説明

テトラゾールメタンスルホン酸塩の製造方法及びそれに用いられる新規化合物

新規の4−オキソ−4H−クロメン−2−カルボチオン酸S−ベンゾチアゾール−2−イルエステを使用したアシル化反応を含む本発明のテトラゾールメタンスルホン酸塩の製造方法は、従来の方法に比べて反応時間を短縮させることができ、安全性を改善させることができ、カラムクロマトグラフィー法を用いることなくてもテトラゾールメタスルホン酸塩を高純度及び高収率で製造できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テトラゾールメタンスルホン酸塩の製造方法及びこれに使用される新規化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
P−糖タンパク質阻害剤である−4−オキソ−4H−クロメン−2−カルボン酸[2−(2−{4−[2−(6,7−ジメトキシ−3,4−ジヒドロ−1H−イソキノリン−2−イル)−エチル]−フェニル}−2H−テトラゾール−5−イル)−4,5−ジメトキシ−フェニル]−アミンの薬学的に許容可能な塩は、癌細胞の多薬剤耐性に対する阻害剤として有用であり、国際公開特許第WO2005/033097号にその製造方法が開示されている。
【0003】
前記製造方法によると、下記反応式1及び2に示したように、ニトロ系化合物(1及び3)をパラジウム、白金及び亜鉛のような金属触媒の存在下でメタノール、エタノール、クロロホルム、ジクロロメタン、テトラヒドロフラン、エチルエーテル及びヘキサントルエンのような溶媒中で水素化反応させてアミノ化合物(2及び4)を得た後、これを1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド塩酸塩、N,N−ジシクロヘキシルジイミド、N,N−ジイソプロカルボジイミド及び1−シクロヘキシル−3−(2−(モルホリノエチル)カルボジイミドメチル−p−トルエンスルホン酸塩のような縮合剤を用いて、4−(ジメチルアミノ)ピリジンのような触媒の存在下でジクロロメタン、クロロホルム、N,N−ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン及び1,4−ジオキサンのような溶媒中でアシル化反応させることによりテトラゾール化合物(5)を製造した。
【0004】
[反応式1]
【化1】

【0005】
[反応式2]
【化2】

【0006】
しかし、前記方法は、化合物の大量反応時、水素及び金属触媒の使用による爆発、火災などの安全上の問題がある。また、製造されたテトラゾール化合物を純粋に分離するために、シリカゲルカラムクロマトグラフィー法を使用しなげればならないが、このようなカラムクロマトグラフィー法は、カラムサイズ及び充填される物質の量が制限的であるため、量産に不向きであり、特に、カラム充填剤である高価のシリカゲル及び過量の展開溶媒を使用しなければならないため、高コストが所要されるという短所がある。
【発明の概要】
【0007】
したがって、本発明の目的は、テトラゾールメタンスルホン酸塩の新規な製造方法を提供することにある。
本発明の他の目的は、前記テトラゾールメタンスルホン酸塩の製造に用いられる新規化合物及びその製造方法を提供することにある。
【0008】
前記目的を達成するために、本発明は、
下記化学式(II)の化合物と化学式(III)の化合物とをアシル化反応させて下記化学式(IV)の化合物を製造する段階と、
前記化学式(IV)の化合物にメタンスルホン酸を添加する段階と、
を含む、下記化学式(I)のテトラゾールメタンスルホン酸塩の製造方法を提供する。
【化3】

【0009】
前記他の目的を達成するために、本発明は、前記テトラゾールメタンスルホン酸塩の製造に用いられる前記化学式(II)の化合物を提供する。
前記また他の目的を達成するために、本発明は、下記化学式(V)の化合物と下記化学式(VI)の化合物とをトリフェニルホスフィン及び塩基の存在下で反応させる段階を含む、前記化学式(II)の製造方法を提供する。
【化4】

【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明をより詳しく説明する。
本発明による製造方法は、テトラゾールメタンスルホン酸塩の製造時、縮合剤を用いてアシル化反応を実施する従来の方法とは異なり、新規の4−オキソ−4H−クロメン−2−カルボチオン酸S−ベンゾチアゾール−2−イルエステル(4−oxo−4H−chromene−2−carbothionic acid S−benzothiazol−2−yl ester)を使用してアシル化反応を実施することによりカラムクロマトグラフィーのような別途の精製過程を経ることなく高純度及び高収率でテトラゾールメタンスルホン酸塩を製造することを特徴とする。
【0011】
すなわち、本発明によるテトラゾールメタンスルホン酸塩の製造方法は、下記反応式3に示したように、下記化学式(II)の化合物と化学式(III)の化合物とをアシル化反応させて下記化学式(IV)の化合物を製造する段階(ステップ1);及び前記段階で製造した化学式(IV)の化合物にメタンスルホン酸を添加する段階(ステップ2)とを含む。
【0012】
[反応式3]
【化5】

