
【特許文献3】米国特許第5,994,536号明細書
【特許文献4】米国特許第6,576,222号明細書
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】AE Martell and RD Hancock、「Metal Complexes in Aqueous Solutions」、Springer Verlag、1996年、第5章
【非特許文献2】Kruperら、J.Org.Chem.、1993年、58巻、3869〜3875頁
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
(要旨)
本発明の種々の態様の中に、テトラアザ大員環の容易な生成のための改良された合成経路が存在する。
【0007】
要するに、本発明の1つの態様は、弱塩基の存在下で、テトラ−N−置換テトラアザ大員環(2)を生成するためにトリス−N−置換テトラアザ大員環(1)の遊離大員環窒素をアルキル化する方法である。トリス−N−置換テトラアザ大員環(1)およびテトラ−N−置換テトラアザ大員環(2)は式:
【0008】
【化5】
(式中、Mは金属イオンであり、R1、R2およびR3は、独立に、ヒドロカルビル(hydrocarbyl)、置換ヒドロカルビル、またはヘテロシクロ(heterocyclo)であり、R4は、場合によって置換されたアルキルまたはアリールであり、Xは対イオンであり、Yは脱離基である)を有する。
【0009】
その他の態様では、式3の化合物が提供される、
【0010】
【化6】
(式中、Tは、(+1)または(+2)電荷を持つアルカリ金属、アルカリ土類金属、および遷移金属からなる群より選択される金属イオンであり、R11、R22およびR33は、独立に、−CH2CO2R5、−CH2ArOR5、−CH2SR5、−CH2PO3H2、CH2SO3H、−CH2Ar(OR5)2、−CH2Ar(OR5)R6および−CH2Ar(OR5)2R6からなる群より選択され、R44は、−CH2ArOR7、−CH(R8)CO2R7、−CH2Ar(OR7)2、−CH2Ar(OR7)R8、または−CH2Ar(OR7)2R8であり、R5、R6およびR7は、独立に、H、アルキルまたは置換アルキルであり、R8は、場合によって置換されたアシル、アリールおよびヘテロアリール、アルコキシ、ヒドロキシ、ハロ、アミノ、ニトロ、チオール、ジスルフィド、炭水化物、ビタミン、組合せおよび誘導体からなる群より選択され、Arは、場合によって置換されたフェニル、ピリミジニルまたはピリジニルであり、Yは、ハロゲン化物、メタンスルホネート、トリフルオロアセテート、トリフルオロメタンスルホネートおよびp−トルエンスルホネートからなる群より選択される対イオンである)。
【0011】
本発明のその他の態様は、この反応で製造されてもよいある種のテトラ−N−置換テトラアザ大員環(2)である。これらの生成物は、罹患した組織の画像化および治療のための二官能キレートを生成するための有用な中間体である。
【0012】
本発明のその他の目的および特徴は一部明らかにされ、一部は以降で指摘される。
例えば、本発明は以下の項目を提供する。
(項目1)
式1
【化1−1】
のトリスアルキル化テトラアザ大員環の遊離大員環窒素をアルキル化して、式2
【化1−2】
の化合物を生成する方法であって、該遊離大員環窒素を、アルキル化剤、R4Yで、有機溶媒中、弱塩基の存在下でアルキル化する工程を含み、
式中、Mは金属イオンであり、R1、R2およびR3は、独立に、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビルまたはヘテロシクロであり、R4は、場合によって置換されたアルキルまたはアリールであり、Xは対イオンであり、Yは脱離基である、方法。
(項目2)
Mが、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属およびランタニドから選択され、R1、R2およびR3が、独立に、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビルまたはヘテロシクロであり、R4が、場合によって置換されたアルキル、アリール、およびアシルであり、Xが、ハロゲン化物、ナイトレート、スルフェートまたはホスフェートを含み、Yが、ハロゲン化物、メタンスルホネート、トリフルオロアセテート、トリフルオロメタンスルホネートまたはp−トルエン−スルホネートを含む、項目1に記載の方法。
(項目3)
R1、R2およびR3が、独立に、アミノ、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、チオ、ニトロ、またはこれらの組合せで場合によって置換されたアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アシル、ヘテロアリール、またはヘテロシクリルである、項目2に記載の方法。
(項目4)
R1、R2およびR3が同じである、項目3に記載の方法。
(項目5)
R1、R2およびR3が、独立に、−CH2CO2R5、−CH2ArOR5、−CH2SR5、−CH2PO3H2、CH2SO3H、−CH2Ar(OR5)2、−CH2Ar(OR5)R6および−CH2Ar(OR5)2R6(ここで、R5およびR6は、独立に、H、t−Bu、Et、Me、ベンジルまたはメトキシベンジルである)からなる群より選択される、項目3に記載の方法。
(項目6)
R1、R2およびR3が同じである、項目5に記載の方法。
(項目7)
R1、R2およびR3が、それぞれ−CH2CO2−t−Buである、項目6に記載の方法。
(項目8)
前記アルキル化剤が、R4Y(ここで、R4は、場合によって置換されたアルキル、アリールであり、Yは、臭化物、塩化物、ヨウ化物、メタンスルホネート、トリフルオロアセテート、トリフルオロメタンスルホネートおよびp−トルエンスルホネートからなる脱離基である)である、項目1に記載の方法。
(項目9)
R4が、−CH2ArOR7、−CH(R8)CO2R7、−CH2Ar(OR7)2、−CH2Ar(OR7)R8、または−CH2Ar(OR7)2R8(ここで、R7は、H、t−Bu、EtまたはMeであり、R8は、場合によって置換されたアシル、アリールおよびヘテロアリール、アルコキシ、ヒドロキシ、ハロ、アミノ、ニトロ、チオール、ジスルフィド、炭水化物、ビタミン、組合せおよび誘導体からなる群より選択され、Arは、場合によって置換されたフェニル、ピリミジニルまたはピリジニルである)である、項目8に記載の方法。
(項目10)
Yが、ハロゲン化物、メタンスルホネート、トリフルオロアセテート、p−トルエンスルホネートおよびトリフルオロメタンスルホネートイオンからなる群より選択される脱離基である、項目8に記載の方法。
(項目11)
Yが、臭化物、塩化物またはヨウ化物である、項目10に記載の方法。
(項目12)
Yが臭化物である、項目10に記載の方法。
(項目13)
前記弱塩基が、ビカーボネート、ビホスフェート、ビスルフェート、アセテートまたはシトレートの金属塩を含む、項目1に記載の方法。
(項目14)
前記弱塩基が金属ビカーボネート塩である、項目13に記載の方法。
(項目15)
前記金属が、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属およびランタニド金属からなる群より選択される、項目14に記載の方法。
(項目16)
前記弱塩基がアルカリ金属ビカーボネートである、項目14に記載の方法。
(項目17)
前記弱塩基が重炭酸ナトリウムである、項目16に記載の方法。
(項目18)
R1、R2およびR3が、独立に、−CH2CO2R5、−CH2ArOR5、−CH2SR5、−CH2PO3H2、CH2SO3H、−CH2Ar(OR5)2、−CH2Ar(OR5)R6および−CH2Ar(OR5)2R6からなる群より選択され、
R4が、−CH2ArOR7、−CH(R8)CO2R7、−CH2Ar(OR7)2、−CH2Ar(OR7)R8、または−CH2Ar(OR7)2R8であり、
R5、R6およびR7が、独立に、水素、アルキルまたは置換アルキルであり、
R8が、場合によって置換されたアシル、アリールおよびヘテロアリール、アルコキシ、ヒドロキシ、ハロ、アミノ、ニトロ、チオール、ジスルフィド、炭水化物、ビタミン、組合せおよび誘導体からなる群より選択され、
Arが、場合によって置換されたフェニル、ピリミジニルまたはピリジニルであり、
Yが、臭化物、塩化物、ヨウ化物、メタンスルホネート、トリフルオロアセテート、トリフルオロメタンスルホネートおよびp−トルエンスルホネートからなる脱離基である、項目1から17のいずれか一項に記載の方法。
(項目19)
R1、R2およびR3が、独立に、−CH2CO2R5であり、R5が、H、t−Bu、Et、Me、ベンジルまたはベンジルメトキシである、項目18に記載の方法。
(項目20)
R5がt−ブチルであり、Arがフェニルであり、Mがナトリウムであり、Yが臭化物である、項目19に記載の方法。
(項目21)
R1、R2およびR3のそれぞれが、−CH2C(O)O−t−ブチルである、項目19に記載の方法。
(項目22)
Arがフェニルであり、Mがナトリウムであり、Yが臭化物である、項目20に記載の方法。
(項目23)
R4が、−CH2Ar(OR5)NO2または−CH(CO2R5)−(CH2)4NHCO2CH2Arである、項目18に記載の方法。
(項目24)
R5がt−ブチルであり、Arがフェニルある、項目23に記載の方法。
(項目25)
R4が、−CH2Ar(OR5)NO2または−CH(CO2R5)−(CH2)4NHCO2CH2Arであり、R5がt−ブチルであり、R7およびR8が、独立に、水素または低級(C1〜4)アルキルである、項目23に記載の方法。
(項目26)
Arがフェニルであり、Mがナトリウムであり、Yが臭化物である、項目25に記載の方法。
(項目27)
R1、R2およびR3が、独立に、−CH2CO2R5であり、R4が、−CH2Ar(OR5)NO2または−CH(CO2R5)(CH2)4NHCO2CH2Arである、項目18に記載の方法。
(項目28)
R5がt−ブチルであり、Arがフェニルであり、Mがナトリウムであり、Yが臭化物である、項目27に記載の方法。
(項目29)
Mがアルカリ金属イオンであり、Yがハロゲン化物イオンである、項目27に記載の方法。
(項目30)
Arがフェニルであり、Mがナトリウムであり、Yが臭化物である、項目29に記載の方法。
(項目31)
R5がt−ブチルであり、R7およびR8が、独立に、水素または低級(C1〜4)アルキルである、項目27に記載の方法。
(項目32)
Arがフェニルであり、Mがナトリウムであり、Yが臭化物である、項目31に記載の方法。
(項目33)
前記有機溶媒が極性非プロトン性溶媒である、項目1に記載の方法。
(項目34)
前記有機溶媒が、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミドおよび1,2−ジメトキシエタン(DME)からなる群より選択される、項目33に記載の方法。
(項目35)
前記有効溶媒がアセトニトリルである、項目34に記載の方法。
(項目36)
温度が約25℃〜約40℃であり、反応が一晩中撹拌される、項目1に記載の方法。
(項目37)
前記温度が約30℃〜約35℃である、項目36に記載の方法。
(項目38)
式3:
【化2】
の化合物であって、式中、
Tは、(+1)または(+2)電荷を持つアルカリ金属、アルカリ土類金属、および遷移金属からなる群より選択される金属イオンであり、
R11、R22およびR33は、独立に、−CH2CO2R5、−CH2ArOR5、−CH2SR5、−CH2PO3H2、CH2SO3H、−CH2Ar(OR5)2、−CH2Ar(OR5)R6および−CH2Ar(OR5)2R6からなる群より選択され、
R44は、−CH2ArOR7、−CH(R8)CO2R7、−CH2Ar(OR7)2、−CH2Ar(OR7)R8、または−CH2Ar(OR7)2R8であり、
R5、R6およびR7は、独立に、H、アルキルまたは置換アルキルであり、
R8は、場合によって置換されたアシル、アリールおよびヘテロアリール、アルコキシ、ヒドロキシ、ハロ、アミノ、ニトロ、チオール、ジスルフィド、炭水化物、ビタミン、組合せおよび誘導体からなる群より選択され、
Arは、場合によって置換されたフェニル、ピリミジニルまたはピリジニルであり、
Yは、ハロゲン化物、メタンスルホネート、トリフルオロアセテート、トリフルオロメタンスルホネートおよびp−トルエンスルホネートからなる群より選択される対イオンである、化合物。
(項目39)
R11、R22およびR33が、独立に、−CH2CO2R5、−CH2ArOR5、−CH2SR5、−CH2PO3H2、CH2SO3H、−CH2Ar(OR5)2、−CH2Ar(OR5)R6および−CH2Ar(OR5)2R6(ここで、R5およびR6は、独立に、水素、アルキルまたは置換アルキルであり、Arは、場合によって置換されたフェニル、ピリミジニルまたはピリジニルである)からなる群より選択される、項目38に記載の化合物。
(項目40)
R5およびR6が、独立に、H、t−Bu、EtまたはMeである、項目39に記載の化合物。
(項目41)
R11、R22およびR33が、独立に、−CH2CO2R5であり、R5が水素またはアルキルである、項目40に記載の化合物。
(項目42)
R11、R22およびR33のそれぞれが、−CH2C(O)O−t−ブチルである、項目41に記載の化合物。
(項目43)
R44が、−CH2ArOR7、−CH(R8)CO2R7、−CH2Ar(OR7)2、−CH2Ar(OR7)R8、または−CH2Ar(OR7)2R8であり、
R7が水素またはアルキルであり、
R8が、カルボン酸、エーテル、アルコール、フッ化物、アリール、アミノ酸、ペプチド、炭水化物、ビタミン、チオール、ジスルフィド、アミン、ピリジン、ピリミジン、イミダゾール、トリアゾール、1つまたは複数の組合せ、および保護基を持つ誘導体からなる群より選択され、
Arが、場合によって置換されたフェニル、ピリミジニルまたはピリジニルである、項目38に記載の化合物。
(項目44)
R44が、−CH2Ar(OR5)NO2または−CH(CO2R5)(CH2)4NH(CO2)CH2Arであり、その他の基が定義されている通りである、項目38に記載の化合物。
(項目45)
R5がt−ブチルであり、R7およびR8が、独立に、水素または低級(C1〜4)アルキルである、項目44に記載の化合物。
(項目46)
Yが、ハロゲン化物、メタンスルホネート、トリフルオロアセテート、p−トルエンスルホネートおよびトリフルオロメタンスルホネートイオンからなる群より選択される、項目38に記載の化合物。
(項目47)
Yが、臭化物、塩化物またはヨウ化物である、項目46に記載の化合物。
(項目48)
Yが臭化物である、項目47に記載の化合物。
(項目49)
Tがアルカリまたはアルカリ土類金属である、項目38に記載の化合物。
(項目50)
Tがナトリウムである、項目49に記載の化合物。
(項目51)
Tがナトリウムであり、Yが臭化物である、項目38に記載の化合物。
(項目52)
Tがナトリウムであり、
R11、R22およびR33が同じであって、−CH2CO2R5、−CH2ArOR5、−CH2SR5、−CH2PO3H2、CH2SO3H、−CH2Ar(OR5)2、−CH2Ar(OR5)R6および−CH2Ar(OR5)2R6からなる群より選択され、
Yが臭化物である、項目38に記載の化合物。
(項目53)
R11、R22およびR33が、独立に、−CH2CO2R5であり、R5が水素またはアルキルである、項目52に記載の化合物。
(項目54)
R11、R22およびR33のそれぞれが、−CH2C(O)O−t−ブチルである、項目53に記載の化合物。
(項目55)
R11、R22およびR33が、独立に、−CH2CO2R5であり、R44が、−CH2Ar(OR5)NO2または−CH(CO2R5)−(CH2)4NHCO2CH2Arである、項目38に記載の化合物。
(項目56)
Tがアルカリ金属イオンであり、R5がt−ブチルであり、R7およびR8が、独立に、水素または低級(C1〜4)アルキルであり、Yがハロゲン化物イオンである、項目55に記載の化合物。
(項目57)
Arがフェニルであり、Tがナトリウムであり、Yが臭化物である、項目56に記載の化合物。
(項目58)
R5がt−ブチルであり、R7およびR8が、独立に、水素または低級(C1〜4)アルキルである、項目57に記載の化合物。
(項目59)
構造:
【化3】
に相当する化合物。
(項目60)
構造:
【化4】
に相当する化合物。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、2−t−ブトキシ−5−ニトロベンジルブロミドの合成反応の図である。
【図2】図2は、1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7−三酢酸,トリ−t−ブチルエステルヒドロブロミド、化合物II、および1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7−三酢酸,10−[(2−t−ブトキシ−5−ニトロフェニル)メチル]−,トリ−t−ブチルエステル、化合物IIIの合成反応の図である。
【図3】図3は、50%の熱振動楕円体を伴う、1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7−三酢酸,10−[(2−t−ブトキシ−5−ニトロフェニル)−メチル]−,トリ−t−ブチルエステル、臭化ナトリウム錯体、化合物IIIの投影図である。
【図4】図4は、50%の熱振動楕円体を伴う、1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7−三酢酸,10−[(2−t−ブトキシ−5−ニトロフェニル)−メチル]−,トリ−t−ブチルエステル,臭化ナトリウム錯体、化合物IIIの投影図であり、アニオン、溶媒の水およびH原子は、明確にするために示されていない。
【図5】図5は、(S)−6−{[(ベンジルオキシ)カルボニル]アミノ}−2−ブロモヘキサン酸、化合物IV、t−ブチル6−{[(ベンジルオキシ)カルボニル]アミノ}−2−ブロモヘキサノエート、化合物V、および2−{[2’,2’’,2’’’−(1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7−トリイル)三酢酸]−10−イル}−6−[(ベンジル−オキシカルボニル)アミノ]へキサン酸,テトラ−t−ブチルエステル,臭化ナトリウム錯体、化合物VIの合成反応の図である。
【図6】図6は、ナトリウムt−ブチル2’,2’’,2’’’−(10−(2−(ベンジルオキシ)−2−オキソエチル)−1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7−トリイル)トリアセテートブロミド、化合物VIIの合成反応の図である。
【図7】図7は、ナトリウムt−ブチル2,2’,2’’−(10−(2,6−ジクロロベンジル)−1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7−トリイル)トリアセテートブロミド、化合物VIIIの合成反応の図である。
【図8】図8は、50%の熱振動楕円体を伴う、ナトリウムt−ブチル2,2’,2’’−(10−(2,6−ジクロロベンジル)−1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7−トリイル)トリアセテートブロミド、化合物VIIIの投影図であり、1つの独特な分子が示されている。溶媒、対イオンおよびH原子は、明確にするために示されていない。
【図9】図9は、ナトリウムt−ブチル2,2’,2’’−(10−(2,6−ジクロロベンジル)−1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7−トリイル)トリアセテートブロミド、化合物VIIIの投影図である。
【図10】図10は、ナトリウムt−ブチル2,2’,2’’−(10−(シアノメチル)−1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7−トリイル)トリアセテートブロミド、化合物IXの合成反応の図である。
