説明

テトラハイドロペンタレン型酸二無水物、その製造法及びポリイミド

【課題】有機溶媒に対する溶解性に優れるポリイミド、そのモノマーである酸二無水物化合物及びその製造法を提供すること。
【解決手段】下記式[1]で表される酸二無水物化合物、その製造方法及びポリイミド。
【化1】


(式中、Rは、炭素数1〜20のアルキル基を表す。)
で表されるテトラアルキル2,5−ビス(1,3−ジオキソオクタハイドロイソベンゾフラン−5−カルボニルオキシ)−1,4,7,8−テトラハイドロペンタレン−1,3,4,6−テトラカルボキシレート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テトラハイドロペンタレン型酸二無水物及びその製造法に関し、さらに詳述すると、例えば、電子材料用として好適なポリイミドおよびその原料モノマーであるテトラヒドロペンタレン型酸二無水物に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ポリイミド樹脂はその特長である高い機械的強度、耐熱性、絶縁性、耐溶剤性のために、液晶表示素子や半導体における保護材料、絶縁材料、カラーフィルターなどの電子材料として広く用いられている。また、最近では光導波路用材料等の光通信用材料としての用途も期待されている。
【0003】
近年、この分野の発展は目覚ましく、それに対応して、用いられる材料に対しても益々高度な特性が要求される様になっている。即ち、単に耐熱性、耐溶剤性に優れるだけでなく、用途に応じた性能を多数合わせもつことが期待されている。
【0004】
しかしながら、ポリイミド、特に全芳香族ポリイミド樹脂の代表例として多用されているピロメリット酸無水物(PMDA)と4,4’−ジオキシアニリン(ODA)から製造されるポリイミド(カプトン:商品名)においては、溶解性が乏しく溶液として用いることは出来ないため、ポリアミック酸と呼ばれる前駆体を経て、加熱し脱水反応を行うことで得ている。
【0005】
また溶媒溶解性を有するポリイミド(以下可溶性ポリイミド)においては、従来多用されて来た溶解度の高いN−メチル−2−ピロリドン(NMP)やγ―ブチロラクトン等のアミド系やラクトン系有機溶媒は高沸点のため、溶媒を除去するためには高温焼成が避けられなかった。
【0006】
液晶表示素子分野では、近年プラスチック基板を用いたフレキシブル液晶表示素子の研究開発が行われており、高温焼成になると素子構成成分の変質が問題になってくるため、近年低温焼成が望まれるようになった。
【0007】
一方で、高い溶媒溶解性を示すポリアミック酸では十分な液晶表示特性が得られず、イミド化に起因した体積変化も起こりやすいという問題点もあり沸点の低い有機溶媒類に対して可溶であるポリイミドが望まれるようになってきた。
【0008】
そこで、その解決策として、有機溶媒溶解性に有利な脂環式ジカルボン酸無水物を利用したテトラカルボン酸二無水物の合成法が考えられる。その一例として、無水核水添トリメリット酸クロライドとヒドロキノンから得られるジエステル型酸二無水物が知られている(特許文献1)。しかし、「この酸二無水物と4,4’−オキシジアニリン(ODA)から得られるポリイミドは、シクロヘキサノンに溶解せず、加工性に劣るものである。」との記載があった(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】WO2006−129771号公報
【特許文献2】特開2008−163088号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、沸点の低い有機溶媒類に対しても溶解性に優れるポリイミドを与え得るそのモノマーとしてのテトラカルボン酸二無水物及びその製造法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、ビシクロオクタジエン(テトラハイドロペンタレン)環に複数のエステル置換基を導入した酸二無水物モノマーの製造法を確立し、当該酸二無水物モノマーを用いて製造されたポリイミドは、各種有機溶媒に対する溶解性が改善されることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、
1. 式[1]
【0012】
【化1】

【0013】
(式中、Rは、炭素数1〜20のアルキル基を表す。)
で表されるテトラアルキル2,5−ビス(1,3−ジオキソオクタハイドロイソベンゾフラン−5−カルボニルオキシ)−1,4,7,8−テトラハイドロペンタレン−1,3,4,6−テトラカルボキシレート、
2.前記Rが、メチル基またはエチル基である1記載のテトラアルキル2,5−ビス(1,3−ジオキソオクタハイドロイソベンゾフラン−5−カルボニルオキシ)−1,4,7,8−テトラハイドロペンタレン−1,3,4,6−テトラカルボキシレート、
3.式[2]
【0014】
【化2】

【0015】
(式中、Rは、前記と同じ意味を表す。)
で表されるテトラアルキル2,5−ジハイドロ−1,4,7,8−テトラハイドロペンタレン−1,3,4,6−テトラカルボキシレートを塩基の存在下、式[3]
【0016】
【化3】

