説明

テトラヒドロフランの製造方法

【課題】pKa値が4以下の酸触媒を用いて1,4−ブタンジオールを原料にしてテトラヒドロフランを製造する方法において、固形副生物の析出を回避して、安定的に高い生産性が得られる工業的に有利なテトラヒドロフランの製造方法を提供する。
【解決手段】原料の1,4−ブタンジオールを反応器に供給し、pKa値が4以下の酸触媒の存在下で、脱水環化反応を行うことにより生成物としてテトラヒドロフランを得るにあたり、反応器内の溶液のUVスペクトルに基づき測定波長領域650〜750nmの中から選ばれる1波長以上で測定した吸光度が0.01以上3.0以下であることを特徴とするテトラヒドロフランの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はテトラヒドロフランの製造方法に係り、特に酸触媒を用いて、1,4−ブタンジオールを原料として脱水環化反応によりテトラヒドロフランを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
テトラヒドロフラン(以下、「THF」と略記することがある)は高分子化合物を含む各種有機化合物の溶剤、ポリテトラメチレングリコールの原料として有用な化合物である。
テトラヒドロフランは工業的には1,4−ブタンジオール(以下、「1,4BG」と略記することがある)の脱水環化により製造されることが多い。この反応の触媒としては均一系、あるいは不均一系のいずれでも酸触媒が有効であることが知られている。
【0003】
例えば、シリカアルミナ触媒(特公昭48−1075号公報)や、陽イオン交換樹脂(特開平7−118253)などの固体触媒を使用する方法も知られているが、これらの方法は高温条件での触媒劣化が甚大であることなどの問題があり、近年では、高温条件でも触媒劣化の少ないとされるヘテロポリ酸(特表2006−503050号公報)を触媒としたテトラヒドロフランの製法も提案されている。これら触媒を用いて1,4BGの脱水環化によりTHFを製造する際には、固定床反応器を用いた液相反応器や生成物を気相部を介して反応器から留去する反応蒸留形式などが用いられている。
【0004】
これらのプロセスでは反応で副生する高沸点成分が反応器液相部に蓄積されて運転を行うが、同時に固形副生物の生成が進行する。具体的に、特表2006−503050号公報には、ポリマーなどの固形副生物の析出が、運転を困難にすることが記載されており、2−(4−ヒドロキシブトキシ)−テトラヒドロフラン由来の固形物の生成について記載されている。このようなTHF製造時の固形副生物の析出を回避するべく、特表2006−503050号公報には、触媒の前処理などを行うことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特公昭48−1075号公報
【特許文献2】特開平7−118253号公報
【特許文献3】特表2006−503050号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、原料1,4BGから連続的にTHFを製造する際に、原料1,4BG中の高沸点副生物の要因となり得る化合物、例えば、2−(4−ヒドロキシブトキシ)−テトラヒドロフランの濃度をある程度低減したものを使用しても、反応器内に反応液を蓄積して運転するプロセスでは、固形状の副生物が析出して連続的なTHFの製造を阻害し、生産性が低下するという問題があった。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、pKa値が4以下の酸触媒を用いて1,4−ブタンジオールを原料にしてテトラヒドロフランを製造する方法において、固形副生物の析出を回避して、安定的に高い生産性が得られる工業的に有利なテトラヒドロフランの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、テトラヒドロフランの製造用の反応器内の溶液のUVスペクトルに基づき測定波長領域650〜750nmの中から選ばれる1波長以上で測定した吸光度が0.01以上、3.0以下の範囲内であれば、反応器内での固形副生物の析出を回避でき、反応器後段の工程(例えば、蒸留塔の塔底)の汚れ防止が可能であることを見出した。
【0009】
