説明

テトラヒドロピラン−4−オン誘導体およびそれらの製造方法

【課題】液晶組成物として有用なテトラヒドロピラン骨格を有する化合物の製造中間体であるテトラヒドロピラン−4−オン誘導体(一般式(9))およびその製造方法を提供する。
【解決手段】
一般式(9)で表されるテトラヒドロピラン−4−オン誘導体を、シロキシジエン類とアルデヒド類を環化させて製造する。式中、R、R、R、RおよびRは、各々独立に、水素原子、炭素数1〜4のアルコキシ基等を示す。Rは、置換されていてもよい炭素数3〜10のシクロアルキル基を示す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テトラヒドロピラン−4−オン誘導体およびそれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
テトラヒドロピラン骨格を有する化合物は、絶対値の大きな負の屈折率、適切な屈折率異方性、小さい弾性定数、良好な相溶性、低い粘度等、液晶組成物として優れた化合物である。従来、例えば、(2S,5R)−5−(4−エトキシ−2,3−ジフルオロフェニル)−2−(trans−4−プロピルシクロヘキシル)テトラヒドロピランが開示されている(例えば、特許文献1参照)。この化合物の合成は、trans−4−プロピルシクロヘキシルアルデヒドを原料として7工程を要し、その総収率は約3%である。
【0003】
一方、テトラヒドロピラン−4−オン誘導体を原料として、液晶組成物として有用なテトラヒドロピラン骨格を有する化合物を製造する方法は、これまでに報告がない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−008040号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、液晶組成物として有用なテトラヒドロピラン骨格を有する化合物の有効な合成原料となるテトラヒドロピラン−4−オン誘導体およびそれらの簡便な製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは上記の課題を解決すべく鋭意検討した結果、一般式(9)に示されるテトラヒドロピラン−4−オン誘導体が、カルボニル基をメチレン基へ還元することにより、テトラヒドロピラン骨格を有する化合物へ容易に変換可能な化合物であることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち本発明は、下記一般式(9)で表されるテトラヒドロピラン−4−オン誘導体に関するものである。
【0007】
【化1】

【0008】
(上記式中、R、R、R、RおよびRは、各々独立に、水素原子、炭素数1〜4のアルコキシ基またはフッ素原子を示す。Rは、炭素数1〜4のアルキル基で置換されていてもよい炭素数3〜10のシクロアルキル基を示す。)
【0009】
次に、本発明は、下記一般式(7)で表されるシロキシジエン類と、
【0010】
【化2】

【0011】
(上記式中、R、R、R、RおよびRは、上記と同じ内容を示す。X、XおよびXは、各々独立に、炭素数1〜4のアルキル基またはフェニル基を示す。)
下記一般式(8)で表されるアルデヒド類を、ルイス酸の存在下に環化させることを特徴とする、
【0012】
【化3】

【0013】
(上記式中、Rは上記と同じ内容を示す。)
下記一般式(9)で表されるテトラヒドロピラン−4−オン誘導体の製造方法に関するものである。
【0014】
【化4】

【0015】
(上記式中、R、R、R、R、RおよびRは、上記と同じ内容を示す。)
【発明の効果】
【0016】
本発明により、液晶組成物として有用なテトラヒドロピラン骨格を有する化合物の製造中間体である新規なテトラヒドロピラン−4−オン誘導体(9)を得ることができ、かつ該誘導体(9)を簡便かつ高収率で得ることができる。また、テトラヒドロピラン−4−オン誘導体(9)を用いるか、または経由することにより、液晶組成物として有用なテトラヒドロピラン骨格を有する化合物を簡便かつ高収率で得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に本発明をさらに詳細に説明する。
〔テトラヒドロピラン−4−オン誘導体(9)について〕
まず、本発明のテトラヒドロピラン−4−オン誘導体(9)について説明する。
【0018】
一般式(9)中、R、R、R、RおよびRは、各々独立に、水素原子、炭素数1〜4のアルコキシ基またはフッ素原子を示す。
、R、R、RおよびRで表される「炭素数1〜4のアルコキシ基」としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、sec−ブチルオキシ基、tert−ブチルオキシ基等が例示できる。Rは、炭素数1〜4のアルコキシ基が好ましく、アルコキシ基がより好ましく、エトキシ基がさらに好ましい。
、R、R、RおよびRは、本発明の化合物から誘導できるテトラヒドロピラン骨格を有する化合物の液晶組成物としての性能が良い点で、RおよびRがフッ素原子、Rがエトキシ基、RおよびRは水素原子の組合せが好ましい。
【0019】
一般式(9)中、Rは、炭素数1〜4のアルキル基で置換されていてもよい炭素数3〜10のシクロアルキル基を示す。
で表される「炭素数3〜10のシクロアルキル基」としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基、シクロノニル基等を例示することができる。これらのシクロアルキル基は、炭素数1〜4のアルキル基で置換されていても良い。「炭素数1〜4のアルキル基」は、直鎖状または分岐状であってもよい。
としては、3−エチルシクロペンチル基、3−プロピルシクロペンチル基、3−イソプロピルシクロペンチル基、4−エチルシクロヘキシル基、4−プロピルシクロヘキシル基、4−イソプロピルシクロヘキシル基、4−エチルシクロオクチル基等が例示できる。Rは、本発明の化合物から誘導できるテトラヒドロピラン骨格を有する化合物の液晶組成物としての性能が良い点で、炭素数1〜4のアルキル基で置換されていてもよいシクロペンチル基または、炭素数1〜4のアルキル基で置換されていてもよいシクロヘキシル基が好ましく、炭素数1〜4のアルキル基で置換されていてもよいシクロヘキシル基がさらに好ましく、4−プロピルシクロヘキシル基がさらに好ましい。
およびRがフッ素原子であり、Rがエトキシ基であり、RおよびRが水素原子であり、Rが4−プロピルシクロヘキシル基の組合せが好ましい。
【0020】
〔テトラヒドロピラン−4−オン誘導体(9)の製造方法、及びテトラヒドロピラン誘導体(12)の製造方法について〕
次に、本発明のテトラヒドロピラン−4−オン誘導体(9)の製造方法について説明する。本発明のテトラヒドロピラン−4−オン誘導体(9)は、下記の製造ルートの工程1から工程5の反応によって製造することができる。
また、本発明のテトラヒドロピラン−4−オン誘導体(9)を原料とする、テトラヒドロピラン誘導体(12)の製造方法について説明する。テトラヒドロピラン誘導体(12)は、下記の製造ルートの工程6から工程7の反応によって製造することができる。
【0021】
【化5】