【0017】
(式中、Xはハロゲン原子を表す。)
で表される無水核水添トリメリット酸ハライドと反応して、式[1]
【0018】
【化4】

【0019】
(式中、Rは、前記と同じ意味を表す。)
で表されるテトラアルキル2,5−ビス(1,3−ジオキソオクタハイドロイソベンゾフラン−5−カルボニルオキシ)−1,4,7,8−テトラハイドロペンタレン−1,3,4,6−テトラカルボキシレートを得ることを特徴とする製造法、
4.前記Rが、メチル基またはエチル基である3記載のテトラアルキル2,5−ビス(1,3−ジオキソオクタハイドロイソベンゾフラン−5−カルボニルオキシ)−1,4,7,8−テトラハイドロペンタレン−1,3,4,6−テトラカルボキシレートを得ることを特徴とする製造法、
5.式[4]で表される繰り返し単位を含有するポリアミック酸、
【0020】
【化5】

【0021】
(式中、Rは、前記と同じ意味を表し、Aは、2価の有機基を表し、nは、2以上の整数を表す。)
6.前記Rが、メチル基またはエチル基である5記載のポリアミック酸、
7.式[5]で表される繰り返し単位を含有するポリイミド、
【0022】
【化6】

【0023】
(式中、R、A及びnは、2以上の前記と同じ意味を表す。)
8.前記Rが、メチル基またはエチル基である7記載のポリイミドを提供する。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、各種有機溶媒に対する溶解性に優れるポリイミドへの誘導が期待されるエステル基置換テトラカルボン酸二無水物及びその製造法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明についてさらに詳しく説明する。
上記式[1]で表されるテトラアルキル2,5−ビス(1,3−ジオキソオクタハイドロイソベンゾフラン−5−カルボニルオキシ)−1,4,7,8−テトラハイドロペンタレン−1,3,4,6−テトラカルボキシレート(以下、TAFPと略記する)の製造法は、下記の一連の反応スキームで表される。
【0026】
【化7】

【0027】
(式中、Rは、炭素数1〜20のアルキル基を表し、Xはハロゲン原子を表す。)
すなわち、テトラアルキル2,5−ジハイドロオキシ−1,4,7,8−テトラハイドロペンタレン−1,3,4,6−テトラカルボキシレート(以下、TAHPと略記する)を塩基の存在下、無水核水添トリメリット酸ハライド(以下、DOCHと略記する)と反応させて、TAFPが製造できる。
【0028】
上記式において、炭素数1〜20のアルキル基としては、直鎖及び分岐の具体例としては、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、s−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、1−メチル−n−ブチル、2−メチル−n−ブチル、3−メチル−n−ブチル、1,1−ジメチル−n−プロピル、n−ヘキシル、1−メチル−n−ペンチル、2−メチル−n−ペンチル、1,1−ジメチル−n−ブチル、1−エチル−n−ブチル、1,1,2−トリメチル−n−プロピル、n−ヘプチル、n−オクチル、n−ノニル、n−デシル、n−ウンデシル、n−ドデシル、n−トリデシル、n−テトラデシル、n−ペンタデシル、n−ヘキサデシル、n−ヘプタデシル、n−オクタデシル、n−ノナデシル及びn−エイコシル基等が一例として挙げられる。
なお、nはノルマルを、iはイソを、sはセカンダリーを、tはターシャリーを、それぞれ表す。
【0029】
塩基としては、ピリジン、トリエチルアミン及びトリプロピルアミン等の有機塩基または炭酸リチウム、炭酸ナトリウム及び炭酸カリウム等のアルカリ金属の炭酸塩等を用いることができるが、特には、ピリジン及びトリエチルアミンが好ましい。
【0030】
その使用量は、TAHPに対し、2.0〜3.0モル倍が好ましく、2.0〜2.5モル倍がより好ましく、2.0〜2.3モル倍が特に好ましい。
【0031】
反応溶媒としては、テトラヒドロフラン(THF)、1,4−ジオキサン及びN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)等が好ましい。
【0032】
それらの使用量は、TAHPに対し3〜50質量倍が好ましく、5〜30質量倍がより好ましい。
【0033】
反応温度は、−30〜150℃程度であるが、0〜120℃が好ましい。
【0034】
反応後は、生成した塩をろ過後ろ液を濃縮して得られたガム状物に、Rがメチルの場合は、酢酸エチルを加えて加温すると固体が遊離してくる。このスラリー液を室温に戻してから水を加えて攪拌してからろ過により固体を分離した後減圧乾燥することにより、目的のTAFPが得られる。
【0035】
本反応は、常圧または加圧下で行うことができ、また回分式でも連続式でもよい。
【0036】
ここで、原料のTAHPは、Rがメチルの場合は、公知の次の反応スキームで表される製造法で合成される。(Organic Syntheses, 64, 27-38 (1986);Tetrahedron Letters, 49 (2008) 3056-3059)
【0037】
【化8】

