説明

テトラヒドロトリアゾロピリジン誘導体の塩およびその結晶

本発明は、原薬として利用することが期待される、粉末X線回折において、回折角度(2θ±0.2°)23.2°に回折ピークを有することなどを特徴とする、Aβ産生抑制作用を有する、式(1)


で表わされる化合物の1.5D−酒石酸塩の結晶、回折角度(2θ±0.2°)17.1°に回折ピークを有することなどを特徴とする、式(1)の化合物の二硫酸塩の結晶、その他の式(1)の化合物の種々の塩、その塩の結晶多形等を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アミロイドβ産生低下作用を有し、アルツハイマー病、ダウン症などの神経変性疾患の治療に有用なテトラヒドロトリアゾロピリジン誘導体の塩、その溶媒和物およびそれらの結晶等に関する。
【背景技術】
【0002】
アルツハイマー病は、神経細胞の変性や脱落とともに、老人班の形成および神経原繊維変化を特徴とする疾患である。現在、アルツハイマー病の治療は、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤に代表される症状改善剤による対症療法に限られていて、病気の進行を抑制する根本療法剤は開発されていない。アルツハイマー病の根本療法剤の創出には、病態の発症原因を制御する方法の開発が必要である。
アミロイド前駆体タンパク(以下、APPという。)の代謝産物であるAβタンパクは、神経細胞の変性・脱落、さらには痴呆症状の発現に大きくかかわると考えられている(例えば、非特許文献1、2参照)。Aβタンパクの主成分は、アミノ酸40個からなるAβ40とC末が2アミノ酸増えたAβ42である。これらのAβ40および42は、凝集性が高く(例えば、非特許文献3参照)、老人班の主要構成成分であり(例えば、非特許文献4,5参照)、さらに、家族性アルツハイマー病で見られるAPPおよびプレセネリン遺伝子の変異は、これらのAβ40および42を増加させることが知られている(例えば、非特許文献6、7、8参照)。したがって、Aβ40および42の産生を低下させる化合物は、アルツハイマー病の進行抑制剤または予防薬として期待されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Klein WL, et al., Alzheimer’s disease-affected brain: Presence of oligomeric Aβ ligands (ADDLs) suggests a molecular basis for reversible memory loss, Proceding National Academy of Scie nce USA 2003, Sep 2;100(18), p.10417-10422.
【非特許文献2】Nitsch RM, et al., Antibodies against β-amyloid slow cognitive declinein Alzheimer’s disease, Neuron, 2003,May 22;38, p.547-554.
【非特許文献3】Jarrett JT, et al., The carboxy terminus of the β amyloid protein is critical for the seeding of amyloid formation: Implications for the pathogenesis of Alzheimers’ disease, Biochemistry, 1993, 32(18), p.4693-4697.
【非特許文献4】Glenner GG, et al., Alzheimer’s disease: initial report of the purification and characterization of a novel cerebrovascular amyloid protein, Biochemical and biophysical research communications, 1984, May 16, 120(3), p.885-890.
【非特許文献5】Masters CL, et al., Amyloid plaque core protein in Alzheimer disease and Down syndrome, Proceding National Academy of Science USA, 1985, Jun, 82(12), p.4245-4249.
【非特許文献6】Gouras GK, et al., IntraneuronalAβ42 accumulation in human brain, American Journal of Pathology, 2000, Jan,156(1), p.15-20.
【非特許文献7】Scheuner D, et al., Secreted amyloid β-protein similar to that in thesenile plaques of Alzheimer’s diseaseis increased in vivo by the presenilin1 and 2 and APP mutations linked to familial Alzheimer’s disease, Nature Medicine, 1996, Aug, 2(8), p.864-870.
【非特許文献8】Forman MS, et al., Differential effects of the swedish mutant amyloid precursor protein on β-amyloid accumulation and secretion in neurons and nonneuronal cells, The Journal of Biologic al Chemistry, 1997, Dec 19, 272(51), p.32247-32253.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
Aβ40および42の産生を低下させる作用を有しアルツハイマー病等の治療薬または予防薬として期待される新たな化合物として、本発明者らは、下記式(1)
【化1】

で表される化合物(化合物(1))を見出し、それらの発明について特許出願した(PCT/JP08/065365)。
一般的に、医薬品として有用な化合物の塩ならびにそれらの結晶の物性は、薬物のバイオアベイラビリティー、原薬の純度、製剤の処方などに大きな影響を与えるため、医薬品開発においては、極めて重要である。従って、式(1)の化合物に関して、いかなる塩、いかなる結晶形が医薬品として最も優れているかを、研究する必要がある。すなわち、それらの物性は、個々の化合物の属性に依存するため、一般的に、良好な物性を有する原薬用の塩や結晶形を予測することは困難であり、各化合物について実際に種々検討することが求められる。