【図11】図11は、ナトリウムt−ブチル2,2’,2’’−(10−(2−メトキシ−2−オキソ−1−フェニルエチル)−1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7−トリイル)トリアセテートブロミド、化合物Xの合成反応の図である。
【図12】図12は、50%の熱振動楕円体を伴う、ナトリウムt−ブチル2,2’,2’’−(10−(2−メトキシ−2−オキソ−1−フェニルエチル)−1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7−トリイル)トリアセテートブロミド、化合物Xの投影図である。溶媒、対イオンおよびH原子は、明確にするために示されていない。
【図13】図13は、50%の熱振動楕円体を伴う、ナトリウムt−ブチル2’,2’’−(10−(2−メトキシ−2−オキソ−1−フェニルエチル)−1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7−トリイル)トリアセテートブロミド、化合物Xの投影図であり、無秩序Cl原子は示されていない。
【図14】図14は、2−アミノ−5−(ベンジルオキシ)−5−オキソペンタン酸、化合物XI;5−(ベンジルオキシ)−2−ブロモ−5−オキソペンタン酸、化合物XII;5−ベンジル1−t−ブチル2−ブロモペンタンジオエート、化合物XIII;およびナトリウム(5−ベンジル1−t−ブチル2−(4,7,10−トリス(2−t−ブトキシ−2−オキソエチル)−1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1−イル)ペンタンジオエートブロミド、化合物XIVの合成反応の図である。
【図15】図15は、2つの分子の1つを示す、ナトリウム(5−ベンジル1−t−ブチル2−(4,7,10−トリス(2−t−ブトキシ−2−オキソエチル)−1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1−イル)ペンタンジオエートブロミド、化合物XIVの投影図である。
【図16】図16は、ナトリウム(5−ベンジル1−t−ブチル2−(4,7,10−トリス(2−t−ブトキシ−2−オキソエチル)−1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1−イル)ペンタンジオエートブロミド、化合物XIVの投影図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(詳細な説明)
1つの実施形態では、本発明は、4置換生成物2を生成するための3置換テトラアザ大員環1のアルキル化方法に関する。この方法は、大員環1の遊離大員環窒素原子をアルキル化剤、R4Yで、有機溶媒中、弱塩基の存在下でアルキル化する工程を含み、3置換大員環1および4置換生成物2は、一般構造:
【化7】
(式中、Mは金属イオンであり、R1、R2およびR3は、独立に、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビルまたはヘテロシクロであり、R4は、場合によって置換されたアルキルまたはアリールであり、Xは対イオンであり、Yは脱離基である)を有する。
【0015】
Mは、(1)の(2)への転換で使用される弱塩基の金属イオン成分から誘導される。一般的に、Mは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属およびランタニドから選択される。1つの実施形態では、Mはアルカリ金属イオンである。その他の実施形態では、Mはナトリウムである。
【0016】
意図する用途によって、R1、R2およびR3は、金属を結合する実体の供給源を提供してもよい。あるいはまた、これらは、標的化で(大員環錯体を予め決められた部位へ導くこと)または他の分子へのリンカーとして(大きな分子集合体を生成するために)独立にまたは集合的に機能してもよい。1つの実施形態では、R1、R2およびR3は、独立に、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビルまたはヘテロシクロである。これらは、独立に、場合によって置換されたヒドロカルビル、ヘテロ置換ヒドロカルビルおよび複素環からなる群より選択されてもよい。例えば、R1、R2およびR3は、独立に、アシル、アミノ、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、チオ、ニトロ、またはこれらの組合せで場合によって置換されたアルキル、アルケニル、アルキニル、アリールまたはヘテロシクリルであってもよい。1つの実施形態では、R1、R2およびR3は同じであり、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビルまたはヘテロシクロである。その他の実施形態では、R1、R2およびR3は同じではなく、独立に、−CH2CO2R5、−CH2ArOR5、−CH2SR5、−CH2PO3H2、CH2SO3H、−CH2Ar(OR5)2、−CH2Ar(OR5)R6および−CH2Ar(OR5)2R6(ここで、R5およびR6は、独立に、水素、アルキルまたは置換アルキルである)からなる群より選択される。例えば、この実施形態では、R5およびR6は、独立に、H、t−Bu、Et、Me、メトキシベンジル、またはベンジルから選択されてもよい。1つの特定の実施形態では、R1、R2およびR3は、それぞれ−CH2CO2R5(ここで、R5はt−ブチルである)である。上述の代替法では、R1、R2およびR3は、また、標的化基(targeting group)および結合基を与えてもよい。この場合、R1、R2およびR3は、独立に、−CH2CO2R5、−CH2ArOR5、−CH2SR5、−CH2Ar(OR5)2、−CH2Ar(OR5)R6および−CH2Ar(OR5)2R6(ここで、R5およびR6は、独立に、アシル、場合によって置換されたアリールおよびヘテロアリール、アルコキシ、ヒドロキシ、ハロ、アミノ、ニトロ、チオール、ジスルフィド、炭水化物、ビタミンならびにこれらの組合せおよび誘導体を含む)からなる群より選択される。
【0017】
一般的に、R4は、標的化、即ち、大員環誘導体を対象の標的へ導くための可能性を持つ基である。しかしながら、R4は、また、金属を結合する実体の供給源であってもよく、広範囲の用途のためにその他の分子と大員環誘導体とを結合する役割を果たしてもよい。1つの実施形態では、R4は、場合によって置換されたアルキルもしくはアリール、アシルまたはこれらの組合せである。好ましい実施形態では、R4は、−CH2ArOR7、−CH(R8)CO2R7、−CH2Ar(OR7)2、−CH2Ar(OR7)R8、または−CH2Ar(OR7)2R8(ここで、(i)Arは、場合によって置換されたフェニル、ピリミジニルまたはピリジニルであり、(ii)R7は、水素またはアルキル、例えば、t−Bu、Et、Me等、メトキシベンジル、またはベンジルであり、(iii)R8は、アシル、場合によって置換されたアリールおよびヘテロアリール、アルコキシ、ヒドロキシ、ハロ、アミノ、ニトロ、チオール、ジスルフィド、炭水化物、ビタミンならびにこれらの組合せおよび誘導体からなる群より選択される)である。
【0018】
Xは、3置換大員環基質1の酸塩の対イオンであり、Xは、基質がアルキル化前に遊離塩基へ転換される場合に脱離される。一般的に、Xは、ハロゲン化物、ナイトレート、スルフェートまたはホスフェートである。1つの実施形態では、Xはハロゲン化物イオンである。
【0019】
本発明の方法で使用されるアルキル化剤は、式R4Yを有する。R4は大員環窒素上に導入される置換基であり、上で詳細に説明されている。一般的に、R4は、標的基または結合部分の源であってもよい。Yはアルキル化反応での脱離基であり以下で説明される。
【0020】
1つの実施形態では、Yは、ハロゲン化物、メタンスルホネート、トリフルオロアセテート、p−トルエンスルホネートおよびトリフルオロメタンスルホネートイオンからなる群より選択される脱離基である。好ましくは、Yは臭化物、塩化物、ヨウ化物、メタンスルホネート、トリフルオロアセテート、トリフルオロメタンスルホネートまたはp−トルエンスルホネートを含む。脱離基Yの臭化物が一般的に好ましい。
【0021】
本発明の1つの実施形態は、(i)R1、R2およびR3が、独立に、−CH2CO2R5、−CH2ArOR5、−CH2SR5、−CH2PO3H2、CH2SO3H、−CH2Ar(OR5)2、−CH2Ar(OR5)R6および−CH2Ar(OR5)2R6からなる群より選択され、(ii)R4が、−CH2ArOR7、−CH(R8)CO2R7、−CH2Ar(OR5)2、−CH2Ar(OR7)R8、または−CH2Ar(OR7)2R8である方法に関する。この実施形態では、Arは、場合によって置換されたフェニル、ピリミジニルまたはピリジニルであり、R5、R6およびR7は、独立に、H、アルキル、例えば、t−Bu、EtもしくはMe等、メトキシベンジル、またはベンジルであり、R8は、アシル、場合によって置換されたアリールおよびヘテロアリール、アルコキシ、ヒドロキシ、ハロ、アミノ、ニトロ、チオール、ジスルフィド、炭水化物、ビタミン、組合せおよび誘導体からなる群より選択され、Yは、臭化物、塩化物、ヨウ化物、メタンスルホネート、トリフルオロアセテート、トリフルオロメタンスルホネートおよびp−トルエンスルホネートからなる群より選択される。例えば、この実施形態では、R1、R2およびR3は−CH2CO2R5であってもよく、それぞれのR5は、独立に、水素またはt−Bu、EtもしくはMe等のアルキルである。この実施形態のその他の態様では、Arはフェニルであり、Mはナトリウムであり、R5はt−ブチルであり、Yは臭化物である。
【0022】
その他の実施形態では、(i)Arは、場合によって置換されたフェニル、ピリミジニルまたはピリジニルであり、(ii)R1、R2およびR3は、独立に、−CH2CO2R5、−CH2ArOR5、−CH2SR5、−CH2PO3H2、CH2SO3H、−CH2Ar(OR5)2、−CH2Ar(OR5)R6および−CH2Ar(OR5)2R6からなる群より選択され、(iii)R4は、−CH2Ar(OR5)NO2または−CH(CO2R5)(CH2)4NH(CO2CH2Ar)であり、(iv)R5およびR6は、独立に、H、t−Bu、Et、Me、メトキシベンジル、またはベンジルであり、(v)Yは、臭化物、塩化物、ヨウ化物、メタンスルホネート、トリフルオロアセテート、トリフルオロメタンスルホネートまたはp−トルエンスルホネートを含む脱離基である。例えば、この実施形態では、Arはフェニルであり、Mはナトリウムであり、R5はt−ブチルであり、Yは臭化物である。
【0023】
代替的な実施形態では、R1、R2およびR3は、独立に、−CH2CO2R5であり、R4は、−CH2Ar(OR5)NO2または−CH(CO2R5)(CH2)4NH(CO2)CH2Arである。例えば、この実施形態では、Arはフェニルであり、Mはナトリウムであり、R5はt−ブチルであり、Yは臭化物である。
【0024】
弱塩基は、主に、3置換大員環塩基を与え、また、反応の酸性副生成物を捕捉する。一般的に、弱塩基は、約12以下のpKbを有する塩基である。1つの実施形態では、弱塩基は、11を超えないpKbを有する。その他の実施形態では、弱塩基は、約10以下のpKbを有する。1つの好ましい実施形態では、弱塩基は、ビカーボネート(bicarbonate)、ビホスフェート(biphosphate)、ビスルフェート(bisulfate)、アセテートまたはシトレート、あるいはこれらの組合せの金属塩である。本発明のその他の実施形態では、弱塩基は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属またはランタニド金属のビカーボネート塩を含む。1つの実施形態では、アルカリ金属ビカーボネートは最適な弱塩基である。その他の実施形態では、弱塩基は重炭酸ナトリウムである。
【0025】
本発明の反応を実施する際に使用される弱塩基の量は、大員環基質対塩基のモル比で約1:1に近い範囲まで著しく減少される;多量の塩基は収率を妨げる可能性がある。1つの実施形態では、本発明の反応を実施する際に使用される弱塩基の量は、通常、約1:0.9〜約1:1.2のモル比の範囲にある。その他の実施形態では、基質対塩基の比は、約1:1〜約1:1.1である。なおその他の実施形態では、この比は1:1である。
【0026】
アルキル化方法のための有機溶媒は、例えば、極性非プロトン性溶媒であってもよい。1つの実施形態では、溶媒は、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド(DMF)、テトラヒドロフラン(THF)、ジメチルアセトアミド(DMAC)または1,2−ジメトキシエタン(DME)を含む。その他の実施形態では、有機溶媒はアセトニトリルである。
【0027】
温度および期間等の反応条件は、生成物(2)の収率を最大限にするために変動することができる。一般的に、温度は、反応を妥当な時間で完了させるために選択される。例えば、約30℃〜約35℃の温度範囲は、一晩でアルキル化の完了を一般的に可能にする。低い反応性の反応体は、反応を一晩で完了させるために進める場合は高温範囲が有利である。反対に、基質がより反応性である場合は、その場合は、低温または短い期間が好ましいものであってもよい。本発明の1つの実施形態では、反応温度は約25℃〜約40℃であり、反応は一晩中撹拌される。その他の実施形態では、温度は約30℃〜約35℃である。
【0028】
先に列挙の特定の化合物および混合物は、塩、エステル、またはその他の誘導体であることのできる本発明の組成物を形成するのに使用することができる。本発明の方法は、大多数の化合物を調製するために使用することができる。
【0029】
本発明の方法は、更なるクロマトグラフィーの必要なしで、高収率で、反応媒体から定量的に都合よく単離されてもよい金属塩として構造3に相当する化合物を調製のために使用される。構造3に相当する化合物は、二官能キレートを生成するための有用な中間体である。1つの実施形態では、化合物は、構造:
【0030】
【化8】
(式中、
Tは、(+1)または(+2)電荷を持つアルカリ金属、アルカリ土類金属または遷移金属からなる群より選択される金属イオンであり、R11、R22およびR33は、独立に、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビルまたはヘテロシクロであり、R44は、場合によって置換されたアルキルまたはアリール、あるいはこれらの組合せであり、Yは、臭化物、塩化物、ヨウ化物、メタンスルホネート、トリフルオロアセテート、トリフルオロメタンスルホネートおよびp−トルエンスルホネートイオンからなる群より選択される対イオンである)に相当する。
【0031】
1つの実施形態では、R11、R22およびR33は、独立に、アシル、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビルまたはヘテロシクロである。これらは、独立に、場合によって置換されたヒドロカルビル、ヘテロ置換ヒドロカルビルおよび複素環からなる群より選択されてもよい。例えば、R11、R22およびR33は、独立に、アシル、アミノ、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、チオ、ニトロ、またはこれらの組合せで場合によって置換されたアルキル、アルケニル、アルキニル、アリールまたはヘテロシクリルであってもよい。1つの実施形態では、R11、R22およびR33は同じであり、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビルまたはヘテロシクロである。その他の実施形態では、R11、R22およびR33は同じではなく、独立に、−CH2CO2R5、−CH2ArOR5、−CH2SR5、−CH2PO3H2、CH2SO3H、−CH2Ar(OR5)2、−CH2Ar(OR5)R6および−CH2Ar(OR5)2R6(ここで、R5およびR6は、独立に、アルキルまたは置換アルキルである)からなる群より選択される。例えば、この実施形態では、R5およびR6は、独立に、H、t−Bu、Et、Me、メトキシベンジル、またはベンジルであってもよい。この実施形態のその他の例では、R1、R2およびR3は、それぞれ−CH2CO2R5(ここで、R5はt−ブチルである)である。
【0032】
1つの実施形態では、R44は、アシル、場合によって置換されたアルキルもしくはアリール、またはこれらの組合せである。好ましい実施形態では、R44は、−CH2ArOR7、−CH(R8)CO2R7、−CH2Ar(OR7)2、−CH2Ar(OR7)R8、または−CH2Ar(OR7)2R8(ここで、(i)Arは、場合によって置換されたフェニル、ピリミジニルまたはピリジニルであり、(ii)R7は、水素またはアルキル、例えば、t−Bu、EtもしくはMe等であり、(ii)R8は、アシル、場合によって置換されたアリールおよびヘテロアリール、アルコキシ、ヒドロキシ、ハロ、アミノ、ニトロ、チオール、ジスルフィド、炭水化物、ビタミンならびにこれらの組合せおよび誘導体からなる群より選択される)である。代替的な実施形態では、R44は、−CH2Ar(OR5)NO2または−CH(CO2R5)(CH2)4NH(CO2)CH2Arである。好ましい実施形態では、Arはフェニルであり、R44は、−CH2Ar(OR5)NO2または−CH(CO2R5)(CH2)4NH(CO2)CH2Arであり、R5はt−ブチルである。
【0033】
1つの実施形態では、Yは、ハロゲン化物、メタンスルホネート、トリフルオロアセテート、p−トルエンスルホネートおよびトリフルオロメタンスルホネートイオンからなる群より選択される。好ましくは、Yは、臭化物、塩化物、ヨウ化物、メタンスルホネート、トリフルオロアセテート、トリフルオロメタンスルホネートまたはp−トルエンスルホネートを含む。脱離基Yの臭化物が一般的に好ましい。
【0034】
その他の実施形態では、(i)R11、R22およびR33は、独立に、−CH2CO2R5、−CH2ArOR5、−CH2SR5、−CH2PO3H2、CH2SO3H、−CH2Ar(OR5)2、−CH2Ar(OR5)R6および−CH2Ar(OR5)2R6からなる群より選択され、(ii)R44は、−CH2Ar(OR5)NO2または−CH(CO2R5)(CH2)4NH(CO2CH2Ar)であり、(iii)R5およびR6は、独立に、H、t−Bu、Et、Me、メトキシベンジルまたはベンジルであり、(iv)、Arは、場合によって置換されたフェニル、ピリミジニルまたはピリジニルであり、(v)Yは、臭化物、塩化物、ヨウ化物、メタンスルホネート、トリフルオロアセテート、トリフルオロメタンスルホネートまたはp−トルエンスルホネートを含む脱離基である。好ましい実施形態では、Arはフェニルであり、Tはナトリウムであり、R5はt−ブチルであり、Yは臭化物である。
【0035】
代替的な実施形態では、R11、R22およびR33は、独立に、−CH2CO2R5であり、R4は、−CH2Ar(OR5)NO2または−CH(CO2R5)(CH2)4NH(CO2)CH2Arである。例えば、この実施形態では、Tはナトリウムであり、R5はt−ブチルであり、Arはフェニルであり、Yは臭化物である。
【0036】
1つの実施形態では、本発明は、構造:
【0037】
【化9】
に相当する化合物に関する。
【0038】
その他の実施形態では、本発明は、構造:
【0039】
【化10】
に相当する化合物に関する。
【0040】
(定義)
本明細書で単独で、またはその他の基の一部として使用される「アシル」と言う用語は、有機カルボン酸の−COOH基からヒドロキシル基の除去により形成される部分、例えば、RC(O)−(ここで、Rは、R1、R1O−、R1R2N−、またはR1S−であり、R1は、ヒドロカルビル、ヘテロ置換ヒドロカルビル、またはヘテロシクロであり、R2は、水素、ヒドロカルビルまたは置換ヒドロカルビルである)を表す。
【0041】