【0038】
即ち、ジメチル1,3−アセトンジカルボキシレート(DMAC)とグリオギザール(GO)を水酸化ナトリウム存在下で反応させて、テトラメチル2,5−ジソジウムオキシ−1,4,7,8−テトラハイドロペンタレン−1,3,4,6−テトラカルボキシレート(以下、TMSPと略記する)を得た後、塩酸で酸性にすることによりテトラメチル2,5−ジハイドロオキシ−1,4,7,8−テトラハイドロペンタレン−1,3,4,6−テトラカルボキシレート(以下、TMHPと略記する)が得られる。
また、Rがエチルの場合は、公知の次の反応スキームで表される製造法で合成される。(特開昭56−127328)
【0039】
【化9】

【0040】
即ち、ジエチル1,3−アセトンジカルボキシレートとグリオギザールから公知の製造法でテトラエチル2,5−ジハイドロオキシ−1,4,7,8−テトラハイドロペンタレン−1,3,4,6−テトラカルボキシレート(以下、TEHPと略記する)が合成される。
【0041】
Rが他の置換基である場合も、上記の方法で合成が可能である。
【0042】
もう一方の原料は、無水核水添トリメリット酸ハライド(DOCH)であり、Xは、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素の各原子を表す。これらの中で市販の無水核水添トリメリット酸クロライドがそのまま使用できる。
【0043】
その使用量は、TAHPに対し、2.0〜3.0モル倍が好ましく、2.0〜2.5モル倍がより好ましい。
【0044】
以上説明した本発明のテトラカルボン酸二無水物であるTAFPは、ジアミンとの重縮合反応によりポリアミック酸とした後、熱または脱水剤を用いた脱水閉環反応により対応するポリイミドに導くことができる。
【0045】
本発明のテトラカルボン酸二無水物であるTAFPは、ジアミンの種類により有機溶媒溶解性が異なるポリイミドを与え、低沸点有機溶媒に対しても優れた溶解性を有するポリイミドを与える。
【0046】
ジアミンとしては、特に限定されるものではなく、従来ポリイミド合成に用いられている各種ジアミンを用いることができる。その具体例としては、p−フェニレンジアミン(以下、p−PDAと略記する)、m−フェニレンジアミン(以下、m−PDAと略記する)、2,5−ジアミノトルエン、2,6−ジアミノトルエン、4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ジアミノビフェニル、4,4’−メチレンジアニリン(以下、MDAと略記する)、4,4’−オキシジアニリン(以下、ODAと略記する)、2,2’−ジアミノジフェニルプロパン、ビス(3,5−ジエチル−4−アミノフェニル)メタン、ジアミノジフェニルスルホン、ジアミノベンゾフェノン、ジアミノナフタレン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェニル)ベンゼン、ビス(4−アミノフェノキシ)ペンタン、9,10−ビス(4−アミノフェニル)アントラセン、4,4’−(1,3−フェニレンジオキシ)ジアニリン(以下、PODAと略記する)、3,5−ジアミノ−1,6−ジメトキシベンゼン、3,5−ジアミノ−1,6−ジメトキシトルエン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ジフェニルスルホン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2’−トリフルオロメチル−4,4’−ジアミノビフェニル等の芳香族ジアミン;4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)(以下、MBCAと略記する)、4,4’−メチレンビス(2−メチルシクロヘキシルアミン)、ビス(4−アミノシクロヘキシル)エーテル、ビス(4−アミノ−3−メチルシクロヘキシル)エーテル、ビス(4−アミノシクロヘキシル)スルフィド、ビス(4−アミノ−3−メチルシクロヘキシル)スルフィド、ビス(4−アミノシクロヘキシル)スルホン、ビス(4−アミノ−3−メチルシクロヘキシル)スルホン、2,2−ビス(4−アミノシクロヘキシル)プロパン、2,2−ビス(4−アミノ−3−メチルシクロヘキシル)プロパン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)ジメチルシラン、ビス(4−アミノ−3−メチルシクロヘキシル)ジメチルシラン等の脂環式ジアミン;テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン及び3,3’−(ジメチルシランジイル)ビス(オキシ)ジプロパン−1−アミン(MSPA)等の脂肪族ジアミン等が挙げられる。これらのジアミンは、単独で、または2種類以上を混合して用いることができる。
【0047】
なお、上記式[4]および[5]におけるAは、使用したジアミンに由来する2価の有機基である。
【0048】
本発明においては、使用されるテトラカルボン酸二無水物の全モル数のうち、少なくとも10mol%は式[1]のTAFPであることが好ましい。
【0049】
なお、通常のポリイミドの合成に使用されるテトラカルボン酸化合物およびその誘導体を同時に用いることもできる。
【0050】
その具体例としては、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸、2,3,4,5−テトラヒドロフランテトラカルボン酸、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸、3,4−ジカルボキシ−1−シクロヘキシルコハク酸、3,4−ジカルボキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−1−ナフタレンコハク酸、ビシクロ[3.3.0]オクタン−2,4,6,8−テトラカルボン酸等の脂環式テトラカルボン酸およびこれらの酸二無水物、並びにこれらのジカルボン酸ジ酸ハロゲン化物等が挙げられる。
また、ピロメリット酸、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸、2,3,6,7−アントラセンテトラカルボン酸、1,2,5,6−アントラセンテトラカルボン酸、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ジメチルシラン、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ジフェニルシラン、2,3,4,5−ピリジンテトラカルボン酸、2,6−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ピリジン等の芳香族テトラカルボン酸およびこれらの酸二無水物、並びにこれらのジカルボン酸ジ酸ハロゲン化物等も挙げられる。なお、これらのテトラカルボン酸化合物は、それぞれ単独で用いても、2種以上混合して用いてもよい。