従って、本発明の課題は、式(1)で表される化合物について、原薬として良好な物性を有する塩や結晶形を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、式(1)で表される化合物:(8S)−2−{(E)−2−[6−メトキシ−5−(4−メチル−1H−イミダゾ−ル−1−イル)ピリジン−2−イル]ビニル}−8−[2−(トリフルオロメチル)フェニル]−5,6,7,8−テトラヒドロ[1,2,4]トリアゾロ[1,5−a]ピリジン(化合物(1))について、各種の塩や結晶形を単離し、その物性や形態を把握し、種々検討を行った結果、良好な物性を有する原薬用の塩、結晶形等を見出し、本発明を完成した。
【0006】
すなわち、本発明は、
[1]. 無機酸、有機カルボン酸および有機スルホン酸からなる群から選択される一つの酸と(8S)−2−{(E)−2−[6−メトキシ−5−(4−メチル−1H−イミダゾ−ル−1−イル)ピリジン−2−イル]ビニル}−8−[2−(トリフルオロメチル)フェニル]−5,6,7,8−テトラヒドロ[1,2,4]トリアゾロ[1,5−a]ピリジンとからなる塩またはその溶媒和物;
[2]. 酸が、有機カルボン酸である、上記[1]記載の塩またはその溶媒和物;
[3]. 有機カルボン酸が、酢酸、シュウ酸、マレイン酸、酒石酸、マロン酸、フマル酸またはクエン酸である、上記[1]または[2]記載の塩またはその溶媒和物;
[4]. 酸が、有機スルホン酸である、上記[1]記載の塩またはその溶媒和物;
[5]. 有機スルホン酸が、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸またはカンファースルホン酸である、上記[1]または[4]記載の塩またはその溶媒和物;
[6]. 酸が、無機酸である、上記[1]記載の塩またはその溶媒和物;
[7]. 無機酸が、塩酸、臭化水素酸、硫酸またはリン酸である、上記[1]または[6]記載の塩またはその溶媒和物;
[8]. (8S)−2−{(E)−2−[6−メトキシ−5−(4−メチル−1H−イミダゾ−ル−1−イル)ピリジン−2−イル]ビニル}−8−[2−(トリフルオロメチル)フェニル]−5,6,7,8−テトラヒドロ[1,2,4]トリアゾロ[1,5−a]ピリジンのフリー体の結晶、あるいは上記[1]から[7]のいずれかに記載の塩またはその溶媒和物の結晶;
[9]. 粉末X線回折において、回折角度(2θ±0.2°)12.6°および23.2°に回折ピークを有する、(8S)−2−{(E)−2−[6−メトキシ−5−(4−メチル−1H−イミダゾ−ル−1−イル)ピリジン−2−イル]ビニル}−8−[2−(トリフルオロメチル)フェニル]−5,6,7,8−テトラヒドロ[1,2,4]トリアゾロ[1,5−a]ピリジン・1.5D−酒石酸塩の結晶;および
[10]. 粉末X線回折において、回折角度(2θ±0.2°)17.1°および24.0°に回折ピークを有する、(8S)−2−{(E)−2−[6−メトキシ−5−(4−メチル−1H−イミダゾ−ル−1−イル)ピリジン−2−イル]ビニル}−8−[2−(トリフルオロメチル)フェニル]−5,6,7,8−テトラヒドロ[1,2,4]トリアゾロ[1,5−a]ピリジン・二硫酸塩の結晶
に関する。
【発明の効果】
【0007】
本発明により提供される、(8S)−2−{(E)−2−[6−メトキシ−5−(4−メチル−1H−イミダゾ−ル−1−イル)ピリジン−2−イル]ビニル}−8−[2−(トリフルオロメチル)フェニル]−5,6,7,8−テトラヒドロ[1,2,4]トリアゾロ[1,5−a]ピリジン(化合物(1))の塩、その溶媒和物、並びにそれらの結晶等は、医薬品の原薬として、良好な物性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、実施例1で得られた(8S)−2−{(E)−2−[6−メトキシ−5−(4−メチル−1H−イミダゾ−ル−1−イル)ピリジン−2−イル]ビニル}−8−[2−(トリフルオロメチル)フェニル]−5,6,7,8−テトラヒドロ[1,2,4]トリアゾロ[1,5−a]ピリジン(化合物(1))の1.5D−酒石酸塩の結晶の粉末X線回折パターンである。横軸は回折角(2θ)、縦軸はピーク強度を示す。
【図2】図2は、実施例2で得られた化合物(1)・二D−酒石酸塩の結晶の粉末X線回折パターンである。横軸は回折角(2θ)、縦軸はピーク強度を示す。
【図3】図3は、実施例3で得られた化合物(1)・二硫酸塩の結晶の粉末X線回折パターンである。横軸は回折角(2θ)、縦軸はピーク強度を示す。
【図4】図4は、実施例4で得られた化合物(1)・二臭化水素酸塩の結晶の粉末X線回折パターンである。横軸は回折角(2θ)、縦軸はピーク強度を示す。
【図5】図5は、実施例5で得られた化合物(1)・塩酸塩の結晶の粉末X線回折パターンである。横軸は回折角(2θ)、縦軸はピーク強度を示す。
【図6】図6は、実施例6で得られた化合物(1)・塩酸塩の結晶の粉末X線回折パターンである。横軸は回折角(2θ)、縦軸はピーク強度を示す。
【図7】図7は、実施例7で得られた化合物(1)のメシル酸塩の結晶の粉末X線回折パターンである。横軸は回折角(2θ)、縦軸はピーク強度を示す。
【図8】図8は、実施例8で得られた化合物(1)・二リン酸塩の結晶の粉末X線回折パターンである。横軸は回折角(2θ)、縦軸はピーク強度を示す。
【図9】図9は、実施例9で得られた化合物(1)・二リン酸塩の結晶の粉末X線回折パターンである。横軸は回折角(2θ)、縦軸はピーク強度を示す。
【図10】図10は、参考例1で得られた化合物(1)・フリー体の結晶の粉末X線回折パターンである。横軸は回折角(2θ)、縦軸はピーク強度を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
次に、本発明の塩、溶媒和物、結晶等およびそれらの製造法について詳細に説明する。
【0010】
本発明において、「塩」とは、薬理学的に許容される塩を指し、Aβに起因する疾患の予防剤または治療剤となる化合物(1)と酸とから形成される薬理学的に許容される塩を意味する。また、本発明において、「塩」とは、本明細書において挙げた実施例に限定されず、化合物(1)と化学的に可能な当量数の酸との反応によって生じる化合物で、塩基の陽性部分と酸の陰性成分とからなるものをいう。
具体的には、本発明の塩は、無機酸、有機カルボン酸および有機スルホン酸からなる群から選択される一つの酸と化合物(1)とからなる塩である。
【0011】
無機酸としては、好ましくは、例えばフッ化水素酸、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、硝酸、過塩素酸、リン酸、炭酸、重炭酸などを、より好ましくは、例えば塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸などを挙げることができる。有機カルボン酸としては、好ましくは、例えば酢酸、シュウ酸、マレイン酸、酒石酸、フマル酸、クエン酸、マロン酸塩などを、より好ましくは、例えばマレイン酸、酒石酸、フマル酸、マロン酸などを挙げることができる。有機スルホン酸としては、好ましくは、例えばメタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、カンファースルホン酸などを、より好ましくは、例えばメタンスルホン酸、トルエンスルホン酸などを挙げることができる。
