説明

テトラサイクリン遺伝子発現誘導システムにおける発現量を増幅させる遺伝子座とノックインによる増幅の効果

【課題】個体においてテトラサイクリン遺伝子発現誘導システムを良好に機能させる手段及びその用途等を提供することを課題とする。
【解決手段】tetオペレーター配列、該tetオペレーター配列の制御下にあるプロモーター配列、及び該プロモーター配列の下流に配置された目的遺伝子を含む発現カセットが、標的組織で発現する遺伝子の遺伝子座又はその近傍にノックインされており、且つテトラサイクリン制御性トランス活性化因子又はリバーステトラサイクリン制御性トランス活性化因子を前記標的組織で発現する、テトラサイクリン遺伝子発現誘導システムを保有した遺伝子改変非ヒト動物が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はテトラサイクリン遺伝子発現誘導システムに関する。詳しくは、テトラサイクリン遺伝子発現誘導システムの個体への適用に関する。
【背景技術】
【0002】
テトラサイクリン遺伝子発現誘導システムは、Bujardらによって発明された遺伝子発現システムであり(非特許文献1)、目的遺伝子の条件的発現を可能とする。テトラサイクリン遺伝子発現誘導システムは各種細胞を利用したアッセイ系に利用されてきた。一方、個体(例えばマウス)への適用も試みられている。例えば、テトラサイクリン遺伝子発現誘導システムをマウス個体で利用する場合にはテトラサイクリントランスアクチベータ(以下、「tTA」と呼ぶ)を発現するマウス(以下、「tTAマウス」)又とtTA依存的プロモーターに連結した目的遺伝子カセットを持つマウス(以下、「tetOマウス」と呼ぶ)を別途作成する。それらを交配して得られるダブルトランスジェニックマウスでは、tTA発現細胞においてのも目的遺伝子が発現誘導される。1996年にマウス個体での成功例が初めて報告され(非特許文献2)、それ以降、このシステムを用いた条件的遺伝子操作が多くの研究室で試みられた。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Proc Natl Acad Sci USA 1992;89(12):5547-51
【非特許文献2】Science. 1996;274(5293):1678-83
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本来、テトラサイクリン遺伝子発現誘導システムは遺伝子発現を増幅させる系であるが、特に個体に適用した場合において、遺伝子発現を増幅させるどころか、全く発現誘導が得られないケースが多数報告された。tTAが発現しているのにもかかわらず遺伝子発現誘導が起こらないのである。例えば、線状体ではこのシステムがよく機能するが、海馬や大脳皮質などでは遺伝子誘導が殆ど起こらない。このように、テトラサイクリン遺伝子発現誘導システムを個体に適用した場合には、思い通りに発現誘導できないことが多い。そこで本発明は、個体においてテトラサイクリン遺伝子発現誘導システムを良好に機能させる手段及びその用途等を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、マウス個体においてテトラサイクリン遺伝子発現誘導システムが良好に機能しない原因を探求する中で、tetOマウスに着眼した。tetOマウスではtTA依存的プロモーターに連結した目的遺伝子カセットがランダムな組み込みによってマウス染色体に挿入されるため、メチル化などによって不活性化し、tTAがアクセスできない又はアクセスし難い状態となり、その結果、テトラサイクリン遺伝子発現誘導システムの不全が生じていると考えた。このような好ましくない状態を回避するための方策として本発明者らは、ノックイン動物を利用することが有効であると考えた。ノックイン動物を用いた場合、tTA依存的プロモーターに連結した目的遺伝子カセットは相同組換えによって染色体に取り込まれることから、目的遺伝子カセットの不活性化を回避できると予想される。この理論を検証するため、組織特異的にtTAを発現するトランスジェニックマウス(ニューロン特異的、アストロサイト特異的、オリゴデンドロサイト特異的及びミクログリア特異的)と、tTA依存的プロモーターに連結した目的遺伝子カセットを相同組換えによって所望の位置にノックインしたマウスを用意し、これらを交配させることによって、テトラサイクリン遺伝子発現誘導システムを組み込んだダブルトランスジェニックマウスを作成した。ノックイン位置はハウスキーピング遺伝子であるベータアクチン遺伝子の下流とした。得られたダブルトランスジェニックマウスの各標的組織での目的遺伝子の発現を調べたところ、予想以上の高発現を認めた。当該ダブルトランスジェニックマウスでの発現量は、いずれの標的組織についても、従来法での発現量とは比較にならないレベルであった。この事実は、本発明者らが採用した戦略の有効性及び有用性を裏付ける。尚、従来法では全く誘導をかけることができなかった標的組織についても目的遺伝子の発現を誘導できたことは特筆に値する。
【0006】
以下に示す本願発明は、主として上記の成果及び知見に基づく。