【0051】
本発明のポリアミック酸を得る方法は特に限定されるものではなく、テトラカルボン酸二無水物及びその誘導体とジアミンとを公知の手法によって反応、重合させればよい。
【0052】
ポリアミック酸を合成する際の全テトラカルボン酸二無水物化合物のモル数と全ジアミン化合物のモル数との比は、カルボン酸化合物/ジアミン化合物=0.8〜1.2であることが好ましい。通常の重縮合反応と同様に、このモル比が1に近いほど生成する重合体の重合度は大きくなる。重合度が小さすぎるとポリイミドを製膜した際の強度が不十分となり、また重合度が大きすぎるとポリイミド塗膜を形成する際の作業性が悪くなる場合がある。
【0053】
したがって、本反応における生成物の重合度は、ポリアミック酸溶液の還元粘度換算で、0.05〜5.0dl/g(30℃のN−メチル−2−ピロリドン中、濃度0.5g/dl)が好ましい。
【0054】
ポリアミック酸合成に用いられる溶媒としては、例えば、N−メチル−2−ピロリドン(以下、NMPと略記する)、N,N−ジメチルホルムアミド(以下、DMFと略記する)、N,N−ジメチルアセトアミド(以下、DMAcと略記する)、m−クレゾール、N−メチルカプロラクタム、ジメチルスルホキシド、テトラメチル尿素、ピリジン、ジメチルスルホン、ヘキサメチルホスホルアミド、γ−ブチロラクトン等が挙げられる。これらは、単独で使用しても、混合して使用してもよい。さらに、ポリアミック酸を溶解しない溶媒であっても、均一な溶液が得られる範囲内で上記溶媒に加えて使用してもよい。
【0055】
重縮合反応の温度は、−20〜150℃、好ましくは−5〜100℃の任意の温度を選択することができる。
【0056】
本発明のポリイミドは、以上のようにして合成したポリアミック酸を、加熱により脱水閉環(熱イミド化)して得ることができる。なお、この際、ポリアミック酸を溶媒中でイミドに転化させ、溶剤可溶性のポリイミドとして用いることも可能である。
【0057】
また、公知の脱水閉環触媒を使用して化学的に閉環する方法も採用することができる。
【0058】
加熱による方法は、100〜350℃、好ましくは120〜300℃の任意の温度で行うことができる。
【0059】
化学的に閉環する方法は、例えば、ピリジンやトリエチルアミン等と、無水酢酸等との存在下で行うことができ、この際の温度は、−20〜200℃の任意の温度を選択することができる。
【0060】
このようにして得られたポリイミド溶液は、そのまま使用することもでき、また、メタノール、エタノール及び水等の貧溶媒を加えてポリイミドを沈殿させ、これを単離してポリイミド粉末として、あるいはそのポリイミド粉末を適当な溶媒に再溶解させて使用することができる。
【0061】
再溶解用溶媒は、得られたポリイミドを溶解させるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、m−クレゾール、2−ピロリドン、NMP、N−エチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドン、DMAc、DMF、γ−ブチロラクトン、1,4−ジオキサン、THF、アセトニトリル、酢酸エチル及びクロロホルム等が挙げられる。
【0062】
また、単独ではポリイミドを溶解しない溶媒であっても、溶解性を損なわない範囲であれば上記溶媒に加えて使用することができる。その具体例としては、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、エチルカルビトール、ブチルカルビトール、エチルカルビトールアセテート、エチレングリコール、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール、1−ブトキシ−2−プロパノール、1−フェノキシ−2−プロパノール、プロピレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールジアセテート、プロピレングリコール−1−モノメチルエーテル−2−アセテート、プロピレングリコール−1−モノエチルエーテル−2−アセテート、ジプロピレングリコール、2−(2−エトキシプロポキシ)プロパノール、乳酸メチルエステル、乳酸エチルエステル、乳酸n−プロピルエステル、乳酸n−ブチルエステル、乳酸イソアミルエステル等が挙げられる。
【0063】
以上のようにして調製したポリアミック酸(ポリイミド前駆体)溶液を基板に塗布し、加熱により溶媒を蒸発させながら脱水閉環させることで、あるいは、ポリイミド溶液を基板に塗布して加熱により溶媒を蒸発させることで、ポリイミド膜を製造することができる。
【0064】
この際、加熱温度は、通常100〜300℃程度である。
【0065】
なお、ポリイミド膜と基板との密着性を更に向上させる目的で、ポリアミック酸溶液やポリイミド溶液に、カップリング剤等の添加剤を加えてもよい。
【実施例】
【0066】
以下、参考例、実施例および比較例を挙げて、本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。実施例における各物性の測定装置は以下のとおりである。
[1][1H NMR]
機種:Varian社製NMR System 400NB(400MHz)
測定溶媒:CDCl3、DMSO−d6
標準物質:tetramethylsilane(TMS)
[2][IR]
装置:Nicolet 6700 FT-IR(Thermo)
測定法:Diamond-ATR法 分解能:4 cm-1(測定範囲:400〜4000 cm-1)
サンプルスキャン:50回 バックグラウンドスキャン:50回
[3] [融点(m.p.)][軟化点(PMT)]
機種:微量融点測定装置(MP−S3)(ヤナコ機器開発研究所社製))
[4]数平均分子量および重量平均分子量の測定:GPC(Gel Permeation Chromatography)法
ポリマーの重量平均分子量(以下Mwと略す)と分子量分布は、日本分光(株)製GPC装置(Shodex(登録商標)カラムKF803LおよびKF805L)を用い、溶出溶媒としてDMFを流量1mL/分、カラム温度50℃の条件で測定した。なお、Mwはポリスチレン換算値とした。
[参考例1] DOCCの合成
【0067】
【化10】