【0012】
本発明において、溶媒和物とは、化合物(1)の塩と溶媒分子とが一緒になって形成する固体をいう。溶媒和物としては、例えば、化合物(1)の塩と水分子から形成される水和物;化合物(1)の塩と、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノールなどのアルコール分子とから形成されるアルコール和物;化合物(1)の塩と、1−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等の極性溶媒とから形成される溶媒和物;化合物(1)の塩と、酢酸エチル、酢酸メチル等のエステル系溶媒とから形成される溶媒和物;化合物(1)の塩と、アセトン、ブタノン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒とから形成される溶媒和物等が挙げられる。
【0013】
本発明において、結晶とは、化合物(1)の塩の結晶、または化合物(1)の塩の溶媒和物の結晶を指す。
本発明において、好ましい結晶としては、粉末X線回折において、
回折角度(2θ±0.2°)12.6°および23.2°に回折ピークを有している、化合物(1)・1.5D−酒石酸塩の結晶;
特に、回折角度(2θ±0.2°)12.6°、18.6°、20.2°、23.2°および25.2°に回折ピークを有している、化合物(1)・1.5D−酒石酸塩の結晶;
回折角度(2θ±0.2°)17.1°および24.0°に回折ピークを有している、化合物(1)・二硫酸塩の結晶;
特に、回折角度(2θ±0.2°)9.8°、17.1°、18.7°、24.0°および25.7°に回折ピークを有している、化合物(1)・二硫酸塩の結晶;
などを代表として挙げることができる。その他種々の塩の結晶、それらの塩の溶媒和物の結晶が挙げられる。
【0014】
一般に、粉末X線回折における回折角度(2θ)は±0.2°の範囲内で誤差が生じ得るから、上記の回折角度の値は±0.2°程度の範囲内の数値も含むものとして理解される必要がある。したがって、粉末X線回折におけるピークの回折角度が完全に一致する結晶だけでなく、ピークの回折角度が±0.2°程度の誤差で一致する結晶も本発明に含まれる。
従って、本発明において、例えば、「回折角度(2θ±0.2°)12.6°に回折ピークを有する」とは、「回折角度(2θ)12.4°〜12.8°に回折ピークを有する」ということを意味し、その他の回折角度の場合も同様である。
【0015】
以下に、本発明の化合物(1)、その塩、該塩の溶媒和物、それらの結晶等の製造法について説明する。
【0016】
化合物(1)の製造
本発明にかかる化合物(1)は、後述する参考例1に具体的に記載されているように、1−アミノ−3−(2−トリフルオロメチルフェニル)ピペリジン−2−オンを出発原料とし、(E)−3−[6−メトキシ−5−(4−メチル−1H−イミダゾール−1−イル)ピリジン−2−イル]−N−[2−オキソ−3−(2−トリフルオロメチルフェニル)ピペリジン−1−イル]アクリルアミドを経由して合成することができる。
【0017】
化合物(1)の塩の製造法
化合物(1)の塩は、通常の塩を製造する方法により得ることができる。具体的には、例えば、化合物(1)を溶媒に、必要に応じて加温下に、溶解させ、次いで、得られる溶液に、無機酸、有機カルボン酸および有機スルホン酸からなる群から選択される一つの酸を加え、室温下あるいは氷浴で冷却しながら数分から数時間撹拌することにより、または室温下あるいは氷浴で冷却しながら数分から数時間放置することにより、製造することができる。これらの製造法により、化合物(1)の塩を、結晶体あるいは非晶質体として得ることができる。ここで使用する溶媒としては、例えばエタノール、1−プロパノールまたは2−プロパノールのようなアルコール系溶媒;例えばアセトンまたは2−ブタノンのようなアルキルケトン系溶媒;酢酸エチル;ヘキサン;アセトニトリル、これらの混合溶媒を挙げることができる。
化合物(1)の塩は、前記した化合物(1)の製造法において、化合物(1)を合成後に、引き続き、上記した方法を採用することにより製造することも出来る。
【0018】
化合物(1)の塩の溶媒和物の製造法
化合物(1)の塩の溶媒和物は、例えば、前記した化合物(1)の塩を製造する方法において、化合物(1)を溶媒に、必要に応じて加温下に、溶解させ、次いで、酸を加える際に、得ようとする溶媒和物の溶媒を更に加えて、室温下あるいは氷浴で冷却しながら数分から数時間撹拌することにより、または室温下あるいは氷浴で冷却しながら数分から数時間放置することにより、製造することができる。なお、最初に化合物(1)を溶解させるのに用いた溶媒の溶媒和物を得る場合には、更に他の溶媒を加える必要はなく、そのまま撹拌または放置することにより目的とする溶媒和物を得ることができる。これらの製造法により、化合物(1)の塩の溶媒和物を、結晶体あるいは非晶質体として得ることができる。
化合物(1)の塩の溶媒和物は、前記した化合物(1)の製造法において、化合物(1)を合成後に、引き続き、前記した化合物(1)の塩の製造法および上記した方法を採用することにより製造することも出来る。
【0019】
化合物(1)の塩および該塩の溶媒和物の結晶の製造法
化合物(1)のフリー体、その塩および該塩の溶媒和物の結晶は、化合物(1)のフリー体、その塩または該塩の溶媒和物を、溶媒中で加熱溶解し、攪拌下冷却して晶析することにより、製造することができる。
晶析に使用する化合物(1)の塩および該塩の溶媒和物は、どのような形態であってもよく、水和物でも無水物でもよく、非晶質でも結晶質(複数の結晶多形からなるものを含む)でもよく、これらの混合物でもよい。
晶析に使用する溶媒は、メタノール、エタノール、2−プロパノール、n−プロパノール等のアルコール系溶媒;アセトニトリル;N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド系溶媒;酢酸エチル等のエステル系溶媒;ヘプタン等の飽和炭化水素系溶媒;これらの混合溶媒を挙げることができる。
溶媒の使用量は、化合物(1)のフリー体、その塩または該塩の溶媒和物が加熱により溶解する量を下限とし、結晶の収量が著しく低下しない量を上限として適宜選択することができる。
上記の方法により得られた結晶は単一の結晶形からなり、この結晶形は安定であって、容易に他の結晶形や非晶質に転移することがなく、また吸湿性もない等の良好な物性を有しており、製剤化にも適している。
化合物(1)のフリー体、その塩または該塩の溶媒和物を加熱して溶解する場合の温度は、溶媒に応じて化合物(1)が溶解する温度を適宜選択すればよいが、好ましくは再結晶溶媒の還流温度から50℃であり、より好ましくは65−55℃である。
晶析時の冷却は、急冷すると態様の異なる結晶(多形)を含むものが得られるので、結晶の品質や粒度等への影響を考慮して適宜冷却温度を調整して実施することが望ましく、好ましくは徐冷(30〜5℃/時間の速度での冷却)である。より好ましい冷却温度は30〜20℃/時間である。
