説明

テトラヒドロトリアゾロピリジン誘導体の製造方法

【課題】2−ビニル−8−フェニル−5,6,7,8−テトラヒドロ[1,2,4]トリアゾロ[1,5−a]ピリジン誘導体およびその製造中間体の製造方法の提供。
【解決手段】式(II)


(式中、AおよびBは、それぞれ置換基を有してもよいアリール基またはヘテロアリール基を示す。)で表される化合物を酸存在下、溶媒中で加熱することにより、式(I)


(式中、AおよびBは、前記定義と同意義を示す。)で表される化合物またはその塩を製造することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テトラヒドロトリアゾロピリジン誘導体の製造方法に関する。更に詳細には、本発明は、式(I)
【化1】

[式中、AおよびBは、それぞれ置換基を有していてもよいアリール基またはヘテロアリール基を示す。]で表される2−ビニル−5,6,7,8−テトラヒドロ[1,2,4]トリアゾロ[1,5−a]ピリジン誘導体の製造方法およびその製造中間体に関する。当該化合物、中でも、(8S)−2−{(E)−2−[6−メトキシ−5−(4−メチル−1H−イミダゾ−ル−1−イル)ピリジン−2−イル]ビニル}−8−[2−(トリフルオロメチル)フェニル]−5,6,7,8−テトラヒドロ[1,2,4]トリアゾロ[1,5−a]ピリジンは、アミロイドβ産生低下作用などを示し、アルツハイマー病などのアミロイドβ関与の疾患の進行抑制剤または予防薬として有用である。
【背景技術】
【0002】
アルツハイマー病は、神経細胞の変性や脱落とともに、老人班の形成および神経原繊維変化を特徴とする疾患である。現在、アルツハイマー病の治療は、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤に代表される症状改善剤による対症療法に限られていて、病気の進行を抑制する根本療法剤は開発されていない。アルツハイマー病の根本療法剤の創出には、病態の発症原因を制御する方法の開発が必要である。
アミロイド前駆体タンパク(以下、APPという。)の代謝産物であるアミロイドβ40およびアミロイドβ42(以下、Aβ40およびAβ42という)などのAβタンパクは、神経細胞の変性・脱落、さらには痴呆症状の発現に大きくかかわると考えられている(例えば、非特許文献1および非特許文献2参照)。したがって、Aβ40および42の産生を低下させる化合物は、アルツハイマー病の進行抑制剤または予防薬として期待されている。
【0003】
特許文献1には、下記式
【化2】

[式中、Uは窒素原子等を示し、Vは酸素原子等を示し、Gは酸素原子等を示し、Rは水素原子、ハロゲン原子等を示し、Rは水素原子、アルキル基等を示し、Rはアルキル基等を示し、Rはアルキル基等を示し、Rはハロゲン原子等を示し、Rはアルキル基等を示し、R10はアルキル基等を示す]で表される化合物が、Aβ40および42の産生抑制に関与するγ−セクレターゼモジュレーターであること、およびそれら化合物の製造方法が開示されている。
【0004】
特許文献2には、下記式
【化3】

[式中、RおよびRは、水素原子、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基等を示し、Hetは、5もしくは6員不飽和へテロ環基等を示す]で表される2−[4−(イミダゾリル)フェニル]ビニル−ヘテロサイクル誘導体がAβ産生抑制作用を示すこと、およびそれら化合物の製造方法が開示されている。
【0005】
特許文献3には、下記式
【化4】

[式中、Arは、C1−6アルキル基で置換されてもよいイミダゾリル基等を示し、Arは、C1−6アルコキシ基で置換されてもよいフェニル基等を示し、Xは、二重結合等を示し、Hetは、C1−6アルキル基等で置換されてもよいイミダゾリル基等を示す]で表される化合物がアミロイド前駆体蛋白からアミロイドベータ40および42の産生を抑制すること、およびそれら化合物の製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2008/137139号パンフレット
【特許文献2】国際公開第2008/097538号パンフレット
【特許文献3】国際公開第2007/102580号パンフレット
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Klein WL, et al., Alzheimer’s disease-affected brain: Presence of oligomeric Aβ ligands(ADDLs)suggests a molecular basis for reversible memory loss, Proceding National Academy of Science USA 2003,Sep 2;100(18), p.10417-10422.
【非特許文献2】Nitsch RM, et al., Antibodies against β-amyloid slow cognitive decline in Alzheimer’s disease, Neuron, 2003, May 22;38, p.547-554.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明者らは、特許文献1から3に記載された化合物とは化学構造が相違し、文献未記載の新規化合物であって、前記式(I)で表される2−ビニル−5,6,7,8−テトラヒドロ[1,2,4]トリアゾロ[1,5−a]ピリジン誘導体、中でも式(I−3)
【化5】

で表される(8S)−2−{(E)−2−[6−メトキシ−5−(4−メチル−1H−イミダゾ−ル−1−イル)ピリジン−2−イル]ビニル}−8−[2−(トリフルオロメチル)フェニル]−5,6,7,8−テトラヒドロ[1,2,4]トリアゾロ[1,5−a]ピリジンに代表される化合物群が、Aβ40および42の産生を低下させる作用を有することを見出した(PCT/JP2007/054532)。
式(I−3)に代表される、式(I)で表される2−[5−(イミダゾリル)ピリジン−2−イル]ビニル誘導体は文献未記載の新規化合物であり、従って、その製造方法も知られておらず、効率の良い製造方法の開発が課題であった。
従って、本発明の課題は、アミロイドβ産生低下作用を有する、2−ビニル−5,6,7,8−テトラヒドロ[1,2,4]トリアゾロ[1,5−a]ピリジン誘導体、特に(8S)−2−{(E)−2−[6−メトキシ−5−(4−メチル−1H−イミダゾ−ル−1−イル)ピリジン−2−イル]ビニル}−8−[2−(トリフルオロメチル)フェニル]−5,6,7,8−テトラヒドロ[1,2,4]トリアゾロ[1,5−a]ピリジンまたはその塩の製造方法、並びに、その製造中間体およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究した結果、以下の製造方法およびそれに用いる製造中間体を見出し、本発明を完成した。
すなわち本発明は、
[1].式(II)
【化6】

(式中、Aは、置換基群Aから選択される1乃至3の置換基を有していてもよいアリール基または置換基群Aから選択される1乃至3の置換基を有していてもよいヘテロアリール基を示し、Bは、置換基群Bから選択される置換基を有していてもよいアリール基または置換基群Aから選択される1乃至3の置換基を有していてもよいヘテロアリール基を示す。)で表される化合物またはその塩を酸存在下、溶媒中で加熱する工程を含む、式(I)
【化7】

(式中、AおよびBは、前記定義と同意義を示す。)で表される化合物またはその塩の製造方法。
置換基群A:ハロゲン原子、置換基群A1から選択される1乃至3の置換基を有していてもよい炭素数1乃至6個の低級アルキル基、置換基群A1から選択される1乃至3の置換基を有していてもよい炭素数1乃至6個の低級アルコキシ基、置換基群A2から選択される1乃至3の置換基を有していてもよいアリール基および置換基群A2から選択される1乃至3の置換基を有していてもよいヘテロアリール基。
置換基群A1:水酸基、ハロゲン原子、シアノ基および炭素数1乃至6個の低級アルコシキ基。
置換基群A2:ハロゲン原子および1乃至3のハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1乃至6個の低級アルキル基。
置換基群B:ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、1乃至3のハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1乃至6個の低級アルキル基および1乃至3のハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1乃至6個の低級アルコキシ基;
[2].Aが式A−A−である、式(II−1)
【化8】