【0068】
300mLの四つ口反応フラスコにDOCA20.8g(105mmol)及びTHF125gを仕込み、氷浴上で5℃に冷却しながらマグネティクスタラーで攪拌・溶解させた。続いて、DMF60mgを添加した後、オキザリルクロライド16.5g(130mmol)を10分かけて滴下した。更に氷浴を外して20〜25℃で1時間攪拌した。その後、この反応液を60℃で減圧濃縮・乾燥することにより淡黄色油状物23.6gが得られた。この生成物は、H NMRから目的の1,3−ジオキソオクタヒドロイソベンゾフラン−5−カルボニルクロライド(DOCC)であることを確認した。
実施例1 TMFPの製造
【0069】
【化11】

【0070】
300mLの四つ口反応フラスコに公知の製法(Organic Syntheses, 64, 27-38 (1986))で得られたTMHO18.5g(50mmol)及びTHF111g(6質量倍)を仕込み、20℃で溶解後、氷冷5℃下でマグネティクスタラーで攪拌しながらピリジン9.49g(120mmol)を添加した。続いて参考例1で得られた無水核水添トリメリット酸クロライド(DOCC)23.6g(105mmol)を30分かけて滴下した。直ぐに沈殿が生成し始め、氷浴を外して25〜28℃の室温で23時間攪拌し反応を停止させた。
続いて、ろ過後ろ液を濃縮するとガム状物20.2gが得られた。この粗物に酢酸エチル105gを加えて75℃で攪拌すると固体が遊離しスラリー化した。室温の水浴で冷却後水20gを加えて15分攪拌してからろ過し、ケーキを酢酸エチルと水で洗浄後、80℃で2時間減圧乾燥すると淡灰色結晶8.92g(収率24.4%)が得られた。
この結晶は、H NMR及びIRから目的のテトラメチル2,5−ビス(1,3−ジオキソオクタハイドロイソベンゾフラン−5−カルボニルオキシ)−1,4,7,8−テトラハイドロペンタレン−1,3,4,6−テトラカルボキシレート(TMFP)であることを確認した。
1H NMR ( DMSO-d6, δppm ) : 1.517-1.718 ( m, 4H ), 1.741-1.836 ( m, 2H ), 2.048-2.125 ( m, 2H ), 2.403 ( dd, J1=3.6 Hz, J2=14.4 Hz, 2H ), 2.499-2.556 ( m, 4H ),3.120-3.185 ( m, 2H ), 3.254 ( t, J=7.2 Hz, 2H ), 3.695 ( s, 6H ) , 3.732 ( s, 6H ), 3.790 ( t, J=3.2 Hz, 2H ), 4.167 ( s, 1H )
IR(cm-1):1765.6(環状酸無水物C=O), 1864.3(環状酸無水物C=O)
m.p.:155〜165℃
実施例2 TMFP−ODAポリアミック酸およびポリイミドの合成(1)
【0071】
【化12】