【0013】
前記式中、Meはメチル基を表す。
【0014】
まず、前記化学式(II)及び化学式(III)の化合物を極性非プロトン溶媒(polar aprotic solvent)中でアシル化反応させて前記化学式(IV)の化合物を製造する。
【0015】
具体的に、化学式(II)のエステル化合物と化学式(III)の化合物をジクロロメタン、テトラヒドロフラン、エチルエステル、アセトン、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、及びジメチルスルホキシドからなる群より選択される極性非プロトン溶媒、好ましくは、ジクロロメタン中でアシル化反応させた後、メタノールを添加することにより反応後残留する化学式(II)の化合物の活性を除去する。次いで、ここにアセトンを添加すると、自然に精製されて98%以上の純度を有する化学式(IV)の化合物を効率良く且つ純粋に得ることができる。
この時、化学式(II)の化合物は、化学式(III)の化合物1当量を基準に1〜5当量で使用されることが好ましい。
【0016】
また、前記反応後残留する化学式(II)の化合物の活性をなくすために、メタノールを添加することができ、この時、化学式(II)の化合物の総重量に対してメタノールを1〜2の体積対重量比(v/w:メタノールの体積/化学式(II)の化合物の重量)、言い換えて、化学式(II)の化合物1gに対してメタノールを1〜2mLの量で使用されることが好ましい。
【0017】
また、前記反応において、精製のためにアセトンを使用することができ、この時、アセトンは水に溶解された溶液状で使用することが好ましい。具体的には、95%のアセトン溶液を使用することができる。また、前記アセトンは、化学式(III)の化合物1gに対して35〜45mLの量で使用されることが好ましい。
次いで、前記段階で製造された化学式(IV)の化合物にメタンスルホン酸を添加することにより化学式(I)のテトラゾールメタンスルホン酸塩を製造する。
【0018】
具体的に、前記段階で得た化学式(IV)のテトラゾール化合物をクロロホルム、メタノールなどの有機溶媒に溶解させ、ここにメタンスルホン酸を添加した後、酢酸エチル及びアセトンを順次に添加して精製することにより化学式(I)のテトラゾールメタンスルホン酸塩を安全且つ効率的な方法で得ることができる。
この時、メタンスルホン酸は、化学式(IV)の化合物に対して共役酸の役割を果たすものであって、化学式(IV)化合物1当量を基準に1〜1.5当量で使用されることが好ましい。
【0019】
また、前記反応において、精製のために酢酸エチル及びアセトンを使用することができる。この時、酢酸エチルは、化学式(IV)の化合物1gに対して1〜5mLの量で使用することが好ましい。また、アセトンは水に溶解された溶液状であって、好ましくは、95%のアセトン溶液状で使用することが好ましく、アセトンの使用量は、化学式(IV)の化合物1gに対して15〜25mLの量であることが好ましい。
【0020】
このように、化学式(II)の化合物を用いる本発明のテトラゾールメタンスルホン酸塩の製造方法によると、カラムクロマトグラフィーを用いることなくてもメタノールとアセトンのみを添加することにより精製された化学式(IV)の化合物を高純度及び高収率で得ることができる。したがって、本発明の製造方法は、1−(3−ジメチルアミノフロピル)−3−エチルカルボジイミド、N,N−ジシクロヘキシルジイミド、N,N−ジイソプロカルボジイミド及び1−シクロヘキシル−3−(2−(モルホリノエチル)カルボジイミドメチル−p−トルエンスルホン酸塩などの縮合剤を用いたアシル化反応を含む従来の製造方法に比べて、目的化合物を濾過のみで高純度で得ることができるため、非常に経済的で且つ容易な量産に適する方法である。
【0021】
一方、前記アシル化反応段階(ステップ1)で使用された前記化合式(II)の化合物は、下記反応式4に示したように、下記化学式(V)の化合物と下記化学式(VI)の化合物をトリフェニルホスフィン及び塩基の存在下で反応させることにより製造されることができる。
【0022】
[反応式4]
【化6】