(式中、Aは置換基群A1から選択される1乃至3の置換基を有していてもよいヘテロアリール基を示し、Aは置換基群A2から選択される1乃至3の置換基を有していてもよいアリール基または置換基群A2から選択される1乃至3の置換基を有していてもよいヘテロアリール基を示し、Bは前記[1]記載の定義と同義である。)で表される化合物またはその塩を用いて、式(I−1)
【化9】

(式中、A、AおよびBは前記定義と同意義を示す。)で表される化合物またはその塩を製造する、前記[1]記載の製造方法。
置換基群A1:水酸基、ハロゲン原子、シアノ基および炭素数1乃至6個の低級アルコシキ基。
置換基群A2:ハロゲン原子および1乃至3のハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1乃至6個の低級アルキル基;
[3].A1が置換基群A1から選択される1乃至3の置換基を有していてもよいフェニル基または置換基群A1から選択される1乃至3の置換基を有していてもよいピリジル基である、前記[2]記載の製造方法、
[4].A2が置換基群A2から選択される1乃至3の置換基を有していてもよいイミダゾリル基である、前記[1]または[2]記載の製造方法;
[5].Bが置換基群Bから選択される置換基を有していてもよいフェニル基である、前記[1]乃至[4]の何れかに記載の製造方法;
[6].式(II−2)
【化10】

で表される(2E)−N’−{4−シアノ−4−[2−(トリフルオロメチル)フェニル]ブチル}−3−[6−メトキシ−5−(4−メチル−1H−イミダゾール−1−イル)ピリジン−2−イル]アクリロヒドラジドまたはその塩を酸存在下、溶媒中で加熱する工程を含む、式(I−2)
【化11】

で表される2−{(E)−2−[6−メトキシ−5−(4−メチル−1H−イミダゾ−ル−1−イル)ピリジン−2−イル]ビニル}−8−[2−(トリフルオロメチル)フェニル]−5,6,7,8−テトラヒドロ[1,2,4]トリアゾロ[1,5−a]ピリジンまたはその塩の製造方法;
[7].式(1)
【化12】

で表される(2S)−5−オキソ−2−[2−(トリフルオロメチル)フェニル]ペンタンニトリルまたはその塩と、式(2)
【化13】

で表される(2E)−3−[6−メトキシ−5−(4−メチル−1H−イミダゾ−ル−1−イル)ピリジン−2−イル]アクリロヒドラジドまたはその塩とを反応させて、式(II−3)
【化14】

で表される(2E)−N’−{(4S)−4−シアノ−4−[2−(トリフルオロメチル)フェニル]ブチル}−3−[6−メトキシ−5−(4−メチル−1H−イミダゾール−1−イル)ピリジン−2−イル]アクリロヒドラジドまたはその塩に変換する工程;および
前記式(II−3)の化合物またはその塩を酸存在下、溶媒中で加熱する工程を含む、式(I−3)
【化15】

で表される(8S)−2−{(E)−2−[6−メトキシ−5−(4−メチル−1H−イミダゾ−ル−1−イル)ピリジン−2−イル]ビニル}−8−[2−(トリフルオロメチル)フェニル]−5,6,7,8−テトラヒドロ[1,2,4]トリアゾロ[1,5−a]ピリジンまたはその塩の製造法;
[8].式(II−3)
【化16】

で表される(2E)−N’−{(4S)−4−シアノ−4−[2−(トリフルオロメチル)フェニル]ブチル}−3−[6−メトキシ−5−(4−メチル−1H−イミダゾール−1−イル)ピリジン−2−イル]アクリロヒドラジドまたはその塩;
[9].式(3)
【化17】

で表される2−トリフルオロメチルフェニル酢酸またはその塩と式(4)
【化18】

で表される(S)−(+)−4−フェニル−2−オキサゾリジノンまたはその塩とを反応させることにより、式(5)
【化19】

で表される(4S)−4−フェニル−3−{[2−(トリフルオロメチル)フェニル]アセチル}−1,3−オキサゾリン−2−オンまたはその塩に変換する工程;
前記式(5)の化合物またはその塩と1−クロロ−3−ヨードプロパンとを反応させることにより、式(6)
【化20】

で表される(4S)−3−{(2S)−5−クロロ−2−[2−(トリフルオロメチル)フェニル]ペンタノイル}−4−フェニル−1,3−オキサゾリン−2−オンまたはその塩に変換する工程;
前記式(6)の化合物またはその塩を加水分解することにより、式(7)
【化21】

で表される(2S)−5−クロロ−2−[2−(トリフルオロメチル)フェニル]ペンタン酸またはその塩に変換する工程;
前記式(7)の化合物またはその塩を式(8)
【化22】

で表される(2S)−5−クロロ−2−[2−(トリフルオロメチル)フェニル]ペンタン酸アミドまたはその塩に変換する工程;
前記式(8)の化合物またはその塩を式(9)
【化23】

で表される(2S)−5−クロロ−2−[2−(トリフルオロメチル)フェニル]ペンタンニトリルまたはその塩に変換する工程;および
前記式(9)の化合物またはその塩を反応させる工程を含む、式(1)
【化24】

で表される(2S)−5−オキソ−2−[2−(トリフルオロメチル)フェニル]ペンタンニトリルまたはその塩の製造法;および
[10].下記式
【化25】

で表される化合物またはそれらの塩、
に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、特に、式(I−3)
【化26】