【0022】
(式中、R、R、R、R、R、Rは上記と同じ内容を示す。X、XおよびXは、各々独立に、炭素数1〜4のアルキル基またはフェニル基を示す。Yは塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子を示す。Rは水素原子、ベンゼンスルホニル基またはp−トルエンスルホニル基を示す。)
【0023】
〔工程1について〕
工程1は、2,3−ブタンジオン(1)とフェニルグリニヤール試薬(2)を反応させることにより、2−ヒドロキシ−2−フェニルブタン−3−オン誘導体(3)を製造する工程である。
【0024】
工程1の原料として用いるフェニルグリニヤール試薬(2)の調製方法は、特に制限は無い。調製方法としては、例えば、ブロモベンゼン誘導体とマグネシウムとの反応により調製することができ(後述の実験例参照)、また、ハロベンゼン類とイソプロピルマグネシウムクロリドとの反応により調製することもできる。フェニルグリニヤール試薬(2)のYは、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子を示す。その中でも、収率が良い点で、臭素原子が好ましい。上記(2)としては、例えば、4−エトキシ−2,3−ジフルオロフェニルマグネシウムブロミド(2)などが挙げられる。
【0025】
工程1の反応は、有機溶媒中で実施することができ、反応に害を及ぼす恐れのない有機溶媒であればよい。用いることのできる有機溶媒としては、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、1,4−ジオキサン、メチル−tert−ブチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン等のエーテル系溶媒及びこれらの混合溶媒等が例示できる。この中でも、収率が良い点で、テトラヒドロフランが好ましい。有機溶媒の使用量は、特に制限は無い。
【0026】
工程1の反応温度は、特に制限は無いが、通常、−20〜150℃の温度から適宜選ばれた温度で実施することができる。この中でも、収率が良い点で、−10℃〜100℃で行うことが望ましい。反応時間は、特に制限は無い。
【0027】
反応終了後、2−ヒドロキシ−2−フェニルブタン−3−オン誘導体(3)の単離方法は、特に制限はない。単離方法としては、例えば、溶媒抽出、カラムクロマトグラフィー、分取薄層クロマトグラフィー、分取液体クロマトグラフィー、再結晶、蒸留または昇華等の汎用的な方法で目的物を得ることができる。また、単離することなく、次の工程2に供してもよい。
【0028】
〔工程2について〕
工程2は、2−ヒドロキシ−2−フェニルブタン−3−オン誘導体(3)を脱水剤の存在下に脱水させることにより、メチル(1−フェニルビニル)ケトン誘導体(4)を製造する工程である。
【0029】
工程2の反応は、脱水剤の存在下に実施することが必須である。用いることのできる脱水剤としては、特に制限はないが、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、硫酸、塩酸等のプロトン酸、モンモリロナイトK−10、モレキュラーシーブ4A等の固体酸等が例示できる。その中でも、収率が良い点で、プロトン酸が好ましく、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸が特に好ましい。脱水剤としては、例えば、p−トルエンスルホン酸一水和物が挙げられる。
脱水剤の使用量は、特に制限は無く、いわゆる触媒量でも十分反応は進行し、目的物を収率よく得ることができる。
【0030】
2−ヒドロキシ−2−フェニルブタン−3−オン誘導体(3)としては、例えば、3−(4−エトキシ−2,3−ジフルオロフェニル)−3−ヒドロキシブタン−2−オン(3)などが挙げられる。
【0031】
工程2の反応は、有機溶媒中で実施することができ、反応に害を及ぼす恐れのない有機溶媒であればよい。用いることのできる有機溶媒としては、ペンタン、キシレン、ヘキサン、ベンゼン、トルエン等の炭化水素系溶媒、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、1,4−ジオキサン、メチル−tert−ブチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン等のエーテル系溶媒、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、ブタノール等のアルコール系溶媒及びこれらの混合溶媒等が例示できる。その中でも、収率が良い点で、炭化水素系溶媒が好ましく、トルエンがさらに好ましい。有機溶媒の使用量は、特に制限は無い。
【0032】
工程2の反応温度は、特に制限は無いが、通常、50〜250℃の温度から適宜選ばれた温度で実施することができる。その中でも、収率が良い点で、70〜200℃で行うことが好ましい。反応時間は、特に制限は無い。
【0033】
反応終了後、メチル(1−フェニルビニル)ケトン誘導体(4)の単離方法は、特に制限はない。単離方法としては、例えば、溶媒抽出、カラムクロマトグラフィー、分取薄層クロマトグラフィー、分取液体クロマトグラフィー、再結晶、蒸留または昇華等の汎用的な方法で目的物を得ることができる。また、単離することなく、次の工程3に供してもよい。
【0034】
〔工程3について〕
工程3は、メチル(1−フェニルビニル)ケトン誘導体(4)をリチウムアミド類と反応させることにより、リチウムエノラート類(5)を製造する工程である。
【0035】
工程3の反応は、リチウムアミド類の存在下に実施することが必須である。リチウムアミド類としては、特に制限は無いが、リチウムジメチルアミド、リチウムジイソプロピルアミド、リチウムビス(トリメチルシリル)アミド等が例示できる。その中でも、収率が良い点で、リチウムジイソプロピルアミドが好ましい。また、これらのリチウムアミド類は、ジメチルアミン、ジイソプロピルアミン等とブチルリチウムを反応させることにより、反応系中で発生させ、工程3の反応に用いることもできる。
リチウムアミド類の使用量は、特に制限は無く、等量以上用いることにより、収率よく反応は進行する。
【0036】
メチル(1−フェニルビニル)ケトン誘導体(4)としては、例えば、3−(4−エトキシ−2,3−ジフルオロフェニル)ブタ−3−エン−2−オン(4)などが挙げられる。
【0037】
工程3の反応は、有機溶媒中で実施することができ、反応に害を及ぼす恐れのない有機溶媒であればよい。用いることのできる有機溶媒としては、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、1,4−ジオキサン、メチル−tert−ブチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン等のエーテル系溶媒及びこれらの混合溶媒等が例示できる。その中でも、収率が良い点で、テトラヒドロフランが好ましい。有機溶媒の使用量は、特に制限は無い。
【0038】
工程3の反応温度は、特に制限は無いが、通常、−100〜70℃の温度から適宜選ばれた温度で実施することができる。その中でも、収率が良い点で、−85〜40℃で行うことが好ましい。反応時間は、特に制限は無い。
【0039】
〔工程4について〕
工程4は、リチウムエノラート類(5)をクロロシラン誘導体(6)を用いてO−シリル化することによりシロキシジエン類(7)を製造する工程である。
【0040】
クロロシラン誘導体(6)である一般式(6)の式中、X、XおよびXは、各々独立に、炭素数1〜4のアルキル基またはフェニル基を示す。
、XおよびXで表される「炭素数1〜4のアルキル基」としては、メチル基、エチル基、イソプロピル基、tert−ブチル基等が例示できる。X、XおよびXは、原料入手が容易な点や収率が良い点で、メチル基が好ましい。クロロシラン誘導体(6)としては、例えば、トリメチルシリルクロリド(6)などが挙げられる。
クロロシラン誘導体(6)の使用量は、特に制限は無く、化学両論量以上用いることにより、目的物を収率よく得ることができる。
【0041】
リチウムエノラート類(5)としては、例えば、リチウム 3−(4−エトキシ−2,3−ジフルオロフェニル)ブタ−1,3−ジエン−2−イルオキシド(5)などが挙げられる。
【0042】
工程4の反応は、有機溶媒中で実施することができ、反応に害を及ぼす恐れのない有機溶媒であればよい。用いることのできる有機溶媒としては、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、1,4−ジオキサン、メチル−tert−ブチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン等のエーテル系溶媒及びこれらの混合溶媒等が例示できる。反応の利便性を考慮すれば、工程3と同じ有機溶媒を使用することが好ましい。反応系中に工程3で使用した溶媒が十分量残っていれば、場合によっては、新たに添加する必要も無い。有機溶媒の使用量は、特に制限は無い。
【0043】
工程4の反応温度は、特に制限は無いが、通常、−100〜70℃の温度から適宜選ばれた温度で実施することができる。その中でも、収率が良い点で、−85〜40℃で行うことが好ましい。反応時間は、特に制限は無い。
【0044】
反応終了後、シロキシジエン類(7)の単離方法は、特に制限は無い。単離方法としては、例えば、溶媒抽出、カラムクロマトグラフィー、分取薄層クロマトグラフィー、分取液体クロマトグラフィー、再結晶、蒸留または昇華等の汎用的な方法で目的物を得ることができる。
【0045】
工程3の反応終了後、リチウムエノラート類(5)を単離しても良いが、単離することなく、工程4に供してもよい。このことより、工程3と工程4をワンポットで実施することもできる。
【0046】
また、工程3と工程4をワンポットで実施する場合、例えば、メチル(1−フェニルビニル)ケトン誘導体(4)とクロロシラン誘導体(6)の混合溶液にリチウムアミド類を加えてもよいし、リチウムアミド類にメチル(1−フェニルビニル)ケトン誘導体(4)とクロロシラン誘導体(6)の混合溶液を加えてもよい。
【0047】
〔工程5について〕
工程5は、シロキシジエン類(7)とアルデヒド類(8)をルイス酸の存在下に環化させることにより、本発明のテトラヒドロピラン−4−オン誘導体(9)を製造する工程である。
【0048】
シロキシジエン類(7)としては、例えば、[3−(4−エトキシ−2,3−ジフルオロフェニル)ブタ−1,3−ジエン−2−イルオキシ]トリメチルシラン(7)などが挙げられる。
【0049】
工程5の反応に用いるアルデヒド類(8)は、一般式(8)で表される。式中、Rについては、上記の一般式(9)の説明において、説示したとおりである。上記(8)としては、例えば、trans−4−プロピルシクロヘキサンカルボアルデヒド(8)などが挙げられる。
【0050】
工程5の反応は、ルイス酸の存在下に実施することが必須である。用いることのできるルイス酸としては、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体等のホウ素化合物;クロロジメチルアルミニウム、クロロジエチルアルミニウム、三塩化アルミニウム等のアルミニウム化合物;三塩化鉄等の鉄化合物;四塩化スズ、トリフルオロメタンスルホン酸スズ(IV)等のスズ化合物;五塩化アンチモン、五フッ化アンチモン等のアンチモン化合物;四塩化チタン等のチタン化合物;三塩化インジウム等のインジウム化合物;三臭化ビスマス等のビスマス化合物;二臭化亜鉛、トリフルオロメタンスルホン酸亜鉛(II)等の亜鉛化合物;二臭化マグネシウム等のマグネシウム化合物;三塩化インジウム等のインジウム化合物等が例示できる。その中でも、収率が良い点でアルミニウム化合物が好ましく、クロロジメチルアルミニウムがさらに好ましい。
ルイス酸の使用量は、特に制限は無く、いわゆる触媒量でも十分反応は進行し、目的物を収率よく得ることができる。また、好ましくはシロキシジエン類(7)に対して、0.01〜20等量、さらに好ましくは0.5〜2.5等量添加することにより、収率よく目的物を得ることができる。
【0051】
工程5の反応は、有機溶媒中で実施することができ、反応に害を及ぼす恐れのない有機溶媒であればよい。用いることのできる有機溶媒としては、ペンタン、キシレン、ヘキサン、ベンゼン、トルエン等の炭化水素系溶媒、ジクロロメタン、クロロホルム、1,1,2,2−テトラクロロエタン等のハロゲン化系溶媒、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、1,4−ジオキサン、メチル−tert−ブチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン等のエーテル系溶媒及びこれらの混合溶媒等が例示できる。その中でも、収率が良い点で、ハロゲン化系溶媒が好ましく、ジクロロメタンがさらに好ましい。有機溶媒の使用量は、特に制限は無い。
【0052】
工程5の反応温度は、特に制限は無いが、通常、−100〜100℃の温度から適宜選ばれた温度で反応を実施することができる。その中でも、収率が良い点で−40〜30℃で行うことが好ましい。反応時間は、特に制限は無い。
【0053】
反応終了後、テトラヒドロピラン−4−オン誘導体(9)の単離方法は、特に制限はない。単離方法としては、例えば、溶媒抽出、カラムクロマトグラフィー、分取薄層クロマトグラフィー、分取液体クロマトグラフィー、再結晶、蒸留または昇華等の汎用的な方法で目的物を得ることができる。
【0054】
〔工程6と7について〕
このようにして製造することのできる本発明のテトラヒドロピラン−4−オン誘導体(9)は、例えば、この誘導体(9)を原料として、工程6及び工程7に示した方法によって、液晶組成物として有用な5−(4−エトキシ−2,3−ジフルオロフェニル)−2−(trans−4−プロピルシクロヘキシル)テトラヒドロピランへと変換することができる。以下、工程6及び工程7について説明する。
【0055】
(工程6)
本発明の工程6は、テトラヒドロピラン−4−オン誘導体(9)とヒドラジン誘導体(10)を反応させることによりヒドラゾン類(11)を製造する工程である。
【0056】
テトラヒドロピラン−4−オン誘導体(9)としては、例えば、(2R,5S)−5−(4−エトキシ−2,3−ジフルオロフェニル)−2−(trans−4−プロピルシクロヘキシル)テトラヒドロピラン−4−オン(9)などが挙げられる。
【0057】
ヒドラジン誘導体(10)のRは、水素原子、ベンゼンスルホニル基またはp−トルエンスルホニル基を示す。
工程6の反応で用いることのできるヒドラジン誘導体(10)としては、ヒドラジン、ベンゼンスルホニルヒドラジド、p−トルエンスルホニルヒドラジド等が例示できる。その中で、収率が良い点で、p−トルエンスルホニルヒドラジドが好ましい。
ヒドラジン誘導体(10)の使用量は、特に制限は無く、テトラヒドロピラン−4−オン誘導体(9)に対して等量以上用いることにより、収率良く目的物を得ることができる。
【0058】
工程6の反応は、有機溶媒中で実施することができ、反応に害を及ぼす恐れのない有機溶媒であればよい。用いることのできる有機溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、ブタノール等のアルコール系溶媒、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル系溶媒、ジクロロメタン、クロロホルム等のハロゲン系溶媒及びこれらの混合溶媒等が例示できる。その中でも、収率が良い点で、メタノールやエタノールまたはそれらの混合溶媒、エタノールとクロロホルムの混合溶媒、メタノールとエタノールとテトラヒドロフランの混合溶媒が好ましい。さらに、反応の収率が良い点、及び工程7の反応で使用する有機溶媒を考慮して、メタノール、エタノールやクロロホルムまたはそれらの混合溶媒等がさらに好ましい。有機溶媒の使用量は、特に制限は無い。
【0059】
工程6の反応温度は、特に制限は無いが、通常、0〜150℃の温度から適宜選ばれた温度で反応を実施することができる。その中でも、収率が良い点で、30〜100℃で行うことが望ましい。反応時間は、特に制限は無い。
【0060】
反応終了後、ヒドラゾン類(11)は、単離してもよいが、単離すること無く、次の工程7に供することもできる。このことから、工程6と次の工程7はワンポットで実施することもできる。
【0061】
(工程7)
本発明の工程7は、ヒドラゾン類(11)を還元剤の存在下に還元することによりテトラヒドロピラン誘導体(12)を製造する工程である。
【0062】
ヒドラゾン類(11)としては、例えば、(2R,5S)−5−(4−エトキシ−2,3−ジフルオロフェニル)−2−(trans−4−プロピルシクロヘキシル)テトラヒドロピラン−4−オン=p−トルエンスルホニルヒドラゾン(11)などが挙げられる。
【0063】
工程7の還元の方法は、特に制限は無く、ヒドラゾン類を還元できる還元方法であればよい。還元の方法としては、ヒドリド還元、クレメンゼン還元、接触還元等が例示できる。その中でも、収率および立体選択性が良い点で、ヒドリド還元が好ましい。
ヒドリド還元で用いる、還元剤である金属水素錯化合物としては、水素化ホウ素錯化合物、水素化リチウム錯化合物、水素化アルミニウム錯化合物等が例示できる。その中でも、収率および立体選択性が良い点で、水素化ホウ素錯化合物が好ましい。
水素化ホウ素錯化合物としては、水素化ホウ素ナトリウム、シアノ水素化ホウ素ナトリウム、水素化トリエチルホウ素リチウム、水素化ホウ素リチウム、水素化ホウ素亜鉛、アセトキシ水素化ホウ素ナトリウム等が例示できる。その中でも、収率が良い点で、水素化ホウ素ナトリウムまたはシアノ水素化ホウ素ナトリウムが好ましい。
金属水素錯化合物の使用量は、特に制限は無く、原料であるヒドラゾン類(11)に対して等量以上、好ましくは2.5等量以上用いることにより、収率良くテトラヒドロピラン誘導体(12)を得ることができる。
【0064】
工程7の反応においては、亜鉛化合物を添加することにより収率が向上する場合がある。亜鉛化合物としては、塩化亜鉛、臭化亜鉛、ヨウ化亜鉛等を例示することができる。その中でも、入手の容易さや収率が良い点で、塩化亜鉛が好ましい。
亜鉛化合物の添加量は、特に制限は無く、いわゆる触媒量でもよい。好ましくはヒドラゾン類(11)に対して等量以上、さらに好ましくは、2等量以上用いることにより、収率よく目的物を得ることができる。
【0065】
工程7の反応は、有機溶媒中で実施することができ、反応に害を及ぼす恐れのない有機溶媒であればよい。用いることのできる有機溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、ブタノール等のアルコール系溶媒、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル系溶媒及びこれらの混合溶媒が例示できる。その中でも、収率が良い点でアルコール系溶媒が好ましく、メタノールやエタノールまたはそれらの混合溶媒がさらに好ましい。テトラヒドロフランとアルコール系溶媒との混合溶媒としては、例えば、テトラヒドロフランとエタノールとの混合溶媒や、メタノールとエタノールとテトラヒドロフランとの混合溶媒を用いることができる。有機溶媒の使用量は、特に制限は無い。
工程6と工程7の反応をワンポットで実施する場合には、工程7の反応は、工程6の反応に用いた有機溶媒中で実施することが好ましい。
【0066】
工程7の反応温度は、特に制限は無いが、通常、0〜150℃の温度から適宜選ばれた温度で反応を実施することができる。その中でも、収率が良い点で30〜100℃で行うことが好ましい。反応時間は、特に制限は無い。
【0067】
反応終了後、テトラヒドロピラン誘導体(12)の単離方法は、特に制限はない。単離方法としては、例えば、溶媒抽出、カラムクロマトグラフィー、分取薄層クロマトグラフィー、分取液体クロマトグラフィー、再結晶、蒸留または昇華等の汎用的な方法で目的物を得ることができる。
【0068】
テトラヒドロピラン誘導体(12)としては、例えば、(2R,5R)−5−(4−エトキシ−2,3−ジフルオロフェニル)−2−(trans−4−プロピルシクロヘキシル)テトラヒドロピラン(12)などが挙げられる。
【0069】
本発明によれば、出発物質(1)から化合物(12)を約25%以上の収率で製造でき、また、中間体(9)から化合物(12)を約80%以上の収率で製造できる。
【実施例】
【0070】
次に、本発明を実験例によって詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
なお、実験例中、H−NMRは、Bruker Avance250(250MHz)またはAvanceIII(400MHz)を用い、定法で測定した。
【0071】
なお、以下の実験例で用いた試薬である、1−ブロモ−4−エトキシ−2,3−ジフルオロベンゼン((2)の原料)、2,3−ブタンジオン(1)、パラトルエンスルホン酸一水和物(脱水剤)、ジイソプロピルアミン(リチウムアミド類の原料)、トリメチルシリルクロリド(6)、ジメチルアルミニウムクロリド(ルイス酸)、trans−4−プロピルシクロヘキサンカルボアルデヒド(8)、p−トルエンスルホニルヒドラジド(10)、シアノ水素化ホウ素ナトリウム(還元剤)、水素化ホウ素ナトリウム(還元剤)は、すべて市販品を用いた。
【0072】
実験例1〔フェニルグリニヤール試薬(2)の調製(I)〕
アルゴン雰囲気下で、マグネシウムリボン(0.48g,20mmol)のテトラヒドロフラン(10mL)懸濁液に、1,2−ジブロモエタン(0.1mL)を室温で加え、次いで1−ブロモ−4−エトキシ−2,3−ジフルオロベンゼン(4.74g,20mmol)のテトラヒドロフラン(7mL)溶液を加えた。この混合溶液を、50℃で2時間攪拌することにより、4−エトキシ−2,3−ジフルオロフェニルマグネシウムブロミド(2)のテトラヒドロフラン溶液を得た。得られた溶液を、テトラヒドロフランで希釈し、4−エトキシ−2,3−ジフルオロフェニルマグネシウムブロミド(2)の0.5Mテトラヒドロフラン溶液を調製した。
【0073】
実験例2〔工程1について(I)〕
実験例2および4では、下記の反応式で示された反応を行った。
【0074】
【化6】