本発明はこのような知見に基づいて達成されたものであり、以下の[1]〜[7]を要旨とする。
[1] 原料の1,4−ブタンジオールを反応器に供給し、pKa値が4以下の酸触媒の存在下で、脱水環化反応を行うことにより生成物としてテトラヒドロフランを得るにあたり、反応器内の溶液のUVスペクトルに基づき測定波長領域650〜750nmの中から選ばれる1波長以上で測定した吸光度が0.01以上3.0以下であることを特徴とするテトラヒドロフランの製造方法。
[2] 前記反応器内の溶液中の1,4−ブタンジオールの濃度が30〜99重量%であることを特徴とする[1]に記載のテトラヒドロフランの製造方法。
[3] 前記反応器内の気相部に存在するテトラヒドロフラン及び水を含むガスを反応器外へ抜き出すことを特徴とする[1]又は[2]に記載のテトラヒドロフランの製造方法。
[4]前記pKa値が4以下の酸触媒が1,4−ブタンジオールに溶解する均一系酸触媒であることを特徴とする[1]〜[3]のいずれかに記載のテトラヒドロフランの製造方法。
[5]前記反応器内の溶液の温度が100℃〜200℃の範囲であることを特徴とする[1]〜[4]のいずれかに記載のテトラヒドロフランの製造方法。
[6]前記反応器内の溶液中の前記pKa値が4以下の酸触媒の濃度を0.05〜5.0重量%の濃度範囲に保持することを特徴とする[1]〜[5]のいずれかに記載のテトラヒドロフランの製造方法。
[7]前記反応器内の溶液のゲル・パーミエイション・クロマトグラフィー分析で測定した分子量16000以上のポリテトラヒドロフランに相当する高分子量体のエリア比率が10.0%以下であることを特徴とする[1]〜[6]のいずれかに記載のテトラヒドロフランの製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、1,4−ブタンジオールからテトラヒドロフランを製造する方法において、反応器内の固形副生物の析出を回避して安定に運転を行うことができる。また、反応器の後工程として精製工程を設けた場合に、その精製工程での精製設備(例えば、蒸留塔の塔底など)の汚れ防止も期待できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明をより詳細に説明する。
本発明で使用する1,4BGは公知の方法により得ることができる。例えば、ブタジエンのジアセトキシ化により得た1,4−ジアセトキシ−2−ブテンを水素化、加水分解を行って得た1,4−ブタンジオールを使用することができる。或いは無水マレイン酸の水素化により得た1,4−ブタンジオール、レッペ法によりアセチレンから誘導した1,4−ブタンジオール、プロピレンの酸化を経由して得られる1,4−ブタンジオール、発酵法により得た1,4−ブタンジオールなどが使用可能である。なお、本発明の原料1,4BGには、これら公知技術で製造した1,4−ブタンジオールが含む各種副生物、1−アセトキシ−4−ヒドロキシブタン、1,4−ブタンジオールの脱水2量体、脱水3量体、ガンマブチロラクトンなどを含有していても差し支えない。なお、原料1,4BG中の2−(4−ヒドロキシブトキシ)−テトラヒドロフランの濃度は、予め低減されたものを使用するのが好ましく、通常、0.00〜0.5重量%であるが、好ましくは0.01〜0
.4重量%、更に好ましくは、0.02〜0.30重量%である。この濃度が高くなると、固形副生物の生成量が増大する傾向にあり、低くなると、固形副生物の生成量が大幅に低減するとなる傾向にある。
【0012】
本発明において、脱水環化反応を行う反応器は、特に限定されるものではなく、陽イオン交換樹脂などの固体触媒を充填した固定床反応器、固体触媒を用いた懸濁床反応器又は、原料に溶解可能な均一系酸触媒を用いた槽型或いは管型の反応器を使用することができる。また、反応器内の液相部のTHF及び副生水を含む溶液を反応器から排出して蒸留塔などで精製してTHFを得ることも可能であるが、反応器の気相から一部、あるいは全量の生成したTHF及び副生水を含むガスとして抜き出すことも可能である。この場合、反応器から抜き出されたガスは熱交換器により凝縮されて凝縮液を得る。この熱交換器は、反応器から生じる留出物を凝縮液化させる装置であり、該凝縮液化は、冷却液である外部流体とガスとを熱交換させることにより行われる。
【0013】