[1]tetオペレーター配列、該tetオペレーター配列の制御下にあるプロモーター配列、及び該プロモーター配列の下流に配置された目的遺伝子を含む発現カセットが、標的組織で発現する遺伝子の遺伝子座又はその近傍にノックインされており、且つ
テトラサイクリン制御性トランス活性化因子又はリバーステトラサイクリン制御性トランス活性化因子を前記標的組織で発現する、
テトラサイクリン遺伝子発現誘導システムを保有した遺伝子改変非ヒト動物。
[2]前記発現カセットのノックイン位置が、前記標的組織で発現する遺伝子の直後である、[1]に記載の遺伝子改変非ヒト動物。
[3]前記目的遺伝子がハウスキーピング遺伝子又は前記標的組織特異的遺伝子である、[1]又は[2]に記載の遺伝子改変非ヒト動物。
[4]前記テトラサイクリン制御性トランス活性化因子又はリバーステトラサイクリン制御性トランス活性化因子が前記標的組織特異的に発現している、[1]〜[3]のいずれか一項に記載の遺伝子改変非ヒト動物。
[5]前記発現カセットに関してヘテロ接合体である、[1]〜[4]のいずれか一項に記載の遺伝子改変非ヒト動物。
[6]動物種がマウスである、[1]〜[5]のいずれか一項に記載の遺伝子改変非ヒト動物。
[7]以下のステップ(1)〜(3)を含む、テトラサイクリン遺伝子発現誘導システムを保有した遺伝子改変非ヒト動物の作製方法:
(1)tetオペレーター配列、該tetオペレーター配列の制御下にあるプロモーター配列、及び該プロモーター配列の下流に配置された目的遺伝子を含む発現カセットが、標的組織で発現する遺伝子の遺伝子座又はその近傍にノックインされた第1の遺伝子改変非ヒト動物と、
テトラサイクリン制御性トランス活性化因子又はリバーステトラサイクリン制御性トランス活性化因子を前記標的組織で発現する第2の遺伝子改変非ヒト動物を用意するステップ;
(2)前記第1の遺伝子改変非ヒト動物と前記第2の遺伝子改変非ヒト動物を交配するステップ;及び
(3)交配によって得られた仔の中から、前記発現カセットがノックインされ、且つ前記テトラサイクリン制御性トランス活性化因子又はリバーステトラサイクリン制御性トランス活性化因子を発現する個体を選抜するステップ。
[8]以下のステップ(4)及び(5)を更に含む、[7]に記載の作製方法:
(4)ステップ(3)で選抜した個体同士を交配するステップ;
(5)交配によって得られた仔の中から、(a)前記発現カセットに関してヘテロ接合体であり、前記テトラサイクリン制御性トランス活性化因子又はリバーステトラサイクリン制御性トランス活性化因子に関してヘテロないしヘミ接合体である個体、(b)前記発現カセットに関してヘテロ接合体であり、前記テトラサイクリン制御性トランス活性化因子又はリバーステトラサイクリン制御性トランス活性化因子に関してホモ接合体である個体、(c)前記発現カセットに関してホモ接合体であり、前記テトラサイクリン制御性トランス活性化因子又はリバーステトラサイクリン制御性トランス活性化因子に関してヘテロないしヘミ接合体である個体、又は(d)前記発現カセットに関してホモ接合体であり、前記テトラサイクリン制御性トランス活性化因子又はリバーステトラサイクリン制御性トランス活性化因子に関してホモ接合体である個体、を選抜するステップ。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】tetOカセットのノックイン位置。tetOカセット(tetO配列、最小プロモーター、イントロン、チャネルロドプシンYFP遺伝子、ポリA付加配列)をベータアクチン遺伝子近傍にノックインする。数字はベータアクチンの翻訳開始部位(ATG)を1としたときの塩基の位置を示す。ベータアクチンポリA付加配列(AATAAA)は2541に相当する。その30塩基下流の2571と2572の間にカセットをノックインした。
【図2】ターゲッティングベクターの構造。数字はベータアクチン遺伝子の翻訳開始部位を1としたときの位置を示す。相同組み換えに必要な5’側隣接DNAフラグメントは-5731から2571までのおよそ8.3 kbの長さがある。3’側隣接DNAフラグメントは2572から4453までのおよそ1.9 kbの長さがある。5’側隣接DNAフラグメント(8.3 kb)、tetOカセット(一番左のボックス、3.2 kb)、FRTで囲まれたNeo耐性遺伝子(左から二つ目のボックス、1.6 kb)、3’側隣接DNAフラグメント(1.9 kb)がpMCS-DTAベクターのマルチクローニングサイトにあるPacI-XhoIサイトに組み込まれている。PacIでターゲッティングベクターを直鎖化してエレクトロポレーションに使用する。
【図3】tetOマウスとtTAマウスの組み合わせによる遺伝子発現誘導。tetO発現コンストラクトをノックインしたマウス(新規方法)を用いた場合、いかなるtTAマウスの組み合わせにおいてもtTA発現細胞で蛍光タンパク質の強い発現誘導が得られたが、従来型のtetOマウスでは発現誘導が全く得られないか(オレキシン、PLP、Iba1)、得られたとしても僅かであった(aCamKII、Mlc1)。
【発明を実施するための形態】