【0075】
アルゴン雰囲気下で、2,3−ブタンジオン(1)(10.7g、124mmol)のテトラヒドロフラン溶液(1.24M、100mL)に、4−エトキシ−2,3−ジフルオロフェニルマグネシウムブロミド(2)のテトラヒドロフラン溶液(0.5M、260mL)を冷却下(概ね0℃)で加えた。この混合溶液を、冷却した状態で30分間、次いで室温で30分間、さらに50℃で16時間攪拌し、その後、室温まで冷却した。
反応終了後、この反応溶液に1N塩酸(150mL)を加えた後、テトラヒドロフランを減圧留去した。留去後の溶液を、酢酸エチル(200mL×2回)で抽出し、有機層(酢酸エチル層)を得た。得られた有機層を合わせ、飽和食塩水(200mL)で洗浄後、硫酸ナトリウムで乾燥した。乾燥した有機層から硫酸ナトリウムをろ別後、ろ液から溶媒を減圧留去し、残渣を得た。得られた残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=10:0〜9:1)により精製して固体を得た。得られた固体をヘキサンから再結晶することにより、3−(4−エトキシ−2,3−ジフルオロフェニル)−3−ヒドロキシブタン−2−オン(3)の白色固体(22.6g,収率75%)を得た。
【0076】
3−(4−エトキシ−2,3−ジフルオロフェニル)−3−ヒドロキシブタン−2−オン(3)のH−NMRの結果を以下に示す。
H−NMR(CDCl,250MHz)δ7.18(ddd,1H,J=8.5,8.5,2.3Hz),6.75(ddd,1H,J=8.1,8.1,1.9Hz),4.50(d,1H,J=0.3 Hz),4.13(q,2H,J=7.0Hz),2.15(s,3H),1.75(d,3H,J=0.6Hz),1.46(t,3H,J=7.0Hz).
【0077】
実験例3〔フェニルグリニヤール試薬(2)の調製(II)〕
窒素雰囲気下で、マグネシウムリボン(56.3g,2.32mol)のテトラヒドロフラン(1.85L)懸濁液に、ヨウ素(0.28g)を室温で加え、次いで1−ブロモ−4−エトキシ−2,3−ジフルオロベンゼン(522.7g,2.21mol)のテトラヒドロフラン(105mL)溶液を加えた。この混合溶液を、35℃で1時間攪拌することにより、4−エトキシ−2,3−ジフルオロフェニルマグネシウムブロミド(2)の1.13Mテトラヒドロフラン溶液を得た。
【0078】
実験例4〔工程1について(II)〕
窒素雰囲気下で、2,3−ブタンジオン(1)(2.1mol、181g)のテトラヒドロフラン溶液(1.25M、1.68L)に、4−エトキシ−2,3−ジフルオロフェニルマグネシウムブロミド(2)のテトラヒドロフラン溶液(1.13M、2L)を冷却下(概ね0℃)で加えた。この混合溶液を、冷却した状態で30分間、次いで室温で16時間攪拌し、その後、室温まで冷却した。
反応終了後、この反応溶液に1N塩酸(2.5L)を加えた後、テトラヒドロフランを減圧留去した。留去後の溶液を、酢酸エチル(2.1L)で抽出し、有機層(酢酸エチル層)を得た。得られた有機層を、飽和食塩水(2.1L)で洗浄後、硫酸マグネシウムで乾燥した。乾燥した有機層から硫酸マグネシウムをろ別後、ろ液から溶媒を減圧留去し、残渣を得た。得られた残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=9:1)により精製して固体を得た。得られた固体をヘキサンから再結晶することにより、3−(4−エトキシ−2,3−ジフルオロフェニル)−3−ヒドロキシブタン−2−オン(3)の白色固体(323.3g,収率63%)を得た。
【0079】
実験例5〔工程2について(I)〕
実験例5および6では、下記の反応式で示された反応を行った。
【0080】
【化7】