本明細書で単独で、またはその他の基の一部として使用される「アリール」または「Ar」と言う用語は、場合によって置換された同素環式芳香族基、好ましくは、環部分に6〜12個の炭素を含む単環式または二環式基、例えば、フェニル、ビフェニル、ナフチル、置換フェニル、置換ビフェニルまたは置換ナフチル等を表す。フェニルおよび置換フェニルは更に好ましいアリールである。
【0042】
本明細書で単独で、またはその他の基の一部として使用される「対イオン」と言う用語は、化合物の電気的な中性を維持することの目的のための形成において存在するイオンを意味する。対イオンは正または負であってもよい。
【0043】
本明細書で単独で、またはその他の基の一部として使用される「ハロゲン」、「ハロゲン化物」または「ハロ」と言う用語は、塩素、臭素、フッ素、およびヨウ素を意味する。
【0044】
「ヘテロ原子」と言う用語は、炭素および水素以外の原子を意味すべきものである。本明細書で単独で、またはその他の基の一部として使用される「ヘテロ芳香族」と言う用語は、少なくとも1つの環に少なくとも1つのヘテロ原子を有する、好ましくは、各環に5または6個の原子を有する、場合によって置換された芳香族基を表す。ヘテロ芳香族基は、好ましくは、環において1または2個の酸素原子、1または2個の硫黄原子、および/または1〜4個の窒素原子を有し、炭素原子またはヘテロ原子を介して分子の残部へ結合されてもよい。例示的ヘテロ芳香族としては、フリル、チエニル、ピリジル、オキサゾリル、ピロリル、インドリル、キノリニル、またはイソキノリニル等が挙げられる。例示的置換基としては、1つまたは複数の次の基が挙げられる:ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、ケト、ヒドロキシ、保護ヒドロキシ、アシル、アシルオキシ、アルコキシ、アルケノキシ、アルキノキシ、アリールオキシ、ハロゲン、アミド、アミノ、ニトロ、シアノ、チオール、ケタール、アセタール、エステルおよびエーテル。
【0045】
本明細書で単独で、またはその他の基の一部として使用される「ヘテロシクロ」または「複素環」と言う用語は、少なくとも1つの環に少なくとも1つのヘテロ原子を有し、好ましくは、各環に5または6個の原子を有する、場合によって置換された完全に飽和したまたは不飽和単環式もしくは二環式芳香族または非芳香族基を表す。ヘテロシクロ基は、好ましくは、環において1または2個の酸素原子、1または2個の硫黄原子、および/または1〜4個の窒素原子を有し、炭素原子またはヘテロ原子を介して分子の残部へ結合されてもよい。例示的ヘテロシクロとしては、フリル、チエニル、ピリジル、オキサゾリル、ピロリル、インドリル、キノリニル、またはイソキノリニル等のヘテロ芳香族が挙げられる。例示的置換基としては、1つまたは複数の次の基が挙げられる:ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、ケト、ヒドロキシ、保護ヒドロキシ、アシル、アシルオキシ、アルコキシ、アルケノキシ、アルキノキシ、アリールオキシ、ハロゲン、アミド、アミノ、ニトロ、シアノ、チオール、ケタール、アセタール、エステルおよびエーテル。
【0046】
本明細書で使用される「炭化水素」および「ヒドロカルビル」と言う用語は、専ら炭素および水素元素からなる有機化合物または基を表す。これらの部分としては、アルキル、アルケニル、アルキニル、およびアリール部分が挙げられる。これらの部分としては、また、その他の脂肪族または環状炭化水素基で置換した、アルキル、アルケニル、アルキニル、およびアリール部分、例えば、アルカリール、アルケナリールおよびアルキナリール等が挙げられる。別途指示されない限り、これらの部分は、好ましくは、1〜20個の炭素原子を含む。
【0047】
本明細書で記載される「置換ヒドロカルビル」部分は、炭素鎖原子が、ヘテロ原子、例えば、窒素、酸素、ケイ素、燐、ホウ素、硫黄等、またはハロゲン原子で置換された部分を含めて、炭素以外の少なくとも1つの原子で置換されたヒドロカルビル部分である。これらの置換基としては、ハロゲン、ヘテロシクロ、アルコキシ、アルケノキシ、アルキノキシ、アリールオキシ、ヒドロキシ、保護ヒドロキシ、ケト、アシル、アシルオキシ、ニトロ、アミノ、アミド、ニトロ、シアノ、チオール、ケタール、アセタール、エステルおよびエーテルが挙げられる。
【0048】
テトラアザ大員環のN−アルキル化での「脱離基」と言う用語は、大員環窒素原子上に置換されないアルキル化剤の成分を意味する。これらは、一般的に、ハロゲン化イオン、メタンスルホネート、トリフルオロアセテート、トリフルオロメタンスルホネートまたはp−トルエンスルホネートを含む。
【0049】
「弱塩基」と言う用語は、溶液である場合に完全に解離しない塩基を意味する。一般的に、それは、弱酸の共役塩基である。
【0050】
別途指示されない限り、本明細書に記載のアルキル基は、好ましくは、主鎖において1〜8個の炭素原子を含み、そして20個までの炭素原子を含む低級アルキル基である。これらは、直鎖もしくは分枝鎖または環状であってもよく、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、ヘキシル等が挙げられる。
【0051】
別途指示されない限り、本明細書に記載のアルケニル基は、好ましくは、主鎖において2〜8個の炭素原子を含み、そして20個までの炭素原子を含む低級アルケニル基である。これらは、直鎖もしくは分枝鎖または環状であってもよく、エテニル、プロペニル、イソプロペニル、ブテニル、イソブテニル、ヘキセニル等が挙げられる。
【0052】
別途指示されない限り、本明細書に記載のアルキニル基は、好ましくは、主鎖において2〜8個の炭素原子を含み、そして20個までの炭素原子を含む低級アルキニル基である。これらは、直鎖または分枝鎖であってもよく、エチニル、プロピニル、ブチニル、イソブチニル、ヘキシニル等が挙げられる。
【0053】
本明細書で使用される「保護基」と言う用語は、保護が使用される反応に対してその後に、分子の残部を害することなく除去されてもよい、反応性基、例えば、遊離ヒドロキシル基(「保護ヒドロキシル」)、アミン基(「保護アミン」)、スルフヒドリル基(「保護スルフヒドリル」)等を保護することのできる基を表す。種々の保護基およびこの合成は、「Protective Groups in Organic Synthesis」 by T.W.Greene、John Wiley and Sons、1981年、or Fieser & Fieserにおいて見出されてもよい。
【0054】
以下の実施例は、本発明の特定の実施形態を例示する。当業者には明らかである様に、種々の変化および変更は可能であり、説明された本発明の範囲内で考えられる。
【実施例】
【0055】
(実施例1)
(1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7−三酢酸,10−[(2−t−ブトキシ−5−ニトロフェニル)メチル],トリ−t−ブチルエステル、化合物IIIの調製)
t−ブチルトリクロロアセトイミデート(TBTA):69mL(0.069モル)のカリウムt−ブトキシド(t−ブタノール中の1M)を、69mLのジエチルエーテルに溶解した。この溶液を、30分にわたって、0℃に冷却した、69mLのジエチルエーテル中の100g(0.69モル)のトリクロロアセトニトリルの溶液へ滴下した。混合物を1時間掛けて室温まで温め、次いで、還流で加熱しながら更に1時間撹拌した。混合物を室温まで冷却し、減圧下で蒸発させて油を得た。この油を140mLのヘキサンに溶解し、カリウム塩を除去するために濾過した。濾液を減圧下で蒸発させ、残渣を真空蒸留した。2.4mmHgおよび40℃で蒸留した画分を集めた。収率は105gで、トリクロロアセトニトリルを基準にして69%であった。
【0056】
【化11】
2−t−ブトキシ−5−ニトロベンジルブロミド、化合物I:2−t−ブトキシ−5−ニトロベンジルブロミド、化合物Iの合成は、図1で例示される。19.4g(0.0836モル)の2−ヒドロキシ−5−ニトロベンジルブロミド、334mLのシクロヘキサン、および167mLのジクロロメタンの懸濁液を窒素下で撹拌した。これに、669mLのシクロヘキサン中の73.08g(0.334モル)のt−ブチルトリクロロアセトイミデートの溶液を、3.5時間掛けて滴下した。混合物を、添加が完了後1時間撹拌し、200μLの三フッ化ホウ素エーテレートを添加した。混合物を一晩中撹拌した。多量のトリクロロアセトアミドの沈殿物が形成した。反応混合物を、4.00g(0.0418モル)の重炭酸ナトリウムで処理し、1時間撹拌し、濾過した。固体を、ジエチルエーテルで洗浄し、一緒にした濾液を、減圧下で油まで濃縮した。油を100mLのヘキサンで処理し、溶液を、結晶が形成されるまで撹拌した。−20℃まで冷却後、更に1時間撹拌し、得られた固体を濾過して集め、新しい冷ヘキサンで洗浄し、吸引乾燥し、真空乾燥した。収率は13.2gで、2−ヒドロキシ−5−ニトロベンジルブロミドを基準にして55%であった。計算値:C 45.85、H 4.90、N 4.86、Br 27.73。実測値:C 45.39、H 5.07、N 4.94、Br 27.66。
【0057】
【化12】
1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7−三酢酸,トリ−t−ブチルエステルヒドロブロミド、化合物II、および1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7−三酢酸,10−[(2−t−ブトキシ−5−ニトロフェニル)メチル]−,トリ−t−ブチルエステル、化合物IIIの合成は、図2で例示される。
【0058】
1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7−三酢酸,トリ−t−ブチルエステルヒドロブロミド、化合物II:32.0g(0.186モル)のcyclen、および75.8g(0.557モル)の酢酸ナトリウム3水和物を、600mLのジメチルアセトアミドと一緒に1時間撹拌した。この混合物へ、150mLのジメチルアセトアミド中の109g(0.557モル)のt−ブチルブロモアセテートの溶液を4時間掛けて滴下した。添加速度は、反応混合物の温度を25℃未満に保持する様に調整した。混合物を2晩にわたって撹拌した。−10℃まで冷却し、2時間撹拌した後、得られた固体を濾過して集め、50mLの新しい冷ジメチルアセトアミドで洗浄し、吸引乾燥した。固体を0.5Lのクロロホルムに溶解し、溶液を水で洗浄した(3x200mL)。有機相を集め、硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、減圧下で300mLまで濃縮した。300mLのヘキサンを添加し、溶液を室温で1時間撹拌した;2〜3分後の結晶化が始まった。得られたスラリーを、−20℃まで冷却し、2時間撹拌し、濾過した。固体を、50mLの新しい冷クロロホルム−ヘキサン(1:1)で洗浄し、溶媒を吸引により除去し、固体を、室温で一晩中真空乾燥した。収率は69gであった(cyclenを基準にして62%)。
【0059】
【化13】
1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7−三酢酸,10−[(2−t−ブトキシ−5−ニトロフェニル)−メチル]−,トリ−t−ブチルエステル,臭化ナトリウム錯体、化合物III:8.46g(0.0142モル)の1,4,7,10−テトラアザシクロ−ドデカン−1,4,7−三酢酸,トリ−t−ブチルエステルヒドロブロミドを、200mLの0.1N水性水酸化ナトリウムおよび200mLのジエチルエーテルと一緒に撹拌した。全部の固体が溶解したら、有機相を集め、水性相をジエチルエーテルで洗浄した(2x200mL)。一緒にした有機抽出物を硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、減圧下で油まで蒸発させた。油を、135mLのアセトニトリルに溶解した。この溶液へ、1.19g(0.0142モル)の重炭酸ナトリウムを添加し、続いて、4.50g(0.0156モル)の2−t−ブトキシ−5−ニトロベンジルブロミドを添加した。混合物を35℃まで温め、アルゴン下で一晩中撹拌した。反応が、合計12〜14時間後に、nmrで完了であれば、混合物を濾過し、濾液を減圧下で濃縮して油を得た。油を50mLのジエチルエーテルに懸濁し、撹拌後に白色沈殿物が形成した。固体を濾過により集め、吸引乾燥し、真空で一晩中乾燥した。収率は11.7gで、出発物質の1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7−三酢酸,トリ−t−ブチルエステルヒドロブロミドを基準にして98%であった。分析計算値:C 52.73、H 7.77、N 8.31、Br 9.48。実測値:C 52.31、H 7.68、N 8.26、Br 9.67。
【0060】
【化14】
表1.1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7−三酢酸,10−[(2−t−ブトキシ−5−ニトロフェニル)−メチル]−,トリ−t−ブチルエステル,臭化ナトリウム錯体、化合物IIIについての結晶データ
【0061】
【表1】
50%の熱振動楕円体を伴う分子の投影図は図3で例示される。
【0062】
50%の熱振動楕円体を伴う分子の投影図は図4で例示される。アニオン、溶媒の水およびH原子は、明確にするために示されていない。
【0063】
(実施例2)
(2−{[2’,2’’,2’’’−(1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7−トリイル)三酢酸]−10−イル}−6−[(ベンジルオキシカルボニル)アミノ]ヘキサン酸,テトラ−t−ブチルエステル,臭化ナトリウム錯体、化合物VIの合成)
(S)−6−{[(ベンジルオキシ)カルボニル]アミノ}−2−ブロモヘキサン酸、化合物IV、t−ブチル6−{[(ベンジルオキシ)カルボニル]アミノ}−2−ブロモヘキサノエート、化合物V、および2−{[2’,2’’,2’’’−(1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7−トリイル)三酢酸]−10−イル}−6−[(ベンジルオキシカルボニル)アミノ]ヘキサン酸,テトラ−t−ブチルエステル,臭化ナトリウム錯体、化合物VIの合成は図5で例示される。
【0064】
(S)−6−{[(ベンジルオキシ)カルボニル]アミノ}−2−ブロモヘキサン酸、化合物IV。20.0g(0.14モル)の(S)−2−アミノ−6−{[(ベンジルオキシ)カルボニル]アミノ}ヘキサン酸、および28.9g(0.24モル)の臭化カリウムを、前以て0℃まで冷却した80mLの約6N水性HBrに溶解した。窒素流を、溶液を通して泡立たせ、混合物を冷浴で−10℃まで冷却した。5.9g(0.86モル)の亜硝酸ナトリウムを、撹拌しながら、反応温度を−13℃〜−10℃に維持して、30分掛けて分割添加した。−10℃で6時間撹拌した後、混合物をエチルエーテルで抽出し(4x50mL)、得られた溶液を硫酸マグネシウムで乾燥した。混合物を濾過して乾燥剤を除去し、蒸発させてオレンジ色の油を得た。油をフラッシュクロマトグラフィー、クロロホルム−ヘキサンで精製して、無色透明の油を得た。収率は20.0g、即ち、出発物質の2−アミノ−6−{[(ベンジル−オキシ)カルボニル]−アミノ}ヘキサン酸を基準にして81%であった。NMRは構造と一致する(Nicolaidesら)。
【0065】
t−ブチル6−{[(ベンジルオキシ)カルボニル]アミノ}−2−ブロモヘキサノエート、化合物V。10.0g(0.029モル)の(S)−6−{[(ベンジル−オキシ)カルボニル]アミノ}−2−ブロモヘキサン酸を、20mLのクロロホルムに溶解した。これに、50mLのクロロホルムに溶解した12.7g(0.058モル)のt−ブチルトリクロロアセトイミデートの溶液を30分掛けて滴下した。混合物を更に5分間撹拌し、100μLの三フッ化ホウ素エーテレートを添加した。反応混合物を一晩中撹拌した。5gの重炭酸ナトリウムを添加した。10分撹拌後に、50mLのヘキサンを添加し、混合物を濾過し存在する固体を除去した。濾液を蒸発させ、残渣をフラッシュクロマトグラフィー、酢酸エチル−ヘキサンで精製して、無色透明油を得た。収率は8.5gで、出発物質の(S)−6−{[(ベンジルオキシ)カルボニル]アミノ}−2−ブロモヘキサン酸を基準にして73%であった。NMRは構造と一致する。
【0066】
2−{[2’,2’’,2’’’−(1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7−トリイル)三酢酸]−10−イル}−6−[(ベンジル−オキシカルボニル)アミノ]ヘキサン酸,テトラ−t−ブチルエステル,臭化ナトリウム錯体、化合物VI。5.95g(0.0100モル)の1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7−三酢酸,トリ−t−ブチルエステルヒドロブロミドを、110mLの0.1N水性水酸化ナトリウムおよび150mLのジエチルエーテルと一緒に撹拌した。全体の固体が溶解したら、有機相を集め、水性相をジエチルエーテルで洗浄した(3x50mL)。一緒にした有機抽出物を、1x50mLの飽和水性塩化ナトリウムで洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、減圧下で油まで蒸発させた。油を50mLのアセトニトリルに溶解した。この溶液へ、0.84g(0.0100モル)の重炭酸ナトリウムを添加した。混合物を30℃に温めた。50mLのアセトニトリル中の4.00g(0.0100モル)のt−ブチル6−{[(ベンジルオキシ)カルボニル]−アミノ}−2−ブロモヘキサノエートの溶液を滴下し、混合物をアルゴン下で一晩中撹拌した。得られた混合物を濾過し、濾液を減圧下で濃縮して琥珀色の発泡体を得た。発泡体を、撹拌しながら100mLのジエチルエーテルに溶解した。溶液を凡そ20mLまで濃縮し、室温で1時間撹拌した。結晶化の開始後、混合物を、結晶化を完了させるために−10℃まで冷却した。濾過により生成物を集め、冷たいヘキサン−エーテル(1:1)で洗浄し、真空乾燥した。収率は3.60gで出発物質のt−ブチル6−{[(ベンジルオキシ)カルボニル]−アミノ}−2−ブロモヘキサノエートを基準にして38%であった。分析計算値:C 55.34、H 8.13、N 7.33、Br 8.37、Na 2.41。実測値:C 55.71、H 8.22、N 7.31、Br 8.18、Na 2.37。NMRは構造と一致する。
【0067】
(実施例3)
(ナトリウムt−ブチル2,2’,2’’−(10−(2−(ベンジルオキシ)−2−オキソエチル)−1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7−トリイル)トリアセテートブロミド、化合物VIIの合成)
ナトリウムt−ブチル2,2’,2’’−(10−(2−(ベンジルオキシ)−2−オキソエチル)−1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7−トリイル)トリアセテートブロミド、化合物VIIの合成は図6で例示される。
【0068】