【0008】
1.テトラサイクリン遺伝子発現誘導システムを保有した遺伝子改変非ヒト動物
本発明の第1の局面は、テトラサイクリン遺伝子発現誘導システム(以下、「TC遺伝子発現誘導システム」とも呼ぶ)を保有した遺伝子改変非ヒト動物(以下、「本発明のTg動物」とも呼ぶ)に関する。本発明のTg動物の種は特に限定されず、例えばマウス、ラット、モルモット、ハムスター、サル、チンパンジー、ウシ、ブタ、ヤギ、ヒツジである。好ましくは、入手及び取り扱いが容易で且つ汎用性の高いマウス又はラットである。本発明のTg動物には、TC遺伝子発現誘導システムが組み込まれている。TC遺伝子発現誘導システムとは、テトラサイクリン又はその類縁体(以下、これらをまとめて「TC系化合物」と呼ぶ)によって目的遺伝子の発現状態を制御できるシステムである。当該システムが導入された細胞では、TC系化合物の存在又は非存在に応答して目的遺伝子が発現する。TC系化合物の濃度依存的な発現誘導も可能である。本発明のTC遺伝子発現誘導システムは、TC系化合物の非存在下で目的遺伝子を発現誘導する系、又はTC系化合物の存在下で目的遺伝子を発現誘導する系として構築される。前者の発現誘導系では、TC系化合物が存在しないときに、テトラサイクリン制御性トランス活性化因子、即ちテトラサイクリントランスアクチベータ(tTA)がtetオペレーター配列に結合し、目的遺伝子の発現が誘導される。他方、後者の発現誘導系では、tTAの代わりにリバーステトラサイクリン制御性トランス活性化因子、即ちリバーステトラサイクリントランスアクチベータ(以下、「rtTA」と呼ぶ)が用いられ、テトラサイクリン系化合物が存在するときに、rtTAがtetオペレーター配列に結合し、目的遺伝子の発現を誘導する。
【0009】
TC系化合物の例はテトラサイクリン、ドキシサイクリン、デオキシサイクリン、アンヒドロテトラサイクリン、シアノテトラサイクリン、クロロテトラサイクリンである。テトラサイクリン系化合物については、Hlavka and Boothe, "The Tetracyclines," in Handbook of Experimental Pharmacology 78, R.K.. Blackwood et al. (eds.), SpringerVerlag, Berlin-New York, 1985やL.A. Mitscher "The Chemistry of the Tetracycline Antibiotics, Medicinal Research 9, Dekker, New York, 1978等に詳しい。
【0010】
TC遺伝子発現誘導システムが良好に機能するように本発明のTg動物では、第1の特徴として、tetオペレーター配列、該tetオペレーター配列の制御下にあるプロモーター配列、及び該プロモーター配列の下流に配置された目的遺伝子を含む発現カセットが、標的組織で発現する遺伝子の遺伝子座又はその近傍にノックインされている。一方、第2の特徴として、テトラサイクリン制御性トランス活性化因子(tTA)又はリバーステトラサイクリン制御性トランス活性化因子(rtTA)を前記標的組織で発現している。以下、第1の特徴及び第2の特徴を構成する各要素を説明する。
【0011】
tetオペレーター配列(tetO)とは、tTA又はrtTAが結合できる配列である。tTA又はrtTAが結合するとtetOの制御下にあるプロモーターが活性化する。このような特徴を示す配列であればtetOの配列は特に限定されない。例えば、Gossenら(Gossen M. and Bujard M., (1992) Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 89, 5547-5551)に示されるtetOの配列を用いることができる。任意のクラス(例えばA、B、C、D、E)のtetOを用いることができる。好ましくは、複数個のtetOが用いられる。その場合、複数個のtetOは通常、連続して配置される。但し、隣接するtetOの間に他の配列が介在していてもよい。tetOの数(コピー数)は特に限定されないが、例えば2〜10である。tetOを含むベクターが市販されており(例えばClontec社が提供する)、当該ベクターから所望のtetOを調製することが可能である。尚、tetOの具体例を配列番号1に示す。
【0012】
tetOの制御下にはプロモーター配列が存在する。即ち、プロモーター配列はtetOと機能的に連結している。通常は、tetOの下流側(3'側)にプロモーター配列が連結される。tetOとプロモーター配列との距離は、プロモーター配列がtetOの制御下にある限り特に限定されない。典型的には、tetOの直後に(間隔を空けずに)プロモーター配列を配置する。プロモーター配列としては、典型的には、最小プロモーター配列が用いられる。「最小プロモーター配列」とは、転写開始部位を規定するものの、それ自体では効率的な転写を開始できない部分的プロモーター配列のことである。最小プロモーター配列の活性は、テトラサイクリン系化合物によって制御されたtTA又はrtTAのtetOへの結合に依存する。最小プロモーター配列の具体例として、ヒトサイトメガロウイルス(CMV)由来のプロモーターを挙げることができる。尚、最小プロモーター配列の具体例を配列番号2に示す。