【0081】
アルゴン雰囲気下で、3−(4−エトキシ−2,3−ジフルオロフェニル)−3−ヒドロキシブタン−2−オン(3)(9.12g,30mmol)とp−トルエンスルホン酸一水和物(脱水剤)(0.76g,3mmol)とを含むトルエン(80mL)溶液を、150℃で30分間攪拌した。この反応溶液を室温まで冷却した。
反応終了後、飽和炭酸ナトリウム水溶液(30mL)を加えた後、酢酸エチル(70mL×2回)で抽出し、有機層(酢酸エチル層)を得た。得られた有機層を合わせ、飽和食塩水(50mL)で洗浄後、硫酸ナトリウムで乾燥した。乾燥した有機層から硫酸ナトリウムをろ別後、ろ液から溶媒を減圧留去し、残渣を得た。得られた残渣をヘキサン:酢酸エチル=9:1の混合溶媒から再結晶することにより、3−(4−エトキシ−2,3−ジフルオロフェニル)ブタ−3−エン−2−オン(4)の白色固体(6.15g,収率、73%)を得た。
【0082】
再結晶の母液を濃縮し、残渣を得た。得られた残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=10:0〜9:1)で精製することにより、3−(4−エトキシ−2,3−ジフルオロフェニル)ブタ−3−エン−2−オン(4)の白色固体(0.61g,収率7%)を得た。
【0083】
3−(4−エトキシ−2,3−ジフルオロフェニル)ブタ−3−エン−2−オン(4)のH−NMRの結果を以下に示す。
H−NMR(CDCl,250MHz)δ6.88(ddd,1H,J=8.0,8.0,2.5Hz),6.72(ddd,1H,J=8.0,8.0,1.7Hz),6.31(s,1H),6.00(s,1H),4.13(q,2H,J=7.0Hz),2.42(s,3H),1.46(t,3H,J=7.0Hz).
【0084】
実験例6〔工程2について(II)〕
アルゴン雰囲気下で、3−(4−エトキシ−2,3−ジフルオロフェニル)−3−ヒドロキシブタン−2−オン(3)(293.1g,1.2mol)とp−トルエンスルホン酸一水和物(脱水剤)(22.8g,0.12mol)とを含むトルエン(2.4L)溶液を、150℃で1.5時間攪拌した。この反応溶液を室温まで冷却した。
反応終了後、飽和炭酸ナトリウム水溶液(1.2L)を加えた後、酢酸エチル(1.2L)で抽出し、有機層(酢酸エチル層)を得た。得られた有機層を、飽和食塩水(1.45L)で洗浄後、硫酸マグネシウムで乾燥した。乾燥した有機層から硫酸マグネシウムをろ別後、ろ液から溶媒を減圧留去し、残渣を得た。得られた残渣をヘキサン:酢酸エチル=10:1の混合溶媒から再結晶することにより、3−(4−エトキシ−2,3−ジフルオロフェニル)ブタ−3−エン−2−オン(4)の白色固体(183g,収率68%)を得た。
【0085】
実験例7〔工程3、及び工程4について(I)〕
実験例7および8では、下記の反応式で示された反応を行った。
【0086】
【化8】