また、最終的な晶析温度は、結晶の収量と品質等から適宜選択することができるが、好ましくは室温から60℃である。
晶析した結晶を通常のろ過操作で分離し、必要に応じて溶媒で洗浄し、さらに乾燥して目的の結晶を得ることができる。結晶の洗浄に使用する溶媒は、多くは晶析溶媒と共通である。
【0020】
ろ過操作で分離した結晶は、適宜、大気下または窒素気流下に放置することにより、または加熱によって乾燥することができる。
乾燥時間は、残留溶媒が所定の量を下回るまでの時間を製造量、乾燥装置、乾燥温度等に応じて適宜選択すればよい。また、乾燥は通風下でも減圧下でも行うことができる。減圧度は、製造量、乾燥装置、乾燥温度等に応じて適宜選択すればよい。得られた結晶は、乾燥後、必要に応じて大気中に放置することもできる。
上記した結晶は、前記した化合物(1)の製造法において、化合物(1)を合成後に、引き続き、上記した方法を採用することにより、また、化合物(1)を合成後に、引き続き、更に、前記した化合物(1)の塩や溶媒和物の製造法を採用することにより製造することも出来る。
【0021】
以上に説明した製造法によって得られる化合物(1)の塩、その溶媒和物、それらの結晶などは、Aβ産生低下作用を有し、Aβが原因となる神経変性疾患、例えばアルツハイマー病、ダウン症などの疾患の治療剤の有効成分として使用することができる。
化合物(1)の塩、その溶媒和物、それらの結晶などは、医薬として使用する場合は、経口もしくは非経口的に、例えばAβが原因となる神経変性疾患、例えばアルツハイマー病、ダウン症などの疾患の治療剤として投与される。投与量は、例えば症状の程度、患者の年齢、性別、体重、感受性差、投与方法、投与時期、投与間隔、医薬製剤の性質、調剤、種類、有効成分の種類などによって異なり、特に限定されないが、通常成人1日あたり例えば10〜6000mg、好ましくは約50〜4000mg、さらに好ましくは約100〜3000mgであり、これを通常1日1〜3回に分けて投与する。
【0022】
経口用固形製剤を調製する場合は、主薬に賦形剤さらに必要に応じて例えば結合剤、崩壊剤、滑沢剤、着色剤、矯味矯臭剤などを加えた後、常法により、例えば錠剤、被覆錠剤、顆粒剤、細粒剤、散剤、カプセル剤などとする。賦形剤としては、例えば乳糖、コーンスターチ、白糖、ぶどう糖、ソルビット、結晶セルロース、二酸化ケイ素などが、結合剤としては、例えばポリビニルアルコール、エチルセルロース、メチルセルロース、アラビアゴム、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどが、滑沢剤としては、例えばステアリン酸マグネシウム、タルク、シリカなどが、着色剤としては医薬品に添加することが許可されているものが、矯味矯臭剤としては、例えばココア末、ハッカ脳、芳香酸、ハッカ油、龍脳、桂皮末などが用いられる。これらの錠剤、顆粒剤には糖衣、ゼラチン衣、その他必要により適宜コーティングすることは勿論差し支えない。注射剤を調製する場合には、必要により主薬に例えばpH調整剤、緩衝剤、懸濁化剤、溶解補助剤、安定化剤、張化剤、保存剤などを添加し、常法により例えば静脈、皮下、筋肉内注射剤とする。その際必要により、常法により凍結乾燥物とすることもある。懸濁化剤としては、例えばメチルセルロース、ポリソルベート80、ヒドロキシエチルセルロース、アラビアゴム、トラガント末、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレートなどを挙げることができる。
【実施例】
【0023】
以下、参考例および実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの参考例および実施例に限定されるものではない。
【0024】
以下の参考例および実施例においては下記の略号を使用する。
DMF:N,N’−ジメチルホルムアミド
THF:テトラヒドロフラン
EDC:1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩
HOBT:1−ヒドロキシベンゾトリアゾール
IPEA:ジイソプロピルエチルアミン
【0025】
以下の実施例において製造された結晶の粉末X線結晶回折は、得られた結晶を、粉末X線回折装置の試料台に載せ、下記の条件で分析した。
【0026】
測定条件
サンプルホルダー:アルミニウム
ターゲット:銅
検出器:シンチレーションカウンター
管電圧:50kV
管電流:300mA
スリット:DS 0.5mm(Height limiting slit 2mm),SS Open,RS Open
走査速度:5°/min
サンプリング間隔:0.02°
走査範囲:5から35°
ゴニオメーター:水平ゴニオメーター
【0027】
参考例1
(8S)−2−{(E)−2−[6−メトキシ−5−(4−メチル−1H−イミダゾール−1−イル)ピリジン−2−イル]ビニル}−8−(2−トリフルオロメチルフェニル)−5,6,7,8−テトラヒドロ−[1,2,4]トリアゾロ[1,5−a]ピリジンの合成
【化2】

1−アミノ−3−(2−トリフルオロメチルフェニル)ピペリジン−2−オンの合成
2−トリフルオロメチルフェニル酢酸(1.9g)のメタノール溶液(38mL)に、塩化チオニル(2.72mL)を加え、室温にて3時間撹拌した。反応溶液を減圧濃縮した。得られた残渣をDMFで希釈し、氷冷下、水素化ナトリウム(40%ミネラルオイル含有、410mg)を加え、10分間撹拌した。さらに室温で30分間撹拌後、再び氷冷し、反応混合物に1−クロロ−3−ヨードプロパン(1.02mL)を加え、その反応液を室温で一晩撹拌した。反応混合物に水および酢酸エチルを加え、有機層を分配した。得られた有機層を飽和塩化ナトリウム水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧下濃縮した。得られた残渣をエタノール(26.6mL)で希釈し、ヒドラジン一水和物(7.6mL)を加え、その反応液を室温で2時間撹拌後、さらに60℃にて3時間撹拌した。反応混合物を減圧下濃縮し、残渣に飽和炭酸水素ナトリウム水および酢酸エチルを加え、有機層を分配した。得られた有機層を飽和塩化ナトリウム水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧下濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(担体:クロマトレックスNH;溶出溶媒:ヘプタン−酢酸エチル系)で精製することにより、表題化合物を1.68g得た。このものの物性値は以下の通りである。
ESI−MS;m/z 259[M+H].H−NMR(CDCl)δ(ppm):1.82−2.10(m,3H),2.18−2.26(m,1H),3.58−3.76(m,2H),4.07(dd,J=10.0,5.6Hz,1H),4.60(s,2H),7.24(d,J=7.6Hz,1H),7.35(t,J=7.6Hz,1H),7.51(t,J=7.6Hz,1H),7.66(d,J=7.6Hz,1H).