また、反応器の気相部に充填塔、あるいは棚段塔を設置し、生成したTHF及び副生水を留出させる共に、未反応原料を分離して反応器液相に保持することも可能である。蒸留塔により生成したTHF及び副生水と未反応原料を分離し、未反応原料及び2量体などの高沸点成分を反応器に循環させる、あるいは気相を介して生成したTHF及び副生水を、反応器内の気相部からガスとして排出することにより、反応器内の液相部に高沸点副生物を蓄積することが可能である。高沸点副生物のうち、1,4BGの脱水2量体であるジブチレングリコールなどはテトラヒドロフランへの変換が可能であり、これら高沸点副生物を一部、あるいは全量反応器の液相に蓄積することで、原料使用量を削減して経済性を改善することが可能である。このような理由から、反応器内の気相部に存在するTHF及び水を含むガスの一部、あるいは全量を反応器外へ抜き出すことが好ましい。また、ガスとして排出したテトラヒドロフラン及び副生水を冷却して凝縮させ、その一部を還流として反応器内に循環させることも差し支えない。
【0014】
このような反応形式、すなわち反応器内の気相部に存在するTHF及び水を含むガスの一部、あるいは全量を反応器外へ抜き出し、該ガスを熱交換器により凝縮して凝縮液としてテトラヒドロフラン及び副生水を含む混合液を得る形式を用いる場合には、充填塔、棚段塔などの蒸留塔を熱交換器に導入する前に有してもよい。充填塔、棚段塔などの段数は任意であるが、通常理論段として1段以上、100段以下が好ましく、特に好ましくは3段以上、20段以下である。これ以上の段数では塔が大きくなりすぎ、設備建設のための経済性が悪化してしまう。尚、該塔上部には前述した生成ガスの液化凝縮のための熱交換器を有する。
【0015】
本発明における酸触媒は、pKa(酸解離定数)の値が4以下で且つ1,4−ブタンジオールをテトラヒドロフランに変換可能であれば任意である。好ましくは、スルホン酸、陽イオン交換樹脂、ヘテロポリ酸、リン酸などであり、更に好ましくは金属を含有しない有機酸あるいはリン酸であり、特に好ましくは有機スルホン酸である。具体的には、パラトルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、オルトトルエンスルホン酸、メタトルエンスルホン酸などの芳香族スルホン酸誘導体、ブタンスルホン酸、ヘキサンスルホン酸、オクタンスルホン酸、ノナンスルホン酸などの鎖状の炭化水素スルホン酸誘導体である。これらは混合物として用いても差し支えなく、また炭素骨格内にスルホン酸以外の官能基を有していても差し支えない。特に好ましくはパラトルエンスルホン酸である。
【0016】
有機スルホン酸などは通常、1,4−ブタンジオールに溶解可能であり、反応器液相部での酸触媒の濃度は、0.01〜20重量%であり、好ましくは0.05〜10重量%、特に好ましくは0.2〜5重量%である。
尚、該酸触媒は反応開始時、開始前に一括して添加することも可能であるが、触媒劣化
とともに逐次的に投入することがより反応を安定的に継続するのに効果的であるため好ましい。1,4−ブタンジオールを含む原料の経時投入量に対して、酸触媒添加量は1,4−ブタンジオールの経時投入量に対する濃度として1〜1000重量ppmが好ましく、特に好ましくは5〜50重量ppmの濃度範囲である。これらの濃度範囲となるように調整して、原料1,4BGに混合させるか、溶解させることで共に反応器に投入できる。
【0017】
反応槽内の液相部の内温である反応温度は、80℃〜250℃が好ましく、より好ましくは100℃〜200℃であり、特に好ましくは120℃〜180℃の範囲である。これ以上低い温度ではテトラヒドロフランの生産性が著しく低下してしまい、これ以上の高温度では微量副生物の増加、あるいは強酸であるスルホン酸を使用するために高価材質の使用が必須となってしまう。
【0018】
反応圧力は任意の圧力を採用可能であるが、絶対圧として10kPa〜1000kPaであり、特に好ましくは100kPa〜500kPaである。
本発明において、反応器内の溶液には、主に原料1,4BGや酸触媒のほかに、脱水環化反応で生成したTHFや副生する水などが含有されるが、これら以外にも原料1,4BG中の不純物由来の高沸点化合物やTHFと1,4BGから生成される副生物などを含有していてもよい。
【0019】