で表される化合物またはその塩を収率よく製造することができる。また、本発明によれば、式(I−3)の化合物を収率よく製造するための製造中間体およびその製造方法も提供される。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本明細書において記載する記号、用語などの意義を説明する。
【0012】
本明細書中においては、化合物の構造式が便宜上一定の異性体を表すことがあるが、本発明には化合物の構造上生ずる総ての幾何異性体、不斉炭素に基づく光学異性体、立体異性体、互変異性体などの異性体および異性体混合物を含み、便宜上の式の記載に限定されるものではなく、いずれか一方の異性体でも混合物でもよい。したがって、分子内に不斉炭素原子を有し、光学活性体およびラセミ体が存在することがあり得るが、本発明においては限定されず、いずれもが含まれる。さらに結晶多形が存在することもあるが同様に限定されず、いずれかの単一結晶形またはそれらの混合物であってもよく、無水物以外に水和物などの溶媒和物であってもよい。
【0013】
本発明の製造方法において、使用する化合物および製造される目的化合物は、いずれの化合物も塩であってもよい。塩としては、具体的には、例えば無機酸塩(例えば硫酸塩、硝酸塩、過塩素酸塩、リン酸塩、炭酸塩、重炭酸塩、フッ化水素酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩など)、有機カルボン酸塩(例えば酢酸塩、シュウ酸塩、マレイン酸塩、酒石酸塩、フマル酸塩、クエン酸塩など)、有機スルホン酸塩(例えばメタンスルホン酸塩、トリフルオロメタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、トルエンスルホン酸塩、カンファースルホン酸塩など)、アミノ酸塩(例えばアスパラギン酸塩、グルタミン酸塩など)、四級アミン塩、アルカリ金属塩(例えばナトリウム塩、カリウム塩など)、アルカリ土類金属塩(例えばマグネシウム塩、カルシウム塩など)などが挙げられる。
【0014】
本発明にかかる前記式(I)および(II)における、「アリール基」および「ヘテロアリール基」とは以下の意味を有する。
【0015】
「アリール基」とは、例えば、炭素数6ないし14の単環式、二環式または三環式芳香族炭化水素環基を示し、当該基における好ましい基としては、例えばフェニル基、インデニル基、ナフチル基、アズレニル基、ヘプタレニル基、ビフェニル基、フルオレニル基、フェナレニル基、フェナントレニル基、アントラセニル基等の単環式、二環式または三環式の6ないし14員芳香族炭化水素環基が挙げられ、好ましくは、例えばフェニル基が挙げられる。
【0016】
「ヘテロアリール基」とは、炭素数5ないし14の単環式、二環式または三環式芳香族複素環基を示し、当該基における好ましい基としては、例えば(1)ピロリル基、ピリジル基、ピリダジニル基、ピリミジニル基、ピラジニル基、ピラゾリニル基、イミダゾリル基、インドリル基、イソインドリル基、インドリジニル基、プリニル基、インダゾリル基、キノリル基、イソキノリル基、キノリジニル基、フタラジニル基、ナフチリジニル基、キノキサリニル基、キナゾリニル基、シンノリニル基、プテリジニル基、イミダゾトリアジニル基、ピラジノピリダジニル基、アクリジニル基、フェナントリジニル基、カルバゾリル基、ペリミジニル基、フェナントロリニル基、フェナシル基等の含窒素芳香族複素環基、(2)チエニル基、ベンゾチエニル基等の含硫黄芳香族複素環基、(3)フリル基、ピラニル基、シクロペンタピラニル基、ベンゾフラニル基、イソベンゾフラニル基等の含酸素芳香族複素環基、(4)チアゾリル基、イソチアゾリル基、ベンズチアゾリニル基、ベンズチアジアゾリル基、フェノチアジニル基、イソキサゾリル基、フラザニル基、フェノキサジニル基、ピラゾロオキサゾリル基、イミダゾチアゾリル基、チエノフリル基、フロピロリル基、ピリドオキサジニル基等の如く窒素原子、硫黄原子および酸素原子からなる群から選ばれる2個以上の異種原子を含んでなる芳香族複素環基が挙げられ、好ましくは、例えばチエニル基、イミダゾリル基、ピリジル基等が挙げられる。
【0017】
「ハロゲン原子」とは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等を示し、好ましくはフッ素原子、塩素原子、臭素原子である。
【0018】
「炭素数1乃至6個の低級アルキル基」の好ましい基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、ターシャリーブチル基、n−ペンチル基、i−ペンチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、1−メチルプロピル基、1,2−ジメチルプロピル基、1−エチルプロピル基、1−メチル−2−エチルプロピル基、1−エチル−2−メチルプロピル基、1,1,2−トリメチルプロピル基、1−メチルブチル基、2−メチルブチル基、1,1−ジメチルブチル基、2,2−ジメチルブチル基、2−エチルブチル基、1,3−ジメチルブチル基、2−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基等の直鎖または分枝状アルキル基が挙げられる。
【0019】
「炭素数1乃至6個の低級アルコキシ基」とは、炭素数1ないしは6個のアルキル基の、水素原子が酸素原子に置換された基を示し、好ましい基としては、例えばメトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、n−ブトキシ基、i−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、ターシャリーブトキシ基、n−ペントキシ基、i−ペントキシ基、sec−ペントキシ基、ターシャリーペントキシ基、n−ヘキソキシ基、i−ヘキソキシ基、1,2−ジメチルプロポキシ基、2−エチルプロポキシ基、1−メチル−2−エチルプロポキシ基、1−エチル−2−メチルプロポキシ基、1,1,2−トリメチルプロポキシ基、1,1,2−トリメチルプロポキシ基、1,1−ジメチルブトキシ基、2,2−ジメチルブトキシ基、2−エチルブトキシ基、1,3−ジメチルブトキシ基、2−メチルペントキシ基、3−メチルペントキシ基、ヘキシルオキシ基等が挙げられる。
【0020】
「1乃至3のハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1乃至6個の低級アルキル基」とは、前記低級アルキル基の水素原子がハロゲン原子で置換されていてもよい低級アルキル基を示し、例えばモノフルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、トリクロロメチル基、1,2−ジフルオロエチル基、2,2−ジフルオロエチル基、1,2−ジクロロエチル基、1,2−ジフルオロプロピル基、2,2−ジフルオロプロピル基等が挙げられる。
【0021】
「1乃至3のハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1乃至6個の低級アルコキシ基」とは、前記低級アルコキシ基の水素原子がハロゲン原子で置換されていてもよい低級アルコキシ基を示し、例えばモノフルオロメチルオキシ基、ジフルオロメチルオキシ基、トリフルオロメチルオキシ基、トリクロロメチルオキシ基等が挙げられる。
【0022】
本発明にかかる前記式(I)および(II)における、「置換基群A」、「置換基群A1」、「置換基群A2」および「置換基群B」とは以下の意味を有する。
置換基群A:ハロゲン原子、置換基群A1から選択される1乃至3の置換基を有していてもよい炭素数1乃至6個の低級アルキル基、置換基群A1から選択される1乃至3の置換基を有していてもよい炭素数1乃至6個の低級アルコキシ基、置換基群A2から選択される1乃至3の置換基を有していてもよいアリール基および置換基群A2から選択される1乃至3の置換基を有していてもよいヘテロアリール基;
置換基群A1:水酸基、ハロゲン原子、シアノ基および炭素数1乃至6個の低級アルコシキ基;
置換基群A2:ハロゲン原子および1乃至3のハロゲン原子を有していてもよい炭素数1乃至6個の低級アルキル基;および
置換基群B:ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、1乃至3のハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1乃至6個の低級アルキル基および1乃至3のハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1乃至6個の低級アルコキシ基。
【0023】
以下に、本発明を詳細に説明する。
【0024】
製造方法1
【化27】

[式中、AおよびBは、前記定義と同意義である]
【0025】
製造方法1は、化合物(II)を原料として化合物(I)を製造する方法である。
【0026】
工程1
工程1は酸存在下、化合物(II)で表されるN’−(4−シアノブチル)アクリロヒドラジド誘導体を溶媒中で加熱して分子内閉環反応させることにより、式(I)で表される2−ビニル−5,6,7,8−テトラヒドロ[1,2,4]トリアゾロ[1,5−a]ピリジン誘導体に変換する工程(以下、工程1)である。
【0027】
式(II)の化合物は後述の製造方法2、4、5および6または実施例に記載されている製造法に従って市販品から当業者に公知の方法で製造することができる。具体的には、例えば、式(II)において、Aが6−メトキシ−5−(4−メチル−1H−イミダゾール−1−イル)ピリジン−2−イル基であり、Bが2−(トリフルオロメチル)フェニル基である化合物(II−3)は、後述の製造方法5に示されるように、化合物(6)から化合物(9)を製造し、更に、製造方法4に示されるように、化合物(9)から化合物(1)を製造し、他方、製造方法6に示されるように、化合物(13)から化合物(2)を製造し、次いで、製造方法2に示されるように、化合物(1)と化合物(2)とを反応させることにより、製造することができる。AおよびBが他の官能基である式(II)の化合物は、製造方法5の化合物(6)における2−(トリフルオロメチル)フェニル基を、他の官能基であるBに変えた化合物を用いて、製造方法5および4に示された方法と同様にして、化合物(1)に対応する化合物を製造し、他方、製造方法6の化合物(13)における6−メトキシ−5−(4−メチル−1H−イミダゾール−1−イル)ピリジン−2−イル基を、他の官能基であるAに変えた化合物を用いて、製造方法6に示された方法と同様にして、化合物(2)に対応する化合物を製造し、この化合物と、前記した化合物(1)に対応する化合物とを、製造方法2の工程2−1と同様にして反応させることにより、製造することができる。
【0028】
工程1の反応は酢酸等の酸を用いて行う。本反応に使用する溶媒としては反応を阻害せず出発物質をある程度溶解するものであれば特に限定されず、例えばテトラヒドロフラン、ベンゼン、トルエン、N、N−ジメチルホルムアミド等を用いることができる。反応温度は特に限定されないが、通常、室温〜100℃である。
【0029】
工程1においては、化合物(II)として、Aが式A−A−である、式(II−1)
【化28】