【0013】
最小プロモーター内のTATAボックスから転写が開始される。転写産物の安定性を増すため、目的遺伝子の上流にイントロンが存在する。イントロン配列の具体例として、ウサギ由来ベータグロビンイントロンを挙げることが出来る。イントロン配列の具体例を配列番号3に示す。
【0014】
イントロン配列の下流には目的遺伝子が存在する。目的遺伝子とは、標的組織乃至細胞において発現誘導させる遺伝子である。様々な遺伝子を目的遺伝子として採用可能である。例えば、組織又は細胞種特異的なライプイメージングを可能にする遺伝子(例えばGFP、ルシフェラーゼ、カメレオン、GCaMP)、組織又は細胞種特異的な発現を組織学的に解析するために必要な遺伝子(たとえばβ−ガラクトシダーゼ、アルカリフォスファターゼ、WGAレクチン)、発生又は成長段階の特定の時期に特異的に発現する遺伝子、標的組織又は標的細胞の特定の機能に関与する遺伝子(例えばジフテリアトキシン、ボツリヌストキシン)等を目的遺伝子に用いることができる。また、機能未知の遺伝子を目的遺伝子としてもよい。バイシストロニック性制御配列(例えば、リボソーム内部認識配列(IRES))や2Aペプチド配列等を利用し、二つ以上の目的遺伝子が発現するように発現カセットを構築することもできる。
【0015】
目的遺伝子の下流にはポリA付加シグナル配列を配置する。ポリA付加シグナル配列の使用によって転写を終了させる。
【0016】
発現カセット内に選択マーカー遺伝子、レポーター遺伝子、エンハンサー配列、WRPE配列等を含めることにしてもよい。エンハンサー配列の使用によって発現効率の向上が図られる。また、選択マーカー遺伝子は発現カセットの導入の成否や効率の判定などに利用され、レポーター遺伝子は目的遺伝子の発現の検出又は発現効率の判定等に利用される。WRPE配列はmRNAの安定性を高めることによってタンパク質発現量を増加させる。
【0017】
ポリA付加シグナル配列としては目的遺伝子自体のポリA付加配列やSV40のポリA付加配列、ウシ由来成長ホルモン遺伝子のポリA付加配列等を用いることができる。選択マーカー遺伝子としては、ネオマイシンに対する耐性を付与するneo遺伝子、カナマイシン等に対する耐性を付与するnpt遺伝子(Herrera Estrella、EMBO J. 2(1983)、987-995)やnptII遺伝子(Messing & Vierra.Gene 1 9:259-268(1982))、ハイグロマイシンに対する耐性を付与するhph遺伝子(Blochinger & Diggl mann,Mol Cell Bio 4:2929-2931)、メタトレキセートに対する耐性を付与するdhfr遺伝子(Bourouis et al.,EMBO J.2(7))等を用いることができる。また、レポーター遺伝子としては、ルシフェラーゼ遺伝子(Giacomin、P1. Sci. 116(1996)、59〜72;Scikantha、J. Bact. 178(1996)、121)、β-グルクロニダーゼ(GUS)遺伝子、GFP(Gerdes、FEBS Lett. 389(1996)、44-47)やその改変体(EGFPやd2EGFPなど)等の蛍光タンパク質の遺伝子を用いることができる。
【0018】
本発明のTg動物では、上記の発現カセット(tetO、プロモーター配列及び目的遺伝子並びに必要に応じてその他の成分を含む)がノックインされている。即ち、本発明のTg動物は、遺伝子ターゲティングによる相同組換えによって染色体上の所望の位置に挿入(ノックイン)された発現カセットを有する。発現カセットの挿入位置は、標的組織での効率的な発現を達成するために、標的組織で発現する遺伝子の遺伝子座又はその近傍である。標的組織で発現する遺伝子の機能を損なわないためには、後者の位置(即ち、標的遺伝子で発現する遺伝子の遺伝子座近傍)にノックインすることが好ましい。例えば、ここでの「標的組織で発現する遺伝子」がハウスキーピング遺伝子や標的組織の維持や恒常性に必須又は重要な遺伝子の場合、ノックイン位置は当該遺伝子の遺伝子座ではなく、遺伝子座近傍がよい。「近傍」とは、典型的には遺伝子座の直後である。具体的には、例えば遺伝子座の約30塩基〜800塩基下流にノックインする。本発明のTg動物は、発現カセットに関してホモ接合体であってもヘテロ接合体であってもよい。
【0019】
本発明における発現カセットの具体例としては、上流側(5'側)から順に、tetO(繰り返し数7回)、CMV最小プロモーター、イントロン、目的遺伝子、レポーター遺伝子、ポリA付加シグナル配列が配置された構造を有するものを挙げることができる。
【0020】