【0023】
具体的に、化学式(V)のクロモン酸(chromonic acid)と化学式(IV)の2,2’−ジチオビス(ベンゾチアゾール)をトリフェニルホスフィン(PPH)、及びトリエチルアミン(NEt)、ピリジン、イミダゾール、ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)、4−ジメチルアミノピリジン(DMAP)及びこれらの混合物からなる群より選択された塩基、好ましくは、トリエチルアミンの存在下でジクロロメタン(CHCl)、ジエチルエーテル、エチルエステル、テトラヒドロフラン及びこれらの混合物からなる群より選択された有機溶媒、好ましくは、ジクロロメタン中で20〜25℃の反応温度で1〜3時間反応させることにより、活性エステルである化学式(II)の4−オキソ−4H−クロメン−2−カルボチオン酸S−ベンゾチアゾール−2−イルエステルを製造することができる。この時、反応時間が3時間を超えると不純物が生成する。
【0024】
この時、化学式(VI)の化合物は、化学式(V)の化合物1当量を基準に1〜2当量で使用されることが好ましい。
また、前記トリフェニルホスフィンは、化学式(V)の化合物1当量を基準に1〜2当量で使用されることが好ましい。
前記塩基は、化学式(V)のクロモン酸1当量を基準に1〜2当量で使用されることが好ましい。
【0025】
また、本発明によるテトラゾールメタンスルホン酸塩の製造方法において出発物質として使用された前記化学式(III)の化合物は、下記反応式5に示したように、下記化学式(VII)の化合物と化学式(VIII)の化合物とを環化反応させて下記化学式(IX)の化合物を製造する段階(ステップ1)、及び前記段階で得た化学式(IX)の化合物を金属及び酸を用いて還元反応させる段階(ステップ2)とを含む製造方法によって製造されることができる。
【0026】
[反応式5]
【化7】

【0027】
前記式中、Meはメチル基を表す。
【0028】
まず、前記化学式(VII)の化合物を化学式(VIII)の化合物と環化反応させて前記化学式(IX)のニトロフェニルテトラゾール化合物を製造する。
【0029】
具体的に、化学式(VII)の化合物を溶媒、例えば50%エタノール容液中で亜硝酸ナトリウム及び塩酸の存在下で反応させることによりジアゾニウム塩を製造して、ここに化学式(VIII)の化合物及びピリジンを、反応温度10℃以下を維持しながら混合する。次いで、その結果得られた混合物の温度を常温に昇温させた後、攪拌して2.5N塩酸溶液、重炭酸ナトリウム溶液及び水で洗浄し、ジクロロメタンで抽出した後、有機層を除去し、メタノールを添加して結晶化することにより化学式(IX)の化合物を得ることができる(文献[Suketaka itoら、Bulletin of the Chemical Society of Japan,Vol 49(7),1920−1923(1976)]参考)。
【0030】
この時、前記化学式(VII)の化合物は、下記反応式6に示されたように、下記化学式(X)の化合物と下記化学式(XI)の化合物とを反応させて下記化学式(XII)の化合物を製造した後、金属及び酸を用いて還元反応させて製造することができる。
【0031】
[反応式6]
【化8】

【0032】
前記式中、Meはメチル基を表す。
【0033】
具体的に、化学式(X)の化合物と化学式(XI)の化合物とを無水炭酸カリウム(KCO)及びヨウ化ナトリウム(NaI)の存在下でN,N−ジメチルホルムアミドのような溶媒中で70〜100℃で攪拌することにより化学式(XII)のニトロベンゼンイソキノリンを得る。次いで、前記で得た乾燥された化学式(XII)の化合物を溶媒、例えば50%エタノール溶液中で鉄、スズ、亜鉛及びニッケルからなる群より選択された金属、好ましくは、鉄と、塩酸、硝酸、硫酸、酢酸及びこれらの混合物からなる群より選択された酸とを用いて還元反応させることにより、前記化学式(VII)のアミノベンゼンイソキノリンを製造することができる。
【0034】
前記反応は、80℃で3時間行うことができ、還元反応後、10%塩化ナトリウム容液を添加して中和させた後、セライトで濾過させて有機層を除去して残渣をエチルエーテルで固化して化学式(VII)の化合物を得ることができる。この時、前記金属は、化学式(XII)の化合物1当量を基準に2〜10当量で使用されることができ、前記酸は、化学式(XII)の化合物1当量を基準に0.1〜0.5当量で使用されることができる。
【0035】
一方、化学式(VIII)の化合物は、下記反応式7に示されたように、下記化学式(XIII)の化合物と下記化学式(XIV)の化合物とを反応させて製造することができる。
【0036】
[反応式7]
【化9】