【0087】
(工程3)
アルゴン雰囲気下で、ジイソプロピルアミン(1.14g,11mmol)のテトラヒドロフラン(6mL)溶液に、ブチルリチウムのヘキサン溶液(2.76M,4mL)を氷冷下で加え、氷冷した状態で30分間攪拌した(リチウムアミド類の調製)。次いで、この反応溶液を−78℃まで冷却し、3−(4−エトキシ−2,3−ジフルオロフェニル)ブタ−3−エン−2−オン(4)(2.26g,9.9mmol)のテトラヒドロフラン(10mL)溶液を加えた。この反応溶液を−78℃で1時間攪拌することにより、リチウム 3−(4−エトキシ−2,3−ジフルオロフェニル)ブタ−1,3−ジエン−2−イルオキシド(5)のテトラヒドロフラン溶液を得た。
【0088】
(工程4)
アルゴン雰囲気下で、上記工程3で得られたリチウム 3−(4−エトキシ−2,3−ジフルオロフェニル)ブタ−1,3−ジエン−2−イルオキシド(5)のテトラヒドロフラン溶液に、トリメチルシリルクロリド(6)(1.5mL,11.8mmol)を加えた。この反応溶液を−78℃で1時間30分、さらに室温で1時間攪拌した。
反応終了後、この反応溶液に氷(10g)と水(20mL)を加えた後、酢酸エチル(60mL×3回)で抽出し、有機層(酢酸エチル層)を得た。得られた有機層を合わせ、飽和塩化ナトリウム水溶液(30mL)で洗浄後、硫酸ナトリウムで乾燥した。乾燥した有機層から硫酸ナトリウムをろ別後、ろ液から溶媒を減圧留去し、残渣を得た。得られた残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=20:1)で精製することにより、[3−(4−エトキシ−2,3−ジフルオロフェニル)ブタ−1,3−ジエン−2−イルオキシ]トリメチルシラン(7)の無色液体(2.48g,収率83%)を得た。
【0089】
[3−(4−エトキシ−2,3−ジフルオロフェニル)ブタ−1,3−ジエン−2−イルオキシ]トリメチルシラン(7)のH−NMRの結果を以下に示す。
H−NMR(CDCl,250MHz)δ6.89(ddd,1H,J=8.0,8.0,2.5Hz),6.69(ddd,1H,J=8.1,8.1,1.6Hz),5.79(d,1H,J=1.8Hz),5.15(s,1H),4.34(s,1H),4.17(s,1H),4.13(q,2H,J=7.0Hz),1.46(t,3H,J=7.0Hz),0.28(s,9H).
【0090】
実験例8〔工程3、及び工程4について(II)〕
【0091】
(工程3)
窒素雰囲気下で、ジイソプロピルアミン(87.9g,0.87mol)のテトラヒドロフラン(465mL)溶液に、ブチルリチウムのヘキサン溶液(15重量%,371g)を氷冷下で加え、氷冷した状態で30分間攪拌した(リチウムアミド類の調製)。次いで、この反応溶液を−78℃まで冷却し、3−(4−エトキシ−2,3−ジフルオロフェニル)ブタ−3−エン−2−オン(4)(179g,0.79mol)のテトラヒドロフラン(790mL)溶液を加えた。この反応溶液を−78℃で1時間攪拌することにより、リチウム 3−(4−エトキシ−2,3−ジフルオロフェニル)ブタ−1,3−ジエン−2−イルオキシド(5)のテトラヒドロフラン溶液を得た。
【0092】
(工程4)
窒素雰囲気下で、上記工程3で得られたリチウム 3−(4−エトキシ−2,3−ジフルオロフェニル)ブタ−1,3−ジエン−2−イルオキシド(5)のテトラヒドロフラン溶液に、トリメチルシリルクロリド(6)(103.0g,0.95mol)を加えた。この反応溶液を−78℃で1.5時間、さらに室温で1時間攪拌した。
反応終了後、この反応溶液に氷水(930mL)を加えた後、酢酸エチル(930mL)で抽出し、有機層(酢酸エチル層)を得た。得られた有機層を、飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄後、硫酸マグネシウムで乾燥した。乾燥した有機層から硫酸マグネシウムをろ別後、ろ液から溶媒を減圧留去し、残渣を得た。得られた残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=9:1)で精製することにより、[3−(4−エトキシ−2,3−ジフルオロフェニル)ブタ−1,3−ジエン−2−イルオキシ]トリメチルシラン(7)の無色液体(160g,収率68%)を得た。
【0093】
実験例9〔工程3と工程4をワンポットで実施した結果について(I)〕
実施例9は、メチル(1−フェニルビニル)ケトン誘導体(4)とクロロシラン誘導体(6)の混合溶液にリチウムアミド類を加えた例である。
【0094】
アルゴン雰囲気下で、3−(4−エトキシ−2,3−ジフルオロフェニル)ブタ−3−エン−2−オン(4)(1.70g、7.5mmol)とトリメチルシリルクロリド(6)(0.98g,9.0mmol)とのテトラヒドロフラン溶液(25mL)を−30℃まで冷却した。この反応溶液に、リチウムジイソプロピルアミドのテトラヒドロフラン溶液(1.0M、7.5mL)を15分かけて滴下した。滴下終了後、さらに30分間攪拌した。
反応終了後、溶媒を減圧留去した。得られた残渣に、氷冷した塩酸水溶液(0.5M、40mL)を加えた後、ヘキサン(70mL)で抽出し、有機層(ヘキサン層)を得た。得られた有機層を、氷水(30mL)、氷冷した飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(30mL)、飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄後、硫酸ナトリウムで乾燥した。乾燥した有機層から硫酸ナトリウムをろ別後、ろ液から溶媒を減圧留去することにより、[3−(4−エトキシ−2,3−ジフルオロフェニル)ブタ−1,3−ジエン−2−イルオキシ]トリメチルシラン(7)(1.93g,収率86%)を得た。
【0095】
実験例10〔工程3と工程4をワンポットで実施した結果について(II)〕
実施例10及び11は、リチウムアミド類にメチル(1−フェニルビニル)ケトン誘導体(4)とクロロシラン誘導体(6)の混合溶液を加えた例である。
【0096】
アルゴン雰囲気下で、ジイソプロピルアミン(3.04g,30.0mmol)のテトラヒドロフラン(15mL)溶液に、ブチルリチウムのヘキサン溶液(2.66M,11.3mL)を氷冷下で加え、氷冷した状態で10分間攪拌した(リチウムアミド類の調製)。次いで、この反応溶液を−30℃まで冷却し、3−(4−エトキシ−2,3−ジフルオロフェニル)ブタ−3−エン−2−オン(4)(5.65g,25.0mmol)とトリメチルシリルクロリド(6)(2.75g,25.3mmol)とのテトラヒドロフラン(45mL)溶液を反応溶液へ2時間かけて滴下した。滴下終了後、さらに1時間攪拌した。
反応終了後、溶媒を減圧留去した。得られた溶液に、氷冷した塩酸水溶液(0.5M、100mL)を加えた後、ヘキサン(200mL)で抽出し、有機層(ヘキサン層)を得た。得られた有機層を、氷水(60mL)、氷冷した飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(50mL)、飽和塩化ナトリウム水溶液(50mL)で洗浄後、硫酸ナトリウムで乾燥した。乾燥した有機層から硫酸ナトリウムをろ別後、ろ液から溶媒を減圧留去することにより、[3−(4−エトキシ−2,3−ジフルオロフェニル)ブタ−1,3−ジエン−2−イルオキシ]トリメチルシラン(7)(6.50g,収率87%)を得た。
【0097】
実験例11〔工程3と工程4をワンポットで実施した結果について(III)〕
【0098】
3−(4−エトキシ−2,3−ジフルオロフェニル)ブタ−3−エン−2−オン(4)(5.65g,25.0mmol)とトリメチルシリルクロリド(6)(2.75g,25.3mmol)のテトラヒドロフラン(45mL)溶液を反応溶液へ4時間かけて滴下した以外は実施例10と同様の操作を行い、[3−(4−エトキシ−2,3−ジフルオロフェニル)ブタ−1,3−ジエン−2−イルオキシ]トリメチルシラン(7)(6.48g,収率87%)を得た。
実施例9〜11は、実施例7,8と比して、高い収率でシロキシジエン類(7)を得た。
【0099】
実験例12〔工程5について(I)〕
実験例12〜14では、下記の反応式で示された反応を行った。
【0100】
【化9】