(式中、A、AおよびBは前記定義と同意義である。)で表される化合物を用い、式(I−1)
【化29】

(式中、A、AおよびBは前記定義と同意義を示す。)で表される化合物を製造するのが好ましい。
【0030】
製造方法2
【化30】

【0031】
製造方法2は化合物(2)を原料として化合物(I−3)を製造する方法である。化合物(II−3)は文献未記載の新規化合物である。
【0032】
工程2−1
工程2−1は、化合物(1)と化合物(2)との還元的アミノ化反応により、化合物(II−3)を得る工程である。
本反応は、カルボニル化合物とアミン化合物との還元的アミノ化反応に通常用いられている条件と同様の条件で反応を行うことができる。本反応に用いられる還元反応は特に限定されず、ボラン、水素化ホウ素錯化合物、ギ酸等の還元剤による還元的アミノ化反応、金属触媒を用いた水素雰囲気下での接触還元反応などがあげられる。
水素化ホウ素錯化合物を用いた還元的アミノ化反応の例として、例えば、W.S.Emerson, Organic Reactions, 4,174(1948); C.F.Lane, Synthesis, 135(1975),J.C.Stowell and S.J.Pedegimas,Synthesis,127(1974); A.F.Abdel-Magid,K.G.Carson,B.D.Harris,C.A.Maryanoff,and R.D.Shah,Journal of Organic Chemistry,61,3849(1996)等の文献を挙げることができる。
使用する化合物(2)はフリー体であっても塩であってもよく、好ましくは化合物(2)の塩酸塩、臭化水素酸塩等を用いることができる。
水素化ホウ素錯化合物として、水素化ホウ素ナトリウム、シアン化水素化ホウ素ナトリウム、トリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム等を用いることができる。
還元剤として水素化ホウ素錯化合物を用いる場合、溶媒は反応を阻害せず出発物質をある程度溶解するものであれば特に限定されず、具体的には例えば、メタノール、エタノール、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン等を用いることができる。本反応は、酸の共存下に行うことで収率向上等のより好ましい結果を得ることができる。かかる酸としては特に限定はされず、好ましくは塩酸等の鉱酸、酢酸等の有機酸、塩化亜鉛、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体、チタニウム(IV)テトライソプロポキシド等のルイス酸があげられる。反応温度は特に限定されず、通常、−78℃〜溶媒の還流温度であり、好ましくは氷冷から室温である。
還元剤としてギ酸を用いる場合、溶媒は反応を阻害しないものであれば特に限定されず、過剰量のギ酸を溶媒として用いることができる。反応温度は特に限定されず、通常、50℃〜溶媒の還流温度である。また、密閉耐圧容器の使用による150〜250℃の高温加熱が反応時間短縮等の良好な結果を与えることがある。
水素雰囲気下での接触還元反応を用いる際に使用される溶媒は、溶媒は反応を阻害しないものであれば特に限定されず、メタノール、エタノール、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、酢酸エチル等があげられる。反応に用いる金属触媒としては、パラジウム−炭素、水酸化パラジウム−炭素、酸化白金、ラネーニッケル等をあげることができる。反応条件は、特に限定されないが、室温〜溶媒の還流温度、常圧から150気圧、好ましくは室温〜60℃、常圧〜5気圧で行うことができる。本反応は、酸の共存下に行うことで収率向上等のより好ましい結果を得ることができる。かかる酸としては特に限定はされず、好ましくは塩酸等の鉱酸、酢酸等の有機酸などが挙げられる。
【0033】
工程2−2は、化合物(II−3)を溶媒中で加熱して分子内閉環反応させることにより、式(I−3)に変換する工程である。
反応は酸性、中性、塩基性条件の何れでも行うことができ、好ましくは酢酸等の酸を用いて行う。反応に使用する溶媒としては反応を阻害せず出発物質をある程度溶解するものであれば特に限定されず、例えばテトラヒドロフラン、ベンゼン、トルエン、N、N−ジメチルホルムアミド等を用いることができる。反応温度は特に限定されず、通常、50℃〜100℃である。
【0034】
製造方法3
【化31】

【0035】
製造方法3は、化合物(I−3)を製造する、前記製造方法2の別法であり、化合物(10)と化合物(11)を反応させて、化合物(I−3)を製造する方法である。
【0036】
工程3
工程3は、化合物(10)(2−イミノ−3−[2−(トリフルオロメチル)フェニル]ピペリジン−1−アミン)と化合物(11)((2E)−3−[6−メトキシ−5−(4−メチル−1H−イミダゾール−1−イル)ピリジン−2−イル]アクリル酸)とを縮合環化させることにより、化合物(I−3)を得る工程である。
本反応には、カルボン酸部位を活性化する方法が有効であり、酸塩化物法、カルボジイミド型縮合剤、リン酸アジド型縮合剤等が挙げられる。反応に使用する溶媒としては反応を阻害せず出発物質をある程度溶解するものであれば特に限定されず、例えばテトラヒドロフラン、ベンゼン、トルエン、N、N−ジメチルホルムアミド等を用いることができる。反応温度は特に限定されず、通常、50℃〜100℃である。
化合物(10)は後述の製造方法4または実施例に記載されている製造法に従って市販品から当業者に公知の方法で製造することができる。化合物(11)は後述の製造方法6に記載されている製造法に従って市販品から当業者に公知の方法で製造することができる。
使用する化合物(10)はフリー体であっても塩であってもよく、好ましくは化合物(10)の塩酸塩、臭化水素酸塩等を用いることができる。
【0037】
製造方法4
【化32】

【0038】
製造方法4は化合物(9)を原料として化合物(1)および化合物(10)を製造する方法である。化合物(1)および化合物(9)は文献未記載の新規化合物である。
【0039】
工程4−1
工程4−1は、化合物(9)を酸化反応により、化合物(1)を得る工程である。
本反応は、ハロゲン化メチルを酸化反応によりアルデヒドに変換する反応である。反応に用いる酸化剤としては、DMSO(Kornblum酸化)、ニトロ化合物(Haas反応)、ヘキサミン(Sommelet反応)、p−ニトロソジメチルアニリン(Krohnke反応)、アミンオキシド等が用いられる。
例えば、DMSO(Kornblum酸化)を用いて、反応性の低いハロゲン化メチル化合物の場合は、最初にヨード体に変換し、炭酸水素ナトリウム、トリエチルアミン、コリジン等の塩基の共存下DMSOと加熱する操作を必要とする(H.C.Brown,J.S.Cha,N.M.Yoon and B.Nazer, J.Org.Chem., 52,5400(1987)参照)。ヨード体は単離し、または単離せずにワンポットで反応に用いることができる。本反応にテトラフルオロほう酸銀等の銀塩を添加すると非常に温和な条件で反応することができる(J.S.Cha,J.E.Kim and K.W.Lee, J.Org.Chem., 52,5030(1987)参照)。
【0040】
工程4−2
工程4−2は、ニトリル化合物(9)を、イミダート化合物(12)に変換する工程である。
本反応で得られるイミダート化合物は、ニトリルに対しアルコールを塩化水素の存在下に付加させるPinner法および塩基存在下にアルコールを付加させる方法で合成することができる(例えば、P.Raynaud,R.C.Moreau, Bull.Soc.Chem.Fr.,1964,2997.またはA.W.Dox, Org.Synth., I,5(1941)等参照)。
【0041】
工程4−3
工程4−3は、化合物(12)から、化合物(10)を得る工程である。
本反応は、イミダート化合物(12)をヒドラジンと反応させ、さらに分子内環化させることで、化合物(10)に変換することができる。
化合物(9)は後述の製造方法5または実施例に記載されている製造法に従って市販品から当業者に公知の方法で製造することができる。
【0042】
製造方法5
【化33】