【0037】
前記式中、Meはメチル基を表す。
【0038】
具体的に化学式(XIII)の化合物及び化学式(XIV)の化合物をエタノール溶媒中で反応温度70〜80℃で反応させた後、生成された固体を濾過乾燥することにより化学式(VIII)の化合物を得ることができる(文献[Suketaka itoら、Bulletin of the Chemical Society of Japan,Vol 49(7),1920−1923(1976)]参考)。
【0039】
上記反応式5の段階2(ステップ2)として、前記反応式5の段階1(ステップ1)に得た化学式(IX)の化合物を金属及び酸を用いて還元反応させることにより前記化学式(III)の化合物を製造する。
【0040】
具体的に、化学式(IX)の化合物を鉄、スズ、亜鉛及びニッケルからなる群より選択された金属、好ましくは鉄を用いて、塩酸、硝酸、硫酸、酢酸及びこれらの混合物からなる群より選択された酸、好ましくは、酢酸(例えば、50%酢酸水容液)中で還元反応させて化学式(III)の化合物を得ることができる。
【0041】
前記還元反応は、80℃で3時間実施することが好ましく、その後、セライトを用いた濾過と中和によって有機溶媒を除去してメタノール中で攪拌することにより化学式(III)の化合物を得ることができる。
【0042】
前記金属は、前記化学式(IX)の化合物1当量を基準に5〜15当量で使用されることができ、前記酸は、前記化学式(IX)の化合物1gに対して2〜5mLの量で使用することができる。
【0043】
前記のように、本発明は、化学式(III)及び(VII)の化合物の製造時、金属及び酸を用いて還元反応を行うことにより、従来のパラジウム及び水素ガスを用いて還元反応させる方法に比べて反応時間を短縮することができ、還元反応の安全性が向上して爆発の危険性を減少させることができる。
【0044】
本発明の他の実施の形態によると、前記化学式(I)のテトラゾールメタンスルホン酸塩の製造時、有用な下記化学式(II)の新規化合物を提供する。
【化10】

【0045】
本発明のまた他の実施の形態によると、下記化学式(V)の化合物と下記化学式(VI)の化合物とを塩基の存在下で反応させて、前記化学式(II)の化合物を製造することを含む、前記化学式(II)の化合物の製造方法を提供する。
【化11】