【0028】
(E)−3−[6−メトキシ−5−(4−メチル−1H−イミダゾール−1−イル)ピリジン−2−イル]−N−[2−オキソ−3−(2−トリフルオロメチルフェニル)ピペリジン−1−イル]アクリルアミドの合成
(E)−3−[6−メトキシ−5−(4−メチル−1H−イミダゾール−1−イル)ピリジン−2−イル]アクリル酸 トリフルオロ酢酸塩(1.42g)と1−アミノ−3−(2−トリフルオロメチルフェニル)ピペリジン−2−オン(750mg)のDMF(30mL)懸濁液に、EDC(834mg)、HOBT(588mg)およびIPEA(2.03mL)を加えた。室温で14時間攪拌した後、反応液に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液と酢酸エチルを加え有機層を分配した。得られた有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧下濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(担体:クロマトレックスNH;溶出溶媒:酢酸エチル−メタノール系)で精製することにより、表題化合物を1.23g得た。このものの物性値は以下の通りである。
ESI−MS;m/z 500[M+H].
【0029】
(8S)−2−{(E)−2−[6−メトキシ−5−(4−メチル−1H−イミダゾール−1−イル)ピリジン−2−イル]ビニル}−8−(2−トリフルオロメチルフェニル)−5,6,7,8−テトラヒドロ−[1,2,4]トリアゾロ[1,5−a]ピリジンの合成
(E)−3−[6−メトキシ−5−(4−メチル−1H−イミダゾール−1−イル)ピリジン−2−イル]−N−[2−オキソ−3−(2−トリフルオロメチルフェニル)ピペリジン−1−イル]アクリルアミド(1.2g)にオキシ塩化リン(24.2mL)を加え、その反応液を100度で1時間攪拌後、減圧下濃縮した。続いて残渣を酢酸(24.2mL)で希釈後、酢酸アンモニウム(1.9g)を加え、150度で2時間攪拌した。反応液を室温まで放冷した後、減圧下濃縮した。得られた残渣に飽和重曹水と酢酸エチルを加え、有機層を分配した。得られた有機層を、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧下濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(担体:クロマトレックスNH;溶出溶媒:ヘプタン:酢酸エチル系)で精製することにより、表題化合物のラセミ体(750mg)を得た。得られたラセミ体(410mg)をダイセル製CHIRALPAKTM IA(2cm×25cm,移動相;ヘキサン:エタノール=8:2,流速:10mL/min)にて分取し、保持時間が33分で(−)の旋光性を示す表題化合物(170mg)を結晶として得た。
表題化合物の物性値は以下の通りである。
H−NMR(CDCl)δ(ppm):1.90−2.01(m,1H),2.10−2.35(m,2H),2.29(d,J=1.2Hz,3H),2.42−2.51(m,1H),4.03(s,3H),4.28−4.41(m,2H),4.70(dd,J=8.4,6.0Hz,1H),6.92(d,J=8.0Hz,1H),6.95(t,J=1.2Hz,1H),7.01(d,J=7.6Hz,1H),7.39(t,J=7.6Hz,1H),7.44(d,J=16.0Hz,1H),7.45(d,J=8.0Hz,1H),7.49(t,J=7.6Hz,1H),7.63(d,J=16.0Hz,1H),7.72(d,J=7.6Hz,1H),7.76(d,J=1.2Hz,1H).
【0030】
上記参考例に準じて合成した(8S)−2−{(E)−2−[6−メトキシ−5−(4−メチル−1H−イミダゾール−1−イル)ピリジン−2−イル]ビニル}−8−(2−トリフルオロメチルフェニル)−5,6,7,8−テトラヒドロ−[1,2,4]トリアゾロ[1,5−a]ピリジンを以下の塩の合成に用いた。
【0031】
実施例1
(8S)−2−{(E)−2−[6−メトキシ−5−(4−メチル−1H−イミダゾール−1−イル)ピリジン−2−イル]ビニル}−8−(2−トリフルオロメチルフェニル)−5,6,7,8−テトラヒドロ−[1,2,4]トリアゾロ[1,5−a]ピリジン 1.5D−酒石酸塩の合成
(8S)−2−{(E)−2−[6−メトキシ−5−(4−メチル−1H−イミダゾール−1−イル)ピリジン−2−イル]ビニル}−8−(2−トリフルオロメチルフェニル)−5,6,7,8−テトラヒドロ−[1,2,4]トリアゾロ[1,5−a]ピリジン(33.70mg)を、室温で攪拌しながら285μLのD−酒石酸−エタノール溶液(110.92mg/3mL)に溶解した。ヘプタンを1mL加えたところオイルアウトしたので、エタノールを1mL添加してオイル状のものを溶解した。更に、ヘプタンを0.5mL加え、約5℃の低温実験室(遮光下)に移して24時間攪拌し続けたところ、一部がゲル化した。その後室温に戻して攪拌を続けたところ、固体が析出した。固形物をグラスフィルターで濾取し、減圧下室温で乾燥して、表題化合物を白色固体の結晶として21.25mg得た。
H−NMR(600MHz,DMSO−d)δ(ppm):1.96(m,1H),2.14(s,3H),2.16(m,2H),2.29(m,1H),3.98(s,3H),4.28(m,2H),4.29(s,3H),4.51(dd,J=9,6Hz,1H),7.22(s,1H),7.25(brd,J=8Hz,1H),7.27(d,J=8Hz,1H),7.32(d,J=16Hz,1H),7.46(d,J=16Hz,1H),7.49(brdd,J=8Hz,1H),7.61(brdd,J=8Hz,1H),7.77(brd,J=8Hz,1H),7.78(d,J=8Hz,1H),7.91(s,1H).