【0101】
アルゴン雰囲気下で、trans−4−プロピルシクロヘキサンカルボアルデヒド(8)(0.60g,3.9mmol)のジクロロメタン(20mL)溶液に、クロロジメチルアルミニウム(ルイス酸)のヘキサン溶液(1.0M,5.0mL)を−20℃で加え、30分間攪拌した。この混合溶液に[3−(4−エトキシ−2,3−ジフルオロフェニル)ブタ−1,3−ジエン−2−イルオキシ]トリメチルシラン(7)(1.31g,4.4mmol)を加え、−20℃で1時間、攪拌した。この反応溶液を室温まで昇温後、さらに室温で1時間攪拌した。
反応終了後、この反応溶液に35%塩酸(10mL)を−20℃で加えた後、室温で5分間攪拌した。この反応溶液を、酢酸エチル(60mL×2回)で抽出し、有機層(酢酸エチル層)を得た。得られた有機層を合わせ、飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄後、硫酸ナトリウムで乾燥した。乾燥した有機層から硫酸ナトリウムをろ別後、ろ液から溶媒を減圧留去し、残渣を得た。得られた残渣をヘキサン/酢酸エチル(6:1)混合溶媒から再結晶することにより、(2R,5S)−5−(4−エトキシ−2,3−ジフルオロフェニル)−2−(trans−4−プロピルシクロヘキシル)テトラヒドロピラン−4−オン(9)の白色固体(0.792g,収率53%)を得た。
【0102】
再結晶の母液を濃縮し、残渣を得た。得られた残渣をヘキサンから再結晶することにより、(2R,5S)−5−(4−エトキシ−2,3−ジフルオロフェニル)−2−(trans−4−プロピルシクロヘキシル)テトラヒドロピラン−4−オン(9)の白色固体(0.194g,収率13%)を得た。
【0103】
(2R,5S)−5−(4−エトキシ−2,3−ジフルオロフェニル)−2−(trans−4−プロピルシクロヘキシル)テトラヒドロピラン−4−オン(9)のH−NMRの結果を以下に示す。
H−NMR(CDCl,400 MHz)δ6.78−6.68(m,2H),4.28(dd,1H,J=10.9,6.8Hz),4.11(q,2H,J=7.0 Hz),3.92(dd,1H,J=11.6Hz),3.79−3.73(m,1H),3.52(ddd,1H,J=11.5,6.1,2.6Hz),2.58(dd,1H,J=14.3,2.6Hz),2.51−2.45(m,1H),2.00−1.95(m,1H),1.83−1.80(m,2H),1.74−1.69(m,1H),1.54−1.47(m,1H),1.44(t,3H,J=7.0Hz),1.37−0.86(m,12H).
【0104】
実験例13〔工程5について(II)〕
窒素雰囲気下で、trans−4−プロピルシクロヘキサンカルボアルデヒド(8)(74.0g,0.48mmol)のジクロロメタン(2.1L)溶液に、クロロジメチルアルミニウム(ルイス酸)のヘキサン溶液(15重量%,370g)を−20℃で加え、30分間攪拌した。この混合溶液に[3−(4−エトキシ−2,3−ジフルオロフェニル)ブタ−1,3−ジエン−2−イルオキシ]トリメチルシラン(7)(158g,0.53mol)を加え、−20℃で1時間攪拌した。この反応溶液を室温まで昇温後、さらに室温で1時間攪拌した。
反応終了後、この反応溶液に35%塩酸(1.05L)を−20℃で加えた後、室温で5分間攪拌した。この反応溶液を、酢酸エチル(1.6L)で抽出し、有機層(酢酸エチル層)を得た。得られた有機層を、飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄後、硫酸マグネシウムで乾燥した。乾燥した有機層から硫酸マグネシウムをろ別後、ろ液から溶媒を減圧留去し、残渣を得た。得られた残渣をヘキサン/酢酸エチル(10:1)混合溶媒から再結晶することにより、(2R,5S)−5−(4−エトキシ−2,3−ジフルオロフェニル)−2−(trans−4−プロピルシクロヘキシル)テトラヒドロピラン−4−オン(9)の白色固体(120g,収率66%)を得た。
【0105】
実験例14〔工程5について(III)〕
アルゴン雰囲気下で、trans−4−プロピルシクロヘキサンカルボアルデヒド(8)(3.16g,20.5mmol)のジクロロメタン(30mL)溶液に、クロロジメチルアルミニウム(ルイス酸)のヘキサン溶液(1.0M,6.0mL)を−20℃で加え、15分間攪拌した。この混合溶液に[3−(4−エトキシ−2,3−ジフルオロフェニル)ブタ−1,3−ジエン−2−イルオキシ]トリメチルシラン(7)(5.97g,20.0mmol)を30分かけて加え、−20℃で30分攪拌した。
反応終了後、この反応溶液にジクロロメタン(20mL)とフッ化カリウム水溶液(2.0M,30mL)を−20℃で加えた。これを5分間撹拌した後、ろ過し、有機層(ジクロロメタン層)を得た。得られた有機層(ジクロロメタン層)を飽和食塩水(40mL)で洗浄した。得られた有機層に35%塩酸(30mL)を−20℃で加え、室温で30分間攪拌した。この反応溶液を、ジクロロメタン−酢酸エチル混合溶液(1:3,100mL×2回)で抽出し、有機層(ジクロロメタン−酢酸エチル層)を得た。得られた有機層を合わせ、飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄後、硫酸ナトリウムで乾燥した。乾燥した有機層から硫酸ナトリウムをろ別後、ろ液から溶媒を減圧留去し、残渣を得た。得られた残渣をヘキサン/酢酸エチル(6:1)混合溶媒から再結晶することにより、(2R,5S)−5−(4−エトキシ−2,3−ジフルオロフェニル)−2−(trans−4−プロピルシクロヘキシル)テトラヒドロピラン−4−オン(9)の白色固体(5.70g,収率75%)を得た。
【0106】
実験例15〔工程6、及び工程7について(I)〕
実験例15〜18では、下記の反応式で示された反応を行った。
【0107】
【化10】