【0046】
以下、実施例によって、本発明をより詳細に説明する。但し、下記実施例は、本発明を例示するためのものであるだけであって、本発明の範囲がこれらに限定されることではない。
【0047】
実施例:N−(2−(2−(4−(2−(6,7−ジメトキシ−3,4−ジヒドロイソキノリン−2(1H)−イル)エチル)フェニル)−2H−テトラゾール−5−イル)−4,5−ジメトキシフェニル)−4−オキソ−4H−クロメン−2−カルボキサミドメタンスルホン酸塩の製造
ステップ1−1)6,7−ジメトキシ−2−(4−ニトロフェンエチル)−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン
反応器に5LのN,N−ジメチルホルムアミド、2−(4−ニトロフェニル)臭化エチル(1.0kg、4.35モル)及び6,7−ジメトキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−イソキノリン塩酸塩(DTIH;1.0kg、4.35モル)を入れて攪拌した。その結果得られた混合溶液に炭酸カリウム(1.80kg、13モル)及びヨウ化ナトリウム(780g、5.20モル)を添加した後、反応器の温度を100℃に昇温させて12時間攪拌した。薄膜クロマトグラフィー(展開溶媒:クロロホルム/メタノール=15/1)で反応が完結したことを確認した後、反応混合物を常温に冷却させた。
【0048】
別途の反応器に冷水20Lを入れて、ここに前記で得られた混合物を徐々に添加した後、4時間攪拌した。その結果得られた固体を濾過し、水3Lで洗浄した後、40℃の乾燥オーブンで熱風乾燥して標題化合物を得た(1.34kg、90%)。
【0049】
H−NMR(CDCl)d:8.17(d,2H),7.43(d,2H),6.62(s,1H),6.54(s,1H),3.87(s,3H),3.85(s,3H),3.66(s,2H),3.03(t,2H),2.82−2.78(m,6H)。
【0050】
ステップ1−2)4−(2−(6,7−ジメトキシ−3,4−ジヒドロイソキノリン−2(1H)−イル)−エチル)−ベンゼンアミン
反応器に鉄(1.27kg、23.48モル)、塩酸(127mL、1.54モル)及び50%エタノール水容液6.7Lを入れて80℃で1時間攪拌した。その結果得られた混合溶液に前記ステップ1−1)で得た6,7−ジメトキシ−2−(4−ニトロフェンエチル)−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン(1.3kg、3.91モル)を1時間に亘って添加し、80℃で3時間攪拌した。薄膜クロマトグラフィー(展開溶媒:クロロホルム/メタノール=15/1)で反応が完結したことを確認した後、反応混合物を常温に冷却させた。ここに、ジクロロメタン5.3L及び水5.3Lを添加した後、10%水酸化ナトリウム水容液(804mL)で中和させた。中和された溶液をセライトパッドを通して濾過し、塩化メチレン3Lで洗浄した。その結果得られた有機層を集めて、無水硫酸マグネシウムで乾燥濾過した後、減圧下で溶媒を除去し、40℃の乾燥オーブンで熱風乾燥して標題化合物を得た(1.05kg、90%)。
【0051】
H−NMR(CDCl)d:7.02(d,2H),6.65−6.53(m,4H),3.84(s,3H),3.83(s,3H),3.63(s,2H),3.57(s,2H),2.84−2.86(m,8H)。
【0052】
ステップ2)4,5−ジメトキシ−2−ニトロ−p−トルエンスルホニルヒドラゾン
反応器にエタノール12.5Lを入れて、ここにp−トルエンスルホニルヒドラジド(1kg、5.37モル)及び6−ニトロベラトルアルデヒド(6-nitroveratraldehyde)(1.2kg、5.907モル)を添加した後、反応器の温度を80℃に昇温させて6時間攪拌した。薄膜クロマトグラフィー(展開溶媒:クロロホルム/メタノール=15/1)で反応が完結したことを確認した後、反応混合物を常温に冷却させた。その結果得られた固体を濾過し、エタノール12.5Lで洗浄した後、40℃の乾燥オーブンで熱風乾燥して標題化合物を得た(1.47kg、99.6%)。
【0053】
H−NMR(CDCl)d:8.48(s,1H),8.08(s,1H),7.89(d,2H),7.59(s,1H),7.42(s,1H),7.33(d,2H),4.02(s,3H),3.98(s,3H),2.44(s,3H)。
【0054】
ステップ3)4−オキソ−4H−クロメン−2−カルボチオン酸S−ベンゾチアゾール−2−イルエステル
反応器にクロモン−2−カルボン酸(700g、3.68モル)、2,2’−ジチオビス−ベンゾチアゾール(1.47kg、4.42モル)、トリフェニルホスフィン(1.16kg、4.42モル)及びジクロロメタン14.7Lを入れて攪拌した。その結果得られた反応混合物に、トリエチルアミン(616mL、4.42モル)をジクロロメタン2Lに溶解させて製造した溶液を徐々に添加して6時間攪拌した。反応が完結すると、その結果得られた混合物を濾過し、アセトン4Lで洗浄して、40℃の乾燥オーブンで熱風乾燥して標題化合物を得た(0.99kg、80%)。
【0055】
H−NMR(CDCl)d:8.30(d,1H),8.16(d,1H),8.01(d,1H),7.88(t,1H),7.70(d,1H),7.61−7.31(m,3H),7.15(s,1H)。
【0056】
ステップ4)2−(4−(5−(4,5−ジメトキシ−2−ニトロフェニル)−2H−テトラゾール−2−イル)フェンエチル)−6,7−ジメトキシ−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン
反応器(1)に前記ステップ1−2)で得た4−(2−(6,7−ジメトキシ−3,4−ジヒドロイソキノリン−2(1H)−イル)−エチル)−ベンゼンアミン(1.0kg、3.2モル)を入れて、ここに50%エタノール水容液3L及び塩酸(850mL、12.5モル)を添加した後、0℃で攪拌した。その結果得られた混合溶液に、水330mLに亜硝酸ナトリウム(227g、3.3モル)を溶解して製造した溶液を添加して3時間攪拌した。
【0057】
20Lの反応器(2)に前記ステップ2)で製造した4,5−ジメトキシ−2−ニトロ−p−トルエンスルホニルヒドラゾン(1.2kg、3.2モル)及びピリジン12Lを入れて0℃で冷却した後、ここに反応器(1)の混合溶液を徐々に添加して常温で6時間攪拌した。薄膜クロマトグラフィー(展開溶媒:クロロホルム/メタノール=15/1)で反応が完結したことを確認した後、反応器(2)にジクロロメタン12L及び水12Lを入れて抽出した。分離された有機層を2.5N塩酸18Lで3回洗浄した後、重炭酸ナトリウム溶液で再び洗浄し、有機層を乾燥して減圧下に蒸留した。その結果得られた残渣にメタノール10Lを入れて、4時間攪拌した。その結果得られた混合物を濾過して40℃の乾燥オーブンで熱風乾燥して標題化合物を得た(1.08kg、62%)。
【0058】