ナトリウムt−ブチル2,2’,2’’−(10−(2−(ベンジルオキシ)−2−オキソエチル)−1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7−トリイル)トリアセテートブロミド、化合物VII。10.0g(0.0168モル)の1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7−三酢酸,トリ−t−ブチルエステルヒドロブロミドを、150mLの0.1N水性水酸化ナトリウムおよび150mLのジエチルエーテルと一緒に撹拌した。全体の固体が溶解したら、有機相を集め、水性相をジエチルエーテルで洗浄した(3x50mL)。一緒にした有機抽出物を、1x50mLの飽和水性塩化ナトリウムで洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、減圧下で、油、7.9g(遊離塩基として0.0153モル)まで蒸発させた。油を、100mLのアセトニトリルに溶解した。この溶液へ、1.29g(0.0153モル)の重炭酸ナトリウムを添加した。混合物を30℃に温めた。100mLのアセトニトリル中の3.52g(0.0153モル)のベンジル−2−ブロモアセテートの溶液を滴下し、混合物をアルゴン下で一晩中撹拌した。得られた混合物を濾過し、濾液を減圧下で濃縮して無色透明の油を得た。油を、撹拌しながら100mLのジエチルエーテルに溶解した。2〜3分後に生成物は結晶化を始めた。約1時間撹拌後、濾過により生成物を集め、新鮮なエーテルで洗浄し、真空乾燥した。収率は9.7gで、出発物質のベンジル−2−ブロモアセテートを基準にして83%であった。分析計算値(%):C 54.90、H 7.63、N 7.32、Na 3.00、Br 10.43。実測値:C 54.96、H 7.67、N 7.33、Na 2.85、Br 10.24。NMRは構造と一致する。
【0069】
(実施例4)
(ナトリウムt−ブチル2,2’,2’’−(10−(2,6−ジクロロベンジル)−1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7−トリイル)トリアセテートブロミド、化合物VIIIの合成)
ナトリウムt−ブチル2,2’,2’’−(10−(2,6−ジクロロベンジル)−1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7−トリイル)トリアセテートブロミド、化合物VIIIの合成は図7で例示される。
【0070】
ナトリウムt−ブチル2,2’,2’’−(10−(2,6−ジクロロベンジル)−1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7−トリイル)トリアセテートブロミド、化合物VIIIの合成。10.0g(0.0168モル)の1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7−三酢酸,トリ−t−ブチルエステルヒドロブロミドを、150mLの0.1N水性水酸化ナトリウムおよび150mLのジエチルエーテルと一緒に撹拌した。全体の固体が溶解したら、有機相を集め、水性相をジエチルエーテルで洗浄した(3x50mL)。一緒にした有機抽出物を、1x50mLの飽和水性塩化ナトリウムで洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、減圧下で、油、8.6g(遊離塩基として0.0167モル)まで蒸発させた。油を100mLのアセトニトリルに溶解した。この溶液へ、1.40g(0.0167モル)の重炭酸ナトリウムを添加した。混合物を30℃に温めた。100mLのアセトニトリル中の4.01g(0.0167モル)の2−ブロモメチル−1,3−ジクロロベンゼンの溶液を滴下し、混合物をアルゴン下で一晩中撹拌した。得られた混合物を濾過し、濾液を減圧下で濃縮して無色透明の油を得た。油を、撹拌しながら100mLのジエチルエーテルに溶解した。2〜3分後に生成物は結晶化を始めた。約1時間撹拌後、濾過により生成物を集め、新鮮なエーテルで洗浄し、真空乾燥した。収率は10.0gで、出発物質の2−ブロモメチル−1,3−ジクロロベンゼンを基準にして77%であった。分析計算値(%):C 51.04、H 7.01、N 7.21、Na 2.96、Br 10.29。実測値:C 50.11、H 7.38、N 6.95、Na 2.92、Br 10.72。NMRは構造と一致する。X−線分析に適した単結晶をクロロホルム−ヘキサンから成長させた。
【0071】
表2.ナトリウムt−ブチル2,2’,2’’−(10−(2,6−ジクロロベンジル)−1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7−トリイル)トリアセテートブロミド、VIIIについての結晶データ
【0072】
【表2】
図8は、50%の熱振動楕円体を伴うナトリウムt−ブチル2,2’,2’’−(10−(2,6−ジクロロベンジル)−1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7−トリイル)トリアセテートブロミド、化合物VIIIの投影図を与え、1つの固有な分子が示されている。溶媒、対イオンおよびH原子は、明確にするために示されていない。
【0073】
図9は、ナトリウムt−ブチル2,2’,2’’−(10−(2,6−ジクロロベンジル)−1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7−トリイル)トリアセテートブロミド、化合物VIIIの投影図を与える。
【0074】
(実施例5)
(ナトリウムt−ブチル2,2’,2’’−(10−(シアノメチル)−1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7−トリイル)トリアセテートブロミド、化合物IXの合成)
図10は、ナトリウムt−ブチル2,2’,2’’−(10−(シアノメチル)−1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7−トリイル)トリアセテートブロミド、化合物IXの合成反応の例示を与える。
【0075】
25.0g(0.0420モル)の1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7−三酢酸,トリ−t−ブチルエステルヒドロブロミドを、600mLの0.1N水性水酸化ナトリウムおよび200mLのジエチルエーテルと一緒に撹拌した。全体の固体が溶解したら、有機相を集め、水性相をジエチルエーテルで洗浄した(3x100mL)。一緒にした有機抽出物を、1x50mLの飽和水性塩化ナトリウムで洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、減圧下で、油、19.1g(遊離塩基として0.0371モル)まで蒸発させた。油を250mLのアセトニトリルに溶解した。この溶液へ、3.12g(0.0371モル)の重炭酸ナトリウムを添加した。混合物を30℃に温めた。100mLのアセトニトリル中の4.45g(0.0371モル)の2−ブロモアセトニトリルの溶液を滴下し、混合物をアルゴン下で一晩中撹拌した。得られた混合物を濾過し、濾液を減圧下で濃縮して無色透明の油を得た。油を、撹拌しながら200mLのジエチルエーテルに溶解した。2〜3分後に生成物は結晶化を始めた。約1時間撹拌後、濾過により生成物を集め、新鮮なエーテルで洗浄し、真空乾燥した。収率は20.0gで、出発物質のブロモアセトニトリルを基準にして82%であった。分析計算値(%):C 51.22、H 7.83、N 10.67、Na 3.50、Br 12.17。実測値:C 51.06、H 7.88、N 10.49、Na 3.34、Br 12.72。NMRは構造と一致する。
【0076】
(実施例6)
(ナトリウムt−ブチル2,2’,2’’−(10−(2−メトキシ−2−オキソ−1−フェニルエチル)−1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7−トリイル)トリアセテートブロミド、化合物Xの合成)
図11は、ナトリウムt−ブチル2,2’,2’’−(10−(2−メトキシ−2−オキソ−1−フェニルエチル)−1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7−トリイル)トリアセテートブロミド、化合物Xの合成反応の例示を与える。
【0077】
5.5g(0.0092モル)の1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7−三酢酸,トリ−t−ブチルエステルヒドロブロミドを、100mLの0.1N水性水酸化ナトリウムおよび100mLのジエチルエーテルと一緒に撹拌した。全体の固体が溶解したら、有機相を集め、水性相をジエチルエーテルで洗浄した(3x25mL)。一緒にした有機抽出物を、1x25mLの飽和水性塩化ナトリウムで洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、減圧下で、油、2.20g(遊離塩基として0.0043モル)まで蒸発させた。油を55mLのアセトニトリルに溶解した。この溶液へ、0.36g(0.0043モル)の重炭酸ナトリウムを添加した。混合物を30℃に温めた。10mLのアセトニトリル中の0.98g(0.0043モル)のメチル−2−ブロモ−2−フェニルアセテートの溶液を滴下し、混合物をアルゴン下で一晩中撹拌した。得られた混合物を濾過し、濾液を減圧下で濃縮して無色透明の油を得た。油を、撹拌しながら50mLのジエチルエーテルに溶解した。2〜3分後に生成物は結晶化を始めた。約1時間撹拌後、濾過により生成物を集め、新鮮なエーテルで洗浄し、真空乾燥した。収率は3.3gで、出発物質のメチル2−ブロモ−2−フェニルアセテートを基準にして100%であった。分析計算値(%):C 54.90、H 7.63、N 7.32、Na 3.00、Br 10.43。実測値:C 54.61、H 7.69、N 7.10、Na 2.78、Br 10.57。NMRは構造と一致する。X−線分析に適した単結晶をクロロホルム−ヘキサンから成長させた。
【0078】
表3.ナトリウムt−ブチル2,2’,2’’−(10−(2−メトキシ−2−オキソ−1−フェニルエチル)−1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7−トリイル)トリアセテートブロミド、化合物Xについての結晶データ
【0079】
【表3】
50%の熱振動楕円体を伴うナトリウムt−ブチル2,2’,2’’−(10−(2−メトキシ−2−オキソ−1−フェニルエチル)−1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7−トリイル)トリアセテートブロミド、化合物Xの投影図は図12で例示される。対イオン、H原子および溶媒は、明確にするために示されていない。
【0080】
図13は、50%の熱振動楕円体を伴うナトリウムt−ブチル2,2’,2’’−(10−(2−メトキシ−2−オキソ−1−フェニルエチル)−1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7−トリイル)トリアセテートブロミド、化合物Xの投影図であり、無秩序Cl原子は示されていない。
【0081】
(実施例7)
(ナトリウム(5−ベンジル1−t−ブチル2−(4,7,10−トリス(2−t−ブトキシ−2−オキソエチル)−1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1−イル)ペンタンジオエートブロミド、化合物XIVの合成)
図14は、2−アミノ−5−(ベンジルオキシ)−5−オキソペンタン酸、化合物XI;5−(ベンジルオキシ)−2−ブロモ−5−オキソペンタン酸、化合物XII;5−ベンジル1−t−ブチル2−ブロモペンタンジオエート、化合物XIII;およびナトリウム(5−ベンジル1−t−ブチル2−(4,7,10−トリス(2−t−ブトキシ−2−オキソエチル)−1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1−イル)ペンタンジオエートブロミド、化合物XIVの合成反応の例示を与える。
【0082】
5−(ベンジルオキシ)−2−ブロモ−5−オキソペンタン酸、化合物XII。20.00g(0.084モル)の2−アミノ−5−(ベンジルオキシ)−5−オキソペンタン酸、および34.1g(0.29モル)の臭化カリウムを、前以て0℃まで冷却した80mLの約6N水性HBrに溶解した。窒素流を、溶液を通して泡立たせ、混合物を冷浴で−10℃まで冷却した。6.98g(0.10モル)の亜硝酸ナトリウムを、撹拌しながら、反応温度を−13℃〜−10℃に維持して、30分掛けて分割添加した。−10℃で6時間撹拌した後、混合物をエチルエーテルで抽出し(4x100mL)、得られた溶液を硫酸マグネシウムで乾燥した。混合物を濾過して乾燥剤を除去し、蒸発させてオレンジ色の油を得た。油をフラッシュクロマトグラフィー、クロロホルム−ヘキサンで精製して、無色透明の油を得た。収率は11.5g、即ち、出発物質の2−アミノ−5−(ベンジルオキシ)−5−オキソペンタン酸を基準にして45%であった。NMRは構造と一致する。
【0083】
5−(ベンジルオキシ)1−t−ブチル2−ブロモペンタンジオエート、化合物XIII。10.0g(0.033モル)の5−(ベンジルオキシ)−2−ブロモ−5−オキソペンタン酸を、20mLのクロロホルムに溶解した。これに、50mLのシクロヘキサン中に溶解した15.9g(0.073モル)のt−ブチルトリクロロアセトイミデートの溶液を30分掛けて滴下した。混合物を更に5分間撹拌し、100μLの三フッ化ホウ素エーテレートを添加した。反応混合物を一晩中撹拌した。5gの重炭酸ナトリウムを添加した。10分撹拌後に、50mLのヘキサンを添加し、混合物を濾過し存在する固体を除去した。濾液を蒸発させ、残渣をフラッシュクロマトグラフィー、酢酸エチル−ヘキサンで精製して、無色透明油を得た。収率は8.2gで、出発物質の5−(ベンジルオキシ)−2−ブロモ−5−オキソペンタン酸を基準にして69%であった。NMRは構造と一致する。
【0084】
ナトリウム(5−ベンジル1−t−ブチル2−(4,7,10−トリス(2−t−ブトキシ−2−オキソエチル)−1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1−イル)ペンタンジオエートブロミド、化合物XIVの合成。10.0g(0.0168モル)の1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7−三酢酸,トリ−t−ブチルエステルヒドロブロミドを、150mLの0.1N水性水酸化ナトリウムおよび150mLのジエチルエーテルと一緒に撹拌した。全体の固体が溶解したら、有機相を集め、水性相をジエチルエーテルで洗浄した(3x50mL)。一緒にした有機抽出物を、1x50mLの飽和水性塩化ナトリウムで洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、減圧下で、油、8.8g(遊離塩基として0.0171モル)まで蒸発させた。油を、100mLのアセトニトリルに溶解した。この溶液へ、1.51g(0.0180モル)の重炭酸ナトリウムを添加した。混合物を30℃に温めた。40mLのアセトニトリル中の8.02g(0.0180モル)の5−(ベンジルオキシ)1−t−ブチル2−ブロモペンタンジオエートの溶液を滴下し、混合物をアルゴン下で一晩中撹拌した。得られた混合物を濾過し、濾液を減圧下で濃縮して無色透明の油を得た。油を、撹拌しながら100mLのジエチルエーテルに溶解した。2〜3分後に生成物は結晶化を始めた。約1時間撹拌後、濾過により生成物を集め、新鮮なエーテルで洗浄し、真空乾燥した。NMR分析は、9.3gの、Na−DO3A−トリス(t−ブチルエステル)ブロミドおよび所望の生成物の混合物からなる固体を明らかにした。固体を、それぞれ、約100mLの最小限の酢酸エチルから二回再結晶化させて、極めて純粋な生成物を得た。収率は2.7gで、出発物質の5−(ベンジルオキシ)1−t−ブチル2−ブロモペンタンジオエートを基準にして18%であった。分析計算値:1水和物として(%)C 55.25、H 7.44、N 6.08、Br 9.08、Na 3.68。実測値:C 55.32、H 7.96、N 6.14、Br 8.76、Na 2.52。NMRは構造と一致する。X−線分析に適した結晶を酢酸エチルから成長させた。
【0085】
表X.ナトリウム(5−ベンジル1−t−ブチル2−(4,7,10−トリス(2−t−ブトキシ−2−オキソエチル)−1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1−イル)ペンタンジオエートブロミド、化合物XIVの結晶構造
【0086】
【表4】
ナトリウム(5−ベンジル1−t−ブチル2−(4,7,10−トリス(2−t−ブトキシ−2−オキソエチル)−1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1−イル)ペンタンジオエートブロミド、化合物XIVの投影図は、2つの分子の1つが示され、溶媒、対イオンおよびH原子は、明確にするために示されていない図15で例示される。
【0087】
ナトリウム(5−ベンジル1−t−ブチル2−(4,7,10−トリス(2−t−ブトキシ−2−オキソエチル)−1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1−イル)ペンタンジオエートブロミド、化合物XIVの投影図は、図16で例示される。
【0088】
【化15】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、一般的に、テトラアザ大員環誘導体およびこの中間体の二官能キレートの合成に関する。
【背景技術】
【0002】
(背景)
テトラアザ大員環は、金属イオンを配位するためのリガンド系を生成するためのよく知られた基本骨格であり、N−カルボキシアルキルおよびN−ホスホノアルキル誘導体は、幾つかの最も安定な金属錯体を形成するための無機化学ではよく知られている。この類のリガンドは、幾つかの工業および金属キレート化が求められる生物医学方法では重要な役割を演じる。例えば、1,4,7,10−テトラアザシクロ−ドデカン−1,4,7,10−四酢酸(DOTA)および1,4,7,10−テトラアザシクロ−ドデカン−1,4,7,10−テトラメチレン−リン酸(DOTP)等の誘導体は、工業において水およびその他の流体系の脱金属化で広い用途を有する。更に、金属錯体は、最近、さもなければ毒性の金属イオンをこれらのリガンドと錯体化することにより安全なものとする画像化および治療用途の両方での有用性が見出されている。例えば、非特許文献1を参照されたい。
【0003】
医学では、ポリアザ大員環リガンドは、種々の遷移金属に対するキレーターとして広く使用されている。DOTAおよび1,4,8,11−テトラアザシクロ−テトラデカン−1,4,8,11−四酢酸(TETA)等の大員環ポリアミノカルボキシレートが、これらの高度に前組織化された大員環リガンド骨格により高度に安定な金属錯体を形成することは公知である。大員環リガンドは、Tc−99m、In−111、Ga−67、Y−90、Re−188、Sm−153またはその他の放射性金属イオン等の放射性核種と錯体を形成して、放射性核種画像化および治療において有用な薬剤を生成することができる。リガンドはヨウ素より重い金属イオンと錯体を形成して、X−線画像化で有用な生成物を生成することができる。更に、リガンドは、Gd+3、Mn+2、Fe+3、Cr+3等の常磁性金属イオンと結合して磁気共鳴画像化(MRI)剤を生成することができる。特殊な場合では、大員環は、金属錯体化合物を改良された画像化または標的治療のために、金属イオンと結合し、次いで、特定の標的へ金属錯体化合物を送達するために特別に改質することができる。その様な二重機能リガンドは、多くの場合、二官能リガンドと称される。
cyclen、即ち、1,4,7,10−テトラアザシクロドデカンは、前述の金属錯体の形成のための重要なリガンドであるDOTAを生成するために通常使用される骨格である。cyclenは、トリスカルボキシメチル化DO3A、4,7,10−トリスカルボキシメチル−1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン、即ち、それ自体でリガンドであり、また、その金属錯体が画像化および治療にとって有用である一連の二官能リガンドの形成のために遊離大員環窒素において様々に誘導体化することのできる重要な中間体を生成するために特に有用である。例えば、特許文献1(Bonnemainら)は、画像化/MRI用のDOTAのガドリニウム錯体を開示している。特許文献2(Tweedleら)は、同様に、DO3A−HPのガドリニウム錯体、即ち、遊離大員環Nが、画像化のために2−ヒドロキシプロピルでアルキル化されているDO3A−誘導体を開示している。同様に、特許文献3(Petrovら)は、MRI用のその他のガドリニウム錯体、即ち、遊離大員環Nにおけるアルキル置換基が2,3−ジヒドロキシ−1−(ヒドロキシメチル)プロピルであるGd−DO3A−ブトリオールを開示している。その他は、その他の目標となり得るDO3A−誘導体を開示している:例えば、Platzekらの特許文献4を参照されたい。