上述の通り、本発明のTg動物では、第2の特徴として、テトラサイクリン制御性トランス活性化因子(tTA)又はリバーステトラサイクリン制御性トランス活性化因子(rtTA)を標的組織で発現している。換言すれば、tTAをコードする配列又はrtTAをコードする配列を含む発現コンストラクトを標的組織で発現可能な状態で保有している。tTAは、TC系化合物の存在下ではtetOへ結合せず、TC系化合物の非存在下でtetOへ結合する。rtTAはtTAと反対の挙動を示す。即ち、TC系化合物の非存在下ではtetOへ結合せず、TC系化合物の存在下でtetOへ結合する。tTAはtetリプレッサー(TetR)と転写活性化ドメインを含む融合タンパク質であり、同様にrtTAはrtetリプレッサー(rTetR)と転写活性化ドメインを含む融合タンパク質である。
【0021】
TetRは特に限定されず、任意のクラス(例えばA、B、C、D、E)のTetRを用いることができる。例えば、Gossenら(Gossen M. and Bujard M., (1992) Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 89, 5547-5551)に示される野生型TetRを用いることができる。TetRをコードする配列の具体例を配列番号4に示す。
【0022】
rTetRも特に限定されない。典型的には、野生型TetRが変異することで上記特性を示もの(変異型TetR)が用いられる。変異型TetRのアミノ酸配列を野生型TetRのアミノ酸に比較すると、一以上のアミノ酸の置換、欠失、付加などの相違が認められる。変異型TetRの具体例として、Tn10由来の野生型TetRのアミノ酸配列における71位、95位、101位及び102位のアミノ酸の一以上(好ましくはこれら全て)が他のアミノ酸に置換されているものを挙げることができる。71位は例えばグルタミンからリジンに、95位は例えばアスパラギン酸からアスパラギンに、101位は例えばロイシンからセリンに、102位は例えばグリシンからアスパラギン酸に置換される。rTetRをコードする配列の具体例を配列番号5に示す。
【0023】
転写活性化ドメインとしては、酸性活性化ドメイン、プロリンリッチ転写活性化ドメイン、セリン/スレオニンリッチ転写活性化ドメイン、グルタミンリッチ活性化ドメインなどが用いられる。好適には、酸性活性化ドメインである単純ヘルペスウイルスビリオンタンパク質16(以下、「VP16」と呼ぶ)(Labow et al.,(1990)Mol. Cell Biol. 10, 3343-3356; Baim et al., (1991) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 8, 5072-5076等)を転写活性化ドメインとして採用する。転写活性化ドメインをコードする配列の具体例(VP16)を配列番号6に示す。
【0024】
標的組織でtTA又はrtTAを発現させるために、発現コンストラクトはプロモーターとポリA付加シグナル配列を含む。tTAをコードする配列又はrtTAをコードする配列は、当該プロモーターの制御下に配置される。即ち、プロモーター配列とrTA又はrtTAをコードする配列は機能的に連結している。ここでのプロモーターとして構成的プロモーター、組織特異的プロモーター、細胞種特異的プロモーター、発生又は成長段階依存的プロモーター等が用いられる。具体的にはCMVプロモーター、CAGプロモーター、SV40ori、レトロウイルスLTP、SRα、EF1α、βアクチンプロモーター、αCamKIIプロモーター(ニューロン特異的)、オレキシンプロモーター(ニューロン特異的)、Mlc1プロモーター(アストロサイト特異的)、PLPプロモーター(オリゴデンドロサイト特異的)、Iba1プロモーター(ミクログリア特異的)、ニューロフィラメントプロモーター、アセチルコリンレセプタープロモーター、エノラーゼプロモーター、L7プロモーター、ネスチンプロモーター、アルブミンプロモーター、アルファフェトプロテインプロモーター、ケラチンプロモーター、インスリンプロモーター、マウスhoxプロモーター、α−フェトプロテインプロモーター等を使用可能である。
【0025】
本発明の第1の特徴を構成する発現カセットの場合と同様に、発現コンストラクト内に、選択マーカー遺伝子、レポーター遺伝子、エンハンサー配列、イントロン配列、WRPE配列等を含めることにしてもよい。
【0026】
染色体上での上記の発現コンストラクト(プロモーター及びtTA又はrtTA、並びに必要に応じてその他の成分を含む)の挿入位置は、所望の発現(例えば、使用するプロモーターに応じた構成的発現や組織特異的発現)が達成される限り、特に限定されない。従って、例えば、トランスジェニック操作の結果として、発現コンストラクトを任意の位置に有していればよい。一方で、発現カセットの場合と同様に、発現コンストラクトが染色体の所望の位置にノックインされていてもよい。本発明のTg動物は、発現コンストラクトに関してホモ接合体であってもヘミ接合体(ヘテロ接合体)であってもよい。
【0027】
本発明における発現コンストラクトの具体例としては、上流側(5'側)から順に、組織特異的プロモーター(例えばニューロン特異的プロモーター)、TetR(又はrTetR)をコードする配列、VP16をコードする配列、ポリA付加シグナル配列が配置された構造を有するものを挙げることができる。
【0028】