【0032】
実施例2
(8S)−2−{(E)−2−[6−メトキシ−5−(4−メチル−1H−イミダゾール−1−イル)ピリジン−2−イル]ビニル}−8−(2−トリフルオロメチルフェニル)−5,6,7,8−テトラヒドロ−[1,2,4]トリアゾロ[1,5−a]ピリジン 二D−酒石酸塩の合成
(8S)−2−{(E)−2−[6−メトキシ−5−(4−メチル−1H−イミダゾール−1−イル)ピリジン−2−イル]ビニル}−8−(2−トリフルオロメチルフェニル)−5,6,7,8−テトラヒドロ−[1,2,4]トリアゾロ[1,5−a]ピリジン(810.18mg)を、室温で攪拌しながら8mLのD−酒石酸−エタノール溶液(751.13mg/10mL)に溶解した。ヘプタンを2mL加えたところオイルアウトしたので、超音波処理によりオイル状のものを溶解して澄明な溶液とし、実施例1に準じて調製した1.5D−酒石酸塩の結晶を数mg添加し、室温で攪拌した。約1時間攪拌したところ、ゲル化を経由して固体が析出した。更に、ヘプタン14mLを段階的に加えながら攪拌を続け、懸濁液の一部(2mL)を分取してグラスフィルターで固形物を濾取した。減圧下室温で乾燥して、表題化合物を白色固体の結晶として71.14mg得た。
H−NMR(400MHz,DMSO−d)δ(ppm):1.97(m,1H),2.15(s,3H),2.16(m,2H),2.30(m,1H),3.98(s,3H),4.28(m,2H),4.29(s,4H),4.51(dd,J=9,6Hz,1H),7.22(brs,1H),7.25(brd,J=8Hz,1H),7.27(d,J=8Hz,1H),7.32(d,J=16Hz,1H),7.46(d,J=16Hz,1H),7.49(brdd,J=8Hz,1H),7.61(brdd,J=8Hz,1H),7.77(brd,J=8Hz,1H),7.78(d,J=8Hz,1H),7.91(brs,1H).
【0033】
実施例3
(8S)−2−{(E)−2−[6−メトキシ−5−(4−メチル−1H−イミダゾール−1−イル)ピリジン−2−イル]ビニル}−8−(2−トリフルオロメチルフェニル)−5,6,7,8−テトラヒドロ−[1,2,4]トリアゾロ[1,5−a]ピリジン 二硫酸塩の合成
(8S)−2−{(E)−2−[6−メトキシ−5−(4−メチル−1H−イミダゾール−1−イル)ピリジン−2−イル]ビニル}−8−(2−トリフルオロメチルフェニル)−5,6,7,8−テトラヒドロ−[1,2,4]トリアゾロ[1,5−a]ピリジン(98.09mg)のエタノール(1mL)溶液に、濃硫酸(11.5μL)を加え、室温にて攪拌しつつ、酢酸エチルを1mL添加した。ナスフラスコ底部にオイル状の部分が確認されたので、超音波処理によりオイル状のものを溶解した。室温遮光下で約30分間攪拌し、析出した固形物をグラスフィルターで濾取し、減圧下室温で乾燥して、表題化合物を白色固体の結晶として127.94mg得た。
H−NMR(400MHz,DMSO−d)δ(ppm):1.97(m,1H),2.17(m,2H),2.30(m,1H),2.34(brd,J=1Hz,3H),4.01(s,3H),4.29(m,2H),4.52(dd,J=9,6Hz,1H),7.25(brd,J=8Hz,1H),7.37(d,J=16Hz,1H),7.40(d,J=8Hz,1H),7.50(brdd,J=8Hz,1H),7.55(d,J=16Hz,1H),7.61(brdd,J=8Hz,1H),7.77(m,1H),7.78(m,1H),8.00(d,J=8Hz,1H),9.36(d,J=2Hz,1H).
【0034】
実施例4
(8S)−2−{(E)−2−[6−メトキシ−5−(4−メチル−1H−イミダゾール−1−イル)ピリジン−2−イル]ビニル}−8−(2−トリフルオロメチルフェニル)−5,6,7,8−テトラヒドロ−[1,2,4]トリアゾロ[1,5−a]ピリジン 二臭化水素酸塩の合成
(8S)−2−{(E)−2−[6−メトキシ−5−(4−メチル−1H−イミダゾール−1−イル)ピリジン−2−イル]ビニル}−8−(2−トリフルオロメチルフェニル)−5,6,7,8−テトラヒドロ−[1,2,4]トリアゾロ[1,5−a]ピリジン(51.42mg)のエタノール(1mL)溶液に、濃臭化水素酸(24.8μL)を加え、室温にて攪拌しつつヘプタンを1mL添加した。数分後、溶液にヘプタンを更に1mL加え攪拌を続けた。室温にて1時間攪拌した後、約5℃で更に20分間攪拌した。析出した固形物をグラスフィルターで濾取し、減圧下室温で乾燥して、表題化合物を白色固体の結晶として49.24mg得た。
H−NMR(400MHz,DMSO−d)δ(ppm):1.99(m,1H),2.17(m,2H),2.30(m,1H),2.34(brd,J=1Hz,3H),4.01(s,3H),4.30(m,2H),4.52(dd,J=9,6Hz,1H),7.25(brd,J=8Hz,1H),7.37(d,J=16Hz,1H),7.40(d,J=7Hz,1H),7.50(brdd,J=8Hz,1H),7.55(d,J=16Hz,1H),7.61(brdd,J=8Hz,1H),7.77(m,1H),7.78(m,1H),8.00(d,J=7Hz,1H),9.37(d,J=2Hz,1H).