一般的に、二官能キレートの前駆体は、強塩基、例えば、アルカリ金属水酸化物またはアルカリ金属炭酸塩等において、DO3Aトリス(t−ブチルエステル)等のエステル化DO3Aのアルキル化により合成される。例えば、特許文献4(Platzekら)では、6N水酸化カリウム(KOH)中でのDO3Aのアルキル化が開示されている。特許文献2(Tweedleら)では、同様に、水酸化ナトリウム(NaOH)または炭酸カリウム(K2CO3)の過剰の下で、DO3AのN−アルキル化を開示している。PlatzekらおよびTweedleらは、次いで、濾過および/またはクロマトグラフィーで遊離塩基として大員環を単離し、低収率でかつ/またはその後の反応のための取り扱いが難しい油を得ている。あるいはまた、cyclenは、初めに、対象の独特の基、例えば、二官能標的基またはリンカーでモノアルキル化され、次いで、DO3A−型部分を生成するためにその他の3つの窒素原子において誘導体化されてもよい。例えば、非特許文献2を参照されたい。Kruperらにより記載されている方法では、モノアルキル化大員環のHBr塩が生成され、これはクロマトグラフィーでの更なる精製を必要とし、したがって、これらの収率を低下させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第4,877,600号明細書
【特許文献2】米国特許第4,885,363号明細書
【特許文献3】米国特許第5,994,536号明細書
【特許文献4】米国特許第6,576,222号明細書
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】AE Martell and RD Hancock、「Metal Complexes in Aqueous Solutions」、Springer Verlag、1996年、第5章
【非特許文献2】Kruperら、J.Org.Chem.、1993年、58巻、3869〜3875頁
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
(要旨)
本発明の種々の態様の中に、テトラアザ大員環の容易な生成のための改良された合成経路が存在する。
【0007】
要するに、本発明の1つの態様は、弱塩基の存在下で、テトラ−N−置換テトラアザ大員環(2)を生成するためにトリス−N−置換テトラアザ大員環(1)の遊離大員環窒素をアルキル化する方法である。トリス−N−置換テトラアザ大員環(1)およびテトラ−N−置換テトラアザ大員環(2)は式:
【0008】
【化5】
(式中、Mは金属イオンであり、R1、R2およびR3は、独立に、ヒドロカルビル(hydrocarbyl)、置換ヒドロカルビル、またはヘテロシクロ(heterocyclo)であり、R4は、場合によって置換されたアルキルまたはアリールであり、Xは対イオンであり、Yは脱離基である)を有する。
【0009】
その他の態様では、式3の化合物が提供される、
【0010】
【化6】
(式中、Tは、(+1)または(+2)電荷を持つアルカリ金属、アルカリ土類金属、および遷移金属からなる群より選択される金属イオンであり、R11、R22およびR33は、独立に、−CH2CO2R5、−CH2ArOR5、−CH2SR5、−CH2PO3H2、CH2SO3H、−CH2Ar(OR5)2、−CH2Ar(OR5)R6および−CH2Ar(OR5)2R6からなる群より選択され、R44は、−CH2ArOR7、−CH(R8)CO2R7、−CH2Ar(OR7)2、−CH2Ar(OR7)R8、または−CH2Ar(OR7)2R8であり、R5、R6およびR7は、独立に、H、アルキルまたは置換アルキルであり、R8は、場合によって置換されたアシル、アリールおよびヘテロアリール、アルコキシ、ヒドロキシ、ハロ、アミノ、ニトロ、チオール、ジスルフィド、炭水化物、ビタミン、組合せおよび誘導体からなる群より選択され、Arは、場合によって置換されたフェニル、ピリミジニルまたはピリジニルであり、Yは、ハロゲン化物、メタンスルホネート、トリフルオロアセテート、トリフルオロメタンスルホネートおよびp−トルエンスルホネートからなる群より選択される対イオンである)。
【0011】
本発明のその他の態様は、この反応で製造されてもよいある種のテトラ−N−置換テトラアザ大員環(2)である。これらの生成物は、罹患した組織の画像化および治療のための二官能キレートを生成するための有用な中間体である。
【0012】
本発明のその他の目的および特徴は一部明らかにされ、一部は以降で指摘される。
例えば、本発明は以下の項目を提供する。
(項目1)
式1
【化1−1】
のトリスアルキル化テトラアザ大員環の遊離大員環窒素をアルキル化して、式2
【化1−2】
の化合物を生成する方法であって、該遊離大員環窒素を、アルキル化剤、R4Yで、有機溶媒中、弱塩基の存在下でアルキル化する工程を含み、
式中、Mは金属イオンであり、R1、R2およびR3は、独立に、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビルまたはヘテロシクロであり、R4は、場合によって置換されたアルキルまたはアリールであり、Xは対イオンであり、Yは脱離基である、方法。
(項目2)
Mが、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属およびランタニドから選択され、R1、R2およびR3が、独立に、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビルまたはヘテロシクロであり、R4が、場合によって置換されたアルキル、アリール、およびアシルであり、Xが、ハロゲン化物、ナイトレート、スルフェートまたはホスフェートを含み、Yが、ハロゲン化物、メタンスルホネート、トリフルオロアセテート、トリフルオロメタンスルホネートまたはp−トルエン−スルホネートを含む、項目1に記載の方法。
(項目3)
R1、R2およびR3が、独立に、アミノ、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、チオ、ニトロ、またはこれらの組合せで場合によって置換されたアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アシル、ヘテロアリール、またはヘテロシクリルである、項目2に記載の方法。
(項目4)
R1、R2およびR3が同じである、項目3に記載の方法。
(項目5)
R1、R2およびR3が、独立に、−CH2CO2R5、−CH2ArOR5、−CH2SR5、−CH2PO3H2、CH2SO3H、−CH2Ar(OR5)2、−CH2Ar(OR5)R6および−CH2Ar(OR5)2R6(ここで、R5およびR6は、独立に、H、t−Bu、Et、Me、ベンジルまたはメトキシベンジルである)からなる群より選択される、項目3に記載の方法。
(項目6)
R1、R2およびR3が同じである、項目5に記載の方法。
(項目7)
R1、R2およびR3が、それぞれ−CH2CO2−t−Buである、項目6に記載の方法。
(項目8)
前記アルキル化剤が、R4Y(ここで、R4は、場合によって置換されたアルキル、アリールであり、Yは、臭化物、塩化物、ヨウ化物、メタンスルホネート、トリフルオロアセテート、トリフルオロメタンスルホネートおよびp−トルエンスルホネートからなる脱離基である)である、項目1に記載の方法。
(項目9)
R4が、−CH2ArOR7、−CH(R8)CO2R7、−CH2Ar(OR7)2、−CH2Ar(OR7)R8、または−CH2Ar(OR7)2R8(ここで、R7は、H、t−Bu、EtまたはMeであり、R8は、場合によって置換されたアシル、アリールおよびヘテロアリール、アルコキシ、ヒドロキシ、ハロ、アミノ、ニトロ、チオール、ジスルフィド、炭水化物、ビタミン、組合せおよび誘導体からなる群より選択され、Arは、場合によって置換されたフェニル、ピリミジニルまたはピリジニルである)である、項目8に記載の方法。
(項目10)
Yが、ハロゲン化物、メタンスルホネート、トリフルオロアセテート、p−トルエンスルホネートおよびトリフルオロメタンスルホネートイオンからなる群より選択される脱離基である、項目8に記載の方法。
(項目11)
Yが、臭化物、塩化物またはヨウ化物である、項目10に記載の方法。
(項目12)
Yが臭化物である、項目10に記載の方法。
(項目13)
前記弱塩基が、ビカーボネート、ビホスフェート、ビスルフェート、アセテートまたはシトレートの金属塩を含む、項目1に記載の方法。
(項目14)
前記弱塩基が金属ビカーボネート塩である、項目13に記載の方法。
(項目15)
前記金属が、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属およびランタニド金属からなる群より選択される、項目14に記載の方法。
(項目16)
前記弱塩基がアルカリ金属ビカーボネートである、項目14に記載の方法。
(項目17)
前記弱塩基が重炭酸ナトリウムである、項目16に記載の方法。
(項目18)
R1、R2およびR3が、独立に、−CH2CO2R5、−CH2ArOR5、−CH2SR5、−CH2PO3H2、CH2SO3H、−CH2Ar(OR5)2、−CH2Ar(OR5)R6および−CH2Ar(OR5)2R6からなる群より選択され、
R4が、−CH2ArOR7、−CH(R8)CO2R7、−CH2Ar(OR7)2、−CH2Ar(OR7)R8、または−CH2Ar(OR7)2R8であり、
R5、R6およびR7が、独立に、水素、アルキルまたは置換アルキルであり、
R8が、場合によって置換されたアシル、アリールおよびヘテロアリール、アルコキシ、ヒドロキシ、ハロ、アミノ、ニトロ、チオール、ジスルフィド、炭水化物、ビタミン、組合せおよび誘導体からなる群より選択され、
Arが、場合によって置換されたフェニル、ピリミジニルまたはピリジニルであり、
Yが、臭化物、塩化物、ヨウ化物、メタンスルホネート、トリフルオロアセテート、トリフルオロメタンスルホネートおよびp−トルエンスルホネートからなる脱離基である、項目1から17のいずれか一項に記載の方法。
(項目19)
R1、R2およびR3が、独立に、−CH2CO2R5であり、R5が、H、t−Bu、Et、Me、ベンジルまたはベンジルメトキシである、項目18に記載の方法。
(項目20)
R5がt−ブチルであり、Arがフェニルであり、Mがナトリウムであり、Yが臭化物である、項目19に記載の方法。
(項目21)
R1、R2およびR3のそれぞれが、−CH2C(O)O−t−ブチルである、項目19に記載の方法。
(項目22)
Arがフェニルであり、Mがナトリウムであり、Yが臭化物である、項目20に記載の方法。
(項目23)
R4が、−CH2Ar(OR5)NO2または−CH(CO2R5)−(CH2)4NHCO2CH2Arである、項目18に記載の方法。
(項目24)
R5がt−ブチルであり、Arがフェニルある、項目23に記載の方法。
(項目25)
R4が、−CH2Ar(OR5)NO2または−CH(CO2R5)−(CH2)4NHCO2CH2Arであり、R5がt−ブチルであり、R7およびR8が、独立に、水素または低級(C1〜4)アルキルである、項目23に記載の方法。
(項目26)
Arがフェニルであり、Mがナトリウムであり、Yが臭化物である、項目25に記載の方法。
(項目27)
R1、R2およびR3が、独立に、−CH2CO2R5であり、R4が、−CH2Ar(OR5)NO2または−CH(CO2R5)(CH2)4NHCO2CH2Arである、項目18に記載の方法。
(項目28)
R5がt−ブチルであり、Arがフェニルであり、Mがナトリウムであり、Yが臭化物である、項目27に記載の方法。
(項目29)
Mがアルカリ金属イオンであり、Yがハロゲン化物イオンである、項目27に記載の方法。
(項目30)
Arがフェニルであり、Mがナトリウムであり、Yが臭化物である、項目29に記載の方法。
(項目31)
R5がt−ブチルであり、R7およびR8が、独立に、水素または低級(C1〜4)アルキルである、項目27に記載の方法。
(項目32)
Arがフェニルであり、Mがナトリウムであり、Yが臭化物である、項目31に記載の方法。
(項目33)
前記有機溶媒が極性非プロトン性溶媒である、項目1に記載の方法。
(項目34)
前記有機溶媒が、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミドおよび1,2−ジメトキシエタン(DME)からなる群より選択される、項目33に記載の方法。
(項目35)
前記有効溶媒がアセトニトリルである、項目34に記載の方法。
(項目36)
温度が約25℃〜約40℃であり、反応が一晩中撹拌される、項目1に記載の方法。
(項目37)
前記温度が約30℃〜約35℃である、項目36に記載の方法。
(項目38)
式3:
【化2】
の化合物であって、式中、
Tは、(+1)または(+2)電荷を持つアルカリ金属、アルカリ土類金属、および遷移金属からなる群より選択される金属イオンであり、
R11、R22およびR33は、独立に、−CH2CO2R5、−CH2ArOR5、−CH2SR5、−CH2PO3H2、CH2SO3H、−CH2Ar(OR5)2、−CH2Ar(OR5)R6および−CH2Ar(OR5)2R6からなる群より選択され、
R44は、−CH2ArOR7、−CH(R8)CO2R7、−CH2Ar(OR7)2、−CH2Ar(OR7)R8、または−CH2Ar(OR7)2R8であり、
R5、R6およびR7は、独立に、H、アルキルまたは置換アルキルであり、
R8は、場合によって置換されたアシル、アリールおよびヘテロアリール、アルコキシ、ヒドロキシ、ハロ、アミノ、ニトロ、チオール、ジスルフィド、炭水化物、ビタミン、組合せおよび誘導体からなる群より選択され、
Arは、場合によって置換されたフェニル、ピリミジニルまたはピリジニルであり、
Yは、ハロゲン化物、メタンスルホネート、トリフルオロアセテート、トリフルオロメタンスルホネートおよびp−トルエンスルホネートからなる群より選択される対イオンである、化合物。
(項目39)
R11、R22およびR33が、独立に、−CH2CO2R5、−CH2ArOR5、−CH2SR5、−CH2PO3H2、CH2SO3H、−CH2Ar(OR5)2、−CH2Ar(OR5)R6および−CH2Ar(OR5)2R6(ここで、R5およびR6は、独立に、水素、アルキルまたは置換アルキルであり、Arは、場合によって置換されたフェニル、ピリミジニルまたはピリジニルである)からなる群より選択される、項目38に記載の化合物。
(項目40)
R5およびR6が、独立に、H、t−Bu、EtまたはMeである、項目39に記載の化合物。
(項目41)
R11、R22およびR33が、独立に、−CH2CO2R5であり、R5が水素またはアルキルである、項目40に記載の化合物。
(項目42)
R11、R22およびR33のそれぞれが、−CH2C(O)O−t−ブチルである、項目41に記載の化合物。
(項目43)
R44が、−CH2ArOR7、−CH(R8)CO2R7、−CH2Ar(OR7)2、−CH2Ar(OR7)R8、または−CH2Ar(OR7)2R8であり、
R7が水素またはアルキルであり、
R8が、カルボン酸、エーテル、アルコール、フッ化物、アリール、アミノ酸、ペプチド、炭水化物、ビタミン、チオール、ジスルフィド、アミン、ピリジン、ピリミジン、イミダゾール、トリアゾール、1つまたは複数の組合せ、および保護基を持つ誘導体からなる群より選択され、
Arが、場合によって置換されたフェニル、ピリミジニルまたはピリジニルである、項目38に記載の化合物。
(項目44)
R44が、−CH2Ar(OR5)NO2または−CH(CO2R5)(CH2)4NH(CO2)CH2Arであり、その他の基が定義されている通りである、項目38に記載の化合物。
(項目45)
R5がt−ブチルであり、R7およびR8が、独立に、水素または低級(C1〜4)アルキルである、項目44に記載の化合物。
(項目46)
Yが、ハロゲン化物、メタンスルホネート、トリフルオロアセテート、p−トルエンスルホネートおよびトリフルオロメタンスルホネートイオンからなる群より選択される、項目38に記載の化合物。
(項目47)
Yが、臭化物、塩化物またはヨウ化物である、項目46に記載の化合物。
(項目48)
Yが臭化物である、項目47に記載の化合物。
(項目49)
Tがアルカリまたはアルカリ土類金属である、項目38に記載の化合物。
(項目50)
Tがナトリウムである、項目49に記載の化合物。
(項目51)
Tがナトリウムであり、Yが臭化物である、項目38に記載の化合物。
(項目52)
Tがナトリウムであり、
R11、R22およびR33が同じであって、−CH2CO2R5、−CH2ArOR5、−CH2SR5、−CH2PO3H2、CH2SO3H、−CH2Ar(OR5)2、−CH2Ar(OR5)R6および−CH2Ar(OR5)2R6からなる群より選択され、
Yが臭化物である、項目38に記載の化合物。
(項目53)
R11、R22およびR33が、独立に、−CH2CO2R5であり、R5が水素またはアルキルである、項目52に記載の化合物。
(項目54)
R11、R22およびR33のそれぞれが、−CH2C(O)O−t−ブチルである、項目53に記載の化合物。
(項目55)
R11、R22およびR33が、独立に、−CH2CO2R5であり、R44が、−CH2Ar(OR5)NO2または−CH(CO2R5)−(CH2)4NHCO2CH2Arである、項目38に記載の化合物。
(項目56)
Tがアルカリ金属イオンであり、R5がt−ブチルであり、R7およびR8が、独立に、水素または低級(C1〜4)アルキルであり、Yがハロゲン化物イオンである、項目55に記載の化合物。
(項目57)
Arがフェニルであり、Tがナトリウムであり、Yが臭化物である、項目56に記載の化合物。
(項目58)
R5がt−ブチルであり、R7およびR8が、独立に、水素または低級(C1〜4)アルキルである、項目57に記載の化合物。
(項目59)
構造:
【化3】
に相当する化合物。
(項目60)
構造:
【化4】
に相当する化合物。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、2−t−ブトキシ−5−ニトロベンジルブロミドの合成反応の図である。
【図2】図2は、1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7−三酢酸,トリ−t−ブチルエステルヒドロブロミド、化合物II、および1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7−三酢酸,10−[(2−t−ブトキシ−5−ニトロフェニル)メチル]−,トリ−t−ブチルエステル、化合物IIIの合成反応の図である。
【図3】図3は、50%の熱振動楕円体を伴う、1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7−三酢酸,10−[(2−t−ブトキシ−5−ニトロフェニル)−メチル]−,トリ−t−ブチルエステル、臭化ナトリウム錯体、化合物IIIの投影図である。
【図4】図4は、50%の熱振動楕円体を伴う、1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7−三酢酸,10−[(2−t−ブトキシ−5−ニトロフェニル)−メチル]−,トリ−t−ブチルエステル,臭化ナトリウム錯体、化合物IIIの投影図であり、アニオン、溶媒の水およびH原子は、明確にするために示されていない。
【図5】図5は、(S)−6−{[(ベンジルオキシ)カルボニル]アミノ}−2−ブロモヘキサン酸、化合物IV、t−ブチル6−{[(ベンジルオキシ)カルボニル]アミノ}−2−ブロモヘキサノエート、化合物V、および2−{[2’,2’’,2’’’−(1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7−トリイル)三酢酸]−10−イル}−6−[(ベンジル−オキシカルボニル)アミノ]へキサン酸,テトラ−t−ブチルエステル,臭化ナトリウム錯体、化合物VIの合成反応の図である。