本発明では、生成するテトラヒドロフラン及び副生水を含むガスを気相部から排出して熱交換器により凝縮して凝縮液を得て、その一部を還流として反応槽内の気相部に戻すことができる。凝縮した液の組成はテトラヒドロフラン、副生水を任意の濃度で含有することが可能であるが、好ましくはテトラヒドロフラン濃度が30〜95重量%であり、特に好ましくは50〜85重量%の範囲である。また、本反応は量論的に副生水を生成する。そのため、該凝縮液中の水濃度は通常1〜50重量%であり、好ましくは5〜30重量%であり、特に好ましくは15〜25重量%の範囲である。
【0020】
この凝縮液の一部は還流として反応槽内の気相部に戻すことが可能であるが、その際の還流比は0.001以上、30以下が好ましく、より好ましくは0.01〜10の範囲であり、特に好ましくは0.1〜5の範囲である。尚、還流比が高すぎた場合には、加熱のための熱源コストが増大して経済性が悪化し、還流比が少なすぎた場合には、固形物析出低減の効果が得られず、且つ高沸点成分の分離悪化による留出凝縮液への混入が進行する。熱交換器に導入されるテトラヒドロフラン及び副生水を含む生成ガスの導入時の温度は10℃〜200℃が好ましく、特に好ましくは60℃〜100℃の範囲である。
【0021】
本発明では、反応器内の溶液のUVスペクトルに基づき測定波長領域650〜750nmの中から選ばれる1波長以上で測定した吸光度が0.01以上3.0以下であることを必須とする。反応器内の溶液が上記の吸光度を満足すれば、反応器内に重合物を含む高沸点成分が高濃度に蓄積することが抑制される。本発明では、UVスペクトルに基づき測定波長領域650〜750nmの中から選ばれる1波長以上で測定した吸光度が特徴的な挙動を示すが、好ましくは670〜730nmの中の範囲から選ばれる1波長以上であり、反応器内の溶液中に生成する高沸点成分の濃度と吸光度との相関が明確に把握しやすい観点から、更に好ましくは690〜710nmの中の範囲から選ばれる1波長であり、最も好ましくは705nmである。
【0022】
反応器内の溶液の吸光度をUVスペクトルに基づき測定波長領域650〜750nmの中から選ばれる1波長以上で測定した吸光度を0.01以上3.0以下とするには、連続的にTHFを製造している際も650〜750nmにおける吸光度を把握しながら、規定した上限値を越えないように内液を管理する必要がある。なお、本発明における反応器内の溶液の吸光度は、反応器内の溶液を抜き出して測定する以外に、反応器に直接的に接続
された付帯設備(反応器から抜き出された反応器内の溶液を冷却する設備や蒸留するための精製設備等)に供給されたものを測定して、その測定波長領域650〜750nmの中から選ばれる1波長以上で測定した吸光度を反応器内の溶液の吸光度として上記数値範囲に管理しても良い。
【0023】
反応器内の溶液の650〜750nmの中から選ばれる1波長以上で測定した吸光度を上記範囲とする具体的な手段として、例えば、上記測定波長範囲内での吸光度が上昇している場合、一連のTHF製造プロセス内(反応器だけでなく、反応器後段の精製系も含む)でUVスペクトルに基づき測定波長領域650〜750nmの中から選ばれる1波長以
上で測定した吸光度が比較的高い値を示す工程(反応器など)から、その流体を連続あるいは断続的にプロセス系外に排出することで吸光度を下げて上記範囲に制御することが可能である。なお、該流体を排出する際には、一旦原料1,4BGの供給を停止しTHF製造を停止して排出しても差し支えない。排出した液は焼却などにより産廃処理することができる。また排出した液は酸触媒、あるいは陽イオン交換樹脂などの固体酸溶出分を含有するために、中和処理した後、焼却など産廃処理を行うことも可能である。また、この吸光度は高沸点副生物の1,4BGやTHFへの溶解量と相関があると考えられるため、吸光度を低減するには、反応器内の溶液の1,4BG濃度を十分に確保することが好ましい。具体的には、30〜99重量%、好ましくは40〜90重量%、更に好ましくは50〜80重量%に制御することで急激な上昇を抑えつつ、また低減することもできる。また、液中のテトラヒドロフラン濃度を上述の範囲に制御することでも吸光度を低く保持することができる。
【0024】