【0072】
28℃の室温に設置した攪拌機付き50mL四つ口反応フラスコに、実施例1で得られたTMFP0.812g(1.1mmol)およびNMP2.26gを仕込み、溶解させた。続いて、この溶液を攪拌中に、4,4’−オキシジアニリン(ODA)0.200g(1.0mmol)を添加した。3時間攪拌すると粘度が高くなったので、NMP1.69gを添加し固形分濃度を30質量%から20質量%に希釈した。更に、28℃で4時間攪拌して重合反応を終了させた。この固形分20質量%のポリアミック酸溶液の粘度は、81mPa・sであった。
この溶液に、NMP12gを加えて固形分6質量%のポリアミック酸溶液に希釈して、GPC測定した結果、数平均分子量(Mn)は6,464で、重量平均分子量(Mw)は11,290であり、Mw/Mnは1.75であった。
続いて、この固形分6質量%のポリアミック酸溶液に無水酢酸1.02g(10mmol)およびピリジン0.48g(6mmol)を加えて100℃で6時間攪拌した。室温に戻してから、水70mlの攪拌中に反応溶液を滴下し、さらに1時間攪拌して褐色固形物を析出させた。これを濾過後、水50mlで3回洗浄を繰り返してから、80℃で2時間減圧乾燥し、TMFP−ODAポリイミドの褐色粉末0.61g(収率68%)を得た。このポリイミドは、アセトニトリルに溶解後、ろ紙に滴下し溶媒を蒸発させた後365nmの光を照射すると淡黄色に発光した。
PMT:85〜88℃
実施例3 TMFP−ODAポリアミック酸およびポリイミドの合成(2)
【0073】
【化13】

【0074】
28℃の室温に設置した攪拌機付き50mL四つ口反応フラスコに、実施例1で得られたTMFP0.812g(1.1mmol)およびNMP4.05gを仕込み、溶解させた。続いて、この溶液を攪拌中に、4,4’−オキシジアニリン(ODA)0.200g(1.0mmol)を添加した。更に、28℃で22時間攪拌して重合反応を終了させた。この固形分20質量%のポリアミック酸溶液の粘度は、129mPa・sであった。
この溶液に、NMP12gを加えて固形分6質量%のポリアミック酸溶液に希釈して、GPC測定した結果、数平均分子量(Mn)は8,520で、重量平均分子量(Mw)は17,076であり、Mw/Mnは2.00であった。
続いて、この固形分6質量%のポリアミック酸溶液に無水酢酸1.02g(10mmol)およびピリジン0.48g(6mmol)を加えて100℃で6時間攪拌した。室温に戻してから、水70mlの攪拌中に反応溶液を滴下し、さらに1時間攪拌して褐色固形物を析出させた。これを濾過後、水50mlで3回洗浄を繰り返してから、80℃で2時間減圧乾燥し、TMFP−ODAポリイミドの褐色粉末0.52g(収率58%)を得た。このポリイミドは、アセトニトリルに溶解後、ろ紙に滴下し溶媒を蒸発させた後365nmの光を照射すると淡黄色に発光した。
PMT:103〜105℃
実施例4 TMFP−PODAポリアミック酸およびポリイミドの合成
【0075】
【化14】

【0076】
25℃の室温に設置した攪拌機付き50mL四つ口反応フラスコに、実施例1で得られたTMFP0.812g(1.1mmol)およびNMP4.42gを仕込み、溶解させた。続いて、この溶液を攪拌中に、4,4’−(1,3−フェニレンジオキシ)ジアニリン(PODA)0.292g(1.0mmol)実施例1で得られたTMPC1.80g(2.5mmol)を溶解させながら添加した。更に、28℃で6時間攪拌して重合反応を行い、固形分20質量%のポリアミック酸溶液を得た。この重合液の粘度は、152mPa・sであった。
この溶液に、NMP12.9gを加えて固形分6質量%のポリアミック酸溶液に希釈して、GPC測定した結果、数平均分子量(Mn)は8,492で、重量平均分子量(Mw)は18,343であり、Mw/Mnは2.16であった。
続いて、この固形分6質量%のポリアミック酸溶液に無水酢酸1.02g(10mmol)およびピリジン0.48g(6mmol)を加えて60℃で4時間30分攪拌した。室温に戻してから、水74mlの攪拌中に反応溶液を滴下し、さらに1時間攪拌して灰色固形物を析出させた。これを濾過後、水50mlで3回洗浄を繰り返してから、80℃で2時間減圧乾燥し、TMFP−PODAポリイミドの褐色粉末8.41g(収率59%)を得た。このポリイミドは、アセトニトリルに溶解後、ろ紙に滴下し溶媒を蒸発させた後365nmの光を照射すると淡青色に発光した。
PMT:85〜87℃
実施例5 TMFP−MDAポリアミック酸およびポリイミドの合成
【0077】
【化15】