【0108】
(工程6)
アルゴン雰囲気下で、(2R,5S)−5−(4−エトキシ−2,3−ジフルオロフェニル)−2−(trans−4−プロピルシクロヘキシル)テトラヒドロピラン−4−オン(9)(0.191g,0.5mmol)とp−トルエンスルホニルヒドラジド(10)(0.114g,0.61mmol)とを含むエタノール(4mL)溶液を、60℃で1時間攪拌した。この反応溶液を室温まで冷却後、溶媒を留去し、(2R,5S)−5−(4−エトキシ−2,3−ジフルオロフェニル)−2−(trans−4−プロピルシクロヘキシル)テトラヒドロピラン−4−オン=p−トルエンスルホニルヒドラゾン(11)を得た。
【0109】
(工程7)
アルゴン雰囲気下で、工程6で得られた(2R,5S)−5−(4−エトキシ−2,3−ジフルオロフェニル)−2−(trans−4−プロピルシクロヘキシル)テトラヒドロピラン−4−オン=p−トルエンスルホニルヒドラゾン(11)のメタノール(2.5mL)/エタノール(2.5mL)混合溶液に、シアノ水素化ホウ素ナトリウム(還元剤)(0.157g,2.5mmol)を加え、60℃で3時間攪拌した。
反応終了後、この反応溶液に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(10mL)を加えた後、酢酸エチル(40mL×3回)で抽出し、有機層(酢酸エチル層)を得た。得られた有機層を合わせ、飽和塩化ナトリウム水溶液(50mL)で洗浄後、硫酸ナトリウムで乾燥した。乾燥した有機層から硫酸ナトリウムをろ別後、ろ液から溶媒を減圧留去し、残渣を得た。得られた残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=19:1)により精製することにより、(2R,5R)−5−(4−エトキシ−2,3−ジフルオロフェニル)−2−(trans−4−プロピルシクロヘキシル)テトラヒドロピラン(12)の白色固体(133mg,収率72%)を得た。
【0110】
(2R,5R)−5−(4−エトキシ−2,3−ジフルオロフェニル)−2−(trans−4−プロピルシクロヘキシル)テトラヒドロピラン(12)のH−NMRの結果を以下に示す。
H−NMR(CDCl,400MHz)δ6.80(ddd,1H,J=8.1Hz,8.1Hz,2.0Hz),6.67(ddd,1H,J=8.1Hz,8.1Hz,1.5Hz),4.09(q,2H,J=7.0Hz),4.00(ddd,1H,J=10.9Hz,3.8Hz,2.2Hz),3.37(t,1H,J=11.0Hz),3.09−3.01(m,2H),2.00−1.94(m,2H),1.79−1.71(m,5H),1.51−1.25(m,7H),1.17−0.85(m,10H).
【0111】
実験例16〔工程6、及び工程7について(II)〕
【0112】
(工程6)
アルゴン雰囲気下で、(2R,5S)−5−(4−エトキシ−2,3−ジフルオロフェニル)−2−(trans−4−プロピルシクロヘキシル)テトラヒドロピラン−4−オン(9)(0.096g,0.25mmol)(9)とp−トルエンスルホニルヒドラジド(10)(0.068g,0.37mmol)とを含むエタノール(2mL)溶液を、60℃で1.5時間攪拌した。この反応溶液を室温まで冷却後、溶媒を留去し、(2R,5S)−5−(4−エトキシ−2,3−ジフルオロフェニル)−2−(trans−4−プロピルシクロヘキシル)テトラヒドロピラン−4−オン=p−トルエンスルホニルヒドラゾン(11)を得た。
【0113】
(工程7)
アルゴン雰囲気下で、上記工程6で得られた(2R,5S)−5−(4−エトキシ−2,3−ジフルオロフェニル)−2−(trans−4−プロピルシクロヘキシル)テトラヒドロピラン−4−オン=p−トルエンスルホニルヒドラゾン(11)のテトラヒドロフラン(3mL)/エタノール(0.5mL)混合溶液に、水素化ホウ素ナトリウム(還元剤)(0.106g,2.8mmol)を加え、60℃で4時間攪拌した。
反応終了後、この反応溶液に0.5N塩酸(10mL)を加えた後、酢酸エチル(25mL×3回)で抽出し、有機層(酢酸エチル層)を得た。得られた有機層を合わせ、飽和塩化ナトリウム水溶液(30mL)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した。乾燥した有機層から硫酸ナトリウムをろ別後、ろ液から溶媒を減圧留去し、残渣を得た。得られた残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン)で精製することにより、5−(4−エトキシ−2,3−ジフルオロフェニル)−2−(4−プロピルシクロヘキシル)ピラン(12)の白色固体(77mg,収率83%)を得た。
【0114】
実験例17〔工程6、及び工程7について(III)〕
実施例17では、工程6と工程7を一工程で実施した例である。
【0115】
(2R,5S)−5−(4−エトキシ−2,3−ジフルオロフェニル)−2−(trans−4−プロピルシクロヘキシル)テトラヒドロピラン−4−オン(9)(0.181g,0.50mmol)と、p−トルエンスルホニルヒドラジド(10)(0.101g,0.54mmol)と、シアノ水素化ホウ素ナトリウム(還元剤)(0.150g,2.5mmol)とを含むメタノール(2.5mL)/エタノール(2.5mL)混合溶液を、60℃で12時間攪拌し、室温まで冷却した。
反応終了後、この反応溶液に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(10mL)を加え、酢酸エチル(30mL×3回)で抽出し、有機層(酢酸エチル層)を得た。得られた有機層を合わせ、飽和塩化ナトリウム水溶液(40mL)で洗浄後、硫酸ナトリウムで乾燥した。乾燥した有機層から硫酸ナトリウムをろ別後、ろ液から溶媒を減圧留去し、残渣を得た。得られた残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=19:1)により精製することのより、(2R,5R)−5−(4−エトキシ−2,3−ジフルオロフェニル)−2−(trans−4−プロピルシクロヘキシル)テトラヒドロピラン(12)の白色固体(54.0mg,収率29%)を得た。
【0116】
実験例18〔工程6、及び工程7について(IV)〕
【0117】
(工程6)
窒素雰囲気下で、実験例4で得られた(2R,5S)−5−(4−エトキシ−2,3−ジフルオロフェニル)−2−(trans−4−プロピルシクロヘキシル)テトラヒドロピラン−4−オン(9)(26.9g,71mmol)とp−トルエンスルホニルヒドラジド(10)(22.3g,0.12mol)とを含むエタノール(400mL)/クロロホルム(200mL)混合溶液を、60℃で5時間攪拌した。この反応溶液を室温まで冷却後、溶媒を留去し、(2R,5S)−5−(4−エトキシ−2,3−ジフルオロフェニル)−2−(trans−4−プロピルシクロヘキシル)テトラヒドロピラン−4−オン=p−トルエンスルホニルヒドラゾン(11)を得た。
【0118】
(工程7)
窒素雰囲気下で、工程5で得られた(2R,5S)−5−(4−エトキシ−2,3−ジフルオロフェニル)−2−(trans−4−プロピルシクロヘキシル)テトラヒドロピラン−4−オン=p−トルエンスルホニルヒドラゾン(11)のメタノール(280mL)/エタノール(280mL)/テトラヒドロフラン(140mL)混合溶液に、塩化亜鉛(亜鉛化合物)(24.5g,0.18mol)とシアノ水素化ホウ素ナトリウム(還元剤)(21.3g,0.34mol)を加え、50℃で12時間攪拌した。
反応終了後、この反応溶液に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(500mL)を加えた後、ヘキサンで抽出し、有機層(ヘキサン層)を得た。得られた有機層を合わせ、飽和塩化ナトリウム水溶液(700mL)で洗浄後、硫酸マグネシウムで乾燥した。乾燥した有機層から硫酸マグネシウムをろ別後、ろ液から溶媒を減圧留去し、残渣を得た。得られた残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=5:1)により精製することにより、(2R,5R)−5−(4−エトキシ−2,3−ジフルオロフェニル)−2−(trans−4−プロピルシクロヘキシル)テトラヒドロピラン(12)の白色固体(7.8g,収率30%)を得た。
【産業上の利用可能性】
【0119】
本発明の新規なテトラヒドロピラン−4−オン誘導体(9)は、液晶組成物として有用なテトラヒドロピラン誘導体(12)の原料として利用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(9)で表されるテトラヒドロピラン−4−オン誘導体。
【化1】