本発明のTg動物は遺伝子の機能解析用ツールとして有用である。また、本発明のTg動物によれば、個体を構成している細胞の操作、制御、改変などが可能になる。更には、疾患モデルとして本発明のTg動物を利用したり、治療モデル(例えば疾患モデルを遺伝子改変して得られる)として本発明のTg動物を利用したりすることもできる。
【0029】
2.テトラサイクリン遺伝子発現誘導システムを保有した遺伝子改変非ヒト動物の作製方法
本発明の第2の局面は、本発明のTg動物の作製方法に関する。以下、本発明の作製方法の詳細を説明するが、特に言及しない要件、要素などについては、第1の局面における対応する記載が援用される。
【0030】
本発明の作製方法では、所定の発現カセット(tetO配列、プロモーター配列、目的遺伝子を含む)がノックインされた遺伝子改変非ヒト動物(以下、「第1のTg動物」呼ぶ)と、tTA又はrtTAを標的組織で発現する遺伝子改変非ヒト動物(以下、「第2のTg動物」と呼ぶ)を用意する(ステップ(1))。尚、発現カセットのノックイン位置は、標的組織で発現する遺伝子の遺伝子座又はその近傍である。
【0031】
第1のTg動物は、例えば、ジーンターゲティングを利用して所定の発現カセットをノックインすることによって作製できる。ジーンターゲティングは遺伝子の相同組換えを利用してゲノムに改変を加える技術である。ジーンターゲティングを利用したノックイン動物の作製法は、マウスの場合を例にとれば大別して(a)ターゲティングベクターの構築、(b)マウスES細胞へのターゲティングベクターの導入及び相同組換え体の同定、(c)ブラストシストへの相同組み換え体の注入、(d)仮親の子宮内への胚移植及び出産(キメラ仔マウス)及び(e)キメラ仔マウスと野生型マウスの交配(F1世代であるヘテロ接合体マウスの産出)からなる。ホモ接合体を得る場合には、更に、(f)F1世代同士の交配(F2世代であるホモ接合体マウスの産出)を行う。ラットなど、他の齧歯類を用いた場合も同様の手順で遺伝子改変動物を得ることができる。尚、ジーンターゲティングによる遺伝子改変動物の作製法については例えばJoyner, A. L.:Gene Targeting (IRL press)、Capeccchi, M. R., Science, 244, 1288-1292 (1989)、Hua Gu, et al., Science, 265, 103-106 (1994)、McHugh, T. J. et al., Cell, 87, 1339-1349 (1996)、Shibata, H. et al., Science, 278, 120-123 (1997)等が参考になる。
【0032】
本発明では、tetO、当該tetOの制御下にあるプロモーター及び当該プロモーターの下流に配置された目的遺伝子、ポリA付加シグナル配列を含む発現カセットを保持したターゲティングベクターを用いる。必要に応じて、発現カセット内に選択マーカー遺伝子も配置される。
【0033】
ターゲティングベクターは相同組換えに必要な隣接DNAフラグメントを含む。隣接DNAフラグメントは発現カセットの5'側と3'側に配置される。本発明に使用するターゲティングベクターを構築するために例えばBAC(バクテリア人工染色体)クローンを利用することができる。BACクローンは例えばBACPAC Resource Cente (Children's Hospital Oakland Research Institute, Oakland, California, USA)から入手することができる。
【0034】
一方、第2のTg動物は、その発生段階で特定の遺伝子を染色体に組込むことにより作製される。作製方法としては、受精卵の前核に直接DNAの注入を行うマイクロインジェクション法、レトロウイルスベクターを利用する方法、ES細胞を利用する方法(第1のTg動物と同様にターゲティングベクターを用いた方法)などを用いることができる。以下では、第2のTg動物の作製方法として、マウスを用いたマイクロインジェクション法を具体例として説明する。マイクロインジェクション法では、まず交尾が確認された雌マウスの卵管より受精卵を採取し、そして培養した後にその前核に所定の発現コンストラクトの注入を行う。注入操作を終了した受精卵を偽妊娠マウスの卵管に移植し、移植後のマウスを所定期間飼育して仔マウス(F0)を得る。仔マウスの染色体に導入遺伝子が適切に組込まれていることを確認するために、仔マウスの尾などからDNAを抽出し、導入遺伝子に特異的なプライマーを用いたPCR法や導入遺伝子に特異的なプローブを用いたサザンハイブリダイゼーション法等を行う。本発明では、tTAをコードする配列(又はrtTAをコードする配列)を含む発現コンストラクトが用いられる。発現コンストラクト内には、標的組織でtTA(又はrtTA)を発現させるために、tTAをコードする配列(又はrtTAをコードする配列)に機能的に連結したプロモーターとポリA付加シグナル配列も配置される。必要に応じて、発現コンストラクト内に、選択マーカー遺伝子、レポーター遺伝子、エンハンサー配列等も配置される。
【0035】