反応器内の溶液のUVスペクトルに基づき測定波長領域650〜750nmの中から選ばれる1波長以上での吸光度は、0.01以上、3.0以下であり、好ましくは0.02以上、2.5以下である。この650〜750nmにおける吸光度が高すぎた場合には、重合物の蓄積が過度でありプロセス内での固形物析出が進行し、汚れ閉塞により運転が阻害されてしまう。一方、この値が低すぎた場合には、未反応原料あるいは2量体などの高沸分を回収することなく、過度に廃棄していることを示し、原料使用量が大きく消費してしまう。
【0025】
本発明では、反応器内のゲル・パーミエイション・クロマトグラフィー(GPC)分析で測定した分子量16000以上のポリテトラヒドロフランに相当する高分子量体のエリア比率が10.0%以下であることが好ましい。
【実施例】
【0026】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明の要旨を越えない限り以下の実施例に限定されるものではない。
なお、以下の実施例において、水分の分析はカールフィッシャー法を用いて行った。テトラヒドロフランの分析はガスクロマトグラフィー(装置:島津製作所製、型番GC−17A:カラム:DB−1)により行い、面積百分率により算出した。尚、100重量%から水分濃度を差し引いた値を算出し、残る重量%分をガスクロマトグラフィーの各成分の面積百分率により計算した。反応器内液の分析は内部標準としてドデカンを使用した。
なお、705nmの吸光度は島津製作所製の「UV−2400」により測定した(光路長1mm、光路幅10mmの合成石英製密閉セルを使用)。なお、ブランク測定には純水を用いた。
【0027】
また、ゲル・パーミエイション・クロマトグラフィー(GPC)分析はTOSOH HLC−8220GPCを用いて測定した。カラムはTSKgel SuperHZM−N(7.8mmID×30.0cmL)を使用し、質量校正にはPolymer Laboratories製ポリテトラヒドロフラン キャリブレーション キットを使用した。
溶媒にはトトラヒドロフランを使用し、溶媒流速:0.35mL/min、カラム温度:40℃、サンプル注入量:10μLの条件を用いた。
【0028】
<実施例1>
反応器内ガスを留出させるためのガラス製の冷却管と、原料導入管を備えたガラス製の200ccフラスコ反応器に、予め2−(4−ヒドロキシブトキ)−テトラヒドロフランを0.25重量%含む1,4BGを100g、パラトルエンスルホン酸を0.2g(フラスコ内の1,4BG液に対して0.2重量%)を仕込み、オイルバスを使用してフラスコ反応器内温度を150℃まで加熱して脱水環化反応を開始した。尚、反応圧力は大気圧であった。フラスコ反応器内の液温度が150℃に安定した後、フラスコ内の気相部から生成物であるTHFと水を含むガスを冷却管から87℃にして排出し、更に冷却器で凝縮して、THFを含む凝縮液を20g/hrで抜き出し、同時にフラスコ内の液相量が100ccと一定に保持するために、上記と同様の組成の1,4−ブタンジオールを原料導入管から20g/hrで連続的にフラスコに供給した。フラスコ内の液容量に対する上記原料1,4BGのフラスコ内の平均滞留時間は5hrであった。また、この原料1,4BGにパラトルエンスルホン酸を0.24mg/hrの量となるように原料1,4BGに溶解し、原料1,4BGとあわせて原料導入管から連続的に反応器に供給した(原料1,4BG中に連続追加分のパラトルエンスルホン酸を12重量ppmに溶解して供給)。反応器内の液に含まれるパラトルエンスルホン酸の濃度は0.2重量%で開始され、停止までに0.25重量%まで増加した。なお、得られた凝縮液の組成は、テトラヒドロフラン78重量%、水19重量%であった。また2重量%の1,4−ブタンジオールを含有していた。
【0029】
このような条件で、加熱による1,4BGの脱水環化反応及びフラスコの気相部から生成物のTHFを含むガスの留出及び原料1,4BGの供給を800hr継続した。この間、フラスコ内の液相部からの液抜き出しは実施せず、フラスコ内に全量溜め込んで反応を行った。
反応開始から200時間経過した時点でフラスコ反応器内の液を採取し採取したフラスコ反応器内の液の705nmの吸光度を測定した結果、吸光度は0.2169であった。ガスクロマトグラフィー分析によるフラスコ反応器内液は1,4BGを57.4重量%、ガスクロマトグラフィーで検出できない高沸点成分は29.0重量%であった。フラスコ内、及びフラスコ内液に固形物は見られなかった。また、フラスコ反応器内の溶液のGPC分析を行った結果、分子量16000以上のポリテトラヒドロフラン(PTMG)相当の高分子量体のエリア比率は0.0%であり、検出されなかった。