【図6】図6は、ナトリウムt−ブチル2’,2’’,2’’’−(10−(2−(ベンジルオキシ)−2−オキソエチル)−1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7−トリイル)トリアセテートブロミド、化合物VIIの合成反応の図である。
【図7】図7は、ナトリウムt−ブチル2,2’,2’’−(10−(2,6−ジクロロベンジル)−1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7−トリイル)トリアセテートブロミド、化合物VIIIの合成反応の図である。
【図8】図8は、50%の熱振動楕円体を伴う、ナトリウムt−ブチル2,2’,2’’−(10−(2,6−ジクロロベンジル)−1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7−トリイル)トリアセテートブロミド、化合物VIIIの投影図であり、1つの独特な分子が示されている。溶媒、対イオンおよびH原子は、明確にするために示されていない。
【図9】図9は、ナトリウムt−ブチル2,2’,2’’−(10−(2,6−ジクロロベンジル)−1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7−トリイル)トリアセテートブロミド、化合物VIIIの投影図である。
【図10】図10は、ナトリウムt−ブチル2,2’,2’’−(10−(シアノメチル)−1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7−トリイル)トリアセテートブロミド、化合物IXの合成反応の図である。
【図11】図11は、ナトリウムt−ブチル2,2’,2’’−(10−(2−メトキシ−2−オキソ−1−フェニルエチル)−1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7−トリイル)トリアセテートブロミド、化合物Xの合成反応の図である。
【図12】図12は、50%の熱振動楕円体を伴う、ナトリウムt−ブチル2,2’,2’’−(10−(2−メトキシ−2−オキソ−1−フェニルエチル)−1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7−トリイル)トリアセテートブロミド、化合物Xの投影図である。溶媒、対イオンおよびH原子は、明確にするために示されていない。
【図13】図13は、50%の熱振動楕円体を伴う、ナトリウムt−ブチル2’,2’’−(10−(2−メトキシ−2−オキソ−1−フェニルエチル)−1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7−トリイル)トリアセテートブロミド、化合物Xの投影図であり、無秩序Cl原子は示されていない。
【図14】図14は、2−アミノ−5−(ベンジルオキシ)−5−オキソペンタン酸、化合物XI;5−(ベンジルオキシ)−2−ブロモ−5−オキソペンタン酸、化合物XII;5−ベンジル1−t−ブチル2−ブロモペンタンジオエート、化合物XIII;およびナトリウム(5−ベンジル1−t−ブチル2−(4,7,10−トリス(2−t−ブトキシ−2−オキソエチル)−1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1−イル)ペンタンジオエートブロミド、化合物XIVの合成反応の図である。
【図15】図15は、2つの分子の1つを示す、ナトリウム(5−ベンジル1−t−ブチル2−(4,7,10−トリス(2−t−ブトキシ−2−オキソエチル)−1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1−イル)ペンタンジオエートブロミド、化合物XIVの投影図である。
【図16】図16は、ナトリウム(5−ベンジル1−t−ブチル2−(4,7,10−トリス(2−t−ブトキシ−2−オキソエチル)−1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1−イル)ペンタンジオエートブロミド、化合物XIVの投影図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(詳細な説明)
1つの実施形態では、本発明は、4置換生成物2を生成するための3置換テトラアザ大員環1のアルキル化方法に関する。この方法は、大員環1の遊離大員環窒素原子をアルキル化剤、R4Yで、有機溶媒中、弱塩基の存在下でアルキル化する工程を含み、3置換大員環1および4置換生成物2は、一般構造:
【化7】
(式中、Mは金属イオンであり、R1、R2およびR3は、独立に、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビルまたはヘテロシクロであり、R4は、場合によって置換されたアルキルまたはアリールであり、Xは対イオンであり、Yは脱離基である)を有する。
【0015】
Mは、(1)の(2)への転換で使用される弱塩基の金属イオン成分から誘導される。一般的に、Mは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属およびランタニドから選択される。1つの実施形態では、Mはアルカリ金属イオンである。その他の実施形態では、Mはナトリウムである。
【0016】
意図する用途によって、R1、R2およびR3は、金属を結合する実体の供給源を提供してもよい。あるいはまた、これらは、標的化で(大員環錯体を予め決められた部位へ導くこと)または他の分子へのリンカーとして(大きな分子集合体を生成するために)独立にまたは集合的に機能してもよい。1つの実施形態では、R1、R2およびR3は、独立に、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビルまたはヘテロシクロである。これらは、独立に、場合によって置換されたヒドロカルビル、ヘテロ置換ヒドロカルビルおよび複素環からなる群より選択されてもよい。例えば、R1、R2およびR3は、独立に、アシル、アミノ、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、チオ、ニトロ、またはこれらの組合せで場合によって置換されたアルキル、アルケニル、アルキニル、アリールまたはヘテロシクリルであってもよい。1つの実施形態では、R1、R2およびR3は同じであり、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビルまたはヘテロシクロである。その他の実施形態では、R1、R2およびR3は同じではなく、独立に、−CH2CO2R5、−CH2ArOR5、−CH2SR5、−CH2PO3H2、CH2SO3H、−CH2Ar(OR5)2、−CH2Ar(OR5)R6および−CH2Ar(OR5)2R6(ここで、R5およびR6は、独立に、水素、アルキルまたは置換アルキルである)からなる群より選択される。例えば、この実施形態では、R5およびR6は、独立に、H、t−Bu、Et、Me、メトキシベンジル、またはベンジルから選択されてもよい。1つの特定の実施形態では、R1、R2およびR3は、それぞれ−CH2CO2R5(ここで、R5はt−ブチルである)である。上述の代替法では、R1、R2およびR3は、また、標的化基(targeting group)および結合基を与えてもよい。この場合、R1、R2およびR3は、独立に、−CH2CO2R5、−CH2ArOR5、−CH2SR5、−CH2Ar(OR5)2、−CH2Ar(OR5)R6および−CH2Ar(OR5)2R6(ここで、R5およびR6は、独立に、アシル、場合によって置換されたアリールおよびヘテロアリール、アルコキシ、ヒドロキシ、ハロ、アミノ、ニトロ、チオール、ジスルフィド、炭水化物、ビタミンならびにこれらの組合せおよび誘導体を含む)からなる群より選択される。
【0017】
一般的に、R4は、標的化、即ち、大員環誘導体を対象の標的へ導くための可能性を持つ基である。しかしながら、R4は、また、金属を結合する実体の供給源であってもよく、広範囲の用途のためにその他の分子と大員環誘導体とを結合する役割を果たしてもよい。1つの実施形態では、R4は、場合によって置換されたアルキルもしくはアリール、アシルまたはこれらの組合せである。好ましい実施形態では、R4は、−CH2ArOR7、−CH(R8)CO2R7、−CH2Ar(OR7)2、−CH2Ar(OR7)R8、または−CH2Ar(OR7)2R8(ここで、(i)Arは、場合によって置換されたフェニル、ピリミジニルまたはピリジニルであり、(ii)R7は、水素またはアルキル、例えば、t−Bu、Et、Me等、メトキシベンジル、またはベンジルであり、(iii)R8は、アシル、場合によって置換されたアリールおよびヘテロアリール、アルコキシ、ヒドロキシ、ハロ、アミノ、ニトロ、チオール、ジスルフィド、炭水化物、ビタミンならびにこれらの組合せおよび誘導体からなる群より選択される)である。
【0018】
Xは、3置換大員環基質1の酸塩の対イオンであり、Xは、基質がアルキル化前に遊離塩基へ転換される場合に脱離される。一般的に、Xは、ハロゲン化物、ナイトレート、スルフェートまたはホスフェートである。1つの実施形態では、Xはハロゲン化物イオンである。
【0019】
本発明の方法で使用されるアルキル化剤は、式R4Yを有する。R4は大員環窒素上に導入される置換基であり、上で詳細に説明されている。一般的に、R4は、標的基または結合部分の源であってもよい。Yはアルキル化反応での脱離基であり以下で説明される。
【0020】
1つの実施形態では、Yは、ハロゲン化物、メタンスルホネート、トリフルオロアセテート、p−トルエンスルホネートおよびトリフルオロメタンスルホネートイオンからなる群より選択される脱離基である。好ましくは、Yは臭化物、塩化物、ヨウ化物、メタンスルホネート、トリフルオロアセテート、トリフルオロメタンスルホネートまたはp−トルエンスルホネートを含む。脱離基Yの臭化物が一般的に好ましい。
【0021】
本発明の1つの実施形態は、(i)R1、R2およびR3が、独立に、−CH2CO2R5、−CH2ArOR5、−CH2SR5、−CH2PO3H2、CH2SO3H、−CH2Ar(OR5)2、−CH2Ar(OR5)R6および−CH2Ar(OR5)2R6からなる群より選択され、(ii)R4が、−CH2ArOR7、−CH(R8)CO2R7、−CH2Ar(OR5)2、−CH2Ar(OR7)R8、または−CH2Ar(OR7)2R8である方法に関する。この実施形態では、Arは、場合によって置換されたフェニル、ピリミジニルまたはピリジニルであり、R5、R6およびR7は、独立に、H、アルキル、例えば、t−Bu、EtもしくはMe等、メトキシベンジル、またはベンジルであり、R8は、アシル、場合によって置換されたアリールおよびヘテロアリール、アルコキシ、ヒドロキシ、ハロ、アミノ、ニトロ、チオール、ジスルフィド、炭水化物、ビタミン、組合せおよび誘導体からなる群より選択され、Yは、臭化物、塩化物、ヨウ化物、メタンスルホネート、トリフルオロアセテート、トリフルオロメタンスルホネートおよびp−トルエンスルホネートからなる群より選択される。例えば、この実施形態では、R1、R2およびR3は−CH2CO2R5であってもよく、それぞれのR5は、独立に、水素またはt−Bu、EtもしくはMe等のアルキルである。この実施形態のその他の態様では、Arはフェニルであり、Mはナトリウムであり、R5はt−ブチルであり、Yは臭化物である。
【0022】
その他の実施形態では、(i)Arは、場合によって置換されたフェニル、ピリミジニルまたはピリジニルであり、(ii)R1、R2およびR3は、独立に、−CH2CO2R5、−CH2ArOR5、−CH2SR5、−CH2PO3H2、CH2SO3H、−CH2Ar(OR5)2、−CH2Ar(OR5)R6および−CH2Ar(OR5)2R6からなる群より選択され、(iii)R4は、−CH2Ar(OR5)NO2または−CH(CO2R5)(CH2)4NH(CO2CH2Ar)であり、(iv)R5およびR6は、独立に、H、t−Bu、Et、Me、メトキシベンジル、またはベンジルであり、(v)Yは、臭化物、塩化物、ヨウ化物、メタンスルホネート、トリフルオロアセテート、トリフルオロメタンスルホネートまたはp−トルエンスルホネートを含む脱離基である。例えば、この実施形態では、Arはフェニルであり、Mはナトリウムであり、R5はt−ブチルであり、Yは臭化物である。
【0023】
代替的な実施形態では、R1、R2およびR3は、独立に、−CH2CO2R5であり、R4は、−CH2Ar(OR5)NO2または−CH(CO2R5)(CH2)4NH(CO2)CH2Arである。例えば、この実施形態では、Arはフェニルであり、Mはナトリウムであり、R5はt−ブチルであり、Yは臭化物である。
【0024】
弱塩基は、主に、3置換大員環塩基を与え、また、反応の酸性副生成物を捕捉する。一般的に、弱塩基は、約12以下のpKbを有する塩基である。1つの実施形態では、弱塩基は、11を超えないpKbを有する。その他の実施形態では、弱塩基は、約10以下のpKbを有する。1つの好ましい実施形態では、弱塩基は、ビカーボネート(bicarbonate)、ビホスフェート(biphosphate)、ビスルフェート(bisulfate)、アセテートまたはシトレート、あるいはこれらの組合せの金属塩である。本発明のその他の実施形態では、弱塩基は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属またはランタニド金属のビカーボネート塩を含む。1つの実施形態では、アルカリ金属ビカーボネートは最適な弱塩基である。その他の実施形態では、弱塩基は重炭酸ナトリウムである。
【0025】
本発明の反応を実施する際に使用される弱塩基の量は、大員環基質対塩基のモル比で約1:1に近い範囲まで著しく減少される;多量の塩基は収率を妨げる可能性がある。1つの実施形態では、本発明の反応を実施する際に使用される弱塩基の量は、通常、約1:0.9〜約1:1.2のモル比の範囲にある。その他の実施形態では、基質対塩基の比は、約1:1〜約1:1.1である。なおその他の実施形態では、この比は1:1である。
【0026】
アルキル化方法のための有機溶媒は、例えば、極性非プロトン性溶媒であってもよい。1つの実施形態では、溶媒は、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド(DMF)、テトラヒドロフラン(THF)、ジメチルアセトアミド(DMAC)または1,2−ジメトキシエタン(DME)を含む。その他の実施形態では、有機溶媒はアセトニトリルである。
【0027】
温度および期間等の反応条件は、生成物(2)の収率を最大限にするために変動することができる。一般的に、温度は、反応を妥当な時間で完了させるために選択される。例えば、約30℃〜約35℃の温度範囲は、一晩でアルキル化の完了を一般的に可能にする。低い反応性の反応体は、反応を一晩で完了させるために進める場合は高温範囲が有利である。反対に、基質がより反応性である場合は、その場合は、低温または短い期間が好ましいものであってもよい。本発明の1つの実施形態では、反応温度は約25℃〜約40℃であり、反応は一晩中撹拌される。その他の実施形態では、温度は約30℃〜約35℃である。
【0028】
先に列挙の特定の化合物および混合物は、塩、エステル、またはその他の誘導体であることのできる本発明の組成物を形成するのに使用することができる。本発明の方法は、大多数の化合物を調製するために使用することができる。
【0029】
本発明の方法は、更なるクロマトグラフィーの必要なしで、高収率で、反応媒体から定量的に都合よく単離されてもよい金属塩として構造3に相当する化合物を調製のために使用される。構造3に相当する化合物は、二官能キレートを生成するための有用な中間体である。1つの実施形態では、化合物は、構造:
【0030】
【化8】
(式中、
Tは、(+1)または(+2)電荷を持つアルカリ金属、アルカリ土類金属または遷移金属からなる群より選択される金属イオンであり、R11、R22およびR33は、独立に、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビルまたはヘテロシクロであり、R44は、場合によって置換されたアルキルまたはアリール、あるいはこれらの組合せであり、Yは、臭化物、塩化物、ヨウ化物、メタンスルホネート、トリフルオロアセテート、トリフルオロメタンスルホネートおよびp−トルエンスルホネートイオンからなる群より選択される対イオンである)に相当する。
【0031】
1つの実施形態では、R11、R22およびR33は、独立に、アシル、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビルまたはヘテロシクロである。これらは、独立に、場合によって置換されたヒドロカルビル、ヘテロ置換ヒドロカルビルおよび複素環からなる群より選択されてもよい。例えば、R11、R22およびR33は、独立に、アシル、アミノ、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、チオ、ニトロ、またはこれらの組合せで場合によって置換されたアルキル、アルケニル、アルキニル、アリールまたはヘテロシクリルであってもよい。1つの実施形態では、R11、R22およびR33は同じであり、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビルまたはヘテロシクロである。その他の実施形態では、R11、R22およびR33は同じではなく、独立に、−CH2CO2R5、−CH2ArOR5、−CH2SR5、−CH2PO3H2、CH2SO3H、−CH2Ar(OR5)2、−CH2Ar(OR5)R6および−CH2Ar(OR5)2R6(ここで、R5およびR6は、独立に、アルキルまたは置換アルキルである)からなる群より選択される。例えば、この実施形態では、R5およびR6は、独立に、H、t−Bu、Et、Me、メトキシベンジル、またはベンジルであってもよい。この実施形態のその他の例では、R1、R2およびR3は、それぞれ−CH2CO2R5(ここで、R5はt−ブチルである)である。
【0032】
1つの実施形態では、R44は、アシル、場合によって置換されたアルキルもしくはアリール、またはこれらの組合せである。好ましい実施形態では、R44は、−CH2ArOR7、−CH(R8)CO2R7、−CH2Ar(OR7)2、−CH2Ar(OR7)R8、または−CH2Ar(OR7)2R8(ここで、(i)Arは、場合によって置換されたフェニル、ピリミジニルまたはピリジニルであり、(ii)R7は、水素またはアルキル、例えば、t−Bu、EtもしくはMe等であり、(ii)R8は、アシル、場合によって置換されたアリールおよびヘテロアリール、アルコキシ、ヒドロキシ、ハロ、アミノ、ニトロ、チオール、ジスルフィド、炭水化物、ビタミンならびにこれらの組合せおよび誘導体からなる群より選択される)である。代替的な実施形態では、R44は、−CH2Ar(OR5)NO2または−CH(CO2R5)(CH2)4NH(CO2)CH2Arである。好ましい実施形態では、Arはフェニルであり、R44は、−CH2Ar(OR5)NO2または−CH(CO2R5)(CH2)4NH(CO2)CH2Arであり、R5はt−ブチルである。
【0033】
1つの実施形態では、Yは、ハロゲン化物、メタンスルホネート、トリフルオロアセテート、p−トルエンスルホネートおよびトリフルオロメタンスルホネートイオンからなる群より選択される。好ましくは、Yは、臭化物、塩化物、ヨウ化物、メタンスルホネート、トリフルオロアセテート、トリフルオロメタンスルホネートまたはp−トルエンスルホネートを含む。脱離基Yの臭化物が一般的に好ましい。
【0034】