H−NMR(CDCl)d:8.08(d,2H),7.66(s,1H),7.45(d,2H),7.32(s,1H),6.59(d,2H),4.03(s,6H),3.85(s,6H),3.68(s,2H),3.01(m,2H),2.84(m,6H)。
【0059】
ステップ5)2−(2−(4−(2−(6,7−ジメトキシ−3,4−ジヒドロイソキノリン−2(1H)−イル)エチル)フェニル)−2H−テトラゾール−5−イル)−4,5−ジメトキシベンゼンアミン
反応器に鉄(433g、7.76モル)及び50%酢酸水容液5.4Lを入れて80℃で1時間攪拌した。その結果得られた混合物に前記ステップ4)で製造した2−(4−(5−(4,5−ジメトキシ−2−ニトロフェニル)−2H−テトラゾール−2−イル)フェンエチル)−6,7−ジメトキシ−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン(1.06kg、1.94モル)を2時間に亘って徐々に添加して1時間攪拌した。薄膜クロマトグラフィー(展開溶媒:クロロホルム/メタノール=15/1)で反応が完結したことを確認した後、反応器の温度を室温に徐々に冷却して、前記反応器にクロロホルム5.3L及び水2.4Lを入れてその結果得られた混合物をセライトパッドを通して濾過した。その結果得られた有機層を集めた後、ここに飽和重炭酸ナトリウム溶液6.6Lを徐々に添加しながら攪拌した。その結果得られた有機層を除去して、水層をクロロホルム1.25Lで抽出した。その結果得られた有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥して、減圧蒸留して溶媒を除去した後、得られた残渣にメタノール10.6Lを入れて攪拌した。その結果得られた混合物を濾過し、40℃の乾燥オーブンで熱風乾燥して標題化合物を得た(0.87kg、87%)。
【0060】
H−NMR(CDCl)d:8.14(d,2H),7.75(s,1H),7.49(d,2H),6.63(d,2H),6.40(s,1H),5.34(d,2H),3.97(d,6H),3.89(s,6H),3.72(s,2H),3.06(t,2H),2.91−2.84(m,6H)。
【0061】
ステップ6)N−(2−(2−(4−(2−(6,7−ジメトキシ−3,4−ジヒドロイソキノリン−2(1H)−イル)エチル)フェニル)−2H−テトラゾール−5−イル)−4,5−ジメトキシフェニル)−4−オキソ−4H−クロメン−2−カルボキサミド
反応器に前記ステップ5)で得た2−(2−(4−(2−(6,7−ジメトキシ−3,4−ジヒドロイソキノリン−2(1H)−イル)エチル)フェニル)−2H−テトラゾール−5−イル)−4,5−ジメトキシベンゼンアミン(850g、1.6モル)、前記ステップ3)で得た4−オキソ−4H−クロメン−2−カルボチオン酸S−ベンゾチアゾール−2−イルエステル(723g、2.1モル)及びジクロロメタン17Lを入れて常温で6時間攪拌した。薄膜クロマトグラフィー(展開溶媒:クロロホルム/メタノール=15/1)で反応器内の反応が完結したことを確認した後、ここにメタノール1.1Lを先に入れ、次いで95%アセトン水溶液35.7Lを入れた後、常温で16時間攪拌した。その結果得られた混合物を濾過し、アセトン4.3Lで洗浄した後、40℃の乾燥オーブンで熱風乾燥して標題化合物を得た(1.10kg、97%)。
【0062】
H−NMR(CDCl)d:12.53(s,1H),8.60(s,1H),8.23(d,1H),8.14(d,2H),7.77(d,2H),7.74(s,1H),7.50−7.44(m,3H),7.26(d,2H),6.60(d,2H),4.01(s,6H),3.87(s,6H),3.70(s,2H),3.08(t,2H),3.02−2.83(m,6H)。
【0063】
ステップ7)N−(2−(2−(4−(2−(6,7−ジメトキシ−3,4−ジヒドロイソキノリン−2(1H)−イル)エチル)フェニル)−2H−テトラゾール−5−イル)−4,5−ジメトキシフェニル)−4−オキソ−4H−クロメン−2−カルボキサミドメタンスルホン酸塩
反応器内で、前記ステップ6)で得たN−(2−(2−(4−(2−(6,7−ジメトキシ−3,4−ジヒドロイソキノリン−2(1H)−イル)エチル)フェニル)−2H−テトラゾール−5−イル)−4,5−ジメトキシフェニル)−4−オキソ−4H−クロメン−2−カルボキサミド(1.06kg、1.54モル)をクロロホルム18.1L及びメタノール1.06Lを溶解させた後濾過した。ここに、メタンスルホン酸(102mL、1.57モル)を酢酸エチル300mLに溶解させて製造した溶液を30分に亘って添加した。その結果得られた混合物に酢酸エチル3.95Lを1時間に亘って添加して、常温で16時間攪拌した。その結果得られた混合物を濾過した後、酢酸エチル1Lで洗浄し、40℃の乾燥オーブンで熱風乾燥した。
【0064】
このように得られた化合物をクロロホルムを用いて1次再結晶した。生成された固体を濾過し、酢酸エチルで洗浄した後、40℃の乾燥オーブンで熱風乾燥した。次いで、乾燥された固体をジクロロメタン/メタノール/酢酸エチル=17/1/4の割合の溶媒を用いて2次再結晶して結晶状固体を得た。残留溶媒、例えばジクロロメタンを除去するために、これを95%アセトン水溶液中で16時間攪拌した後、濾過して40℃の乾燥オーブンで熱風乾燥して標題化合物を得た(0.84kg、70%)。
【0065】
Mass(ESI)calcd for C3836
m/z688.26(M+H)+;found,m/z689.32(M+H)+
H−NMR(CDCl)d:12.43(s,1H),11.66(s,1H),8.49(s,1H),8.17(d,1H),8.06(d,2H),7.79− 7.67(m,2H),7.54(d,3H),7.46(t,1H),7.14(s,1H),6.67(d,2H),4.78(d,1H),4.19−4.12(m,1H),3.96−3.87(m,12H),3.56−3.36(m,6H),3.04(d,1H),2.78(s,3H)。
【0066】
比較例
パラジウム及び水素を用いた還元反応、及び1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDCl)及び4−ジメチルアミノピリジン(DMAP)の縮合剤を使用したアシル化反応を含んでいる国際特許公開第WO 2005/033097号に記載された方法によってテトラゾールメタンスフホン酸塩を製造した。
【0067】
実験例
金属及び酸を用いた還元反応による本発明の製造方法が、従来のパラジウム及び水素を用いた還元反応に比べて優れていることを確認するために、前記実施例及び比較例によって得られた化合物の純度、安全性及び経済性を評価してその結果を下記表1に示した。この時、比較例に対する結果は、アルドリッチ(Aldrich)社の2009−2010年度のカタログを参照した。
【0068】
下記表1に示したように、比較例の方法と比較して、本発明の製造方法によれば純度は同一であるが、爆発の危険なく、一層安全且つ経済的な方法で目的化合物を製造できることが分かる。
【表1】