ステップ(1)に続いて、以上のようにして用意した2種類のTg動物を交配した後(ステップ(2))、交配によって得られた仔の中から、上記発現カセットがノックインされ、且つ上記tTA(又はrtTA)を発現する個体を選抜する(ステップ(3))。任意のステップとして、選抜された個体同士の交配を行い、以下の(a)〜(d)のいずれかの個体を選抜することにしてもよい。当該ステップを行うことによって、様々なタイプの個体を得ることができる。尚、必要な場合には、更なる交配を行ってもよい。
(a)上記発現カセットに関してヘテロ接合体であり、tTA(又はrtTA)に関してヘテロないしヘミ接合体である個体
(b)上記発現カセットに関してヘテロ接合体であり、tTA(又はrtTA)に関してホモ接合体である個体
(c)上記発現カセットに関してホモ接合体であり、tTA(又はrtTA)に関してヘテロないしヘミ接合体である個体
(d)上記発現カセットに関してホモ接合体であり、tTA(又はrtTA)に関してホモ接合体である個体
【実施例】
【0036】
1.tetO-ChR2EFYPノックインマウスの作成
図1に発現コンストラクトをノックインする位置を示す。マウスベータアクチン遺伝子ポリA付加配列の30塩基下流に発現コンストラクトをノックインした。以下、1)から10)を行い、tetO-ChR2EFYPノックインマウスを樹立した。
【0037】
1)ターゲッティングベクターの作成(図2):PacI-5’側隣接DNAフラグメント-AflII, AflII-tetO配列/CMV最小プロモーター/ウサギイントロン-BamHI, BamHI-チャネルロドプシンYFP cDNA-EcoRI、EcoRI-SV40ポリA付加配列-平滑末端、平滑末端-Neo遺伝子-NheI、NheI-3’側隣接DNAフラグメント-XhoIの6つのフラグメントを順に連結したDNAを大阪大学 遊佐宏介博士から譲渡されたpMCS-DTAベクターのPacI-XhoIサイトへ組み込み、ターゲッティングベクターを作成した。隣接DNAフラグメントはBACPACから購入したBACクローン(RP23-289L7)から調製した。tetO配列/CMV最小プロモーター/ウサギイントロンの3つが連結したDNA配列はGenescript社に依頼して合成した。チャネルロドプシンYFP cDNAはStanford大学Karl Deisserothから譲渡されたpLenti-CaMKIIa-hChR2(C128S)-EYFP-WPREプラスミドから調製した。SV40ポリA付加シグナルはpEGFP-N1(Clontech社)から調製した。Neo遺伝子は大阪大学遊佐宏介博士から譲渡されたpPE7neoW-F2LFプラスミドより調製した。
2)ターゲッティングベクターをPacIで直鎖化する。
3)マウスES細胞にエレクトロポレーションする。
4)G418存在下で増殖するコロニーを拾う。
5)相同組換えをサザンブロッティング法で確認する。
6)キメラマウス(雄)を作成する。
7)キメラマウス(雄)を野生型雌マウスと交配させる。
8)目的遺伝子を持つマウスを得る。
9)Flpe酵素を全身で発現するマウスと交配し、薬剤耐性遺伝子を取り除く。また、8)で得られたマウスを、Flpe酵素を全身で発現するマウス、ROSA-Flpeマウス(コロンビア大学メディカルセンターのCHYUAN-SHENG LIN博士より供与)と交配させ、Neo遺伝子(図2の左から二つ目のボックス)を染色体から取り除いた。Neo遺伝子が無いことはPCRによって確認した。
10)tetO-ChR2YFPノックインマウスの樹立:Neo遺伝子が取り除かれたマウスをtetO-ChR2YFPノックインマウスとして樹立した。
【0038】
次に、各種tTAマウスとtetO-ChR2EYFPノックインマウスを交配させ、ダブルトランスジェニックマウスを得た。ペントバルビタールで麻酔下においたダブルトランスジェニックマウスの心臓から4%パラホルムアルデヒド 10 mLを潅流し固定した。固定後、脳を取り出し、ビブラトームを用いてを厚さ100μmの切片を作成した。GFP抗体(ウサギ抗GFP抗体、Molecular Probe社、1000倍希釈)で室温16時間反応させた後、Alexa488標識抗ウサギIgG抗体(Molecular Probe社、1000倍希釈)で室温2時間反応させた。切片をスライドガラスに貼り付けた後、蛍光顕微鏡(キーエンス社、BZ-9000)で蛍光写真を撮影した(図3上段)。対照として、tetO-EGFPトランスジェニックマウスとの交配によって得られる遺伝子発現誘導を図3下段に示す。従来型の方法で作成したtetOマウスを用いた場合、遺伝子発現誘導が得られないか(オレキシンtTA、PLP tTA、Iba1 tTA)、得られたとしてもごく少数の細胞でしかGFPの発現が観察されなかった(aCamKII tTA、Mlc1 tTA)。一方で、tetOノックインマウスを用いると、いずれのtTAマウス(5種類)と交配させた場合においても、tTA発現細胞に蛍光タンパクの強い発現誘導が得られた。
【0039】