【0043】
製造方法5は化合物(6)を原料として化合物(9)を製造する方法である。化合物(7)および化合物(8)は文献未記載の新規化合物である。
【0044】
工程5−1
工程5−1は、化合物(6)を酸化的加水分解により、化合物(7)を得る工程である。
本反応は、本反応様の条件であれば特に限定されず、多くの文献に記載されている公知の手法を用いることができる(例えばEvans,D.A.;Bartroli,J.;Shih,T.I.,J.Am.Chem.Soc,1981、103、2127-2129.等に記載)。すなわち、アシルオキサゾリジノン化合物を水の存在下、テトラヒドロフラン等の水と混和する溶媒中で、過酸化水素および水酸化リチウム等の水酸化アルカリと反応させて、カルボン酸に変換する反応である。
反応温度は、0℃から室温が好ましい。
【0045】
工程5−2
工程5−2は、カルボン酸(7)を、アミド(8)に変換する工程である。
カルボン酸からアミドに変換する本反応は、本反応様の条件であれば特に限定されず、多くの文献に記載されている公知の手法を用いることができる(例えば、実験化学講座 第4版 22、丸善株式会社、1992年、p.138−144に記載)。
カルボン酸からアミドに変換する方法としては、1)加熱脱水による方法、2)縮合剤を用いる方法が良く知られている。
【0046】
工程5−3
工程5−3は、アミド化合物(8)を、脱水してニトリル化合物(9)に変換する工程である。
本反応は、本反応様の条件であれば特に限定されず、多くの文献に記載されている公知の手法を用いることができる(例えば、実験化学講座 第4版 20、丸善株式会社、1992年、p.449−450に記載)。
本反応に使用される脱水剤としては、五酸化リン、五塩化リン、塩化チオニル、トルエンスルホニルクロリド、メタンスルホニルクロリド、クロロスルホニルシアナート、N,N−ジシクロへキシルカルボジイミド、2−クロロベンゾオキサゾリウム塩などが挙げられる。
本反応は溶媒を用いる方法と反応混合物を溶媒なしに直接加熱して蒸留する方法とがある。
溶媒を用いる方法において使用される溶媒は、阻害せず出発物質をある程度溶解するものであれば特に限定されず、好ましくは、例えばアセトニトリル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、1−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド等が挙げられる。
化合物(6)は後述の実施例に記載されている製造法に従って市販品から当業者に公知の方法で製造することができる。
【0047】
製造方法6
【化34】

【0048】
製造方法6は化合物(13)を原料として化合物(2)または化合物(11)を製造する方法である。
【0049】
工程6−1
工程4−1は、化合物(13)と化合物(14)または化合物(15)との 溝呂木−Heck反応により、化合物(16)または化合物(17)を得る工程である。
【0050】
溝呂木−Heck反応は、好ましくは、例えば、ハロゲン化合物、トリフレート化合物である化合物(13)(ここにおいて、Xは塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子またはトリフルオロメタンスルホン酸エステル等のスルホン酸エステル基を示す。)を、化合物(13)に対して、1.0〜5.0当量のアルケン化合物(14)または(15)とを、化合物(13)に対して、0.01〜0.2当量の遷移金属触媒存在下でカップリング反応を行う。本反応は、操作性・攪拌効率の観点から溶媒の存在下に行うことが好ましく、用いる溶媒としては、出発原料、使用する遷移金属触媒により異なり、また反応を阻害せず出発物質をある程度溶解するものであれば特に限定されず、好ましくは、例えばアセトニトリル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、1−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド等が挙げられる。反応温度はカップリング反応を完結させるのに足りる温度とすべきであり、好ましくは室温〜150℃である。本反応は好ましくは不活性ガス雰囲気下で行い、より好ましくは窒素またはアルゴン雰囲気下で行う。遷移金属触媒としては、好ましくは例えばパラジウム錯体であり、より好ましくは、例えば酢酸パラジウム(II)、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)等の公知のパラジウム錯体が挙げられる。また、効率よく反応が進行するのに、燐配位子(好ましくは、例えばトリフェニルホスフィン、トリ−o−トリールホスフィン、トリ−ターシャリーブチルホスフィン、2−(ジ−ターシャリーブチルホスフィノ)ビフェニル等)等を適宜添加することも好ましい。また、塩基の存在下で好ましい結果を与えることもあり、使用する塩基としては、本反応様のカップリング反応で使用されるものであれば特に限定されないが、好ましくは、例えばトリエチルアミン、N,N−ジイソプロピルエチルアミン、N,N−ジシクロヘキシルメチルアミン、テトラブチルアンモニウムクロリド等が挙げられる。
【0051】
工程6−2
工程6−2は、化合物(16)を脱保護反応により、化合物(2)を得る工程である。
本脱保護反応は、出発原料により異なるが、本反応様の条件であれば特に限定されず、多くの文献に記載されている公知の手法を用いることができる(例えばT.W.Green., Protective Groups in Organic Synthesis, John Wiley & Sons.Inc.、1999, p.615-626に記載)。好ましくは、例えば、tert−ブチルカルバメート基を保護基として有する化合物に対して、1.0から100.0当量の酸存在下溶媒中攪拌する。使用する酸としては、塩酸、硫酸等の無機酸、トリフルオロ酢酸、メタンスルホン酸等の有機酸等である。使用する溶媒としては、反応を阻害せず出発原料をある程度溶解するものであれば特に限定されないが、好ましくは、例えば、酢酸エチル、メタノール、エタノール、1,4−ジオキサン、塩化メチレン、クロロホルム、メタノール、イソプロピルアルコール、N,N−ジメチルホルムアミドまたはN−メチルピロリドン等である。反応温度は好ましくない副生成物の形成を促進することなく反応を完結させるのに足る温度とすべきであり、好ましくは、例えば、0〜100℃である。
【0052】
工程6−3
工程6−3は、エステル化合物(17)を加水分解反応により、化合物(11)を得る工程である。
【0053】
カルボン酸化合物(11)は、エステル化合物(17)を加水分解することにより調製される。すなわち、工程6−3は、出発原料によって異なるが、本反応様の条件であれば特に限定されず、多くの文献に記載されている公知の手法(例えば、日本化学会編新実験化学講座(第22巻)有機合成[IV]、丸善株式会社、1992年11月、p.6−11に記載)を用いることができる。好ましくは、例えば、エステル化合物(8)を、エステル化合物(8)に対し、1.0〜100.0当量の塩基あるいは酸存在下、溶媒中で撹拌する。使用する塩基としては、出発原料により異なり特に限定されるものではないが、好ましくは、例えば、水素化ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸セシウム、炭酸バリウム等である。使用する酸としては、出発原料により異なり特に限定されるものではないが、好ましくは、例えば、塩酸、硫酸等の無機酸、あるいはトリフルオロ酢酸、パラトルエンスルホン酸等の有機酸、あるいは三塩化ホウ素等のルイス酸等である。使用する溶媒としては、出発原料によって異なり、また反応を阻害せず出発物質をある程度溶解するものであれば特に限定されないが、好ましくは、例えば、メタノール、エタノール、エチレングリコール等のアルコール系溶媒、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒、水、それらの混合溶媒等である。また、酸加水分解の場合、酢酸、ギ酸等の有機酸を溶媒として用いることもできる。反応温度は好ましくない副生成物の形成を促進することなく反応を完結させるのに足りる温度とすべきであり、好ましくは、例えば、室温〜100℃である。
【0054】
以下に、実施例をあげて、本発明をより詳細に説明するが、これらは例示的なものであって、本発明にかかる製造方法は如何なる場合も以下の具体例に制限されるものではない。当業者は、以下の実施例のみならず本願明細書にかかる特許請求の範囲に様々な変更を加えて本発明を最大限に実施することができ、かかる変更は本願明細書にかかる特許請求の範囲に含まれるものである。
また、実施例において使用される略語は当業者に周知の慣用的な略語である、いくつかの略語は以下に示す。
【0055】
THF;テトラヒドロフラン
DMF;N,N−ジメチルホルムアミド
DMSO;ジメチルスルホキシド
MTBE;tert−ブチルメチルエーテル
TFA;トリフルオロ酢酸
DMPU;1,3−ジメチル−3,4,5,6−テトラヒドロ−2(1H)−ピリミジノン
EDC・HCl;1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩
HOBt;1−ヒドロキシベンゾトリアゾール
LHMDS;リチウムヘキサメチルジシラジド
pTLC;分取薄層クロマトグラフィー
LC−MS;液体クロマトグラフィー−マススペクトルメトリー
PyBOP;ベンゾトリアゾール−1−イルオキシトリス(ピロリジノ)ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート
Pd2DBA3;トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム
Pd(t−Bu3P)2;ビス(トリ−t−ブチルホスフィン)パラジウム
【0056】
プロトン核磁気共鳴スペクトルの化学シフトは、テトラメチルシランに対するδ単位(ppm)で記録、カップリング定数はヘルツ(Hz)で記録されている。パターンは、s;シングレット、d;ダブレット、t;トリプレット、q;カルテット、br;ブロード。
【0057】
以下の実施例及び製造例中の「室温」は通常約10℃から約35℃を示す。%は特記しない限り重量パーセントを示す。
【実施例1】
【0058】
(4S)−4−フェニル−3−{[2−(トリフルオロメチル)フェニル]アセチル}−1,3−オキサゾリン−2−オンの合成
【化35】