【0035】
実施例5
(8S)−2−{(E)−2−[6−メトキシ−5−(4−メチル−1H−イミダゾール−1−イル)ピリジン−2−イル]ビニル}−8−(2−トリフルオロメチルフェニル)−5,6,7,8−テトラヒドロ−[1,2,4]トリアゾロ[1,5−a]ピリジン 塩酸塩の合成
(8S)−2−{(E)−2−[6−メトキシ−5−(4−メチル−1H−イミダゾール−1−イル)ピリジン−2−イル]ビニル}−8−(2−トリフルオロメチルフェニル)−5,6,7,8−テトラヒドロ−[1,2,4]トリアゾロ[1,5−a]ピリジン(19.80mg)の2−プロパノール(1mL)溶液に、濃塩酸(3.6μL)を加え、室温にて攪拌しつつヘプタンを1mLずつ計4mL添加した。溶液を室温遮光下で5日間攪拌した。析出した固形物をグラスフィルターで濾取し、減圧下室温で乾燥して、表題化合物を白色固体の結晶として7.45mg得た。
H−NMR(400MHz,DMSO−d)δ(ppm):1.97(m,1H),2.17(m,2H),2.30(m,1H),2.30(s,3H),4.00(s,3H),4.30(m,2H),4.52(dd,J=9,6Hz,1H),7.25(brd,J=8Hz,1H),7.36(d,J=16Hz,1H),7.37(d,J=8Hz,1H),7.50(brt,J=8Hz,1H),7.53(d,J=16Hz,1H),7.61(brt,J=8Hz,1H),7.66(brs,1H),7.77(brd,J=8Hz,1H),7.96(d,J=8Hz,1H),9.06(brs,1H).
【0036】
実施例6
(8S)−2−{(E)−2−[6−メトキシ−5−(4−メチル−1H−イミダゾール−1−イル)ピリジン−2−イル]ビニル}−8−(2−トリフルオロメチルフェニル)−5,6,7,8−テトラヒドロ−[1,2,4]トリアゾロ[1,5−a]ピリジン 塩酸塩の合成
(8S)−2−{(E)−2−[6−メトキシ−5−(4−メチル−1H−イミダゾール−1−イル)ピリジン−2−イル]ビニル}−8−(2−トリフルオロメチルフェニル)−5,6,7,8−テトラヒドロ−[1,2,4]トリアゾロ[1,5−a]ピリジン(79.77mg)の2−プロパノール(3mL)溶液に、濃塩酸(14.3μL)とヘプタン(7mL)を加え、室温にて攪拌しつつ、種結晶として実施例5で得た結晶を少量添加した。約5℃の低温実験室に移し1時間攪拌した後、ヘプタンを更に1mL加え数分間攪拌した。析出した固形物をグラスフィルターで濾取した際、濾液中に固形物が沈澱した。この析出した固形物をグラスフィルターで濾取し、減圧下室温で乾燥して、表題化合物を白色固体の結晶として38.02mg得た。
H−NMR(400MHz,DMSO−d)δ(ppm):1.97(m,1H),2.17(m,2H),2.29(m,1H),2.32(brd,J=1Hz,3H),4.00(s,3H),4.30(m,2H),4.52(dd,J=9,6Hz,1H),7.25(brd,J=8Hz,1H),7.37(d,J=16Hz,1H),7.38(d,J=8Hz,1H),7.50(brdd,J=8Hz,1H),7.54(d,J=16Hz,1H),7.61(brdd,J=8Hz,1H),7.72(brs,1H),7.77(brd,J=8Hz,1H),7.98(d,J=8Hz,1H),9.24(brs,1H).
【0037】
実施例7
(8S)−2−{(E)−2−[6−メトキシ−5−(4−メチル−1H−イミダゾール−1−イル)ピリジン−2−イル]ビニル}−8−(2−トリフルオロメチルフェニル)−5,6,7,8−テトラヒドロ−[1,2,4]トリアゾロ[1,5−a]ピリジン メシル酸塩の合成
(8S)−2−{(E)−2−[6−メトキシ−5−(4−メチル−1H−イミダゾール−1−イル)ピリジン−2−イル]ビニル}−8−(2−トリフルオロメチルフェニル)−5,6,7,8−テトラヒドロ−[1,2,4]トリアゾロ[1,5−a]ピリジン(50mg)のt−ブチルメチルエーテル(0.8mL)−エタノール(0.1mL)混合溶液に、メシル酸(0.8μL)を加え、室温にて2時間攪拌したところ、固化した。固形物をグラスフィルターで濾取し、固形物をt−ブチルメチルエーテル−エタノール(8:1)で洗浄後、減圧下室温で乾燥し、表題化合物を淡黄色固体の結晶として51.9mg得た。
H−NMR(DMSO−d)δ(ppm):1.90−2.05(m,1H),2.10−2.22(m,2H),2.28−2.40(m,1H),2.31(s,3H),2.35(s,3H),4.02(s,3H),4.25−4.39(m,2H),4.50−4.55(m,1H),7.27(d,J=8.0Hz,1H),7.38(d,J=16.0Hz,1H),7.41(d,J=8.0Hz,1H),7.51(t,J=8.0Hz,1H),7.55(d,J=16.0Hz,1H),7.63(t,J=8.0Hz,1H),7.78(d,J=8.0Hz,1H),7.79(s,1H),8.01(d,J=8.0Hz,1H),9.37(s,1H).
【0038】
実施例8
(8S)−2−{(E)−2−[6−メトキシ−5−(4−メチル−1H−イミダゾール−1−イル)ピリジン−2−イル]ビニル}−8−(2−トリフルオロメチルフェニル)−5,6,7,8−テトラヒドロ−[1,2,4]トリアゾロ[1,5−a]ピリジン 二リン酸塩の合成
(8S)−2−{(E)−2−[6−メトキシ−5−(4−メチル−1H−イミダゾール−1−イル)ピリジン−2−イル]ビニル}−8−(2−トリフルオロメチルフェニル)−5,6,7,8−テトラヒドロ−[1,2,4]トリアゾロ[1,5−a]ピリジン(100mg)のアセトニトリル(0.8mL)溶液に、リン酸(52.8mg)のアセトニトリル(0.2mL)溶液を室温で加えた。析出した油状物をシュパーテルで攪拌したところ、固化した。固体をグラスフィルターで濾取し、固形物を氷冷したアセトニトリルで洗浄後、室温で10分間風乾し、その後減圧下室温で乾燥して、表題化合物を白色固体の結晶として120mg得た。
H−NMR(DMSO−d)δ(ppm):1.90−2.05(m,1H),2.11−2.20(m,2H),2.15(s,3H),2.25−2.35(m,1H),3.99(s,3H),4.24−4.39(m,2H),4.50−4.55(m,1H),7.23(s,1H),7.26(d,J=7.0Hz,1H),7.28(d,J=8.0Hz,1H),7.33(d,J=16.0Hz,1H),7.47(d,J=16.0Hz,1H),7.51(t,J=7.0Hz,1H),7.63(t,J=7.0Hz,1H),7.78(d,J=7.0Hz,1H),7.79(d,J=8.0Hz,1H),7.90(s,1H).