その他の実施形態では、(i)R11、R22およびR33は、独立に、−CH2CO2R5、−CH2ArOR5、−CH2SR5、−CH2PO3H2、CH2SO3H、−CH2Ar(OR5)2、−CH2Ar(OR5)R6および−CH2Ar(OR5)2R6からなる群より選択され、(ii)R44は、−CH2Ar(OR5)NO2または−CH(CO2R5)(CH2)4NH(CO2CH2Ar)であり、(iii)R5およびR6は、独立に、H、t−Bu、Et、Me、メトキシベンジルまたはベンジルであり、(iv)、Arは、場合によって置換されたフェニル、ピリミジニルまたはピリジニルであり、(v)Yは、臭化物、塩化物、ヨウ化物、メタンスルホネート、トリフルオロアセテート、トリフルオロメタンスルホネートまたはp−トルエンスルホネートを含む脱離基である。好ましい実施形態では、Arはフェニルであり、Tはナトリウムであり、R5はt−ブチルであり、Yは臭化物である。
【0035】
代替的な実施形態では、R11、R22およびR33は、独立に、−CH2CO2R5であり、R4は、−CH2Ar(OR5)NO2または−CH(CO2R5)(CH2)4NH(CO2)CH2Arである。例えば、この実施形態では、Tはナトリウムであり、R5はt−ブチルであり、Arはフェニルであり、Yは臭化物である。
【0036】
1つの実施形態では、本発明は、構造:
【0037】
【化9】
に相当する化合物に関する。
【0038】
その他の実施形態では、本発明は、構造:
【0039】
【化10】
に相当する化合物に関する。
【0040】
(定義)
本明細書で単独で、またはその他の基の一部として使用される「アシル」と言う用語は、有機カルボン酸の−COOH基からヒドロキシル基の除去により形成される部分、例えば、RC(O)−(ここで、Rは、R1、R1O−、R1R2N−、またはR1S−であり、R1は、ヒドロカルビル、ヘテロ置換ヒドロカルビル、またはヘテロシクロであり、R2は、水素、ヒドロカルビルまたは置換ヒドロカルビルである)を表す。
【0041】
本明細書で単独で、またはその他の基の一部として使用される「アリール」または「Ar」と言う用語は、場合によって置換された同素環式芳香族基、好ましくは、環部分に6〜12個の炭素を含む単環式または二環式基、例えば、フェニル、ビフェニル、ナフチル、置換フェニル、置換ビフェニルまたは置換ナフチル等を表す。フェニルおよび置換フェニルは更に好ましいアリールである。
【0042】
本明細書で単独で、またはその他の基の一部として使用される「対イオン」と言う用語は、化合物の電気的な中性を維持することの目的のための形成において存在するイオンを意味する。対イオンは正または負であってもよい。
【0043】
本明細書で単独で、またはその他の基の一部として使用される「ハロゲン」、「ハロゲン化物」または「ハロ」と言う用語は、塩素、臭素、フッ素、およびヨウ素を意味する。
【0044】
「ヘテロ原子」と言う用語は、炭素および水素以外の原子を意味すべきものである。本明細書で単独で、またはその他の基の一部として使用される「ヘテロ芳香族」と言う用語は、少なくとも1つの環に少なくとも1つのヘテロ原子を有する、好ましくは、各環に5または6個の原子を有する、場合によって置換された芳香族基を表す。ヘテロ芳香族基は、好ましくは、環において1または2個の酸素原子、1または2個の硫黄原子、および/または1〜4個の窒素原子を有し、炭素原子またはヘテロ原子を介して分子の残部へ結合されてもよい。例示的ヘテロ芳香族としては、フリル、チエニル、ピリジル、オキサゾリル、ピロリル、インドリル、キノリニル、またはイソキノリニル等が挙げられる。例示的置換基としては、1つまたは複数の次の基が挙げられる:ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、ケト、ヒドロキシ、保護ヒドロキシ、アシル、アシルオキシ、アルコキシ、アルケノキシ、アルキノキシ、アリールオキシ、ハロゲン、アミド、アミノ、ニトロ、シアノ、チオール、ケタール、アセタール、エステルおよびエーテル。
【0045】
本明細書で単独で、またはその他の基の一部として使用される「ヘテロシクロ」または「複素環」と言う用語は、少なくとも1つの環に少なくとも1つのヘテロ原子を有し、好ましくは、各環に5または6個の原子を有する、場合によって置換された完全に飽和したまたは不飽和単環式もしくは二環式芳香族または非芳香族基を表す。ヘテロシクロ基は、好ましくは、環において1または2個の酸素原子、1または2個の硫黄原子、および/または1〜4個の窒素原子を有し、炭素原子またはヘテロ原子を介して分子の残部へ結合されてもよい。例示的ヘテロシクロとしては、フリル、チエニル、ピリジル、オキサゾリル、ピロリル、インドリル、キノリニル、またはイソキノリニル等のヘテロ芳香族が挙げられる。例示的置換基としては、1つまたは複数の次の基が挙げられる:ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、ケト、ヒドロキシ、保護ヒドロキシ、アシル、アシルオキシ、アルコキシ、アルケノキシ、アルキノキシ、アリールオキシ、ハロゲン、アミド、アミノ、ニトロ、シアノ、チオール、ケタール、アセタール、エステルおよびエーテル。
【0046】
本明細書で使用される「炭化水素」および「ヒドロカルビル」と言う用語は、専ら炭素および水素元素からなる有機化合物または基を表す。これらの部分としては、アルキル、アルケニル、アルキニル、およびアリール部分が挙げられる。これらの部分としては、また、その他の脂肪族または環状炭化水素基で置換した、アルキル、アルケニル、アルキニル、およびアリール部分、例えば、アルカリール、アルケナリールおよびアルキナリール等が挙げられる。別途指示されない限り、これらの部分は、好ましくは、1〜20個の炭素原子を含む。
【0047】
本明細書で記載される「置換ヒドロカルビル」部分は、炭素鎖原子が、ヘテロ原子、例えば、窒素、酸素、ケイ素、燐、ホウ素、硫黄等、またはハロゲン原子で置換された部分を含めて、炭素以外の少なくとも1つの原子で置換されたヒドロカルビル部分である。これらの置換基としては、ハロゲン、ヘテロシクロ、アルコキシ、アルケノキシ、アルキノキシ、アリールオキシ、ヒドロキシ、保護ヒドロキシ、ケト、アシル、アシルオキシ、ニトロ、アミノ、アミド、ニトロ、シアノ、チオール、ケタール、アセタール、エステルおよびエーテルが挙げられる。
【0048】
テトラアザ大員環のN−アルキル化での「脱離基」と言う用語は、大員環窒素原子上に置換されないアルキル化剤の成分を意味する。これらは、一般的に、ハロゲン化イオン、メタンスルホネート、トリフルオロアセテート、トリフルオロメタンスルホネートまたはp−トルエンスルホネートを含む。
【0049】
「弱塩基」と言う用語は、溶液である場合に完全に解離しない塩基を意味する。一般的に、それは、弱酸の共役塩基である。
【0050】
別途指示されない限り、本明細書に記載のアルキル基は、好ましくは、主鎖において1〜8個の炭素原子を含み、そして20個までの炭素原子を含む低級アルキル基である。これらは、直鎖もしくは分枝鎖または環状であってもよく、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、ヘキシル等が挙げられる。
【0051】
別途指示されない限り、本明細書に記載のアルケニル基は、好ましくは、主鎖において2〜8個の炭素原子を含み、そして20個までの炭素原子を含む低級アルケニル基である。これらは、直鎖もしくは分枝鎖または環状であってもよく、エテニル、プロペニル、イソプロペニル、ブテニル、イソブテニル、ヘキセニル等が挙げられる。
【0052】
別途指示されない限り、本明細書に記載のアルキニル基は、好ましくは、主鎖において2〜8個の炭素原子を含み、そして20個までの炭素原子を含む低級アルキニル基である。これらは、直鎖または分枝鎖であってもよく、エチニル、プロピニル、ブチニル、イソブチニル、ヘキシニル等が挙げられる。
【0053】
本明細書で使用される「保護基」と言う用語は、保護が使用される反応に対してその後に、分子の残部を害することなく除去されてもよい、反応性基、例えば、遊離ヒドロキシル基(「保護ヒドロキシル」)、アミン基(「保護アミン」)、スルフヒドリル基(「保護スルフヒドリル」)等を保護することのできる基を表す。種々の保護基およびこの合成は、「Protective Groups in Organic Synthesis」 by T.W.Greene、John Wiley and Sons、1981年、or Fieser & Fieserにおいて見出されてもよい。
【0054】
以下の実施例は、本発明の特定の実施形態を例示する。当業者には明らかである様に、種々の変化および変更は可能であり、説明された本発明の範囲内で考えられる。
【実施例】
【0055】
(実施例1)
(1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7−三酢酸,10−[(2−t−ブトキシ−5−ニトロフェニル)メチル],トリ−t−ブチルエステル、化合物IIIの調製)
t−ブチルトリクロロアセトイミデート(TBTA):69mL(0.069モル)のカリウムt−ブトキシド(t−ブタノール中の1M)を、69mLのジエチルエーテルに溶解した。この溶液を、30分にわたって、0℃に冷却した、69mLのジエチルエーテル中の100g(0.69モル)のトリクロロアセトニトリルの溶液へ滴下した。混合物を1時間掛けて室温まで温め、次いで、還流で加熱しながら更に1時間撹拌した。混合物を室温まで冷却し、減圧下で蒸発させて油を得た。この油を140mLのヘキサンに溶解し、カリウム塩を除去するために濾過した。濾液を減圧下で蒸発させ、残渣を真空蒸留した。2.4mmHgおよび40℃で蒸留した画分を集めた。収率は105gで、トリクロロアセトニトリルを基準にして69%であった。
【0056】
【化11】
2−t−ブトキシ−5−ニトロベンジルブロミド、化合物I:2−t−ブトキシ−5−ニトロベンジルブロミド、化合物Iの合成は、図1で例示される。19.4g(0.0836モル)の2−ヒドロキシ−5−ニトロベンジルブロミド、334mLのシクロヘキサン、および167mLのジクロロメタンの懸濁液を窒素下で撹拌した。これに、669mLのシクロヘキサン中の73.08g(0.334モル)のt−ブチルトリクロロアセトイミデートの溶液を、3.5時間掛けて滴下した。混合物を、添加が完了後1時間撹拌し、200μLの三フッ化ホウ素エーテレートを添加した。混合物を一晩中撹拌した。多量のトリクロロアセトアミドの沈殿物が形成した。反応混合物を、4.00g(0.0418モル)の重炭酸ナトリウムで処理し、1時間撹拌し、濾過した。固体を、ジエチルエーテルで洗浄し、一緒にした濾液を、減圧下で油まで濃縮した。油を100mLのヘキサンで処理し、溶液を、結晶が形成されるまで撹拌した。−20℃まで冷却後、更に1時間撹拌し、得られた固体を濾過して集め、新しい冷ヘキサンで洗浄し、吸引乾燥し、真空乾燥した。収率は13.2gで、2−ヒドロキシ−5−ニトロベンジルブロミドを基準にして55%であった。計算値:C 45.85、H 4.90、N 4.86、Br 27.73。実測値:C 45.39、H 5.07、N 4.94、Br 27.66。
【0057】
【化12】
1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7−三酢酸,トリ−t−ブチルエステルヒドロブロミド、化合物II、および1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7−三酢酸,10−[(2−t−ブトキシ−5−ニトロフェニル)メチル]−,トリ−t−ブチルエステル、化合物IIIの合成は、図2で例示される。
【0058】
1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7−三酢酸,トリ−t−ブチルエステルヒドロブロミド、化合物II:32.0g(0.186モル)のcyclen、および75.8g(0.557モル)の酢酸ナトリウム3水和物を、600mLのジメチルアセトアミドと一緒に1時間撹拌した。この混合物へ、150mLのジメチルアセトアミド中の109g(0.557モル)のt−ブチルブロモアセテートの溶液を4時間掛けて滴下した。添加速度は、反応混合物の温度を25℃未満に保持する様に調整した。混合物を2晩にわたって撹拌した。−10℃まで冷却し、2時間撹拌した後、得られた固体を濾過して集め、50mLの新しい冷ジメチルアセトアミドで洗浄し、吸引乾燥した。固体を0.5Lのクロロホルムに溶解し、溶液を水で洗浄した(3x200mL)。有機相を集め、硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、減圧下で300mLまで濃縮した。300mLのヘキサンを添加し、溶液を室温で1時間撹拌した;2〜3分後の結晶化が始まった。得られたスラリーを、−20℃まで冷却し、2時間撹拌し、濾過した。固体を、50mLの新しい冷クロロホルム−ヘキサン(1:1)で洗浄し、溶媒を吸引により除去し、固体を、室温で一晩中真空乾燥した。収率は69gであった(cyclenを基準にして62%)。
【0059】
【化13】
1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7−三酢酸,10−[(2−t−ブトキシ−5−ニトロフェニル)−メチル]−,トリ−t−ブチルエステル,臭化ナトリウム錯体、化合物III:8.46g(0.0142モル)の1,4,7,10−テトラアザシクロ−ドデカン−1,4,7−三酢酸,トリ−t−ブチルエステルヒドロブロミドを、200mLの0.1N水性水酸化ナトリウムおよび200mLのジエチルエーテルと一緒に撹拌した。全部の固体が溶解したら、有機相を集め、水性相をジエチルエーテルで洗浄した(2x200mL)。一緒にした有機抽出物を硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、減圧下で油まで蒸発させた。油を、135mLのアセトニトリルに溶解した。この溶液へ、1.19g(0.0142モル)の重炭酸ナトリウムを添加し、続いて、4.50g(0.0156モル)の2−t−ブトキシ−5−ニトロベンジルブロミドを添加した。混合物を35℃まで温め、アルゴン下で一晩中撹拌した。反応が、合計12〜14時間後に、nmrで完了であれば、混合物を濾過し、濾液を減圧下で濃縮して油を得た。油を50mLのジエチルエーテルに懸濁し、撹拌後に白色沈殿物が形成した。固体を濾過により集め、吸引乾燥し、真空で一晩中乾燥した。収率は11.7gで、出発物質の1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7−三酢酸,トリ−t−ブチルエステルヒドロブロミドを基準にして98%であった。分析計算値:C 52.73、H 7.77、N 8.31、Br 9.48。実測値:C 52.31、H 7.68、N 8.26、Br 9.67。
【0060】
【化14】
表1.1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7−三酢酸,10−[(2−t−ブトキシ−5−ニトロフェニル)−メチル]−,トリ−t−ブチルエステル,臭化ナトリウム錯体、化合物IIIについての結晶データ
【0061】
【表1】
50%の熱振動楕円体を伴う分子の投影図は図3で例示される。
【0062】
50%の熱振動楕円体を伴う分子の投影図は図4で例示される。アニオン、溶媒の水およびH原子は、明確にするために示されていない。
【0063】
(実施例2)
(2−{[2’,2’’,2’’’−(1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7−トリイル)三酢酸]−10−イル}−6−[(ベンジルオキシカルボニル)アミノ]ヘキサン酸,テトラ−t−ブチルエステル,臭化ナトリウム錯体、化合物VIの合成)
(S)−6−{[(ベンジルオキシ)カルボニル]アミノ}−2−ブロモヘキサン酸、化合物IV、t−ブチル6−{[(ベンジルオキシ)カルボニル]アミノ}−2−ブロモヘキサノエート、化合物V、および2−{[2’,2’’,2’’’−(1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7−トリイル)三酢酸]−10−イル}−6−[(ベンジルオキシカルボニル)アミノ]ヘキサン酸,テトラ−t−ブチルエステル,臭化ナトリウム錯体、化合物VIの合成は図5で例示される。
【0064】
(S)−6−{[(ベンジルオキシ)カルボニル]アミノ}−2−ブロモヘキサン酸、化合物IV。20.0g(0.14モル)の(S)−2−アミノ−6−{[(ベンジルオキシ)カルボニル]アミノ}ヘキサン酸、および28.9g(0.24モル)の臭化カリウムを、前以て0℃まで冷却した80mLの約6N水性HBrに溶解した。窒素流を、溶液を通して泡立たせ、混合物を冷浴で−10℃まで冷却した。5.9g(0.86モル)の亜硝酸ナトリウムを、撹拌しながら、反応温度を−13℃〜−10℃に維持して、30分掛けて分割添加した。−10℃で6時間撹拌した後、混合物をエチルエーテルで抽出し(4x50mL)、得られた溶液を硫酸マグネシウムで乾燥した。混合物を濾過して乾燥剤を除去し、蒸発させてオレンジ色の油を得た。油をフラッシュクロマトグラフィー、クロロホルム−ヘキサンで精製して、無色透明の油を得た。収率は20.0g、即ち、出発物質の2−アミノ−6−{[(ベンジル−オキシ)カルボニル]−アミノ}ヘキサン酸を基準にして81%であった。NMRは構造と一致する(Nicolaidesら)。
【0065】
t−ブチル6−{[(ベンジルオキシ)カルボニル]アミノ}−2−ブロモヘキサノエート、化合物V。10.0g(0.029モル)の(S)−6−{[(ベンジル−オキシ)カルボニル]アミノ}−2−ブロモヘキサン酸を、20mLのクロロホルムに溶解した。これに、50mLのクロロホルムに溶解した12.7g(0.058モル)のt−ブチルトリクロロアセトイミデートの溶液を30分掛けて滴下した。混合物を更に5分間撹拌し、100μLの三フッ化ホウ素エーテレートを添加した。反応混合物を一晩中撹拌した。5gの重炭酸ナトリウムを添加した。10分撹拌後に、50mLのヘキサンを添加し、混合物を濾過し存在する固体を除去した。濾液を蒸発させ、残渣をフラッシュクロマトグラフィー、酢酸エチル−ヘキサンで精製して、無色透明油を得た。収率は8.5gで、出発物質の(S)−6−{[(ベンジルオキシ)カルボニル]アミノ}−2−ブロモヘキサン酸を基準にして73%であった。NMRは構造と一致する。
【0066】
2−{[2’,2’’,2’’’−(1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7−トリイル)三酢酸]−10−イル}−6−[(ベンジル−オキシカルボニル)アミノ]ヘキサン酸,テトラ−t−ブチルエステル,臭化ナトリウム錯体、化合物VI。5.95g(0.0100モル)の1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7−三酢酸,トリ−t−ブチルエステルヒドロブロミドを、110mLの0.1N水性水酸化ナトリウムおよび150mLのジエチルエーテルと一緒に撹拌した。全体の固体が溶解したら、有機相を集め、水性相をジエチルエーテルで洗浄した(3x50mL)。一緒にした有機抽出物を、1x50mLの飽和水性塩化ナトリウムで洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、減圧下で油まで蒸発させた。油を50mLのアセトニトリルに溶解した。この溶液へ、0.84g(0.0100モル)の重炭酸ナトリウムを添加した。混合物を30℃に温めた。50mLのアセトニトリル中の4.00g(0.0100モル)のt−ブチル6−{[(ベンジルオキシ)カルボニル]−アミノ}−2−ブロモヘキサノエートの溶液を滴下し、混合物をアルゴン下で一晩中撹拌した。得られた混合物を濾過し、濾液を減圧下で濃縮して琥珀色の発泡体を得た。発泡体を、撹拌しながら100mLのジエチルエーテルに溶解した。溶液を凡そ20mLまで濃縮し、室温で1時間撹拌した。結晶化の開始後、混合物を、結晶化を完了させるために−10℃まで冷却した。濾過により生成物を集め、冷たいヘキサン−エーテル(1:1)で洗浄し、真空乾燥した。収率は3.60gで出発物質のt−ブチル6−{[(ベンジルオキシ)カルボニル]−アミノ}−2−ブロモヘキサノエートを基準にして38%であった。分析計算値:C 55.34、H 8.13、N 7.33、Br 8.37、Na 2.41。実測値:C 55.71、H 8.22、N 7.31、Br 8.18、Na 2.37。NMRは構造と一致する。