【0069】
また、縮合剤として1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カボジイミド塩酸塩(EDCl)及び4−ジメチルアミノピリジン(DMAP)を使用した比較例の方法と、本発明の化学式(II)の化合物を用いた実施例の方法とを比較するために、前記実施例及び比較例で得た化学式(IV)の化合物の収率、純度及び精製方法を下記表2に示した。
【0070】
下記表2に示したように、本発明の方法で製造された化学式(IV)の化合物は、比較例の方法で製造された化合物に比べて収率及び純度に優れており、また、本発明は、別途のカラム精製なく再結晶のみで純粋化合物を精製することができることが分かる。
【表2】

【0071】
以上、本発明を、前記実施例を中心にして説明したが、これは例示的なものに過ぎず、これから本発明の技術分野における通常の知識を有する者に自明な多様な変形及び均等な他の実施例を以下に添付した特許請求の範囲の範疇内で実施することができるという事実を理解できるはずである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式(II)の化合物と化学式(III)の化合物とをアシル化反応させて下記化学式(IV)の化合物を製造する段階と、
前記化学式(IV)の化合物にメタンスルホン酸を添加する段階と、
を含む、下記化学式(I)のテトラゾールメタンスルホン酸塩の製造方法。
【化1】

【請求項2】
前記アシル化反応がジクロロメタン、テトラヒドロフラン、エチルエステル、アセトン、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド及びこれらの混合物からなる群より選択される極性非プロトン溶媒中で行なわれることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記化学式(II)の化合物が下記化学式(V)の化合物と下記化学式(VI)の化合物とをトリフェニルホスフィン及び塩基の存在下で反応させて製造されることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【化2】