【0059】
2−トリフルオロメチルフェニル酢酸(37.6g,184mmol)、(s)−(+)−4−フェニル−2−オキサゾリジノン(15g,92mmol)のトルエン(450mL)懸濁液にトリエチルアミン(51.5mL,368mmol)を室温で加えた。この懸濁液にピバロイルクロライド(22.7mL,184mmol)を室温で攪拌下に滴下した。得られた懸濁液を18時間攪拌下加熱還流した。室温に冷却後、2N塩酸(150mL)を加え、抽出した。有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(150mL)で2回、5% 塩化ナトリウム水溶液(150mL)、水(150mL)で順次洗い、減圧濃縮した。得られた固体に酢酸エチル(45mL)を加え、50℃に加温して完全に溶かした。この溶液に、ヘプタン(180mL)を加え、室温まで徐冷した。得られた懸濁液をさらに氷冷まで冷却した後、ろ過し、ヘプタン(150mL)で洗い、減圧乾燥して標題化合物の一番晶を27.7g(含量93%)得た。ろ液から二番晶を1.43g(含量87%)得た。合わせて標題化合物を白色結晶として収率84%で得た。
H−NMR(400MHz,CDCl):δ 4.34(dd,J=4.0,8.8Hz,1H),4.47(s,2H),4.76(dd,J=8.8,9.2Hz,1H),5.44(dd,J=3.6,8.8Hz,1H),7.21(d,J=7.6Hz,1H),7.26−7.40(m,6H),7.46(dd,J=7.6,7.6Hz,1H),7.62(d,J=8.0Hz,1H).
【実施例2】
【0060】
(4S)−3−{(2S)−5−クロロ−2−[2−(トリフルオロメチル)フェニル]ペンタノイル}−4−フェニル−1,3−オキサゾリン−2−オンの合成
【化36】

【0061】
実施例1の化合物(27.5g,78.7mmol)のTHF(275mL)溶液にLHMDS(1M THF溶液,94.3mL,94.3mmol)を−15℃で滴下した。ここに1−クロロ−3−ヨードプロパン(33mL,315mmol)とDMPU(94.8mL,787mmol)を−15℃で滴下した。−15℃で23時間、0℃で15時間攪拌した後、5%塩化ナトリウム水溶液(275mL)およびMTBE(275mL)で添加した。有機層を5%塩化ナトリウム水溶液(275mL)で洗い、減圧濃縮した。残渣をMTBE(140mL)とヘプタン(140mL)の混液と水(275mL)で抽出し、有機層を減圧濃縮した後、MTBE(55mL)で2回共沸した。残渣にエタノール (83 mL) を加え、50 ℃に加温して均一溶液であることを確認後、少量の種結晶を加えた。室温1時間後ろ過し、冷エタノール(15 mL) で結晶を洗い、減圧乾燥して標題化合物を17.5g(含量 92%,94.6%de)、収率51.3%で得た。
得られた標題化合物(含量92%,16g,34.6mmol)にエタノール(48mL)を加え、50℃に加温して完全に溶かした。室温まで徐冷し、生じた結晶をろ過、冷エタノール(15mL)で洗い、減圧乾燥して標題化合物を14.9g(含量96.3%,100%de)、収率97.8%で得た。
H−NMR(400MHz,CDCl):δ 1.64−1.72(m,1H),1.74−1.84(m,1H),1.98−2.09(m,1H),2.12−2.23(m,1H),3.44−3.53(m,2H),4.31(dd,J=3.2,8.8Hz,1H),4.68(dd,J=8.8,8.8Hz,1H),5.36(dd,J=3.2,8.8Hz,1H),5.54(dd,J=4.8,9.2Hz,1H),7.28−7.34(m,2H),7.35−7.46(m,4H),7.52−7.59(m,1H),7.60−7.68(m,2H).
【実施例3】
【0062】
(2S)−5−クロロ−2−[2−(トリフルオロメチル)フェニル]ペンタン酸の合成
【化37】

【0063】
反応容器に実施例2で得た化合物(4000mg,9.09mmol)を量り取り、続いて反応容器内を窒素ガスで置換した。反応容器にテトラヒドロフラン(40ml)及び水(20ml)を添加し、室温で溶解後、0℃で、30%過酸化水素水溶液(1.24mL,1.2当量)を滴下し、更に、水酸化リチウム一水和物(458mg,10.91mmol)を追加し、そのままの温度で45分攪拌した。反応液に10%チオ硫酸ナトリウム五水和物水溶液(48mL)を加え、攪拌し反応を停止した後、酢酸エチル(100mL)を加えた。続いて、5N塩酸(約2mL)を加えpH=1〜2に調整した後、分液した。水層を酢酸エチルで抽出し、合わせた有機層を10%食塩水で2回洗浄を実施した。得られた粗生成物をNHシリカゲルクロマトグラフィーを用いて精製した(溶出液:メタノール/酢酸=10/1)。精製品をトルエンで5回共沸し酢酸を除去し、標題化合物をトルエン混合物(2692mg,純度87.4wt%)として得た。収率:92.3%
H−NMR(400MHz,CDCl):δ 7.68(d,J=7.6Hz,1H),7.61−7.52(m,2H),7.39(t,J=7.6Hz,1H),4.08(t,J=7.6Hz,1H),3.52(t,J=6.4Hz,2H),2.31−2.20(m,1H),2.05−1.80(m,2H),1.74−1.62(m,1H)
【実施例4】
【0064】
(2S)−5−クロロ−2−[2−(トリフルオロメチル)フェニル]ペンタン酸アミドの合成
【化38】

【0065】
反応容器に実施例3で得た化合物(2.596g,純度87.4wt%,8.08mmol)を量り取り、続いて反応容器内を窒素ガスで置換した。反応容器にDMF(46mL)を添加し、室温で溶解後、塩化アンモニウム(2161mg,40.4mmol,5当量)、ジイソプロピルエチルアミド(13mL,74.6mmol,9.2当量)、HOBt(1324mg,9.80mmol)をそれぞれ添加した。更に、PyBOP(5097mg,9.80mmol) を加えた後、室温で10.5時間攪拌した。反応混合液にH2O及び酢酸エチルを加え攪拌した後、分液を実施した。水層を酢酸エチルで抽出し、合わせた有機層を水で洗浄した。得られた粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィーを用いて精製した後(溶出液:ヘプタン/酢酸エチル=4/1〜2/1)、NHシリカゲルクロマトグラフィーを用いて再精製し(溶出液:酢酸エチル)濃縮した後、標題化合物(2170mg,92.3wt%,>99%ee)を得た。収率:88.6%
H−NMR(400MHz,CDCl):δ 7.69(d,J=7.6Hz,1H),7.66(d,J=7.6Hz,1H),7.56(t,J=7.6Hz,1H),7.38(t,J=7.6Hz,1H),5.36(brd,J=24Hz,2H),3.82(t,J=6.8Hz,1H),3.57−3.42(m,2H),2.35−2.22(m,1H),1.98−1.80(m,2H),1.67−1.52(m,1H)
【実施例5】
【0066】
(2S)−5−クロロ−2−[2−(トリフルオロメチル)フェニル]ペンタンニトリルの合成
【化39】