以上の通り、個体においてテトラサイクリン遺伝子発現誘導システムを良好に機能させるためにはtetO発現コンストラクトをノックインすることが有効であり、その効果は従来法とは比較にならないものであることが示された。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は、テトラサイクリン遺伝子発現誘導システムが良好に機能する遺伝子改変非ヒト動物(Tg動物)を提供する。本発明のTg動物は遺伝子の機能解析用ツールとして有用である。本発明のTg動物によれば、個体を構成している細胞の操作、制御、改変などが可能になる。また、疾患モデルや治療モデルとして本発明のTg動物を利用することもできる。このように、本発明のTg動物の利用ないし適用範囲は広い。本発明のTg動物には、医療分野、遺伝子工学分野、生物学分野等の進歩・発展への多大な貢献が期待される。
【0041】
この発明は、上記発明の実施の形態及び実施例の説明に何ら限定されるものではない。特許請求の範囲の記載を逸脱せず、当業者が容易に想到できる範囲で種々の変形態様もこの発明に含まれる。本明細書の中で明示した論文、公開特許公報、及び特許公報などの内容は、その全ての内容を援用によって引用することとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
tetオペレーター配列、該tetオペレーター配列の制御下にあるプロモーター配列、及び該プロモーター配列の下流に配置された目的遺伝子を含む発現カセットが、標的組織で発現する遺伝子の遺伝子座又はその近傍にノックインされており、且つ
テトラサイクリン制御性トランス活性化因子又はリバーステトラサイクリン制御性トランス活性化因子を前記標的組織で発現する、
テトラサイクリン遺伝子発現誘導システムを保有した遺伝子改変非ヒト動物。
【請求項2】
前記発現カセットのノックイン位置が、前記標的組織で発現する遺伝子の直後である、請求項1に記載の遺伝子改変非ヒト動物。
【請求項3】
前記目的遺伝子がハウスキーピング遺伝子又は前記標的組織特異的遺伝子である、請求項1又は2に記載の遺伝子改変非ヒト動物。
【請求項4】
前記テトラサイクリン制御性トランス活性化因子又はリバーステトラサイクリン制御性トランス活性化因子が前記標的組織特異的に発現している、請求項1〜3のいずれか一項に記載の遺伝子改変非ヒト動物。
【請求項5】
前記発現カセットに関してヘテロ接合体である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の遺伝子改変非ヒト動物。
【請求項6】
動物種がマウスである、請求項1〜5のいずれか一項に記載の遺伝子改変非ヒト動物。
【請求項7】
以下のステップ(1)〜(3)を含む、テトラサイクリン遺伝子発現誘導システムを保有した遺伝子改変非ヒト動物の作製方法:
(1)tetオペレーター配列、該tetオペレーター配列の制御下にあるプロモーター配列、及び該プロモーター配列の下流に配置された目的遺伝子を含む発現カセットが、標的組織で発現する遺伝子の遺伝子座又はその近傍にノックインされた第1の遺伝子改変非ヒト動物と、
テトラサイクリン制御性トランス活性化因子又はリバーステトラサイクリン制御性トランス活性化因子を前記標的組織で発現する第2の遺伝子改変非ヒト動物を用意するステップ;
(2)前記第1の遺伝子改変非ヒト動物と前記第2の遺伝子改変非ヒト動物を交配するステップ;及び
(3)交配によって得られた仔の中から、前記発現カセットがノックインされ、且つ前記テトラサイクリン制御性トランス活性化因子又はリバーステトラサイクリン制御性トランス活性化因子を発現する個体を選抜するステップ。
【請求項8】
以下のステップ(4)及び(5)を更に含む、請求項7に記載の作製方法:
(4)ステップ(3)で選抜した個体同士を交配するステップ;
(5)交配によって得られた仔の中から、(a)前記発現カセットに関してヘテロ接合体であり、前記テトラサイクリン制御性トランス活性化因子又はリバーステトラサイクリン制御性トランス活性化因子に関してヘテロないしヘミ接合体である個体、(b)前記発現カセットに関してヘテロ接合体であり、前記テトラサイクリン制御性トランス活性化因子又はリバーステトラサイクリン制御性トランス活性化因子に関してホモ接合体である個体、(c)前記発現カセットに関してホモ接合体であり、前記テトラサイクリン制御性トランス活性化因子又はリバーステトラサイクリン制御性トランス活性化因子に関してヘテロないしヘミ接合体である個体、又は(d)前記発現カセットに関してホモ接合体であり、前記テトラサイクリン制御性トランス活性化因子又はリバーステトラサイクリン制御性トランス活性化因子に関してホモ接合体である個体、を選抜するステップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−51934(P2013−51934A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−193680(P2011−193680)
【出願日】平成23年9月6日(2011.9.6)
【出願人】(504261077)大学共同利用機関法人自然科学研究機構 (156)
【Fターム(参考)】