【0078】
28℃の室温に設置した攪拌機付き50mL四つ口反応フラスコに、実施例1で得られたTMFP0.812g(1.1mmol)およびNMP4.04gを仕込み、溶解させた。続いて、この溶液を攪拌中に、4,4’−メチレンジアニリン(MDA)0.198g(1.0mmol)を添加した。更に、28℃で22時間攪拌して重合反応を終了させた。この固形分20質量%のポリアミック酸溶液の粘度は、81mPa・sであった。
この溶液に、NMP12gを加えて固形分6質量%のポリアミック酸溶液に希釈して、GPC測定した結果、数平均分子量(Mn)は7,071で、重量平均分子量(Mw)は13,023であり、Mw/Mnは1.84であった。
続いて、この固形分6質量%のポリアミック酸溶液に無水酢酸1.02g(10mmol)およびピリジン0.48g(6mmol)を加えて100℃で6時間攪拌した。室温に戻してから、水70mlの攪拌中に反応溶液を滴下し、さらに1時間攪拌して褐色固形物を析出させた。これを濾過後、水50mlで3回洗浄を繰り返してから、80℃で2時間減圧乾燥し、TMFP−MDAポリイミドの褐色粉末0.35g(収率38%)を得た。このポリイミドは、アセトニトリルに溶解後、ろ紙に滴下し溶媒を蒸発させた後365nmの光を照射すると淡青色に発光した。
PMT:95〜98℃
実施例6 TMFP−p−PDAポリアミック酸およびポリイミドの合成
【0079】
【化16】

【0080】
28℃の室温に設置した攪拌機付き50mL四つ口反応フラスコに、実施例1で得られたTMFP0.812g(1.1mmol)およびNMP2.15gを仕込み、溶解させた。続いて、この溶液を攪拌中に、p−フェニレンジアミン(p−PDA)0.108g(1.0mmol)を添加した。4時間攪拌すると粘度が高くなったので、NMP1.53gを添加し固形分濃度を30質量%から20質量%に希釈した。更に、28℃で2時間攪拌して重合反応を終了させた。この固形分20質量%のポリアミック酸溶液の粘度は、106mPa・sであった。
この溶液に、NMP11gを加えて固形分6質量%のポリアミック酸溶液に希釈して、GPC測定した結果、数平均分子量(Mn)は6,227で、重量平均分子量(Mw)は12,033であり、Mw/Mnは1.93であった。
続いて、この固形分6質量%のポリアミック酸溶液に無水酢酸1.02g(10mmol)およびピリジン0.48g(6mmol)を加えて100℃で6時間攪拌した。室温に戻してから、水70mlの攪拌中に反応溶液を滴下し、さらに1時間攪拌して褐色固形物を析出させた。これを濾過後、水50mlで3回洗浄を繰り返してから、80℃で2時間減圧乾燥し、TMFP−p−PDAポリイミドの褐色粉末0.52g(収率65%)を得た。このポリイミドは、DMFに溶解後、ろ紙に滴下し溶媒を蒸発させた後365nmの光を照射すると淡青色に発光した。
PMT:170〜175℃
実施例7 TMFP−m−PDAポリアミック酸およびポリイミドの合成
【0081】
【化17】

【0082】
28℃の室温に設置した攪拌機付き50mL四つ口反応フラスコに、実施例1で得られたTMFP0.812g(1.1mmol)およびNMP3.68gを仕込み、溶解させた。続いて、この溶液を攪拌中に、m−フェニレンジアミン(m−PDA)0.108g(1.0mmol)を添加した。28℃で16時間攪拌して重合反応を終了させた。この固形分20質量%のポリアミック酸溶液の粘度は、79mPa・sであった。
この溶液に、NMP11gを加えて固形分6質量%のポリアミック酸溶液に希釈して、GPC測定した結果、数平均分子量(Mn)は7,088で、重量平均分子量(Mw)は14,049であり、Mw/Mnは1.98であった。
続いて、この固形分6質量%のポリアミック酸溶液に無水酢酸1.02g(10mmol)およびピリジン0.48g(6mmol)を加えて60℃で5時間攪拌した。室温に戻してから、水70mlの攪拌中に反応溶液を滴下し、さらに1時間攪拌して褐色固形物を析出させた。これを濾過後、水50mlで3回洗浄を繰り返してから、80℃で2時間減圧乾燥し、TMFP−m−PDAポリイミドの褐色粉末0.38g(収率47%)を得た。このポリイミドは、アセトニトリルに溶解後、ろ紙に滴下し溶媒を蒸発させた後365nmの光を照射すると淡青色に発光した。
PMT:83〜85℃
[比較例1]PMDA−ODAポリアミック酸およびポリイミドの合成
【0083】
【化18】