【0067】
(実施例3)
(ナトリウムt−ブチル2,2’,2’’−(10−(2−(ベンジルオキシ)−2−オキソエチル)−1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7−トリイル)トリアセテートブロミド、化合物VIIの合成)
ナトリウムt−ブチル2,2’,2’’−(10−(2−(ベンジルオキシ)−2−オキソエチル)−1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7−トリイル)トリアセテートブロミド、化合物VIIの合成は図6で例示される。
【0068】
ナトリウムt−ブチル2,2’,2’’−(10−(2−(ベンジルオキシ)−2−オキソエチル)−1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7−トリイル)トリアセテートブロミド、化合物VII。10.0g(0.0168モル)の1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7−三酢酸,トリ−t−ブチルエステルヒドロブロミドを、150mLの0.1N水性水酸化ナトリウムおよび150mLのジエチルエーテルと一緒に撹拌した。全体の固体が溶解したら、有機相を集め、水性相をジエチルエーテルで洗浄した(3x50mL)。一緒にした有機抽出物を、1x50mLの飽和水性塩化ナトリウムで洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、減圧下で、油、7.9g(遊離塩基として0.0153モル)まで蒸発させた。油を、100mLのアセトニトリルに溶解した。この溶液へ、1.29g(0.0153モル)の重炭酸ナトリウムを添加した。混合物を30℃に温めた。100mLのアセトニトリル中の3.52g(0.0153モル)のベンジル−2−ブロモアセテートの溶液を滴下し、混合物をアルゴン下で一晩中撹拌した。得られた混合物を濾過し、濾液を減圧下で濃縮して無色透明の油を得た。油を、撹拌しながら100mLのジエチルエーテルに溶解した。2〜3分後に生成物は結晶化を始めた。約1時間撹拌後、濾過により生成物を集め、新鮮なエーテルで洗浄し、真空乾燥した。収率は9.7gで、出発物質のベンジル−2−ブロモアセテートを基準にして83%であった。分析計算値(%):C 54.90、H 7.63、N 7.32、Na 3.00、Br 10.43。実測値:C 54.96、H 7.67、N 7.33、Na 2.85、Br 10.24。NMRは構造と一致する。
【0069】
(実施例4)
(ナトリウムt−ブチル2,2’,2’’−(10−(2,6−ジクロロベンジル)−1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7−トリイル)トリアセテートブロミド、化合物VIIIの合成)
ナトリウムt−ブチル2,2’,2’’−(10−(2,6−ジクロロベンジル)−1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7−トリイル)トリアセテートブロミド、化合物VIIIの合成は図7で例示される。
【0070】
ナトリウムt−ブチル2,2’,2’’−(10−(2,6−ジクロロベンジル)−1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7−トリイル)トリアセテートブロミド、化合物VIIIの合成。10.0g(0.0168モル)の1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7−三酢酸,トリ−t−ブチルエステルヒドロブロミドを、150mLの0.1N水性水酸化ナトリウムおよび150mLのジエチルエーテルと一緒に撹拌した。全体の固体が溶解したら、有機相を集め、水性相をジエチルエーテルで洗浄した(3x50mL)。一緒にした有機抽出物を、1x50mLの飽和水性塩化ナトリウムで洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、減圧下で、油、8.6g(遊離塩基として0.0167モル)まで蒸発させた。油を100mLのアセトニトリルに溶解した。この溶液へ、1.40g(0.0167モル)の重炭酸ナトリウムを添加した。混合物を30℃に温めた。100mLのアセトニトリル中の4.01g(0.0167モル)の2−ブロモメチル−1,3−ジクロロベンゼンの溶液を滴下し、混合物をアルゴン下で一晩中撹拌した。得られた混合物を濾過し、濾液を減圧下で濃縮して無色透明の油を得た。油を、撹拌しながら100mLのジエチルエーテルに溶解した。2〜3分後に生成物は結晶化を始めた。約1時間撹拌後、濾過により生成物を集め、新鮮なエーテルで洗浄し、真空乾燥した。収率は10.0gで、出発物質の2−ブロモメチル−1,3−ジクロロベンゼンを基準にして77%であった。分析計算値(%):C 51.04、H 7.01、N 7.21、Na 2.96、Br 10.29。実測値:C 50.11、H 7.38、N 6.95、Na 2.92、Br 10.72。NMRは構造と一致する。X−線分析に適した単結晶をクロロホルム−ヘキサンから成長させた。
【0071】
表2.ナトリウムt−ブチル2,2’,2’’−(10−(2,6−ジクロロベンジル)−1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7−トリイル)トリアセテートブロミド、VIIIについての結晶データ
【0072】
【表2】
図8は、50%の熱振動楕円体を伴うナトリウムt−ブチル2,2’,2’’−(10−(2,6−ジクロロベンジル)−1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7−トリイル)トリアセテートブロミド、化合物VIIIの投影図を与え、1つの固有な分子が示されている。溶媒、対イオンおよびH原子は、明確にするために示されていない。
【0073】
図9は、ナトリウムt−ブチル2,2’,2’’−(10−(2,6−ジクロロベンジル)−1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7−トリイル)トリアセテートブロミド、化合物VIIIの投影図を与える。
【0074】
(実施例5)
(ナトリウムt−ブチル2,2’,2’’−(10−(シアノメチル)−1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7−トリイル)トリアセテートブロミド、化合物IXの合成)
図10は、ナトリウムt−ブチル2,2’,2’’−(10−(シアノメチル)−1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7−トリイル)トリアセテートブロミド、化合物IXの合成反応の例示を与える。
【0075】
25.0g(0.0420モル)の1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7−三酢酸,トリ−t−ブチルエステルヒドロブロミドを、600mLの0.1N水性水酸化ナトリウムおよび200mLのジエチルエーテルと一緒に撹拌した。全体の固体が溶解したら、有機相を集め、水性相をジエチルエーテルで洗浄した(3x100mL)。一緒にした有機抽出物を、1x50mLの飽和水性塩化ナトリウムで洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、減圧下で、油、19.1g(遊離塩基として0.0371モル)まで蒸発させた。油を250mLのアセトニトリルに溶解した。この溶液へ、3.12g(0.0371モル)の重炭酸ナトリウムを添加した。混合物を30℃に温めた。100mLのアセトニトリル中の4.45g(0.0371モル)の2−ブロモアセトニトリルの溶液を滴下し、混合物をアルゴン下で一晩中撹拌した。得られた混合物を濾過し、濾液を減圧下で濃縮して無色透明の油を得た。油を、撹拌しながら200mLのジエチルエーテルに溶解した。2〜3分後に生成物は結晶化を始めた。約1時間撹拌後、濾過により生成物を集め、新鮮なエーテルで洗浄し、真空乾燥した。収率は20.0gで、出発物質のブロモアセトニトリルを基準にして82%であった。分析計算値(%):C 51.22、H 7.83、N 10.67、Na 3.50、Br 12.17。実測値:C 51.06、H 7.88、N 10.49、Na 3.34、Br 12.72。NMRは構造と一致する。
【0076】
(実施例6)
(ナトリウムt−ブチル2,2’,2’’−(10−(2−メトキシ−2−オキソ−1−フェニルエチル)−1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7−トリイル)トリアセテートブロミド、化合物Xの合成)
図11は、ナトリウムt−ブチル2,2’,2’’−(10−(2−メトキシ−2−オキソ−1−フェニルエチル)−1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7−トリイル)トリアセテートブロミド、化合物Xの合成反応の例示を与える。
【0077】
5.5g(0.0092モル)の1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7−三酢酸,トリ−t−ブチルエステルヒドロブロミドを、100mLの0.1N水性水酸化ナトリウムおよび100mLのジエチルエーテルと一緒に撹拌した。全体の固体が溶解したら、有機相を集め、水性相をジエチルエーテルで洗浄した(3x25mL)。一緒にした有機抽出物を、1x25mLの飽和水性塩化ナトリウムで洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、減圧下で、油、2.20g(遊離塩基として0.0043モル)まで蒸発させた。油を55mLのアセトニトリルに溶解した。この溶液へ、0.36g(0.0043モル)の重炭酸ナトリウムを添加した。混合物を30℃に温めた。10mLのアセトニトリル中の0.98g(0.0043モル)のメチル−2−ブロモ−2−フェニルアセテートの溶液を滴下し、混合物をアルゴン下で一晩中撹拌した。得られた混合物を濾過し、濾液を減圧下で濃縮して無色透明の油を得た。油を、撹拌しながら50mLのジエチルエーテルに溶解した。2〜3分後に生成物は結晶化を始めた。約1時間撹拌後、濾過により生成物を集め、新鮮なエーテルで洗浄し、真空乾燥した。収率は3.3gで、出発物質のメチル2−ブロモ−2−フェニルアセテートを基準にして100%であった。分析計算値(%):C 54.90、H 7.63、N 7.32、Na 3.00、Br 10.43。実測値:C 54.61、H 7.69、N 7.10、Na 2.78、Br 10.57。NMRは構造と一致する。X−線分析に適した単結晶をクロロホルム−ヘキサンから成長させた。
【0078】
表3.ナトリウムt−ブチル2,2’,2’’−(10−(2−メトキシ−2−オキソ−1−フェニルエチル)−1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7−トリイル)トリアセテートブロミド、化合物Xについての結晶データ
【0079】
【表3】
50%の熱振動楕円体を伴うナトリウムt−ブチル2,2’,2’’−(10−(2−メトキシ−2−オキソ−1−フェニルエチル)−1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7−トリイル)トリアセテートブロミド、化合物Xの投影図は図12で例示される。対イオン、H原子および溶媒は、明確にするために示されていない。
【0080】
図13は、50%の熱振動楕円体を伴うナトリウムt−ブチル2,2’,2’’−(10−(2−メトキシ−2−オキソ−1−フェニルエチル)−1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7−トリイル)トリアセテートブロミド、化合物Xの投影図であり、無秩序Cl原子は示されていない。
【0081】
(実施例7)
(ナトリウム(5−ベンジル1−t−ブチル2−(4,7,10−トリス(2−t−ブトキシ−2−オキソエチル)−1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1−イル)ペンタンジオエートブロミド、化合物XIVの合成)
図14は、2−アミノ−5−(ベンジルオキシ)−5−オキソペンタン酸、化合物XI;5−(ベンジルオキシ)−2−ブロモ−5−オキソペンタン酸、化合物XII;5−ベンジル1−t−ブチル2−ブロモペンタンジオエート、化合物XIII;およびナトリウム(5−ベンジル1−t−ブチル2−(4,7,10−トリス(2−t−ブトキシ−2−オキソエチル)−1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1−イル)ペンタンジオエートブロミド、化合物XIVの合成反応の例示を与える。
【0082】
5−(ベンジルオキシ)−2−ブロモ−5−オキソペンタン酸、化合物XII。20.00g(0.084モル)の2−アミノ−5−(ベンジルオキシ)−5−オキソペンタン酸、および34.1g(0.29モル)の臭化カリウムを、前以て0℃まで冷却した80mLの約6N水性HBrに溶解した。窒素流を、溶液を通して泡立たせ、混合物を冷浴で−10℃まで冷却した。6.98g(0.10モル)の亜硝酸ナトリウムを、撹拌しながら、反応温度を−13℃〜−10℃に維持して、30分掛けて分割添加した。−10℃で6時間撹拌した後、混合物をエチルエーテルで抽出し(4x100mL)、得られた溶液を硫酸マグネシウムで乾燥した。混合物を濾過して乾燥剤を除去し、蒸発させてオレンジ色の油を得た。油をフラッシュクロマトグラフィー、クロロホルム−ヘキサンで精製して、無色透明の油を得た。収率は11.5g、即ち、出発物質の2−アミノ−5−(ベンジルオキシ)−5−オキソペンタン酸を基準にして45%であった。NMRは構造と一致する。
【0083】
5−(ベンジルオキシ)1−t−ブチル2−ブロモペンタンジオエート、化合物XIII。10.0g(0.033モル)の5−(ベンジルオキシ)−2−ブロモ−5−オキソペンタン酸を、20mLのクロロホルムに溶解した。これに、50mLのシクロヘキサン中に溶解した15.9g(0.073モル)のt−ブチルトリクロロアセトイミデートの溶液を30分掛けて滴下した。混合物を更に5分間撹拌し、100μLの三フッ化ホウ素エーテレートを添加した。反応混合物を一晩中撹拌した。5gの重炭酸ナトリウムを添加した。10分撹拌後に、50mLのヘキサンを添加し、混合物を濾過し存在する固体を除去した。濾液を蒸発させ、残渣をフラッシュクロマトグラフィー、酢酸エチル−ヘキサンで精製して、無色透明油を得た。収率は8.2gで、出発物質の5−(ベンジルオキシ)−2−ブロモ−5−オキソペンタン酸を基準にして69%であった。NMRは構造と一致する。
【0084】
ナトリウム(5−ベンジル1−t−ブチル2−(4,7,10−トリス(2−t−ブトキシ−2−オキソエチル)−1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1−イル)ペンタンジオエートブロミド、化合物XIVの合成。10.0g(0.0168モル)の1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7−三酢酸,トリ−t−ブチルエステルヒドロブロミドを、150mLの0.1N水性水酸化ナトリウムおよび150mLのジエチルエーテルと一緒に撹拌した。全体の固体が溶解したら、有機相を集め、水性相をジエチルエーテルで洗浄した(3x50mL)。一緒にした有機抽出物を、1x50mLの飽和水性塩化ナトリウムで洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、減圧下で、油、8.8g(遊離塩基として0.0171モル)まで蒸発させた。油を、100mLのアセトニトリルに溶解した。この溶液へ、1.51g(0.0180モル)の重炭酸ナトリウムを添加した。混合物を30℃に温めた。40mLのアセトニトリル中の8.02g(0.0180モル)の5−(ベンジルオキシ)1−t−ブチル2−ブロモペンタンジオエートの溶液を滴下し、混合物をアルゴン下で一晩中撹拌した。得られた混合物を濾過し、濾液を減圧下で濃縮して無色透明の油を得た。油を、撹拌しながら100mLのジエチルエーテルに溶解した。2〜3分後に生成物は結晶化を始めた。約1時間撹拌後、濾過により生成物を集め、新鮮なエーテルで洗浄し、真空乾燥した。NMR分析は、9.3gの、Na−DO3A−トリス(t−ブチルエステル)ブロミドおよび所望の生成物の混合物からなる固体を明らかにした。固体を、それぞれ、約100mLの最小限の酢酸エチルから二回再結晶化させて、極めて純粋な生成物を得た。収率は2.7gで、出発物質の5−(ベンジルオキシ)1−t−ブチル2−ブロモペンタンジオエートを基準にして18%であった。分析計算値:1水和物として(%)C 55.25、H 7.44、N 6.08、Br 9.08、Na 3.68。実測値:C 55.32、H 7.96、N 6.14、Br 8.76、Na 2.52。NMRは構造と一致する。X−線分析に適した結晶を酢酸エチルから成長させた。
【0085】
表X.ナトリウム(5−ベンジル1−t−ブチル2−(4,7,10−トリス(2−t−ブトキシ−2−オキソエチル)−1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1−イル)ペンタンジオエートブロミド、化合物XIVの結晶構造
【0086】
【表4】
ナトリウム(5−ベンジル1−t−ブチル2−(4,7,10−トリス(2−t−ブトキシ−2−オキソエチル)−1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1−イル)ペンタンジオエートブロミド、化合物XIVの投影図は、2つの分子の1つが示され、溶媒、対イオンおよびH原子は、明確にするために示されていない図15で例示される。
【0087】
ナトリウム(5−ベンジル1−t−ブチル2−(4,7,10−トリス(2−t−ブトキシ−2−オキソエチル)−1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1−イル)ペンタンジオエートブロミド、化合物XIVの投影図は、図16で例示される。
【0088】
【化15】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本明細書に記載の発明。
【請求項1】
本明細書に記載の発明。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2013−82749(P2013−82749A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2013−19402(P2013−19402)
【出願日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【分割の表示】特願2009−500476(P2009−500476)の分割
【原出願日】平成19年3月14日(2007.3.14)
【出願人】(595181003)マリンクロッド エルエルシー (203)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2013−19402(P2013−19402)
【出願日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【分割の表示】特願2009−500476(P2009−500476)の分割
【原出願日】平成19年3月14日(2007.3.14)
【出願人】(595181003)マリンクロッド エルエルシー (203)
【Fターム(参考)】
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