【0039】
実施例9
(8S)−2−{(E)−2−[6−メトキシ−5−(4−メチル−1H−イミダゾール−1−イル)ピリジン−2−イル]ビニル}−8−(2−トリフルオロメチルフェニル)−5,6,7,8−テトラヒドロ−[1,2,4]トリアゾロ[1,5−a]ピリジン 二リン酸塩の合成
(8S)−2−{(E)−2−[6−メトキシ−5−(4−メチル−1H−イミダゾール−1−イル)ピリジン−2−イル]ビニル}−8−(2−トリフルオロメチルフェニル)−5,6,7,8−テトラヒドロ−[1,2,4]トリアゾロ[1,5−a]ピリジン(50mg)のヘプタン(0.6mL)−エタノール(0.15mL)混合溶液に、リン酸(13.2mg)のエタノール(0.05mL)溶液を室温で加えた。混合液を室温で攪拌し、析出した固形物をグラスフィルターで濾取した。固形物をヘプタン−エタノール(3:1)で洗浄後、減圧下室温で乾燥して、表題化合物を白色固体の結晶として37.6mg得た。
H−NMR(DMSO−d)δ(ppm):1.90−2.05(m,1H),2.11−2.20(m,2H),2.15(s,3H),2.25−2.35(m,1H),3.99(s,3H),4.24−4.39(m,2H),4.50−4.55(m,1H),7.23(s,1H),7.26(d,J=7.0Hz,1H),7.28(d,J=8.0Hz,1H),7.33(d,J=16.0Hz,1H),7.47(d,J=16.0Hz,1H),7.51(t,J=7.0Hz,1H),7.63(t,J=7.0Hz,1H),7.78(d,J=7.0Hz,1H),7.79(d,J=8.0Hz,1H),7.90(s,1H).
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明によれば、原薬として利用することができる(8S)−2−{(E)−2−[6−メトキシ−5−(4−メチル−1H−イミダゾ−ル−1−イル)ピリジン−2−イル]ビニル}−8−[2−(トリフルオロメチル)フェニル]−5,6,7,8−テトラヒドロ[1,2,4]トリアゾロ[1,5−a]ピリジン・1.5D−酒石酸塩および(8S)−2−{(E)−2−[6−メトキシ−5−(4−メチル−1H−イミダゾ−ル−1−イル)ピリジン−2−イル]ビニル}−8−[2−(トリフルオロメチル)フェニル]−5,6,7,8−テトラヒドロ[1,2,4]トリアゾロ[1,5−a]ピリジン・二硫酸塩をはじめとする化合物(1)の種々の塩やそれらの結晶を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機酸、有機カルボン酸および有機スルホン酸からなる群から選択される一つの酸と(8S)−2−{(E)−2−[6−メトキシ−5−(4−メチル−1H−イミダゾ−ル−1−イル)ピリジン−2−イル]ビニル}−8−[2−(トリフルオロメチル)フェニル]−5,6,7,8−テトラヒドロ[1,2,4]トリアゾロ[1,5−a]ピリジンとからなる塩またはその溶媒和物。
【請求項2】
酸が、有機カルボン酸である、請求項1記載の塩またはその溶媒和物。
【請求項3】
有機カルボン酸が、酢酸、シュウ酸、マレイン酸、酒石酸、マロン酸、フマル酸またはクエン酸である、請求項1または2記載の塩またはその溶媒和物。
【請求項4】
酸が、有機スルホン酸である、請求項1記載の塩またはその溶媒和物。
【請求項5】
有機スルホン酸が、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸またはカンファースルホン酸である、請求項1または4記載の塩またはその溶媒和物。
【請求項6】
酸が、無機酸である、請求項1記載の塩またはその溶媒和物。
【請求項7】
無機酸が、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、またはリン酸である、請求項1または6記載の塩またはその溶媒和物。
【請求項8】
(8S)−2−{(E)−2−[6−メトキシ−5−(4−メチル−1H−イミダゾ−ル−1−イル)ピリジン−2−イル]ビニル}−8−[2−(トリフルオロメチル)フェニル]−5,6,7,8−テトラヒドロ[1,2,4]トリアゾロ[1,5−a]ピリジンのフリー体の結晶、あるいは請求項1から7のいずれかに記載の塩またはその溶媒和物の結晶。
【請求項9】
粉末X線回折において、回折角度(2θ±0.2°)12.6°および23.2°に回折ピークを有する、(8S)−2−{(E)−2−[6−メトキシ−5−(4−メチル−1H−イミダゾ−ル−1−イル)ピリジン−2−イル]ビニル}−8−[2−(トリフルオロメチル)フェニル]−5,6,7,8−テトラヒドロ[1,2,4]トリアゾロ[1,5−a]ピリジン・1.5D−酒石酸塩の結晶。
【請求項10】
粉末X線回折において、回折角度(2θ±0.2°)17.1°および24.0°に回折ピークを有する、(8S)−2−{(E)−2−[6−メトキシ−5−(4−メチル−1H−イミダゾ−ル−1−イル)ピリジン−2−イル]ビニル}−8−[2−(トリフルオロメチル)フェニル]−5,6,7,8−テトラヒドロ[1,2,4]トリアゾロ[1,5−a]ピリジン・二硫酸塩の結晶。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2012−519151(P2012−519151A)
【公表日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−514997(P2011−514997)
【出願日】平成22年2月24日(2010.2.24)
【国際出願番号】PCT/JP2010/053372
【国際公開番号】WO2010/098490
【国際公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【出願人】(506137147)エーザイ・アール・アンド・ディー・マネジメント株式会社 (215)
【Fターム(参考)】