【請求項4】
前記塩基が、トリエチルアミン、ピリジン、イミダゾール、ジイソプロピルエチルアミン、4−ジメチルアミノピリジン及びこれらの混合物からなる群より選択された塩基であることを特徴とする請求項3に記載の製造方法。
【請求項5】
前記化学式(V)の化合物と化学式(VI)の化合物の反応が、ジクロロメタン、ジエチルエーテル、エチルエステル、テトラヒドロフラン及びこれらの混合物からなる群より選択される有機溶媒中で行われることを特徴とする請求項3に記載の製造方法。
【請求項6】
前記化学式(V)の化合物と化学式(VI)の化合物の反応が20〜25℃の反応温度で1〜3時間攪拌することにより行われることを特徴とする請求項3に記載の製造方法。
【請求項7】
前記化学式(III)の化合物が
下記化学式(VII)の化合物と下記化学式(VIII)の化合物とを還化反応させて下記化学式(IX)の化合物を製造する段階と、
前記化学式(IX)の化合物を金属及び酸を用いて還元反応させる段階とを含む方法により製造されることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【化3】

【請求項8】
前記金属が、鉄、スズ、亜鉛及びニッケルからなる群より選択される金属であることを特徴とする請求項7に記載の製造方法。
【請求項9】
前記金属が化学式(IX)の化合物1当量を基準に5〜15当量で使用されることを特徴とする請求項7に記載の製造方法。
【請求項10】
前記酸が、塩酸、硝酸、硫酸、酢酸及びこれらの混合物からなる群より選択されたことを特徴とする請求項7に記載の製造方法。
【請求項11】
前記酸が化学式(IX)の化合物1gに対して2〜5mLの量で使用されることを特徴とする請求項7に記載の製造方法。
【請求項12】
前記化学式(VII)の化合物が下記化学式(X)の化合物と下記化学式(XI)の化合物とを反応させて下記化学式(XII)の化合物を製造した後、製造された化学式(XII)の化合物を金属及び酸を用いて還元反応させて製造されることを特徴とする請求項7に記載の製造方法。
【化4】

【請求項13】
前記化学式(XII)の化合物の還元反応に使用された金属が、鉄、スズ、亜鉛及びニッケルからなる群より選択された金属であることを特徴とする請求項12に記載の製造方法。
【請求項14】
前記化学式(XII)の化合物の還元反応に使用された金属が化学式(XII)の化合物1当量を基準に2〜10当量で使用されることを特徴とする請求項12に記載の製造方法。
【請求項15】
前記化学式(XII)の化合物の還元反応に使用された酸が、塩酸、硝酸、硫酸、酢酸及びこれらの混合物からなる群より選択された酸であることを特徴とする請求項12に記載の製造方法。
【請求項16】
前記化学式(XII)の化合物の還元反応に使用された酸が化学式(XII)の化合物1当量を基準に0.1〜0.5当量で使用されることを特徴とする請求項12に記載の製造方法。
【請求項17】
前記化学式(VIII)の化合物は、下記化学式(XIII)の化合物と下記化学式(XIV)の化合物とを反応させて製造されることを特徴とする請求項7に記載の製造方法。
【化5】

【請求項18】
下記化学式(II)の化合物。
【化6】

【請求項19】
下記化学式(V)の化合物と下記化学式(VI)の化合物とをトリフェニルホスフィン及び塩基の存在下に反応させる段階を含む、下記化学式(II)の化合物の製造方法。
【化7】

【請求項20】
前記塩基がトリエチルアミン、ピリジン、イミダゾール、ジイソプロピルエチルアミン及び4−ジメチルアミノピリジンからなる群より選択された塩基であることを特徴とする請求項19に記載の製造方法。
【請求項21】
前記反応がジクロロメタン、ジエチルエーテル、エチルエステル、テトラヒドロフラン及びこれらの混合物からなる群より選択された有機溶媒中で行われることを特徴とする請求項19に記載の製造方法。
【請求項22】
前記反応が20〜25℃の反応温度で1〜3時間攪拌することにより行われることを特徴とする請求項19に記載の製造方法。

【公表番号】特表2013−517267(P2013−517267A)
【公表日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−548895(P2012−548895)
【出願日】平成23年1月14日(2011.1.14)
【国際出願番号】PCT/KR2011/000291
【国際公開番号】WO2011/087316
【国際公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【出願人】(510316693)ハンミ・サイエンス・カンパニー・リミテッド (10)
【Fターム(参考)】