【0067】
反応容器に実施例4で得た化合物(2059mg,7.36mmol)を量り取り、続いて反応容器内を窒素ガスで置換した。反応容器にDMF(16mL)を添加し室温で溶解後、トルエン(33mL)を加えた。−35℃に冷却後、塩化チオニル(1073μL,14.72mmol,2当量)を滴下し、1.5時間攪拌した。
−20℃に昇温後20分攪拌し、更に−15℃に昇温後40分攪拌した。反応混合液に氷水(約30mL)を投入し、反応を停止させた後、酢酸エチル(50mL)を投入し攪拌後、分液を実施した。水層を酢酸エチルで抽出し、合わせた有機層を10%炭酸水素ナトリウム水及び10%食塩水で洗浄した。得られた粗生成物を更に水で洗浄後、硫酸マグネシウムで乾燥しろ過で硫酸マグネシウムを除いた。得られた混合液を濃縮し、標題化合物(2105mg,88.06wt%,>99%ee)を得た。収率:96.3%
H−NMR(400MHz,CDCl):δ 7.71(m,2H),7.65(t,J=7.6Hz,1H),7.47(t,J=7.6Hz,1H),4.18(m,1H),3.58(m,2H),2.18−1.88(m,4H)
【実施例6】
【0068】
(2S)−5−オキソ−2−[2−(トリフルオロメチル)フェニル]ペンタンニトリルの合成
【化40】

【0069】
反応容器に実施例6で得た化合物(1892mg,7.23mmol)を量り取り、続いて反応容器内を窒素ガスで置換した。反応容器にDMSO(20mL)を添加し室温で溶解後、2,4,6−コリジン(1528μL,11.6mmol)及びヨウ化ナトリウム(3492mg,23.3mmol)を加えた。80℃で15時間加熱し、室温に冷却した。反応混合液に水、酢酸エチルを投入後分液し、水層を酢酸エチルで抽出した。合わせた有機層を0.5N塩酸で洗浄後、10%食塩水で洗浄し、更に水で2回洗浄した。得られた有機層を濃縮後、シリカゲルクロマトグラフィーを用いて精製し(溶出液:ヘプタン/酢酸エチル=6/1〜5/1〜4/1〜2/1)、標題化合物(757.5mg,3.14mmol,>99%ee,収率43%)を得た。
H−NMR(400MHz,CDCl):δ 9.79(s,1H),7.70(m,2H),7.64(m,1H),7.48(m,1H),4.25(dd,J=8.8,6.8Hz,1H),2.84−2.66(m,2H),2.29−2.19(m,2H)
【実施例7】
【0070】
(2E)−3−[6−メトキシ−5−(4−メチル−1H−イミダゾール−1−イル)ピリジン−2−イル]アクリロヒドラジドの合成
【化41】

【0071】
実施例7で得た化合物(2.50g)のクロロホルム(12.5mL)懸濁液に、氷冷下、4N−塩化水素−酢酸エチル(12.5mL)を加え、室温で30分撹拌した後、クロロホルム(12.5mL)を加え、1.5時間撹拌した。飽和炭酸水素ナトリウム水、飽和塩化ナトリウム水、メタノールおよびクロロホルムを加えた後、分液し、クロロホルムで水層を抽出した。有機層を混合し、飽和塩化ナトリウム水で洗浄し、得られた有機層をMgSO4で乾燥、塩を濾去後、濃縮し、固体1.19gを得た。固体296mgにメタノール(7.5mL)を加え、60℃で溶解後、室温に冷却した。固体を濾取し、MTBEで洗浄、乾燥し、標題化合物(200mg)を得た。
H−NMR(600MHz,CDOD):δ 2.15(d,J=0.9Hz,3H),3.98(s,3H),7.00(d,J=15.3Hz,1H),7.09(dd,J=1.3,0.9Hz,1H),7.10(d,J=7.8Hz,1H),7.40(d,J=15.2Hz,1H),7.68(d,J=7.6Hz,1H),7.85(d,J=1.3Hz,1H)
【実施例8】
【0072】
(2E)−N’−{(4S)−4−シアノ−4−[2−(トリフルオロメチル)フェニル]ブチル}−3−[6−メトキシ−5−(4−メチル−1H−イミダゾール−1−イル)ピリジン−2−イル]アクリロヒドラジド
【化42】

【0073】
反応容器に実施例7で得た化合物(743.2mg,3.08mmol)を量り取り、続いて反応容器内を窒素ガスで置換した。反応容器にTHF(16mL)を添加し室温で溶解後、化合物18(800.7mg,2.93mmol)及びトシル酸一水和物(167.2mg,0.879mmol)を加え、30min攪拌した。反応混合物を氷冷後トリアセトキシホウ素化水素ナトリウム(3105mg,14.65mmol)を添加し、その後室温へ昇温し2時間45分攪拌した。反応混合液に酢酸エチル、10%炭酸水素ナトリウム水を投入後分液し、水層を酢酸エチルで抽出した。得られた有機層を濃縮後、シリカゲルクロマトグラフィーを用いて精製し(溶出液:酢酸エチル/メタノール=20/1〜15/1)、標題化合物(1.444g,2.90mmol,収率99%,>98%ee)を得た。
H−NMR(600MHz,CDCl):δ 7.84(s,1H),7.74−7.68(m,2H),7.64(t,J=7.6Hz,1H),7.59(d,J=14.9Hz,1H),7.54(d,J=7.6Hz,1H),7.49−7.43(m,1H),7.06(d,J=7.6Hz,1H),6.98(s,1H),6.92(d,J=14.9Hz,1H),4.27(dd,J=10.0,5.2Hz,1H),4.06(s,3H),2.99(t,J=6.72Hz,2H),2.30(s,3H),2.10−1.95(m,2H),1.91−1.82(m,1H),1.80−1.70(m,1H)
【実施例9】
【0074】
(8S)−2−{(E)−2−[6−メトキシ−5−(4−メチル−1H−イミダゾ−ル−1−イル)ピリジン−2−イル]ビニル}−8−[2−(トリフルオロメチル)フェニル]−5,6,7,8−テトラヒドロ[1,2,4]トリアゾロ[1,5−a]ピリジンの合成
【化43】

【0075】
窒素雰囲気下、実施例8で得た化合物(95.8mg,純度63.0wt%,0.121mmol,>98%ee)をトルエン(1.92ml)と酢酸(0.38ml)に室温で溶解させた後、70℃に加熱し13時間攪拌した。反応液を室温に空冷した後、反応液をHPLC外部標準法により定量して収率を求めた(収率63.9%)。またキラルHPLCを用いた光学純度測定の結果39.3%eeであった。
【実施例10】
【0076】
2−{(E)−2−[6−メトキシ−5−(4−メチル−1H−イミダゾ−ル−1−イル)ピリジン−2−イル]ビニル}−8−[2−(トリフルオロメチル)フェニル]−5,6,7,8−テトラヒドロ[1,2,4]トリアゾロ[1,5−a]ピリジンの合成
【化44】