(上記式中、R、R、R、RおよびRは、各々独立に、水素原子、炭素数1〜4のアルコキシ基またはフッ素原子を示す。Rは、炭素数1〜4のアルキル基で置換されていてもよい炭素数3〜10のシクロアルキル基を示す。)
【請求項2】
が炭素数1〜4のアルキル基で置換されていてもよいシクロヘキシル基である請求項1に記載のテトラヒドロピラン−4−オン誘導体。
【請求項3】
が炭素数1〜4のアルコキシ基である請求項1又は2に記載のテトラヒドロピラン−4−オン誘導体。
【請求項4】
およびRがフッ素原子であり、Rがエトキシ基であり、RおよびRが水素原子であり、Rが4−プロピルシクロヘキシル基である、請求項1から3のいずれかに記載のテトラヒドロピラン−4−オン誘導体。
【請求項5】
下記一般式(7)で表されるシロキシジエン類と、
【化2】

(上記式中、R、R、R、RおよびRは、各々独立に、水素原子、炭素数1〜4のアルコキシ基またはフッ素原子を示す。X、XおよびXは、各々独立に、炭素数1〜4のアルキル基またはフェニル基を示す。)
下記一般式(8)で表されるアルデヒド類を、ルイス酸の存在下に環化させることを特徴とする、
【化3】

(上記式中、Rは、炭素数1〜4のアルキル基で置換されていても良い炭素数3から10のシクロアルキル基を示す。)
下記一般式(9)で表されるテトラヒドロピラン−4−オン誘導体の製造方法。
【化4】

(上記式中、R、R、R、R、RおよびRは、上記と同じ内容を示す。)
【請求項6】
ルイス酸がアルミニウム化合物である請求項5に記載のテトラヒドロピラン−4−オン誘導体の製造方法。

【公開番号】特開2011−153133(P2011−153133A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−285096(P2010−285096)
【出願日】平成22年12月21日(2010.12.21)
【出願人】(000173762)公益財団法人相模中央化学研究所 (151)
【Fターム(参考)】