【0084】
22℃の室温に設置した攪拌機付き50mL四つ口反応フラスコに、ODA1.00g(5.0mmol)およびNMP18.2gを仕込み溶解させた。続いて、この溶液を攪拌中、ピロメリット酸二無水物(PMDA)1.03g(4.75mmol)を溶解させながら分割添加した。さらに、20℃で23時間攪拌して重合反応を行い、固形分10質量%のポリアミック酸溶液を得た。この溶液に、NMP14gを加えて固形分6質量%のポリアミック酸溶液に希釈して、GPC測定した結果、数平均分子量(Mn)は2,173で、重量平均分子量(Mw)は4,310であり、Mw/Mnは1.98であった。
続いて、この固形分6質量%のポリアミック酸溶液に無水酢酸5.1g(50mmol)およびピリジン2.37g(30mmol)を加えて100℃で4時間攪拌した。室温に戻してから、メタノール147ml攪拌中に反応溶液を滴下し、さらに1時間攪拌して橙色固形物を析出させた。これを濾過後、メタノール50mlで3回洗浄を繰り返してから、80℃で2時間減圧乾燥し、PMDA−ODAポリイミドの橙色粉末1.55g(収率86%)を得た。
PMT: >300℃
【0085】
上記実施例2〜7で得られたTMFP−各ジアミンポリイミド及び比較例1で得られたPMDA−ODAポリイミドの有機溶媒溶解性を下記手法によって評価した。結果を表1に示す。
(測定法)
各ポリイミド5mgを、有機溶媒100mgに添加し、所定温度で撹拌し、その溶解性を確認した。
DMSO:ジメチルスルホオキシド、DMF:N,N−ジメチルホルムアミド、THF:テトラヒドロフラン、EDC:1,2−ジクロロエタン
◎:25℃溶解、○:加温溶解、−:加温不溶(加温:60〜80℃)
【0086】
【表1】

【0087】
表1に示される様に、実施例2〜7で得られたTMFP−DA−ポリイミド(TMFP−DA−PI)は、低沸点有機溶媒をはじめとした各種の有機溶媒に溶解する優れた可溶性ポリイミドであることが明らかになった。一方、PMDA−DA−ポリイミド(PMDA−DA−PI)は、低分子量にも拘わらず有機溶媒に不溶であった。
【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明のテトラヒドロペンタレン型酸二無水物を一原料として得られるポリイミドは、例えば、液晶表示素子や半導体における保護材料、絶縁材料などの電子材料、さらに光導波路等の光通信用材料として好適に用いることが期待される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式[1]
【化1】


(式中、Rは、炭素数1〜20のアルキル基を表す。)
で表されるテトラアルキル2,5−ビス(1,3−ジオキソオクタハイドロイソベンゾフラン−5−カルボニルオキシ)−1,4,7,8−テトラハイドロペンタレン−1,3,4,6−テトラカルボキシレート。
【請求項2】
前記Rが、メチル基またはエチル基である請求項1記載のテトラアルキル2,5−ビス(1,3−ジオキソオクタハイドロイソベンゾフラン−5−カルボニルオキシ)−1,4,7,8−テトラハイドロペンタレン−1,3,4,6−テトラカルボキシレート。
【請求項3】
式[2]
【化2】


(式中、Rは、炭素数1〜20のアルキル基を表す。)
で表されるテトラアルキル2,5−ジハイドロ−1,4,7,8−テトラハイドロペンタレン−1,3,4,6−テトラカルボキシレートを塩基の存在下、式[3]
【化3】



(式中、Xはハロゲン原子を表す。)
で表される無水核水添トリメリット酸ハライドと反応して、式[1]
【化4】


(式中、Rは、前記と同じ意味を表す。)
で表されるテトラアルキル2,5−ビス(1,3−ジオキソオクタハイドロイソベンゾフラン−5−カルボニルオキシ)−1,4,7,8−テトラハイドロペンタレン−1,3,4,6−テトラカルボキシレートを得ることを特徴とする製造法。
【請求項4】
前記Rが、メチル基またはエチル基である請求項3記載のテトラアルキル2,5−ビス(1,3−ジオキソオクタハイドロイソベンゾフラン−5−カルボニルオキシ)−1,4,7,8−テトラハイドロペンタレン−1,3,4,6−テトラカルボキシレートを得ることを特徴とする製造法。
【請求項5】
式[4]で表される繰り返し単位を含有するポリアミック酸。
【化5】


(式中、Rは、炭素数1〜20のアルキル基を表し、Aは、2価の有機基を表し、nは、2以上の整数を表す。)
【請求項6】
前記Rが、メチル基またはエチル基である請求項5記載のポリアミック酸。
【請求項7】
式[5]で表される繰り返し単位を含有するポリイミド。
【化6】


(式中、Rは、炭素数1〜20のアルキル基を表し、Aは、2価の有機基を表し、nは、2以上の整数を表す。)
【請求項8】
前記Rが、メチル基またはエチル基である請求項7記載のポリイミド。

【公開番号】特開2013−91747(P2013−91747A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−235974(P2011−235974)
【出願日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【出願人】(000003986)日産化学工業株式会社 (510)
【Fターム(参考)】