【0030】
次に反応開始から1099時間経過した時点でオイルバスの加熱を止め、脱水環化反応を停止した。フラスコ反応器内の液を採取し、フラスコ反応器内の液の705nmの吸光度を測定した結果、吸光度は1.3909であった。また、フラスコ反応器内の溶液のGPC分析を行った結果、分子量16000以上のポリテトラヒドロフラン(PTMG)相当の高分子量体のエリア比率は5.7%であった。ガスクロマトグラフィー分析によるフラスコ反応器内液は1,4BGを54.8重量%、ガスクロマトグラフィーで検出できない高沸点成分は33.9重量%であった。フラスコ内、及びフラスコ内液に固形物は見られなかった。
【0031】
<比較例1>
実施例1において、反応開始から1800時間経過した時点でオイルバスの加熱を止め、脱水環化反応を停止した以外は全て同様に行った。採取したフラスコ反応器内の液の705nmの吸光度を測定した結果、吸光度は4.1557であった。また、フラスコ反応器内の溶液のGPC分析を行った結果、分子量16000以上のポリテトラヒドロフラン(PTMG)相当の高分子量体のエリア比率は10.1%であった。ガスクロマトグラフィー分析によるフラスコ反応器内液は1,4BGを9.3重量%、ガスクロマトグラフィ
ーで検出できない高沸点成分は70.02重量%であった。
【0032】
ガスクロマトグラフィー分析によるフラスコ反応器内液は1,4BGを9.3重量%、ガスクロマトグラフィーで検出できない高沸点成分は70.02重量%であった。
フラスコ内、及びフラスコ内液にフラスコ内、及びフラスコ内液に固形物の析出が確認できた。固形物の量は2.0gであった。1,4−ブタンジオールの全使用量は33kgであり、固形物選択率は0.6%であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料の1,4−ブタンジオールを反応器に供給し、pKa値が4以下の酸触媒の存在下で、脱水環化反応を行うことにより生成物としてテトラヒドロフランを得るにあたり、反応器内の溶液のUVスペクトルに基づき測定波長領域650〜750nmの中から選ばれる1波長以上で測定した吸光度が0.01以上3.0以下であることを特徴とするテトラヒドロフランの製造方法。
【請求項2】
前記反応器内の溶液中の1,4−ブタンジオールの濃度が30〜99重量%であることを特徴とする請求項1に記載のテトラヒドロフランの製造方法。
【請求項3】
前記反応器内の気相部に存在するテトラヒドロフラン及び水を含むガスを反応器外へ抜き出すことを特徴とする請求項1又は2に記載のテトラヒドロフランの製造方法。
【請求項4】
前記pKa値が4以下の酸触媒が1,4−ブタンジオールに溶解する均一系酸触媒であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のテトラヒドロフランの製造方法。
【請求項5】
前記反応器内の溶液の温度が100℃〜200℃の範囲であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のテトラヒドロフランの製造方法。
【請求項6】
前記反応器内の溶液中の前記pKa値が4以下の酸触媒の濃度を0.05〜5.0重量%の濃度範囲に保持することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のテトラヒ
ドロフランの製造方法。
【請求項7】
前記反応器内の溶液のゲル・パーミエイション・クロマトグラフィー分析で測定した分子量16000以上のポリテトラヒドロフランに相当する高分子量体のエリア比率が10.0%以下であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のテトラヒドロフランの製造方法。

【公開番号】特開2012−250966(P2012−250966A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−127241(P2011−127241)
【出願日】平成23年6月7日(2011.6.7)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】