【0077】
窒素雰囲気下、実施例9で得た化合物(56.9mg,0.114mmol)をトルエン(1.14ml)と酢酸(0.23ml)に室温で溶解させた後、80℃に加熱し23.5時間攪拌した。その後反応液を室温に空冷して減圧濃縮することで標題化合物を得た。得られた粗生成物をHPLC外部標準法により定量して収率を求めた(収率95.1%)。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明によれば、文献未記載の2−ビニル−5,6,7,8−テトラヒドロ[1,2,4]トリアゾロ[1,5−a]ピリジン誘導体、特に(8S)−2−{(E)−2−[6−メトキシ−5−(4−メチル−1H−イミダゾ−ル−1−イル)ピリジン−2−イル]ビニル}−8−[2−(トリフルオロメチル)フェニル]−5,6,7,8−テトラヒドロ[1,2,4]トリアゾロ[1,5−a]ピリジンを効率よく製造することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(II)
【化1】

(式中、Aは、置換基群Aから選択される1乃至3の置換基を有していてもよいアリール基または置換基群Aから選択される1乃至3の置換基を有していてもよいヘテロアリール基を示し、Bは、置換基群Bから選択される置換基を有していてもよいアリール基または置換基群Aから選択される1乃至3の置換基を有していてもよいヘテロアリール基を示す。)で表される化合物またはその塩を酸存在下、溶媒中で加熱する工程を含む、式(I)
【化2】

(式中、AおよびBは、前記定義と同意義を示す。)で表される化合物またはその塩の製造方法。
置換基群A:ハロゲン原子、置換基群A1から選択される1乃至3の置換基を有していてもよい炭素数1乃至6個の低級アルキル基、置換基群A1から選択される1乃至3の置換基を有していてもよい炭素数1乃至6個の低級アルコキシ基、置換基群A2から選択される1乃至3の置換基を有していてもよいアリール基および置換基群A2から選択される1乃至3の置換基を有していてもよいヘテロアリール基。
置換基群A1:水酸基、ハロゲン原子、シアノ基および炭素数1乃至6個の低級アルコシキ基。
置換基群A2:ハロゲン原子および1乃至3のハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1乃至6個の低級アルキル基。
置換基群B:ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、1乃至3のハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1乃至6個の低級アルキル基および1乃至3のハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1乃至6個の低級アルコキシ基。
【請求項2】
Aが式A−A−である、式(II−1)
【化3】

(式中、Aは置換基群A1から選択される1乃至3の置換基を有していてもよいヘテロアリール基を示し、Aは置換基群A2から選択される1乃至3の置換基を有していてもよいアリール基または置換基群A2から選択される1乃至3の置換基を有していてもよいヘテロアリール基を示し、Bは請求項1記載の定義と同義である。)で表される化合物またはその塩を用いて、式(I−1)
【化4】

(式中、A、AおよびBは前記定義と同意義を示す。)で表される化合物またはその塩を製造する、請求項1記載の製造方法。
置換基群A1:水酸基、ハロゲン原子、シアノ基および炭素数1乃至6個の低級アルコシキ基。
置換基群A2:ハロゲン原子および1乃至3のハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1乃至6個の低級アルキル基。
【請求項3】
A1が置換基群A1から選択される1乃至3の置換基を有していてもよいフェニル基または置換基群A1から選択される1乃至3の置換基を有していてもよいピリジル基である、請求項2記載の製造方法。
【請求項4】
A2が置換基群A2から選択される1乃至3の置換基を有していてもよいイミダゾリル基である、請求項1または2記載の製造方法。
【請求項5】
Bが置換基群Bから選択される置換基を有していてもよいフェニル基である、請求項1乃至4の何れか1項に記載の製造方法。
【請求項6】
式(II−2)
【化5】

で表される(2E)−N‘−{4−シアノ−4−[2−(トリフルオロメチル)フェニル]ブチル}−3−[6−メトキシ−5−(4−メチル−1H−イミダゾール−1−イル)ピリジン−2−イル]アクリロヒドラジドまたはその塩を酸存在下、溶媒中で加熱する工程を含む、式(I−2)
【化6】

で表される2−{(E)−2−[6−メトキシ−5−(4−メチル−1H−イミダゾ−ル−1−イル)ピリジン−2−イル]ビニル}−8−[2−(トリフルオロメチル)フェニル]−5,6,7,8−テトラヒドロ[1,2,4]トリアゾロ[1,5−a]ピリジンまたはその塩の製造方法。
【請求項7】
式(1)
【化7】

で表される(2S)−5−オキソ−2−[2−(トリフルオロメチル)フェニル]ペンタンニトリルまたはその塩と、式(2)
【化8】

で表される(2E)−3−[6−メトキシ−5−(4−メチル−1H−イミダゾ−ル−1−イル)ピリジン−2−イル]アクリロヒドラジドまたはその塩とを反応させて、式(II−3)
【化9】

で表される(2E)−N‘−{(4S)−4−シアノ−4−[2−(トリフルオロメチル)フェニル]ブチル}−3−[6−メトキシ−5−(4−メチル−1H−イミダゾール−1−イル)ピリジン−2−イル]アクリロヒドラジドまたはその塩に変換する工程;および
前記式(II−3)の化合物またはその塩を酸存在下、溶媒中で加熱する工程を含む、式(I−3)
【化10】

で表される(8S)−2−{(E)−2−[6−メトキシ−5−(4−メチル−1H−イミダゾ−ル−1−イル)ピリジン−2−イル]ビニル}−8−[2−(トリフルオロメチル)フェニル]−5,6,7,8−テトラヒドロ[1,2,4]トリアゾロ[1,5−a]ピリジンまたはその塩の製造法。
【請求項8】
式(II−3)
【化11】

で表される(2E)−N‘−{(4S)−4−シアノ−4−[2−(トリフルオロメチル)フェニル]ブチル}−3−[6−メトキシ−5−(4−メチル−1H−イミダゾール−1−イル)ピリジン−2−イル]アクリロヒドラジドまたはその塩。
【請求項9】
式(3)
【化12】

で表される2−トリフルオロメチルフェニル酢酸またはその塩と式(4)
【化13】

で表される(S)−(+)−4−フェニル−2−オキサゾリジノンまたはその塩とを反応させることにより、式(5)
【化14】

で表される(4S)−4−フェニル−3−{[2−(トリフルオロメチル)フェニル]アセチル}−1,3−オキサゾリン−2−オンまたはその塩に変換する工程;
前記式(5)の化合物またはその塩と1−クロロ−3−ヨードプロパンとを反応させることにより、式(6)
【化15】

で表される(4S)−3−{(2S)−5−クロロ−2−[2−(トリフルオロメチル)フェニル]ペンタノイル}−4−フェニル−1,3−オキサゾリン−2−オンまたはその塩に変換する工程;
前記式(6)の化合物またはその塩を加水分解することにより、式(7)
【化16】

で表される(2S)−5−クロロ−2−[2−(トリフルオロメチル)フェニル]ペンタン酸またはその塩に変換する工程;
前記式(7)の化合物またはその塩を式(8)
【化17】

で表される(2S)−5−クロロ−2−[2−(トリフルオロメチル)フェニル]ペンタン酸アミドまたはその塩に変換する工程;
前記式(8)の化合物またはその塩を式(9)
【化18】

で表される(2S)−5−クロロ−2−[2−(トリフルオロメチル)フェニル]ペンタンニトリルまたはその塩に変換する工程;および
前記式(9)の化合物またはその塩を反応させる工程を含む、式(1)
【化19】

で表される(2S)−5−オキソ−2−[2−(トリフルオロメチル)フェニル]ペンタンニトリルまたはその塩の製造法。
【請求項10】
下記式
【化20】

で表される化合物またはそれらの塩。

【公開番号】特開2012−51805(P2012−51805A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−43267(P2009−43267)
【出願日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【出願人】(506137147)エーザイ・アール・アンド・ディー・マネジメント株式会社 (215)
【Fターム(参考)】